資料4-1 基本論点

視点1 東日本大震災についての科学技術・学術の観点からの検証

1 社会の要請を十分に認識する必要性

  • 一般社会と専門科学者集団の対話が不足しているため、研究者等が社会からの要請を十分に認識していないのではないか。研究者等は学術の深化と科学技術の進展に努めるにとどまらず、多様な手段により自ら積極的に社会から学び、社会リテラシーを向上させることが必要ではないか。
  • また、国民の負託を受け公的資金を得て研究を行う者は、その意味を十分に認識するとともに、機会を捉えて社会に対し自らの研究の意義を説明する責任を負う。
  • 我が国の将来を支え、社会が要請する多様な人材の育成が必要。

視点1 1

  • 被災地が復興に向けてどのようなニーズがあるのか、現場からの情報収集から研究につなげる体制の構築が必要ではないか。
  • 今回の震災による被害は、今までの科学技術の推進体制の下で想定されていた以上の問題や課題が多く、新たな視点に基づく対応を検討することやデータ収集の継続性の必要など現状の対応を見直すことが必要である。

 

2 地震・防災に関する従来の取組方針の検証

  • 今般の大地震発生の可能性を追究できなかった理由について十分な検証を行うことが必要。常に研究体制の見直しが求められる中で、これまでの取組について不十分なところはどこか(焼け太りと言われないこと)。地震、防災にかかわる直接の専門家のみならず人文・社会科学分野も含め、総合的、学際的取組の強化が必要ではないか。
  • 国民の生命や財産を守るために真に何が必要かを追求。一般社会の声を十分に取り入れる。

視点1 2

  • 巨大海溝型地震に関する研究の強化など、地震に関する基礎研究の体制を見直すことが必要である。
  • 地震・防災に関する環境問題解決のためには、社会構造、都市構造、水利権や土地利用および経済活動を含有する、より大きな社会・経済的な観点からの取組が必要である。
  • 東日本大震災により地震、津波、原子力発電所事故という複合型の被害により、人的喪失のみならず、原子力発電所の事故による低放射線量に関する問題、コンビナート崩壊による重油の問題など新たに発生した課題への対応が必要である。
  • 地震、津波等の被害予測等の限界、社会のパイプラインとなるインフラやシステムの機能不全、防災オペレーションの混乱、風評被害等などに対する取組を強化するため、災害等に強いITシステムの構築、地震・津波等の被害軽減のための高度なシミュレーション、IT統合システムの防災オペレーションへの応用、風評被害等を避けるためのリアルタイムメディア解析技術の構築等が必要である。
  • 発災直後の対策は講じられているが、災害発生から被災地の復興、回復までの長期的視野を考慮した対策がまだ十分ではない。今後は、災害後に生活を速やかに回復するために、学術的に社会の自然災害等のリスクに対する頑健性や回復力を考慮した復興対策が重要である。

 

3 日本の科学技術のシステム化の必要性

  • 日本の科学技術は、要素技術の開発に偏りがちで、社会における実際の運用までを考慮したシステム化が行われない傾向があり、この結果、科学技術の成果が課題解決、社会実装に結びつかない場合があるのではないか。例)ロボットショック

視点1 3

  • 研究開発から実用化、製品化までを一貫して俯瞰する視点を導入し、社会的ニーズを踏まえた将来展望や出口戦略を視野に入れるとともに、自然科学分野の異分野融合に加え、社会科学の知見も活用し、学際的な体制で新たな産業、ビジネスのあり方を検討する。
  • 実証実験、社会への実装を通じてシステムを改善する仕組や、研究成果の実用化への受け渡しや実用化された後のユーザーニーズへの適合を可能にする仕組が重要である。
  • 研究開発成果を将来の事業化へ結び付けるためには、科学技術における環境・健康・安全面(EHS:Environment, Health and Safety)の課題や、倫理的・法的・社会的問題(ELSI:Ethical, Legal and Social Issues)についても取り組むことが必要である。

 

○視点2 課題解決のための学際研究や分野間連携

1 課題解決のための政策誘導

  • 課題解決のために、学術の世界においても、学際研究や分野間連携を進めるための政策誘導的なメカニズムの構築が必要ではないか。

視点2 1

  • 課題解決のために、自然科学と経済社会システム変革の相互関係、技術の社会的受容性及びその実効性、その導入に関しての利害調整、科学技術面からの外交政策など、人文・社会科学領域との連携・融合を図ることが必要である。
  • 重要課題の達成に向け、基礎から応用、開発の各段階で緊密に連携した「循環研究」を総合的かつ計画的に推進する。
  • 具体的な課題を設定して、課題解決のために現行の科学技術をどのように組み合わせることが最適なのかというような学際的な方策の考え方を示すことが必要である。

 

2 学際研究や分野間連携を支える人材育成

  • 学生や若手研究者が、社会の多様な視点や発想を有するようにするための取組が必要ではないか。

視点2 2

  • 若手研究者の幅広い方面からの参画を促し、活動力の高い研究活動と研究成果を生み出せるような人材育成機能も併せ持つ研究プロジェクトを構築する。
  • 先端研究整備のネットワークや国際的に開かれた研究開発拠点の活動に、若手研究者や学生、政府関係者を積極的に組み込み、計画的に人材育成を行うことが必要である。
  • 研究者の学際的な連携の促進、国際的に開かれた人材育成環境の構築と人材交流の活性化により、多様な要請に対応が可能、幅広く産学官・市民にわたり、グローバルかつ分野横断的に活躍できるリーダーを育成する。

 

○視点3 研究開発の成果の適切かつ効果的な活用

1 社会的ニーズの把握と研究課題への反映

  • 研究課題を設定する段階で、ユーザー、応用分野の研究者、人文・社会学者等との広範かつ積極的連携などにより、社会的ニーズを掘り起こし、それを適切に課題に反映する取組を強化することが必要ではないか。

視点3 1

  • 課題の設定のために、政策側が科学技術に求める内容を明確化することや研究機関側が政策の判断を助ける客観的な科学的知見や方法論を積極的に提供することが重要である。
  • 様々な課題を達成するために、課題にあわせた目標設定と達成に即した研究内容・体制の構築、研究成果が円滑に社会還元される環境整備が必要であり、目標設定段階から応用分野の研究者や人文・社会学者と連携をはかり、課題達成の妥当性の議論、共通理解を得ることが必要である。

 

○視点4 社会への発信と対話

1 科学的助言の在り方

  • 科学技術に関する専門的助言と政府の意志決定の関係の明確化が必要ではないか。広く科学者の意見を求めることが重要である。科学者の見解が分かれる場合には、複数の政策オプションに集約、提示し、それらを踏まえ政策を決定するというプロセスを確立すべきではないか。

視点4 1

  • 専門的な知見が必要とされる施策については、効率的に運用するためにもそれぞれの専門を有した複数の専門職員を配置し、的確な助言を行える体制を構築する。

 

2 リスクコミュニケーションの在り方

  • 科学技術の限界や不確実性に関する認識を踏まえ、政府は、科学技術のリスクに関して社会とどのように対話すべきか。すぐに「地震予知」ができるとか、「ゼロリスク」が可能と誤解させたりしないことが重要。
  • また、科学技術への信頼を得るため、どのように取り組むべきか。社会との双方向のコミュニケーションを強化し、科学技術の社会的得失(リスクとベネフィット)の均衡を適切に判断しなければならない。国民のリスクリテラシーと研究者等の社会リテラシーの双方を向上することが必要ではないか。

視点4 2

  • 科学技術を推進するに当たっては、効果の有用性の強調と併せて、安全性や不確実性についても追究し、リスクに関する情報を積極的に社会に提供する。
  • ハザード評価などの科学技術的成果は、国民にわかりやすく説明する必要があり、理解が深まることにより国民の社会応用力の向上につながる。
  • 科学分野における社会とのコミュニケーションを仲介する専門家を育成する。

 

○視点5 復興、再生及び安全性への貢献

1 安全社会の実現や防災力向上のための研究開発の在り方

  • 安全・安心を念頭に置いた研究開発や、災害に強い社会基盤を構築するための研究開発として、どのような取組を行うべきか。

視点5 1

  • 情報共有ネットワークを確保する重要性から防災機関と協調した研究開発の推進
  • 広域な地域が同時に被災するような災害に対する防災対策の再構築
  • 災害に強い社会基盤を構築するため、あらゆる防災に関する情報に位置情報をつけてデータベース化
  • し、基盤情報として一元的に管理する体制の構築
  • 気候変動や東日本大震災で再認識された自然の脅威に対応できる地域の特性に応じた自然と共生するまちづくりの推進
  • 国民の生命、安全・安心のため、災害等に強いITシステムの向上を図り、災害時においてITシステムが社会のライフライン機能をもち、課題達成のためシステムとして役割を維持するための取組
    1. 通信情報・処理機器の電力効率がIT機器等の高機能化のシステム上の制約と想定されることから、ITシステムの超低消費電力化(グリーン化)が不可欠
    2. 災害時の社会のライフライン確保のため、災害等に強いITシステムの構築
    3. 実社会のライフラインであるITシステムの超低消費電力化
    4. ライフイノベーションに貢献する情報に関する高度化
    5. 情報科学技術における災害等に強いITシステムの構築、被害軽減のための高度なシミュレーション等の技術革新のための研究の推進
    6. 災害に強い自己調整・自己修復等の可能な情報システムの構築
    7. 災害時及び災害後リアルタイム情報を把握可能な防災オペレーションに応用するIT統合システムの構築と情報統合基盤技術の高度化
    8. 風評被害等を最小限に抑えるためのリアルタイムメディア解析技術の構築
  • 地域に適した防災力の向上を図るため、防災科学技術の研究開発の推進
  • 国民の安全の確保を大前提に、原子力に関する国民的信頼、理解を再構築する取組
  • 今回の事故によって得られた知見、蓄積したデータ、教訓を活かした国際貢献

 

2 研究機関の復興支援

  • 研究機関の成果や人材を、更に被災地の復興に役立てるため、どのような取組が必要か。

視点5 2

  • 東日本大震災からの復興、再生の実現に向け、我が国の国際的優位性の強化、安全で豊かで質の高い国民生活の実現への貢献という観点に基づいた次世代の主要産業の創出等
  • 地球環境の変動を正確に把握し適切に対応できる自然と共生するまちづくりの推進に必要な社会を支える基盤的情報を技術開発する取組
  • 復興のみならず、再生、新たな産業創出に向けた研究開発の担い手の育成や被災地の地域特性を活かした復興、再生を支援する取組
  • 復興に関して自然災害等のリスクに対する頑健性や回復力を考慮する上で、広く社会的に絶対壊れてはいけないもの、ある程度は壊れてもよいものなどの優先順位を考えるための体制の構築

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局計画官付

03-6734-3982(直通)

(科学技術・学術政策局計画官付)

-- 登録:平成24年08月 --