参考資料
平成19年3月7日(水曜日)13時〜15時20分
学術総合センター 特別会議室102、103
井上(明)主査、家委員、井上(信)委員、小川委員、大野委員、金子委員、川上委員、駒宮委員、荘司委員、西村委員、福山委員
若槻高エネルギー加速器研究機構教授、吉澤東京大学中性子科学研究施設長、亀井三菱総合研究所先端科学センター長、西田東京工業大学理工学研究科教授、山中大阪大学理学研究科教授
木村量子放射線研究推進室長、他関係官
【福山委員】
PSBはすばらしいシステムだと思いますが、肝心なお金の流れが分からない。PSBの運営の中での予算要求の仕方や決定はどのようになっているのでしょうか。
【若槻教授】
ESRFとILLそれぞれについては組織がはっきりしていますので、個々で予算要求しており、その中からPSBにいくら出すかあらかじめ決められまして、PSBの中で共通で使う部分はかなり少ないと聞いております。それぞれがアクティビティを維持するために出し合ってどこかにプールしてそれを全員で使うという形にはなっていないと理解しております。
【福山委員】
ESRFで、例えばビームラインを何とかしたいとしたら、だれがどうやってお金を払うのですか。
【若槻教授】
基本的には共同利用のビームラインに関しましてはESRF側がカウンシルからもらっているお金を使って、計画を立てて製作します。それ以外に外部資金で製作する場合には、昔で言えばベンディング・マグネットしか作れなかったわけですが、最近ではそれが少し緩みまして、例えば2ページ目にID23というビームラインがございますが、これはPSBがお金を集めてPSBとして作られた。ただ、作ったのはESRFとEMBLの人たちということで、ケース・バイ・ケースで製作されることになっていると思います。ESRFの場合には、基本的に一番いいところをとれるのは共同利用のビームラインというふうになっています。
【福山委員】
そうすると、本当に何とかしようと思ったら、PSB自身が自分でお金を持ってくるのですね。
【若槻教授】
はい。
【福山委員】
そのときESRFは技術的な援助をするのですか。
【若槻教授】
ID23に関しましてはESRFの予算の中からPSBのために製作するということでお金をいったんはPSBに出して、それが実際にはESRFの建設のビームラインに使われたということになると思います。ID23はPSBのためということで、特定用途化されて使われるということです。つまり、それぞれのパートナーが何を寄付するかという目的に沿ってお金を出し合っている。ただ、その出した後については完全にプールするわけではないので、ちょっと複雑かもしれません。
【福山委員】
予算要求は実際PSBが行うのですか。
【若槻教授】
それはほんの少しだけしかできません。大部分はそれぞれの施設、EMBL、ILL、ESRFが要求します。ただ、要求するときに、これはPSBのアクティビティだということを言うと要求が通りやすいです。
【福山委員】
PSBが組織的に委員会みたいなものを持っていて、そこで決定したときに、それがESRFとかEMBLの方に行くのですか。
【若槻教授】
おっしゃるとおりです。その委員会は、それぞれの施設からトップの、この場合で言えば構造生物学に関するトップの先生方やディレクターレベルの人が来てディレクターシップを構成している。そこでOKが出れば、各施設に戻って、かなり優先度の高い予算要求ができるという、そのように御理解していただければと思います。
【福山委員】
わかりました。
【荘司委員】
最後のスライドのところで、ESRFの場合、ヨーロッパの各国は財源が少ないので寄せ集めというか、みんなで一緒になってアクティビティを高めて、コストパフォーマンスを上げるという方針の一方で、各国で施設を持ち始めています。そのような動きの背景として、例えばESRFの運営体制に対して各国が不満を持っているのでしょうか。もしそのようなことがあるのであれば、どういうところが改善されるべきかを教えていただきたいと思います。
【若槻教授】
これは私の個人的な理解ですが、ESRFやILLの運営体制に対する不満というよりは、やはりキャパシティとしてESRFではビームタイムが確保し切れないということがあって、それぞれの国が動き始めたということです。放射光施設をつくるのは時間がすごくかかりますので、ESRFができて数年した頃から、例えばイギリスのDIAMONDとか、フランスのSOLEILの話というのが出てきたということはございます。
今現在どうなのか、これから5年間どうなるかに関しては非常に難しいところがございまして、特にドイツ、イギリス、フランスが今後ESRFにどのぐらいの規模のお金を出していくかについては非常に活発に議論がされていて、ESRFのメンバーは必ずしも楽観視はできないということで、今新しくいろいろなプロジェクトを立ち上げて、施設の間の相補性を出していこうとしているわけですが、放射光の相補性というのはできるところもありますが、できないところもあります。例えばPETRAはエネルギーが結構高いですが、エネルギーだけではできないこともありますので、今後はかなり難しい局面になるのかなと思います。
【荘司委員】
それはやはりユーザー側からすれば、使いたいときに使いたい、そういうキャパシティのところの問題が一番大きいのでしょうか。
【若槻教授】
もともとの議論はそうであったと思います。
【駒宮委員】
それぞれの研究所が別のミッションを持っていて、そこに適合するようなシステムをつくっていると思います。そのままこれをJ-PARCに当てはめるというのはもちろんできないと思いますが、この中でJ-PARCに当てはまる、こういうふうにしたらよろしいというような例がございましたら教えていただきたい。
【若槻教授】
大変難しい御質問で、そこまでは想定しておりませんでした。私はKEKに在籍しておりますので、J-PARCについてはそれなりに理解しているつもりですが、KEKとJAEAとで仕事をしていく上でどういう契約の形態かとかについては、一科学者としての意見としてお聞きいただければと思いますが、施設を作っていく上で私が重要だと思いますのは、少なくともサイエンスは別ですが、やはりそれなりに指揮命令系統がはっきりしているということが重要ではないかと思います。
グルノーブルで本日御紹介した幾つかの例の中でもありましたが、2つの機関が1つの施設を作り上げることが、いいところにつながることもあるのですが、実際に物を作って運営していく時には、それなりのルールがはっきりしているということが重要な気がします。これがグルノーブルでうまくいっているかどうかということに関しては、今であれば申し上げられますが、中にいるとなかなか言えなかったことです。
【家委員】
今の指揮命令系統ということにも関係するのですが、基本的に研究者は任期付きで、技術者は長期雇用ということですけれども、技術者の横の組織のようなものがあるのでしょうか。それから、研究者が数年で代わっていくときに、技術者とのマッチングをどういうふうにとるか工夫のようなものはありますか。
【若槻教授】
まず、第1の点ですが、ILLとESRFとEMBLで技術者が組合みたいなものを組織的に作ってはいませんが、それぞれの中では技術者の方がそれなりに連絡するような会があったと思います。
それから、技術者とのマッチングですが、技術者と申し上げたときに、もう一つ重要なジャンルにエンジニアがございます。特にヨーロッパ、フランスの場合にはエンジニアと技術者の違いが非常にはっきりしておりまして、エンジニアというのは科学者と同じレベルです。ところが、エンジニアは長期雇用です。エンジニアはどちらかというとビームラインをつくり上げていくときの本当に技術的なところを詰めている。そのすぐ下に技術者が何人かいる組織がグループとしてございます。
そのグループに技術サービスとか、コンピューティングサービスというものがあるといった構造になっていますけれども、ビームラインに関しましてはエンジニアがおりません。科学者、ポスドク、技術者がおりまして、マッチングに関しましては、最終的にはもちろんディレクターが持っているわけですが、それぞれのグループリーダーが人事権やイニシアチブをかなり持っております。
【井上(明)主査】
そのエンジニアは科学者に対してどういう比率なのですか。
【若槻教授】
正式な数字ではお答えできませんが、多分、3対1から4対1ぐらいだと思います。3か4が科学者です。
【川上委員】
ESRFにおける産業利用というところで2点お伺いします。特許取得をする場合にはビームタイム利用料を支払うということですけれども、それはビームタイム利用料だけを払って、特許そのものには名を連ねないという理解でよろしいですか。
【若槻教授】
そのとおりです。それから、特許を取るかどうかに関わらず、成果占有として実験する場合には有料ということです。
【川上委員】
それともう一つ、産業利用推進室があるというお話ですけれども、それはどういう役割をして、どういう人材がそこをマネジメントしているのかということを教えてください。
【若槻教授】
私がいた時にいた人はSOLEILに移った可能性がありますけれども、何人かで作っておりまして、そのうちの2人にかなりシニアな人がいまして、1人は元科学者ですね。それから、もう1人は経理のトップ近くにいた人がなっていました。お金の面と技術の面の両方をきちんとバックアップできる形にして、特にサイエンスを担当している、その当時で言えば科学者がいろいろな会社に説明に行きます。それから、SPring-8でもされていると思いますが、ワークショップの開催をかなり積極的にしています。そうすると実際に収入が上がるので、そのお金で産業利用のアシストをし、自分の研究も一部でやるポスドクを雇っています。
【井上(信)委員】
若槻先生がグループリーダーをやられていた時に、サイエンスの方の指揮権というのをお持ちになっていたのだと思いますが、いろいろなところから人が来ていると思うのですけれども、その人事はどのようにされていたのですか。
【若槻教授】
グループリーダーになってからは、もちろん自分のグループのシニアなメンバーやディレクターと相談はしますが、基本的にはグループリーダーのイニシアチブで、こういう人を採りたいということで募集をかけますし、それから、面接などもグループリーダーが取りまとめます。どういうサイエンスをするかも、きちっとしたガイドラインはなくて、多くても半分ぐらいとリソースは限られているわけですけれども、何とか自分のサイエンスができるように努力します。ただ、それを1人1人に当てはめると大変なことになるので、少なくとも私は、グループとして科学的なテーマをきちっと掲げまして、それに向けて人を雇って、来た人にもそれをやってもらうということでやっておりました。
ほかのグループもグループリーダーがかなりイニシアチブをとります。ディレクターがそこに入ってきますと、いろいろ軋轢がございまして、5年ごとに風がこっちからワーッと吹いて、次の5年はこっちからワーッと吹くというようなことがあって、グループリーダーによってはちゃんと耐えられるし、逆になびいてしまう人もいるということですが、基本的にはグループリーダーがかなりイニシアチブをとれることになっていると思います。
【井上(明)主査】
どうもありがとうございました。
まだいろいろ御意見等あろうかと思いますが、時間の都合もありますので、本件につきましては、ここで終了させていただきます。
【金子委員】
亀井先生の中性子をどうやって使うかという要望事項の中にトップマネジメントの理解というのがありまして、JASRIには弊社からもトップが理事長に名前を連ねさせていただいておりますけれども、J-PARCセンターに関してそのような組織というものは検討されているのでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
J-PARCセンターは、理事とか役員を持たないので、そこまでは考えていないのですけれども、いわゆる利用者協議会というか、ユーザーのアソシエーションというのをどのように持っていくか。先ほど言われたトップマネジメント等、いろいろと考えなければいけないことがたくさんあるのですが、現在はそういうところまでは至っておりません。
【井上(明)主査】
運営会議が最高決議機関になると伺っているが、この間の説明だと、あまり外部委員が入っていない仕組みだったようですが。
【永宮J-PARCセンター長】
現在は両機関の代表者しか入っていないのですけれども、今後、そのことも含めて考えるべき時期があるかと思います。
【金子委員】
逆にSPring-8の方がどのようになっていたかというのをお聞きできればと思うのですけれども。
【大野委員】
SPring-8では、これは大竹課長が一番最初に説明されましたとおりでございまして、建設の時点から運営をどうするかということを考えていたために、JASRIのような仕組みを作ったという意味で、J-PARCとはかなり違うと思います。
【大野委員】
お話を聞かせていただきまして、後者の2つのお話は非常にシンプルで、ユーザーのコミュニティーも非常にまとまっていると思うのですが、MLFの方も仕組みをもうちょっとシンプルにできないのでしょうか。何を言いたいかと申しますと、この図を見せていただくところ、ビームラインを作った時点で既にJAEAとか、KEKとか、茨城県という名前が全部ついているわけです。そうしたときに、共用というか、共同利用することが非常に難しいのではないかなという気がするのです。
なぜこういうことを言うかというと、例えばSPring-8の場合は、こういう名前のついていないビームラインが半分以上なので共同利用はしやすいわけです。そういう意味で、むしろ国にお尋ねしないといけないのですが、国でビームラインをお作りになる意思があるのでしょうか。
【木村量子放射線研究推進室長】
例えば初めから幅広い共用を目指したビームラインを作るということになれば、それは国の役割になってくるのだと思います。JAEAでもKEKでも、設置法の限界がありますので、誰にでも使えるようなビームラインというのは、今現在は作れるようにはなっていません。なので、必要があれば共用という枠組みの中で国が責任を持って整備をしていくということになるのだと思います。
今、23本あるビームラインのうち、半分ぐらいが既に名前のついてしまったビームラインになっているわけですけれども、例えば競争的資金で整備したビームラインというのは、その競争的資金の支援の期間、5年とか何年かの期間が終わった後、どういう形で使っていくのかは決まっていません。その競争的資金の本来の目的が終了した後、例えばJAEA、あるいはKEKの方に帰属させて、できるだけ幅広い利用に供していくとか、そういったやり方もあるのではないかとは思っております。
【大野委員】
ありがとうございました。
【永宮J-PARCセンター長】
先ほど物性研の施設利用の仕方として、原総センターを通して物性研が窓口になるという方法を御紹介いただきましたけれども、この方法は施設共用というのは有償であるということで原総センターからお金を取る、という仕組みを昔作ったわけです。この方式は非常に込み入っていますので、J-PARCでは採らず、前回の会合でお話ししたように、学術研究に関しては施設共用に対しても大学共同利用に対しても無償にするという、J-PARCとしては統一した1つのスタンダードのルールを作ることにしております。したがって、JAEAやKEKが作ったものというスタンプはついているのですけれども、どれも同じ利用方法でやるわけです。
【大野委員】
わかりました。ありがとうございました。
【駒宮委員】
非常に重要なのは、この施設が大強度だということです。3GeV(ギガ電子ボルト)の加速器はどこにでもあります。おそらく中性子に関しても大強度ということが非常に重要で、将来的にも核破砕などの場合に非常に重要なわけです。もちろん、皆さんおっしゃるように、組織はシンプルなのがいいに決まっているわけなのですが、加速器が大強度としてきちんと働くためには、KEKの本体の関与、KEKの加速器の関与というのは非常に重要なのです。それなくして、おそらく大強度ということはあり得ないと思う。もちろん単純性というのは非常に重要なのですが、KEKの経営陣がきちんとこれを見るということが大強度ということに関しては重要だと思います。
【山崎J-PARC副センター長】
駒宮委員がおっしゃったのは、今以上にもっとコミットするようにという意味合いかと思うのですが、誤解がないように申し上げますと、例えばこの間、リニアックからビームが出たのは、半分がKEKのスタッフが物を作り運転もしているからです。さらに建設チームの加速器のヘッドはKEKの神谷理事が務められているということで、現在でもKEKとしては最大限これにコミットしており、リニアックのビームも2、3カ月前倒しで実現しました。
ただ、私の立場としても、もっとKEKにコミットしていただきたいというのは、駒宮委員と同じです。そのためにはどんな体制や仕組みがいいのか、またどのように士気を上げていくのかということについては駒宮委員や他の委員の方々のお知恵を借りながら、また、KEKの経営陣とも相談しながら、より努力はするべきだと思います。ただ、リニアックもJAEAの予算でございますが、いわゆる所掌範囲やスタッフという点ではほぼ半分がKEKからのスタッフで、ある程度の役割を果たすことができたと考えております。
【駒宮委員】
もちろん、現在でもKEKはきちんと関与してやっているわけなのですが、今作っている人の話を聞きますと、設計の段階からいろいろと問題があるわけです。これはもちろん、どんな加速器でもそういう問題はあるのですが、それをクリアしていくためには、組織を単純化するというだけではだめです。KEKから相当多くの人員を、例えばリニアコライダーをやっている人とか、Bファクトリーをやっている人を引き離してやっているわけですから、やはりKEKの経営陣がきちんとそういう人たちの面倒を見てやらないと加速器はできないということを言っているだけです。
【山崎J-PARC副センター長】
私もその点では賛成でございます。
【井上(明)主査】
本日は、各利用者側、ユーザーの立場から4人の先生に御意見をいただいたのですが、これを通しましてJ-PARC側からは何か御意見等ございませんでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
有益な御助言や御忠告をいただいたと思います。中性子に関しては、先ほど言いました原総センターを通さないようなやり方というのと、それから、JRR−3との連携に関しては、両者を生かすような方向で何とか考えていきたいということをポジティブに思っております。産業界からは迅速性とかアクセスの容易性などについて非常に有益な御意見をいただきましたので、これも我々の中で検討すべき事項だと思います。
ミュオンと原子核・素粒子は共通して大強度の早期実現であるとか、第期計画の早期実現であるとか、大学、産業界をはじめ、世界に開かれたシステムの構築などについての御意見が随分ありました。次回以降、運転経費の問題とか、この施設を国際的にどのように開かれたものにしていくかとかなどについて我々の考え方をまたお話ししたいと思いますが、すべて重要な課題だと受けとめております。また、若槻先生がご説明された海外の組織のあり方もいろいろ参考になるところがありますので、積極的に考えていきたいと思っております。
【川上委員】
一部のユーザーの方からも話が出ていましたけれども、これは海外に開かれた一大研究センターということですから、海外からのユーザーが長期滞在するということも考えて、先回の茨城県のサイエンスフロンティア21の説明の中でもそういったインフラの整備だとかバックアップの話も出ていたと思うのですけれども、具体的に地方自治体と詰めて、国内の実験者でも同じですけれども実験に来られる方が快適に実験ができるようにしていただきたいと思います。
この前のお話を伺いますと、JAEAの中にある宿泊施設とか、古いものを転用しようという、確かに予算的にはその方が無駄がないのかもしれませんけれども、うまく改良するなりいろいろ工夫をしていただきたいと思います。意外と実験の内容そのものよりも、そういった部分の印象で実験そのものの効率というのも変わってくると思いますので、ぜひそこのところを配慮していただければと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
実は昨日まで我々の国際諮問委員会がありまして、既にニュートリノのグループからは随分たくさんの要望をいただいております。我々も居室等々の対応について、また後で述べますけれども、NTTの跡地を利用するなどいろいろ検討しています。宿舎に関しても、現在、例えば真砂寮に30室ほどキッチン付きのもの、18室ほどそれ以外のものがあるので、そこを借りるとか、あるいはホテルの建設などについても検討いただいたりとか、いろいろなことはやりつつありますが、そのような我々の努力やもう少し具体的なことについては次回に御報告したいと思います。
【福山委員】
先ほどの駒宮委員からの御質問と、それから、今お話があった中性子等々の利用の問題のお話を伺っていて、J-PARC計画が持っている両面性、違う側面が非常に端的に出てきていると思いました。この作業部会としてどこに焦点を当てた議論をするのかということを今の段階で理解したいのですが、中性子、中間子もそうですが、これはできた後の共用、利用ということが既にいろいろ議論になっていて、その仕組みづくりが論点と思います。一方で、先ほど山中先生や駒宮委員も言われましたが、素粒子・原子核の方からすると、とにかく大強度で世界に例のない加速器がまずしっかりとできて動く、それで実験できるということが強調されていたかと思うのです。
駒宮委員と山崎副センター長のやりとりも、要するに加速器がしっかりと作られるための過程をどうしたらいいかという趣旨の御意見と理解しました。これは明らかに両方違うと思うのです。この作業部会としては、加速器ができた後、それをどう使うかという評価や施設の共用を中心にした議論とするのか、それとも、確かにまだJ-PARCはハードの部分ができていないので、ハードがしっかりとできるような仕組みに関してもこの作業部会で議論するのかで、問題の種類が違うと思いますがどう考えたらよろしいでしょうか。
【木村量子放射線研究推進室長】
先生がおっしゃるとおり、MLFと素粒子・原子核、全く性格が違うものであります。一方では純粋にアカデミックな研究であり、これは国際協力と国際競争の中でどうやって進めていくのかという話。MLFの方は、今までアカデミックなものが中心だったのが少しずつ産業利用も入れながら、より幅広く使ってもらおうという、どちらかというと国内の利用を中心にしながらアジアの中心としてどういうふうに拠点化していくかという観点からの検討が中心だと思います。そこは全く切り分けた議論をしないと、多分、1つまとめてこうだという考え方は打ち出せないのではないかと思います。ただ、当然ながら、加速器の運転とか、そういうインフラの部分に関しては統一された方向性というのは出していかないといけないとは思っています。
【福山委員】
この評価部会では、最終的なレポートとして、どこに重点が置かれると予想したらいいでしょうか。
【木村量子放射線研究推進室長】
もうちょっと議論が進んだ段階で、どういう方向性で報告書をまとめていくのかという論点は出していきたいと思っているのですけれども、基本的には、例えばMLFであれば、その利用の方向性をどうするか。素粒子・原子核実験施設であれば、まさに先ほど申し上げたように国際競争、国際協力の中で、日本のとるべき立場はどうか、その日本の立場を生かすためにその施設をどういうふうに活用していくのかといったことが中心になるかと思います。
【福山委員】
ということは、確認ですけれども、要するに違うものは違うものとして認識して、そのそれぞれに関しての評価をするのですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
はい。
【福山委員】
そうすると、それは同時にタイムスパンから言うと、今問題になっている加速器がどうなるかという問題と、それが予定どおりできた後の問題についても議論するということですか。
【木村量子放射線研究推進室長】
将来本当に理想とすべき姿があって、その反対に今現在こういう状況であると現状認識があって、タイムフレームを考えながら、ではここ数年に何をすべきなのかということがメインの論点になると思います。想定した上で、今後進んでいくべきステップ、当面のステップみたいなものを示していただければいいのかなと思っています。この評価作業部会も、今まで3年ごとにやっているわけですから、これが終わった後、運用が開始してしばらくすればおそらくまた次の評価、レビュー委員会みたいなのを開催することになると思いますし、3年ごと、4年ごとになるのかわかりませんけれども、そこはタイムリーにやっていく話だと思います。
【福山委員】
そうしますと、一番肝心なJ-PARCセンターの位置づけに関しても、やはりタイムリーに考えてよい、そういう議論になるのか。
【木村量子放射線研究推進室長】
そうですね。今、J-PARCセンターとして何ができるのかということがやはり中心になると思います。
【福山委員】
わかりました。
【井上(明)主査】
J-PARCセンターが20年の秋から実際に運用が開始される、それに向けて今ここで装置をどうこうというよりは、その現状や特質を十分に理解した上で、それを最大限に、世界トップの科学技術の非常にベーシックな大型の装置、それを最大限に学術や産業に活用する、そういう仕組みがいかにあるべきか、という議論ということでよろしいですよね。
【木村量子放射線研究推進室長】
はい。
【家委員】
山中先生は、実験経費のことを強調されまして、実際、それは重要だと思います。実験経費に関しては次回以降ということですが、ユーザーコミュニティーとしては、実験経費は潤沢にあればあるほどいいという、そういう希望の表明なのでしょうか、あるいはJ-PARC、それから、CERNとか他の海外の施設で日本が参加している研究に対する経費など、素粒子・原子核コミュニティー全体として日本が実験を進めていく上でどのぐらいの金額であればいいのか、コミュニティーの中で具体的にどういうタイミングでどのぐらいの経費があればというような議論はあるのでしょうか。
【山中教授】
具体的な数値を述べるのは結構難しいですけれども、例えばKEKが陽子シンクロトロンの時はどのぐらいでしたでしょうか。
【永宮J-PARCセンター長】
今、J-PARCセンターからは素粒子・原子核の実験経費を約5.5億円で提示しています。山中先生には直接伺ったわけではないですが、かなりいいのではないかと皆さんが言っている数字です。陽子シンクロトロンはもうちょっと少なかったのですが。
【山中教授】
ただ、5.5億円とかですと、例えば1つの実験をやるとするとやっぱり数億とかいう形で、それが幾つか要りますから、もうちょっとあればユーザーとしてはありがたいですね。
【家委員】
確かに科研費の枠に収まらない額になるという事情もあります。科研費の議論でもそこが非常に悩ましいところなのです。
【山中委員】
我々も科研費で持ってきてはいますけれども、それではやっぱり足りないところもどうしてもあるというところです。
【西村委員】
この中性子線とか中間子が特に、産業界からは例えば創薬などどのように使えるのかということがまだ非常によく見えていないところがこれまでの話の経過からも出ています。最初の若槻先生のグルノーブルの話ですけれども、先生は構造生物学の専門だと思うのですけれども、そのあたりで、一番最後のところに関連施設としてのIBSのところで膜タンパクの構造解析の話をもう少しお聞かせ願えたらよかったかなと思いました。
【永宮J-PARCセンター長】
駒宮先生と福山先生の話の参考になるかもしれませんけれども、SNSは建設期に7つの研究所が加わって加速器をつくったのです。それが、運営期に入って1つの研究所で管理することに変えたのです。ただ、こういう加速器は5年ぐらいかけないと最大強度にならないのです。だから、運転期に入ってからでも加速器の改良とか、加速器への投資は非常に重要なのです。それで、駒宮委員は2つのことを言われたと思いますが、KEKのコミットメントが重要だということについては私も異論を挟む余地はありません。しかし、単純性がよくないというのは、必ずしもそうは思いません。
【駒宮委員】
良くないとは言っていません。単純性はいいのだけれども、現実的にどうかということを考えるべきだと言っているわけです。
【永宮J-PARCセンター長】
新たなチャレンジですから、そこは分けて考えて、その中で何が悪いのかということを議論いただきたいと思います。我々は今後、加速器の第1から第6までの部門を作ってやろうとしているわけです。それがやはりまずいのか、まずくないのかということを議論いただきたいと思います。
【福山委員】
今の問題は非常に重要だと思います。J-PARCセンターがどういうリーダーシップをとるか、どういうスタイルで、実質的にどういうことを進めるタイプの組織になるのかという点です。組織をサポートする周囲のコミットメント、これはKEKとJAEAという全然違う文化の組織が本当に一緒にやると合意して始めたものだから、両方の組織がとことんコミットするのは当然です。その中でJ-PARCセンターができたわけです。J-PARCに全権が移っても素人的には不思議はない、それを実質的にどうするか。そこの制度設計が、今までの議論ではあまりよく見えていなくて、他の議論をしている時に気になっているところです。もっと肉付けしなきゃいけないと思います。
【永宮J-PARCセンター長】
ATACという加速器のアクチュエータのテクニカルコミッティーからも言われましたし、昨日の国際諮問委員会(IAC)からも言われたことは、上流部から下流部に至るまで一貫して動くべきであると。したがって、やはり1人の人が全組織を見るような、そういう調整システムを作っていかなければいけないという非常に強い国際的な委員会からの要求があるのです。これは両機関がセパレートしたままでやれるわけではないので、どういうやり方が一番いいのかというのは、今のJ-PARCセンターが一番いいかどうか、まずいところ、いいところを議論していただかないと難しいと思います。
【西村委員】
前回いろいろお話を聞かせていただいたときにコメントを入れたと思うのですけれども、母体になる2つの組織の重要性というのは、それはそれで非常に大切なことだと思うのですけれども、組織論として、やはり一本筋を通さないといけないと思います。
【井上(明)主査】
今の点、J-PARCセンター等の位置づけ、両機関に対してJ-PARCセンターが将来的に独立するような方向を目指していくのかどうかというようなことも含めまして、これは第1回目から議論になってきている点だと思います。このあたり、特にどの方針に沿ってこの作業部会として報告を出すか、ここは非常に重要だと思います。
ただ、一方では、今の時点においてJ-PARCが独立するような方向性を明確に打ち出したりしますと、両機関からの援助・支援等において、いろいろ問題もあるというようにも見受けられますし、ユーザーや各分野がいかに活力を持って成果を上げていくかがJ-PARCの独立に基づいているのだとしますと、それを早く打ち出し過ぎて利用者が困るということになってもいけないのだと思われますので、さらに議論を重ねて行く必要があろうと思います。この点につきましては、いろいろな角度から、例えば運営会議の議長をJ-PARCセンター長がするとかいうことによっても大分違ってくるのかもしれないとも思われます。そこが最高議決機関であればということだと思いますし、そこの運営会議のメンバーに両機関の機構長が入ってくるという形でもかなり独立的な意味合いが出てくるのかもしれないですが、そのあたりも含めまして、今後議論していかなければならないと思います。
本日は、大体議論の時間も予定どおり取れたと思っております。今日は特にユーザー側から、それぞれの立場で4人の先生方にお越しいただきまして、それぞれ数点のポイントに絞って要望をいただいたということで、これも今後の議論の参考にさせていただきまして、この分野の活力がさらに高まるような報告を出すために、この作業部会としては頑張っていきたいと思っております。また、4人の先生方におかれましては、今後もいろいろと作業部会の方から御意見を伺うこともあるかと思いますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。
―了―