国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」に対するCSTP評価における指摘事項への対応状況

1．計画について

• 平成15年6月のエビアンG8サミットやこれを契機として開催された地球観測サミットにおいて、地球温暖化による砂漠化の急速な進展、水資源の不足、自然災害による被害などの危機を回避するために、地球規模の諸現象について正確かつ広範な規模で観測情報を取得し、流通させる必要性が指摘。このため、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」のうちデータ統合・解析システムの研究開発は、地球観測分野を他分野（災害監視及び資源探査）より先行して実施。
• 海洋地球観測探査システムの一体的な研究開発の推進のため、衛星観測監視システム、次世代海洋探査技術及びデータ統合・解析システムの各分野に共通の推進計画として「国家基幹技術『海洋地球観測探査システム』実施戦略」を策定。
• 加えて、最終意思決定機関として、文部科学省、宇宙航空研究開発機構（JAXA（ジャクサ））、海洋研究開発機構（JAMSTEC）及び東京大学からなる海洋地球観測探査システム推進本部を設置。ご指摘を踏まえ、推進本部を更に活発に開催することとしており、これまでに各分野の取り組みを共有する勉強会などを開催。

• 現在、データ統合・解析システムの実施主体である東京大学、JAMSTEC及びJAXA（ジャクサ）の共同チームが中心となって、索引データ翻訳辞書作成技術、高速検索抽出技術などの高度情報処理技術を応用してデータの相互流通性を確保したシステムを開発中。
• また、国立環境研究所、国土交通省、農業・食品産業技術総合研究機構をはじめとしたユーザー機関との協力を得て、ユーザーにとって画期的な高度解析・情報提供をするための機能の開発が進められている。
• なお、平成18年度から22年度までの5年間にシステムのプロトタイプが構築されることとなっている。具体的な実施計画は別紙のとおり。

• 災害監視及び資源探査の分野については、これまでにデータを蓄積している機関、データの統合・解析を行うことが想定される機関として、産業総合技術研究所、JAMSTEC、防災科学技術研究所などをピックアップし、推進本部を中心に関係機関と具体的な工程表の作成に向けた検討を既に開始。
• 今後、関係機関とのネットワークを更に広げつつ、これらの分野のデータ統合・解析の実現を図る。

2．体制について

• これまでも毎月1回以上の頻度で本部会合を開催しており、今後とも海洋地球観測探査システム推進本部の主導性を保ちつつ、会合を開催する予定。
• 具体的な取り組み例としては、指摘事項3にある、2分野の工程表作成、進捗管理などについて、研究開発の初期段階から積極的に関わり主導性を発揮することとしている。

• 現在、準備中である「フォーラム」（11月頃開催予定）において、水資源管理等の分野の研究者の出席を求めるとともに、海洋地球観測探査システム推進本部においても、これらの研究者からの意見聴取を実施する予定。
• 加えて、既にJAXA（ジャクサ）、JAMSTEC及び東京大学の各研究開発実施機関においては、ユーザーの意見を踏まえつつ研究開発を行う体制を構築（例：温室効果ガス観測技術衛星（GOSAT）開発推進協議会（JAXA（ジャクサ））、次世代海洋探査技術利用調査委員会（JAMSTEC）など）しており、これらを着実に運用。
• 資源探査の分野においては、大陸棚画定調査や共同研究を通じてJAMSTECとJOGMECや産総研との情報交換、データ共有等を行っており、引き続き連携・協力の強化を図る。
• 災害監視の分野においては、次期災害監視衛星に関し、文部科学省が内閣府防災担当と協力して「防災のための地球観測衛星等の利用に関する検討会」を設置し、防災ユーザーである13関係府省庁から衛星に期待される災害監視ニーズを把握。また、陸域観測技術衛星「だいち」を利用した防災利用実証実験により観測データの実効性向上を検証することとしており、今後は当該ニーズを真摯に踏まえつつ、実証実験の結果を反映した衛星開発を行う予定。
• 推進本部においては、以上の取組みによるニーズの把握を行いつつ、全体のシステム構築に当たっていく。

• 地球温暖化、水循環、生態系の3項目については、既に国立環境研究所、国土交通省、農林水産省、農業・食品産業技術総合研究機構をはじめとしたユーザー機関の参画が計画されており、更に多くのユーザー機関の参画を得ることとしている。これらの機関との協力によって観測データや解析結果を幅広いユーザーにできる限り使いやすい形で提供するための仕組みの構築を図り、成果の国民への迅速な還元を実施する。
• 具体的には、データ統合・解析の結果として、例えば、河川の水系に設置されている複数のダムの最適な事前放水や貯水管理情報を提供することによって洪水被害を最小化し、かつ、水利用の最大化などを図る。また、農業生産については、種まき日の決定、最適な施肥時期・量の決定、収穫日の決定を最適化するための情報を提供して生産性の大幅な向上などを図る。このように、国民の生活に直結する情報の提供によって国民への成果の還元を迅速に行う。
• また、災害監視、資源探査の分野については、指摘事項3．の説明で述べたように、産業技術総合研究所などのデータを蓄積している機関やデータ統合・解析が行われる研究機関との間で解析結果やデータベースの共有・公開する仕組みの構築に向けた検討を既に開始。

• GEOSS10年実施計画に基づき、データ統合・解析システムなどを通じてデータの国際的な相互運用を推進。
• 現在、本国家基幹技術の推進により開発された観測機器及び統合・解析されたデータを活用しつつ、アジア・オセアニア地域における防災減災を実現するためのデータ共有のシステム「センチネル・アジア」の構築をアジア各国と協力して進めているところであり、また、太平洋津波警報センタ（PTWC）と気象庁を通じ情報交換を行っているところ。
• また、災害時に衛星データを提供する国際的な枠組み「国際災害チャータ」に参加し、これまでに、チャータの枠組みあるいは二国間の協力関係を通じ、フィリピン、インドネシア及びタイで発生した5件の自然災害について「だいち」が観測したデータを提供。

• ご指摘を踏まえ、研究開発の進捗を踏まえつつ、評価を実施する組織である地球観測に係る国家基幹技術検討作業部会の構成員を加除する予定。

3．運営について

• これまでも毎月1回以上の頻度で海洋地球観測探査システム推進本部会合を開催しており、今後とも本推進本部の主導性を保つとともに縦割りの弊害を極力廃し、関係者の意識改革を図りつつ会合を開催する予定。これまでも、各分野の取り組みを共有する勉強会を開催するなど、全体として一体となった運営に努めている。
• JAXA（ジャクサ）、JAMSTEC及び東京大学の各研究開発実施機関においては、分野を横断した連絡・調整を図りながら研究開発に取り組んでいる。