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ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成29年11月29日(水曜日)15時00分~17時30分

2.場所

3F2特別会議室

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料分野を取り巻く状況について
  2. その他

4.議事録

【中山主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより第3回ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、ナノテクノロジー・材料分野を取り巻く状況に関してディスカッションするということで、三菱総合研究所の亀井信一研究理事、住友商事グローバルリサーチ・田上英樹部長、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社・木場祥介CIO、関西学院大学・田中裕久教授にお越しいただきました。積極的に御議論いただければと思います。

 早速ですが、事務局より委員の出欠及び資料の確認等、お願いいたします。

【丹羽専門職】  事務局です。本日は、井上委員、染谷委員、高梨委員、館林委員、中嶋委員が御欠席となっております。

 本日は、議事次第にもありますとおり4名の有識者の方々より御発表いただく予定です。配付資料に欠落がありましたらお知らせください。よろしくお願いいたします。

【中山主査】  それでは、議事1に入ります。亀井理事、田上部長、木場CIO、田中教授の順に御発表いただこうと考えております。それぞれの御発表後に5分程度、ここは臨機応変に行きたいと思いますが、質疑応答の時間を設けさせていただきます。また、3件のプレゼンが終わった後、まとめてディスカッションの時間を取らせていただこうと思います。

 本日は、有識者の皆様方からのプレゼンを踏まえ、材料分野のマクロトレンドを委員の皆様につかんでいただき、将来のこの分野の研究開発の方向性について議論をしていく、あるいは今後の資料とさせていただくということで進めさせていただきます。

 ではまず初めに、三菱総合研究所・亀井信一様より御発表をよろしくお願いいたします。

【亀井信一先生】  中山さん、どうもありがとうございます。三菱総合研究所研究理事の亀井です。本日は話題提供ということで、「マテリアル革命-未来を拓く「知材」革命の底力-」の話をさせていただきます。三菱総研自体が未来志向ということで、未来社会提言研究というものを年2本、億単位とは言わないんですけど、それに近い費用を掛けて行っています。それでまとまったものの一つが、この『マテリアル革命』という本で、こちらを簡単に紹介させていただきます。ここではあえてそこに至った背景を少し御紹介させていただきたいと思います。

 まずはあえてこの図から行きますが、この方、御存じの方はなかなかいらっしゃらないかもしれませんが、Wayne Gretzkyという、実は私と同い年の方でありまして、ここに書いてある言葉は、皆さん、何らかの形で聞いたことがあるのではないかと思います。彼はアイスホッケーの神様と言われている人で、「今、パックがあるところに行くのではない。次にパックが行くであろうところに行くんだ」という言葉が、彼の名言として知られております。

 我々が特に未来を見据えて何かものを興すときの、ここは非常に重要なタームじゃないかなと思っております。シンクタンクの研究員のある意味、責任者として常にこれを見える化する。例えばデジタルイノベーション流行というのは、今、AIやIoTなど、それは逆に言うと、今見えている未来なわけです。そこに関して論じても、ある意味で仕方ないだろうというぐらいに思っております。その背景にあるものは何か。更に言うと、その次にパックが動くであろうところを見るというのが我々の本当の仕事だろうなというふうに思っております。それで、この言葉は、もしかすると、この人が言ったと思っている日本人が結構いるんですけれども、スティーブ・ジョブズもこういう考え方で、よく引用していたかと思います。

 それでは、まずマテリアルに関する認識なんですけれども、実は主査の中山さんの師匠が常々おっしゃっていた話で、日本というのは資源やエネルギーが自活できない非常に不安定な先進国だと。数年前の数字ですけれども、例えば石油で27兆円、食料品で7兆円、原材料で5兆円、要するに、40兆円を海外から輸入しないとやっていけない、たちまち立ち行かなくなる非常に不安定な国であると。

 では逆に、輸出は何かというふうに見ると、工業素材というものを化学製品と原料別製品と見ると、2009年から14年まで輸出品のトップだったんですね。やっぱりこれほど重要である。最近ひっくり返っているのは、実は部材として、例えば電池の部材として輸入すれば、それは部材だけども、組み立ててプリウスの中に入れて輸出すれば、輸出用機械になると、こういう形で出てきております。

 それで、我々がマテリアルというものを定義するときには、僕自身は実は物理化学の人間なので、通常は分子や材料ですけれども、あえてレイヤーでいうと、「素材」や「部材」、「最終製品」に近いところまで含めて、あえてマテリアルと定義した方がいいであろうと思います。

 先ほどから言っておりますけれども、我々リアルな世界で動いていますので、今、デジタルイノベーション流行でありますけれども、それに対するアンチテーゼとして、バーチャルなデジタル技術に対抗するリアルなものとして、マテリアルというものをあえて再定義してみませんかという、こういう提言を行っている。

 三菱総研がこういう未来予測をして、その産業波及を考えるとき、一つの定型があります。まずは社会課題から世の中を解きほぐしましょう。その社会課題の解決に向けた当該分野の方向性を示して、それを実現するためのシナリオを具体的に解いていきましょうと。これはある一定のフォーマットで出てきています。マテリアルが変える未来社会というと、例えばエネルギーでいえば、今申し上げたように、一番の問題というのは、資源が自立できていないということなわけです。40兆円という外貨が流れていってしまっている。これをどうするんですか。全く持続的じゃないですと。それに対する解決、プロブレムとソリューションの前で解決するシナリオです。例えば再生可能エネルギーの比率を高めるという方向性があるのではないですかと。

 そうすると、何が問題かというと、前に出てきていますけれども、化石燃料の輸入額が非常に増えて、貿易収支を圧迫しております。材料によるイノベーションで、例えば今年はノーベル賞をとれなかったですけれども、ペロブスカイト型太陽電池などいろいろなタイプのマテリアルの研究開発が進んで、再エネ社会になるでしょうと。今のシナリオでも2030年には4分の1が再生可能エネルギーですし、我々大胆に2050年、私が90歳ぐらいになっている頃には100%に近い数字が可能ではないかなということを提案しております。具体的なシナリオというのは研究の中で説いております。

 同じようにして、例えば自動車に関しても、今の社会課題から2つの方向性、1つは、明らかにEV化が進みますよねと。なぜそれが実現できるのかというところで、例えば後で詳しい話がいろいろ出てくるかもしれませんが、車の重量が半分になって、電池容量が倍になれば、これは爆発的に普及します。それに向けた研究開発も進んでいる。

 自動車というのは軽くすればいいと思うんですけど、実は自動車というのは年々重くなっているんですね。これは理由があって、一番重くなる理由の一つは安全性を確保するためです。安全性を確保して、なおかつ軽くするというところこそ、やっぱりマテリアルの出番ですよね。EV化が進むと、そのエネルギー自体が再生エネルギーから来るという、そういうシナリオを持っています。持続的な社会に出てくるでしょうということで、そのマーケットも我々は4兆円程度と見込んでいる。

 これと全く毛色を変えたものが建物・住宅・インフラ分野。大体、耐久消費財というと住宅か自動車という話になるんでしょうが、ここではマテリアルというと、何か先端材料、何か新しい機能を持つというふうに捉えがちなんですけれども、そうではなくて、実は日本にある大きな資源の一つは森林なんですね。よく人間は老齢化していると言われますけれども、山も老齢化している。どんどん森林資源としては蓄積していっている。使われないままですね。それを有効活用しましょうと。

 実は木材の最大の欠点は燃えるということなんです。けれども、3時間、火に耐えれば、建築基準法上はどこでも使っていいという、そういうルールになっている。この夏に初めて3時間耐火の認証を得られる材料ができました。ですから、どんどん木材を使うことが法律的に可能になると。これからは森林も含めてバリューチェーンを組むことができるようになってくるのではないかなということです。

 もう一つ、これはマテリアルと言うと、えらい怒られる人がいるんですけども、もう一つはやっぱり医療分野、バイオの分野で、これもどんどん進んでおります。何が問題かというのは、ここは厚労省さんのデータを見るまでもなく、平均寿命というのはどんどん延びていっております。これはもう皆さん御案内のとおりですけども、我々のボディをマテリアルの集積体と考えると、その集積体自身の寿命が延びていっているというわけではありません。骨もどんどん耐用年数が延びていっているかというと、そんなわけないわけです。では何が起こるかというと、人体のパーツの耐用年数と平均寿命の間のギャップは開く一方なわけです。どうなるんですか。まあ、寝たきりになるでしょうと、こうなるわけです。そうすると、今、三次元の精密なCTスキャナ技術で、例えば私の体の精密な構造データ、設計データというのを得ることができます。それに基づいて、例えば3Dプリンターでいろんマテリアルも使えるようになってきているので、もうあらかじめ私の代替パーツというのを作るということができます。そうすると、右下に書いていますけども、よく自動車の耐久レースというのは、スタートしたときとゴールしたときでどんどん部品を変えながら完走すると、エンジンまで取り換えたりすると最後はシャーシぐらいしか残ってないのかもしれないですけども、そういうふうになるのではないか。

 それで、何が言いたいかということなんですけども、先ほど言いましたけども、未来を読むときにはある一定の非常に大きなプリンシプルが重要だと思っています。我々は、これはやっぱり日本の根本的な問題としては、高齢化という問題はもちろんありますが、もう一つは、資源・エネルギー制約というものが非常に大きくのし掛かってくるでしょうと。今申し上げたとおり、全てのシナリオに対して、資源・エネルギー制約から解放されるというところを目指したい。そこにはマテリアルの大きな寄与がありそうだというのが我々の主張であります。

 何か事を起こそうと思うと、産業論で見ると、やっぱり資源・エネルギー制約になる。一時、レアアース、レアマテリアルが閉められたらいきなり困ってしまう。そういう状況から解放されるという大目標を持つべきではないですかと。その点に対しては、マテリアルの果たす役割というのは非常に大きいだろうというふうに考えております。

 もう一つ重要な論点があって、実は我々の研究の一番大きな柱に結果的になったんですけれども、材料の研究開発のやり方がかなり大きく変わってくるでしょうと。これはここにいらっしゃる皆さん御案内のように、インフォマティクスが随分入ってきています。変な話ですけと、世界中からマテリアルズ・インフォマティクスの関係者というのはなぜか三菱総研に来るんですね。なぜかというと利害関係がないからなんです。あと、守秘義務という契約というものの重みを十分に理解している集団だということが理解されているからだと思います。こうなってくると、申し上げるまでもなく、マテリアルやナノテクは、日本が強いという。それはいつまで続くんですかというふうになるわけです。

 ところが、もう一つの見方として、物事を三元論で語ろうと。ハード、ソフト、データ。ソフトというのは、これはアルゴリズムのことで、例えば情報分野に関して見ると、例えばグーグルでもいいですけども、アルゴリズムとデータを押さえたらやっぱり勝つんですね。手術ロボットでも、手術のマニュアルとデータを押さえたところが勝つ。ところが、世界中から来る、マテリアルの特にインフォマティクスの関係者、彼らが認めているのは、マテリアルに関しては、日本がデータを確実に持っているということを彼らは十分に理解しているわけです。そうすると、ハードと、これは製造のプロセスも含めてですね。それとデータの3つのうち2極を持っているというのが、マテリアルがバイオや情報分野と決定的に違うところであるわけです。要するに、3つのうち、大体2つ持っていたら、ちゃんとやれば勝てるはずなんですね。ちゃんとやれば。というところがあって、ではどうやって勝っていくんでしょうかというところは本によく書いてあります。

 それで、ここまでは表のストーリーなんですが、簡単に、では更にその次に何が起こるのかということに関して、最後に少しお話しさせていただきたいなと思います。明らかに、物の重心が変化しているというのが世の中の流れだと思います。AtomからBitへと。これはよく言われるのは、ではその次、どこに行くんですかと。これはAtomからBitへの世界というのがゲーム・チェンジ1.0。だから、もう物なんて、特にエレクトロニクス製品というのは単なる情報を取る端末であればいいと、張りぼてでいいというふうによくアメリカの人と議論すると出るんですけど、本当にそうですか、その次はどうなるんですかということです。

 それで、物事を更に見通すためにはいろんなものがつながっていくということや実体があって、初めて価値が出るということが非常に重要である。あえてAtomからBitというのをゲーム・チェンジと、これはよく使いますけども、あえて我々は1.0と。2.0というのを読むというのが我々の本当の仕事だろうなと考えています。

 例えばデジタルイノベーションの本場で何が起こっているかというと、横軸、これは時間軸で、縦軸が、何でもいいんですけど、ある進歩だとします。青がいわゆるハード。赤、点々がソフト、いわゆるアルゴリズムを含めて示しています。初めはゴードン・ムーアの法則で、縦軸が対数ですので、直線上にずっとハードが進化してきたものが、今のAI、ディープラーニングも含めて、非常に急速にソフト、アルゴリズムが進化してきた。今、何が起こっているかというと、データアルゴリズムが全てであって、ハードはそれを取るための端末でいいんだよと、張りぼてでいいんだ、安価製品でいいんだよという世の中になってきたので、そこに頼ってきた日本のエレクトロニクス産業が凋落してきたというのは、ここで、それはゲーム・チェンジ1.0なんです。

 ところが、今、何が起こっているかというと、更にその次に行こうと。例えばトリリオンセンサーズの構想を実現したい。また、私はfitbitを使っていますけど、私の親父も糖尿病でしたしし、祖父は高血圧なんです。これはどう考えたって、糖尿病と血圧値を常にモニターしたいなと思うわけです。それを実現できるデバイスマテリアルがないという状況になっているわけです。全体の進歩を、ハードが実は足を引っ張ってくる領域が出てきている。ですから、その次にハードの進化というものが進んでいくであろうというふうに考える。主役が明らかに入れ替わっています。

 その後、何をすべきだというのはもうどんどん飛ばします。もう一つは、やるためには、こういう会議では何をやるかというのを議論してほしくないなというふうに思います。どうやるかの方がはるかに重要です。例えばドイツの例を、まあ、海外ばかり出すと怒られるかもしれないですが。ドイツをよく見ていただきたい。やっぱり彼らは人を通じてIndustrie4.0を首相以下、一丸となって牽引している。主役が非常に輻輳しているわけです。産学というところで間に入る機関があって、真の主役を取っている。あと、時間軸で見ると、アメリカのやり方が非常におもしろいなと思うのは、やっぱりちょっと先を見ているし、そこを担当する大学が十分に機能している。

 あともう一つ、マネジメントと研究を明らかに分けているというやり方をしているのがアメリカのすごいところだと思います。これは世界最大のというか、最大規模のナノテクセンター。オークリッジ・ナショナル・ラボラトリーですけど、これは右上の字に何て書いてあるかというと、左上の赤で書いてあるように、「Oak Ridge National Laboratory managed by UT-Battelle for the U.S.DOE」と書いてあるわけです。これは例えば「産業技術研究所 managed by 東京大学&三菱総研 for 経済産業省」と書いてあるわけです。研究成果が出ないのは、研究者が悪いんじゃなくて、マネジメントが悪いんだと。プロ野球でもサッカー選手でもチームが低迷すると、選手の首を切るわけじゃないわけですというようなやり方をしています。

 いずれにせよ、今、研究の本質的な存在意義が問われているんだろうなと思います。そのときに考えていただきたいのは、ゲーム・チェンジ1.0、今まさに起ころうとしているところを議論するのではなくて、時間スケールでいうと、あえて言えば、ゲーム・チェンジ2.0を見据える必要があるんじゃないですかと。もう一つは、主役を限定していたら絶対に新しい機会は出てこないというふうに思っております。

 時間ですので、是非そういう意味では、俯瞰した視野に立って、ナノテク材料戦略を検討していただきたいなと思います。どうもありがとうございました。

【中山主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、今の内容に関する御質問、御議論等、よろしくお願いいたします。

【関委員】  今お話ししていただいた最後の内容で、例えばドイツのような国だと、大学と産業の間に立つような機関があるというお話をされていて、ただ、日本にもそういう役割を期待されている機関というのはもちろんあると思うんですけれども、仮にそのドイツがうまくいっていて、日本が余りうまくいっていないという状況があった場合に、日本において具体的にその間に立つ機関に何が欠けているとお考えでしょうか。

【亀井信一先生】  議事録に残りますが、あえてこういう場だから言えば、やはり機能していないんだと思います。機能していないというのは、間に立つ機関に所属するということがそもそも間違いで、本当に産と学を行き渡らせようと思うと、人が行き来するしかないと思います。本当の意味で流動性を高める。技術移転というと、何か技術があって、それを、あなた、どうぞというのはあり得ないと思っています。その人が中心になって渡っていくことが重要。

 例えばドイツの場合、連邦国家ですので、各地方地方にある意味、一流の研究機関と大学がある。産業も分散している。その中を、例えばある人は、あるところでは拠点研究所で活動しているし、あるときは企業でやっている。完全に人が輻輳化しているんです。プルーラルな役割を担っていると。同じようなことは、フラウンホーファーもある意味でそうで、全員やっぱりプロフェッサーと所長はを任していますね。やっぱり輻輳しています。何か大学、間に立っているところ、企業というところで、人は完全にばらばらというのは、うまくいくわけがないと僕は思っています。

【関委員】  人材が行き来できるような。

【亀井信一先生】  行き来できるし、1人の人が2つないし3つの役割を担っていると。

【中山主査】  その他ございますでしょうか。

【早川委員】  早川と申します。最後おっしゃっていた研究の存在意義というところは非常に同感するところがありまして、その前に何をやるかじゃなくて、どうやるかというふうにおっしゃっていて、基本的に研究というのはどのように変わっていくものでしょうか。要は、総研さんみたいにコンサルをやって、開発にフィードバックを掛けていくのか、この先、特にマテリアルというのは十分豊富になって、豊かな世界を創ってきている。では次に何をやるかじゃなくて、どうやるかというときに、研究というのは本当にこの先どういう立ち位置でやればいいかという御意見がもしあれば教えていただきたいなと。

【亀井信一先生】  非常に難しい質問で、あえて言うなら、一人一人の研究者に対して「何をやるのか」は重要でないと言うつもりは全くありません。それは一人一人の研究者からすると、何をやるかというのが一番重要な話だと思うんですけども、僕が言いたかったのは、国の戦略として何かをやるときに、どこをやりましょうかという議論よりもはるかに、どうやるべきかというその実行のセグメンテーションなどの構造というような戦略を練る方が重要だろうと考えております。

 例えば、DOEで言えば、彼らがうまいのは、研究をマネジメントするシステムをイノベーションしたわけですね。なぜそういうことを言うかというと、やっぱり研究テーマとか、本当に国に対して重要なことというのはどんどん変わっていくと思うんですね。特にビジネス、産業界の方はよく分かると思うんですけれども、去年立てたから同じことをやり通そうというのがうまくいかないケースというのはいっぱいあるわけです。研究もなおさらうまくいかないということがあったときに、何が重要かというと、うまくそれを補正するようなそういうマネジメントが非常に重要ではないかということを主張したかったんです。

【早川委員】  ありがとうございます。

【中山主査】  その他ございますでしょうか。では、一杉先生、上杉先生の順で。

【一杉委員】  一杉といいます。日本の強みでマテリアルのところ、ハードとデータというところがあります。ハードの方は少しイメージができませんでした。どのようなものをマテリアル分野のハードウエアとおっしゃっているのでしょうか。

【亀井信一先生】  今いろいろ議論はあると思うんですけど、例えば物を製造する、プロセスする機械や実際に出来上がったもの。本当に「ブツ」という意味で、ただ、幅広い意味で、ハードウエアに関する強さはあるだろうなというふうに思います。

【一杉委員】  それは製造装置をおっしゃっているのでしょうか。

【亀井信一先生】  それだけを指しているものではありませんが、今、当然それがどんどん流れていっているということは、十分理解した上で、でも、あるところではやはりプロセスという意味でも、製造装置。あともう一つ、広い意味でプロセス自体はやっぱり日本に強みがあるだろうと。

【一杉委員】  様々な材料をすり合わせする技術ですとか、そのような技術がもともと日本人が長けていることがあります。そのような日本人の特質を含めてハードウエアとおっしゃっていると理解して良いでしょうか。

【亀井信一先生】  そういうふうに理解した方がいいと思います。

【一杉委員】  分かりました。ありがとうございます。

【中山主査】  上杉先生。

【上杉委員】  非常に話がおもしろくて、楽しませていただきました。私は研究の仕方というのは2種類あると思うんです。一つは、おっしゃられたように、20年先やもっと先を見越して、そこをやっていく方法。例で言えば、パックが行こうとしているところに行くと。もう一つは、パソコンを作られたアラン・ケイという人がいるんですけれども、彼が言っていた方法です。未来を予測する一番いい方法は未来を創ることだということです。さっきのパックの例で行けば、自分でそこにパックを打つんですね。未来を自分でつくるのです。この2つのやり方の両方を、我々はしなければいけないんだろうと思うんです。今回のお話は、未来を予測してその未来に必要なものをやろうという考え方でした。もう一つの考え方では、ゲーム・チェンジするそのものを自分で作ってしまいます。このゲーム・チェンジするそのものを自分で作ってしまおうとする場合、どういうふうにやればいいのでしょうか。御意見があれば。

【亀井信一先生】  繰り返しになるかと思うんですけれども、ゲーム・チェンジを起こさせようというときは先ほど話させていただいたマネジメントのやり方を変えない限り、うまくいかない。先ほどの2種類あるというのは非常によく分かりし、我々も、今日用意してないんですけど、未来予測の話をすると、未来予測というのは単に予測するんじゃなくて、それを創るというのが本質、もう一つなんだというのはありますけ。しかし、やり方そのものを変えないとだめだろうなと、一つ、必要条件として。

 あとは、やはり一歩先を読むということではないかと。2.0に関して言うと、一歩先を読むこと。ゲーム・チェンジを起こさせようというのは、西洋人の方はどうしてもうまいと思うんです。ビジネスの世界で言うと、例えば彼らは本当にもうけるところというのを広く俯瞰して、その先を見ているんですね。

 完全に余談になりますけれども、自動車というものがありますよね。自動車でもうけたのは自動車産業じゃないというふうに言われています。2番目にもうけたのは石油産業。1番目にもうけたのは保険産業。いずれもどこが押さえているかというのは分かりますよね。彼らをもうけさせるために世界に広くあまねくいい品質のものを安価に作ってくれる民族がいれば、そこにお任せしようと、今こういう考え方なんです。ところが、やっぱりそのような俯瞰をしていて、その先にどう作るか。EVになって、石油を使いませんよ、絶対に衝突しませんよというと、初めてプレーヤーが変わるわけですね。そのぐらいのグランドデザインを持つということも重要じゃないかなと思います。今の話はここの場と完全に離れますけれども。

【中山主査】  ありがとうございました。 次は、渡慶次先生、林先生の順で。

【渡慶次委員】  大変おもしろいお話、ありがとうございました。幾つかのところで、マネジメントが重要ということは何となく理解できたんですけれども、今、最後の方に出てきたオークリッジの例で、成果が上がらないのはマネジメントが悪いというふうに書いてあったんですけれども、今これは、私は大学に勤めているので、大学人としてマネジメントをよくするためには具体的にどういうことをすればよいというようなコメントがありましたら教えてください。

【亀井信一先生】  例えばオークリッジ、これはエネルギー省系の国立研究所で、マネジメントを公募します。例えば来期を提案すると、所長は誰々さんです、研究部を例えば5つ置きます。それぞれの部長は誰々さんですというふうに。とにかくそういうところから。それで、重点分野はこれです、予算はこれに掛けますというプロポーザルを受けて、一番いいところが採択される。

 では、今日まで所長だった人は次の期、どうするんですかというと、全員、首ですというようなやり方をする。一番いい、最良だと考えられるマネジメントをしていくという。だから、ドラスチックに変わります。それでは、受付の方や、掃除する人はどうするかというと、その人はバッジが、例えばオークリッジで言うと、ロッキードからバテルに変わったんですけれども、そうすると、バッジのマークがロッキードのマークからバテルのマークになるだけだと。

【林委員】  おもしろい話、どうもありがとうございました。私、NEDOに所属しております林と申します。今いただいたお話の中で、結構ドキッとしたのが研究成果が悪いのはマネジメントが悪いというところで、私も今、経産省の一つの事業のプロジェクトマネジャーをさせていただいているんですけれども、最近、自分が担当している事業だけではないんですけれども、割と成果を求めるというか、実用性を求めて、近視眼的なプロジェクトや事業が多いなと感じている中で、こういう文科省さんのような立場からできてくる事業や、支援していくべき時間スケールですね。非常に将来的に時間の長いものになってくると思うんですけれども、そういう時間的に遠い将来のもの。それから、経産省のように、少しまた実用性が高まってきたものという、違う時間軸でのマネジメントにおいて、どんな観点で気を付けながら、どこまで我慢して、柔軟性を持たせていくのかというところで、もしお考えがあればお願いします。

【亀井信一先生】  時間軸というものはやっぱりすごく重要なキーワードだと思います。ここにも書いたんですけれども、短期的な成果を本当に生もうと思えば、産業界が一番得意だと思うんです。ですから、国よりも、産業界に本当にやらせればいいんじゃないのかなと。むしろそこは逆に言うと、産業界からすると、その次のシーズと言ったらいいんですかね。それを出すということになってくると、やっぱり長期的な視点が必要であって、例えば10年というのはすごく微妙な線だと思うんですけれども、10年で社会実装しようというふうになると、やっぱり大学ないし公的機関の存在意義というのがあるのではないのかなというふうに思います。ですから、非常に短期的にしなければならないというのはよく分かるんですけれども、国のファンディングが本当にそれでいいんだろうかというような思いは持っております。

【林委員】  ありがとうございます。

【中山主査】  材料に話を戻します。次のパックのある場所を考えると、多分、AtomからBitへ行って、また次はハードの部分が主役、若しくは律速になるということかと思います。そのハードの部分を司っているのが材料であると。ポスト第四次産業革命を見据え、材料できっちりやっておくべきことを見つけ、そこに投資しなさいということですね。

【亀井信一先生】  まさにそのとおりです。

【中山主査】  この分野を支えてこられた亀井さんならではの、非常に示唆に富むお話だったと思います。また最後の議論で帰ってきたいと思います。ありがとうございました。

 続きまして、住友商事グローバルリサーチの田上様、よろしくお願いいたします。

【田上英樹先生】  お手元の資料で御説明させていただきます。私は、まず商社の人間でありまして、学者でも、シンクタンクの専門家ということでもないことを前置きさせて頂きます。住友商事で15年間リスクマネジメントの専門要員として従事し、その後の10年間を住友商事グローバルリサーチというシンクタンクにおいて、総合商社の個別のビジネスの分析の担当ということでやって来ました。

 なぜ私がこの「2050年の産業メガトレンド」という資料を作成したかということですが、住友商事が国内外で実施している様々な事業を、事業インサイダーの立場から調査分析し、住友商事社内にフィードバックするという仕事を10年担当してきました。いろんなところで、業界の構造はこうなっているのだ、そして将来はこうなって行くのではないかといったことを研究して来た中で、それぞれの業界が「将来こうなるのではないか?」という想像も段々とつくようになって来ました。そんな中で、社内からも、今後、それぞれの業界をどう見たら良いのか、メガトレンドと言われるが、それぞれの業界について、どの様に考えたら良いのかという問い合わせが多くなって来ました。そうしたニーズを踏まえ、また、一つ一つの業界についてのメガトレンドを作成する前段階として、大きな底流でのメガトレンドの分析を行うことにしたものです。作成目的は、社内の全社又はビジネスラインの長期戦略立案サポート資料という位置づけになります。

 ただ、元々社内向けに作成したものですが、特段隠すべきものでもないので公開しようということで、オープンソース的な発想で公開しまして、その結果色々な企業の経営企画部さん等からもディスカッションの要請も受けるようになりました。今回のお話もまさにその様な形で頂いたものです。

 この資料自体は、90分ぐらい掛けて御説明するものですが、15分と伺っておりますので、短めに説明したいと思います。最初の3つのマクロトレンドというところは、もう皆さん、重々ご承知と思いますので、いきなり10ページの方に跳びたいと思います。

 ここに「産業メガトレンドの全体像」という図表がございます。ここの真ん中に3大マクロトレンドとしまして、「人口増加」・「所得増加」・「都市化」を示しています。これは世界の人口が100億人に近づく中、どんどん各国の所得も上がってきて、且つ都市化率も、これは前のページで説明を記載しておりますが、どんどん上がっていきます。都市化は、先進国も例外でなく、更に上がって行くとの予想になっております。そうした中で、見て頂きたいのが、上に書いてある5つの箱です。エネルギー、鉱物資源、食料、水、インフラ、これらがどんどん不足していきます。これは即ち、「需給の変化」による観点です。これらを長期に安定して安価に供給して行く、これが世界にとってとても大切になるということです。

 一方で、線の下側の5つの箱を見て頂くと、温暖化、高齢化、IoT化、世界のフラット化、第三次産業化、ということが書いてあります。これはいずれも「構造的な変化」です。やや中長期的な目線で、多少時間がかかるが大きく変わってくる部分ではないかと考えております。 

 10個の箱の中にいろいろ小さい字でキーワードが書いてありますが、これは様々な業界を分析・研究していく中で、やはり今後この部分が重要になるのではないかという観点を散りばめたものになります。ただ、見ていただくと、もう既に相当前から実現しているものから、今まさに足元で話題になっているものまで混在した形になっています。

 この図表を作成してみて、いろいろ社内でも議論をして来た中で、結局、今我々は、上の「需給の変化」に対応するロジックについては、既に相当程度習熟しており、特に日本は加工貿易の国ですから、原料を調達・加工して輸出していくということは昔から得意科目としてやってきた、馴染の深い部分になります。これはこれでとても重要なので引き続きやって行けば良いのですが、下の方の温暖化、高齢化、IoT化、フラット化、第三次産業化、この辺が進んできますと、もしかしたら、大きな「構造の変化」が起こることによって、上側の鉱物資源やエネルギー等が今ほど要らなくなるかもしれない。食料も危機と言われて久しいですが、結局大丈夫になるかもしれない。こんな、今までは考えにくかったようなことが起こる可能性があるのでは?と思う様になって来ました。勿論、数年スパンではなく、数十年のスパンでの見方です。そして、もし下側の構造変化が極端に進むなら、上側の需給の事情も大幅に変わり、今迄通りの考え方ではビジネスもできなくなる可能性がある。これこそとても大きな、根幹を揺るがすパラダイムのシフトになるのだと考えました。 果たしてその構造の変化がどの様に進んでいくのか。これがポイントになりますが、この辺のことは、もうそれこそ日々新聞に情報が溢れている状況で、皆さんも情報だけでお腹がいっぱいとなっているのではないかと思います。ところが、これをより本質的なレベルで捉えないと、いい将来の予測はできない。それが現実ではないかと思います。では、どうするか。そこで考えたのが、「2050年に向けた産業メガトレンド」ということです。これは、実は、2050年になると必ずこうなりますという予測ではなくて、2050年に向けて、こういうことが流れとして起こっていきますというような形で、「世界観」という捉え方で、まとめることしました。そうしないと、議論する中で2050年の時点では、自分はそうなるとは思わないとか、そういった「思う・思わない」の蓋然性の議論になってしまいます。それを避ける為に、敢えて「世界観」という考え方で説明することにしたものです。

 この12ページのイメージは、現在、黄色い世界が、IoT/AIという「技術としての変化」がどんどん進んでいくと、シェアリング・エコノミーという「社会システムとしての変化」に波及・後押しし、これが相乗効果で更に進んだ結果、しまいには青い世界になってしまう、それくらいのインパクトがあるという世界観のイメージを示したものになります。

色々言われていますが、要すれば、注目すべき流れは二つに収斂します、それは、「IoT/AI」と「シェアリング・エコノミー」です。それが私の言いたいことのエッセンスになります。シンプルな方がお伝えし易いということもあり、いつも、こうして絞って議論をすることにしています。

 まずはIoT/AIです。13ページですね。ここは、皆さんも本当によく御存じだと思います。簡単に、我々がどう考えているかというのだけお話ししますと、ここの三角形の黒く塗り潰してある3点だけが目下のフォローポイントだと思っています。「デジタルデータ化」、これは複製自在になる、追加コストがゼロになるということで、ジェレミー・リフキンの「限界費用ゼロ社会」の発想ですね。そうすると、所有から使用へのシフトが進みまして、シェアリングが徹底されていきます。もう一つは「AIとディープラーニング」ですね。今までデータとして持っていたものをはるかに高度な形で分析して、実用的な役に立てるようにすると言うことです。

 実はこれらの中でも私が最も重要だと考えているのは、「センサーとログデータ」です。黄色い囲みで書いていますとおり、ログデータの持つ意味、自然現象や機器動作、事故メカニズム、人間の選択・判断というものを動的な、ダイナミックなデータとして可視化・分析していくことで、あらゆる場所で取られる多様なログデータを使って「予知、予防、レコメンド」と言ったことができるようになります。これはまさに「新しい価値の創出」であり、今ビジネス上でも最も注目されている部分だと思っています。

 それから、14ページ、15ページは、AIとシンギュラリティということで、よく言われていることですので、ちょっと割愛させていただきまして、16ページからが「シェアリング・エコノミー」の話になります。これも最近大きく注目されるようになって来ました。我々は今回、シェアリング・エコノミーとは何なのかという、本質についてを議論してみました。

 シェアリング・エコノミーというのは、一般的な定義としては、「遊休資産をインターネット上のプラットフォームを介して、個人間で売買、交換、シェアしていく新しい経済の動き」ということになります。

 ところが、「新しい経済の動き」と言うものの、シェアリングの本質は何かということを考えると、そもそも鉄道とかバスとか船舶、これもシェアリングじゃないでしょうかということになります。1人の人間がA地点からB地点まで移動するのに、わざわざ線路を引いて、鉄道を作って電力を通してということはありえません。ところが、実際には、それが大勢の人が移動する区間であれば、鉄道を引いても、運賃モデルで大勢から少しずつ回収すれば成り立ちます。それが公共インフラとして重要であれば、政府が公費で保有・メンテナンスをするということになるのだと思います。

 それから図書館。これも、本のシェアリングですね。古くはアレクサンドリアの図書館から存在しているわけです。また、最近メルカリ等で有名になっている中古品の売買ビジネスについても、これは蚤の市、それはもう太古の昔から行われていることかと思います。要するにシェアリング・エコノミーというのは何が新しいのかということになるわけです。最初に挙げた鉄道インフラの様なものは大変大きな物で、1人では作り切れないのを作ってシェアするという発想だったわけですが、昨今ではもう本当にどんな小さいものでも皆さん、シェアされています。こうなってきた原因は、IoTの進化にあると考えています。

 この赤い文字で示していますが、瞬時のニーズマッチング、今この町で、宅配便ですぐ送ってもらえる範囲で、誰が自分の求めているスペックのものを幾らで提供してくれるのか。これが瞬時に複数の候補から選べます。その出品者の信用度もレーティングですぐ分かります

 それから、代金決済をしようと思ったら、これもそこそこ一般の方が不安のない形で、フィンテックと言わないまでも、決済の手段が既に完備されています。こうしたニーズマッチングと決済機能という二点が整備された段階で、ここからはもう爆発的に拡大して行くと考えられるのではないでしょうか。実際に、日々新しい、今まで聞いたことなかったようなサービスが世の中に登場してきています。

 下段の「シェアリング・エコノミーの広がり」というところを見ていただくと、コンテンツレンタルから物品レンタル、物品のシェア、場所のシェア、移動手段のレンタル、移動サービス、それから、その他、まで、本当に色々な形でシェアリング・エコノミーが進展して来ているのが分かります。人材派遣とか、ノウハウシェアリング等も一つの形です。先日、ネットの広告で見かけたのは「おじさんレンタル」というビジネスで、普通の一般の方が、自分の時間やノウハウをネット上で売りに出すと言ったサービスでした。もう、そんなところまで進んできているのか、もうこの流れは止まらないのでは、というのが足元の雑感です。

 そのシェアリング・エコノミーを、製造業に関連付けてもう少し進めていくと、次の17ページのサーキュラー・エコノミーということになります。これも大分言われるようになってきた表現ですが、これは、大変重要な意味を持つと考えています。

 従来型の経済は、資源・エネルギーを大量に調達し、大量に製品を製造して、単価を下げる。それを大量に販売して、利用した人は、使い終わると大量に廃棄していくということになります。ところが、このダボス会議の下部機関で言われているサーキュラー・エコノミーという考え方の中では、現在の経済の仕組みの中には、大きな「4つの無駄」があると指摘しています。

 一つ目は、最初の大量調達のところで、後でリサイクル可能な資源を使っていますかということです。リサイクル可能素材なら、再生して何度も使えますが、そうでない物なら捨てなければならない。また新しく掘って調達する必要があるということです。そうすると、資源の枯渇の問題も出て来ます。実は、枯渇するかしないかというのは、経済性の問題なので、ある時にパタッと何も出て来なくなるのではなく、経済性に見合う分、開発が進む、ということかと思います。一般に鉱山開発というのは、一番最初は露天掘りで容易だったのかもしれませんが、どんどん深く、遠く、難易度の高い場所しかなくなって行き、最近では、山肌をこそげ落とした上でないと掘削ができないとか、掘削しても、純度が下がって採算が採りにくいとか、その鉱石の不要部分をズリと言いますがそれを埋め戻すための溝を大きく作って埋め戻すのに大変なコストがかかるとか、本当に大変なビジネスだと思います。更には、環境や生物多様性等で開発の事前アセスメントもどんどん厳しくなっていきますので、資源を掘り続けること自体が今後更に難しくなって行くのではないかという見方もあります。そうなってくると、逆にリサイクル可能なものにシフトして再生利用を繰り返すというのが自然の流れとして出てくるのではないかと思います。

 次に、キャパシティの無駄というのは、これも最近よく言われていますけれども、自動車は稼働率が5%と言われます。要は人や物を運んで役に立っている瞬間は5%しかなくて、あとは駐車場か路上に止まっているということです。この止まっている、使っていないところをお互いにシェアして使えるようにしたらどれだけ自動車を減らせますかということが言われています。

  それから、三つ目の無駄は、ライフサイクル価値の無駄ということで、特に、中古利用、二次利用が徹底されていないということになります。自動車等、二次市場があって立派に機能している業界もありますが、世の製品をあまねく考えた場合には、二次市場が幅広く存在し有効に機能している製品というのはむしろ少数派ではないかと思います。

 四つ目の無駄は、廃棄の無駄です。自動車だとか家電はリサイクルがかなり進んでいる業界かと思いますが、それ以外の製品では、まだ部品単位では十分に使えるものであっても、製品ごとスクラップにしてしまうことが行われているのではないかと思います。ところが、航空機や建設機械の分野ではかなりその部品を磨いて再生利用する流れも増えて来ていると思います。部品自体の再利用というのも一つ進んでいく流れと考えられます。

 それを18ページのところで、サーキュラー・エコノミーという形で、サーキュラーなので、ぐるっと丸めた絵にしてみました。灰色の線が大量に調達し、大量に廃棄する元々の線ですが、今後は、緑色の線で示した流れ、つまり、リサイクル可能な素材を入れるとか、大量利用した後に素材として再生する。部品としてリサイクルして製造現場に戻す。部品として修繕・再販して、販売の現場に戻す。製品自体をリサイクルして、二次市場を活性化させる、それから、シェアリング、Product as a Serviceということで、利用の現場で使い回す部分を増やすと、こういうようなことをやって、どんどん有効に使い回すことで、最後の廃棄の量自体を極限まで最小化して行くということが可能になるという考え方です。これがサーキュラー・エコノミーです。

 次の19ページは、先ほどのIoT/AIとシェアリング・サーキュラーエコノミーとの関係をもう一回捉え直して説明しています。IoT/AIが進むと、瞬時のニーズマッチング、信頼できる決済機能の普及で、シェアリングがどんどん進みます。そうすると、シェアすれば物は少なくて済むので、大量生産、大量廃棄の外部不経済を解決する方向に向かうと考えられます。昨今、世界中でSDGsとかマテリアリティという考え方が浸透してきていますけれども、これを本格的にビジネスセクターの方々が推し進めようと思い始めたのは、実はこのIoT/AIとサーキュラー・エコノミーの進展があるからなのではないかというふうに、私は考えています。昔は、エコロジーとエコノミーは相反する方向性だったものが、現在では、エコロジーとエコノミーが同じ方向を向く可能性が出てきているということではないかと思っています。

 20ページでは、「初めて実現するエコロジー重視の世界」と、若干挑戦的な表現を使っておりますが、従来、資本主義というのは環境保護とかエコロジーと必ずしも相性がよいものだとは思われていなかったと思います。要は、結局捨てることになっても、大量に作った方が安く市場に提供できるのであればそうするというのが資本主義の論理です。例えば日本では1日の1食分のカロリーをそのまま売れ残り・残飯等として捨てていると聞いたことがありますが、それが何故続いているのかと言えば、それはそうした方がむしろ安定的に安価に市場に商品を提供できるからだと思います。そこで無理にリサイクルをしようと思うと、かえってコストがかかって逆にサステナブルな取り組みにならないということも良く言われているかと思います。

 次に、21ページです。「シフトする付加価値への行方」ということで、これは「つくる」から「つかう」、というふうに付加価値の軸足がシフトするということです。自動車を例に挙げると、100台製造して販売するより、1万台製造して販売する方が、利益と言う観点では明らかに100倍以上もうかるはずです。これは製造業の論理ではそうなります。そのため、メーカーとしては、販売機会を最大化することが最高善であって、製品の最新型を次々に出し、それで自社の旧モデルが陳腐化することになっても、販売の機会の方をどんどん増やしていくということが求められていると考えられます。

 ところが、最近の世の中を見ていると、扱う自動車は100台のままで、この100台を最大限に使い回すことで、利益を稼ぐことのできる人たちが増えてきていると思います。グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック等の企業はそういった方向で、まさにビジネスを拡大していると思います。ウーバーやエアビーアンドビーもそういう流れだと思います。

 それに気付いた製造業自体もサービスモデルへの転換を志向し始めました。これは「売り切り」から「サービスモデル」、つまり「Product as a Service」へのシフトと言えます。例えば世界的な照明のメーカーでは、既に照明の機器や設備を売るだけではなく、その「照明をしている」ということ自体をバリューとして提供し、いなくなったら消えて省エネを図るとか、駐車場であれば空いているところにランプが付いて誘導するとかそういう付加価値まで含めて提供し、だから月額いくらで継続的に契約させてくださいと、そういう収益モデルに変化させてきています。今後、色々なメーカーで、「製品売り切り」から「月額サービスモデル」への一部転換を図るところが出てくると思われます。
では、こうした流れの先に何が来るかというと、製品については、やはり一部で残り続ける「個人所有向けの高スペック商品」は別として
、「シェアリング向けの汎用品」については、なるべく「長期連続使用に耐えること」がニーズになって来るのではないかと思います。また、「メンテナンスが容易なもの」に対するニーズも確実に増えるものと考えます。

 もう一つ重要な観点は、付加価値の源泉が、耐久消費財を「つくること」以上に、「利用度を上げること」に向かうということです。そのときにもうけるのは誰かという観点です。そして、こうした「利用度を上げるビジネス」については、GDPの計算の中でどうカウントされるかということもとても重要になると思います。シェアリング・エコノミーの根本である、「遊休であることに着目し、それを融通し合って少額のフィーを受け取るというビジネス」は、生活者としての皆さんも便利になり実際に世の中に価値を生んでいるわけですが、現在のGDPの算出の中では、全てがうまく反映しきれないのではないかとの考え方もあります。

 最後の22ページのところは、今までは二次産業が付加価値を作って世界に提供し、一次産業がその素材と言うボトルネックを押さえていたこと、それを三次産業のマスリテーラーが全世界の津々浦々に届けるというのが産業の大きな柱だったということを表しています。これに対して、環境保護団体というのは本当に小さな声でしかなかったものが、先ほどの新世代三次産業というのが出てきて、バリューを自分たちのところに引き寄せてくるようになると、「主役の新旧対決」ということになってくるのではないかと考えるようになりました。第三次産業についても、最近はeコマースがどんどん拡大して来ており、かなり小売の屋台骨のところまで浸透して来ています。また、この流れは、SDGs、環境保護の観点、外部不経済を減らすという観点でも共通しているため、今後、この部分は、非常に大きな力を持ってくるのではないかと想像しています。

  最後は、材料、ナノテクの関係での「材料分野への提言」ということで、サーキュラー・エコノミーの観点からお話をさせていただきます。これから何が起こるのかというのは先ほど御説明したとおりですが、まずは、「リサイクル可能素材へのシフト」が起こるのではないかと思います。それから、部品のレベルでもリサイクルが一般化してくることが想定されます。部品については、既に設計データのデジタル化、CAD/CAMの活用から3Dプリンターの活用まで一連の動きがあり、今後一層、部品の汎用化、標準化が世界的に進んで行くものと考えられます。部品は、どこででもだれでも作れる、そういう世界に移行して行く中で差別化をするには、もう本当に高度で他では決してまねできないような素材や技術の面でエッジを効かせていくしかないのではないかと思います。

 その中で、では、どちらの方にエッジを効かせていくかという観点ですが、やはり「再利用しやすい」とか、「長時間の連続使用に耐える」とか、「メンテナンスフリー」だとか、そういうことが重要ではないでしょうか。

これはあくまでも個人的な見解ですが、提言的に申せば、「高耐久性の素材」というものが有望ではないかと考えています。これは素材そのものが高耐久であるということに加え何か被覆材の様なものをコーティングして、その耐久性を高めるといったことも考えられるかと思います。

 例えばペイント会社が表面保護材を使って、ちょっと傷が付いても、自動的に準備された成分がジワッと浸出してきて、それが保護の機能を果たすとかそういうことも出て来ています。下に記載した「自己修復素材」とも関係しますが、こうした取り組みは、セラミックスだとかCFRPだとか電子回路だとか、研究レベルでは相当出てきていますし、実際に自動車の鋼板等でも、亜鉛メッキ鋼板等はそういう形で、メッキ鋼板の部分に傷がついても酸化する前にコーティングが作用してそれを修復・カバーする、元の耐久性を取り戻すと言ったことを聞きます。そういう機能性の素材というのが今後、注目されるのではないかと考える次第です。

 私の結論・提言としては、この材料分野で、日本企業としてのエッジを効かせていくには、サーキュラー・エコノミーの観点から、「メンテナンスフリー」というのが一つの大きな軸になるのではないかと考えております。ありがとうございました。

【中山主査】  どうもありがとうございました。

 我々は循環という言葉が大事ではないか思い、これまで議論してきたところです。例えばリサイクルや分離とか、種々の材料を有効利用していくとか、SDGsはそれを広範にカバーします。また、文部科学省の施策で元素戦略等もこれに非常に関連の深いところです。それに対して商社の方から、循環にフォーカスし、次の施策で大事なことを考えるための材料を得られたというのは非常に感謝いたしております。エッジを効かせていただきありがとうございます。

 御質問あるいは御議論等ございますでしょうか。林さん、どうぞ。

【林委員】  御発表ありがとうございました。このサーキュラー・エコノミーの考え方、私も去年からいろいろ勉強しているんですけれども、材料分野のようなところですと、やはりB to Bの製品になると思うんですが、サーキュラー・エコノミーを全体として取り組んでいこうと思うと、例えば静脈産業と動脈産業全体が同じ考え方になって動かないと、なかなか浸透していかないように思うんですけれども、そこを全体として動かすにはどうしたらいいか、お考えはありますでしょうか。

【田上英樹先生】  静脈産業という言葉なんですけれども、私も家電リサイクルの海外での現場でいろいろと調査したことがあって、静脈産業の問題、課題というのはやっぱり幾つかあると思うんですけれども、「入るを制することができない」というところなんですね。通常、工場操業というのは、自分で決めた量を決めた人員配置で、決めたようにやっていくと採算が取れるんですけれども、どれだけ、いつどこからどんなスペックのものが入ってくるか分からない中で、処理をして、工場として回していかなきゃならない。これは実は静脈産業だけで考えると、採算の採り方が中々難しい面があるということなんですね。

 逆に静脈産業の中でも、金属の端材をそのままリサイクルに回して、スペックが明確な物だけを溶かして、同じスペックで再生するみたいな形であればうまくいくっと思います。要は、製造者自身がリサイクルまで含めて責任持ってトータルマネージするつもりになればやりようはある、ということなのだと思います。

 そういう意味では、売り切りスタイルに終始するのではなく先ほどのProduct as a Serviceみたいなことを製造業が始めると、そもそも製品自体を売り切らないので、いつまでも自分の資産として持ち続け、最後のリサイクル迄自分で責任を負う可能性が出て来ますね。

 そうすると、トータルライフサイクルのコストで、メーカー側がきちんともうかる形で製品のリサイクル迄を考えるようになるのではないかと思います。そうなれば、静脈産業だけが切り離されて採算が採れない、ということも減ってくるのではないかと思います。

【中山主査】  他にございますか。渡慶次先生。

【渡慶次委員】  シェアリング・エコノミーやサーキュラー・エコノミー、限界費用ゼロ社会などそういうのを見ると、基本的に現在のマテリアル産業が大きくなっていくことというのはあり得ないような気がするんですけれども、今お話があったように、この新世代三次産業がどんどん大きくなっていって、今の一次、第二次産業というのはもう小さくなっていくという理解でいいんですか。

【田上英樹先生】  これを議論するときに忘れてはいけないのは、このシェアリングのマーケットが成立する所というのは本当のところ世界でどれだけあるのかという観点です。日本や先進国、また新興国でも都市部というのはどんどんこうした流れが進んでいくと思います。ただ、そうでない、シェアリングがそうは進まない所というのも世界にはいくらでもあるのではないかと思っています。シェアリングのマッチングには、一定の「マス」の存在が前提になると思います。ある一定規模の都市の中で、自分のニーズに沿った物が直ぐにマッチングでき、且つ、信頼できる決済手段が整備されていること、これが達成できない場所でまでシェアリングがどんどん進むかと言えば、それは何とも言えません。ただ、そういうシェアリングが進みにくい所でもどんどん人口が増え所得が上がって都市化が進んでという中では、今まで以上に大量の製品供給が必要になると思います。従って、都市部でのシェアリング拡大によるハードの減少と、新興・途上国、又は郊外部における新規のハードのニーズというのは、ある程度分けて考える必要があるのではないかと思っています。

【渡慶次委員】  ありがとうございました。

【中山主査】  では、先に生越先生、その後、近藤先生の順で。

【生越委員】  ありがとうございました。すごくお話を楽しく聞かせていただいたんですけれども、その社会に自分が入っていった状況を想像したときに、急にこの子がおなかを壊した、どこに行こうといったときに、シェアリングをしてということを日本人はすごく考えやすいと思うんですよ。何をするにしても、方向をそこに持っていこうと思ったら、そこにいる人たちの意識や気持ちが、かなり一つの方向を向いて意識を高めていくことに抵抗のないグループでのみしか成り立たない話ですよね。だから、そこの部分はどういうふうに盛り込まれているのかというの教えていただければと思います。

【田上英樹先生】  なるほど。最初、インターネット販売というかeコマースが爆発的に伸びるかどうかと議論されていた頃、例えば靴等はフィットするかどうか、実際に履いてみないと分からないので、ネット販売が進むことはあり得ないと言われていたかと思います。服もデザインや生地の感じが本当に気に入るか写真を見ただけでは分からないと言われていました。でも、もうどちらも爆発的に増えてしまっていますね。
勿論、中には、不特定多数の中でのやり取りに馴染まない様な商材もあるかと思います。ただ、そこにしても、「コミュニティの作り方次第」という部分もあるかと思います。本当に信頼のおける仲間内だけでクローズドコミュニティを作って、その中で融通し合うとかいうことになると、これはこれで、どんな商材でもシェアの対象になり得ると思いますし、それこそジェレミー・リフキンの著書に出てくる世界だと思います。 とにかくニーズに合った仕組みを誰かが考えて作る。考えて作るのは、これはインターネット上のプラットフォームでありものすごくコストが低くできますので、いろんな実験が今も行われていますし、これからもどんどん新しい仕組みやサービスが世に出てくると思います。

【中山主査】  近藤先生、どうぞ。

【近藤委員】  自動車に関してシェアリングが進むというのは、前々からかなり言われています。そうなった場合に、それに対していろんな変化が必要だと思っているんですけど、現実的には、にほとんど進んでいないという状況になっています。それが心理的な要因やいろんな利便性なども絡んで、なかなか進まないというのはあると思いますが、例えば表題にありますように、2050年を読むときに、どのぐらい自動車がシェアリングされているか、割合やそのためのバックボーンなど、御意見がありましたらお聞かせいただけないでしょうか。

【田上英樹先生】  何かモデルを使って計算したとかそういうお話でもないので、本当にざっくりとした勘どころというところでしかないのですけれども、基本的に公共的なものですとか、あるいは営業車的なもの、法人が使っている自動車等はかなりのレベルでEV化しシェアリングが進むのではないかなというふうに思っています。

 今、若者の世代はもう車を持たないとか、テレビも余り持たないとか見ないとか話題になっていますけれども、私が子供時代には、そんな世界はむしろ信じられなかったですので、やっぱり世代が変わり常識自体がどんどん変わっていくと、もしかしたら一般家庭の方でも車はシェアリングということになって行く可能性は高いと思っています。勿論、どういう形のシェアリングになるかは分かりません。何らかの形で仲間内だけでのシェアリングなのか、マンション単位でのシェアリングなのか。今のところマンション単位というのは必ずしもうまくいっていないかもしれないですが、今うまく行っていない原因の改善等も含めて、将来的にはやはり進んでいくのではないかなと思います。2050年の段階では、相当なレベルに達しているんじゃないかなという気がします。一方で個人所有向けのものはむしろどんどんエッジを効かせて、所有欲を満たすような面白い方向にドライブが掛かるんじゃないのかなと、こんなような感じで思っています。

【近藤委員】  分かりました。ありがとうございます。

【中山主査】  上杉先生。

【上杉委員】  シェアリング・エコノミーとサーキュラー・エコノミーのお話の中で、残念ながらGDPに反映されないのが問題だということをおっしゃられましたね。そのとおりだと思うんです。そこは実は幸福度というので表せるんじゃないか。私は幸福については持論があるのです。持続的幸福度というカテゴリーの中に、リサイクルという言葉があるんです。リサイクルすると幸福度が上がるというんです。だから、恐らく幸福度というのである程度定量できるんじゃないかなと思いました。

 今の議論を聞いていまして、思いました。シェアリングとリサイクルというのは違うんじゃないかなと思うんです。リサイクルは一旦所有して、次、使う。ここに幸福度はあるんです。でも、シェアリングには実はあんまり幸福度というのは付いてこないんです。そこの違いがあるかなと思うんですよね。リサイクルする場合はリサイクル可能な素材を作ればいい。シェアリングするときには、メンテナンスフリーで耐久性のある性質の材料を作ればいいとあります。このように実際に要求される材料も違います。この2つはかなり違うと思うんですけど、どういうふうに考えますか。

【田上英樹先生】  シェアリングとリサイクルとは、違う部分と同じ部分とがあると思っています。同じ部分というのは、遊休の部分に光を当てるということだと考えています。シェアリングの場合は、遊休の「時間」に光を当てます。遊休である時間帯に注目して、それをほかの人に使わせるというのがシェアリングです。リサイクルというのはその「素材としての価値」がまだある場合に、これを廃棄せずもう一回使える形に作り変えるということかと思います。要するに、シェアリングもリサイクルも、使えないと思われた部分の価値を使えるものと捉えて工夫をしたという観点で似ており、それが私にとっては、どちらも「幸福感」を得られる話ではないかと考えられるように思えます。

【上杉委員】  分かりました。

【中山主査】  では、原委員。

【原委員】  シェアリングと無駄についてお伺いしたいんですけれど、何人かで、例えば車の話が今ずっと出ていましたけど、共有すれば当然無駄は減りますが、でも、あるニーズを考えたときに、例えば1人で十分な車と家族で使うときの車。当然キャパシティが違いますし、そういったときに何でも使えるように誰でもシェアできるようにしようと思うと、どうしてもそれ自体がリッチな環境になってしまって、そこでまた無駄が生まれてしまうと思うんです。なので、コミュニティの作り方と物の、まあ、トレードオフだとは思うんですが、それはどういうふうにするのが一番無駄がなくなるとお考えでしょうか。

【田上英樹先生】  そこは市場原理だと思っています。結局、アルゴリズムを作って、どの範囲の市場の中でどういう形でシェアするのがビジネスモデルとして一番皆さんが使ってくれるのかという観点です。日々新しいサービスがいろんな形で試行されていますが、市場に受け入れなければすぐだめになるし、ただ、もしかしたら全く同じことを5年後にやったら爆発的に受け入れられるかもしれません。この部分は、地域、国、都市、所得層、諸インフラの整備状況等によってかなり違って来ると思います。ただ、先程も申した通り、試しにやってみること自体のコストが低いため、誰でも着想して行動に移せるということが重要です。当たればすごくもうかるかもしれないので、こうした挑戦はどんどん続けられていき、市場原理によって良いものが残って行くのではないかと考えています。

【中山主査】  では、髙尾委員、田中委員の順に、やや手短にお願いします。

【髙尾委員】  シェアリングの議論がありましたけれども、「愛」と付くものには愛車とかがあります。シェアリングしていくときにはそういう所有欲のような人の価値観が変わっていかないと進まないと思うんです。「愛」と付くもので、そういう人の価値観が変わったという例が過去に何かもし、あれば、例を教えていただけますでしょうか。

【田上英樹先生】  よく出すのが傘なんですよね。傘というのは皆さんどのぐらい、幾らぐらいの傘をお持ちでしょうか。例えばブランド傘を持っているとか、ブランドではないけれども、そこそこちゃんとしたものをお持ちだというケースもあると思いますが、ビニール傘というものが出てきてから、大分もう、傘に対する考え方が変わっているのではという印象があります。もはや、雨をしのげればよい、どんな形のものでも、誰のお下がりでも良い、そんな捉え方になって来ている部分があるのではないかと思います。それがたまに議論するときに出てくる例ですね。

【髙尾委員】  そういう意味では、車がものすごく安くなって、手に入りやすくなって所有欲が低くなりシェアリングに適するようになるものと、そうではなくて、所有欲をかき立てるものと二極化すると。

【田上英樹先生】  ということですね。

【髙尾委員】  安い方はシェアリングがガッと進む可能性があるということですね。

【田上英樹先生】  はい。そうですね。

【髙尾委員】  ありがとうございます。

【中山主査】  田中委員。最後で恐縮ですが。

【田中委員】  どうもありがとうございました。29枚目の「材料分野への提言(サーキュラー・エコノミーの観点から)」という話のところなんですが、シェアリングしていくと、例えば自動車で考えると数が減るということで、メンテナンスフリーという方向性というのはとてもよく分かるんですけど、一方で、数が減るんだったら、安全性を考えるときに新しい材料を開発するよりは、例えば従来の重い材料でもすぐに使えるというようなことまで考えて、トータルでどっちがいいのかということを考えると、今、研究者が考える材料の方向性とシンクタンクの方々が考えている材料の方向性というのは、これは必ずしも一致しないことがあり得るということなんですか。

【田上英樹先生】  はい。そうですね。そこの観点で重要だと思うのは、やはり新興国、今、自動車はまだ年間1億台売れるか売れないかといって、毎年「砂漠のオアシス」みたいに実現予想の年が一年ずつ遠のいていっていますけれども、こうした新車がどんどん売れているのは結局、新興国であり、それも、小型のガソリン車がほとんど大半占めています。必ずしも環境に優しい車がどんどん大量に出ているわけではないので、先ほどのお話と同じで、そこの部分というのは引き続き重要だというふうには思っています。なので、両方大事で両方をにらんでやって行く必要があるということじゃないでしょうか。2050年以降を目指すんだったら、やっぱり軽くてぶつからないというふうな方向も、先ほどの話も含めて重要だと思いますし、当分はまだそうじゃない世界向けも重要だと思います。

【田中委員】  ありがとうございました。

【中山主査】  どうもありがとうございました。議論も尽ませんが、時間の制約で、いったんここで切りたいと思います。次のパックのある場所がどこかというお話だったかと思います。ありがとうございます。

 続きまして、ユニバーサルマテリアルズインキュベーターの木場様、お願いします。

【木場祥介先生】  皆様、本日はよろしくお願いします。いきなり余談なんですけれども、今、シェアリング・エコノミーの話がありましたが、私はカー・シェアリングの愛用者でございまして、皆さん、まだお使いになられたことないかもしれないですけれども、自宅周辺でこの3年間でシェアリング・エコノミー、カー・シェアリングをやっている会社が5社参入して、徒歩10分圏内に20台ぐらいあるんですね。そうすると、最初1台しかなかったときは、全然予約いっぱいで使えないな、このサービスと思ったんですけれども、20台ぐらいになると、割とかなりの確率で使えるようになりまして、私は車がすごい大好きで、車を手放すなんて全く考えられなかったんですけれども、とうとう車を手放して、カー・シェアリングの方が、いいぞと。スマホとSuicaがあるだけでパッと借りられちゃうんですね。もう15分単位で借りられちゃうと。なかなか人間、価値観は変わるものだな、やはり人間は便利なものに流れてしまうんだなというのを最近実感しているところです。

 私はベンチャーキャピタルの人間でございまして、先ほどの三菱総研様ですとか住友商事様みたいなビッグネームではないので、最初に簡単に御説明を差し上げますと、私どもの前身は産業革新機構という官民ファンドでございまして、今から5年前、2012年に、素材・化学セクターで産業競争力強化につながるような新しい投資をやっていこうということで、チームを立ち上げたというのがきっかけです。

 このように素材とか化学分野に特化したベンチャーキャピタルというのは、グローバルに、あまたあるベンチャーキャピタルの中で、手前ども含めて、たった5社しかおりませんので、非常にレアな存在です。

 先ほどの繰り返しになりますが、本日の話は、先ほどの三菱総研の亀井さんの話と一部かぶってしまうと思うんですけれども、やっぱり素材・化学産業、日本は非常にユニークな技術が多くて、こういった投資がもっとされるべきではないか。だけど、なかなかいろいろな理由があって投資ができないのはなぜだろうかということで、これを解決しようということで、様々な投資をしていまして、2013年から16年の3年間で検証ということで、様々な投資ストラクチャで、素材・化学に特化したベンチャー企業に投資して、8件、52億投資しまして、この3年間の投資で、既に去年、1社、マザーズに上場させることができました。ちなみに、これもまたタイムリーな話なんですけれども、実はリサイクルの会社です。タイルカーペットのリサイクルをやっている会社でございまして、非常におもしろい。今日は時間の関係がございますので、割愛させていただきますが、リファインバースという会社ですので、もし御興味あればごらんいただければと思います。

 そういった形でやっているベンチャーキャピタルでございまして、私はもともとバックグラウンドは応用化学でございまして、学位は計算科学なんですけれども、計算科学と実際のケミストリーを融合させるという形で、材料設計で学位を取って、その後、商社に入って、なぜかメーカーにエンジニアとして出向して、様々な製品開発やスケールアップをやったり、その後、商社に戻って、ドメドメのビジネスから投資をやったりとかしてきたんですけれども、その後、革新機構に移って、今の会社を立ち上げました。ベンチャーキャピタルは大体、金融系の方が多いんですけれども、我々の会社は、私のように、実際にビジネス経験、事業立ち上げ経験があるメンバーという形で運用をしております。

 今、革新機構に半分、55億出していただいて、日本を代表する素材・化学の企業さん、9社様に45億出していただいて、100億円のファンドを今、運用しております。これで、今、既に5社投資をしておりまして、この12から14社に投資していこうと思っているんですけれども、本日は特にこの日本の素材・化学産業において新規事業をどう捉えていくかという観点で、次世代のテクノロジーをどう考えていくかという、考え方ですね。そのきっかけになればなというふうに考えております。

 素材・化学産業が日本は強い。強いと言っているところのファクトを幾つか御案内したいなと思うんですけれども、これはよく示す図なんですけれども、GDPにおけるインパクトですね。これは鉄も含むので、割と大きい形になっちゃうんですけれども、実は輸送用機械器具製造業、これがいわゆる自動車なんですけれども、鉄とかも含めて、素材とか全部引っくるめると、実は断トツ、ナンバーワンですね。GDPインパクト。30%を占める非常に巨大な産業です。鉄の部分が大きいんですけれども、これは例えば石油化学由来の化学品だけに絞っても、十一、二%と非常に大きいインパクトです。なので、産業における重さが非常に大きいというのが特徴です。

 あと、日本は発明が少ないと言うんですけれども、素材に関してはそんなことなくて、これはあくまで例示的に挙げた例なんですけれども、日本発の発明が世界を牛耳っているテクノロジー、非常に多くございます。例えば車で言うと、樹脂ガラスですと、プラスチック由来とかルーフでございまして、これは欧州メーカーが先じゃないかみたいなのがあるんですけれども、明らかに先ですよねというのは車のバンパーなどで使われているプラスチック、これなんかは日本発ですね。あと、半導体も、半導体そのものはアメリカが先行しているんですけれども、その周りの実装材料のポリマーは日本が牛耳っておりますし、リチウムイオン電池や家電のところは言わずもがなというところですね。

 あと、実はこのヘルスケア関係でいうと、おむつ。これは皆さんも御存じだと思うんですが、撒布というポリマーですね。おむつの吸水性ポリマーなんですけれども、もともとはアメリカの農水省が開発したテーマだったんですけれども、これを世界で初めてスケールアップしたのは日本の会社、一番最初は三洋化成さんという会社。その後は日本触媒という会社がスケールアップをしたんですけれども、一番最初、100トンのプラントから、あれよ、あれよという間に、今、マーケット規模という4,000億、素材というのが当たると非常に規模が大きくて、一発当たるとすぐ数千億という規模になってしまう。これが素材のおもしろさです。そういうのを実は日本は非常に牛耳っている例が多い。

 今、ポリマーの話がございましたけれども、皆さん、このビルの隣にいらっしゃる帝人さん、もともと会社名は何だか御存じですかね。帝国人造絹糸という会社でございまして、実は世界で初めてポリマーを、こういった化学合成というか、自然由来なんですけれども、レーヨンを大量合成した会社。実は山形大発ベンチャーだったという会社なんですけれども、こういった形で数年来、原料シフトによるパラダイムシフトが起きながら、数兆円のマーケットが生まれている非常に大きくなる産業です。

 ではこんなに大きくなる産業で、新技術や新しいベンチャーなど、なぜ投資家などがいないんだというところなんですけれども、皆様に是非御理解を頂きたいところがこれでございまして、我々、素材って何で投資しないんだろうと、いろんな人の話を聞くと、大体共通しているのは長い。時間が長い。あと、金が掛かる。大体この2つに尽きることが多いです。おまけに製薬と違って、フェーズ、臨床みたいなのがないので、時間が掛かるし、金が掛かるにもかかわらず、どれだけ進んでいるかよく分からないと。そうすると、そんなリスクが高いものに張るかというところで、なかなか投資家が集まらないんですね。

 それを端的に示したのがこちらでございまして、我々、素材というのは、これは素材に限らず、いろいろな製品開発も大体同じなんですけれども、大体5つのステージがあるというふうに考えております。RDのフェーズがあって、これを製品開発しようというフェーズがあって、これをスケールアップ、生産技術やって、これを本量産、マザープラントを作って、更に量産、効率化していく。これで、1棟で大体20年、長いものですと30年掛かります。特に素材・化学産業がほかの産業と違うところは、このStage3、スケールアップのところでございまして、ここぶすごい金が掛かる。最近、マテリアルインフォマティクス、もともと私もそっちの専門だったというところもあるので、思い入れはあるんですけれども、大体、いわゆるすり合わせですとか材料設計のところでマテリアルインフォマティクスがどんどん進んで、ここの部分、かなり速くなってきていると思います。

 ところが、ここの部分、実は素材・化学産業、ここがバリューの源泉になっていることが多いんですね。ここ、実は要素がむちゃくちゃ多くて、素材の性能を出すというすり合わせ。すり合わせとかノウハウとは一体何かというと、要素の掛け算ですね。様々な要素を掛けているというものなんですけれども、材料設計で性能を出すという掛け算のほかに、これをいかにたくさん作るかという、また複雑な要素、これは要素の固まりです。

 あんまり例えがよくないかもしれないんですけれども、皆さん、カレーライスとか作りますかね。小さい鍋で作るときと、すごいお客さんが来るときに大きい鍋で作るとき、作り方、同じですか。同じものでもスケールが違うだけで、実はいろんなことを考えないといけないんですね。大体キャンプファイヤーとかでカレーを作ると、大体混ぜこぜするときによく混ざらなくて、むらができたりですとか、あと、へりに何かいっぱい付いちゃったりして、しょっぱいのがあったりとか、たまにやるキャンプファイヤーなら楽しいんですけれども、製品でそれをやったらたまったものじゃないと。そうすると、へりに付かないようにするとか、うまく混ざるようにするというのだけで、それぞれで数百パターン、いろんなパターンがあるんですね。そうすると、要素が物すごい飽和してきて、これを今、現状の計算科学でやろうとすると、大体パンクしてしまいます。なので、この部分が非常に難しい。

 ここを今どうしているかというと、大体どこの企業でも何でも知っているおじさんというのがいて、何でも知っているおじさんが長年の経験と勘で様々な要素をたくさん知っていて、「うーん、そういうときは何かこうすればいいんじゃないか」とか、「何かこれはなめたらこれだからこうしとけ」みたいな、「本当か、それ」みたいなですね。これはその人なりに頭の中で様々な要素の掛け算が整理されているんですね。これと物作りをするための製造装置、このセットでやられているんですけれども、まあ、金は掛かるし、時間は掛かると。ここが非常に難しい。

 先ほど申し上げましたとおり、ITやゲームアプリの場合ですと、ソースコードを一発変えるだけで、一瞬でイノベーションが起こるんですね。ところが、電子デバイス、機械だと、設計を変えて組み直すまで時間が掛かるよねと。ところが、素材はもっと激しく時間が掛かって、さっきみたいに処方を変えて反応させて、軽く1週間。必然的にそのイノベーションのスピードが遅くなってしまう。なおかつ、さっきみたいな要素の固まりみたいな話が出てくるので、非常に時間が掛かってしまうというところなんですね。

 なので、こういったイノベーションのスピードも時間も金が掛かる一因になっているというところがある。それに加えて更にややこしいのが、素材というのは川上産業なので、これを何か作って、更に製品にして、お客さん、皆さんの手元に来るまでというのはすごい時間が掛かると。いろんなサプライチェーンを経ているわけですね。我々はよく言うんですけれども、このテクノロジー、一番欲しい人は誰なんですかと。そうすると、大体エンドユーザーなわけです。そうすると、例えば車メーカーとか家電メーカーが小さくしたい、薄くしたい、軽くしたいと。部品メーカーがこれを満たすための部品にするためにはどういう性能にするか。この性能を満たすためには材料メーカーはどういう性能にしたらいいか。この性能を満たすためには、更にその川上の材料メーカーはどうしたらいいかということで、ニーズがこうやってずっとつながっていかないと、物って売れないんですね。これが大体、ここ発想だと、こっちにつながるかどうかよく分からないということで、大体つながらなくて、シーズ発想だと難しいということが起こる。

 つまり、何を申し上げたいかというと、大体つながっている。要は、ああ、これを使うとお客さんのこのニーズを満たせて、そのニーズを満たすと、このお客さんのこのニーズも満たせて、更にそれは先のお客さんのこのニーズを満たせるみたいなですね。ずっとつながるような根本的な課題、ニーズですね。こういったものを満たしているものでないと、なかなか難しい。我々がよく言うんですけれども、誰もうれしくなければ買わないんですね。あなただけうれしくても買わないと売れないというのを考えないといけない。

 そういうのを考えると、素材・化学分野の次世代技術を検討する上で、留意点ということで、我々がよく申し上げているのが、先ほどの三菱総研の亀井さんもまさにおっしゃられていましたけれども、それは世の中の根本的な課題を解決する技術なのかというところというのはかなり重要なところです。特に時間が掛かる話というのもあるので、最近はやっているようなテクノロジーに素材・化学で取り組もうとすると、大体それは10年後、20年後には陳腐化しているので、いまいちぴんとこない話になってしまうと。あと、加えて、特にこれは我々がよくアカデミアの先生ですとか、事業化の御相談というのをかなり受けたりするんですけれども、よく申し上げているのが、事業化はサイエンスをしっかりしていなくていいかというと、そんなことは絶対なくて、特に素材・化学みたいな時間が掛かる場合は、技術が抜群のオンリーワンかナンバーワン。サイエンスがしっかりしていないと、長く時間が掛かるので、その間に競合がいっぱい出てきてしまうリスクがあるんですね。なので、オンリーワンか、ナンバーワンであるか。更にそれがスケーラブルかどうかというところが結構肝になってくると。

 そうすると、結論として何を申し上げたいかというと、先ほど皆さんの御指摘もありましたとおり、やっぱり数年後ではなくて、20年後、30年後を見すえたマクロトレンドというのを把握した上で、我々がやろうとするテクノロジーは一体何なのかというのを考える必要があるというところです。

 これは例ということなので、幾つかは釈迦に説法になったり、知ってたりす話かもしれないんですけれども、例ということで、日本の人口動向、確定している未来ということで書いてみました。よく言われている話ですね。日本の総人口は2015年をピークにどんどん減っていって、特に重要なのは日本のこの15歳以上人口、就労人口ですね。特に15歳から64歳。物すごい勢いで減っていきますと。老人が増えていくとよくおっしゃられる方が多いんですけれども、実は老人の絶対値って変わらないんですね。ある一定のところでサチッてしまって、シニアの方々を使っていくというのは結構数的にやはり限界がある。そうすると、そもそも生産性を向上していかないといけないと。

 先ほど申し上げましたとおり、日本の素材・化学産業はGDPに占めるインパクトが物すごく大きいので、このGDPに占めるインパクトの生産性というのをいかに維持できるかというのは、非常に産業としての重要な課題だなというふうに考えています。

 そうすると、人口が減るというのはいろいろな素材、特に素材・化学産業における影響で考えると、これはあくまで例示的です。思い付いたものをパッと書いただけなので、これよりもたくさんあると思いますし、様々なシナリオがあり得ると思うんですけれども、例えばやはり大きいのはこの生産の担い手が減るというようなところですね。先ほど言ったような、スケールアップのところのスケールアップ何でもおじさんというのがどんどんいなくなっていくので、ノウハウにどんどん頼れなくなると。そうすると、難しい生産技術ができなくなっていって、完全に新設計の製造ラインが作れなくなると。そうすると、中小企業なんか、もろに痛手を食うので、撤退が増えてきて、逆にM&Aが増えるでしょうと。という形で、引退したシニアを使わざるを得なくなる。でも、それでも足りない。そうすると、外国の方をどんどん登用せざるを得なくなる。こうやって内需が減っていくという話もございますね。国内生産が維持できなくなるですとか、石油クラッカーとかの大型生産設備を止めざるを得なくなるという話。

 あと、海外利益比率。これは実は素材・化学産業の場合、大きいですね。日本だと、もう内需はないですし、人もいないので、自分たちの売り上げ利益を維持しようとすれば、海外に出ざるを得ないと。そうすると、海外をやっていきましょうなんていう、ちんたらしていたらできなくて、どんどんM&Aとかしていかないといけない。そうすると、現場で感じていると、意外とグローバルでフェイスブックとかでみんなつながっていると言っておきながら、逆に海外に行く人は少なくなっているんじゃないかという感じがして、我々実際産業で見ていると、若い方、英語できないという人、むしろ、意外と増えている気がするんですよね。そうすると、実際にリアルで見たこと、リアルで外国の方とガチで交渉したことがないみたいな人が実は増えているんじゃないかという感じがしていて、一方で、日本のプレゼンスは下がるので、10年、20年前は海外で行くと、大体日本語を学ぶ優秀な人材というのがいたので、特にアジア地域はですね。現地法人とか作ると、大体優秀な方が日本語をしゃべれて、日本人は日本語だけしゃべっていればいいという話が、当然それもできなくなってくると。そうすると、いろんなことを考え、解決する必要がございますね。自動化が増えているですとか、AIやロボットでは解決し切れないと。でも、導入していかないといけないと。

 あと、工程改善、もう全く違う考え方の作り方や、先ほどのStage3というのをそもそもすっ飛ばす方法はないかですとか、あと、我々はよく言っているんですけれども、シニアの方々をもっとパフォーマンスを出せるように、クオリティ・オブ・ライフとか言っているQOLとかじゃなくて、もっと過激に、もっと何かすごくパワーが出るようなスーツですとかそういうのも必要なんじゃないかですとか、あと、多品種少量生産がもっと大規模化、集約化しているというような話。だから、どのような技術があれば、30年後もこの我が国の素材・化学産業の競争力を維持できるかというところでも、かなりいろいろなテクノロジーが必要だということが理解できます。

 これは例えばの例ですね。先ほどの解決手段。素材まで落とすといろいろございますね。例えば解決手段でいろんな方法はあるんですけれども、例えば結果的にこういったマイクロ反応場や“万能”素材。我々はよく言っているんですけど、「タフで硬くて軟らかくて強くて軽くて安い」材料はないかということなんですけれども、そんな夢の材料を研究すればいいんじゃないかという話などですね。

 そうすると、これら技術を成立させるために必要な、先ほど申し上げたオンリーワン、ナンバーワンとなり得るような要素技術、サイエンスは一体何なのかというのを是非議論いただく必要がある話じゃないかなというふうに我々は考えております。

 実際にあるのは、先ほどの人口の話ですと、日本の動向だけではなくて、世界の動向もちゃんと見ないといけないので、こういった話も加味する必要がございます。意外なのが、15~64歳人口で、やっぱりアメリカってすごいなと思うのが、アメリカは人口が増えてきているんですよね。実は就労人口は100年後も変わらないとか、意外とインドがすごく高齢化社会になってくるみたいな話で、こういったグローバルな動向というのも当然ながら把握している。

 そういった中で、最後は参考までなんですけれども、これは我々様々な、それこそ三菱総研さんもそうですし、いろいろなシンクタンクさんが発行されているようなレポートですとか、産業界の会話の聞きながら、様々な個別産業ごとの未来予想をしながら、先ほどのキーワードになるようなニーズですね。我々は今、これは定期的に見直ししているんですけれども、今はこの10のキーワードでテクノロジーを探しているという形です。ですので、最後になりましたが、素材・化学、ナノテク、こういったテクノロジーのことなんですけれども、やはり繰り返し、一番最初の三菱総研様の話にありましたけど、やっぱりマクロトレンド。社会の課題は何かというようなところを理解した上で、どういう要素技術が必要になっていくかなというような議論が必要じゃないかなというふうに考えているところです。

 以上です。

【中山主査】  どうもありがとうございました。

 御質疑、御討論等お願いします。早川委員、どうぞ。

【早川委員】  ベンチャーさんのお話が聞けて、よかったと思います。それで、最初に出てきたスケールアップのところに関して、これは私も経験あるんですけど、R&Dはいい性能を出してもそれを大量に生産できない。やっぱりここがすごく大きな谷間であって、乗り越えるのは非常に難しいんですが、資料のNo.12ですかね。聞き逃したかもしれないんですが、右側に「Stage3を飛ばす方法が生まれる」と書いてあって、真ん中辺ですかね。右側の4ポツ目ですかね。「Stage3を飛ばす方法が生まれる」というのは。

【木場祥介先生】  これですね。

【早川委員】  はい。それってどういうようなことをイメージすればいいんですかね。

【木場祥介先生】  例えば、まさに先ほど私が現状では難しいと申し上げたエンジニアリングも含めたマテリアルインフォマティクスが成立したらStage3は必要ないと思います。例えば先ほどシェアリング・エコノミー的な話で、実はベンチャーキャピタルというのは実際にもう動き出し始めていて、この先ほどのStage3を乗り越える、我々は今、何しているかというと、今、アナログな方法で、まずソフト面でいうと、引退した何でも知っているおじさんというのをかき集めて、ベンチャーに投入したりして、このスケールアップの壁をやろうとしているというのがまずソフト面的なところ。

 ハード面は、実はもうシェアをやっています。例えば素材・化学産業というのは、もともとそういったソフト側が人に依存していることが多いので、装置が特殊なんですけれども、実は大体10から15ぐらいの工程に分類できるんですね。何を申し上げられるかというと、10から15ぐらいのところに分類できると、大体共有できる設備というのが多くて、各社、素材・化学メーカーはスケールアップをやっているので、そういうスケールアップ用の、スケールアップしたら終わりで遊んでいるというような遊休設備、実はいっぱいあるんですね。もともと我々の強みというのは、素材・化学産業で今、160社ぐらいネットワークがございまして、大体マネジメント層にリーチができるので、そういった方々に聞いていると、「いや、木場さん、あれ、うち余っているんだけど、何か200リッターぐらいで中途半端なやつなんだけどさ、何かに使えない?」みたいな、「あっ、それそれ、うち使いたい」みたいな話で、スケールアップを手伝ってもらう。実はそういうハード面の共有というのが始まっているところなんですね。

 そうすると、問題はこのソフト面のところ、今、正直申し上げて、そういったシニアの方々を使って、人海戦術で気合いと根性でやるしかないみたいな話なんですけれども、当然、全くマテリアルインフォマティクスのところが進んでいないかというと、当然進み始めていて、エンジニアリング単体でいうと、そういったシミュレーションソフトですとかAIというのはかなり進み始めています。ですから、これはいずれ時間の問題だというふうには思っていて、そういった開発とか研究とか、まさにそこを我々としては非常に興味があるところなんですけれども、そこが材料設計だけでなくスケールアップにも進んでくれば、このStage3のハードルというのはかなり下がってくるんじゃないかなと考えています。

【早川委員】  例えば具体的にはどういったデータベースをイメージすればいいんですか。いわゆる職人さんのスキルを多分おっしゃっているんだと思うんですけど。

【木場祥介先生】  実際は職人のスキルというのは何かというと、やっぱり要素分解していくと、こういう条件のときはこういうふうになるみたいな条件のパラメータが大体多いんですね。それはなぜそういう条件だと思ったときにこういうことをやるんですかみたいな話というのをどんどん要素分解していけば、特定のデータにつながっていくんですね。実は皆さん御存じかもしれないんですけれども、それを徹底的に気合いと根性でやり抜いて、ほぼAI化したというのがダイセルという会社でございまして、ダイセル生産方式というのは、この職人の知見を全部単純データ化してきて、ケースごとに分析をしていて、半ばAI化して、自動的に分析ができる、自動的にスケールアップの品質管理をできるようにしたというような例がございます。

【早川委員】  ありがとうございました。

【中山主査】  そのほかございますか。草間委員、どうぞ。

【草間委員】  プレゼンありがとうございました。まさにこの図なんですけれども、ここで、例えば産学連携でというか、どういう形での産学連携があり得るのかという、すごい漠とした質問で申し訳ございませんが、教えていただけますか。

【木場祥介先生】  我々は実はまさにそこを今、課題に感じているところで、それがゆえに我々のような組織があるというところなんですけれども、日本の、特に大企業、素材・化学企業はスケールがこういった感じで時間が長いくせに、単眼的な、短期的な視点の会社さんというのが多くて、新事業や新技術というと、大体Stage3から、このStage、むしろキャッシュフローができそうなStage4ぐらいの方を持ってこいと。アカデミアにも、ここら辺をやれみたいな無茶な話をすることが多くて、話がかみ合わないことが多いんですね。一方、あるいは、このStage1のすごいアーリーのところで、もう探索型研究でやっていますみたいな話というものしか、正直、産学連携というのがちゃんと進んでいないというケースがございます。

 我々は何をやりたいかというと、まさに、多分Stage3のここら辺から先は企業がやるべき話なんですね。一方で、アカデミアはどこをやるべきかというと、Stage2のここまでなんですね。要は、お互いに役割分担をすることで、どこのStageまで進めるのかというのを協力し合う。そうすると、空白のスペース。アカデミアがすると、ここまでやるのはハードルが高過ぎるので、ここら辺ぐらいまでしかできないと思うんですよね。企業は、本当は昔でいうとここら辺までやってくれたんですけれども、本当はここまでやってよという話なんですけれども、やっぱりやる方々が少ないので、ここをやるベンチャーを作って、企業とアカデミアが連携できるようなつなぐ仕組みですね。そういった形を作って産学連携が進むような形ができないかというのは、今、取り組んでいるところです。

【草間委員】  それもベンチャーキャピタルがやっているということなんでしょうか。

【木場祥介先生】  そうですね。ベンチャーキャピタルというのは、時にベンチャーを自分で作っちゃって、会社を作っちゃって、起業したり、サポートしたりというのはやっております。具体的な例で言うと、我々、毎年ノーベル物理学賞候補に上がる東工大の細野先生という、IGZOの材料を作られる先生ですね。この先生がやられていた研究テーマで、アンモニアを作るという触媒の技術があるんですけれども、これはまさにベンチャーから作っちゃったというケースですね。アカデミアで、あれはJST様からかなり御支援を頂いて、ここら辺ぐらいまで来たんですけれども、なかなか難しいと。パートナー企業で味の素さんという会社がくっついていたんですけれども、味の素からすると、ちょっと毛色の違う技術なので、自分でやり切れる自信がない。だけど、ここまで来たら必ず買いますと。だけど、ここは誰もいないと。じゃ、ここをやる、リスクを取るベンチャーを作って、ここをしっかりやれるような人材を集めましょうという形で進めているという事例はございます。

【草間委員】  ありがとうございます。

【中山主査】  どうもありがとうございます。 最後に内藤委員。

内藤委員】  どうもありがとうございました。先ほどの御質問にちょっと関連するんですけれども、今のお話だと、アカデミアがStage2ぐらいまでやって、そこから先が企業さんが受け持つと。大学発のベンチャーだとすると、ライセンスでもうけるようなイメージなんですよね。

【木場祥介先生】  そのビジネスのモデルによりますね。ライセンスがいいというケースもございますし、ライセンスじゃなくて、素材・化学産業というのは、大企業でも割と製造委託というビジネススタイルというのをよくとっておりまして、ある少量のスケールまでは自分のところで作って、それ以降は製造が得意な人にぶん投げちゃうと。だけど、自分のブランドを付けて売るという、いわゆるOEM生産的なことをやっておりまして、我々はライセンスに限らず、そういったOEM生産モデルというケースもやったりいたします。そのときに大体ここら辺をやると初期のパイロットラインなどができるので、それで自分のところである程度作りましょうよと。ある程度作ったら、その情報をベースに、作るだけに特化した、いわゆるCMOと呼ばれている製造受託企業にぶん投げて作ってもらいましょうというのはございますね。

【内藤委員】  例えばイメージとして、UMIさんは大口の投資をされるというイメージを持っているので、それでいいと思いますけど、もっとアーリーステージから投資するところもあります。そういうところの方々とお話しすると、ライセンスはおもしろくないという言い方をされる方が多いんですね。やっぱり最後まで自分たちで作ってやらないと、余りおもしろくないという言い方をするんですけど、それはどういうふうにお考えでしょうか。

【木場祥介先生】  やっぱり初期からどういうビジネスモデルを想定するかというのが結構重要ですね。初期からもうライセンスでいいやみたいな形で、戦略的自由度を狭めてしまうと、ずっとその先ライセンスビジネスモデルしか成立しなくなってしまうので、ライセンスビジネスモデルじゃないビジネスモデルもできるようにしておきましょうという形を最初から戦略として練っていく必要があるかなと思います。

【内藤委員】  では、もうStage3も自分たちでえいやとやれるぐらいの意気込みがないと。

【木場祥介先生】  意気込みは必要ですね。そのときに今、課題なのが、結局、設備投資と人を突っ込まないといけないという話があるので、ここが大きいハードルになっていると。その解決策として、先ほど申し上げたとおり、設備投資をしなくてもいい方法を考えましょうですとか、あと、マテリアルインフォマティクスがもっと進んで、ここが人を突っ込まなくてもできるような形にすると、もっと進むようになるかもしれないと。ただ、そのときに本当に日本の素材・化学産業として成長、競争力を担保し続けられるかというのはまた考えなきゃいけない論点かなという感じはいたしております。

【内藤委員】  分かりました。ありがとうございます。

【中山主査】  どうもありがとうございました。時間も限られていますので、次に行きます。このスケールアップのところはこれまでも大事な論点としてありました。研究で出た物質材料がスケールアップできず、かなり死蔵されているという状況があり、それに対してどのような手を打っていこうかについて、このナノ・材担当の参事官付の皆様ともお話ししたこともございます。この辺は施策としても大事なところと認識しているところです。また今後の議論で種々のお付き合いいただければと思います。ありがとうございます。

 続きまして、田中先生、よろしくお願いします。

【田中裕久先生】  関西学院大学の田中と申します。今日は、こういう場にお招きいただきまして、ありがとうございます。先ほど亀井さまのご講演で、「プロジェクトがうまくいかなかったら、それはプレーヤーじゃなくて、マネジャーの責任だ」というお話ありました。私はずっとプレーヤーにこだわって生きてきた人間なので、今日、こういう場で、もし話がすべったら、これはマネジャーの中山さんの企画ミスかなということで許してほしいなと思います。

 3人の先生方のお話を聞いて、私もすごく勉強になりましたので、今日は来てよかったなと思っています。私のお話は関西からの色物の話になリますがお許しください。最初、御指名頂いたときに、2030年の車の最先端技術の動向について少し話をしてくださいというふうに依頼を受けました。また先日、事前にお会いしたときに、「基礎研究とか中央研究所、最近、企業があんまり重要視していないというか、どうなんですかね」みたいな話題がありましたので、その辺についても、私も少し思うところもありますので、今日、最後の方に4枚ぐらい、それも付け加えてお話しさせていただきます。

 関西学院大学は、キリスト教主義の大学でして、「Mastery for Service」即ち、世の中に貢献するためにみずからを鍛えましょうというのがスクールモットーです。私自身は物すごいベタベタの仏教徒ですけれども、この大学に受け入れてもらっています。

 最初に自己紹介をさせていただきます。実は去年、ゴードン・リサーチ・カンファレンスというのに呼んでいただいて、しかも、そのキーノートスピーカーという、何かすごい大役を仰せつかりました。というのは、私の友人のPlamen Atanassovがその企画をやっていたんですけれども、そのときに会場の人たちに私のことを紹介してくれて、自分も、その紹介、えらいかっこいいなと思いまして、それを使います。彼が言うには、『NATURE』の論文を書いたやつは、俺は幾らか知っているけれども、自分の書いた論文の技術を本当に世に出したやつは彼だけだと、そのように紹介してくれました。去年の夏に聞いて、「おっ、これ、使えるな」と思って、今日初めて使ってみましたが、あんまり受けなかったかな。

 私もそこ(基礎技術を実際の世の中に生み出すところ)が自分のスタンスかなと思っています。冒頭言いましたように、自分はプレーヤーとしてこだわっていましたが、2年間の空白が実はあります。1回目は、1987年に会社を辞めて、世界をリュックサック一つで歩いたという1年間がありました。2回目が、2000年のとき、これはダイハツにいたんですけれども、時の技術トップの専務さんが、「おまえ、絶対マネージングに向いていないけれども、おまえにやらせたらどうなるか、俺は興味本位で見てみたい、一遍やれ」ということで1年やりまして、私にとっては空白の1年なんですけれども、そのときにやったことが結構今日のお話のネタになっているということで、御紹介したいと思います。

 私は、もともとセラミックスの勉強をしまして、セラミックスのメーカーに勤めていたんですけれども、大阪生まれの大阪育ちで、小学校から遠足といっては奈良とか大仏さんを見たりとかですね、仏教文化がすごい自分の中では大事なんです。大事というか、私は釈迦がスーパースターなんですね。彼を見ると、かっこいいなと思っていまして、なぜかっこいいかというと、彼はモノなんかなくてもいいと。モノとか金とか名誉なんかを追求するから人は悩むんだ。モノはなくても人は幸せになれるというのが私の学生時代の憧れの生き方だったんです。けれども、無自覚的に材料メーカーに入って、材料開発をやっていて突然、モノは人を幸せにしないんだったら、自分はなぜそんなものを作っているんだというところに引っ掛かりました。ちょうどそれは1980年代で、バブルで、モノがあふれ返っているような世の中でした。

 物の本を読むと、釈迦は29の誕生日にカピラヴァストゥという城を捨てて、出家したと書いてあったので、私もこれだと思って、29歳の誕生日に会社に辞表を出して、サハラへ行きました。なぜサハラに行ったかというと、360度のモノのない世界で、自分はどんな気持ちになるんだろうというのが一つと、そういうところで生活している人は何を考えているんのやろうと。私は化け屋で、実験屋なので、自分でそこに飛び込まないと納得いかないタイプなので、そこを歩き回ったわけです。

 モノは人を幸せにするのかなというようなことを考えながら、北アフリカ、中東からシルクロード、チベット、そして、私の大好きなお釈迦様のインドを1年掛けて旅して歩きました。ブッダガヤではなんちゃってで丸坊主になったりしたんですけれども、悟りは開かれずですね。突然そのとき気付いたんですね。答えがないのは、そもそも質問が悪いんだと。「モノは人を幸せにする」なんていうものを問い掛けるから悩むんだと。じゃ、こうしようということで、「モノは人を幸せにする」というのを仮説にしようと。もう信じたらいいんじゃないかと。もう一度、日本に戻って、エンジニアをして、29で出家、出家じゃないわ、家出して、もう30歳になっていたんですけれども、企業に入って物作りをして、60歳で定年するときに振り返って、本当にモノは人を幸せにしてくれると思えたら自分の人生、幸せだし、そうじゃなかったらそうじゃなかったでいいやというふうに思ったわけなんです。実は私、あした、60歳の誕生日なので、もうそろそろ答えを出さなあかんなと思っているときにこのお話を頂いたので、それを考えながら、今日は自分なりの何らかのキーワードみたいなのをやっぱり追いたいなと思っています。 そういう意味で今日いろいろお話を聞いていて、とても面白かったです。

 さて、私がダイハツに入った理由は、「モノは人を幸せにする」という仮説の証明なので、テーマは贅沢に選びました。入社して最初に触媒か塗装の開発をやれとか言われたんですけれども、私なりの三段論法がありまして、まず材料開発をやっているんだからいい材料ができるのは当たり前と思っているので、そのいい材料ができたらいい車ができるかと。そして、いい車ができたらいい世の中になるかと。それが成立したら、「モノは人を幸せにする」という仮説の証明になると思って、塗料の方は、申し訳ないんですけれども、いい車まではつながるんですが、いい色の車ができて、いい世の中になるとは思えなかったんです。触媒の方は、いい触媒ができて、きれいな排ガス、吸った空気よりもきれいな排ガスを出せばいい世の中になるよねと思えたので、どうせ触媒をやるんだったら、走れば走るほど周りの空気がきれいになる車を作ろうというふうに思いました。

 先ほど死の谷の話がありましたけれども、私が今、初めて気付いたんですけれども、私の中で、死の谷はひとつもなかったんですよね。なぜかというと、はなから1万台とか100万台作ることが自分の中にイメージがあって、1台だけのモーターショーのコンセプトカーとか全く興味なくてですね。最初から大量に世の中に出して、自分の仮説が証明されるという意識で、材料を考えていたので、いわゆるエリートの方が最先端のナノテクノロジーで物を考えるのとでは随分違ったなというのを、今日、自分で自覚できて、それはおもしろいかなと思います。

 このインテリジェント触媒なんですけれども、実は貴金属が使う環境で自己再生すると。従来の貴金属触媒、自動車の排ガスの中というのは800 ℃ぐらいの排ガスが来て、そこで反応を起こして、950とか1,000 ℃というような高温に貴金属にさらされるので、粒子が成長します。その粒子成長イコール劣化なんですけれども、日本の排ガス規制では8万 kmの耐久が法的に義務付けられていますので、8万 km走行した後の排ガスのきれいさを担保するということなんですね。

 8万 km走行後の性能を担保するためにどうしても貴金属をたくさん使っていたんですけれども、今日もお話がありましたけれども、自分で傷んだら直せばいいやという触媒を考えました。これがそれなんですけれども、物作りのときは、ペロブスカイトのこのBサイトにパラジウムをイオンとして配位させて、複合酸化物にしておく。自動車の排ガスの中で還元雰囲気と酸化雰囲気が2ヘルツぐらいで交互に来るんですけども、その還元したときはナノ粒子を作って、また酸化雰囲気で元に戻る。こういうことを繰り返します。

 これは従来の触媒にない機能なので、2002年に、これは本当に出会いで、SPring-8の水木さんと西畑さんに出会って、この自己再生メカニズムが解明ができて、そして、世の中に出すというための自信がまず生まれたわけなんです。実はこの現象は、私は1993年に発見をしていまして、触媒学会で報告したんですよね。そうすると、触媒学会の先生方は物すごい紳士なので、「それはうそやろ」とはおっしゃらずに、「そんなことが本当にあったらいいですよね、田中さん」と言われたんですね。もう100%信じてないなと僕はそのとき感じたんですが、そういうことなんですよね。

 もう少し話しますと、従来の触媒はさっき言いましたように、使っているうちに貴金属の粒子が大きくなって、活性点が減って、反応しにくくなるということなんですけれども、例えばこれは900 ℃で100時間耐久すると、こんな大きな粒子になる。これは白金ですけども、この我々のインテリジェント触媒というのは、使っている環境で、ここから白金の粒子が析出して、表面で1 nmぐらいの粒子になると。ところが、また、酸化雰囲気というのは元に戻って、全くこの粒子が見えなくなるというところなんですね。それがやっぱり一番のポイントで、これはパートナーであるファインセラミックスメーカーさんが保有する物作り手法にて、1トンバッチでセラミックスのパウダーを作って、ハニカム担体にコートしてやって、車の中に仕込んでやると、使用される環境の中で、自らナノ粒子を出してくるというところが、今になって思えば、まあ、よかったのかなというのが、今日のお話を聞いていて思いました。

 私の中ではもう全然それは工夫じゃなくて、開発チームが一番やりやすいというか、既に手の中にある技術を使うという方法でやったつもりだったんですけれども、死の谷を味わうことがなかったのはそういうところがあるのかなと。これで高活性が維持できるので、その8万 kmを担保するために貴金属を大量に使っていたのを実に、パラジウムでいうと9割ぐらい減らせますし、白金は7割とか、ロジウムは5割とか減らすことができ、省資源でコストダウンできるということで、ダイハツとトヨタさんの車を併せて650万台の車に、搭載していただいたというところです。

 これで、私としては、開発に成功したこともとてもうれしいんですけれども、自分の中で、仮説の証明の1つ目ですね。車をかなりの台数、量産車でできたことによって、走れば走るほど空気がきれいになり、「ものが人を幸せにする」につながると思えたところがよかったなと言えます。

 その後、2つ目のプロジェクトとして、燃料電池をダイハツで始めました。私は去年ダイハツを定年退職したんですけれども、今も一緒にやらせていただいています。これもまず貴金属を使わないというところと、水素じゃなくて、液体の燃料を使いますよというところが特徴です。しかも、その液体の燃料は、ポリエチレンのタンクで運べるもので、危険物の第4類、第3石油類なので、そのポリエチレンで運んで問題ないんですけれども、そういったものを使います。この液体燃料は水加ヒドラジンといいまして、カーボンを含んでないので、発電してもCO2は出ないというもので、液体燃料から直接発電して車を走らす実験をしています。

 こちらもやっぱり我々としては軽自動車という、すごく縛りがあるということがあって、さらに水素スタンドの設置計画がないようなローカルの人に使っていただけるための燃料電池車を志向しています。これを言うとちょっと、差し障りがあるかもしれませんが、水素の燃料電池をやられている人は非常にエリートの方々が、F1のレースのようにとんがった技術の競争をされているような印象があります。我々はもうちょっとダウン・トゥ・アースで、地べたの燃料電池を定義しています。その一つが、この石油類や貴金属を全く使わない燃料電池です。これが実現したらなぜ「モノは人を幸せにする」につながるかといいますと、20世紀は、石油がエネルギーを担って、貴金属がそのマイナス面の環境をカバーしてきたんですけれども、皆さんご存知のように、産油国は中東の火薬庫と言われ、あるいは南アフリカでは地球上でここしか採れない貴金属があるためにアパルトヘイトがあったり、資源があるばかりにずっと紛争の歴史を繰り返してきたというところなんですね。日本は資源がなくて、かえってよかったなということなんです。

 私が中山さんとお会いしたのは元素戦略プロジェクトでした。元素戦略は、国とか文部科学省さんとしては、「資源のない日本が資源を使わずに」という言葉はすごくいいと思うんですけれども、プレーヤーとしては、それでは満足しないんですよ。自分には娘がいますけれども、娘が外国の人と結婚、例えば中国の方と結婚したときに、日本のためにやってるといっても、何かそれでよしと言えないじゃないですか。じゃなくて、私はもうちょっと大きく出て、この技術ができたら世界の戦争とか紛争が止められるんだと言うと、何かやる気になるというかね。何かいいなという感じが、プレーヤーとしてはあります。そういう気持ちでやっています。

 そのためにはこだわりがあって、やっぱり白金使わないよねとか、絶対、化石燃料から電気エネルギーへのシフトがやっぱりキーなんですよね。電気エネルギーの一番の魅力は、世界中、どこででも作れることですよね。発電方法は、石油が取れれば火力でもいいだろうし、ソーラーや風力でもいいし、日本みたいな高低差の多い狭い国土だと水力みたいな選択肢もあるし、電気というのはやっぱりそこが21世紀のエネルギーとして一つの魅力かなと思います。難しいのは、その電気をどうやって貯めて運ぶかなんですけども、化け屋なので、化学変化により、運びやすい物質に変えて、それを運んで、もう一度発電しようという、そういったものにチャレンジをしています。この燃料電池車が普及することにより、資源にまつわる紛争をなくすことができれば、「ものが人を幸せにする」につながる2つ目の仮説の証明になることを期待しています。

 先ほど申し上げたプレーヤーとしての2回目の空白が、材料開発室長という時代だったんですけれども、そのときちょうど西暦2000年でミレニアムだったので、ちょっと遊び心もあるんですけれども、室メンバーと一緒に世の中を見渡す活動をしました。当時、今もそうかもしれませんが、3つの革命的な科学技術というのがあって、それが今後の世の中を変えていくよ。バイオ、それから、IT、ナノテクという、この3つのテクノロジーなんですけれども、それってどうやって生まれてきたのかなと考えると、そもそも神様が創った生命とか精神・知覚みたいなもの、それから、物質、こういったものがまず最初にある。

 そしてここから、例えば雨上がりに虹を見て、わっ、きれいな、不思議だなと思うような気付きがスタートなんですよね。生命を見て、ああ、すごいな。動物の赤ちゃんが生まれるのを見て、すごいな、どうなっているんだろう。あるいは病気になったときになぜなんだろうと、そうやって謎を解き明かすのが科学なんですね。これは解明です。

 科学までは罪がないんですけれども、それを次に自分の都合のいいように操作するというのが技術だと僕は思っています。技術というのはエゴの固まりなんですね、絶対。例えば先天的な病気をDNAの治療で治すというんだったらいいんですけれども、それができるようになると、いや、もう風邪を引いてもDNAで治そうとか、じゃ、例えば韓国で整形がはやっていますけれども、鼻の高いアジア人を造るために、ここのDNAを傷つけたらいいよとかね。人間って絶対そういうことをしたがるんですよ。自分の都合のいいように何かを変えていこうと。私も材料屋なんですけれども、自分の都合のいいように材料を変えていくというのがナノテクノロジーなのかなと、そのように思っています。

 そこで、先ほどもちょっとお話もあったんですけれども、亀井さんのお話で、何を作るかよりもどう作るかが大事だよとおっしゃったんですけれども、僕は全く逆を思っていて、どう作るか、それはもうプレーヤーに任せておいてくれと思うんです。何を作るか、についてもマネジャーがそれを語るなよと思っています。大切なのは、なぜ作るの?語ることだと。これはWhyと、WhatとHowなんですよね。Whyを語るのがやっぱりマネジャーだったり、リーダーだったりするんじゃないかなと僕は思っています。特に文部科学省の方々へ、この場を借りてお願いしたいのは、やっぱり夢と哲学を語ってもらうとプレーヤーはついてくるのかなというふうに思うんです。ちょっと甘いかもしれませんが、私からのお願いとして、そこは是非聞いていただきたいなと思います。

 この世の中を見渡す活動をしたのが2000年だったので、2という数字にこだわって、まず最初にやったのは、過去2万2,000年までの乗り物の歴史年表をこのようなテーブルに自分たちで作りました。当時はインターネットもそんなに発達していなかったので、かなりの本を読み込んで、15人ぐらいの集まりでやったんですけれども、いろんなことを書いています。私が好みで、お釈迦さんの言葉、「走る車をおさえるように湧き起こる欲望をおさえる者」を、人は「御者」と呼ぶという、これはダンマパダというお釈迦さんの説教であるんですけれども、そういうことを挙げたりですね。あとは、自動車ジャーナリストのローレンス・ポメロイというすごいかっこいいおじさんが、ロールスロイスのシルバークラウド発売時のインプレッションを書いているんですけれども、「あなたがロールスロイスを運転している時、一番うるさいのはあなたの腕時計です」。その言葉、僕はしびれるんですけどね。年表をまとめるときに、こういうこともちょこっと入れながら手作りで進めて行きました。

 例えば、ここは黄色でマーキングしていますけれども、1901年の北米の自動車の生産台数で一番多かったのは蒸気自動車なんですね。1,600台以上あって、2番目が1,500台あるEVで、3番目がガソリンで、それは1,000台を切っていたんですね。これがなぜ変わったんだというのはひとつおもしろいんですけど、御存じのように1908年のT型フォードの登場です。だから、1901年の時代の人の自動車というイメージは蒸気自動車だったんだろうなと思います。そういうところで、モノが生まれるときと大量普及した姿というのはちょっと違うことがあります。EVは今も残っていますが、このときは御婦人に人気で、油やススでドレスが汚れないというのがEVだったと、そういうことです。このように自分たちで楽しみながら年表を作りました。

 この2万2,000年の年表を作ると気が大きくなって、今後200年に起こってくることも書こうねということで、未来の年表も書いて見ました。それは今も進行形で機密の内容も含まれ、私はもうダイハツ辞めちゃったので、それを持ってきてお見せすることはできないのです。私はその後、関西学院大学へ行っても、この100年の計というのを、学生たちと一緒に続けていますので、その辺を幾つか紹介したいと思います。

 私が過去からの科学技術の歩みなどを話していると、3年生の学生から、過去の車とかそんなことよりも未来の世界がどうなるかを知りたいんだということを言われたことがあります。彼に私が説明したのは、実は人間がこうやって歩いていますよねと。空間的には、目の前にあるのが、これは前で、頭の後ろは後ろですよね。人は後ろから前に向かって歩いていっていると。だから、前に向かうのは前進なんです。次に、時間にも3日前、きのうと行った前と、あさってとか10年後というような後ろがあります。ビフォーとアフターはこういう関係なんです。だから、時間に関しては、人間は過去を前に見ながら、後ろ向きに未来に向かって後ずさりしているんですよね。だから、過去は見えるんですけれども、未来は見えない。どうするかというと、我々がやっているのは、過去から現在までの続く姿をずっと追っていって、来たるべき100年後の姿を映し鏡に映して、それに向かって目標を立てて研究開発をしようというやり方をしています。日本の温故知新という言葉かなと思っています。

 そういうときに、今日現在で考えて、車にとってこれから起こり得る大きな変化点というのは何かなというと、ここは皆さんもそう思われているんじゃないかと思うんですけれども、まず自動運転。これが普及していくと、世の中の車あるいは生活が変わるよねと。もうひとつ大事なのは、今、車がどんどん電動化されていますけれども、いずれにせよ、大きなエネルギーを車の中に埋め込んで、しかも、それが昔のエンジンとガソリンの組み合わせじゃなくて、CO2も出さないし、静かだということがあるのかなと。

 もちろん個々の技術開発ということにおいては、1番目の自動運転のためにはセンサなどの認識だとか、通信制御などの要素技術が必要です。それから、2番目のエネルギーだと、バッテリーとかスイッチング素子とかパワエレデバイスとかそういった開発が必要です。それはプレーヤーがやるとして、変化点で私が気になるのは、車そのもののイメージというか、佇まいが変わってしまうような変化です。

 これも、2000年に仲間でまとめたんですけれども、BC2万年から、金属、無機、有機、複合といった材料のシェアの変化です。昔は石器の時代で、あるいは木材を使っていたので無機材料と有機材料がほとんどでした。ワラ壁なんかは藁と土、即ち有機無機の複合材料。そういうものを使っていたところから、青銅器が生まれて、鉄器が生まれてとなって、それで、産業革命があってから鉄がガーンと増えています。おもしろいのは1963年に金属がピークを迎えて、今、減っているんですね。この金属というのは、大きさとか強さへの憧れで、アメリカのマンハッタンとかああいう巨大ビルの、ああいうのを見ると、本当に時代を感じるんですけれども、そういったもの、木材から鉄へ行くことによって、建築とか造船とか、規模が拡大した訳なんです。

 私は1957年生まれなんですが、子供の頃はお風呂へ行くのも金だらいで、お菓子が入っているのもブリキの一斗缶でお煎餅を出して食べたというのが、ところがもう、全部ペットボトルとプラスチックの容器ですよね。世の中がそうなっていて、何の違和感もないんですけれども、車を考えたときに、例えば1トンの車で、ほとんど金属なんですよね。それは、ぶつからなくなったら、亀井さんもおっしゃっていましたけど、重量は半減できるんですよね。要は、衝突安全の乗員保護をするために、あれだけ頑丈な重い車となっているんです。まあ、強さと大きさの象徴なんですけれども。

 全自動運転になって、ぶつからなくなれば、車は重量を半分にしても全然問題ないと思っています。その方が運動性能もいいし、燃費もいいし、いいことだらけなんですね。そういったソフト、ライトボディに代わるということと、かつ、やはりCO2の固定化を考えると木材や自然素材を利用していくように変わると期待しています。こうなってくると、ナノテクのテーマというよりは、本当に一般材で、家庭にあるその辺の材料で十分事足りちゃうんですけれども、そういうふうにやっぱり向かうのかなとは思います。ただし、もう釈迦に説法になりますが、ぶつからないクルマ社会が成立するには、新しい技術だけじゃなくて、レトロフィット、使用過程車にもそういう技術が後付けで採用されていくというところの地道な活動もやっぱり同時に必要かなと思います。

 実際に、Morganという会社がイギリスにありまして、こういった4/4という車を作っているんですけれども、木骨なんですね。家具を作るようにこれは全部木骨で、鉄板とかアルミ板をネジ、くぎで留めている車です。この話をすると、まあ、そんな木造の車なんて、そんな長持ちしないんじゃないかと言いますけれども、実はこれは私が乗っている車なんですけれども、40年以上経っています。さすがに40年経って、木が大分腐っていたので、レストアはしたんですけれども、40年ぐらいは木造の車でも普通に公道を走って耐えられますと。このBMWの2,000ccに比べて半分ぐらいの重量になっています。このMorganが衝突安全を考えているかというと、まあ、それはかなり怪しいのですが、衝突しなければこんなぐらいの重量で済むのかなというふうに思います。電気自動車になったとしても、ボディ重量が軽くなれば、バッテリーも今の容量を積む必要はなくなりますので、いいことずくめかなと思います。

 もうひとつの大きな変化である、車が大きなエネルギーを持ったときにどうなるかなというと、これはもう学生と話していて、1人の学生が言ったんですけれども、車の中に住むんじゃないのということですね。今でも大災害のときにV2H(ビークル・トゥ・ホーム)で、日産さんのEVリーフとか、トヨタさんのFCVミライから住宅に電気を供給しようという、エネルギーマネジメントの考え方があります。災害のときは、ミライが1台行けば、1週間、家族が過ごせますよみたいなこと言われていますけれども、やっぱりそういうふうになっていくと思います。また、アジアとかを考えていったときに、まあ、家を買ってどうこうするよりも、こういう車で生活できれば、それで事足りる。しかも、季節によって自分の好きなところに行けるとかですね。あるいはプライバシーを守るとかですね。これがどのくらいメジャーになるかは分からないんですけれども、一つの変化の方向としてあるのかなと。どんどんそういう意味では車のステータスというのはあんまりなくなってきて、一般の家とか家財品みたいになっていくように思います。

 それで、私自身の「モノは人を幸せにする」を車に例えたときに、車は本当に人を幸せにするのかなということです。これは先ほど亀井さんも言われていましたけれども、1900年に日本人の平均寿命、40歳で、2000年に80歳になったので、このまま行けば、直線回帰すれば、2100年に120歳。専門家の方がいらっしゃる前で失礼ながら、霊長類の心拍数でいうと120歳ぐらいが限界だというふうには聞いていますので、その辺まで死ねなくなると。いろんな電極やチューブが頭や身体に埋め込まれて、なかなか死なせてくれないみたいになると思います。

 そういう時代に、例えばどんな車を作っていったらおもしろいかなということを考えています。私の周りにも車に乗ったら人が変わるというやつは、結構いるんですけれども、それの逆もあるんじゃないのと。凶暴なやつが、車に乗れば何かすごくおとなしくなるということも考えると面白そう。例えば、コミュニケーション。ふだんは喋れないけど、車の中だったら喋れるよねとかね。何かそういうのも含めて、車というのは新しい生活空間になるとか、あるいは走れば走るほど健康になるとか、そういうところを追求していけば、車は人を幸せにするみたいなところに、3つ目の仮説の証明ができていかないかな、というふうに自分では思っています

 きっとそこには反動で、やっぱり車ってバイオレンスだねというのは絶対あります。全自動運転になったときのカーレースってどんなんだろうみたいな話を学生としていて、多分、全自動のロボット同士を争わせていても盛り上がらないよなと。やっぱりロボット vs. 人間みたいなのが一般盛り上がるよな、みたいな話がありまして、これはほとんど付け足しなんですけれども、衝突回避や事故回避システムに守られた中でのコンペティション、そういうこともあれば楽しいなと思っています。

 ここでもうひとつお話ししても、時間いいでしょうか。基礎研究とか中央研究がはやらないよねという話を事前にお聞きしていました。それには思うところがあります。この話は、私は自分のチームにいつもしていて評判が非常に悪いのですが、メンデルの遺伝の法則というのがあります。これはエンドウマメの花なんですけれども、AA、aaの親がいると、子供は全部aの組み合わせなので、第1世代は全部優性遺伝のピンクの花が咲きます。ところが、第2世代にすると、AA、Aa、aaというように、3対1の割合でaaが生まれますよというのが、メンデルが見出した遺伝の法則ですね。

 実際に観察をすると、705対221で、ほぼ3対1ぐらいでしたよねということなんですけれども、これを私は1980年、22歳のときに、大阪市大の生物の先生から話を聞いて、それ、すごいおもしろいなと思ったんですね。研究開発はこれだなと実は思っていまして、これは遺伝荷重と言うんですけれども、要は、優性遺伝がこの環境で適合が作れていて、劣性のやつをどうやってリカバーしてやるかと。例えば1万人に1人の割合でしか劣性が生まれない種族と、1万人に100人とか、3人に1人、そういうのが生まれる種族が、この限られた空間で、生存競争すると、当然、優性遺伝の比率の高い種族が勝ちますよね。でも、ではなぜこういうシステムが生まれるかというと、ある日突然、環境が変わって、前提条件が変わったときに、ひょっとしたら次のその環境では、この劣性遺伝が自分たちを支えてくれるんじゃないかと。それもバクチなので、そうじゃないことの方が多分多いと思うんですけれども、そういうシステムが意思を持たない(と思われる)植物にもちゃんと備わっているのが、私にとってすごく重たい事実で、種の保存のためのこういう仕組みがあると。

 企業における研究開発というのはそれだよねと。あるいは中研、基礎研というのはそれかなと思います。だから、今、金もうけをしている人たち、商品企画をやったり、生産をやったりしている人たちがいいと言われるテーマをやっているようじゃ、あかんのちゃうかと思っています。むしろ、それは、先ほどもありましたけど、そんなことが本当にあればいいよね、でも、やれないよねと言われるようなテーマの方が、そもそも我々劣性遺伝のグループ存在意義だというふうに思ってやり続けるというのが大事なんです。とにかく優秀な方が優秀な成績のまま中央研究所に入られているというのが、ちょっと危惧されるところかなと勝手に思っております。

 これは概念なので、ほんまに劣性遺伝が環境の変化により強みに変わるなんてことがあるんか、というのが私はずっと気になっていました。2000年に研究開発とメンデルの法則みたいなことを書いたんですけれども、5年ぐらいたったときに、実はあるニュースでこういうのを見ました。地中海貧血、サラセミアと言うらしいんですけれども、アメリカで成人男性、しかも、ガタイがよくて、例えば黒人のプロバスケットボール選手なんかが夜中に突然、心臓発作を起こして、ひどいときは呼吸困難で死んでしまうというようなことがあって、それはどうも調べてみると、アフリカ系アメリカ人、特に地中海沿岸出身者に起こると。このような正常な赤血球に対して、赤血球が鎌状になって、酸素を運べなくなって、呼吸困難に陥るという、先天的な病気らしいんですけれども、無形成発作ということですね。

 これはどういうときに起こるかというと、疲れたときとか、あるいは低酸素の状態になったときに起こるので、非常に激しい運動をした後とかそういったときに、脱水、感染、低酸素に会うと、突然起こると。昨日まであんな元気な人が突然亡くなったとか。でも、この鎌状赤血球を持っている人たちは、実はマラリア耐性があるということがそのときに発表されて、ああ、あのメンデルの遺伝の劣性遺伝のシステム、本当にリアルワールドで働いているんだというのが私にとってすごく勇気付けられることでした。

 そういうことで、私の今日のお願いとしては、私はプレーヤーにこだわっているので、やっぱり自分の人生を懸けて向かっていける夢が必要です。HowとかWhatはプレーヤーに任せておいてもらっても、国のプロジェクトはWhyの部分を語っていただきたいなというお願いがひとつ。それから、もし国プロで10件採択する時に、審査の先生方の評価の高いものを10件選んじゃまずいんですね。1件ぐらいは、それはいいけども無理よね、といわれるような評価の低いやつを拾っていただけるとうれしいかなというようなことを思います。

 今日は100年の計を語り、私自身の30年間の仮説を紹介し、天下国家だけでなく全人類の平和を、というような取り留めもないお話しをさせていただきました。このような機会をいただき、明日60歳の誕生日を迎えるにあたり、自分自身の振り返りと、これから向かう道の再確認ができたことを改めて感謝申し上げます。

 最後、おまけです。大阪生まれなので、おまけが大事なんですけども、つい先週ぐらいかな。インターネットを見ていると、100年前のドイツのチョコレート会社、ヒルデブラントがおまけに付けていた、この2000年の未来の絵というのが12個紹介されていまして、これを見ていると結構おもしろいなと。みんなが15年後、30年後の未来を言えというと難しいんですけれども、100年後だと割と当たっているのかもしれないと思ったので、1枚スライドを付け加えさせていただきました。どうもありがとうございます。

【中山主査】  どうもありがとうございました。インテリジェント触媒に関しては、文部科学省が10年ぐらい前から元素戦略の施策の中でファンディングしておりました。よかったと思います。

 余り時間がなくて申し訳ありません。御議論を頂ければと思います。「モノは人を幸せにする」とかもございました。近藤委員、どうぞ。

【近藤委員】  非常に興味深いお話をありがとうございました。自動運転ですけど、個人的には少し、懐疑的に思っています。その理由は、本当にその自動運転を信頼して、人間がそこに委ねることができるのか。仮に事故が起きたときに、それが機械のせいなのか、それとも預けた人間のせいなのか。そういった話もいろいろ議論はあると思うんですけど、将来的に、この自動運転に関してはどういう方向に行くと先生は思われていますでしょうか。

【田中裕久先生】  まさしくおっしゃるとおりで、そこは私自身も非常に興味があるところなんですけれども、自動運転で、実はもう人が1人亡くなっていまして、御存じかもしれませんが、テスラがオートパイロットという完全自動運転のオプションを付けていまして、それでアメリカのお金持ちの方が走っていると、向こうは右側通行なので、対向車の大きなトレーラーが左折したときに、まずトレーラーの車高が高かったので、センシングしている領域でいうと結構空間があって、下がくぐれるという認識をしたのかもしれないということがあるんですけど、もう一つは、トレーラーの横壁が真っ白に塗ってあったので、ちょうど後ろからの光が反射して、どうも空と認識したんじゃないかみたいなことをいろいろ言われています。

 しかも、そのときのオートパイロットで、運転手さんはどうもDVD鑑賞していたんじゃないかというのが第一報で、裁判の結果は、テスラ側に落ち度はないみたいな話になったかと思いますね。でも、大分たってそのほとぼりが冷めてから、実はその亡くなった方はDVD鑑賞をしていたんじゃなかったと。DVDのメディアは差さってなかったみたいなのが小さく報道されたりしています。、本当になかなか難しいと思いますね。

 ですから、車側の技術だけじゃなくて、道路などの社会インフラ側の整備があって成立します。先ほどもちょっとありましたように、いくら世の中が変わっていっても、私みたいにまだ40年前の車に乗るやつがいますので、そういう何も、実は触媒も付いていない車なんですけれども、そういうやつがやっぱりいるので、相手からぶつかってくるというのがありますよね。ですから、本当に自動運転ってどうなるんだろうというのはありますが、よく皆さんがおっしゃっているのは、限定的に、例えばバスとか商用車みたいな一定のコースを決められて運行するものは自動運転がしやすいし、かつ、EV化との、これは非常にベストマッチで、充電、それから、消費電力をちゃんと計算してということも併せて、どんどん、世の中はある比率は、そういうふうになっていくんだろうなとは思います。

 特に学生たちと話をしていても、それはそうだろうなと。でも、絶対反動で、そうじゃない車に乗りたいとかいう一定の量はいるので、そのときの事故をどうするんだろうというのはずっと悩ましいことかなと思います。

 済みません。あんまり答えにはなっていませんが。

【近藤委員】  ありがとうございます。

【中山主査】  どうもありがとうございました。私が進行表を相当無視しており、もう既に終わる時間も過ぎております。本来であればここで全体討論ということでございましたが、十分な時間が取れません。ここで4人の先生方から、ほかの先生方のお話や議論も聞いて頂いた上で、最後にお話を頂いて終わりにさせていただければと思います。

 発表していただいた順番に、亀井さんからコメントやお話を頂ければと思います。

【亀井信一先生】  是非わくわくするような戦略をお願いしたいなと。そして、やっぱり目指すべき目標が非常に重要だろうと思います。その次にそれをどうやって実現するんですかと。従来からの方法ではやはりうまくいかないのではないかいうふうに思いますね。

 1点だけ、例のStage3の穴をどう埋めるかという話があったんですけれども、私が材料の事業部門に行ったときに、アジアのナノテクの研究所をずっと回っていたときがあります。半年間、半分ぐらい会社にいなくて、大ひんしゅく買いながらやっていたんですけれども、おもしろいなと思うのが、国研がアジアだと、例えばインドの粉体研究所は最初からサイロみたいなところで実験しているんです。粉体科学は、要するに、テーブルの上でうまくいっても、スケールアップは必ずしもうまくいかないということが多いので、だったら、最初からサイロでやろうという戦略ですよね。

 あと、韓国の半導体の国立研究所も、びっくりしているのは、生産に棒グラフが書いてあって、隣に青でこう書いてあって、隣、赤で、これは何ですかというと、目標に対する生産数ですというふうにちゃんと書いてあるんです。もちろんStage3をどうするかというところに関しては、そういううまいやり方があるというのも少し参考になさったらどうかなというふうに思います。

【中山主査】  どうもありがとうございました。

 田上先生、どうぞ。

【田上英樹先生】  今日はありがとうございました。材料分野について、サーキュラー・エコノミーという観点からお話をさせていただきました。ほかの先生方のお話を伺っていても、材料は開発に長い時間が掛かるということなので、やはり「将来」の捉え方ものが5年や10年ではなく30年と言った形で考える必要があるということが良く分かりました。30年となれば、本当に想像力を豊かにして考えて行く必要があると痛感した次第です。私自身、1年程前には、サーキュラー・エコノミーについて殆ど意識して生活しておりませんでしたが、実は相当世界の一部では既に進んでいたと、この一年で気付かされた部分があります。その点、やはり情報の扉をかなり広くして、将来を考えて行く必要があると思っています。情報を取るという意味では、我々が見ているネットのニュース等も実は自分の閲覧履歴を基にアルゴリズムで提供されたものであったりします。自分ではいろいろ幅広く情報を拾っているつもりが、実は、ネット上で上がってくる情報は同種の物ばかりであった、ということが現実に起こっているわけです。アルゴリズムによるいわゆる「過剰最適」の問題です。こういう時代なので、そこも予め理解した上で、自分の情報収集の範囲を広げて行かないと、今後の30年スパンのメガトレンドは見えてこないのではないかと考えています。私自身も含めて意識してまいりたいと思っております。今日はありがとうございました。

【中山主査】  ありがとうございました。

 木場様、お願いします。

【木場祥介先生】  先ほどお話ししなかったところで、幾つか論点でありましたマネジメント、マネジャーという話があったと思うんですけれども、参考までにベンチャーキャピタルにおいて、こういった新規事業をやるときに何を一番重要視しているかというと、実は先ほどのオンリーワンからナンバーワンの技術かというのはまず当然なんですけれども、実は一番重要視しているのは人です。これは是非御参考までにというところなんですけれども、素材というのはとかくハードルが高くて難しくて長いので、夢を語り、みんなを引っ張って、わくわくしながら果敢に取り組むというような姿勢が極めて重要でございまして、これこそが先ほど御指摘もありましたけれども、やはりマネジメントの基本なのかなと、我々は考えております。

 アカデミアの先生などいろいろと御議論させていただくことが多いんですけれども、当然、研究という観点で非常に重要になると思うんですが、研究マネジメントですとか、そういった人を育てるという観点で、特にこのような材料分野においては、今後重要になってくるのではないかという感じがしておりますので、そこを是非御検討いただけるとありがたいなというふうに思っております。

 以上です。

【中山主査】  どうもありがとうございました。

 田中先生、よろしくお願いします。

【田中裕久先生】  どうもありがとうございます。今日は実にパーソナルな、個人的なことばかり話をしまして、申し訳なかったですけど、4番目なので、色物で許していただきたいなと思います。

 私は、先ほどからマネージングという言葉があって、実はマネージング不要論という姿勢を貫いてきているんですけれども、プロデュースというのは要ると思っているんですね。だから、私、プロデューサーとマネジャーというのは大分違うものに位置付けているんですけれども、マネージングというのは今、目の前にあるものをやりくりしているというイメージがあるんですけれども、今、木場さんがおっしゃったような夢を語るという意味においては、プロデューサーという、こういうものがあったらいいよねと素直に一般の人にも分かるようなものを、科学をわかりやすく翻訳するというかな。そういうところというのは結構重要かなと思います。

 特に最近の学生や若い研究者を見ていると、みんな素直で、無防備で、技術をやっていると数値が少し上がると、出力が1ミリワットでも上がると、もう純粋にうれしいと喜んでしまうんですよね。それってとても危険で、どこへ行くのかということを間違うと、本当に世の中に大量に、1万個も要らないもの、危険なものを出してしまうみたいなことになるので、やっぱりそういう純粋な人たちを束ねて、あるべきところに連れていくというようなプロデュースを是非、そこに時間を掛けて、議論をしていただけたらうれしいかなと、そのように思います。

【中山主査】  どうもありがとうございました。今後の推進方策、分野を取り巻く状況、次のパックがどこにあるかという話など、非常に参考になるお話だったと思います。今後の検討に際しても御意見を頂くことがあると思いますが、よろしくお願いいたします。

 時間も過ぎておりますが、最後にその他の事務連絡を事務局よりよろしくお願いします。

【丹羽専門職】  本日はありがとうございました。次回の作業部会につきましては、現在、日程調整を行っておりますので、改めて御連絡をいたします。今日の議事録につきましては、事務局で案を作りまして、委員の皆様に御確認いただいた後、ホームページで公表することを考えております。また、資料につきましては、机上に置いていっていただけましたら、後ほど送付することも可能ですので、御相談ください。よろしくお願いいたします。

【中山主査】  どうもありがとうございました。本日は時間を超過してしまい、進行表を大幅に無視するような議事の進行で大変申し訳ございませんでした。

 それでは、本日の委員会、検討部会は終了させていただきます。どうもありがとうございました。先生方もどうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 

―― 了 ――

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(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)

-- 登録:平成30年08月 --