ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年8月2日(水曜日)14時~16時

2.場所

16階 科学技術・学術政策研究所会議室

3.議事録

【中山主査】
 お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまより第2回ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討部会を開催させていただきます。
 本日は、この分野における今後の取組に関してご意見を頂くために、九州大学の安達千波矢先生、東京大学の竹内昌治先生、東北大学より田中秀治先生にお越しいただいております。この後プレゼンをしていただきますので、積極的な御議論をお願いいたします。
 早速ですが、事務局より委員の出欠及び配付資料の確認をお願いします。
【丹羽専門職】
 事務局です。
 本日は関委員、染谷委員、林委員が御欠席となっております。また、当省より関研究振興局長、板倉研究振興局審議官が出席をしております。
 本日は、議事次第にもございますとおり3名の先生方より御発表いただく予定となっております。そのうち九州大学の安達先生、東京大学の竹内先生のプレゼン資料につきましては、机上配付資料とさせていただいておりますので、メイン席のみの配付としております。
 配付資料1と2、机上配付資料も1と2と二種類ずつです。配付資料に欠落等ありましたら、事務局まで御連絡を頂ければと思います。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございます。それでは、議事1に入ります。安達先生、竹内先生、田中先生の順に御発表いただきます。各先生より御発表いただいた後、それぞれ5分程度の質疑の時間をとります。また、その後全体の質疑時間も設けます。
 最初に、安達先生より御発表いただきます。
【安達千波矢先生】
 九州大学の安達です。本日、私の方で適切なお話ができるかどうか自身がありませんが、私自身が30年間取り組んできました有機ELの発光材料の開発の過程を中心に、ベンチャー設立のお話、そして今後、有機エレクトロニクスで一番大切な課題について、お話を差し上げたいと思います。
 こちらに、1つ分子構造が書かれていますが、実は、この分子は電流を100%の量子効率で光に変換できる分子です。有機ELは、軽量でフレキシブルな特性等のメリットがありますが、一番のポイントは発光効率が非常に高いことです。実は30年間かけて、私どもはこれを実現することができるようになりました。
 こちらには、有機EL発光材料の変遷が書かれています。第一世代が蛍光材料です。有機物で光る物質は99%が蛍光材料です。実は、2000年ぐらいから室温りん光材料が登場しました。この材料は有機金属化合物、中心にイリジウムを含んだ有機金属化合物です。りん光というと、皆さん、77Kの低温下、液体窒素温度でぼーっと光っているというイメージを持たれるかと思いますが、実は、室温で強いりん光を示す分子です。現在、サムソンの携帯電話にはこのイリジウム化合物が実際に搭載されています。ただ、イリジウムは希少金属であることと、地球埋蔵量は実際2トン程度しか存在しないために、この分子を有機ELに使うことは大きなリスクを抱えていることになります。
 私どもは、イリジウムを使わないで高い発光効率を得る技術に取り組みまして、それがこの第三世代の遅延蛍光分子になります。この化合物は、炭素、水素、窒素の3つの元素のみから構成されているため、非常に安いコストで100%の電気-光変換を実現することが可能になります。
 現在では、この技術が第四世代へと進化しており、この遅延蛍光から蛍光材料にエネルギーを移動させ、最終的には第一世代の蛍光分子から100%の発光効率で光を取り出すことができるようになりました。私どもでは、この九州大学で開発した第三世代、第四世代の発光分子を、順次、実用化していきたいと考えているところです。
 こちらに、もう少し詳しくこれまでの発光材料の変遷が書かれています。有機ELは今から60年前にアントラセン単結晶を使ってスタートしました。その後、大きなブレークスルーが、1980年代後半の積層デバイス構造、その後2、000年頃の室温りん光材料、そして、熱活性化遅延蛍光(TADF: Thermally activated delayed fluorescence)へと現在まで進展しています。しかし、材料の研究は、留まることがなく、最近では、MADF(Metal assisted delayed fluorescence)のアイディアも発表され、材料の進化は本当に止まることなく進化して行きます。
 2009年に、私どもは、TADFの根幹となる技術の発表を行いました。Advanced Materials誌にSnF2OEPを発光分子として用いると電気励起下でTADFが発現する技術の発表を行ったのですが、そのときの発光効率は、僅か、0.1%でした。僕らは、電気励起下で三重項励起子を一重項励起状態にアップコンバージョンできる確証を得たと思ったのですが、僕らの発表を聞いた多くの研究者たちは、“大学の研究としてはおもしろいけど、実用にはほど遠い”と感じていました。
 2009年、私どもは、科研費の萌芽研究で、本テーマをサポート頂きました。その後、内閣府のFIRSTのプロジェクトをスタートさせまして、約2年半という非常に短期間で、0.1%から100%の発光効率を実現し、2012年の12月にNature誌に発表を行いました。  TADFは、まさに、日本発の究極の有機ELの発光分子です。この発表の後、世界中で我々の研究の追試が行われ、昨年度だけでも、200本に及ぶTADFに関する論文が世界中から発表されているという状況にあります。世界中の研究者によって、この技術は確かに電子を100%の量子効率で光に変換可能な材料であるとことが確立されました。
 私どもは、大学から生まれたこの革新的な技術を実用化したいという思いを念頭に、戦略的な特許の取得も行っていきました。技術のコアとなる幾つかのパラメーター特許、そして、TADFの個別の材料に関する特許、そして、最終的には約50件の特許の取得を行いました。
 そして、2015年に九大発のベンチャー、Kyulux Inc.を設立しました。Kyuluxの名前は、九州の”Kyu”と、”lux”は光の意味を持っています。現在、30名程度の社員が在籍しており、実用化開発を進めています。福岡と米国のボストンの2拠点に開発拠点を設置をしています。
 ベンチャーを始めるときに、資金調達は非常に苦労しました。私自身も、国内のVCや企業を延べ200社ぐらいを回ったと思います。シリコンバレーにも行きましたし、国内外を回ってお金集めに奔走しましたが、なかなか集まらず、結局、トリガーになったのはサムソンとLGが出資するということが決まって、その後、一気に日本の企業さんからも出資を頂きました。JSTにも1億程度出して頂き、トータル15億円のファンドを集めてベンチャーをスタートさせたました。
 Kyuluxは、単にTADFの材料開発の視点だけではなく、将来を見込んで、AI技術に着目し、この分野で優れた業績を上げていますハーバード大学のAlan Aspuru-Guzik教授と連携し、人工知能を使って網羅的な分子設計を行っています。ボストンで分子設計を行い、福岡で材料合成を行い、できるだけ低コストでハイパフォーマンスの材料を作る体制が整っています。
 現在、TADFの研究開発は、ベンチャーを立ち上げ実用化開発が軌道に乗りつつあるところですが、今後の研究展開について次にお話を差し上げたいと思います。
 第一点目は、再び、基礎研究(Zero to One)へのチャレンジです。私たちOPERAでは、大学のミッションは、“Zero to One”への挑戦であると考え、誰もが難しいと思っている課題に対して積極果敢にチャレンジをして、新天地の開拓をミッションとしています。そして、二点目は、アプリケーション、デバイス、材料技術の垂直統合が重要であるという視点です。三点目は、ヘテロな異分野の研究者の集積が必要であるということ。最後に、基礎研究における知財マネジメントと予算確保です。今、産学連携、産業界の強い連携が強く推奨されますが、私どもは安易な産学連携には大きな疑問を持っております。産学連携による実用化展開は大切と思いますが、私どもは、大学初ベンチャーへ重点を置いて実用化開発を進めて行きたいと思っています。
 こちら、私がこれまで歩んできたOLEDの研究開発の歴史です。1987年からスタートし、このTADFの技術にたどり着くのに約30年もの月日がかかっています。私はここで強調したいのですが、やはり基礎研究は30年の歳月がかかっています。ですので、研究者に対する長期のサポートは、とても大切と感じています。今、TADFの技術が離陸して、実用化開始が進んでいます。有機ELの商品化は残念ながら日本のメーカーは非常に厳しい状況にありまが、韓国、中国、アジア諸国で生産が始まっています。ただ、材料に関しては、日本は未だ強いポジションを保っています。
 今後の有機デバイスの研究開発の方向性につきまして一つだけお話ししたいと思います。私どもは、“耐酸素・水分性を有する有機デバイス”の実現が次の大きな研究開発の方向性であると思っています。有機デバイスの大きな弱点は、水や酸素に対して非常に脆弱であることです。それに対して、根本的な処置がとられていないので、徹底的な封止を施すことで実湯岡に繋げていますが、これから将来、例えば有機デバイスを生体の中に入れて駆動する展開も考えられますし、それから、低コストの観点からは簡単な封止で動作可能なデバイスが必要となります。その意味からは、耐酸素・水分性を有する有機デバイスを実現していく、それも、材料レベルで実現していくことがこれから大きな課題であると考えています。もし、この技術が突破できれば、巨大なマーケットがあると思います。しかし、言うのは簡単ですけども、実際は困難な技術課題であり、もし私がここで答えを持っていたら、今日はこの件につきましては発現しなかったと思います。今日は、皆様に、有機デバイスの視点からは、このような課題があることをお話しすることで、一つの研究開発の方向性を示せるといいかなと思っています。
 それから、直近では、私どもは、“有機半導体レーザー”、それから、“蓄光・蓄電デバイス”、“光電変換デバイス”に焦点を絞っており、これらの課題につきましては、ERATOのプロジェクトで取り組んでおります。有機分子における新しい励起子機構の開拓によって、有機光化学や物性物理を基礎とした新しい励起子機能の開拓、そして新規なデバイスの創出につなげて行きたいと考えております。
 それから、私自身は材料に主軸をおいた研究者ですが、材料屋でさえ、アプリケーション技術との融合には、大きな危機感を感じています。今、世界は産業構造の階層性が急速に進んでいます。一番上位がアプリケーションプラットフォーム、これはグーグル、アマゾン、フェイスブック等に全部に押さえられています。それから、デバイス製造産業の部分、ここの部分は、従来、日本は強かったのですが、現在では、韓国や中国における巨額な先行投資によって、特にフラッとパネルデバイス製造産業は両国に完全にシフトしてしまいました。素材産業の部分においては、日本は未だ優位を保っていると思いますが、ここの部分もいつまで優位性を保てるかは分からない状況にあります。
 しかし、革新的な材料が見つかれば、まさに、オセロゲームのように、黒が全部白に変得ることも可能であり、ゲームチェンジングなマテリアルの創生は、産業を支える視点からもとても大切であると思っています。そして、単に材料研究だけではなくて、デバイスとの相関やアプリケーションプラットフォームとの連携を研究の初期から視野に入れつつ、材料開発を進めていくことが大切であると考えています。
 それから、研究開発体制として、世界中からヘテロな研究者を集積するとことが必須であると考えています。私どもの研究センターは、今、35%が外国人です。この中には、例えばアルジェリアの一番左側の彼女は、数学オリンピックで優勝しており、シュミレーションで優れた研究成果を挙げています。こちらの、スリランカから来ている研究者は日本時を凌駕する実験のスキルを持っています。とても、実験がうまいんですね。専門性の異なる人材をうまく集積して、リエゾンさせて研究開発を進めていくことが大切であると考えています。特に材料開発におきましては、材料設計、材料合成、光・電子物性、実デバイス評価というサイクルをきちんと回すことが要求されますので、異分野研究者の集積は必須になります。
 最後に特許に関してですが、FIRSTのプロジェクトにおきまして、私どもは、国内で102件、海外117件の特許出願をしています。ただ、この特許をプロジェクトの予算で確保していくことはすごく大変です。実際に私どもは、重要な特許を50件に絞り込んだんですが、50件でも国際出願まで考えますと約3億円程度の予算が必要になってきます。特許の費用はプロジェクトが終了した後に発生します。例えば、5年間プロジェクトが終わると、6年目、7年目、8年目に特許に関する費用が発生するんですが、その費用はプロジェクトでは担保されていないので、私ども非常に苦労しました。特許の予算を確保するために考えられない苦労をました。ベンチャーを作ることの一つの意味は、ベンチャーで特許を維持することです。特許に維持管理に関しては、是非、国として何らかのサポートや仕組み作りが必要です。繰り返しますが、プロジェクトが終了した後に多大な費用が発生することをまずは考えて頂きたいと思います。
 最後に、これから日本を変えていくのは、産学連携を積極的に進めて民間企業の予算を大学に入れるために、皆間企業との連携を強く推奨されます。それは一つの方法だとは思いますが、私自身は、大学から竹の子のようにベンチャーを作っていくことに重点をおいて行きたいと思います。やはり新しいことを動かすというのは、10人とか20人の意思のあるメンバーが集い、強い情熱を持った人たちが集まってやることが成功に繋がると思います。そういうベンチャーをたくさん作っていき、例えば100社のベンチャーを作って、その中から、一つでも二つでも、うまくいけばいいというぐらいの枠組みでやっていく必要があるかなと思います。シリコンバレーも何度も見に行きましたけども、シリコンバレーにいる人たちというのは、シリコンバレーという地に就職しているんですね。それで、1つのベンチャーが失敗しても、また、次の会社に積極的に移っていく、また、それがだめでも次に移っていく、3つ、4つベンチャーを潰した後に成功することが、一つの成功モデルとなっています。今後、例えば九州大学からベンチャーが10社、20社と出てきて、その中から1社、2社がうまくいって、それが次の研究、また基礎技術につながっていくという流れを作っていくことが必要かなと思っています。そのためにはトップクラスの基礎研究者、実用化を担う技術者、アントレプレナーシップを持った経営者、ベンチャーキャピタルの集積を進めていくことが大切と思っています。私どもの研究開発の根っ子は材料研究ですが、革新的な材料が生まれれば、世界を大きく変えることができるんじゃないかと私どもは期待しています。
 ちょっと駆け足になりましたが、以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 ただいまの御説明内容に関しましての御質疑、御討論等をお願いします。生越先生。
【生越委員】
 ありがとうございました。すごく興味深くお聞きしたんですけども、最初のところで個人的な興味で教えていただきたいんですけれども、イリジウムが2トンしかないというのは、具体的に今の調子でイリジウムを使っていったら、何年後ぐらいにはなくなるとかということは予想されるんですか。
【安達千波矢先生】
 そうですね。1つは回収しようという動きもございます。実は、成膜で使用される材料使用効率は約5%ぐらいで、95%捨てていますので、それを回収することも実際にやられています。多分、有機ELはこれからテレビや照明に使われていきますと、多分10年もつかなと私は推定しています。ただ、ある人に聞いたら、Irは、あるところにはあると言われて、どこにあるのと聞いたら、隕石の中にはいっぱいあるし、あと地球の6,500年前の地層を掘るとそこには沢山のイリジウムがあると。
【生越委員】
 大分命がけで取ってくるパターンになりそうですね。
【安達千波矢先生】
 そうですね、恐竜がちょうど絶滅した時ですけども。
【生越委員】
 あと先生が開発された4CzIPNでしたっけ。コストが非常に経済的でいいというお話だったんですけども、例えば、これは現状のイリジウムのものに対してのその使える寿命というんですかね、そういうのはどれぐらい、それは凌駕しているのか、コンパラなのか、それとも。
【安達千波矢先生】
 基礎特性的にはほぼ同じものができています。あとは耐久性の部分を詰めていく必要がありますが、ただ、発光材料だけではどうしても素子性能を詰めることはできないので、ホスト材料ですとか、周辺材料とのバランスを組んでいけば、実用化は早い段階で、実はもう今年の年末までには最初の商品が出る予定になっています。ですので、かなり早い段階で実用化は進んでいくと思っています。今日、1個だけ分子構造をお見せしましたが、TADF分子は基本的にはドナーとアプセクターの組み合わせですので、実は無限に分子を作ることができます。そこはTADFの大きなメリットです。イリジウムは有機金属錯体なので、分子構造が限定されますが、このTADFの分子構造は無限の可能性があります。そのため、多くの企業は参入チャンスがあると思い、世界中の企業が、今、TADFの開発に取り組んでいます。
【生越委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 その他ございますか。どうぞ。
【内藤委員】
 特許のところ、ちょっと教えていただきたいんですけども、費用が後から出るというは分かるんですけども、やっている、開発している段階で、ポートフォリオを組んで、特許を面で押さえていくということをされると思うんですけども、そのときというのは、大学がサポートされているんですか、それとも例えばベンチャー企業がアプリケーション特許とかその周辺特許に関しては押さえていくのか、その辺をちょっと教えていただければと。
【安達千波矢先生】
 基本的には自分たちで全てパテントマップを書いてやってきました。私自身、有機ELの研究には30年の長い期間取り組み、企業に在籍した経験もあり、ほぼパテントマップが私の頭の中に入っていました。実践的なところは、有機ELのプロの弁理士の先生とタグを組んで、がっちりと取り組んできました。ただ、大学における特許出願には様々な問題があります。大学から出願する特許は、企業の特許とは大きく異なります。(ここの部分は、オフレコでお願いします)
【内藤委員】
 ありがとうございます。
 多分、恐らくそれが結構本質的なところで、材料持っていても、アプリケーションのところで押さえられちゃうと。
【安達千波矢先生】
 そうですね。
【内藤委員】
 出ていかない、だんだん弱くなって、アカデミックが弱くなってしまうので、そこをどうされるか。
【安達千波矢先生】
 そうですね。そこの部分というのは、僕らもちゃんと押さえてない部分があって、やっぱりプロジェクトやっているときに、少し権利の幅を広げていく必要があり、戦略的な知財が作れるといいと思いますね。
【内藤委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。渡慶次委員。
【渡慶次委員】
 大変おもしろい話、ありがとうございました。少し教えてほしいんですけれども、先生がおっしゃってたAIの研究者を組んで入れたというお話をされてたと思うんです。
【安達千波矢先生】
 そうですね。
【渡慶次委員】
 これからの材料開発にAIというのは、どういうふうに考えておられますか。
【安達千波矢先生】
 この視点は今後非常に大切であり、私たちの研究室の半分ぐらいはコンピュータを専門とする研究者に変えてしまいたいと思っているぐらいです。現在、DFT等の分子軌道計算は、例えば20年ぐらい前だったら、どうせ実験と計算結果は合わないなと思ってたのですが、最近では非常に精度が高いです。それも数日計算をかけておけば、大体結果が上がってきます。今日、お話ししましたドナーとアクセプターの組み合わせ、例えば5万個の電子状態が数週間で計算できる時代になっています。もう研究者が直感で分子設計をやっていた時代は終わり、コンピュータ網羅的にスクリーニングを行い、目星付けて、絞り込んだ化合物の合成を進める形なると思います。
 また、デバイス作製する研究者は、まる一日かけて素子を作製します。そこには無駄も多く、分子設計はAI、素子作成はロボットという研究スタイルもあり得ると思います。
【渡慶次委員】
 いや、そういうふうになってしまうと、そうしたら材料開発者、研究者というのは、具体的に必要なくなるということですか。
【安達千波矢先生】
 そうですね。でも、やっぱりイニシャルのここぞという分子設計はコンピュータにインプットしないといけないで、そこのところが研究者の役割になると思います。ここじゃなくて、ここという最初のところですね。でも、それ自体もスクリーニングかけちゃうという時代が来るかもしれないですけど。
【渡慶次委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 髙尾委員。
【髙尾委員】
 途中でおっしゃられた産学連携には懐疑的というところ、具体的にはどのようなことでしょうか。
【安達千波矢先生】
 そうですね。僕自身、産学連携物は最大限やりました。1年で例えば13社、15社やったこともあります。しかし、結局、企業側は、いい成果が出ると持っていっちゃうし、特許を共同で出願しても、共同研究契約、よく見ると企業の方にうまく権利が行くことになっているとか、大学は予算がないから、結局、権利の維持ができないという弱い立場です。企業の皆さんは大学の足下をもを見て、よく考えて大学と契約しているんですね。ですので、本当に大学は不利だと思います。あるときから企業との共同研究、産学連携は一切止めることにしました。その代わり、研究員や学生さんが頑張ってやった成果でベンチャー作ったらいいという方向に考えを変えました。苦しいときもありましたが、そこは国の予算をいただいて何とか研究やるという体制に大きく舵じを切り直しました。それが今に至っています。産学連携も企業さんとやる場合、企業と一緒にベンチャー作る方向がいいと正直思っています。
【髙尾委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 上杉先生。
【上杉委員】
 今の御意見、私は大賛成です。同じような考え方です。質問は全然違うんですけども、13ページのところで、ゲームチェンジングマテリアルとかそういうタイプのことを言われたと思います。この言葉にちょっと僕、興味ありまして、教えてもらいたいのです。そのゲームチェンジングというのは、いろいろなレベルのゲームチェンジがあると思うんです。多分、先生の言われたのは、ここで言うところのアプリケーション自身を変えてしまうようなものですか、どういうふうな意味で使われたのか教えてほしい。
【安達千波矢先生】  そうですね、いろいろな意味で、、、例えば、私どもがやったようなイリジウム化合物を使わないと絶対できないだろうと皆さんが思っていた発光材料の技術を一気に塗り替えるような技術です。また、本質的に水・酸素に強い材料が登場したら、本当の意味でのウェアラブルデバイスとかフレキシブルデバイスが展開でき、新しいアプリケーションが登場するだろうということです。
【上杉委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。最後に長めに討論の時間をとってありますので、そのときに更なる議論をよろしくお願いいたします。
 続きまして、東京大学の竹内先生から、よろしくお願いいたします。
【竹内昌治先生】
 竹内です。お招きいただきましてありがとうございます。今、私が一番興味を持っている話題につなげてお話しさせていただきたいと思います。  バイオハイブリッドアスタリスクなので、アスタリスクの中には何入れてもいいという意味でタイトルをつけました。例えば、バイオハイブリッドプロセスとか、デバイスとか、マテリアル、そういった分野に次世代は進めればいいという考えです。
 なぜバイオハイブリッドか。Society5.0ではサイバー空間、フィジカル空間でスマートな社会を作っていこうとしています。そのスマートな社会のときに、いろいろなデバイスシステムが重要ですが、すでに僕らモノづくり屋は、非常に性能の高いデバイスを作り出しています。ただ、まだ生体に見られるような特殊な機能、特異的な機能に関しては、僕らはまだ人工的では作り出せていません。例えば、分子レベルで高精度に選択性高く物質を認識してしまうセンサとか、産生効率の高い物質生産、あるいは自己増殖、自己修復等が上げられます。もちろん、いろいろな研究はされていますが、まだ工業製品としては出てきていない。であればその生体の材料を直接使って、人工物と組み合わせる「バイオハイブリッド」という考え方があるのではないかというのが僕らの研究室が進めてきたテーマです。
 これ、1995年ですから、私が卒論ぐらいのときなので、20年ぐらい前のスライドです。そのときに初めてバイオハイブリッドの研究を行いました。昆虫の足を切って、電気刺激を与えると、その筋肉の、屈筋・伸筋があるので、こうやって動くんですね。そうすると、いわゆるバイオハイブリッドアクチュエータができる。効率を計算してみると、普通のモーターよりも圧倒的によかった。ただ、これが製品になるかといったら、もちろんならないわけです。
 今、どんなことを考えているかというと、いわゆるボトムアップティッシュエンジニアリングで、細胞を組み合わせて、三次元の組織というのを作り込むことができる。それをデバイスと組み合わせますと屈筋・伸筋で、動かすことができる。これ骨格筋のアクチュエータになっているんですが、電気刺激をするとやっぱり同じように動きます。こういう研究というのは、実は日本は細々とされているのですが、アメリカだと大きな投資がいって、いろいろなバイオハイブリッドアクチュエータというのが続々と出てきています。研究としては非常におもしろい領域かなと思っています。
 バイオハイブリッドということで、例えばインプランテーション、人間の中に融合するというのも一つのバイオハイブリッドなのですが、僕らが今日お話ししたいのは、生体材料を既存の機械の中に入れて、素子として扱っていく方式についてです。バイオハイブリッドがどんな種類のデバイスに分かれるかというと、バイオハイブリッドのセンサ、そしてリアクタ、アクチュエータと3つに分かれると思っています。
 その先には、例えばバイオハイブリッドプロセッサ、神経ネットワークを駆使していろいろなことを考えてしまう話もあるかもしれないですが、現実路線としてはこのあたりが研究としてはやられているんじゃないかなと思っています。
 残りの時間、軽く私どもの研究に加えて、世界でどんなことをやられているかというのをお話ししたいと思っています。
 まずは、バイオハイブリッドセンサについて。生体素子はDNA、たんぱく質、膜たんぱく質、細胞、組織、あるいは個体と大きさ別に分類できます。DNAやたんぱく質であれば、DNA CHIPとかプロテインチップなどのようにすでにたくさんの製品が実用化されていますただ、膜タンパク質以降の製品というのはあまりなかったりする。
 機能で分けてみると、DNAとかプロテインって、いわゆる分子認識能に関しては非常に性能がいいし、保存・搬送ができるのが特徴かと思っています。
 ただ、それ以降の高次の組織、あるいはその器官みたいなのに使えるようになると、例えば分子認識能jに加えて、いろいろな生体特有の反応だったり、あるいはシグナル増幅ができるというのが、一番おもしろいところかと思っています。1個の分子がやってくれると、それを何千万倍に増幅するという機能を持っている。こういったものをセンサとして使うというのが、バイオハイブリッドセンサの新しい点なのかなと思っています。
 これは冗談ではなくてBeeチップというのがありまして、ここハチの頭が出てるんですね、こういう小さな箱の中に入れて、これをアレー状に並べて掃除機の中に入れるんです。掃除機のガスを吸うと、いろいろなガスが入ってきて、頭のこの触角に当たる。そうすると、反射反応でミツバチが舌を出すんです。ミツバチの触覚っていろいろなセンサがあって、麻薬とか爆発物とかいろいろなのを学習できるんですね。そうするとガスを吸引して、舌を何匹出したかで物質を検知することができるようです。あとは線虫の話というのよく聞いたことがあると思うんですけども、今日お話ししたいのは、膜タンパク質や細胞を対象としてセンサです。
 膜タンパク質も皆さん御存じだと思いますが、これ、究極のセンサだと思っています。細胞の膜にあって、分子を特異的に1分子のレベルで認識する。これも何億年の歴史の中で生体を獲得した機能ですよね。それで1分子がバインディングしたら、膜たんぱくの場合はフォーメーション変えて穴を開ける。細胞の膜内外に電位差かけておけば、イオンが一気に流れるんですけど、これがピコアンペアレベル。ピコアンペアということは、1秒間に1,000万個のイオンが流れるんです。すなわち、1分子が来ると1,000万個のシグナルが1秒当たりに増幅されて出てきます。こんなセンサは人工的にはまだできていません。
 なので、このようなセンサを人工的に作っていくのはありかもしれないし、僕らも化学合成屋さんと一緒にやってたりするんですが、よい物質が出てくるまでは、膜たんぱくそのものを使ってしまおうと思っています。
膜たんぱくは僕らの体のそこら中に存在していて、いろいろなところで使われていますよね。特異的なものとしては、においセンサ、あるいは触覚にあるセンサだったりする。
 哺乳類と蚊ではちょっと仕組みが違って、哺乳類の場合、GPCRになっているんで、1分子やってくるとカスケードが起きて、イオンが流れるんですが、昆虫の場合すごく簡単で、分子がやってくると即イオンが流れる。なので、このあたりを使ったセンサができないだろうかということを考えています。
 例えば昆虫ですと、ミツバチは爆発物とか麻薬、がんも嗅げます。ショウジョウバエだったら、例えばカビも嗅げます。いろいろな昆虫特有の分子認識能があるわけですね。僕ら注目したのは蚊です。蚊の触角からは、人の汗の臭いが嗅げるようなタンパク質の遺伝子を抽出して、それを哺乳類細胞に発現させる。その細胞でスフェロイドを作ってアレー状にしました。こうして人の汗のにおいに反応する細胞センサを世界初でつくりました。これ、においを空気中にかけてもしっかりと反応してくれます。
 これを使っていろいろなデモンストレーションをしました。たとえば、ロボットに入れまして、細胞にそのにおいセンサを発現させておけば、においがやってくると電気信号を出す。これがフェロモンAとフェロモンBなんですが、構造すごく似ていて、分子量もすごく似通っている。こういうものを人工のセンサで検出しようと思うと物すごい難しいですよね。
 ところが、膜たんぱくで検出すると、フェロモンAに関しては何も反応しないんだけれども、Bに関しては、シグナルがこういうふうに出るんです。閾値を設定しておけば、いろいろな電気的なシステムと融合することができると考えています。
 今は、住友化学と共同で、においセンサを実用化しようと考えています。人工の脂質二重膜を形成しまして、そこに膜タンパク質を再構成して発現させるとこのくらいのチップにはなるんですね。この動画では、ろ紙に人間の汗の成分を染み込ませて、上から持ってきます。そうするとそのガスに反応して、ロボットが逃げていくというビデオです。将来的にはそのにおいの検出源に向かっていく。そうすると例えば災害現場で人が埋もれているときに、その人のにおいを犬のように見つけられるようなシステムができるんじゃないかなと考えています。
 こういうイオハイブリッドセンサについて、日本はすごいよくやられていると思います。私たち以外にも神崎亮平先生もそうですし、そのほかにも研究者たくさんいらっしゃいます。
 海外だとどういうアプローチがあるかというと、細胞を使ったアプローチというより、バクテリアを使ったアプローチが結構あります。バクテリアを、例えばウェアラブルのデバイスの中に入れて、物質を入れるとそのバクテリアから反応する蛍光だったり、電気的な信号を測るというアプローチがやられています。ただ、レスポンスの時間というのは圧倒的に遅いですね。
 こういうものが、どういう世界を切り開くかというと、例えば横軸に開発コスト、縦軸にニーズみたいなのをとってみたときに、僕らはまだ人のにおいぐらいなんですけども、においの情報というのは幾らでもあって、例えば麻薬とかあるいは健康状態とかもそうなんですね。爆発物もそうですし、農業でも環境でも、匂い物質を高感度に選択性よく検出できるというのは一つのメリットで、分野で活躍できると思っています。
 バイオハイブリッドにすると携帯性と精度の向上が期待できます。精度の高いセンサはすでに、LC/MS/MSなどがありますが、携帯はできない。このあたりをしっかりと描けるようなセンサというのが出てくるんじゃないかなと思っています。
 次にリアクタ。Reactorというのは要するに化学反応器ですね。
 例えばバイオハイブリッドのバッテリーだったり、Organ on a chipだったり、移植のデバイスだったり、あるいはセルフヒーリングするとかグローイングするようなマテリアルというのもアメリカでは研究されているというような状況です。
 バッテリーに関しては、資料をごらんいただければ分かると思いますが、例えばバクテリアを使った発電というのが主流なんですが、日本だと理研の田中陽さんが、シビレエイの細胞を取り出して、電気を取り出したというのがサイエンティフィックレポートに載ってましたね。
 これもバクテリアなのですが、バクテリアをたくさん群がらせて、ずっとモニタリングしていると、一方向にくるくる、くるくる回り出す。そのくるくる回転したエネルギーを使って発電しようというようなそういうアプローチもある。
 Organ on a chipはもう最近、AMEDでもプロジェクトが立ったぐらいなので、その意義は言うまでもないんですが、要するに種差と倫理問題を超えてチップを作っていこうというようなことで、アメリカですとNCATSが5年で75億とか、DARPAが75億円出していたりするんですね。日本はやっと5年で約25億円程度の投資が来るようになりました。
 その中で例えば肺ができたり、肝臓ができたり、心臓とか僕らはこの胎盤とか皮膚を研究していますが、そのほかにも各臓器というのがたくさん出てきてる。
 ただ、これが本当に人と同じ臓器なのかという課題は、常にあります。だから、いかにデータで補完していくかというのが次の課題になってくると思っています。
 移植片も実はリアクタの中に入ってくると思っています。細胞移植という言葉がありますが、細胞をただ単に移植するだけではなくて、それがちゃんと免疫系から守られてなきゃいけない。その免疫系を守るマテリアルが何かというと、人工のマテリアルになります。そうすると人工の材料と細胞とのハイブリッドというのを入れていかなきゃいけないということが考えられます。
 今、ES細胞とかiPS細胞でいろいろな細胞を作り、それを三次元的に組み合わせる技術も研究されています。それらが他人の細胞由来の場合、単に体に入れてしまうと免疫拒絶が起きてしまいます。また、例えば、幹細胞を使うと、がん化の問題もあるということで、安全のために取り出せなくてはいけません。そこで僕らが考えているのは、取り出しが可能なカートリッジ型の移植片です。
 どういうものかというと、三次元組織が人工の材料で囲まれていて、免疫細胞をブロックしています。ただ、小分子は通る、グルコースがやって来て、例えばインスリンを出すことができます。それを体の中に入れて、リアクタとして機能させ、あるとき取り出せるような、そういう組織を提案しています。
 その一つとして、ファイバー状の組織を提案しています。これはERATOでやらせていただいて、ベンチャーが立ち上がった技術です。立体組織を中に入れて、hydrogelで覆っているんですね。このhydrogelにはいろいろなまだ開発要素が残されているとは思っています。
 この作り方はちょっとスキップさせていただいて、最終的にこういうファイバーができます。ファイバーの中で細胞がこうやって培養されています。例えばラットの膵島を入れたファイバーを作っています。これを糖尿病のマウスに移植して長期間の血糖値正常化に成功しています。
 材料の開発としては、このゲルというのがまだまだ僕は未熟だと思っています。そこでいろいろなナノテク、あるいは材料を駆使しまして、本当に生体に近い移植片を作ることは大きな課題だと思っています。
 最後は、アクチュエータなんですが、これは先ほど僕らが言った昆虫の足とか三次元組織というのがあるんですが、1枚スライドでお話ししたいと思います。
 アクチュエータの研究、実はアメリカすごいよくやっていまして、バクテリアを使って、例えばMITとかハーバードがよく研究しています。バクテリアを使って、人の例えば衣服に付けると、湿度を感じて、バクテリアが収縮するんですね。収縮すると服に穴が開いて喚起ができるというものが提案されています。これは皆さん御存じだと思いますが、筋肉の細胞にロドプシンを発現させて、光によって向かっていくような、バイオハイブリッドアクチュエータですね。これは非常に有名なったサイエンスの論文です。日本は例えば北陸先端大学の平塚先生が、2006年には、こういうアイデアで、微生物を使ったモーターを提案されていたりします。
 こういったバイオハイブリッドマテリアルというのでいろいろ検索してみると、そういうプロジェクト自身はまだ立ってないんですが、DARPAから、例えばエンジニアドリビングマテリアルズというようなものが、去年ぐらいに案が出ていまして、最近、募集を開始している。
 これは僕もちょっと絡んでいるんですけども、EBICSというのが、これNSFのファウンドで、新学術領域みたいなものを立てているんですけど、MITとジョージアテックとウィスコンシンの大学の人たちが集まって、とにかく生体のメカニズムというのがどういうふうにできてくるかというのをサイエンスしていこう。そこからいろいろなことを分かってアプリケーションへ結び付けていくというので、出口の一つにOrgan on a chipがありますが、一番よくやられているのはアクチュエータ系です。神経と筋肉を結び付けて、筋肉をアクチュエートしていこう、それをロボットにつなげて、動かしていこうというような研究が進められています。
 ここまで駆け足で御説明しましたが、バイオハイブリッドというのは、まだまだ産業にはなっていっていない。ですが、本当にバイオハイブリッド製品を生み出そうとしたときに、それなりにしっかりと市場を見据えた研究というのはできるんじゃないかなと思っています。
 まだ現在このあたりなんですけれども、一番近いのが、例えばセンサのアプリケーション、あるいはReactorというのが出てくるでしょうと。Organ on a chipはあと4年でしっかりと製品化していくというようなビジョンも立っていますので、このあたりは実用化に向かっていると思います。
 以上、まとめのスライドなんですが、いわゆるバイオハイブリッドという横串の考え方をつなげることによって、いろいろなサイエンスと、あるいはシステムというのが融合して、こういったアプリケーションに応用できるんではないかなと考えているわけです。ご静聴ありがとうございました。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。御議論お願いします。近藤委員。
【近藤委員】
 ありがとうございました。最初のバイオセンサの話ですけど、どういったものをセンシングするか?最初にアプリケーションを何にするかによって変わってくると思うんですけど、産業的にある程度インパクトの大きなものとして狙い目なものといいましょうか、こういったものが測れればというのが何かありましたら。
【竹内昌治先生】
 一番市場が高いのはヘルスケアかなと思っています。お医者さんと真面目に話しても、患者さんの呼気から出てくるにおいって病気によって違うんだという、何か経験的なお答えがあるんですね。それを定量的に測っていこうという動きがあります。とにかくにおいが違うということが分かってくれば、あとはそれに合うレセプター見つければセンサができると思っています。
【近藤委員】
 まずは、ヘルスケアのところの部分が一番ということですね。
【竹内昌治先生】
 そうですね。
【近藤委員】
 分かりました。ありがとうございました。
【中山主査】
 その他ございますか。どうぞ。
【早川委員】
 興味深い話、ありがとうございます。センサとかアクチュエータってすごく出口としてはいろいろやられていると思うんですけど、今回出てきたバイオバッテリーみたいな、エネルギーに変えるところ、結構生体ってすごくいいエネルギー効率を出しながら、いろいろな変換をされているということで、ここら辺非常に興味があって、どれぐらいの可能性を秘めているのかなというのをちょっと教えていただきたいです。
【竹内昌治先生】
 このマイクロのデバイスに関しては、まだまだコンセプトが最初にきてるような段階で、エネルギー取り出しても、例えばマイクロワットぐらい。だから、ずっとためておいて、何かの拍子に放出するという使い方が良いかもしれません。
僕が今日お示ししたのは、どちらかというと、小さなデバイスの中に細胞とかバクテリアを入れていこうというアプローチなんですけど、もうちょっと大きく考えると、バイオマスみたいなのもありますよね。あるいはバクテリアを使った光合成をうまく利用したバッテリーを研究されているプロジェクトも内閣府であるので、そういう先生方の知見をうまく融合すると発展していくのではと思っています。
【早川委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 もう一つぐらいいただけますか。内藤委員、どうぞ。
【内藤委員】
 昆虫のセンサの認識のところなんですけども、少し教えてもらいたいんですが、なぜ例えばミツバチが爆薬を認識するのかという、それがちょっとおもしろいなと思ったんですけど、要するにレセプターが一対一の対応じゃないんですよね、多分ね。
【竹内昌治先生】
 受容体の選択性は非常に高いんですけれども、中にはブロードに反応するのもあるようです。ミツバチの場合は、100ぐらいのレセプターがあって、その中のパターン認識をしているようです。ですので、爆薬のレセプターそのものがあるかどうかは実は分かんないんですけれども、すべてのレセプターを抽出できれば、爆薬は認識できると思っています。
【内藤委員】
 だから、ファジーなところというのが、多分おもしろくなる。
【竹内昌治先生】
 そうですね。複数の受容体の組み合わせでいろいろ検知できるようになってくると思います。
【内藤委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。また後ほど議論致します。
 続きまして、田中秀治先生、よろしくお願いします。
【田中秀治先生】
 東北大学の田中です。私は平均的な大学の研究者像よりはかなり大きく産業界寄りに振れてまして、少し極端なことを言うかもしれません。今日お話しするのは、Smart Society 5.0を可能にするようなMEMSやセンサの技術です。
 少し考えてみますと、これから出てくるSociety 5.0で主役となるようなアプリケーション、例えばVR、AI、AR、5G、ドローン、ロボット、それからパーソナルビークルみたいなもの、これら全てはセンサ、MEMSなしには到底できないものばかりです。こんなふうに、センサ・MEMSはこれからSociety 5.0を実現していく上で必要不可欠なものでして、結果として、現在、センサ・MEMSのビジネスは健全に、年率10%ぐらいの勢いで成長しています。
 実際、スマートフォン等に代表されるコンシューマ用途、最近では、例えばワイヤレスイヤホン、皆さん、iPhone7になってステレオミニジャックなくなりましたから、従来のイヤホンからワイヤレスイヤホンに切り替えている方も多いかと思いますが、この中にも、片耳につき4つぐらいのMEMS、それからほかのセンサも入れると、6つぐらいのセンサが入っています。こんなふうにMEMSのビジネスと技術どんどん広がっていますから、その数もどんどん増えていく。私は、MEMSの研究を20年弱やっていて、まさかこんなに早くMEMSが大きなウェハで作られると思ってなかったのですが、今年になって、ついにMEMSも12インチで製造かという話がTSMCから聞こえてきています。これはプロにとっても驚くべきニュースです。
 このセンサのビジネス、あるいはセンサだけではなくてデバイスのビジネスですが、今、急速にデバイス単体からモジュール化に振れています。これはどうしてかというと、デバイス・モジュールが非常に高度かつ複雑になって、もはやシステムメーカーから見て、手触れられないぐらいの状態になっているためです。すなわち、このデバイス・モジュールがブラックボックスと化している状態です。
 例えばどのような感じかというと、昔だったら加速度を測るセンサ、圧力を測るセンサなど、こういったセンサが単体で販売されて、アプリケーションに使われていたわけですが、今はこの個々のエンドユースを踏まえたモジュールとして提供されるようになっています。例えば慣性センサ単体ではなくて、歩数を出力するモジュールです。加速センサ、あるいはジャイロの信号がすぐ歩数に直るかというと、これにはかなり複雑なアルゴリズムが必要なわけです。これも消費電力かければ割と簡単なのですが、省消費電力で歩数が出てくるようなモジュールはそうはいかない。さらには、寝てるのか起きているのか、あるいは階段上っているのか、こういう行動認識をさせるようなモジュール。マイクロフォン単体ではなくて、音源の方向を特定するビームフォーミング、あるいはノイズキャンセリング、さらには音声認識まで行うモジュール。
 さらに、センサの性能をよくするには、もちろん個々のデバイスを高性能にするということもありますが、複数あるデバイスを組み合わせて、結果として高性能にすること、これはセンサフュージョンと言いますが、そういったモジュール。今、特に重要なことに省消費電力化がありますが、スマートフォンの中にたくさんセンサがあって、電力をたくさん食うセンサと食わないセンサがあります。例えば加速度センサは大して電源食わないのですが、ジャイロは大きな電源を食います。ポケモンGOで遊ばれた方は、すぐ電池が減るという経験をされたと思いますが、あれはGPSとジャイロがすごく電源を食うので、電池がなくなるわけです。複数のセンサがありますので、いつも全てを動かしている必要はなく、モジュール化して全体として省消費電力化するということが進められています。
 センサだけではなくて、今、無線のフロントエンドとベースバンドもモジュール化が進展しています。こんな感じでモジュール化が進んでいますので、今、モジュールを買えば簡単に製品開発ができる状態になっている。一方、デバイス・モジュールメーカーとすると、デバイスの製品ポートフォリオを整える必要がありますので、最近、この業界では大型のM&Aが盛んです。例えばAvagoがBroadcomを4兆5,000億円で買ったのは最近ですし、TDKはInvenSense等のセンサの会社を5つぐらい連続して買いましたし、村田製作所もVTI等を買いました。そういった大型のM&Aが盛んに行われています。
 こういうふうに進んでいくと、デバイス・モジュールメーカーのパワーはどんどん強くなっていく。システムは、これらのモジュール組み合わせればできるようになっている。しかも、重要なことにデバイス・モジュールメーカーは、レファレンス設計というものを出している。例えば中国で新興メーカーが1年や2年の短期間で格安でそこそこいいスマートフォンを発売するわけですが、ちょっと研究したことある方なら、スマートフォンみたいな複雑なデバイスをたった1年や2年で開発するのは、すごいスピードだとわかると思います。これなぜできるかというと、モジュールがあるからです。これは中国の格安スマートフォンですが、ベースバンドの部分はMediatekの2つのチップを組み合わせればよい。他の周りのチップも何を使えばいいか、Mediatekが仕切っているわけです。Mediatekのレファレンスの設計どおりに組み合わせればいいということです。
 最近、例えば日本のあるディスプレーメーカーのビジネスが調子よくなかった原因の1つに、Mediatekのレファレンス設計に載せてもらえなかったことがあります。それだけで大きな会社が傾くぐらいの影響力を持っているということです。こういったデバイス・メーカーの利益率は恐ろしく高くて、例えば50%の利益率はざらです。笑いが止まらないぐらいもうかっています。
 よくこれからはプラットフォーマの時代、グーグルだとかアップルだとかアマゾンとかがビッグデータを仕切っている時代だと言われますが、私に言わせれば、これからは「デバイス・モジュールメーカーとプラットフォーマの時代」だと思っています。
 このような時代は、技術とビジネスの非常に動きが早く、1年たつと勢力図が大きく変わります。これは最近の最新のMEMSの売り上げランキングですが、トップに君臨しているのはRobert Bosch、その次がBroadcom、5番目に線が引いてあるのはQorvoです。QorvoはTriQuintとRF Micro Devicesが合併した無線フロントエンドの会社です。BraodcomとQorvoの2つの企業が一気に上位に躍り出ている状態です。今、このようにものすごい成長を見せている両社のデバイスを一つの例にして、材料とデバイスイノベーションのお話を少しさせていただきたいと思います。
 皆さんのスマートフォンの全てにフィルタが入っています。アンテナとベースバンドをつなぐ間で、許されている無線周波数を選び取るための部品がフィルタです。全てのスマートフォンに必須のデバイスで、何十個も皆さんの通信機器に入っています。この中にMEMS技術を用いた弾性波フィルタがあって、FBARフィルタと呼ばれています。FBARは圧電材料を使った振動デバイスです。膜厚方向に振動するデバイスになります。
 圧電薄膜としてのAlNの研究は1970年頃から行われています。FBARが最初に論文で発表されたのは1980年でして、東北大学の中村喜良先生ほか、欧米の2つのグループ、つまり合計3つのグループから独立に発表されました。このデバイスはどこに使われるかというと、さっき言ったこの黄色い部分です。これは少し古い無線のフロントエンドですが、アンテナとベースバンドの間に入っているフィルタがそれです。今、通信方式がLTE-Advancedになって、フロントエンドは非常に複雑になっています。特にキャリアアグリゲーションという複数のバンドを組み合わせて通信する方式になっていますので、ここのところはものすごく複雑で他の人が手を出せないくらいです。
 これは1980年に発表されたFBARですが、これを最初に実用化したのがAgilent、つまりかつてのHPです。その後、Avagoになって、今の会社名はBroadcomになりましたが、もともとはAgilentが1999年に第二世代のPCSフィルタとして実用化しました。実用化するまで20年かかっているわけです。材料もできている、デバイスもできているのですが、実用化には非常に難しい研究課題がありました。2つここで取り上げると、1つは材料の問題、もう1つは設計の問題になります。
 その材料はAlNで、1970年代には圧電材料として開発されたのですが、このフィルタを作るためには、非常に高性能な理論限界ぎりぎりの特性を持ったものをウェハ全面に厚さわずか0.05%の精度で成膜しなくてはいけません。普通のスパッタ等の成膜では、±10%程度の精度ですので、いかにこれが難しいかというのが分かっていただけると思います。これは少し特殊なスパッタですが、これによってこの材料が初めて理論限界ぎりぎりの性能でウェハの上に均一に成膜ができるようになって、それでPCSフィルタが実用化されたわけです。このフィルタは、今はAvago-Broadcomが、…非常に調子がよくて笑いが止まらない状態ですが… 年間数十億個ぐらい作っています。利益率も50%ぐらいはあると思います。
 こんなにもうかるデバイスだったらなぜ参入しないんですかと思われるかもしれません。もちろん中国でも韓国でもいろいろな国のメーカーが参入したくてしょうがないのですが、非常に難しい。技術が高度化していてもうとても簡単にはできない。さらに、それがモジュールになっていてさらに複雑で、非常に限られた企業しか作れないというわけです。
 さらにこの材料には続きの話がありまして、AlNにドーピングをするとさらに電気機械結合係数が高くなることが発表されました。これは産総研の秋山さんらがデンソーとの共同研究の結果、2009年頃に発表されたものです。Sc等をドーピングすると圧電定数が画期的によくなる、5倍程もよくなるという発表です。これも画期的な材料だと思うんですが、現在どうなっているかというと、Avago-Broadcomはこの高結合のSc-doped AlNを使ったFBARを既に皆さんの携帯電話の中に搭載しています。残念ながら、Avago-Broadcomは恐らく産総研にもデンソーにも特許料を払っていない。どうやって回避しているかというのはいろいろな説があるんですが、最初に日本から発表しても、もうけているのは残念ながらAvago-Broadcomだということになっています。
 ここから学ぶことは、デバイス・モジュールに関しては、材料から製造、設計まで、全て高い技術を全部そろえないといけないということです。全てを開発、あるいは用意したものだけがイノベーションに達するということです。もう一つ重要なのは、タイミングが非常に重要だということです。FBARフィルタがこんなにうまくいったのは、PCS携帯電話が実用化された1990年に出せたためであり、一歩でも遅れたらたぶんうまくいかなかったと思います。したがって、先んじて潜在的なビジネスチャンスをつかんでスピード感を持って研究開発することが、この分野にとって非常に重要だということが分かります。
 今、我が国が、科学技術振興だけではなくてイノベーションを本当に目指さなくてはいけないのだとすると、たくさんの選択肢から、材料、設計、生産、全ての技術をそろえて、これらを組み合わせること、シンセシスと言いますが、これをしていくことが重要で、そういう意味で、ナノテクのシステム化、ナノシンセシスといったこれまでもあげられてきた政策がこれからもますます重要になってくるだろうと思います。
 デバイスやMEMS等でこれから何をすればいいのか。何が新しい、難しいチャレンジなのかというのを少しあげてきました。これは非常に生々しい具体的なものですが、例えばバイアス安定性が0.1 deg/h以下の高精度MEMSジャイロスコープ。これは言い換えるとリングレーザージャイロスコープと同等の性能で2桁以上安いジャイロスコープです。自動運転車はジャイロを積んでいますが、たぶんジャイロだけで数百万円ぐらいします。我々庶民にはジャイロ1台すら買うことができない。これがプリウスに載るようにするためには、せめて数万円にしなくてはだめです。そうでないと、イノベーションにはならないわけです。
 それから、0.1 mWクラスの超消費電力MEMSジャイロスコープ。今は1 mWぐらい食っていますので、10分の1にすべきです。それから、今、竹内先生が、化学センサやバイオセンサの話をされましたが、これも非常に難しい。ドリフト、キャリブレーション、感度安定性などの問題を克服した化学センサが必要です。今たくさん化学センサが発表されていますが、私からするとほとんど役に立たない。目指している重要なポイントがずれていると私は思っています。それから、5 GHzというこれから5Gで使われる新しい周波数ですが、5 GHzでも高性能な弾性波フィルタ。音声認識がAIとして最初に使われて、これから爆発的に使われるようになりますが、音声認識率を上げるためには高性能なマイクロフォンが必要です。今、携帯電話でも使っているMEMSのマイクロフォンですが、話すとき、口とマイクの間の距離は10 cmから30 cmぐらいですよね。これが、例えばロボットと会話する、家電と会話する、あるいはAIアシスタント、Amazon Echoみたいなものと会話することになると、1 m、2 mと距離が長くなるので、距離の3乗に比例して音圧は小さくなりますから、SNR 80 dB以上のマイクロフォンが欲しくなる。高性能だけど1万円ぐらい安価なLIDAR。
 それから、非常に小さいセンサ。センサが小さいことは非常に重要で、値段はおおよそ大きさで決まるのです。よく勘違いすることに、うちは値段で負けましたみたいなことを言うんですが、私に言わせれば、これは技術で負けているということです。要は高い技術を持ったものが安く作る。安達先生の話もそうですけれども、技術があるものが安く作れる、市場で生き残っていける。センサをいかに小さく作れるか、しかも同じ性能で、これにはものすごい高い技術が必要になります。それから、少し毛色の違うのでは福島第二原発の中でも使えるような各種センサ、今、内部をほとんど見ることができないので、廃炉が全く進まないわけです。
 日本の課題ですが、デバイス研究については、私は日本の研究者がデバイス性能で勝負できないことだと思っています。多くの研究者が新コンセプトを発表して論文は書きますが、筋の通った新コンセプトは少ないです。Only oneと言うんですが、Number oneができないのが問題だと思っています。
 どうしてかというと、性能というのはある一部分だけでは決まらないからです。材料だけでは決まらないし、設計、製作、システム化、全部総合的にできないといい性能は出ない。さっきあげたような課題は、これらが全部できないとチャレンジできないということです。できる研究グループはあるクリティカルな規模があると思っています。
 これは産業用デバイスだけではなく、基礎研究でも全く同じことでして、例えば性能で挑戦したMEMSセンサに重力計があります。これはNatureで昨年、発表されたものです。重力は場所によって少し違うんですが、ちょっとしか違わない。ほとんどどこでも9.8 m/s2ですが、実はちょっとだけ違う。その違いを計るMEMSです。これができると資源探査、地下に穴があると重力は小さくなりますから遺跡探索、テロリストが地下にトンネル掘ればそれで重力は小さくなりますから地下トンネル探索等々ができるようになります。これを目指したベンチャーも出てきています。
 今、この分野を状況分析するに、まずあげたいのはナノテクプラットフォームというプロジェクトです。これで微細加工の裾野が広がったのは非常に意義のあることだと私は評価しています。素人でも比較的簡単に微細構造が手に入るようになりました。ただ、ナノテクプラットフォームはツールですから、ツールを整えただけではイノベーションにつながりません。私はプロの利用者がもっと増えていかなくてはいけないなと思っていますが、実際は減っているのが現状ではないかと思っています。デバイス研究は大学の小さな研究組織ではなかなか難しいところがあって、特に性能で勝つということはなかなか難しい。論文にしにくい分野であるというのがその原因だと思っています。
 アメリカでも同じことなのですが、割とアメリカは上手にやっています。センサやMEMSの学理は、学術基盤でいうと微小機械における損失とノイズの実学だと思っていますが、さっきも出てきたDARPAがこれを踏まえたファンデンィグを20年にもわたって手を変え、品を変え行ってきた結果、今、王道が分かる研究者がアメリカには多いと思っています。
 こういう研究はスピードが必要です。のろのろしているとしょうがないんです。だからといって短期的視野かというと、それとも全く違う。長期視点に立ってデバイス研究の実力を上げていかないとスピードで勝てないということになります。だから、各テーマは早く進めなくてはいけないけど、長期視野でこういう研究に対処していかないといけない。これから私に言わせれば、「デバイス・モジュールメーカーとプラットフォーマの時代」が来るのに、それにうまく乗れないのではないかと心配いるところです。
 今、先ほど挙げたようなデバイスにチャレンジができるような状況には、なかなか多くの研究室はないのではないかと思っています。1つ参考になるのは、フラウンホーファー研究機構のモデルでして、例えば研究開発をビジネスとして行っている。うちの研究室もかなりの研究活動をビジネスとして行っています。ビジネスモデルを作ってそれに沿って民間のお客様からコントラクトを取れるかどうかを評価する。そのコントラクトの額に応じて公的資金によって支援する。こんなシステムがフラウンホーファーにあるわけですが、こういうのは非常に参考になるなと思います。
 日本でもマッチングファンドという少し似たような形はあるのはあるのですが、ちょっとインチキなんです。契約額ではなく企業が内部で使った研究費もマッチングファンドの片方として認めるみたいな形になっていて、大学との共同研究の公的支援としてインチキもあるのではないかと思っています。フラウンホーファーについて最後に強調しておきたいことは、必ず大学と併設になっていて、大学の研究室と併存している点です。基礎研究と人材育成と実用化が一緒に進むことが重要ではないかと思っています。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。御質疑等お願いします。
では、私から。モジュール化の世の中で、日本の基礎研究者はどうしたらよろしいのですしょうか。何が行われているか分からない中で、基礎研究の研究者はどのようにそこに参入していったらよいか。
【田中秀治先生】
 一番の大きな問題は、さっきも出ていたのですが、何が行われているか分からない状態になってしまっている、理解できない状態になってしまっていることです。それが長期視野ということなのです。ずっとそこのところをきっちり押さえていく。何が行われているか、例えば私は分かるわけです。それはずっとそこをやっているからです。一個一個のテーマは、たぶん3年、5年というスピードで実現していかなくてはいけないのですが、でも長期にわたってこういう研究をやっているので、何が起こっているか分かる。そういう意味で何が行われているか分からないことは、例えば、急にAIが盛り上がった、それではAIにいくかという研究者には起こります。それでは複雑化したシステムは分かりようがない。これが長期ビジョンだと思っています。
【中山主査】
 その他ございますか。どうぞ。
【一杉委員】
 日本の課題というところで、デバイス性能で勝負できないと赤字で書いてあります。日本は半導体産業がまだ強いと思っているのですが、なぜデバイス性能で日本が勝負できない状態になっているのでしょうか。
【田中秀治先生】  例えばこのネイチャーの論文ですが、場所によってわずかに違う重力を測ることは、高い性能を出さなくてはできないわけです。これを実現するためには、どこかだけ優れていても駄目ですよね。MEMSの構造、これは確かに画期的で優れているのですが、それにプラスして低ノイズのエレクトロニクス、真空パッケージング、精密な温度制御、データ処理、これらが全部そろってはじめてこの40 μGal/√Hzの性能が出るわけです。どこか1つ欠けてもできない。それらを全部手当する、全部自分で開発しなくてもよいわけですが、自分のネットワークの中でこれらを手当できないと、性能で勝負できないわけです。
【一杉委員】
 ということは日本全体としては個々の要素技術については世界レベルのものを持っているのですが、それを一緒にする、統合することが弱いから全体としてデバイス性能が出せないと考えるのでしょうか。それとも一個一個の要素技術でも日本は遅れをとっていると考えるのでしょうか。
【田中秀治先生】
 一個一個の要素技術が日本にないと言っているわけではありません。多くの学術研究は、ある要素を単純化してどういう原理で動いているのか、どういうメカニズムで動いてるかということを調べる、これが大体の科学です。これはアナリシスです。私が言っているのは逆なんです。ある性能を出すためにどう組み合わせればいいか、その組み合わせにはほとんど無限の選択肢があるわけですが、それをどう選択していくかというのがこの技術です。学問ではないかもしれませんが、どこかにある技術だとしても、何をどう組み合わせていいかを設計する、その実力があるかどうかということに本質がある。これはシンセシスの力だと思っています。
【一杉委員】
 そうするといろいろな分野が見える人材が足りないというメッセージだと理解して良いでしょうか。要素技術は日本にはあるので、俯瞰的に見て、これとこれをピックアップすればうまくいくだろうと考えられる、インテグレートするタイプの研究者が弱いと。
【田中秀治先生】
 弱いと思いますね。
【一杉委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【中山主査】
 他にございますか。どうぞ。
【早川委員】
 聞き逃してしまったかもしれないんですけど、グランドチャレンジ、いろいろスペキュレーション的な幾つかを出されてましたけど、これってどういうイノベーションを仮定されたとか、そういうプロセスを踏んで何か根拠付けられているものなんですか。
【田中秀治先生】
 一つ一つどういう形で使われるかということは、ある程度明らかです。少し説明しますと、例えば一番上については、自動運転みたいなものを実現しようと思うと、これがないとどうしようもないわけです。これらは全てかなり難しい目標ですね。具体的にできないと言っているわけじゃないんですけれども。マイクロフォンは音声認識用です。化学センサについては、例えばIoTでいろいろなところに付けて空気の汚れを測る、あるいは長期装着してバイオデータを測るといった応用です。しかし、現状ではこれはできないんです。ドリフトしてしまうから。1回の使用で捨てればよいのですが、ドリフトのため狙った応用ができない。ほとんど絵に描いた餅です。これができればビジネスになります。その他もできれば、全部ビジネスになります。
【早川委員】
 ちょっと頭の中ではそのモジュール化まで含めたいろいろなセンサを寄せ集めてパッケージングして、そこでもってイノベーションを起こすという……。
【田中秀治先生】
 すみません、これはモジュールではないです。センサ単体です。
【早川委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。時間ですので田中先生のみに関する議論は終わらせていただきまして、改めて今までの3人の先生方への御質疑、あるいは全体を通しての御質疑等ございましたらお願いいたします。
【井上委員】
 ありがとうございました。安達先生に質問というか、皆さんに質問なんですけど、科学技術政策って何なのかと僕も思ったので、質問させていただきたいんですけど、ゲームチェンジングな材料を作られて、最終的にベンチャーを立ち上げて、そのとき最初日本の企業を通さずに最初に韓国企業と来て、それに追随するように日本の企業が来たという話でしたよね。
 実は僕もやっぱりそうなんだなと思ったんですけど、実は10年ぐらい前に中山さんが書かれた、ナノ融合のプロジェクトで開発した材料というのがあって、その後何かプロセスとかいろいろ考えながらやってきたんですけど、国際特許も取ってこれからどうするかというときに、経産省のプロジェクトがあって、そっちの方でお金をもらうような形になったんですけど、どうやってもやっぱり日本の企業って付いてきてないんですね。国際特許が出た時点でこれはしようがないから対外発表、その前ずっと日本国内でしか発表してなかったんですが、対外発表始めた時点でいろいろと問い合わせがあって、つい最近知ったんですけど、ドイツの企業が国際特許に抵触しない形でうまいこと逃げた材料を作ってきて、あと部品とかも問い合わせがあったんですけど、結局我々いろいろ文科省から科学技術政策ということでお金をもらって新たな材料を作っても、それが実際に実用になっていく段階で、どうも日本のマインドかどうか知らないんですけど、なかなか企業として付いてこない感じがしますよね。こういったことって我々がやっていかなくちゃいけないことなのか、政策としてやっぱり経産省の政策、文科省の政策、そこが連結して何かやっていくものなのか、どういうふうに省庁の方々がお考えになられているのかというところもちょっといろいろと知りたいところなんですけど、どう思われますか。
【安達千波矢先生】
 なかなか難しくて例えばベンチャーキャピタルの人とも私、相当話しました。例えばアメリカのフィデリティとかは物すごく話していてレベルが高いんですね。技術の内容もよく分かっています。だけど、日本のベンチャーキャピタルの方と話してもほとんど時間の無駄なんじゃないかなって僕は正直思いました。話してもほとんど理解していないですね。技術の細かいところをきちんと理解しないと例えば第三世代だといってもぴんと来ないです。だから、実は判断のしようがないので、サムスン、LGが出すといったらこれはすごいんだという判断しかしないですね。でも、フィデリティとか行くとまあよく勉強しています。第二世代のりん光の技術がどういう技術だとかイリジウムがどうだとか非常に突っ込んだ質問をしてくるんですね。なのでやっぱりそういう意味では例えばベンチャーキャピタル一つとったとしても、レベルが日本の場合非常に低いということはすごく感じました。
 全体上げていかない限りはなかなか難しいんじゃないかなというのと、あとやっぱりITに関しては割と皆さん積極的にインベストメントしますけど、マテリアルというとやっぱりすぐ皆さんが思うのは時間がかかるということなんですね。やっぱり1年、2年でリターン来るのかということはすごく皆さん気にしているので、5年というとちょっと引いちゃうというところもやっぱりあるので、マテリアルに対してそのベンチャーキャピタルがどういうスタンスでやるか。産業革新機構さんとも話しましたけど、ほとんど手応えはなかったですね。なのでちょっと国として考える必要は僕はあるんじゃないかなと思いますね、正直。
【中山主査】
 経済産業省の小宮様からコメントございましたらお願いします。
【小宮補佐】
 経済産業省素材産業課です。国としても相当技術開発はてこ入れしてやっているつもりではあるんですけれども、なかなか芽が出ているのもありますが、特にこういったIT分野についてはなかなか芽が出ていないということであります。政策ツールは相当潤沢にあるつもりですが、実用化開発の補助金ですとか標準化に関する予算ですとか、あと産革機構なども設立をしている、投資をしているんですけども、やはりどこかまだ特に研究開発のところは何とかできても、そこから産業化、実用化に至るまでのところのプロセスにまだ大きな谷があるのではないかという仮説を持っております。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。その他にございますか。どうぞ。
【高梨委員】
 ありがとうございました。非常に貴重なお話を聞けたと思っております。一つ私がとても引っかかったところが特許のお話です。素材なんで非常に広く捉えていると思うんですが、研究開発に30年もかかる一方で特許が有効なうちにアプリケーションがちゃんと芽吹くかどうかというところは非常に私も気になります。長期におよぶ研究開発の制度的な支援というのは重要だなと思いました。今まで、例えば、アプリケーションとして芽吹く前に特許切れになってしまったような、何かマイナスの状況を実際経験されたことはあるのでしょうか。
【安達千波矢先生】
 今回私たちが開発したやつは2010年、12年ぐらいに特許を出願していますのでまだこれからですね。なのでできるだけ早い、おっしゃるようにやっぱり特許切れたら意味はないので、早い段階で実用化したいなと思ってます。あとは技術を囲ってはだめだなと私は思っていて、なのでこの技術はすごいとどんどんと世界中の人に開発してもらうのが僕はいいかなと思っているんですね。例えばプラズマはパナソニックが囲っちゃったんで、プラズマはだめになっちゃったということがあるので、やっぱり世界中の人が開発して取り組んでパイが増えて初めてうまくいくんじゃないかなと思ってますので、そういう意味ではもうどんどんこの分野に研究者が来てほしいなということは僕は渇望しています。
【高梨委員】
 そういった意味では技術マーケティングといいますか、その辺の能力というのも力を入れていく分野というふうに考えてよろしいですか。
【安達千波矢先生】
 そうですね、あとはやっぱりアプリケーションの部分はすごく大事で、いい材料があっても魅力的なアプリがなかったらやっぱり産業にならないので、そこのところが私は材料屋なんですけど、やっぱりいろいろな人とディスカッションして、ユニークなアプリケーションの開発はすごく興味があります。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。その他いかがでしょうか。上杉先生。
【上杉委員】
 竹内先生に質問なんです。この皆さん恐らく資料2というのをお持ちだと思います。ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略の策定に向けた検討の方向性(案)です。この3ページを見ていただきますと、2030年に向けた研究開発戦略の検討項目というのがあるんですね。その2番は非常に竹内先生の話に近いなと思ったんです。例えば、その2番の例として挙げている部分をご覧ください。一番最初のサイバーとフィジカルの高度な接続でありますとか生物メカニズムのところでありますとか、あと一番下の異種材料界面制御技術。有機と無機の界面というのはサイバーとフィジカルの接続とよく似ているんです。恐らく竹内先生の分野ではこの異種材料界面の制御技術というのは大切だろうと思うんですね。今、こういう分野ってどういうところに一番問題がある、若しくは一番エキサイティングなところがあるのでしょうか。何か御意見があれば教えてもらいたいんです。
【竹内昌治先生】
 ありがとうございます。界面に注目したプロジェクトは10年も20年も前からナノテク材料の分野ではずっと議論されていると思います。例えば、いろいろな脂質分子を人工デバイスにくっつけると細胞と同じような振る舞いをするという考え方もあって、継続的には研究をされていると思っています。
 私が先ほど申し上げたような生体と機械を融合しようと思ったときに、ただ単に細胞をメタルの上で培養できるかというとそれは難しくて、インターフェースは必要になってきます。したがってバイオハイブリッドという考えをもし進めていくとしたら引き続きこの界面制御というのは重要になってくると思います。
 今、一番私がおもしろいなと思っているのは、埋め込み材料です。例えば体の中に人工の材料を埋め込んでいる医療機器ってたくさんありますね。例えば人工関節などが良い例です。これらの機器は、基本的にはその人工の材料に細胞がたくさん付くのはあたり前として考えています。つまり、細胞が付いたとしてもワークするような状態が想定されています。一方で移植片は免疫隔離膜で覆わなきゃいけないんですけど、この免疫隔離膜の上に細胞がくっついてしまうとアウトなんです。
 細胞が覆われて酸素が供給できなくなって中の細胞が死んじゃうという問題があるんですけれども、じゃあどういうメカニズムで細胞が寄ってきて、どういうメカニズムだと細胞が寄ってこないのかというのが材料や内包する細胞別にいろいろ研究されているかなと思ったら、実は全く体系的には議論されていないです。
 僕らも見よう見まねでとにかく知見を増やしています。ただ、そういう研究というのはもう工学のアプローチだけではなく化学も必要ですし、材料もそうですし、医学の観点からもそうなんですけど、ヘテロなコミュニティができないと、体系的な理解ができない考えています。
 ちょっとターゲットを狭いように思えるかもしれませんが、再生医療だけでなく、人の健康維持や診断などで、将来は必ず埋め込みデバイスが出てきますので、このような分野非常に重要な研究領域になると思っています。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。どうぞ。
【内藤委員】
 私は自動車とかそういった異材接着の研究をターゲットにしているんですけども、それと考え方が非常に近いところがあって、多分一番大切なのは材料の信頼性かなという気がするんですね。いろいろなものを接着しようというのはあるんですけども、その信頼性が担保されないと実際使えない。なので、バイオと金属のようなマテリアルな融合というのも、樹脂と金属のようないわゆるマルチマテリアル化と同じ発想でできるのかなと、ちょっとおもしろく伺いました。
【竹内昌治先生】
 生体素材をもし製品化しようと思ったら、必ずその再現性とか安全性に加えていわゆる安定性が重要になりますね。今、再生医療製品でもそれは議論されています。センサとして考えた場合、現在は、人工物で作ったセンサの方がよほど安定だったりする。だから、生体で作ったセンサがどこまでできるかというのをまずはしっかりと示していかなければいけないと思っています。その範囲でベネフィットが得られるような仕様にすべきと思っています。
【内藤委員】
 例えばデータベースとかそういうのは構想にあるんですか。
【竹内昌治先生】
 例えばセンサに関しては、どのレセプタが何に反応するか、まだすべては分からないのですが、レセプタをすべて抽出して各匂い毎の反応をパターンで見ていき、データベースとしてまとめるのは有効かと思っています。
【内藤委員】
 接着のところのデータベース、要するにこれとこれはくっつけやすいとか。
【竹内昌治先生】
 なるほど、それは無機と人工物と生体材料ではまだそれほど確立していないのかもしれないんですけど、いわゆる創薬の世界ですとたんぱく質とリガンドとのインタラクションはシミュレーションで分かってくるような世界ですよね。だから、それをちょっと展開していくと決して使えなくない知見だと思います。
【内藤委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 田中先生の言われたナノシンセシスですが、最初に安達先生の材料をコアにしていろいろ統合していくところもシンセシスだなと思いましたし、竹内先生の今のバイオハイブリッドもシンセシスだなと思いました。よいまとめをしていただいたと思うのですが、具体的に田中先生が思われているシンセシスというのは何と何を融合するのか、それとも何でもとにかく持ってきて融合連携してやっていきましょうというのか。もう一段深い説明をしていただけませんでしょうか。
【田中秀治先生】
 多分安達先生の言われたシンセシスは化学合成という意味ですね。それとはちょっと私が使っている意味合いは違いまして、日本語に訳すとよく総合って訳すと思うんですけれども、異なる複雑な要素は人間でもそうですし、生物も非常に複雑なものを要素化してその機能なりメカニズムを発揮させる、これは分解する要素ですよね、アナリシス。それの逆の要素だと思っています。もうちょっと簡単に言うと発明みたいなものですね。発明するためには例えば機能がちゃんとリファインできていること、境界条件が分かっていること、どういう技術選択肢があるのか分かっていること、足りない技術部分はどこでそれはどのように開発しなきゃいけないということが分かっていること。これを行うことが総合、今言ったシンセシスだと思っています。これがなかなか学問にはなりにくいんですけれども、イノベーションだといったときには重要になってくる。そういう意味で私はこのシンセシスという言葉を扱って、ちょっと化学合成とは少し違う意味合いで使いました。
【中山主査】
 ありがとうございました。もう少し時間がございます。では、生越先生。
【生越委員】
 僕はすごく田中先生の書いておられる日本の課題のところがすごくクリティカルで、話を聞いててすかっとしたんですけれども、それとは別に特に全てを持っていないとちゃんとはできませんよという、そういう全てをというのは一つ一つの段階をきっちりと作り上げることができないと、それはその先にはいけませんというメッセージとして理解していたんですけれども、そのときの例えば先生が実際にこれをここまでやるぞと思ってやったのか、例えば最初はもうちょっとふわふわした状態でスタートしていったのか。もちろん今ここではかなり完成されたものとして紹介してくださっているとは思うんですけれども、そのプロセスの中で徐々にクオリティって上がっていくと思うんですよね。その辺の変化の感じというのが少しここで教えていただけたら、今後考えていく上でどれぐらいをミニマムにしていったらいいのかなみたいなところの指標になるかなと思って教えていただきたいんですけど。
【田中秀治先生】
 研究は二層にわたって行っていると。その徐々にやるところ、さっき言ったピースがはまらないところは当然あるわけでして、そこをどういうふうにピースをはめればいいかというのは、トライアンドエラーだったりするわけですね。そういう部分が先に見えたときにはそれは大体学生の修士論文の研究等でさせます。
 一方で、かなりピースが見えていていけそうだという研究は、コントラクトな研究だったりプロを投入して研究開発するようにしたりして二層に行っている。その先を割と情報たくさん持っているものですから、次どの辺をやれば次の研究につながるかというのはかなりよく見えまして、そこの部分はもしかしたら使わないかもしれないけども、それは先回りして学生の研究として内部でやると。大体2年とか3年するとお客様が来て、それで次のコントラクトにつながると。でも、そういうふうにして研究をスピーディーにやっていかないと、この分野はとても勝っていけないというふうに思っています。そんな感じで徐々によくなっていく部分、それからトライアンドエラーでだめな部分とある程度コントラクトな研究として時間を区切ってやる部分とを両方を進めていると。
【生越委員】  それは結局先生の持っておられる学内の研究している段階で、既にある程度製品としてある程度のクオリティのあるものを当然セットした上で、研究を進めているという理解でいいんですか。
【田中秀治先生】
 学内の研究ではそれよりは例えば性能をよくするために今のこの現状の技術だと設計と改良によってここら辺までいくというのは大体読めるんですけども、それ以上いかそうと思ったら変えなきゃいけないんですね、今の現にある材料。そこのところを先に手当すると。そんなイメージですね。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。時間が超過しておりまして手短に。
【内藤委員】
 田中先生の最後のところのフラウンホーファーのモデルが参考になるというお話、ちょっと気になったのでお伺いしたいんですが、これはどういうメッセージを込められたのかというのがあって。一つは今までの評価軸を大学も変えなさいというメッセージなのか、若しくは国の研究機関、いろいろな研究機関がありますけれども、それの構造を変えなさいということなのか、例えば、役割分担をもっと明確にしろという意味なのか、少しその辺をお伺いしたいんですけど。
【田中秀治先生】
 大学の研究のやり方だったりするなら、私はもっと多様だったらいいと思っていまして、最初に私も自分が自己紹介するときに私はかなり平均的な研究所から外れていますと言ったんですけれども、ああいう形でビジネスライクに研究を回していく、そういうことも大学の中でもっとやりやすかったり、評価されるようなそういうやり方というのを必要だなというふうに思って、私はかなり頑張ってそういうやり方をやっているんですけれども、かなり苦しいやり方でした。他の人にはとてもお勧めできないと。
【内藤委員】
 前者の方で大学の評価軸みたいなものが変わっていったらいいなという形ですか。
【田中秀治先生】
 そうですね、シーイットデファンディングのやり方も含めて変えていければいいんじゃないかなと思っています。
【内藤委員】
 分かりました。ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 このあたりで次の議事にいきます。安達先生、竹内先生、田中先生ありがとうございました。この後も議論が続きますので、先生方には是非とも御参加頂ければと思います。
 続きまして、議題2です。ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略の策定に向けた検討の方向性について、先ほど上杉先生よりレファーして頂いた紙をお出しいただければと思います。これは本日の会議で現時点版として取りまとめた上で、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会に状況を報告するということにさせて頂ければと思います。
 まず、私から説明をさせていただきます。手短に説明させていただきます。
 まず1ポツですが、これは背景です。前回とほとんど変わっておりません。最初のパラグラフが歴史観の話。2パラグラフ目は、社会の変化が訪れて、その中でSociety5.0というような話が出てきたということ。そして3パラグラフ目は、さらにSDGsのような新しい考え方が入ってきまして、研究の方向性をどうすればいいかということを書いております。4パラグラフ目は、そのまとめのような内容です。
 そして2ポツですが、検討の目標として、社会課題を認識すること、技術の進展を踏まえること、その上でナノテクノロジー・材料分野の研究開発を議論しましょうということを書いております。
 3ポツは、おおまかな目次ですので読んでいただければと思います。
 そして、4ポツは留意事項です。こういう会議を使いながら現状をレビューしながら進めていく。そして、今までの1ポツ、2ポツのような内容を取り込んでいくということが書かれております。
 また、5ポツ目はスケジュールですので、飛ばさせていただきます。
 中心は次のページからです。(1)が2030年に向けた研究開発戦略の検討項目です。(1)の1は基本的な考え方、踏まえておくべきことです。そして、2はそれらを踏まえた上で、新しい研究開発のコンセプトやアイデアはどのようなものがあるかということ。そして、3は2を実現することによって創出される価値は何か、社会寄りの話が書いてあります。そして、4は2から導かれるような材料とかデバイスとかシステムの話です。より研究開発に近い話になっております。そして、5はさらに萌芽的なサイエンスはないかということ、世界の潮流になり得る、あるいは将来の産業競争力の芽になるかもしれないというところです。そして、6は主として2を支えるような基盤もナノテクノロジー・材料分野の重要な役割ではないかという内容となっております。
 少し上に戻っていただきまして、1ですけど、踏まえておくべきこととしてSociety5.0やSDGsの話。そして今までとは違う視点も考慮しながら行うということ。きょうの先生方のお話等もそういうことに当たるかと思っております。また、融合、統合、システム化を意識したもの、あるいは先ほど田中先生のシンセシスのような話も、このあたりに入ってくるかと思います。そして、既存材料の高度化と合わせて、機能の複合等も考えておく必要があると。あとはIoT、ビッグデータ、AIの時代における、新しい発想による材料開発手法。これは安達先生のお話にもありましたが、そういうことも含んだ話かと思います。
 次の2030年の材料科学技術の基本コンセプトは何かなのですが、これはもしかしたら1から6まで全部受けた上でのコンセプトかもしれないので、この場所が適当かどうかは要検討と思っております。2ですが、今度は材料科学技術の新しいコンセプトやアイデア。もちろん、新しくなくてもやるべきことはありますので、必ずしも新しい必要はないと思っており、重要なことをしっかり載せたいと考えております。サイバーとフィジカルの高度な接続、これは今日の3人の先生方に共通する話でございました。また両立し得ない複数の機能の達成、トレードオフの物性の達成とかあるいは生物のメカニズムの取り込み、これはバイオハイブリッドのような話かもしれません。あるいは次世代元素戦略、元素の機能を最大限に活用するところ、昨今の元素戦略にある希少元素を使わないことだけではなく、新しい機能をしっかりと元素から出していこうということもこの筋ではないかと考えます。また、有害な物質を有用な物質へ転換をしていくこと。あるいは未利用資源をうまく活用していくということ。ナノの特性を生かす設計・プロセス・制御。異種材料界面の制御をしていくところ。あるいは有機と無機との界面とかハイブリッドとかそういうところを新しいコンセプトやアイデアを生かして研究開発を出していったらいいのではないかということが、いろいろな皆様からの御意見から出ております。
 あと、3は社会寄りの話です。健康で快適な暮らし、人間の能力の拡張、人間と社会のつながりの深化、あるいはリサイクル、資源リスクの回避、環境フレンドリー、強靱な構造物・インフラ、こういうことが社会から求められているということ、またもう少しここを富ませていきたいとは思いますけど、社会寄りのことをしっかり捉えながらも、今の研究開発をしていくというバランスのとれたものにしたいかなと思っております。
 4と5ですが、これはコンセプトよりもう一段おりた細かい内容になると思われますので、次のページにマトリックス図を載せております。これから議論してマトリックスの中に入れたいということで、その中に事例を書いておりま。例えば自己修復材料、再生医療の材料、きょう出ましたセンサの話、アクチュエータの話、はやりつつあるように思われるデジタルツインとか、あるいはロボット・IoT・次世代コンピューティングシステム、これはシステム化して考えないといけないと。ナノテクはその中心になれるのではないかという話です。自動走行のシステム、分離・精製とか水処理の話とか、全てナノテク、あるいは物質材料科学技術がコアになって、これらの競争力を高めるようなポジションにあるのではないかという意見が多くあり、そういうことをこういうマトリックスに入れていきます。
 また、その下ですが、萌芽的なサイエンス、何でも萌芽的であればいいというわけではなく、例えば新しい潮流になり得るようなもの、ここは大事だから特にやっていこうというものがあれば、挙げていきたいと思います。例えば、トポロジカルやフォノンエンジニアリング等が昨今展開しそうな雰囲気もあり、ここに書ければと考えております。
 また、材料開発を支える基盤としてはマテリアル・インフォマティクス等を活用した材料開発やあるいは計測基盤・最先端計測とかあるいは微細加工、今日は田中先生からいただきましたMEMSや先進造形とか。あるいはここにないですが先端計測機器をどうやって開発していくかとか、ナノテク材料の話が中心にあるものですので、そのような基盤の話をしっかりしていきたいと考えております。
 また、(2)ですが、Society5.0の実現に向けた検討項目ということで、時間軸としては近いところです。場合によってはこの第5期基本計画の中でやったらいいのではないかというものです。センシング等の対象を広げるフレキシブル・超省エネ・超小型センサ・アクチュエータの材料や環境発電材料などが例として挙げられます。あるいは材料自身が情報を持ち、サイバーとフィジカルをつなぐようなインターフェースになるような材料なども、ここで検討していったらいいというような御意見もいただいております。
 以上で説明は終わりますが、さらに富ませたら内容や、足りていないこと、新たな視点等、議論を頂ければと思います。どなたでも結構です。よろしくお願いします。
【近藤委員】
 御説明いただいた(1)の1のナノテクノロジー・材料研究開発の基本的な考え方のところですが、サーキュラー・エコノミーという考え方があります。数年前ぐらいからヨーロッパの方で循環型経済といった考え方、サプライチェーンに一旦入ったものは最終的に使い倒す、全く無駄をなくしてしまう、従来無駄になったものを逆に付加価値に変えてしまう、そのような経済の考え方が出てきていると聞いております。我々企業側としても日本でもそういった考え方に変わってくる可能性もあるのかなと。その時にどういった考え方で今後の開発をしないといけないか。
 例えば材料ですと長寿命化です。一旦使い始めたらずっと循環できるようなものとか、再資源化とかリユースだけでなくてシェアリングできるようなものとか、そういった全く無駄がないような材料が求められます。サーキュラー・エコノミーという考え方を意識したらどうかなと思っています。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。循環、実は非常に意識しておりまして、最後のところの分離とか精製とか、持続可能性の要は循環だと思います。ちょっとここで窒素の循環とか炭素を考えるとか、エネルギーと環境をどうやって循環させて、両方を競争力に変えていくかとか、いろいろ考え方があると思って考えています。ありがとうございました。その他、どうぞ。
【草間委員】
 済みません、今議論いただいている内容のほかに、きょうの先生方にも御発表いただきましたように、例えば大学の在り方といいますか、あと産学連携ですとか何かそのこういう研究を支える研究者をさらに支えるシステムに関して、ちょっとここに入れるのが適切かどうかも含めて議論しないといけないことかなと若干思いました。ただの意見です。
【中山主査】
 研究者を支える研究……。
【草間委員】
 例えばベンチャーキャピタルの、ベンチャーを作ろうとしてもお金が集まらないで、ベンチャー、アメリカに比べてベンチャーキャピタルのレベルは低いという御意見もありましたけれども、あとは特許戦略ですとかやはり企業の経験がないと、特にアカデミアにずっといる先生が特許取ろうと思っても多分どう取ればいいのか、どういう形で取ればいいのかというのが分からないので、大学で取ろうとしているところもあるとは思うんですけれども、そういうのがどれだけ充実しているのかがいまいち分からないのかなという感想はあります。
【中山主査】  どうもありがとうございました。ナノテク材料の戦略よりももう少し大きいかもしれないとは思いつつ、研究を支える研究、ナノテク施策でいうとナノテクプラットフォームが関連するかもしれません。研究費の費用対効果をあげることに主眼が置かれ、今日のプレゼンにも関連する内容がありました。ありがとうございました。どうぞ。
【高梨委員】
 先ほどの先生と同じなんですけれども、この(1)の6に「材料開発を支える基盤」という項目がありますが、私はここに、知財のバックアップ(金銭的負担軽減)ですとか、あるいは他分野の先生方とのマッチングですとか、あるいは先ほど田中先生がおっしゃったような評価軸の話ですとか、そういったことを議論する項目のように思ったのですが、そういうわけではないのでしょうか。
【中山主査】
 特に決めてはいないのですが、ここは例えば研究をどのように支えていくか、そこで競争力をどのように持たせていくかということなので、さらに広く捉えればそんなことかなとも思います。書き方を考えます。今いただいたのは少し広めのところですね。どのぐらいシャープにしていくかということは、いろいろな方の御意見もあるのでまた考えてみます。ありがとうございます。大事なことだと思います。
【竹内昌治先生】
 すいません、いいですか。
【中山主査】
 どうぞ。
【竹内昌治先生】
 ちょっとファンディングの仕組みに関しても是非御検討いただければと思っています。これは省庁のミーティングなので余り関係ないかもしれませんが、研究者側が予算を得るとしたらJSTやJSPS、NEDO、AMEDなど、省庁から一段階下のエージェンシーに変わりますよね。そうするとそれぞれ目的があって、例えばこういう横串の基盤技術をどこか一つのエージェンシーがサポートできるかというとそうではなくなってきています。JSTは医療、創薬行為はやらない。一方AMEDは基盤技術に投資する余裕はない。ですので両方が重要な場合、その研究を支えるファンディングがないのがすごく危機的な状況と感じています。例えばJSTとAMEDが協調し、フェーズ1はJSTだけど、フェーズ2はAMEDにいきましょうとか、そういう融合したジョイントファンドみたいなのがあると問題解決するのかなとも思っております。この問題は、いろいろなところで言っているんですが、ここでも言わせてください。
【中山主査】
 問題意識は非常に分かります。私も一番強調したかったのは融合のところです。ライフや材料とICTを融合して、それで新しい付加価値を作っていくにはどうするかと考えると、分野を大きくまたがるファンディングは難しいのです。でも、そこは実は材料がコアになっているので、ナノ材が打って出るのが本筋じゃないかなというのは強く思っています。そういうことを書き込みたいなと強く考えています。
【竹内昌治先生】
 大きく書き込みをお願いします。
【中山主査】
 融合で新しい価値を作っていくところとか、いろいろな分野が提携していくということ、あときっちりと基盤を支えるところを重視しようと考えています。ありがとうございました。大事だと思います。そのほかございますか。どうぞ、井上先生。
【井上委員】
 確認なんですけど、竹内先生の資料の中で47ページに製品化に向けてというところで安定、安全性とかというところがかなり上の方にあるんですけど、これって要するに2の設計プロセス、そういうところの技術開発要素としてやるべきことということですよね。これは企業にいっちゃうわけじゃなくてやっぱり学術的にもまだやることがあってと考えていいんですよね。
【竹内昌治先生】
 大学がやる品質管理というのと企業が考える品質管理とちょっとレベルが違いますね。論文ベースの再現性と商品ベースの再現性と違って、僕が今縦軸に書いたのは企業側が考える品質管理です。もちろんアカデミアのところでも、再現性、安定性を議論する部分というのはしっかりと入れないといけないとは思ってます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。そのほかにございますか。内田先生。
【内田委員】
 先ほど田中先生のお話とあと一杉先生の御質問でもあったとおり、なかなかインテグレーションをしっかりやる研究者が育たないとかいないという問題があるということで、この1で融合、統合、システム化ということを書いているのに、ちょっと対応するという意味での2という部分が少し欠けているかもしれないかなというふうに思いまして、そういった意味では最終的なアプリケーションとかシステムの性能をコンセプチュアルなモデルとかも取り込みながらシミュレーションするような研究もサポートできるといいかなというふうには思いました。
【中山主査】
 重要な視点ありがとうございます。検討いたします。上杉先生。
【上杉委員】
 私が思いますにはこの5番の部分です。推進すべき萌芽的なサイエンス。これってすごく難しいことだと思うんですよね。いろいろなものがあると思うんです。挙げようと思ったら切りがない。まだここに入りそうにないぐらいの新しいサイエンスというのは科研費でやるべきじゃないですかという議論もありましたよね。でも、その中で我々がいろいろ考えて、先生方のお知恵を拝借して、今は5番にあるけれども後々2番に挙げているようなものや1番で考えているようなことに当てはまってくるんではないかという議論があっていいと思います。5番で挙げるべきものを2番に挙げることは可能だと思うんです。今そういうふうに思われる分野があれば言っていただければ助かります。今お願いしてすぐに提案することはなかなかできないと思います。ですから、次回までに考えていただければと思います。
 もう一つは最後のこの表です。中山さんが書いていただいたこの表で、2番と3番がこの上に書いてあって、その枠の中に4番が書いてあります。4番というのはつまり先ほど中山さんに言っていただいた2番と3番の間になるものです。つまり2番よりもより具体的なもの、より具体的で3番に近い。2番は基本的なコンセプトといいますか、基礎的な科学技術でそれよりももうちょっと実際に役立つ方向に向かった例を4番として挙げようということなんですね。現在のところ、4番の例は、この一番後ろの図のこれだけしか書いていないです。もっとあるはずなんです。この辺も考えていかなければならないところじゃないかなと私は個人的に思っています。今あれば是非言っていただいてもいいし、また次のときに言っていただければ助かるところかと思います。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。科研費は先生方の発意のもとにいろいろなことをやってみましょうということです。この5に書いてあるのはそういう中で、この釣り堀で釣りましょうみたいな話だと思います。ここの釣り堀、多分将来的に重みを持ちそう、ここで何か新しい芽が出そう、日本はここを先導できそうだ、のようなところがあれば、ここに書いておきたいと思っております。もちろん上杉先生言われたように4のところです。そういうアイデアも是非とも頂ければと思います。全部載せられるかどうかというのは検討かと思いますが、場合によっては今でなくてもメール等で事務局にお寄せいただければ、それを検討させていただきまして、この中に入れていろいろ考えたいと思っております。また今後の議論にも生かしていければと考えております。
 その他ございますか。もしございましたら。
【生越委員】
 ちょうど釣り堀という表現でふと考えがあれだったんですけども、要するに釣り堀の魚というのがおっしゃるところの目的とするものなんですよね。今日の3人の先生方の話を聞いていると、先生方は自分で釣り上げられたのかどうか分かりませんけれども、その魚をきっちり育てるために3人の先生方は別々にそれをデバイスというちゃんとした形に持っていくまで多分苦労されていたようなお話もありましたから、やっぱりそこのところを釣った魚できらきらしてそうなやつはもう過保護でもいいから、ちゃんと大きくしましょうよとかそういうスタンスでの出てきた新しい科学のいい芽というのに対して、責任持ってこれはどういう形ででも具体的なのは何もアイデアはないんですけれども、それは育てていこうということはちょっと書き込んでおいた方がいいのかなとふと思いました。
【中山主査】
 ありがとうございました。そう思います。時間超過しておりまして申し訳ございませんが、もしございましたら。田中先生。
【田中秀治先生】
 ちょっと余りまとまっていないことを言うんですけども、しかもこのナノテク材料に限らずなんですけども、今、世界を見てみるとこの研究開発、基礎研究も含めて経済活動の一環として行われている経済原理にさらされていると思うんですよね。こういう研究開発みたいなものがどういう経済で回っているのかというような、そういう視点って日本人はすごく欠けていて、欧米の人はもっとそういう視点で見て全体の設計がされているように、何だか我々研究教育というのは経済よりも高貴なものみたいな感じに扱っていて、ちょっとそういう議論とは離れたことで考えていると思うんですけれども、やっぱりそういう経済原理に沿って物事が回っているということをよくよく分析した上で、この国の投資戦略というのを考えていかないと、やっぱり負けていくんじゃないかなという気がしている。何かそういう分析というのは誰かやっていないものかなというふうに思います。
【中山主査】
 どうもありがとうございます。考えるところ非常に多い話だと思います。時間も超過しておりますので、この辺までにしたいと思います。本日頂いた御意見を踏まえて私の方で、あるいは上杉先生と連絡とりながら修正させて頂き、上部委員会のナノテクノロジー・材料委員会に報告したいと考えております。修正内容に関しては主査に一任させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。そのようにさせていただければと思います。
 では、最後になりますが、事務局から御連絡等よろしくお願いいたします。
【丹羽専門職】
 本日、委員の皆様、プレゼンいただいた先生方ありがとうございました。次回第3回の作業部会につきましては、現在調整中ですので、日程が決まり次第改めて御連絡をいたします。本日の議事録につきましては、事務局で案を作成しまして、皆様にお諮りした後で主査にも御確認いただいて、ホームページで公表いたします。また、資料についても机上配付資料を除きまして、今回配付したものをホームページに公開させていただきます。
 それから、配付資料、封筒にお名前を書いて机上に置いておいていただければ、後日郵送でお出しすることも可能ですので、そのようにしていただければと思います。
 以上です。
【中山主査】
 本日も経済産業省から小宮様、内閣府から千嶋様におこし頂きまして、大変感謝致しております。何か一言ございましたら。千嶋様ございますか。
【千嶋調査官】
 済みません今日はありがとうございました。非常に勉強になりました。産業化とかそういう経済のお話もありました。前もちょっと内閣府でSIPとかImPACTとかPRISMとかやっているのは、いかにその科学技術を経済の方につなげるかというようなことでやっているところです。ただ一方で、やっぱり基盤技術とかこの分野は非常に息の長い研究が多いということもありまして、それだけではやっぱりだめかなと思うところです。
 中山さんが書いていただいたように、かといって何も目標なしに進めるというのもすごくやりにくいところかなと思いますので、何がしかこういう文章でこういうところを目指すんだというようなところで、皆さんで意識を合わせてやっていくというのは非常にいいことだなと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。
【中山主査】
 今後ともよろしくお願いします。あと、本日最初から最後までお忙しい中、関局長にもおこしいただいておりました。大変感謝いたしております。前回御挨拶いただいておりませんで、誰もと声を知らないというのもよろしくないと思いますので、お言葉を頂ければありがたく存じます。
【関局長】
 御挨拶遅れまして済みません、研究振興局長の関です。この作業部会、第一線で活躍をされている先生方にお忙しい中、お集まりを頂きまして、これからのナノテク・材料の分野についての在り方を、ある意味自由闊達に一番今ホットにいろいろお考えになっているところ、それから課題となっているところをお話しいただいて、それをもとにまたこれからの戦略を考えていくという、大変重要なものでございまして、ここ数回の会議、今回2回目ですけれども、1回目、2回目その前の準備の段階を含めまして大変熱心に御議論いただきましてありがとうございました。
 今日もいろいろな観点からお話を頂いて、またいろいろ考えさせられる、行政としてどうするのかというところも大変課題としてあるところを御指摘いただいたんではないかと思いますので、またこの議論さらに深めて、親の委員会での議論も含めてこれからさらにこれからの在り方、検討していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。本日少し超過してしまい申し訳ございませんでした。これにて散会とさせていただきます。


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