ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成29年7月19日(水曜日)14時~17時

2.場所

15F特別会議室

3.議題

  1. ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会の議事運営等について【非公開】
  2. ナノテクノロジー・材料分野の現状について
  3. その他

4.議事録

【中山主査】
 よろしいでしょうか。
 では、委員会を開催させていただきます。本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして、また、傍聴の皆様におかれましても、わざわざお越しいただきまして、大変感謝いたしております。私は主査に指名されました中山智弘と申します。
 この委員会では、少し先のこと、第6期科学技術基本計画とか、あるいは、その先も含めて、我が国の物質・材料科学技術がどうあるべきか、それは今どうなっているかも含めて、皆様で考えていければ、あるいは戦略を練っていければと思っております。
 このメンバーの人選ですが、その将来の研究開発の中核となりになって、あと10年、20年、しっかり活動研究をしていっていただける、あるいは、研究開発の戦略を練る現場で今後、中心メンバーとしても一緒にやっていけるような中核のメンバーになり得る方、あるいは、そのようなそういうことに同意をされた皆様がお集まりいただいていると思います。よって、皆様とともに、一生懸命歩ませていただければと思います。
 文部科学省、あるいは、今日お越しいただいております内閣府や経済産業省の皆様も一緒に歩ませて頂けるいただけるということだと思っておりますので、皆様でしっかりいいものを作っていければと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 ところで、本日は機微な情報も含まれますので、一応スライドの写真撮影は禁止とさせていただければと思います。続きまして、尾西さんか丹羽さんからお願いします。
【丹羽専門職】
 ありがとうございました。
 本日御出席の委員の皆様を、井上委員から順に御紹介をさせていただきます。
 井上純哉委員。
【井上委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 上杉志成委員。
【上杉委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 内田建委員。
【内田委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 生越專介委員。
【生越委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 草間真紀子委員。
【草間委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 近藤豊光委員。
【近藤委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 関真一郎委員。
【関委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 染谷隆夫委員。
【染谷委員】
 よろしくお願いいたします。
【丹羽専門職】
 髙尾尚史委員。
【髙尾委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 田中敬二委員。
【田中委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 渡慶次学委員。
【渡慶次委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 内藤昌信委員。
【内藤委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 中嶋浩平委員。
【中嶋委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 早川純委員。
【早川委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 林智佳子委員。
【林委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 原祐子委員。
【原委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 一杉太郎委員。
【一杉委員】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 ありがとうございました。
 本日、高梨千賀子委員と館林牧子委員は御欠席となっております。また、この会の上部委員会である親会ですナノテクノロジー・材料科学技術委員会より、栗原和枝委員に、本日、お越しいただいております。
【栗原先生】
 オブザーバーで参加させていただきます。よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 よろしくお願いします。
 また、本日は、オブザーバーとしまして、内閣府より、千嶋政策企画調査官。
【千嶋調査官】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 経済産業省より、小宮素材産業課課長補佐にお越し頂いていただいております。
【小宮補佐】
 よろしくお願いします。
【丹羽専門職】
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 本日は、関研究振興局長、板倉審議官、及び、岡村官房政策課長の皆様にもお越しいただいております。関局長はまだお見えでないようです。板倉審議官から、一言御挨拶を頂ければと思います。
【板倉審議官】
 文部科学省の板倉です。委員の先生方におかれましては、お忙しい中、本委員会の作業部会の委員に御就任いただきまして、ありがとうございます。
 この作業部会が担当するナノテクノロジー・材料分野、これは、もう昔話になってしまいますけれども、科学技術基本計画ですね、平成8年に科学技術基本法ができまして、基本計画というものを作って政府全体の研究を進めていこうという基本計画ができてから、その分野ごとの重点方針が決まったのが2001年の第2期基本計画からなんですが、その当時から、このナノテクノロジー・材料分野というものは非常に重要な分野であるというふうに位置付けられているところでございまして、もちろん、この第5期の科学技術基本計画、現行の基本計画においても基盤技術としてその重要性がうたわれている分野です。
 また、総合科学技術会議の方では、各省の予算に追加して予算配分をしていただけるという「科学技術イノベーション官民投資拡大推進費」という、こういった予算を今、計画をされておるところとお伺いしているところですが、その中でもターゲット領域として、センサですとかアクチュエータをはじめとしたフィジカル空間基盤技術といったものを選定頂いているところでございまして、これも非常にナノテクノロジー・材料分野の研究開発が大きく貢献できる分野ではないかというふうに思っております。
 文部科学省でも、科研費ですとかJSTの様々な研究事業などにおいて、このナノテクノロジー・材料分野を進めてきておりまして、また、個別プロジェクトでも、希少元素の代替材料を開発する元素戦略プロジェクトですとか、あるいは、大学、研究機関などが有する最先端の研究設備、ノウハウを共有していこうというナノテクノロジープラットフォーム事業、こういった事業を運営することによりまして、このナノテクノロジー・材料分野を支援してきたところです。
 また、昨年には、物質・材料研究機構が、特定国立研究開発法人として新たなスタートを切ったところです。この特定研究開発法人というのは、研究開発法人というものは結構あるんですけれども、その中でも特に世界水準の研究開発の成果を出し、それをイノベーションにつなげていく中核的な機関であるということで選定されましたが、このナノテクノロジー分野に関します非常に大きな期待の表れでもあるのではないかというふうにも考えています。
 それで、この作業部会ですが、今、私が申し上げましたとおり、ナノテクノロジーの重要性というものはいろいろ政府の中でも指摘されているところですが、現時点において、今後、どう社会に貢献していくのか、特にSociety5.0というような概念も打ち出されておりますが、そういった未来社会に向けて、具体的にどうナノテクノロジー・材料研究を進めていけばよいかといったその進むべき方向につきまして、是非、先生方の様々な御意見、御助言を頂きたいというふうに考えております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります入らせていただければと思います。
 最初は、ナノテクノロジー・材料分野の現状についてですということにさせていただきます。
 まずは、本分野の現状把握のために、文部科学省より御説明をお願いいたします。
【丹羽専門職】
 事務局から説明させていただきます。資料2-1を御覧ください。
 表紙、目次を飛ばしまして、早速、4ページから参ります。ナノテクノロジー・材料科学技術の動向といたしまして、既に釈迦に説法な内容でございますが、幅広い産業課題、社会課題を解決に導く分野横断的な基盤技術でありまして、我が国が高い国際競争力を有する分野である一方で、欧米中韓の追い上げが厳しく、重点的な投資を実施しているということが書いてございます。ナノレベルでの理論・解析・制御を徹底的に追求し、革新的機能を持つ材料を絶えず創っていくということが我が国の次世代の産業競争力の生命線であるということを書いております。
 次のページ、5ページには、主な製品・部材の市場における日本の企業の立ち位置、材料産業が非常にシェアを占めているということが図で示してございます。次のページは、材料科学分野の学術論文数です。日本は現在、量において世界第5位、質において世界第5位、こういった位置付けにあるということを示しています。
 こうした認識の下、おめくりいただいて、8ページですが、これまで、我が国の科学技術基本計画においての位置付けとして、先ほど、板倉審議官からも説明があったとおり、第2期、2001年から始まりました第2期において、重点分野として、ナノテク・材料ということが指定されまして、3期、4期と来まして、4期には、産業競争力の強化に向けた共通基盤としての先端材料や部材、また、社会的課題解決に必要な基盤技術としてのナノテクノロジーという位置付けになりました。
 さらに、新しく始まりました第5期の科学技術基本計画、次のページです、9ページですが、こちらでは、ナノテクノロジー・材料科学は、超スマート社会を支える重要な基盤技術として位置付けられています。具体的には、必要なもの・サービスを、必要な人に、必要なときに、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズに効率的、かつ、きめ細やかに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、快適に暮らせる社会、その実現に向けた一連の取組をSociety5.0といたしまして、強力に推進するということが示されています。下に、実現に向けた取組が記載しています。
 次のページから、Society5.0のイメージ、どういったことを指すのかということが図で示してございます。少し飛ばさせていただきまして、12ページまで、Society5.0に関するイメージであるとか、キーワードが記載されてございまして、13ページには、こちらも先ほど板倉審議官から言及がございましたが、内閣府で検討されております官民研究開発投資拡大プログラムにおけるターゲット領域が示してございます。この中に、フィジカル空間基盤技術、あるいは、革新的建設・インフラ維持管理と、こういった領域が記載されておりまして、こちらもナノテク・材料分野、非常に親和性のある分野であると認識をしております。
 更におめくりいただきまして、14ページから、少し3ページほどおめくりいただいて、持続可能な開発目標というカラフルなページがあるかと思います。ページ番号が抜けていて恐縮ですが、近年の国際的なトピックといたしまして書かせていただきました。こちらには、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択をされましたSDGsというものが書かれています。先進国を含む国際社会全体の開発目標として、2030年を期限として、包括的な17の目標、具体的には以下の図で示している貧困をなくす、飢餓をゼロに、また、例えば安全な水を、水とトイレを世界中であるとか、エネルギーをみんなでクリーンに、また、海、陸の豊かさを守る、こういった様々な目標が記載されているところです。
 更に1枚おめくりいただいて、次のページには、こちらは参考ですが、世界経済フォーラムですね。ダボス会議を主宰している国際機関におきましても、今後の会議で、SDGs、あるいは、第4次産業革命といったことがキーワードとして盛り込まれています。
 そして、次のページには、その世界経済フォーラムが毎年10のEmerging Technologiesということで新技術を10個挙げているのですが、これまでも、また今年、昨年度も、赤字で書かせていただいた部分がまさに材料分野に近い分野になるかと思いますが、こういった形で、かなり国際的にも注目を引き続き集めている分野であると認識をしています。
 次に、20ページを見ていただきまして、そういった認識の下、我が国のナノテクノロジー・材料科学技術政策の今後の課題、背景・課題について示しています。
 科学技術の更なる進展やAI、IoT、ビッグデータの活用等による社会の変化によりまして、この材料分野の位置付けは、大きく変化してきております。Society5.0やSDGsといった新たな社会の実現に向けた取組も始まっています。国際的な動向を見ても、やはり重要分野という位置付けは変わっておらず、新たなトレンドが来る可能性もあると考えているところです。
 そんな中、我が国におきましても、元素戦略やマテリアルズ・インフォマティクスに続く新たな政策を打ち出していく必要性があるのではないかと考えているところです。そのため、この部会では、Society5.0等の未来社会の実現に向けまして、この分野の具体的な研究開発の方向性について御議論いただきたいと考えております。
 具体的なキーワードとしましては、下に書いたサイバーとフィジカルの高度な融合を実現する基盤技術の革新でありますとか、科学技術基本計画第5期に定められました11システムを中心とした他分野との融合による革新、その他、自己修復材料等、ここに書かせてもらったようなキーワードということが一つ考えられるのではないかと思います。
 更に1枚おめくり頂きまして、こちらは事務局として、この分野のトップクラスの有識者の先生方へこれまでヒアリングをしてきた結果から得られた論点として書いていますが、四つ柱を掲げて、四つのテーマにまとめておりますが、一つ目が、社会の役に立つ革新的材料ということで、材料の研究開発の際には、社会にどう役に立つのかという具体的な用途イメージを持ちながら行っていくことが重要である。特にその中でも、両立し得ない複数の機能を持つ材料というものを開発していくということが今後の鍵なのではないかと考えるというような意見がございました。
 二つ目が、生物のメカニズムを取り込んだ材料創製ということで、元来、生物が有している機能と情報が融合したシステムを超えたものを創出する、そういった観点での材料創製もこれからの新機軸になってくるのではないか。例えば、環境に適応する生物の進化、DNAに見られるように、既存の材料に生物のプロセスを加えるというような進化の観点を取り入れるといった考え方は期待が高いのではないか。
 また、三つ目として、サイバーとフィジカルをつなぐ新たな材料創製、デジタル化時代の進展、更なる進展に伴いまして、デジタルツインという概念も生まれています。デジタルツイン、現実の世界にあるものからデータを収集して、それを現実の世界をそのコンピュータ上で再現していくと、リアルタイムに再現するという部分ですが、そういった概念も生まれている。また、そのサイバーとフィジカルをデバイスでつなぐという考えは陳腐化してきているのではないか。更なる未来社会の実現には、材料自身が情報を持って、サイバーとフィジカルを直接つなぐという発想も必要ではないかといったような指摘がございました。
 最後、四つ目として、新たな材料開発手法、こちらはMIや、これまでの還元論的な材料開発ではない階層を取り払った材料開発、脳科学の活用など、開発手法そのものに新しく発展して新しく出てきたサイエンスの成果を導入していくことが必要ではないか。また、融合・統合といった視点も引き続き重要になると、こういった御指摘がございました。
 以上です。
 次のページ以降は、現在まさに文部科学省が取り組んでいる施策の紹介になりますので、割愛をさせていただきます。
 事務局からは以上です。
【中山主査】
 分かりやすい整理を頂きまして、ありがとうございました。
 続きまして企業の視点ということで、三菱ケミカルの近藤委員、豊田中央研究所の髙尾委員、日立製作所の早川委員から、御発表を頂きます頂きたいと考えております。また、質問、御議論等は、早川委員のプレゼンの終了後にまとめてお伺いさせていただきますいただければと思います。
 それでは、近藤委員から、どうかよろしくお願いいたします。
【近藤委員】
 三菱ケミカルの近藤です。よろしくお願いします。
 今回、産業界の立場で、今後のナノテクノロジー・材料分野に対して、どういった考え方でということをプレゼンしなさいということでしたので、簡単に考え方をまとめさせていただきました。
 本題に入る前に、我々三菱ケミカル、及び、その持ち株会社でありますケミカルホールディングスを紹介させていただきます。
 この4月に化学系の3社が一緒になりまして、三菱ケミカルとしてスタートしまして、ケミカルホールディングスとして、その他、製薬、インスティテュート、太陽日酸という形で、4事業会社でこのような売上げで、主に三菱ケミカルは、素材関係でいろいろな産業分野に貢献させていただいている会社になります。
 我々のビジョンはTHE KAITEKI COMPANYとして、「時を越え、世代を超え、人と社会、そして地球の心地よさが続く状態」が快適だという、コーポレートブランドを立てて、それに対する社会的な色々な課題を我々は解決する形で貢献させていただきたいという思いで事業活動をやっております。
 具体的にどういった市場分野を我々が注力させていただいているかと言いますとこの五つの包括する分野と市場をあげてを上げて、そこへのソリューションと、どういった事業部門がそれに向かっていくかと、その大前提として、こういった社会的な課題がありますと掲げて、その注力する市場に向けて、主に機能商品、素材等を供給させていただくビジネスをしています。
 次に、本題のこの作業部会で、我々はどういった形で考えていけばいいのかと社内でも検討させていただいたんですけど、最初に、目的を改めてここに書かせてもらいました。「超スマート社会」における我が国の競争力向上と、それに向けたナノテクノロジー・材料分野の基盤技術の強化ということですから、この社会に向けた我が国の競争力を向上させるのが大きな目的ということを改めて認識した上で、それに対する目標や手段をこの作業部会で検討すると理解をしております。もし間違っているようでしたら、御指摘いただければと思っています。
 その中で、考え方として大きく三つ、述べさせていただければと思いまして、紹介させてもらいます。
 まず、最初に、貢献すべき産業分野、最終的なその産業です。どういった産業にその技術がつながっていくのかといったところを是非より一層意識して、ここに貢献するんだといったところを重点化すべきと思っています。
 その考え方として、いろんな産業がありますけど、そこの市場での競争力と社会の構築力、この二つの観点で、やはりこの産業が重要だといったところで、このナノテクの技術をそこに貢献させるんだという意識を強くした方がいいと思っています。
 例えばですけど、やはり日本の強みのある産業を強化する、弱みを補うということもあるんですけど、やはりまずは強みをしっかり強化することが大事だと思っています。
 一つは、市場規模が大きくて、なおかつ、この市場自体が成長して、日系の企業が高シェアを維持しているような産業という観点でいくと、この後ろ二つ、NEDOの資料を付けさせていただいています。よく見られている資料かも分かりませんけど、例えば、世界の市場のシェアが20%以上はある、それで、大きさ的に世界全体の市場から考えて、やっぱり自動車は大きなポジションを占めて、なおかつ、成長もしています。こういった産業に貢献すべきと思っていますし、市場規模が1桁違いますけど、やっぱりシェアが高くて、ある程度産業の大きなところ、電池と産業機械、こういったところが意識する出口ではないかなと思っております。
 あとは、超スマート社会のSociety5.0です。ロボットやエネルギーや健康等、こういった産業も意識してやるべきではないかと思っています。
 もう一点は、こちらに社会実装の時間軸と相関図を描かせてもらったんですけど、ナノテクのこの基盤技術のある程度確立した、確立するという時期的な時間軸を明確化しておく必要があると思います。企業型の研究開発の進捗は、ある程度、その確立している基盤技術を取り入れて、そこをベースにテーマを探索して、探索研究から、事業化に持っていくというのが普通の流れになりまして、事業の内容にもよるんですけど、投資が絡んだりとか、そういったこともありますので、通常は5年とか10年、掛かってしまいます。
 それでようやっと社会実装となりますので、10年、20年後の社会実装を目指すのであれば、その基盤技術は5年から10年後には確立しておく必要があると思っていますので、その時間軸をきっちり合わせていく必要があります。そういった議論を是非やらせていただく必要があると思っております。
 我々企業側の研究開発期間をもっと短くしないといけないと当然思っております。の基盤技術を産業に応用していく上で、我々は企業ですので、競争領域に入ってしまうと、個別でやる部分もありますので、是非、この協調領域でできる部分での支援策を、文部科学省さんですから、産業界という形で御支援いただく部分で、経済産業省さんとの連携等も当然必要だと思うんですけど、こういった支援を少し横に考えながら、この期間の短縮を併せてやれればいいと思っております。
 最後一点は、国外へのこういった活動の技術流出の防止という観点です。ベースとなる日本の強い技術、昨今、いろんな製品で日本の競争力は長続きしないと言われています。最終的には、技術は人に付いてきますので、技術人材が流出してしまうようであれば、なかなか競争力も守れないと思います。今回のこの議論で、適切なテーマ設定をして、産業の発展に貢献できれば、国内で活躍される技術人材がもっと活躍できて、流出することが減っていくと思いますので、そういった貢献も意識してやっていく、議論していく必要があると思っております。
 最後ですけど、我々企業側の立場から言いますと、こういった作業部会でやっている内容をどこまでオープンにすべきなのかという点です。海外の企業がすぐキャッチアップしてきますので、そこに、例えばこういった活動をしていますよと、こういった技術分野のこういったテーマを具体的にやっていますよとか、例えばテーマの内容とか技術の深みのあるワードとか、そういったものがオープンになっていくと、より早く情報をつかんで、キャッチアップされる期間が短くなっていくと思っています。どこまでオープンにするのかをいま一度、議論すべきと思うんですけど、ここはちょっと悩ましいかなと。明確な回答がないんですけど、ここら辺も是非意識いただければと思っております。
 私の方は以上となります。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、髙尾委員から、よろしくお願いします。
【髙尾委員】
 豊田中央研究所の髙尾です。よろしくお願いします。
 今後のナノテクノロジー・材料分野に対する考え方ということで、一般的なことというよりは、弊社でやっている研究事例を挙げながら説明させていただいた方がより身近に議論ができるかなと思いまして、お話をさせていただきます。
 豊田中央研究所の役割は、豊田綱領という豊田佐吉さん含め、こういったというのを出していまして、1935年に定められた豊田綱領の中にある産業報国 や常に時流に先んずべしということであり、我々としては、何のために何を研究し、発明していくのかは、社会に役に立つ、社会を豊かにすると、あと、グループ各社の事業につながって、雇用を生むことです。今、トヨタ自動車、トヨタグループは自動車で成り立っているんですけれども、それが立ち行かなくなったときに、次の事業につながる雇用を生むようなことを、研究所として先駆けてやっておくべきじゃないかと考えています。
 その中で、どういう研究をし、発明をするのかに対して三つの柱として掲げているのが、ここの部会にも関わると思いますが、基礎科学・基礎工学であり、事業を創出していくところ、あとは、グループ各社に対する研究サービスになります。
 会社の中としては、近い5年先10年先ぐらいのところで各社と連携しながら研究する要素技術研究部門と、少し先の先端研究をやる戦略研究部門という二つに分かれて運営をしています。
 その中でも共通して進めているのは、「社会の課題/ニーズを捉え」て、「今までとは違う視点」で、いろんな「技術を融合/革新して」進めていきたいと考えています。これまでの何かいいものができれば、いろんなことに使えるという発想ではなくて、何を解決したいのかというのを最初に捉えて、そのために何をすればいいかということで進めていくという方針で進めています。
 2030年以降に想定される社会ニーズですけれども、大きく人と社会、環境・エネルギーというふうに分けさせていただきましたが、人と社会でいくと、高度情報化、高齢化、価値観の多様化といったことがあるかと思います。
 高度情報化に関しては、先ほどから出ていますSociety5.0の到来ということがありますけれども、特に情報が氾濫して、その情報をいかに早く伝達し、制御していくかというところで、本当に情報処理の限界を超えて、データも電力も、コンピュータに使う電力もすごく増えていくということで、こういったところは何かしら対処していかなきゃいけないんじゃないかと考えています。
 高齢化に関しても、労働人口が減っていくということに対して、健康寿命を長寿化したり、あとは、AI・ロボットというのが日常生活に入り込んでくるので、家事とか介護をやっていかないといけないんじゃないかと考えています。また、価値観に関しては、いろいろと多様化してきますので、人間そのものの理解、何が心地よいのかなどを含めて、人の幸せといったものを理解していかなきゃいけないんじゃないかと考えています。  また、環境・エネルギーに関しては、温暖化、エネルギー多様化、ものづくり・システムの革新、水/食料不足・大気汚染といったものがありますけれども、いずれも、サステナブルな循環プロセスでエネルギーは「創る・運ぶ・貯める・使う」、あとは、ものづくりのシステム、ものづくりとかシステムの革新に関しては、マテリアルインフォマティクスや生物システムの模倣や利用といったところが必要になってくるんじゃないかと考えています。
 いずれにしましても、社会ニーズの解決キー技術というのは、やっぱりこのナノテクノロジー・材料科学というところで考えています。ただ、この部分は、これまでもそうですけれども、ナノをミリ、センチにしていくというところで、やっぱり特性が落ちていきますので、ナノの特性を生かす設計・プロセス、あと、制御するソフトウエアも含めた制御の技術が非常に重要だというふうに考えています。  幾つか事例を挙げて説明をさせていただきたいと思います。
 例えば、高度情報化への対応でいきますと、シリコンの今の半導体の限界が必ず来るということで、シリセンというものを使って次の高速なものを、CPUに使われる半導体を作ろうとしています。
 シリセンというのは、カーボンの一層のものがグラフェンなのに対して、シリコンの一層のものをシリセンと言っています。イオン液体中にこういった層状のシリサイドを入れてぐつぐつ煮ると、自己組織化でこういった二層のシリセンが安定的にできるということを発見しまして、半導体特性があるというところの確認をして、高速の電子デバイスを作ろうというような試みをしております。
 また、その先に、量子コンピュータの時代も来ると思うので、その部分に関しては、量子スピンを作り出す要素技術に取り組んだりしています。  また、CPUだけじゃなくて、センサでも、量子ドットを使った光センサをグラフェンを用いて研究しています。グラフェンをちょっと化学修飾しまして、いろんな帯域で反応するようなものを作りまして、紫外から可視や赤外まで、非常に従来のシリコンフォトダイオードに比べると、何桁も違うような感度のセンサができまして、こういったものができると、従来は赤外しか見れないといったものが、一つの素子で、普通のカメラで撮っている画像と赤外で撮った画像を見れるといったような自動運転に使える素子や、あとは、生体情報のセンシングで血流のセンサに使うとか、そういった医療用の目的にも使えるような材料の研究をしています。
 ナノの世界では実現しているんですけれども、素子化していくと、だんだん特性が落ちていくので、そこのものづくりのところをいかにするかというのが課題だと思っています。
 同じように、高度情報化への対応ということで、ナノ画像センサにカーボンナノチューブを使った研究をしています。カーボンナノチューブの振動を利用しまして、情報を収集しようということで、従来の数センチ角のセンサというのを、ミジンコの手に乗るような100ミクロン以下のナノセンサというので作ろうとしています。
 こういったカーボンナノチューブで作ったセンサを、塗料に混ぜ込むことで、その塗料の中にあるこのナノセンサが画像センサになり、、例えば「あ」というのを撮ると、情報になるところとないところがありますから、情報のあるところだけを取り出して、データアナリティクスによる画像復元によって復元します。なので、今いろいろセンサが自動運転も付いていますけれども、画像センサを塗料に塗り込むことで、非常に小型のセンシングできるんじゃないかということで今、研究を進めております。
 あと、エネルギーのところで行きますと、人工光合成ということで、半導体素子を使って、水の酸化をするところ、CO2、二酸化炭素を還元するところという触媒の作用のところを研究しています。今は、太陽光の変換効率4.6%という世界トップレベルの変換効率を実現していて、高価な触媒をありふれた元素を利用した新規触媒を作ろうと研究を進めています。
 あと、事例の5としては、太陽エネルギー変換とか有機合成の触媒のところもやっています。
 これはシリカというSiO2、ケイ素と酸素の化合物のものを六角形の穴が開いた多孔体の中にいろんな化学物質を入れることで、光捕集用のアンテナだとか、発光したりだとか、機能材料を作るというような研究をして、いろんな有機合成を安価に大量に高効率にできるような触媒というのを作ろうとしています。
 あと、生物に学ぶも御紹介したいと思います。
 まず一つ目は、環境に優しいレアアース採取・回収技術で、真珠は、自分でカルシウムを集めて真珠を作りますけれども、ペプチドが無機物とくっつく特性を利用して、特に今、希少資源で、ディスプロシウムとかを回収、効率的に回収しようということを研究しています。
 ペプチドが繊維との相性がいいものですから、例えば、人工のクモ糸にペプチドを担持したものを作ってフィルターを作ってやると、海中の希少金属が回収できるんじゃないかなというようなことを考えながらやっている研究があります。
 あと、環境に応じた最適構造設計の構築というところですけれども、魚にしても動物にしても、その環境に応じていろいろ形を変えたりとか、骨が強くなったりとかしていくというのがあるんですけれども、そういったときに、遺伝的に構築していく部分と、そこの環境に合わせて作られていく部分というものがありまして、そういったものをうまく数理モデル化できれば、ある環境に対して、こういう構造が最適なんだというような構造最適のものが導き出せるんじゃないかということです。ゼブラフィッシュという魚の成長過程を数理モデル化することをやっています。環境に応じて、最適設計、構造最適設計するというところを、生物に学ぼうということでやったりしています。
 あとは、人間に関してですけれども、車は、実際の実物としての車を作る前に、コンピュータの中でいろいろシミュレーションしながら作っていくというモデルベースデザインというのがあるんですけれども、そういったところに、人も含めたモデルベースデザインをできないかと考えて取り組んでいます。
 コンピュータの中で、人が何か熱いものがあって、熱いものをどう感じて、それを脳でどう処理して、どう動くかといったような、人がどう感じて動いていくのかというのをシミュレーションの中で実現することを目指して取り組んでいます。例えばリハビリでいくと、何かけがしたときに、本当はこういう動きをすれば、そこの部分の負荷が少なくて、より早く治りやすいとか、そういったところに応用できないかとか、工場の作業負荷を低減できないかといったところを目指して、今、モデル化をしています。
 これに関しては、全身の筋肉を全部入れ込んだTHUMSという人体モデルがあり、衝突安全に使っているんですけれども、こういったモデルを基に、その筋肉をどう制御して動かすかという脳の部分を強化学習で処理して、感覚フィードバックを伴った運動制御だとか、その強化学習のデータアナリティクスに基づいて、脳の内部モデルを作っていくと、こういうところで動かそうという研究をしています。
 最後はマテリアルインフォマティクスで、世の中でも非常に盛んにやられております。「カン、コツ」から脱却して、物性に加えて、理想的な材料というのは計算で出てくるんですけれども、それをいかに創り出すか。AとBとCをこういう条件でこういう環境の下で合成するとできるんだといったそのプロセスのところも提案できるような計算材料設計手法ができないかということで、今、トライしています。
 ということで、事例を紹介しながら、お話をさせていただきましたが、社会ニーズの解決のキー技術というのはやっぱりナノテク・材料科学がキー技術でありまして、そのナノで発現しているものを「モノ」のレベルでも実現するというところが非常に大事で、それには、設計や作るところ、あと、それをいろいろ制御してくるところ、ソフトウエアも含めて、制御してくるところが非常に大切なんじゃないかというふうに考えて、研究を今、進めています。
 この後の議論のきっかけになればと思います。ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、早川委員から、よろしくお願いします。
【早川委員】
 日立製作所、研究開発グループの基礎研究センタの早川といいます。よろしくお願いします。
 私は、研究開発グループの基礎研究センタって、日本語では基礎が付いていますけど、ちょっと弊社はここでは基礎と言っていますけれど、より社会のシステムを変革するとか、そういったところをにらんで、今後絶対、方向性を見極めていこうという意味でここは基礎と書いてありまして、英語だとエクスプロラトリーという形で、アドバンスとか、いわゆるベーシック、そういった意味ではない基礎研究センタになりますので、従来の日立ですと、基礎研究というと、やっぱり物性ですと、量子だとか、そういったところにフォーカス、純粋な基礎のようなイメージでやっていましたけど、ちょっとこの二、三年、方向性を変えて、今は、研究推進をさせてもらっております。
 少しこれはビジーなスライドですけれど、これまでのここ何世紀間の社会の進展ってどのようなことがあったかというのを、少しまとめたスライドになります。全部読むとちょっと大変なことになりますけど、どういった形でパラダイムシフトが起こってきたかというと、内閣府さんもいろいろ整理されていると思いますけど、第1次、第2次、第3次といった形で、現在、この超スマート社会ということで、IoTとかCPSでつながるいわゆるスマート工場、これ、第4次のIndustry4.0みたいなところから出てきていると思いますけど、より人間の豊かさとか、そういったところを求めたSociety5.0というのを今打ち出している。我々はこれに対して、いろんな科学技術の分野でどういって実現していこうかというのも一つの大きな課題になっていまして、我々企業としましても、こういったものをどういった形で具現化していくとか、実現していくか、それに非常に悩んでいるところであります。
 ですから、この世界を本当に築くというのは、今後、このいわゆる潮流作りという意味で非常に重要な、学問から産業の世界まで、非常に重要な局面に至っているものだと私自体は理解しております。
 一つ、IoTというキーワードがここ何年か飛び交っていると思いますけど、やはり情報機器の技術の進化はものすごいものがありまして、20年、30年を見ますと、ホストコンピュータもここで年率でも何千倍ですかね、桁が変わるような台数が出てきています。さらに、2000年ぐらいになりますと、皆さん、もう既に各人1台は絶対持っているようなスマホ、ここでやはり人間が非常につながってきているというような世界が見えてきていまして、これがやはりIndustry4.0とか、今言っていますSociety5.0、これに火付けの役を担っているものだという理解もしております。
 その中で、やはり物理世界とサイバー世界の統合というのは、M2Mでもありますけど、こういった部分をバーチャルな世界とフィジカルの世界でどうつながっていくかということで、これでどういう世界を切り開けるかというのがやはり今後の課題かなというふうに個人的には思っていたりします。
 弊社の日立の材料技術の位置付けを少し御紹介させていただきたいと思います。すみません、この資料、まだ公開してないものでして、お手元の配付資料からちょっと控えさせていただいたんですが、我々がお客さんというか顧客として見ていますのは、電力・エネルギー、それから、産業・流通、水、アーバン、それから、金融・公共、ヘルスケアといった、こういった社会基盤を作るような事業に向けて、この材料技術というのをいかに結び付けていこうかと。
 一つ、やはりIoTというのは非常にすばらしい技術でもあるんですが、我々はやはりここのプラットフォーム作りとしまして、ここ全てに汎用するようなプラットフォームとして、LumadaというIoTプラットフォームを構築して、これを今、ビジネスとして展開しようとしております。  それを支えるハードの部分で、データストレージシステムとか、こういったインフラ製品、こういったものをしっかり構築していかなければいけないというような事業構造を今展開しているところです。
 これに対して、材料技術をどういうふうに役立てようかということで、こういったお客さんがいる中で、やはりどういうことが欲しいかという、例えば電力・エネルギーですと、やはり原子力の廃炉であったり、産業・流通でありますと、管理システム、品質管理、それから、アーバンですと、ビルをどういうふうに快適にするか、金融、ヘルスケアですと、再生医療とか新しい医療分野、こういったところへこととして世の中に送り出すと。
 では、それをどういうもので実現するかは、ここにいろいろ例を出させてもらいましたけど、やはりこういったハードの部分というのをしっかり作り上げているのがやはり材料基盤でありまして、こういった、弊社ですと、今このような材料技術を研究開発しておりまして、ここ、この辺りに出てきているのは非常に事業に近いところですので、では、これが今後Societyという形になると、直接結び付くかどうか分かりませんけど、少なくともここら辺を目指したときには、こういった材料がしっかり支えてくれるだろうというふうに思っています。
 ただし、ビジネスモデルというんですかね、バリューチェーンを考えると、やはりいろいろ企画設計から物流方針で、こういった流れの中でビジネスが成り立っていくんですが、ここで今までやはり生産とかというと、非常に材料が役立つ部分があったんですけれど、各このチェーンの各要素のところに、材料がうまく入っていけないかというようなことも少し考え出しています。
 例えば、温度検知インクなんていうのは、物流のところでのトレーサビリティに役立つような材料の使い方があったりして、物流のシステムをちょっとより便利にするとか、そういった切り口もあるだろうと。御存じのように、3Dプリンターというのも非常に早い生産方法であったり、いろんな形でアイデアというか、いろんなお客さんのニーズを取りながら、こういったものをヒントにしながら、こういったものの使い方をやはりしっかり学びながら、こういったところへ乗っけていこうというような考え方に今だんだん切り替わっていっています。
 一つ、IoT技術の方向性として考えてみますと、図で描いてありますけれども、実社会、いわゆるフィジカル空間とサイバー空間、サイバーだとストレージ、こういった多くのクラウドシステム、実空間ですと、こういったエッジのセンサとか端末、こういったところで今、データのやり取りをしながら、解析・制御を通じて、より高度化を図っているところだと思います。
 エッジとサイバー、これ、実は、今までこの辺のサイバー空間でクラウドをしっかり一生懸命やりましょうという動きだったと思うんですけど、実は、エッジのところでクローズループを取ることによって、ここで一つの解を出していくという流れも、御存じかと思いますけど、その中で、ここでやるデータ処理、それから、サイバーのストレージでやる、クラウドでやるデータ処理というところで、こういったリアルタイムでやる省電力とか、こちらは大規模で省電力とかいった、こういった課題があります。
 一つ、我々で今、ここら辺で思っているこの省電力というのは非常に重要なタームかなと思っていまして、エッジなんかというと、やはり電源がないという問題も非常に大きな問題を抱えているかと思います。
 もう一つ、IoTを推進していくに当たって、技術的なボトルネックってどこにあるかな。ちょっといろいろ書いてありますけど、IoT社会の実現で、2030年ぐらいになると、普及するセンサの数というのは年間30兆個とか、現在の何百倍もセンサが出ていって、それから、取り扱う情報量そのものがやっぱり数百倍、数千倍となっていって、10の18乗、ゼタバイトとかヨタバイト、この辺のデータ処理がなされるということで、情報機器の高度化はあるかと思うんですが、こういった非常に莫大な情報とセンサがばらまかれるわけです。
 例えば実空間でこういったものを処理しようとしたときに、いっぱい情報があって、いっぱいセンサがある。じゃあ、電源どうしますかといったときに、一個一個、ワイヤーを這わせるわけにいかないので、例えばこういった熱電変換のようなもので、近くに排熱があれば、そこからセンサ無線へ電力供給するとか、もう電源そのものが全く取れないような世界でも、やはりいろんな自然の熱等を使って、電力を補ってあげる。こういったものが一つ、Society5.0、もう一歩ちょっと手前かもしれないですけど、こういったものに貢献する材料技術としてあるのではないかなと思っています。
 さらに、サイバー空間でいうと、もっと莫大な情報量とかを扱う、更に大きな電力を食うということで、これはかなり将来の材料科学の一例として、個人的、あるいは、少しこの基礎研究センタの中で議論を今しているんですが、量子、実はこれ、JSTさんのナノテクノロジー・材料分野の俯瞰報告書、実は我々が考えていたことと全く同じ文言が載っていまして、量子系の統合技術と、電子、格子、スピン、「フォノン」とトポロジカルといった、こういった技術で、先ほど言った熱の問題とか電気の問題とか、いわゆる量子コンピュータを作りますというところ、ちょっと切り口が少し変わって、違ったかもしれないんですけど、いわゆる物性空間の今までやってきた物性物理のものと、ここに新しい情報熱力学みたいな情報理論を統合させて、例えば、情報、何らかのデバイスに情報を書き込むというのは熱エネルギーを増大させる方向に行くんですけど、情報を消去すると、その熱エネルギーが散逸されて、何らかの未利用の熱を、エネルギーを取り出すことができる、そんな技術があるのではないかと思っていまして、そうすると、こういったデータ処理をすると、そこは少なくともエネルギーをまた戻せるというような技術ができるのではないか。今、こんなようなことで、こういった新しい分野の何か潮流作りというか、そういうところへ我々も入っていきたいなという思いがあります。
 更にその先というところで、いろんな大学の先生とかとお話しさせてもらっているんですが、やはり価値が多様化するということで、それを物性とか材料とかで実現するためには、多分、今のサイエンス基盤だとまだまだ足りなくて、もっと拡大しなければいけないと思っています。
 一つ気になっているのが量子生物学でして、生物に学ぶというのが先ほどから言葉が出てきていますけれど、まだ量子生物学というのは非常に新しい分野かと思いまして、まだまだいろんな生体の中を量子で解こうとしたときに、数%しか理解できない。そういったものを理解すると、例えば、人工の生命ができるとか、ちょっとぶっ飛んだ話かもしれないですけど、量子計算でももっとすごいものができるかもしれない。
 そういったことがあるかと思いまして、是非、ナノテクノロジーの次というか、こういった分野を入れ込んで、全く新しい原理を見出すような、そういう方向性が今後アカデミア、特にアカデミアの部分は求められるかなと。産業界もこういうものをしっかり理解するのが必要だと思っていまして、是非こういうところを何か打ち出していただけると、面白いなと思っています。
 簡単でしたけど、以上で終わります。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。大変分かりやすい話を、3名の先生方にしていただきました。
 それでは、ただいまの御説明内容に関しての御議論、あるいは、御意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。最初はどのような角度でも結構です。どうぞ、一杉先生。
【一杉委員】
 一杉といいます。文科省の資料で、論文数が最近非常に減っている資料があります。それも当然、皆、知っておりますが、この理由についてどのように分析されているでしょうか。どのように解釈をすれば良いのか教えていただけますでしょうか。6ページだと思います。
【中山主査】
 岡村岡村政策課長さん。
【岡村課長】
 これについては、幾つもの分析がありますが、この図は科学技術・学術政策研究所の方で分析をしているものですけれども、まず、論文数全体については一番の原因としましては、やはり論文を書く方々の母集団、これが大きな原因の一つにもなっているであろうというのは、皆さん、御存じの分析の一つの理由にございますね。それと、日本の中で、先生方が論文を書くアクティビティが落ちているというオブザベーションはこれまではっきりはされてないと思われます。
 ですので、単純に左側の論文数ということで物事を見るよりも、論文に関しては、最近、トップ10%、ここは10%を出していますけど、トップ1%というような世界に影響力のあるような論文でもって評価をするということもございます。それについてもやはりトレンドとしては落ちている。この辺は、単純に人数だけの問題で、研究者の数だけで説明できるわけじゃないのですが、そのようなデータはございます。
【一杉委員】
 ナノテク・材料を発展させようとするならば、研究者が元気で、しっかりとよい論文を書かねばなりません。「一人当たり」の論文数や、評価軸を変えて、論文数は減っているのだけど、1人あたりの特許数が増えている、あるいはインパクトのある論文が増えるなどでもよいので、「定量的な評価」が必要だと思います。分析をしっかりとして、それをもとに次の戦略を考えなければならないと思います。
 もう少し踏み込んだ分析があったら、今度、ぜひお教えください。
【岡村課長】
 ありがとうございます。
【一杉委員】
 実際に研究者数で割って、1人当たりの論文数にすると、アクティビティは減ってないという分析なのでしょうか。
【岡村課長】
 いえ、そこまでの分析データを持ち合わせてはおりません。ただ、大きな原因に、研究者の数というのが利いてきているのではないかなというオブザベーションもございます。
【一杉委員】
 では、ナノテク・材料を発展させるには、研究者を増やせばいいというロジックが成り立つと。
【岡村課長】
 まず、ナノテク・材料の数的なものとしましては、ここで論文を出しておりますけれども、論文だけじゃなくて特許かもしれませんし何がその指標となるかは議論があると思います。先ほど、産業界の先生方、割と異口同音だったと思いますけれども、全ての情報をどんどんオープンにすればいいというわけではなくて、どの段階でオープンにするんだと、この辺も戦略がございますので、一通りの指標ではないと思っております。
【一杉委員】
 全ての情報をオープンにすべきではないという点は非常に重要だと思います。私は、以前、企業に在籍していましたが、大学に戻ってくると、企業側のニーズが非常に見えにくいです。ですから、ナノテク・材料を強くするには、企業がニーズを限られた人にきっちりと開示して、そのニーズに対して研究者が集団で解決策を探るのが一番いいと思います。しかし、今はニーズが公開できないから、大学側の研究も中途半端になってしまう。だから、どうやって公開するのか、つまり、クローズドなところに公開する仕組みを考えた方がいいなと思います。三菱化学の方に、そのように情報を公開する戦略をお聞きしたいと思います。
【近藤委員】
 そういう面でも、我々は、割と最初に今回、私、産業の末端の産業の分野の重点化というのを出させてもらいました。もらったんですけど、そういうふうな、今、日本の中で一番強い産業ってやっぱり世界に誇る産業はってやっぱり自動車ですよね。その自動車の中ででも、やはり今大きな動きがあって、EV化とか、自動運転、とか、いろんなシェアリングとか、大きなこういった潮流がありますよね。そこを、例えば我々もニーズとして、では、どの程度、それが急に進んでいくのか、そのためのキーとなる技術は何なのかといった議論をよくしています。
 そこが本当の意味でのニーズなんですけど、例えば、本当に将来が間違いなくそういうふうに、我々が思っているようになるかどうかというのは、またそれも一つの議論だと思います。ので、そういう面では、例えば自動車も、例えばEV化が、どうなるかといったいろんな未来シナリオをしっかりシナリオを幾つかちゃんと作った上で、だけど、その中で本当に必要なのはこれだよねと。、そこで重点化に、例えば、キーになるのは例えば蓄電池でかも分かんないですよね。蓄電池のところで、今、全固体とか、いろいろありますけど、こういったものをしっかり、ある意味、ピンポイントできっちりやれば、今、日本はリードしている自動車をもう少しもう一段上の段階で、もっと先の世代まで続けることができるということがあると思いますかも分かんないですよね。
  そういったところを、当然必要な議論なんですけど、そこをあえて本当にこの作業部会でやったところ、全部オープンになっちゃいますといったところが、私も最後にちょっともう一回言わせていただければ、何かそこのオープンにしちゃうというのは非常にまずいのかなという部分もあります。
【一杉委員】
 例えば全固体電池が重要であるとか、そこまでは大学にいてもよく分かりますと。そこから先、もうちょっと細かくブレークダウンした技術について、企業が欲しいものがなかなか大学にいると見えません。
【近藤委員】
 まあ、そうですね。
【一杉委員】
 それは広くは開示できないのはよくわかります。本当に材料科学を発展させるのだったら、例えば大学で信頼できる人で集団を作って、そこにだけは開示するとか……。
【近藤委員】
 まあ、そうですね。
【一杉委員】
 そういううまい仕組みを作らないといけないと思います。大学と企業がいつまでも断絶していたら、スピードが上がらないと思います。
【近藤委員】
 そうですね、はい。
【一杉委員】
 やはりそこの仕組み作りが一つ、ナノテク・材料が発展させる鍵かなと思うところです。
【近藤委員】
 そうですね。そのニーズをある程度当然限られたところではちゃんとオープンにして、そこの中にある意味、国の支援ご支援の策を頂きたい部分もあります当然ありますし、そのただ、そこの支援を頂く上で、またオープンにしないといけないことが出てきたりとか、そういうところもあると思いますので、そこのところをところで、うまくバランスを取れるような、そういった取組ができればというふうには思っています。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 そのほか、ございますかでしょうか。
 なければ、私から早川様に質問させていただければと思います。Society5.0×材料の話は非常にはよく分かって、多くのヒントがあったと思います。材料とIoTの接続のところ、下がに材料でがあり、上にIoTがあるような話があって、材料が割と個別に並んでいた気がします。そこをうまくカテゴライズするとか、何か視点を持ってIoTと接続させていくとか、考えられますか。また、材料に対する思い、若しくは将来の方向性等みたいなものが考えられておられれば、もう少し説明して頂けませんか。 【早川委員】
 これはあくまでイメージの図になりまして、ここに載っかっている材料が全てつながっているかという……。
【中山主査】
 ただ、もっとたくさん材料はありますが、それをどのようにカテゴライズするか、あるいは考え方、若しくは、考えて方を持つかという事に関していかがでしょうか。
【早川委員】
 やはり、まず、切り方がああいう事業、4事業分野切りになっていまして、だから、それに見合った材料源、環境・エネルギーの材料源であったり、それから、金融・公共となると、ちょっと情報系のデバイスのような材料分野であったり、そういう分野立てはこれまでと余り変わらず作られると思います。
 ただ、今後は、Society5.0って、今、こういうふうに切るのを更に、何ていうんですかね、横の、横軸も刺すような形に多分なっていくものだと思いまして、社会の豊かさという意味では。
 実は、共生、自立、分散と我々は呼んでいるんですけど、いわゆる分散型のサービス事業、何ていうのか、例えばアーバンがうまくいっていたら、例えば電力・エネルギーをそこに取り込むとか、そういった共生もやっていかなきゃいけないんで、そういったより分野間が近付いていく形になると、恐らく持ってくる基盤材料も余りそんなに垣根を作らずに、使い方が似たような形になってくるんじゃないかなとは思っています。  ちょっと説明は悪かったかもしれませんが。
【中山主査】
 ありがとうございます。また考え方の議論をさせていただければと思います。
 そのほかにございますか。上杉先生。
【上杉委員】
 トヨタの髙尾さんに質問があります。
 3ページ目のところに非常に気になる言葉が書いてあります。「2030年以降に想定される社会ニーズ」というのがございますね。最初の「人・社会」のところで、Society5.0で労働人口減とあります。これは非常に分かりやすい。皆さんが議論しているところなんですけれども、その下に、「新しい価値創出」とあって、「人間の理解(幸せ)」というのがあるのです。これ、もうちょっと詳しく教えていただけません?
 どういうふうに理解して、それをどうやって還元していくのか、教えていただきたいです。
【髙尾委員】
 ものづくりだけじゃなくて、やっぱりその後のよくことづくりと言われますけれども、人が喜ぶところ、幸せを感じるところを知る人が必要になる考えています。今、我々がやろうとしているのは、先ほど、人の動きのところをシミュレーションというか、コンピュータの中で再現しようということをお話ししましたけれども、人の感情、どういうことを刺激を受けると、その人が幸せだというか、心地よいと思うかとか、そういったところを理解していかないといけないかなというふうに思っています。
 一つは、例えば、鬱病は人の感情であると思うんですけれども、内臓系が感じる部分が脳に伝達して、その人が鬱になっていくそうなので、そういったところを解明し、人が感じるものをコンピュータの中で再現して、いろんな新しいサービスに生かすようなことができないかというのは考えていますが、かなり遠い先だと思っています。
 すみません、答えになってないですが。
【上杉委員】
 非常に難しいところだと思うんです。非常に僕、ここに興味がありまして、御質問させていただきました。
 1枚戻って、私、感銘を受けた部分があります。最初に、「課題ニーズを捉え」それで何かを作るととあります。これは、誰でもやっていると思うんですね。でも、その後に、「今までとは違う視点で」というのがありますよね。そこがすごく大切だと思うんです。
 普通に皆さんが要るものを作ってやろうとすると、これ、もうみんなが知っていることなので、単なる競争になってしまったり、作ってしまえば、陳腐なものになったり、そういうこともあると思うんですよね。その違う視点でというのが僕はポイントだと思っているんです。
 先ほどおっしゃられたように、人間を理解して、独自のやり方で理解して、それで、それをニーズに還元して何かを作る。ほかの部分は当たり前のことが僕は多いと思うんですけれども、先ほどおっしゃられた、人間の理解とか幸せというのはちょっと違う視点だと思ったのです。人間の理解や幸せというのも、その違う視点の一種なんですかね。
【髙尾委員】
 そうですね。
【上杉委員】
 ありがとうございます。
【中山主査】
 その他、ございますか。
 無ければ次の議論に進みますが、いつ議論を戻しても構わないと思っております。
 続きまして、Society5.0に関連するトピックスとして、サイバーとフィジカルの高度な融合の実現に資する研究開発といった観点でから、内田委員、及び、染谷委員から御発表いただきたいと思います。最初は、内田委員からです。議論は、そのお二人の発表後にさせていただければと思います。
 どうぞよろしくお願いします。
【内田委員】
 御紹介、ありがとうございます。慶應義塾大学の内田と申します。
 私、LSI分野で長いこと仕事をしておりました。まずは、LSI分野の現状の私自身の捉え方と、2030年に向かって、LSI分野がどういうふうになっていくか、またそこから、どういうことを私自身、考えているかということを御紹介させていただきたいと思います。
 先ほどの御発表の中でも、シリコンの進展がいつまでも続くわけではないというお話がありました。LSIは性能向上をいまだに続けていますが、2020年代中頃には、既存のCMOS技術の進展というのがいよいよ終わる可能性があるのではないかというふうに考えています。また、そう思っている方も多くいらっしゃると思います。
 まず、LSI分野では、以前、皆さんが学生時代に習ったようなトランジスタとは異なります。立体型の構造を作って、そして、シリコンの小さなボリュームをチャンネルとして使うということを行っています。
 このボリュームをどんどん小さくしていくということが必要になってきていまして、Intelの10ナノメートル技術というものでは、大体このシリコンの厚さが6ナノメートルぐらいまで薄くなってきています。
 私自身もこういったシリコンのチャネルを小さくする技術に昔、関わっておりました。シリコンの厚さそのものを4ナノメートルよりも小さくしてしまうと、原子レベルでの厚さのゆらぎがデバイスのパフォーマンスの大きな劣化、あるいは、性能のばらつきを与えてしまいます。LSIは今、数十億個というレベルのトランジスタを入れているのに、そういった特性のばらつきがあると、集積回路として成り立たなくなります。そのため、シリコンのボリュームを4ナノメートル以上にするということが必要であろうというふうに思っております。
 しかし、これまでいろいろとトランジスタ構造を工夫してきて、これからも工夫は続くと思うんですが、いかに構造を工夫しても、まともにトランジスタを動かそうと思うと、10ナノメートル世代と呼ばれる世代以降の微細化をしようと思うと、4ナノメートルよりも小さなシリコンというのを使わなくてはいけない。そこは非常に難しかろうというふうに思っています。
 ですが、もちろん各社頑張っております。海外のあるメーカーは、2020年には、4ナノメートル技術世代を量産すると発表していますが、CMOS技術の発展はその辺りで難しくなるだろうと。3ナノメートル、2ナノメートル技術世代というのは、なかなか量産が非常に難しくて、今までのCMOSと全く違う動作原理のものを作らなくてはいけない。これが成功するか、しないか、全く分からないというふうに思います。
 一方で、先ほどの話にもありましたとおり、センサが高性能化することによって、あるいは、センサ以外の様々な情報が増えることによって、私たちと取り巻く情報量が爆発的に増大することが予測されています。先ほども1,000倍とか、そういった値が出ていたと思います。ところが、情報処理をする計算能力は、微細化がうまく進展しないと、2桁伸ばすのがなかなか難しいかもしれないという状況になってきます。ですから、データ量が爆発的に増えているのに、計算能力はそれに比べて大きく向上することは難しいかもしれないということです。
 最近の最先端のLSIというのは非常にすごく進んでいて、Qualcommのものでは10ナノメートル技術というのを使っていて、ハイパフォーマンスの動作時の消費電力は34mW、ローパワーのときには6mWというスペックになっています。
 このような数値から感じることは、計算能力も非常にすごいのですが、低電力動作時にCPUが6mWしか使わないという消費電力の低さです。もし、スマートフォンにセンサを取り込もうと思ったときには、消費電力がこの値よりも圧倒的に小さくないと、許容されないだろうと思われます。センサとしては0.1mW、あるいは、それを切るぐらいの低消費電力のセンサというのを作っていかなくてはいけないだろう思われます。
 スマートフォン向けのCPUのほかにも、計算向けのLSIでは、TeslaなどのGPUなどがあります。このように非常に高い性能のGPUがあるわけですが、これを比較の対象として、CMOSの微細化限界まで達したときのスマートフォンの計算能力を考えると、現状の最高性能のGPGPUの性能を超えることは難しいかもしれません。あくまでも将来のトランジスタ技術は現在のCMOS技術の単純な延長上にあるものであり、計算アーキテクチャーも現在と同様の方式であると仮定した場合です。
 では現状のGPGPUが、学習に使う上で十分なパフォーマンスかというと、アプリケーションにもよると思いますが、まだまだパワーとしては不足していると思われる方も多いのではないかと考えています。
 従って、2030年を考えると、情報量の増大に比べて、計算能力の進展は不足する可能性がある。これからのスマート社会では、クラウドに計算を任せるという話もありますが、何でもかんでもクラウドに任せるといっても、情報処理的には立ち行かなくなる可能性がある。そして、先ほどの話にもありましたエッジ側に計算を任せようというふうにいっても、エッジ側の処理能力というのも、やはり限界があろうかというふうに思います。
 私自身は、エッジサーバにデータを上げるスマートフォンのような端末にもある程度の計算能力を持たせて、また、ある程度はデータを圧縮したような形で、重要な情報だけをエッジサーバに上げるようにしないと、全体的な計算処理能力が不足するとイメージしています。
 従いまして、人工知能に向けたハードウエアを開発していくことが非常に必要であろうということが一つあります。
 また、IoT社会を実現する上で、センサの搭載が非常に大切になってきます。こちらはQualcommのホームページから抜粋したデータですが、スマホの世代が進むに従って、センサの数がどんどん増えています。人の五感で考えたときにも、視覚、聴覚、触覚に対応するセンサはあるのですが、味覚、嗅覚に相当するセンサは搭載されていません。我々は、嗅覚に当たるセンサを搭載していくことが、今後重要であろうというふうに考えております。
 嗅覚のセンサは、ガスセンサとも言えます。ガスセンサがスマートフォンに搭載されると、スマートフォンを操作することで、あるいは会話をすることで、病気の簡単な診断ができ、またユーザーの周囲の環境の測定をして、PM2.5とか、毒物などのテロのおそれがないかといった判断にも活用できると考えております。
 先ほど、CPUの消費電力が6mWという話がありましたが、センサを搭載しようと思うと、しかも、多数のセンサを搭載しようと思うと、1個1個のセンサは非常に低い消費電力にならなくてはいけない。そういった意味で、低エネルギー、小サイズでガスのセンシングする、しかも、狙った標的物を選択的にセンシングするセンサが非常に大きな可能性を占めているというふうに考えております。
 実際、呼気中のガス成分が分かると、いろいろなことが分かります。例えば小腸の活動であるとか、ぜんそくであるとか、喫煙の状態だとか、あるいは、肺がんといったことも診断できるという話もございます。もちろん、このような呼気成分と病気の関連付けは多くの場合に研究レベルで進んでいるところです。明確にこれが絶対できるというふうにまだ言えないのですが、非常に多くの可能性があると考えられています。
 ところが、現状のガスセンサは、高性能のものは非常に消費電力もサイズも大きいです。低電力のガスセンサは比較的いろんなガスに反応してしまうという問題があります。
 現在市場にも数多くのすばらしいセンサがあります。例えば、消費電力が15mWというものもありますが、IoT社会のガスセンサとしては、まだまだ低消費電力化していく必要があろう考えております。
 市販のセンサを使って、さらに人工知能を使ってどのようなことができるかを試してみました。比較的性能の高いGPUを使うと、複数のガス物質がある中でも、識別ができることを確認しております。こういった計算を試行して感じるのは、学習はサーバ側でやればいいという話はありますが、個人レベルでも学習の必要はあると感じます。生活習慣であったり、あるいは、呼気に含まれる成分のは大気の成分を非常に反映しますので、どこにユーザーがいるかということによっても、状況が変わってきます。各ユーザー個人の生活習慣とか環境を学習することが、ヘルスケア応用おいても非常に大切だろうと思っています。
 このような個人レベルでの情報の解析を、すべてクラウド側でやるかというのは、現実的にはなかなか難しい面も多いと思います。携帯端末の汎用CPUでの学習は、計算能力的には困難だと思われますので、新材料、新アーキテクチャーを利用した人工知能の開発というのが非常に強く望まれると考えております。
 我々の研究事例については、時間の関係もあるので省略させていただきます。
Society5.0の実現へ向けて、LSI分野に取り組んできた研究者といたしましては、汎用型の計算機の性能向上は2030年を前に停滞する可能性があることを念頭に置いて、技術開発をやっていくことが必要だと思っています。その視点から申し上げますと、人工知能向けハードウエアの開発は、非常に重要であると思っています。
 現状のIoTでは、まだ今ある既存のセンサを使いこなせていない状況だと思います。今後、数年間掛けて、現状の加速度センナやGPSなどのセンサを使いこなす社会が到来したときに、更にそこにガスセンサなどの新たなセンサが社会に役立つ形で入っていくことができればと思っています。  また、材料レベルでは、サイバー空間とフィジカル空間をつなぐインタフェースは、様々な意味合いで有機と無機の界面であると思っています。材料といった視点では、有機-無機の界面、いろんな観点での界面を基礎研究の対象として捉えていきたいと思っています。
 以上になります。ありがとうございました。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、染谷委員から、よろしくお願いします。
【染谷委員】
 東京大学の染谷です。今日は、このように貴重な機会を頂きまして、関係者に御礼申し上げます。
 私が東京大学と理研で進めておりますフレキシブル生体情報センサについて、先ほど、内田委員の方からございました柔らかいものと堅いものという、一側面ではありますが、私どもの研究を中心に、紹介をさせていただきたいと思います。
 ちょうど昨日、私どもの一番新しい論文が、『natureNature Nanotechnologynature nanotechnology』に出版されまして、これを一例に、私どものがやっている研究内容をちょっと紹介させていただきたいと思います。
 このスライドでこれ、今、指先に貼られていますのは、皮膚に直接貼り付けた電極でございまして、実はこれは皮膚呼吸ができるようにポーラス状にたくさん穴が開いています。開いたものになります。今まで、私ども、後で御紹介するように、私どもは薄いフィルムとかゴムシートの上にこういうセンサを作る研究をしておりました。しかしが、この発表をすると、すぐに質問を受ける、あるいは、素人でもすぐ分かることとして、ずっとこういうセンサを貼り付けたままにすると、蒸れたり、かぶれたりする問題がありました。するんではないですかと、実際に貼り付けると、一、二時間では全く問題がないんですけれども、ずっと付けているためにはと、やはり皮膚呼吸が必要ないといけないということになりで、これをその後、3年間ぐらい掛けて改良していたしまして、とうとう皮膚呼吸できるようになりました。
 その結果、ちょうど慶應大学病院の皮膚科の教室の協力を得て総出で、私どものセンサーこれを評価しました。することを手伝っていただいて、1週間、20人のボランティアに貼り付けていても、明確な全くネガティブ反応や炎症が起こらないということを実証したというのが今回の発表になります。
 ここで、幾つかのことが言えるんですけれども、こういう生体情報をずっと計測していくと、長期間安定に見えるということは非常に重要です。でございまして、医工連携も進む中、こういうセンサがいよいよ実現されるようになりましたなったというものです。
 私の研究室では、2002ちょうど2003年にまで、2年間のアメリカの留学を終えて帰ってきたときから一貫してずっと、柔らかいセンサの開発を続けてまいりました。その中で、柔らかいものといいますと、ここにありますように、大体基材でいえば、ゴムシートですとか、あるいは、テキスタイルの布地、それから、薄いフィルムをゴムに張り合わせて蛇腹のような構造、これらを作ると、大体3種類ぐらいに分けられます。分けられるんですけれども、こういう素材の柔らかさや構造の工夫でを生かして、生体に貼り付けて、生体の情報をずっと安定に計測する技術の取るという開発をしてきております。
 こういう素材が柔らかい電子素材と生体はことと、それから、生物というのは柔らかいものが好きであるという親和性が高いというのは、ことのは、研究を開始する前から予想されていました。このこともうある意味、柔らかいからずっと分かってきて、でも、そういう柔らかさと生体の親和性が高いというのが、一体、学術的にはどういうことを意味しているのかということをずっと考え続けてきいました。きている中に、最近では、柔なくないものを押し付けると、もちろん痛い。わけですけれども、この痛いというのが、ずっと付けていると、例えば運動と干渉する。、それから、あと、もっとその先には、血流を止めたりすることによって、非常に大きな問題が発生してしまう。それから、細胞は固い堅いものにと柔らかいものが当たると、壊死してしまう。とか、細胞レベルで見ても、マクロレベルで見ても、あるいは、神経とかとのつながりを見ても、柔らかいというのは本質的に非常に面白さを持っています。おりまして、今、こういう感覚的に持っているものを、デバイスの完成度が上がってきたので、数値化していこうという活動を続けております。
 例えばより具体的には、私ども、装着時の不快感というものがあります。けれども、もう不快感とか快適性とかというのはなかなか数値化しにくいものでした。でありましたが、こういうものをバイタルなサインと、それから、不快感などを位置付け、数値付け、ひも付けすることによって、より正確に測っていく。先ほど、幸せとか感性等についての御質問もございましたけれども、そういうものを一つ一つ計測していく技術として役に立てたい立てればというように思っています。
 実際に伸縮性のこういうセンサを通じまして、生体の信号で、体温、それから、血圧、脈波、心拍数、血中酸素濃度、様々なバイタルサインが測れるようになってきております。おりまして、こういうものを医療機器メーカーと、今、実際に実用化に向けたする研究開発を進めております。  ここで非常に私どもが一つの夢として掲げているのが、柔らかさで人に優しいエレクトロニクスです。と、非常に文学的な表現ですがになっておりますけれども、柔らかくて人と親和性が高いとので、ずっと計測できます。できるというのは、従来は、の生体情報といいますと、少なくとも再現性高く正確にバイタルサインを計測するためにはできるのが、病院において検査室できちっと安静時に検査技師の方がデバイスを装着する必要がありました。と、こういう場合に限られていたわけですけれども、これを貼り付け型のセンサとか、非常に軽量、薄型化が進んだウエアラブルセンサによって、いつでも、どこでも、同様レベルの再現性の高いバイタルシグナルが取れるようになると、これはスポーツ、福祉、医療など、様々な分野で応用が進んでいくだろうというように期待していますいるものです。
 私どもがこれもここまでが私どもの研究してきたの、自己紹介も兼ねてということになるんですけれども、電子人工皮膚、私どもはE-skinというふうに呼んでおりますが、日本で最初に始めたときには、これをロボット用に貼り付けると、伸び縮みするので、腕の接合部とか曲面にも貼り付けられるというところからスタートしたわけです。その後が、これは人間の皮膚、動物の皮膚はそれぞれ痛点とか温点のようにマルチモーダルで多点であって、それから、伸び縮みすると、こういうものを基本にした新しいセンサの開発を進め、これを薄型化して、皮膚に直接接触して計測ができるようになり、最近では、一番最初に御紹介したように、皮膚呼吸ができるようなセンサが作られるようになりましたなったと。  そしてここまで来ますと、最後は、何といいますか、とうとう基材がなくなりますないんですね。ポーラス状の基材も最後は水で溶かして、最後に電子部品だけが体に付くという点において、もうこれは何か絆創膏を貼り付けているというよりも、センサと皮膚が一体化しているような、もうサイボーグの世界に一歩一歩近付いてきているというように言えると思います。
 最後 最後、本来これだけをお話しするべきだったのかもしれませんが、私が今後のナノテク・材料研究開発のポイントとして重要だと思っていることを4点ばかり上げさせていただきたいと思います。
 これは実は、カンニングではないんですけれども、東京大学が今、指定国立大学に採択されまして、その後、卓越大学院で検討している内容の一番最後の文字だけを、ナノテク・材料の開発を推進というふうに変えた程度でありまして、私もちょっとそこのプランニングに深く関わらせていただいたので、カンニングといいながら、私の視点から、これが全部ナノテクノロジー・材料に重要だというものを上げさせていただいております。
 まず、第1点は、データデーターデータ活用による価値創造で知識集約型産業へのパラダイムシフトを誘起するためのナノテク・材料研究開発を推進することです。と。これは多分今日、これしか言わなくてもいいぐらい、非常に重要であろうというふうに思っておりまして、次の産業革命においては、やはり労働集約から資本集約、知識集約というように変わっていきます。一方いて、今まで材料分野ではでいいますと、労働集約的に人海戦術的でした。戦術であったり、あるいは、これはもちろんずっと昔の話ですけれども、その後、資本集約から知識集約になると、コンビナートのようなものがあって、これがそことは違う形での産業集積が進んでいくわけで、これはやはり材料のをやっている研究者としても、マインドセットの変化が必要である。
 それから、あと、データの活用とセンサの開発というのはもう全く別ジャンルだと思ってもいいのではないか。ユニークなセンサがあり、高感度であるというのは非常に重要なポイントであるけれども、ユーザーは高感度センサを渡されても使えません。使えないわけで、必要なものはデータですであると。これをやはりユーザー側のニーズと、それから、持っている側のすぐれたテクノロジーをいかにちゃんと的確に価値創造につなげることができるのかが重要です。、このギャップを埋めたがらないは普通、研究者はが多い余り行いたくないので、ここを埋めるということもエンカレッジしていく必要がありますあるというように思っております。
 それから、2番目の点は、知識集約型ITハブの機能を活かした分野融合と社会連携の強化ならびに国際連携の推進です。生かした、特に、大学や、あるいは、研究機関にはおいて、こういう知識がどんどん集約されされて、いろんな人や情報が集まってきます。くるわけで、これらを生かした分野融合、特に東京大学では文理融合を重視してきております。それから、あと、社会連携の強化、並びに、国際連携の推進が重要と。こう書いてしまうと、非常に当たり前なんです。けれども、いずれも、今までちょっと直接関係なかった届けることができなかったような分野やであったり、あるいは、社会的なニーズのあるところに、実際にこういうセンサを持っていくということが非常に重要ですだろうと。
 3番目は、最先端ITインフラやサイバーセキュリティーを想定した多様なナノテク・材料分野の推進と新産業創出です。 3番目、これは内田委員が既に相当に指摘されていたことですけれども、情報を扱うに当たって、その時代、時代にどういう最先端ITインフラや、あるいは、サイバーセキュリティーサイバーセキュリティを含めた周りの環境が整っていくのかというのを無視して材料の話だけをしても意味がありません。ので、こういうところにどのぐらいの情報量、どのぐらいの発熱量があるか、そういうことを十分想定した材料開発をする必要がありますあると。
 4番目は、も、これも当たり前の話かもしれません。個を活かす生かす社会の実現に向けて、デジタル製造技術によるカスタマイズ化で研究開発を加速です。とありますけれども、ダイバーシティを活かして、それから、みんなが活躍する社会では、パーソナルカスタマイズにおいて、やはりデジタル製造においてカスタマイズをすることによって、それぞれ全ての人にとってが使いやすいものを作っていくということが重要です。そのために、デジタル製造がは非常に重要であるというふうに考えております。
 特に私自身は、今のものづくりにおいて、ラピットプロトタイピングのように、プロトタイピングと製品の距離が非常に近付いていると思います。、もうプロトタイピングが終わった段階ですぐ即、製品が完成というようになります。そのためになことがいろいろなところで起こっていて、これは一個一個違うものを安価作っても大丈夫ということを意味しているわけで、これをこういうふうに生かす社会に役立てていくというのが今後重要であろうというように製造できる技術が必要です思っております。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明の内容に関しまして、質疑、御議論等ございましたら、お願いいたします。どうぞ、生越先生。
【生越委員】
 まず、二つのお話、すごく面白く聞かせていただいたんですけれども、内田先生のところで、いっぱい出てくる情報を、自分が例えばスマートフォンならスマートフォンで取捨選択して、必要なものだけを上に上げる。その取捨選択する情報というのも多分状況ですごく変わってくるわけですよね。
 その卵が先か、鶏が先か分からないですけれども、それをどうやって、どこの段階でその状況に応じたものを手元でやることができるのかというところがちょっと想像できなかったかなというようなことです。
【内田委員】
 例えば、私自身のガスセンサのイメージとしては、例えば10種類ぐらいの非常にいろいろな分子を検出してしまうガスセンサを複数入れておく。そうすると、そのガスセンサの出力の組合せで、ある特定の病気のマーカーを検出することが恐らくできると期待しています。ただ、病気もいろいろありますので、それをこの病気のマーカー、あの病気のマーカーと全ての可能性をしらみつぶしに調べることはしない。
 個人個人で、どの病気の可能性が高いかなどの関心は違います。あるユーザーは、例えばスマホに糖尿病診断用のソフトをダウンロードして、その人の場合は、10種類のセンサから糖尿病を診断して、それのマーカーの情報を抽出し、情報を選択してサーバにアップする。肺がんが気になる、あるいは、脂肪代謝に興味があるという場合には、肺がんや脂肪代謝に応じたアプリをダウンロードすることで、個人の関心に応じた情報の処理や取捨選択をやるのが一つの方法だというふうに思っています。
 あとは、ユーザーの年齢に応じた重要なマーカー、あるいは、代謝物の変化というのもあると思いますので、そのユーザーの年齢に応じた情報の絞り込みというのも一つの可能性と考えています。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 他にございますでしょうか。
 私から1点。センサのお話がメインでしたが、サイバーとフィジカルをつなぐところはセンサ以外にはないものでしょうか。大事なところとは認識しております。どちらの先生からでもかまいません。
 内田先生のところでセンサ以外に界面の話が少し出ましたが、界面はサイバーとフィジカルをつなぐ材料だと言っていいかどうか、何かお考えがありましたら頂ければと思います。
【染谷委員】
 よろしいですか。今、私はセンサの話だけさせていただきましたが、そのサイバー、フィジカルだけに限らず、こういうものをセンシングしたときというのは、センシングしたデータを解析して、そこから価値があるものを見出して、その次にはアクチュエーションに移ると。普通は、そのアクチュエーションの部分で、どういうフィードバックを返すかというところが最も産業応用上は非常に重要なのであって、センサで見ただけだと、こうなっているのかということで終わってしまう。このまま行くと、病気なんだろうとか、このまま行くと、橋が崩落するんだろう。
 じゃあ、それをどうするのかというところで価値を生むために、当然、アクチュエーション、これは例えば病気の場合であれば、少し熱を掛けるとか、光を当てて治療するか、あるいは、刺激をしてこっち側に向かせるとか、そういうようなことがあって、まだ現時点においてはですけれども、センシングを行い、微妙な変化を見逃さずに、ちゃんと何が起こっているのかということを理解するところから始まっているという理解であって、これはこのセンシングがきちっと進んで、起こっていることが分かると、次にはアクチュエータ、アクチュエータというのは必ずしも伸びるとか刺激という部分だけではないんですけれども、というようなものがあって、双方向性になって初めてこのサイバー、フィジカルのつなぎ込みというものがきちっとできるものだというふうに思っております。
【中山主査】
 そうですね、双方向性の話もしたかったところです。逆もあるというか、サイバーからフィジカル、フィジカルからサイバー、両方の話ですよね。
【染谷委員】
 そうですね。
【中山主査】
 もし内田先生からあれば。界面の話もありましたら。
【内田委員】
 そうですね。私自身は基本、センサを軸に考えています。センサの場合に、フィジカル空間とのインタフェースといったときに、特にガスセンサでは、周りの温度が変われば、センサの温度もその影響をもろに受けますし、周りの湿度が変われば、センサの湿度もすごく変わるしといった意味で、フィジカル空間にものすごくさらされています。そのことを考慮に入れた最適化なり、ノイズの解析といったことが非常に必要になってきているなというのを感じています。アプリケーションとしては、申し訳ありません、今のところはセンサを基本的な軸に考えております。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 その他、ございますでしょうか。
 またこの辺の議論も、あと今回、また、次回等で返ってこられればと思います。
 それでは、ここで5分ほどの休憩を取らせていただければと思います。長い間、ありがとうございます。
( 休憩 )
【中山主査】
 そろそろ開始致します始めさせていただければと思います。
 続きまして、自由討議とさせていただきます。いただきたいと思っております。各委員に考えて頂いたの皆様の問題意識等に関しましては、皆様で御作成いただきました資料を資料2-6として配付させていただいております。
 これらの資料の説明、若しくは、これまでの各先生方の御発表、様々な角度からの議論等をお願い致します。
【生越委員】
 やりましょうか。
【中山主査】
 はい、お願いします。
【生越委員】
 さっきの最初の会社の3人の方からの発表とか、あと、先ほどの内田先生、染谷先生のお話があったんですけれども、聞いていて、すごい、全部すごいなと思うんですけれども、ただ、ターゲットになっている人というのは具体的には健康な人なのか、それとも、お年寄りなのか、もう動けないのか、それとも、子供なのか、多分、今、皆さんがターゲットにされているのは、これから年取って動けなくなっていく人を多分ターゲットに据えてお話しされたと思うんですけれども。
 あるいは、日立のお話の中では、多分アーバンというキーワードもあったと思うんですけれども、では田舎はどうなんだとか、それをどういうふうにしてやっていくかというところ、そこまで話す必要はここではないかもしれないですが、何かそういうところが少し、私はこの分野のことをよく分かっているわけではないので、皆さんがそれを考えられているときはどういうターゲットでどういうシチュエーションでやっていくのかとか、今現在存在しているものは、それでは、それとどういうふうにつなげることで、無駄をなくすのか、それとも、全部1回潰してしまってから、もう一回作り直すのか。
 何か一つ一つのお話はすごくきれいで、ほうっとできるんですけれども、立ち返ってみて、こんな東京のど真ん中でお話ししていたら、近場に行こうと思ったら、徒歩で行ったり、電車で行ったり、多分できると思うんですけれども、これがそうではないところ、きっとここから100キロも行ってしまえば、それが不可能なところだらけだと思うんですけれどもね。だから、そういうところまで組み込んで、本当にそれができると考えられているのかなというところを少し興味があるんですけれども。
【中山主査】
 それでは、染谷先生。
【染谷委員】
 ちょっと大きい質問ですので、私が回答するのがいいのかどうか分かりませんが、少なくとも、いずれも大事でないということはないんですが、ただ、大きな流れからすると、セルフメディケーションに代表されるような、自分でもう国に医療費余りお金を請求しなくてもできるようにしていくというのが大きな流れです。なのであって、そういうときに、私どものセンサも、最初もちろん一番最初は病院で使う非常に難病の方患者方をターゲットに始まるのかもしれないんですが、これがだんだん裾野が広がって、介護施設とかにまで普及して、最後は自宅で簡単に作れるようになると良い。
 そうなってくると、どこに貼っても、いい加減に専門知識がなくていい加減に貼っても、安定に計測できるとととか、そういうことが非常に、ユーザビリティですけれども、ユーザビリティを上げるということが非常に重要であるというふうに思っております。
 また、もう一つは、一般論に過ぎませんが、IoTの時代において、先ほど申し上げたように、何ていうんでしょうかね、資本集約から知識集約に変わっていったときには、必ずしも高速道路やとか鉄道となとかがばーんとないといけないということではなくなっているため、先ほど、アーバンの話について申し上げると、より地方と中央の格差が、都市と郊外の格差がなくなる方向にあるだろう。というか、そういう社会を目指すために活かしていきたいというふうにみんなが思っているところですので、そういうものもこういうナノテク研究の推進を盛り込むと良いとに盛り込まれるといいんじゃないかなというふうに思います。
【中山主査】
 他にございますかでしょうか。どうぞ。
【内田委員】
 ちょっと細かい話になるかもしれないですが、どちらかというと、私自身は、民生機器に組み込むことの方に興味があって、病院等々でももちろん面白いと思いますが、やはり民生機器に組み込むことを考えています。例えば、非常にストイックな生活を送るマラソンが好きな人とか、活動量計を付けて、いろんな記録を取ることを厭わない人とか、そういったストイックな人に使ってもらえるような民生機器に乗せるというのが一つの目標です。
 その他にも、もちろん、呼気の診断では、例えばぜんそくと呼気中の窒素酸化物が強く関係があると言われています。活動量が少ない、元気がないお子さんがいたときに、そのお子さんがぜんそくを持っていて、適切な治療をすることで、活動的になるというような例を少し聞いたことあります。我々は大学ですので、自分自身にとってこれは役に立つんじゃないかなと思えるようなところに貢献していきたいと思っているのがもう一つ。
 それから、アーバン、地方と都市という意味でいうと、やはり地方でエッジサーバを多く抱えるというのはなかなか難しいのかなとも思います。ですから、そういった意味でも、携帯端末である程度の情報処理能力を持たせるということは、地方と都市の問題の解消という意味でも大切なんじゃないかなというふうに考えています。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 その他にございますか。
【上杉委員】
 では。
【中山主査】
 はい、どうぞ、上杉委員。
【上杉委員】
 今までの議論を聞いておりまして、やらなければならないことはある程度はっきりしているんではないかなと私は思います。  この「文部科学省の現状について」という資料をごらんいただきたいんです。その20ページのところに、まとめがあります。日本のナノテクノロジー・材料科学技術政策の課題というものです。恐らく、これまでいろいろな議論があって、こういうまとめになっているんではないかなと、私は想像しています。
 ここに書いてある下の検討キーワードというのがあります。一つは、サイバーとフィジカルの高度な融合を実現する基盤技術の革新、今日、先ほどお話がありましたように、「センサ技術」、その逆側の「アクチュエータ技術」、これは大切だろう。恐らくこれは皆さんもそうだろうと思うと思うんです。
 その次、これは11システムを中心とした他分野と、融合も大切だろうと恐らく皆さんも思われていると思うんです。
 その下のその他、自己修復でありますとか、相反する特性を有する化合物、その他もろもろ、びっくりするような材料、こういう革新的な材料もそれも必要だろうと恐らく思われていると思うんです。ですから、やらなければならないことははっきりしていると私は思っているんです。
 その次のページの21ページに、もうちょっと具体的なことが書いてあります。これもいろいろな方々にヒアリングされて、得られてきたんだろうと思います。これも、でも、結局同じことですよね。革新的な材料、生物のメカニズムを取り込んだもの、サイバーとフィジカルをつなぐもの、新たな材料開発手法と、こんなふうに、これも恐らくもう皆さん、そうだろうなと思われると思うんです。
 問題は、多分、外国も同じことを考えているということだと私は思います。先ほど、僕が関心したのは、今までとは違う視点でというところですよね。そこが一番難しいところではないかなと思います。どういうふうな違う視点でこれを議論するのか、それを皆さんの英知でいろいろお伺いできればいいなと思うんです。
 私の場合には、前、顔合わせしましたときに申し上げました「幸せ」という視点です。幸せの研究が進んでいるので、幸せの視点で考えるのも一つの方法ではないかと、今日、トヨタの方も言われたので、そうかなと思ったんです。他にもいろいろ視点はあると思うんですね。
 日本がほかの国に勝たなければいけない、こういう視点もございます。産業を振興しなければいけない、こういう視点があります。1人当たりGDPを上げよう、こういうのもあります。でも、これもみんなが思っている視点でありまして、もうちょっと違う視点もあってもいいかなと思います。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 今言われた融合のところ、他分野との融合による革新というと、私は思いがあります。ナノ材分野と他分野との融合と言っていますが、ナノ材が縦割り分野の一つだったのが良くないと強く思っています。ナノ材と他分野というよりは、分野間の融合の中心にナノ材があり、分野同士を媒介するとか、あるいは、融合して新しいものを切り開くとか、各分野の競争力の最先端にナノテクノロジーがあるとか、視点を変えるべきかと思います。
 というところで、豊田中研の髙尾委員からの御説明の3ページ目ですね。環境とかエネルギーとか、さらに今はSDGsの時代で、環境もエネルギーも両方とも持続可能性に資し、また、競争力に変えていかなければいけないような状況です。環境とエネルギーは、通常は分断された議論が多いですが、これらを一緒にする、あるいは循環としてを捕らえるようなことはあり得るでしょうか。例えば窒素にフォーカスすれば、アンモニアから農業経由で食につながり、エネルギーのキャリアにもなる。環境のところも一部は窒素で表現できるかもしれない。また、リサイクルでエネルギーと環境の両方を考えるとか、ありふれた元素を使うところで環境とエネルギーの両方を考えるような。そんな発想は豊田中研さんではないでしょうか。それこそ分野の融合、新しい競争力みたいなところだなと思っています。
【髙尾委員】
 個別、個別の要素技術で考えるよりは、今、全体のここに「創る・運ぶ・貯める・使う」とありますけれども、水素にしてもアンモニアにしても、どう作って運んでという全体のシステムでは捉えるようにしています。
 そのときに、それがサステナブルかという視点も含めて、社内では議論はしております。
【中山主査】
 どちらにしろ、ちょっとこの辺の材料をもう一段高めるようなストーリーにしていければと思うので、御協力いただければと思います。
【髙尾委員】
 はい、こちらこそ、よろしくお願いします。
【中山主査】
 今回これは導入取っ掛かりの議論ですが、よろしくお願いします。
【髙尾委員】
 はい。
【中山主査】
 そのほか、ございますか。
 なければ、一杉委員と内藤委員から、少々プレゼンをしたいと伺っておりまして、一杉さんからお願いできますか。
【一杉委員】
 私のスライドは54ページです。合計3枚となります。
 私は、今のナノテク・材料の研究の将来に非常に危機感を感じています。
 二つポイントがあります。一つは、研究室でのものづくりの環境がこの20年間でどう変わってきたかという点です。私が学生のときに行っていた実験手順や考え方は、この20年間全く変化がありません。私の専門は薄膜作製ですが、実験室から変え、ナノテク・材料の研究を根底から変えなければならないと思っています。
 二つ目は、さきほどの、研究者数が減っているという話とリンクしています。学生さんが忙しく、研究室で実験できる時間が減っています。インターンシップや海外経験等が広まり、研究室内で過ごす時間が減っています。学生数も減っている中、どのように研究を進めればよいのだろうと考えています。
 そう考えていくと、次世代の科学は、人工知能やロボットなしには成り立たないだろうということになります。私たちは、それらを活用した実験、研究のやり方を取り入れようとしていて、最近進めているところです。
 ですから、1枚目のポイントは、ロボット科学者(自律的ものづくりシステム)を作ろうということです。そのロボット科学者と一緒に研究を進めるという、人間が協調して研究をおこなうやる時代なのだという時代認識をしています。
 2ページ目です。ロボット科学者は何をするのかというと、自ら考えて、実験して、さらに、Publishするということです。ロボット科学者を作るという観点では、日本はロボット技術が非常に強いので、ロボット科学者を作るプロジェクトをおこなえば、材料技術、デバイス技術と非常に広い研究者を巻き込むことになると思います。
 そして、インフォマティクス、人工知能、数理科学、IoTなどの技術を巻き込んでロボット科学者を作れば、最終的にナノテク・材料研究で飛躍的な生産性向上を狙えると思います。今、右側の図が我々のところで試作を進めているものです。
 最後のページです。このプロジェクトがどのように広がっていくかを考えています。このようなシステムは、自律的に実験を行います。ある物性値の材料が欲しいということを入力したら、ではもう少し具体的に言うと、何Ωcmの透明材料が欲しいと入力したら、それを自動的に作ってくれるシステムを目指しています。
 このようなシステムができれば、当然、日本としては、世界を巻き込みながら進めたいので、世界戦略というスライドを作りました。どのように広がりがあるかということです。
 一つは、スライドの左側に行って、ロボット科学者システムの販売で儲けると。これは単純ですね、さらに、ソフトウェアも。販売が進めば、徐々に世界中のサイエンスのプラットフォームを日本がおさえるということです。
 ものの販売、ハードウェア、ソフトウェアを作るだけでは駄目で、根幹となるデータを我々がつかまなければならないでしょう。このシステムで作った試料のデータは全て自動的にPublishしようと考えています。つまり、サーバにデータを自動でアップロードしてしまうということです。この条件で作ったら、このような材料ができる、という対応関係をネット上に公開しようとしています。この仕組みによって、多くの研究者の成膜データを集めることができます。
 そして、それが、新しい時代のPublishなのではないかと思います。今、論文雑誌に掲載される事を目指して一生懸命ストーリーを作って、結果をPublishすることに膨大な時間を費やしています。そして、皆が読めるようオープンアクセスにすると、海外雑誌社に大きなお金を支払う時代になっています。インパクトファクター重視の時代になっていて、これでよいのかという問題意識があります。それが現在のPublishです。この流れに対して、最初から上記の対応関係をサーバにアップロードして公開することが、新しいPublishになりうるのではないかと考えています。つまり、良い材料を見つけたという事実が重要で、ストーリーをもった文章は、その後に出版すれば良いのではないかと。そういう思いもあります。
 右側に行きます。このようなシステムを作ると、これまでの研究室の在り方が一変して、学生さんが一から実験装置の使い方を学んで一つ一つ試料を作っていた時代から、「データあるいは試料生産工場」の時代に入るとみています。データをどんどん生産して、つまり、このロボットシステムを何台か並べれば、24時間、ずっと稼働できます。そして、全部Publishできます。日本のサーバに置いて、別に日本ではなくても良いのですが、とにかく日本がイニシアチブを取れるような形でPublishし、その物質のデータを有効利用することが重要かと思います。
 マテリアルズ・インフォマティクスの課題の一つは均質なデータがないということなので、基礎データベースにもなります。また、産業界も利用できるでしょう。もちろん、新物質の予想にも使えます。その予想を、またこのロボット科学者に入力して、高速に条件最適化を行って検証するというような流れを考えています。
 世界的に巻き込んでいけるのではないかと思って、狙っているところです。
 今、ちょうど実験装置を導入して、ソフトウエアを作っています。人工知能の技術といっても今や公開されたソフトウエアで、入手も容易です。ベイズ最適化の導入を考えていますが、それにこだわらなくても、自動的に次の実験条件を考えて成膜することができると考えています。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 続きまして、内藤委員から。
【内藤委員】
 物質・材料研究機構の内藤です。資料の26ページから3枚ほど、準備させていただきました。
 私は高分子合成でいろんな構造材料を作るということを専門にしています。例えば、現在参画しているSIPでは、バイオミメティック的な手法で、コンクリートの補修材料を作るとか、最近ですと、自動車とか飛行機用の異材接着材料の開発などもやっております。
 このようなバックグラウンドを持っておりますが、今日、Society5.0というお話を聞かせていただいての感想ですが、確かにSociety5.0でイメージする社会というのはいろんなスコープがあるんですけれども、では、それに化学者がではどうやってアプローチしていったらいいのかは多分すごい難しいところだと、率直にそう思います。この感覚は、化学をやっている多くの方が思っていることだと思います。
 また、先ほどからの議論に、研究者の数が減ってくるというお話がありました。一方で、Society5.0が目指す達成目標があって、そこに向かって行かなきゃいけないとなると、今より、いろんな分野の研究者がSociety5.0の実現に向かっていただけるような政策なり、仕組み作りが必要ではないかなというふうに考えて伺っておりました。
 先ほど上杉先生の方からありましたように、研究開発には二つの方向があっていいと思います。一つは、日本オリジナルの新しい方法で、イノベーションを起こしましょうという方向性と、もう一つは、きっちりとマイルストーンを設定して、ステップワイズに達成目標を実現していく。いわゆるDARPA方式のような形で実現していくというのも大切なんだろうというふうに思います。
 では最終的なSociety5.0は、社会実装というところも含みます。ですので、これを社会基盤システムの構築というふうに考えますと、ナノテク・材料というところから、社会実装までどうやってアクセスしたらいいかと考えると、やっぱり一つは、今日のお話にありましたように、センサとかアクチュエータというところが一つのターゲット、私たちがとっつきやすいところかなというふうに考えております。
 ただ、今まで、私たちの高分子の分野でも、いろんな方法でそういうセンサを作りましょうとかいう研究はたくさんありました。ですけれども、最終的なシステムを変えるようなところまでになると、今までの方法ではちょっとまずくて、社会実装までを考えた、アセンブリ技術やシステム作りを始めからちゃんと用意しておく必要があるんじゃないか。
 ここで材料、デバイス、システムと書きましたけれども、いわゆる目利きの方がいらっしゃって、そこに水平統合ではなくて、垂直統合型で分業できるようなシステム作りのためのチームを作る。異分野融合という話がありましたけど、融合させるだけのグループじゃなくて、最終的な目標に向かっていくチームというのが必要じゃないかなというふうに考えています。それはある意味、企業センスのようなものかもしれないですけれども、そういう考え方が、国の基本計画の実現のためにも必要じゃないかというふうに考えております。
 28ページの方に行っていただきまして、これ、一例です。例えば高分子という材料から、2030年に何をやっておかないといけないかということを考えたときに、最終的なシステムとして、もう自動運転というのが決まっているわけです。そこに向かっていこうとしたときに、そもそも鉄で作っていたいろんな構造部材が、本当はもうプラスチックだけでよくなっちゃう時代が来るかもしれない。つまり、自動運転が実現したら、安全率の考え方も変わり、最終的には鉄鋼が樹脂に置き換わってしまう。そうしたら、自動車を接着剤でプラモデルのように作ることができるような世の中が来るというようなことも想定される。そのとき、どんなデバイスや材料が要りますかと始める前に考えておく必要がある。
 先ほど近藤委員からお話があったように、一番下のところの材料というのは、非常に日本、強い材料ですけれども、それを例えばデバイスにするときというのは、コンポジット化とか、そういう技術が、地味な仕事なんですけれども、非常に重要になります。ですけど、そういうところをアカデミックではあまりやってきてないというのがあります。ですので、今後はそういうところにもちゃんと手を付けていかなきゃいけないのかなと。
 あと、ナノテクが流行ったことによって、例えば高分子の分野でちょっとすたれてきてしまったような分野というのがあります。例えばレオロジーとか、そういう分野というのは実はプロセスでは非常に重要なんですけれども、大学では数がどんどん減ってきているというのもあります。これらの基盤的な技術は日本がもともと強かったですけれども、そういうところも残していくようなことを考えていかなければいけないと考えています。
 時間もありますので、最後のページになります。このようなことを今考えていろいろやっているわけですが、私が所属しておりますNIMSにおきましては、Society5.0の実現に向けた一例として、取組を始めようとしています。それが左下にありますMSSのアライアンスです。
 これ、NIMSの中にいる人間として、手前みそじゃないんですけれども、うまくいっているなと思うのが2点ありまして、一つは、アライアンスの作り方です。先ほど申しましたように、このアライアンスは同じ業種の方が集まるんじゃなくて、最終的なデバイスを実装するというのを考えて、データ解析が得意なところであったり、計算のモジュールを作るところであったり、そういう企業さんが垂直統合型で連携してアライアンスを作っているのが特徴です。
 もう一つ、NIMSにはいろんなデータプラットフォームとか、マテリアルズ・インフォマティクスなどの拠点がありますので、そういうところも活用しようという点です。
最終的に、MSSををSociety5.0に実装するときには、染谷先生がおっしゃったように、ウエアラブルという形になります。MSSで今作っているのは堅いセンサですけれども、今後の直近の取組としまして、こういううまい仕組みを使って、柔らかい材料でも同じようなセンサ、アクチュエータというものを作っていきたいということを今、NIMSで当面考えております。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 お二人の御発表に対する質疑でも構いませんし、全体のことでも構いません。御議論等お願いします。どうぞ、林さん。
【林委員】
 NEDOの林です。今御発表のあった中で、ちょっと教えていただきたいのが、MSSアライアンス、これというのは一体どういう人たちが集まっているのかというのと、どういう情報をやり取りしているのか。
 何でそこに関心があるかというと、産業化につなげていくというところで、やはり情報をどこまで公開するのかとか、成果をどのような形で表現するのかというところで、企業側のニーズを研究する側がどうやって捉えているのかと、先ほどの一杉先生の仕組みが必要じゃないかという話につながるのかなと思って、今ここで書いておられるこのMSSアライアンスというのがどういうものなのか、ちょっと教えてください。
【内藤委員】
 先ほど申しましたように、縦割りでこういろんな業種さんがセグメントを切りまして、各業者、例えば計測をする専門の方はもう1社、そこだけ、センサを作るところは1社というような形で、役割分担をします。情報はそこの中だけで閉じています。ですので、特許などもそこで閉じています。
 ただ、それだと広がりがないので、材料、素材に関しては、センサに関してはデモ機のようなものを作って、一部、販売して使っていただいて、それをフィードバックしていくというようなことはされています。
 ただ、その場合、センサと、あと、計測の仕方ですね、そういうもの、システムは提供していますけれども、中に入っているものに関しての特許なり、そういうものは開示しないというようなシステムを取っております。
【中山主査】
 その他にございますかでしょうか。
【井上委員】
 いいですか。
【中山主査】
 どうぞ。
【井上委員】
 一杉先生にお伺いしたいんですけど、二つあって、今出された内容、なかなか、そうだろうなというふうに感心して聞いていたんですけど、この2ページ目ですかね。日本の強み、強く書かれていますけど、これってやっぱりどういうところが日本のこういうナノテクの強さとお考えなんですか。
【一杉委員】
 ロボットの技術、特に、ハードウエアの面では、磁石やモーターなど日本の得意なデバイス技術が多数使われています。たとえば、磁石の技術は材料科学の固まりですよね。それから、センサの技術も構造材料も。そのような意味で、日本の一番強いナノテク・材料技術がロボット技術に直結しています。パーツごとの材料で日本はすごく強みがあると思います。
 そこをもっと強くした方がいいと。すると産業界にももっともっと良い効果がでるのではないかと思います。
【井上委員】
 それがなぜ強くなったんですか。
【一杉委員】
 それがなぜ。
【井上委員】
 それがなぜ強くなったんですか。
【一杉委員】
 日本がですか。
【井上委員】
 日本が。
【一杉委員】
 日本がなぜ強くなったということですか。それは、例えば磁石だったら、もともと日本にはそのような材料技術の長い歴史があって、積み重ねがあるということが挙げられます。ほかに、日本人の特性として、細かいチューニングとか、材料の混ぜ合わせ方のうまいコツとか、そういうところがやっぱり強いので、今でも日本の産業の材料技術で強みを持っているのだと思います。
【井上委員】
 ということですよね。
 そういうふうに考えたときに、このロボットとしたときに、その3ページ目に出てきますけど、計画されたセレンディピティですか。というところは、やっぱりしつこく実験していると、そういうものって生まれますよね。基本的にそういうことでしか、このセレンディピティってないような気がするんですけど。
【一杉委員】
 ここは「計画的なセレンディピティ」と書いてあります。時間の関係で省きましたが、このような意図があります。今、私たちが実験家として探索している空間、つまり、実験条件の範囲は、すごく限られています。それはなぜかというと、時間とリソースが限られているからです。例えば、薄膜作製について述べると、温度と酸素分圧を横軸と縦軸にした表振ってマトリックスを作り、それに実験結果をを埋めて成膜条件を最適化していきます。
 でも、本当はそれ以外に多数の実験パラメータがあります。そこは時間と労力の制約があり、まったく探索し切れていないのが実情です。だから、そこのところも探索できるようになる、つまり、網羅的に探索できるようになるというのが、非常に重要なことだと思います。過去に、例えば東工大だったら、白川先生も、濃度がいつもと全然違う条件で実験をやったら、うまくいったと聞いています。ということは、それまで探索空間が狭かったと考えられます。ですから、ロボットによって機械的に薄膜作製し、探索空間を広げることができれば、新しい材料の発見チャンスがどんどん広がると思います。そういう意味で、計画的なセレンディピティとしています。
 ロボットにすれば24時間の稼働も可能ですし、学生さんにお願いしてもなかなかやってくれない条件でも、確実にアプローチしていくことができると思っています。
 探索空間が大きくなると、当然、試行回数が大きくなってしまうので、それを減らすために、ベイズ最適化を使います。幾つかの条件で成膜した結果を見て、次はここだろうとベイズ最適化で予測することを今考えています。
 巨大な探索空間を、全部じゅうたん爆撃でやるのは非効率的ですので、ベイズ最適化や類似の手法を使って、実質的に多数の試料作製条件を探索するという点で、セレンディピティを計画化していくということを考えています。
【井上委員】
 最後のベイズ最適化という話が出てきましたけど、あれって結局は、何ですかね、幾つか採取した点をなめらかな関数で補完しているのに過ぎないので、特異点って見付けられないんですよね。でも、結構セレンディピティってそういう特異点を見付けるというところが重要かなと思っていて、そういったものをどういう形でやっていくのかって、やっぱり最終的にはベイズ最適化でうまくいくものなんですか。
【一杉委員】
 私の体験を述べます。実験をやって、最高の物性値をもつ物質にいきなり実験条件がぴたっと合うことはありません。何度か実験をやって、この辺が怪しいなというそのおぼろげなものが出たときがチャンスで、そこから更にぎゅっと条件を絞っていきます。したがって、一番最初の、「ここがおいしいだろう」というところを探すことがもっと重要で、いきなりでその特異点、ピークを少ない試行回数で求めるという考え方ではありません。ある程度巨大な探索空間の中で幾つか試行して、この辺りだというところが見付けるところまでがまず第一ステップでベイズ最適化を用い、一旦、あたりをつけたら、そこからはじゅうたん爆撃にしていくような、そういうアルゴリズムの切替えは重要だと思います。そういうことをやれば、最高の物性を示す材料に、なるべく短時間で到達できます。マテリアルズ・インフォマティクスが予測した有望材料をいかに早く作るかということなので、ベイズ最適化だけではなく、ときにはじゅうたん爆撃にと柔軟に切り替えることを考えています。
【中嶋委員】
 質問。
【中山主査】
 はい。どうぞ。
【中嶋委員】
「私は、専門が人工知能やロボットで、今までの話、ロボットの話もありましたが、途中から最適化の話だったと思います。こちらのスライドですと、ロボット科学者を作るという話で、程度問題だとは思うのですが、どこまでを考えているのかなと。発表中に、「ロボットが自ら考えて…」というのがちょっとあって、さすがにそれは無理だなというふうに思いました。
例えば、今、最適化の部分で、パラメータをサーチしていくようなことはもちろんソフトウエア上でもできていることなので、できると思うんですけれども、「自ら考えて」というのはどれぐらいの意味で言っているのでしょうか。
【一杉委員】
 ありがとうございます。具体例を挙げて答えます。例えば、私は電池の研究を行っているので、固体電解質について述べます。固体電解質中でイオンが速く動く材料が欲しいというニーズがあります。これはイオン伝導率という値で評価されて、イオン伝導率が何S/cmとか、そのように数値化できます。そのニーズがはっきりしているものについて、欲しい数値を入力するとします。
 そうすると、材料系として、こういう材料系から探そうというところまでは多分自動的にできるのだと思います。例えば過去の文献から、例えばシリコンと何とかとリンだと。じゃあ、それを混ぜ合わせましょうという判断まではできると思います。
 では、シリコンとリンの比率は何%がいいのかというと、これまでは全く未知のところで、従来なら本当にじゅうたん爆撃ですね。そこに最適化の技術を使います。
 ですから、ニーズと欲しい数値を人間が決めれば、ロボットが物質合成してくれると思います。一番最初の「狙いどころ」というのは、やっぱりまだ人間が与えなければならないと思います。その意味で「自ら考える」というのは最適化の域を出ていません。おっしゃったように、ソフトが既に多く存在しているというところをうまく使おうとしています。「考える」というのは、やっぱり最初の目的は人間が与えます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 まだ尽きないのですけど、ちょっと私から。一杉先生、何を言い出すのか言い出すんだよと最初は思いました。でも、重要なメッセージを含んでいると感じました。一つは、インフォマティクスと人工知能、探索のようなことをしっかり考えなければいけないということです。もう一つは、研究基盤の戦略ですね。ここをしっかり考えていかないと、世界で負けてしまうということですよね。
【一杉委員】
 はい、そうですね。
【中山主査】
 それと、さらに、ロボットとかものづくりとか、各分野の間に落ちてしまうところが実は非常に重要で、競争力を意識して取り組まなければいけないところですよね。
【一杉委員】
 もう一回お願いします、分野と。もう一回お願いします、最後のところが。
【中山主査】
 ロボットとかものづくりなど、実は、我が国の科学技術政策で縦割り何か分野を中心に考えていると間に落ちちゃって落ちてしまい落ちちゃって、なかなか施策として成立させるのが難しいところです。そういうところは実は材料がとか大事なところを握っていて、しっかり考えを及ぼしていけば、そういうところで勝っていけるだろう。とも思います。非常に重要で、競争力を意識して取り組まなければいけないところと考えます。。若しくは、そういうところで伍していかなければ、我が国は沈んでしまうかもしれません。よという、そういうことかなと。
【一杉委員】
 そうですね。
【中山主査】
 ですよね。
【一杉委員】
 これ、ロボット科学者ってほかの国がもう、イギリスで1グループ、始めていて。
【中山主査】
 だから、パーツで考えれば、さっき、パーツでは強いよとおっしゃったけど、多分そこを融合して考えていかないと……。
【一杉委員】
 そうですね。
【中山主査】
 ここも分野に閉じる話ではないと思います。むしろ、そういう分野の融合や分野にまたがる話を考えられるのが、我々のやりがいというか、やれるところかなと思います。
【一杉委員】
 そうですね。
【中山主査】
 分野をまたぐところを攻めるのはハードなことが多いですが、強力に声や提案を発していけば、道は開けると思います。またちょっと考えさせてください。
 その他、ございますかでしょうか。どうぞ、渡慶次先生。
【渡慶次委員】
 一杉先生の話を聞いて、すごい面白い、素直に面白いと思ったんですけれども、世界戦略で出しているこの表を見て、これで日本が勝っていける理由というのが余りよく分からないんですけれども。
【一杉委員】
 日本が勝っていくんじゃなくて、日本がこれから勝たせるためにどうするかということなんです。
【渡慶次委員】
 そうですよね。だとすると、今の、今、イギリスでは始まっているというお話もあったと思うんですが、このシステムで本当にすごい材料ができてしまうと、システムをたくさん持っている人の勝ちなんじゃないかという気がするんですけど、これ、特許、知財というふうに書いてありますけれども、今この中で、AIとロボットと何とかでというふうになると、基本的なところを保護できるように個人的には思えないんですけれども。
【一杉委員】
 基本的なところとおっしゃっているのは。
【渡慶次委員】
 これを例えば知財でもうけるというふうになった場合に。
【一杉委員】
 ここのところの左側ですね。
【渡慶次委員】
 ええ、ええ。これが本当にいいものになると、すごい安く作る、このシステムを安く作った人が勝っちゃうんじゃないかなという気が若干したんです。
【一杉委員】
 そのとおりだと思います。データ生産工場なので、いかに早く大量に材料を生産するかが勝負で、装置が持っている人が勝つ世の中になると思います。
【渡慶次委員】
 なるほど。そういうことですね。
【一杉委員】
 そういう世の中になったら、日本は負けてしまいます。例えば今、人海戦術の時代だったら、絶対中国に負けちゃいますよね。
【渡慶次委員】
 そうですね。
【一杉委員】
 だから、それに勝つ戦略を次に作らなければならないとしたら、日本の強みであるロボット技術を使い、データ生産工場を作らねばならないと思います。ロボットで大量にデータなり試料を作った国が勝つのではないでしょうか。イギリスがやったらイギリスが勝つでしょう。今、知財をおさえておけば、お金が日本に入ってくるのではないかと考えました。
【渡慶次委員】
 ありがとうございます。
【一杉委員】
 他の国にやられたら、日本は多分負けてしまうと思います。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 議論をちょっと先に進ませていただきます。
 続いて、机上配付資料の2をご覧ください。これまで多くの皆様からお考えを頂いたり、先生方のところにおうかがいしたりして、様々な御意見等を頂いておりました。
得られたこのような様々な御意見から、検討の方向性について、例えばの案を考えてまいりました。余り時間もございませんので、ざっと説明させていただいて、また議論に移らせていただければと思います。
 最初から、全部読むことはいたしません、大きく流れだけ御説明させていただきます。
 1.の背景です。四つのパラグラフがございまして、最初は、社会のあらゆる基盤となる物質や材料分野に関する科学技術ということに関して、これまでの流れを御説明させていただいております。
 2パラグラフ目、そういう中で、IoTとかAIとかビッグデータの時代、Society5.0の時代が到来していること。そこで、そういうところで、物質・材料・科学技術はいかに生きていくか、何をなすべきかということを考えなければいけないいけませんということが書かれています。
 三つ目の段落では、さらに、SDGsのような概念を挙げています。SDGsとはすなわち、持続可能な社会を目指して、こういうことをしていかなければいけませんということです。その中で、材料の果たすべきことがある。あるいは、材料が組み込まれた様々なシステムや融合分野で解決していかなければいけないと。そのように考えております。
 そのような背景において、4段落目で、研究開発戦略を策定していく。少し長い目で見たものになっていくであろうということが書かれております。また、ここで、先ほど上杉先生らからいただきました、例えば幸せ、ハピネスのような新しい価値みたいなものもどこかに考えて入れていければと思っておりますし、さらに、皆様から多様なお考えを頂いて、もう少し大きな書きぶりでも構わないかなと考えております。
 2.の検討の目標ということですけど、来年の施策をどうしようということに余り汲々とせずに、大きくは次の科学技術基本計画を目指して、どういうものが大事と言っていくかということもあります。また、それだけにとどまらず、大事な方向性を示しながら、関係する研究者やステークホルダーの渦を作り、大事なことをよりアピールしていくということ、そういうものがぐるりと回って、役所や施策に返ってくるのだと考えております。
 3.は、研究開発戦略のイメージとして、目次的なものです。大事なことをきちっと書いていくということかと思っております。
 4.へ行っていただきまして留意事項です。時間軸を意識した議論をしましょうということを最初の方に書いております。例えば、2030年頃、今から15~20年後ぐらいですかね。例えばそのぐらいで花開くもの、若しくは、そのぐらいでサイエンスとして潮流になっているようなものも見つけられないか。多分そのぐらいのときに、ここにおられる先生方は、トップの大御所になっておられると思います。そういう時代を一緒に生きていければという時間軸かなと思っております。
 また、その4.の三つ目ぐらいですね。この分野の新しい位置付け、あるいは、旗印ですね。ナノテクノロジーという言葉が最初にあって、対応や検討がしにくい細かいんという人もいる。例えば化学の先生方はよく言われます。でも、大きく物質・材料科学技術と考えれば、素直に大事なものを言えると思います。
 そのようなそういう中で、その大事なところの中心、すなわち競争力の中心にナノテクノロジーはあるものだと思いますし、そういうことを分野のストラクチャーからタブーなく議論していければ、面白いのではないかと考えております。また、そのようなそういうことを第6期科学技術基本計画にも打ち込んでいければ、存在感も出るのではないかと思います。融合の重要性とか、基盤も大事にしましょうとか、いろいろ議論は多岐にわたるかと思いますが、丁寧に議論していければと思います。
 あとは、アカデミアのみならず、材料の企業とか、ユーザー企業とか、多様なセクターからの意見を頂いていければと思います。今日も、企業の委員の皆様からも御発言いただきましたが、そのほか、多くの学協会等もございますし、産業団体等もございます。また、さらに、ここにおられる先生方から更に御紹介いただいて、良い研究をされている先生、あるいは、新たなコンセプトを持っておられるシンクタンクとか、そういうところからもご意見や議論を賜れればと思います。
 また、例えば内閣府の皆様や経済産業省の皆様からも大事なことをお示しいただければ、いい内容になっていくのではないかと考えております。  また、次のポツですが、社会への大きな貢献を考えなければいけないと書いています。また、サイエンスのこともしっかり考えていかなければいけないと。かなり広いところを見なければいけないなということは覚悟すべきと思っております。
 あとは、5.は当面のスケジュールで、これは2030年頃の検討をしましょうということ。9月以降に必要な聞き取りを実施します。多くの方からの聞き取りを実施し、一緒に考えるということをしたいと思います。また、ここで発表してしたしてくれた方が、またここの内容を持って帰っていただいて、双方向の付合いをさせていただきながら、考える輪を広げていくことによって、この分野の重要性が世に発信される一助になればとも考えております。
次のページです。現時点での検討項目で、箇条書きにしてあります。今日もいろいろ大事なことを入れていただきましたし、今後も入れていただけると思いますので、これは都度変わっていく備忘録みたいなものだと思っていただければと思います。
 1では、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発に対する基本的な考え方ということで、大きなSDGsの話とか、未来社会の話とか、そういうこと、さきほど言及したようなことが書いてあります。
 2は、実現したいシステムとかデバイスとか材料、ここは多くのフェーズがありますが、資源のリスクを回避する材料とか、サイバーとフィジカルの接続とか、先ほど一杉先生が言われたようなロボットとか、IoTとか、コンピューティングシステムとか、自動走行とか、あるいは、分離・精製とか、いろいろいろいろなキーワードが入っている。ここを充実させつつ、カテゴリーで分けるとか、工夫をしていければと思います。ここに先ほどの融合みたいな話も入ってくればなと考えております。
 3番は、それらを実現するためのコンセプトやアイデアもいろいろあるでしょうということです。今、冒頭に事務局から御説明があった元素戦略が今行われているわけですが、更にそれをどうしていこうかというような、大きな施策の次を考えなければいけませんということです。そういう中では、例えば元素の新機能創出へ向けたような戦略を更に打っていけないかとか、あるいは、両立し得ない複数の機能を達成するようなものもあります。こういうことに如何に取り組んでいくか、あるいは、有害な物質とか代替物質とか、どうしていこうかと。あるいは、生物のメカニズムを取り込もうという新しい流れもございます。こういうことに関してもいろいろ考えていければと思います。
 また、推進すべき萌芽的なサイエンスということで、例えばトポロジカル物性とか、フォノンとか、まだほかにもあるかと思います。こういうこともどんどん入れたい入れていければと思います。
 また、材料開発を支える基盤としては、このマテリアルズ・インフォマティクスとか、先ほど一杉先生の言われたような、もう少しこれを昇華させたような表現でもいいかもしれません。あるいは、計測基盤とか、最先端の計測とか、どのようどういうふうに基盤を支えながら、競争力の高いそういうものを研究開発していこうかとか。、あるいは、微細加工ではですね。これも我が国が得意なところですけど、次のフェーズをどうしていこうか等とか、考えが必要です。
 また、Society5.0の実現に向けた現時点での検討項目としては、今日の先生方のプレゼンにあったような先生方の内容も色濃く反映させたものにさせていきたいですいただければと思います。
 次のページは、例えば何らかのマトリックスを作って、大きなカテゴリーとそれに対応するの材料を入れるとか、あるいは、何と何を融合させて、どういう新しい競争力のあるもの、あるいは、分野、領域、研究開発題目を作っていこうかなとか等、そういうものを図にしながら考えていきたいです。
 ちょっと駆け足でしたが、以上です。何なりと御意見等を頂ければと思います。
 あるいは、進め方のお考え等もとか、あるいは、こういうふうにやったらいいというのも、頂ければと思います。
【生越委員】
 ちょっといいですか。
【中山主査】
 どうぞ。
【生越委員】
 今日の中で、結構マテリアルインフォマティクスというのが鍵になっていたと思うんですけれども、ここでどの先生も割と、日本が強みというお話、あったと思うんですけれども、ただ、じゃあ、マテリアルインフォマティクスは日本が強いとはどなたもまだおっしゃっておられないんですけれども、僕は専門じゃないんで分からないんですが、マテリアルインフォマティクスは日本では、日本は世界に比べて圧倒的に強いわけじゃ多分ないですよね。むしろ後手に回っているような印象が。
 でも、それを後手に回っているそれを頼りに、ここで考えていいのかなというのがずっとわだかまっているところなんですけど。言いたいことを言っただけです。すみません。
【中山主査】
 次のフェーズで、その上前をはねるようなことは何かと、考えたいですよね。後追いで、しかも、諸外国の10分の1のお金を突っ込んでもなかなか勝てないですね。だから、どうしようかと。
 何かありますか、ありそうですか。
【井上委員】
 いや、全くの同感で、どうしようかなと思ったんですけど。要は、サイバーとフィジカルを接続するといったときに、サイバーはどうするのという話の中で、サイバーは外国から技術を持ってきますって、それじゃあ、よくないですよね。
 ここをやっぱりどうすべきか。そこで日本の強み、先ほど、日本の強みって何なんですかって聞いたのはそういうところなんですけど、日本の強みってどういうふうに生かしていけるのかってちょっと考えないといけないなというふうには思っていました。
 単なる感想です。
【中山主査】
 インフォマティクスに至るまでの、一杉先生がロボット話から派生する歴史的な話ですがロボットのことを言われましたけど、コンビナトリアル科学の無機的なところは我が国がずっと先行していました。今でもその素地はあって、そういうところに逆転の芽があるかもしれないですよね。
 いろいろないろんな素地はありそうです。そこを見付けて、どうやって突っ込んでいくかということかと思います。ただ、世界に遅れまいと今、マテリアルズ・インフォマティクスの施策は走り出した走り出しているところではある。ただ、それだけじゃ、勝てないでしょうね。
 その他に、ございますかでしょうか。どうぞ。
【林委員】
 すみません、御提示いただいた方向性の案については、大体おおむねいいんじゃないかなと思っているんですけれども。
 ちょっとこれは私たち自身にも返ってくる話なんですけど、いろいろ研究開発を進めていったときに、結局それが点になっていて、最後ちゃんとつながって成果が広がっていって、バイパスができていって面になるというところが、何となく結局あれとこれってつながっているんでしたっけとかというのを将来的にきちんと描きながら進めていけたらいいんじゃないかなと思いました。
 すみません、意見だけです。
【中山主査】
 ありがとうございます。非常に大事で、施策がやりっ放しで点で終わっている話かと思います。それをどうやって統合していくかということかと思います。たとえばJSTでやっている施策も、それがまた文科省に余りフィードバックされずに独自に評価されて、JSTで終わっていたりもします。多分、NEDOさんとの本質的な議論もなかなかなされないので、何かそんな議論ができたらと思います。おっしゃること、大賛成です。
【内藤委員】
 すみません、ちょっと1個。
【中山主査】
 どうぞ、よろしくお願いします。
【内藤委員】
 今日、いろんな話が出て、データベースを皆さん、作りましょうという話があったんですけど、データベースを最終的にどこに置くとか、そういうことを考えていらっしゃるんですか。各分野でいろいろデータベースを作りますという話はいいんですけど、そこをちゃんと考えてやらないと、もちろん、各国に勝とうといったときに、我々で閉じたデータを持っていてもしようがないような気がするんですけれども、何か御意見がありましたら。
【一杉委員】
 どこに置くというのは物理的に置くというのは余り意味がないような気がします。
【内藤委員】
 それでもいいんですけど、皆さんが例えば使っていけるような形にするとか。
【一杉委員】
 そうですね、それが一番重要だと思いますね。
【内藤委員】
 そういうことを。
【一杉委員】
 そこ、置く場所はどこでもよくて、その使い勝手が良く、誰に公開するのかがはっきりしていて、そして、どれだけ均質ないい情報がデータベースに入っているかというところで、日本がイニシアチブが取れるような形を作らなければならないと思います。余り答えになってないですが。
【内藤委員】
 NIMSは、そこを今、頑張ってやっていますので、是非、是非活用していただきたいなと思っております。
【中山主査】
 そこは言おうと思っていましたけど。ただ、本当に頑張っていただきたいと思います。
 はい、岡村課長、どうぞ。
【岡村課長】
 すみません、今日出たデータベースとか、マテリアルズ・インフォマティクスというのは全て今、NIMSがやっているものの範囲に限られるものではない部分もあるので、私も発言を避けておりましたけれども、ただ、材料の研究開発の中で、特にNIMSには、昨年来、データベースを一つの拠点としてやっていただいております。
 これは、要するに、大学にいらっしゃる先生が例えばいい先生がずっとやられていて、定年退官されてしまったら、データが雲散霧消するようなことのないように、NIMSは大学の方にも企業の方にもみんなに、公的な研究機関としてサービスをするという観点で、NIMSのためではなくて、日本中のために貢献していただくという観点で文科省の方はその取組をやっております。
 今やっているものも全てではないので、これからいろいろなデータベース等々は増えてくることになろうと思いますけれども、それは時に応じて、施策の進展具合、プロジェクトの進展具合で考えてまいりたいと思いますが、そういうことで、NIMSには今日、内藤先生からもお話がありましたので、全日本のためにコントリビュートするという観点でしっかりやっていただくということで、よろしくお願いします。
【一杉委員】
 データベースのところで一つ。今、一つの課題は、均質な情報ではないといいますか、未熟な学生とプロの人の成果が玉石混交混淆になってい点だと思います。その状態だと、結果の解釈が難しくなるから、どうやって均質化するかというのが重要だと思います。その線上で考えていくと、ロボット科学者につながってしまいました。マテリアルズ・インフォマティクスの研究者が本当に統計的に使える情報というのをどのように揃えるのかについては課題だと思っています。
【中山主査】
 どうぞ。
【生越委員】
 いいですか。でも、もう今、科学のところでは、割と今、もう原子 ノートとかという形になっていますよね。学生の作ったものが、うちはそういうのは怖いのでやってないんですけれども、そこから出てきたものを、例えば企業さんとか、ある大学では、もうそれはうまくいかなかったデータとして、あるいは、彼がいったと言っているデータとして、それはもう全て集め始めて、実際にそれを僕はどこでどうやったらいいのか、ちょっと分かってはないんですけど、今は、友人がその会社を辞めてしまったので、ですけれども、それはもう既に始まっている状況下で、多分それの取捨選択のところは誰がするんでしょう、AIさんがするのかも分かりませんけれども、始まってきているので、その質の、先生のおっしゃることは100%、僕も合成する科学者なんで、それは分かるんですけれども、ただ、そうじゃないものまでも含めて、もう走り出しているという環境下で、まず、質というのは分かるんですけど、まず、何でもいいから、もう水といったら泥水でもいいから、取りあえず持ってこようぐらいのスタンスで始めないと、今の状況下では、みんなの同意、得られへんかなみたいな気がするんですけどね。
【一杉委員】
 おっしゃるとおりです。私たちはX線回折という実験を行いますが、実際に、X線回折のランキング付けされたデータを用いて解析しています。いいデータと悪いデータがありますが、いっぱいデータがあったら、自然にランキングされていって、質の高いデータだけを活用するようになります。X線回折の実験家は実際にそうやっています。
 ですから、最初にいっぱいのごみデータがあってもいいのかもしれないですね。おっしゃるとおり、そこからランキング付けするという考え方もあると思います。
【中山主査】
 すみません、もう時間も過ぎてしまいました。ごめんなさい。
 ほかに特に御発言しておきたい方、ございませんでしょうか。
 今日は、内閣府から千嶋さん、経済産業省から小宮さん、大変有り難いことに、お越しいただいております。何か一言ずつ、もしございましたら、お願いします。ありがとうございます。
【千嶋調査官】
 内閣府の千嶋です。
 冒頭、御紹介がありましたけれども、官民投資拡大、開発拡大のプリズムというものが始まります。今、来年度からの施策施行に向けて、領域統括の人選を、しておりまして、その後で、実施方針を用意して、各省の皆様方にお示しして、進めていこうとしているところです。
 私が担当しているのはまさにそのフィジカルのところで、フィジカル空間の基盤技術ということで、今日お話があったようなセンサをどうしようとか、あるいは、エッジコンピューティングのところで何をやるべきかというようなところの議論が進んでいるところであります。
 今後、まさに、先生の皆様方にいろいろお知恵を借りながら、進めていくことになると思いますので、是非御協力のほどをよろしくお願いいたします。
 今日は非常に勉強になりました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
【中山主査】
 ありがとうございます。
 小宮さん、お願いします。
【小宮補佐】
 経済産業省素材産業課の小宮です。
 素材産業課では、素材メーカーを所管しておりまして、経済産業省というのもありまして、実用化開発という観点から、幾つか研究開発プロジェクトを走らせているところはあるんですけれども、やはり大学発のシーズをきちっと企業がニーズとして、企業のニーズとマッチングできるか、できているかという点と、あと、我々、素材メーカーを所管しているんですけれども、最終製品を製造しているメーカーと素材メーカーとの間でも同じように、ニーズとシーズがきちんとマッチングできているかというところが非常にまだ足りないところだと思っておりまして、そういうところで、非常にAIとか、活用していく余地があるのかなというふうに感じました。
 ありがとうございます。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。
 この分野、最初にも申しましたけど、大きなうねり、ネットワークを作っていきたいと考えておりますので、今後も双方向に情報交換、若しくは、多くの意見交換をさせていただければと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 新しく来られた齊藤参事官から。
【齊藤参事官】
 齊藤です。すごく耳新しい話をいっぱい聞かせていただきました。
 一つ、戦略とは、もしそれが達成されたならば、他者が追い付かない、立ち行かないぐらいのものがなければならないと思っていますので、是非そういったところを御議論していただきたいと、よろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
【中山主査】
 どうもありがとうございます。
 岡村さんから、代表されて。
【岡村課長】
 すみません、この会議を立ち上げまして、第1回の会議のときに、まさか自分がいないとは思っておりませんでしたが、本当にすばらしい先生方に集まっていただいて、すばらしい議論がスタートできたことを、今日、こちらに立ち会わせていただきまして、有り難く思っております。本当に、この後、15年、20年、この分野について、先生方が、研究も製造も第一線で、そして、政策も御示唆に富むものを頂けますように、どうぞよろしくお願いいたします。
【中山主査】
 どうもありがとうございます。検討の方向性についての修正は今後行っていきます。
 それでは、事務局にお返しいたします。
【丹羽専門職】
 ありがとうございました。
 次回の第2回ナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会につきましては、8月2日水曜日の開催を予定しております。議題が決まり次第、改めて御連絡をさせていただきます。
 本日の議事録につきましては、事務局の方で案を作成しまして、委員の皆様にお諮りし、主査に御確認いただいた後、ホームページにて公開をいたします。
 それから、本日の配付資料につきましては、封筒にお名前を書いていただいて、机上に置いていただければ、後日、事務局からも郵送することが可能ですので、よろしくお願いいたします。
 以上です。
【中山主査】
 どうもありがとうございました。また、途中からではございますが、本日、お忙しいところ、関局長にお越しいただきまして、大変感謝いたしております。今後もいろいろ御相談ごと等あるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。どうもありがとうございます。
 それでは、本日のナノテクノロジー・材料分野の研究開発戦略検討作業部会は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)