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科学技術社会連携委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成30年度2月27日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館15F科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 新たな科学技術の社会実装に向けた取組に当たって社会との連携のために予め組み込むべき仕組みについて
  2. 科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質について
  3. その他

4.出席者

委員

小林 傳司 主査、藤垣 裕子 主査代理、片田 敏孝 委員、小出 重幸 委員、田中 恭一 委員、原田 豊 委員、堀口 逸子 委員、山口 健太郎 委員、横山 広美 委員

文部科学省

松尾 大臣官房審議官、塩崎 人材政策課課長、石橋 人材政策課課長補佐

オブザーバー

国立科学博物館附属自然教育園 小川園長((兼)博物館等連携センター長)、同志社大学 野口教授

5.議事録

【小林主査】  定刻になりましたので、科学技術社会連携委員会第4回を開催いたします。
 まず出席者、配付資料等について事務局の方から説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
 まず、出席者について御紹介させていただきます。この後、議題2の後半部分になりますけれども、「科学コミュニケーターに期待される役割と必要とする資質について」という議題がございます。その議論を深めるために、国立科学博物館附属自然教育園長・博物館等連携センター長の小川様、同志社大学生命医科学部生命システム学科教授の野口様のお二方に御出席を頂いております。よろしくお願いします。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。当初御案内していた議題が一つでしたが、もう一つ、二つの議題になりますので、資料1、資料2-1、2-2の3種類。また、机上に机上資料というものがございます。机上資料の中に過去の社会連携委員会の資料もとじられておりますので、それぞれ御参照いただければと思っております。
 過不足等ございましたら、議論の途中でも構いませんので、事務局までお申し付けください。以上でございます。
【小林主査】  それでは、議題に入りたいと思います。議題の1は、今御案内がありましたように、「新たな科学技術の社会実装に係る研究活動における人文社会科学と自然科学の連携の推進について」。この修正案というものが資料にございます。事務局より御説明をお願いいたします。

○資料1に基づいて、石橋補佐から説明

【小林主査】  ありがとうございました。前回以降、かなり文章に手を入れまして、それから各委員からの御指摘、あるいは文章の場面でもいろいろと助けていただきまして、こういうのを今、取りまとめたと。問題は、多分これをどうやって実効性のあるものにしていくかということで、ただ書いただけで終わりというふうにしないということの工夫が、やはり必要かと思います。
 一つは、前も少し御提案をしたかと思いますが、例えば学術会議などで、こういう考え方が大事だというふうに、文部科学省としては審議会の議論も受けて考えていますよと。ですから、人文社会系の方々も、こういう問題の立て方に正面から取り組んでほしいということを訴えるような形の機会を設けてはどうかということは申し上げましたし、その可能性はちょっと追求してみたいなと思っています。つまり、科学技術のコミュニティー、理系のコミュニティーだけではなくて、人社系のコミュニティーにもこのメッセージが伝わらなければ、やはりまずいと。どうしても科政局系の文書ということになると、ああ、理系の人の文書だねといって人社系の人は見ないという、そういう分断がありますので、そこをつなぐということは大変大事だろうと思っておりますので、そのあたりはちょっと私も、課長、それから石橋さんと相談していきたいと。
 それに加えて、やはり具体でこれをどうやって実際に動かしていくかというのを、少しでもやっていくべきではないかと。前も伊藤文科審がおっしゃったと思いますが、やっぱり実際に動かすということが大事だろうと。この間、JSTがいろいろと新しい考え方を取り組みたいということもおっしゃっていましたので、JSTのところで、まずやってみるというふうなこと。あるいは、その先についても、是非人材政策課の方でお考えいただいて、具体の政策にまでブレークダウンしていただけると大変有り難い。この委員会に対して、そういう形でのレスポンスも頂けると、大変有り難いと思っております。
 それから、今日、いろいろと最終版に対しての御意見を頂きまして、全てを取り込んだわけではありませんが、例えば円環的構造というのは、ポンチ絵か何かがあった方がいいのではないかという御意見も頂いております。私の記憶では、JSTがそういう両側からアプローチするような絵を出してこられたことがあったと思いますので、そういったものを添えるというふうな工夫はしてもいいのかなと。このあたりの円環的で両方に必要な研究のアプローチの二つのスタイルと、それから、どちらにとっても必要な人社系の巻き込みという、そういう課題が見えるような、そういう表現をアピールしなくてはいけないという問題意識は持っております。
 ということで、この案、今日はできればこれでほぼ確定をさせていただきたいのですが、最後御意見、何かあれば是非お願いしたいと思います。
 再度、脇筋かもしれませんが、学術会議の中に、科学と社会委員会というのがございます。そこでは、SDGsについてどういうふうに学術会議として取り組むかということを主とした議論が始まりました。やはりそこでも当然ですが、SDGsのあの目標の掲げ方は、理工系の科学技術研究だけで閉じるものではなくて、まさに社会的課題と科学技術のカップリングというのが肝になるという認識は共有されている。それと当然ですが、あの文書というのは、たくさんの目標が掲げられていますが、相互の目標は必ずしも整合しなくて、トレードオフ関係にあるようなものが全部並んでいるという意味では、ある種政治的な観点で、いろんな言い分を全部載せたという側面があります。学術界としては、その中のトレードオフ関係をきちっと見定めて、優先順位を学問的見地からつけるというふうな作業も必要ではないかという話になっております。その場合は、やはり要素技術の研究だけではなくて、それが社会にどんな意味を持つかということを多面的に考えないといけない。そして、ユニークソリューションがない状況になるところで優先順位をつけるというと、ある種の価値観などを踏まえて決めていくということになりますので、本委員会で作ってきた連携という論点と、非常に接点があるものだというふうに思います。
 SDGsは、これからかなりいろんなところで、産業界も含めて非常に注目をしているわけですので、そこを一つの手掛かりとして、こういう考え方を積極的に打ち出すこともできるのではないかというふうに思っています。
 いかがでしょう。とりあえず今日これで確定をしていくということでよろしゅうございますか。そして、今後の取扱いについては、今私が申し上げたようなこと、あるいは人材政策課の方でもお考えいただいて、そしてJSTとも連携をしてという動きを、またどこかで御報告いただくということで進めていければと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。これで確定といたします。
 それでは、二つ目の議題です。これは前回もアナウンスしておりましたように、科学コミュニケーターというものについての議論を、今日はしていきたいと思っております。御承知のように、2005年ですか、三つの養成ユニットを作ったあの頃が、やはり日本の科学コミュニケーションの元年とも言うべき動きであったと思います。それからかなり時間もたちまして、いろいろなところでサイエンスコミュニケーターという言葉が聞かれるようになっております。そこで、科学コミュニケーターというものがどういう役割を果たしているのか、あるいは果たすべきなのか、どうやって人材育成をしていくのかというのを改めて考えてみようということで、今日はこの議題を掲げております。
 事務局の方より、ちょっと御説明をお願いいたします。
【石橋補佐】  ただいま主査が御説明いただいたとおりかと思います。前回より、コミュニケーターの育成機関からは、状況についてお話を伺っているところで、前回は日本科学未来館の毛利館長からお話を伺ったところでございます。今回は、最初に国立科学博物館のサイエンスコミュニケーター養成、続きまして、同志社大学におけるサイエンスコミュニケーター養成専攻、それぞれにつきまして、それぞれの機関から御説明を頂きたいと考えております。
【小林主査】  ありがとうございます。それでは、今日はまずは、国立科学博物館、小川様、よろしくお願いいたします。30分程度の御説明を頂いて、15分ほど議論をするというセッションを2回繰り返すということで、お願いいたします。

○資料2-1に基づいて、小川園長から説明

【小林主査】  どうもありがとうございました。時間を守っていただいて、少し議論の時間を長めにとれるようにしていただいてありがとうございます。
 それでは、御意見、御質問をよろしくお願いいたします。
【堀口委員】  質問してよろしいでしょうか。とても有意義なものだと思います。私、地方大学に所属をしておりまして、大学生が受けるとか、大学院生が受けるというのも重要だと思っているんですけれども、もちろん地方の学芸員さんも受講するということで、講座の普及もされていると。ところが、雇い止めの問題とかいろいろあって、新しい人を雇うというのが大変厳しゅうございまして、実質科学技術コミュニケーションを、現在いる教職員、又は職員で対応しているような現状があります。
 一方で、地方大学同士で連携大学院などもやっているので、実はテレビ会議システムを使った大学院を開講していたりします。今実際、ちょっとホームページも拝見させていただいたんですが、実は出席しないといけないようになっていますよね。もちろん実際の実習というか、そういうものは出席しないといけないとは思うんですけれども、テレビ会議システムみたいなのを使って、地方の学芸員さんとか地方の大学の職員を含めて受講できるようにしていただくようなことは考えていらっしゃるのかどうなのかと。なぜならば、それは国立科学博物館って日本に1個しかないので、未来館はまた別ですし、一つしかないところが、パートナーシップの大学が関東圏に限られているというのは、ちょっと今のこの状況から考えると、何かシステムを使ってやっていただけないかなという要望も含めてのお尋ねです。
【小川園長】  ありがとうございます。最初の構想にはテレビ会議といいますか、YouTubeみたいなものに立ち上げて、そこに送信するというやり方もあるんじゃないかと思うんですけれども、それは予算的な問題でできなかったということです。一部をダイジェスト版にして載せていくというのは、検討課題として残っております。テレビ会議にするのは難しいので、結局、かかわる職員というのが一人二人余計に必要になってきますので、それもなかなか厳しい状況になってきています。あと本講座に関わるコーディネーターとして、非常勤職員を1名雇用していますが、この非常勤職員については、大学パートナーシップの外部資金を活用して雇用しているという状況ですので、その中でどこまでできるかという課題もあります。
 これはおっしゃるとおり、国の機関として全国に普及していくという観点からは、必要になってくると考えていますが、資源が限られていますから、今やっている講座を何らかの形で、ある程度縮小するなりして、テレビ会議にとか、そういう考え方もできるのではないかと思います。検討はこれからしていかなきゃいけないかなと思います。ありがとうございます。
【堀口委員】  YouTubeに関しては、多分手続の問題じゃないかと思うんですけど、私は食品安全委員会に関わっておりまして、食品安全委員会もこのような講座、別に科学技術コミュニケーターの講座ではなく、食品安全の講座をやっていますけれども、YouTubeのチャンネルを開設しまして、その講座をそのまま移して、一応YouTubeで見られるようにはしたんです。内閣府でアカウントを取って。なので、多分お金じゃなくて手続の問題だと思いますので、是非いろいろな大学の職員が、全国の職員がYouTubeさえ見れば、ただ自分が努力してないだけという形にしていただけると、とても助かります。よろしくお願いします。
【小川園長】  はい。
【小林主査】  そうですね、今YouTubeはかなり簡単に開設はできるようになりましたので、大学でもYouTubeのページを持っていますよね。
 ほか、いかがですか。どうぞ。
【田中委員】  基本的な質問です。専門性、コミュニケーション能力、コーディネート能力を養成する。そして、別表1に構成要素、内容、活動についても紹介されています。一方で、外部評価を行うとのことです。この場合、カリキュラム、コンテンツが重要になるかと思います。その際の評価指標について教えていただけますか。
【小川園長】  評価指標というほどのものはないんですが、このカリキュラム表の講座内容・活動の右側の方に評価の軸を用意しまして、そこが達成されたかという評価です。
【田中委員】  受講生の方が。
【小川園長】  はい、受講生です。
【田中委員】  外部評価の方が評価されたというのは、どのような。
【小川園長】  外部評価は、この講座全体の、要するにもう一つ上の段階になりますけれども、ガバナンスの問題だと思います。おっしゃるとおり、どうやってこれを講座として立ち上げていて、社会的インパクトがどれぐらいあったかとか、大学からはどんな評価、意義があるのかとか、そういう話が中心でございました。
【田中委員】  受講生の数とか。
【小川園長】  そういうことです。
【小林主査】  ほか、いかがですか。
【小出委員】  ちょっと今、先ほど出ました堀口先生の関連で一つお伺いしたいんですけれども、Skypeとかそういうふうな機械を使って、一緒にディスカッションできたり、講座が進められたらなかなかいいと思うんですけれども、そういうような試みは今、予算の関係で難しいというふうに。
【小川園長】  予算といいますか、人です、結局。それをコーディネートする人がいるかどうか。
【小出委員】  なるほど。その人間を雇えないという。
【小川園長】  そうです。
【小出委員】  これは一つのプロジェクトとして、例えばアカデミストのようなクラウドファンディングのそういう応募というのはされていますでしょうか。
【小川園長】  やっていないですね、これに関しては。
【小出委員】  ああ、そうですか。これは恐らくいろいろなステークホルダーになり得る各博物館とかそういうところの人たちに呼びかけるという格好でもってプロジェクトを作ると、人件費の、大した金額じゃないかもしれないですけれども、そういうようなことは可能かなと思って、ちょっと頭にひらめいたんですけれども。アカデミストあたりは割と興味を持つかもしれないですし、いつまでの間にどういうプロジェクトというようなことがもうちょっとできると、そういうようなプラットフォームができれば、特に科博としては全国につながっていいんでしょうし、そういう知恵があり得るかなとちょっと思ったんですが。
【小川園長】  そうですね。ありがとうございます。当方、クラウドファンディングを3年前に1回、研究部門でやりましたけれども、あのときはいろいろお世話になりまして、ありがとうございます。
【小出委員】  海の底の、わけの分からないものでしたっけ。
【小川園長】  3万年前の人類が、日本人がどうやって渡ってきたかという実験公開を。
【小出委員】  海部さんたちのプロジェクトの一つの。
【小川園長】  そうです。たくさんの方に支援していただきまして。お金が集まることも大事なんですけれども、やっぱり多くの方が支援していただいたこと。多くの方にプロジェクトを理解していただいたという面では非常に有益、有効だなと思っています。
【小出委員】  こういうものも、ほとんどあるということ自体、私は余り具体的に知らなかったんですけれども、そういうものを通してやるとコミュニケーションが広がるという気もいたしました。
【小林主査】  私も少し質問をさせてもらいたいんですけれども、学生の、受講生の声というのがありますよね、19ページに。これを見ると、どこでも一緒ですよね。私のところでもそうですけれども、理系の学生というのは、自分の研究を分かりやすく伝えるためにというので来るんですね。それが実は的外れじゃないかという懐疑を持っていないというところが一番問題なんですけれども。結局分かりやすく説明したいという、そういう議論になっているんですけれども、それに気付いていますよね、この方々は。そうするとその後、やっぱり多くの方は研究職に就いているわけですけれども、何かこの経験を生かして、自分の研究のスタイルとか何かが変わっていったとか、そういうのがあるのかというのをフォローされているのかという点が一つです。
 それともう一つは、大学で単位認定していますよね。2単位とか、小さな単位なのであれですが、これを修了要件単位に入れるというふうな扱いをしてくれているのか、それとも外付けでリコメンドしているぐらいの単位なのかというあたりはどうですか。
【小川園長】  エビデンスはなさそうですね。そういう意識が高くなった人は、それなりにいろいろなところで活躍されているようです。例えば科博の方に、いろいろなこういうことをやっていますよというのは言ってくれます。何人かそういう方はいらっしゃるようです。
【小林主査】  多分成果指標の中で、本当はそういうのが一つ入ってくるというのは、考え方としてはあるんじゃないかとちょっと思ったものですから。
【小川園長】  それからもう一つは、大学の方は、筑波大学の場合は、大学院共通科目に。
【小林主査】  やっぱりそうですね、あそこに入れてますね。よく分かります。
【小川園長】  必修単位というわけではないんじゃないかと思います。
【小林主査】  そうですね。今、大学院の教養教育とか共通教育がいろいろな大学が取り組んでいて、そのときの有力な候補の一つと私も思うので。
 もう一つだけ。最後のネットワーク型というか、地域の問題ですね。これは多分、実は非常に大事で。東京でやろうとしているサイエンスコミュニケーションと、地域でやろうとしているサイエンスコミュニケーションは実は文脈がかなり違うということもお気付きになっていると思うんですが、このやり方、地域でのサイエンスコミュニケーションで、知産知承モデルというふうにお書きになっている。これ、なかなか大変なことで。ただこれ、いわゆるまちづくりデザイナーとか、ああいう方々の活動と接点ができますよね。ヨーロッパだと、70年前後の紛争の後に、ヨーロッパの大学がやり始めたのは、サイエンスショップという活動がありますよね。あれと似てきますよね。だから、そういう観点がこれから特に地域だと、その地域の課題の解決に、科学の観点に加えほかの観点がいっぱい必要になってくると思うんですが、そういうものをコーディネートするということがすごく重要で。これをサイエンスコミュニケーションという言葉で呼んでいいのかというぐらいの広がりがある話だと思いますけれども、大事な課題かなという気がしています。
【小川園長】  ありがとうございます。
【山口委員】  私も同じようなことを考えていて、最近も私、箱で名刺を持つようになったのは、業務上、ワークショップをやることが多いんですよ。実は私も昨日沖縄でワークショップをしてきまして、打ちひしがれて帰ってきているところなんですけれども。例えば、都市や、新しい技術についてやるワークショップと、地方部や、行き詰まった産業をこれからどうするかみたいなワークショップとでは、全然文脈が異なっていて。昨日もなかなかうまくいかなくて、どこかでそういうことをうまくやるスキルを教えてくれる講座があれば是非受けたいなと思いながら、昨日飛行機に乗っていたんですけれども。
 やっぱりキャリアパスとか活躍状況を見ると、どうしてもサイエンスのところに偏っている部分はあるんですけれども、これからは行政ももちろんですし、ディベロッパーもそうですし、コミュニケーションはすごく重要になってくると思うので。少しそういう視野で、サイエンスに軸足を置きつつも、コミュニケーション能力はどういう職種に就く上でも高めていかないといけないという観点で、いろいろ開発されていくと、広がりが出てくるような気がいたしました。
【小川園長】  そうですね。最近は人文知コミュニケーションというのがありまして、人間文化研究機構と連携しまして。今年度の受講生に、人文知コミュニケーションを担う人間文化研究機構の職員が二人参加していただいたりもしています。
【藤垣主査代理】  その人文知関係が入る前は、受講生のバックグラウンドはほとんどが理系だったんでしょうか。それともその前から?
【小川園長】  科学というものをどう捉えるかなんですけれども、科学的なと言う観点で、人文科学の学生も入っています。あとは芸術系の学生も入っています。
【小林主査】  そうですね。
【小川園長】  コンテンツが重要で、例えば人体とか復顔を行っている学生もいました。東京芸大なんかは復顔を行っている人もいますが、科学的なんですよね、筋肉の構造とか復顔しているわけですから。そういう方も受講生に入っています。
 それからあと、これは社会人枠というのを作っていまして、毎年20名程度の受講生のうち、3、4名ぐらいが社会人の方で、例えば学校の先生や博物館の職員が受講しています。博物館の職員は一応科学をバックグラウンドにしているかもしれませんけれども、やることは科学だけじゃなくていろいろ総合的にやっていますので、特に郷土博物館とか、そういう方も入っています。今までだとフランス文学の人とか、そういう方も入ってきていますね。
【小林主査】  あと、15分で学生に発表されるというのを実践でされていますよね。これ、15分という時間の設定というのは、一般の来館者向けにというので説明するということですけれども、なぜ15分なのかというロジックはあるんですか。
 つまり、何でこんなことを聞くかというと、やっぱりイギリスの大学院生のトレーニングプログラムの中で、トランスファーラブルスキルズとかつて呼ばれ、今はちょっと名前が変わってresearcher development frameworkと呼ばれていますが、そこで行われているワークショップの中に面白いのがありましてね。いろんな分野の大学院生10人とか20人とか集めるんですね。それを10人ずつ向き合って座らせる。そうすると、専門はものすごく違うわけです。芸術の専門家もいれば、生物学もいると。それで3分間で自分の研究の説明をするんです、相手に。それで3分間で説明して、それで終わったらまた一つ席をずれる。そうすると、また別の人間に3分間説明するわけです。それをやると、10人、相当の時間何回も何回も自分の研究をしゃべることになります。そうすると、最初は相手の専門とあまりに違っているので、文脈が違っていて説明が全然通じないのが、最後の方になると必ず上手になっていくという、ものすごい効果があるんですね。
 なぜ3分間というのがすごく面白くて、これはパーティーの時間に自分を売り込むときに、自分を自己紹介するときに15分は使えないんですよ。3分で、すぱっと自分はどういう人間であるかというのを伝える訓練というふうに理解すると、非常に合理的な3分間なんです。つまり、何かそういうものを設定するときというのは、何のためにというのをかなりきっちりとやらなくてはいけないなというのを学んだんですね、私も。
 恐らくその大学院のプログラムというのは、大学院生のエンプロイアビリティーとか外部資金の獲得とか、そういうことにつながるような能力の向上だよというメッセージとともにあるわけですね。だから、この場合も博物館でやっておられることが、何が受講生にとって身に付くというか、何のためにやっているのかというところが、博物館で説明をするためにというふうになっていると、博物館の職員を訓練するんですかみたいな議論になりかねないんですよね。だから、この15分という意味は何かなというのがちょっと気になったところなんですけれども。
【小川園長】  3分という話は非常に分かりやすいですね。立って人と話をするというところですからね。もう一つ、15分というのはどこから出てきたか、ですが。お客さんの満足度を考えると、3分で終わりにすると低いでしょうね。一般的に当館で研究者が話をするときには、一番短くて15分程度、長くて40分ぐらいなんです。皆さん座って聞いていますけれども、展示室の中ですので、30分以上長くなってくると、講義室という閉じられた空間でやらなきゃいけない。周りががさがさしていますからね。それを考えると、30分ぐらいが限界です。それを研究者がやっていますので、それの半分ぐらい、15分ぐらいというふうに考えていますが、そこの論理的背景はないのですが、経験的に15分ということでございます。
 来館者は受講生も職員もあまり区別しないで聞いておりますので、620円を払って入館していますので、我々はサービスを提供しなきゃいけないので、余り短過ぎるとまずいと思います。
【小林主査】  なるほど、分かりました。
【堀口委員】  消費者庁の啓発のYouTubeの映像は3分じゃないと見てくれないという感じです。
【小林主査】  そうですね、3分。そういうトレーニングをすると、そういう頭の使い方をするという訓練にはなるんですね。研究者って、ディテールを説明したがるんですよ。聞いている方はどうでもいいと思っているんですよ。そこの勘違いをなかなか気が付かないというのが研究者。でも、それを大事にするのが研究者ですけどね、もちろん。
【横山委員】  博物館の御活動、本当に心強くいつも拝見しておりました。震災を経て、何か変わったプログラムなんかをお考えになったかどうかということをお伺いしたく思います。その背景としましては、私たちの研究メンバーの方で、震災の後、どういう壁が、サイエンスコミュニケーターが直接的な貢献をするに当たって弊害になったかということを調査しまして、その結果、三つの弊害があったというふうにまとめてございます。
 一つは、ふだん分かりやすく説明するということに重点を置いているサイエンスコミュニケーターが、リスクの非常に社会的に波がある中で、リスクを説明するという能力は、通常のサイエンスコミュニケーションの教育ではなかなか受けていなかったのではないかという論点、つまり、スキルの問題が一つございます。もう一つは専門性の問題で、やはりそれぞれが生物なり天文学なり違ったバックグラウンドがあるときに、津波だ、放射能だという異なる専門性にすぐに手を伸ばせないという、そういう問題があるのではないかというふうに言っております。最後の一つは非常に大きくて、やはり感情の荒波が渦巻いている中で、例えばSNSを使って説明するなんていうのは、当時は一人のコミュニケーターの方がそういうことをやるというような状況ではなかった。非常にうまくいっていたのは、学会単位でコミュニケーターがついて、学会なり組織なりが発信をするQ&Aのページなどは、専門知も確保しながら上手にやっていた。つまり、専門家と一緒に動いたコミュニケーターが非常に活躍したというような状況分析を我々の方ではしてございます。
 非常時というのは念頭に置いて活動するかどうかでまたタイプが違いますし、特に科博のような非常にしっかりとした研究組織と一緒に動いているようなところでは、こうしたリスクなどだけに注目するようなプログラムがあるというのも不自然な気がするんですが、何か震災を経ての御経験とか改善点がありましたらお伺いできればと思いました。
【小川園長】  ありがとうございます。震災の問題は、外部評価以降もいろいろ指摘がありました。このカリキュラムを作るに当たって、リスクコミュニケーションをどうやって扱うかというのは非常に大きな課題です。具体的には、大々的には扱っていないんですけれども、SC2の科目の中でリスクに関する内容を講義の中で取り上げていただいておりますが、それは講師にお任せしておりますので、こちらとしてどこまで言及しているかコントロールしているわけではありません。
 もう一つは、こういう震災の状況に陥ったときにどうするかということ、いわゆるクライシスコミュニケーションと、例えば5年とか10年という、ふだんのサイエンスコミュニケーションをどうするかという二つの問題があると思います。私どもはふだんのサイエンスコミュニケーションで、人と人とのネットワークを作っていくというところが貢献できるところかなと思っています。どちらかというとその危機的場面でどうするかというよりは、ふだんから人的ネットワークを作っておくということの方が、こちらとしてはできるのではないかなと考えております。ふだん気が付かないところで、暮らしの中に科学ってこんなところにあるんだなというのが一般の人に分かって、博物館の学芸員やコミュニケーターとふだんから接触できて、気軽に話しできる関係になっていれば、危機的状況のときに少しでも貢献できるんではないかなと思います。
【横山委員】  ありがとうございます。もしよろしければ、学会は組む相手として御検討いただければ有り難いと思います。緊急時でもそうですし、非常に大きな事変があるときには、学会の側も誰に頼めばいいか分からなくて、右往左往しているような状況なんですね。そういうようなときにコミュニケーターを通じてでも、その学会をサポートしながら一緒に発表していく。学会からのウェブページなどの発信が、一番穏当できちんとしていると思うんですけれども、そうしたことを科博がサポートしてくださると、多分コミュニティーとしても非常に有り難いのではないかと思います。以上です。
【小林主査】  これはなかなか重い課題で、もちろん博物館の仕事だという意味で言うのではなくて、サイエンスコミュニケーションが、今おっしゃったように平常時のコミュニケーションのときの議論と、それから今、横山さんがおっしゃったクライシスコミュニケーションというか、それとは大分位相が違うんですけれども、クライシスコミュニケーションというのは、多分かなり特殊な部分があるんですけれども、これも本当は大事で。3・11のときも当然顕在化した問題ですけれども、これからだってパンデミックなんかが起こったときなんかにどうするかとか、あり得るわけですよね。そういうものに対して、実は今のところ、システマティックな対応策って作られていないのが現状じゃないかと。それぞれの分野でそれぞれが悩んでいるんだろうなと思います。それをここで議論できるかどうかというとちょっと自信はないですが、そういう大事な論点があるということは、やっぱり確認はしておいた方がいいかなと思います。
 ちょっと時間を予定どおりに進めたいと思います。どうもありがとうございました。
【小川園長】  どうもありがとうございました。
【小林主査】  大変貴重な取組を教えていただきまして、ありがとうございます。
 それでは、続きまして、同志社大学の野口先生、よろしくお願いいたします。

○資料2-2に基づいて、野口教授から説明

【小林主査】  ありがとうございました。そうしたら、質問、御意見あれば是非どうぞお願いします。
【原田委員】  一つよろしいでしょうか。科学警察研究所の原田と申します。私はうちの職場ではちょっと異端児で、法医学でも何でもなく、もともと文学部の出身で社会学というのをやっていたんですが、自分自身は今の職場は、文字どおり文系、理系入り交じった、職場そのものがそういう構造でありまして、自分自身が自然科学的なことも嫌いでなかったので、当初から割合居心地がいいと思っていたんですが、この大変有意義な取組をなさっていると感銘したんですけれども、同志社大学様の取組の中で、新しく文学部とか社会学部の学生さん、学部としての協力も組み入れられたということですけれども、普通文学部とか社会学部にいる者は、自然科学系の方と一緒に、同じ立場で同じテーブルを囲んで議論するというのには抵抗感のある人もいるんじゃないかと思うんですが、例えばどんなような専攻の方とか、それからどんなことを求めてこちらの養成の講座の方に見えているのか、それを是非教えていただければと思います。
 それからあともう一点、ちょっと細かいんですけれども、インターンシップの一環で、地元の医療少年院を訪問されているという、これも大変我々みたいな分野の者からすると有意義であり、有り難いと思うことなんですが、時々ありますのが、こういうところの代表者の方ですね、院長さんとか、それが人事異動で交代になると、そこの考え方ががらっと変わるということがあり得ると思うんですけど、そのあたりは現状どんな感じで進んでいるのか、その辺を教えていただければと思うんですが。
【野口教授】  ありがとうございます。まだ文学部は来年なので、学生は分からないんですけれども、経済学部は単学科なので、社会学部が参考になると思います。社会学部は社会学科、メディア学科、教育文化学科、社会福祉学科、産業関係学科がありまして、私も実は恐らくメディア学科の学生が取ってくるんだろうと思っていたんです。ところがあけてみたら、満遍なくどの学科からも、人数制限しているので、せいぜい一人とか二人なんですけれども、取っているのが、ちょっとうれしいんですけれども、驚きでした。なので、特別どこかの学科にというんじゃなくて、社会学部に入ったけれども、やっぱり科学好きだとか、そういう勉強もしてみたいというのとか、もともと理系に興味があったけど、例えば受験の科目の関係で文系受験をしたけれども、この機会に勉強したいとかというような理由なのではないかなと。今度またちょっとアンケートをとって、その辺は精査したいと思っているんですけれども、学生の専門はそういうことになっております。
 あと、少年院なんですけれども、これは確かに院長先生は数年で結構かわっていって、京都の宇治にあります医療少年院は、精神科の先生が副院長をずっとされていて、実質この先生が協力してくださっています。その先生がまたかわったときは、今の問題が出てくると思うんですけれども。今の院長先生はその取組に協力的で、少なくとも副院長先生がおられる間は続くと思います。
【原田委員】  ありがとうございます。
【小林主査】  ほか、いかがでしょうか。
【藤垣主査代理】  受講者の人数制限をなさる際、その選抜は所属学部の方でするのか、それともこの副専攻の中で願書とか面接で選んでいるのか、どちらでしょうか。
【野口教授】  今は学部にお任せしています。私の学部でも選考するんですけれども、どうして履修したいかというのを書かせます。あと、成績なんですが、面接まではできておらず、この2017年度も10人ほど落としたというか、履修できない状態になったんですが、成績と、書いてあるもので選考しています。
【小林主査】  主たる就職先として、企業を期待しているというふうにおっしゃって。そうすると、これはサイエンスコミュニケーターとして企業にという、コミュニケーターの養成になっているのか、それとも非常に現代的な新しい教養教育をやっているというふうに理解した方がいいのかというのはどうなんですかね。
【野口教授】  私としては、試みとしてはコミュニケーターを育てようと思っているんです。企業にもコミュニケーターが必要ですねということになっていけばいいと思っているんですが。だから、やっぱりコミュニケーションを勉強してきたコミュニケーターの人がここに入ってきてほしいと、企業が何かの部署には必ずいてもらわないといけないというようになればいいなと思っておりますけれども。
【小林主査】  ここ、なかなかポイントになるところで、企業の方は、そういう意味で文系、理系を超えたようなコミュニケーション能力を備えた人材を欲しがっているのは事実だと思うんです。それはそのとおりなんですが、さりとてコミュニケーターというカテゴリーで雇用するという発想はないと思うんですね。だから、このプログラムも、例えばサイエンスライティングというふうに書いておられますけれども、文系の学生が実習でやるサイエンスライティングって一体何なんだろうなというふうに思うんですよ。私はむしろこういうのは多分、2年次、3年次でしたっけ。
【野口教授】  はい、2、3、4。
【小林主査】  ですよね。なので、従来の1年、初年次で教養教育で、あと専門だという、こういうリニアなモデルを克服するためには非常に大事な取組というふうには見えていて。だからこれ、コミュニケーターと呼んでみても、学卒の場合は特にコミュニケーターとして遇されないのではないかというところはどうお考えなのかなというのを。
【野口教授】  確かにそれは、例えば大学院で私、コミュニケーターですと言っても、コミュニケーター、同じことを……。
【小林主査】  思わないでしょう、そうなんです。
【野口教授】  はい。社会としてそういうふうに見てくれないという、正式な資格が、試験を受けて取った資格とかいうのがあるわけではないですし、それは更に学部におりるので、ますますそこがぼやけるだろうというのが先生の御指摘だと思います。そこは大きな課題ですね。
【小林主査】  ですよね。うちも大学院生いっぱいいますから、そういう副専攻プログラムとかやっていますけれども、うちの場合、理系の学生にそういう能力を与えるという部分をやりますが、結局理系の教授たちとしゃべっていると、例えば理学部の教授というのは、理学部の学位のない人間に研究に関わる指図なんかされたくないという感覚がすごく強くあります。すごく強くあります。だから、これは国家資格なんかで克服できるものじゃなくて、要するに、専門が分かっていない人間にがたがた言われたくないというカルチャーがあるんですよ、良い悪いは別にしてね。
 なので、コミュニケーターですという言い方がなかなか受け入れられないだろうなと、今大きな課題だとおっしゃっているんですけれども、それを私、感じたのと、それから、単位数で20単位で、8単位が既存の学部で、12単位がリテラシー科目になっていますね。この12単位は、真水でエクストラに取るという設定ですか。そうすると、124の最低修了要件に加えて、少なくとも12単位以上取らないと、このサーティフィケートは出ないという、そういう建て付け?
【野口教授】  これは今のところ、これも学部によって扱いが違います。うちの学部は、いわゆる卒業単位に組み込めるようになっていて。
【小林主査】  ダブルカウントしているわけですね。
【野口教授】  はい。例えば、取りきらなくても、例えばつまみ食いをする学生がいて、三つぐらい取ったというのもカウントされるんです。
【小林主査】  サーティフィケートは出ないけれども、卒業要件単位には入れるということですね。
【野口教授】  はい、していますが、社会学部はすごく厳しくて、例えば18単位取ったけれども、1個足りなかったと。副専攻修了しないわ、18単位はなし。
【小林主査】  その他科目で御苦労さんなのですね。そうなんですね、やっぱり。
【野口教授】  はい。それ、どちらにするかですけれども。だから、社会学部の学生は物すごく、目つきが違います。熱心ですね、すごくそういう意味では。
【小林主査】  これ、よく工夫されていて、修了前に一応こういうプログラムを履修している証明を出しておられるというのは、現場の感覚からするとすごくよく分かる工夫だと思いますが。なかなか厳しいものがあるだろうなというのは、私も現場を預かる人間なのでよく分かります。ありがとうございます。
【野口教授】  どうやったら本当に認知度を上げるというか、価値を……。
【小林主査】  ほかにも副専攻プログラムは、同志社は幾つかあるんですか。
【野口教授】  他にも副専攻はありますが、文理横断型副専攻はこれが初めてです。
【小林主査】  なるほど。
【堀口委員】  さっき横山先生がおっしゃった、科学技術コミュニケーターの災害の後の問題点の三つというのは、私も非常に実感していまして。企業さんって、広報部門というのは、結構今までも自社でやったり、代理店に頼んだりいろいろだと思うんですけれども、いわゆるリスク、苦情の処理という意味ではなくて、自分たちが抱えているリスクを説明下手だとSNSでたたかれたりとかしますし、そこはどうしたらいいのかというのは、非常に悩まれているのが現状で、よく相談を受けているんですよ。ということは、逆に言うと、サイエンスもきちんと分かりやすく伝えることができる、かつ、さっきちょっと、議論するかどうかは別なんですけれども、そういうところもスキルとして身に付けてきた、実践はしてなくてもという学生さんであれば、非常に売手市場なんじゃないかなという気はすごくしました。
【片田委員】  関係していいですかね。僕も防災をやっているものですから、リスクという部分で、コミュニケーションの問題をやっているわけで、非常に難しいなと思っているんですけれども。専門家と非専門家の関係性って、結構状況によってダイナミックに変化していくという状況があるわけですよね。
 例えば、先ほどの横山先生の御指摘の中で、被災直後の感情の高ぶりの中での専門家にコンタクトしたいという意欲と、それから、ふだんリスクの場合はほとんど無関心というか、触りたくないというのか、考えたくないみたいな状況の中で、そこでのコミュニケーションというモデルも全然違っていて。そうすると、サイエンスコミュニケーションというのは、今の専門家と非専門家の関係性の状況変化というものに的確に対応できているのか。
 例えば、これまでの博物館なんかは典型的だと思うんですけれども、自ら専門家へ、どう言いましょうか、専門知識に対してのコンタクトの意欲があるから足を運ぶわけですよね。そういう方々を対象にうまく説明してやるというのは、これは結構イージーなコミュニケーションだと思うんですね。
 でも、そうではなくて、社会問題、社会というものを見据えたときにおける専門家が、どう状況に応じてコミュニケーションするのかというのは、大抵エマージェンシー下における、クライシス下におけるだとかいうところが結構重要になってくるし、若しくは防災の平時の状況のように、そこに厳然とリスクはあるにもかかわらず、社会が無反応であるということに対して、我々が社会を動かさなきゃいけない、若しくはコミュニケーションによって社会を動かしていかなきゃいけないという、そういうことを考えると、単に専門知識を分かりやすく説明するなんて、そんな生っちょろい問題ではなくて、もっとコミュニケーターが果たさなきゃいけない役割というのがあるんじゃないかと思うんですね。でも、その辺の能力の育成というのはどうしたらいいのか。若しくは、今の議論の中にこれは含まれているんだろうかと。余り含まれているようには感じないんですね、正直。そこがだけど、一番重要なんじゃないかなというように思います。
 本当に現場に行って、例えば津波防災やり始めた頃なんかは、何となくは分かっているけれども、もう聞きたくないという、こういう状況ですよね。聞きたくなくてもやらなきゃいけないことはやらなきゃいけないといって、嫌われながらもやってきたわけですよね。そういったところにおける、それをどう主体性を持たせて動かし始めるかとか、そういった部分の議論というのは全然ない、余り見当たらないなというのが正直なところでして。一番重要なところじゃないかなというふうに思います。
【野口教授】  私もそう思います。それで、できているとはとても言えないんですけれども。私はサイエンティストですし、研究者というのは、さっき小林先生もおっしゃったように、専門じゃない人にごちゃごちゃ言われたくないと思ったりですとか、説明はちゃんとしなくちゃいけないということは分かっているけれども、そんな感情もあったり。あと、一番問題なのは、分からないことが分からないことがあると思うんですよ。一般の人たちが何を嫌がっていたりするのか、あるいは何を本当は知りたいと思っているのかというのをすくい上げるというのは、多分恐らく研究者は苦手な人が圧倒的に多くて。そこをつなぐ人を育てる必要があるんじゃないかなと思っているんです。これでできているとは言いませんけれども。
 それができれば、研究者もこの人がちゃんと分からないことを説明してくれるんだったら受け入れて、もうちょっと説明しようというふうな材料を出してくるとか、直接研究者が、幾ら現場が、もちろんやっておられるんですけれども、訓練していても、それをしていない人はなおさらできない。研究者も抵抗がある。こんなことまで言わないといけないのかというのもあるかもしれないですし、一般の人は、今はそれは聞きたくないとか、分からないんだけど、それをうまく説明できないとかという、全くミスコミュニケーションがあるところを埋めるような人が育ったらいいんじゃないかなと思っているんですけれども。
【小出委員】  この問題は、幾つかの階層のお話が含まれていると思います。今のクライシス・コミュニケーションの問題は、我々ジャーナリストが一番関心を持つところですけれども、社会と科学の連携を考える上では、少し別に考えた方がいいと思いますね。例えば、福島の事故の後や、理化学研究所のSTAP問題のときなどが、リスクコミュニケーションの現場です。STAP問題では、研究者の間では、彼女のデータは使えないから意味がない。だから結論は出ている、というのが合意で、これは非常によく分かる。一方で、「そんなこと言っても、おじさんたちがみんなで女の子をいじめて、小保方さんかわいそう」という世論がある。こうした状況では、通常のコミュニケーションではない手法が求められます。
 本当に必要だったのは、理事者が、社会に向かって、研究にはどのようなルールが必要で、タスクに向けてどのような価値観でやっているのか、そのメッセージを、社会に向けて何度も繰り返して発信することでした。そのフィロソフィーを伝える作業がなかった、これが残念です。これだけのコミュニケーション・クライシスになったときには、きちんとサポートできるスタッフを、外からでも投入しなければならないと思います。理化学研究所には、元検察官の25期の弁護士がいました。彼は最初、理研の弁護士としてサポートできたのですが、途中から調査委員会のメンバーの方に入ってしまったので、クライシスへのサポートができにくい立場になってしまった。この修羅場にむけて、どのように対応するか、行動力のあるアドバイザリー・グループが必要で、社会への発信をすべきだったと思います。
 福島の事故で言えば、事故がどうなるのか、放射線はどれぐらい心配なのかという全体像を伝える重要なメッセージが、日本政府からは発信されず、英国の首席科学顧問が4日後にメッセージを投げて、それが英語では伝わりました。こうした事態には科学と社会の二つの世界を結ぶ、実践的な組織・グループが必要だと思います。
 理研の場合には2014年、外部の有識者を入れた経営戦略会議を設置してリスクマネジメントを立ち上げましたが、そこには、STAP細胞問題のような修羅場への対応が得意な人間は入っていません。こうしたクライシスの処理と、通常のときのコミュニケーション、それを社会の中にどう伝えるかということとは、分けて考えたらよいと思います。
 コミュニケーションという言葉自体が、日本ではまだ良く理解されていないと思いますが、「言ったから伝わる」というのは、過信だと思います。
 福島事故の後、原子力学会の人たちは、一生懸命コミュニケーションに取り組んだけれども、人々には変わらない、伝わらないとおっしゃいます。本質は「届ける」ことで、発信しただけでは効果が上がらない。心に届けるにはどうしたらよいか――という発想にたって、初めてコミュニケーションが成り立つと思うんですね。発信することと、届ける、デリバリーすることの間には、大きな落差があると思います。
 こうした視点に立つと、同志社大学のプログラムが非常に優れていると思いました。自然科学とか、人文科学とかいう区分ではなく、社会という座標を軸としてその中で考える、どんなコミュニケートができるのか、そのフレームを作り直そうという思想を感じます。
 これはジャーナリストの仕事と、重なってきます。ジャーナリストの仕事をひとことで言えば、社会という3軸座標があり、そこに飛び込んできた情報の質量をはかって、どこからどこへ行こうとしているのかベクトルを測定、それを社会という座標の中で、社会的なインパクト、相場観として表現する。それが我々ジャーナリストのコミュニケーションです。同志社大学のプロジェクトをうかがっていると、いろいろな人材が集まって、多様にコミュニケートする中で、学生同士が考える、インターンシップに取り組む。あれも法務省の矯正局とか、メディアでの体験、実際には外から入りにくい世界ですけれども、そこでの体験は人の前に出てコミュニケーションする、その際にどうしたら伝わるかということを学ぶ、一番実務的な訓練ですね。
 平時のコミュニケーターを作る、そのネットワークを広げるということが、コミュニケーションを育てる上で、大切な使命だと思うのですが、それだけでは賄いきれない領域をどうするか、これを考えると、同志社大学の今のプログラムはこの領域でも有効な人材育成法だと思いました。
 新聞社での入社担当の立場になれば、そういうインターンシップ経歴を持っている人は興味がありますし、専門が優れているということだけではない能力も、コミュニケーションの現場では必要だからです。
 先ほども3分のプレゼンテーション、15分のプレゼンテーションという取り組みがありました。日本での教育は長らく人の前で物をしゃべるマナー、伝え方、討論の仕方を学ぶ機会が、極めて少なかった。先ほど例に出ました、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンでは、大学院教育の中にも、プレゼンテーションの工夫、こころに届けるにはどのようなマナー、まず歩いて部屋に入ってくる姿勢から、手ほどきします。
 プレゼンテーション資料も、霞が関の官庁のように、情報を目いっぱいに書き込むのではなく、項目(バレット)も5項目以下にして、見やすく、言葉でメッセージを伝える、というマニュアル的なことも教えています。その教育プロセスが、研究だけではなく、実学としてのコミュニケーションの教育を支えていると思うのです。
 そういう面で、同志社大学のプログラムはよくできていると思いますし、またこうしたコミュニケーション・ネットワークを広げられればいいと思います。
 中学生、高校生を集めての、白熱教室、実際に放射線観測を重ねる、現場を見て考える、という教育プログラムが、幾つか広がってきています。前日本物理学会長の坂東昌子さんらのグループが、京都大学などを拠点に中学生、高校生を集めて、実際に各地で放射線をはかる。それを持ち寄ってディスカッションするという、「ゆりかもめプロジェクト」があります。ここには原子力施設を抱える六ヶ所村や、首都圏、京阪神からも生徒らが集まってきます。東工大の澤田哲生さんたちの「中学生サミット」など、次世代にメッセージを伝えるコミュニケーション活動なども、同志社大学のプロジェクトとの連系ができると良いなと思いました。
【野口教授】  ちょっとアクセスしてみます。ありがとうございます。
【小林主査】  予定していた終了時間に近づいてきましたが、大事な論点が出てきました。ちょっと今日、これ以上議論する時間はないのですか、幾つか整理しておかなくてはいけない、考えなくてはいけなくて、やっぱりサイエンスコミュニケーションという概念が、ある意味で広過ぎるのかもしれないですね。今、片田さんがおっしゃったような議論というのは、従来はリスクコミュニケーションという言葉で、どちらかというと概念化されているという意味で、サイエンスコミュニケーションとリスクコミュニケーションというのはどういう関係かというのは、一つポイントだろうと。
 それからもう一つは、平常時の場面と、それからクライシスの場面で話が全然違うと。平常時に科学に関心を持った人が近付いてくるということを前提にしたコミュニケーションと、そうではなくてもやらなくてはいけないというコミュニケーションと、やっぱり違うだろうという論点、これがあるだろう。
 それから、育成対象として、学部を前提にしたプログラムという考え方の場面で、満たすべき目的と、それから、大学院生で将来研究者になっていく人間に対するトレーニングという観点でのものとは、またちょっと違う力点があるかもしれない。それは出口と関係していて、主として産業界、企業に出て行くということを前提にして、科学コミュニケーションと呼ぶか、コミュニケーターと呼ぶかという問題と、それからやっぱり研究者になっていくというところで、研究者が備えるべき能力というのは、やっぱりちょっと違うのかもしれないと。そのあたりをがさっと科学コミュニケーターという言葉で語るのは、ちょっと解像度が悪くなるなという気はしました。
 ただ、我々の社会がどこかで何かコミュニケーションとか、つなぐとか、そういう言葉に反応しているというのは事実であって、そこにいろいろな形で取り組まなくてはいけない。だから、文系と理系をつなぐと言ってみたり、専門家と非専門家をつなぐと言ってみたりという、そのつなぐという観点が大事なんですが、それをサイエンスコミュニケーションで全部ひとくくりにできるかというところは、ちょっと議論した方がいいような気がいたしますね。
 何かこのあたりも含めて、御意見あればもうお一方、二方ぐらいいかがでしょうか。
【山口委員】  10秒だけ。企業の立場から言いますと、お話を聞く限り、このコースの就職先は、広報というよりも、どちらかというと企画とか事業戦略の方に近いと思います。企業では、クライシスコミュニケーションは法務とか経営層の対応事項になっているのが現状で、広報部署はその結果をウェブサイトに掲載するとか、記者会見をセットするとかがメインになることが多いので。どちらかというと、企画とか事業戦略とかに人材を送り込むという観点で御対応される方がいいかなと思います。
【野口教授】  ありがとうございます。
【堀口委員】  リスクコミュニケーションって、別途何か報告書を出されていますよね。
【塩崎課長】  過去にですね。
【小林主査】  過去に。前回ですね。
【塩崎課長】  そうです。
【堀口委員】  それは踏まえているんですかね、これって。
【小林主査】  だから、踏まえなくちゃいけないと改めて。
【塩崎課長】  つながらないと。
【堀口委員】  そこの確認をしたかっただけです。分かりました。
【小林主査】  そのときは片田さんもいらっしゃってやりましたよね。その議論は踏まえてというふうにしないといけない。
【堀口委員】  去年か一昨年でき上がっているものが……。
【塩崎課長】  あります。
【堀口委員】  ありますよね。関係する省庁に知らされてなくて、後で見て、みんなびっくりしているんですけど、分野別だと思うんです。
【小林主査】  あ、そうなの?
【堀口委員】  はい。
【小林主査】  こういうところをつながなくてはいけない。
【堀口委員】  つないでいただければ、コミュニケーションを。お願いします。
【小林主査】  こういうことがよく起こるんですね。だから、作ったものをどうやってちゃんと伝えるかということに失敗していて、連携とかコミュニケーションできる人いるのかという。
【堀口委員】  作るプロセスの中で、何かお問合せがあったかどうかを確認していたんですけれども、問合せがなかったということだったので、ちょっと現物を見て驚いたのが今年、今年度で。よろしくお願いします。
【横山委員】  短く。野口先生の御発表も非常に興味深くて、特に企業のコミュニケーションを担う人材を輩出していくという観点は非常に大事だと思いました。特に食品会社のコミュニケーションの失敗は、倒産につながっていくというケースが非常に多くて、同志社の中西先生なんかも分析されていますし、その辺の企業へ人材を輩出していくコミュニケーションの母体として、非常に的確なことをされているんじゃないかなというふうに感じました。
 あともう1点、先ほど山口委員がおっしゃってくださったような、やっぱり組織内でのコミュニケーションとリスクを扱う部門との関係性というのがあるかと思います。でも、やっぱりそういう人材が確かに少なくて、法務は法務できちんとしているんですけれども、法務が社会に情報を発信するときにどうすべきかという話は、やっぱり情報発信の、いわゆる広報室を経由して発信はされていきますので、その辺の関連性も必要ですし、サイエンスをよく知っている者が、リスクに関しても、組織の中では非常に対応を問われます。なので、恐らくサイエンスコミュニケーションが上手になっていくと、リスクコミュニケーションの在り方にも理解が深まり、リスクの方にも進んでいくというような人材育成の方向性が一つあるのかなと。以前に出されたものも拝読して、非常によくできているというふうに拝見しているんですけれども、別枠で、小林先生がおっしゃるように、かなり解像度が悪くなるので別に議論は必要だと思うんですが、人材育成の方向性としては、完全に分離しているわけじゃなくて、恐らくサイエンスコミュニケーションを経由した人たちがリスクの方に進むという方が、効率がよいといいますか、そんな印象を持ちました。以上です。
【小林主査】  ありがとうございました。時間もまいりましたので、今日はこれで閉じたいと思いますが、大変大事な問題がまた浮き上がってきたということで、次回以降、また深めていきたいと思います。小川さん、それから野口さん、今日は本当にお忙しい中ありがとうございました。感謝申し上げます。
 それでは、事務局の方から。
【石橋補佐】  次回の委員会につきましては、また皆様の日程を調整の上、改めて連絡させていただきたいと思います。また、議事録については、作成次第、また御確認いただければと思っております。確認後、文科省のホームページに掲載させていただく予定でございます。引き続きよろしくお願いします。以上です。
【小林主査】  どうもありがとうございました。

── 了 ──


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