第10期 環境エネルギー科学技術委員会(第5回) 議事録

1.日時

令和元年10月23日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15F特別会議室

3.議題

  1. 令和2年度文部科学省概算要求(環境エネルギー科学技術分野)について
  2. 革新的環境イノベーション戦略の検討状況について
  3. 今後の環境エネルギー科学技術分野における研究開発の在り方について
  4. その他

4.出席者

委員

高村主査、江守主査代理、石川委員、奥委員、堅達委員、佐々木委員、嶋田委員、清水委員、竹ケ原委員、波多野委員、本郷委員、本藤委員、山地委員

文部科学省

千原大臣官房審議官、横地環境エネルギー課長、林開発企画課長、石川環境科学技術推進官、清水課長補佐、葛谷課長補佐、加藤係長

5.議事録

【髙村主査】 それでは,少し開始時刻よりも早いですけれども,皆様,お集まりですので,本日の会合を,始めてまいりたいと思います。
本日はお忙しい中お集まりいただきまして,どうもありがとうございます。ただいまから,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第10期の環境エネルギー科学技術委員会の第5回会合を開催いたします。
まず事務局から,本日の出席者と資料の確認をお願いいたします。
【加藤係長】 おはようございます。初めに,事務局の人事異動について御報告いたします。8月より総括課長補佐に清水が着任しております。
【清水課長補佐】 どうぞよろしくお願いいたします。
【加藤係長】 続きまして,本日の出席状況ですが,御出席の委員数は現時点で過半数に達しておりますので,委員会は成立となります。本日,御欠席の委員は,沖委員,加藤委員,中山委員です。
次に,資料の確認ですが,お手元のタブレットに議事次第,資料1から資料3-4までがありますことを御確認ください。タブレットに不具合等ございましたら,お申しつけください。よろしいでしょうか。
また,お手元に前回までの資料を御参考に配付しておりますので,御活用ください。事務局からは以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。
それでは,本日でございますけれども,議事次第にありますように,議題を4つ予定しております。委員の皆様からは忌憚(きたん)のない御意見を頂ければと思います。
それでは,早速ですけれども議事を進めてまいります。議題の1,令和2年度文部科学省概算要求(環境エネルギー科学技術分野)についてです。
それでは,事務局から報告をお願いいたします。
【清水課長補佐】 それでは,報告をさせていただきます。資料1の概算要求の資料をごらんください。1ページ目が,現在,環境エネルギー課でやっている主な事業の一覧です。2ページ目が,クリーンで経済的な環境エネルギーシステムの実現ということで,今回の概算要求の主要な事項をまとめているものでございます。それについて,各項目の細かい説明につきまして,3ページから5ページ目に各項目を記載しております。本日は,2ページ目のクリーンで経済的な環境エネルギーシステムの実現という資料で御説明いたします。
まず,左上から,徹底した省エネルギーの推進ということで,電力消費の大幅な効率化を可能する窒化ガリウム等を活用した次世代パワーデバイス等の研究開発を,名古屋大学を拠点に実施しております。来年度が最終事業年度になりますので,これまでの研究成果であるデバイスの動作実証等に力を入れていく予定でございます。
そして,その下の革新的な低炭素化技術の研究の推進,これはJSTが実施するものです。公募型の低炭素化技術の開発ということで,2つの事業がございます。そのうちの下のALCAについては,新規募集を現在終了しておりまして,その上段の未来事業に段階的に移行していく予定でございます。
ALCAでは,特別重点プロジェクトとしてリチウムイオン蓄電池に換わる次世代蓄電池の研究開発を行っております。また,未来事業では,ステージゲート評価の仕組みにより,幅広いシーズ創出を目指した上で,特に研究成果が上がっているものについて,重点的に投資をしていく仕組みをとっております。
さらに,下の地球観測・予測情報を活用した環境エネルギー問題への対応につきましては,気候変動適応戦略イニシアチブということで,気候変動対策の全ての根幹となる基盤的情報の創出として,気候変動メカニズムの解明等を通じた予測情報の高度化,そして,産学官で活用できる地球環境情報プラットフォームの構築と運用を,引き続き実施しております。
来年度は特に情報を活用する側のニーズを踏まえた研究開発というのを重視しておりまして,農業や防災も含めた国や自治体の適応策支援に資するような情報の創出というのを,特に力を入れてまいります。
また,右側のITER,長期的視点で環境エネルギー問題を根本的に解決するための施策については,当委員会の所掌ではございませんので詳細な説明は割愛いたしますけれども,中身としましては,核融合実験炉の建設等に掛かる予算でございます。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,ただいま事務局から頂きました報告について御質問,御意見等がございましたら,お願いしたいと思います。札,プレートを立ててお知らせいただけると助かります。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。
また,この後の議題のところでも関わる御質問,御意見を頂けるかと思いますので,こちらの議題についての質疑応答はこれで終わらせていただきます。
早速ですけれども,議題2に移ってまいりたいと思います。議題2でありますけれども,本年中に,御存じのように政府で策定が予定されております革新的環境イノベーション戦略の検討状況についてでございます。こちらについても,事務局から御報告,御説明をお願いしたいと思います。
【横地環境エネルギー課長】 それでは,資料2のタブを開いていただければと思います。革新的環境イノベーション戦略,主査からも御説明がありましたように,年内に策定するということで政府で動いております。これについては,背景を少し簡単に御説明させていただきます。
髙村主査も入っていただいて,官邸中心に検討がなされてきたパリ協定に基づく長期成長戦略の懇談会というのがございました。この提言を踏まえまして,本年6月にパリ協定長期成長戦略――これは略称ですけれども,これが閣議決定されました。この中で,パリ協定を踏まえて,日本としてはしっかりと脱炭素化を視野に入れて技術的なアプローチ,政策的なアプローチを進めていくことが閣議決定されているわけでございます。
技術的な内容,それからグリーンファイナンスの関係,こういったことがそこに含まれているわけです。とりわけ技術的な内容については,年内に策定する革新的環境イノベーション戦略というものをしっかり定めて,この中で更に深掘りをしていくということが定められております。それに基づいて,政府で現在,有識者の方々の御検討をお願いしています。
資料2の1ページをごらんいただくと,概略が書いてございます。これまで8月,9月と2回,検討会を開催しました。この事務局を文科省と経産省が担っております。また,関係省庁ということで,オブザーバー参加をしていただいているのが内閣府,環境省,国交省,農水省です。年内策定に向けて検討を進めておりますので,11月中に提言案を取りまとめて,その後の策定プロセスに入っていきたいと考えているところです。
これまで2回,検討会を開催していまして,その中で検討中の取りまとめ案というものを御議論いただいているので,簡単にここで御紹介させていただきます。全体の構成は,4つのポイントで分けようと考えております。まず全体スコープです。地球温暖化問題の解決に向けて社会実装可能なコストを実現するイノベーションを創出する。それによって,世界全体の排出削減に貢献する戦略という形にしたいということです。
ここでコストと書いてあるのは,とりわけ現在,既に社会的に導入されている各種の技術がありますが,それを更に上回って社会的に導入されるということを考えるときに,やはりコスト的な点については考えていかなければならないだろうという観点で書かれています。
それから,2.世界全体の削減ターゲットということで,日本はもとより,世界全体を視野に入れながら,CO2の削減コストを新たに提示していきたいと考えております。
3点目,実現に向けた革新的・非連続技術の重点化です。CO2の削減ポテンシャルが高そうな重要技術を抽出し,ここで重点化を示していくということを考えております。実現までにコストの削減も含めて,比較的時間を要し,リスクも高いというようなものがここに含まれるのではないかと考えております。
それから,技術的なアプローチのみならず,4.になりますけれども,その実現に向けた政策のイノベーションということも,今回盛り込んでまいりたいと考えております。各種の政策誘導ニーズなどがここに盛り込まれると考えております。
それから,2ページ目に,簡単にこれまでの検討会で検討された項目について記載しております。8月の第1回検討会,9月の第2回検討会については,ごらんのとおりの内容で御議論をしていただきました。
それから,3ページ目に検討会の委員の名簿を載せております。座長として,委員会の委員でもあります山地委員に座っていただいて,以下,専門家の方々に委員になっていただいているところでございます。
最後に,4ページ目ですけれども,今後の予定です。8月,9月に検討会を行い,その後,第2回目までの検討の内容を内閣府の第1回環境エネルギータスクフォースに御報告をしております。この戦略については,そのページの一番下の行にありますように,CSTIの本会議の決定という形で進めているということもございまして,環境エネルギータスクフォースのチャンネルを通じて御報告をさせていただいたということでございます。
今後は,今月の29日に第3回の検討会が予定されております。ここで取りまとめの提示をさせていただいて,更に御議論をしていただくということ。それから,11月の上旬には第2回の環境エネルギータスクフォースが開催され,更に議論が必要であれば,第4回の検討会ということが11月の中旬頃に予備日として設定されております。その後,CSTI本会議の決定に向けて手続を進めていくというもくろみで現在動いております。
以上でございます。
【髙村主査】 ありがとうございました。それでは,ただいま事務局から頂きました御説明,御報告について,御質問,御意見などございましたら,ネームプレートを立てておっしゃっていただければと思いますが,いかがでしょうか。
では,堅達委員,その後,清水委員,お願いいたします。
【堅達委員】 御説明ありがとうございました。CO2削減コストを新たに提示とか,社会実装可能なコストということで,何度も重要なキーワードとしてコストが出てきていますが,実際どのような考え方というか,議論がされているのか。
といいますのは,この台風19号の被害とかを,今,日本列島全体で突きつけられている。その前の台風15号もそうですけれども,もちろん,目先で研究にもお金が掛かるであろうし,実装にもお金が掛かるであろうが,気候変動によって起きる被害がこれほどまでにすさまじいという観点,それはカウントできないぐらいです。
多分まだ,皆さん,カウントできていないと思いますが,新幹線車両が水没して,物流が全部止まって,農業も,全部壊滅的で,廃棄物がこんなにたまって,停電してという,この全ての経済的なコストをしっかりとわきまえた上で,それに見合う研究のコスト,コストと言っているお金がどれくらいの相場観のものなのかというのが気になりまして,教えていただければと思います。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,御発言を幾つかまとめて,事務局の方にお返ししたいと思います。
それでは,清水委員,お願いできますでしょうか。
【清水委員】 三菱ケミカルの清水でございます。実現に向けた革新的非連続的技術の重点化というところで,世界全体でCO2等の削減ポテンシャルが高いという観点から,例えば次世代太陽光発電であるとか,水素であるとか,いろいろな技術が挙げられていますが,CO2削減ポテンシャルが高いということだけではなくて,CO2削減ニーズが高いといった観点から,必要なイノベーションというのを抽出すべきではないかと考えます。
1つ,具体的な例を申し上げますと,現在,化学産業で非常に大きな問題になっている廃プラスチックの処理問題が挙げられます。御承知のとおり,日本の場合にはサーマルリサイクルという形で,焼却によって熱回収している部分が大きいわけです。個人的には,これは正しい施策だと思いますが,世界的に見るとCO2排出の観点から日本のサーマルリサイクルが批判されているという現状があります。
私としては,サーマルリサイクルの社会的,環境的意義というのを世界に対してきちんと説明したり,発信していかなければいけないと思います。それと同時に,確かにCO2を排出しているのは間違いない事実ですので,それを削減する,もちろんコストが重要なポイントになりますが,そういった社会実装可能な,コストを満足する形でのサーマルリサイクルが必要だと考えます.それが,焼却後のCO2回収なのか,あるいは,CO2排出そのものを削減する技術であるのか,いろいろな可能性が考えられると思いますが,そういったところを策定するニーズというのは,日本のこれからを考えると,非常に高いのではないかと考えます。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,続きまして,江守主査代理,その後,本郷委員,それから佐々木委員にお願いしたいと思います。
【江守主査代理】 ありがとうございます。イノベーションに関して,いつもながら,分からないなりに問題意識を3つ申し上げたいと思います。1つは,イノベーションのやり方を我々が本当に分かっているのかどうかというところが,僕はいまだにぴんと来ていなくて,例えばこの資料の2ページ目の第2回検討会というところにイノベーションの仕組みについてと書いてあって,技術シーズの発掘・創出,官民リソースの効果的な投入,社会実装につなげる仕掛けと書いてあって,こうやると,イノベーションが起きるというやり方がよく分かっている印象を受けますが,本当にそうなのかという感じがしています。
これは耳学問ですが,海外の様子とかを伝え聞くところによると,スタートアップがとてもたくさんいて,いろいろなアイデアを試して,うまくいかない可能性をどんどん潰していって,その中からうまくいったものは生き残ってきて,更に次の段階があってという形で進んでいくものだとよく聞くことがあります。つまり,たくさんのスタートアップだとか,アクセラレーターだとか,そういうプレーヤーがいて起こるものだというイメージがあります。このイメージにこの話が合っているのかどうかという疑問があります。
自分なりに調べてみたところ,これは官邸の構造改革徹底推進会合というところのイノベーションエコシステム構築の取組という資料がネット上で見つかったのですが,この中では,アメリカとか中国のベンチャーエコシステムというのは物すごく発達してきていて,日本は遅れが顕在化している,日本はポテンシャルがあるのだけれども,十分に生かすことができていないことが課題であるという認識が述べられています。
なので,日本で日本独自のイノベーションエコシステムをつくっていくことがこれから課題だと,ここには書かれているのですが,そういう問題意識の下で,この革新的環境イノベーション戦略というのがどう位置付けられているのかというのが,非常に気になりました。それが1つ目です。
2つ目は,いわゆる破壊的イノベーションというのが,この戦略によってどれぐらい促進されるのかということは気になります。現在の既存の大企業のビジネスのやり方を覆してしまうようなイノベーションということを,これは躊躇(ちゅうちょ)せずに推進することができるのかどうか。もちろん,日本の企業が有利になるようなことを考えていくということは非常に大事だと思いますが,それは,これからの新しいビジネスに向けて,今の企業が大きくトランスフォームしていくような方向を促すような形でイノベーションが起こらなくてはいけないのではないかと思っています。今の大企業はこれをやると困るだろうということを手かげんするような戦略になってはいけないのではないかと,個人的には思っています。それが2つ目です。
3つ目は,これをやって日本の企業はもうかるのかどうかというところがいつも気になっています。例えば,次世代太陽光とか,水素の技術とかを,日本が最初にイノベーションでうまくいったとして,低コスト化もある程度実現して実用化したとして,ところが,それを更に安く作って大量生産するところは結局ほかの国が担うようになってしまって,いつの間にかそれが日本では競争力を失うということが繰り返し起きるのか。その点を,このイノベーション戦略としてどのように考えているのかというのが,もう一つは気になっております。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,本郷委員,その後,佐々木委員,お願いいたします。
【本郷委員】 私は2つあります。1つは,この世界全体の削減ターゲットの中でCO2削減コストというのがあるので,そこで気になったのですが,2050年であれば,社会,経済,産業構造も随分変わっていくわけですので,どの程度変わるか,どういう形で変わるかということによって,随分周辺環境が変わっているのではないかと思います。
イノベーションというところで一つ一つ伸ばしていくことは大事ですが,そもそも社会全体が変わってしまったときに,どのくらいのエネルギーが必要なのか,こういった点についても見ておく必要があると思いました。
2つ目は,いろいろな技術のイノベーション,それが競争し合って,そして結果的に一番価格競争力,あるいは社会的にアクセプタンスの高いものが実現されるわけでしょうけれども,技術相互の関係というのをよく見た方がいい場合があると思います。例えばバイオマス利用,バイオマス利用のプラスチック,燃料のバイオマス利用,いろいろな利用の仕方があるわけですが,それぞれの技術イノベーションで,バイオマスがあればということですと,最終的にはバイオマスストックの供給量ボトルネックというのが出てしまうので,いろいろな技術を相互にどういうふうに関係し合っているのか,そこの点についても留意された方がいいのではないかと思いました。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,佐々木委員,お願いいたします。その後,奥委員,お願いいたします。
【佐々木委員】 御説明,どうもありがとうございました。私から2つございます。1つは,3のところで,実現に向けた革新的・非連続技術の重点化ということで,鋭意検討をしていただいているということで,非常に有難く思います。これは,江守委員のコメントにも関わりますが,ここで例として挙げられている中で,太陽光発電,半導体,蓄電池,これは全て日本がリードしていて,でも,最後,量産してビジネスにするところは,結局近くの国に持って行かれているということなので,それをしないように,水素の方は頑張りたいと思っています。
国全体の政策の中で,技術開発で終わりではなくて,量産,そしてビジネスにきっちりつなげるというところまで考えていただきたいというのが,1つ目のコメントです。
それから,2つ目は,個人的にはこの4の実現に向けた政策イノベーションというのはすごく大事ではないかと思っております。国の方も,エネルギーの分野は,政府を挙げてやっていただいているというのは非常に有難いことだと思いますが,やはり国の研究開発シーンとか,国の導入補助金だけですと,なかなか本格的な普及ビジネスにはつながっていなくて,国の支援が消えたら,それでがくんと下がってしまうというのが,エネルギー分野でも起こってきたことだと思います。
恐らく,国のお金だけでやろうとすると,限界があるというところもありますので,是非ここにも少しは書いておりますけれども,民間からの研究開発費を引き出すというところとか,それに対しては,例えば民間からの共同研究費については,国がマッチング支援をするようなスキームだったりとか,あと研究開発優遇税制というのもございますので,そういうものの拡充とかを是非御検討いただきたいと思います。
あと,ESG投資というところが,この前のICEFなんかでもかなり盛り上がってきたというところがありますので,そういうような金融の力もうまくお借りして,金融業界にもインセンティブがあって,民間にもインセンティブがあって,そして,技術開発が進んで,ちゃんと社会に量産,そしてビジネスで本格普及がされる,そういうところも含めた形の政策イノベーションを是非御検討いただきたいと思いますし,そういうところで進行状況,何かありましたら教えていただければと思いました。私からは以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,奥委員,お願いいたします。
【奥委員】 私もこの社会実装を可能なコストを実現するイノベーションというのが,いかなるものをイメージされているのか,そこのところについてお尋ねしたいと思います。環境法政策に係る基本原則の1つとして挙げられるものに,BATNEEC原則というものがございます。Best Available Techniques not Entailing Excessive Cost,BATNEECと略しますが,ここではイノベーションが多分テクノロジーに換わって入るのかと思いますが,そういったいわゆるBATNEEC原則のようなものを基本理念としてまず打ち立てた上で,この戦略を練っていこうとされているのか,そこのところをお伺いしたいと思います。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。ほかに御質問,御意見,ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。今の委員から御意見があったところと重複しますが,私は3点,御質問というか,御意見を申し上げたいと思っております。
1つは,これ,清水委員からの御指摘でもあり,いわゆる山地委員,あるいは佐々木委員も御参加のポテ研といっていたところでも1つの重点的な領域になっていたと思いますけれども,長期戦略の中でも,マテリアルの脱炭素化というか,石油,化石燃料を基礎としたマテリアルからの転換をどうやって図るかというのは,1つの重要な領域であるように思っております。これがこの中でどういう議論になっているのかというのは,1つ,お伺いしたい点であります。
それから,2つ目は,これは質問というよりもコメント,意見であります。江守委員から御指摘があった,我々が望むイノベーションをどう起こしていくかという,イノベーション政策そのものが非常に重要な焦点になっていると思っております。これは,この戦略の検討会でということではないかもしれませんが,例えば先ほど御紹介があったJSTのハイリスク,ハイインパクトといったようなプログラムも関係してくるかと思いますが,どういうふうにイノベーションを起こしていくかというところは,例えば文科省のところでお引き取りいただいて,より具体的な研究支援,技術開発支援の在り方というのを検討いただいてもいいかとは思っております。
3点目は,社会実装につなげる仕掛けと検討中の取りまとめ案にございますけれども,ここは非常に大事だという御指摘,江守委員,あるいは佐々木委員等々からも頂いたところかと思います。ここは長期戦略の懇談会でも非常に重要だと,経済界からも御指摘があった点で,開発された技術をどうやって社会に実装していくかという政策のイノベーションこそが必要であると。恐らくそれを引き取ってのこの取りまとめ案だと思いますけれども,そういう意味では従来のイノベーションにとどまらない議論になるということを期待しております。
この委員会,山地委員もいらっしゃいますので,直接インプットをする機会が事務局以外からもございますけれども,ほかに何か御意見,御質問,ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,事務局からもしお答えいただける点がございましたら,お願いできればと思います。
【横地環境エネルギー課長】 ありがとうございました。幅広くコメント,御質問を含めて頂きましたので,答えられる範囲でお答えしたいと思います。多岐にわたる御質問を頂いたので,1ページ目の検討中の取りまとめ案の骨組みに少し従ってコメントをお返しさせていただければと思います。
まず多く頂いたコストの観点です。これについては,社会的なコストという観点もさることながら,技術的にどれだけコストが掛かるかというような,コストについてもそういう切り口で今考えております。例えば水素を導入するためには,水素は幾らにすればいいのかというような切り口で,コストを現在考えているということです。
これについては,今回,いろいろな分野を検討対象にしているわけです。議論を見ていると,やはり比較的精緻な議論ができる分野と,精緻な議論にはなかなか行き着きにくい分野,こういうのがございます。また,社会的な変化が今後大きく見込まれる分野とか,そこら辺を見込むのもなかなか難しい分野,こういったものが全て包括的に入っているような状況ですので,分野ごとにまちまちでございます。この点については,まだ今後,もう一回議論がございますので,その中で御議論いただくのかと思っております。
それから,多くの方々からコメントを頂きました,革新的非連続技術の重点化の部分ですが,ここについても,御存じのとおり,ここにも例示でしか書かれていませんが,様々な技術的なアプローチが今後あり得る中で,どのような取組がより効率的にというか,効果的な温室効果ガスの削減につながるのかということが議論されています。
いろいろな分野の方々からのコメントを現在頂いているところですので,必ずしも1つの方向性という形に,今のところはまとまっていないと思いますが,ここについても様々な観点から御議論いただきまして,その中には技術的に導入しやすいものを推し進めるべきだとか,それから,さっき清水委員の方からもありましたけれども,社会的なニーズが高い,とりわけCO2の排出量が多い分野をどうするかといった議論も頂くなどといった形で議論が進んでおります。
また,江守主査代理からもコメントがありましたけれども,それをどうやってしっかりと使っていけるようにするのか,生み出していくのかというところ,これもなかなか難しいところがあって,どういうようなやり方が唯一解になるのかというのは,必ずしもここでは出てきていないと,私としては理解をしています。
ただ,やっていかなければならないという大きな目的は,皆さん,同じ方向を向いているので,その中で分野,あるいは技術レベルに応じたアプローチを検討していきます。
それから,実現に向けた政策イノベーションについても非常に重要だというコメントを幾つか頂きました。全くおっしゃるとおりですが,今の状況でどういうことができるのか,あるいは社会的な要請にどこまで速やかに応えていけるのかというところについて,今議論をされているところだと思っております。
どういう議論になっているのかという具体的な議論については,個別分野ごとにやはりまちまちでございます。この点について,概略するとこうですとなかなか言い難いところもありますので,そこは御容赦いただければと思います。以上でございます。
【髙村主査】 ありがとうございます。まだ議論進行中の検討会の状況だと思いますけれども,ほかに何かございますでしょうか。
ありがとうございます,竹ケ原委員,お願いいたします。
【竹ケ原委員】 ありがとうございました。今のお話で,実現に向けた革新的非連続技術の重点化,佐々木委員からESGというお話もありましたが,ヨーロッパで今サステナブルファイナンスの議論が進んでいます。結局,公的資金だけでは脱炭素社会への移行には不足するので,民間の資金を優先的にそこに流し込んでいこうということです。
ただ,そうすると,何がグリーンかが判然としないと,お金が流れない,あるいは誤った方向に流れる懸念があるので,悉皆(しっかい)的にカタログを作ってしまって,これがサステナブルだと機械的に判断できるようにする。このカタログ,すなわちタクソノミーが適応と緩和について発表されており,これが果たして妥当かという議論が日本の産業界も含めて議論されています。
先ほど三菱化学の方からもあったように,例えばサーマルリサイクルの技術とか,こういったものが,ヨーロッパのタクソノミー的にどうなっているかというと,否定的になります。下手すると,天然ガスですら排除されかねないことになっています。ここで日本が持っている技術のポテンシャルを棚卸ししたときに,民間資金を流すべき脱炭素技術とは何かを考える,恐らくヨーロッパとは少し違う切り口もあるような気がしています。今,各省でも日本版のタクソノミーを作るべきではないかという議論もあると聞いています。
もしかしたら,この実現に向けた革新的な,あるいは非連続的な技術として何が望ましいのか。日本版のタクソノミーとしてここに投資を流していくべきだという旗を立てるという意味で,この手法に近いものを検討いただくというのがあるかと,そんな気がいたしました。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。恐らく今頂きました議論は,次の議題3のところにも非常に密接に関わっていると思っておりますので,この議題2について,ここで議論を終えますけれども,引き続き,今後の環境エネルギー科学技術分野における研究開発の在り方についてというところで,踏み込んでまた御議論いただければと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは,議題3に移ってまいります。既に議題2で前哨戦(ぜんしょうせん)ではないですが,議論いただいた感がございますけれども,議題3は,今後の環境エネルギー科学技術分野における研究開発の在り方についてでございます。前回,骨子を示したものを,今度は素案として事務局から示していただいております。
まず,事務局からその内容について御説明を頂いた後に,御議論いただこうと思います。それでは,お願いいたします。
【清水課長補佐】 まず,この取りまとめ案の今後の流れを,先に簡単に御説明させていただきます。資料3-3にありますが,第6期の科学技術基本計画への打ち出しに向けた議論を11月の総合政策特別委員会で行う予定でございます。それに向けて,本委員会での議論をこちらに打ち込むということで,今回お出しした素案に御議論を頂いた内容を含めまして,その形でまずは10月中に取りまとめ案を作成しまして,打ち出したいと考えております。
なお,今回の取りまとめ案,これでセットというわけではございませんので,来年1月以降に向けて,更にブラッシュアップを続けていく予定でございます。
それでは,先ほど主査からもありましたけれども,前回,骨子案を基に様々に御議論いただいた,そこでの御指摘と,これまでの委員会での御議論を踏まえまして,環境エネルギー分野の研究開発の今後の方向性として素案をまとめさせていただいておりますので,御説明をさせていただきます。
1枚紙の方をごらんください。構造として大きく3つのパーツに分かれております。1つは,環境エネルギー分野の研究開発を取り巻く状態の変化ということです。この分野の課題ですとか,国内外の動き,それから課題解決のための科学技術強化の観点から取り組んでいく決意などを述べております。
次に2.についてですが,文科省が推進していくべき研究開発課題ということで,ここではどういう研究開発を進めていくべきか。具体的には,何をやっていくべきかといったようなところを書いております。また,先ほどの御議論にもありましたけれども,基礎研究に係る基本的な投資方針,基本的な考え方というところにも触れております。
最後に3.のところですが,研究開発の推進に当たっての重要事項を6つの観点から書いております。
それでは,本文の方に移っていただけたらと思います。まず大きな1.の1段落目のところ,環境エネルギー分野のコアコンセプトというのは,やはりSDGsではということで,SDGsを紹介しながら,この考え方が行政のみならず産業界,金融界にも広がりを見せていることに冒頭で触れております。
次に,2段落目以降につきましては,特に国際的に関心の高い気候変動問題について書いています。まずは,国際的動きということで,2015年のパリ協定における目標設定の話から始めまして,近年の国際的趨勢(すうせい)というのが2050年におけるゼロエミッションであるということを書いております。
また,これを受けた日本国内での動きとしましては,本年6月にパリ協定長期戦略を定め,ここでは今世紀後半のできるだけ早期のゼロエミッションを達成という目標を新たに掲げたということ,それから,環境と成長の好循環というコンセプトを掲げたということに非常に意義があると考えております。本年は,特にG20の議長国ということでもありますので,先ほどの議題においても御紹介しましたけれども,その目標具体化のための革新的環境イノベーション戦略を検討しているところでございます。
また,適応につきましては,気候変動適応法が成立いたしまして,国や自治体の適応策策定等の責任が明記されたところでございます。
続きまして,2ページ目の後段からですけれども,気候変動以外にも生物多様性や環境保全など,多様で複雑に絡み合った問題があり,そういったものに我々は向き合わなくてはいけないということに触れております。
そして,3ページ目ですけれども,課題解決のために,何をしていくべきかというところですが,簡単に2つ挙げております。1つは,全ての気候変動政策の基盤となるような科学的知見の創出,そしてもう一つが,基礎研究の推進によるイノベーションの創出に取り組むことを明記しております。特にイノベーションの創出につきましては,基礎研究を通じて生み出したシーズをいかに社会実装に結びつけるかということが,非常に重要な観点であるとしています。
そのためには,先ほどコストの話もありましたが,コストも含めた経済性を補完するような政策作りということが非常に重要であること,あわせて,環境問題に係る倫理観の高まりや,ESG投資の広まりといったような機運がございますので,これが後押ししていくだろうということを述べております。
また,日本として日本のトップレベルの科学技術を生かして,政府一体となって機動的に対応して,世界を牽引(けんいん)していくことの必要性を述べております。
続きまして,大きな2のところです。具体的に何をやっていくべきか,国としてどのように支援,投資をしていくべきかという部分です。項目立てとしては大きく気候変動とそれ以外に分けております。さらに,気候変動につきましては,気候変動予測情報等の基盤的情報の創出,そして低炭素技術開発の2つを挙げています。
まず1つ目の基盤的情報の創出につきましては,地球の観測,予測,影響評価の情報創出と,また情報発信を通じて国や自治体の適応策策定,そして国際的取組への貢献を目的としております。さらに,特に近年は適応法が定められたことに基づく適応計画の策定義務,それからESG投資の普及に伴い,企業が環境に配慮した戦略を策定していくことの必要性,それからパリ協定に基づくグローバルストックテイクの仕組みの指導に伴いまして,ニーズが更に高まっているということにも触れております。
続いて4ページの後半の(2)ですが,低炭素技術に関する基礎研究の推進ということで,先ほどのイノベーションの話にもございましたが,基礎研究の推進に当たっては,どのシーズがイノベーションにつながるかということが分からないという観点が非常に重要で,幅広く投資をしていく必要性に触れております。
また,次世代半導体の開発なども含めまして,ゴールからバックキャストした,特に重点分野についてもしっかりと投資をしていく必要があるということを述べておりまして,その重点分野をどうするかというところにつきましては,革新的環境イノベーション戦略等を踏まえて今後検討するということにしております。
さらに,5ページ中段になりますけれども,環境保全等に向けた多角的な研究開発の推進ということで,気候変動のみならず,プラスチック等の環境問題にも関連しまして,多角的アプローチを推進していく必要性を述べております。
さらに,5ページ目の最後の方,大きな3というところで,研究開発の推進に当たっての重要事項や,留意すべき事項ということを6つの観点から挙げております。まず6ページ目ですけれども,(1)として,生み出した研究成果,技術を社会に適合させていくには,社会的課題の分析や,社会システムへの適合性といったような観点で,人文社会科学等の知が必要になるということから,分野融合の必要性について述べております。
また,それと関連して,(1)の中では,LCAの導入,つまり技術導入後のインパクト,それから,社会実装の実現可能性等に係る評価の仕組みが重要であるという観点から,LCAを導入して,また,その評価結果の研究開発段階へのフィードバック等の必要性にも触れております。
続きまして,(2)につきまして,文科省における基礎・基盤研究というものが,やはり関係省庁における施策と結びついて,初めて社会に結びつくということも非常に多くあるということから,省庁間連携の重要性を述べております。また,産官学連携ということで,研究開発の段階から企業等と連携しながら,例えば拠点を作るなどをしながら,ニーズを踏まえた研究開発を進めていくことの必要性についても触れております。
続きまして,7ページのESG投資のところです。近年のESG投資の広がりを踏まえまして,大学等の研究機関への投資を促すことにより,大学が持つ研究成果の活用,それから基礎研究の振興というものを促すべく,文科省としても何かESGに係る分野に働き掛けができないかということで考えております。
(4)の研究開発人材の育成のところです。研究者,コミュニティーの縮小をはじめとし,環境エネルギー分野の科学技術の規模の縮小というものが非常に懸念されていく中,長期的視点からの人材育成の経済的な取組が望まれるとしております。その際に,基礎から実用化までの研究プロジェクトによるOJTですとか,あるいは国際的シンポジウムの実施を通じた,若手研究者等の幅広い知見の獲得を促すということも考えられます。
また,研究開発人材以外にも,専門的な研究成果を理解しまして,あるいは研究成果を具体的なニーズに落とし込むことができるような環境人材育成というものも,特に地方自治体等においては非常に重要になってきます。
さらには,そうした人材を育成するための前段階として,学際領域にも対応できるような学校教育ですとか,社会人教育の必要性にも触れております。
続きまして,(5)です。先ほど概算要求の説明でも述べましたけれども,特に基盤的技術,基盤的情報というのが,社会で活用してもらうということで初めて実りを得るというところもございますので,特に予測情報の精緻化,それから時間,空間分解能の高度化等の研究開発をしっかり進めていきたいとしております。
それから,利用者側のリテラシー向上,またデータを継続的に運用していくための人材育成,モデルとなる自治体の好事例の横展開,また効果的な情報発信などの点にも配慮しながら,ニーズを踏まえた技術開発というものを進めていきたい旨を記載しております。
続きまして,(6)ですけれども,国際的な取組の推進ということで,非常に日本の研究成果というのは国際的な信頼も高いわけですけれども,引き続きIPCCやGEOなどへの国際貢献を行っていくとともに,各種会議等への参加を通じまして,その成果を国内外で発信していく努力をしていきたいと考えております。
また,フィーチャー・アースや海外とのシンポジウムの共同開催等を通じた国際的な研究のネットワークも広げていきたいと考えております。説明としては以上になります。
【髙村主査】 どうもありがとうございました。それては,ただいま御説明いただきました取りまとめの案について,御意見,あるいは御質問を頂こうと思います。この議題が本日の一番大きな議題ということになりますので,忌憚(きたん)のない御意見を頂ければと思います。御質問,御意見のある委員は,ネームプレートを立ててお知らせいただければと思います。
本郷委員,よろしいでしょうか。ありがとうございます。お願いいたします。
【本郷委員】 御説明ありがとうございました。2つあります。1つは,6ページのところにある人文科学との協力,この方向性としては非常にリーズナブルではないかと,僣越(せんえつ)ながら思います。ただ,1つ,気になるのは,倫理が随分強調されていることです。倫理の前に,もう一つ重要なことがあるのではないかと思います。それは,多分私の理解だとやはり経済学で,経済的なメカニズムがきちっと整っていれば,企業も投資するし,その需要を見て研究開発者もいろいろできるのではないかと思います。
ということで,1つ,大事なところとして経済学,あるいはツールとして市場,ここを考えていただきたいというところがありました。基本的には,私の理解は環境問題というのは外部不経済から発生していると考えております。であれば,大事な他省庁との連携というところであれば,外部不経済を取り除くという形でのきちっとした政策を導入するということが大事です。
それが,恐らくESG投資,ESG投資だけだと収益が上がらないので,やはり限界があると思うんですが,きちっとした政策が将来見込まれるのであれば,金融の方も当然普通のビジネスとして取り込めますので,政策が重要だというところを強調させていただきたいと思います。
もう一つ,政策イノベーションというところ。政策を言えば,先ほどもありましたけれども,当然政策イノベーション,そこにも関係しますけれども,いわゆる補助金漬けというのは余りよろしくないと,一般的には思います。投資する側,技術を使う側の企業にたまたまアドバイスする立場で仕事をすることが多いのですが,投資側の視点からすると,補助金というのは有難いのだけれども,それだけでは困るというのもあります。
というのは,補助金は制度が変わればなくなりますので,不確実です。そういう意味では,余り補助金に頼らない,将来補助金がフェードアウトしていくということを示すような政策,そういうのを出していただいた方がいいのではないかと思います。
2つ目は,国際貢献ですが,国際的な関係,人材育成です。日本国内でも人材育成が十分にできる環境が整うということが前提ですが,海外からの研究者,技術者,そういった方々を日本に引き込む,そういうことを忘れてはいけないのではないか,他国の力も利用するという方向性も少し入れていただいではどうかと思います。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,竹ケ原委員,その後,石川委員,奥委員,石川委員,お願いいたします。では,竹ケ原委員から,お願いいたします。
【竹ケ原委員】 先ほどの続きみたいな話になってしまいますが,金融のところに絞ってお話をしたいと思います。この頂いた原稿,全体的には非常に納得できるのですが,ESG投資を研究開発分野に振り向けるというのは少し厳しいところがあります。ごらんのとおり,ESG投資というのは長期投資と考えていただいて結構です。そういう意味で2050年を展望した場合,非常に不確実な状況で,仮に4度になっても,1.5度になっても,しっかりとその企業が存続しているかを見定めようとして,投資家が企業のいろいろな非財務的な側面に着目しているという話になります。
そうすると,企業の方も,2050年を明確に展望することはできないので,基本的にはシナリオ分析という形で,要するに幅を持ってリスクを,あるいはオポチュニティーを展望して,計画を練っています。4度になったら4度なりの生き残り方があって,1.5度なら1.5度なりの生き残り方があって,そのための手は打っていますということを金融市場にメッセージを出して,それをしっかりと読み解いてお金を,明確な戦略を持っているところには付けていこうという話になります。
そうなると,やはりイノベーションをどう使っていくかというのはすごく重要な切り口になってきます。ここで正に述べられているような,非連続的なイノベーションの技術を用いてビジネスモデルを書いている会社もあって,そこは非連続なだけになかなか先を展望できない。その技術の蓋然性がどのぐらいあるのかというところを,金融界としては知りたいところでありますから,先ほど来出ているように,政策サイドからこれについては有望視しているというメッセージはすごく有効だと思います。
逆に,イノベーションの担い手が誰かということを考えると,先ほどの江守委員の御指摘にもなると思いますが,レポートで言うと5ページで,幅広く賢く投資することが重要だという記載がありますが,これは主語がよく分からなくて,この幅広く,賢く投資するのが大企業なのか,先ほどの江守委員がおっしゃったように,もっとエコシステムで考えたら,スタートアップも含めて,いろいろな人たちがそういう投資ができるような環境になっているかどうか。多分そこで大分変わってくると思います。もしエコシステムができて,ベンチャーがどんどんいろいろな提案ができて,彼らがそれを使って成長していけるような絵が描けているのであれば,結局投資家としては投資対象の大企業を見るときに,そういったエコシステムとしっかりとアクセスできているか,要はその会社のオープンイノベーションの在り方ですとか,実際にベンチャーと組んだ後の刈り取り方。単にベンチャーの技術を吸い上げてしまって,ベンチャーを腐らせてしまうようなアプローチなのか,いわゆるM&Aを使って,何もIPOだけが出口ではありませんから,むしろ企業買収という形で有望な技術をしっかりと吸い上げるような絵を持っているのかどうか。多分,その辺がこういった非連続なイノベーションを使って,気候変動リスクを生き抜いていけるかどうかを判断する間口になると思います。
そう考えると,企業行動は投資家の対応で変わります。そのために,気候変動という間口で見ると,イノベーションをどう使っていくかはクリティカルなテーマであり,これを活用するためにどういう戦略を持っているかが問われます。基礎研究の成果も含めて,イノベーションの成果にアクセスする幅の広さを持っているかを,企業としては見せていかなければいけない。企業がそういうふうに変われば,恐らくベンチャーであれ,国から出されるイノベーションの期待値であれ,多分産業界の受けとめ方は変わってくると思います。ですので,ESGの使い方はそういうふうに位置付けていただいた方が多分よくて,ESG投資がいきなり大学,あるいは基礎研究の世界に流れ込んでいくというのは,少し難しいかという気がします。
このあたり,クッションを置いた形で検討をいただけると有難いと思いました。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,石川委員,その後,堅達委員,お願いいたします。
【石川委員】 はい。私の方からは,特に気候変動の情報をつくるところ,使っていくところに関してのコメントをさせていただきたいと思います。ここについても,情報発信など,情報を作って整備する,発信するというところは結構強調されているとは思いますが,その中で1つ抜けていると思うキーワードは,データサイエンスというキーワードで,ここに関しても科学というのは重要だということを,是非入れていただきたいと思います。
この中では,DIASと関連したところでアプリケーション開発とか,情報発信というのは非常に重要だというのは強調されていて,これはこれで必ず必要なことですが,そのためのサイエンスというのは必要になってきます。これまでも,データサイエンスという切り口では余り表には出てこなかったのですが,皆さん,ずっとやってこられています。
ですが,気候,環境分野の方々,データサイエンスに関する成果を宣伝するのは余り得意ではないようで,非常に先進的なことをやっているにもかかわらず,余り注目されていなかったのではないかと思います。そこで,ここの中でもキーワードが抜けているのではないかと感じております。
先ほど本郷委員からもありましたし,竹ケ原委員からもありましたけれども,例えば経済との連携というお話になってくると,データサイエンスというのは必要不可欠なキーワードになってくると思いますので,必ずこのキーワードを入れていただくようにお願いしたいと思います。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,堅達委員,その後,佐々木委員,お願いいたします。
【堅達委員】 大変細かいところまでいろいろな知見が示されていて,いい文章になっていると思いますが,唯一欠けていると思うのが,これは平時の計画であれば大変すばらしく書けていると思うのですが,ここ最近,気候非常事態という言葉が言われるようになってきて,今やこれは平時ではない,エマージェンシーであり,非常事態であると,それに伴う動員計画というものを,各自治体が自分たちでも考えて動き出すといったような動きに1,000以上の自治体が参画しているわけです。
日本でもようやく長崎県の壱岐市と神奈川県の鎌倉市が,気候非常事態を宣言して動いております。そのことは何を意味しているのかというと,これは基礎研究も含めてもちろん大事ですが,言葉は悪いですが,悠長に2050年までの計画を立てているだけでは人類の命運にとって間に合わないというか,取り返しがつかないリスクがあるということ,その意識が何となくこの計画の中から直接伝わってこないというのが,残念なところです。
といいますのも,私,今,ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム博士,この中にも出てきます,プラネタリー・バウンダリー等の考え方を提唱している学者の先生に取材をしているのですが,彼が提唱している研究,ホットハウス・アース理論というのが,この間クローズアップ現代でも一部紹介させていただいたのですが,これはどういう理論かというと,今までパリ協定で,みんな2度を目標にするということを言ってきたわけで,1.5度というのは飽くまで努力目標だったという認識だったのです。それは2015年の段階ではそのとおりでした。しかし,2018年にホットハウス・アース理論というのが,世界中の正にこの気候変動研究の第一人者のグループから出されたときに分かったのは,2度に到達してしまうと,今後,人類がどれぐらい頑張って研究したり,投資したり,いろいろなCO2削減の対策をとっても,地球自体が自らの自己強化型のフィードバック,ポジティブフィードバックとか,セルフフォースドというような言い方をしますけれども,どんどんグリーンランドの氷床の融解が止まらなくなるとか,北極海の海氷の白い面積が全部失われて,どんどんアルベドがなくなることで次の変化が起きるといったような悪循環,ドミノ倒し的なことが起きるのが,割と目の前に迫っています。
それは2050とか2100ではなくて,結構,早ければ2030,40あたりで来てしまうということが発表されますと,世界の経済界も,御承知のとおりSBT,サイエンス・ベースド・ターゲットとかは1.5度目標で,というふうに,この1年,2年で急速に変わっているわけです。そういう緊迫感とか,スピード感を持って,戦時体制で動員しなければいけないという感じが,全く感じられないというのが私の印象です。
恐らく先ほどのサーマルリサイクルのタクソノミーが認められないということも,もちろん悠長にやっている時代だったら,それはそれで非常に価値の高いことだと思いますが,もはや燃やすことも,本当にリスクになっているという厳密さみたいなものが世界のビジネス界で求められてくると,これはグローバルスタンダードとしてはなかなか認めにくい,そういう世界の動きをもう少し取り込んで,この科学技術分野の研究開発の在り方というところに入れていただければと思います。
実は日本学術会議が,緊急メッセージを9月に出されたのを御存じだと思います。やはり本当に,これが一種の非常事態なのだということを,もう少しだけ書き込んでいただければというのが,私の意見です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,佐々木委員,お願いいたします。
【佐々木委員】 まず,こういう包括的なペーパーを作っていただいたということで,御尽力に心より敬意を表したいと思います。1点だけ強調させていただきたいのは,こういう文書で最近いろいろなところでイノベーションという言葉が出てきます。やはり,私は,ポイントは竹ケ原委員から出ましたように,イノベーションの担い手が誰なのかというのが,いつも不明確だと思います。
第一義的には,大学がそのイノベーションの牽引(けんいん)役を果たすべきだと思いますし,大学で新しい成果を出すように頑張っているのは大学院生です。文書の7ページ目の207行目に出ておりますが,明確に言えることは,工学系専攻を中心に大学院生,特に博士課程の進学者はどんどん減っています。なので,卓越大学院という話も出ていますけれども,本当に微々たるものです。
他方,先々週,グリーンイノベーション関係のイベントがありまして,総理自らお話しされていたのは,今後10年間で30兆円を日本はグリーンイノベーションに投資するというところも明確に打ち出されておりますので,せめて学振の特別研究員の環境エネルギー版あたりが新たにできて,大学院生がコンビニなどでアルバイトしなくても,環境エネルギーの研究に専念できるような,そういう施策というのは,30兆円から比べると本当に微々たるものですが,それこそがイノベーションの牽引(けんいん)につながるのかと思いますので,そこの主語を明確化して,その主語のところにきっちり投資をしていただくということを明確に打ち出していただければと思います。
少し補足ですが,世界では大学に投資するというだけではなくて,大学発のベンチャーを作ったり,ビジネスモデルをどんどん作って,そこに正にESG投資を入れているというところがあります。日本でその受入れ体制ができていないということは,別の課題ですので,そこは大学改革の中で頑張って,竹ケ原委員とかから「大学発ベンチャーで投資したいところがあります」と言っていただけるように,これは大学陣が頑張ることかと思っております。そちらは並行して大学改革の中で進めていただくことかと思っております。
何しろイノベーションの担い手に投資していただくことを明確に打ち出していただければと思いますし,総理の発言も是非引用していただければいいのかと思っております。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,嶋田委員,お願いいたします。
【嶋田委員】 御説明ありがとうございます。なかなか地方自治体の視点でコメントできるところというのは多くはないのですが,適応策について少し話をさせていただきたいと思います。適応策については,昨年度適応法ができて,国立環境研究所の中に国の適応センターができて,様々な情報発信をしていただいているところですが,文科省が適応策の社会実装に今後関わっていかないのかどうかということを,1つお答えいただきたいと思っています。
RECCA,SI-CATという,いわば適応策の社会実装プログラムを10年ほど続けてこられたと思いますが,最初の予算の説明のところでは,来年度以降は似たようなものはないということだと思います。ただ,適応策,もちろん環境省がやるべきだというのは,そのとおりだと思いますが,まだまだ事例というか,知見というのは,現場での成功事例みたいなものは必ずしも多くなくて,必ずしも環境省だけではなくて,文科省も,もちろん,上流の部分をやるというのは当然だと思いますが,下流の部分というか,現場の部分でも,これからも取り組んでいただいてもいいのかと思っています。そこの書き込みというのが可能なのかどうか,あるいは完全に環境省がやるべきだと判断をされているのかというところを,少しお聞かせいただければと思います。
【髙村主査】 ありがとうございます。具体的な御質問かと思います。また後で事務局からお答えいただければと思います。
それでは,江守委員,お願いいたします。
【江守主査代理】 ありがとうございます。4つあります。1つ目は,取り巻く状況のところで,僕も危機感の高まりということを申し上げようかと思ったのですが,堅達委員が,僕が言おうと思っていたよりも随分強い口調でおっしゃっていただいたので,それに付け加える形になります。
2050年,ネットゼロ,世界を目指し始めたということが言及されていることは非常によかったと思います。やはりそれに加えて,堅達委員がホットハウス・アースのことをおっしゃいました。これは,2度で必ずそうなると分かっているわけではなくて,そうなる可能性があるということが指摘されたぐらいの段階だと,僕は理解していますが,それでも,そういう可能性が排除できないのであれば大事であろうと思います。
もう一つは,やはり若者が声を上げ始めたということが非常に大きいと思っています。1.5度なんて,どうせそれは努力目標でしょうと大人が言っていたのが,それでは困ると明確に言い出す人たちが出てきて,それが今大人の世界観を揺さぶっているところなんだと,僕は思っています。ですので,今,先日のニューヨークの気候行動サミットで1段階フェーズが変わったような感じがしているので,この文書はその前から準備されていた文書ですけれども,最近起こった危機感の高まりについてもう少し御言及いただければと思いました。
それから,2つ目は,文科省が推進すべき環境エネルギー科学技術についてです。2の1の(2)というところで,脱炭素社会の実現に向けた研究開発の推進で,水素やCCU等の重点化分野が言及されていますし,それは政治的なリーダーシップの下で推進されているそうなので,それはそれでいいと思いますが,また,なおかつ,文部科学省が推進すべき技術というのは,そういった新しい技術であるというふうに言って構わないのかもしれないですけれども,僕の理解では,エネルギー政策全体からすると,幹にある部分は恐らく再生可能エネルギーと何らかのストレージが非常に安くなっていって,それが大量に導入されて,それで送電網の強化の投資が迅速に行われて,かつ,その需要・供給の制御の技術が確立するというのが,僕は幹ではないかと思っているのですが,間違っていたら御指摘いただきたいと思います。
それに比べて,水素とか,CCUとか,その他の新しい技術というのは,もちろん早期に低コストで確立すれば,非常に大きく貢献するとは思いますが,そういったところが常に出てくることによって,政策全体としては幹の部分に余りスポットが当たらなさ過ぎているのではないかという気が,いつもいたしております。これは,太陽光パネルをいっぱい中国から買っても,日本の製造業は余りもうからないから盛り上がらないかもしれないですけれども,幹の話をもっと何らかの形で意識されるべきではないかと思っています。
今のが2つ目で,3つ目は,イノベーションについてです。これは随分多くの委員が御発言いただいたので,大体いい議論が進んでいるかと思っていますが,やはりイノベーションというのがどういうふうに起こるかというのが,経営学であるとか,政策科学の分野でそういうのを専門的に行われている議論というのがあると思うので,そういう議論としっかりつながった形で我々がイノベーションの話をしているのかというところを,見せていただきたいという感じはいつもしております。
それから,4番目は,分野融合のところで,本郷委員から経済学が大事だというお話があって,僕はそのとおりだと思いますが,割とエネルギーとか,環境とか,科学技術の話に経済学というのは,今まで既にかなり出てきていて,そこの親和性は既に高いというか,議論の蓄積はあるような気がしています。ですので,経済学,もっと書いていただいて全然よろしいのですけれども,ただ,文系と融合しましょうというときに経済学だけが出てくると,功利主義的な価値観の外に出ることができないというか,ある種の限られたスコープの中で話をするということはいつも起きるような気がするので,僕は前の回に倫理とか,そういうことを強調させていただいているという次第で,経済学がもっと出てきてもいいと思います。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,波多野委員,お願いいたします。
【波多野委員】 皆様からすでに貴重な御意見がございましたので,企業におりました経験があり,大学の教員である立場から感じていることを申し上げたいと思います。前回の本委員会の後,ノーベル賞を吉野先生がリチウムイオン電池で受賞されました。吉野先生は,材料やデバイスの技術は日本が優れているが,それを社会に実装するところが弱い,とおっしゃっていました。すなわち独自性の高いコア技術をイノベーションにつなげ,環境エネルギー問題への解決や社会へのインパクトに展開できる仕組み,分野融合,そして人材育成が重要と考えます。
大学では,環境+エネルギー+経済+安心安全 の横断的な研究は重要と認識され始め,東工大では横断的なエネルギーコースができました。しかしさらに融合的な効果,レイヤー間の連携が必要です。そのために,先ほど堅達委員からもございましたように,人材育成にしてももっと危機感を持って早急にやらないと,と考えます。それぞれの技術に対しての見通しは大学院生も持っているのですが,全体を俯瞰(ふかん)的に捉えられるという教育がまだ大学もできていませんし,企業もそのような人を育てていない。すなわち,イノベーションを環境エネルギー問題解決につなげられる人材が不足していると思います。
私は文科省の博士課程リーディングプログラムで,環境エネルギー協創教育院の7年間院長を務め,そのような人材を輩出して参りました。卒業生は,企業や海外の研究機関でも活躍しています。例えば太陽電池の研究をテーマにしている学生に,あなたのゴールは何ですかというと尋ねると,効率を何%上げることですということしか答えられない学生が多かったのですが,そうではなくて,世界的にこう変えていくと目標にできるような人を育成できました。こうした人材を継続的に育てないといけないと感じています。
また,それに加えて,先ほど御意見がありましたように,データが非常に重要になってくると思いますので,特に環境のところではデータが多く蓄積されているのが,エネルギーの研究者はほとんど共有されていないです。いち早くデータの共有化を世界も含めて進めて,喫緊の課題として捉えて,研究開発,研究投資,人材育成を進めていくことが重要だと感じています。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,本藤委員,その後,山地委員,お願いいたします。
【本藤委員】 取りまとめ,御苦労さまでした。ありがとうございました。私の方から3点ほど申し上げたいと思います。1点目は全体的なことです。先ほど来,委員の皆様からご指摘のありました,気候変動対応の緊急性というか,非常事態ということには,全く私も異論ございません。
ただ,もう一つ留意しなければいけないと感じるのが,その緊急性に対応するべく技術開発,それから社会実装していく,となると,その技術開発や社会実装は,急進的に,革新的に進められる可能性がある,したがって,これは,もしかすると社会に大きな副次的な影響を与えるかもしれないということです。
気候変動という大きな課題に対応するということは,つまり非常に大きな技術システムの変革を生み出す,加えて,それは社会システムを大きく変革させる可能性がある。社会にとってトータルでプラスに行くか,マイナスに行くか,分からない。その不確実性というものは,もう少しこの中に書き込んでもよろしいのかと思いました。それが1点目です。
それから,2点目,3点目は,今の1点目に関連して比較的具体的なことです。資料で言いますと6ページ目の「研究開発の推進に当たっての重要事項」という項目に関してです。この項目の(1)番の部分に関して,2点コメントさせていただきます。
まず,最初に書かれている,分野融合の重要性,人文社会科学の知見が必要になるということ,これに異論はございません。では,なぜ必要になるかと考えたときに,あえて端的に申し上げると,2つの理由があるのではないかと思います。1つは,1段落目の最後の方に書かれているように,seeds-orientedから,needs-drivenへということで,つまり得られたシーズをいかに社会実装していくか,ここに人文社会科学の知見が求められる,特に経済学など社会科学系の知見が得られるのではないかと思います。
他方で,先ほど申し上げたように,社会実装した結果,一体何が生じてしまうのか。もしかしたら,社会において非常に大きなことが副次的に起きるかもしれない。それがよく分からない。そこのところをしっかりと我々は考えていかなければいけないだろう。そこに,特に人文科学の知見が求められるだろう、と考えます。余り端的に言ってしまうのはよくないかもしれませんが,私としては,これらの2つをもう少し明確に書き分けてもよろしいのかと思いました。
それから,3点目は,(1)番の2段落目についてです。最初に申し上げたように,大きな社会システムの副次的な影響があり得るとなると,当然,評価の仕組みが必要になってくる。これに関しては,第2段落の1行目に書いてあり,この点に関しても異論なく同意できます。ただ,その方法に関してはやや狭い感じがしました。LCAという言葉を出してくることはよろしいかと思いますが,もしかするとLCAという言葉よりはもう少し広い,例えば技術評価であるとか,テクノロジーアセスメントといった言葉の方がよろしいかと思いました。そこにLCA的な考えを新しく入れ込むという方がよろしいかと思いました。
少し長くなりますが,テクノロジーアセスメント,御存じの方も多いかと思いますが,1970年代に日本でもかなり取り組まれました。科学技術白書にも掲載されてきました。ただ,いつの間か少しずつ廃れていったところがあるかと思います。テクノロジーアセスメントというのは非常に広い概念なので,ここで一概に言うことはできないのですが,1960年代の公害問題の顕在化や,ロケットに代表される宇宙技術など巨大技術の登場によって,やはり技術が社会に与える影響をどう捉えるのかということが非常に議論になり,テクノロジーアセスメントが注目されました。
だから,そのときの議論をいま一度ひもといて,今,現代の文脈に当て直してこの評価の仕組みを考えていくということは,私は非常に重要なのかと思っております。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは山地委員,お願いいたします。
【山地委員】 私からは,個別的,具体的な点を1つと,全般的な点を1つ,2つ言わせていただきます。
個別的な点というのは,DIASです。DIAS,4ページと8ページに出てくるのですけれども,4ページはDIASのメインです。つまり,気候変動対策に資する基盤的情報の創出ですけれども,8ページに出てくるDIASというのは,国際的な取組の推進の中で,DIASで感染警報もあるけれども,降雨・洪水予測データの視覚化でスリランカというのがあります。
DIASは,何回か私,この場でも申し上げていますが,気候変動対策に資する情報ではありますけれども,今回の洪水などに対する防災・減災に極めて現実的な有効性を持っているわけです。そこをもう少し書いてもいいのではないか,これが具体的なところです。このときに,それで気候対策に資するDIASということでやると,今回の洪水被害は気候変動によるのかというと多分異論も出てきます。だから,そこは少し書き方を注意した方がいい。
もう一つの一般的なところというのは,表現というか,言葉です。言葉は大事です。これは特に資料は言葉で書いてあるわけで,だけれども,結局大事なのは行動で結果です。だから,単に言葉のところで余り書いても実際どうするのか。例えば分野融合と,先ほど少し出ましたけれども,何度も言われていますが,そんな簡単なことではないわけです。書くなら,もう少し具体的なことを書いた方がいい。
それから,先ほども少しEthicsとかEmpathyと出てきました。これは,本当はとても扱いが難しい領域ではないですか。例えば道徳だとか感情という言葉でもし置き換えたとしたら,どうやってやっていくのですか。道徳なんて,文科省は多分取り上げるのが嫌だと思います。だけれども,Ethicsと言ったら,何となく取り上げやすくなるのか。そんなことはないでしょう。やはり具体的なアクションに結びつけようとしたら,言葉を少し精査してほしいというのが全般的なところです。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。
2巡目を頂こうという趣旨でもございますので,もし追加で御発言,御質問がありましたら,頂ければと思います。若干時間稼ぎで私の意見を申し上げたいと思います。もし,ほかに追加でございましたら,是非その後お願いできればと思います。
これまでの議論を踏まえて,事務局の方で苦労して取りまとめていただいてと思っております。私の方からは,1点,これは実は今山地委員がおっしゃった点に非常に近いのですが,前回,気候変動予測,あるいは気候変動の影響リスクの予測評価,そこから創出される情報というのが,今の脱炭素化ですとか,あるいは気候変動問題,様々な社会の変化の中で,社会的価値を増しているということを申し上げました。これは,今回,取りまとめ案の中にいろいろな形でうまく反映していただいていると思います。
もう一つ是非書いていただきたいと思いましたのが,先ほど山地委員から指摘があった点でもあります。何かの委員から,気候変動が一因となっているような自然災害,あるいは対処の緊急性の御指摘があったかと思いますけれども,特にやはりこの間の気象起因の自然災害への対応という意味でも,これは政策形成においてもそうですし,直近の国民の生活を守るという点でも非常に重要な価値を持ち,更らに増しているということは書いていただくといいのではないかと思いました。
2つ目と3つ目は,実は取りまとめの中にもそうなのですが,むしろ上の総合政策特別委員会のところに是非取りまとめの中から反映をしていただきたいと思っている点が2つございます。1つは,取りまとめの中には書いてありますが,今起きている世界的なイノベーションというのがセクターをまたがって起きていることです。
これは,例えば先ほどの脱炭素の文脈でも,当然,御存じのとおりエネルギーとモビリティー,あるいはエネルギーとデータ,ICT技術,それから,マテリアルの話もそういった側面があるかと思いますけれども,更に本郷委員からも御指摘があったように,気候変動だけでなくて,生物資源ですとか,バイオマス資源といったような,そうした問題間の相互連関というのもあるかと思います。
これは,取りまとめの中にも書かれていると思いますが,特に大局的なところで総合政策特別委員会の取りまとめの中で,そうしたイノベーションが,従来文科省が研究開発分野で区切ってきた部門を超えて起きているということは,指摘をした方がいいのではないかと思っております。といいますのは,それぞれの委員会で研究開発課題を設定しているのですけれども,そのやり方でいいのかどうかという,そういう問題提起でもあると思います。
2つ目は,総合政策特別委員会の今回の素案のところを見ていただいて,これは石川委員の御指摘にも関わってくるのですが,この環境エネルギー科学技術分野で作ってきたデータというのが,やはり非常に意味がある。社会的にも意味があると思いますし,そこの中で扱われている手法,あるいはサイエンスというものの価値というのの御指摘が石川委員からあったと思いますが,同時に,データサイエンスはfor whatというか,何のためかという,そこがもう一つ問わなければいけないように思っています。
今日お配りいただいた資料の中で,社会的課題に応えるということがポンチ絵の中に描かれているのですけれども,そこにもう少しデータサイエンスを何のために日本は,特にどの分野とまで書けるか分かりませんけれども,何のためにというところをもう少し掘り下げて書いていただいてもよいのではないかと思います。
正にこの委員会で扱っているような環境エネルギー分野の社会的課題に応えるというのは,恐らく非常に重要な要素だと思っています。そういう意味で,総合政策特別委員会の方の中身に是非反映をしていただけると有難いと思っております。
さて,今若干時間を稼ぎましたが,それでは,清水委員,その後,本郷委員にお願いしたいと思います。
【清水委員】 今回の素案でLCAについてしっかり書かれているのは非常にいいことだと思います。一方で,この素案の6ページ,165行から172行に掛けて少し説明があるのですが,そこで意見がありますので,申し上げたいと思います。
ここでは,LCAについて,研究成果が真に社会に求められる形になるように誘導するということで,どちらかというとLCAを研究成果の評価手法として使うかのように書かれています。ですが,LCAの本当の意義は,研究テーマそのもの,あるいは,取組自体が本当に地球にとっていいことなのかどうなのかというのをまず判断する,そういった手法であるべきであって,その点についての記載がないと思います。つまり,LCAを何のためにやるのかという意義を,もう少し明確にすべきではないかと考えます。
同時に,LCAという手法自体も,まだ発展途上にありますので,こういった取組の中で,LCAの手法自体をブラッシュアップしていくというのも非常に意味のあることですし,こうした環境技術エネルギー分野の研究手法として発展させていくだけでなく,例えば企業の行動施策であるとか,あるいはいろいろな社会における取組自体が,LCA的に見て,環境に本当にいいのか,悪いのかを判断するためのツールとして整備していかなければならないと思います。
例えば,今後,サーキュラエコノミーということで,マテリアルリサイクルの重要性が恐らく世界的に大きな声になっていくと思いますが,リサイクルを進めていく上で, LCAという観点は不可欠ですので,そういった意味でも,この素案の中でLCAの重要性をもう少し深掘りしてもいいのではないかと考えます。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,本郷委員,お願いいたします。
【本郷委員】 石川委員,それから髙村主査から出たデータサイエンスの件ですが,本当にこれは非常に重要だと思っています。ただ,今,議論していたのは最先端といいますか,あるいはイノベーションをした人からの側でのデータサイエンス,いわば供給側のデータサイエンスですが,もう一つ,データサイエンスと立派な名前を付けていいかどうかあれですけれども,利用する側で,そのデータをどう理解し,どう使っていくか,これは非常に重要なのではないかと思います。
科学分析の結果を実際に利用させていただくために,石川委員からいろいろ教えていただいているのですが,やはりなかなか難しくて,分からないこともたくさんあります。統計的なところで一種,誤解が生じるようなところもあるし,それから,またメディアでも頻繁に出ていますけれども,100年に一度の豪雨といったときに,これは一体どういうことなんだ,これは本当に正しく理解されているのか,あるいは,将来のリスクを説明する際に,最大のリスクを書いて,それがどういう意味があるのか。
そういう意味で,使う側の方でのデータサイエンスといいますか,もっと基礎的な,もしかすると,基本的な統計学の話かもしれませんけれども,そういったところのレベルアップをしないといけないのではないかと思います。今,大学の先生,経済学関係の先生,あるいは経営学の先生と話をすると,時として,統計学みたいなものを勉強せずに卒業できるというのです。面倒くさい,数学だから嫌だと言って卒業できると。これで,本当にいいのだろうかと思います。
そうした中で,企業に入ってデータを見て,気候変動のリスクはどうだという説明を聞いて,しっかりと理解できるのか。供給側の方で研究や分析が進めば進むほど,どんどんブラックボックス化してしまうので,それがかえってリスクを生む可能性もある。ここは供給側の委員会ですので,イノベーションを利用する人はもっと勉強しろということはなかなか書きにくいとは思いますが,何か受入れ側の方のレベルアップというか,アクセプタンスをよくするようなことも,少し盛り込んでいたければいいのではないかという気がいたします。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,堅達委員,その後,奥委員,石川委員,お願いいたします。
【堅達委員】 緊急事態については,ちょっと私も熱い思いがほとばしり過ぎたかもしれませんが,つけ加えさせていただくとすると,この間に何が起きたかというと,IPCCが更に新しい2つの報告書を発表しています。これは,8月に土地利用,それから9月に海洋と雪氷圏の特別報告書が発表されていますが,これもまた緊急感を醸成するにふさわしい,なかなか厳しい内容のリポートになっています。
特に海洋と雪氷圏に関しては,今も言った,正に高潮とか海面上昇が,やはり従来,私も10年以上この分野を取材していますが,数十センチと思っていたものが,2100年に1.1メートル。これは,別にとんでもないシナリオではなくても起きてしまうということは,我々,海洋大国,沿岸線を長く持っている日本で暮らしていく上で,致命的に重要なことではないかと思います。
ですので,先ほどのDIASのこともそうですし,防災・減災にどう役立てていくのかということが,環境科学の研究にとっては,これも非常に喫緊に求められているということで,是非このIPCCの報告書の問題意識とか,100年に一度起こるような災害が,地域,特に沿岸の部分においては2050年の段階で毎年のように起こるようになる。これ,今年,もう起きていますけれども,本当に毎年のように,西日本豪雨と東日本豪雨みたいな感じで毎年来るというのは,これまで研究されてこられた方々から見られても,確率論的にもやや非常な事態になっていることは明らかだと思います。そこを意識した書きぶりを,是非追加していただきたいと思います。
土地の利用の方で言うと,やはり食糧というものに,先ほどからのバイオマスとのトレードオフといいますか,ここの分野もカロリーベースで,非常に大量の食料を,我々,輸入に頼っている日本というのも,今後,食糧危機が起きてくる可能性が非常に高いということは,これも非常にリスクだと思いますので,このあたりのところも意識した研究というのをどんどん進めていく必要があって,正に,世の中は人造肉とか,某大臣がお肉を食べに行って,セクシーと言ってしまったというのはありますけれども,意識が薄いと思います。
そこまで,やはり農業分野とか,こういう食生活みたいなところにまで,今,危機感が求められているということが,やや日本人は伝わっていないというところがありますので,こういう分野の研究とかも実は非常に求められているというようなことを考えさせる,そういう幅広い裾野を持つ研究の分野に若者たちがどんどん入ってきて,イノベーションを起こしながら目の前の問題を解決していくような道筋をお願いしたい。そのためには,やはりお金を結構,研究分野に投下しなければいけない。これが,私の言っている動員計画というものの意味はそういうところなので,この予算規模,どういうものをイメージしているのかと,やはり声を上げるべきではないでしょうか。この分野は重要だということを,もっと財務省に対しても言っていくときが来ているかと感じます。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,奥委員,その後,石川委員,お願いいたします。
【奥委員】 少し細かいところで2点あるんですけれども,6ページの173から174行目に掛けてなんですが,人文社会科学分野との連携による云々(うんぬん)というところで,環境規制や制度等を含めた社会システムの提案ということに言及されております。恐らくここで言う環境規制というのは,コマンド・アンド・コントロールに近いことをイメージされているのかと思います。
そういった法的,制度的な社会システムについても重要なのですが,それ以外の例えば非規制的,若しくは誘導的な政策手法というものを,いかにうまく組み合わせていくことによって,脱炭素社会の実現が可能になるのかという,いわゆるポリシーミックスの発想,そこを是非ここに盛り込んでいただきたいというのが,1点です。
あと,もう一点は,同じページの178から179行目に掛けて,適応計画について記述がございますが,治水や農林水産に係る適応計画というふうに,ある意味,適応計画のカバーする範囲というのが限定的に書かれている。そういう印象をこれでは受けてしまいます。治水というのは重要だと思いますけれども,むしろ,例えば道路の整備ですとか,舗装の在り方だとか,緑化の在り方,そういうことも含めた日々の都市整備の中で,いかに快適性も高めていって適応に資するのか。
そういったことが,これですと落ちてしまうようなイメージなので,もう少し幅広にとれるような,若しくはこういった枕詞のようなものは要らないのかもしれませんので,そこはここに限定したものだけで適応計画がそれで十分なのかというと,そうではないと思うので,そこを留意した記述にしていただければというのが,2点目です。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,石川委員,その後,本藤委員,お願いいたします。
【石川委員】 私の方からは,先ほど本郷委員からもありましたし,髙村主査からもありましたけれども,何のためにというのは非常に大事というところで,この中でも,162行目ですか,seeds-orientedからneeds-drivenへというのは非常に重要なキーワードだと思っております。
ですが,私,データを作る方としては,やはり自分の発想はまだseeds-orientedというのからなかなか抜けられないのですけれども,SI-CATを今年5年目ですけれどもやってきまして,needs-drivenというのに大分洗礼を受けてきました。その中で,SI-CATの中では社会科学系の方がいらっしゃって,その方々がフォーラムを開いているのですが,その中で毎年,自治体の方々と話をする機会があって,それは非常に私にとっては勉強になる機会でした。
ただ,最近ちょっとショックなアンケート結果が出てきました。実は,自治体の方々が科学技術データを実際に使いますかというアンケートをとると,最初の方は,比較的高い割合の方が使いたいと回答していたのが,実はだんだん落ちていっているのです。それはどうしてかという分析をされたところ,一般論としてのデータが使えそうだという話がスタート地点だったのだけれども,個別具体的なところになってくると,自分たちのところで使えるのは少し遠いというようなことが見えてきたと。そういうようなことがSI-CATの中で自治体の方から出てきた。
一方で,モデル自治体と呼ばれる自治体の方々には非常にいい成果を出していただきまして,我々としても有難い,非常に勉強になったということがあります。それも踏まえまして,needs-drivenというのをどう実行していくかという中で,やはりコーデザイン,コーワーク,一緒に頑張っていきましょう,一緒に勉強していきましょうという場をつくることは非常に重要ではないかと思っております。
ここのところで課題解決に結びつけるというのは,具体的な場の設定,具体的な課題の設定というのがキーであると思いますので,正にこの目的志向に行くためには,実際にニーズ側とシーズ側が話をできる場所をつくる,話ができる体制をつくるというところに対しても,是非とも投資をしていただきたいと感じております。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,本藤委員,お願いいたします。
【本藤委員】 先ほど,たしか清水委員からLCAに関して言及があったかと思いますので,一言コメントをさせていただきたいと思います。まず,LCAに関して日本LCA学会というのがございまして,私はそこの副会長をさせていただいております。なので,LCAを非常に高く評価していただくというのは大変有難いということを,まず御礼申し上げます。
LCAの考え方やコンセプトというのは,ここで書かれている技術,研究成果の将来的な経済,社会,環境への影響を評価するには非常に役立つと思います。ただ,率直に申し上げて,LCAといった場合には,通常はISOで規格化されているような環境影響評価というものが,やはり最初に思い浮かぶ方が多いと思っています。
ですから,ここで多分評価すべきことは,LCAだけ,LCAという言葉だけでくくるには少し広過ぎるかと思っております。なので,やはりもう少し広い概念,先ほど申し上げたようなテクノロジーアセスメントとか,技術評価とかいった言葉がよろしいかと思います。ただ,是非LCAという言葉は残していただいて,その考え方だとかコンセプトをうまく活用するという形で御記載いただければと思います。以上です。
【髙村主査】 ありがとうございます。ほかに御質問,御意見ございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
これを,最初に事務局からございましたように,取りまとめ,まだこの後更に作業を積み重ねていただくことになるかと思います。
それでは,幾つか御発言の中で御質問があったかと思います。あるいは,全体の御発言を通して,事務局の方からもし何かお答えがございましたら,お願いしてもよろしいでしょうか。
【清水課長補佐】 大変勉強になる御意見を頂きまして,ありがとうございました。非常にたくさんの御意見を頂いたので,一つ一つ吟味しながら取りまとめ案に反映をさせていただきたいと思います。
まず全体的なことにつきましては,特に分野連携ですとか,アクター同士の連携,そういったところが今,議論になっていることを多く感じましたし,今後も,特に基礎分野を担う文部科学省としては,そこに力を入れていかなくてはいけないのかと深く感じているところです。
例えば,文部科学省としては,基礎研究の研究成果をいかに社会実装につなげていくかという部分,また,ゴールからバックキャストした研究の中で,倫理や経済学,そういったところも含めて,社会実装のために人文科学と連携しながら,その生み出した研究成果というものをいかに無駄にしないかというふうなところを,省庁間連携を通じて,また企業との連携を通じてやっていくことが非常に重要であるというふうに感じました。
その中でも様々な御意見を頂きました。少し書きぶりが不十分だったところも多数あるかと思います。一つ一つ反映させていただきたいと思います。
具体的な質問に対するお答えですけれども,まず,幅広く,賢く投資というところの主語は誰なのかというような話がございました。1つは,ここで想定していたのは,やはり国からの投資というところでございます。国として基礎研究,企業が担うにはリスクが大きかったりして,企業がまだ投資ができないような部分について,文科省が投資をしていくというところが非常に重要であるかと思いますので,まずは国の投資をどうしていくかというところの文脈で書いたものでございます。
その上で,特にほかの方からもたくさん意見がございましたけれども,民間企業が投資をしていく。国の投資にもやはり財源上限りがございますので,企業からの投資をどうしていくかというようなところのつなぎを,しっかりとやっていく必要があるのかと思っております。
特に経産省,今,革新的環境イノベーション戦略の中でも,文科省と経産省が共同事務局ということで担っておりますけれども,どこまで行けば企業が投資をできるのかというようなところを,しっかりと連携をして,これまで,なかなか縦割りでどうしてもできなかったところがあるのですが,今は,少し前から経産省との合同委員会ですとか,他との連携ですとか,そういったところも進めているところでございますので,国だけではなくて,官民連携でいかにイノベーションを起こしていくか,また,それを社会的なインパクトにつなげていくかというところもしっかりとやっていきたいと思っております。
また,データサイエンスについてもございました。先ほど統計学も学ばないといけないという御意見がございました。やはり若い頃からの人材育成というところも非常に重要だと思います。
環境人材というところで少し書かせていただいていますけれども,研究者は研究者,企業は企業という縦割りではなくて,環境問題というのは本当に社会の隅々にまで影響があるような問題だと思いますので,分野連携についても、環境省とも連携しながらこれを促していく努力をしていきたいと思います
あと,危機感のお話も何名もの方からございました。確かに今,異常災害も含めて非常に危機的な状況にあるというところを,我々の方からむしろ発信していかなければいけない立場だと思いますので、書きぶりについて検討したいと思います。
やはり,国際的な,先ほどのIPCCの報告書も含めまして,また気候行動サミットにおけるスピーチにおける機運もありますので,そのような背景等の書きぶりを検討していきたいと思っております。
それから,先ほどの話とも重なりますけれども,イノベーションの担い手が誰なのかというようなお話もございました。一義的には大学というようなところで,しっかり大学に基礎的な部分の研究投資をしていくというようなところと,あとは,正にイノベーションの担い手との連携を促すことは非常に重要だと感じますので,そこは書き込んでいきたいと思っています。
あとは,適応策に関する部分です。適応策の部分,ここの部分でなかなか地方自治体がSI-CATの研究成果を生かしたりというときに,データを読み取ったり,専門家と対等に話したりというような人材が少ないとこともありますので,受け取り側のリテラシーですとか,ニーズなどにも配慮しながら,SI-CATの成果をつなげていくべきことについてしっかりと記述をしていきたいと思います。
ESG投資のところでお話がございました。そもそも,ESG投資は主に経産省と環境省が進めているところではあるのですけれども,文科省がそこにどう食い込んでいけるかを考えたときに,これにより直接大学に対する研究への投資を促すというのは非常に難しいと思います。ただ,具体的な事例としましては,農業での生産,異常気象とかに関わる生産の予測などに関して保険会社のニーズがあったりですとか,あるいはSI-CATの中でもやっていましたけれども,ヒートアイランド現象がいかに都市の中で起きていくかという部分について,不動産会社のニーズがあったりするのではないかと思います。
そういったような部分が,我々が今やっている技術開発が社会的なニーズに,まだ知られていないから投資はされていないけれども,そこの部分がもしつなげるようであれば,民間の資金を導入していくということもあり得るのかと思います。それ自体,ESG投資と言えるのかどうか分からないのですけれども,そういったようなコンセプトも含めて,支援をしていくような方法も考えられたらと考えております。
また,大学が持っている研究成果の活用ということも,まだ構想段階なので,余り詳しく書き切れてはいないのですけれども,例えば地域における環境課題について,何か大学が持っている研究成果,地方の大学が持っている研究成果を,地域の環境問題解決に生かしていくといったようなことも考えられますので,そういったような,各セクターをつないでいくような役割というものを,文科省として何かできないかというところを考えていきたいと思っているところでございます。
また,LCAのところは,LCAだけですと限定的であるということはもっともだと思います。テクノロジー評価等々も含めて幅広に書きながら,本質的な部分としましては,やはり研究成果が社会にどういうインパクトをもたらすかというところも,技術面だけではなくて,社会的な合理性等々も含めて評価していき,その結果をもとに研究開発にフィードバックしていくというところが非常に大事だと思っておりますので,そこがはっきりと分かるような形で書き込ませていただきたいと思っております。
また,山地委員からも頂きましたけれども,DIASが防災・減災に役立つというようなところを強調していきたいという観点については,特に国全体としては防災・減災の意識も高まっているところだと思いますので,そこを書き込みたいと思います。
あと,文言の精査等々,引き続き進めてまいりたいと思います。以上になります。
【髙村主査】 ありがとうございます。石川推進官からお願いいたします。
【石川環境科学技術推進官】 適応のところで嶋田委員に御指摘いただき,また石川委員からも御指摘いただいていたところ,1点だけ少し補足させていただきます。嶋田委員も御指摘のとおり,適応法ができた関係で,政府の体制としては環境省が中心でということにはなるのですが,やはり,石川委員も関わっていただいて,SI-CATですとかで,自治体との関係も含めていろいろネットワークも構築しながらやってきているところがございますので,環境省が中心ということではあっても,我々,文科省もここまで築いてきたネットワークとかもしっかり生かしながら,貢献できるところはしっかり連携していきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【髙村主査】 ありがとうございます。大変活発な御議論を頂きました。事務局からも御説明がありましたように,この取りまとめは,まだこの後,皆様から意見を頂いて,更に次回の委員会で議論をする機会がございます。ですので,今日頂きました御意見について,改めて事務局に御検討いただくというのと併せて,後日,改めてメールでも追加の意見がございましたら,欠席の委員もいらっしゃいますので,意見照会をしていただこうと思います。
それを踏まえて,先ほど申し上げましたように,次回の委員会で更に引き続き御議論いただきたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,議題の3で本日予定をしている議題は以上となります。議題の4になりますが,そのほかに委員の皆様から何か御発言,御質問等ございますでしょうか。
では,江守委員,お願いいたします。
【江守主査代理】 先ほどの話題に少し追加になるのですけれども,データサイエンスの話を聞いていて,1つ思い出したんですが,エネルギーのシステムの需給最適制御みたいな話というのは,当然,科学技術としてあると思うのですけれども,今それはどんなふうに推進されているのかと思いました。
当然,気象の予測を生かして,その変動性の供給予測を高精度化するとかいうのもよく聞きますし,あるいは,ブロックチェーンでローカルにそのエネルギーをどこからどこに送ったということを記録するとか,何かいろいろなそういう話を聞くので,ITとエネルギーを絡めた高度な科学技術の分野だと思うのですけれども,そういう話が,今日は聞かなかった気がしたので,データサイエンスと併せて思い出しておきたいと思いました。
【髙村主査】 ありがとうございます。ほかに,ございますでしょうか。
失礼しました。堅達委員,お願いいたします。
【堅達委員】 今ので言うと,AIを使ったIoTをうまく生かしつつ,省エネもやるしというようなスマートな,正に工場だったり,スマートシティーだったり,スマート住宅だったりというのは一番求められている分野だと思うのです。恐らく不確実性ということ,今日も何回か話題に上りましたけれども,AI技術がどれくらいこの2050年ぐらいまでの間に進化していくのかということも,相当この研究の分野においては大きな意味を持つ。そして,それはまた両方の意味というか,ポジティブな意味もあれば,非常に思ってもいない影響が出てくるネガティブな部分も含めてあると思うのですが。その観点といいますか,この研究を進めていくに当たってのAI的なものを,正にどれぐらい織り込んでいくのかという発想が,確かに少し足りていないかという気がいたしましたので,私からもコメントしておきます。
【髙村主査】 ありがとうございます。ほかに,委員からございますでしょうか。
頂きました意見,基本的に取りまとめの中で御検討いただこうと思いますけれども,もし事務局から何かございましたら。では,加藤さん,お願いいたします。
【加藤係長】 江守委員から御質問いただきました需給システムの研究についてですけれども,現在,本年度終了事業ではございますが,JST CREST事業の中でエネルギーマネジメントシステムを支援させていただいております。
昨年には成果公開シンポジウムもございましたけれども,始まった当初から,より分野を広げてといいますか,エネルギーシステムだけではなくて,更なるコミュニティー,例えばモビリティですとか,まち全体という形で,研究分野自体もどんどん広がりを見せていると感じております。
事業終了後の文科省としての取組は今後の検討となりますので,具体的には申し上げることはできませんけれども,皆様の御意見も頂きながら引き続き検討を進めてまいりたいと思います。そういったことも含めて,文章の中にも書き込んでいけたらと思っております。引き続き,御指導よろしくお願いします。
【髙村主査】 ありがとうございます。ほかに御質問,御意見,ございますでしょうか。恐らく今,御指摘のあった点は,ポテ研でも1つの重点領域として設定されていたと思います。同時に,もちろん経産省でも直近の技術開発等あると思うのですけれども,先ほどありました省庁間の連携なり役割分担というところにもつながる論点かと思います。また取りまとめの中でどういうふうに位置付けられるか,是非御検討いただければというふうに思います。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは,事務局から,本日の会合を受けて御連絡をお願いしたいと思います。
【加藤係長】 本日は,貴重な御意見を頂きありがとうございました。本日の議事録は,後日,事務局よりメールで委員の皆様にお送りさせていただきますので,修正等ございましたら御指摘いただければと思います。最終的には,文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
また,旅費・委員手当に関する諸手当の請求に当たっての確認についてという紙をお配りしてございますので,御確認いただき,お帰りの際に事務局まで御提出ください。
次回の会合につきましては年明けを予定しております。また,具体的な日にちは追って連絡をさせていただきますけれども,引き続き御議論のほどよろしくお願いいたします。以上でございます。
【髙村主査】 ありがとうございます。それでは,これをもちまして,本日の環境エネルギー科学技術委員会の第5回会合を閉会といたします。
本日は,お忙しい中どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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