第9期 環境エネルギー科学技術委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成30年12月20日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 「地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラム」の中間評価について
  2. 「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」の中間評価について
  3. 水素に係る最近の研究開発動向について
  4. 環境エネルギー科学技術を巡る最近の状況について
  5. その他

4.出席者

委員

高村主査、花木主査代理、江守委員、沖委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、瀬川委員、関根委員、田中委員、谷口委員、本郷委員、山地委員

文部科学省

佐伯研究開発局長、横地環境エネルギー課長、佐藤環境科学技術推進官、三木課長補佐、平田課長補佐、滝沢専門官、森課長補佐、池田地球観測推進専門官

オブザーバー

九州大学 佐々木副学長、物質・材料研究機構 西宮エグゼクティブアドバイザー

5.議事録

【高村主査】  それではただいまより,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会第9期の環境エネルギー科学技術委員会の第6回会合を開催いたします。本日は,大変お忙しい中お集まりいただきまして,どうもありがとうございます。
 まず,事務局に異動がございましたので,事務局より御紹介いただき,続いて本日の出席者と資料の確認をお願いできればと思います。
【三木課長補佐】  それでは,事務局の人事異動の御報告をさせていただければと思います。
 環境エネルギー課の課長に藤吉の後任といたしまして,横地が着任しております。
【横地環境エネルギー課長】  横地でございます。よろしくお願いいたします。
【三木課長補佐】  また,地球観測担当の専門官に池田が着任しております。
【池田地球観測推進専門官】  よろしくお願いいたします。
【三木課長補佐】  続きまして,出席の確認をさせていただきます。現時点で16名の委員の先生方のうち,11名の先生方に御出席を頂いております。本日は,奥委員と田中充委員は遅れての御出席の予定になってございます。今の人数で委員会成立という形になってございますので,よろしくお願いいたします。
 次に資料の確認になりますけれども,皆さんのお手元のタブレット上に,今議事次第,資料1から4,加えまして参考資料1から4を,途中枝番が入っているものもございますけれども,御用意してございます。そちらが見当たらない,若しくはタブレットに不都合がありましたら,事務局の方にお伝えください。よろしいでしょうか。
 今,入っている資料について申し上げましたけれども,参考資料1及び参考資料2に関しましては,自己点検結果報告書になってございまして,こちらの資料は,ホームページで公表の際は非公表とさせていただく資料になってございますので御留意ください。
 事務局からは以上でございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは,本日は議事次第にありますように,4つの議題を予定しておりますけれども,委員の皆様から忌憚(きたん)のない御意見を頂戴できればと思います。
 本日の会議の終了時刻は18時を予定しております。
 それでは,議事を進めてまいります。
 議題の(1)でありますが,「地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラム」の中間評価についてです。
 議題に入る前に,恒例でありますけれども,留意事項について御説明をいたします。中間評価の実施に当たって,文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に従って,公正で透明な評価を行うという観点から,原則として利害関係者が評価に加わらないようにする必要がございます。その範囲については,研究計画・評価分科会で定められておりまして,当委員会でもそれに従うこととしております。
 具体的には,利害関係者の範囲としては,評価対象課題に参画している者,被評価者(実施課題の代表者)と親族関係にある者,利害関係を有すると自ら判断する者,そして分科会において評価に加わらないことが適当であると判断された者となっておりまして,今回の評価対象の課題について利害関係を有すると,自ら判断する委員はいらっしゃいますでしょうか。本郷委員,ありがとうございます。このプログラムのマネジャーをしていただいておりますね。沖委員,ありがとうございます。
 それでは,このお二人に関しては退席をしていただく必要はございませんけれども,本議題の議論には加わることができませんので,その点御了承いただければと思います。
 では,まず事務局から,評価実施状況等について説明をお願いできればと思います。お願いいたします。
【三木課長補佐】  では,事務局の方からお話をさせていただきます。まず研究代表者より提出されました自己点検結果報告書は参考資料1となっておりますが,これを踏まえ,中間評価調整グループで評価結果案の原案を作成いただきました。
 本日は,その中間評価結果(案)について報告をさせていただければと思います。担当の池田の方から説明をさせていただきます。
【池田地球観測推進専門官】  「地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラム」の中間評価結果(案)につきまして,本事業を担当しております池田から説明させていただきます。資料1をごらんください。
 1ページおめくりいただきまして,中間評価調整グループは,住先生を主査としまして,赤松先生,江守先生,寶先生,辻先生,横田先生で構成されております。
 2ページをごらんください。項2の研究開発概要・目的につきまして,文部科学省は,世界に先駆けて,地球観測・予測情報を効果的・効率的に組み合わせて新たに有用な情報を創出することが可能な情報基盤として,データ統合・解析システム(DIAS)を開発してきました。2006年にプロトタイプを開発しまして以降,これまでに国内外の大学,研究機関,政府,地方自治体,国際枠組み等の多くのユーザーによる地球観測・予測情報を用いた研究開発等を支え,気候変動・水課題を中心に国内外の社会課題解決に資する成果例を創出し始めております。
 また,「科学技術イノベーション総合戦略2015」等におきましては,地球観測・予測情報を統合し,気候変動への適応・緩和に活用するために地球環境情報プラットフォームを構築し,ユーザーニーズを踏まえた一層の産学官の利用拡大を促進することで,長期運用体制に移行することが求められております。これを受けまして,気候変動への適応・緩和等に長期的・安定的に貢献していくための社会基盤として,DIASを発展的に展開させることが必要となってきております。
 そこで,DIASが気候変動適応・緩和等に貢献する社会基盤として,これまでのDIASのユーザーに加えまして,企業等も含めた国内外の多くのユーザーに長期的・安定的に利活用され,これらの者が自由な発想により気候変動を初めとした様々な社会課題解決に資する成果を創出していけるようにするため,2016年度以降,これまでのDIASの成果を活用して,次の2つを実施します。
 まず,1つ目としまして,地球環境情報プラットフォームの構築で,企業等の新規ユーザーを含めて,長期的・安定的に利用されるプラットフォームの運営体制を構築します。2つ目としまして,地球環境情報プラットフォーム活用のための共通基盤技術開発で,地球環境情報プラットフォームのユーザーを拡大し,気候変動適応策・緩和策等に貢献するため,ユーザーニーズが高いエネルギー,気象・気候,防災,農業等の社会課題解決に貢献するアプリケーション等の共通基盤技術の開発を実施いたします。
 3ページ目,項3の研究開発の必要性等につきまして,まず必要性ですが,産官学における地球観測・予測情報の有効活用や,これらの情報を用いた研究開発の継続的かつ発展的な推進,成果創出を行うプラットフォーム構築の科学的・技術的意義は大きい。また,本プログラムにおきまして開発される水資源管理,エネルギーマネジメント等の共通基盤技術につきましても,自然災害の抑制や災害予測の観点におきまして,国民の命を守る技術として期待できることから,本プログラムの必要性は高いと言えます。
 2つ目の有効性ですが,本プログラムにおきまして構築される地球環境情報プラットフォームでは,ICT専門家による,ユーザーニーズに応じた適切な利用支援やデータ更新等が実施されます。本プラットフォームを活用することにより,様々な研究分野におきまして社会的要請に応えた新たな知の創出が可能となるほか,その成果の社会への還元を通じた社会課題の解決への貢献が可能となります。また,水資源管理分野における実績及び成果は,様々な社会課題の解決にも広く貢献いたします。よって,本プログラムの有効性は高いと言えます。
 3つ目の効率性ですが,本プログラムにおいて構築されるプラットフォームでは,世界最大級の地球観測・予測データ等を統合・解析できる環境が提供され,本プラットフォームは地球環境分野のみならず,多くの分野で利活用されます。また,本プログラムにおきまして共通基盤技術として開発されるリアルタイム河川・ダム管理システム等は,国内外への展開が期待できます。よって,本プログラムの効率性は高いと言えます。
 項4には,予算の変遷をお示ししております。4ページ目の項5になりますけれども,こちらには課題実施機関・体制をお示ししております。
 5ページ目をごらんください。項2の地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムの研究開発計画との関係につきまして,第5期科学技術基本計画より,大目標を抜粋しております。また,中目標と重点的に推進すべき研究開発の取組につきましても,時間の制約がございますのでお目通しいただけたらと思います。
 定量的な目標としましては,アウトプット目標とアウトカム目標がございます。これらにつきましては次の項で御説明させていただきます。
 6ページ目の項3につきまして,進捗状況から御報告させていただきます。本プログラムは第1期,第2期に続きまして,第3期として良好に進捗しております。
 DIASは,地球規模で高品質な観測・予測データや多種多様なリアルタイムデータを統合的に利用することができるプラットフォームとして,国内外の多様な分野の社会課題解決を目指す数多くのプロジェクトに貢献しており,データ駆動型社会を支える重要な基盤の一翼として,今後Society 5.0実現やSDGs達成への大きな貢献が期待されます。
 また,IPCCにおきましては,第5次評価報告書の作成に際し,結合モデル相互比較計画(CMIP5)における国内の気候変動予測モデルの計算結果が,DIASからGCIを通じて全世界に配信されております。今後,第6次評価に向けたCMIP6につきましても,DIASから配信される予定です。
 先ほど御提示しましたアウトプット指標とアウトカム指標につきまして,アウトプット指標は,本プログラムにて提供されたアプリケーション等の数でありまして,目標は年度当たり3件です。2016年度は3件で,目標値に達しており,2017年度につきましても,新たに開発されたアプリケーションは1件でありますが,既存アプリケーションの機能拡張等を行った案件が3件ありまして,実質的な活動実績は4件で,目標値を超えております。
 アウトカム指標はDIASの利用者数を示しております。2016年度の目標値を2,800人として,毎年300人ずつ増加することを目標としております。表にありますように,2016年度,2017年度共に目標を上回っております。2014年度から2017年度までに利用者数は3年間で約4倍にも増えております。なお,アウトカム指標はDIASからデータをダウンロードして利用する利用者数を示しておりまして,そのほかDIAS上で統合・解析処理等を行う利用者がおります。こちらにつきましても年々増えておりまして,今後さらなるユーザー増加及びデータ大規模化に備え,データ処理環境の整備を行ってまいります。
 次に研究開発体制につきまして,本プログラムは地球環境情報プラットフォームの構築と水課題アプリケーション開発の2つの研究課題からなり,リモート・センシング技術センターを中心とした地球環境情報プラットフォーム構築機関は,地球環境情報プラットフォーム構築やその運用管理,アプリケーションの開発支援を行っております。また,東京大学を中心とした水課題アプリケーション開発機関は,洪水や渇水など,水に関する課題を解決するアプリケーションの開発を行っております。
 本プログラムでは,事業全体を統括するプロジェクトマネジャーに加えまして,プロジェクトマネジャーの活動を支援し,専門的な観点から各研究開発課題の進捗管理・助言を行うサブプロジェクトマネジャーを各研究課題に配置し,システマチックに実務を遂行することで,効果的かつ効率的に運営を行っております。
 ユーザー対応につきましては,プロジェクトマネジャー,サブプロジェクトマネジャーの下,3人の担当が日々交代で利用申請,問い合わせ及びデータ登録等の対応を行っております。その実施に当たりましては,効率的かつ確実に対応できるように,情報共有ツールの導入であったり,あとはユーザー情報をテーブル化するなど,対策を講じております。
 プロジェクトマネジャー,サブプロジェクトマネジャー,各研究課題担当者及び文部科学省担当者が参加する関係者会議におきまして進捗等を確認し,密に連携して取組を進めることで,水課題アプリケーションの開発及びDIASへの実装,地球環境情報プラットフォームの構築推進等におきまして,効果的かつ効率的に成果を創出することができます。
 また,有識者で構成されたアドバイザリーボードを設置しておりまして,事業全体の運営管理等に対する大局的かつ専門的な観点からの助言を得まして,長期的・安定的にプラットフォームが利活用されるよう,戦略的な運営を推進しております。
 このほか,本プログラムと文部科学省事業「統合的気候モデル高度化研究プログラム」及びSI-CATとの連携を推進するために,各々との連絡会議が開催されております。
 研究開発の進捗状況につきまして,まず地球環境情報プラットフォームの構築ですが,事業3年目までに多種多様なデータを統合・解析し,社会課題解決に貢献するプラットフォームの構築,新たなアプリケーションの探索及びDIASへの実装に向けた開発支援,国費のみによらない持続可能なプラットフォーム運営体制の検討を行うことを目標としており,計画どおり進捗しております。
 (ア)の社会課題解決に貢献するプラットフォームの構築につきまして,本プログラムで所有する約27ペタバイトの大容量ストレージ及びデータ・メタデータの維持管理は,地球環境情報プラットフォーム構築機関が行っております。機器が老朽化しつつあるものの,適宜ふぐあいを改善し,堅牢(けんろう)性と安定性を保持しつつ運用を行っております。しかし,今後老朽化による故障率増加が見込まれ,計画的に機器を更新していくことが必要です。
 (イ)のアプリケーションの探索及び開発支援の水課題アプリケーションの社会実装実現,プロトタイプの活用先の探索及び開発支援につきまして,水課題アプリケーション開発機関は,気候変動への適応・緩和等に長期的・安定的に貢献するDIASの基幹となる水課題アプリケーションのプロトタイプを開発いたしました。地球環境情報プラットフォームの構築機関は,このプロトタイプをDIASへ実装し,イベント再現性の確認等の性能評価の支援を行います。本プログラム終了時の社会実装を目指し,サービス要件の検討も引き続き行います。
 また,プロトタイプの成果を利用できる他分野の課題を積極的に探索し,水課題アプリケーション開発機関と協力しまして,課題を解決するための新規アプリケーションの開発支援及びDIASへの実装を行っております。
 (b)の「水課題アプリケーション」以外のアプリケーション活用先の積極的な探索及び開発支援につきまして,スリランカ洪水リスク軽減アプリケーション,東京都23区リアルタイム浸水予測システム,マラリア感染予警報システムなど,DIASを利活用することにより社会貢献が見込まれるアプリケーションシステムにつきまして,社会実装に向けたアプリケーションの開発支援及び実装を行いました。
 (ウ)の持続可能なプラットフォーム運営体制の検討につきまして,本プログラムで構築した地球環境情報プラットフォームが,長期的・安定的に利活用されるよう,国費のみによらない持続可能なプラットフォームの運営体制について検討を行っております。具体的には,商用利用に向け,データやアプリケーションの権利等の法的課題の整理,サービス要件の整理や課金・決済処理についての検討等を行っております。今後,事業4年目まで検討及び準備を加速させまして,事業5年目に試行を開始いたします。
 次に,水課題アプリケーションの開発につきまして,課題2は,事業3年目までに水課題アプリケーションのプロトタイプ開発を完了し,DIASに実装することを目標としております。既に水課題アプリケーションのプロトタイプの開発及びDIASへの実装は完了しており,計画どおり進捗しております。
 このプロトタイプは,現在,防災・減災分野での実用化を目指して,次の(ア)から(ウ)の開発と並行して行っております。また,他課題におきましては(エ)の展開を図っております。
 まず,(ア)の「水課題アプリケーション(水力発電用)」の開発につきまして,積雪・融雪期を含み48時間のリードタイムで洪水のアンサンブル予測を中断なく実施する,水課題アプリケーションシステムを開発いたしました。現在は社会実装に向けまして,予測結果の有用性の評価を電力会社様が行っております。今後,実利用に向け,ダム操作や洪水,水利用の具体的な対策に必要な定量的で局所的な情報を提供できる環境を整えてまいります。
 (イ)の「水課題アプリケーション(洪水概況予測用)」の開発につきましては,全国規模で洪水概況を予測するリアルタイム高解像度日本域アンサンブル洪水概況予測システムを開発し,DIASに実装して,DIAS上でリアルタイム計算を実施しております。本システムは,Skill Scoreを用いた性能評価によりまして,洪水イベントの再現性が高いことが確認されております。
 現在は,システム開発のフェーズを終え,DIASを通じた情報提供を開始しております。今後,多くの市町村防災担当者や民間事業者が長期のリードタイムで洪水の危険性を把握できるよう,システムの高度化を行います。
 (ウ)の「水課題アプリケーション(避難指示・河川管理用)」開発のための基盤システムの構築につきまして,水課題アプリケーション(水力発電用)システムを様々な分野に適用可能とするために,水課題アプリケーションのプロトタイプを機能別の4つの構成要素に分割してモジュール化することで応用性を高め,要素システムを機能追加や性能最適化によって高度化・高効率化するとともに,ダム管理を行う実務者等,幅広いユーザーがシステムを利用できるようユーザーインターフェースを開発いたしました。
 また,初期値となる観測データ取得から,予測値の算出,計算完了までの一連の処理のシームレスな実行環境を整備しまして,更にDIASのアプリケーションを融合させることによる高機能な新モデルも開発いたしました。
 (エ)の地球環境情報プラットフォーム構築機関との協力による他課題への展開につきまして,本課題で開発している水課題アプリケーションのプロトタイプは,国内外で他課題への展開が開始されました。(a)と(b)にそれぞれ国内外への展開の事例を挙げております。
 次に,研究開発の成果及び波及効果につきまして,水課題アプリケーション開発機関が,基幹となる水課題アプリケーションのプロトタイプの開発及びそのプロトタイプを核とした新たなアプリケーションの開発を担い,地球環境情報プラットフォーム構築機関がその開発を支援し,DIASへの実装を行うことにより,国内外で他課題にも応用されております。
 特に,国際協力の観点では,水災害等予測システムによる情報提供のみならず,ADB SPADEの事業におきまして,主にアジアの国々のユーザーに水災害等予測システムを活用するための研修を行うなど,海外における人材育成にも貢献しております。
 また,民間業者とアプリケーション開発等を通じた意見交換を進めた結果,SPOT衛星データの日本域データがDIASにアーカイブされ,無償で学術利用が可能となりました。
 各観点の再評価につきまして,気候変動適応への対応として,気候変動適応法によりまして,我が国における適応策の法的位置付けが明確化され,国,地方公共団体,事業者,国民が連携・協力して適応策を推進するための法的仕組みが整備されました。今後,DIASに蓄積・統合された気候変動予測データの重要性が増すことが予想されます。これまで地球環境情報プラットフォームの構築機関は,SI-CATのモデル自治体等に対しまして,ヒアリングを実施するとともに,適応策実施に向け,効果的・効率的にデータを利活用できる環境の提供につきまして検討を行っております。DIAS上の各種データやアプリケーションは,今後,多くの地方自治体の温暖化対策への貢献が期待され,DIASの必要性は高まっております。
 その他必要性,有効性,効率性につきましては,次に並んでおりますものが挙げられます。
 それでは最後に,今後の研究開発の方向性につきまして,本プログラムは,世界に先駆け,地球観測・予測情報を効果的・効率的に組み合わせ,新たに有用な情報を創出することが可能なプラットフォームとして,DIASを開発してまいりました。これまでに,国内外の大学,研究機関,政府,地方自治体,国際プロジェクト等が実施する研究開発を支えるとともに,水に関する課題を中心に,国内外の社会課題解決に資する成果を創出しております。
 現在は,気候変動適応・緩和等へのさらなる貢献や産官学の利用拡大を目指し,情報基盤として長期的・安定的に利活用され得る運用体制を整えているところです。
 今後,Society 5.0を実現するためのデータ連携基盤の構築が進む中,DIASにおいて蓄積・統合された地球観測・予測情報は,地球環境のみならず,多くの分野で利活用されることが見込まれます。また,先駆的に基盤構築を行ってきた本プログラムが担う地球環境分野は,データ連携基盤構築を牽引(けんいん)する分野の一つとなることが期待されます。よって,本課題を継続するとしております。
 説明は以上となります。
【高村主査】  ありがとうございました。それでは,ただいま御紹介いただきました中間評価結果(案)について,委員の皆様から御質問,御意見などを頂きたいと思います。御質問,御意見等がある委員の方は,札を上げてお知らせいただけると助かります。
 河宮委員,お願いいたします。
【河宮委員】  ありがとうございます。事実関係の確認だけなのですけれども,ページ番号で6番のところの真ん中あたりに,CMIP5における予測モデル結果が,DIASからGCIを通じてとありますけれども,これはESGFというシステムがあって,それのことじゃないかなと思ったのですけれども,違いますか。後で確認させてください。
【池田地球観測推進専門官】  ありがとうございます。
【高村主査】  ありがとうございます。これは事実確認だと思いますので,後で事務局で確認をいただければと思います。ほかにいかがでしょうか。
 この中間評価(案)のグループには,委員会からは江守委員が参加をしてくださっていると思いますが,何か補足なりコメント,御意見がございましたらお願いできればと思いますが,いかがでしょう。
【江守委員】  どうもありがとうございます。せっかくなので一言申し上げたいと思うのですけれども,僕が特にコメントして入れていただいたところが,7ページの上から2,3行目ですが,1行目から読むと,DIAS上で統合・解析処理等を行うDIASコアシステム利用者がいると。何人いるということで,これについても年々増えており,今後さらなるユーザー増加及びデータ大規模化に備え,データ処理環境の整備を行うと書いていただいておりまして,これが非常に僕は重要だと思っているのですけれども,これは先ほど河宮委員から御質問があったところとも関係するのですが,CMIPという気候モデルの相互比較の国際的な実験シミュレーション結果が,回を重ねるごとに物すごく膨大なデータ量になっていて,それを自分のところのサーバーに持ってきて比較解析するということが徐々に不可能になってきているのです。
 それをDIAS上で解析できるということが,この分野にとっては非常に大きなメリットがあることなので,そのDIAS上でDIASの課題の中でアプリを開発するようなユーザー以外にも,DIAS上のデータで統合的なデータ解析を行う,その解析環境として利用させていただくようなユーザーへの対応というのを,今後も一層重視していただきたいということで,このように入れていただきました。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 ほかの委員から,何か御質問,御意見はございますでしょうか。山地委員,お願いいたします。
【山地委員】  割とゼネラルなことなのですけど,このDIASの目標というのはやはり気候変動対策であって,それに起因する社会経済課題解決のためのプラットフォームということなのだけど,実は広がりを持っているのは,その気候変動も関係しているかもしれないけれども,防災とか減災とか,そういう汎用的な利用ができるというところで,非常に大きく展開していると思っています。
 それで,いわゆるSociety 5.0の一つの非常に典型的なアプリケーションではないかと思うので,温暖化との関係も,もちろんそこから出発しているのは分かるのですけど,そのゼネラルな使われ方というところを,私は高く評価しているし,今回の中にもそういう視点は入っているので結構だと思うんですけど,そこも強調しておいたらいいと思います。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 先ほど御説明もありましたように,全体としては順調に進捗をしているということだと思います。その上で幾つか課題がある。先ほど江守委員からもございましたし,あるいは8ページ目に,これも従来から指摘がありますけれども,機器の老朽化,機器の更新,安定的な運営体制といった点についても,適切に指摘されていると思います。
 ただいま幾つか御意見を頂きましたけれども,これらの点についてどういうふうにこの原案に反映させるかという点については,私に一任していただいて,そのような形で今回の中間評価結果(案)について,研究計画・評価分科会に御説明するようにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。
 それでは,続いて,早速ですけれども,議題の2に移ってまいります。議題の2は同じように中間評価ですけれども,「省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発」の中間評価についてです。留意事項については,先ほど議題の1で御説明をしたとおりですので省略させていただきますが,この議題2の評価対象課題について,利害関係を有すると自ら判断をされる委員はいらっしゃいますでしょうか。
 谷口委員ですね。ほかにいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。谷口委員にはこのプログラムのプログラムディレクターを務めていただいております。それでは,谷口委員には本議題の議論には加わっていただかないということでお願いしたいと思います。
 では,事務局から評価実施状況について説明をお願いできればと思います。
【三木課長補佐】  ありがとうございます。こちらの方も先ほどのDIASと同じでございまして,研究代表者の方々から自己点検結果報告書を頂きまして,そちらは参考資料2となってございますけれども,そちらから評価結果案を作成させていただいてという形になってございます。引き続き,担当の方から,中間評価の結果の原案について御説明をさせていただきます。
【滝沢専門官】  よろしくお願いします。専門官の滝沢です。資料は資料2と参考資料2の自己点検結果報告書,両方参照することがありますので,開いていただければと思います。
 まず,資料2をごらんください。まず2ページ目ですが,こちらは中間評価調整グループの構成員の一覧になります。環エネ委員会の委員の皆様からは山地委員と,あとは加藤委員に入っていただいております。また,この中で元企業の方2名,日本学術振興会の産学協力研究委員会の委員長の3名の方に入っていただいておりまして,実用化という観点も含めて評価を頂いたという状況でございます。
 3ページをごらんください。概要ですが,2016年度から始まっておりまして,今年で3年目になっております。研究開発概要と目的ですが,2ポツのところです。「窒化ガリウム(GaN)等の次世代半導体に関して,材料創製からデバイス化・システム応用までの研究開発を一体的に行う研究開発拠点を構築し,理論・シミュレーションも活用した基礎基盤研究を実施することにより,実用化に向けた研究開発を加速すること」ということで進めております。
 体制は5個の拠点を作っておりまして,中核拠点,それと評価基盤領域,パワーデバイス・システム領域,レーザーデバイス・システム領域,高周波デバイス・システム領域というところで,1個の中核とほかの4つ,合計5個の拠点で連携しながら研究活動を進めているという状況です。
 3ページの3ポツのところ,これは事前評価のときに作っている必要性,有効性,効率性ですが,これらの観点でもう一度中間評価で見直したというところで,次のページ以降に進んでいきます。
 4ページをごらんください。予算の状況ですが,初年度10億円で,現在は14.4億円。2019年度は概算要求の金額が載っておりますが,総額でこれぐらい見込んでいるというところです。
 特徴の一つとしましては,PD,POです。企業経験者,若しくは企業の方,事業家の経験がある方というところで,我々の今回の事業は2030年度の実用化を目指して,2020年度までに何をすべきかという観点でプログラムを進めている状況です。また各拠点の中で必要に応じて5ページの通りフィージビリティースタディも行いながら,課題の抽出も行っているという状況です。
 おめくりいただきまして,6ページ,中間評価の本題に入ります。中間評価を行うに当たって,まず参考資料2を見てください。自己点検結果報告書の大まかな構成について,中核拠点の例を見ていただきたいのですが,基本的に我々のプロジェクトは5年プロジェクトで,5か年の計画を立てております。更に年度ごとの目標,年度ごとの計画も立てております。それぞれで中核拠点でも幾つか主課題というものを設定しております。その主課題ごとに目標は何を達成しているか,成果が一体何が出ているのか,それぞれに進捗がどうなのかという細かいところは1ページに表が載っています。
 中核であればこれは順調に進捗とか,そういうような自己評価になっています。それぞれ研究開発の成果として,具体的な数字も含めて入れていただいております。基本的にこういう仕組みでほかの4つの拠点の部分についても同じように,成果は論文にどう出しているかとか,そういうところまで含めて自己点検書を作成いただいておりまして,これらを含めて中間評価調整グループ委員の皆様に評価いただいたという状況でございます。
 資料2の方にお戻りいただきまして,6ページです。大目標,中目標は省略しますが,基本的に省エネルギー社会の実現というところで,パワエレの中で特にGaNをどのように進めていくかというところが大きな目標,これをどのように実用化につなげていくかという観点で研究開発を進めています。
 研究開発テーマ数の活動実績がありますが,先ほどの主課題の拠点を少しずつ増やしておりまして,レーザー領域は29年度から増えました。30年度,今年度からは高周波が増えております。最初は3つだったものが今は5つになっている。その中の主課題を含めて今15テーマが走っているという状況です。特許出願数が最新のデータで11件。7ページに移っていただきまして,ウエハ・デバイスの試作件数が10件,論文数も22件という形で増えてきているという状況です。
 7ページの3ポツの(1)課題の進捗状況というところで,このプロジェクト自体5個の領域を設け,その領域ごとの連携というところもオールジャパンの体制で研究開発を進めて,世界のトップを取れるような成果を出していきたいと進めております。
 7ページの中盤のところに幾つか成果が出ているのですが,例えばGaNの結晶成長のところで,今までのキラー欠陥の密度が10分の1ぐらいだったり,あとは歩留り率が100%と,これも革新的な技術の成果であったり,ダイオードのリークの起源が分かってきたというところ,評価基盤領域ではウエハ全面のゆがみ,どこがどうゆがんでいるか,可視化する手法であったり,あとはレーザーデバイス領域では,低抵抗で低コストを両立するGaNのトンネル接合形成技術の確立,パワーデバイスでは高速・低欠陥の溝を加工する技術というところで,これはそれぞれ世界初で世界最高水準の成果が得られていると評価を頂いております。それらについては本年の5月にもシンポジウムを行っておりまして,マスコミ等でも報道は一部されているという状況でございます。
 ただし,一方で先ほど進捗というのを書いたのですが,パワーデバイス・システム領域とレーザーデバイス・システム領域の中で一部進捗に遅れが見られたというものもあります。これは自己点検結果報告書を書いた8月の時点では少し遅れがあるのではないかというところでした。
 ただしこれらについては,我々は世界初,世界トップを狙っていますので,重要かつ世界的にチャレンジングな課題。それも今回連携というところで,研究開発法人等が有する最先端の計測・評価装置の特徴を最大限に発揮できるような研究者を集結させた評価基盤領域,パワーデバイス・システム領域,レーザーデバイス・システム領域と連携というところで解析をしたり,あとはアイデアというものをPD,PO含めて議論を進めておりまして,現段階では目標達成に向けた道筋は見いだされていると評価しております。
 以上のことから,この中間評価時点である本事業の進捗状況は適正と評価できるという形で中間評価調整グループの評価を委員の皆様にしていただいております。
 続いて,8ページの(2)各観点の再評価。まずは必要性です。国費を投入する必要性はあるかという観点ですが,ちょうど2016年4月にNESTI 2050が決定されました。また2018年4月に決定した環境基本計画の中にもパワーエレクトロニクスの話も位置付けられております。やはり温室効果ガスの排出の削減という観点,またエネルギーの経済効率性の確保といういろんな観点を含めて,国が進めるような観点というものは事業開始当時と比較しても高まっていると考えております。
 またそのほかにも窒化ガリウム(GaN)というものについては,実は今でも実用化がされておりまして,ただ一方で8ページの中盤以下のところにあるのですけれども,我々のプロジェクトでもGaNの上にGaNを作る,GaNの基板の上にGaNをいかに成長させるかというところで,今その基板をSiCとかほかの材料であっても実は幾つか走っていたりします。
 ただ一方でやっぱり物性がちょっと違ってくるので,GaNの持つような本来の性能を最大限発揮できていないという部分も実はあって,その意味で今後,より大電力で使用する耐圧性のアップとか,又は価格競争力という面での課題を解決するところで,やはり今回我々がやっているような欠陥が少ないGaNを作るもの,それをベースにして,性能が非常に高いものを作るための基礎・基盤研究というものが必要ではないかという評価を頂いております。
 次に,9ページ,有効性のところです。今回,先ほどから何度かお話しさせていただいておりますが,この中間拠点を初めとして5個の研究領域というものを設置しております。これを一体的かつ総合的な事業推進となるように,相互に連携しながら実用化に向けて取組を進めています。例えばその中核拠点で作製したGaNの結晶を,パワーデバイス・システム領域と評価基盤領域が連携して,電気特性に大きく影響するような欠陥分類を進めたり,レーザーデバイス・システム領域において,これまで測定が不可能だったと言われていた,GaNのナノ構造にマグネシウムをどうドーピングするかというところについて,評価基盤領域とも協力して,それを初めて測定することに成功しているという状況です。
 10ページの方に移りますが,また今回そのプロジェクト自体は,基盤研究でGaNのコンソーシアムというものも,別途これは名古屋大学が中心になって立ち上げておりまして,参加企業数も増えてきております。そういう意味で,今回のこの一体的かつ総合的な研究開発を実施して,更にその後,我々の事業の成果が実用化にまで進んでいく体制ができていると判断して,有効性も高いと判断いただいております。
 また効率性の観点ですが,先ほどPD,POのお話がありましたが,10ページの中盤より下の部分です。研究マネジメントの企業での事業化の実績を有するPD,POの下,知的財産の管理も含めて,実用化に向けた効率的な事業運営・研究開発を実施しております。
 ヒアリングも年間2回です。大体丸1日掛けています。今年から2日間に増やしてやることになったんですが,そういうヒアリングをやったり,また事業推進会議もやっております。さらに,現地の視察をPD,POにも行っていただいて,現場を見ながらディスカッションを徹底的にしていただいています。また,特にこの進捗に悩んでいるところへのアドバイス,特許の戦略の部分についても,POからこれを押さえた方がいいんじゃないかというアドバイスまで頂いておりまして,そういう意味で一体的に進められていると指摘されています。
 また,10ページ下ですが,GaNのデバイス研究に特化したクリーンルーム施設(C-TEFs)というものも,今回名大の方に建設されまして,そこもうまく使いながら,効率的な研究開発ができるとの評価です。
 以上によって研究の効率性は高いと評価を頂いております。
 11ページの中盤,(3)今後の研究開発の方向性ですが,以上のとおり,これまでの各観点の評価を踏まえまして,研究開発の課題は継続ではないかという形で評価を頂いております。
 なお,(4)最後になりますが,今後の研究開発の推進に当たって留意するべき点というところで指摘を頂いております。
 1つ目は,プロジェクトは社会実装を目指したものですが,その意味で成果の論文数が少し少ないのではないかというところがあります。これは論文を出す前に実は特許を押さえているとかという戦略もありますので,一概に少ないというのが,この段階でいいか悪いかという論点はあるのですが,今後特許の出願を終えた成果から学術論文としての表出も期待したいと言われております。
 また,結局のところ世界の市場も見据えると,知財をどう取っていくかが非常に大事になってきます。現在のこの知的財産のポートフォリオを全体に確認した上で,出口戦略・知的財産戦略を常に策定して,更に更新し続けるということも必要であると指摘いただいております。
 また,GaNのコンソーシアムというところで,先ほどお話ししましたが,アカデミアが中心になって産業界での取組・ニーズに関する情報収集も行いながら,産と産の連携関係を維持・発展させることで,将来的にGaNのサプライチェーンの構築に貢献すべきであるということも言われております。
 また関係省庁との連携です。GaNについても当然その出口寄りの経産省,環境省との連携というのも重要ですので,そこについても,この事業の終了後まで見据えてマネジメントをしていくべきではないかと言われております。
 また,最後ですが,昨今の省エネルギー社会の実現に資する,この次世代半導体の研究開発,これは国際競争も非常に激しい部分であったり,また技術の寿命の短期化とか,将来社会ってどうなっていくべきか,そういうところも鑑みて,今後の半導体分野,パワエレに関連する,より先を見据えた研究開発で,戦略的な検討も本格的に行うべきではないかという形で指摘を頂いております。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。それでは,ただいま御説明いただきました中間評価結果(案)について,御質問,御意見等ありましたら,委員からお願いしたいと思います。札を上げてお知らせいただけると助かります。いかがでしょうか。花木委員,お願いいたします。
【花木主査代理】  少し細かい点ですけれども,11ページの下の方に,先ほど御説明があった,GaNのコンソーシアムを活用して,サプライチェーンを作っていくというのがございましたよね。具体的にはそこに入ってこなければいけない産側の製造メーカーであるとか様々,どれぐらいのメンバーが入ってくるとサプライチェーンが構成されるのか,この辺ビジネスとしてすぐに成り立ちそうなのか,およそどんな印象でしょうか。まだ具体化されていないですか。
【滝沢専門官】  中間評価の準備を開始した2018年8月時点でGaNコンソーシアムには47機関の参画があります。例えば企業側も,今企業の中でも研究活動をしていて,実用化に向けた取組を進めている状況なのですが,まだこの段階でサプライチェーンまで,GaN on GaNという革新技術ができるめどまでは,正直立っていないと思います。皆さん,物すごく我々のプロジェクトには興味は持っていただいていますので,我々が成果を出して,今後どうするかというロードマップも含めて,このコンソーシアムにも協力を頂きながら作っていくことが大事かなと考えております。
【花木主査代理】  その47よりも上流側を見ていくということですか。47に入っていないところまで広げていくということになるのでしょうね。
【滝沢専門官】  最終的にこのGaNの原料の調達とか,そういうところまで含めて考える必要があると考えております。
【花木主査代理】  ありがとうございます。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかの委員からいかがでしょうか。関根委員、お願いいたします。
【関根委員】  知財にかなりプロジェクトの中でも力を入れておられるということで,非常にいいなと思いました。ただ特許のポートフォリオは当たり前なのですけれども,通常は事業計画なんかをベースに作っていくので,もちろんこれは企業がやっている話ではないですから,企業からのいろんな情報も入れながらやられていると思いますが,そういったところをちょっと具体的に教えていただけないでしょうか。例えば,PD,POをやられている方は企業から1名なのですかね。
 また,どういう形でそういった知財のポートフォリオを事業と結び付けた形でやっているかということが,もし分かれば教えていただきたいことと,もう一点,あとはこのGaNの方は,多分少し先の技術とはいいながらも,非常に競争が激しい部分だと思いますので,そういった知財が価値あるものになっているかという一つの判断基準として,ほかのところからの攻撃を受けたりする場合は,ほかが困るような特許を出しているということになりますので,例えば早期審査をやったときに異議が来たりとか,そういったことがもう一つの指標になるかなと思ったのですけど,そういったことはどんなことで見られているかというのを,もし分かればお願いいたします。
【滝沢専門官】  ありがとうございます。知財については知財運営委員会を設置しておりまして,その中でPD,POを含めて,参加者の中でも,資料の4ページ,5ページのところに参加の企業も入っておりますが,企業も含めて今後どうやって取っていくか。特に基本的な部分,ここを例えばGaNの結晶の製造する部分とか,そういうどこをどう押さえていくかというところの議論をしているという形で承知しております。確かに今後戦略はなかなか難しい。ポートフォリオ,企業の方も,どこまでその情報をアカデミア側にどう返せるかというのはあるのですけれども,少なくとも今後取っていくという観点では,そこで議論してやっているという形で承知しております。
【関根委員】  非常に有効なトップポートフォリオが立っているかどうかということは,一つの評価基準として,他者から,ほかも同じような研究をやっているところから攻撃を受けると,これはこれで一つ,ほかから邪魔だと思われている特許が出ているということの査証になるので,そういった見方もできるかなと思うのです。ただ,まだそのレベルに行っているのかどうかちょっと分かりませんけれども,そういったことがあるのかどうかとか,そのあたりが分かれば。
【滝沢専門官】  今の時点では私はその話は聞いたことはないのですけれども,そこも留意して進めていきたいと思います。ありがとうございます。
【関根委員】  ありがとうございます。
【高村主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。加藤委員,お願いいたします。
【加藤委員】  この評価の委員に入っていまして,先ほど御説明の中でありました,今後の論文数に期待するというのは私が書かせていただいたところなのですけれども,今,もちろんこのプロジェクトが実用化を目指して,割と特許重視の話で説明もずっときたのですが,やはり結構この中身的には,結晶作製の基盤技術とか,非常に学術的にも重要になるところがたくさんあるのではないか,だから余りそちらをおろそかにされるような方向性を持ってこられると,ちょっと気になるなと,ここは文部科学省でもありますしということで意見を述べさせていただきました。
 特許は頑張ってどんどん出せば出せるものですけれども,学術的な評価を受けるということはとても重要だと思うのです。だから論文も今の段階では,この規模にしては非常に少ないと言わざるを得ないと思ったので,そういう意見を出させていただきました。
 以上です。
【滝沢専門官】  ありがとうございます。おっしゃるとおりでして,論文の方も実は今年度の数字を見ると,もう既に昨年度の実績を上回っております。
【加藤委員】  これからですね。
【滝沢専門官】  今後しっかり出していきたいと我々も考えております。ありがとうございます。
【高村主査】  ありがとうございます。それでは,本郷委員,お願いいたします。
【本郷委員】  私,この中身の方は余りよく分からないのですが,いろいろ調べてみたら,大分実用化の方が加速化している。高圧,大容量のところはともかく,パソコンですとか,そういう周辺のところでは大分進んでいるという感じで出ておりまして,この研究がスタートした時点から,大分周辺環境が変わってきているのではないか,ますます加速してきているのではないかなという印象が,ちょっと素人目には見えたのですけれども,そういう状況だとした場合,タイムラインだとか,目標にするところがあると思うのですが,そうしたものが今回見直しといいますか,修正したようなことはありますでしょうか。
【滝沢専門官】  ありがとうございます。まずそもそも目標自体は,確かに開始当初5年の計画を立てておりまして,年度ごとの計画,年度ごとの目標も毎年立てているという状況です。今この時点の目標というものは,まだ世界を見ても十分世界初だったり,世界最高レベルのものを出せるような性能なりというところで目標を設定しておりますので,おっしゃるとおり,今の時点では目標の大きな変更とかというものは加えておりません。
 一方スピード感,それは確かに非常に重要だと思います。2030年実用化という話をしているのですが,デバイスとかのウエハの試作というものに着手しております。また先ほどお話ししたC-TEFsというGaN専用のクリーンルーム棟も立ち上がっておりまして,そちらでも順次進めております。中間評価結果(案)にも指摘がありました,他の省庁との連携も重要です。いかにデバイスを大量に製造するラインを作っていくかというところも加速していって,2030年という目標もあるのですが,できるだけ早くというところは我々も狙っていきたいと考えております。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかに委員から御意見,御質問はございますでしょうか。
 評価のグループの主査を務めていただいている山地委員から,もし何かございましたらお願いします。
【山地委員】  委員の間で何回かコメントをして,この資料に仕上げました。非常に的確に説明していただいて,特に内容的に付け加えることはありません。ただ強調すると,パワエレの重要性というのは先ほどあったNESTIの中でも重要視されているところですし,それから何といってもGaNはチャレンジなのですけど,日本が強いところです。
 それから,先ほどの基盤,基礎的なところが大事だという話があったのですけど,一方で,そこだけでは駄目でして,このプロジェクトの場合,デバイスとかシステムを作るという,こういう出口へ向かったところが入っている。それからもう一つ,オールジャパン体制という名前になっていましたけど,コンソーシアムとか入って,そういう意味では非常によくやられていると思います。
 私も専門ではないのですけど,論文数が少ないという話は確かに面白かった。私も電気系の教員をしていたときに,電子のエレクトロニクス系って物すごく論文が出るんです。それに比べると少し少ないかなというイメージはありましたけど,大事なのは知財をきちんと構築するということですので,非常に順調にいっているものだと思って了解いたしました。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかに御意見,御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 大変闊達(かったつ)な御意見,御議論いただきありがとうございます。基本的には今回御説明いただいた原案についてのクラリフィケーション,あるいは追加的な補足のコメントを頂いたものと思っております。本日頂いた御意見を,この原案にどういう形で修正,反映するかという点については,先ほどの議題1と同様でございますけれども,一任いただいてもよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。
 それでは,この中間評価結果(案)については,次回以降の研究計画・評価分科会で私から説明をすることにいたします。ありがとうございました。
 それでは,議題の3に移ってまいります。議題の3は1と2と少しさま変わりいたしますけれども,水素に係る最近の研究開発動向についてでございます。まず事務局から,この議題の背景について簡単に御紹介いただいた後で,本日,九州大学の佐々木副学長と,物質・材料研究機構の西宮エグゼクティブアドバイザーにお越しいただいておりますので,水素に関わる最近の研究開発動向について御発表をお願いしたいと思っております。
 ではまず,事務局からお願いいたします。
【滝沢専門官】  引き続いて滝沢からお話をさせていただきます。資料3-1をごらんください。水素をめぐる最近の動向についてというところで,まず,なぜいきなり水素なのかということをお話させていただきます。
 ページをめくっていただきまして,2ページをごらんください。我々は,このCO2をどう排出削減させていくかというところで,いろんな技術というものもこれまであって,今回この2ページの下の部分の表を見ていただくと,電力,自動車,鉄鋼,化学,窯業・土石と,いろんなところでCO2が今排出されていますよと。その中で,主なコア技術として整理すると,右側にある再エネ,蓄エネ,水素,CCUS,パワエレというものがあると思っております。
 この中で水素というものはCO2削減という観点からすると,代替技術のところを見ていただくと分かるんですが,製鉄の還元に,コークスの中に水素を入れる。化学のところに反応に水素を使う。発電,今石油由来のもので使っているものに水素を入れる。燃料電池,水素から電気に変えるという,いろんな複数の分野の共通解の一つではないかと考えております。
 また,これまで文科省なりの取組を見てみますと,太陽電池の開発とか,蓄エネ,ALCAの方,JSTの事業の中でも,経産省,連携施設,車載用の蓄電池の開発をしております。パワエレ関係,先ほど御説明しましたが,半導体も取組を進めているところで,共通解の一つの水素について,文科省が今後取り組むべきことは何があるのかというところで,本日是非議論をしたいと考えまして,そういう意味でフラットに是非皆様から御意見を頂きたいと考えております。
 めくっていただきまして3ページです。そういう意味で水素はCO2削減の共通解の一つではないかというところで,例えば一つの効果の例なのですけれども,今幾つかの部門で,仮に水素を使うと,全体の中で6ギガトン,世界全体で60億トンのCO2排出削減量の効果があるのではないかという試算があります。
 また,下に図があるのですが,2050の10 EJというのが既存部門において水素が担うエネルギー消費量です。それ以外,上から発電用,輸送用,産業利用,建物の電力・熱利用,新たな原料用途というところで,それぞれ考えると合計で67EJ,CO2排出量分で6ギガトンぐらい,60億トン。2度目標の達成シナリオの必要削減の20%ぐらいをこれで占めているのではないかという試算もあります。
 また水素についてはエネルギーセキュリティーの観点もありまして,今ほとんど化石燃料は輸入しておりますが,水素というところ,つまりエネルギーの調達の多様化であったり,燃料電池については特許出願数が我が国は世界一という情報もありますので,そういう産業競争力の部分もあるのではないかとも考えております。
 4ページですが,政府全体の中でも水素については,水素基本戦略がちょうど昨年の12月に,再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議で決定しております。その中でも革新的技術開発という項目もありまして,幾つか2050年を見据えてこういうことというものも例として挙げています。
 また,ICEFの中での水素セッションでも議論されました。また,水素閣僚会議という,世界で初めて閣僚レベルが水素社会の実現をメインテーマとして議論するような会議が,今年の12月に我が国で開催されているというところです。水素・燃料電池戦略協議会というと,水素基本戦略を作ったところの下部組織ですが,そこでも水素ロードマップの改訂に向けた議論を行うという流れになっております。
 5ページですが,これが今全体の水素のバリューチェーンです。今我々が想定している水素のバリューチェーンですが,エネルギー源があります。そこから製造,輸送・貯蔵して利用するという,それぞれの段階で水素というものがありますが,この各段階で何か取り組むべき課題が今あるのかというところを是非議論したいと考えております。
 本日お越しいただいています,アカデミアの中で水素に関連した取組を重点的に行われております佐々木先生からも,本日お話を頂き,西宮先生,この中で実は水素の液化の部分の効率をいかに上げるかというところで,本年の11月から新たにJSTの中のプロジェクトが開始されておりまして,その内容についての御説明を頂くという,2つのホットトピックの紹介を本日させていただいた上で,もう一度私の方からディスカッションペーパーの説明をさせていただいて,広く御意見を頂ければと思っておりますので,よろしくお願いします。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それでは早速でございますけれども,九州大学の佐々木副学長に本日お越しいただいております。御報告のほどよろしくお願いいたします。
【佐々木副学長】  九州大学の佐々木です。現役ばりばりで研究しておりますので,本日は研究者として説明したいと思います。水素社会実現への大学への貢献という題目にしておりますけれども,資料3-2をごらんいただければと思います。
 この委員会で説明させていただけるということで,本当に有り難く思っております。機会を頂きましてどうもありがとうございます。私も30年やっていて,なぜ水素なのかということはよく言われるのですけれども,そういう背景も含めて,本日は説明させていただこうと思いますので,よろしくお願いいたします。右上にページ番号を付けております。少し駆け足になりますので,ページ番号を言いながら説明させていただきます。
 2ページに移っていただきたいと思います。我々は日々電気を使う社会に住んでおりますけれども,福島の事故以降,エネルギーを取り巻く状況は変わっておりまして,2030年の目標はそちらに書いているとおりでございます。この中で再エネは20%以上ということですし,安全が確認された原子力は再稼働しましょう。
 でもこれでも2030年で火力発電が半分残るというのが,結局日本の置かれている状況でございます。九州は実は原子力発電所の再稼働もほぼ予定どおりということでございまして,皆さん環境分野の方は御存じのように,再エネの接続問題がもう本土でも起こっているというのも九州でございますので,我々はエネルギー問題のまさに最前線に立っている状況でございます。
 実はこれを実現しようとしますと,原子力というのは出力調整できないベース電源でございますから,エネルギーマネジメントがますます重要になってくる。再エネは,ここで22から24%と書いているのですけれども,九州で御存じのように接続問題が起こる。特にこの前の月ぐらいは,週末になりますと太陽電池の割合がもう7割を超えるのです。もうそこまで実は我々は追い詰められているところであります。それは決して悪いことではなくて,これを使いこなす社会を作っていけばいいということになります。
 火力,石炭,天然ガスは残ります。これは当然CO2を出しますので,この部分で確実に発電の効率を上げていくということで,CO2を減らす必要が出てまいります。これで26%減というめどが付くわけなのですけれども,今我々が置かれているのは,まさに下に書いているような,パリ協定が言っている,要は今世紀後半にCO2の排出を実質的にゼロにしてくださいということでございます。ここは高村主査を初め,先週COP24で最新の話を聞かれてきたと思いますし,1.5度報告書というのが出て,これをもっと前倒ししろという議論を多分されてきたのかなと思っております。
 こうなりますと,次のページでございますけれども,3ページ目にありますが,CO2を将来的に8割減,若しくはそれ以上いこうとすると,これはいろんな計算をすると分かるのですけど,やはり水素を使わないと,なかなかエネルギーを使いこなす社会は難しいかなということが言われておりまして,政府もそういう方針を挙げてきたということでございます。
 何で水素かといったときに,やはり水素を使う理由というのは,いわゆる炭素循環,使ってCO2を出すエネルギーシステムから,使って水が出るという水素循環に変えられるということ,水素に注目が集まった一つのきっかけというのは,燃料電池が実用化してきたことでございまして,燃やさずに直接高効率に電気が作れるようになってきた。これが車,家庭を初め,いろんなところで形になってきたところからスタートしております。
 その図の左側にありますように,実は産業革命以降,我々は内燃機関を使いこなして,いわゆる熱エネルギー変換ということをやってまいりました。要は燃料というのは燃やすものということですから,燃料を燃やして,まず熱エネルギーに変える。そこから仕事をして運動エネルギーに変えて,電気エネルギーに変えることをしてきたということでございます。この内燃機関はスケールメリットを出せますので,例えばタービンに水素を混ぜることになりますと,その分CO2の排出が大幅に減らせるということですから,量的なCO2排出削減という面では,水素タービン初め,そういう技術が期待されているというのが一つございます。
 他方,やはり水素が注目されている理由というのは,熱を介さずに,我々が買ってきたりためたりできる化学的な形のエネルギーから,我々が日々使う電気を直接作れるというのが,この技術の本質的なポイントになります。ですから家庭を初め,自動車,業務用,産業用,そして今発電用に向けても水素を使っていこうということになりまして,ここはいわゆる効率を上げられる,つまり質的にCO2の排出を減らせることになります。
 あらゆる分野で量と質というのは両方大事ですので,短中期で近々にCO2を大量に減らさないと駄目だということになると,内燃機関に水素を混ぜることになりますし,様々なところで効率よく電気を作りましょうということになると,燃料電池が期待されることになります。
 次の4ページ目,なぜ水素なのですか,なぜ燃料電池なのですかということでございますけれども,少なくとも論点は4つ挙げられると思います。1つ目は,先ほど申し上げましたように,効率よく電気を作れる。ですから電気を作るときの無駄を減らせるということは,一つの大きなポイントになります。
 2つ目に,車が特にそうですけれども,排気ガスがない社会,要はゼロエミッションのモビリティー化ということが,先週のCOP24の議論でもあったと思います。それを実現できるのは電気自動車とともに水素自動車ということかなと思います。
 あとは,エネルギーはセキュリティーというところを必ず考える必要がありますけれども,石油に過度に依存しない社会を作る。日本が稼いでいる産業は車産業ということになりますし,車がないと地域では移動もできないというところですから,その中でゼロエミッションのモビリティーで水素が期待される。
 最後は皆さん方も御存じのように,再エネを使いやすくする中で,水素というのは期待される,水素と電気は一番親和性が高いということになります。
 こういう水素,燃料電池の価値というのは政府も認識していて,5ページ目にございますけれども,エネルギー白書,これは2016年版でございますけれども,エネルギーの中で環境制約と成長を両立させようとされています。そのときに3つの柱が挙げられております。1つは左から省エネ,それから真ん中の再エネ,それプラス新たなエネルギーシステムをちゃんと作っていかないと駄目ということが,国ベースでも認識されております。その中で燃料電池自動車,水素ステーションというのも明記されております。
 あとは右下にありますように,新しいエネルギーシステムを構築すると。要は2030年までは26%減で,ある程度積み上げ型でめどは付きつつあるということですけど,その先を考えて,8割減をやるとなるとやはり水素を入れないとということが,広く認識されつつあるということかと思います。
 次の6ページ目でございますけれども,よくこの水素の話をすると,マスコミから,日本だけがやっているガラパゴスじゃないですかという指摘も頂くのですけれども,実は日本のロードマップより海外の動きの方が速く,再エネを導入しよう,CO2を出さない社会を作ろうということで,むしろ日本が遅れつつあるのも電力エネルギーシステムの状況でございます。
 1つ大きなところでは,先ほども紹介がありましたけど,Hydrogen Council,水素協議会と言っておりますけれども,そこで世界のリーディングカンパニーが,やはり水素もしっかりとやりましょうということを認識されつつあるということでございます。
 あとは真ん中ぐらいに書いておりますけれども,そういう企業が試算したのですが,2050年までに当然ほとんどの先進国が8割前後,CO2の排出を減らそうということなのですけれども,それの大体5分の1ぐらいは,この水素技術をきっちり入れることによって実現できるのではないかということが,ポテンシャルとして示されてきております。ですから日本がリードしているところもありますし,世界の大競争の中でやはり日本が大きく貢献できる分野と言えると思います。
 次のページ,7ページ目でございますけれども,燃料電池を核にした水素エネルギーということで,将来のあるべき姿としては,脱炭素,そして水素社会ということが言われるようになってまいりました。エネルギーは,大学でも論文を書いて終わりという学術分野ではございませんので,本当に社会にどう実装するかというところから考えて,そのために技術実証し,中核技術も企業と一緒に研究して,要素技術は大学がどんどん生み出す。そしてその基盤のところは,大学がきっちり基盤の工学を確立して構築していく。そういう一気通貫の取組が日本の中で必要になってまいります。
 今まではどっちかというと資源エネルギー庁が頑張ってこられましたけれども,政府を挙げてということになりましたので,文科省も是非この部分で大きな貢献ができるんじゃないかなと,我々も期待しておるところでございます。
 次の8ページ目でございます。水素分野で,この委員会の中には大学の先生も多いんですけれども,やっぱりこういう分野でアカデミアの貢献は重要と思っております。革新的な技術開発にチャレンジできるというのは,失敗も許される大学のいいところでございますし,大学がイノベーションのハブになって社会を変えていく。これはシリコンバレーを牽引(けんいん)しているスタンフォード大学もまさに同じですし,大学が核になって社会を変えていく,そのための先頭に立てるというのも,大学の将来のあるべき姿だと思います。
 それに向けてはサイエンスを確立する,そして人材を育成するというところも大事になると思います。その取組の少しは,その英語の本の方に書かせていただきまして,日本はなぜ水素をやっているのかも含めて,世界に発信させていただいているところでございます。
 9ページ目に移らせていただきます。九大は2005年から福岡市の西の伊都キャンパスに引っ越しを始め,それ以降,水素エネルギーを核にした研究教育拠点を作ってまいりました。九州大学というのはもともとアジアで初めて産業革命が起こった地にできましたので,ポスト産業革命も我々がやはり責任を持ってやっていくということで,取組を進めています。
 大学は本当に社会にいろんな貢献ができると思っています。基盤研究から産学連携,そして社会実装までトータルで考えられるのが大学でございますし,九州大学は水素ということを掲げて今やっておるところでございます。どんな社会が実現できるかということを,やっぱり大きな旗を上げて,それに向かっていろんな方を巻き込んでチャレンジしていくのも大学のできることでございます。
 10ページ目,脱炭素,その究極の姿の水素社会を我々も実現しようということで取組をしております。これにつきましてはCOIの事業,文科省の事業でございますけれども,東大の松橋先生と一緒になって,これまでどおり快適にエネルギーを使いながら,CO2の8割減,これを掲げ,それでは,どんな技術が必要なのかということを,まさに未来からバックキャストしてやることにチャレンジしているということで,いろんな成果も出ているところでございます。
 あとは11ページでございますけれども,我々大学人だけでやっているわけじゃなくて,本当に企業を巻き込んで,産業界と大学が一体となった取組をしております。こういうことはいろんな大学で今当たり前になりつつありますけれども,私どもはこの分野で平成22年度の事業から拠点を作ってやってまいりまして,日本機械学会賞,更にこの前,日経の地球環境技術賞もアサヒビールが取られておりまして,本当に企業が新しいチャレンジをする場所にもなっているところでございます。
 12ページ,大学の強みは幾つかはございますけれども,その一つがやはり最先端の研究をやって,いろんな新しい技術の芽を出していく,若しくは今まで分からないものを明らかにして,それで企業の技術開発を加速する,ここも大学が貢献できるところでございます。12ページにありますような設備をそろえさせていただきましたし,私も海外に10年,スイス,ドイツにいた人間ですけれども,圧倒的に日本の方が研究環境がすぐれている。ですから世界中の人が日本に来て研究したいというハブにもなっていて,そういうネットワークのハブの機能も大学は果たせるのかなと思っております。
 13ページでございます。詳細は割愛させていただきますけど,いろんな新しい研究開発で,例えば車も大体乗用車は30万キロ走ればいいのですけど,これから今作ろうとしている商用車,これは200万キロ走れないと,バスとかは売れないのです。ですから今とは全然違うような新しい材料がないと,やはりそういうものはできない。そういう新しいチャレンジをするのも,こういうイノベーションハブ拠点のできることだと思っております。
 14ページもございますけれども,超高効率化。こういう限界にチャレンジできるのも大学でございます。我々は,発電効率も7割,そして8割を目指すようなものが理論的にはできるということが分かってまいりました。こういう究極のエネルギーシステムを作るためにチャレンジすることこそ,我々アカデミアができることかなと思っております。
 15ページにございますけれども,水素というと何か車が出たら終わりではなくて,実は周辺のいろんな技術を組み合わせてやる必要がございます。脱炭素社会実現に向けて,大学というのはいろんな芽を育てていくことができますし,そういうものを企業がいつでも使って,必要なものを橋渡しして技術開発していくというところが,大学のできるところだと思います。
 最後は16ページ目でございますけれども,当然水素社会実現ということになりますと,スケールアップの技術開発,これはもう産業界が頑張っていただくところかなと思いますけれども,やはり次世代の技術,次次世代の技術開発をやるのも大学の大事なところでございます。我々は長年研究しておりまして,やはり水素製造,ここもかなりやることが多いと思いますし,むしろヨーロッパの方がかなり頑張っている。Power to Gasということでよく聞かれていると思います。
 あとは水素貯蔵も10気圧未満で貯蔵できるようになってまいりましたので,規制を見直さなくても水素が使えるようになる。そして水素利用のところでも,燃料電池関係でいろんな可能性があるということでございます。なおかつ水素社会実現ということになると,これは水素だけ考えるのではなくて,例えば電力の系統とどう親和性をとらせるのか。調整力という話が出てきますけれども,そういうところを今松橋先生ともやっておりますが,この水素社会,水素システムというのを,どう日本のエネルギー社会の中に位置付けていくのか。
 そして最後はやはり社会受容性。これはやっぱり原子力の二の舞は踏みたくない。私自身も原子力を勉強した人間なので,やっぱりそういうところもやっていって,トータルで社会を変えていく。そのためにアカデミアの貢献というのは大いにできるのかなと思っております。
 ちょっと長くなりましたけど,私の説明とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【高村主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして,物質・材料研究機構の西宮先生,よろしくお願いいたします。
【西宮エグゼクティブアドバイザー】  それでは,資料3-3に基づいてお話をさせていただきます。私は物材機構と日本大学と二足のわらじを履いております。それで水素については1974年からずっと四十何年もやっていて,水素吸蔵合金ということを知っておられると思うのですけれども,今回そうではなくて,液体水素だというところが非常に大事な話になります。
 1ページめくっていただいて,冒頭に液体水素は気体水素の800分の1の体積,これが一番売りになるところです。大量に使える。大量供給,大量貯蔵,省スペース。もともとが水素ですから,蒸発させてもこれは超高純度。変なものが混じってくることが絶対にないというところがポイントです。それから,高効率の電力貯蔵,送電の冷媒,そういう波及効果的な利用法があるわけです。
 その下に全体の課題。水素基本戦略,これが2030年に水素を30万トンと言っています。現状が0.02万トンですから,それに比べてすごい倍率ですよね。コスト30円/ノルマル立米。これは掛け算すると実は9,000億円です。その9,000億円という世界が,もう10年ちょっとで来る。だけど,今,日本は全然これができていなくて,もしも急に市場を開放すると,この後も登場しますけれども,ドイツのリンデとか,フランスのエアリキッドとか,そういうところが全部市場をかっさらってしまうというか,そういう危機感を持っています。
 結局それを解決するためには,その下にPOC1,POC2と書いてあるところです。まず液化水素を作るところがPOC1,そこで水素液化効率を向上。現状が大体25%ぐらいのところを,達成目標50%以上です。1回作ったものを運ぶときに,液化水素というのはどんどん蒸発してしまうのです。そこの現状5%と書いていますけれども,大体作ってから利用するまでに5%が蒸発してなくなってしまう。それをゼロにしたいというのがPOCの2番です。
 この2つをどうやって研究するのかというのが次のページに入っていまして,これがPOCの1番の具体的なところになります。グラフの2018というところに棒が立っていまして,これが全体の100円/ノルマル立米というやつなのです。青いところが液化コストで,これが33円。2030年に全体を30円にするためには,液化コストの青いところを,やっぱりこれも3分の1にするとすれば,10円/ノルマル立米が必要だ。ということをするためには,液化効率が今25%のものを,最低でも50%に上げる必要がある。
 これで十分かと言われると,それはまたこれからコスト計算する必要があるのですが,必要条件として50%の達成が出てくるところです。更に2050年ですと,20円/ノルマル立米で1,000万トンということが計画されていて,これは2兆円です。本当にこんな大きな市場がもう目の前に迫っている。
 既存技術ではそのパーセンテージを25から50にするのは理論限界がある。気体圧縮装置は全て海外企業由来。だから水素社会到来を見据えて,国産技術で必要な水素を供給する必要があるのだと。これがPOC1の表現でいきますと,効率50%以上で日量100キログラム以上が必要だということです。
 次のページがPOC2のゼロボイルオフというところなのですけれども,これはちょっとグラフが既存冷凍機というところからジャンプで星のところへ行っているのです。20ケルビンで冷凍効率15%超,20ワット以上を目指すと書いてあります。これはどういう計算かというと,計算モデルのところに液体水素貯蔵容器10立方メートル,これは水素ステーションで使われているぐらいのサイズです。これが毎日0.5%ぐらい減る。これを回収するには液化熱を奪う必要があって,それが大体20ワット,厳密には19ワットぐらいです。
 それからその効率を,ここでは%カルノーというちょっと別の効率を使っているのですけれども,採算ラインが大体10%カルノー,つまり液化水素を元に戻して,そのカロリーがちゃんと使えるカロリーじゃなければ,戻すことに意味がない。だから戻すためには10%カルノーが必要で,既存冷凍機ではどうやってもそこへ行きません。それをジャンプさせて15%カルノーのところへ持っていく。これが液化水素ゼロボイルオフを目指した小型・省電力化というところです。
 次のページが,この原理をどういう原理でやろうかということなのですけれども,磁気冷凍法。磁石というところで磁性体,矢印のものが,磁石の中ではそろっていて,外へ出るとばらばらになっています。ばらばらの状態というのは実はエントロピーの大きい状態ということで,そのそろっている状態からばらばらになると熱を吸収するのです。だから磁場の中に入れたり出したり入れたり出したりすると,このばらばらになるときに熱を吸収します。それで冷やしていく。
 そのためのシステムと,それから材料,その両方をやっていこうと。両方ができれば,多分液化効率は70%まで行きます。だけど目標としては,さっき言いましたけど50%。だからどっちかがこけても50%を達成する,そういうプランでやっています。
 次のページが,材料がどれぐらいのものがあるかという,これまでの経験の材料を示しております。横軸が温度で,縦軸がさっきのエントロピー変化です。0.4という数字,これは決して大きい数字じゃなくて,もっと大きいものを探す必要がある。
 それよりも温度の範囲が実は狭いのです。20ケルビンぐらいのところで大きなピーク,そういうものが欲しいのですけれども,オレンジのひし形で示した,これはエルビウムコバルト2というやつなのですけれども,それが辛うじて0.4ぐらいなのですが,温度範囲が狭い。だからもっと温度範囲の広い材料で,このΔSが高いものを開発する。それは物材機構が得意な分野ですから,大勢かかってこれをどうしてもやるということが材料的なプランです。
 次に,システム的なプランが7ページに出ていまして,ここに書かれているのは,一番左の水素ガスから始まって,蓄冷型磁気冷凍サイクル,カルノー型磁気冷凍サイクルと出ているのです。予冷サイクル,それから液化サイクル。この2つのサイクルが,実は小さい規模ですけれども,既に物材機構で実証済みで,横のグラフはそのときの効率や何かを表したものなのですけれども,基本的な情報は出ているので,これを一貫システムにして大きくしていく。多分それでPOC1,POC2が達成できると踏んでいます。
 次のページ,8ページがそれの年次展開で,最初の4年間に原理実証をして,スケールアップをして,POCを達成した後は社会実装をすると。オールジャパンの体制というところに,いろんな会社とか研究所,企業の名称がそろっていますが,これが全部そろって,次のページの社会実装へ至る。
 9ページに社会実装の道筋が書いてあります。サプライチェーンがこれで完成されて,冒頭に申し上げた水素の基本戦略,それが現実的なものになる。その下に,ハイインパクト・デファクトスタンダード化と書いてありますけれども,作ったものが国内で使われるだけではなくて,国際的にもそれが展開できるということで,国内展開,国際展開。要するにバーゲニングパワーを我々が得て,世界の市場を牛耳っていく,そういったことも視野に入れて,現在研究をスタートした状態です。
 どうも御清聴ありがとうございました。
【高村主査】  西宮先生,どうもありがとうございました。
 それでは,佐々木先生,それから西宮先生の発表について,この時点で事実確認等の御質問があれば頂きたいと思います。この後事務局のディスカッションペーパーの御説明もございますので,その後でより広範な観点から御意見を頂こうと思いますが,質問に限ってまずありましたらお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
 それでは,先ほど申し上げましたように,事務局からのディスカッションペーパーも踏まえて,改めて佐々木先生,それから西宮先生への御質問,御意見を頂ければと思います。
 それでは,事務局から,今後の水素に関わる研究開発の推進に当たってということで,御紹介いただけますでしょうか。
【滝沢専門官】  ありがとうございます。資料3-4と,もう一度3-1も一応見ていただきたいんですが,3-1の5ページのところと,3-4は1ページなので,それを両方開いていただきたいんですが,まず3-1の5ページ,先ほど幾つか水素の全体の話を佐々木先生からしていただきまして,また西宮先生からは,この水素の液化の部分というところでお話を頂きました。
 資料3-1の5ページの全体を見た中で,資料3-4を見ていただきますと,水素を作るところ,製造,貯蔵して輸送する,最後に利用するという各段階で,CO2大幅削減という観点から,こういう水素を導入する関連の技術課題として,ディスカッションペーパー,これは我々が例として,これまでいろんな先生方にお聞きしたり調べたりした範囲内で載せたものになります。
 一つずつ簡単に説明いたします。製造であれば,例えば今電気分解というものがありますが,主にほとんど水を電気分解する,若しくはバイオマス,そういうものもありますというところで何か取り組むべき課題はないのかという観点。
 また水素の純度です。これは用途に応じて燃料電池,車用では高いとか,発電用では低いとか,いろいろあると思うのですけれども,そういう用途に応じた純度を実現するような水素の生成技術というものが要るのではないか。
 あとは貯蔵・輸送に関する技術です。水素の貯蔵を効率的に行うというか,先ほど液化効率の改善,ボイルオフの削減の話がありましたが,そういうところであったり,あとは水素の貯蔵です。
 水素自体の貯蔵というものが液化をするところで,長期的に見てもエネルギー的にはどうかという観点もあって,実はエネルギーキャリアというものは,水素以外のものも幾つか資料3-1のところに輸送,貯蔵がありますが,それぞれのものについて化学変化によって水素以外の物質で行うところで幾つか,例えばハーバー・ボッシュ法よりも温和な条件だったり,最近欧米ではPower to Xというのがありまして,電力を使って水電解で生成した水素とCO2から,もともと太陽光を使って水電解,水素とCO2から燃料,CとHでできておるメタンとか,もうちょっと長いと,最初はガソリンとかもあると思うんですけど,そういう化石燃料の代替的なものができないかというのがあります。
 また水の中にある水素イオン。水素にしなくても例えば水のまま電解合成で反応に使えないか,水と窒素でアンモニア,そういうチャレンジングな,何かやるべき課題はないかという例を挙げております。
 利用については,主に電力,工業,モビリティーというもの,あとは再生可能エネルギーの負荷変動リスクと需給の最適化というところで4つ挙げております。電力については基本発電用,今の水素燃料電池とか水素ガスタービンの効率のアップ。工業利用であれば製鉄です。先ほどお話ししました水素を還元剤,化成品として使う。あとはモビリティー。今トヨタのMIRAI等とありますが,その燃料電池の軽量化と高密度化。あとはコストの問題です。まだ今結構高いところもある。そういうところも何かやるべきことはないのかというところ。あとは可逆の燃料電池。変動電源の対応の観点からは,例えば一度水素としてためておいて,それをもう一度燃料電池で電力に戻すということもあり得るかなと思っております。そういう意味でのこういう燃料電池の必要性はないのかというところ。
 あとは共通基盤的な技術として,水素そのもの。やはり水素は一番原子的にも軽いものですので,物性を正確に理解するための観察手法だったり計算手法が,今あるもの,若しくはないものがあるのかというところを一応挙げております。
 その際に留意すべき点として,ここに6点挙げております。1点目がこのLCAの観点からCO2削減効果。すなわち局所的にCO2が減ったように見えても,全体を見たら増えちゃうということがないように,ちゃんと全体を見なければいけないのが1つ。
 あとはエネルギーシステム全体の効率性もほぼ同じような形です。システム全体としてCO2を減らすことによって効率が悪くなる部分がないような形にする。
 あとは供給の安定性やコスト。既存のものを置き換えるとなると,やはり供給の安定性も非常に大事になってきます。またコストもそうです。インフラ自体のコストもここは含まれております。
 下の4つ目のポツがありますが,既存のインフラの活用の可否も含めた社会実装の可能性。水素はやはりまだ扱いにくい部分も正直あると思っておりまして,社会実装をより進めるには,例えば先ほど言った水素を原料で違うものにして何か社会実装していくとか,そういうこともあっていいのかなと考えております。
 あとは時間軸の現実性です。結局今研究開発は我々文科省が仮にやると,いつまでに何をやって,それはどう社会に普及するのか,そういうところも意識して取り組まないといけないと考えております。
 あとは安全性や環境配慮の方策。やはり水素というのは社会上の要請も大事になってくる,要は危ないとかいうことを思っている方もまだいらっしゃると思います。そういうところまで意識しながら取組を進めていく必要があると思っております。
 というところで,幾つかこういう意味で留意点や,また我々の課題例というものを挙げさせていただきましたが,先ほどの佐々木先生,西宮先生の発表も含めまして,例えばこういうところに課題があって,我々文科省が,例えば中長期的な観点なり革新的な技術,イノベーションの観点なりで進めた方がいいものがあれば,是非皆様方から忌憚(きたん)のない御意見を頂ければと思いますので,是非よろしくお願いします。
【高村主査】  ありがとうございます。それでは,今御紹介がありましたディスカッションペーパー,そして佐々木先生,西宮先生の御報告も大きく関わっていると思いますので,それらを併せて御質問,御意見を頂ければと思います。札を立ててお知らせいただけると助かります。
 では,沖委員,まずお願いいたします。
【沖委員】  ありがとうございます。もう何回も言われている話かもしれませんが,まず資料3-1で,「水素はCO2排出量の大幅削減に向けて,大きな効果が見込まれている」という書き方が,どういうふうに削減するかというところを言わないと,何か水素さえ使っていればCO2排出が減るという誤解を与えるのではないか,といつも思っております。先ほどの御発表でも,やや違和感を感じました。
 ただ御発表を聞いていまして,社会でどんなふうに水素が使われているかというときに,おっしゃるとおり結局ためておくということ,大量に輸送できるということからしたときに,本当にどういう使われ方がするかというと,海外の再生可能エネルギーを水素という形で国内に持ってくるところは,水素でしかできないということと理解いたしました。
 ただそれ以外について,例えば個々の家庭に配るだとか,あるいは車に乗せることを考えたときに,ほかの通常の電池,あるいは今後開発される電池に比べて,水素を使った燃料電池がどのぐらい有利か,少し教えていただければ,と思います。また,先ほど効率がどんどん上がっているというお話をお聞きしましたので,果たしてどんどん小口に分けていくような使われ方を水素が未来社会でやるのか,行われるのかというところに,関心を持ちました。
  少し疑問がございますのは,燃料電池的な使い方をすると大量の熱が出て,それが今でも余りバランスよく使えていないと認識しておりますが,単体の効率が上がるというのは熱エネルギーをどう考慮した場合の効率でしょうか。
【佐々木副学長】  後でまとめてお答えさせていただきます。それについては総合効率と発電効率という議論があります。ここで言う高効率化というのは,基本的に発電効率で議論しています。それは6割を7割,若しくはそれ以上にしていこうということですし,それ以外の熱もかなり使えるのです。家庭のエネファームというのが電気の発電効率は52%ぐらいまで行っていて,残りの実は30%以上の熱は利用できて,そうすると熱と電気で合わせて9割を利用するということになります。
【沖委員】  なるほど。分かりました。
【佐々木副学長】  それも込みでちゃんと有効に利用できるということです。
【沖委員】  そうしますと,家庭については水素を持ってきているというよりは,ここの3-4に書いてあります,もう可逆の燃料電池みたいなものが従来のに置き換わるのかなということを,お話を聞いていて思いました。いずれにせよそのLCAの観点からのCO2の削減効果単体ではなくて,社会全体としてどういう運び方をして,どういう分配をしてというのがいいかを,グリッドに乗せるという話と比較してやっていかないと,なかなか現実味を帯びないのではないか,水素という旗印の下で実はいろんな技術,いろんな目標がセットになって売り出されているなという印象を受けました。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。佐々木先生,何かコメントがございますでしょうか。
【佐々木副学長】  私は年間7,000人ぐらいの視察見学を大学でしていまして,いろんな方からいろんなことを聞かれるので,いろんなお答えも私の方からさせていただければと思います。
 幾つか御質問いただきましたけれども,1つ目に頂いたコメントは,水素を大量に使う,海外から持ってくる,若しくは国内で作るとか,いろいろありますけれども,結局は海外の本当に安い再エネで水素を作って,それを水素で持ってくるべきだ,それだったら成り立ちますという御指摘ですけど,実は本日別の委員会でもまさにそういう話をしていまして,例えばアンモニアだったりいろんな話があったりするのですけれども,やはり一番経済的に成り立つ可能性が見えてきているのは,今海外の太陽電池なんかどんどん安くなっています。あとは風力もそうです。
 それで水素を作っておけば,電気は運べないけど水素で運んでこられるということですから,それはまさにおっしゃるとおりだと思います。それに向けてまずは海外から水素を持ってくるという技術を今,経産省なんかが頑張っているということですし,液化水素ということになると,まさに西宮先生の取組がいい技術として使えるということなので,それは我々水素をやっている人間としても共通認識は持っております。
 それから,2つ目のEVとFCVという話,これは特にMIRAIが出たときぐらいは報道はFCV一色で,それから去年ぐらいまではもう何かEV一色ということになりましたけれども,これは車会社も同じ認識だと思いますが,どっちがいいとかどっちが悪いではなくて,一般論としてコンパクトなものでエネルギーを蓄えるのはもう蓄電池の方がいいんです。大きくなればなるほど電池を全部積む場合,出力を上げようとすると蓄電池はその出力を上げる分だけ増やさないと駄目だということですけど,燃料電池の場合には水素のタンクのサイズが律速するだけですから,どちらかというと大型の車は水素で走るような車の方が得意だということです。ですから,比較的小さめの車でしたら,それは電気自動車でしょう。
 ただし大型車とか,特にバスとかトラック,これはもうちょっと電気自動車で全部やるのは難しいかなということで,アメリカもそういう認識ですし,特に中国はそういう認識です。ですから日本も,もちろんそちらを見ながらやっていくということですけど,ただしトヨタなんかは,やっぱりボリュームゾーンの車をきっちり出して,技術を磨いて,それを車種展開する中で大型商用車にということにしておりますので,そういう分け方をしているということでございます。
 それから3番目に,さっき少しお話しさせていただきましたけど,燃料電池,特に定置用の燃料電池は,一つの大きなメリットは,電気は火力発電所に近い,少し劣るぐらいの効率で発電できますけど,やはりオンサイトで,要は電気を使うところで発電するので,そこの熱も有効に利用できるんです。家庭の燃料電池はエネファームを売っている日本が先駆けてやっていますし,それはむしろこれから日本が海外に展開もできるかなと思っております。
 なので,発電効率もそうですし,熱という我々がよく使うエネルギーも含めて,トータルで大体エネファームですと9割から95%のエネルギーを熱と電気で有効に利用できているということであります。ですから燃料電池とか水素ってオールマイティーではなくて,もちろん電池もあるし,火力発電もどんどん進んでいますけど,やっぱり水素とか燃料電池が使えるところは必ず出てきていますので,そこにまずきっちりいい技術を入れていくというところかなと思っております。
【沖委員】  ありがとうございます。よく分かりました。
【高村主査】  ありがとうございます。事務局からもお願いいたします。滝沢専門官、お願いいたします。
【滝沢専門官】  ありがとうございます。先ほどの3ページの試算のところは確かにおっしゃるとおり,大きな効果は見込まれている試算の一つの例でございます。少しお話もしましたが,やっぱり実際に入れるとなったら,エネルギーシステム全体の中で水素をどう位置付けて,それがどれぐらいのCO2削減効果があるか,それぞれちゃんと分析する必要があるかなと思っておりますので,そこは全くもっておっしゃるとおりでございます。
【高村主査】  ありがとうございます。かなり多くの委員から手が挙がっております。恐らく共通する御質問,御意見もあるのではないかと思いますので,まずは御質問,御意見を頂いた上で,ご回答をお願いしようと思います。
 それでは,江守委員,瀬川委員,本郷委員,山地委員の順番でお願いできればと思います。
【江守委員】  ありがとうございます。主に多分佐々木先生への御質問になると思うのですけど,僕は素人ですが,水素のことはいろいろ個人的に興味を持っているところです。今,沖委員が質問してお答えいただいたことで,僕が聞きたかったことをかなりお答えいただいたと思っているのですが,非常に素朴にこういうふうに聞きたかったというのは,電池と比べたときのメリット,デメリットを整理して教えていただきたいということと,電池との役割分担,あるいはすみ分けの戦略を教えていただきたい,そういうふうに聞こうと思っていました。
 EVやFCVという話を僕も非常に興味を持って見ているのですけれども,やっぱり今の水素ステーションがガソリンスタンドみたいに全国に整備されるような状況というのは想像しにくい。パーソナルモビリティーで水素がある程度役割を担うということは,少し難しいような気がするし,仮にそれを無理やり整備したとして,充電ステーションとそれが両方デュアルであるというのは,インフラの戦略としてそれで本当にいいのか,非効率じゃないかみたいな気がします。バスとかトラックの分を担うという話は以前からリーズナブルなことかなという印象で聞いていました。その辺も含めて,もし先ほどお答えに入っていなかった部分があれば,後で聞かせていただければと思います。
 文科省に対しては同じような趣旨で,水素戦略とバッテリー戦略,バッテリーだけじゃないかもしれませんけれども,直流送電とか何かいろいろ含めて,水素を使わないで電気を送ったりためたりする方のすみ分けも含めた,トータルな戦略で研究開発も進められるのがいいんじゃないかと思いました。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。それでは,瀬川委員,お願いいたします。
【瀬川委員】  佐々木先生,西宮先生,大変ありがとうございます。「日本のエネルギー戦略の中で水素をどう位置付けるのか」という話になるのですが,日本のエネルギー戦略の中で水素が合理的に位置付けられるのかどうか,また課題部分を技術がどう解決できるのかというところを,やはり明確にしていただく必要があると思います。
 日本のエネルギー戦略の中では当然コストというのがありますし,安定供給,それからエネルギーの自給率ということがありますから,海外から持ってくるということを前提にして本当にいいのかどうか。それから,再生可能エネルギーのさらなる利用拡大に本当につながるのかどうかというところがポイントかと思います。
 その中で,例えば再生可能エネルギーで作った電力を,水素でためるという話をされるのですけれども,基本的に再エネで作る電気は,必ずしもためるだけではなくて,例えば送電網での需給調整,あるいは揚水発電での調整,場合によってはピークカットが非常にわずかで済むので,それをわざわざ高い水素でためる必要性が本当にあるのかどうか,そういった議論が出てくると思います。その意味では,相当コストダウンをしない限り,技術開発に意味があるのかどうかという話になってくるかと思います。
 もう一点,西宮先生の話題で,液化水素による輸送の話になるかと思いますが,一方ではMCHがあります。MCHの場合には,既存のインフラを使ってかなり解決できる部分も多い。その部分を考えますと,例えば液体水素の場合は,本当に長距離離れた海外から持ってくるということを当然前提にすることになるかと思います。その水素が本当に必要になるのかどうかだと思うのです。また,国内で作った再生可能エネルギー電力を,E to GだけじゃなくてE to G to Eということになると,更にコストの上昇につながるのではないか。
 特に政府の中で最大の議論になっているのは,再生可能エネルギーの買取り制度によってFITの価格が押し上げられて,その部分ポストFITに向けて,どうやって国民負担を増やさない形での再エネ普及を進めるかという議論になっているので,本当にそこの部分で,今おっしゃっているような技術が貢献できる余地があるのかどうか,それから海外ではもうかなりEVシフトが進んでいる中で,日本のFCVだけが日本の中だけで閉じてやっていけるというのは,多分ないと思うのです。
 例えば自動車メーカーにしても国際展開を見て,電動車の販売戦略等を考える中で,その部分はどうなのか。恐らくそこまでいくと,ただ単に技術の問題だけではなく,国際戦略まで含むかもしれないですね。そういったところの先生方のお考えを,簡単にお聞かせいただきたいと思います。
【高村主査】  ありがとうございます。それでは本郷委員,お願いいたします。
【本郷委員】  ありがとうございます。私のコメントは,文部科学省の資料3-4,御説明いただいたペーパーなのですけれども,今後検討する際に留意すべき点として4つ目,既存のインフラの活用の可否を含めた社会実装可能性,このポイントがまさに一番重要な点じゃないかなと思っておりまして,資料3-1の5ページ,バリューチェーンのところ,NEDOのペーパーがあるのですけど,これを見たときに1つ抜けているのは,インフラの話がない。先ほどコストの話をされましたけど,コストだけじゃなくて,インフラを変えていくための時間というのも必要ですよね。
 水素社会というのは夢があっていいのだけど,100%水素にするということを考えたら,インフラ総取っ替えになるわけで,それはコストだけじゃなくて時間軸も必要です。もう一つ言うと,ほかの委員の先生からも出ましたけど,ほかの手段との比較というのもあるわけですので,この文部科学省の研究としていいテーマかどうかはともかくとして,日本全体でもし水素を考えるとしたら,今一番必要なのは,インフラコストを含めて実際にできるかどうか,ここが大きなポイントではないのかという気がいたします。
 私は水素そのものばかりをやっているわけではないのですけれども,たまたま知ったケースで,非常に理想的な水素の使い方をしている,あるいは計画している段階のケースがありまして,それはカナダなのです。カナダは水力発電の宝庫でして,今でも余ったらアメリカに輸出しているし,まだまだ開発余力がある。その余ったものを水素に変える。これはまず供給側として安い電気になる。需要側としては,長距離の鉄道輸送を考えたのです。
 カナダはちょっと変な国で,全ては南北に動いて,アメリカとのところで東西がないとか,ちょっと不思議な交通網をやっているのですけれども,長距離の鉄道輸送のときに電気ではないのです。無駄になるので。ディーゼルだとかを使っているので,それを水素に変える,そんな計画なのです。そうするとインフラもすごく限定的で,コストも余り掛からない。供給側と需要側のところで非常に理想的だなと,非常に関心を持ったところもあります。
 そこまで典型的なケースが日本にあるかどうかというのは分かりませんけれども,一つの考え方として,そういう制約から考えたら,どこでできるかというアプローチがあってもいいのかなと思いました。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。それでは,山地委員,お願いいたします。
【山地委員】  私は資料3-4のディスカッションペーパーですけど,これは多分とりあえず出されたという位置付けかと思うのですが,やっぱりもう少し盛り込むべきではないかなと思いました。
 製造に関する技術では,水の電気分解やバイオマスとか純度。この用途に応じた純度の精製技術というのは面白いと思うのですけど,でも製造のところはもっといっぱいあるわけです。要するに,水の熱分解もありますし,原子力とか太陽熱の集光だとか,それから光触媒もありますよね。あるいは化石燃料とCCS,これなんかむしろ商業的には近いわけですから,ある意味網羅的に出しておく必要があるのではないですか。
 輸送・貯蔵のところも,さっきメチルシクロヘキサンの話がありましたけど,どっちかというと民間企業が一生懸命やっているという意味では,当然取り上げるべきだし,それからメタノール。メタノールも化学品としてのメタノール,それから前提はCO2大量削減だから,CO2フリー水素の話をしていると思うのですけど,メタノールは化学品の原料というところもあるけど,キャリアにも使えるわけです。だからそういう意味では,アンモニアが出てくるならメチルシクロヘキサンが先に出てくるのが常識的かなと思ったということです。
 これは割と個別なところで,結構いろんなところでやっているのです。私が関係しているところでも,エネルギー総合工学研究所の勉強会で,そういうサプライチェーン全体の可能性というのをマップにしたりしていますから,そういうのを参考にされるといいと思います。少なくとも今のディスカッションペーパーは網羅性が足りないと感じました。
 もう一つは,もっと全般的な話なのですけど,私は長い間,このエネルギーシステム分析というのをやっていますけど,水素って何回かブームがあっては消えていっているはずで,今回は何とかしたいと本当に思っているのですけど,やっぱり過去のブームは何で消えたのか,ちょっと反省をした方がいいという気がするのです。
 どこが違うかというと,1つはやっぱり温暖化対策を本格的にやらねばという感じですが,これも怪しいところがあって,2050年の後もいずれネットゼロエミッションを目指さなければいけないのだけど,2050年のところというのは気候感度のことを考えると,今言っているような,例えば1.5度をゼロにしろとか,あるいは先進国は80%減という目標がいつまでもつかなというのは,温暖化問題が抱えている様々な不確実性の幅を考えると,どうかなという気がしているんです。
 もう一つは,水素を使う商品が出ているということです。1つはMIRAI,燃料電池車を思うかもしれないけど,相対的に成功しているのはエネファームです。ただエネファームは水素かというとちょっと違うのです。さっきの本郷委員はインフラの話をされたけれども,エネファームは都市ガスという配送のインフラを使っているわけです。ただし、末端のところでCO2排出しているわけです。だからそこを考えなきゃいけない。
 だけれども,そういう水素を使う燃料電池の商品が出ているというのはやっぱり,今回は前とは違うかなという気はしています。少なくとも過去のブームがなぜ消えたのかという反省は,少しまとめておいた方がいいと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。ほかに委員から御質問,御意見はございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは大変恐縮ですけれども,最後に,御報告を頂きました佐々木先生,西宮先生,それから事務局から,何かありましたら簡潔に御発言をお願いいたします。
【佐々木副学長】  頂いた説明の中で,EVとFCVというのは,さっきの繰り返しになりますけど,電池というのは非常に小さなところではすごく有利で,大きくしていくと水素そのものでためた方がいいところから,仕分ができるというところがポイントだと思います。
 2つ目のコメントが,充電ステーションと水素ステーションの数の話がありまして,確かに今110か所ぐらいしかなくて,900基が2030年の水素ステーションの姿ということで,国のロードマップでも書かれています。それに対して電気充電スタンドは多いのではないかという御指摘は頂くのですけど,水素ステーションは充塡(じゅうてん)するのに3分か5分ぐらいでできまして,充電ステーションは30分ぐらいは掛かるのかというところですから,そんなに数を作らなくても賄えるのが,短時間で充塡(じゅうてん)できる水素ステーションのメリットかなと思っています。
 もちろんガソリンスタンドに比べると少ないというのはあるのですけれども,長距離を走れることと,充塡(じゅうてん)時間が短いゼロエミッションモビリティーという観点では,何万基も作る必要はないのかなというのが1つです。
 あと,私は専門家ではないのですけれども,これを試算した方がおられまして,本当に水素でモビリティーのインフラを作るのと,充電スタンドをどんどん増やしていくことを考えると,例えば家庭で充電するといったときに,電気をかなり流すので,結構電気のインフラを増やすところ,そこは大事になってくるかなと思いますので,意外に水素のステーションというのは1基当たり,確かにガソリンスタンドよりは高いのですけれども,900基作ることになると,例えば1基4億円としてもそれを掛け算したぐらいのコストになりますので,水素ステーションのインフラを作るのは,そんなに大きなハードルではないかなというのが我々の認識です。
 それから3番目に,瀬川委員だと思いますけど,相当なコストダウンが必要だということで,それはもうおっしゃるとおりです。やっぱり水素の価格というのは今ロードマップの中で,1立方メートルで,要は30円という価格でどうにか頑張りましょうということで,そこはいきそうなのですけれども,それで例えば水素発電をすると,これは天然ガスに比べるとまだ高いということなのです。
 もちろんCO2の排出を減らせるという環境価値は入れてもまだ高いということで,我々が今議論しているのは,30円ではやはり難しいでしょうと。安くならないと普及しないというのはもうおっしゃるとおりなので,20円,若しくはそれを更に下げるためにはどうしたらいいかというところを,技術開発としてやらないと駄目だというところです。ですから30円のめどはある程度立てつつあるのですけど,やっぱり20円を目指して頑張るというところは当然マストだと思っています。
 それと,そのときに何で高くなるかの一つが,やっぱり水の電解です。実は福島の事故の前は,量的に大量に安く水の電気分解をするという技術開発をそもそもやっていないのです。ヨーロッパはむしろ再エネが増えてきて,結構水電解で安いシステムが増えてきています。ですからこれは日本がちゃんとキャッチアップしないと駄目なところだと思いますけれども,水素を安く作る技術をきっちり磨くことをすれば,現実に視野には入ってくるかと思います。
 それから4つ目の御質問が,インフラを総取っ替えするのですかという御指摘があったんですけど,実はそういうことは余り考えていません。もちろん水素のパイプラインを作るのは,ローカルに,例えばコンビナートの周辺で水素のパイプラインを作るというのはあるんですけれども,日本全国で水素のパイプラインを都市ガスと同じように作り直すことは全く考えていないということです。
 では,どうするかということですけれども,水素は水素ステーションをハブにしたような形で,ローカルに供給することはあると思います。例えばあり得るのが,再エネ由来の水素をCO2と反応させてメタンを作って都市ガスのインフラの中に流すとか,ヨーロッパで考えられているのは,都市ガスのインフラの中に例えば水素を5%ぐらい混ぜるとか,全部総取っ替えではなくて,どうにか既存のインフラをうまく使いながら,この水素の量を増やしていくというところが当然リーズナブルかなと思いますので,そういう議論も我々はやっているということであります。
 その中でカナダの例というのはもうおっしゃるとおりで,非常にそういう面では我々も学ぶところがあると思いますけれども,なかなか日本は再エネが高いので,そこはコストを下げるのは難しいところだと思います。
 最後に山地委員からお話がありまして,何回もブームがありましたというのは,私も30年やっていて,日本に春夏秋冬があるように,冬の時代も夏の時代も,夏の後には必ず秋が来て,秋の後には冬の時期が来て,でも冬の後に必ず春が来るのも春夏秋冬かなと思っております。ですから冬の時代はめげずに耐えて,技術をきっちり磨いて,夏の時代におごらずに,地に足のついた議論をするというところが,やっぱりこのエネルギー技術開発のポイントかなと思います。
 よく言うのは,太陽電池,これは瀬川委員の方がよく御存じだと思いますけど,NEDOができた頃から40年かかって,初め宇宙用でやっていたものが今200分の1ぐらいになって,本当に安く太陽電池で電気ができるような時代になってきた。その間,研究者は着実に技術開発しているのです。ですけれどもあるときにはブームになって,あるときには補助金が切れてみんなそっぽを向いてということを繰り返しながら,着実に進んできたということであります。
 なので,山地委員がお話しされましたように,商品が形になってきた。ですから絵に描いた餅ではなくて,ある程度実際に使えて,コスト的な議論もできるようになってきたのが現状ですし,ガス会社もエネファームの販売に苦労しているところもありますから,まだこれから冬の時代も何回も来ると思いますけれども,2050年まではまだ時間があると思いますので,めげずに山地委員のお言葉を肝に銘じて,我々としてはきっちりやっていきたいなと思っております。
【高村主査】  ありがとうございます。西宮先生,申し訳ございませんが,簡潔にお願いできますと有り難いです。
【西宮エグゼクティブアドバイザー】  簡単に言います。カナダのことと,それからメチルシクロヘキサンのことでちょっとだけ。90年代後半にユーロ・ケベック計画,カナダからドイツへ運ぶ。これで液化水素とメチルシクロヘキサンのコストが大体同じで引き分けです。
 その引き分けから現代に至って,ちょっともう一回比べると,これは私見ですけど,メチルシクロヘキサンは水素を出すときに熱を加えなきゃいけない。ここはいい触媒が千代田化工でできたのだけど,まだ問題は残っています。ところが液化水素は,我々のプランが成功すると効率が50%になりますから,そこでぐっと勝てる可能性がある。それだけ申し上げたい。だから海外から持ってくるときには液化水素が多分勝つと思います。
 あとは10月23日に閣僚会議がありました。あのときに,水素社会というのを鍵括弧付きで言ったということが,私は非常に大事だと思っています。鍵括弧が付いたということは,これからみんなで再定義しようよと言っているのだと思います。水素もいろいろあるし,それからグリーン水素だ何だかんだといっぱいありますから,それをどう定義して,どう社会に実装するのか。それはやっぱりここで考えていくということになるのだと思います。逃げているわけではありません。
 例を1個だけ最後に言いたいのですが,フォークリフト,あれは案外水素を使っているのです。1日に1キログラム。トヨタのMIRAIは5キログラムが満タンだけど,毎日1キログラムは多分使っていない。フォークリフトがうんと使って,バッテリーだったら替えのバッテリーが必要なのだけど,水素だったらそれだけで使えますから,多分どんどん普及すると思います。だからそういうシナリオがやっぱりあるので,鍵括弧付きの水素社会をどう提示するか,それを一緒に考えたいと思います。
【高村主査】  ありがとうございます。私の不手際で少し時間を超過しております。もう少しお時間頂ければと思います。
 事務局からもし何かありましたらお願いいたします。
【滝沢専門官】  短めに。最初に江守委員と瀬川委員に御指摘いただきました,ほかの蓄エネとの役割分担です。すなわち電池と水素とかというところで,実は我々はエネルギーをためるというと,水素,電池,ほかにも例えば熱でためたり,炭化水素,あとは位置エネルギー,先ほどの揚水の話とか,機械エネルギー,回転体,フライホールとそれぞれある中で,それぞれ適材適所をどう考えるかというのが非常に大事かなと思っております。
 電池であれば,コストが高かったり,あとは減衰していく。水素も当然その減衰部分はあるんですが,どちらかといえば水素の方が長期的な保存に向いているんではないかなとは考えているのですが,その辺,キャパシタでは短時間で充放電をして,大容量は冷蔵するとかあると思うのですけれども,そういう意味でそういうところの役割分担を1回整理したいと考えております。
 またもう一つ,瀬川委員から,電気を1回化学ガスに変えて,もう1回電気に変えると。実は我々もその2次エネルギーの変換は極力避けた方がいいのではないかと,一般論で非常に思っていますが,ただ一方で,電気量,先ほどのためるエネルギーのコストなり,特徴なりを踏まえて,うまくエネルギーシステム全体の中で考えていきたいと考えております。
 あとはインフラの件は先ほど佐々木先生にお話しいただきましたが,水素で全部流すというんじゃなく,ほかの手段というもの,インフラは既存のものを最大に活用するような形が一番いいかなと思っております。
 あと最後,江守委員がおっしゃるとおり,もう一度これを整理して,網羅性を上げるというところと,あとは過去の反省で,過去一体何が駄目だったのか,これも見直してみたいと考えております。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。大変活発な御意見を頂きました。今後の水素に関する研究開発の進め方については引き続き事務局で御検討いただきたいと思います。
 あと1つ議題が残っております。報告事項でございますけれども,環境エネルギー科学技術を巡る最近の状況についてで,10月末に開催されましたGEOの本会合と,それに先駆けて開催されましたGEOSSのアジア太平洋シンポジウムについて,事務局から御報告を頂きたいと思います。
【佐藤環境科学技術推進官】  それでは説明させていただきます。資料4-1で,GEO本会合及びGEO Weekについての説明をし,資料4-2で,GEOSS APシンポジウムについて説明をしたいと思います。
 まず初めにGEO本会合の日本開催は初めてのことです。簡潔に説明するために,字の説明は省いて,写真の説明をしていきたいと思います。
 資料4-1をごらんください。一番上にある写真は国立京都国際会館で,1997年,COP3が開催されて京都議定書が採択された会場です。
 その右下の写真は,永岡文部科学副大臣と油井JAXA宇宙飛行士グループ長による開会挨拶の様子です。
 続きまして,写真の一番右ですけれども,水鳥真美国連事務総長特別代表兼国連国際防災戦略事務局代表より,基調講演を頂きました。
 続きまして,その下の写真です。3つのパネルセッションを行いました。1つ目のパネルセッションは,SDGsを支える地球観測をテーマに,大竹JST-CRDS上席フェロー及び石田中JAXA特任担当役に参加していただきました。
 その下の写真は,パリ協定を支える地球観測をテーマとしたパネルセッションに,パネリストとして三枝国立環境研究所センター長に参加いただきました。
 次のページに移りまして,パネルセッションの3つ目ですけれども,仙台防災枠組を支える地球観測ということで,日本から小池俊雄土木研究所・ICHARMセンター長に参加していただきました。
 (3),(4)は説明を割愛します。(5)ですけれども,写真にありますように,山川JAXA理事長より,超学際的科学のための新たなパラダイムをテーマに御発表いただきました。
 (6),(7)は説明を割愛します。(8)について,来年は,GEO本会合に加えて閣僚級会合が開かれます。開催地はオーストラリアのキャンベラということになっております。
 次のページに移りまして,こちらも写真をごらんください。一番下の写真の左ですけれども,これはJapan GEOのブースを撮ったものです。大盛況でありました。真ん中の写真は,ショートレクチャの様子で,国立環境研究所の三枝先生よりプレゼンしていただいています。一番右の写真は,水鳥国連事務総長特別代表が小池先生の説明を熱心に聞き入っている写真です。
 次のページに移りまして,こちらは各国・機関の展示の様子を写真で示したものです。
 続きまして,次のページですけれども,GEO Weekのサイドイベントのうち2つについて説明いたします。1つはAsia Oceania Dayということで,アジア,オセアニアにおいてどのような地球観測の活動をやっているかということについて議論する,サイドイベントを行いました。
 もう1つのサイドイベントは,最後のページですけれども,DIAS シンポジウムです。先ほど中間評価でDIASの評価を頂きましたけれども,こちらについても写真がありますように,NII所長の喜連川先生や,RESTECの井上常務理事に参加いただきまして,盛況なシンポジウムを行ったというところであります。
 次に資料4-2について説明いたします。1ページおめくりいただきまして,GEOSS APシンポジウムは本会合の前の週に行われました。一番右側の写真のように171名の方に参加いただき,非常に熱心な議論が行われました。
 初めに,主催者を代表して,岡村審議官から開会の挨拶がありました。
 続きまして,右側の写真です。松尾隆アジア開発銀行駐日代表事務所駐日代表より基調講演がありました。
 その下の写真ですけれども,小池先生より,新興ケーススタディ,メコン川プロジェクトについて講演いただきました。
 次のページに移りまして,(5)です。成果志向GEOSSに向けた戦略ということで,写真のとおり,GEOのGilberto事務局長が,拳を握り締めて熱い講義を行いました。
 続きまして,(6)ですけれども,岐阜大学の村岡先生をモデレータとして,特別セッションが行われました。
 最後に,「京都宣言2018」の採択ということで,Statementをまとめたところであります。このStatementは参考1に添付しております。
 参考2の表は,SDGs,パリ協定,仙台防災枠組に対するAOGEOSSにおける地球観測の取組をマッピングしたものです。
 駆け足ですが説明は以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。今の御報告について何か御質問はございますでしょうか。
【佐藤環境科学技術推進官】  済みません,最後に補足ですけれども,もし御関心がありましたら,GEO本会合の映像がGEOのホームページに載っていますので,是非ごらんいただければと思います。
 以上です。
【高村主査】  ありがとうございます。
 それではこれで議題の4については終えたいと思います。
 本日予定されている議題はこれで終了となりますけれども,委員の皆様から特に御発言がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは,事務局から御連絡をお願いいたします。
【三木課長補佐】  闊達(かったつ)な議論ありがとうございました。
 本日の事務連絡になりますけれども,議事録につきましてはいつものとおり,事務局より後日メールでお送りさせていただきまして,確認していただくという形にさせていただきます。最終的には文科省ホームページに掲載させていただきます。
 また,これもいつもどおりですけれども,旅費委員手当に関する書類をお配りしておりますので御確認ください。
 次回の会合につきましてですけれども,1月25日を予定しております。こちらは第9期の会議の最後になってございます。9期最後ということで,10期に向けてこの9期でいろいろためてきた知見というのがあると我々も思っておりまして,最後にフリーディスカッションといいますか,皆様からこの環エネ分野についての自由な御議論を頂くような時間をとりたいと思っておりますので,もし御出席できないという先生方がいらっしゃいましたら,是非とも会議の前にペーパーという形で,そういった知見を頂ければと考えております。このあたりの詳細につきましては,後日またメールで御連絡をさせていただこうと思いますので,よろしくお願いいたします。
 事務局より以上です。
【高村主査】  ありがとうございました。少し時間を超過いたしまして申し訳ありませんでした。
 これをもちまして,本日の第9期環境エネルギー科学技術委員会の第6回会合を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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