量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第32回) 議事録

1.日時

令和元年11月11日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室

3.議題

  1. 我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について(調査結果まとめ)
  2. 有識者からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、伊地知委員、内海委員、岸本委員、鬼柳委員、小杉委員、近藤委員、阪部委員、佐野委員、高橋委員、田中委員、宮内委員、山田委員

文部科学省

角田科学技術・学術総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、對崎研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

5.議事録

【小杉主査】 開始まだ5分前ですけれども、全員おそろいなので、始めてよろしいでしょうか。
ただいまから第10期量子ビーム利用推進小委員会第32回を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
本日は、13名の委員の皆様に御出席いただいております。欠席者は、石坂委員、高原委員、山重委員の3名です。
それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【對崎補佐】 事務局でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
本日より当委員会はペーパーレスでの実施とさせていただければと思いますので、配付資料につきましては、お手元のPC端末を御確認いただければと思います。
座席表、資料0の議事次第、資料1から資料2-1、2-2、資料3、資料4-1、4-2でございます。
また、机上の紙ファイルに非公開資料として、先般行いました量子ビーム施設関係の調査の集計に係る資料を綴じております。
PC等の不具合、ございませんでしょうか。もし会議の途中でPCがスリープ等の状態になってしまった場合は、ログイン方法としてユーザー名と、パスワードは空欄で結構でございますが、机上に置かせていただいておりますので、あるいは事務局の方に手を挙げていただくなどお申し付けいただければ対処させていただきますので、よろしくお願いいたします。
その他、御不明な点がございましたら、随時、事務局まで御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 ありがとうございます。それでは、議事に入ってよろしいでしょうか。
議事次第のページを開いていただくと、きょうの議題(1)、(2)、(3)とありますが、(1)を60分ぐらいの予定にしております。(2)が40分ぐらい、(3)が20分ぐらいということで、御協力をお願いします。
では、議題(1)我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方について、調査結果を事務局の方でまとめていただいたことについて御説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 それでは、お手元の紙綴じファイルと電子媒体の方の資料1の方をお開きいただけますでしょうか。
まず簡単に御説明申し上げます。先般、当小委員会で御議論いただきまして、我が国全体を俯瞰した議論を今後進めていくために、放射光施設、中性子線・ミュオン施設、レーザー施設、イオンビーム施設、その他施設という形で施設を分類いたしまして、詳細な調査の依頼を9月に発出したところでございます。そちらの回答の概要を取りまとめたものが机上の紙ファイルに綴じてございまして、かなり大部でございますので、我々事務局の方でも今後このデータを活用していくに当たって、まずは本日はこちらを事務局で簡単にまとめたものを用意いたしましたので、そちらを御参考に御議論いただきまして、さらにこの調査検討の深掘りというか、さらに調査すべき事項や本委員会でのヒアリング等を行っていきたいと思っております。
施設に関しましては、紙綴じファイルの1ページ目に施設全体のリストを付けてございますが、放射光、中性子、レーザー、その他と合わせまして43の施設につきまして御回答いただいたところでございます。
リストの次のページに、調査結果の概要として、事務局の方で気になった事項や特徴的な事項と思われるものを抽出してございますので、こちら、この後の議論のときに参考にしていただければと思います。
さらに、紙綴じのファイルの後半は、実際の生データに限りなく近いものとして事務局の方で全体をまとめておりますので、こちらも事務局で気になった事項につきましては赤下線部で記載してございまして、ちょっと文字が小さくて恐縮ではございますが、御参照いただければと思います。
その上で、資料1のファイルの方をご覧いただけますでしょうか。こちらは調査結果とその概要を踏まえまして、個別の論点として特に調査項目の後半に書いてございます自由記述欄の方から、論点を簡単に抽出してまとめたものでございます。
まず、調査項目の10番及び11番の、戦略的な取組状況及び組織からの支援状況につきましては、個別機関や施設間での数多くの連携などは見られているところでございますが、こうした連携をさらに深めていくためにはどのような方策が考えられるかといった点が、論点として挙げられるかなと思います。
あるいはまた、2つ目の星でございますが、継続的に施設の基盤技術を開発して、それを他施設に有効活用していくためにはどのような方策を国として検討するべきか。
あるいは、3つ目の星でございますが、施設の維持管理費等を含めて、運営費以外に研究費を競争的資金等で活用している場合は、こうしたものを継続的に確保するためにはどのような方策が必要であるか、あるいは4つ目の星でございますが、大学共同利用機関法人や国立研究開発法人、あるいは共同利用・共同研究拠点等において、「共同」の在り方というのが施設ごとに異なることがございますが、こうしたものを加味して、どのように検討していくべきかといった点。
そして、続きまして、施設利用に関わる取組状況としましては、各施設が今後どのような利用者を見込んで施設を運営していくことを想定すべきか。あるいは、共同研究において技術開発を行う場合と、独自に施設ごとに行う場合との戦略をどのように考えるべきか、あるいは、施設においてユーザーニーズに対応した利用を設定し、施設の利用枠として確保して、利用の体制を整備するためにはどのような方策が必要であるか。
続きまして、調査項目13番は、産学連携の状況でございますが、こちらも産学連携をさらに推進していくために、相談窓口を一元化したり、産業利用枠といったものを設定・確保したり、受け入れの体制を整備するなど、どのように組織的な対応を行っていくことが必要であるか、あるいは既存のコンソーシアムや施設共用のネットワーク等をどのように形成し、活用するかなど、組織的な対応を支援・補助する仕組みをどのように構築するべきか。
続きまして、オープンデータ・オープンアクセスに関しましては、こちらはまだなかなか取組がそこまで進んでいるわけではないと思われますが、各施設におけるデータベース整備や施設間でのデータ共有を進めるためにはどんな方策が考えられるか。
さらに調査項目の15番、海外連携の状況でございますが、こちらは10番、11番の施設ごとの取組、類似しているところがございますが、数多く施設ごとに海外との連携は行われておりますが、それらを全体としてどのように連携していくことが必要であるか、あるいは海外利用者のニーズに応える体制をどのように整備したらよいかといった点が考えられます。
また、人材育成に関しましては、一口に人材と申し上げましても、研究者、技術者、運転保守員等、専門化した職種には多種多様なものがございまして、その中の役割をどのように明確化し、組織として体系的な人材育成や若手職員への技術継承を行っていくことが必要か、あるいは将来のこうした量子ビーム施設の利活用を担う人材として、潜在的な人材を発掘・活用していくために、大学や大学院における教育プログラムをどのように確立して展開していくべきか、あるいは複数施設の連携活用において、人材の循環をどのように進めることが必要であるかといった点が挙げられます。
調査項目17番は、施設の管理方法として、特段、特筆すべき記載が、そこまで調査の中で明らかになっていなかったので、ここは割愛させていただいております。
最後、調査項目18番、今後の展望と課題として、各施設の特徴を生かした役割分担を今後、検討していくに当たって、研究テーマに応じた施設間のポートフォリオをどのように設定するか、あるいは同種・異種の施設における連携をどのように考えていくべきか。2つ目の星として、施設・設備を一時的に停止しなければならないような更新や施設の高度化といったものを国全体でどのように計画的に進めていくべきか。3つ目の論点として、共同利用・共同研究、施設の高度化のための研究、各施設の技術的な成果の横展開、あるいはオープンデータ・オープンアクセス等を国全体でどのように進めていくべきか。そして、施設ごとに運転経費や施設整備に充当する予算は異なりますが、国全体を俯瞰して、こうした施設の整備や人材育成、人的交流に活用するような事業や予算が新たに必要ではないかといった点を事務局の方でまとめております。
本日は、まずはこうした点も含め、皆様に今回の調査研究で調査を行った形の中で、さらに必要な論点や、こちらの調査に関する御質問等、御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
【小杉主査】 ありがとうございました。資料1については、文章が「考えられるか」という論点になっております。個々の項目について今後、考えた結果をまとめていく流れになると思います。
アンケートの結果、それぞれの施設等で考えていることがいろいろ既にありますが、そのへんは非公開の印刷された方の資料の参考資料1-2に、事務局の方でそれぞれの施設から該当するところをピックアップしていただいたものが並んでおります。既にいろんな取組はされている中で、この小委員会のミッションは、全体を俯瞰してどうまとめていくかというところですので、個々の羅列じゃなくて、全体を見るという観点になります。この資料1についていろいろ観点がありえますが、そのへんでこういう観点があるんじゃないかとか、非公開の参考資料1-2を見ながら、何か御意見等ございましたら議論していきたいと思います。資料1が渡っていますので、前半と後半で論点を分けて、最初は1ページ目の、項目番号で10、11、12、13、13は産学連携ですけれど、そこまでの範囲でちょっとまず意見交換をしたいと思うんですけれど、何かございませんでしょうか。
【近藤委員】 項目11の組織からの支援状況の星印の3つ目ですけれども、施設の維持管理費を含め、運営費や研究費を云々とあるんですけれども、研究費を競争的資金で持ってくるというのは非常によく分かるんですが、維持管理費とか運営費を競争的資金から持ってくるというようなふうにちょっと読めまして、少し違和感を感じたんですけれども、この観点については。
【小杉主査】 私の理解では、実際上、競争的な資金による競争的な研究をするために施設を運転することもあるので、そういう意味で競争的資金に運転を費用負担するような内容のものもあるのではないかと。一般的ではないかもしれないですが、事務局で何かございますか。
【對崎補佐】 今、小杉主査がまさにおっしゃるとおりで、近藤先生がおっしゃるとおり、一般的には施設の維持管理費とかというものはその施設を設置している者の運営費だったりという形で賄われることが多いとは思いますが、一部、調査結果の中で、そうしたワンショットというか、競争的資金を一部、一時的な施設の運転経費とかに回すという例がいくつか見られましたので、こうしたものは一概に維持管理費を運営費からだけ賄うという以外に、活用の仕方というのもあるかなと思って記載したところでございます。
【小杉主査】 よろしいですか。
【近藤委員】 はい。
【小杉主査】 ほかに何かございませんか。山田委員。
【山田委員】 アンケートを取る段階からちょっと気になっていたんですが。各施設の役割分担とか、各施設がユーザープログラムにどう取り組むかという、議論をこれからやっていくことになるんだろうと思います。その際に、学会、そこには各施設、あるいは施設に属さないユーザーも入っておられる、そういうアソシエーションが放射光、中性子にもあってミュオンにもある。レーザーにもあるんでしょうか。その学会との関係というか、学会をどう活用していくかというのも考えないといけないんじゃないかと前から思っています。ただしそれが今の議論を複雑化していくんだったらもう一回考えないといけないですが。学会との関係を少し考えてみる必要があるのかなという気がしています。
【小杉主査】 それぞれの学会がそれぞれ考えていることは違いますので、このビームもそれぞれの学会がありますから、そのへんの関係はヒアリング等もしないといけないというのは事務局とも打ち合わせているんですけど、今回の論点のところにどこか入っていましたっけ、その意味が。
【對崎補佐】 済みません、机上のみになってしまうんでございますが、調査結果の概要の参考資料の1-2というところの10番の戦略的取組状況の一番下のポツで、いくつかの施設におきましては、学会における提言をどのように活用するかといったことであったり、学会に加入している施設間でどのように情報交換や連携協力を行っていくかという点は、回答が挙げられておりました。
また、山田委員がおっしゃるとおり、いわゆるコンソーシアムというか連携の形というのはそれぞれ、事業による連携であったり、地域による連携であったり、また、こうした学会における連携といったものも考えられると思いますので、まずは次回までにというか、どういうコンソーシアムが現在、組まれているか、施設がどういう学会に加入しているかといった点は一度、整理してみたいと思っております。
【小杉主査】 この論点では、戦略的な取組状況、組織からの支援状況のところで学会とかプラットフォームとかコンソーシアムとか、そのへんが入ってくるということですね。その御意見は今後、議論していくということで、ほかにございますでしょうか。
各組織の大学共同利用機関、国立研究開発法人、大学附置の共共拠点、そのあたりで言葉遣いがいろいろあって、共同利用、施設利用、共同研究とか、「きょうよう」でもにんべんのある「供用」とない「共用」とあったり、そのへんの用語の整理が必要です。例えば12番の施設利用に関わる取組状況で、「施設利用」をどう捉えるかは多分、各施設によって考え方が違っていて、共同利用一般を施設利用と呼ぶ場合もあるし、民間に限った利用を施設利用と呼んでいるところもあって、そのへんの整理も必要かと思っております。12番の施設利用に関わる取組状況というのは、一般的な共同利用の観点だと。民間ももちろん入っておりますが、そういう意味だと思いますが。
何かございますでしょうか。この12番のところの最初の星印は、利用者の拡大ということしか書いていないんですけど、このあたりはいかがでしょうか。観点として。
【雨宮主査代理】 今の御質問の意味は。
【小杉主査】 一般的に共用施設の場合は、装置を作って開放して、どんどん利用で成果を上げていくという観点ですけど、そればっかりじゃいけなくて、その次を目指した開発とかやらないといけない。必ずしも利用拡大だけが観点だとまずいんじゃないかという意味で。大学の立場ではそういう観点もあるかなということで、ちょっと申し上げてみました。それについて何か御意見はありますか。
【雨宮主査代理】 そういう意味では、これは裾野を広げるという意味で取って、もちろんあと先端をとがらすという視点が抜けているという意味かとも思うんですが、次のところで独自に行う場合の戦略とか入っているという気もしますが、確かに先端を狙うというところ、それも明確に入れていた方が議論しやすい気がしますね。
【小杉主査】 1ページ目、よろしいでしょうか。また1ページに戻ってもいいんですけど、じゃあ、資料1の裏の2ページの方にも行っていただいて、オープンデータ・オープンアクセスから、海外連携、人材育成、今後の展望と課題というところで何か御意見ございましたら。人材育成は毎回、議論し始めると大変になるんですけど。
あと、参考資料1-2も見ていただいて、何か御意見ございましたら。参考資料1-2の方は非公開で、お手元にプリントアウトされているものですが。
【奥室長】 済みません、データ量が膨大なので、消化するのが大変だと思いますが、基本は参考資料の1-2と、資料1を並行してご覧いただければと思います。参考資料1-2は、各施設のアンケート調査で定性的に回答のあったものです。そのうちで特徴的な取組として挙げられるようなものをざっとまとめるとともに、その中から、どういうところが課題なのかというのを簡単にまとめたものが参考資料1-2で、その課題を踏まえて、どういう観点で議論したらいいのかというのが資料1です。ここを今後、詰めていっていただいて、報告書にまとめていければと思っています。
ですので、この課題を踏まえて、今後どういうふうに改善策であるとか、新しい方向性というのを見出していったらよいのかというのが資料1の方なので、ざっとその参考資料1-2を眺めていただいて、こういう点が欠けている、もっとこの点を議論して深めた方がよいのではないかというのを幅広に御意見いただければありがたいなと思います。
【小杉主査】 時間は十分取っておりますので、ちょっとじっくり参考資料1-2をそれぞれの項目で見ていただいて、思い付いたことがあれば言っていただくといいかと思います。
【山田委員】 ここに書かれている内容で、赤字になって、アンダーラインになっているのは、これは出された施設がそうされたんですか。それともこちらでそういうふうに?
【對崎補佐】 事務局の方で、余りに大部でありましたので、そこを見ればある程度ポイントがつかめるという形で、こちらで恣意的に引かせていただきました。
【山田委員】 分かりました。
【小杉主査】 大体、赤のところは参考資料1-2に挙がっているという解釈でよろしいんですね。
【對崎補佐】 8割ぐらい挙がっています。
【小杉主査】 赤じゃないところで重要なことを落としている可能性もあるかもしれません。きょうはちょっとそこまでは見えないと思いますが、帰ってから御意見を頂くという形にしたいと思います。
【雨宮主査代理】 15の海外連携の状況の2つ目の星というのは、ここにあるというよりも、12のところにある方がぴったりしている……。15の星の2つ目、海外連携の状況というのは、これは海外の施設との相補的利用という意味ですか。国全体でさらに連携を…ここの星2つ目が海外連携の状況という文脈とどういうふうな関係になるのかちょっと分かりにくかったのですが、説明していただけますか。
【對崎補佐】 失礼いたしました。まさに今、雨宮主査代理おっしゃっていただいたように、個別に施設と海外の施設との連携というのは数多く行われていて、海外の施設と国内のある施設との相補的利用も行われているんですが、それが各施設ごとにかなり数多くあるので、そうしたもの全体を、さらに広い意味で連携させていくために、国がどういうことをすべきかという意味で書いてございます。ちょっと表現上、全く同じ表現になってしまっているので、そこは改めたいと思いますが、いずれにしても海外の個別の施設と国内のある施設との連携というものはアンケートでかなり上がってきておりましたけれども、それが個別に一対一の施設ではなくて、もう少し広い意味で、放射光だったら放射光施設と海外の放射光施設の全体の連携であったり、また、量子ビーム施設全体としての連携であったりといったものを今後、考えていくべきではないかという書き方にしてございます。
【雨宮主査代理】 はい。あと、海外連携の状況についてですけど、海外でどんなことをやっている、若しくは何が問題点で、どこの施設で何が強いかということを適切にグリップできているかどうか、これも重要だと思います。別に海外で何をやっているからといって、それに追従するという意味ではなく、日本全体としてどういう戦略でいくかというときに、海外が何かやって、どこがうまくいっていて、どこがうまくいっていないとかというのも十分に参考にするということはありだと思うので、この海外連携というところにもう一つ、海外でリアルタイムで何が起こっているかを正確にグリップするというような項目があってもいいような気がします。
【小杉主査】 国際動向を把握したりするところですね。施設間ではそれぞれの問題点を共有するのは個別ではやっていると思いますけど、日本全体、海外全体という形ではやれていないですね。なかなか仕組みを作るのは難しいところだと思いますが、この15番の海外連携状況の2つのポツは、1つ目のポツは利用の方で、これはある意味、12番の利用に関わるところの方向かもしれないですけど、2つ目のポツとか、今、雨宮委員が言われたこととかは、もうちょっと深い意味の海外連携ですね。そのあたりは国際的な状況を把握するなど、ちょっと表現を考えないといけないですが、そういう観点があるということですね。
ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。
【阪部委員】 拝見しますと、余りにも項目が多く、どの視点から見ればいいのか難しいと思います。項目それぞれが多面的で、独立ではなく絡み合っていると思います。これをどういう形にまとめるかということがまだ明瞭でありません。個々の課題についていろいろ意見が出ているのですが、まとめるにはやはりこの委員会で理想的な形態はどういうものかというのを論じて、その理想に向かって、現状は何が欠落しているのかというふうに考えていった方が良いのではないでしょか。
特に、例えば近未来を考えた人材育成というのは必須の項目で、現状の他の課題をいろいろ整理しても、人材育成がなければ先はないわけです。また、大型施設とそれを支える施設の理想体制とはとか、共同利用のように恒常的に利用する施設、あるいはとがったことを研究する共同研究施設、そしてそれらを支える基盤の組織というような大局的なことをまとめる必要があると思います。済みません、何かちょっとよりどころがないと漠然とした意見になりまして、どこから手を付けていいのかというのが正直な気持ちですので。
【小杉主査】 多分、事務局ではアンケートをベースに課題が書かれているところをうまく資料1に整理されてはいますが、今言ったような俯瞰したということですから、もう少し大きな観点が、大前提が要るというようなお話ですよね。ちょっとそのへんは今後、議論していくのか、最初からそういう観点が立てられるのか、ちょっと難しいところはあると思いますが、何か御意見。
【鬼柳委員】 ちょっといいですか。今、中性子の方で連携を進め出しているんですけど、その前から小型中性子ではやっていたんですが、ここに書いてあることのかなりの部分はそこで議論されているんですね。技術をどう移転するか。それはお互いに情報を持っていなきゃいけないので、どこかの施設でこういう技術改善があったと、それは実験のときの省エネに役立つとかいうのは、ほかに移転すると、そのことを知らなきゃいけないわけですね。そういう場を設ける。
それから、データのオープン化というのがありますけれども、共有化、いろんな施設で同じような測定をしているんだとすると、同じフォーマットのデータにした方がいい。それがまた海外の施設とも共用になっている方がいいとか、そういう議論もやっているんですね。だから、施設連携という形で、それがいいのかどうか分からないんですが、そういう機能がないと、これはなかなか進まないなとは思いました。
それから、実際やっていて思うのは、そういう技術開発的なことというのは、科研費のテーマになりにくいんですね。それから、連携のときに集まるのも、皆さん、手弁当で集まって、そういうサポートもない。そのへんは非常に動きにくいと思っています。参考になれば。
【小杉主査】 今は中性子の観点ですよね。
【鬼柳委員】 はい、中性子ですね。
【小杉主査】 ほかのビームでの観点は。はい、田中委員。
【田中委員】 10番の戦略的な取組状況に関してコメントします。施設によって、どこを担っているかによっても違うかもしれませんが、SPring-8、SACLAをやっていていつも考えているのは、圧倒的にリソースが違う点です。例えばアメリカのナショナル・ラボやヨーロッパの研究機関、CERNはもちろんそうですし、国に1つはある大きな研究所に比べると、やはり日本の施設というのは人もいないしお金も少ない。そういう状況の中で、どうやって国際競争を勝ち抜くか、フロントローを維持していくか、そこに踏みとどまるかですが、1つの考えは、物理も多分、同じだと思いますが、やっぱりあるところに特化するということになる。X線レーザーとか放射光をやっていても、その中でいろいろなアプリケーション分野があるわけですが、それに対して全部をターゲットにすると、全てが中途半端になる、リソースが不十分だからですね。施設ではそれぞれその中のどこを重点的にやって、世界と戦っていくかということを常に考えていると思います。
施設の個別の戦略が、国全体として何か1つの形を成すということになるとすばらしいなと思います。少なくとも個々の施設としては、自分たちが生きていくので精いっぱいということだから、自分たちの守備範囲はこうこうと解釈して、ここをとがらせる、そういうことをやっているわけですね。うちの施設はある部分をやって、例えば分子研だったらまた別のところに取り組む、それぞれ違うところにとがったところはあるわけですから、全体をどうオーガナイズするのがベストかというのは1つ重要な視点かなと思います。
【小杉主査】 今のは放射光サイドのお話ですが、中性子も似たように状況ではないかと思います。今、日本学術会議のマスタープランに中性子も放射光も施設間のネットワークというのを出しているのは、そういうそれぞれの施設の情報を共有しようという役割分担も議論して、それぞれ特徴を出していきましょうという中でやっていると思います。マスタープランの結果は1月にならないと分からないという状況ではありますけど、ほかのビームでは何か、レーザーとか、そういう議論はございますか。
【岸本委員】 レーザーとは違うんですけど、今の御議論と近いところがあるかもしれないですけど、今度、産業連携の立場でちょっと言いたいのが、ここで13番のところなんですけども、要するに産学連携の推進というのがあるんですが、これは産業界からしたら、非常に幅広いといいますか、非常にピーキーなところを狙って、新しいサイエンスの下、新事業ができないかという考え方もありますし、やはり日頃、抱えている潜在的課題、それが解決すれば、ものすごく産業の伸び代があるというようなところもあって、じゃあ、どの施設でそういうピーキーなところを攻めていくのかとか、日常的な課題解決のところに使っていくのかというところが非常に重要になってくると思うんですね。
そのために、13番のところの大前提として、そういうピーキーな産学連携のところと、いわゆる課題解決の部分のこの両方の側面からこの組織的対応だとかネットワークをどう活用するのかというのを考えていかないと、多分かなり一極集中したみたいな話にしちゃうと、すごく受け入れがたい議論にも結果なったりとかするんですね。そこらへんは施設の話と似たようなところがあって、そこはちょっと観点に入れていかなきゃいけないかなと思います。
【小杉主査】 確かに13番の産学連携というのは、利用するサイドで利用しやすくするとか、その観点しかなくて、その産業を支えている学術でまだ取り組めていないところをいかに解決して、装置を含めて開発するかという観点が入っていないですね。そのあたり、入るようにお願いいたします。
ほかに何かございますか。あと30分程度ありますが。
【佐野委員】 じゃあ、レーザーの方の状況、今、田中先生がおっしゃったこととちょっと関連して申し上げますと、恐らくレーザーについては、わりと身近な産業があるというところが結構違うのかなと思っています。例えば加速器とか放射光ですと、それに対する産業って余り大きくないと思うんですが、レーザーはレーザー装置を売るところもあるし、ミラーを売ったりとか、あるいはスキャナーみたいなものを売ったりするところもあると。そこらへんがちょっと違うのかなと思っています。
日本の状況ということで、私の個人的な印象で申し上げますと、サイエンスはかなりいろいろ大学の研究成果とかも海外ともそれなりに互角に戦っているんじゃないかなという印象を持っています。ただ、産業自体、それから産業に結び付けるところは弱いのかなと思っています。そこらへんの仕組み作りみたいなのに今回の議論がつなげていければ大変いいんじゃないかなと思っております。
【小杉主査】 そのあたり、また後ほどレーザー関係でまとめたのが出ますが、そちらには入っていますね。こちらの方にも反映させるようにしないといけないと思います。
ほかに何かございますでしょうか。
【内海委員】 よろしいですか。今、これまとめていただいたものをざっと拝見しているんですけれど、既視感があるところもかなりあると思うんですね。
それで、少し新しい今後に向けての新たな視点というところで、14番のオープンデータ・オープンアクセスのところなんですが、これは実際に個別の資料の方でも書いておられる施設は少ないんですね。今後、オープンデータというだけではなくて、いわゆるビッグデータの取り扱いとかいうことも含めて、今後数年のうちにここが非常に重要な問題になってくる、いわゆる新しい切り口なのではないかなと思います。
今回の一連の議論の中の一番最初の回でも少し申し上げた気がするんですけれど、報告書を取りまとめるだけではなくて、何らかの国の施策の方に展開していっていただく、あるいは何がしかの予算枠取りをして形にしていくということが大事かと思うんですが、このオープンデータ・オープンアクセスのところというのは少しお化粧すれば、いい武器になるかもしれないなという気が少ししております。
例えば大型共用施設全体にかかわるビッグデータセンターをどこかに一元化して造りましょうとか、そういうことが現実的かどうかは分からないにしても、少し次への展開ができることがあればいいなと思った次第です。
【小杉主査】 14番で今、資料1で書かれている星印1つですが、ここは取ったデータを整理して、データの共有を進めるとか、そこの範囲でとどまっておりまして、本当は1つの物質をいろいろ物性を調べる意味で、いろんなビームを使う必要があり、そのそれぞれのビームを合わせると、非常に大きなビッグデータになって、そこからその物性をAIとか機械学習とかで効率よく取るという動きがありますので、そこに相当する星をもう一つ付け加えていただくというところだと思います。
このあたりは日本が今、一生懸命やっているところはいくつかありますが、予算も付いているんですかね。日本全体このへんは後れているところではありますので、こういう量子ビームの施設というのをしっかりやっていくためであることは間違いないですね。
【高橋委員】 済みません、同じところで、いいですか。自分も同じところがちょっと気になったんですけども、これ、質問の仕方がどうだったかはちょっと全部覚えていなくて申し訳ないんですけれども、これは測定したデータに関することだけなのか、あとは実験条件ですとか、運転データだとか、もっと言ってしまうと、ユーザーの属性データとかそういうところ、どこまで利用できるのか分からないんですけども、そういったところまで踏まえた聞き方は多分されていないんですよね。質問として。
質問の意図が多分、取得したデータの扱いになってしまっていると思うんですけれども、もっと掘ると、運転データ、時間当たりの取れたデータですとかユーザーデータ。ユーザーデータの話でいうと、もっと言うと、一度、昔、話題になったこともあるあちこちの施設に放射線登録をしなければいけないとかそういったところにもつながってくるので、1回どこかにデポジットすればあちこちが使えるというユーザー側のメリットという意味にもなるので、そういった何か統合したデータ、データシステム、取得したデータだけではなくて、装置、運転データですとかユーザーデータとかも入れ込めると、よりよくなるのではないかなと思います。
【小杉主査】 運転データというのはどういう意味ですか。測定条件という意味ではなくて?
【高橋委員】 測定条件も多分そうですし。
【小杉主査】 それは実験データの一つではありますよね。
【高橋委員】 それもそうですし、あとは実際、今年は何時間運転して、その時間当たりにどれぐらいのデータが取れたのかとか。
【小杉主査】 かかった時間とかそういうことですね。
【高橋委員】 はい。実際、ダウンタイムはどれぐらいだったとか、そういった意味での運転データをイメージして話しました。
【小杉主査】 あともう一つ、ユーザーの登録を一元化するというのは別の話ですか。
【高橋委員】 別の話になります。ユーザーデータというのをどれくらい共有していいものなのか、個人情報になってくるので分からないんですけれども。
【小杉主査】 そうですね。そこは個人情報で、今はむしろやりにくい状態で。
【高橋委員】 どこまでできるのか分からないんですけども。
【小杉主査】 そういうデータを、リストを持っちゃうと、それ自身の管理が非常に、責任を持つようになりますね。
【高橋委員】 大変ですよね。
【小杉主査】 そのへんは、我々でやるんじゃなくて、どこかで。
【鬼柳委員】 規制庁マターですね、そこは。
【高橋委員】 でも、各施設は持っているわけですよね、ユーザーのデータを。この施設を使うユーザーのデータをそれぞれの施設が持っているわけじゃないですか。
【小杉主査】 マイナンバーでも、我々は情報を持たずにどこか預けてやっていますよね。
【高橋委員】 そうそう。そういうことができるといいんですよね。そういうことも全部できるといいですよねというイメージで。
【小杉主査】 ちょっとどこに入るか分からないですが、そういう観点も一応、結論は出るかどうか分かりませんが、入れていただくということですね。
【小杉主査】 放射線をどれぐらい浴びているかとか、そういうデータは、あちこちの施設を使うとしっかりやらないといけない。それぞれの所属では集めてやるんでしょうけど、それを共有するのはできるかな。ちょっと分からないですね。
【高橋委員】 共有というよりも、どこかでまとめてやってくれるといいなという感じで。
【小杉主査】 ほかの観点はいかがですか。
【岸本委員】 ちょっとよろしいですか。今のオープンデータのところにまた立ち戻ってしまって恐縮なんですけども、私が知らないだけなのかもしれないんですけども、このオープンデータ・オープンアクセスを行うことによって、日本としてどういう方向性に役立てていこうとかという、結構明確なものってどこかで議論されているんですか。
【小杉主査】 事務局、お願いします。
【對崎補佐】 国側にも明確な答えがあるわけではないんですけれども、先ほど委員の先生方がおっしゃっていたように、大きい施設では今回のアンケート調査でもデータベースやシステムをいろいろ作っているという形であったりとか、昨年度、行いましたSPring-8、SACLAやJ-PARCの中間評価におきましても、そうしたオープンデータ・オープンアクセスをどのように進めていくかといった点は今後の検討課題として挙げたところでございまして、こうした個別の分野とか個別の施設のデータベースというのは結構整備されているんですが、それをほかの施設でもできるような形だったりとか、そもそも今回のアンケートの回答にもあったんですけど、どのデータを、使用権を明確化して共有するべきかということであったり、データベースを整備するにはどういうコストが掛かって、どれくらいのものが必要かということをまず議論しなければいけないと、そういったところも必要だと思うんですけれども、まずはうまくいっている事例というか、ある程度データベース設計ができているようなものがどういう標準化とか規格化を行ってやっているかとか、あるいは特にビッグデータの解析という意味では、スパコンとどういうふうにつなげているかといったものを、現状をまず聴取した上で今後、考えていく必要があるかなとは思っております。
【岸本委員】 なぜそのような質問をさせていただいたかというと、やっぱり最後、使われ方というか、目的がどこに行くかによって、随分この話も変わってきちゃうかなというところがあって、例えばやっぱりこれを日本の科学技術の資産として残して、どう使っていくのかというところが非常に大切であって、ただ単にデータを残すだけといわれたら、例えばこれは海外にもオープンになっちゃうと、海外で使われて、そのまま持っていかれちゃうみたいなですね。ちょっと産業的な観点で恐縮なんですけど、やっぱり日本のこういう科学技術基盤をどう盛り上げていくのかという分岐点に関わる非常に大切な話だと思うんですよね。これは論文投稿するという問題も似たようなところがあるとは思うんですけれどもね。
そういうところで、このへん、ちょっとまとまるかどうか分からないんですけども、少なくともこの先端施設の中で、やはり我が国としてどこに向かっていくべきなのかという位置付けが何か言えるといいんじゃないかなというような思いで、ちょっと聞きました。
【田中委員】 我々の方でもこの話はよく議論されるのですが、そもそも日本は若干この問題は後発で、どっちかというとヨーロッパ、アメリカが進んでいるんですよね。
それで、よく議論される事というのは、まさに今言われていたことであって、データをオープンにしたときに誰が一番得をするんだという話です。日本のいろいろなデータを例えばヨーロッパの人が吸い上げて、それを使って、AIとか最新の計算機を駆使した解析手法を組み合わせて、日本が今まで得意にしてきた、物性の多様なパラメーターを丹念に探って実施する新奇物質探索を機械で効率的に進めるという事だってあり得ます。みんなと同じようにオープンにしたのはいいけれど、結局、日本にとってのメリットは何だったんだろうという話になりかねません。何を目指して、どういう戦略を持ってデータをオープンにしていくか、それとともに、データを有効活用する様々なテクノロジーをどう開発してインフラを整備し、トータルとして日本の学術や産業界にメリットをもたらす仕組みとするのか、そこまで考える必要がある。単純に横並びで何も考えずにやったら危険ですよね、はっきり言って。
出口戦略とセットになっていないと。これは確かにプラットフォーム化というか、横並びの議論がいろいろとあって、アジアも日本もその大きな流れに飲み込まれていますが、データ利用も含めた全体戦略というんですか、そこのところが、確かに私にもよく見えないところがあります。
【高橋委員】 そういうふうにアウトプットを考えずに、とりあえずデータを溜めていこうというのが最近のビッグデータの流れになってしまっているんですけれども、なので、それを使う側として、多分この委員会、このレベルとはまた全然違うところで、AIですとか機械学習、ディープラーニングとかそういった方向の専門家の集まる場所で、それをどう使うのかというところを本当は議論していかなきゃいけないんだと思うんですね。
【奥室長】 オープンデータ・オープンアクセスは、もともとは国全体の政策としては科学技術基本計画を5か年ごとに策定していますけれども、その中で、基本的に国費を投じて研究成果として出てきたような論文であるとか、そのバックデータとなるような実験データについては、幅広い人たちの共同じゃないですけれども、利益を還元するためにも、基本的には公開していこうという方向性があるわけです。それはG7の中でも国際的な枠組みの中で同じように論文プラス実験データ、生データを国民・国家の財産だということで広く共有していきましょうというような大きい流れがある。
ただしそこを、おっしゃるとおり実験データを実験として得たそのすぐ後に公開してしまったら、まだ論文として発表していない段階とか、論文として発表してすぐ後に公開してしまったら、そこはある種、利益をほかの人に優先的に与えてしまうことにもなりかねないので、そこはある程度データ・ポリシー的な考え方が必要なのではないかということで、共通的なデータ・ポリシーを作っていきましょうというふうな考え方もG7を中心に議論されていると思うんです。
だから、この分野の中でも、論文を公開した、それに伴うバックデータとしてのデータはどういうような取り扱いをしたらいいのかという一般的・共通的なルールを議論してみてはどうかという1つの提案なんですが、そこは今まったくない中で、データも垂れ流して、誰に使われているかどうかも分からないような状況というのがまさに問題なのではないかなと思うんです。
そこは中性子施設でもレーザー施設、放射光施設でも、それぞればらばらだと思いますが、SPring-8も結局、データは施設に溜まっているわけではなくて、結果として利用者の方に残っているだけになってしまって、施設には知見が溜まっていない。SACLAは若干、変わってきているかもしれないですけど。それはそれで、では、今後もその方針のままでよいのかどうかということをこの場でも議論いただいたらよいのではないかなと思います。
【小杉主査】 今の御説明で。
【岸本委員】 基本的には、何というんですかね、月並みな言葉ですけど、協調してちゃんとオープンしていく部分と、競争領域として担保していかなきゃいけない部分をきちんと考えていきましょうということですね。
【小杉主査】 原著論文なんかでも、使われたデータを別途、データベースとして出版してくれるというような動きも、出版社それぞれでやって、それをまた商売の道具にするわけですよね。その前に何らかの考え方を、ポリシーをちゃんと議論しておかないとだめですね。
標準化とか規格化とかデータのフォーマットについては、学会ベースの話で、施設ばらばらよりは学会で共通に各分野、専門家での議論で出して、それに従って各施設はデータをそろえるというのは必要かと思いますね。
データの方でちょっと議論を進めましたけど、ほかに何か観点ございますでしょうか。
【雨宮主査代理】 ちょっと質問なんですが、きょうここの資料1の議論の論点、ここに挙げたものを今後この委員会で議論していくわけですね。それはここで取りこぼしがないように今、広く挙げて、議論していくうちに収束して、この論点は減っていく方向になるという理解でよろしいんでしょうか。
確かにこれ一つ一つ個別に議論していくと結構、大変だなと。そして、いろいろ議論するけど、先ほど阪部先生でしたか、議論があって、どういうふうにしてそれをまとめていくのかと。一つ一つこの星印を議論していった結果、どういう形になるのかなという今後の議論の進め方をもう一度確認したいのですが。
【小杉主査】 事務局、お願いします。
【對崎補佐】 こちらにお示しした論点は、あくまで施設を、放射光とか中性子とかレーザーにまずは関係なく、共通的にある程度拾えるものとして挙げているもので、これ全てに答えを出していくものでは必ずしもないとは思うんですけれども、個別にレーザー、中性子、放射光等、それぞれの施設のヒアリング等を通して、こういう論点があったということを念頭に置いていただきながら議論を深めていって、この中でいくつか、放射光に関してはこういう解ですねとか、あるいは施設全体に対してこういう解ですねというふうに出せるものを結論としてこの委員会の報告書としてまとめていくという形を考えておりますので、まずは雨宮主査代理がおっしゃったように、幅広に取りこぼしがないように、まずは論点を出していく。この中できちんと議論して深めていけるものをさらに深めていくという形を想定しております。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。
結構アンケートも大量の資料ですし、それをまとめていくのは結構大変な作業ですが、今後はアンケートだけから出るものじゃなくて、それに対して我々、委員会としての意見も加味しながら、事務局の方でうまく取りまとめていただくと思いますが、大体、大きな流れとしてはこういうところかなという感じはしております。また何かお気付きの重要な点も出てくる可能性もありますので、きょうはこのあたりにして、きょうは欠席者もおられますので、またゆっくり時間を作って見ていただいたものを事務局の方にメールでこういう観点が欠けているのではないかとか、まとめ方に対する意見とかそういうところを頂くといいと思いますが、一応、事務局から頂いているのは、来週中をめどということですけど、今月中じゃなくて来週……。
【對崎補佐】 そこは先生方の御都合によって柔軟に対応させていただきます。
【小杉主査】 取りあえず1週間ぐらいを、来週いっぱいだから1週間以上ありますが、気付いたところを出していただいて、それをベースにまた私の方で事務局と相談して、内容を充実させたいと思っております。一応、締め切りは来週いっぱいとしておきますが、それ以外でも別に受け付けないわけではありませんので、そのあたりは気付いた段階で出していただくというところで、きょうはこのあたりにしましょうかね。何か、是非きょう言っておかないとというのがございましたら。よろしいですか。
この議論はまた次回も続きますが、年度内で中間まとめぐらいをやる予定ですので、できるだけ気付いたことがあればすぐ言っていただくという感じでお願いいたします。
続きまして、議題2に移ります。議題2は、有識者からのヒアリングということで、事務局より趣旨等について御説明をお願いいたします。
【對崎補佐】 お手元、電子ファイルの資料2-1を御用意いただければと思います。
今期の小委員会では、前回から我が国全体を俯瞰した量子ビーム施設の在り方を検討するために、個別に量子ビーム施設の設置者でありましたり、施設の利用ユーザーからの聞き取りを実施してきております。
前回の小委員会では、レーザー施設に関しまして、佐野委員と量子科学技術研究開発機構の関西光科学研究所の河内所長から御発表いただきました。そのときの議論につきまして、資料2-1にまとめております。
まず、1ポツとして、前回、佐野委員の発表の中では、レーザー施設のプラットフォーム化やネットワーク化が重要であるといった点、あるいは人材流動性が課題であるといった点が御説明の中にございました。
また、QSTの河内所長の発表の中では、レーザーの施設において最先端の技術を開発しても、海外製品がないと成立しないという課題があるという御指摘がありました。
また、質疑応答や意見交換の中では、日本ではコンソーシアム型の産学連携がほとんど進んでいない状況であるといった点、あるいはQSTのような研究開発法人が中心となって、企業との連携体制を強化してほしいといった御指摘、あるいは、人材の流動性に関しましては、クロスアポイントメント制度を活用するなど、有効とは考えられるが、給与や社会保険の調整等、ハードルが高いといった御指摘もございました。
また、親会でございます量子科学技術委員会の方で9月12日にディスカッションした中で出てきた御意見として、日本のレーザー開発は、基礎技術の面では進んでいるけれども、産業展開に結び付いていなくて、結果的に海外から装置の供給を受けているような状況であると。そのために、実際には国内で基礎技術の開発から社会実装につなげるための橋渡しや、そのフェーズにおける技術開発を支援する仕組みが必要ではないかといった御意見。あるいは、レーザーの市場が確立していない中で、中小企業との製品化・マーケット化に向けた協力や、研究者自身が社会実装に取り組めるようなスキームが必要ではないかといった点が御指摘としてございました。
こうした御意見も踏まえまして、きょうは引き続きレーザー施設関係で阪部委員に御発表をお願いしております。
【小杉主査】 資料2-1の御説明がありましたが、それに対する意見などは阪部委員の説明を聞いてからにします。
それでは、阪部委員より20分程度で説明をお願いいたします。ベルとか鳴るのですか。そこに表示があるのですね。よろしくお願いします。
【阪部委員】 ありがとうございます。それでは、私どもの所属の京都大学化学研究所の施設のお話をさせていただく前に、大型レーザー施設の背景等についてお話しさせていただきます。
皆さん御存じのように、レーザーはあらゆるサイエンスの分野で必須のツールになってきておりますけが、そのほとんどは手のひらサイズからデスクトップのサイズでして、ここの右下に書いておりますような、いわゆる高エネルギーの分野では、レーザーは無縁のものでした。しかし、1972年にJohn Nuckollsがレーザーによる爆縮核融合の提案をしまして、それ以来、各国、特に日米で大型レーザー施設の開発が始まりました。
これは、かつて日米でしのぎを削った大出力レーザーの開発です。米国の方は、ローレンス・リバモア国立研究所、日本の方は大阪大学の一部局(当時、レーザー核融合研究センター)ということで、本当によく一部局が競ってきたものだなと思いますが、この間に大型レーザー施設の様々な技術が育ってきました。しかし、御存じのように、ITERが動き出す頃には、日本では財政的な制約もありレーザー核融合研究の推進が困難となり、その後、米国ではNIF(National Ignition Facility)の建設が始まりまして、日本としては後塵を拝することになりました。
またこの間、我が国で大きなレーザーの開発といいますと、現在の文科省、旧科技庁と通産省を監督官庁としまして、レーザー濃縮技術研究組合というのが発足しまして、レーザーによる原子法レーザーウラン濃縮の研究開発が行われました。
ここで産業界、ここにあります電力会社だけではなくて、大手メーカーが集まりまして、銅蒸気レーザー励起の色素レーザーの開発がすすめられました。
私自身は、この最後の評価試験の立ち会いをしまして、徹夜での立ち会いをした記憶がありますけども、非常にすばらしい技術が蓄積されました。日本の産業界の英知を結集して、また、大学の基礎知識を結集して創り上げたものですけども、東西冷戦等ありまして、自国でのウラン濃縮は不要ということになりまして、2005年の3月に解散しました。
私個人の本音としましては規模を縮小してでも持続してやっておけば、日本のレーザーの技術力は今かなり高くなっていたのではないかと思うのですが、完全にスクラップ、解散となりました。写真も辛うじてウエブからこの建物の写真ぐらいしか残っていません。もちろん開発内容が内容ですから、機微扱いですので、たくさんレーザー装置などの絵や写真が出てくるものではないのですが。残念なことに、ここで技術が途絶えました。
先ほどのレーザー核融合の装置もNECさんはじめ日本のいろんなメーカーさんが結集して作ったものでして、これが終わりますと、技術者の方々は各会社に戻られて、会社内でも散り散りばらばらになってしまって、技術を継承できていない状況です。大型核融合装置、同位体分離装置について同じことが言えるということで、やはりこういった大きな仕事は、技術の継承というのが非常に大事と私自身は実感しております。
そのような頃、世界の動向としては、この3つの大きな発明がありました。1つは、Moultonらによるチタンサファイアという非常に広帯域の結晶の発明。それから、Spenceがチタンサファイアを用いて自己モード同期による極短パルスの発振に成功したこと。これによって1万分の1、10万分の1のエネルギーでも非常に高いピークパワーを得ることができました。こういう2つの要素があって、御存じのように昨年ノーベル物理学賞を得ましたCPA(チャープパルス増幅)の発明がありました。よくノーベル賞が出たということで、この3番目だけが脚光を浴びるのですけれども、実はこの3つの発明により高強度レーザーが実現しました。
このノーベル賞ですけれども、これはノーベル財団のプレス記事ですが、これは非常に不思議なノーベル賞でして、不思議と言うと失礼ですが、普通、ノーベル賞、特にノーベル物理学賞といいますと、2つの側面が対象になります。1つは社会実装されて人々の生活を豊かにした、例えば天野先生らのLEDの発明のような成果ですね。もう一つは、ヒッグス粒子だとか重力波を捉えたとか、そういった発見ですが、このCPAというのは非常に特別な位置付けと思います。
ノーベル財団のプレスページには、いきなりcorrective eye surgeriesいわゆる近視矯正手術というのが書いてあるのですが、これは余り正確ではなくて、今まで何万人の方が近視矯正手術を受けていますが、別にこのCPAでなくエキシマレーザーで行なわれています。ただこのフェムト秒レーザーの出現によって、いわゆる改良型近視矯正手術が行われるようになったということで、そういう意味でCPAは別にオリジナルな貢献ではないわけです。どちらかというと、こちらの後半の部分記述が主かと考えます。無数のアプリケーション分野ではまだ完全に探究されていないが、いろいろな可能性を開いたということになるかと思います。そういうことで、こういった分野をレーザー科学分野に引き寄せたというのがCPAの大きな貢献かということになります。
それに伴って、いろんな分野、量子ビーム科学とか核科学、それから宇宙物理、それから超高圧の物理等々で新たな可能性が論じられるようになったという、そういった門を開いたということがCPAの貢献かと思います。
それで、その一例として、量子ビーム発生というのはよく言われていますが、レーザーというのはテラヘルツ波から陽子線、電子線、重イオン、X線という様々な量子ビームを発生することができるということで、ある意味、自己完結型量子ビームをできる潜在能力があります。ですから、ハイブリッドな量子ビームを利用するときは、大元のレーザーは1つで、そこから作り出される量子ビームの組み合わせの可能性を開くということで、研究が進められているのが現状かと思います。
これはいつも気になるのですが、そもそも量子ビームという言葉は誰が言い出したのかよく分かりません。「quantum beam」という言葉を「Web of Science」で調べてみますと、ほとんど出てこず、こういう現状になっております。「Web of Science」で、このキーワードで全文検索に入れるとこの件数だったのですが、そのうち日本人と外国人の著者とに分けますと、こういう状況で、そもそも発信元はよく分かりません。もしかしたら文科省の事業によって専門家に普及したのかと思いますし、それが学科や専攻で「量子」という言葉がはやったのかと。あるいは、「放射線」という言葉は存在しますけども、一般の人は放射線は放射能という印象があって、拒絶反応を避けるためだったのか、いろいろと想像します。国際的には使用されていないですが、我が国としてはこの言葉を普及していこうということなのかと思いますが、いずれにしても、レーザーにとっては非常に好都合な用語でして、レーザーというのは余り放射線とは言いにくいと思いますが、レーザー自身が量子ビームですし、レーザーで発する様々なビームも量子ビームということで、量子ビームといえばレーザーも含められることになります。ちょっと余談になりました。
そういうことで、高エネルギー科学の分野にも光の息吹が感じられるようになってきたということで、このような背景を踏まえて、世界中で大型レーザー施設が稼働・建設・計画されております。特に象徴的なのは、左の上3つにありますEUが進めていますプロジェクトでして、量子ビーム、核物理、アト秒科学のために、それぞれチェコ、ルーマニア、ハンガリーの3局に10ペタワット、さらにその上を目指すような施設の建設が進められているというのが現状です。
我が国の方は、皆さん御存じのように、下に大型施設として代表的なSACLAがありますけども、こちらは加速器ベースなのでちょっと今日の話からは置いておきますけども、上に大阪大学のレーザー科学研究所のLFEX、これはもともとレーザー核融合の高速点火の研究ということで造られた装置です。それから先般、御紹介がありました量研機構の関西研のJ-KAREN装置。これが我が国の大型レーザー施設です。
そういうことで、これらの施設に比べますと私どもの施設は、大型とは言いがたいのですが、これを紹介させていただきます。
これはつい最近出ましたレビュー論文でして、世界のレーザーを、実線は運転中、破線は建設・計画中、多角形は廃止ということで、横軸にパルスエネルギー、縦軸にピークパワーを取って描いておりますが、ここに記していますのはQSTと阪大のペタワットと我々の20テラワット(T6レーザー)ですが、一応、世界の代表的な施設の典型的な値のところはカバーしているかと思います。
これは同じ施設を、横軸をアベレージパワー、縦軸をピークパワーで表しています。アベレージパワーは繰り返しに対応しますので、繰り返しで見ますと、我々のは10ヘルツで動きますし、阪大の方は1日数発という施設でして、こういう関係になっております。
さて、大型レーザーの開発の体制ですけれども、私どもは加速器の専門家ではないので、磁場核融合を見ますと、その昔、日本中の大学の理工系の学部にいわゆる放電とか高電圧の講座というのは当たり前のようにありまして、そこで培われた放電プラズマとか高電圧の技術などの英知を結集して、磁場閉じ込めの核融合の施設である核融合科学研究所(NIFS)のようなものが発足したということで、ある意味、科学を進める理想的な体制であったのですが、時代が変わってどんどん下の根っこが細って、こういう基盤研究開発を行うところがなくなっています。これはある意味、技術が成熟したとも言えるのですが、上の施設が大型である限り、この根っこの部分というのは非常に重要で、今後これをどのようにしていくかということが重要と思っています。
一方、レーザー核融合の方はこういう形ではなくて、先ほど言いましたNuckollsが72年に発表して、レーザーの発明が64年ですから、間髪入れずにやろうということで動き出したのが、大阪大学のレーザー核融合研究センター、現在のレーザー科学研究所です。その後も関西研も大きな施設を持つようになりました。しかし、根を張るということが大事なのですが、これが十分にまだされていません。その部分で、京大化研とか光産業創成大学、理研などが根を張ることに貢献できればと思っております。
さて、京都大学化学研究所というのは、大学の一研究所としては全国でも非常に大きな研究所です。30の研究領域がありますが、この化学研究所は目的指向型ではなく一般研究所でして、国際共同利用・共同研究拠点になっております。30の研究室のうち、私どものレーザー物質科学研究領域がレーザー、それから粒子ビーム科学研究領域は加速器ということで、2研究室でレーザーと加速器の運転・維持という大変なことに取り組んでおりますが、これも研究所全体の理念と協力体制があって実現しています。
私どもの使命としましては、高強度レーザー科学の学術基盤の研究を行い、コミュニティー拡大に貢献する、それから人材を育成することです。特に学生や若手研究者が高い稼働率のレーザー施設で実験三昧できる環境の提供です。どうしても大型レーザー施設では若い人の人材育成というのは容易ではありません。それから、学生がレーザーを学ぶために、レーザー装置の詳細を理解できる適正な規模の施設を提供する。やはり大型装置ですと、なかなか全体を見ることができないので、教育にはこういった中小規模の施設というのが重要と思っております。
これは私どもの施設でして、250平米ぐらいの建屋にレーザー装置、それから照射実験室が配置され、現在20テラワット、パルス幅35フェムト秒の出力になっております。
特徴ですが、世界で最も高い稼働率です。これについては自称でして、世界の施設を比較するデータが特にあるわけではないのですが、とにかくよく動きます。普通、この類のレーザーは毎日のアライメントとか毎週のアライメントとか毎月のアライメントとか、頻繁に調整するものですが、年を通じて数回、微調整するだけとか消耗品の交換のみで、とにかく1年365日いつでも動いています。このような高い信頼性、安定性、それから実験の相互作用実験真空容器も8器そろえていますので、準備を他の実験と並行に行えます。ということで実験効率がいい。そのほか、薄膜ターゲット連続照射装置とかプラズマミラー装置が装備されています。プラズマミラーはパルスの裾野を削り落とす機能を持つもので、世界的に見ても非常に高い反射率と高いコントラストの改善が実現されています。
これはレーザーの強度と電界の大きさを示しています。京大と阪大の施設が約1020W/cm2、量研機構は1022W/cm2。世界では、ELI-NP、先ほど言いましたEUの施設がproton relativistic in plasmasの24乗を目指しているというのが現状です。
我々の化学研究所では自主研究、所外との共同研究、それから所内との共同研究など非常に多岐にわたった課題について進めておりますが、これが国際共共拠点で受け入れている課題です。この左に書いていますのは、化学研究所全体で受け入れている件数です。最近は100件を超えていますが、これを30の研究室で割りますと、大体1研究室当たり三、四件になります。私どもは1研究室で7件ぐらいは受け入れるように努めていますが、これは大変です。装置利用可能時間については十分に余裕がありますが、共同研究受け入れ財源により制限されています。受け入れれば受け入れるほど、研究室の持ち出しになります。お金は要らないけれども利用だけさせてほしいという研究者へのサポートも可能ですが、残念ながら現在、共同研究・共同利用を支援するスタッフはおりません。先ほど申しましたように1研究室ですので、教授、准教授、助教が3人でサポートしている状況です。
それで、応用研究ですが、レーザープロセッシングから量子線発生ということで、このような研究を行っております。例えばこれは薄膜にレーザーを照射して電子を加速して、電子パルスを圧縮して、このような回折像を得たり、あるいはレーザーを2つに分けて、片方で電子発生加速し、発生電子と他方のレーザー光とを直交させて散乱実験をして、レーザーのパルスを測ったりするということで、現在のところ、最新では80フェムトの電子パルスを実現しております。
あるいは、レーザーの一部を金属のワイヤに照射しまして、そこで発生する表面電磁波をレーザー生成加速電子ビームでプローブして捉えています。このようなワイヤターゲットにレーザーを当てまして、表面波が電子ビームのところに来ますと、このように電子ビームが偏向します。これはシミュレーションですけど、いわゆるゾンマーフェルト・ウエーブです。ここから電子を加速した瞬間、表面に強い表面テラヘルツ電磁波が走りますが、これを世界で初めて捉えました。このような実験をやっております。そういうことで、レーザーで電子を発生して、それで電磁波も発生して、テラヘルツ波も発生してということで、様々なコンビネーションが可能であるということがレーザー生成量子ビームの1つの特徴かと考えております。
これはごく最近、撮られた絵ですけど、金属ワイヤにレーザーを照射した瞬間を電子ビームでプローブして、その界隈の周辺電磁波を100フェムト以下の分解能で捉えたものです。
それから、もう一つおもしろい研究例を紹介しますが、これはレーザーを真空中に絞ったイメージ図です。これを先ほどの電子ビームで捉えたのがこれです。これはレーザーが走っていった瞬間です。その後、残留ガスのところがイオン化されて、ここで電子ビームの偏向を受けているという、そういうようなものを捉えることに成功しました。
時間がもうありませんので、最後3枚だけ追加させていただきます。京都大学化学研究所は、皆さん、こちらの方がどちらかというとよく御存じで、加速器の施設がございましたが、前任の野田教授が定年退職された後、今後の加速器関連科学をどのように展開するかということを化学研究所で議論しまして、この4月から新しい教授を迎えまして、新体制に移行しています。
今まで化研には100MeVの電子の線形加速器と蓄積リング、それから7MeVのプロトン線形加速器と、あるいはここからマグネシウムを入れられるラインがありましたが、特徴として、重イオンの冷却装置付きの蓄積リングがありました。1研究室でこれほどの施設を維持しているのは大変なことなのですが、何とか運用をしてきまして、4月からこのイオン冷却装置付きのリングを理研仁科の方へ移設しまして、これを再構築し、化研では電子リングを再構築して、また仁科の方から不安定核の生成装置技術を持ち込んで、相互の協力によって、ここに新しい不安定核物理の拠点を創るということで今取り組んでおります。
仁科の方には、京大化研から持ち込んできたこのようなイオンの蓄積リング、不安定核のビームサイクル技術と、京大で開発する標的技術と合わせて、こういった希少なRIを高い確率で核反応させる施設を造って、新しい核科学の拠点にしようということでやっております。
簡単にまとめさせてもらいますと、超尖端、極限的な研究には大型施設は必要ですが、その物理的・技術的基盤を支え、人材を教育・育成できる安定に高稼働する中小施設の整備も重要であると考えています。
高強度レーザー科学分野にて、世界の潮流から取り残されないように、中心的拠点の整備が必要だと。これは国研になるのではないかと思います。その拠点は単にレーザーの性能だけを標榜するのではなく、研究推進組織(レーザー、照射系の高品位安定性、可動性、実験実施迅速性、成果の生産性、基盤となる大学・中小施設との連携など)において、世界最先端であることが真の国際拠点であろうかと思います。
現在のところ、世界的にいってもまだこれがきっちりとできているところはそうないので、今なら世界に先行するような施設を創れるのではないかと信じています。
そういうことで、終了します。ありがとうございました。ちょっと最後に蛇足になりますが、ここにいろいろお世話になった科研費を書いてあるのですが、残念ながら電気代を科研費で払っているという現状です。こういうのは科学技術立国を謳う日本で、あっていい状況なのかと危惧しております。生活費ぐらいは運営交付金で賄えるようにしていかないと、もう誰も科学研究に取り組まなくなるのではないかという危機感を持っております。最後、済みません、ちょっと蛇足でしたけど、お許しください。ありがとうございました。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。今の御説明と、あと資料2-1の前回等のまとめがありますが、御意見、御質問ございましたら、よろしくお願いいたします。
【鬼柳委員】 いいですか。人材育成の一部だと思うんですけども、学部等でレーザーの教育というのはされているんですか。
【阪部委員】 もう一度、お願いします。
【鬼柳委員】 教育ですね。授業のカリキュラムにレーザーみたいなのは入っているんですか。
【阪部委員】 私どもの担当は理学研究科の物理でして、大学院カリキュラムには入っていますが、いわゆる学部の基本科目にはなっていないです。特に光学というのは非常に重要ですが、まだ全国的に見ても基本科目にはなっていなくて、追加選択的な科目に止まっているのが現状かと思います。私は必須と思って授業をやっております。
【小杉主査】 学生はどれぐらい選択されているんですか。
【阪部委員】 私どもは化学研究所ですので、理学研究科物理の協力講座になりますので、指導できる学生は年に最大4名ぐらいしか来られません。理学研究科物理第2分野(高エネルギー関係)全体で35名ぐらいですので。
【小杉主査】 ほかにございますでしょうか。
【近藤委員】 限られた状況の中で、非常に高いパフォーマンスを出していらっしゃるので感銘を受けましたが、全国にこのレーザーを研究している研究室の数、講座数というのはどのぐらい。さっき根を張ることが大事だとおっしゃっていたんですけれども。
【阪部委員】 いわゆる高強度レーザーという分野に限ると、非常に少ないです。これは日本が遅れをとっていると実感するのですが、ただ、レーザーというのは最終的にはツールですので、どの分野の方も利用できる施設があれば、もっと広がってくると思います。
例えば中性子をやっておられる方、素粒子をやっておられる方が何かふとアイデアを思い付いて、非常に高い光子密度を狙ったらこんなことができると思った時に、目の前にそういう施設があれば展開できるという。思い付いてから作るようではもう間に合わないのではないかと思います。そういう意味では、先ほどのMourouのノーベル賞の話をしましたけれども、いろんな可能性を開いたということに対して評価を受けたノーベル賞ですので、可能性があるのだったら、その施設を整えておく。今、整えておくということが世界に遅れを取らないためにも重要と考えています。すぐに今これで何か成果が出るかとか、現状の例えば、J-PARC以上に中性子がでますとか、そんなことは毛頭言えません。あるいは加速器についても、既存の加速器を上回るような性能のものをレーザーですぐ作れるかということも、今そんなことは言えないですけれども、ただ、ポテンシャルはあるということで、何かアイデアを思い付いてから装置を作るようでは、レーザー技術開発が間に合わないと思います。
【近藤委員】 利用するだけではなくて、今おっしゃられた装置を作るところへ進む人の数というか。
【阪部委員】 これは非常に少ないのです。これは学界だけじゃなくて産業界もです。先ほども言いましたけど、レーザー核融合装置の建設をしている時、あるいはウラン濃縮の施設開発を国プロでやっている時は、企業も社を挙げて行い、いろんな技術が蓄積されていたと思います。それをパッとやめてしまったら、もう企業の技術者はばらばらに離散です。それでは、次はということになります。きょう佐野委員の方からお話ありましたが産業応用ということで、やはり何か目的がはっきりしているようなもので、装置の開発を企業も行ない牽引していく必要があるかと思います。
世界の動向を見ると、個人的には非常に危機感を持っています。世界中で、光科学技術のポテンシャルを感じて、これだけ多くレーザーを作っています。特に中国は次はレーザーで勝負しようという気概は感じられますね。そんな中で、日本でも是非そういった長期的な場をもって技術の開発を産学で高めてもらいたいものです。これは個人的な思いも入っていて恐縮ですけれども。
【近藤委員】 ありがとうございます。
【雨宮主査代理】 きょうお話の中では、京大、阪大、あと関西研の話が出て、主に超高強度レーザーというところのお話だったと思いますが、レーザー全体での教育は、例えば物性研とか理研とか、極短パルスとかというのがやってますね。それで、きょうのお話はレーザー全体の中のどの辺のサブジェクト、要するに高強度レーザーといったところだと私は理解したのですが。
【阪部委員】 はい、そのとおりでして、今日は高強度レーザー分野ということで話をさせていただきました。
【雨宮主査代理】 レーザーのコミュニティー全体の中での位置付けということに関して、どういうことになるんですか。
【阪部委員】 レーザーのコミュニティーの捉え方です。(一社)レーザー学会というのがあるのですが、今やレーザー学会が対象とする分野は非常に広いです。光通信からプロセッシングからバイオという、余りにも広いですが、それを全部網羅することはできないので、きょうお話ししたのは、大型施設を要する高強度レーザー科学という分野です。
もちろん、他に例えばアト秒とか超高速科学とか、あるいは量子コンピューター量子計測など光関係というのもあります。少し乱暴な言い方をすれば、ありとあらゆる分野で光というのはキーワードになっているというのが適切な表現かと思います。その光の分野において遅れを取らないようにすることが重要かと感じています。この光の分野の共通技術がレーザーとも言えます。
【雨宮主査代理】 その超高強度の出口としては、最初に説明があったレーザー核融合が……。
【阪部委員】 スタートですね、はい。
【雨宮主査代理】 それで、そのプロジェクトがなくなったので、日本ではという話ですが、そのレーザー加工とかいろんな幅広いアプリケーションだといろいろあるわけですよね。
【阪部委員】 はい。
【雨宮主査代理】 それで、超高強度レーザーは全ての可能性があるんだと言われながらも、そうじゃないアプローチをしているところも随分あって、Q-LEAPとかですね、ちょっとそのへんの整理が私自身、頭の中でできなくて。
【阪部委員】 きょう、ちょっと言いましたけど、前半の私どもの取り組んでいる応用研究の半分はQ-LEAPにも関係しています。レーザーの強度を減じて、フェムト秒レーザープロセッシング研究も行っています。
高強度レーザー科学ということで、量子線発生だけきょうお話ししましたけれども、同じフェムト秒で強度の低い方のプロセッシングについてもQ-LEAPをはじめ基礎研究には取り組んでおります。
そういった基礎研究をやるにしても、やはりレーザー装置とかレーザー技術というのは必要になってくるので、そういった意味での人材育成がやはり重要かと思っています。
【雨宮主査代理】 ちょっとレーザーから離れるんですけど、核融合という視点から見たときのレーザー核融合というのは、ほかのトカマクとかヘリカルとかもありますが。どの方法も実現の見通しが立っていないというところと理解しているんですが、見通しが立たない上でも、その見通しの立たなさ加減というか、要するにどれが一番トップを行っていると理解すればいいんですか。
【阪部委員】 これはあまり不正確なことを言えません。私自身、よく同じような質問を受けるのですが、そもそもレーザー核融合のプラズマと磁場閉じ込めのプラズマは全く異質のものです。ですから、私どもに磁場閉じ込めはどうだと言われましても、正しい答えを言うことはできないというのが正直なところです。単にスポークスマンであれば、レーザーの方がいいと言うのですけども、学者として言えば、全く異質のものは本当に両方勉強しておかないと、正しい答えを言えないと思っております。
ただ、レーザーの場合は、要はマイクロ太陽を作るということですけども、非常に研究計画を立案しやすいと思います。磁場閉じ込め研究は装置にかなり依存しますので、次のステップで新たな課題に取り組む場合に新たな大きな閉じ込め装置を必要とします。他方、レーザーの場合は標的が小さいものですから、いろんな考え方を試みることができるという利点はあるかと思っております。
どちらが早いかとよく言われるのですが、全く異質なものを比べられません。でも多分、政府にとってみればどちらも核融合だから、どちらか1つにしなさいということだったので、ITERといいますか磁場の方へ。圧倒的に研究者の数が違いますから、ポピュレーションで決まったものかなというぐらいに私は思っているのですが。余りいいかげんなことを言ってはいけませんので、的確な返答ができませんで済みません。
【小杉主査】 ほかに何かございますでしょうか。どうぞ。
【田中委員】 普段レーザー関係の方々とよく一緒に仕事をさせていただいているのですが、そこで感じることは、アプリケーション、日本では多分、レーザーを用いて何かをやるというところは非常にアクティビティーが高い。一方で、とがったところに行こうとすると、レーザー自体に手を入れるというか、レーザーを実際にカスタマイズするということができないとなかなか難しい側面があります。ところが現状、日本には、そういう細部にまで踏み込んでレーザーをちゃんと作り上げられる人材がほとんどいなくなっているということに日々危機感を持っています。
それは先生が先ほど言われた、大きなプロジェクトがシャットダウンしたときに、もうレーザーは使う方に特化していくという流れができてしまったから、現状こういう状況にあるということなんでしょうか。
【阪部委員】 おっしゃるとおりだと思います。現状では、レーザー装置そのものの研究者は非常に少ないです。そういう意味ではもう少し産業界とも連携しながら、レーザーの技術力を何とか高めていく必要があるのではないかと。
日本のメーカーさんもやはり独自でレーザー装置を開発してやっていただけるようになればと願っています。私どものレーザー装置というのは完全にホームメードのレーザー装置だから使いこなせて細部にまで熟知しているのですが、ただ、ホームメードと偉そうなことを言っても、パーツは輸入品が大変多いです。本当は日本で最先端の研究をやるのでAll made in Japanでやりたいのですが、そんなことはレーザー装置ではもう不可能ですね。
これほど、光の時代とかレーザーとか言われているにもかかわらず、レーザーの要素技術に係る人材育成が遅れているのが現状だと思います。
【小杉主査】 そのへんの問題は、資料2-1にもまとまってはいますけど、親の会でもいろいろ議論がありました。人材育成とか、もう少し長期スパンの支援が必要だとかいう議論があったと思うので、そのへんも親の会のまとめの方で書いていただくと、うまく今回の御発表とつながってくるかなと。
ほか、何かございますでしょうか。
【内海委員】 よろしいですか。19ページのところで、化研さんのレーザー施設、稼働率が高いとおっしゃっていまして、これは非常に大事なことと思います。実は私も量研関西研の所長をやらせていただいていたのですが、、ハイパワーレーザーは、調整に毎日、非常に時間がかかって、例えばJ-KARENでも毎日午前中は調整をして、ようやく午後になってからユーザーモードになって、夕方になったら終わり。明くる日にまたゼロから調整をやる。そういうのを繰り返していて、放射光やJ-PARCなどのユーザーから見ると、ハイパワーレーザーは稼働率というかユーザーに供給している時間帯というのが極めて少ないような印象があります。
今日のご発表で、化研の場合にはそうじゃないよとおっしゃっていますが、例えば阪大レーザー研や関西研のレーザーの稼働率を上げる、調整の時間を少なくするためにはどういうふうにすればよろしいんでしょうか。
【阪部委員】 これは間違っていたら申し訳ないですけども、何か国の高額なお金を申請して施設を建設するときには、かなりとがった性能を要求しないと認められませんね。例えばペタワットということで概算要求すれば、ペタワットで稼働しないとだめなんですけれども、それを例えば100テラで安定に動かすという仕様を含める場合もあると思います。
テラワットレーザーが出現してからペタワットまで本当にまだ20年ぐらいの間なんですね。誰が言い出したのか分からないですけど、テラワットが出て間もなくもうペタワットとかと。多分これは理論的にいろんなプロポーザルがあって、面白いことがありそうなので尖端を狙おうとします。もちろん、尖端施設も重要であるのですが、そこまでの道のりを歩むための施設も重要です。尖端は年に数回の実験でもいいですが、基盤は毎日実験できる施設でなければなりません。面白いことがあるからペタワットというのですが、その間の10テラ、100テラでもやるべきことはまだまだあると思います。だから、ペタワットを例えば100テラのスペックで安定に動かすようなやり方というのもあるのではないかと。そうすると、いろいろ新しいものがまた出てくるのではないかと。
私どものレーザー装置も、実は20テラなんですけども、頑張って100テラにしようかという話も研究室内であったのですが、20テラが100テラになって5倍になったところで、新しい学問でどんな展開があるかという議論を行った場合、それよりももっと地に足を付けて、20テラでしっかり仕事をして、人材も育成する方がいいのではないかということになりました。
それと、多分、市販の数億で買ってきた10テラのレーザーのビーム径は23センチぐらいですけど、当方の20テラワットレーザーはあえて5センチにしています。それは、先ほども言いましたフェムト秒レーザーのプロセッシングに対する知見があるので、真にダメージ閾値を理解しているので、無理なことはしないので、余裕を持って設計しています。このような細かいことの積み重ねかと思っております。
【内海委員】 ありがとうございます。
【小杉主査】 似たような議論は放射光でもどの程度の輝度(エミッタンス)を狙うかというところでありました。そろそろお時間なんですけど、短いものなら。
【雨宮主査代理】 「量子ビーム」という名前、どこで出てきたかと。出てきた頃は何か違和感があったんですが、使っているうちに慣れてきて、私も東大で2003年あたりから量子ビーム特論という名前を付けて。でもどこで出てきたかといわれるとよく分からなくて、きょうのお話だと、文科省あたりから出てきたんじゃないかというコメントがありましたけど、私も漠然と放射線、放射光というのが放射能と同じに聞こえるからそれを避けたというようなこともちょっと耳にはしたんですが、これが話題になったところで、文科省さんとしてはどういう。この委員会の名前も「量子ビーム」ですよね。ということで、何かこの際、どの辺から始まっているのかという情報があると。お願いいたします。
【奥室長】 古文書を引っ張り出さないと分かりません。単純に放射光と中性子と、あとレーザーとというのをまとめて表わす言葉というのが特段なかったので、「量子ビーム」と言って、一緒にまとめる概念にしたのではないかと思いますが、特段、何か意味があるわけではないと思います。
【雨宮主査代理】 でも今、量子科学技術というか、quantumというのがやはり世界的にかなり浸透してきているので、quantum beamというのを日本が言い出したんだと良い意味で発信するというチャンスかもしれないなという気もします。
【阪部委員】 是非、その「量子ビーム」という名前と同時に、国としての体制も国際的にアピールできるようになればいいのかと思っています。
【小杉主査】 この小委員会のミッションでもありますので、今後とも引き続きこのテーマで進めていきたいと思います。
じゃあ、お時間の都合もありますので、議題3のその他に進みます。事務局より、令和2年、来年度の概算要求についての報告と、文科省の科学技術・学術政策研究所が実施しているデルファイ調査について紹介があります。よろしくお願いします。
【對崎補佐】 それでは、ごく簡単に最近の状況として、事務局より御報告申し上げます。資料3と4-1、4-2を御用意いただければと思います。
まず、資料3は概算要求関係でございますが、量子研究推進室で所管しております予算につきましては、共用法の3施設及び現在整備を進めております次世代放射光施設の推進の関係でございます。
文部科学省の予算は大部にわたるので便宜的に大型研究施設の整備・利活用の促進というカテゴリーにその3施設と次世代放射光施設を入れておりまして、それ以外に、当室の所管ではございませんが、「富岳」の関係も入ってございます。
2ページ目に行っていただきまして、次世代放射光施設につきましては、今年度さらに整備を進めるという形で、5年後のファーストビームに向けて、こちら、きょう御出席の内海委員、田中委員ほか皆様の御協力も頂きまして、進めているところでございます。来年度につきましては、今年度の13億に対しましてかなり増額して、56億という形の要求にしてございます。
続きまして、次のページ以降は共用法の3施設でございますが、まず、SPring-8につきましては、今年度の予算では5,000時間の運転時間というところでございますが、来年度以降、さらに必要な運転時間を確保するという意味で、5,400時間の運転に当たる概算要求をしております。
次のページ、SACLAにつきましても同様に、今年度の予算では5,815時間分の予算でございますが、利用者等の増や運転時間の確保の観点から6,250時間の運転時間を確保できる予算を概算要求してございます。
最後に、J-PARCでございますが、こちらも今年度の予算につきましては7.5サイクルの運転時間の確保ということになってございますが、来年度以降の需要に鑑みて、8サイクルの運転の確保という予算を概算要求しているところでございます。
こちらはこれから年末に向けて折衝をしていくところでございますが、こうした3施設について、引き続き確実な運転と、次世代放射光施設につきましては確実な整備を行えるように概算要求してまいるところでございます。
続きまして、資料4-1、4-2は、最近公表されましたNISTEPの科学技術予測調査の関係でございます。こちらもごく簡単に御説明申し上げます。
資料4-1の2ページ目に概要が書いてございますが、本調査は科学技術基本計画をはじめ基礎的な情報の提供という目的で、1971年から5年ごとに実施してきておりまして、2040年をターゲットイヤーとして、各個別の事項について調査を行い、社会の未来像や中長期的な展望、基本シナリオといったものを検討することに活用している調査でございます。
少し飛んでいただきまして、4ページ目をご覧いただけますでしょうか。こちらの科学技術予測調査につきましては、各分野別の分科会を設置いたしまして、それぞれの項目のヒアリングと総括を行っていただいております。量子ビーム関係は、そちらのリストにある宇宙・海洋・地球・科学基盤分科会という分科会で議論されてございまして、こちらは雨宮主査代理に分科会の座長をお務めいただきました。
また少し飛んでいただきまして、それぞれの分野の調査、いわゆるデルファイ調査の検討方法につきましては、11ページをご覧いただけますでしょうか。それぞれの調査分野につきまして、本年の2月から6月にかけて2回に分けたアンケートを各分野の研究者に対して実施しております。
そして、次の12ページに各調査における細目について記載がございます。こちら、詳細はまた資料4-2の方で御説明申し上げますが、宇宙・海洋・地球・科学基盤の中の100ぐらいの細目の中の量子ビーム関係は、放射光と中性子・ミュオン・荷電粒子と光・量子技術という形に分かれて調査を実施しているところでございます。
調査に関する質問項目としては、次の13ページでございますが、重要度、国際競争力、実現見通し、政策手段、社会的実現の見通しといった点について選択肢を用意して、それぞれの項目について回答を頂いているものを総括しているものでございます。
個別の回答の内容につきましては、続きまして、資料4-2の方をご覧いただけますでしょうか。こちらも大部にわたりますので、ごく簡単に御説明申し上げます。
こちら、7ページをご覧いただけますでしょうか。量子ビームを含む宇宙・海洋・地球・科学基盤の回答状況でございますが、質問数は100ほどございまして、回答数が1,140というところでございます。回答者の年齢、職業、職種につきましてはそちらに記載のとおりで、30代、40代、50代を中心とした学術機関、公的研究機関、企業を含めた研究開発に従事している方々の回答が多かったという状況でございます。
続きまして、8ページに、少し文字が小さくて恐縮でございますが、先ほど申し上げた100のうち量子ビーム関係は25から、最後の光・量子技術はかなりいろいろなものが入っているので、それにプラス11項目ぐらいのトピックについて質問をさせていただいたところです。
その上で、結果の概要は9ページにございますが、端的に申し上げますと、量子ビームに関係する事項については重要度も高く、かつ国際的にも重要であるということと同時に、また、技術的・社会的実現の見通しが早いという観点で、どの調査項目においても重要度が高いところに位置付けられておりまして、こうした結果を活用しつつ、今後のこちらの議論にも役立てていければよいと思っております。
10ページ以降で簡単に申し上げますと、ざっと見ていただければと思いますが、11ページをまず申し上げますと、重要度の高い科学トピックの中で、量子ビームの放射光施設の整備であったり材料に活用する技術であったり、中性子関係でも加工や制御を行う技術といった点も重要度が高いところにランクされております。
また、12ページが国際競争力関係でございますが、こちらは最上位ではないですけれども、ミュオンを生成・制御した磁気状態を解明する技術であったり、先ほど申し上げた複数の量子ビームを複合的・相補的に利用して加工・制御を行う技術といったものが上位に入っております。
また、少し飛んでいただきまして、14ページが実現の見通しでございますが、こちらも量子ビームのトピックにつきましては軒並み実現の早い技術トピックとして、実際、次世代放射光施設は2023年のファーストビームを目指しているところでございますが、それ以外にも情報科学との連携でありましたり、オペランド計測等々の技術が上位にランクインしているところでございます。
また、少し飛んでいただきまして、18ページが人材育成確保の必要性が高い技術トピック、さらに19ページが研究開発費の拡充や事業補助の必要性が高い科学技術トピック、さらに20ページが基盤としての整備や事業の環境整備の必要性が高いトピックと、さらに21ページは国内連携・協力の必要性が高いトピックというところですが、いずれの項目につきましても、量子ビーム関係はこれらの人材育成、基盤、技術の確保、国内連携の必要性といった点で重要度が高いものとして位置付けられております。
先ほど申し上げました、こうした調査結果も踏まえて、今後当小委員会でも議論する中で、何らかの優先順位が必要な技術といった点を検討するに当たって参考にしていければよいかなと思っております。
報告は以上でございます。
【小杉主査】 どうもありがとうございました。今の御説明に対して、何か御質問等ございましたら、よろしくお願いします。
わりと放射光の施設のは既に走っていますけど、かなり上位に選ばれています。そのあたりまとめられたんですか、雨宮委員。
【雨宮主査代理】 というか、アンケート、まさに説明がありましたように、これは2040年をターゲットにして今後、何が重要であるかということで、5年ごとのサーベイで非常に規模が大きいわけですが、私が担当した分野のまとまりが宇宙・海洋・地球・科学基盤ですね。科学基盤の中に量子ビーム、計測、加速器、光が入っているという関係で、どこに入っているのかとても分かりにくいと思うわけですね。宇宙・海洋・地球・科学基盤の中に入っているわけです。
アンケートを取るときに、それぞれどの学会にお願いするかということで、放射光学会、中性子学会、物理学会、応用物理学会とかそのへんを通してアンケートをお願いした結果、1,100ぐらいの集まりがあって、そういうアンケート結果をまとめたものがこれです。
どういう形で科学技術のトピックスを拾い出すかということ、キーワードをどうやって設定するかということは、委員が取捨選択しました。重要であり、なおかつアンケートに答えてもらいやすいような形にするということは配慮しました。今、広い分野の中に全部で9つの細目があるわけですけど、そのうちの1つが量子ビームの放射光で、量子ビームの中性子・ミュオン・荷電粒子というのが2つ目、3つ目が光・量子技術というわけですね。
今、個別に見て、ここに関係するのが、量子ビーム(放射光)、量子ビーム(中性子)、光・量子技術ということで、そこのところをピックアップして後で見ていただければ、どういうようなことが重要だとされているか、重要だと皆さんが考えているかということについての傾向が見えてきます。
先ほど對崎さんから説明がありましたように、量子ビームの場合には、やっぱり重要度の高いものと実現性がわりと2040年までに明確に見えているものとの非常に相関が強いですね。宇宙だとその相関が極めてなくて、重要度の高い、しかしまだまだ先ということで相関が取れていないと。やはり分野によって随分、差がありますが、この結果を見て思ったことは、やはり重要だと研究者が考えることは、具体的に実現できるという見通しのあるものということで、要するに現在、量子ビームが本当に必要とされているというリアリティーを反映した相関ではないかなと、アンケートを見て分析しました。
以上、補足です。
【小杉主査】 項目を見ると、施設的な大きなものを造る話から、1つの研究テーマのチャレンジみたいなものとか、スケールは結構ばらばらですね。
【雨宮主査代理】 そうですね。
【小杉主査】 それで、重要度とか国際性とか競争力とか、あと実現年度とかそのあたりで予測がされているということのようです。
何かございますでしょうか。ちょっと大部な資料で、これ自身をどうこうするというわけではないんですけど、参考にしていただくというところだと思いますが。特によろしいですか。
用意した議題はここで終わりなんですけど、最後に委員の方から何かございますか。
【阪部委員】 済みません、ちょっと質問で教えていただきたいんですけど、ムーンショットの状況とか動向というのは、情報としてここで伺えますでしょうか。
【小杉主査】 何か答えられますか。事務局の方で。
【奥室長】 ムーンショットは、内閣府の方で中心に検討されていますけれども、ビジョナリー会議という会議体があって、そこの場で25のムーンショット目標例というのが抽出されています。その25の中から、CSTIの中で絞り込んで、研究目標の具体化というのを今進めているところです。
どこまで公開されているのか分からないんですけれども、12月17日、18日に東京と京都でそれぞれワークショップをやって、7つの分科会ごとにイニシャルレポートという、ムーンショット目標を具体化した1つの事務局としてのレポートというのをまとめて、それを東京の会議、京都の会議に掛けて、国際的な専門家を交えて議論をして、最終的に目標として設定するという段取りが想定されています。
多分もう7つの分科会の開催案内というのがJSTのホームページか何かで出ていると思うんですけれども、この委員会の関係では、フォールトトレラントの量子コンピュータの開発というのが2050年のターゲットとして設定されています。それのイニシャルレポートの作成というのを今は内閣府中心に検討を進めているという段階ですね。
【阪部委員】 分かりました。
【小杉主査】 それでよろしいでしょうか。ほかに。
【鬼柳委員】 細かい話なんですけれども、議事録に、前回のレーザーのところかな、「QST」というのは幾つも顔を持っているんですけれども、「QST」だけの表現で終わるんですか。研究所までは書かないんですか。
【内海委員】 ごめんなさい、もうちょっと質問の……。
【鬼柳委員】 QSTっていろんな顔を持っているじゃないですか。
【雨宮主査代理】 部門が複数あるという意味ですね。
【内海委員】 ございます、はい。
【鬼柳委員】 だから「QST」というのを読んだときに、放医研を思い浮かべる人と、核融合を思い浮かべる人、それから放射光を思い浮かべる人、いろいろいると思うんですけれども、「QST」だけで書かれると、特に専門じゃない人は、自分の知っているところを思い浮かべて、そこでやっているのかなと思うんじゃないかなとちょっと心配したということです。
【内海委員】 QST、量研機構の中には、研究開発部門が3つございます。もともとの放医研が主体となっている量子医学・医療部門と核融合エネルギー部門、そして量子ビーム科学部門という3つの部門から成り立っているのが量研でございます。御質問の回答になっていないかもしれませんが、例えば理化学研究所にもいろんな研究所があるのと同じような位置付けだと思っていただければと。
ただ、量研が発足してからまだ歴史が浅いですし、3つの部門の業務内容がそれぞれかなり離れているところがあり、受け取られる方の御専門に近いところのQSTの部門が特に意識されるという意味では、先生がおっしゃったとおりかなという気はいたします。
【鬼柳委員】 慣習としてどうなっているのかなと。特に一般の人がもしこれを読んだときに、「QST」と言われたときに、どこをイメージするかってほとんど分からないで見るのかなと思うんですよね。混線するかなということです。
我々、ここで前回の研究発表のところに「QST」と出ていたんですけど、それは量子ビームの方だろうなとは思うんですけれども、放医研しか知らない人は放医研でやっているのかと。
【内海委員】 なるほど。ありがとうございます。そういう視点で今まであまり考えたことがなかったので、はい。
【小杉主査】 ほか、よろしいでしょうか。
きょうはペーパーレスで進みましたが、困るとか、何か御意見ありますか。
【山田委員】 スタックが、2回ぐらいあって、結局自分のコンピューターで事前に送っていただいたのを見る方がやりやすかったです。
【小杉主査】 そっちが楽と。
【山田委員】 済みません。何かやり方が……。
【小杉主査】 自分のコンピューターで見た方が楽と。
【山田委員】 操作方がよく分からなかったんですが。
【對崎補佐】 事前にも、できる限り資料はお送りさせていただきますので、両方お使いいただけるように。済みません、きょうの分は申し訳ございませんでした。
【小杉主査】 きょうはもうこのあたりで終わりたいと思います。最後に事務局の方から連絡事項等、お願いいたします。
【對崎補佐】 本日もどうもありがとうございました。次回の量子ビーム利用推進小委員会の開催につきましては、改めて日程調整の御連絡をさせていただきたいと思いますが、年内にできればもう一回ぐらい開催という予定で考えております。
また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆さんにメールにて御確認いただき、文部科学省のウエブサイトに掲載させていただきます。
本日の配付資料につきましても、非公開のものを除いて後日、文部科学省のウエブサイトに掲載いたします。
主査からもアナウンスいただきましたが、議題1の調査研究の関係につきましては、別途、事務局からまた御連絡をさせていただきますが、細かい点、またお気付きの点ございましたら、御連絡いただければと思います。
以上でございます。
【小杉主査】 以上をもちまして、第10期の第32回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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