量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第9回) 議事録

1.日時

平成29年6月29日(木曜日)16時00分~17時30分

2.場所

文部科学省 15階 15F1会議室(東京都千代田区霞ヶ関3-2-2)

3.議題

  1. 軟X線向け高輝度放射光源やその利用について(高輝度放射光源に係る地域構想の調査について、計画案の検討にあたっての留意点について)
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、内海委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、近藤委員、髙原委員、田中委員、山田委員

文部科学省

中川大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官、村上研究開発基盤課長、上田量子研究推進室長、橋本量子研究推進室室長補佐、大榊量子研究推進室専門職

5.議事録

【雨宮主査】  それでは、ほぼ定刻になりましたので、第9回量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
 本日は10名の委員に御出席いただいております。尾嶋委員、高橋委員は御欠席です。
 本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づき、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局より配付資料の確認などお願いします。
【大榊専門職】  それでは、お手元の資料を御確認ください。議事次第にございますように、資料1から資料3-3を配付しております。前回までの資料はドッジファイルに入ってございます。資料に不備等がございましたら、事務局まで御連絡ください。
 よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  それでは、議題(1)軟X線向け高輝度放射光源やその利用について、に入りたいと思います。
 まずは、前回5月29日の議論の確認です。
 前回、国の主体候補について、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)、日本語では量研と2文字で略して呼ばせていただきますが、具体的には量研が適切との議論の取りまとめを行いましたが、事務局にそれを資料としてもらっています。
 事務局より資料の説明をお願いします。
【上田室長】  事務局でございます。資料1を御覧ください。
 高輝度放射光源に係る国の主体候補についてということで、5月29日の議論をまとめさせてもらったものです。事前にお目通しいただいているかとも思いますが、念のため御説明いたします。
 小委員会における中間的整理や、これまでの小委員会の議論を踏まえ、高輝度放射光源に係る計画案の検討を行う国の主体候補について、以下のとおり見解を取りまとめたということで、最初のポツが、「本光源は産学官の幅広い共用が想定されるが、将来の共用法の枠組みに基づく共用や産業利用の促進等の重要性を見越し、国立研究開発法人が国の主体として適切である」という見解です。次に、「具体的には国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)が国の主体候補として適切である。」「その理由として、必要な観点を満たしていること」。とあり、これは下の方の小さな文字で、検討の際の観点として挙げられて、それに基づき検討を行ったということが書いてあります。そして、「組織として積極的な意思が認められることが挙げられる。また、近年科学技術イノベーション政策上の重要性が増しており我が国の強みの一つである、放射光以外のビームも使った多様な量子ビームの相補的・相乗的利用の推進という観点でも、量研が国の主体候補となることが妥当と考えられる。」「なお、整備に当たっては、SPring-8や他の放射光施設がそうであったように、体制構築を含めオールジャパンで人材が結集して当たることが重要であり」、「学術界の協力はもちろん、理化学研究所や高エネルギー加速器研究機構を含めた関係機関の積極的な協力が重要であり望まれる」、ということで、資料といたしております。
 以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 前回の議論の内容を資料にしてもらったものですけれども、いかがでしょうか。何か御質問、コメントがありましたらお願いいたします。
 前回議論したことが簡潔にまとまっていると思いますが、よろしいでしょうか。
 はい。どうもありがとうございます。では、異議なしということで、次に進みたいと思います。
 次は、高輝度放射光源に係る地域構想の調査について、に入ります。
 地域構想の調査については、6月14日を提出期限としておりましたので、事務局より調査結果について御紹介いただきます。また、この調査結果も受けて、量研が今後計画案の検討を進めるに当たっての留意事項を議論いただければと思いますので、資料2から資料3まで、事務局から合わせて御説明をいただきたいと思います。それでは、事務局より資料の説明をお願いいたします。
【上田室長】  事務局でございます。資料2を御覧ください。
 量子ビーム利用推進小委員会における高輝度放射光源に係る地域構想の調査結果についてということで、本年2月7日におまとめいただいた中間的整理を踏まえ、光源に関する検討を行っている全ての地域を対象とする調査を実施した調査結果ということで、調査期間としては4月26日から6月14日です。途中、5月25日時点において提出が限られていたため、提出日を延長し、他に地域構想がないか確認することとして、6月14日までとしたものです。回答方法としては様式自由で、回答件数としては1件でございました。なお、回答があったものにつきましては、5月の提出日までに提出があったものでして、その後提出日の延長がありましたけれども、御提出いただいたものそのままで、事務局にてこれまで適切にお預かりしておりましたことを合わせて申し添えます。
 参考1、参考2は調査の案内の資料です。
 添付されている資料が、回答があったものでございます。本資料は十数ページございます。委員の皆様には、本日の会合の前にお送りしておりますので、お目通しいただいているかと思いますので、本日は項目を当方から紹介いたしまして調査結果の共有とさせていただきたいと思います。
 表紙としては「我が国の放射光施設グランドデザイン構築に資することを目指した高輝度放射光源に関する地域構想」ということで、提案者は、一般社団法人東北経済連合会、一般財団法人光科学イノベーションセンター、宮城県ということになっています。
 目次がございまして、第1章、はじめにとして、東北における産学官の取り組み、次に本構想が目指す姿、1ページ飛びまして第2章、施設構想概要、建設候補地、建設候補地の概要、次のページにまいりまして、地盤調査結果、建設地選定諮問委員会による評価、施設計画、光源性能、次のページにまいりまして、エンドステーション、次のページにまいりまして、工期、建設費、施設運営コンセプト、産業利用関連の運用方法、そして産業利用の促進体制の構築(コウリション・コンセプト)、産業利用の特色を活(い)かす配慮、安定した年間6,000時間の利用運転、一般的な共用利用に関する運用方法、第3章としまして、放射光施設をコアとしたリサーチコンプレックスの形成、研究機関等の集積状況並びに産学連携、次のページにまいりまして、仙台市の優れた都市・交通基盤の活用、地域が持つ高いポテンシャル、ページ2つ飛びまして第4章、官民地域パートナーシップの実現、一財財団法人光科学イノベーションセンター、構想推進主体、産業界の参画、学術界からの賛同、行政からの支援としまして、基盤整備支援、普及啓発、産学連携支援、次のページにまいりまして、既存産業との連携による新たな研究開発・市場化への支援、研究施設・関連産業の集積支援、起業創業支援、そして第5章、総括という資料でもって回答をお寄せいただいております。
 続きまして、資料3-1にまいりたいと思います。御説明いたします。
 計画案の検討に当たって配慮すべき点について、ということでございますけれども、中間的整理やこれまでの小委員会での議論を踏まえ、現在、量子科学技術研究開発機構(量研)が高輝度放射光源に係る国としての整備運用計画案、これはグランドデザインと呼ばれていますが、その検討を行っているところですけれども、これは前回の見解のまとめを受けてです。今後、小委員会で今回実施した地域構想の調査結果、これを一つの参考として官民地域パートナーシップの在り方を含む計画案を検討する際には、以下のような配慮が必要ではないかと思わる点を書き出しております。
 一つ目は、量研は、地域構想の提案者に、提案内容の確認等を行う際、公平性や中立性を期するため、以下の一定のルールのもとで行うことが必要ではないかということです。1番目、「提案内容や関連事項についての事実関係や根拠の確認のみを目的とする」。2番目、「提案者に意見を述べない。予見を与えない。また提案者に同意やコミットメントを求めない」。3番目、「提案者に確認した事実関係や根拠に関する情報や資料は、上記の目的のみに限定して取り扱う」。二つ目の配慮としまして、現在の提案者以外の者からの提案等、問合せも含むと思いますけれども、ある場合は、公平性や中立性を期した対応を行うこと、またそのような場合は状況を適宜この小委員会に報告していただくなど、プロセス全体を透明性高く進めること、こういった配慮が必要ではないかという提起でございます。
 続きまして、資料3-2でございます。
 この資料は前回もお示ししていまして、前回資料からの変更点を、前回の御議論を踏まえて下線部で書いております。一応、念のため冒頭から御説明しますと、中間的整理やこれまでの小委員会での議論を踏まえ、国の主体候補が高輝度放射光源に係る計画案の検討を行うに当たっての留意点、量研がグランドデザインを検討していくといったときに、以下のような観点があるのではないかということで、中間的整理における関連記述はもちろん、下の方にありますこれまでの小委員会での議論を踏まえた観点ということで、前回、運転時間だけでなく、運営形態も安定的なものを確保すべきという御議論がありました。
 また、3番目のポツでございますけれども、オープンイノベーションや産業利用等に関連して、特に、設計の段階から産業界・ユーザー側の意見を取り入れて、使い勝手の良い施設となるよう検討すべきという御指摘があったかと思います。続きまして、運用段階につきまして、施設整備を機に人材を育成することが重要であり、整備、運用、更新などに、早い段階から絶えず「学」が参入し、長期的な放射光科学を続けることが重要という御指摘があったかと思います。また、官民地域の役割分担や財源負担を詰めて、国が概算要求すべきところを明確にする必要があるという御指摘があったかと思います。
 資料の説明としては以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、調査結果も踏まえて、量研が計画案を検討するに当たり配慮すべき点、また留意事項について、御説明いただきましたが、御質問・御意見ありましたら、しばらく議論したいと思います。よろしくお願いします。
 資料3-2のアンダーラインのところは、前回委員から発言いただいたものを追加したという形です。安定的な運営時間や運営形態。運営形態というのは山田委員から御指摘があったかと思います。2番目の、設計の段階から産業界・ユーザー側の意見を取り入れてというのは、主に産の委員から御意見がありましたし、3番目の人材育成、あと学の参入が重要、長期的に放射光科学を続けることが重要と、これは主に大学の委員からの説明。最後のアンダーラインについては小杉委員からの御指摘。この辺のことが反映されて、留意点ということでアップデートされています。
 いかがでしょうか。今後配慮すべき点、留意事項について、御意見・御質問ありましたらお願いいたします。
【上田室長】  よろしければ。
【雨宮主査】  では、補足をお願いします。
【上田室長】  提出がありました地域構想につきましては、事前にお目通しいただいていると思いまして、今日は詳細を御説明しませんでしたけれども、これについてもコメント等がありましたら、これは量研の計画案を検討する参考になるかと思いますので、そちらについても合わせていただければというふうに思います。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。ステープラ止めの資料に関しては18ページあります。今日は事務局の方から簡単に説明いただきましたが、事前に配布されてお目通しいただいたかと思いますが、何かございましたら。
 この小委員会で軟X線向けの3GeVということで、高輝度放射光源ということでいろいろ議論してきて、その具体的な調査ということで、そういう我々の議論をしてきた立場から見て、まだ何かここが分かりにくいとか、そういうご指摘でもよろしいかと思いますけれども。
【近藤委員】  よろしいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【近藤委員】  8ページ目の1番下のところに一般的な共用利用に関する運営方法について「一般的な共用利用に関しては、国の方針を踏まえ検討してまいりたい」とあるのですけれども、ということは、国の方針が明確になっていないと進めていただく上でいろいろ困ることになると思うのですけれども、この国の方針というのは、どのような形でどういうふうに進めていく、決めていくということになると考えたらよろしいでしょうか。
【雨宮主査】  少なくともこの小委員会での議論は、まず国の主体として適当なものがあるかということで要検討ということですが、私たちは小委員会として大学共同利用や共用法のメリット・デメリットも議論しました。必ずしも今ある共用法がぴったりではないけれども、今の共用法をベースにして、もう少し最適化した形の共用法的なものというような形で、ある方向性は示したと思います。
 資料3-2というところ、安定的な運転時間や運営形態を確保する、運営形態というのは山田委員の方から指摘がありまして、やはり運営形態というのは重要だということではありますが、何か、かちっと決まったところまでは行かないけれども、我々としては、方向性はサジェストしたという立場で議論したつもりです。
【上田室長】  よろしければ補足いたします。
【雨宮主査】  どうぞ。
【上田室長】  一般論ですけれども、国の方針にも恐らくこれまでの方針と今後の方針、大まかに言ってあるのだろうと思いますが、これまでの方針は、共用法で行う場合、利用者選定は公募の形でやるとか、あるいは利用者の利用形態も成果公開を前提とする場合と、成果専有を前提とする場合で、また利用形態が決まっている等という、従来の共用法の枠組みに基づく共用といったものの方針は、共用法に基づき国が一定の方針を告示という形でお示しして、それをもとに設置者及び利用促進機関が、SPring-8で言うと公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が、その方針のもとで一般的な共用を行っているという現実もあると思います。それがこれまでの方針です。一方、今後の方針ということについては、主査がおっしゃったとおり、こちらの小委員会での議論も踏まえ、もろもろ検討がなされてもおかしくはないというふうに思います。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。
【近藤委員】  はい。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【金子委員】  今御検討されているグランドデザインというものと、資料3-2にあるユーザーなどの意見を取り入れて使い勝手の良い施設となるよう検討すべきというのは、時間的には先に多分グランドデザインができて、もうちょっと詳細なところを詰めるときにユーザーの意見を取り入れた設備をという形になるかと思うのですけれども、そのあたりの流れというか、スケジュールはどのように考えられているのでしょうか。どういうふうなタイミングでユーザーの意見が取り入れてもらえるような形になるのかがよく分からないのですけれども。
【雨宮主査】  ここは、この小委員会としてQSTにその辺りを聞くということになるわけですが、内海委員はQSTの所属ではあるけれども、それを答える立場かどうかは別にして、何か御参考があれば。
【内海委員】  はい。ありがとうございます。内海でございます。
 最初に、先月の委員会での議論を受けて、量研として早急に対応しなければいけないということで、6月1日付で高輝度放射光源推進準備室を本部組織として立ち上げました。その推進準備室が中心になって、これから計画案の策定をしていくということになろうかと思います。
 金子委員からの御質問の件は、今後のタイムスケジュール的なことと関連しております。いろいろなことをこれから検討していく必要があり、我々として、最大限の努力をいたします。が、特に今日、地域構想の調査結果が出てまいりましたが、本プロジェクトは官民地域のパートナーシップで進めることになっておりますので、グランドデザインをいつまでに策定するのかや、パートナーをいつどのように決めていくのかということも含めて、今後のスケジュール感については、文部科学省とも相談の上、今後クリアになっていくものと思っている次第でございます。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。今、こういう大きなものというか、グランドデザインを検討するときに、大まかなところが示される前に聞かれても困ってしまうということがあるので……。
【内海委員】  おっしゃるとおりですね。
【雨宮主査】  ある程度のことはちゃんと決めてほしい。そのときに、タイムリーにフィードバックを求めること、情報のキャッチボールするタイミングというのは非常に重要だと思いますので、QSTが主体として取り組む際に、その辺り、十分御配慮いただきたいと思いますね。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。こういう形で配慮をすべき点、留意点についてまとめていただきましたので、今後グランドデザインの検討を行うときの参考にしていただければと思います。
【上田室長】  少しもう一つよろしいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【上田室長】  できれば資料3-1についても、こうした感じで良いのか御意見をいただければと思います。地域構想の調査があって、一つありましたけれども、調査は飽くまで調査ですので、今これからの段階はグランドデザインの検討をQSTで行ってもらう、それができますれば、また次のプロセスを考えるということだと思っています。ただ、どういうことがあるか分かりませんので、現時点で公平性・中立性というのは期しておくのがこういった大型プロジェクトの推進においては大事なことなのではないかということで、現在の地域構想の内容自体、事実を確認するところが必要なところも出てくるかと思うのですけれども、そういった事実関係や根拠の確認ということにQST側でとどめていただいて、現時点で相手方と意見交換をする、あるいは同意をとるとか、コミットメントをとるといったことを求めないといった配慮を、今の時点としておいていただくのが大事なのではなかろうかというふうな配慮が必要ではないかという問いかけでございまして、こういったもので良いということであれば、そう言っていただければ有り難いと思いますし、ちょっと配慮し過ぎとか、あるいはもっと配慮が必要とか、そういったことの御感想をまたいただければ、こういった大型プロジェクトを進めるに当たっての、一つの軸ができると思いますので、何らかの御意見をいただければと思います。
【雨宮主査】  今、事務局からあった公平性・中立性ということを、より細かく文言化してあるということに関して、何かコメントがあればということですが。
 では、小杉委員。
【小杉主査代理】  今後の我々の議論の背景として、やはりQSTに考えていただくところを中心するという立場でないといけなくて、この出てきた提案に対して直接言うフェーズではないはずです。この出てきたものは確かに中間的整理のポイントとか、いろいろ要求されるスペックについては十分満足した回答にはなっているのですが、この先いろいろこの提案に対して言いたいこともあるのですけれども、それを考えていただくのは飽くまでQSTだと思うので、資料3-1に書かれているように、この提案に意見を言うのではなくて、新たに今後の議論で出てくるところをQSTに受け止めていただいて、提案をしていただくような作業がQST側で必要になるという印象を持っています。今までは、QSTが概算要求するというのはなかったので、ここの議論というのは、提案をしていただくためにどういう条件が必要かという、条件を議論してきたわけですよね。それに対してこれが出てきたのですけれども、今後はこれに対してというよりは、いろいろ漏れた部分の、資料3-2も下の方は漏れていた部分が出てきているわけですので、この辺を今後検討していただくのはQSTではないかという印象は持っているのですが。そういう考えでよろしいですかね。
【雨宮主査】  事務局から、今の小杉委員からの……。
【上田室長】  そうですね。資料3-2の例えば最後で、官民地域の役割分担、財源負担といったものも、私どもとしては、QSTのグランドデザインの検討の中で、国としてはこう考えるといったことを示していただくのがよろしいのではないかと、事務局としても思っていますので、小杉先生がおっしゃるとおりのような感じがします。
【内海委員】  発言、よろしいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【内海委員】  私の認識が、もし間違っていれば訂正していただきたいのですが、我々は、国からの委託(負託)を受けて、国としてのこの高輝度放射光源計画のグランドデザイン案を作るというところがミッションだと思っております。今、小杉先生がおっしゃったようなことを含めて、提案が出てきた地域構想、これは一つの大いなる参考資料とさせていただきつつ、この小委員会でこれまで議論されてきたことを土台にして、グランドデザイン案を策定するというふうに思っております。
 私はこの提案書を昨日読ませていただいたのですが、やはり書面だけでは分からない点が多々ございますので、そういうことに関しては提案者の方に直接お伺いしたいと考えております。そういう機会を持つことを是非ともお許しいただきたいと思います。この資料の中で、地域の提案者と接触するに当たっての留意点というところをまとめていただいたのは、我々にとって非常に分かりやすい、これ以上は踏み込んではいけません、こういうところはオーケーですというルールを提示していただいた点で、非常に有り難いと思っております。
 ここに書かれていることは、我々が気をつけるべきちょうど良いクライテリアになっていると思いますが、一方で、事務局もおっしゃいましたけれども、いや、むしろそうではなくて、もっと侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を提案者と量研の間で行うべきであると言うのであれば、もちろんそういう対応をできなくはないですけれども、やはり公平性や透明性という観点からすると、ここに書かれているような、飽くまで提案内容についての確認が大前提であるという方が、私どもにとってはやりやすいという気がしております。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。
 確かに、資料3-1の一つ目のポツの真ん中のところで、提案者に意見を述べない、予見を与えないということだったでしょうか。意見を述べないというところの、ちょっと補足があっても良いかなという気はしますね。少し、補足していただけますか。
【上田室長】  なるほど。はい。地域構想の提案の内容自体をこの委員会でいろいろ議論することはもちろん良いと思うのですけれども、こういう透明性の高い場でもありますし、一方で事実関係の確認をするといったときに、必ずしもこういった小委員会の場では、量研も行うわけではないですから、そのときに一定のルール、大枠のルールがあった方が良いだろうなということでございまして、相手方に、それは良いねとか、それは悪いねとかいうのを、量研の立場で言っていただくのは、適当ではないのではないかといった大枠の意味でございます。
 予見というのも、言い換えればコミットを与えるみたいな感じだと思うのですけれども、それのコミット、それは自分としても良いと思うよと、したがって、などという感じのことでございまして、これ以上どう書けば良いかなというのは確かにあるのですけれども、概念としては今申し上げたような概念でございます。
【雨宮主査】  資料3-1の趣旨はこういうことで補足説明をいただきましたけれども、何か御意見ありますか。あえて事務局の方から、この資料3-1の表現の仕方で、縛りが強くないですか、若しくはどうですかということを言われているので、私は公平性・中立性を期してちゃんとやってほしいと、そのことだけで、もう後は量研に任せるのでも良いのでは思っていますが、より慎重に進めてほしいという注文だということであれば、これはこれで特に問題はないかと思います。
 どうぞ。
【小杉主査代理】  この小委員会はまだ続くわけですよね。
【上田室長】  はい。
【小杉主査代理】  そうであれば、今はまだ中間的整理に対して提案が出てきただけですから、今後新たな視点がこの委員会で出てくるわけですよね。それが資料3-2にあるように、少し新しい面も出てきて、これに対しては必ずしも今回出てきた提案は応えていないわけですが、そのような意見をQSTが今回、出てきた提案者に対して詰めるという話ではないということを言っているのだと、私は理解したのですけれども。
【上田室長】  一応、では。
【雨宮主査】  はい。
【上田室長】  おっしゃるとおりなのかもしれません。先週少し主査とも相談させてもらっているのですけれども、量研機構のグランドデザインの検討の進捗に応じて、またこちらの小委員会の場でグランドデザインを議論してもらうと、報告いただいて議論してもらうという場は必要ではないかと思っていますので、次のフェーズはそういったところだと思います。
【雨宮主査】  この委員会としての次のステップに関する質問だと今解釈すると、量研からグランドデザインが出てくると。それをここで議論するということになるのですよね。
【小杉主査代理】  そうです。
【雨宮主査】  そのタイミングに関しては、なるべく早急にということで。今まで日本が遅れているというところはさんざん議論してきているわけですから、タイムリーに進めていただければと思います。
 どうぞ。
【小杉主査代理】  確認ですが、今回出てきた提案に対して細かく検討して、ここで意見を言うのではないということになるのだと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 では、こういう形でこの小委員会で議論したこと、それから小委員会として調査をしたこと、出てきた結果も考慮して、是非量研に迅速にグランドデザインの検討を進めていただきたいということをお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。
 それでは、資料3-3になりますが、官民地域パートナーについての議論に入りたいと思います。
 この計画案の検討に当たって、官民地域パートナーについての検討が必要であろうということだと思いますが、今回の高輝度放射光源は、これまでの大型共用施設とは少し異なり、産業利用も当初段階から考えられていることで、中間的整理で、官民地域パートナーでの推進が重要ということを指摘してきました。
 事務局より資料3-3を今日は説明していただいて、できればもう少し具体的な議論もしたいと考えています。
 まず事務局より、資料3-3の御説明をお願いいたします。
【上田室長】  資料3-3でございます。ただ、少し冒頭に申し上げますと、今御議論があったとおり、量研が検討されるグランドデザインというものの中で、官民地域パートナーシップというものも設定されていき、それはまた改めてこちらで御議論されるということだと思いますが、その検討、量研における検討に当たって、この小委員会の現時点の御意見なりを反映させていくのが望ましいと思いますので、資料を御用意いたしました。
 どのような考え方をとることが可能かということで、これまでの議論としては、先ほどの資料3-2の下の方にあった意見ですとか、あるいはここに参考として抜粋で書いてある内容、ここまでは御議論が進んでいるということだと思います。
 2枚目をおめくりください。参考でございます。これまでの4つの大型共用研究施設における地域の関与、民間の関与についてまとめた資料でございます。SPring-8、J-PARC、SACLA、「京」とございまして、整備主体が記載のとおりでございます。
 施設整備費そのものですが、SPring-8は全額国費でございました。他施設も全額国費でございます。
 SPring-8の場合、地域、自治体の関与としては、播磨にございます建設用地、これが県から提供されております。また、地域の関与として、送電・給水等の地域インフラ整備協力等がなされているということでございます。またSPring-8、ビームラインが多数ございますが、そのうち専用ビームラインといったものについて、自治体が整備して運用されているものがあります。こういった関与があるということです。
 またSPring-8の当時ですけれども、民間の関与としては、運用の一部を担う財団法人、これは現在JASRIでございます。設立のため、関西経済連合会等の働きかけにより、民間から基本財産が出損されております。
 J-PARCでございますが、こちらは東海の研究所の敷地に建設するということで、建設用地自体は関係ございません。一方、自治体が専用ビームラインの整備運用をなさっているということがございます。
 SACLAにつきましてはSPring-8と同じ敷地に建設されましたので、こちらは関係ございませんということです。
 スーパーコンピュータ「京」につきましては、兵庫県にございますけれども、これも県が建設用地を提供、そして工業用水整備等を行ったといったところでございます。
 右側にありますように、次世代放射光については、国の主体候補としまして量研が存在するということと、この施設整備費を含めて官民地域パートナーシップ、こういったものが重要との中間的整理かと考えておりますけれども、こういったことをどういうふうに考えていくかということでございます。
 続きまして、資料が一つ机上においてあるかと思いますけれども、これは山形大学のウエブサイトに載っている情報です。山形大学の次世代重粒子線照射装置の例を一応御紹介したいと思いますが、真ん中の文章3段落目にございますように、この照射装置につきましては、建物装置の整備に必要な資金については総額150億円となるため、国の予算措置及び山形大学の財政投融資からの借入れはもとより、県・市はじめとする市町村から資金支援をいただくことになっています、その他、民間企業、個人からの寄附金をお願いしていて、地元・民間から計数十億円の資金支援を目指していますと、こういった事例があることも念のため御紹介したいと思います。
 以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 官民地域パートナーシップということ、つまりこれが我々の今後の高輝度放射光にとって重要であるということを議論してきたわけですけれども、今後QSTがグランドデザインを検討するに当たっても、この視点は非常にきちんと検討いただくことになるかと思いますので、官民地域パートナーの在り方について、もう少しフリーなディスカッションをして意見交換をしたいと思います。何かここで具体的に決めるとかいうのではなく、QSTがグランドデザインを検討するに当たって参考になるような議論をここでもう少し時間をとって行いたいと思いますが、よろしくお願いします。
 SPring-8、J-PARC、SACLA、「京」が、それぞれどういう形で進んできたかということですが、SPring-8だともう20年前の話。直近のものでももう10年以上前の話です。この10年、科学技術基本計画の推移を含めて、産学官民の連携が益々重要視されてきている中で、この流れは、この放射光科学だけに限らず、科学技術全般に及んでいるのではないかと思いますね。産学官民のパートナーシップに関して御議論いただければと思います。
 どうぞ。
【小杉主査代理】  モデルケースとしてはSPring-8のような形をある程度はイメージされると思うのですけれども、この形で何か問題がある点とかそういうのはあったのでしょうか。特にSPring-8のこういう官民地域パートナー的なところでやられているとは思うのですけれども。
【雨宮主査】  SPring-8のところでの民間の関与というところで、民間からの基本財産云々(うんぬん)と書いているのは、JASRIのことですよね。それ以外に民間との関係で言えば、民間の専用ビームラインが作られていますし、そういう意味で民間の関与というところは、SPring-8にもう1項目ぐらいあっても良いのではないかと思うのですけれども。民間との共同利用を盛んにやっていますし。J-PARCもそうかもしれません。
 今、小杉委員の御質問にあったSPring-8における民間の関与で、何か新たな課題があるかどうかということに関しては、SPring-8の田中委員から、何かコメントありますか。
【田中委員】  非常に難しい問いかけですね。余り変なことを言うわけにはいきませんので、少ししばらく時間を。少し考えさせてください。
【雨宮主査】  そうですね。民間企業の委員として、今日は、金子委員、岸本委員、いらっしゃいますけれども、金子委員、何かございますか。
【金子委員】  専用ビームライン等、企業のものに関して言いますと、最初から有用性が分かっていて作ろうというケースもあるかとは思いますが、まずは施設そのものの能力とか、そういうことを見極めてからでないと、すぐ最初から1本引こうというのはなかなか難しいかなというふうに思います。
 ですので、やはりその施設ができて、ある程度、共用ビームラインが何本かあって、それらのビームラインでできることがこういうこと、若しくはビームそのものの、今までにない実験ができるというオリジナリティーというか、差別化ができてくると、そこの施設での利用も増えていくと思いますので、最初はそういう意味では共用の時間をある程度作っていただいて、民間が、お試しと言うとあれかもしれないですけれども、試す方の試用をさせてもらえると有り難いかなというふうに思います。以上です。
【雨宮主査】  では、岸本委員、何か別の視点であれば。
【岸本委員】  参考資料の方のSPring-8のところでは、民間の関与として資金が投入されているということなのですけれども、20年前と今とでは会社の状況とか、そういったもので変わっているところも多くあるかと思います。
 私は20年前のことはよく存じ上げないのですけれども、例えばそのときに企業が期待感でもって資金投入していたとしたら、今は本当に真剣にイノベーションをもたらしたいというところが強くあるかと思います。そういった意味で、本当にパートナーシップという言葉、これは非常に重要でございまして、資料の中でユーザーという言葉も使われているのですけれども、そうではなくてやはり官民地域が対等の立場で議論していって、その中で必要なものを出していくというような考え方も非常に重要なのではないかと思います。
 また、パートナーシップなのですけれども、これは個人的な意見になって恐縮なのですけれども、資金の面もありますが、本当は企業の中に埋もれていた潜在的な問題、今までお蔵入りになっていたような問題、こういったものが掘り起こされ新たな学術テーマから産業につながるようなコミュニケーションの良いパートナーシップとしての機能というところも、やはりそういうところも観点があると、産業界の方もいろいろと考えていけるのではないかと思います。
【雨宮主査】  はい、どうも。
 高原委員。
【高原委員】  私自身はSPring-8のフロンティアソフトマター開発産学連合ビームライン(BL03XU)と革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で使用するビームライン(BL05XU)に関わっています。それらの関係で企業と共同研究を行っていて、今までの専用ビームライン1本で何でもやるというのは不可能で、企業もやはりイノベーションのためには最高の性能の設備が必要であるということを考えており、1本のビームラインではなかなか満足してくれなくなっています。例えば超小角散乱が行いたいとか、X線光子相関分光をやりたいとか、あるいはイメージングがやりたいとかの要望があり、今の専用ビームライン1本のビームラインである程度の解析を行うというのではなくて、いろいろなビームラインを相互に乗り入れて利用し、企業の要求あるいはアカデミアの要求も満たすような形の運営方式というのがとれるというのが、理想的な形態であるというふうに思います。そのあたりも検討できれば良いと思っております。
【雨宮主査】  そうですね。一つの手法だけではなくていろいろなビームライン、いろいろな手法を使うというところですね。そこは非常に重要だと思います。
 はい、どうぞ。
【上田室長】  今、岸本委員も高原委員もおっしゃるとおり、SPring-8、20年前の事実として、産業利用割合が数%にも満たなかったところから始まっています。最初のうちはアカデミアの利用がメインでしたが、その後徐々に産業利用が上昇してきまして、現在2割程度が産業利用ということで、国際的にも高い数字だと認識していますけれども、という実情が当時あった中での民間の関与という中なのだと思います。
 一方で、この小委員会の半年の議論を聞かせてもらっていますと、この3GeVというのは産業利用が割と当初段階から見込めるといったこともあって、パートナーシップという御提言をいただいているのだと思うのですけれども、そういう、ある意味、時代に放射光利用が広がってきました。企業の問題点に合致するようなものを、最初の段階から一緒に議論して作っていくという問題意識については、事務局としても受け止めなければいけないなというふうに思ってございます。
【雨宮主査】  私からも少し意見を申し上げますと、パートナーシップということで、具体的には産と学、若しくは産と施設のビームラインをサポートする人ということになると思うのですが、新しい在り方の中で、いわゆるコーディネーターとかと、大学におけるユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター(URA)のような人材が非常に重要になってくるかと思います。ワンストップサービス的なことができる人材です。そういうことが本当の意味でよくできるようになると、裾野は広がるのだと思います。
 たまたまこの人とこの人、この学術とこの民間が組んでぱっと花が咲くという例も、もちろん今までたくさんあったのですが、それをシステマティックにやろうと思うと、そういうところがより重要になってくると思います。QSTは産学連携もいろいろとやっておられるので、コーディネーションできる仕組み等も御検討いただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
【田中委員】  雨宮先生、よろしいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【田中委員】  さきほど振られたときには即座に回答できませんでしたけれども、若干頭を整理しました。
 SPring-8での、私の理解できる範囲の経験をもとにコメントさせていただきます。
 上田室長もおっしゃったように、民間の利用が非常に少ないところからスタートして、現状は利用比率で20%ぐらいの利活用のところまで、いろいろと施策を打つことによって、そこまで民間の利用が広がってきております。世界的に見ても、かなり民間の利用が多いということなのですが、SPring-8の民間利用から得られる現金収入というのは、それでも大体年間2億円です。
 この小委員会の中でも、政府の財政状況が非常に厳しいということで、建設からその後の運用に至るまで、全てを丸抱えでやっていくということの限界というか、大変に困難であるということが指摘されており、多分、次世代の放射光光源というものは、そういう国の丸抱えのシステムから次に向かって一歩踏み出さなければいけない。この官民地域パートナーシップのようなものを導入することで、今までの学術が主体的であった放射光の活用というものを、100%自立できるというところまでは行かないにしても、かなりの部分を自立できる形、自分でかなりの資金を獲得できる形に近づけようということが議論されてきたと思います。
 SPring-8の今のエフォートから見て、その目標を達成するというのはそんなに容易でないということを、我々も施設で日々活動している者として感じるわけですけれども、それを目指すには、先ほど雨宮先生も言われましたが、コンシェルジュ的な者の役割ですとか、ビームラインのバラエティーですとか、何かが必要になると思います。今のSPring-8というのを、私は加速器の専門家ですけれど、私から見てビームラインがどういうふうに作られてきたかというと、個別に1本1本がそれぞれ何をやるかというように設計されている上に、スクラップ・アンド・ビルドもなかなか進んでいないという現状があります。トータル20本なら20本のビームラインを、全体としてどういうふうに構築、維持、運用するか、それによって、産業利用とアカデミックな成果創出をどう最大化していくかという視点が、多分非常に重要なのだと思います。またビームラインにも賞味期限というのがあって、それはどんなものにもあるのでしょうけれども、非常においしく味わえる期間というのは、多分作ってから5年とか6年で、その後どんどん味が落ちていきます。ビームラインのアクティビティーをどうやって全体として維持していくかは、かなり戦略的なアプローチと考え方が求められるのだろうと思います。QSTにはその辺もよく考えていただいて、SPring-8に比べて、ワンオーダー大きな利用料収入が得られるようなグランドデザインを考えていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 以上です。
【雨宮主査】  あと、私の方からもう一つ付け加えますと、資料3-2に安定的な運転時間の確保とありますけれども、これはパートナーシップを具体的にやっていく上で非常に重要になってくるのだと思います。やはり新しい産が参入したときは不慣れですから、すぐ実績は出せません。ビームタイムが少ないと、切迫感というか恐怖感があって、いろいろなR&D、トライ・アンド・エラーができません。さっき金子委員の方からトライアルユースというような言葉もありましたけれども、トライアルユース的なものができるためにも、やはり安定的な運転時間が確保されるべきです。そのためには、ランニングコストをできるだけ効率よく抑えるかということが重要になってくるかと思います。それはパートナーシップについても重要ですし、資料3-2のところに人材育成が重要だということも書いてありますけれども、学生を連れていって、彼らが自分で実験して、ちょっと効率は悪いけれども、若い人にどんどんやらせていくという上で、安定なビームタイムが必要です。ビームタイムが限られていて失敗が許されないという感覚だと、オン・ザ・ジョブ・トレーニングができません。安定的な運転時間というのは、パートナーシップにとっても、人材育成にとっても重要かと思います。是非そういうようなことを重要視していただければと思います。
  どうぞ。山田委員。
【山田委員】  似たような観点なのですが、大学に関係する人間として、やはり人材育成は非常に大切で、そのために、今の「パートナーシップ」のコンセプトがどういうふうに人材育成に寄与していくかは、新しいチャレンジではないかと私は考えています。以前私が安定的な運転時間だけでなくて、安定な運営形態に少しこだわったのは、以下の理由があります。現状では、人材育成をメインにする大学共同利用がかなりいろいろな難しさを抱えている一方で、共用法にのっとった運営形態もあり、今度の高輝度放射光源は、スタートは共用法の利用でスタートするということですが、私は理想形を求めていくべきであるということを、前回か前々回の委員会で述べさせていただきました。やはり、今度の高輝度放射光源は作ってそれでおしまいではない。私は運営形態に関しても、どんどん理想的なものを求めていくべきではないかというふうに考えています。
 一般的な意味でのユーザーは、「施設利用者」というコンセプトももちろんあるのですが、「パートナーシップ」というコンセプトが非常に大事で、両者をいかにマージして良い方向に、良いものを作っていくかというのが、やはり新しい運営形態を模索していく一つの重要なプロセスではないかと、私自身は思っています。「パートナーシップ」のコンセプトは是非議論してすすめていくべきだと思います。
 また、この官民地域パートナーシップの「地域パートナーシップ」ということと、この委員会で何度も出てきた「オールジャパン」というものと、一見すると何かギャップがあるように思うのですが、両者を、いかに融合させていくかというところが、今度の高輝度放射光源のもう一つの新しいチャレンジではないかと、私自身は考えています。
【雨宮主査】  そのとおりだと思います。大きなチャレンジだと思いますので。
【金子委員】  それで行くと、一つ良いですか。
【雨宮主査】  どうぞ。
【金子委員】  共用法の成果専有でお支払いしているものが国に入って、全然ビームラインの方では使えないというのを、私、前に別の委員会でも、ずっと問題視しているのですけれども、基本、ビームラインの、さっき田中先生がおっしゃったようなバージョンアップというか、そういうのをしていくためには、やはり魅力的なビームラインにはユーザーが付いて、そこのビームラインをもっとよくするために、自分たちが例えば支払った利用料なりを、そこのビームライン向上のために使えるようにしていけば、もっとスパイラルアップしていけるのではないかというふうに思っております。なので、例えば利用料というのがただ単に施設全体の稼働にだけ使われるとかいうことではなくて、そこのビームラインだからこそできる実験をやるためにこの額を払っていますというふうにしていただけると、そうすると、やはりもっともっと魅力的なビームラインを作っていこうとユーザー側も考えるようになると思います。若しくはその施設の中でバランスよく作らないといけないというので、あいちシンクロトロンなんかはX線吸収微細構造(XAFS)がやはりすごく稼働率が高くて、いつも100%になってきて、これではいかんと言って、またそういうビームラインを作るというのと同じように、やはりそこのビームラインの必要性が高ければ高いほど、では強化しましょうというのがうまくできたりとか、若しくはもっと良い試料周りの環境を作りましょうと、そういうお金を使ったりということができるようになってくれると、施設のビームラインにお金を与えるということではなく、やはり自分がこのビームラインに対してのパートナーの1人なのだということで利用料を払っていくというような形で貢献するということもありかなというふうに思いますので。そういう利用料の考え方も、もしチャレンジというのであれば考えていただけると良いかなというふうに思います。以上です。
【雨宮主査】  利用料に関して、何か事務局の方からコメントありますか。SPring-8の成果専有の使用料は国庫に入って云々(うんぬん)というのは、どこで縛りがあるのか。
【上田室長】  これまでの共用施設に関しては、運営費回収方式ということで、施設全体の運営費があって、お使いになる時間を割っていって、その分を料金設定しているというのが現在、共用法の体系下の考え方でございまして、入ってきた利用料収入につきましては、施設設備の高度化という名目で使ってもらっていますけれども、そこをうまくどう回していくかということも考えなければいけないですし、この小委員会の御議論によっては、我々も共用法でどこまでできて、どこまでできないのかというのも随時、できればお示ししながら、計画を詰めていくというのが大事かなと思っています。
【雨宮主査】  どうぞ。
【内海委員】  今までの議論、全部納得のいくお話ばかりです。
 官民地域パートナーシップという考えが今回の大きな柱の一つですが施設の運用に関して、どういうふうに民間に積極的に参画していただくかというところを見越しながら、建設のフェーズにおいても、いろいろな形で、大きく関わっていただくことを期待しています。それがお金だけのことになるのか、実際に人やモノを出していただくのかというのは、またいろいろな検討が必要ですが。我々量研の立場としては、もちろん運用のことも含めたグランドデザインをこれから作っていかないといけないのですが、まずは立派なハードウェアを作らないといけない。その際、この小委員会の第1回の資料に国の財政事情の資料がございましたが、国の財源が限られている中で、建設コストに関して、一部を地域や・民間に分担していただけるかということも非常に重要な、現実的な課題としてはあるわけですね。
 今までの議論も聞かせていただいていて、明らかにSPring-8、J-PARC、SACLAの場合よりも、一歩踏み込んで、いろいろな形での負担あるいは協力をお願いするという形になるであろうと予想しています。その場合でも、これはまだ私個人の考え方ですが、加速器本体の建設に関しては、国の責任で一義的にしっかりやらないといけないだろうというふうに思います。一方、ビームラインに関しては、今の御議論もあったように、その運用を官民一緒になっていろいろ考えていきましょうということですので、そういう意味では、ビームラインについては、建設のフェーズからパートナーに財源負担を含めて強くコミットしていただくというようなこともあっても良いのかなという気がいたします。具体的なイメージについては、我々の方で少し考えさせていただいた上で、ここで御提示させていただくことにし、それが議論の最初のたたき台になるのではないかと思っております。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。御発言されていない方。石坂委員、振ってもよろしいですか。学の観点から……。
【石坂委員】  前回いなかったのですけれども……。
【雨宮主査】  そうですね。何かあれば。
【石坂委員】  そうですね。ちょっと大学の人間なので、余り社会のことが分かっていなくて、(予算の話などは)難しいのですが。大学の人間として発言するとすれば、日々学生と一緒に実験しているときに、ある程度ノウハウを習得すればユーザーという形で放射光を使いに行くことはもちろんできるのですが、やはりビームラインに優れたサイエンティストがいると議論が盛り上がって、また次の間につながってという、より発展的なことにつながるというのは実感としてあります。研究が進むのはもちろん、ユーザーとして淡々と装置を使いに行くよりは、そういうところの方が学生にとっても魅力的であるという感じがあります。つまり優秀な人がいると望ましいということで、そんなことは当たり前なのですけれども。大学の研究者や学生として、「ユーザーと担当者」から、もう一歩進んだ「パートナー」というような関係が理想的にはあったら良いのかなと、聞いていて思いました。
 ただ、やはりメリットがないと負担はなかなか進まないと思うので、それをどうやって双方が得だなと思うような仕組みを作れるのかというのが少し難しくて分からないのですけれども。多分、産官もそうなのですが、パートナーと言うからは、どちらにも何か得があるような、そういう仕組みを考えなければいけないのかなというふうに思いました。
【雨宮主査】  はい。
【田中委員】  雨宮先生、では。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【田中委員】  またちょっと変なことを言います。QSTがチャレンジする次世代光源は現状から一歩進んだものになるべきということですね。SPring-8を見ていて、特にビームラインの運用で問題だと思っていることがありますので、是非そこは、次のグランドデザインに生かしていただければ良いと思い、ちょっとコメントします。この小委員会のどこかの時点でも言ったと思いますが、先ほど出たコンシェルジュ的な人が施設にいるべきだ、エンドユーザーから見ると施設はそういうものに映るという指摘がありました。施設が本当に魅力的で、さっき石坂先生も言われていましたが、そこに行ってクリエーティブな議論ができる、ポジティブな様々なフィードバックが発展的に行われる、そういう場にしていくには、本物の研究者が、すごくアクティブな研究者が施設に集まっていなければいけない。一方で、SPring-8の現状がどういうことになっているかですが、ビームラインの面倒を見るということにフォーカスされ過ぎた結果として、もともと入ってきたときは研究者だった人たちが、どんどん研究者でいられなくなるという、そういう状況になっている。それはある意味ジレンマで、施設を効率的に運用しようということと、施設のアカデミックなアクティビティーを維持していくことは、そんなに簡単に両立できることではありません。現実の世界では大変難しい。我々は施設の側(がわ)にいる者として、そこが大きな問題であると感じていて、日々悩んでいるわけです。次の3GeVで、さっき運用形態の話もありましたけれども、そういうものを新たに構築してチャレンジしていくのであれば、そこの仕掛けを新たに考えていただきたい。それには、今欠けているところが何処(どこ)なのかという点が重要になりますが、私から見ると、ビームライン、エンドステーションも含んだ標準化とか合理化が非常に遅れている。それが遅れているがために何が起こるかというと、個々人がトラップされてしまうわけですね、ビームラインに。正に、ビームラインの番人と化すというか、そこに縛り付けられてしまいます。その結果として、ビームラインの陳腐化が起こっていくという、そういう非常に悪い流れが現実にあるわけです。その問題を逆にどういうふうに打破していくか、打破していければ、多分、トータルとしてのビームラインの効率的運用にもつながるだろうし、アクティビティーを上げるということにもつながるだろうし、非常に良い仕事を創出していくということにもつながるだろうし、多分民間の利用を引き出すということにもつながっていくと思います。そこのところを、新しいシステムをこれから構築していくQSTの方々には、十分に理解していただいて、現在のSPring-8の状況をよく学習していただいて、それをフィードバックしていただければと思います。私ちょっと加速器で分野が離れておりますので、恐らく大分間違っているところもあると思いますが、印象としてはそんな感じを持っています。
【雨宮主査】  小杉委員。
【小杉主査代理】  今の話はSPring-8ばかりではなくて、実際、放射光の施設はどこも同じ問題を持っています。最初の10年は多分良いのだと思います。作ったときに、20年後、30年後を考えてやれるかというと、そこはなかなか難しいので、現状、既存の施設でいかに次のフェーズに行けるかというところをしっかりやるのを見せていかないと、多分、この新施設で20年後、30年後はなかなか考えられないし、最初の10年は大きな問題なくどんどん行くと思うのですけれども。その場合に、我々既存の施設がちゃんと反面教師的な、ではいけなくて、こういうやり方に倣えば良いというのを見せることが重要で、それを今のQSTの宿題にするのはちょっと酷かなと思います。
【田中委員】  では、一緒に考えていきたいなと。
【内海委員】  みんなでやっていくプロジェクトですから。
【田中委員】  いや、もう日頃思っていることをそのまま話してしまいまして……。
【小杉主査代理】  それは既存の施設はみんなそうです。
【田中委員】  本当に、何事でもそうだと思いますが、日本では、1回始めて熟成したものを、新しいものに切り替えていくというのが、本当に大変でエネルギーが要る作業です。大体、途中でもう力尽きるというか…。日本以外のアメリカとかヨーロッパでは、既存のものを壊して新しいものを作っていくことをみんなやっているわけですから、日本ができないのは、何が原因なのかをよくよく考えて、そこを改善するのが早道だとは思います。一つには、評価が機能していないということなのですかね。ともかく、ちゃんと評価できなければ、次のステップに行けないわけです。評価するということを忌み嫌う文化があるということが一番の問題なのか、そこは私も解析が完全にできていませんが、大きな問題があると思っています。
【小杉主査代理】  既存の施設はいろいろ大問題を抱えているので。あるところはスクラップ・アンド・ビルドとか、選択と集中とか、そういうことでやっているわけですけれども、必ずしも施設だけの問題ではなくて、ユーザーの意識の問題もあると思いますね。現状の装置で良いのだというユーザーばかりだったら、もう現状で行くしかないわけで。そうでなくて、やはり高いものを求めるという雰囲気を施設側でも作っていかないといけないとは思います。そういう意味では、新しい施設ができれば、そこで新しい技術が出てくるので、ある意味、そこから古い施設が学ぶものも出てくるのは間違いないですけれども。そのあたりのうまい感じで、新しい施設と古い施設が、ユーザー含めて高いものを求めていくというのを作っていかないと駄目だという気はしております。
【雨宮主査】  全てのものにはライフタイムというのがあって、やはり放射光施設にも20年から30年程度一つのライフタイムがあると思いますよね。それは自然の理で、施設のスクラップ・アンド・ビルドというのが20年、30年で起こるというのが当然だという認識が重要です。そのためには、新しい施設を作るときにいかに建設費を低コストに抑えるかが重要です。右肩上がり的な歴史観もありますが、春夏秋冬という循環的な歴史観があっても良い。スパイラル的に上がっていくという歴史観で、式年遷宮では、宮大工を養成するために、そういうふうにスパイラルにやっているから、ずっと継承されているわけです。それがなくなったエジプトのピラミッドは、今誰も作れなくなっているわけです。そういう意味で、適当な時定数でスクラップ・アンド・ビルドしていくというのが自然の理で、そのためにはコストを下げるということが、私は重要なのではないかと思っています。
 ほかにいかがでしょうか。
【岸本委員】  よろしいですか。
【雨宮主査】  岸本さん。
【岸本委員】  今までの御議論の中で少し思ったのですけれども、やはりパートナーシップというところで、財源で当初だけの関わりだけでは段々と不十分になっていくだろうと思います。それで、先ほどの金子委員ともかぶるのかもしれませんけれども、いざ建設したら、その後どう関与していくのか、それが例えば先ほどから御議論ありました人材育成の観点とか。人材がそろわなければ企業も困るわけなのですね。それを大学の方で教育していただくのを待つだけでなく、そういうところを助けるような施策ができないかとか。恐らく一つの私の偏った見方かもしれませんけれども、最初の10年は良いのですけれども、その後できなくなっていくというのは、やはり人員不足のところも多少なりはあるのだろうなと、ユーザーサイドからは感じるところがあります。そういうところも踏まえた視点で、先ほどまずは建設という話もありましたけれども、建設の時点で人材育成のところも盛り込んでおかないと、今後発展的に進んでいかないと思います。いろいろな意味で民間の関わり方というのはできるのではないかなと思いますので、そういったいろいろな考えでもってグランドデザインの中にも盛り込んでいただければなとは思います。
【雨宮主査】  ほかに何かありますでしょうか。このパートナーシップの検討についていろいろと御意見いただいていますが、大体よろしいでしょうか。
 それでは、御議論ありがとうございました。
 QSTは今日のこの議論・意見を踏まえて、是非グランドデザインの検討を進めていただければと思います。事務局からも、本日の議論を伝えるようサポートしていただければと思います。QSTでまた検討が進めば、この小委員会で状況をまたお聞きすることになるかと思います。そのタイミングはやはりなるべく早いことを期待していますということを申し上げたいと思います。
 以上で本日の議題は全て終了しましたが、事務局の方から何か連絡事項等あればよろしくお願いします。
【大榊専門職】  次回の量子ビーム利用推進小委員会の日程でございますが、改めて御連絡させていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 また、本日の資料について、郵送を御希望の方は、封筒に入れた後、議場に置いたままにしていただければと思います。御不要な資料やドッジファイルにつきましては、机上に置いたままにしていただければと思います。
【雨宮主査】  では、以上をもちまして、第9回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会といたします。どうも本日はありがとうございました。
―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)