量子科学技術委員会(第9期~)(第18回) 議事録

1.日時

平成31年2月1日(金曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 量子科学技術に関する最近の動向について
  2. 最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム事後評価について
  3. 光・量子融合連携研究開発プログラム事後評価について
  4. 大型放射光施設(SPring-8)及びX線自由電子レーザー施設(SACLA)中間評価について
  5. 戦略プロポーザル「みんなの量子コンピュータ」について

4.出席者

委員

雨宮委員、飯田委員、岩本委員、大森委員、城石委員、根本委員、早瀬委員、美濃島委員、湯本委員、平野委員

文部科学省

勝野科学技術・学術政策総括官、奥研究開発基盤課量子研究推進室長、岸田研究開発基盤課課長補佐、廣瀬研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐、大榊研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

三尾典克 東京大学,兒玉了祐 大阪大学,加藤義章 光産業創成大学院大学,嶋田 義皓 科学技術振興機構

5.議事録

【雨宮主査】  定刻になりましたので、第18回の量子科学技術委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は11名の委員に御出席いただいております。今日、御欠席は岩井委員です。
 本日の議題は、議事次第にもありますように、五つの議題があります。量子科学技術に関する最近の動向について、2番目が、最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム事後評価について、3番目が、光・量子融合連携研究開発プログラムの事後評価、4番目が、SPring-8、SACLAの中間評価について、5番目が戦略プロポーザル「みんなの量子コンピュータ」についてです。
 それでは、事務局より配布資料の確認等をお願いします。
【廣瀬補佐】  それでは、事務局より資料の御確認をさせていただきます。
 議事次第にございますように、本日は、資料1から資料5、また、参考資料が1から4までございます。
 また、本日、机上配布資料としまして、委員会終了後、回収させていただく資料を別途配布しております。「量子技術イノベーション戦略について」という資料に関しましては、こちらは会議終了後、回収させていただきますので、机の上に置いたままにしてくださればと思います。また、過去の資料につきましてはファイルを参考に置かせていただいておりますので、御参照ください。また、会の途中で資料の不備がありましたら、事務局までいつでも御連絡を下さい。お願いいたします。
 続きまして、本日の議題の中で御発表いただきます有識者の先生方を御紹介させていただきます。
 まず、東京大学、三尾先生です。
【三尾先生】  よろしくお願いします。
【廣瀬補佐】  大阪大学、兒玉先生です。
【兒玉先生】  よろしくお願いします。
【廣瀬補佐】  光産業創成大学院大学、加藤先生です。
【加藤先生】  よろしくお願いします。
【廣瀬補佐】  科学技術振興機構CRDS、嶋田フェローです。
【嶋田フェロー】  嶋田です。よろしくお願いします。
【廣瀬補佐】  本日はお忙しい中、ありがとうございます。
 以上です。
【雨宮主査】  ありがとうございます。
 それでは、議題(1)、量子科学技術に関する最近の動向について、ここには二つありますが、まず、1の平成31年度光・量子技術関係予算について、事務局より御説明をお願いします。
【廣瀬補佐】  事務局より御説明いたします。資料1をごらんください。また、参考資料といたしまして、参考資料1から3を用意してございます。参考資料1が文部科学省関係の予算に関する説明資料の概要です。参考資料2、参考資料3はCSTIの事業の概要資料になってございます。
 基本的に資料1を用いまして、御説明させていただきます。平成31年度文部科学省予算案における光・量子技術の関係予算に関しまして、まとめた資料になっております。
 まず、1番目ですけれども、光・量子飛躍フラッグシッププログラム、Q-LEAPに関しましては、昨年度、こちらの委員会で取りまとめいただきました報告書を基に、今年度より開始をしたプログラムです。こちらに関しては、今年度と同額の22億円です。現在採択をしている3技術領域の研究課題をそのまま着実に実施する経費が認められました。
 2つ目は、最先端大型施設の整備・共用です。こちらはSPring-8、SACLA、J-PARCの整備、又は、安定した運転確保のための費用でして、今年度比で約4億円減の262億です。ただし、今年度の補正予算案において、SPring-8、J-PARCの施設整備の安全・防災対策のための経費、また、SPring-8に関しましてはSACLAからの電子ビーム照射による効率的な運転に向けた経費を18億円計上しております。こちらを活用しまして、計画的な整備、また、施設の安定的な運営というのができるようにしていきたいと思っております。
 また、三つ目になりますが、官民地域パートナーシップによる次世代放射光施設の推進で、本年度、13億円の計上が認められました。こちらは量子ビーム小委員会の方でまとめた報告書を基に、今年度、パートナーを募集し、採択をした事業です。
 ただし、資料に記載してありますが、官民地域パートナーシップにより、加入金全額のコミットを得た上で施設設備に着手するとなっております。引き続き、着実に行っていきたいと考えてございます。
 また、最後ですけれども、量子科学技術研究開発機構運営費交付金としまして、一般会計、復興特別会計を併せて219億円が措置されました。こちらはQSTの予算ですが、引き続き、生命科学分野での革新をもたらす量子生命科学の確立に向けた研究開発や、量子科学技術による本格的な産学連携を目指す「イノベーション・ハブ」といった取組をしっかりと推進をし、世界トップクラスの量子科学技術研究開発のプラットフォームを引き続き目指して推進していきたいというふうに考えてございます。
 おめくりいただきまして、裏面です。こちらは量研室の予算ではありませんが、光関係、量子関係の研究には欠かせない事業のため、御参考までに御紹介いたします。
 まず、未来社会創造事業です。こちらは経済社会的にインパクトのあるターゲットのハイリスク、ハイインパクトな研究開発を実施するプログラムですが、こちらは10億円増の65億円です。この事業では、例えば光格子時計の香取先生や量子慣性センサの上妻先生の研究が行われております。
 また、新しくムーンショット型の研究開発制度というのが創設される予定です。こちらはCSTIが定める野心的なムーンショット目標の下、関係府省が一体となりまして、より大胆な研究開発を推進する研究開発制度で、来年度から創設されることになっております。
 文部科学省は、共通基盤的な研究開発であったり、萌芽的な研究開発だったりを実施することになっております。実は、同じく、経産省の方にも、200億円の予算が計上されることになっております。2省で執行しながら、CSTIの下、定めた目標の下、研究開発を推進していくというプロジェクトになっております。
 三つ目が戦略的創造研究推進事業です。こちらは皆様御存じのとおり、CREST、さきがけ、ERATOの関係の予算が含まれておりまして、こちらは424億円です。来年度、量子科学技術関係では、昨年度から引き続き、量子生体、トポロジカル量子の公募があることが決まっております。
 次に、参考2としまして、CSTIにおける主な予算について簡単に御紹介いたします。
 SIPとPRISMという二つの事業がありますが、こちらは基本的に昨年度と同額の555億円の措置です。SIPでは、光・量子基盤技術という形で、例えば野田先生のフォトニック結晶レーザーをはじめとしたレーザー関係、あとは、量子暗号関係の研究開発を現在進めております。また、現在、光電子情報処理という量子コンピュータ等々を念頭にした研究項目に関して、その中身を検討しております。
 簡単ですが、以上になります。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 今の御説明に関して、御質問とか御意見とかありましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、次、2の量子技術イノベーション戦略について、これも事務局より御説明、お願いします。
【奥室長】  量研室の奥です。本件担当している内閣府の立場も兼ねて、説明をさせていただきます。机上配布の資料となっています「量子技術イノベーション戦略(案)について」という資料を御参照ください。
 簡単に概略を御説明します。
 まず、この背景ですが、昨年12月14日の統合イノベーション戦略推進会議という官房長官ヘッドで関係大臣が入っているイノベーションのための会議において、官房長官から、AI、バイオに続いて、光・量子についても新しく戦略を策定するよう御指示がありました。これを踏まえて、事務局の方で、ポジションペーパーとして作成したものがこの資料になります。
 御承知かと思いますが、既に欧米は量子技術を国の重要な戦略の中の一つとして位置付けて、かなり投資を拡充しているという状況にあります。特にアメリカについては、12月に量子情報科学に関する法案の策定をして、5年間で13億ドル、DOEとかNSF、あるいは、NISTを中心にその予算を執行していくというような方針も打ち出されています。
 EUの方も、量子技術フラッグシッププログラムを設けて、10年間で10億ユーロの規模の投資を行い、こちらは量子情報科学に加えて、センシングであるとか暗号・通信の分野のものをかなり幅広く取り扱っています。
 それに加えて、EU、イギリス、ドイツの方でも、量子技術について、国の戦略の中で重要技術として位置付けて投資を行っています。
 大手企業でも、Google、IBM、ベンチャーではD-Wave、Rigettiをはじめとして、特に量子コンピュータ、ソフトウエアの分野でかなり力を入れている状況にあります。
 一方で、日本の状況がどうかというと、第4期、第5期の科学技術基本計画の中で、「光・量子技術」というのが国の重要技術の中の一つとして位置付けられていますが、これを進めるための具体的な戦略等は今のところはありません。
 この委員会で一昨年、量子科学技術に関する推進方策を取りまとめていただきました。これについて、一つの道しるべになっていると思いますが、文科省の中の戦略であって、国全体としての方針というのは必ずしも盛り込まれてないということもあり、関係府省でそれぞれ個別に研究開発をやっているというのが現状です。
 内閣府では、SIPの事業の中で、量子暗号と光電子情報処理、量子コンピュータを実施しております。総務省はNICTで量子暗号をやり、文科省はこの報告書ベースでQ-LEAPを立ち上げました。この中では量子情報処理と量子計測・センシングの2分野、あとは、レーザーを取り扱っています。経産省では、産総研を中心に、量子アニーリングの研究開発をやっていますが、それぞれ個別にやっているというのが現状で、全体的、体系的に取りまとめるという方針がいまだできていないという状況です。
 一方で、仮に量子コンピュータができれば、組合せ最適化問題などを通じて、生産性の向上にもつながるでしょうし、小型の量子センサは、その医療・健康分野での活用、あるいは、デバイスの分野での活用が期待される。さらに、量子暗号については高度なセキュリティ社会の実現に寄与するなど、様々な可能性があり、この技術の芽というのを今の段階から、きちんと我々として育てていかなければならないという問題意識があります。
 こうした中で、統合イノベーション戦略推進会議という、イノベーションの会議の下でこれを検討するということがあり、まだまだこの分野は基礎研究の分野だと思いますが、ある程度、産業やイノベーションなどを念頭に置いた上で、戦略としてまとめていく必要があるというのが基本方針です。
 5本の柱を今のところは検討しており、産業・イノベーションに関しては、その産学が集うような国際的な連携拠点というのを新しく作ってはどうか。あるいは、まだ企業が様子見というところもありますので、この分野のスタートアップ等を育てていくためのその創業環境を整備することを考えております。
 2つ目は、国際戦略で、特にEU、米国は日本との間で共同研究を是非やりたいと言ってきているところでもあります。戦略的にどこの国と組んでいくかというような考え方を整理しなければならない。一方で、特定の国を対象に、安全保障貿易管理の問題なども重要だと思いますので、こういうところもしっかり国際戦略の中に取り込んでいくことを検討しております。
 三つ目は技術戦略で、取りあえずここでは量子情報処理、量子計測・センシング、及び量子通信・暗号の三つを上げていますが、これをさらに細分化した中で、どこに我々として今後、重点化していくかというような、まさに戦略を検討していく必要があるんじゃないかと考えているところです。
 四つ目は知財・標準化で、先ほど申し上げた米国の法案の中でも、NISTを中心に、産学がコンソーシアムを組むような動きもあります。このような中で、国際標準化の戦略でも我々は遅れを取ってはいけないと考えております。
 五つ目は、この分野は基礎研究の分野でもあります。かつ、人材の層の厚みというのが極めて重要なので、人材育成にも我々として取り組んでいく必要があるのではないかというような問題意識で、今のところ検討を開始しようとしているところです。
 検討体制及びスケジュールについては、先ほど申し上げたように、統合イノベーション戦略推進会議という官邸の大臣級の会議があり、その下に、関係省庁で構成されるタスクフォースを設置するとともに、有識者の先生たちから成る会議体を設置しようとしています。2月以降、これらの会議体、あるいは、タスクフォースを設置した上で、集中的に検討を開始したいと思っています。
 恐らく今年の6月、統合イノベーション戦略という国全体のイノベーション戦略がありますが、これを改定する作業が生じるので、この中で、この量子戦略の骨子的なものを盛り込んでいき、最終的には年末に、戦略の形で取りまとめるということを想定しています。
 参考資料として、先ほど申し上げた技術戦略の部分で、量子情報処理や、量子計測・センシング、量子暗号など、それぞれについて、例えばこのような領域がありますよ、というものを列挙しております。こうした日本の強み、弱みをきちんと勘案した上で、どこに重点化をしていくかということを我々としてこれから検討していこうと思っているところです。
 その検討の中で、先生たちにはヒアリング等々をこれからさせていただくことになると思います。そのときには是非御協力をお願いしたいというのと、この場で是非御発言を頂けるのであれば、この戦略の方向性等について、自由に御意見等をいただけますと幸いです。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 今の資料の説明に関して、何か御質問等あれば、お願いいたします。
 これ、要回収ですけど、いつになったら回収しなくて、オープンになるのでしょうか。
【奥室長】  これは内閣府の資料なので、内閣府で公の場で議論されて、その資料として公開されれば、公開できると思いますが、恐らくそれは2月の初めぐらいになると思います。
【雨宮主査】  じゃあ、間近ということなのですね。
 はい、どうぞ。
【飯田委員】  私はどちらかというと生命科学寄りの立場ですが、11ページ、固体量子センサのところで磁気計測しか書かれていないことが気になります。私も医療機器メーカーともお付き合いがありますので、情報を聞いていますと、分子修飾して選択性を持たせた幅広い意味での固体量子センサ(金属ナノ粒子、量子ドット、ナノダイヤモンドなど)をプローブとして用いたリキッドバイオプシー(体液の検査)も量子技術の戦略として盛り込むべきではないかと思っております。
 特に、前半、4ページの方に、健康長寿社会の実現ということで、がんの転移や早期診断が必要だという記述がありますが、その中で、非侵襲に、痛みを伴わない検査が必要と思います。痛みを伴わない体液の採取としては尿とか汗とか唾液とか、いろんなタイプがあります。血液に限らず、これらの体液から、量子センサを使って病原を検出する研究開発の課題も盛り込むべきではないかと思います。
【奥室長】  ありがとうございます。これは飽くまで例示で、対外的に説明する際に分かりやすいものだけをピックアップしているというものなので、これで全て網羅しているとはとても思っていません。なので、いろんな先生たちの御意見を頂きながら、精緻に詰めていきたいと思っています。ありがとうございます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。大森主査代理。
【大森主査代理】  10ページの量子シミュレーションのところで、これ、よく出てきますけど、量子ビットの制御とありますけど、本来、量子シミュレーションはアナログのものが多いので、量子ビットという概念はあんまりないのですね。だから、その辺はちょっと改善された方がいいと思います。
 あと、この多量子ビットというのが、例えばここに例に挙げてあるように、冷却原子をおっしゃっているのだったらば、もう既に相当多数の原子でシミュレーションは行われているので、ここの3番目の記述はちょっと現実と合ってないと思います。
【奥室長】  ありがとうございます。
【美濃島委員】  12ページの基盤技術という形で、量子制御技術とか、光源や材料のような内容の記述があるのですけれども、こちらが、その主要研究領域の3番目の下に入っているようなイメージで書かれているかと思うのですが、実際、もちろん2番の量子計測ですとか、量子情報ですとか、全ての量子技術の基盤となるということだと思うのですね。
 ですので、そのような形でご検討いただければと思います。
【奥室長】  おっしゃるとおりです。量子情報処理、量子計測・センシング、量子暗号と分けて、基盤技術というのはこれら全てに関わるものなのですが、この資料上どこに入れるかというのがあり、一番最後にまとめて入れております。基盤というのは特出ししてやらなければならないと思っております。
 ありがとうございます。
【美濃島委員】  タイムスケールも違うと思います。
【奥室長】  そうですね。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【平野委員】  事務局からの説明にありましたように、ここに書いてあることは非常に重要なことと思います。特に、AIとバイオと量子を重点的に進めるべきものとなっています。
 私の専門はバイオ寄りなのですが、例えば、健康長寿という切り口になっていますが、これは量子技術とバイオをいかに結び付けて、量子生命科学のような領域を推進して、量子技術から生命を明らかにするという切り口と、そのようにして明らかにしたものを今度は量子技術の方にフィードバックするという切り口、要するに、量子技術とバイオの融合という一種の大きな異分野融合、そういう戦略、協調ということも必要ではないかと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【城石委員】  これは非常にいい試みだと思うのですけれども、やっぱりやっていただく以上、例えば10年とか、続けないと、多分、かえって若い人たちも困っちゃうかなと思うので、SDGsみたいに、かなり先のことを見通したような計画と連動して、長いこと投資していただくということと。
 もう一つは、産業を、すぐにはさすがに実を結ばないかもしれないので、ただ、それに向かっていくときに、例えば周辺の、今、例えば量子コンピュータですと、冷凍機が足りないとか、いろんな話を聞くので、そういったその周りを巻き込んだ形も含めて、何か提案していただけるといいのではないかなと思いました。
【奥室長】  ありがとうございます。
【平野委員】  それも非常に重要な点で、我が国のいろんなリソース、大学、国研、あるいは、企業、そういうものをいかに有機的に結び付けて、国として、ハブのようなものを戦略として作る必要があると思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【大森主査代理】  あとちょっと1点。よく、2ページですけど、各国の量子科学技術戦略の取組というので、アメリカ、イギリス、ドイツとEUと出てきますけど、ここで重要なのは、EUというのは一つの国家ではないので、予算規模はダイレクトに比較できないというのはきちんと我々、認識しておくべきだと思います。
【雨宮主査】  今後、こういう形で省庁を超えて議論していくことになるわけですが、この委員会、量子科学技術委員会のこのタームが変わって、メンバーが替わるのだと思いますが、この量子科学技術委員会というのは継続するだろうと想定するのですが、この委員会の位置付けとこの全体の位置付けの関係は今後どういう形でなっていくのでしょうか。
【奥室長】  基本は内閣府を中心に御議論いただくことになるのですが、内閣府での検討状況については、逐次、この量子科学技術委員会に御報告をした上で、ここでの御意見も頂いて、内閣府の検討に反映するというそのフィードバックを回していきたいなと思っています。
【雨宮主査】  分かりました。
 はい、どうぞ。
【根本委員】  すいません、遅れて来たのに申し訳ないのですけれども、ちょっと2点お伺いしたいのですが、この光を中心とした量子通信と暗号というところが多分新しくおまとめいただいたところなのかなと思うのですが、どちらかというと、通信ということで、光ファイバーというところにフォーカスされていて、中継というのも入れてはいただいてはいるのですが、やっぱりここのページのまとめは、もうちょっと何か一つ工夫があってもいいのかなという気がします。また、量子情報で4つ上げていらっしゃるのですけど、何かこれ、同じような形で、四つ課題が同じ重みというような見せ方になっているようです。課題はひとつではなく、いろいろな課題があるということを見せるのはよいのですが、海外から見ると、この同じ重みでというのはちょっと誤解を生むのかなという気がいたします。
 それから、全然違うのですけれども、前の方に安全保障の話がちょっと出ていて、「技術やノウハウの海外流出を防ぐための安全保障貿易管理の徹底」というふうになっているのですけれどもね。技術やノウハウの海外流出を防ぐという、例えば産業応用での流出を防ぐものだという観点と、安全保障貿易管理の徹底という観点は全く別のものなので、ここをもう少し言うべきことを明確に書いていただくということは、研究する側としても非常に重要なことなので、ここはもう一度見直していただけると有り難いと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 いろいろと御意見出していただきましたので、また、期が改まりますが、この委員会と内閣府での議論、いろいろキャッチボールされていくということになるかと思います。
 よろしいでしょうか。次に、じゃあ、進みたいと思います。
 議題(2)です。最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム事後評価についてです。
 これは平成20年度から昨年度の平成29年度まで10年間、文部科学省で行ってきたプログラムですね。最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム、これを実施してきたわけですが、文部科学省の事業は、終了後に事後評価をすることになっていまして、本日この委員会にて実施することとしています。
 光拠点事業で実施された各研究拠点の拠点責任者と総括POにそれぞれ事後評価に関して御発表いただいて、その後、この委員会として審議して、事後評価結果についてまとめていくということになります。そして、それから、事務局からも説明も頂きまして、その説明が終わった後、審議時間を取って質疑応答の時間を設けたいと思います。
 この光拠点事業に参画されている委員がいらっしゃいますので、その方は、着席したままで審議の御発言を控えていただくという形の参加になります。その参加されている委員は、大森委員、上田委員、早瀬委員、湯本委員です。
 この本委員会で取りまとめた事後評価結果については、その上の委員会である研究計画・評価分科会、計評分科会と呼んでいますが、そこでも審議することになります。
 それでは、まず、拠点責任者である東京大学の三尾先生より、御発表を頂きます。発表は10分でお願いいたします。三尾先生、お願いいたします。
【三尾先生】  東京大学の三尾と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
 ここにあります「先端光量子科学アライアンス」というのは、光拠点の事業の中で、東拠点と呼ばれています関東の機関、ここにあります東京大学、それから、電気通信大学、理化学研究所、それから、慶應大学と東京工業大学の五つの機関で作った拠点のことでございます。
 この光ネットワーク拠点プログラムというのは、光科学が非常に基盤的なものであり、非常に今も含めて、10年前から非常によく進んでいるところでもあり、また、我が国では基盤的な技術が非常に世界を先導しているものもあると。それを機関連携で強化して進めようということで始められたプログラムになっています。後からお話がありますように、兒玉先生が中心となった関西の拠点と関東の拠点と二つの拠点が立ち上がりました。
 平成20年にスタートしたときには、東京大学はこのプログラムを実施するために、光量子科学研究センターというのを設置しまして、また、ちょうど10年前になりますけれども、第1回のシンポジウムを東京大学で開かせていただきました。
 実際、このAPSAというのは三つの柱を持って進めるということで、先端の研究拠点をやる、それから、人材育成をする、産業振興をする、この三つを柱にして研究を進めると。個別の研究としては、光源を作る、材料技術をやる、あと、利用技術を進めるとか、あと、機関連携で人を育てるとか、あと、オープンイノベーションとか、そういう当時から議論されているようなイノベーションの創出に資するような研究体制を整備していくということで進めてまいりました。
 実際に五つの機関はそれぞれの持ち味がありますので、それのいいところを集めて実際のアライアンスを組んで進めてきたということであります。東京大学は、例えば光格子時計とか強い光の場に関する研究もその当時からずっと続けてきておりますし、理化学研究所ではアト秒技術というレーザー技術を、東工大では材料技術、電通大ではもちろんレーザーの新しい技術を開発していましたし、慶應大学でもそういう利用技術についての研究を進めて、この五つの機関が集まって、その先ほどの申し上げましたような目標を達成するように、活動を進めてまいりました。さらに、その人材育成はいろいろな大学の仕組みを利用して、一緒に進めてくるという、そういうことをしておりました。
 実際に、10年を10分で話すのは大変なのですけれども、全体としては、例えば光格子時計を進めるというのが目標だったのですけど、それは世界でもトップの性能、10のマイナス18乗台まで到達したとか、あと、アト秒技術に関しても非常に進みまして、世界のトップを進めています。それから、新しいレーザーもたくさん生まれましたし、こういう継続的にいろんなものが進められたと。
 さらに、10年事業であったということで、これらが継続的に進められたことが非常に大きくて、さらに、若手の人材を育てる環境とか制度の維持構築ができたと、いろんな機関連携が進められたということになります。
 研究としても、これもざっくり、最初に、個別の研究については、机上にあります報告書がございまして、様々な報告が全体として、関東、関西含めたものが入っておりますので、そちらを見ていただくといいと思うのですが、非常に大きい、とにかく例えば10年前にフェムトといっていた10のマイナス15乗台の世界から、今はアトの世代に入ったというのがこの一つの大きな10年間の進歩であったと思います。
 例えば原子時計が10のマイナス15乗だったものが、今、18乗の精度まで上がってきた。それから、フェムト秒レーザーが、10年前はやっといろんなところに入り始めて利用技術が進んできたのですけれども、これが今、アト秒の世界に突入してきて、これから更に変わろうとしているところができた。いろんな計測や制御の質が変わってきたというのが10年間になります。
 それから、もう一つは、レーザー技術としても、例えばセラミックレーザーとか、LD励起の技術が変わってきて、固体レーザーの技術が進んだ部分とかもありますし、あと、直接非常に変わった光を発振する技術とか、光と磁気を組み合わせて発振を実現しているのです。あと、微細加工技術との組み合わせによって、いろんな広い幅の研究が進められることができて、レーザーの特徴である波長、出力、パルス、偏光、いろんなものが自在に制御できるような技術ができるようになってきて、これが応用範囲とか利用技術への転換に結び付いてきたというふうに考えております。
 とにかく、一つだけ、光格子時計については是非申し上げたいのですが、ちょうど10年前には、つくばの産総研との間とか、情報通信研究機構との間で光ファイバのリンクがありまして、ちょうどその頃、精度がやっと原子時計に届いたか届かないかと、そういうところから始まりました。
 それが、リンクの技術と光格子時計の技術が進んできまして、次の世代になったときには、ちょうどもう10乗の18桁まで行って、2台、これ、2台がここに並べて置いてある時計の間で非常に精度のいい接続、比較ができるようになったと。
 さらに、これが、今はもう一つ進んで、例えば理研と本郷の間、30キロぐらいたしか離れているはずなのですけど、それが2台独立の場所でオペレーションを進めることができるようになりましたし、ちょうどそれを光ファイバのリンクで結んで、この重力ポテンシャルの差が非常に精密に測れると。もう1センチの差が今測れるようになってきたのが、今、非常にきれいに見えるようになってきたというようなことで、世界で最高精度の時計が今実現してきたということになります。
 これはやっぱり10年間、ずっと流れてきたので、この光拠点事業が底支えをしてきたというのが大きな一つの役割を果たしてきたというふうに自負しておりますけれども、昨年、NHKがこういう形で、世界で最も精密な時計ということで取り上げられるようなところまで来ておりました。
 全体的に見たときに、例えば数で見ると、発表件数とかは割と増えてきています。ただ、論文数は割と横ばいになってきているのですが、若手の皆さんに関して言うと、順調に増えてきたのかなというふうに考えております。
 それから、次に、人材育成について申し上げますと、何かこういう国の事業で人材育成をやるというのを全面的に出したのは多分この光の拠点の事業が最初ではないかというふうに考えておりますけれども、実際にその研究開発をやる中で人材育成をどうするのかというので、例えば、PIの研究室を一つ作ろうというので国際公募したりとか、こういうことをやってまいりました。
 これはやっぱり10年やれるというのが分かっていたおかげで、長期的に人が来て働いていただけるという見通しを持って研究のプログラムを組むことができたのは大変大きかったと思っております。実際に、更にいろんな研究員の皆さん、いらっしゃいましたし、とにかく環境を、きちんとした環境を提供できたというのがこの10年間の成果だと思っております。
 あと、ちょうどこれはもう10年前の話で、ヒアリングのときに、その当時の代表は今の五神総長でしたけど、例えば大学間で作ってきたその教育事業を、このプログラムとリンクして、教育、人材育成に活用したりとか。
 あと、さっきの産学連携の中に含まれていたことですけれども、結局、研究、大学の研究現場と産業界との間にいろんなギャップがあるのを何とかして埋めたいというのがこの10年前の思いだったわけで、その中で、例えば企業が一番困っているような課題をもらってきて、そういうのを大学で研究したらどうかとか、こういう形の提案をさせていただきました。
 例えばここにCORALと書いてあるこの事業と一緒にやるということで、CORALの事業というのは、これはまさに大学に会社の方が来ていただきまして、二十数社、今、入っていただいて、その先端のいわゆる光技術を大学生に教える、そういう形で、産学協働して教えるプログラムになっています。さらに、この光拠点のメンバーの電気通信大学とか慶應大学とか、そういう皆さんも来て、単位互換のシステムを作って、始めています。
 10年前には50名ぐらいの、延べ100人ぐらいだったのが、150ぐらいにかなり増えています。非常に成果が上がってきていますし、光拠点としては、これに対して、例えば博士の学生をTAで送り込んだりとか、実習設備を充実したりとか、そういう形で進めてまいりました。
 こんな感じで、多くの企業の方と協力いただいて、この光拠点と車の両輪のようにして、この事業を支えながら、人を育てながら、教科書を作ったりして、設備を、事業を進めてまいりました。
 実際、このCORALの事業は、もともとは文科省から時限のお金を頂いて進めていた事業なんですけれども、こういう努力も実って、平成23年度からは恒久事業として、これは経常的な経費がサポートされますので、光拠点が終わってもずっと続けて、これを続けていくことができるようになってまいります。
 ただ、それにもう一つ、工学部の講師をされている方ですが、実はもともと専門が精密機械の方だったんですけれども、このCORALの事業に参加されて、自分が実は光のことをどうしてもやりたいと思っていたんですけど、なかなかきっかけがなかったのが、こんな感じで、CORALのTAの実習で、光技術に触れて、そのAPSAに入っていらっしゃるこの先生と接点ができて、じゃあといって、その技術をアイデアを、例えばこれもAPSAの関係の慶応大学の先生のところへ行って、それをまとめてという形で、そのSTAMPと呼ばれているこの非常に高速度で画像を得るシステムを開発して、これを今、全面的に押し出しながら、今も、これは先ほどちょっと話がありましたQ-LEAPの事業の中でも大変重要な技術になっています。機関連携で、人とうまくつなぐことによって、人が回っていったという大変有り難い例になったということで御紹介させていただきました。御本人は素人だと言っていましたけど、そういう形でもできるような環境ができたと。
 あと、機関でアライアンスを組みながらセミナーをして、皆さんで技術の共有を図るような事業もやってまいりました。第1回目は約10年前に始めたのですけれども、10年続けると、30年間、三十数回になりまして、様々なテーマで、知識の共有等を図ってきました。
 あと、10年事業を進めていったおかげで、いろんな人が活躍されました。先ほど言ったPI研究室をAPSAの事業の中で持っていただいて、独立した研究成果を出していただいて、成果を出していただいた方は、次のQ-LEAPのかなり重要な役割をされています。それから、会社の方に行って活躍されている方もここで出すことができました。
 それから、あと、産業振興について、もう一つお話ししますと、レーザー加工というのが、先ほどもちょっと出てきて、APSAの研究課題の中に、光源を作る技術とか、それから、光が物質とどう相互作用するか、特に強い光で何が起こるかというような研究課題がありました。
 これは実際にはレーザー加工とか、そういう産業応用とされている部分の技術とか物理とか技術のベースになっているものであります。物理学でレーザー加工というのを見直してみると、非常に複雑な過程を含んでいるおかげで、なかなかそれをブレークダウンして物理のベースに乗せていくのが難しい。もちろん技術としては大変重要で、様々な方が大変研究されているんですけど、もう少し突っ込んだ議論をできるんじゃないかというような思いがこの中から育ってきておりました。こういう、また非常に多くの分野の技術要素を集積して、進んでいくものになっています。
 これが実際に新しいプロジェクトとして立ち上がって、これは今日ここに湯本先生がいらっしゃいますけど、COIのプロジェクトの中で、レーザーによるものづくりを変えるというプロジェクトが文部科学省の下で走っておりますけれども、こういうところへつながっていきまして、そのときにやっぱり大事だという話になったのは、アカデミア側の話と産業側の話がうまく議論できる場が必要であるということでした。
 それをすることによって、お互いの技術課題の共有が可能になって、ピントのぼけないような共同研究ができるシステムが作れるというところまで、溝が埋まってまいりました。
 実はこれ、先ほどAPSAの中で提案した課題解決型の公募研究というのが、こういう形で結実したんだというふうに今は考えています。実際に、企業が今困っていることを教えてくださいと言っても、なかなか簡単には教えてくれない部分がありましたが、一つのシステムとして出来上がり、いろんな課題を共有して、それを議論していく場ができてきたということで、こういうのが一つの大きな形としてできてきていると思っています。
 大急ぎで大変申し訳ないですけど、今後の展開として、今まで話してきたような中核テーマがどんなような形で今つながっているかということで、廣瀬さんから御紹介がありましたが、光格子時計の話に関しては、未来社会創造事業の方で続けられてきていまして、先ほどのファイバリンクとか、超高精度の時計を使った技術がどういうふうに社会に応用されるかというのが研究されています。
 それから、このアト秒科学とか、レーザー・技術、サイエンス、これらのものは、こちらに書かれているような先ほどのCOIとかNEDOのレーザーのプロジェクトとか、ここで委員会で大変御議論いただきましたけれども、そのQ-LEAPの次世代レーザー領域とかにつながっておりますし、最近ではSIPでもこういうのが大事だということで、つながってきて、この辺の技術が今も継承されて続いております。
 この辺でうまくいったこと、これからコアの課題を軸にして、やっぱり基盤の知識を広く普及させる枠組みというのは非常に大事なので、こういうのをこれからも続けていく枠組みが今できていると考えております。
 これはQ-LEAPの文部科学省もホームページにあるものそのものですけど、「次世代レーザー」ということで、東京大学が幹事機関になりまして、いわゆるレーザー加工をやる、CPS型レーザー加工機を作るという拠点とアト秒技術を中心とした次世代レーザーを作る拠点が二つの柱を持って進むような形になっています。
 ここには、先ほどの光拠点のメンバー、あと、関西の皆さんも含めて、ここで一つの場が出来上がっておりまして、光拠点の10年の次の10年に向かっての礎が今できてきたというふうに考えています。
 実際、これは先ほど東京大学の話をしましたけれども、ここに10年前にできた光量子科学研究センターというのがあるのですが、それ以外にも、光に関連する幾つかの組織を作りまして、今は連携研究機構というのを作りました。それに対して、いろんなプロジェクトが乗っていて、ここにはQ-LEAPとかSIPとか、幾つかのプロジェクトが走りながら、光量子科学を推進するようなことをやってきています。
 でも、とにかく全ては、結局、この光拠点の事業から始まったというふうに考えておりまして、基盤的な幅広い分野をカバーしながら、10年進められたプロジェクトをやらせていただいたことというのは大変に貴重なことだったと考えております。
 まとめさせていただきますけど、研究開発については、ほぼ当初の目的を達成したと考えております。それから、人材育成についても、ほかにも大学院でリーディングプログラムとか、幾つもプロジェクトが一緒に走りまして、そういうものの源流になったとも考えておりますし、とにかく基盤技術の融合をさせるとか、産業展開が生まれる種をまくことができたと思っています。
 それから、この光を横串とする連携体制というのは、新しくプロジェクトに引き継がれて、これからもつながっていきますし、その組織整備もできて、これから更に大きな活動に展開できると考えております。
 以上になります。ありがとうございました。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 最初に申し上げたように、資料2-2、2-3、2-4まで説明していただいた上で、まとめて質疑応答の時間を取りたいと思います。
 それでは、次に移りたいと思います。拠点責任者、もう一人の拠点責任者である大阪大学の兒玉先生から御発表をお願いいたします。10分でお願いいたします。
【兒玉先生】  大阪大学の兒玉です。融合光新創成ネットワークいわゆる関西のネットワークでございまして、大阪大学、京都大学、自然科学研究機構分子研、それから、量研機構の、量研の関西光科学研究所、この四つが連携いたしまして、最先端の光の創成を目指したネットワーク事業をやらせていただきました。
 それで、その次の2ページ目にありますのが概要でございまして、先ほど三尾先生からありましたように、関東に対して関西にありまして、基本的にはナノフォトニクス、パワーフォトニクス、プラズマフォトニクスという異なるフォトニクスが融合して、量子制御技術の展開による技術と科学のイノベーションを目標とした連携事業を、推進させていただきました。
 もう少し詳しい具体的なところがその次の3ページにございまして、いわゆる出口であるイノベーション、それから、知の探求という学術の開拓、いろんな謎、宇宙から生命、そういったところの謎に対して、我々が持っている技術、コヒーレント量子制御技術であったり、高エネルギー密度制御技術を高めていくことを目標としました。具体的にはその下に書いてあるフォトンの性質と制御、あるいは、波動関数の可視化、原子・分子の可視化と制御、それから、極限物質構造の可視化と制御という技術を構築するとことと、そのための光源開発を行いました。
 それを出口から、ある程度出口を見て光源開発をするという、いわゆる出口から見た光源システム開発ということと、それから、幅広い応用・出口につながるような光源開発、この二つのやり方をこの事業で展開させていただきました。
 これはこの事業の特徴でございまして、いわゆる普通の事業はどちらかだけということになっていると思うんですけれども、これは両方を同時にさせていただいたというのは、若手人材育成にも、すごく有効に働いたんではないかと思います。
 その次のページに移らせていただきましす。4機関、それぞれ強みがございまして、ここに示すだけではないんですけれども、大きく分けると、京都大学のナノ制御によるフォトニック結晶に光制御であったり、半導体レーザーの開発、それから、大阪大学は極限物質や、大型のセラミックレーザーであったり、プラズマフォトニクスというこういう高エネルギー密度の制御、それから、分子研のコヒーレント量子制御という形で、原子・分子の可視化制御です。さらに量研の原子・分子の可視化であったり、レーザーセラミック、あるいは、高機能テラヘルツ光源とそれによる量子制御などがそれぞれの機関の強みとしてあります。これらがうまく連携することによって、更に高め合うということで、今日は時間がないので、このそれぞれの強みは割愛させていただきまして、特に連携による成果例を紹介させていただきたいと思います。
 連携だからできた成果例は幾つかありますが、特に10年だからできた連携成果をちょっと紹介させていただければと思います。
 一つは、デバイス開発からシステム開発への展開ということで、京大のフォトニック結晶レーザーと、それから、阪大の固体レーザーですね、ナノフォトニクス、パワーフォトニクス、これが一緒になって、新しいシステムを作ったこと。5年、10年だからできたのは、まさに普通5年だと、このデバイス開発で終わるんですけれども、そのデバイス開発をした次のステップ、システム化まで行けたというのはやはりこの10年であったということと、それから、それぞれ得意とするものが寄り合うことによって、これはできた成果です。
 その次のXFELと同期した大型セラミックレーザーというのも、4機関連携とはちょっと違うんですが、理研、・播磨のと連携です。単に大型セラミックレーザーシステムを開発だけでなくシステムを開発して、既存の大型のXFELと同期して、さらに、それを供用にまで展開できたのは、まさに10年であったからできたことでございます。
 それから、レーザープラズマ加速の開発と供用プラットフォーム、これもレーザープラズマを使ったプラズマフォトニックデバイス開発が基本なんですけれども、それをシステム化するところまで、阪大・関西研と連携することによってできたという。
 この三つを基本として紹介させていただければと思います。それから、あと、人材育成です。
 あとは、ちょっとこれは成果が出たわけではないのですが、野田先生のナノフォトニクスと大森先生の量子制御技術が今まさに合体して新しい芽が出掛けていています。残念ながら、この10年では収まり切れなかったんですけれども、新しく出たということで、まさにこの10年、それから、連携というこのキーワードが有効に働いたものとして上げさせています。
 時間がないので、簡単に各論を説明させていただくと、御存じのように、野田先生のフォトニック結晶、これはフォトニック結晶自体がいろん学術的にもすばらしいものがあったんですけれども、そこにいわゆる社会的要求というか、高出力化してほしいという、要求がうまくかみ合って、いわゆるナノ技術と光技術が一緒になったインターディシプリナリーなナノフォトニクスから、社会的要求が入ってきて、トランスディシプリナリーなところへまで持ち上げていくことができた例でございます。
 さらに、それをシステム化、大阪大学と一緒になってシステム化したということで、これももう既にシステム全体として取り込んでいます。固体レーザーシステムとしては恐らく世界初めてのことでございまして、PCSELを大型システムに入れるということ、いわゆるナノフォトニクスとパワーフォトニクスが合体できたということがこの事業ならではのことではないかと思います。
 それから、その次、先ほど申し上げたように、大型のセラミックレーザー、これも大型のセラミックというのがなかなかどこも開発してなかったんですが、この事業を核にして、あと、大阪大学の機能強化経費も頂いて、100ジュールの0.1ヘルツ、これは予算的制約で0.1ヘルツとことですけれども、とにかくまだ世界にないような大型セラミックレーザーを作るというものでした。それだけでインパクトがあるんですけれども、それをXFELと同期させて使うというところまで、この10年で達成することができました。
 その成果の例として、例えば、その9ページに示しているものがあります。レーザーが当たって物が壊れていく、その瞬間をXFELと同期して見えたこと。物質が圧縮して、その後、傍聴して、破断していくという、そのプロセスが全部見えるようになったということです。
 それから、レーザーを当ててできる衝撃波というか圧力波が1次元方向に限られていますので、それをうまく使って、物質の配向性、それとマッチさせることによって、従来の拡散的な相転移に比べて、5分の1から7分の1の圧力でものを変化させることで新しい物質を作るということに成功しました。まさにこれはFELとレーザーの合体によりできた成果だと思います。
 その次に行きまして、これはプラズマ制御技術ということで、レーザープラズマ電子加速ということで、プラズマをうまく制御することによって、世界一安定なレーザープラズマ加速電子ビームを実現いたしました。これは後で申しますが、この後、ImPACTであったり、あるいは、未来社会創造事業につながる大きな成果でございました。
 それから、人材育成の方なんですけれども、これも各機関、それぞれ得意とするところがあります。それはもうどんどん伸ばさせていただくとともに、やはり連携だからできるというところで、関西の連携をより効率的にするために、講師をそれぞれお互いに派遣するということだけではなくて、もともとあったレーザー夏の学校というものを、大阪大学に閉じるのではなくて、それを関西の4機関に広げて、さらに、最終的には、平成25年には関東とも連携することによって、全国規模になりました。また、これ自身が自走できるように、企業協賛8社を受けて、今はもう予算的なサポートもなくて、自走している状態まで持ってくることができました。
 それから、次世代光科学ネットワーク、これも関西から若手の人たちが新しいネットワークを構築したいということで提案されまして、最終的には関東とも連携して、全国まで広げることができたということです。
 あとは、国際連携ですが、JSPSの先端拠点事業を2期やらせていただきまして、これとも連携させていただき、国際的な連携の場での実践教育、さらに、ウインタースクールを定期的にやるようになったとか、あと、産学連携に関しましても、フォーラムを設置して、現在110社ぐらいの参加企業の光エレクトロニクスフォーラムを設立して運営しております。そこから新しいプロジェクトであったり、学生と企業の人とのコミュニケーションの場を作ることによって、人材育成にも役立てました。この事業が終わってからなんですけれども、終わってから新たに、パワーレーザーに関するフォーラムも昨年できました。
 ということで、まとめさせていただいたのがこの12ページです。ただいま紹介させていただいたのは、時間の関係で、この赤いところだけです。赤いところだけなんですけれども、基本的には出口から見た研究開発と拡がりある出口を見据えた研究開発、両方をやらせていただいて、さらに、人材育成もリンクさせるという形でかなり効率的にそれぞれが連携し、機関連携が有効に機能しながら、この事業をやらせていただけたのではないかと思います。
 今後の展望ですが、研究開発の方向性と予想される成果ということで、先ほど申しましたように、連携を基本にしたものだけを取り上げさせていただいております。少し申し上げたように、フォトニック結晶とレーザーによる時空間コヒーレントの制御への利用活用というのが恐らく次の10年で展開されると思われます。
 それから、ナノフォトニクスとパワーフォトニクスが一緒になったものは、今、10ジュール、1キロワットというレベルまでほぼシステムとして開発されておりまして、その後、未来社会創造のところで、阪大、関西研、分子研も含めて、100ジュール、10キロワットという加速用のレーザー開発に移っていっております。
 それから、レーザー加速というのも、この事業でユニット化のところまでできて、ImPACTでシステム化というところまで行って、未来社会創造で実用化を目指したところへ行っております。恐らくこれらは最終的には、パワーレーザーのいわゆる生産物で従来のパワーレーザーとレーザー加速器などが全てインテグレーションすることによって、新しいパワーレーザーの概念が恐らく生まれると思います。パワーレーザーというのは一つの目的だけではなくて、あらゆる目的のために使われる可能性がある新しいシステムであるということを我々としては提案していく方向であります。
 それから、あと、新物質・材料に関しましては、理研のXFELとも連携して、新しい物質材料創成に向かおうとしていますけど、まだ物質ができたというところで、それを材料として今後創成していく、あるいは、ここではちょっと記述しておりませんが、米国などは、本格的な、新しい量子材料を、この高エネルギー密度状態で作るという提案も出てきております。恐らく10年でそういうことも出てくると、思われます。
 ということで、その次に、構築したネットワークの拠点の今後ですけれども、14ページでございます。これは光拠点というのは教育というものもあって、地域性を持った関西、関東という枠組みで、いろんなテーマを一緒にしてやっていた拠点なんですけれども、恐らく次は、国際競争力があるそれぞれの分野の拠点になっていくと考えられます。
 先ほどから三尾先生がおっしゃられているQ-LEAPなどは、関西と関東と一緒になってやっているとか、ImPACTであったり、未来社会創造というものも、地域というよりも、むしろ分野の拠点として今後行くであろうということで、それぞれ予算化はされていす。高エネルギー密度科学に関しましても、予算化というよりも、むしろ新しい国際連携として日米の新たなフレームワークとしてつい先日、文科省‐DOE間で締結されましたので、恐らくこういうものも分野の拠点として、今後、進められると思います。
 それから、人材育成に関しましても、これまでのものを継続するとともに、より産学連携と結びついたた形で新しい教育の在り方を今後構築していくものと考えられます。
 以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に、総括POである光産業創成大学院大学の加藤先生より御発表いただきます。発表は5分でお願いいたします。
【加藤先生】  それでは、PO側から報告をさせていただきます。
 プログラム全体の達成度は、今、三尾先生、兒玉先生からいろいろお話があったように、世界的にも肩を並べるか、あるいは、超えるような多くの独創的な成果が得られたと思っております。
 幾つかの例としては、光格子時計、「フォトンリング」面発光レーザー、アト秒精度の電子振動制御、レーザーで生成した高エネルギー密度状態をX線自由電子レーザーで計測するとか、そういう非常に先進的な成果が多く得られております。
 人材育成に関しては、研究と人材育成を一体となって行うという考え方に立って、このプログラムは実施されました。それで、三尾先生、兒玉先生、各機関の研究代表者の目線としては、この人材育成、それから、、企業との連携とか、そういう方にかなり目を向けて、このプログラムが実施されたと思います。
 それで、新たな方法として、例えばCORALであるとか、C-PhoSTの方では、部局横断カリキュラムや、高校への遠隔講義の配信など、いろいろ通常のプログラムではできないことにどんどん積極的に取り組まれそれからいろいろな広がりのある成果が出てきました。
 拠点間の連携体制ですが、両拠点それぞれで、拠点内の連携がまず必要ですが、特に西拠点の方では、パワーレーザーと、半導体、分子制御など、非常に違う分野の研究者が連携して拠点を形成しました。ですから、なかなか初めからすぐいろんな成果が出るわけではないんですが、10年プログラムということで、じっくり取り組みまれまして、それで、拠点内の連携がだんだんできてきて、それから、成果も出てきたことが特筆されるかと思います。
 拠点間の連携に関しては、毎年度末に、拠点合同シンポジウムを行いそれ以外にも、研究者同士でいろいろな交流がございまして、いろんな活動がなされてきたというような状況です。
 プログラム全体の運営についてですが、各拠点ごとで毎年2回、運営委員会がございまして、それにPOが出席し、文科省とJSTにも御参加いただきました。
 そういう場で、研究の進捗レビューや課題の検討などを実施しました。、それから、年度末に各拠点の研究状況等を把握する会議を開催し、その進捗状況等に応じて次年度予算の一部の配分を実施しました。これは年度予算の5%ぐらいですが、PD経費という枠が設けられまして、それをその各拠点の特に力を入れたいというところに重点配分する方式を取ることができました。
 それから、CREST、さきがけと連携をしまして、ユーザーと光源開発の連携を取り、さらに、若手研究者の交流もこういう場を通じてできたと思います。
 この5番目のポツですが、いかに研究成果を公開するかが重要なのでいろいろ考え、例えば机上配布されています冊子を作ったりしました。今から振り返ってみますと、大規模な国費を投入したプログラムですので、その成果を非常に早く広く皆さんに知っていただくことが重要です。最近は、ホームページ等を活用して公開するのですが、このプログラム発足時に私達もホームページを作りました。、それを実効あらしめ、そこからどんどん発信するためには、専属の専門家がそれを担当してやるということが必要で、そういう仕組みをスタート時からちゃんとできず、成果の発信は不十分であった思います。外国ではそういうところにすごく力を入れてぴしっとやるんですが、日本の場合は少しそこは手薄になっていると思われます。
 POはアドバイザー的な役割でございます。産業界からのPO、八木先生と佐野先生は産業界のコモンセンスを基に、学術研究に対してどういうふうに産業界としては考えるかといったことをいろいろ御発言いただきましたので、非常にバランスを取る上で重要だったと思います。
 成果のまとめですが、一言では言えませんが、いろんな最先端の成果が生まれました。例えば光格子時計で重力効果を検出できたというのは、分光研究が社会へ飛び出したことでございまして、今後、測地学とかの方向に展開されていくことが期待されるわけです。
 そのためには、持ち運びが可能な常温でも動く光格子時計が必要になってくるんですが、そういう開発も現在既に進められておりますので、実際に社会で利用されるようになっていくのではないかと思います。
 それから、PCSELも学術としてしっかりした基盤ができ、それによって、高出力のPCセルが実現されるという状況になっていますので、まさに学術と応用が一体になった展開がなされていると思います。
 人材育成もいろんな形でなされましたので、今後光科学技術を日本で推進していく上でのコアとなる研究者がかなりこれで育成されたと思います。
 このような成果は、このプログラムの発足に先立ち文部科学省で懇談会中間報告書が出されたのですが、この報告書でこうあるべきと指摘されたいろんな事項に十分応えるものであると思います。
 今後の展望でございますが、本プログラム発足後にいろいろなプログラムがスタートしまして、この光拠点プログラムの方もこれらに参画しております。そういう場を通じて、今後、社会的課題の解決に大きく貢献すると期待されます。
 今回の報告の枠を少し超えることですが、今、日本全体でいろいろなプログラムが実施されており、研究論文とか国際会議発表とかは質は非常に良いのですが、数の面で外国に比べて必ずしも多いとは言えません。相対的にいうと少し減っている状況になっています。
 思いますに、研究開発における我が国の国際競争力を向上するには、もっと多くの研究者がその研究開発に参加して、日本全体の研究者人口を増やすことが非常に重要であると思います。そのための仕組みを構築することが必要なのではないか。この光拠点プログラムはかなり大規模にやりましたが、それでも、ある限られた規模でしたので、もっと大規模に研究者が参画できるような仕組みが必要なのではないかと、個人的にですが、今、思っております。
 例えば欧州では、そういうプログラムとしてLaserLab Europeがございます。これは2003年からですから、もう15年ぐらいやっているのですが、研究者の移動、交流、共同研究が活発に進め、欧州の研究力強化と、研究者育成がうまく絡んで、全体を活発にする上でに非常に大きな力を発揮しています。それを基に、ELIという非常に大規模な研究プロジェクトがスタートし、今、それは稼働に入ろうとしています。
 アメリカでも、昨年、LaserNet USというのができまして、同じような趣旨の活動が始まっております。
 日本でも、日本に適した形で、研究者の移動と交流が促進され、研究推進と若手研究者育成が推進される、そういう仕組みを構築するが必要であると思われます。
 以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、次、事務局から、光拠点の事後評価結果(案)について御説明、10分でお願いいたします。
【廣瀬補佐】  資料2-4をごらんください。
 今までの三尾先生、兒玉先生、加藤先生の御発表を踏まえまして、事務局で、光拠点の事後評価結果の案を作成いたしましたので、御説明いたします。
 おめくりいただきまして、2ページ目は量子委員会の委員の先生の名簿です。
 3ページ目、4ページ目は光拠点事業の概要です。皆さま御承知と思いますので、こちらも時間が限られておりますので、省略させていただきまして、5ページ目、事後評価票の説明をさせていただきます。
 文部科学省では、事後評価におきまして、評価は必要性、有効性、効率性、この三つの観点で行うこととなっておりますので、それに関しまして、一つずつ説明をさせていただきます。
 おめくりいただきまして、6ページ目になります。まず、必要性の観点になります。こちらは、評価項目としまして、科学的・技術的意義、国費を用いた研究開発が必要だったかについて、評価をすることになっております。その評価基準は、光科学技術における新たな発想による最先端の光源、計測手法の研究開発が推進できたか、また、本事業において、先端的な研究開発の実施、その利用を行い得る科学技術、光科学技術に係る若手人材等の育成というものが達成できたかとし、この事業の成果を評価することにしております。
 まず、初めに、評価結果の下にありますAPSA、C-PhoSTの実績について簡単に述べさせていただきます。
 まず、APSAの方ですが、真ん中にありますとおり、先ほど三尾先生、加藤先生からの御発表にもありましたとおり、研究開発の成果としては、まず、代表的なのは光格子時計の世界最高精度の光格子時計の実現とそのネットワーク接続等が上げられると考えており、世界トップレベルの研究開発成果が創出をされたというふうに考えております。
 また、人材育成に関しましても、10年事業という特徴を生かし、世界各国からの公募や、研究に専念する環境制度等が構築されたというふうに考えております。
 また、C-PhoSTに関しましても、野田先生のPCSELをはじめとし、アト秒精度の量子制御、分子コンピュータの原理実証など、すぐれた研究成果が得られたというふうに考えております。人材育成もいろいろなことをされておりますが、特に、産業界との交流を図る光科学フォーラムサミットなどが実施されたというふうに考えております。
 そのため、評価結果としましては、真ん中上段のところの青の記載にありますとおり、本事業の光源、計測手法に関しましては、まずは世界に比肩、又は、超えるような多くの独創的な成果というものが得られたというふうに考えております。
 これにより、我が国の光科学技術の発展に多大な貢献をしたというふうに考えております。また、それに限らず、独創的な研究が国際的にも光科学技術に大きな影響を与えたというふうに評価しており、本事業の必要性はあったと考えております。
 また、10年という長期の事業を実施したことにより、若手研究者が落ち着いて研究に取り組むことが可能になり、光科学技術の人材の厚みが増したというふうに考えており、多くの優れた研究成果が得られる基盤が構築されたと評価できることからも、本事業の必要性があったと認められると考えております。
 おめくりいただきまして、二つ目、有効性の部分になります。こちらは評価項目としまして、新たな知の創出への貢献、人材の育成が有効的に行われたかというところを評価することになっております。
 具体的な評価基準は、光科学技術に関する高度なポテンシャルを有し、互いに特性、機能を補完することが可能となるような複数の研究機関が、役割分担の下に、きちんと連携した体制を構築しているかという点と、その参画した機関の連携・協力によって、若手研究者を積極的に育成するような、そういった効果的なプログラムを策定できたかです。
 まず、初めに、APSA、C-PhoSTの実績を簡単にまとめております。例えばAPSAでは、複数機関の連携による成果として、広帯域のコヒーレント光源「フォトンリング」の実現というのが上げられると考えております。また、人材育成に関しましては、機関連携による取組として、先端光量子科学アライアンスセミナーや、CORALといった事業が行われているということが実績として上げられます。
 また、C-PhoSTに関しましても、研究開発成果としまして、機関間連携による、例えば世界で最も効率的なレーザープラズマ加速の実現や、PCSEL励起の小型・高性能固体レーザーの開発など、各種先進的な光源開発がその連携により得られたことが上げられます。
 また、人材育成に関しましても、部局横断のカリキュラムや、テレビ会議システムを用いた高校への遠隔講義などが実施されまして、部局横断的な人材育成がなされていると考えております。
 これらの実績を基にしまして、有効性の部分の評価結果としまして、の方に戻るんですけれども、「評価結果を記載」の下にありますとおり、本事業を通じまして、異なる機関、分野の研究者が共同で研究を行うネットワーク型研究拠点というのを形成することによって、効果的に革新的手法による新しい光源等の研究開発の成果が得られたということからも、本事業の有効性というのは認められると記載させていただいております。
 また、そのネットワーク型研究拠点の下、非常に幅広い分野の若手研究者の教育ができたというふうに考えており、異なった分野の研究者、学生に交流をもたらしたことから、本事業の有効性というのが認められるというふうに記載をさせていただいております。
 最後に、効率性の部分に関しまして、8ページに記載させていただいております。こちらの評価項目は、計画・実施体制の妥当性となっておりまして、評価基準としましては、適切かつ効率的な計画・実施体制であったか、また、参画する研究機関が密に連携する体制は構築できていたかといったところを基準とさせていただいております。
 こちらですけれども、まず、初めには、本事業の運営としまして、各拠点の運営会議やサイトビジットにおいて、加藤先生をはじめとする総括POやPOがそれぞれの専門性を生かした役割分担の下、各拠点の研究の進捗の管理、計画検討などを実施しておりました。また、POが各拠点の研究進捗状況に応じた予算配分を実施するなど、効率的な運営が実施できたというふうに考えております。
 また、本事業と並行して実施されていた光科学技術に関する他の事業の研究者を招いた公開合同シンポジウム等を行っており、本事業のみならず、他事業との相乗効果を生み出している観点におきましても、効率的な運営というのが実施できたのではないかというふうに考えております。
 以上、三つの観点の評価を踏まえまして、総合評価としては、本事業により、まず、研究開発成果としては、トップレベルの研究開発が数多く生み出され、光科学技術を大きく進歩させることができたと評価しております。
 また、人材育成に関しても、各光科学技術に関する機関、部局を超えた教育プログラム、産業界との交流の仕組みが形成され、本事業は一定の役割があったと評価しております。
 また最後に、ネットワーク型研究拠点を形成することにより、各機関の特徴・強みを生かした革新的な研究成果を生み出すことができたり、多様な人材育成プログラムを実施したりすることができたことから、このネットワーク型研究拠点を構築して事業をすることの有効性があるというふうに評価をできるのではないかと考えております。
 これらの成果を踏まえますと、本事業の目標というのは十分達成できたと記載させていただいております。
 評価概要に関しましては、これらのことをまとめたものになりますので、割愛させていただきます。
 (3)の今後の展望に関しましては、まず、初めに、人材育成のことについて触れさせていただいております。光科学技術における人材育成は、今後も大切だと考えております。本事業終了後も、その一部が、例えばQ-LEAP等に引き継がれておりますが、本事業で構築された教育システムが継続・発展することを期待すると記載させていただいております。
 また、本事業で生み出されたすぐれた研究成果につきましては、未来社会創造事業や戦略的イノベーション創造プログラム等に引き継がれております。引き続き世界トップレベルの研究成果の創出を期待するとともに、社会課題の解決に大きく貢献することも期待したいと記載をさせていただきました。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 以上、4名の方から発表いただきましたが、最初の3名の方の御発表に関する御質問等、まず、あるかと思います。しかし、この委員会の目的は、この事後評価結果、この案を取るという作業をするわけですので、最後に事務局から示された案、この項目が、必要性、それから、有効性、それから、効率性、それから、総合評価というところに書かれた記述を、何というのか、補足する、若しくは、修正する上で、3人の方のプレゼンに何か質疑応答したいと、そういう視点で議論していただければと思います。
 もちろん、それとは関係なく、ちょっと分かりにくかったから補足してというのはもちろんありですが、この委員会のミッションとしては、飽くまでもこの事後評価結果を精査するというところですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、自由に御意見、お願いいたします。はい、どうぞ。
【根本委員】  総合評価のところで、「これらの成果を踏まえると、本事業の目標は十分に達成されたと考えられる」となっています。それはそれでよろしいかと思うんですけれども、前の資料の「量子技術イノベーション戦略(案)について」という資料の中に、我が国の研究力というグラフが一番最後の14ページのところにあって、そのうち、該当するのは多分右側の二つなんじゃないかと思うんですけれども、ここでは大きな差はないというふうな説明になっていますが、結構差があるというふうに、日本と欧米ではやっぱり結構差があるというふうに見えるんですけれども、その辺はどういうふうに説明されるとお考えなんでしょうか。
【根本委員】  この14ページの表の右側に……。
【雨宮主査】  回収資料の。
【根本委員】  回収資料ですね。極短パルスレーザーとレーザー加工の多分こっち側の二つは分野的に該当するのかなというふうに私は思ったんですけれども、それを見ますと、やはり欧米と日本の間には開きがあるのかなというふうに見受けられるんですけれども、その辺はどういうふうにお考えなのかというのを教えていただけますか。
【奥室長】  加藤先生。
【加藤先生】 
 これは光科学を全部網羅しているわけじゃなくて、そのうちの一部を取っているんだと思います。極短パルスレーザーとか、レーザー加工とか、それぞれに関しては、例えばドイツより論文数は少ないと思います。先ほど私が述べたように、欧州では大規模な研究者・研究力育成の方策を取っており、これが效を奏していることを反映していると思います。欧州ではそういうところに力を入れて伸ばすように長年にわたりやってきています。
 日本は、もちろんいろんなことをやっているのですが、論文数という点で見ると、差が付いている。これを、「日本との間に大きな差はまだ生じていない」という表現が正しい表現なのかどうかということだと思います。
 だけど、これに現れていない、例えば光格子時計であるとか、フォトニック結晶、半導体レーザーとか、そういう分野を取れば、もっと日本が上に来ます。だから、全体としてみれば日本がすごく大きく差を付けられているということではないと思います。
 ただ、力を入れる必要はあると思います。
【雨宮主査】  今の質問の趣旨は、総合評価のところに、「十分に達成された」と、もうこれでオーケーで、もう全て満点で、余り変えられないというような余韻が残る。しかし、世界的に見れば非常に競争が激しいので、多分今後の展望のところにやっぱり盛り込むべきことがあれば、盛り込むのがいいんじゃないかなと思うんですね。
 これ、飽くまでもこの事業の事後評価ですから、今、三つの視点で、必要性、有効性、効率性と、その評価でどうだったかということで、これはこれで総合評価して、しかし、世界を見てみると、こうこうだからという、ちょっと今後に関してさらにアクセラレート、要するに問題提起をするというところがあれば、記述しておいた方がいいんではないかという趣旨ですよね。
【根本委員】  はい、そうです。そうです。
【雨宮主査】  その辺をちょっと御検討、お願いいたします。
【廣瀬補佐】  分かりました。そのような趣旨で追記をするようにします。また御相談をさせていただければと思います。
【雨宮主査】  じゃあ、ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【美濃島委員】  いろいろ良い成果が出ていると思いますし、10年ということで、いろいろな厚みが出たというのはそのとおりだと思います。
 人材育成のところでちょっと質問というか、評価の補足ということも関係するのですが。いろいろな人材育成ということで活動をされているというところが評価に含まれていると思うんですが、やはり人材育成は、諸外国と比較した、今の日本の研究状況の差ということとも関係あると思うんですね。
 特に、日本の場合、博士課程進学者が減少しているというところが課題で、他の諸外国、例えば中国、アメリカ、ヨーロッパと比べても、修士課程で終わってしまう学生が非常に多くて、それが特異な状況です。ニュースとかでも出ていると思うんですけれども、まさにそれが課題だと思うんですね。
 今日御報告のあった中でも、博士課程の学生をどういうふうに教育されたかとか、あと、博士を修了されて研究を開始されたばかりのようないわゆる若手研究者にいろんなチャンスを与えたということがクローズアップされて、報告書にも書かれていたかと思うんですが、もう少し下を引き上げる部分はいかがでしょうか。つまり、学部、修士から博士のところにかなり日本は特異なギャップがあるというところを、このせっかくの10年間の拠点プログラムで、人材育成とプロジェクトをリンクさせて、非常にユニークというか、重要なプログラムをされたと思うんですが、その結果が、そこのところ、日本の特異な人材育成の課題に対して、どのような効果があったかということが少し分かると、参考になって有り難いと思います。これは質問であると同時に、あと、評価の文章のところにもそういうことが必要だというようなことが書かれると良いと思います。もし取組があるんでしたら、そのようなところに注力をされて、こういう成果があったようなことが書かれると、今後の視点でもよろしいのではないかと思いまして。
 もう一つ、せっかくこの10年間で、拠点の中でいろいろな人材が育成されてきたと思うんですが、やはり重要なのは、今後、その育成された人材がどのように活用されていくかということで、日本として裾野がどのように広がっていくかということだと思います。ちょっと言葉は適切でないかもしれませんが、そこで育った人がそのままそこに残るといういわゆる囲い込みではなくて、組織の意味でも、分野的にもいろいろな形で、日本全体で共有されていくということが非常に重要だと思います。そこに関して、例えば現状がどうなのかとか、ちょっと数値で出すのは難しいのかと思うんですけれども、どういう形になったかとか、そういったことが少し見えると良いと思います。
 それに関連して、先ほどの報告で、企業に就職した学生が、引き続き、その分野に残って連携していくような記述が、関西の方、兒玉先生のところであったかと思うんですけれども、それはなかなか仕組み的に難しいことがあると思うんですね。もちろん企業の事情というのが非常にあると思うんですけれども、それが拠点のプログラムの中で連携した企業だからやれたという話なんだとすると、ちょっと広がっていかないと思うんですけれども、そこに関して、実情やどのように展開したらできるのかということがあると良いと思います。
 以上の3点、博士課程進学という観点と、裾野が広がっていくという観点、それから、特に企業のところについてです。まず、現状がどうかというのを教えていただきたいのと、あと、評価の文章に何らかの形で反映させていただけたらということなんですけれども。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。人材育成、特に博士課程の進学率にどう効果があったかという点が一つ目ですね。それで、あとの二つ目、三つ目、何かこの場で3人の先生方の中で、それに相当するようなことがあれば。もしそこに今、手元に資料とかなければ、事務局に必要なデータを提示して、そして、事務局が、今言ったその人材育成のところを、単に人材育成の成果というふうにくくるんじゃなく、ちょっと今の項目に分けて、成果があった部分と引き続き課題がある部分がどうなのかと、整理した記述にした方がいいということですよね。
【美濃島委員】  そうですね。はい。すぐに解決するという話ではもちろんないと思いますし、数字でたまたま今、進学率がこうなったからどうという話でもないと思うんですが。非常に長期的な問題だし、全国的な課題だと思いますので、数字が出ないとしても、何か手応えとか、どういうことをやったというような少し具体的なことを教えていただきたいのと、それから、それを必要な観点として喚起するという意味で具体的に少し記述をしていただけたらということですね。
【雨宮主査】  この問題は、この分野に限らず、どこの学術の分野も抱えている問題なので、ある意味で、人材育成に効果があったというところをうたうんであればあるほど、そこのどういう視点であったかということと、引き続き何が課題があるかということを、ちょっとまとめての中に盛り込めればというふうに。
 そういうことでよろしいですかね。今、ここでそこをまた突っ込んじゃうと……。
【美濃島委員】  はい、そうですね。分かりました。
【雨宮主査】  時間がなくなりますので、ちょっとそこのところを補足するという方向の御指摘と受け止めました。
 ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【岩本委員】  私も同じようなコメントで印象を持ったんですが、特に産業界との連携でいい成果を上げておられるので、連携企業だけじゃなくて、卒業生というか出身者が産業界で活躍しているというコメントもあってもいいかなというのを、人材育成の成果のところにですね。
【雨宮主査】  ほかに、とにかく評価できますというので。
 そうか、意見を言えない委員もいるので、ちょっと発言される委員の頭数が限られますが。
【城石委員】  個別じゃなくてよろしいですか。
【雨宮主査】  はい。
【城石委員】  ちょっと全体のたてつけでちょっと教えていただきたいんですけれども、これ、統括POの加藤先生のお話と、今回のこの委員会での事後評価結果というのは、両方とも、これ、掲載される、どういうふうになるんですか、というのが、ちょっとすいません、勉強不足で申し訳ないです。
【廣瀬補佐】  基本的には、公開されるのはこの資料2-4だけです。
【城石委員】  2-4だけが公開されるんですか。分かりました。
【廣瀬補佐】  評価結果として出ていきます。
【城石委員】  公開されるんですね。
【廣瀬補佐】  はい。
【城石委員】  分かりました。
 そうすると、ちょっと2-4についてちょっと教えていただいてよろしいですか。例えばその必要性のところで、評価項目、6ページになりますけれども、科学的・技術的意義というのと、国費を用いたと、こう書いてありますよね。そうすると、この書いてあることも、この順番で書いたあった方が分かりやすいかなと思ったんで、ここの中身そのものについて。
 例えば、有効性の新たな知の創出への貢献と人材育成の養成という項目ですよね。その右側なんです。そうしたら、新たな知はこういうのが創成されました、人材はこう養成されましたとか、左側でしたら、科学的・技術的な独創性はこういうのがありましたとか、革新性はこういうのがありましたと書いていただいた方が、これが公表されるから、何か分かりやすいかなと。
 書いてあること自身と評価の結果は全然全く問題ないと思うんですけれども、この表を見たときに、多分残るのはこの評価項目と評価基準というのとこの文章ですよね。何か知上のところと下のところがちょっと何か違うような感じが。
【廣瀬補佐】  分かりました。評価項目のここがこの評価結果にというのが分かるようにもう少し修正をします。
【城石委員】  ええ、何かその方が、だから、読みやすいかなと。特に一般の方にも。
【雨宮主査】  一応、最初に研究の成果が得られて、その後、人材育成のことと順番にはなっていますが。
【城石委員】  必要性と有効性が何かちょっと、例えば有効性にも人材の養成というのがあって、こっちは若手研究者の育成というのがあって、それで、科学コミュニティの活性化というのが必要性にあって、有効性のところにはコミュニティが何かちょっとあるような感じもしたりとか、何かちょっと入れ子になっているような感じなので。
【雨宮主査】  必要性と有効性がということですね。
【城石委員】  ええ。それの切り分けみたいなのをもう少しされた方が分かりやすいかなと思いましたと。
【雨宮主査】  じゃあ、ちょっとその辺、必要性と有効性、必要性というのはその目的性的なものですよね。有効性というのは、得られた結果がちゃんと出ているかどうか。3番目の効率性が実施体制と。そんな切り分けですよね。
【城石委員】  はい。
【雨宮主査】  だから、その目的で必要だと言っていることと、その結果、リザルトとして有効に結果が出たということが、ちょっと見方によっては重複するし、また、見方によっては、目的としていたことがちゃんと結果になったんだから、つながっているんだから、再度掲載されてもいいという考えもありますが、ちょっとその辺の見方がもうちょっとクリアになる方がいいという御指摘かなと思います。
【城石委員】  はい。それだけで、書いてあること自身は特に全く異存はございません。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。ちょっと時間が押してきていますが、ほかにこの資料2-4の評価結果案に関するコメント。よろしいでしょうか。
 本日、じゃあ、この頂いた意見を主査預かりとさせていただいて、事務局と相談して、適切に文言として反映した上で、この委員会の案としたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 この追加で何か意見のある場合には、メールで、何日ぐらいまでのうちにやれば、まとまり可能でしょうか。ちょっと時間が押しているので、ここでターミネートするので、何か後で意見がぽっと出た場合には、いつぐらいまで。
【廣瀬補佐】  1週間くらいをめどに頂ければ、大丈夫かと思います。
【雨宮主査】  1週間ぐらいをめどに、何か追加であれば、頂くと。今日ここで頂いた案はどういうふうに反映するかということは事務局と相談して詰めたいと思います。
 そういう進め方でよろしいでしょうか。じゃあ、そういうふうにさせていただきます。ありがとうございます。
 それでは、次の議題、(3)の光・量子融合連携研究開発プログラムの事後評価についてに入ります。
 このプログラムは、私自身が、一部ですけれども、参加していますので、利害関係者という位置付けですので、本議題の進行は主査代理である大森委員にお願いいたします。じゃあ、大森委員、よろしくお願いします。
【大森主査代理】  では、御指名いただきましたので、本議題での進行を務めさせていただきます。
 それでは、事務局より説明をお願いします。
【大榊補佐】  それでは、事務局から、資料3について説明させていただきます。資料3の「光・量子融合連携研究開発プログラムの事後評価結果(案)」について、ごらんいただければと思います。
 おめくりいただきますと、量子科学技術委員会と量子ビーム利用推進小委員会の名簿を付けてございます。この事業でございますが、平成25年から平成29年度までの5年間で実施した事業でして、先ほどの光拠点の裏番組として走っていた事業でございます。
 こちらにつきましては、光、特に量子ビームの関係が中心でしたので、量子ビーム利用推進小委員会にて審議を実施しまして、事後評価報告書をまとめたものでございます。本日、量子科学技術委員会では、事後評価結果を御確認いただいて、その御了解を頂ければと考えているところでございます。
 なお、本委員会で取りまとめた事後評価結果でございますけれども、光拠点もそうですが、併せて、この更に親会である研究計画・評価分科会にて最終的に決定をするというプロセスになってございますので、御了承いただければと思います。
 では、量子ビーム小委員会で議論した結果について、この報告書にまとめてございますので、御紹介をさせていただきます。
 3ページをごらんいただければと思います。先ほど申し上げましたとおり、課題の実施機関は平成25年から29年度の5年間でございます。
 この研究開発の概要でございますが、「光・量子ビーム技術」について、光拠点の中でも得られたような課題ですとか、あるいは、その状況変化とかを踏まえまして、量子ビーム技術の更なる発展を目指すために、重点課題を二つ設けてございました。
 光・量子ビーム技術の連携を推進して、我が国の有する施設、設備を横断的に活用する利用研究を推進するということで、利用研究の開発課題、それから、将来を俯瞰した基盤技術開発ということで、例えばコンパクトな光源の開発といった課題というのを設定したところでございます。
 おめくりいただいて、5ページのところに課題の実施機関と体制を表にしてまとめてございますので、少し御説明させていただきます。
 総括プログラムオフィサー、また、プログラムオフィサーを計3名設置してございまして、総括プログラムオフィサーに、学術振興会理事の家先生に入っていただいて、課題のプロジェクトマネジメント、評価というのをやっていただいたところでございます。
 各代表機関でございますが、先ほど申し上げた横断利用研究というのが、実際に装置の開発、いろんな量子ビーム光を横断的に利用した装置開発を行っており、基盤技術開発というのが三つございますが、小型の光源開発ですとか、中性子源の開発等を行うという事業でございました。
 時間が余りございませんので、少し飛ばさせていただきますが、実際の事後評価結果の方に入らせていただきます。
 おめくりいただいて、7ページのところに、先ほどの光拠点と同じように、必要性、有効性、効率性についてそれぞれ評価をして、総合評価をまとめるという形になってございます。7ページのところにございますように、必要性の観点でございますが、この研究開発プロジェクトの課題として、本プログラムを実施して、放射光と中性子、あるいはレーザーなどの利用研究、利用技術を融合させた利用研究を行い、これが学術と産業というところに高い波及効果が見込まれる、と評価いただいたところでございます。特にレーザー開発、フェムト秒光源の新展開、小型中性子源の開発はいったものについては、学術、産業分野に対して非常にインパクトがあったと評価いただいたものでございます。
 また、副次的な効果でございますが、これを通じて、放射光と中性子の研究者それぞれが協力して、高度な研究開発に参加しやすくなるような、量子ビームと光の横断研究というのが期待されるということになっており、この必要性、国費投入の意義があると評価できると評価いただいたところでございます。
 さらに、おめくりいただきまして、9ページ目のところでございますが、この有効性の観点でございます。先ほど必要性のところにも触れてございましたが、この最先端の共用施設の高度化、あるいは、光・量子ビームの利用拡大に対して、このプロジェクトの結果が貢献していると御評価を頂いたところでございます。
 また、このプロジェクトを通じて、光・量子ビームの利用経験の少ない研究者が当該分野に参画し、研究等の裾野の拡大に貢献したと評価を頂いてございます。結果的に若手の人材育成にも寄与したということで、当該分野の研究開発の活性化が推進したということについて、有効性として評価を頂いたところでございます。
 また、産業界が学術と積極的に研究連携を図る、産学連携研究が非常に進みましたので、この成果を活用して、光・量子ビームの産業利用実用化にも貢献をしたということが有効性として挙げられています。
 効率性の観点について。9ページの下のところにございますが、プログラムの最初の設定段階で、目標の設定、進捗状況にかなり大きな幅がございましたので、それを総括POあるいはPOでコミュニケーションを密に行ってプロジェクト運営をしていただき、効率的な成果創出に貢献したと評価を頂いたところでございます。
 このプログラム実施期間中に、J-PARCのハドロン事故等のため、J-PARCが一時期使えないということもございましたが、これを海外施設で代替するといったようなことでもって、最大限、成果創出ができるように努めたということでございます。
 また、全9課題のうち1課題が、当初の目標を達成する見込みが難しいという途中結果がございましたので、3年度をめどに打切りをしました。それ自体は残念ではございますが、効率的な運用が行われたと評価を頂いたところでございます。
 10ページ目の総合評価のところは、今の説明と重複いたしますので、割愛させていただいて、11ページの今後の展望のところをごらんいただければと思います。このプログラムを通じた研究交流というのが促進いたしまして、研究者、技術者の養成に貢献するというのと、人材育成の観点でも貢献を果たしたと評価を頂いてございます。
 また、この成果が様々な研究分野に発展し、あるいは、本プログラムの成果を設備の高度化等に反映されたということ、又、その成果を他の研究開発課題に取り入れることができたということで、科学的・社会的なインパクトの創出に一定の役割を果たしたということを評価を頂いたところです。今後、この光・量子ビームの相互的・相補的な利用を更に進めて、成果創出をしていくことが期待されると評価いただいております。
 この事業の直接の後継課題は立ってございませんけれども、研究者、技術者の相互交流によりまして、一定の成果、進捗が図られたと御評価を頂いたものでございます。
 非常に駆け足で申し訳ございませんが、以上でございます。
【大森主査代理】  ありがとうございました。
 では、ただいまの御説明に対して、御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 もし特にございませんようでしたら、時間も押しておりますので、この光融合の事後評価結果について、御意見いただいておりませんけれども、主査代理扱いとさせていただき、事務局と相談して、適切に処理したいと思っておりますので、委員会としての案としたいと思います。よろしいでしょうか。
(「はい」の声あり)
【大森主査代理】  ありがとうございました。では、そのように示させていただきます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。ここからは進行をもう一度進めたいと思います。
 次は、議題(4)で、SPring-8、SACLAの中間評価についてです。まず、事務局から説明をお願いします。
【大榊補佐】  それでは、資料4に基づいて、御説明をさせていただきます。
 この大型放射光施設、SPring-8、SACLAの中間評価でございますが、今、この下の委員会でございます量子ビーム利用推進小委員会の方で計5回にわたって議論を進めてございまして、その素案を今お示ししたものでございます。
 こちらにつきましては、今、小委員会の方で評価をしておりますので、来週、もう一度委員会を開催し、評価結果を取りまとめるということになってございまして、その後に、先生方に改めて書面等で御審議をいただきたいと思ってございます、本日は、時間の関係もございますので、資料のみ配布させていただくにとどめさせていただければと思ってございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 今、事務局から説明がありましたけれども、これはこの委員会の下にある量子ビーム利用推進小委員会で、現地のサイトビジットも含めて何回かやって、議論というかエバリュエーションをやっているところです。
 ここの今日の資料4の特に16ページ以降の4の「今後の重点的な課題及び推進方策」、ここのところを今、委員会でかなり議論していまして、それが来週中ぐらいをめどに完成するという、現在進行形です。だから、今日この委員会では、こんな感じで事が進んでいますよという経過報告ということですので、非常に限られた時間での報告になります。
 ちなみに、この前の私が議論に入らなかったプログラムの評価についても、この下の委員会で一度議論されているということですので、一応そこは御確認というか、補足させていただきます。
 ということで、よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題、5番目の議題ですが、戦略プロポーザル「みんなの量子コンピュータ」についてということで、今日はJSTのCRDSが新たに発行したこの戦略プロポーザルについて、嶋田フェローより御発表を頂きます。15分程度、ちょっと時間が押しているので、ちょっと15分よりできればちょっと圧縮して御説明をお願いします。どうも、よろしくお願いします。
【嶋田フェロー】  よろしくお願いします。JSTから参りました嶋田と申します。いつもは名詞代わりに配っているんですけれども、こういう冊子が出ていまして、ウエブにも公開されていますので、中身については是非そちらをお読みいただければと思います。今日は、その概要をお話しさせていただこうと思います。
 CRDSというところは、JSTの中におりますけれども、文部科学省も含めて、政府のいろいろな機関に対して、研究開発の戦略であるとか、研究開発の推進方策をプロポーズしているというような組織でございまして、この量子コンピュータに関しても、昨年の2月ぐらいから調査を開始して、いろいろと世界の動向が結構目まぐるしく変わっていく中で、どこを中心に、特に技術面でどこがボトルネックになっていて、どういうところが大事かというのを、しかも、それをどう進めていったらいいかというのをまとめましたので、簡単に御紹介さしあげたいと思います。
 まず背景から御説明しますと、今、量子そのものが流行っているというのもあるんですけれども、コンピュータサイエンスの側では、実はこんなことが起きているというのを簡単に紹介させていただきます。
 コンピュータサイエンスのところは、実は今、応用のトレンドとして、このSociety 5.0であったり、SDGsだったりという非常に大きな枠組みでのアプリケーションがあるわけですけれども、その下のところで、やはり計算要求としてビッグデータ解析ができなければいけない、マシンラーニングが必要です、画像・メディア処理も必要です、組合せ最適化もあるでしょう、それから、暗号だったり、符号化というのもあるでしょうとなっているんですが、その基盤となっている半導体技術のところが今後10年、20年、このままの勢いでは伸びていけないでしょうと言われています。
 これらの計算を実行するための性能というのは、今のままフリーランチで半導体に期待することはなかなか難しいでしょうというわけで、この真ん中のところですね、デバイスだったり、システムであったり、計算の原理、これを革新していかないと、こういった計算要求に対応できませんよというふうになっています。その中の一つとして、非常に有望なものとして、量子計算というのが注目されているというように、コンピュータサイエンス側からは見えているのが現状です。
 一方の量子技術の方は今どういうフェーズにいるかというと、やはり量子状態や量子もつれをとにかく精密制御しないといけないというフェーズです。精密制御して、いろんなことに使いましょうよというところまで来ていて、特に量子センシング、量子暗号通信、量子コンピューティング、量子シミュレーションというのが非常にホットなトピックスになっていて、国ごとにその重みづけは違うと思いますけれども、出てくる単語としては、このような形になっているのかなと思います。
 ですので、量子コンピューターや量子センシングなど量子技術そのものではまだまだ社会からは遠いんですけれども、これを量子ICTとして使っていくと、さらに、今の半導体技術が我々の生活を支えているというのと同じぐらいの勢いで、我々の社会にとってインパクトがあるものになっていくのではというふうに見ているわけです。
 次のページは政策の動向です。これはかなり、恐らく今後、我が国の量子戦略を考えるところでもう少し具体的に調べることになるとは思いますけれども、アメリカ、欧州、イギリス、ドイツ、中国それぞれでやはり量子に重点を置くような戦略を取っていて、コンピューティングから、シミュレーション、コミュニケーション、それから、センシングと、いろいろ重み付けの違いはあれ、満遍なく政策文書の上で取り扱われており、極めて影響力のあるものです。世界で見て、この量子のところは政策側からも非常に注目されているというふうに見て取れると思います。
 「量子コンピュータ」という言葉は、調査開始した頃は、やはり一般の人、それに加えてコンピュータサイエンスの専門家も含めてですが、用語が混乱していて、今、IEEEの方でも標準化プロジェクトが行われていますけれども、一般に「量子コンピュータ」が表す意味がいろいろであることが分かりました。。
 ここでは、便宜上、この「エラー耐性量子コンピュータ」というのと、エラー耐性はないんだけれども、小規模で実機を伴う「NISQ」と呼ばれているNoisy Intermediate-Scale Quantumというものと、それから、ちょっと方式は違うんですけれども、超伝導量子ビットを使って計算を行うという意味で、「量子アニーラー」というのもこの枠組みの中に含めて考えましょうというわけです。
 次のページに挙げたのは、コンピュータが今どうなっているのかというのが結構分かりにくくて、こんな図をまとめています。これは今のコンピュータがどう動いているかをもとに、量子コンピュータがどう動くべきかということを考えながら、まだこのレイヤリングも完全に決まっているわけではないですけれども、どういう状況にあるかというのが非常に分かりやすいので、このようにまとめています。
 基本的には、頭の中で考えた解き方、アルゴリズムをプログラムとしてコーディングして、それをコンパイラ、アセンブラを介して、最後、マシンに落とすという、全体のフレームワークは現在のコンピュータと変わらないんですけれども、今やはり非常に注目されているのが、この上の論理のレベルでプログラムを結構いろいろ書けるようになってはきているというところです。
 ただ、まだまだ今のコンピュータにおける高級言語のような状況にはなってなくて、この「量子回路」を直接書かなければならなかったり、アニーラーであればイジングモデルのハミルトニアンを書き下して、それをハードウエアにマッピングできるようにしなければいけなかったり、まだまだやることはあって、今いろいろなソフトウエアディベロップメントキットというものがオープンソースであったりで出てきていますけれども、ここは非常に今、ユーザーから見ると、少し楽しい世界になっているかなと思います。こういうようなものでコーディングをして、いろいろなアルゴリズム、ないしは、プログラムを考えるというのが、産業面からは少し注目されていると思います。
 ただし、技術的に課題になっているボトルネックはもっと下のレイヤーの方です。先ほど来言っているように、量子状態や量子もつれの精密制御というところは非常にボトルネックになっていて、今、例えばクラウド経由でIBMの研究所にあるマシンを使って簡単な量子の実験みたいなことができますけれども、制御は向こう側でやっていますので、それはこちらからは見えない。しかし、そういうのをきちっと学理基盤としても日本でちゃんとやらないといけないという状況に来ていると思っています。
 量子コンピュータがハイプしている現状は皆さんよくニュース等でも御存じかと思いますが、結局使えるコンピュータを作るには、やはりコンピュータサイエンスであったり、エレクトリカルエンジニアリングの視点できちっといろんなことをやらないといけませんねというような時期にもう来ていると考えています。サイエンスばかりではなくて、工学、エンジニアリングの視点をきちっと入れてやっていかないと、うまくいきませんよというところに来ていて、海外では少しずつそのようなトピックスが注目されるようになってきているという現状です。
 この図は超伝導量子ビットとイオントラップについての単純な量子ビット数をプロットしたものです。図を読むときの注意として、この超伝導量子ビットは72ビットで止まっているんですけれども、これは発表されているだけで、動いたとは言ってないというものですので、注意が必要です。したがって、このトレンドをそのまま延長するのはまずいのですけれども、仮に延長するとなると、100ビットから1,000ビットのところを、今後10年、20年掛けてしっかりやっていかないといけないでしょうということになるわけです。
 このビット数というのは、Grover検索とかShorのアルゴリズムというのを実行するには、実行して有益な計算をするにはまだまだ足りないんですけれども、例えばスパコンでシミュレーションができるのはやっぱり50量子ビットとか100量子ビットぐらいまでなので、それが不可能な未知のところにはもうそろそろ到達するだろうと、物理現象としては到達するだろうというふうに見られています。今後10年、20年は、ここを何とかしないといけませんねという話に基本的にはなるでしょう。
 ですので、コンピュータ側から見ると、アルゴリズムとデバイスの間をもうすこししっかりつなぎましょう、という話になります。今はこのアルゴリズム、理論のところがかなりしっかりできて、非常にホットなトピックスになっていて、また、下のところのデバイス、量子ビットのデバイスのところはきっちりと研究が進められているんですけれども、その間にあるところが抜けていますよと。
 これは誤り耐性とNISQ、両方ともに言えることですけれども、制御から上のところやソフトウエアの辺りというのは全く抜けていますので、そこをきちっとつながないと、最終的にコンピュータ、システムとしてのコンピュータにはなりませんよというわけです。コンピュータを作りたいんであれば、やはりこういうところをしっかりやっていくべきではないのかという提案になっています。
 具体的な研究開発項目はこのレイヤリングに沿って3点上げていて、アルゴリズム関係の話、これは量子のアルゴリズムと古典のアルゴリズムというのは実はアルゴリズムの観点から見ると余り関係ない、量子か古典かというのはそんなに関係ないところなので、しっかりやりましょうよというのが一つ。
 もう一つは、そういうものを実行できるソフトウエアとして書き下すための基盤というのが必要でしょうということです。各種のツールであるとか、コンパイラ、デバッガ、それから、シミュレータですね。そのあたりがこのレイヤーに含まれるもので、きちんと作らないといけません。
 この一番下のところはもう少し長期的なテーマですけれども、やはり量子コンピュータがコンピュータとしてワークするには誤り訂正をどうにかして入れないといけません。入れるという意味は、これ、実はファームウエア的に、かなり制御のレイヤに近いところで動くので、いわゆる本当に量子ビットにタッチしながら研究できるようなことをきちっとしないといけない。それはもうハードウエアとソフトウエアという単純な分け方ではないとは思いますけれども、非常にハードウエアに近いところ、制御、回路、集積化のところでこういう研究開発をやらないといけないというふうに見ています。これは非常に長期的な課題になると思っています。
 こういうものは日本だけが抱えている問題ではありませんので、世界的に見てやらなければいけない研究のひとつです。とはいえ、やはり産業として何か重要なところを目指して、応用を見ながら進めていかないと、長続きしませんよねというので、今は量子化学計算や量子機械学習が非常に注目されていますけれども、我々のプロポーザルではそこだけではなくて、もう少し様々なものがありますよということを申し上げています。まだ、量子コンピュータがこれらの応用の役に立つという証拠はどれもありませんが、こういう方面にも使っていけたら良い、ということを考えているというわけです。
 進め方は、これは量子に限ったことではないんですけれども、やはり分野融合が非常に重要になってくる。コンピュータをフルスタックを作りきるためには、いろいろな知識、いろな人、いろいろな企業も含めて、必要になってきます。いろな技術が必要になってくるだろうということで、分野融合は非常に重要というわけです。
 また、一国でそれを集めるのは不可能ですので、国際連携というのも戦略的に行わないといけません。具体的にはやはりハブ拠点みたいなワークする拠点ができて、世界的にもそれが見えているという状況が極めて重要ではないかなと考えています。
 もう一つは、一国とか一つのプレーヤーだけで研究開発を進めるというのは難しいので、エコシステムの考え方をきちっと最初から考えながら進める必要があります。エコシステムを最初からデザインすることはできないですけれども、それを作っていくんだ、醸成していくんだという方向感を持ってきちっと進めてゆくというわけです。そのための、エコシステムを形成しやすくするようなインフラであったりプラットフォームを用意するという、共通施設的な考えや、それから、オープンソースをどう取り入れるかといったようなことが必要になってくると考えています。
 これだけだと、すごく施設的な意味でのハードウエア施策ですけれども、やはりそこで動く人というのが非常に重要になってきます。したがって、ここは米国が新しく出した量子戦略にも書かれていますが、教育と訓練が大事です。ここはきちっとやっていかないといけないかなというふうに見ています。
 非常に簡単ではありますけれども、以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の説明に対して、御質問、御意見等あれば、お願いいたします。どうぞ。
【上田委員】  今の、御提案、全くそのとおりだと思います。これらは全て推進することが喫緊の課題であるということも私はそのとおりだと思います。
 恐らくこういうハブとかいろんなものを作って推進することも必要だと思います。最も深刻な問題は、これらを、形が全てできたとして、推進する研究者の数が絶対的に足りないという点で、しかも、これらは既に現有の研究者にお金を投入しても解決しない問題です。ソフトウエアの部分なので、やはりPh.D.の学生ですね。非常に頭の軟らかいPh.D.の学生からポスドク級の人たちがむしろ分野転向して、こちらに人の流れを作るような仕組みができるかどうかですね、そういう若い人たちにとって魅力的な仕組みが大切だと思います。
 若い人たちは、自分のキャリアについて非常によく考えている。そこに行って将来が見通せないと、とても行けないですよね。そういう意味で、キャリアまで含めた仕組みが作れるかどうかがこれが成功するかどうかの一つのポイントになると思いました。
 以上です。
【早瀬委員】  すいません、今のと関連するのですけれども、やはり人材、新たな人材を投入するという意味もありますし、あるいは、最後から2ページ目のアプリケーション、どこにあるかというところを探索するということは非常に重要で、そういう意味では、研究、アカデミックの中で新規参入も重要ですけれども、やっぱり企業が参画するというところがすごく重要で、そこの仕組みを何か具体的に、どんどん企業の方が、今まで量子コンピュータそのものに余り興味がなかった企業の方がどんどん入ってくる仕組みというのが必要かなと思います。
 一つ例として、実は、御存じだと思うのですけど、慶應大学でこういった量子コンピュータのハブを作ってやっているのですけれども、実は、興味を持つ企業の方、すごく多いのですね。例えば、金融業界の方だったり、それこそ、これまで量子コンピュータの世界にいなかったような人材が興味を持ってどんどん参加の意思を示しているので、是非そういった仕組みを国レベルで進めていけるような方策があるといいかなというふうに思います。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 ほかに。はい、どうぞ。
【根本委員】  今、早瀬委員がおっしゃったように、企業はすごく興味を持っていて、今まで考えられなかったような事業形態の企業様たちがこれに結構興味を持っていらっしゃるのですね。ただ、やっぱり入ってくるというにはギャップがないとは言えない状況なので、やっぱりそこをうまく何か一緒にできる仕組み作りというのは必要だろう。
 あと、もう一つは、やはり日本においては、これまで物理であるとか電子工学であるとか、ハードウエアの研究者の方々が中心になってやってきた分野というふうになっていると思うのですけれども、海外ではそうではなくて、かなりコンピュータサイエンス分野の方々が活躍されているのですね。
 国立情報学研究所におりますと、コンピュータサイエンスの方々に囲まれているのですけれども、最近ちょっと日本でも量子情報に対する受け入れ方というのが変わってきているというふうに感じておりまして、大きく、興味を持つ人の数がまず圧倒的にこの数年で変わってきているのですね。
 ですから、なかなか人材不足であろうという心配はもちろんあるとは思うのですけれども、潜在的に興味を持ってやる気のある大学院生であるとか、ポスドクであるとかという方々というのはかなり相当数いるのじゃないかというふうに考えられまして、コンピュータサイエンスの中でも、学科の中でそれをきちんと取り込んでいこうというような動きも出てきていると思いますので、それらをうまく誘導できるような仕組み作りというのをやっていただければよいのではないかと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。はい、湯本委員。
【湯本委員】  今回このやつは問題提起という形だと思っているのですけれども、ここに最後にページに幾つかあって、多分今度はこれをブレークダウンして、アクションプランに落としてとか、そういう具体的な行動になってくるのですけれども、そこのところは逆にそこをどうやって流し込んでいくかというのが一番の課題なんじゃないかと思うのですけれども、そこは国全体として考えないといけないと思うのですけれども、どうなるのですか。
【嶋田フェロー】  すごく悩ましいですね。
【湯本委員】  だから、これ、量子に限らずということで、何か全体を見ていると、問題提起はするのだけれども、その後の具体的な行動につながっていかないという気がするのです。そこを落とし込まない限りは、何か絵に描いた餅でおしまいになっちゃうんじゃないかなという気がしています。
 すいません、答えがなくて。
【嶋田フェロー】  いえ、ご意見ありがとうございます。
【飯田委員】  よろしいでしょうか。教育のところで、いろいろと思うところがあります。まず、7ページの言語のところですね。最初は研究者が中心ということもありますし、高等教育機関、大学院、大学からスタートということもあると思います。たとえば、学術計算で使われるフォートラン(FORTRAN)とか、過去の古典コンピュータで培われた膨大な資産を持つ言語もありますが、この資産と量子コンピューター用の言語とを接続する取組も必要になってくると思います。中学、小学校など初等教育でもコンピュータ教育が始まっている昨今、ベーシックとか、そういったヒューマンフレンドリーな言語との接続も重要課題ですね。今すぐにというわけではないですけれども、将来的な課題として考えておく必要があるように思います。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。ちょっと時間が押してきていますけれども、特にということ。
 私から1点、その副題のところで、「情報・数理・電子工学と拓く新しい量子アプリ」、何かちょっと分かりにくいという、ちょっと時間がないので、言いたいことが何かちょっと、何か主語が何なのかという感じ。御検討ください。余り本質的なことじゃないので。
【嶋田フェロー】  はい。このご質問は本質的でして、非常に端的な回答は、「物理屋さんだけでやっていても、もうどうしようもないところには来ていますよ」という意図です。あえて物理という言葉を外しています。
【雨宮主査】  その主語が物理屋さんが主語だというのが分からないから。
【嶋田フェロー】  そうですね。
【雨宮主査】  何か量子コンピュータがこれこれで拓くアプリって、ちょっとおかしいなと思って。また、だから、そこ、これが拓くというふうにしてないところに何か含みがあるのだと思ったのですけど、それは物理学者だということを抜いているわけですね。
【嶋田フェロー】  そういう意味です。はい。
【雨宮主査】  ちょっとそこまでは読み切れないですね。
【嶋田フェロー】  すいません。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。
 ちょっと時間、大分オーバーしましたので、これで本日の議題を、議事を終了したいと思います。
 では、事務局の方から何か伝達事項等あれば、お願いします。
【廣瀬補佐】  ありがとうございます。
 第9期の量子科学技術委員会の開催に関しましては本日が最後となりますが、来週以降、今日説明のありましたSPring-8、SACLAの中間評価の書面審議がありますので、その際には御協力をお願いいたします。
 量子委員会の運営に御尽力いただきまして、委員の先生方におかれましては、誠にありがとうございました。今後とも文部科学省の量子科学技術に関する取組に関しまして、御協力よろしくお願いいたします。
 本日の資料ですけれども、郵送御希望の先生がいらっしゃいましたら、封筒の中に入れまして、机上に置いたままにしておいてください。また、不要な資料、ドッチファイルに関しましては、そのままにしていただければというふうに思っております。
 また、量子技術イノベーション戦略に関する机上配布資料は回収いたしますので、机上にそのまま置いておいてください。
 以上です。
【雨宮主査】  では、以上をもちまして、第18回の量子科学技術委員会を閉会といたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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