量子科学技術委員会(第9期~)(第17回) 議事録

1.日時

平成30年8月9日(木曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省 5階 5F1会議室

3.議題

  1. 量子科学技術について
  2. 最先端大型研究施設について
  3. 平成31年度概算要求に向けた重点課題の事前評価について(非公開)

4.出席者

委員

飯田委員、岩井委員、岩本委員、上田委員、雨宮委員、大森委員、城石委員、根本委員、早瀬委員

文部科学省

松尾科学技術・学術政策局長、勝野科学技術・学術政策総括官、上田科学技術・学術戦略官、渡邉研究開発基盤課長、西山研究開発基盤課量子研究推進室長、岸田研究開発基盤課課長補佐、廣瀬研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐、大榊研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

後藤吉正 国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事、島田義也 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 理事

5.議事録

【雨宮主査】  それでは定刻になりましたので、第17回の量子科学技術委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
 本日は9名の委員に御出席いただいております。平野委員、美濃島委員、湯本委員の3名は御欠席です。
 本日の議題は、議事次第のとおりです。
 本委員会の運営規則により、議題1から2までは公開とし、議題3については、概算要求に向けて検討中の事項を含むため、非公開という形で進めさせていただきたいと思います。
 まず事務局に異動があったということですので、御紹介をお願いいたします。
【廣瀬補佐】  事務局でございます。文部科学省におきまして異動がありましたので、紹介をさせていただきます。
 まず新しく着任いたしました科学技術・学術政策局長の松尾でございます。
【松尾局長】  松尾でございます。どうぞよろしくお願いします。7月27日付で着任いたしました。前職、審議官でございましたので、引き続きよろしくお願いします。
 また、今回、いろんな事案、事件でお騒がせしていますこと、本当に申し訳なく思っております。私ども一つずつ丁寧に仕事をしていくことが国民の信頼回復かと思っております。今日お集まりいただきまして、また御議論賜れればありがたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【廣瀬補佐】  研究開発基盤課長の渡邉でございます。
【渡邉課長】  渡邉でございます。私も7月末に着任いたしました。この分野、これから勉強すること、多数、多々あると思ってございます。何とぞよろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 それでは、事務局より配付資料の確認等、お願いします。
【廣瀬補佐】  事務局より資料の確認をさせていただきます。
 議事次第にございますように、本日は、資料1-1から資料4、また、参考資料を配付しております。
 また、机上には、いつもと同じようにドッジファイルに過去の資料を参考として置かせていただいております。会議の途中でも問題ございませんので、資料の不備等ございましたら、事務局まで御連絡を頂ければと思います。
 また、続いて、本日、議題1の中で御発表いただきます有識者を御紹介させていただきます。
 まず国立研究開発法人科学技術振興機構、後藤理事です。
【後藤理事】  後藤でございます。よろしくお願いいたします。
【廣瀬補佐】  次に、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、島田理事です。
【島田理事】  島田でございます。よろしくお願いいたします。
【廣瀬補佐】  本日はお忙しい中、お越しいただきまして、ありがとうございます。
 以上です。
【雨宮主査】  それでは、議題に入っていきます。
 議題(1)の量子科学技術について、そのマル1の量子科学技術に関する動向についてです。事務局より御説明お願いします。
【廣瀬補佐】  事務局より御説明いたします。資料1-1から1-3を用いまして、御説明をいたします。
 量子科学技術に関する動向といたしまして、2点御説明をしたいと思っております。
 1つ目は、来年度の概算要求に向けた政府の方針文書が6月に閣議決定をされましたので、それに関する御紹介と、これを踏まえた来年度の要求に関しまして、現在、検討している方針について御紹介させていただきたいと思っております。
 2つ目として、前回の量子科学技術委員会で量子科学技術に関する動向として御紹介をした事項のうち、CSTI、科学技術イノベーション総合会議の方で行っているSIPとPRISMという2つの事業に関しまして、内容等々が固まりましたので、御紹介をしたいと考えてございます。
 まず資料1-1をおめくりいただきまして1枚目になります。大型研究施設、次世代放射光施設から御説明をしていきたいと思っております。
 こちらに関しては、骨太の方針や、未来投資戦略、統合イノベーション戦略におきまして、まず、大型研究施設に関しては、最大限、産学官の共用を図ることなど、しっかりと整備、共用を進めていくということが位置付けられております。
 また、次世代放射光施設を念頭にし、民間投資の誘発効果が高い大型研究施設に関し、官民共同等の新たな仕組みで推進する。あと、未来投資戦略では、軟X線向け高輝度3GeV級の放射光源について、財源負担も含めた官民地域パートナーシップによって推進をするという位置付けをしていただいてございます。
 このような閣議決定文書等を踏まえまして、当省としては、まずはSPring-8、SACLA、J-PARCといった既存施設に関しては、既存施設を最大限有効活用していくという近年の公的資金の投資の考え方を基本とし、これらの3施設の能力を最大限発揮できるよう運用するための経費を来年度も着実に措置できるように要求をしていきたいというふうに考えてございます。
 次世代放射光施設に関しましては、議題3におきまして、事前評価を行いますので、その際に詳細の御説明をさせていただきたいと考えてございます。
 おめくりいただきまして、今度は光・量子技術に関する位置付けについてまとめた資料が、6枚目、7枚目にあります。こちらに関しては、例えば未来投資戦略2018におきまして、光・量子技術というのが社会・経済に破壊的なイノベーションをもたらすものとして世界で研究開発投資が拡大しており、産学連携を強化するための拠点の構築の推進など、戦略的な取組を推進して、生産性革命に貢献するとされております。また、統合イノベーション戦略におきましても、我が国が強みを有する光・量子基盤技術の国際協力、競争性を維持・向上するためにきちんと取り組むといったことが位置付けられております。
 また、おめくりいただきまして、7ページの自民党の報告書では、量子コンピュータ等の「日本の勝ち筋」に対してしっかりと集中投資をすべしということで、量子コンピュータに関し、一番下のポツになりますが、量子コンピュータ向けのソフトウェア開発の競争というのが世界で始まりつつあるので、きちんと量子コンピュータを使いこなすための人材育成を重点的に進め、日本発の量子コンピュータのソフトウェア市場の創出というのを目指していくべきだと指摘を頂いております。
 また、8ページ目は、量子科学技術の海外政府の動向についてまとめた資料です。これは昨年度の推進方策の際にも取りまとめをさせていただいた資料になりますが、この中で、2点だけ追記をしておりますので、御紹介をさせていただきます。具体的には、アメリカの取組状況、最後のポツになります。2019年度から5年間で13億ドル規模の投資を行うための法案が現在、連邦議会で議論されていると承知しております。こちらがまだ今後どうなっているのかというのは我々も注視したいと思っております。
 また、中国についてもなかなか情報がない中ではありますが、中国の「政府文書等における位置づけ」のところの一番下のポツになりますが、「量子情報科学国家実験室」といったものを合肥市に今、建設しているといった情報がございます。こちらは2020年に完成する予定ですが、第1期の投資額として、現在、日本円にして1,200億円の投資を決めたといった発表があるといったところでございます。
 これらの閣議決定文書、国内外の政策動向を踏まえまして、9ページになりますが、光・量子フラッグシッププログラムに関しましては、こちらの資料の右下に記載しておりますが、平成31年度の要求の方針としましては、まずは今、採択のプロセスを踏んでいる採択課題を着実に実施するための予算の確保をまずは行う。これに加え、新しいフラッグシッププロジェクトとして量子情報処理の技術領域の中に、量子コンピュータのソフトウェア開発に関するものというのを新たに付け加えることができないか現在検討している状況です。
 続きまして、2番目のCSTIの事業に関する動向につきまして、簡単に御説明をさせていただきます。
 まず資料1-2、こちらは戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に関してです。SIPは、3頁目にプログラムの概要がございますが、総合科学技術・イノベーション会議が府省連携によって分野横断的な取組を産学連携で推進するプログラムになっております。CSTI自らが予算配分をすることで、CSTIの司令塔の機能を強化するといったものになってございます。
 現在、5ページにある通り、平成25年度から第1期の課題が行われておりまして、こちらは平成30年度で終わる予定となっております。
 第2期に関しまして、2月の量子委員会でも御説明をしましたが、6ページ目にありますとおり、当初計画では、来年度からの開始でございましたが、平成30年度から開始すべく、補正予算の措置が行われてございます。ここまでが、前回の量子委員会で御説明をしたものになります。具体的にどのような課題を実施するかについては、その時はまだ不明でした。ただ、3月にCSTIの本会議で課題が決定し、今回は新しく12課題が行われる予定です。光・量子の関係では、右の列の上から3番目の「光・量子を活用したSosiety5.0実現化技術」が選ばれました。東芝で特別嘱託をされている西田直人さんをPDとして、光・量子の基盤技術の研究開発を新しく第2期から開始するということになりました。
 予算額については、9ページに記載されている通り、25億円が今年度措置されています。SIPは研究マネジメントや資金の管理など、PDの補佐する管理法人が課題ごとに指定されており、光・量子の課題は、QSTにお願いすることになっております。
 時間がないので、中身については簡単に御紹介をします。光・量子基盤技術は、Sosiety5.0を実現する上で極めて重要な技術であり、官民共通のボトルネックとなっているものに関し、レーザ加工、量子通信、光電子情報処理を用いて解決していこうといったプログラムになっております。
 本課題の研究開発計画は、8月5日までパブリックコメントを実施しておりました。研究開発計画に関しては、CSTIの方で、今後、正式な決定が行われるという予定になっていると伺っております。
 資料1-3を御覧ください。もう一つ、研究開発投資拡大プログラム(PRISM)といったものがございます。こちらは1ページを御覧ください。PRISMは、SIPと二本立ての施策として、今年度から新たに開始をするプログラムになってございます。こちらは民間研究開発投資誘発効果の高い領域、高い研究課題を、各省が行うように施策を誘導することや、SIP型マネジメント、これはPDのリーダーシップの下、研究開発を行うものですが、これを各府省の施策に展開することを目的に行われているものです。Q-LEAPは、このPRISMのフィジカル空間基盤技術領域、図の右下に3つ、サイバー、フィジカル、インフラとありますが、この真ん中のフィジカル空間基盤技術の施策として登録をされています。
 PRISMは登録された施策に関して、CSTIとして民間投資誘発効果が高いと判断したものに関して、CSTI側から予算を移し替えして、アドオンで配分するといった形になっており、先日、その追加配分に関して決定がなされました。
 今年度の追加配分は、研究開発については、戦略的な研究開発、技術開発として、製造・建設現場、防災・減災、農業、健康/医療・介護の4つが指定されています。Q-LEAPはこの中の健康/医療・介護のカテゴリに入っております。
 また、人材基盤の確立としまして、人材育成に関しても追加配分がなされます。
 具体的には4ページになります。3-2の右下になるんですけれども、健康/医療・介護の中に文部科学省のQ-LEAPに関しましては、一番右側の下から2番目の章になりますけれども、「創薬ターゲットの探索のための量子コンピュータ・ソフトウェア開発等」という形で、追加配分を頂くことになってございます。
 金額は、6ページ目の、サイバー空間基盤技術/フィジカル空間基盤技術の56億の中の下から2番目、3.6億強の追加配分がQ-LEAPになされるとなってございます。
 こちらに関しましては、ソフトウェア開発のみではなくて、こちらに「等」と書いてあるんですけれども、量子計測センシングの関連も入っております。
 また、当省の施策ではございませんが、量子コンピュータ関係で、5ページ目にある、経産省が行っている情報処理推進機構(IPA)が未踏事業という事業がございます。未踏事業では、今年度から量子アニーリングに関する事業を早稲田大学の田中先生の下で開始しているんですけれども、今回、このPRISMの経費を用い、アニーリングの領域に関して拡充をするとともに、ゲート型の量子コンピュータに関して、藤井先生、山本先生の下で新たな取組を開始するといったものがございます。
 すいません。駆け足になりましたが、以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。資料1-1、資料1-2、資料1-3と3つのことを御説明いただきました。何か御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。順番はどの順番でも構いません。最初の動向のところ、それから、SIP、PRISMと盛りだくさんだったと思いますが、いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【上田委員】  最後の部分を、聞き逃したんですが、ゲート型はどういうふうにしていくんですか。量子コンピュータについてです。
【廣瀬補佐】  Q-LEAP。
【上田委員】  一番最後におっしゃったことです。
【廣瀬補佐】  経済産業省が行っている取組の資料1-3の5の。
【上田委員】  1-3の5ですか。
【廣瀬補佐】  はい。経済産業省の所管法人の情報処理推進機構で、未踏ターゲット事業を行っています。これは、通常の場合、大学院生や大学生を対象に、優れた学生さんを集めて、例えばプログラムをみんなで期間限定で作って競わすといった事業です。今年度は新しく量子アニーリングのものが開始されております。
 今回、このPRISMの経費を用いまして、ゲート型の量子コンピュータのソフトウェア開発に関して、半年間という短い期間ではあるんですけれども、ソフトウェア開発に興味のある院生や若手の研究者を集め、ソフトウェア開発を短期間で習得して何か試せるプログラムを作っていく取組を開始すると聞いています。
【上田委員】  それは誰がヘッドでやるんですか。
【廣瀬補佐】  藤井先生と山本先生と、慶應と京大の先生、お2人がヘッドです。現在、公募が開始されたと伺っております。
【西山室長】  山本さんは慶應義塾大学の先生で、コヒーレント・イジングマシンの方ではありません。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【上田委員】  もう一ついいですか。一つ欠けている視点があるかなと思ったことがあります。今、人工知能関係は非常にたくさんの資金が投入されて、センターもできまして、研究開発もされていますけれども、世界的な動向を見ますと、今後重要なことは単なるAIだけではなくて、AIとハード面との融合なんですね。プログラミングはできても、マシンが理解できないとだめなんですね。逆に、マシンができてもプログラミングができないと大きな利益に結び付かないんですね。
 ここら辺については何か仕組みがありますか。かなり早くやらないと追い付かない可能性があるんですけれども、逆にここは日本が強くなれる領域の一つなんですね。
【廣瀬補佐】  すいません。量子コンピュータではなく、今のAIPセンター等々で何をされているかというのは、私の方では把握ができておりませんので確認をし、後程、先生の方に御連絡をいたします。
【上田委員】  そうですね。計算機資源、それはいいんですけれども、本当は重要なのは、ハードとソフトのインテグレーションなんですね。そこは人材を戦略的に育成しないと、アカデミアは学問領域が分離されているのでそのような人材が育ちにくいんですね。分かりました。
【廣瀬補佐】  はい。ありがとうございます。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。じゃ、次へ進みたいと思います。議題のマル2で、科学技術振興機構における量子科学技術に関する取組についてに入ります。
 JSTが実施している量子科学技術に関する取組として、戦略的創造研究推進事業や量子技術動向の調査・分析状況などについて、本日は、科学技術振興機構の後藤理事より御発表を頂きます。15分程度で御発表いただいた後、10分程度、質疑を設けたいと思います。
 それでは、後藤理事、よろしくお願いいたします。
【後藤理事】  では、後藤の方から、私どもJSTにおける量子科学技術に関する御説明をさせていただきます。
 次のスライドをお願いします。私どもJSTとしても、この量子科学技術の研究を非常に重要と認識しておりまして、今日は取組の概況を御説明させていただきたいと思います。
 それで、私どもの事業としては、戦略的創造事業の中のさきがけ、CREST、ERATO、それから、未来社会創造事業の大規模プロジェクト型でやっています。ること。それから、技術外交。それから、動向調査等について、この順で御説明させていただきます。
 戦略創造事業のさきがけ、CRESTでやっている光・量子技術の戦略目標と研究領域の全体像をここに書いたものでございます。光関係、それから、量子制御・技術関係に関するもの。それから、生体に関するもの。それから、トポロジカル材料に関するものをやっております。今年度からのこのトポロジカル材料の採択が始まりました。それ以外は従来から実施しているというものでございます。
 戦略目標が立つと、さきがけとCRESTが普通、ペアになるんですが、この量子生体だけはまだ新興領域、挑戦的な領域だということがあって、CRESTは少し待とうということで、さきがけだけがやっています。
 さきがけについて、先ほどお話ししたこの4つの領域についてやっております。光極限と我々が呼んでいる領域ですが、光の極限制御・積極利用と新分野開拓ということで、植田先生の総括で行っています。
 それから、量子機能については、伊藤先生の下でやってもらっております。
 量子生体、それから、量子技術を適用した生命科学の基礎の創出。これはセンシング等で量子技術を使って、新しい知見を得る。それから、生命科学との融合を図っていこうということです。
 それから、トポロジカル材料は、さきがけについては村上先生の総括で始めております。トポロジカル材料を使って、最終的にはデバイスまで持ち込もうということで、さきがけの方は挑戦的なことに取り組もうということでやっております。
 次、お願いします。それで、さきがけの光極限の領域の、これは今までに採択した課題のポートフォリオでございます。こちらが走査、制御、計測、光源というふうに領域的な軸とこちらをどこに使うかというところで分類しております。大体ほぼ全体的な領域をカバーしているというふうに考えています。
 次、お願いします。それから、さきがけの量子機能のポートフォリオでございます。これらのポートフォリオは書式がそれぞれ違うんですが、それぞれの研究総括の方の個性が出ておりますので、今日は総括の御意向を尊重してそのまま持ってきております。御理解ください。
 こちらも伊藤先生の下で、量子計算、量子計測、量子通信など全般的な領域で進めさせていただいております。
 量子生体の方でございます。こちらは先ほど御説明いたしましたが、新しい分野ということなので、さきがけだけで実施しているということです。生体のセンシングですとかいろんな広い分野で始まっております。
 次、お願いします。それから、次はCRESTでございます。CRESTは、光は次世代フォトニクス、それから、量子技術、トポロジーということで進めさせていただいております。
 次世代フォトニクスは、新たな光機能や光物性の発現・利活用を基礎とする次世代フォトニクスの基盤技術を作ろうということで、北山先生の下で進めさせていただいております。
 それから、量子技術は、量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出ということで、荒川先生の下で進めさせていただいております。
 トポロジカル材料については、今日も来てらっしゃっている上田先生のイニシアチブの下で、今年から始めさせていただいているということで、ここにありますようなMooreの法則の限界を打破するようなデバイスを作っていこうということで、これも挑戦的な領域かと思っております。私も大変注目しております。
 次、お願いします。それで、次世代フォトニクスの、これも研究総括による採択した課題のポートフォリオでございます。この中で、今日は、2015年から始まっておりまして、15年、16年、17年と採択しておりまして、この色分けがこの採択の年度でございます。今日はその中でこの2つの課題が成果が出ておりますので、御紹介をさせていただこうかと思います。
 次、お願いします。これは大規模な量子コンピュータを実現する手法を、古澤先生のチームで新たに発明されたものでございます。専門的なことは私もよく分かりませんが、このような光ループを作ることによって、最大100万量子ビットを実現することが可能だというものでございまして、現在は、こういうような実験室で大規模に500万以上のミラーやレンズを配置して作っておりますが、すでに回路の一部をチップに置き換える実験に成功したということでございます。もし装置全体をチップ化し小型化できれば、かなり革新的な成果が期待できるのではないかと考えております。
 次、お願いします。それからもう一つは、細胞のイメージングの新しいメカニズムを検証ということで、ここにありますように、蛍光たんぱく質の技術を駆使して、Mg2プラスの濃度の変化を高感度で感知できる蛍光センサーを開発ということでございます。これも新しい展開が期待できると考えております。
 それから次は量子技術でございます。こちらも28年、29年で採択した課題のポートフォリオをお示ししております。このようにマトリックスで書くと、広い範囲をカバーしているんだなと思います。荒川先生は、基礎的な研究を重視しながら社会実装も意識して研究を進めていただいておりまして、あるいは国際交流も意識して進めていただいております。
 その中で、この樽茶先生のスピン回路を使った研究が特徴的ですので、御紹介したいと思います。
 次、お願いします。こ量子ビットをどうやって実現するかというのはいろんな手法がございますが、釈迦に説法でございますが、これはシリコンを使って実現しようと。ここにありますように、同位体制御法。シリコンは同位体がたくさんあって、その中の一つの同位体に限って素子を作るとこの量子ビットが実現可能だということで、それを同位体制御法と言いますが、その方法を使ってこの量子ビットを作ったというものでございます。釈迦に説法でございますが、演算速度が速い方がいいには、敏感な方が有利ですけれども、そうすると、外部環境に敏感になって、保持時間が短くなる。これの両立がなかなか難しいんですけれども、このシリコンを使うことによって有利になるということでございまして、1,000倍の演算精度を実現するということでございます。
 次、お願いします。マップ上に書きますと、こちら側の量子情報の保持時間、こちらが操作速度ということで、ほかのものに比べて有利なところに来ているということでございます。
 次、お願いします。以上がCRESTとさきがけでございますが、戦略創造事業の中にはもう一つ大きなプログラムがございまして、ERATOでございます。こちらは採択件数は少ないのでございますが、大きな資金を投入して、リーダーの方、研究総括の方に思い切った研究をやっていただこうというものでございます。
 今、光・量子関係では4つ動いておりまして、光周波数コム、それから、スピン量子整流、それから、位相イメージング、超電導電子回路というふうに領域名を呼んでいるものでございます。
 この光周波数コムというのは、レーザー光の「光コム」を使って非常に高精度な計測が短時間でできるということを実現していただいております。
 それから、今日は、齊藤先生のスピン量子整流について、詳細にまた御説明しますが、具体的には例えば熱電素子を使って従来よりはるかに性能の高い発電を実現しているといったものであります。
 こちらの方はイメージング、それから、最後がゲート方式による量子コンピュータですね。東大の中村先生を総括にして進めさせていただいております。
 次、お願いします。これが東大に移られた齊藤先生のスピン量子整流プロジェクトでございます。スピンの量子力学的な整流作用を利用して、新しいエネルギー源を作っていこうというものでございます。
 このスピンゼーベック熱電変換素子というのを作りまして、従来より安価で高性能な強磁性合金を開発して、「異常ネルンスト効果」と呼ばれるような熱電効果を「スピンゼーベック効果」と併用して、熱伝変換率を大きく向上させております。これはSociety5.0で必要となりますような分散されたセンサの電源に使っていくといったことで期待されています。
 次、お願いします。このような成果の展開が期待できるというものでございます。
 次に、戦略創造事業とはまた別に、一昨年から始まりました未来社会創造事業というのがございまして、この中に大規模プロジェクト型というのを進めております。こちらの方は、文部科学省の方で技術テーマを決定いただいて、それに基づいて進めているというものでございます。これは一昨年、レーザープラズマ加速、それから、量子慣性センサー、これはもう採択しました。この時間計測というのは今、公募中でございまして、すでに公募自体はは締め切られており、これから審査が始まるというものでございます。
 レーザープラズマ加速といいますのは、従来の性能を超えるようなレーザーを使ってプラズマ加速をしていこうというものでございます。
 この未来社会創造事業の特徴といたしまして、基礎研究から始めたとしても、産業化のめどが確認できる概念検証、POCまで進めていこうということで進めております。
 量子慣性センサーの方は、ここにありますように、量子効果を用いまして、超高性能の角速度センサーを作っていこうというものでございます。
 次、お願いします。それから、海外との交流技術外交について御説明させていただきたいと思います。
 これは欧州のQT Flagshipのプロジェクトでございまして、これ自身は先ほど御説明あったところでございますが、その中で、国際的な基礎研究を進めるということを進めておりますが、そこと我々は連動していこうということでございます。
 次、お願いします。私ども、3つ大きな取組をしております。1つは、先ほど御紹介したCRESTの荒川領域がフランスのANRと共同公募しようということで、今、調整を進めておるところでございます。
 ANRも、ほかの研究テーマでも日本との共同研究、非常に熱心で、今回はこの量子技術をやっていこうということでございます。
 それからもう一つが、私どもの国際事業のSICORPでございますが、このSICORPの事業を使って、ドイツと「オプティクス・フォトニクス」の国際産学連携共同研究を進めております。
 具体的テーマはこういったものでございます。
 それから、この一番上のCRESTの荒川先生のフランスとの取組などをベースに、文科省のイニシアチブで、一番下にありますけれども、日本とEUのワークショップを開く段取りが付いておりまして、来月の3日、4日にパリで開催する予定でございます。テーマが、「Advanced Quantum Technology for Future Innovation」ということで、非常に魅力的なワークショップを開催しようとしているところでございます。
 次、お願いします。それから、最後に、この量子技術の調査・分析でございます。私どもJSTの中にあります研究開発戦略センサー、CRDSがこの量子技術についても調査を精力的に進めております。今までにこの分野の戦略プロポーザルとして、ここにありますような2つの提案を既に出して、最後の下の方は、今年の秋に出そうということでまとめを急いでいるところであります。
 29年3月に出させていただいた「トポロジカル量子戦略~量子力学の新展開がもたらすデバイスイノベーション~」というもの。それから、今年の3月に出させていただいた「革新的コンピューティング~計算ドメイン志向による基盤技術の創出~」ということで、この中、これはもう少し広い範囲でのコンピューティングを取り上げていますが、この中で量子コンピュータを取り上げているということです。
 最後のこれは今、準備中ですが、これは量子にも少しフォーカスして、単なる基礎研究だけじゃなくて、どのように使うかといったような観点も含めた御提案をさせていただこうということで、今、準備をしておるところでございます。
 最後に、決意というわけではございませんが、もう釈迦に説法でございますが、量子技術、理論もどんどん進んでおりますが、使えるものに仕上がっているものもどんどん出てきておりますので、工学的挑戦も踏まえてやっていきたいなと。
 それから、2番目、プラットフォーマーを目指して。これはなかなか難しゅうございますけれども、多くの方が基礎的な研究の成果を使って、応用も考えていただくことも目指していかないといけないんじゃないかということも考えながら取り組んでいる次第でございます。またいろいろ御指導頂ければと思います。
 以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございます。それでは、ただいま頂いた資料1-4に関して、何か御質問、御意見等ありましたらお願いします。はい、どうぞ。
【岩本委員】  東大の岩本です。どうもありがとうございました。戦略目標等も大変分かりやすく教えていただいたわけですけれども、一部のものが新しく始まっておりますが、光と量子について、もちろん領域は続いているわけですが、公募としては本年度で終わりということだと思います。既に光は終わっているかもしれませんけれども、一方では、継続的な研究開発というのも重要だと思いますが、そのあたりについて、最後、動向の話が少しありましたけれども、その辺も含めた戦略、これは後藤さんにお伺いすることじゃないのかもしれませんけれども、JSTとしてもやはりお考えでしょうか。
【後藤理事】  なかなか厳しい御質問頂いて、あれですけれども、必ずしも今やっているわけでは……。まず先ほど荒川領域の例で御説明させていただきましたように、国際交流をやっていって、少ない資源をできるだけ有効に使っていくということを更に心掛けていきたいなというふうに思っております。
 それから、私ども基礎研究をやるのが主軸ですけれども、社会実装も踏まえた上で、では、既にあるテクノロジーを、これを使うとうまくいくみたいなことを主に考えて進めていきたいなと思っております。
 それから、更に進んで、ここが御質問の点かと思いますけれども、いろんな領域に走っておりますので、場合によっては、その領域間の成果を活用し合うとか、そういったこともこれから求められてくるかなと思いますので、新しい研究動向とか技術動向を踏まえながら、そういったことにも少し考えていきたいなと。
 私どもJST全体としては、領域の中での研究交流は非常に開発に従来からやっているんですけれども、ここまでいろんな進展をしてくると、やっぱり領域を超えた交流も必要かなと思います。これからそういうことも取り入れていかないといけないなという議論をしているところですので、是非やっていきたいなと。
【岩本委員】  それによってまた創発的なことが起こるみたいな。
【後藤理事】  そうですね。
【岩本委員】  はい。ありがとうございました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【城石委員】  よろしいですか。決意ということで、工学的挑戦ということで書いていただいて、非常に産業界としてはありがたく思います。質問ですが、社会課題に、科学と技術というのをどうやって落とし込んでいくか、あるいは人文系の議論などを含めていかないと、本当に社会課題と科学、あるいは工学というのがうまく結び付かないんじゃないかというような懸念もあるように思います。その辺をどういうようにやっていけばよいのか、何かその辺も教えていただけないでしょうか。
【後藤理事】  工学的挑戦と言ってしまいましたが、なかなかやるのは難しくて、できているわけじゃありませんけれども、ただ、既に研究総括の中には、実際に社会・産業イノベーションを牽引するテクノロジーの上に乗っけていくものとか、新しい源流の創出に乗っけるものというので考えていただいておりますので、比較的短期間に使えそうなものと、それから、長期間にじっくりやるものをやっぱりフェーズの違いを見極めながら、それから、産業界に対しても、これは使えそうだぞとかそういう発信をやっぱりもっとやらないといけないのかなというふうに思っております。
 欧州なんかの動きを見ていて、私が感じるのは、やはり多分、社会、納税者というか、産業界にアピールするためだと思うんですけれども、超スマート社会になると、データ量だとか処理量が増える。そうすると、既存のコンピュータではだめだ。だから、量子コンピュータが必要だとかですね。そういう訴求をしているように見えるんですけれども、そのあたりの説明をもっとやっていくことが必要かなと。まだ個人的な見解でございますが、思っているところでございます。
【城石委員】  ありがとうございます。その辺の方法論みたいなのがもう少し深く掘り下げないと、一般の国民の方も含めてなかなか御理解いただけないし、うまく動けないかなと思っていました。是非御指導よろしくお願いします。
【雨宮主査】  ほかに。根本委員。
【根本委員】  JSTの戦略目標についてはとても分かりやすい説明で、こういったものが現在集中的にやっていく必要があるというのはよく分かるんですけれども、実際に実施するという段階において、これは非常にまだまだクローズドなイメージというのがやっぱり皆さんあると。平たく言えば、聞こえてくる話としては、いつも同じ人になっているというような声もたくさん聞こえてきているので、あと、外国人ですね。なかなか応募しにくい。面接のときに日本語でプレゼンを求められるというような、やはりなかなか開かれた、分野全体を活性化していくような施策にはまだまだなっていないのかなというところ、難しいとは思うんですけれども、JSTが取り組んでいただくものとしては重要なんじゃないかなということがあるかと思います。
 それとあと、先ほど国際ということで、これは日-EUワークショップというのを挙げられていたと思うんですけど、これがなかなかEUの人からも、これは一体何ぞやという質問が私のところにも結構来ているんですね。これは一体何をするものなんだということで、私の方も全然情報がないので、いや、よく分からないという答えになっているんですけれども、もうちょっと分かりやすいといいますか、情報発信として分かりやすくしていただかないと、向こうは何を期待されて、日本がどういった期待感を持ってこれをやっているのかということが全然伝わってないのかなという気がいたしますので、この辺も施策としてはとても考えられているんだと思うんですけれども、どうやるのかといった、それを実施する場合にもうちょっと考えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【後藤理事】  はい。よく分かりました。最後の国際的コラボレーションをするとき、もっと分かりやすくということでございます。それもずんとこたえましたので。はい。海外のファンディングエージェンシーとコラボレーションは、なかなか進んでないんですね。いろんな国の制度上の問題とかあるんですけれども、我々はできるだけ、できるところから始めようということで、最近は海外の方のエージェンシーも日本との共同研究、非常に熱心で、例えばANRとか、例えばイギリスも非常に熱心なんですね。このファンディングエージェンシーのトップともいろいろなところで会って話をするんですけれども、そこには国際共同研究に熱心な動向になってきますので、それをうまく使ってやっていきたいというふうに思います。
 その流れの中で何をやっているんだということの発信を、量研室の御指導も頂きながら進めていきたいと思います。
【雨宮主査】  今のことに関しては。
【西山室長】  国際的な量子科学技術の関係の協力。我々は量子技術外交と言っているんですけれども、そこら辺の関係も後ほど議題がございますので、その関係で日-EUワークショップの関係の発言もあると思いますので、そこで御紹介させていただきたいと。
【雨宮主査】  飯田委員。
【飯田委員】  量子生体の戦略目標に関連してなんですけれども、特に今、健康長寿、健康寿命の延伸ということで、ヘルスケア、ポイントケアなどが国際的にも非常に重要な課題となっています。現在、量子生体はさきがけだけが走っているということですが、CRESTや少し別の枠組みで細胞工学や薬学も含む広い意味での生命科学の分野の研究者とのコラボレーションを自己組織的に誘発するしかけも今後必要になってくると思っております。そのあたりに関してお考えをお聞かせいただければ幸いです。
【後藤理事】  従来のCRESTというのは、いきなりドンと大きなお金を付けて始めるというパターンで、今まではそれで大体うまくいったんですけれども、御指摘のように、もう少し早い段階から、早い段階というのはやってみないと分からないけど、着手しなくちゃという段階のものを始めなくてはいけないなというのは非常に最近多くなってきています。そのあたりをどういうふうな運営形態でやっていくかということについて、例えばCRESTの中でもスモールスタートで始めるというのを一部の領域でやったりしております。今回の場合は、さきがけだけにしたのは、さきがけの若い研究者を対象に挑戦的なことをやっていただこうということで、先にフォーカスしたわけですけれども、そういう全体として、そういう挑戦的なというか、新しい研究領域に踏み込む手法をどうしたらいいかというのは、文科省さんともいろいろと御相談しているところですので、もう少し改善というか、開拓していきたいと思っております。
【飯田委員】  最近、ヨーロッパでも、デンマークのニールスボーア研究所などで生体の光制御にも力を入れ始めていまして、我々のLAC-SYS研究所でも別のアプローチで生体の光制御はかなり進めていますが、やはり日本として早め早めに手を打っていかないと、世界に遅れをとることが懸念されますので、是非よろしくお願いいたします。
【後藤理事】  はい。承知いたしました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。それでは、議題のマル3、量子生命科学に関する量子科学技術研究開発機構の取組についてに入ります。
 QSTが実施している量子生命科学に関する取組について、本日は、QSTの島田理事より御発表を頂きます。15分程度御発表いただいた後に、10分程度の質疑を設けたいと思います。それでは、島田理事、お願いします。
【島田理事】  先生、10分程度のプレゼンで、15分の質問と聞いたので。
【雨宮主査】  ああ、そうですか。
【島田理事】  まあ、適当に。すいません。
【雨宮主査】  じゃ、それで。
【島田理事】  量研、QST理事の島田です。本日はQSTの量子生命科学に関する我々が現在準備していることと、今後の計画について紹介させていただける機会を頂き、大変感謝申し上げます。
 実は私の専門は生物学で、物理・工学とか、特に量子力学に関して全くの素人でありますが、量子科学の専門家の皆様方にお話を聞いていただき、我々の計画を改善できるチャンスと思い、今日は参りました。
 では、スライドをお願いします。素人なりの理解では、物理学は、マクロの世界を説明するニュートン力学の法則から、量子力学へのパラダイムシフトをいたしました。すなわち、マクロの世界の物理法則がミクロの世界では当てはまりません。量子、ここでは光や原子を構成する電子のふるまいといたしますが、粒でもあり、波でもあるという二重性や、重ね合わせ、コヒーレンス、トンネル効果、量子もつれなどの、現世界での直感では理解しにくいことが起こっているということです。
 次、お願いします。生物学もマクロからミクロへと研究が進み、リンネによる生物個体の分類に始まり、ダーウィンの進化論やメンデルの遺伝の研究、また、ワトソン、クリックによる遺伝情報の本体は、DNAという分子であるという発見、そして、個体発生の神経、免疫、内分泌などの生命現象や、ヒトのがんをはじめとする病気の成り立ちを分子の言葉で説明する分子生物学が今、花盛りです。
 次、お願いします。しかし、分子の機能が一体どのようなメカニズムで発揮されているのかというのは、現在においても未解決です。そういう点で、量子のふるまいを知るということが必要であるというふうに言われています。
 併せて、近年、量子科学技術が発展し、それを用いて、新しい生命現象を解明する動きがあります。ここでは、量子力学と量子科学技術を生物学に応用して研究する分野を量子生命科学というふうに呼びたいと思います。
 次、お願いします。QSTは、2年前に放射線医学総合研究所と日本原子力研究開発機構の量子ビーム部門、核融合部門が統合して設立されました。強みは、放射線生物学、構造生物学に加え、量子科学技術、量子ビームや量子センサーなどの専門家がいるということです。
 統合して、研究所に量子という冠をかぶりましたので、量子生物学を取り入れて、「量子目線」で分子機能を追究し、生命の根本的理解に迫りたいと考えております。全くのゼロからのスタートですが、生命の新たな理解に迫る、そういうチャレンジを行いたいと考えています。
 最先端の量子科学技術による生命科学研究の革新、それから、生命現象の量子論的説明への挑戦、それを医学・医療へ応用したいという、この三本柱で今、計画を立てているところであります。
 次、お願いします。統合後、QSTは、QST内外に幾つかの試みをいたしました。まずQST内におきましては、拠点の壁を取り除き、拠点横断的に量子生命に関する「未来ラボ」という、バーチャルな研究ラボを2つ作り、また、国際オープンラボを1つ設置し、更に来年はこれらを統合して、量子生命科学領域という拠点横断的な組織を設置すべく、準備を始めています。
 また、QST外におきましては、初年度に量子生命科学研究会というものを立ち上げました。我々だけではこの分野を牽引できないということは理解しており、オールジャパンのプラットフォーマーを構築する必要があるということで、大学の先生とともにこの研究会を立ち上げたわけであります。
 1回目は初年度に130名の研究者に参加していただき、2年目におきましては、その倍の研究者が参加してくれることになり、この分野への関心の高さを実感いたしました。
 また、昨年は、国際シンポジウムも行いましたし、来年、2回目の量子生命科学に関する国際シンポジウムも行って、世界中の当分野の研究者との交流や情報交換を促進したいというふうに考えております。
 さて、ここで、QSTが行っている、若しくは計画している量子生命科学研究の一部を御紹介いたします。全ての生物は、光合成・呼吸で生じる電子の流れからエネルギーを産生しています。これが生物のエネルギー産生の基本であります。
 これは電子の流れですから、電子のふるまいによる量子効果について、電子伝達系の中心的な蛋白であるシトクロームcに焦点を当て、今後、フェムト秒レーザーなどを用いて研究を進めていく予定であります。
 また、生体の化学反応の主役は、たんぱく質である酵素であります。活性中心で電子のやりとりを行って、例えば量子トンネル効果によって触媒反応が進むわけですけれども、たんぱくの構造というのはカチッとしたデジタルなものではなくて、細胞の中ではやわらかいフレキシブルな構造をしています。
 そこで、このたんぱく構造を更に複数の手段、ここでは小角散乱や準弾性散乱を従来のX線・中性子線回析に加えて、たんぱく質の機能と関連させた構造解析を進めていきたいと考えています。
 次、お願いします。さて、生物の特徴といたしましては、進化があります。生物の進化のドライビング・フォースや、ヒトのがんや遺伝病の原因は、DNAの突然変異であります。シュレディンガーは、今から70年以上も前の、まだ遺伝の本体であるDNAの構造が分かる以前から、この『生命とは何か』という著書の中で突然変異に多くのページを割いています。彼の予言どおり、自然の突然変異は、二重らせん構造を作るDNAの塩基の水素原子のトンネル効果によって起こるということが分かりました。
 また、紫外線は、突然変異を高率に誘発する変異原でありますけれども、紫外線による塩基損傷が、青色の光を利用した光回復酵素によって修復されることも明らかになってきています。
 次は、X線などの電離放射線であります。これは現在、医療においてもヒトの被曝の線源としては非常に多いものでありますけれども、突然変異は二本鎖切断であるということが分かっています。更にこの二本鎖切断を修復するたんぱく質が近年、次々と同定されています。
 そういう意味では、今後この電離放射線による突然変異研究というのはおもしろいテーマになるというふうに考えています。
 次に、少し話を変えて、量子科学技術に話を移します。
 まずナノダイヤモンドNVセンターであります。QSTには高密度にNVを持つダイヤを作る高い技術があります。
 次、お願いします。NVセンターは、ナノサイズでありまして、表面加工することで、細胞の中に入れ込むことが可能です。今まで測ることのできなかった細胞内の、例えばpHや粘性などに加えて、更に磁場、電場、スピン、温度、圧力などの物理パラメータ、特に細胞内での局所の物理パラメータが測定できるという特性を持っています。これを使った生物研究について御紹介いたします。
 QSTには、1つの粒子、例えばプロトンを、この写真の青いところが細胞の核でありますけれども、狙ったところに照射できるマイクロビームという技術があります。これは核の中にサイコロの5の数字のように、5か所にマイクロビームを当てた図でありますけれども、照射後のDNAの損傷や修復の度合い、又は遺伝子発現のパターン、更におもしろいことに、照射されていない隣の細胞も、隣の細胞が照射されることによって応答して、細胞死の突然変異が誘発されるバイスタンダー効果があるということを報告してまいりました。一発のプロトンの照射によって、細胞内のいろんな物理パラメータがどのように変化するのか、また、隣の細胞に何がどのように伝わるかなど、興味あるところであります。
 この右図は、再生医療で注目されているiPS細胞であります。iPS細胞は、異なった細胞、例えば脂肪細胞や神経細胞や筋肉などへ分化することができます。この分化のプロセスにおいて、物理パラメータの変化は全く調べられていません。幹細胞の分化の方向性やその効率、又は幹細胞の品質評価などにNVセンターは利用できると考えています。
 また、現在までに我々はマウスの受精卵にNVセンターを入れました。このNVセンターは、その後、細胞が分裂を繰り返しても、細胞内にとどまります。この赤色のところがNVセンターの存在している細胞でありまして、こういう実験から初期胚において、NVセンターをツールとして、細胞の追跡が可能であるということを示しました。
 右図は、ちょっと見にくいんですが、これは脳の中の神経の様子を表しています。血管から入れたNVセンターが血管脳関門を通り、これは脳の中のグリアの中にNVセンターが入っている。ちょうどそういう技術も確立いたしました。
 今後は、再生医療の評価や認知症などの脳内病理、更には腫瘍形成のモニタリング等にこのNVセンターは有効であるというふうに考えています。
 NVセンターのほかにもう一つ、量子科学技術として我々が高度化したいものにMRIがあります。これは従来のMRIの感度を1,000倍以上に高める超偏極MRIの開発であります。種々のポリマーで、先ほどのNVセンターを包むことで、偏極時間が長くて、目的の場所に輸送可能なナノ超偏極造影剤というものを開発し、各種疾患の診断治療へ応用することを狙っています。
 これは先ほど言いました国際オープンラボのカウンターパートであるNVセンターの世界的リーダーであるオーストラリアのGibson博士であります。今後、結んだ協定を基にして、共同研究を進め、若手人材の育成をしていく予定であります。
 次は、この分野の『Nature』、『Science』の論文です。まだ研究者集団が小さい分野ですので、論文の数というのは少ないんですが、2010年代に入ってから、この領域の論文数が着実に増えていて、今後この分野は一つの大きなトピックスになるというふうにこのような解析から予想されています。
 海外の動向です。ドイツにおきましては、ウルム大学を中心としまして、量子生命に関する新しい研究施設が2019年、来年に設立され、年間、約10ミリオンユーロ、12億円の研究費がつぎ込まれて、研究することが決定しております。
 また、英国、米国におきましても、まさに今年から研究資金が投入され始めています。
 下の提言にありますように、米国NSFでは、生物における量子現象に関する研究はゆっくりであった、なぜこれまで生物学は量子現象を幅広く扱ってこなかったのか、量子論を必要とするプロセスについて検討する、というふうにあり、今まさに世界ではこの分野にいろんな研究者が参入し始めたところであります。
 最後に、来年度以降のQSTの計画です。最初に申しましたが、来年度はQSTの組織を一部改変し、量子生命科学領域を拠点横断的に作ります。そこでは例えばNVセンターをコアとして、京大、東大、名古屋大学、東工大などの大学と連携させていただき、将来的には産業界も入ってきていただいて、この分野を支えるオープンラボ、プラットフォームを構築する準備をしています。
 最後に、できる限りその世界の状況をウオッチしながら、他大学、施設と協力しながら進めないとなかなか前に大きなリープはできないと思いますので、そういう意味では、QSTにおける量子生命科学研究につきまして、皆様方の叱咤激励と御協力をお願いしたいというふうに思います。
 以上です。
【雨宮主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関して御質問、御意見ありましたらお願いいたします。
【根本委員】  最初のところなんですけれども、あんまり関係ないかもしれないんですけれども、量子力学のところで、古典力学というのは、ふだん生活して、体験している直感的に理解しやすいとなっているんですけれども、昔のローマ水道には傾斜が付いていて、必ずしも慣性の法則というのは直感的に理解しやすいわけではなかったんですよ。
【島田理事】  分かりました。
【根本委員】  と思うんですね。もうニュートン力学は当たり前になってしまって、要するに、中学校で習うから当然であると思っているわけであって、私たちがふだん生活して、体験、この法則そのものを体験するかというと、なかなかそういうわけではなくて、やっぱり概念化されて私たちの中に生きているからこそ、それは直感されるというふうに感じるんだと思うんですね。それが量子となると、途端に不思議であるというふうにまだまだ言われちゃっていて。
【島田理事】  生物系だから特にそう思います。
【根本委員】  そこがちょっと私、これがやっぱり概念化されることによって、直感的だと、分かるとまでは私は言いませんけれども、でも、もうちょっと、その不思議である、未知であるみたいなことにはならないと。そこで大事なのは、やっぱり概念の形成といいますか、量子的な現象、量子の概念をきちんと生命科学の中に生かしていくということがとても大切なんだと思うんですね。
 そういう意味では、今、実験の話をたくさんしていただいたと思うんですけれども、やはり理論とのコラボレーションというのも非常に大事だと思うので、そのあたりを考えていただけるとありがたいかなと思います。
【島田理事】  全く先生のおっしゃるとおりで、我々、生物屋と材料屋はいるんですけれども、例えば物理屋さんと数学屋さんがまだこのネットワークの中に入ってきてもらってないんです。例えば生物学で新しい概念のリープがあったというのは、先ほど言った、例えばワトソン、クリックは、物理屋さんと遺伝屋さんの共同でこういう新しいDNAの構造モデルができたと。
 それから、例えば突然変異という概念も、例えば物理屋のデルブリュックと微生物学者のルリア、この2人がタッグを組むことによって明らかにされて、ノーベル賞になったわけです。
 最近、この量子力学で『生命の謎を解く』という本を書いた、我々と今後コラボしていくイギリスのサリー大学のマクファデンという人、彼も物理屋さんのジム・アル=カリーリという人とコラボすることによって、この分野を更にアクティベートしているので、我々としては、先生おっしゃるように、この概念を整理してくれる、そういう理論屋さんですね。そういう人たちとのコラボレーションがこれから必要だということは思っています。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【飯田委員】  今まさに我々のLAC-SYS研究所でも、分子スケールの現象と細胞スケールの現象の接続をする理論と実験とを両方やっておりますので、根本先生のコメントは非常にありがたく思います。まさに生命現象というのは生化学反応の基礎となる電子レベルでの量子現象の視点からすると、フェムト秒オーダーの電子の反応と、はセカンド(秒)オーダーからアワー(時)オーダーで発現する細胞機能の間に存在する、10の18乗ものタイムスケールを超えて、ナノメートルから数十ミクロンオーダーの10の3乗の空間スケールの現象を接続する必要があるわけです。これらのミクロ-マクロの階層を超えた機構を整理しながら、身近に体験できるような生命機能に量子現象で重要な役割を果たしているということを示していくアプローチが今後、我が国としても重要な施策と感じております。
【岩井委員】  ちょっといいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【岩井委員】  ごめんなさい。私、全く素人なので、付いていってないんですけども、ちょっと教えていただきたいのは、例えばさっきのワトソン、クリックの話なんかは割とイノベーションが分かりやすくて、当時、X線の構造解析がすごく精密にできるようになってきたということと、機能性と構造が結び付いているんじゃないかという発想があって、それでそういうイノベーションがあったわけですけれども、今の量子生命科学というのが置かれている状況というのは、技術としてはどういう技術が結び付いて、それで、ジャンプというか、飛躍が期待されると思えばいいんですか。どういう疑問があって、それに対して、今までできなかった新しい技術、こういう技術が出てきたら、それをどの技術と組み合わせるとこういうことができるんじゃないかという期待をされていると思えばいいですか。
【島田理事】  私もここのプロではないんですけども、生物屋として、例えばこのダイヤモンドNVセンター。
【岩井委員】  これ、すごいですね。これ、僕、初めて聞いたんですけど。何か入れたら痛そうですけど。でも、これは勉強不足で存じ上げなかったので、これはすごい話ですね。こんなことができるんですね。
【島田理事】  はい。今までの分子生物学では、やはりいろんな細胞の反応、個体の反応を分子の量と局在で説明をずっとしてきたんですけれども、細胞の中で例えば、実は温度の不均一性というのはあります。でも、私たちの体は、1℃、体温が上がるだけで、かなり状態が変わるんですけれども、細胞の中も実は37℃の孵卵器の中で培養していて、細胞の中でやはり1℃、まだちょっと難しいんですけど、ある程度の温度差があるんです。つまり、温かい細胞の部位と、そうじゃない部位がある。そういうところで細胞の機能というのはある程度物理的なパラメータで支配されているんじゃないかというような発想が出てくるんだと。
 さらに、細胞の中の電場とか磁場の要素、活性などが細胞の機能に関係しているということを、今まであんまり我々は発想してなかったんです。先ほどのiPS細胞も、私、説明を簡単にしたんですけど、細胞がいろんな、例えば増殖したり、いろんな機能を持つときに、我々は絶えず分子を細胞液の中に入れて、そういう変化を誘導してきたんですけれども、実は細胞というのは、この絵は、この細胞を置く基質ですね。この硬さによって、実は細胞が将来どういう細胞になるかという分化のコントロールができるということも最近分かってきたんです。
 そういう意味では、先ほどのリープという意味で言えば、物理的なパラメータが実は細胞機能を制御している部分があるということが分かるんじゃないかというのが、例えばこのNVセンターで私たちが計画していることです。
【岩井委員】  そういう新しいプローブが、まあ、私、光屋さんなので、昔からそういう細胞のモニターをするプローブとして色素を入れて、がん細胞を光らせるということがよく昔ありましたけども、そういう色素じゃなくて、そういうのがもっと発展した新しいプローブみたいなものができてきたということなんですか。
【島田理事】  そうですね。はい。例えば色素の場合は、色素を感知するのには紫外線、光を当てますけど、それが一挙に退色していきます。このダイヤモンドの場合はずっと色が保持したまま追跡できるというメリットがあったりします。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【早瀬委員】  すいません。今の話に関連して、非常に量研機構には期待していて、例えば今、例に出たNVセンターの話もサンプルを作る部分で非常に高度な装置と、非常に業績もあって、すばらしい技術をお持ちだと思うんですけれども、ちょっと今まで見ると、せっかく高い技術で使ったサンプルが計測とか自体は海外に渡って、ドイツとかアメリカのグループがやってしまって、一番おいしいところを持っていかれているような感じもあって、国際交流という点ではいいとは思うんですけれども、是非国内でもそういった計測の部分を強化していって、是非その唯一しかないサンプル作製技術を最後まで生かしていければいいかなと思っているんですけれども、それに関して今後強化していく施策だとか、国内連携を強める施策だとか、そういったことはお考えなんですか。
【島田理事】  まず先ほど言いましたように、我々研究会を作りました。量子科学技術というのは、生物学、又は生命科学に応用できるよということは、我々、実は知らなかったので、こういう新しいツールがあるということを研究会を通して、アピールしています。そうすると、研究会に来られた先生の中には、例えば日本組織培養学会の大会長さんとか、いろんな学会の先生たちがいて、ああ、こういうツールがあるんだと。是非使いたいというふうに言ってくださる。でも、それはまた、せっかくツールがあるのに、そっちに持っていかれちゃうので、我々としては、我々の研究所の中にいる生物屋さんと、NVセンターの開発者を共同研究してもらうという、融合研究を今、積極的に進めさせていただいています。それが先ほど言った未来ラボとか、国際オープンラボとか、そういう仕組みを作って進めさせていただいています。
【早瀬委員】  是非期待していますということと、あともう一つ大丈夫ですか。ちょっと量研機構に限った話ではないんですけれども、私がほかの研究機構にいた体験で言うと、割と高い技術装置もあって、現場の研究者の方は頑張っているんだけども、絶対的に装置の数に対して人が足りないという恒常的な問題があって、なかなか装置とか予算とかそういったハードウェアはそろっているのに、なかなかそういった動かす人たちがいないと。現場の人たちは一人一人頑張っているんだけど、どうしても人が少ないので、研究以外のことに割かれる時間というのもあって、そういった意味ではなかなか効率的に物が運んでいないなという印象がありまして、量研機構はそうではないことを祈っているんですけれども、是非、何かこう、中で人を増やすということもそうですし、あとは先ほどのオープンラボのようなどんどん外から人が回っていくような仕組みを作っていただいて、そういった高い技術とか高度な装置というのをうまく生かしていくようにしていってほしいなというのが一意見ですね。どうなんですかね。実際、量研機構では人が、現場の人が足りているのか、足りていないのかというのはどういう印象なんですか。
【島田理事】  機械をお守りする人の数というのは少なくなってきている。高齢化しているということもあるので、そういう意味では、やっぱりたくさん加速器とか装置はあるんですけれども、やはりアウトプットとのバランスで、機械のメンテに関することに対しても本来は優先順位を付けなきゃいけないと思います。例えば今回みたいなNVセンターが導入されると、やはりどこかをスクラップして、ここを高めるとかという、そういう予算の傾斜というのも考えなきゃいけないんだろうなと思っていますけれども、それによって、研究者や、そのメンテしてくれる方のモチベーションを下げると、元も子もないので、そこら辺は現場との広い話し合いをしながら進めなきゃいけないなと思っています。機械はとにかく老朽化しちゃうので、いずれは使えなくなるということを想像しながら。
【早瀬委員】  そうですね。メンテナンスもそうですけど、それを実際使って研究する人。まあ、研究は最終的には人が重要だと思うので、それがたくさん関与してくるような仕組みを作っていただけるといいのかなというふうに思います。
【雨宮主査】  最後、手短に。
【城石委員】  すいません。コメントだけ。先ほど後藤理事からJSTのさきがけの話があったんですけど、私が関係させていただいているさきがけでは、瀬藤さんが研究総括統括なんですけども、今、議論されたようなことも結構やっておられていて藤藤、この前も外国の方が3名応募されて、英語でプレゼンされました。
【島田理事】  さきがけですか。
【城石委員】  ええ。今言われたような理論でも、圏論とか全く違う理論の人と技術の人と医学の先生とかが選ばれて一緒にやっています。是非ああいうプロジェクトをどんどんやっていただくのがいいんじゃないかなと思います。よろしくお願いしたいと思います。コメントだけです。
【島田理事】  はい。ありがとうございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 それでは、次に移りたいと思います。マル4の量子技術外交について。上田戦略官より10分程度、御説明お願いします。
【上田戦略官】  科学技術・学術戦略官(国際担当)をしております上田と申します。私は、文部科学省におきまして、様々な分野の科学技術外交を外務省等と連携して進めたり、大学、研究機関の国際化、あるいは国際取組をサポートする役割を担っております。本日は、こういった分野別の委員会で発表する機会を頂いたことを光栄に思っております。
 それでは、1ページおめくりください。「なぜ今、量子技術外交か」ということですけれども、皆さん御案内のとおり、欧米で研究開発投資が拡大。日本においても、こちらの審議会でも議論が進捗し、Q-LEAPをはじめ各種施策が開始。すなわち日本も欧米等主要国も今動いているということです。世界的に新たに基礎研究含むネットワーク、あるいは生態系といったものが再構築されようとしていると捉えられますところ、日本が培ってきたものを強みに、世界の研究ネットワークの主要な一角に位置付けられ、世界の中で存在感を発揮していくということ。そして、日本の研究コミュニティの国際連携を含む活動の幅を広げ、日本の競争力に資するといった観点から、国内施策と連動・連携した科学技術外交を推進することが重要な時期と、文部科学省として考えてございます。
 また、国レベルの科技外交においても、今、この量子技術、時宜性、関心が高いテーマと言えるかと考えております。
 3ページ目は割愛しますけれども、昨年おまとめいただいた新たな推進方策におきまして、国際的にオープンな研究交流あるいは海外の研究グループとの積極的な研究ネットワーク構築、こういった推進方策いただいていますので、これをベースに外交を展開しているといったところでございます。
 次のページ、4ページ目ですけれども、例えば量子技術に関しまして、相手国政府と私どもコミュニケーションする際、こういったコミュニケーションをしている例ということです。「日本では量子技術委員会が「新たな推進方策」を策定するなど、進展しています。JSTでもこういった公募、戦略目標・研究領域を開始されていますし、文科省においてもQ-LEAPが開始されています。量子技術は、両国の協力にポテンシャルのある分野と考えられます。この日本の研究者は、あなたの国の研究者と長年にわたる交流・協力ありますよね。この分野では、まだまだ基礎研究・基盤研究でも取り組むべきことが多いですよね。したがって、ワークショップの開催、あるいは研究機関の交流、あるいは国際共同研究の共同支援。これは国際的にはjoint callとかCo-fundingとか呼ばれますけど、こういったことが考えられるんじゃないか」といった形で外交を進めています。
 次のページ、お願いします。欧州連合、1月に林文部科学大臣との要人会談を行いました。幾つか合意事項がありましたが、量子技術も入っております。欧州連合の方は、皆さん御案内のとおり、Quantum Flagship開始もありますし、科技予算自体もこの10年で3倍増に伸びていて、加盟国28か国に随分と公募の資金が流れているということで、ヨーロッパ各国、欧州連合を見ているんだと思います。こちらの研究・科学・イノベーションのトップと当方大臣、会談しまして、第2次量子革命に向け、日本と欧州が、協力を拡大する重要性で一致するという外交を展開いたしました。
 続きまして、米国でございます。5月に米国、多々、量子研究の推進者がいると思うんですけれども、NSFの長官との会談で、また幾つか合意事項がありまして、そのうちの一つが量子技術分野。こちらではまずNSFの方が日本の今の進展に興味を持っているようでして、専門家チームを今年、日本に派遣するという表明がございました。まだ具体的な日時は聞いておりませんが、必ずしも文部科学省だけに来るわけではなくて、いろんな大学、研究機関を回られるんじゃないかなと推測いたします。日本側は全般としてこの訪問計画の機会、いい機会でしょうから、歓迎するという会談を行っております。
 次のページ、お願いします。こういった閣僚級の科学技術外交を受けて、各国の動き・今後の連携ということだと思いますが、まず一つは、欧州とせっかく始めようということになりましたので、ワークショップ開催。先ほどちょっと話題にも出てきましたけど、流れを説明いたします。欧州量子技術コミュニティ会議というものがドイツで企画された際に、大臣会談のフォローアップとして欧州側から参加招待が接到しておりました。欧州側は、Quantum Flagship開始を受けて、300人の研究者、産業界、政策関係者もいました。集う会議として議論が行われ、その結果は、EU政府へのインプットされるという会議でございました。
 国際協力をテーマとしたパネルディスカッションが設けられまして、今度は私が出席するとともに、CRESTの荒川研究総括、また、大森先生、主査代理としても、私どもの方からお願いして、随行していただきました。EU政府並びに米国政府担当者も登壇し、基本的に国際協力は大事だよねというような、割と包括的な議論でした。
 下の方の写真にありますように、全体会合があったり、国際協力のパネルがあったり、あるいはこれは右側、登壇しているのはEU側の幹事をやってらっしゃる研究者の方。たしかウルム大学の先生だったと思いますが、Quantum Fleet、いろんな施策が欧州で動いているというのが連動しているところ、研究者は支えていこう。その際に右下に国際協力として、今回参加してもらっているアメリカ、日本などが考えられるんじゃないかというような発表もなされているところです。
 続きまして、次のページです。先ほど発表がJSTからありましたけども、こういった流れを受けまして、JSTがEU政府及びEUのこの量子フラッグシップ関係研究者の協力を得て開催してみようというふうにトライされているところと理解しています。文科省としても協力しております。
 ちょうどQTechと呼ばれる国際カンファレンスの関連イベントとしても、各種関係者、集まるのではないかという見込みだろうと思います。各分野のセッションを行って、日欧の量子技術分野における研究協力について議論される予定と伺っています。文部科学省及びEU政府の参加も予定しています。会場規模100人、現在まだ参加登録受付中と聞いています。
 こういったところのボトムアップの議論というのは、文部科学省から見ておりましても、とても大切だと思います。こういったボトムアップの議論がなされて、そういったところを捉えながら、JSTあるいは文部科学省で更なる協力の施策を検討するといった展開は可能なんだろうと考えます。
 続きまして、10ページ目になります。閣僚級の外交というのは、割と発信効果がありまして、各国がその会談結果を見ていらっしゃるんだと思いますが、例えばデンマークが大臣表敬訪問された際に、向こう側から量子技術分野での協力についての発言がございました。例えばコペンハーゲン大学、ニールスボーア研究所もこちらにあるということだと思います。
 あるいはドイツのBMBFの部長が来訪されたときも、向こうから量子技術分野における更なる協力についての意見交換を求められましたり、あるいは英国では、今、外交関係者が日本の研究者とのネットワーキングのためにイギリスの研究者が来訪を模索されていたりします。
 デンマークにつきましては、在京デンマーク大使館主催でセミナーも開催されて、120名が参加され、当方大臣政務官も参加・挨拶しております。
 11ページ目に参ります。国際共同研究の共同支援というものを開始されています。こちらはJSTの尽力が大きかろうと思います。ドイツとの間では、joint callということでオプティクス・フォトニクス、昨年9月、公募開始。この3課題が採択され、スタートしています。
 また、CRESTにつきましても、他国とCRESTの間でjoint callを作っていくというのはなかなか難しかろうと思うんですが、この流れを受けて、「量子状態の高度制御」ということで、荒川先生の領域で、joint callが今、公募開始されて、今年、採択予定というのは、文科省としても心強いところでございます。
 続きまして、量子ビーム外交も当然ながら、量子科学技術の中に入っていますので、御紹介しますと、最初のページは一つの事例でございます。日・スウェーデンの首脳会談、昨年7月に行われていますが、安倍総理と先方、ロヴェーン首相。首脳会談として、右側にありますように、イノベーション、女性の活躍といった分野で協力を推進したいという中で、そのイノベーション分野の一つの進展として、J-PARCと、スウェーデン側のESSの協力覚書が取り上げられるということが起こっております。また、こういったふうに大型施設間の技術協力が外交の場でもハイライトされるといったことが起こっております。
 ちなみに、このESSが存在するスウェーデン・ルンドというのを紹介いたしますと、北欧の文化・経済の中心で、まち全体がルンド大学を中心としたキャンパスのような雰囲気の中で、ここでは、サイエンスパーク、サイエンスビレッジを整備されていて、サイエンスビレッジは、量子ビーム施設の集中立地がなされているというふうに理解しています。
 次のページにありますけども、左上、スウェーデンのルンド。国際的な動向として、ルンド駅のすぐ近くにルンド大学があって、その外縁にサイエンスパークがあって、産学連携がなされ、すぐ近くに量子ビーム施設が稼働中、あるいは建設中といったところには、私どもとして一つのビジョンを感じますし、同様に、ほかのヨーロッパのリサーチコンプレックスと呼ばれる集約地域を分析しても、量子ビーム施設がこういったリサーチコンプレックスの中で重要な位置を占めているといったことがフランス・サクレー、フランス・グルノーブルでも見られるところです。こちらは国際動向ということで御紹介いたします。
 こういったスウェーデン・ルンドにつきましても、文部科学大臣訪問が1月になされています。MAX-4、ESSの建設地の視察とともに、スウェーデンの教育研究省、あるいはルンド大学の幹部の方々との意見交換。ちょうど日スウェーデンの外交樹立150周年の時期でして、こういった中で協力を進めていきたいというふうに、その量子ビーム施設が外交の一つのきっかけ、あるいはテーマになっているといったことを御紹介したいと思います。
 次のページでございます。「おわりに」ですけれども、各国の量子技術の動きが活発で、政府間外交でも量子技術分野は重要分野となっています。量子技術外交と言ってよかろうと思います。また、一方で、産業応用の模索の動きが早いので、競争の面も強い分野であろうというふうに私どもも認識します。
 こういった外交というのは、政府の取組はもとよりなんですけれども、JSTなどのファンディング機関、大学・研究機関、研究コミュニティ、皆さんですね。研究者、プロジェクト、産業界、様々な方々、あるいは様々な階層の取組でなされて、そういった日本側の相互の協調、連携によって効果を上げることも多いというふうに私たちは考えています。
 文科省として、量子技術外交を進めることで、まずは皆さん、様々なコミュニティの方々の連携・協力が模索されやすい環境構築に資することができると思って取り組んでおります。
 その際、この分野では、競争の面もございますので、基礎研究段階から産学官のコミュニティが認識や戦略を共有しつつ、協調や連携の中で進めていくという観点も重要ではなかろうかというふうに感じています。
 こういった中で今後、国際共同研究をはじめ、具体的な連携・協力が進んで、日本の存在感、あるいは日本の競争力に資することを期待するところです。
 ちなみに、参考で書いてあります右側ですね。国際共同研究、私たち、便宜上、概念的に3つの階層に分けて考えることが多いんですけれども、第1階層というのは通常の学会等で、研究交流などなされるものです。第2階層というのは、最近、科研費で国際共同研究加速基金というものがアドオンで付くような仕組み、公募のシステムができましたけど、そういったところで振興する。第3階層というのは、両国のファンディングエージェンシーが協働して、国際共同研究を一緒にやっていくという形でして、どの階層も進めばいいと思いますし、第1階層もどんどん進むことが喜ばしいというふうに考えています。
 以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございます。それでは、今の御説明に関して御質問。
【城石委員】  一つだけよろしいでしょうか。上田さんが国際担当に行かれてすばらしい成果がでていると思います。ありがとうございます。一つ、ちょっと教えていただきたいんですけれども、例えばSosiety 5.0にしても、SDGsにしても、新興国の方をどう交えてやるかというのが、それらが成功するかしないかの鍵だと思うんですね。そういう意味で、こういうすばらしい量子技術というものがあって、日本がリードしており、これを外交で生かそうとするときに、新興国の方とかそこに対してはどうアプローチすれば、日本が全体をリードしていけるんだろうかと、いうのを考えています。その辺は何かお考えありますでしょうか。
【上田戦略官】  新興国。アジアとか。
【城石委員】  はい。例えばメキシコとかもですね。そういったところは意外とSDGsで何回もいろいろと厳しい問題提起を言っているという話も聞いていまして、そういうところに対して日本が、こういったすばらしい技術があるという存在感を示すことで、全体がうまくいかないかなというように思っていたので。
【上田戦略官】  おもしろい視点ありがとうございます。もちろん私ども先進国だけじゃなくて、様々な国と付き合うんですけども、新興国の方々と目下、よく共通的な話題となるのはSDGsと、おっしゃったとおりでいいと思いますね。もはや共通言語、共通目標みたいな感じで、その際に科学技術というのがSDGsに貢献できると、そういったところで、割と話題が弾むことが多かろうと思います。
 一方、Sosiety5.0という概念も、国際的にはどんどん認知が高まっていて、日本は5.0をやっているけど、例えばタイ政府はタイ4.0をやっています。同じようなフィロソフィーですね。ともに進んでいきましょうという言葉を掛けられることもございます。
【城石委員】  それの一つのいい例だと思うんですね。量子技術というのは世界の貢献するSTIの良い例で、新興国の方がなかなか付いてこれない、また取り残されたと思われないように、日本がリードし、どう広めていけば、全体のレベルが上がり、その結果として、日本も尊敬される国になり、日本の発展にもつながるんじゃないかと思うので、御検討いただければと思いました。すいません。
【上田戦略官】  御指摘ありがとうございます。
【雨宮主査】  ほかによろしいでしょうか。根本委員。
【根本委員】  4月に行われた欧州量子技術コミュニティ会議で、このスライドの中に日本とアメリカと挙げていただいているのはとてもありがたいことだと思うんですけれども、実際には、ヨーロッパで今、中国とのコラボレーションが非常に活発になっていて、もう日本じゃないぞというようなところも多く聞かれるんですね。そうするとこれが、まあ、スライドでは日本も出していただいているんですけれども、事実上は中国の方に軸足が移って、アジアというと中国の方に軸足が移っているんじゃないかということは十分に考えられることで、やっぱりそれも想定して、日本がどういったプレゼンスを発揮していくのかということをしっかりと考えていかなきゃいけないかなというふうに思います。そうはいっても、やはり日本には科学技術の歴史があって、中国にないものがあるので、期待も大きく、注目もまだまだされているというのも事実だと思います。
 例えば先ほどの、2点あるんですけれども、1つはワークショップなんですけど、これ、協力について議論というと、日本的には何をやるのか分かるのかもしれないんですけど、外から見ると、議論してどうするの? というのが、これはどうしても分からないんですね。その後に、要するに、政策として何か進める準備があるのか、どのぐらいの規模のものなのか。何かこう、取っ掛かりがないと、参加する方もヨーロッパの方でこれをどう受け取っていいのか分からないというものがあるので、もうちょっと施策として打ち出していただけると、協力体制は組みやすいかなという気がいたします。
 だから、些細なことかもしれないんですけれども、日スウェーデン首脳会議の中に、特にイノベーション、女性活躍といった分野で協力をされる、推進したいというふうになっているんですけれども、この女性活躍というのが、日本はどうしても省庁が縦割りで、女性の活躍は違う部署なんですということになるんだと思うんですけれども、EUの方は非常にこれを真面目にといいますか、中心に置いて取り組んでいまして、この取組が足りないと、パートナーとしてはふさわしくないといったような認識もされ出しているので、それはきちんと、これを別にやるというわけではなくて、全ての施策の中にこの視線を取り入れていただくということは国際的な、特にヨーロッパを中心とした協力では非常に重要になってくるというふうに思います。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。
 それでは、マル5の評価指標についてです。事務局より御説明お願いします。
【廣瀬補佐】  資料1-7を用いまして御説明いたします。本件ですけれども、前回の量子委員会において、量子委員会の上の研究計画・評価分科会の動きとして御説明を頂いた件になります。本件は、プログラム評価における参考指標に関してでございます。プログラム評価に関しましては、前回の評価指針の改定の際に、Q-LEAPとか光拠点といった、大きな事業の枠組みのプログラムにおいて、このプログラムがいかに成果を上げたのかといったものもしっかり評価をすることが決まりました。
 それに加えまして、研究計画・評価分科会の方では、文科省が行っているプログラム・施策単位の評価に加えまして、我が国の分野全体として、例えば量子科学技術といった分野が今どういった状況で、例えば盛んに研究者が流入しているのか。成果として、世界とどうなっているのかといったものを把握するような指標というものもしっかりと設定して、国際比較であったり、国内の状況を踏まえられるような評価ができるようにしていくべきではないのかといった議論が今なされております。
 分野を評価する指標に関しては、量子委員会の上の研究計画・評価分科会の方で統一的に検討をしつつ、各分野の事情に即して、指標を作っていこうということになっております。その指標の候補としまして、これまで共通の指標案として、各分野の研究内容ごとの論文数を指標にしてはどうかといった議論がこれまで、上の分科会の方で出されておりました。
 前回、その部分に関して御説明を頂き、量子委員会として、どの領域の論文数を指標にするべきかとを御検討いただきたいということを御説明いただいたと思います。
 そのため、量子委員会の後、事務局の方から各委員の先生方に事務局案をお示しするとともに、このサブジェクトカテゴリに関しまして、追加すべきような分野について、御相談をメールにおいてさせていただいたかと思います。
 その結果が2ページ目の赤枠に書かれておりますものです。量子科学技術が、いわゆるWeb of Scienceのサブジェクトカテゴリにピッタリとしたものがありませんので、生物、物理から、コンピュータサイエンス、あとはプラズマ物理、機器計測など、かなり多岐にわたった形で、現在、サブジェクトカテゴリの指標の候補を挙げさせていただいております。
 こちらに関しまして、今度、8月の下旬にもう一度、研究計画・評価分科会が行われまして、決定をするという予定になってございます。そのため、先生方の御意見を踏まえて、今現在こういった2ページにあるようなものが量子委員会としてのサブジェクトカテゴリの案になっているということの御報告と、万が一、過不足等、御指摘がありましたら、また事務局の方に御指摘をいただきたい考えてございます。
 以上で御報告でした。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。今日は時間が限られているので、何か過不足があれば、後で事務局へとお願いします。量子科学技術分野というのは非常に広いので、こういうふうにしてサブジェクトカテゴリを並べると非常に多くなります。何か本当に足りないと思うようなものがあれば、是非追加のコメントを頂ければと思います。
 直接見ると、余り量子科学技術と関係ないと思われるものでも関わっていることがあるので、それを拾っていくと、非常にカテゴリは増えるんですが、幅広でピックアップしておいた方がいいかなと思いますので、デリートというよりは追加する方であれば、コメント頂ければと思います。
【根本委員】  1つ質問してもいいですか。
【雨宮主査】  はい。
【根本委員】  この新しい評価の位置付けなんですけれども、先ほど文科省の通常の評価に加えて、新しい評価を実施するというようなお話だったような気がするんですけれども、それはまた同じような、今ある評価に加えて、また似たような別の評価を行うと、評価疲れみたいなことも指摘されているので、違いといいますか、どういったところが違っているのかというところを教えていただけますか。
【廣瀬補佐】  これまでの文科省の評価は、いわゆるQ-LEAPとか光拠点とか光融合とか、施策に関しまして、その課題の研究成果であったり、事業全体の評価をやったりしており、それはそれでしっかりやっていこうと。ただ、それだけではなくて、その分野全体としての状況を把握しないと、次どういった施策を打ったらいいのかというところが分からないのではないのかという指摘の中で、論文数とかをしっかりとデータとして把握をし、追跡していく取組を別に行うことになっています。
 これは、恐らく指標をしっかりと分野ごとに設定をして追跡を行うもので、何か新しく、例えば個々で評価を行う話ではないと、私たちの方では認識していないです。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。はい。どうもありがとうございます。
 それでは、次に移りたいと思います。議題の(2)に移ります。最先端大型研究施設について、マル1、大強度陽子加速器施設(J-PARC)中間評価報告書及び中間評価結果について、まず事務局より御説明お願いいたします。
【大榊補佐】  それでは、資料2-1と資料2-2を御覧いただければと思います。大強度陽子加速器施設(J-PARC)の中間評価について御説明させていただきます。
 資料2-1が中間評価結果ということで、これを最終的には研究計画評価分科会の方に案として出して、それを確定したいというふうに考えている評価票でございます。
 それの基になってございますのは、この資料2-2の中間評価報告書の方でございまして、今年の2月に先生方にもお諮りいたしまして、この大強度陽子加速器施設の評価作業部会を3つの委員会の下に設けるということで御了解いただいたものでございまして、それを本年の6月にまとめたものでございます。
 今年の2月から6月まで、計5回で開催いたしまして、現地調査も含めて評価を行ったものでございます。ですので、この資料2-2の中間評価報告書を少し内容を御説明させていただければと思います。
 おめくりいただきまして、目次がございます。目次のところを少し見ていただきますと、2ポツのところに前回中間評価以降の取組ということで書いてございまして、4ポツに、前回、中間評価の主な指摘事項に対する対応と、それから、5ポツに、前回中間評価以降に起きた主な事象とその対応対策。それから、6ポツに、今後重要となる論点ということで書かせていただいてございまして、主にこの評価報告書の作りとしましては、前回中間評価の主な指摘事項の対応と、それから、起きた主な事象と対策。今後重要となる論点、この3つを主にまとめたものでございます。
 更におめくりいただきまして、1ページ目の「はじめに」の下の方を御覧いただきますと、本中間評価の位置付けを書かせていただいてございます。既に2月に一度御説明させていただいてございますが、文部科学省における研究及び開発に関する評価指針に基づきまして、研究開発のプログラム、5年ごとを目安に評価を実施するということをされてございます。
 J-PARCにつきましては、大型研究施設として技術開発を重ねてございまして、引き続き高度化を図っていくということでございますが、運転開始からおよそ10年経過してございまして、施設の安定運転の達成を見越した先見的な取組を開始していく時期に来ているということでございます。
 このため、前回中間評価、平成24年6月に行ってございましたので、その指摘事項への対応と、それから、今後の運営に係る課題と方向性を明確にするということを目的としまして、中間評価を行ったものでございます。
 おめくりいただきまして、2ページ以降につきましては、細かな評価結果を書かせていただいてございますので、後半の評価のまとめのところにその内容を書かせていただいてございますので、22ページまで飛んでいただければと思います。22ページの7ポツに評価のまとめを書かせていただいてございます。前回中間評価から現在までにニュートリノ実験施設につきまして、またMLF、すなわち中性子線の利用施設でございますが、これにつきまして、それぞれ基礎から応用に至るまで、非常に多くの成果が創出されているということでございます。今後とも学術、産業の幅広い研究分野において数多くの利用と成果の創出が期待されるというふうに評価を頂いているものでございます。
 また、前回中間評価の指摘事項に対しましても、後ほど少しお話しさせていただきますが、おおむね着実な取組が行われているという御評価を頂いてございまして、我が国の科学技術イノベーション政策における重要な大型研究基盤施設として、引き続きJ-PARCの開発利用を行っていくことが重要であると御指摘を頂いたところでございます。
 一方、運転開始から10年が経過してございまして、施設の安定運転の達成を見越した先見的な取組を実施していくべき時期に来ているということでございまして、以下の点に留意して取り組むべきであるという評価を頂いております。
 その以下の点について少し御説明をさせていただきますと、22ページの下段でございますが、施設の整備・運用につきましてですが、まず世界トップの成果を創出し続けていくために十分なビームタイムを確保していくことが重要であると評価を頂きました。特にニュートリノ実験施設は750キロワット、ハドロン実験施設は100キロワット、MLFは1芽がということで、初期目標のビーム強度の早期達成を目指すというふうに評価を頂いてございます。ニュートリノ実験施設については今後も世界をリードする研究を続けるために1.3メガワットへの増強に向けて引き続き努力をすべきと言われてございます。
 いずれにしましても、国際競争の状況ですとか財政環境、施設の効率的な整備・運用等も考慮して、中長期的な戦略を立てて取り組むことが重要であるというふうに評価を頂いたところでございます。
 また、次の四角のところでございますけれども、生命科学用実験施設の整備についても少し御議論があったところでございます。この生命科学用実験施設も学術コミュニティからの期待が高いというところでございますが、まずユーザーコミュニティが主体となって施設ともに進めていくということが重要であると位置付けられてございます。
 また、施設の運営についてでございます。J-PARCの運営については、今後重要となる論点のところで少し評価がなされてございましたが、まずJ-PARCの運営も10年経過しまして、安定運転が進んでいるというところでございますので、経営的視点をしっかり取り入れて、経年劣化対策ですとか財源の多様化ということで、中長期的な経営計画を策定すると位置付けられているところでございます。特に施設の経営基盤を強化していくべきということでございまして、その際に経営の専門家の活用が重要であるとされているところでございます。
 また、23ページの中段でございますが、施設の運営の下の四角でございます。利用者の利便性向上とか効率的な運営のためにJ-PARCとしての一体的な組織運営、オープンアクセスの推進。例えばアクセス道路の整備等についてということでございますが、投資対効果を踏まえた具体的な検討を進めるべきというふうにされてございます。
 また、中性子・ミュオン利用の振興でございます。これまでに蓄積された人材、施設、ネットワークを最大限有効活用することが重要だということを言われてございます。また、MLFにつきましては、共通基盤技術一元管理ということですとか、共用ビームタイム枠の導入といったようなものを含めて、より効率的・効果的な一体運営に取り組んでいるということをされてございます。
 また、質が高い研究成果を効率的に創出していくために、論文分析を含めた研究力分析ですとか、ベンチマークという研究組織の評価、また、そのMLFの特徴を適切に評価できる指標の検討を行うことというふうに御審議を頂いたところでございます。
 また、J-PARCでございますが、平成24年の前回の中間評価以降、ハドロン施設での事故ですとか、中性子のターゲットのトラブルといったようなものもございましたので、そういったところを踏まえて、本報告書ではそこの部分の振り返りをさせていただいて、J-PARCとしては安全文化の醸成、また、安全管理体制の不断の見直しを継続するとともに、地元住民をはじめとしまして、国民全体からの理解を促進して、J-PARCが広く開かれた施設となるように活動を継続していくべきであるというふうに位置付けられているところでございます。
 また、J-PARCにつきましては、将来にわたって世界をリードする成果を継続的に創出するために、将来的なニーズですとか、国際動向を見据えた施設整備の高度化ですとか、施設の更なる効率的利用方法等について、常に検討を進めることが重要であるということも結論を頂いているところでございます。
 今後の内外動向等踏まえまして、また5年後を目安に本中間報告書での指摘事項ですとか課題につきまして、改めて評価を実施するということが適当であるとされてございまして、次の中間評価は、恐らく5年後あたりが目安になるのではないかということでございます。
 非常に簡単ではございますけれども、報告書の概要は以上でございます。
 資料2-1の方を御覧いただければと思いますが、この報告書を基に、研究計画・評価分科会の方で最終的に報告、評価をしていただくに当たっての評価書を作成しているところでございます。
 1ページおめくりいただきますと、大強度陽子加速器施設の概要ということで、課題の実施時期ですとか評価の研究開発の必要性等が書かれてございますけれども、この点につきましては割愛をさせていただきまして、更におめくりいただいた中間評価票というところを御覧いただければと思います。右上に(平成30年5月現在)と書かれているものでございますけれども、中間評価票のところにございますように、こちらもこの作業部会の中で議論をしていただいてまとめたものでございますが、2ポツのところは評価結果ということで、先ほど少し簡単に御説明させていただいた内容が書かれてございますので、割愛させていただきまして、中間評価票の2ページ目の各観点の再評価というところ、(2)の各観点の再評価というところを御覧いただきますと、ここに必要性というものを書かせていただいてございます。
 研究計画・評価分科会の評価方式、評価の方針に基づきまして、必要性と有効性、それから、効率性というのをそれぞれ評価することとされてございまして、J-PARCにおきましては、この必要性のところ、科学的・学術的意義や社会的・経済的、国費を用いた研究開発としての意義というものにつきまして、変わらずに深いということとされてございます。
 また、我が国の科学技術イノベーション政策の着実な推進に関して、J-PARCの貢献がますます期待されているということを評価を頂いているところでございますので、これをもって必要性は確保されているということを示しているものでございます。
 また、更におめくりいただきまして、有効性のところを御覧いただければと思います。有効性のところにございますように、原子核・素粒子物理学分野におきましては、ニュートリノ振動の観測をはじめとした新しい知の創出への貢献が顕著であるということでございまして、引き続き世界をリードする我が国の学術的地位を支えている施設でございます。
 物質・生命科学分野におきましても、これはMLFの成果でございますが、基礎研究から社会実装に至る全段階を通じた取組が行われているということでございます。
 また、施設を通じて、人材の育成ですとか知的基盤の整備へ貢献しているということで、有効性が高いというふうに評価を頂いているところでございます。
 また、その効率性でございますけれども、J-PARC、JAEAとKEK、両組織が共同運営をしてございますが、この運営の効率性ですとか、利用者の利便性の観点からしても、J-PARCとして一体的な運営に取り組まれているというふうに評価を頂いているところでございます。
 また、外部委員による評価を定期的に行って、研究開発の手段、アプローチの改善といったものに取り組んでいるということでございます。
 これを踏まえまして、(3)の今後の研究開発の方向性というところを書かせていただいてございますが、本課題、すなわちJ-PARCの施設でございますが、引き続き継続という形で進めたいと考えてございます。J-PARCにつきましては、我が国の科学技術イノベーション政策における重要な大型研究基盤施設ということで、引き続き開発、利用を行っていくことが重要であるということを位置付けを頂いたところでございます。
 今後の方向性以下につきましては、先ほどの報告書と同様のものでございますので、割愛をさせていただきますが、J-PARCは引き続き世界をリードするような成果を継続的に創出していくという大きな施設でございますので、将来的なニーズ、国際動向を見据えて、施設とか設備の高度化、又は更なる施設の効率的な利用等について引き続き検討を進めるということを評価として書かせていただいているところでございます。
 駆け足で申し訳ありませんが、以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。今、御説明いただきましたように、J-PARCの評価の作業部会で、今年2月から5月まで5回にわたって作業部会が開かれ、この資料2-2で中間評価報告書がまとまっているわけですが、そのダイジェストとして、資料2-1をこの上の委員会に上げて、中間評価票とするということです。
 この委員会で、何か新たなコメント等があれば、それを反映するということができますので、非常に限られた時間ですが、何かコメント等あればお願いいたします。
【根本委員】  研究成果がすばらしいものが出ているということで、よく分かったんですけれども、人材育成、教育という観点もかなり強調されているように思うので、ちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば女性の学生であるとか、若手の研究者の受け入れ等に対する評価みたいな、その評価の時点でそういう視点からの取組みたいなものというのは調査はされていないんでしょうか。
【大榊補佐】  教育の観点では、報告書の14ページのところに少し、前回の中間評価の御指摘の中にも、研究施設と、それから、人材も含めて、人材育成をすることが重要であると指摘を頂いてございましたので、それへの対応ということで、例えば14ページの真ん中の方にございます対応状況というところに、これまで5年間の対応状況を書かせていただいてございますが、例えば外部の若手研究者の受け入れといったような若手研究者育成というのは進んでいるというふうに評価を頂いているところでございます。女性研究者と……。
【根本委員】  私がお伺いしたのは女性研究者の。
【大榊補佐】  女性研究者の観点では、すいません。余り明確に評価はしてございません。
【根本委員】  評価でもないのでよく分からないんですけれども、そのJ-PARCに限らず、大型施設における女性研究者が活躍する環境というのに、非常にいろいろ問題があるという声も聞かれてきておりまして、その点、やっぱり海外のこういったファームといったような大型施設に行くと、女性であっても伸び伸びと活躍できるのに対して、日本の大型施設というのはなかなか難しいというような声が聞こえていますので、排除にならないような取組というのをできれば考えていただければと思います。
【大榊補佐】  引き続き検討させていただければと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。じゃ、どうもありがとうございます。
 それでは、次、マル2の次世代放射光施設(軟X線向け高輝度3GeV級放射光源)官民パートナーシップ具体化のためのパートナー選定に係る調査検討結果についての報告です。事務局より説明お願いいたします。
【大榊補佐】  それでは、資料2-3と2-4について御説明させていただきます。
 資料2-4に報告書の本体を付けてございますが、資料2-3にその概要を書かせていただいてございますので、概要の方を御説明させていただければと思います。
 こちらも前回の委員会、2月の委員会のときにちょうど文科省において、地域及び産業界のパートナーの募集期間中でございましたので、少し御説明をさせていただいてございましたが、簡単に経緯を改めて御説明いたしますと、本年の1月にこの次世代放射光施設の政策的な意義ですとか今後の運用方策等、整備・運用の方針等につきまして、主査の雨宮先生を主査といたしました量子ビーム利用推進小委員会におきまして報告書をまとめまして、その報告を基に、文部科学省において地域及び産業界のパートナーの募集というのを1月から3月まで行っていたところでございます。
 資料2-3の概要の審議の経過のところに少しその内容を書かせていただいてございますが、約2か月間、このパートナーの募集を行いまして、3月にパートナーの提案が1件ございました。この提案につきまして、3月から6月までの約3か月間、量子ビーム利用推進小委員会において、提案内容の調査検討というのを行ってまいりまして、書面、ヒアリング、現地調査等を通じまして、6月28日にこの報告書を取りまとめたところでございます。
 このパートナーの提案につきまして、少し前後して申し訳ございません。ページをおめくりいただいた2ページ目のところに、この提案者の提案が書かれてございますので、少し御説明をさせていただければと思います。この次世代放射光施設でございますが、官民地域パートナーシップによりきちんと役割分担をして整備をしていくということが委員会で言われてございまして、それに基づいて、募集を行った結果の提案でございます。その提案者でございますが、最終的には1件、提案がございまして、この一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表機関といたします、この同財団、宮城県、仙台市、東北大学、それから、一般社団法人の東北経済連合会による5者の連名での提案という形になってございます。
 この提案の特徴といたしましては、宮城県、仙台市の総合的な支援、それから、東北大学の協力体制の下、強固な官民地域パートナーシップを構築して、光科学イノベーションセンターが主体となって実施するということでございます。
 この整備用地でございますけれども、この資料の左下の方を御覧いただければと思いますが、東北大学に今、青葉山新キャンパスということで、農学部を中心に整備が進んでございますけれども、この青葉山新キャンパスのちょうど真ん中あたりに灰色で丸囲みされているところがございますが、これは放射光施設の建設候補地でございます。
 こちらに放射光施設を整備するという形でございまして、大体1辺370メートルから250メートルぐらいの大きな施設を整備していくという形の提案がなされているところでございます。
 この青葉山新キャンパスでございますが、仙台駅からおよそ地下鉄で9分程度ということでございまして、非常にアクセスがいいという状況でございます。
 右の方に財源負担に関する官民地域の役割分担というのを書かせていただいてございます。整備費用の概算総額はおよそ360億円程度ということで、これは整備用地の確保ですとか造成の経費を含んでございます。このうち想定される国の分担が最大約200億円程度で、一方、パートナー側、「コミットメントされた提案者の分担」と書かれてございますが、このパートナー側の分担が最大約170億円程度ということで、これがビームライン、彼らが7本を整備する場合ということで書いているところでございます。
 その下に項目を書かせていただいてございまして、それぞれ国の分担とパートナーの分担というのを役割分担しているところでございます。
 それから、提案の内容につきまして、産学官金の集積状況、リサーチコンプレックスの形成加速ということでございますけれども、既に宮城県、仙台市においてある程度の学術機関ですとか研究機関というのが集積しているところでございますが、今後の産学官金の集積・発展に向けて、宮城県、それから、仙台市においてそれぞれ各種の優遇制度ですとか、助成金創設ということでしっかり支援するということをパートナーの提案として出されているところでございます。
 また、東北大学につきましても、この放射光施設建設候補地の横にサイエンスパークゾーンというのがございますけれども、こちらに放射光を利用する企業の拠点を設置できるようなスペースを用意しているということでございまして、こうしたようなものと、それから、学内の産学連携施設等を活用するということでもって、協力体制の下、実施をしていくという提案となっているところでございます。
 お戻りいただきまして、概要の1ページ目に戻らせていただきますが、この中段にございます調査検討の結果というところを御覧いただければと思います。
 文部科学省でパートナーの募集を行った際に、募集要領に掲げられた主な要件、3点ございます。パートナーが整備する主要施設ということで、それぞれの役割分担を明確に示すことということで、それぞれパートナー側が基本建屋、ビームライン、研究準備交流棟、整備用地の整備等を行うということを要件として設けているところでございます。
 また、(2)にございますように、産学官金の集積状況とリサーチコンプレックスの形成加速ということでございますが、パートナーが、施設を中核としたリサーチコンプレックスの形成が加速されるように、産学集積とその発展のビジョンをもって具体的な計画を進めることと位置付けたところでございます。
 また、(3)にございますが、財源負担に関する官民地域の役割分担ということで、パートナーがそれぞれの施設・設備について整備をすることについて、コミットメント、それから、財源確保の見込みを示すことというふうに要件を出させていただいているところでございまして、その内容について調査検討を行った結果が右に書かれているところでございます。
 この主な検討結果の方に参りますが、提案内容は、具体的かつ意欲的であり、文部科学省が募集要領で示した要件を満たしていると判断するといたしました。全体として、パートナーとして選定するのに相応しい提案がなされていると御評価を頂いたところでございます。
 特に、その下に丸を幾つか書かせていただいてございますが、放射光施設の整備等に良好な環境であるということ。それから、先ほどもちょっとお話ししましたが、仙台駅から9分という高いアクセス性を有しているということが大きな長所であるということです。
 また、リサーチコンプレックス形成に関係して、宮城県に既に複数の大学、公的機関、企業等が集積しているということで、従来から産学連携による研究開発が行われておりまして、仙台市では直近5年間で企業の集積が進んでいると。現時点においてリサーチコンプレックスに資する一定程度の産学官金が集積しているということを御評価頂いたところでございます。
 その上で、施設、東北大学のキャンパス内に施設を整備するという計画でございますので、施設を活用した本格的産学連携と効果的な人材育成が期待されるというふうに評価を頂いたところであります。
 また、財源負担の観点でございますが、宮城県及び仙台市がリサーチコンプレックスの形成加速に向けた民間企業や研究機関の誘致施策を展開することですとか、財源負担に関する官民地域の役割分担について、コミットメントを表明しているということがございまして、これは高く評価しているというところでございます。
 既にパートナー側の方で、一口5,000万円で民間から資金拠出を募ってございまして、既に約50社から加入意向の表明を得ているというところでございまして、民間企業等にとって魅力的で高い期待が寄せられていることの表れであると評価を頂いたところでございます。
 一方、留意事項という形で出してございますけれども、このパートナーの提案に当たりまして、留意事項として、下の方にございますが、次世代放射光施設を中核とした産学官金の一体的な集積が一層図られるように、更に計画を具体化していくこととされております。また、今後、提案者において、この提案に対する民間企業等からの加入意向の表明が更に増加するように積極的に取組を進める必要があると。仮に計画どおりに資金調達が進まない場合を想定し、様々なケースを想定してこれに対応できるようリスク管理に取り組むことという評価に、留意事項も含めて評価を頂いたところでございます。
 こういった評価を踏まえまして、この評価の中にもございますが、国の整備運用の検討を進める主体でございますQSTとともにより計画を具体化していくことということで留意事項として挙げているところでございまして、これが報告書の概要全体でございます。
 簡単でございますが、以上でございます。
【雨宮主査】  ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明に関して、何か御質問、御意見ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。はい、どうぞ。
【大森主査代理】  パートナーシップとあんまり関係ないんですけど、軟X線で3GeVというのは、こういった産学連携という視点から見た施設の競争力としてはどうなんですか。
【大榊補佐】  すいません。ここには書いてございませんが、既にSPring-8ではかなりハイエナジーのX線ということで、8GeVで運用してございますけれども、一方、軟X線分野、今、既に科学技術。今の科学技術が硬X線の構造解析から機能解析の方に向かってきているというところもございまして、もちろん軟X線の方に行くと、かなり学術研究中心ではございますけれども、もちろん産業界も軟X線に関心が高くなってきてございまして、産学連携という観点では、軟X線寄りの、軟X線向けの施設ということで、3GeVあたりが競争力が高いのではないかと判断してございます。
【雨宮主査】  ちょっと整理しますと、軟X線向けというところは、学術の深堀りというのがプライマリーで、産学連携がセカンダリーだと考えています。ハードX線のところはもう本格的に産学連携と。それはSPring-8と同等であるけど、非常にコンパクトで、非常に経済性のあるデザインになっていると。民間がお金を出して、そこをSPring-8以上に使い回すと、そういうハイブリッドのプロジェクトというふうに考えていただくと分かりやすいと思います。
【大森主査代理】  これは軟X線なんですよね。
【雨宮主査】  これは軟X線もX線も出るんです。
【大森主査代理】  ああ、両方出るんですか。軟X線向けというのが何かちょっと3Dの。
【雨宮主査】  今まで軟X線のところが輝度の高いものが日本では欠けていて、そこがないために学術が何もできなかった。
【大森主査代理】  分かりました。ロジックが分からなくて。記述がちょっとミスリーディングですね。
【雨宮主査】  ああ、「軟X線向け」と書いてあるとかですね。
【大森主査代理】  ええ。だって、実際、官民地域パートナーシップを主体にした資料ですよね。実際そこはハードXレイの方を想定しているんですよね。今の御説明だと。だけど、どちらかというと、軟X線の方は学術期待ですね。
【雨宮主査】  いや、軟X線の産業利用もありますが、どちらかというと今までの流れからいけば、X線の方が産業利用が実績があります。
【大森主査代理】  そうですよね。
【大榊補佐】  主に今のところはハイエナジーの方がまだ産業利用としては高いんですけれども、今後、産業界としても軟X線を使った物質の機能解析というのに非常に関心が高まってきてございますので、そういった観点で軟X線を使いたいという声がかなり高まってきているという状況でございます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【早瀬委員】  予算に関して質問なんですけれども、建設に関しては、予算額とか予算割合、負担割合が示されているんですけれども、建設後のランニングコストもかなり掛かるとは思うんですけれども、そちらの予算規模と負担割合というのはどういう計画なんでしょうか。
【大榊補佐】  前回の資料の方にだけお入れしてしまったので、今回入れてございませんが、運用経費につきましても前回1月に取りまとめました報告書の方で少し議論をしてございまして、年間、約29億円程度ということを考えているところでございますが、そのうちのパートナーとの分担につきましては、パートナー側がどの程度ビームタイムを占有で利用するかということによってまいりますので、そこは今後協議になってくるかと思います。
【早瀬委員】  あと、先ほど産業界からも関心が高まっていると言いましたけれども、産業界からの予算というか、そういうのは期待できないんですか。
【大榊補佐】  そうですね。既に整備の段階でかなり民間企業からの資金拠出、参加の加入という形ですね。資金拠出がされていまして、その後……。
【早瀬委員】  それはどれぐらいの規模で予算拠出があるんですか。
【大榊補佐】  今の段階では、一口5,000万円で50社がということになってございますが、最終的にはパートナー全体として。パートナーは、これは民間企業中心でございますので、全体としては170億円規模ということで出していくと。これは地域と民間、セットでございますけれども、出していくという作りになってございまして、運用段階におきましても、当然利用する場合に、民間企業は利用料金を支払うことになりますので、その場合に民間企業の資金拠出がなされているということになると。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、大分時間も押してきましたが、議題(3)の平成31年度概算要求に向けた重点課題の事前評価についてに入ります。
 冒頭にお伝えしましたが、本議題については非公開で行いますので、傍聴の方におかれては、恐縮ですが、事務局の誘導に従って御退室をお願いいたします。
 あと、また、今日お越しいただいた後藤理事、島田理事、本日はどうもありがとうございました。
(以下、非公開)
―― 了 ――

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