量子科学技術委員会(第9期~)(第10回) 議事録

1.日時

平成29年4月10日(月曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 16階 科学技術・学術政策研究所会議室(千代田区霞が関3丁目2番2号)

3.議題

  1. 主査代理の指名等について
  2. 量子ビーム利用推進小委員会の設置について
  3. 量子科学技術の新たな推進方策(中間とりまとめ)について
  4. 注目すべき国際動向について
  5. 戦略的創造研究推進事業平成29年度戦略目標について
  6. 量子科学技術委員会における今後の検討について

4.出席者

委員

雨宮委員、飯田委員、岩井委員、岩本委員、上田委員、大森委員、城石委員、根本委員、早瀬委員、平野委員、湯本委員

文部科学省

伊藤科学技術・学術政策局長、真先審議官(科学技術・学術政策局担当)、村上研究開発基盤課長、上田研究開発基盤課量子研究推進室長、吉川研究開発基盤課課長補佐、橋本研究開発基盤課量子研究推進室室長補佐

オブザーバー

中村泰信 ERATO中村巨視的量子機械プロジェクト研究総括・東京大学先端科学技術研究センター教授

5.議事録

【吉川補佐】  それでは、定刻になりましたので、第10回量子科学技術委員会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。本委員会の事務局を担当させていただきます、文部科学省科学技術・学術政策局研究開発基盤課量子研究推進室の吉川と申します。よろしくお願いします。
 それでは、委員会の開会に当たりまして、量子研究推進室の上田室長より一言挨拶を申し上げます。
【上田室長】  量子研究推進室長、上田です。今日もまたお忙しいところ、ありがとうございます。2月に中間とりまとめをまとめていただいて、引き続きの御議論をよろしくお願いしたいと思います。
 事務的な連絡になりますが、親会に当たる科学技術・学術審議会ではこの春に改選がございました。こちらの量子科学技術委員会は引き続き同じメンバーの方々に御参集いただいております。ただし、これまで量子科学技術委員会は先端研究基盤部会の下にあったのですが、今回、研究計画・評価分科会の下に再整理されました。これは、これまで量子科学技術は先端研究の中でエマージングなものだという位置付けで、皆様に推進方策の中間とりまとめを御議論いただいておりましたが、そろそろ1つの分野という認識が広がりまして、この研究計画・評価分科会の下で改めて1つの分野委員会として設定されるということです。また、こちらの委員会で議論となる基盤的な話については、引き続き先端研究基盤部会の後継の組織がありますので、必要に応じてそちらに報告させていただくという形になろうかと思います。議論の内容としては変わらないので、どうぞよろしくお願いします。
【吉川補佐】  ありがとうございます。まず事務局より配付資料の確認をさせていただきます。
 議事次第に加えまして、配付資料として資料1-1から資料6、参考資料1-1から参考資料2がお手元にあると思います。欠落等ございませんでしょうか。
 続きまして、事務局より本委員会、量子科学技術委員会の設置経緯及び趣旨等について御説明いたします。参考資料1-1を御覧ください。2ページ目にございますように、科学技術・学術審議会令第5条第1項に基づき、科学技術・学術審議会の下に研究計画・評価分科会を置くことが定められております。
 参考資料1-2は、審議会の運営規則を参考として配付しております。
 参考資料1-3を御覧ください。1ページ目の下、第4条にございますように、研究計画・評価分科会は、運営規則第4条第1項に基づき、「特定の事項を機動的に調査するため、委員会を置くことができる」と定められています。
 これに基づき、参考資料1-4の2ページ目にございますように、平成29年4月6日に開催されました研究計画・評価分科会において量子科学技術委員会が設置されました。2ページ目の表の下から2番目です。
 参考資料1-3に戻りまして、1ページ目の下、第4条第2項において、「委員会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、分科会長が指名する」と規定されております。これを受けまして、研究計画・評価分科会の分科会長より、資料1-1のとおり本委員会の委員を指名いただいております。また、第4条第3項に基づき、雨宮委員が本委員会の主査に指名されております。
 本委員会の委員につきまして、委員のお名前をお呼びして、順に御紹介をさせていただこうと思います。
 まず、委員会の主査、雨宮委員です。
【雨宮主査】  よろしくお願いします。
【吉川補佐】  続きまして、名前の順に御紹介いたします。大阪府立大学大学院理学系研究科准教授、飯田委員です。
【飯田委員】  飯田でございます。よろしくお願いいたします。
【吉川補佐】  東北大学大学院教授理学研究科、岩井委員です。
【岩井委員】  よろしくお願いします。
【吉川補佐】  東京大学生産技術研究所准教授、岩本委員です。
【岩本委員】  岩本でございます。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  東京大学大学院理学系研究科教授、上田委員です。
【上田委員】  上田です。よろしくお願いいたします。
【吉川補佐】  自然科学研究機構分子科学研究所教授、大森委員です。
【大森委員】  大森です。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  株式会社日立製作所研究開発グループ技術顧問、城石委員です。
【城石委員】  城石です。よろしくお願いいたします。
【吉川補佐】  国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授、根本委員です。
【根本委員】  根本です。よろしくお願いいたします。
【吉川補佐】  慶應義塾大学理工学部准教授、早瀬委員ですが、所用のため、少々遅れております。
 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構理事長、平野委員です。
【平野委員】  平野です。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  電気通信大学情報理工学研究科教授、美濃島委員ですけれども、本日は御欠席です。東京大学大学院理学系研究科教授、湯本委員です。
【湯本委員】  湯本です。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  よろしくお願いいたします。また、文部科学省からの出席者を改めて紹介させていただきます。大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)真先審議官です。
【真先審議官】  真先です。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  科学技術・学術政策局研究開発基盤課、村上課長。
【村上課長】  村上でございます。よろしくお願いいたします。
【吉川補佐】  研究開発基盤課量子研究推進室、上田室長です。
【上田室長】  上田です。どうぞよろしくお願いします。
【吉川補佐】  よろしくお願いいたします。最後になりましたが、本日、委員以外で御発表いただく有識者を御紹介させていただきます。ERATO中村巨視的量子機械プロジェクト研究総括、東京大学先端科学技術研究センター教授の中村泰信先生です。
【中村先生】  中村です。よろしくお願いします。
【吉川補佐】  ERATOの研究総括として海外とも交流されているということで、今回の議題の中にある「注目すべき国際動向」で、本日、話題提供を頂く予定です。
 それでは、研究計画・評価分科会運営規則第4条第6項に基づきまして、本委員会の議事を雨宮主査にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  それでは、早速議題に入っていきたいと思います。最初が主査代理の指名等についてですが、研究計画・評価分科会運営規則第4条第7項に基づいて、私が主査代理を指名させていただきます。大森委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大森主査代理】  こちらこそよろしくお願いします。大森でございます。
【雨宮主査】  続きまして、本委員会の運営規則等について事務局より御説明お願いいたします。
【吉川補佐】  委員会の運営に必要な事項のうち、科学技術・学術審議会令、科学技術・学術審議会運営規則、研究計画・評価分科会運営規則に定められていない事項につきまして、委員会の運営規則等として定めておく必要がございます。
 まず資料1-2を御覧ください。第8期の量子科学技術委員会でも運営規則を定めましたけれども、基本的にそれと同じです。第2条に、「委員会は、その定めるところにより、特定の事項を機動的に調査するため、小委員会及び作業部会を置くことができる」としております。第3条ですが、「委員会は、委員会に属する委員等の過半数が出席しなければ、会議を開くことができない」としております。第4条、「委員等が委員会を欠席する場合、代理人を委員会に出席させることはできない」。また第2項に、「委員会を欠席する委員等は、委員会の主査を通じて、委員会に付議される事項につき、書面により意見を提出することができる」としております。また、第5条では、委員会の会議及び会議資料は、原則として公開するとしております。第6条、「委員会の主査は、委員会の会議の議事録を作成し、これを公表する」としております。第7条は雑則ですが、こちらについては、第8期から追加してございます。「この規則に定めるもののほか、委員会の議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は、委員会の主査が委員会に諮って定める」としております。
 続きまして、資料1-3を御覧ください。「量子科学技術委員会の会議の公開に関する手続について」の案です。こちらも第8期のときにも同様のものを定めました。まず第1項ですけれども、会議の日時・場所・議事については、原則として開催の1週間前の日までに文部科学省ウェブサイトに掲載いたします。第2項、傍聴につきましては、原則として開催2日前までに事務局まで登録することといたします。また、一般傍聴者について多数の傍聴者登録があった場合には、抽選を行います。第3項ですけれども、会議の撮影、録画及び録音につきましては、傍聴者は、主査が禁止することが適当であると認める場合を除き、会議を撮影、録画及び録音することができます。そうした場合には、事前に事務局まで登録いただきまして、主査及び事務局の指示に従っていただきます。第4項その他のところですが、傍聴者が、会議の進行を妨げていると主査が判断した場合には、退席を求めることができます。
 簡単ですが、以上で説明を終わります。
【雨宮主査】  今御説明いただきました資料1-2と資料1-3ですが、第8期のときの確認をとったことと同じですし、先ほど上田室長から説明がありましたけれども、上位の委員会が変わっただけで、それ以外のところは前回と同じで、特段変更はありませんが、今説明していただいた運営規則をこれで決定してよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
【雨宮主査】  それでは、異議なしとして了承したといたします。次の議題2の方に入っていきたいと思います。「量子ビーム利用推進小委員会の設置について」、これについてもまず事務局から御説明お願いいたします。
【吉川補佐】  ただいま決定させていただきました本委員会の運営規則第2条第1項に基づき、量子ビーム利用推進小委員会の設置について説明させていただきます。
 資料の2を御覧ください。第8期の科学技術・学術審議会の下でも量子ビーム利用推進小委員会を設置しまして、先端的な量子ビームの技術の高度化及び利用促進方策について調査検討を行ってきましたが、第9期の今回の量子科学技術委員会につきましても、このような形で量子ビーム利用推進小委員会を設置させていただきたいと考えております。
 以上です。
【雨宮主査】  今、資料2で本委員会の下に量子ビーム利用推進小委員会を設置するということですが、了承ということでよろしいでしょうか。
 (「異議なし」の声あり)
【雨宮主査】  それでは、異議なしとして了承したといたします。
 それでは、次の議題3に入っていきたいと思います。同じくまず事務局の方から説明をお願いいたします。
【上田室長】  資料3-1に念のため本委員会の中間とりまとめを置かせていただきました。概要でもって6枚、本文でもって60枚程度の随分と力作だと受けとめています。事務局たる文部科学省にて、この2か月弱の間、産学官の方々に説明や意見交換をやってまいりました。皆様に量子科学技術のポテンシャルをお示しいただいたので、産学官でこれをどう捉え、どう推進していくかについて、議論が喚起されるべきと考えて、回ってみたところでございます。
 資料3-2を御覧ください。中間とりまとめに対しどういった声があったかというのをこの場を借りて御紹介し、共有したいと思います。大きく4点ございまして、最初はロードマップの必要性についてです。様々なポテンシャルがあることは分かるが、どの技術がいつ頃にできるのか。国民目線でいって、それがロードマップのように明らかにされることが必要ではないかといった御意見です。また、2000年頃からナノテクノロジーが推進されましたが、そのときもロードマップがあったという御意見がありました。
 産業界との関わりにつきましては、量子と名前が付くととかく技術的に難しい印象を受けがちだけれども、このようにまとめられていると理解できたと。センサやレーザーなどは、ものづくり系の業界にとって産業応用を現実的に捉えられるのではないかといった御意見がございました。あるいは、ものによってフェーズが異なって、産業界が資源投入を検討するものもあれば、しばらく大学等での研究を見守りたいものもあろうと。何れにせよ、企業にとっては時間軸が示されることが必要と思われるという御意見がございました。また、ものづくり系の企業だけでなく、ITですとかサービス系の企業には量子情報処理に興味を持つ企業があるのではないかといった御意見もございました。
 次の項目に参りまして、光・量子技術の研究者層については、中間とりまとめにも層が薄いと書いてあるのですが、狭義に捉えるとそうかもしれないけれども、ナノテクや半導体を含め、広義に捉えると厚いのかもしれず、日本の強みを発揮できるという点は理解できるという御意見です。あるいは、大学等で拠点が形成されると、産業界にとって動きが見えやすいということもあって、企業が参画しやすいという御意見がございました。
 海外との関係で申しますと、海外で巨額投資が起きているなら、よほど戦略的に考える必要があると。そういうような研究開発投資を日本にどう呼び込めるか、国際的な形でも大学等がどう連携した形を作るのか、投資を誘引できるかなど、考えなければいけないのではないかといった御意見がございました。あるいは、中間とりまとめでは諸外国が先行するという危機感が表されているけれども、我が国は後塵を拝するとどういう問題が生じるのかといった素朴な御意見もありました。
 紹介としては以上でございます。私ども事務局の方から中間とりまとめの冊子を、委員の皆様方にお送り差し上げるときに、可能な範囲で、研究者コミュニティ以外の方々でも意見交換されてみてはいかがでしょうか、ということを申し上げておりました。もしそういうことをされて、反応があったような場合があれば、委員の皆様からお聞かせいただくのは大変貴重な共有となると考えますので、御紹介いただければと事務局として考えているところでございます。
【雨宮主査】  今、上田室長からありましたけれども、委員の皆様から、何かこの中間とりまとめ若しくは本委員会のウェブ情報に関して、我々に対して何か問い合わせ若しくは反応が何かあった場合には、簡単に御紹介いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 まず私自身ですが、別の会合で一緒になった一般財団法人の未踏科学技術協会の木村理事長から、先端科学技術の戦略について、一部上場企業10社位の戦略担当が集まって朝食会を開いているので、量子科学技術の関係で、30分位情報提供してほしいという依頼がありました。量子科学技術というのは非常に広くて、私の場合には、量子ビーム、特に放射光が専門なので、量子情報通信の実用化に関しては、私が適任かどうか分かりませんが、お引受けすることにしました。多分ウェブを見ての依頼だったと理解しております。
 私に関しては以上です。委員の皆様で、何か周りの方とのいろいろ情報のやりとりがあった場合は、どうぞ。
【大森主査代理】  私の個人的なケースで申し上げますと、上田室長も先ほど少し言われましたけれども、報道関係の方がかなり興味を示されているということがありました。幾つかの大手報道機関の科学に詳しいジャーナリストの方が、諸外国の進展状況と比較して、日本がこれだけ遅れてしまっている状況は本当に大丈夫なのかと。そういったことも含めて、ある程度まとまった形で報道してみたいというような反応がありました。
 ただ、先ほど上田室長も言われたみたいに、少し量子というのは難しいんですね。説明するのも非常に難しいので、まだ実際記事にはなっていないんですが、そういった意向を強く持っておられるジャーナリストの方が複数おられるということが一番印象的だった事例でございます。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。ほかに何か。今後このような感じで情報発信したいという予告でもいいかと思います。委員会を開催して、とりまとめをここでやっているわけですけれども、情報収集若しくは情報伝播というところも我々の役割だと理解していますので。では、どうぞ。
【城石委員】  日立製作所の城石です。オープンな会議ではないので、御紹介しにくいところがあるんですが、IT・エレクトロニクス分野の業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)でもいろいろと議論させていただいて、量子が大事だねとか、光が大事だねという話になっています。IT・エレクトロニクス分野の企業幹部からも、量子をやるべきだとか、量子コンピュータをやるべきだとか、企業も量子をやらないとこれからやっていけないという話が出ていまして、それだったらどなたにいらしていただくかは、まだこれから議論なんですが、JEITAの会合にお呼びして、是非その辺のお話を伺って、いろいろなアクションにつなげたいという話があります。
 JEITAは日本の情報産業あるいは電子部品などいろいろな業界が集まっている重要な団体で、現在弊社の東原CEOが会長をやっていますが、そのような会のメンバーの方が、皆さんそういう問題意識を持ち始めたということで、本委員会でやっていただいているいろいろな成果がこのような場を通じてどんどん企業にも認知されていくことになるのではないかと思っております。今後とも御指導いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  ほかに何か。
【岩本委員】  私は、身の回りの現場の研究者というか、企業の方も含めて、いろいろお配りしたんですが、企業の方は、やはりなかなか難しいようで、先ほど上田室長から御紹介があった資料3-2にもあるんですけれども、大学の方で何かそういう拠点があるとやはり参加しやすいということは確かに言っておられました。あとは、長いスパンの研究になるだろうから、そこを企業としてどう考えたらいいのかというのが、私が話したのは正に現場の方ですが、現場の方もそういうふうに思っているところがあるようです。
 あと、若いポスドククラスの研究員にも見せましたが、国として議論されているということが若い研究者に伝わる機会にもなって、内容的にもいろいろインスパイアされたようですので、研究開発のディレクションを決めていく人たちだけではなく、これからそういう分野に入っていこうという人たちにも提供できるいい材料になっているのではないかなと感じました。
 以上です。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
【大森主査代理】  あともう1点。後で上田室長や有識者の方から御紹介があると思いますが、欧米、中国を中心に似たような政策がものすごい勢いで加速しています。そういった国でそういった政策立案に携わっておられるようなレベルの研究者の方に、本委員会で中間とりまとめ等を公表したと話をしたところ、例えば米国であるとか、ドイツ、フランス、英国、中国、各国のそういった動きに関わっておられる方が非常に興味を持って、日本がそういうことを始めたということを知って、注目しておられます。残念ながら、中間とりまとめは日本語だけですので、内容を全部説明する余力もありませんので、そこまではやっていないですが、そういった興味を持って、皆さんが注視しているといったような状況がございます。
【雨宮主査】  どうぞ。
【早瀬委員】  研究者の方々からの意見は、皆さんから紹介があったので、また別の視点から言うと、本とりまとめを周りの研究者だけではなく、学生にも見せたんですね。少し感じることに、今の学生の研究志向というか、研究を将来職業としてやっていこうというような意識が、少なくとも私の周りの学生は少し薄らいでいることがあります。やはり修士を出て企業に入って、例えば技術者などを目指す人が多いのですが、どうしても研究を職業としてやっていくという志向が少し薄らいでいるということを感じており、ただ、学生に聞くと、研究が将来どういうところに結びついていくかが少し分かりづらいと、普段の勉強もあまり身に入りにくいという意見がありました。例えば量子技術のような、特に先が見えないようなことですと、なかなか学生の興味が向かないところがあるのですが、こういったものを少しでも見せ、将来どういうところに役立っていくか等、道筋が少しでも示せると、学生も少しやる気が出て、その中の一部でも、将来研究を職業とする学生あるいはそのような志向を持った学生が増えてくると思います。実際、学生に少し見せたら、ああ、こういうふうに役立つんですねと、興味を持ってくれるような学生もいて、こういうのをもう少し授業でも示してくれると役立つのではないかと。私も量子力学を授業で持っているのですが、どうしても基礎勉強だとかになると、学生もそれが一体何の役に立つのか分からないと、なかなか身に入りにくいんですが、こういったものを最初に見せると非常に学生もやる気が出ると言っていました。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。ほかに。
【平野委員】  たまたま、先週ですが、量子科学技術研究開発機構(QST)の記者懇談会を行い、その際にお手元にある量子生命科学研究会や7月に予定している国際シンポジウムでテーマとして取り上げている量子生命科学のことについて少しお話をしました。生命科学はこれまでに個体レベルから細胞レベル、そして分子レベルと研究が進んできておりますが、これらの研究は様々な計測技術の進歩と非常に密接に関係していて、今、量子センシングや様々な計測技術が進歩してきている中で、生命科学も分子レベルから量子レベルへと進んでいくのではないか、というような内容でしたが、記者の方々にはかなり関心を持っていただきました。また、明後日、第1回の量子生命科学の研究会を東大で行いますが、会場は100人しか入らないところ、当初想定していた人数を大幅に上回る参加申込みがきており、あふれるぐらい入りそうだということです。こういう形で一部量子科学と生物学というのをまとめていただいているので、こういう分野も生命科学の方にもまた脚光を浴びるのではないかとは思っています。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。いろいろ各委員の方から御意見を頂きまして、ありがとうございました。事務局の方から何かこれに関して、またコメントがあれば。
【上田室長】  私ども、量子研究推進室にも、たまたまですが、ある大学のリーディング大学院から特別講義の依頼がありまして、この中間とりまとめを紹介しました。参加者には物理系、材料系の方々が多かったのですが、やはり同様の反応があり、早瀬先生がおっしゃったとおり、学生は、こういう効用があるとか、あるいは新しくライフサイエンスとの融合も考えられるというような話には御興味があって、閉会後に量研室が結構な質問を受けたということがあったことを付言いたします。産業界の方々も、量子という言葉だけで言うと、最初はウッ、となるのですが、中身を説明し始めると、普通に分かっていただけることが多くありました。引き続き私ども事務局としても、産学官の議論を喚起していきたいと思いますし、皆様においてもできる限り御協力いただければと思います。
 以上です。
【雨宮主査】  それでは、次の議題に入っていきたいと思います。議題の4ですが、「注目すべき国際動向について」、事務局より趣旨の御説明をお願いいたします。
【上田室長】  御説明いたします。注目すべき国際動向ですが、中間とりまとめにも一定部分まとめられておりますが、そのときの時宜を見て、御紹介すればいいかと思います。最初に私ども事務局の方から、後に先生方から紹介いただくことを考えておりますので、よろしくお願いします。
【雨宮主査】  事務局から資料の4-1ということでお願いします。
【上田室長】  資料4-1を御覧ください。3つの資料がまとめられております。最初の資料は1ページ目からで、「Quantum Manifesto」というヨーロッパで作成された文書です。去年の5月に取りまとめられています。産学官の3,000人を超える研究者が推進し、EUの政府に出されているものですが、ポイントとなる部分には、事務局で黄色の強調を付していますので、そこを中心に御紹介したいと思います。
 3ページ目を御覧ください。このマニフェストですが、1ビリオンユーロ、1,000億円以上のフラッグシップスケールのイニシアティブを、2018年からスタートすることを呼びかけているといった位置付けでございます。
 6ページ目を御覧ください。彼らの決意的なものが述べられています。ヨーロッパは今、第2の量子革命をリードするために戦略投資が必要だと言っています。サイエンティフィックなエクセレンスな上に立って、ヨーロッパはコンペティティブインダストリーを作る。それは、長期にわたる繁栄とセキュリティのためだ、というような位置付けがなされています。
 また8ページ目を御覧ください。今回の中間とりまとめに対する主な声にもありましたが、ロードマップ的なもの、タイムラインということで、上の図は2015年から2035年まで、特に下の方に4分野に分けてCommunication、Simulators、Sensors、Computersと記載がありますが、これらについて0から5年の中でのタイムラインとして考えられるもの、5年から10年のタイムラインとして考えられるもの、10年以上のタイムラインとして考えられるものといった形で、ロードマップ的なものを記載しているというのが1つの特徴だろうと考えます。
 続きまして、2番目の文書です。21ページ目を御覧ください。こちらからが英国の量子技術に対するナショナルストラテジーです。これを基に英国側でファンディングも動いているというものでございます。こちらにも黄色で強調を付しております。
 22ページ目を御覧ください。黄色部分でemerging multi-billion-pound new quantum technology markets、数千億円規模のマーケットがエマージングしていると言っており、これは最も大きいイギリス産業の幾つかの価値を増大するものであるというような位置付けがなされております。
 あとは、ところどころ黄色で強調しているところが、彼らなりのこのナショナルストラテジーにかける思いが出ているところかと思いますが、詳細は省略をいたします。
 ただ、1つ、28ページ目にUKのプログラムの中で、将来のコマーシャルユースに向けたロードマップ的なものが時間軸とともに掲載されてございます。ざっと見たところ、量子計測、センサの方が近未来にわりと多く記述され、後半になってくると量子情報処理的なものもあるということがお分かりいただけるかと思います。
 最後に3番目の資料が33ページ目にございます。1番目と2番目の資料は欧州のものでした。米国でも種々ありますが、1つ代表的なものとしてこちらは、米国の科学ファンディングを担っています全米科学財団の長官が去年8月発表した資料です。Looking Ahead 10個のビッグアイデアという題です。今後の投資に係る10個のアイデアがあるということで、リサーチアイデアと記される研究分野としては上の方に記載の6つがあって、プロセスアイデアとして記載される進め方として、下の4つがあるというものです。その1つが、The Quantum Leap:Leading the Next Quantum Revolutionということで、くしくも欧州と同じように、次の量子革命をリードするといった趣旨の下にこういった分野が重要なのではないかという提言が出てございます。
 私の方から以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。それでは、この後、資料に基づいて、4名の委員・有識者の先生方に5分程度の話題提供をお願いしたいと思います。大森委員、中村先生、岩本委員、岩井委員という順番でお願いしたいと思っています。
 では、まず、大森委員に資料4-2を使って御説明をお願いいたします。
【大森主査代理】  分かりました。大森でございます。では、早速説明させていただきます。最近の新たな国際政策動向について最初御説明しますが、去年の6月にも同様の説明を差し上げておりますので、基本的にはそれ以降の新しいごく最近の動向について御説明したいと思います。
 まず、先ほど上田室長から御紹介のあったQuantum Manifestoというプログラムです。これ、実は、ヨーロッパのECのFuture Emerging Technology flagship(FET flagship)という巨大プロジェクトのグラフェン、脳科学に続く3番目の候補として量子科学技術が今準備中なんですけれども、その準備プロジェクトというのがいろんなところで進んでおります。
 例えばドイツでは、National initiative、Quantum technology-fundamentals and applications、QUTEGAという準備プロジェクトが2018年から最低10年間続く予定です。2017年に第1期パイロットプロジェクトという3年プロジェクトを開始予定で、もう既に申込みは締め切られています。これはドイツの教育研究省、The Federal Ministry of Education and Research(BMBF)の運営でございます。
 もう少し特殊な分野に特化したものまで目を向けると、DFGの重点領域として、リュードベリ原子と呼ばれる量子シミュレータとして最も期待されている粒子の1つに焦点を絞った量子科学技術プロジェクトが2016年から走っておりますし、またもう一つ違った毛色のものとしては、ドイツはこのほかにも地方政府が支援する量子科学技術プロジェクトが非常に多くあるんですが、例えばバーデン=ヴュルテンベルク州という、非常に産業が盛んでお金持ちの州なんですが、この中でシュツットガルト大学、マックス・プランク研究所、ウルム大学等が共同研究センターを設立して、量子科学技術プロジェクトを2014年から続けていて、今もそれが継続中です。
 ポーランドも同様に、FET flagshipの準備プロジェクトが走りつつありまして、これはCofund Initiative in Quantum Technologies、QUANTERAと呼ばれるもので、2017年からスタート予定です。これは26か国、32機関のネットワークプロジェクトで、2017年3月15日締切りでプロジェクトを募集しています。総予算が3,400万ユーロで、ポーランドのナショナルサイエンスセンターによる運営。ポーランドだけで運営するのは若干厳しいところもありますので、ECが財政的にバックアップしているという状態です。これもアドバイザリーボードとかエグゼクティブボードのメンバーを見ると、ポーランドに事務局があるんですが、ドイツ等の経済的に豊かな国の人たちが動かしているように見えます。
 米国ですが、これについては、ホワイトハウスでオバマ政権の最後の方で量子科学技術政策を再構築するという動きがありました。例えば、国家科学技術会議、NSTCの科学委員会が国土安全委員会と共同で「Advancing Quantum information Science:National Challenges and Opportunities」という報告書を昨年の7月26日にリリースして、これをフォローアップする形で、オバマ元大統領の主導の下に、Office of Science and Technology Policy、OSTPがQuantum information Scienceに関するフォーラムを2016年10月18日のアイゼンハワー行政ビルで行っているとか、このように再構築が進んでいます。
 最も注目すべきは中国でして、これは英語のホームページはまだ立ち上がっていないんですが、2017年に開始予定の「量子通信および量子コンピューティング」という莫大な規模のプロジェクトが今準備中でして、一旦始まると、15年から20年継続する見込みだそうです。予算規模が5年間で150億元、2,400億円という、少しびっくりするぐらいの投資が予定されています。
 諸外国の動向としてはこういったところで、もう一つ、事務局から冷却原子関連の研究開発動向について紹介するようにとの御指示がありましたので、そちらも手短に御紹介いたします。まず冷却原子関連で技術開発等としまして1つ挙げられるのが、これまでも光格子に高密度の原子集団を導入して格子状の原子結晶を作ってシミュレーションするという実験が多かったんですが、今や、1個1個の原子を自由にマニピュレートして、任意の形状で原子を並べるという技術がこの1年間で非常に発達しました。そういったことを使って、反強磁性磁気秩序の観測とか、これまでできなかったような実験ができるようになっています。
 こういったところでトップランナーなのは、例えばパリのインスティテュート・オブ・オプティクスのアントアン・ブロアイズ氏らのグループや、マサチューセッツ工科大学のブラダン・ブレテッチ氏らのグループが挙げられます。
 同様に、1個1個の原子を観測するという技術もますます発展しておりまして、これらにおいては、ハーバードのマーカス・グライナー氏、マックス・プランク研究所のエマニュエル・ブロッホ氏、マサチューセッツ工科大学のマーティン・ツウィアーライン氏等らのグループが世界をリードしている状況であります。
 2番目の進展としましては、これまでほぼ量子シミュレータというのは、例えば光格子で1個原子があるとして、隣の原子がそこに移ってきたときに働く反発力をシミュレートする仕事が主に行われてきたんですが、実際は、もっとたくさんの粒子が長距離相互作用で相互作用している強相関係と呼ばれるような系が発現する豊かな機能性というのがあるわけです。例えばソフトマター、ガラス系、液体、生態系、スピングラス、トポロジカル絶縁体、さらには宇宙論であるとか素粒子物理なんかも強相関係の例であるわけです。
 そういったことまでシミュレーションできると量子シミュレータの価値がぐっと広がるんですが、去年、2つのグループ、1つはマックス・プランク研究所のブロッホ氏、もう1つは、我々なんですが、リュードベリ原子という粒子を使って、そういった近い相互作用だけじゃなくて、数十個以上の原子が長距離相互作用で強相関係を作っている量子ダイナミクスを観測する技術というのが開発されまして、これも1つ画期的な進歩であると思います。
 あるいは、トピックス的には、新しい物質相、超固体みたいなものを実現したりとか、孤立した量子系がエネルギーを与えられたときにどうやって熱平衡化するかとか、そういった今までの量子格子模型にとどまらない様々な量子現象をシミュレーションしようとするような動きもだんだん盛んになってきています。
 これは厳密には原子ではないんですが、イオントラップでも同様の研究開発が進んでいまして、先ほど申し上げた長距離相互作用で数百個のイオンが量子相関して時間変化していく様子を観測したNISTのジョン・ボリンジャー氏らのグループの研究例であるとか、あるいは、空間方向だけじゃなくて、時間方向に同じダイナミクスの周期を繰り返すような結晶状態を実現するというような新しい現象をJQIのクリス・モンロー氏らが観測するとか、イオンの方も少し視野が広まった対象をシミュレートするようになってきていますし、先ほど申し上げたように、原子の場合と同じく、近距離相互作用から長距離相互作用を起因とする強相関係をシミュレーションするという方向に技術が発展しつつあるというところです。
 以上です。
【雨宮主査】  大森委員、どうもありがとうございました。それでは、次に、中村先生、よろしくお願いいたします。
【中村先生】  それでは、御説明させていただきます。私は超伝導量子計算というテーマで話題提供をさせていただきます。最初のページです。今、この分野ではかなり大規模なチームが世界を引っ張っているという状況になってきまして、その代表的な例をリストアップしたものを示しております。
 ここにありますように、皆さん御存知の企業ばかり、IBM、グーグル、それから、大学ではオランダのデルフト工科大学がインテルと一緒にやっているとか、MITとかが世界的にかなり大きなリソースを投じて進めているという状況です。
 マイクロソフトの囲みの色だけ変えてあります。マイクロソフトは実は、超伝導量子ビットを用いた量子計算にあまり関わっていません。御参考までに申し上げますと、特にアルゴリズムだとかソフトウェア、それから物理系ではトポロジカル量子計算と呼ばれるマヨラナ粒子というものを使った計算方式の実現を目指して盛んに投資を開始しています。
 そのような状況に対して、中国では、先ほど大森委員からもお話がありましたように、国からも大きな投資があって、さらにアリババとか、そういう大きな企業からの投資もたくさん集まっているという状況で、実験も進展しつつあります。
 今、全体的な傾向としては、今回、量子アニーリングについては触れませんけれども、いわゆる量子計算というものについて、大きなグループが数年で50ビットぐらいの規模を目指してやっているという状況です。目下ここ数年のところターゲットになっているのは、量子優位性、quantum supremacyと呼ばれるような、有用性の如何(いかん)に関わらず、通常のコンピュータにはできないようなことを取りあえず示すという目標と、それから、まだ誤り耐性がない段階でも、ある程度の規模の量子シミュレーションを量子ゲートモデルで示すこと、それから、もちろん誤り耐性量子計算の基本ユニットを実証するということです。
 下の方に書いてありますが、これ以外にも米国では大学がかなり大きな規模のグループを持っていまして、イェール大学だとか、カリフォルニア州立大学バークレー校などが挙げられます。ヨーロッパではほかにETHなどが大きなチームを構成して活発に研究しております。
 続きまして2ページ目に移ります。実は3月に私も米国の物理学会(APS)に参加してきました。量子計算、特に超伝導量子計算の分野で、定例的な国際会議というのはあまりないですが、基本的には年に1回の米国物理学会が一番情報の集まるところという状況になっています。
 そこで、今回も非常に盛り上がっていまして、上の方に書いてありますが、超伝導量子ビット関連だけで400講演ぐらいありました。昨年に比べても多分50%以上は増えているという状況で、APSの中でも非常に存在感を示しています。今回月曜日から金曜日までずっとパラレルセッションで2つ以上走っていましたので、相当な講演数になっています。
 その中で、私が強調したいのは、誤り耐性というのはまだ完全にはできていないですが、その状況でも新たにいろいろな学術的な知見が得られているというような報告がありました。特にグーグルのチームなんかは今、9ビットぐらいをかなり精密にコントロールできるようになっていまして、そこでいろいろと理論的にも新しいアイデアが生まれてきているという状況です。そのほかに特に盛り上がっていたセッションは、下の方にありますけれども、3次元、2次元に量子ビットを並べるというものです。もちろん配線は3次元に配線しないといけないのですが、そのような取組がかなり、特に大きな企業で活発化していまして、今非常に進んでいます。それから、それを制御するエレクトロニクスやソフトウェアについても企業が力を入れて開発しているという状況です。そういう取組と、そのほかに非常に裾野が広いというか、ほかの大学においてもいろいろな研究が並行して行われている状況です。
 最後のページに移っていただきまして、1つだけ事例として御紹介したいと思います。リゲッティ・コンピューティングという米国のスタートアップ企業がありまして、2013年に設立されております。左にありますチャッド・リゲッティ氏というCEOが、イェール大学でPh.D.を取って、IBMに行き、1、2年在籍して、その後飛び出してこの会社を立ち上げました。本当に何もないところから立ち上げて、今、上にありますように、つい最近、スタートアップのファンディングから第2弾のお金を得ることに成功しまして、6,400万ドルというような額を集めています。しかも彼らは素子を作るところから実験を行い、更にソフトウェアの開発まで全部自前でやるという戦略を取っています。今、恐らく数十人雇っているという状況で進めています。去年まではほとんどビジビリティがなかったんですが、今年は米国物理学会で10件の発表をしていまして、しかもかなりレベルの高いものでした。ウェブ上ではAPI、アプリケーション・プログラム・インターフェースですが、ソフトウェアの方も公開しているということをやっています。こういうスピード感で進めるということができるというのが米国のスタートアップの強みかなというところがあって、逆に考えると、こういう投資があればかなり進むということがこれから期待されると思います。
 ほかにもスタートアップカンパニーは、今、米国を中心に無数にでき上がってきておりまして、専らソフト開発が中心なんですが、こういう実験に取り組むところもこれからまた出てくるかもしれないという状況であります。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。それでは、資料4-4を用いて、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  岩本でございます。少しフォトニクス寄りの話で、今日は1枚目に挙げました2つを御紹介させていただきたいと思います。1つ目は、Integrated Quantum Photonicsというもので、2つ目がTopological Photonicsというものを御紹介したいと思います。
 2枚目ですが、Integrated Quantum Photonicsということですけれども、光が量子情報の媒体として有効な1つの候補であるということは皆さんよく御存知ですが、それで量子通信を始め、それを使った応用というのは幾つかありまして、光回路の形で機能を出していくわけですが、その構成要素である光源ですとか、光の通り道だとか、検出器というものをオンチップに集積化すること、又はそのための技術ということに定義付けられると思います。それによってこの光量子回路の小型高密度化が図られますので、スケーラビリティが確保されると。これは堅牢(けんろう)化しますし、可搬というメリットも出てくるでしょうということで、注目されている技術の1つだと考えられます。
 国内外で既に幾つかのプロジェクトが動いておりますが、現在走っています北山研究総括のCREST領域でも、東大の古澤先生が光量子回路のオンチップ化ということで進めておられると思いますし、海外の動向として幾つかの資料を別紙でお配りしておりますが、海外の動向も幾つかあろうかと思います。時間の関係で十分調査し切れておりませんので、必ずしも完全ではございませんが、例えば今日資料4-4-1に付けさせていただいたのは、珍しいものですとSiCとか最近の材料、プラットフォームの材料として出てきているプロジェクトが海外で動きつつあります。
 注目されているというのはどの辺で分かるかということの例としまして(資料4-4、2ページ)、例えばOSA、米国の光学会ですけれども、正にこの技術をタイトルにしましたトピカルミーティング、Integrated Semiconductor Quantum Photonic Devicesということで、今年の6月に開催することになっていますし、幾つかの雑誌、今回ではフロンティアという雑誌を例に取り上げていますが、そのスペシャルイシューの企画が進んでいます。プラットフォームとしては、シリコンフォトニクスですとか、SiO2、若しくはSiN、先ほどお話ししたSiC、ダイヤモンド、Ⅲ-Ⅴ族半導体、いろいろありますし、原子系というのも当然、アトムチップなどの議論もあります。これ、少し発光体の方に行ってしまっていますが、量子光源の性能を上げるというか、オンデマンド性を高めるためには、こういったより量子的な光源を用いる必要がありますし、非線形デバイスなどに使っていくという方向もあります。
 左下の図は、Laser&Photonics Reviews誌に出ています。あるときに出たレビュー論文の図が表紙になった例ですけれども、コンセプトとしては、正に量子的な光源があり、導波路を通って、ここは干渉計で、ある機能を作り出すところですが、最後に検出器に入って、多様な量子機能が正にチップ状で構成されるのを狙った研究が進んでいますという紹介になっています。
 こちらの図(右図)は、完全にまだオンチップに集積化されていないのですが、先ほど中村先生からもスタートアップ企業の話がありましたけれども、関連企業が動きつつあります。これは単一光子という量子的な光源を作るデバイスを正にチップ状に作り込みましたというものです。
 これは資料4-4-2でカタログをお付けしておきました。先週までたしか横浜で行われていました光ファイバーの会議で、この会社も展示をしていまして、もともとデンマークの会社だったと思いますが、日本でも販路を作りたいということで頑張っています。これは先ほど申し上げたように、いろんな機能が集積化されているわけではありませんが、その1つのコンポーネントをオンチップ化して、その段階ですけれども、市場に出していこうという取組の1つになっています。
 もう一つの話題として、これは量子とは直接関係ないかもしれませんが、Topological Photonicsという題材について御紹介をしたいと思います(資料4-4、3ページ)。物質科学の分野ではトポロジカル絶縁体というのが非常に広く議論されておりまして、トポロジカルなコンセプトでノーベル賞にも関連をしているわけですが、その概念を光技術に展開するというのがTopological Photonicsという概念でして、JSTのCRDSでも昨年末に議論が行われて、間もなく報告書が出てくるところかと思います。その概念を適用することによって、物質系でいろいろ議論されてきた不完全性に強い、例えば光の伝播(でんぱ)ですとか、共振器などへの応用が可能ではないかということが今議論されておりまして、フォトニクスの新しいプラットフォームの可能性として各国で研究が進んでいます。
 ここではフォトニクスを御紹介しておりますが、少しここに書いておりますとおり、必ずしもフォトニクスに限定されたものではなくて、音響学ですとか、フォノンとか例えば熱も関係します。より大きな構造体などにも同様の概念が波及しつつありまして、新たな分野を築きつつあります。
 Topological Photonicsの点に戻りますと、海外では大変盛り上がりを見せております。資料4-4-3は、今年の初めだったと思いますけれども、行われた国際会議の報告というか、レポートが「ネイチャーフォトニクス」に出たものでして、世界的にこの分野で注目され、盛り上がっているということを紹介している内容です。幾つかレビュー論文等もあるんですが、残念ながら国内ではまだほとんど研究が進んでいないというのが現状です。
 これは我々国内だけではなくて世界的に言えることですが、これから更に盛り上がっていく、若しくは実用化に資するためには、具体的な応用の可能性の議論やその実証というものが必要になっていくと考えられておりまして、やや構造が複雑なものを使わないといけないので、そういった作りやすい構造が見つかるかということも1つの課題になっています。
 光の分野ですと、光そのものと物質との相互作用というのは常に重要な領域です。このTopological Photonicsの概念を使ったプラットフォームと物質の相互作用を使うことによって、更に広い応用の可能性も開かれるのではないかと考えられます。そのときには、物質側のところにトポロジカル絶縁体を使うというのも1つの可能性としてあろうかと思います。
 一方、このような構造は、昨年、野田先生も御紹介されたフォトニック結晶という構造と極めて近い構造でして、日本ではなかなか今、Topological Photonics、進んでいないんですが、強みを発揮できる可能性がある1つの分野であると考えられます。
 一方、光渦やベクトルビーム、これは海外ではStructured Lightと言われていますけれども、そういうものについては既に国内でも研究があります。これらの光もトポロジカルチャージを持つという意味では、広い意味でTopological Photonicsというものに含められると思いますので、これらの関連の中で新たな展開が図られる可能性があるのではないかと考えているところです。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。それでは、今度は資料4-5に基づいて、岩井委員、お願いいたします。
【岩井委員】  私の方からは、こういう先端光源などを用いた材料科学や物質科学の研究動向ということで御紹介をさせていただきます。今までのこの量子科学技術委員会で主な議題に上がっているような超伝導や半導体、あるいはダイヤモンドのような、非常にきれいに整備された、量子効果が発現するべくして発現できているような非常に精密な話とは少し違う話で、むしろもっと汚い系の中で量子効果をどう制御していくのか、というフェーズにある研究です。
 一番初めに大森委員の方から強相関の話がありましたが、強相関電子系の物理というのは非常に劇的なことが起こると言われているんですが、そのメカニズムが非常に複雑ですので、だからこそ原子、分子等を使った系で量子シミュレータが必要だということになっていると思うのですが、昨今の技術的なイノベーションによって、その強相関電子系そのものをもっとよく制御できるようになるのではないか、という意図の下の研究が内外で国際的に進みつつあるというお話です。
 分野としては、日本では光誘起相転移、あるいはPhotoinduced Phase Transitionsと言われています。こういう絶縁体金属転移とか強磁性転移のようなマクロスコピックな電子やスピンの状態が光によって変わるという現象で、過渡的だったり、永続的だったりするわけですが、過渡的な場合は、いろんな機能のスイッチングに使えますし、あるいは永続的な場合には、加工の動作原理としてよく研究されています。最近ではスマホの導電性ガラスに超短パルスレーザーを使うと非常にきれいに切れるなんていう研究もあるようです。
 そういった光によって物質を変える、改変するというような研究は、実は80年代から90年代の初めにかけて始まりましたが、その多くは日本の著名な研究者が始めたという点は1つ特筆すべきことだと思います。当時の色中心とか半導体や酸化物、あるいは有機結晶の研究をベースにして始まったと。Photoinduced Phase Transitionsという国際会議が、今年で6回目を数えますが、豊沢先生や那須先生という日本の著名な研究者を中心にして立ち上げられて、今年、この6月に仙台で行うことが決まっています。
 そのほかにもいろんな内外の人を巻き込んでゴードン会議が2008年から始まって、今に至るまで続いているという状況です。そのあたりの経緯は、レビューモダンフィジックスをはじめとする国際レビュー誌で継続的に発表されていまして、分野としては、少なくとも基礎研究としてはかなり活発に続いています。顕著な結果としては、光による絶縁体金属転移や、あるいは強磁性転移。最近では光誘起超伝導なんていうキーワードがあって、これが本当にできるのかどうかということがよく議論に上っています。
 この研究分野の1つの特徴は、先ほどもトポロジカルとかディラクとかというキーワードが出てきましたが、最先端の物質科学と光科学のカッティングエッジなところ、あるいは、理論計算でも最近大分進展があります。
 こういう物質科学と光科学と理論計算という3つの最先端の分野が集まってどんどん進んでいるわけですが、今までは複雑でよく分からないという状況が、何とかなるのではないか、という状況になりつつあるということが内外で言われています(2ページ)。
 例えば、光を物質に当てるということは必ずヒーティングが起こってしまうわけです。そのときには、固体の中でいろんな性質が変化するというのは、スピンや電子の秩序がそろったり、そろわなかったりするわけですが、それが溶けてしまう方向には行くんですけれども、それを冷却したりとか、あるいは秩序をむしろ強くするという方向というのは、一般的には光とは相性が悪いと言われていたんですが、それを光の使い方を変えることによって可能になるのではないかと。フロケ状態とか、ドレスド電子状態とかと言われていますが、電子と振動電場や振動磁場の非常に強い相互作用を使うことによって可能になるのではないかということは理論的にも言われてきましたし、実験的にもそういう試みが行われつつあります。
 もう一つは、光の高速性をもっと有効に使うということです。光電場や光磁場の振動周期は1フェムト秒から数フェムト秒ですので、うまくそれを使えば、固体の中の電子やスピンの動きをそのぐらいの速さで制御できる。つまり、ペタヘルツのいろんな動作が可能になってくる。そういうことがだんだん見えてきたということです。もちろんそれには物理的な限界あるいは技術的な限界があるので、それをどのようにこれから克服していったらいいのかということが問題になっているわけです。
 そういう話は元からこういうところでやられており、特にフロケ状態は、こちらが本家本元でやられていたわけですけれども、固体にそれを移行するときの一番大きな問題点は、固体では非常に速い熱化や散逸が起きてしまうことです(3ページ)。これは時間スケールに対していろんな相互作用があるからですが、それをどう避けるかというのがいろいろな議論があるわけです。1つの答えは、そういう熱化が起きてしまう前のところで現象を起こしてしまうということです。数フェムトから10フェムト秒ぐらいのところで、いろいろなことを起こし、それをすくい取ってしまうというのが、言うは易しですが、シンプルな解であろうということです。それによって、固体の中の凝縮系のこういうフリージング、クーリングを可能にできるのではないかと思っています。
 そういう研究は、実は今内外で非常に進んでいて(4ページ)、これ(左上図)はこの分野では非常に有名な絵ですが、横軸が振動電場、光電場の振動数、この辺がテラヘルツで、この辺が光になるわけですけれども、縦軸は電場や磁場の強度です。もちろん普通の光応答というのはこの辺を見ていたわけですが、高強度のテラヘルツ光というのがこの10年ほどで技術的に発生が可能になってきましたので、このあたりの物理がいろいろとやられてきたと。それがここ数年で高周波の光の方でも出てきて、理論的には何十年も前から言われてきたことがようやく実験的にも試せるようになってきた、という状況にあります。
 ここでは1つだけ例を挙げさせていただきます。動的局在という現象です。これはいわゆる動的安定化の一種です。倒立振り子という重心が上にある非常に直感的には不安定な振り子を縦方向に、Z方向に非常に強く振ると、重りが上にあったまま安定するという、動的不安定化の例ですが、これの量子力学版ができるんじゃないか。つまり、固体の中で動き回っている電子を非常に強い電場で揺さぶると、それが止まってしまう。そういうことが起きるということは30年前から予測されてきたわけですが、そういうことを実験でもできるようになってきたと。これ(左下図)は我々の最近の結果ですが、強相関電子系の中で、電子を止めることによって、クーロンの効果とうまく相乗させると、電子が凍結してオーダーができるなんていうこともあります。
 更にもう少しうまく使うと、導電性を変化させるだけではなくて、磁性を変化させたり、超伝導をもじったりすることも可能になるであろうということで、材料科学としてはできることというのは、強誘電性や強磁性や超伝導を光でどう制御するかということに尽きるわけですが、それの新しい方法として、フロケ状態やドレスド電子というのが今注目されています。
 更にその先には何があるかということですが(5ページ)、テクニカルには、今、我々物質科学の人間が作れる光源としては、ほぼシングルサイクルで、電場の強度でいうと100メガボルト(MV)/センチ(cm)です。これを磁場に直すと、磁場は同時に30テスラが出ているわけですが、そういう電場や磁場を物質の表面に印加することができるようになっているわけです。
 更にその先、もっとパルスを短くすると何が起こるかというと、ハーフサイクルです。うまく位相を調整すると、空間的に偏った非対称な電場や磁場を発生させることができて、電子やスピンの空間反転対象を直接1フェムト秒や2フェムト秒の速さで制御できる。これは完全に新しい世界が生まれてくるということです。しかし、そういったものをいかに見るかということも同時に必要になってくるので、極限的な時空間の測定手法が、今、盛んに研究されていますが。光電子顕微鏡とかアト秒X線などの時間トレースも併せて開発して、今までとは違った複雑系を光でどう制御するかということに対して、完全に新しい展開が生まれてくるのではないかと思っています。
 最後ですが(6ページ)、仙台で行われる光誘起相転移の会議でも、スコープを全部書きましたが、今お話ししたような技術的なアチーブメントなど、これから達成しなくてはいけないことが全てのトピックスに入っていまして、正に今お話ししたようなことが活発に国際的な議論としてなされるであろうということです。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。それでは、今の4名の先生からの御説明に関して、質問、ディスカッションの時間を持ちたいと思います。よろしくお願いします。
【城石委員】  教えていただいてもよろしいですか。
【雨宮主査】  どうぞ。
【城石委員】  会社の中で、量子効果がこれからまた重要になると説明しようとしても、それらは量子の第2次の効果で非常に弱いのではないか、というふうに思われてしまうことが多くて困っています。そうではなくて主役に出てくるということを説明しようとすると、例えば時間がすごく短い現象が重要になってきているのか、どうしてそれができるようになってきているのかなど、どういうロジックで説明すればいいかというのを教えていただけないかなと。何かお知恵があれば非常に助かるのですが。
【岩井委員】  今の説明では既に複雑過ぎるということですよね。
【城石委員】  すみません、私ではなかなか説明し切れず困っています。
【岩井委員】  まず説明します。量子制御の1つの方向性というのは、多分原子、分子から始まるように、わりと単純な波動関数を使って、それをいかに精密に制御するかというのが1つの方向だと思います。
 もう一つの逆の極限は、いろんな相互作用がたくさん多体効果として集まってくる。それは集団的なものなので、非常に制御が難しいけれど、激しい効果が起こる。その1つが相転移だったりするわけですが、そういう複雑なものだからこそ、制御が難しいんですけれども、そのような制御をするための技術的な背景というのがあるのです。例えば空間的にものすごく小さいところにアクセスできる、時間的にもすごく小さいところにアクセスできるというのはすごく自然なことだと思うのですが、今の場合は、時間的にすごく小さいところにアクセスすることが重要です。なぜかというと、多体問題を議論するときに、今の場合は、電子と電子の間の相互作用が問題です。さきほど大森委員がクーロン反発のことをおっしゃっていましたが、電子と電子の間の相互作用があり、その相互作用が一体どれぐらいの時間で起きているかということが問題なんですね。今の場合、ものすごく相互作用が、電子と電子がぶつかって反発するような時間スケールはすごく速いわけです。その時間スケールよりも長い時間スケールでその物質系にアクセスしている限りは、それは見えてこないし、制御も難しいというのが実情だと思います。今、技術的なイノベーションというのは、アクセスできる時間幅がどんどん短くなってきて、1フェムト秒とか数フェムト秒というのはもうアクセスできる状態です。そうすると、電子と電子がぶつかったり避け合ったりしている中身がもう見えてくるんですね。すると、ぶつかる前にそれを避けたりとか、もっとぶつけようとかということも可能になってくる。そういうことです。
【城石委員】  ありがとうございました。一つは時間的なもので、ものすごく短い時間軸でいろいろなことができるような技術ができてきたので、今までできなかったことができるようになってきたこと。もう一つは空間的なもので、今、世の中で困っているのは、どんどん小さくなって、ムーアの法則が破綻するとか言われているわけですね。小さくなったことで、逆に言うと、これが量子的な効果をものすごくコントロールしやすくなって、そういう技術も手に入るようになった。だから次の世代に行く、という理解で説明をしておけば間違いではないんでしょうか。
【岩井委員】  間違いないと思います。非常にそれはいいポイントで、時間的な微細化と空間的な微細化というのは実は相関があって、要するに一番困るのは、不均一性です。不均一性というのは非常にコントロールしにくいものです。しかも、ランダムであれば非常にコントロールしにくい。けれど、レーザーというのはコヒーレント光なので、その短い時間幅の中で制御したり、それを見ている限りは、全部同時にコヒーレントに起こるので、ランダムな不均一性を抑えるという意味では非常に有利に働くと思います。ただし、空間的に微細加工をしていくと量子効果がいろいろ出てくるということはありますよね。余談ですが、私は昔、株式会社東芝にいて、1メガ、4メガ、16メガとやっていくときに、量子効果が邪魔をしてどうのこうのという話が大分あったのですが、それと同じように、今の場合は、時間領域をどんどん短くしていくと、不確定性で、エネルギー分解能がどんどん悪くなってきます。だから、その問題をどうしていくかというのは、特に出口を考えるときには同時に考えていかなくてはいけない。
 つまり、光という概念がどんどんあやふやになっていって、光というのは振動電場や磁場がずっと続いているから波長が定義できるわけなんですが、それがどんどん制限されていくと、最後には、さきほどサブサイクルという話をしましたけれども、サイクルではなくなってしまうので、厳密に言うと、もう光はなくなってしまう。そういう光ではない光をどう使うのかというのは、大分困難はあると思います。だけど、我々の希望としては、できなかったことができるようになるのではないかと思っています。
【城石委員】  私もそういう希望をもっています。ありがとうございました。最後に1つだけなんですが、先ほどロードマップというお話がありました。世の中の技術進歩のスピードと、それらが飽和してしまうということの寸法・時間軸に、今のお話を合わせればロードマップも書きやすくなりそうでしょうか。サイエンスの場合、ロードマップを書くのはすごく難しいと思うのですね。
【岩井委員】  そうですね。
【城石委員】  エンジニアの世界ではロードマップを見通さざるをえないという点もあるんですが、サイエンスの世界では非常に難しく、工夫が必要と思っていました。時間軸と空間軸の世の中の要求度みたいなものと今の御説明を合わせると、サイエンスの世界でもわりと合理的なロードマップをつくれそうと期待してもよろしいでしょうか。
【岩井委員】  すみません。私には難し過ぎるので、それは分かりません。
【城石委員】  すみません。ありがとうございました。
【大森主査代理】  今、岩井委員が御説明されたことでほとんどポイント、網羅されていると思いますが、結局は、城石委員がおっしゃったように、サイエンスとかテクノロジーって、実験に乗らないとサイエンス・テクノロジーにならないので、技術の進歩と完全に同調して進んでいかないといけないですよね。だから、やっぱりロードマップを作る際にも、こういう技術がここまでに完成しそうだから、それを使ってこういったことができるようになる。そして、次の2年間でこういった技術が完成するだろうから、その2年間でまたこういったことができるようになるという意味では、そういった技術の進歩とロードマップというのは非常に密接に絡んでいて、ロードマップを考える際に技術の進展度合いを見越すことが大変役に立つというように私は考えています。
 さきほどの話ですが、結局、光源ばかりに目が行きがちですけれども、例えば真空技術とか、冷却技術とか、あとは顕微とか、さらには物質を作る方の技術ですよね。量子性が顕著に現れるような物質を作る上でのコントローラビリティがすごく上がっているわけですよね。例えば十倉先生とか、ああいった方たちの御尽力によって、そういったものが総合的に発展してきたので、量子科学技術がもう1回再認識される。言葉を変えると、可能になったので、注目されているということだと思います。
【城石委員】  ありがとうございました。
【雨宮主査】  時間が過ぎていますが、どうぞ。
【湯本委員】  すみません。ベンチャーのお話が2つ、中村先生と岩本委員からあったと思うのですが、これ、日本で同じことを30億円とか集めようと思うと、あまり現実味がないように思えてしまうのですが、どうやってそのあたりのビジネスモデルを、あるいは説得をするか、という情報というのは何かお持ちでしょうか。
【中村先生】  私も彼がどうやって集めたのか知りたいところです。
【湯本委員】  D-Waveもそうですよね。
【中村先生】  そうですね。
【湯本委員】  あれも本当に物理をやっていた人がお金を集めてあそこまでになってしまったという。
【中村先生】  ただ、やはり米国だと、今、こういう話題が盛り上がってきていることもあって、投資家がすごく注目しているらしいです。向こうの投資家は、投資する先をいろいろ物色して回っているらしいので、そういうところに話をうまく持っていくとポンと出てくるのかもしれません。
【大森主査代理】  必ずしも企業とは限らずに、例えば政府レベルでも、投資するか、投資しないかというのは非常に重要な決断だと思うのですが、例えば、さっき御紹介した中国は指数関数的に投資が増えているのですが、これはもうすごくシンプルな理由が1つありまして、非常にマスコミをうまく使っている一部の量子科学技術に携わっている人間がいます。その人たちはやはり政治的にも非常にスキルフルで、共産党の上の層にもコネクションを作って、そういったところも通じてマスコミを多用して情報を発信すると。そういったことをやると何が起こるかというと、例えばノンサイエンティストの国民の皆さんが量子科学技術という言葉に対して非常に親和が高くなるんですね。親近感を持ってくると。それが非常に大きいという話を中国のそういった筋からは聞いています。それが非常に効いているらしいです。それが1例だと思います。
【湯本委員】  分かりました。中国というと、何となくそういうイメージが湧くのですが、欧米でそれなりにベンチャーキャピタルというと、かなりPh.D.を持っている人がやったりしているわけですよね。ですから、その辺のギャップがあるのでしょうか。ベンチャーキャピタルであっても、かなり専門家だと思っているんです。その専門家同士がどういうコミュニケーションなり、働きかけをしてこういう数十億円というお金が動くのかなと。
【大森主査代理】 例えば、社内で投資するか、投資しないかというときに、投資したいと思っている人というのは会社の上層部を説得しないといけないですよね。そのときに、マスコミでどれだけ取り上げられているとか、あるいは、国民にこれだけのデマンドがあるというような情報がかなり有利に使えるのではないかと私は思うんですけど。
【湯本委員】  そうですね。そこは事実あると思っているんですが、それだけとはまた少し違う何かがあるんじゃないかなという。
【大森主査代理】  1例です。
【湯本委員】  はい。
【雨宮主査】  どうぞ。
【上田室長】  今、湯本先生の関連で、事務局から補足説明と質問をしたいと思います。文部科学省としても、大学発ベンチャーやアントレプレナーシップの振興は大事だと思い進めています。大学発ベンチャーもしっかり調べると、株式公開(IPO)に至るベンチャー数は三十数社を超えています。時価総額を全て合わせると1兆円になります。
 したがって、日本にも2000年以降、大学発ベンチャーは確実にあるという状況だと思いますし、文部科学省の産学連携施策の一環ですが、JSTでSTARTと呼ばれるプログラムをやり、技術系のベンチャーキャピタリストの方々をプロモーターとして実際に技術の目利きとファンディングをやっていただくという制度で、十数社の技術系ベンチャーキャピタルと一緒に仕事をさせてもらっています。また、EDGEと呼ばれるプログラムで大学の中におけるアントレプレナーシップの振興を支援させてもらっています。
 以上、補足説明ですが、その上で私どもからお聞きしたいのは、光・量子という分野における日本のアントレプレナーシップがどれぐらいあるのかということです。今のお二方の発表にもベンチャーとありましたし、各国動向を見ている中でも、米国の西海岸の周りには光系のベンチャーがあったりするような気がしますし、ドイツも最初は小さい会社から光学系の素子が出てきたりするようにお見受けしますけれども、皆さんが感じていらっしゃる光・量子系のアントレプレナーシップについて、海外と日本の違いや、日本の状況を共有いただけたら有り難いと思います。
【雨宮主査】  いかがでしょうか。
【岩本委員】  恐らく日本は、技術はやはりかなり高いものを持っていると思うのですが、例えばその分野を学んだ学生が、そこに飛び込もうというマインドになれるかというところが今の一番大きなポイントだと思います。やはり欧米の場合は、仮にそこで失敗しても、また次のステップがあり、そこにどんどん飛び込める雰囲気があるというか、多分今回の会社も、関係研究室で学位を修めた学生が移っていると思うのです。日本は、そういうパスに対するバリアが学生から見ると極めて高いように見えているのではないかなというのが1個のポイントではないかと思います。仮に失敗してしまったときに、次をどうすればいいのだろうかというところが、多分学生からすると見えなくて、どうしても躊躇(ちゅうちょ)するというところもあるのだとは思いますが。
【雨宮主査】  どうぞ。
【根本委員】  海外のベンチャーをいかに日本に呼び込むかという点ですが、要するに、海外のファンドをいかに日本に呼び込むかを考えると、海外のやり方は日本とはまた別だと思います。やはり向こうには向こうでのやり方があって、例えば自分たちはこういう技術を持っているから、大学にいるけれどもベンチャーがやりたいとした場合、ファンドを持っている人に直接会って1人ずつ説得するかというと、どうもそういう作りにはなっていないようで、そちらをやっている方はそちらをやっている方でいるわけですね。その方が集めてきたファンドと技術が結びつく形が、海外では多分一番多いと思います。ただ、そうすると、実際にファンドを出す人々を説得しているコアの人たちから日本の研究が見えないと、幾らたっても、それはコンタクトがないわけなんです。では、コンタクトがあるようにするにはどうするかというと、実は意外と簡単にそれはできるのですが、それを続けていくということに対しては結構負担も大きいわけです。なので、もう少し大学の研究の中でそういったものができるような余裕がないとなかなか難しいのかな、というところも大きく絡んでいるように思います。学生がそこへ飛び込んでいくというのもなかなか難しいというのもそうだと思うのですが、もう少し知恵を使って、飛び込まないまでも、学生の頃から準備をするとかいったことも本当はできるはずですが、そのように外に視点が向くような余裕がなかなかなくて、それをエンカレッジしていくような工夫がやはりどうしても必要なのかなという気がします。
【雨宮主査】  ほかに。
【岩本委員】  今、根本先生がおっしゃったように、これまでのこの委員会では、人材のことというのは何回も議論があったと思うのですが、正にそういう広い視点というか、いろいろなところに視野を持てる教育をするというのが1つのポイントなのかなと、私も根本先生と同じように思います。
【岩井委員】  今のお話を聞いていて少し思ったんですが、博士課程の教育というのが、リーディング大学院とか、今少し変わってきていると思います。それで、ベンチャーなどは、やはりある程度オリジナリティがすごく高いところを基本にしないと、いろいろな雑用も増えるわけですし、大変ですよね。そういうコアになるような基礎研究みたいなものをゆっくり何回も何回も失敗した上で達成するという感じではどっちかというとなくなっていて、つまり、結果が出そうなところをうまくやらないといけない。例えばリーディング大学院はカリキュラムが結構きついので、そういうふうに指導教官もせざるを得ない。何度も何度も失敗して難しいことをやるというようなテーマはむしろやりにくくなっているという、そういう矛盾もありますよね。すると、ベンチャーが生まれるような、そういうコアな研究はもともと難しいのですが、構造的に難しいというのも少しあるのかなと。むしろ学生もその方を好んでいる、要するに、賢い学生ほどできそうなことを選んでしまうという嫌いもあるのかと思います。もちろん人によりますけどね。それは少し危惧するところではあります。賢い人が無謀なことをどんどんやってくれるという感じでは、昔に比べると最近はそうではなくなっているというのは少し感じますね。
【大森主査代理】  やはりそれ、日本は1回失敗すると終わりのことが多いからじゃないですかね。
【岩井委員】  学生時代に失敗したらそんなに致命的なんですかね。
【大森主査代理】  いや、もう少しロングスパンで見たときにね。米国で、例えばヒューレット・パッカードとか、ああいう大手の会社や研究所で活躍している人とかって、「昔、私、会社2個潰しました」とか平気で言う人もいますよね。そういったところが意外にメンタリティに影響しているのかなという気もするんですよ。
【岩井委員】  それは多分そういうオリジナリティに対する評価の仕方が少し違って、どっちかというと、根本のアイデアはもっと昔からあったが、それをリバイバルでうまく包み直して形をきれいにして発表するとすごく評価されるというような嫌いがあるじゃないですか。それで本当のオリジナルの方はそれほど評価されない、汚いままだと評価されないということがあって、オリジナリティを評価する仕方が少し欧米とはウエートが違うのかなという感じが少しします。そのようなものが根底にはあるのかなと思いますけどね。
【雨宮主査】  まだいろいろあるかと思いますが、少し時間のこともありますので、次の議題に入っていきたいと思います。次の議題は、議題5です。「戦略的創造研究推進事業平成29年度戦略目標について」、事務局より趣旨等の御説明お願いいたします。
【上田室長】  資料5を御覧ください。先ほどまで国際動向の御紹介の下、御議論いただきましたが、国内動向の1つとして戦略目標の状況を共有いたします。
 皆さん記憶に新しいと思いますが、去年、平成28年度の戦略目標で13年ぶりに量子関係のものが立ちましたが、引き続き平成29年度の戦略目標でも量子関係の目標が進んでおります。
 資料5の2枚目を御覧ください。例年どおり、5つ程度、JSTに対する戦略目標を文科省から提示させていただきまして、その下で、さきがけやCRESTといったプログラムが進みますが、その1つとして黄色部分に、「量子技術の適用による生体センシングの革新と生体分子の動態及び相互作用の解明」とあります。これは去年、本委員会で御議論いただいたことや、その骨子案を基に議論が進んだものです。
 資料5に添付しております横長の参考資料で概要を御説明いたします。この提案は、私ども量子研究推進室と研究振興局のライフサイエンス課との局をまたいだ連携提案になっております。
 1ページ目を御覧ください。冒頭部分の赤字の箇所がこちらの議論から出てきた全体の構想ですが、世界をリードする技術シーズが出てきていると記載されています。例えば量子センサ等々です。これらの量子技術は生命科学への応用も期待されていますが、我が国においては生物応用が十分に進んでおらず、このままでは国外流出も危惧されるということで、国のトップダウン方式の基礎研究を通じて両者の融合を促進しよう、というリード文でございます。
 資料の左側にございますように、戦略目標では達成目標というブレークダウン目標を決めまして、その下で基礎研究の公募を行いますが、達成目標1として、量子センサ技術があり、これで温度等の高感度観測を実現するというもの。達成目標2として、量子もつれ光子等々のいわば量子イメージングと言える新たな生体内イメージングを実現するというものを目指すもの。達成目標3として、放射光や中性子などの量子ビーム利用・計測を用いて、量子レベルに至る超精密構造・機能解析を行うもの。この3つの達成目標を基に、資料の真ん中にある科学的・社会的インパクトとしまして、1番目は、生体内でこれまで観察されなかった現象の解明により、新たな生命科学及び診断・治療が実現するというインパクトを期待すること。例えば細胞内の極小温度の観測といったものは、NVセンタを使って、これまでできなかったことができるかもしれないという本委員会での議論を踏まえたものです。2番目としまして、生体分子の動態及び相互作用の精密な解明により、新たな生命科学及び診断・治療が実現するといったもの。例えば分子標的薬等々の例が載っています。「さらに」としまして、Society5.0に向けた産業応用や、新しいサイエンス領域(量子生命科学)の開拓を国際的に主導といったものです。資料の右側に実現し得る将来の社会像として、健康長寿社会、医療費抑制、Society5.0の産業競争力、科学技術立国ということを念頭にして公募制度を推進してはどうかという制度でございます。
 2ページ目以降は、各達成目標に基づき記載されております。例えば2ページ目では、現状として、量子センサについて、正に本委員会で御議論いただいたダイヤモンドNVや、シリコンカーバイドのシリコン空孔等の現状を述べており、現在の研究の状況が中ほどに書いてあります。例として、本達成目標下における実施内容として、ナノメートル空間分解能での定量的な温度等の計測の実現や、単一分子NMRの開発等も考えられるのではないかということが記載されております。その下にグレーで書いてありますが、以上に関し、量子研究者と生命科学研究者の共同提案・共同研究を促すということです。その結果、10年後に期待される状況として、こういったことが考えられるのではないかということが記載されております。
 同様の説明が3ページ目、4ページ目、5ページ目までそれぞれ続きまして、それ以降に参考資料が添付されていますので、概略なりとも御説明したいと思います。
 6ページ目を御覧ください。横軸に達成目標1から3に該当する量子センサ、量子イメージング、構造解析があり、こういったことができて、こういった観測技術ができて、マルチモーダル解析ができるというふうにするならば、現在、政府で健康・医療分野で9つの重点項目の分野がございますが、それぞれどういった寄与、貢献が可能かといったことにつきまして、例えば「医薬品創出」や「ゲノム医療」でいいますと、分子標的薬の精緻化とプレシジョンメディスン産業の進展につながるような基礎研究ができるのではないか。あるいは「再生医療」のところで申しますと、再生組織のがん化、非がん化の識別や深部領域における異常検出ができるのではないか。あるいは、「脳とこころ」のところで申しますと、機能性疾患、これは器質性疾患に対する言葉だと理解していますけれども、現代病の基となっているようなものの原因解明・定量診断というのを、既存の古典力学を基にした技術ではなかなか難しいと言われていますが、こういったところに可能性が見いだされるのではないか、あるいは神経細胞の興奮の検出による神経伝達の異常等同定ができるのではないか、こういった議論を提案しました。
 8ページ目を御覧ください。大きな潮流の中で生命科学と量子技術の両分野の融合がどう位置付けられるかということですが、真ん中、「光研究・量子研究」のところで、これまでのCRESTやさきがけで展開してきたものから連綿とした基礎研究から技術シーズが生まれてきており、さらに今般、右側にありますような将来の新技術シーズに向かっていくものもある中で、現時点で見えてきている量子技術を生命科学に適用して新たな生命科学のフロンティアを開いてもらいたいという思いを込めた戦略目標になっております。これまでJSTと一緒になって、本委員会の議論を基にして、その他にも様々な研究者の方々から御意見をお伺いしたり、ワークショップを開いたりして、この戦略目標の提案に至っております。
 こちらにつきましては、4月の中旬から研究課題の公募につきまして、JSTから発表されるということになっておりますので、共有いたします。
 以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。今のことに関して何か御質問とか御意見があれば。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に入りたいと思います。6番目の議題で、「量子科学技術委員会における今後の検討について」、趣旨の説明を引き続きお願いします。
【上田室長】  事務局から御説明いたします。これまでロードマップにつきまして、各界からの意見もあったということで、本委員会、中間とりまとめを受けまして、今後、ロードマップ的なものを検討していただくのがいいのではないかという議論を事務局内でも重ねまして、資料6に御提案が書いてありますが、このような方向でどうかという御提案を説明申し上げます。
 資料6の冒頭3行ですが、量子科学技術の可能性・ポテンシャルをより国民の目に見える形で示すため、時間軸とともに研究・技術がどう進展して何が実現されるのか等を示すロードマップを検討する。これによって官民の研究開発や産学連携、それに係る投資等を促す効果も期待されると考えられます。
 このロードマップができれば、本委員会の最終的な取りまとめにも盛り込んでいくということが考えられるかと思いますが、検討作業の概略としましては、1番目、本委員会で全てやるのはなかなか難しいと思いますので、対象とする研究・技術毎に検討グループを構成してはどうか。2番目、ロードマップは、先ほどありましたような研究・技術の進展と実現されることを示すということですが、今後20年程度、あるいはそれ以上を見据えたものとし、最初の5年、10年についてはより国民目線で具体化してはどうか。3番目、初夏の前までに検討を進めていただいて、検討結果を本委員会に報告するといったことでどうかということです。なお、この検討グループには関連する本委員会の委員の方々にリエゾンとして入っていただくと議論もスムーズに流通できるのではないかと思います。
 作業の対象ですが、2つの観点から、複数の対象を持ってはどうかと。1つは、それぞれ中長期にインパクトが出るのでしょうけれども、5年、10年で国民の目に見える何らかの進展が期待されるものがこの場合の作業に望ましいのではないか。もう1つは、与えるインパクトが相当程度期待され、かつ一定の専門的なまとまりがあるものということで考えてはどうかと。
 また注1にございますように、既にロードマップが議論の結果存在するものは、それを量子科学技術委員会で参照することとすればいいのではないか。加えて、大規模な研究施設整備が必要なもの自体も本作業の対象とはしないということでいかがかと。ただ、日本学術会議に「大型研究計画に関するマスタープラン」が策定されていますので、ここに関連するものが存在する場合はそれを参照して検討の出発点としてはどうかということです。
 留意点としてaからeまで掲げてございます。aは、国際的な進展というのは当然出てくるんだと思いますが、我が国機関において見込まれる研究・技術の進展について一緒に検討してもらう。bは、代替・競合技術についてで、量子情報処理でいうとスパコンとかだと思いますが、そういったものを可能な限り抽出して、比較や留意点を付言していただく。cは、我が国において必要となり得る研究規模の概略など、推進方策への示唆についても可能な限り付言していただく。また、推進方策がもし十分でない場合に、予想される国際競争の状況ですとか、あるいはインパクトへの影響等についても可能な限り付言していただく。dは、量子科学技術は様々な分野が実は密接に関連しますので、他の量子科学技術との関連等があれば付言していただく。eは、1つの対象内において実は複数の技術体系が想定されると思います。例えば量子計算でいうと超伝導体系ですとか、冷却原子体系とか、あると思うのですが、こういったものそれぞれに進展、実現されることを俯瞰(ふかん)していただきながら、全体として包絡的に取りまとめていただければいいのではないかと。換言すると、この作業では技術選択をしない方がいいのではないかと。ただし、技術体系ごとに利点とか留意点が抽出されれば、付言していただくということでどうかということです。
 2ページ目、3ページ目に、御提案申し上げる4つの対象研究技術を記載しております。1つ目は、量子情報処理(主に量子シミュレーション)、2つ目は量子計測・センシング、3つ目は極短パルスレーザー、4つ目は次世代レーザー加工というふうに、中間とりまとめまで種々御議論いただいたものの中から4つを御提案申し上げます。
 また、お名前を読み上げるのは省略しますが、本委員会から専門性の関連の深い委員方にリエゾンとして1人か2人に入っていただくということと、それぞれの検討グループ自体をまとめていただく主査の候補の方々について書いています。検討グループのほかの構成員は別途検討していくことになるかと思います。
 それぞれの留意事項のみ御説明差し上げます。
 a、主に量子シミュレーションですが、量子シミュレーションだけでなく、その先にあると思われる主に汎用量子コンピューティング技術への進展への派生・関連を含めるのはどうかと。b、先ほど大森委員からもありましたが、ある時点ごとに可能と考えられる量子シミュレータの系で、どのような模擬実験が可能となり、その結果としてどのような研究成果が期待されるかも含めていただく。c、検討対象の技術体系によっては、例えば超伝導ビットですが、最適化、サンプリングといったアニーリング計算の進展も関連する場合は可能な限り付言していただく。d、ある時点毎にいろいろな人に使ってもらうということが考えられるので、そのような利用環境についても考察していただく。
 量子計測・センシングにつきましては、a、中間とりまとめの技術以外にもしインパクトが想定される他の光・量子技術があれば、それは含み得ると。b、ある時点毎に考えられる量子計測・センシングの系で、どのような計測・センシングが可能となり、どのような応用が期待されるかを含み、その際の科学技術・経済・社会インパクトをできる限り付言していただく。極短パルスレーザーに参ります。留意事項の案としまして、a、光源技術だけでなく、計測技術の進展への考慮も含む。b、現時点で顕在化しているユーザーだけでなく、潜在的なユーザーの議論も踏まえる。c、ある時点毎に考えられる光源・計測系により、どのような研究が可能となり、その結果、どのような研究成果が期待されるかを含む。d、利用環境についても考察する。
 次世代レーザー加工は、a、中間とりまとめでもまとめられましたCPS型レーザー加工システムを含むものとする。その際、レーザー加工の学理の解明は現在至っていないという話でしたので、その解明及びその進展についても考慮するということ。b、産業応用が想定されることから、経済・社会インパクトをできる限り付言していただく。このような留意点で進めばどうかという御提案です。
 説明は以上ですが、全体と留意事項でもしお気づきの点があれば、付け加えていただき、各検討グループに検討していただくということを考えてございます。
 以上です。
【雨宮主査】  今、「ロードマップの検討について(案)」という形で御説明いただきましたが、まずこれについて御質問、御意見、この場でありましたら、どうぞ。
【飯田委員】  ロードマップ策定に当たって、皆様の議論をお聞きして気になったことについて御質問させていただきます。第5期科学技術計画の超スマート社会のプラットフォームに必要な技術として、AIとビッグデータなどの技術やバイオインフラとしての各種のバイオ関係のデータベースなどへの貢献をどのように位置づけるかも重要課題と思います。例えばプロテインデータバンクとか、あとは、次世代シーケンサーで解読された遺伝子の塩基配列データベースなど多種多様なものがあると思いますが、これらのバイオインフラの蓄積・利用に量子科学技術がどういうコミットできるかについては盛り込まれていないように感じましたが、いかがでしょうか。
【上田室長】  すみません。中間とりまとめでいうとどこの部分になりますか。
【飯田委員】  今回戦略目標で立ち上がった部分、量子技術の適用による生体センシングの革新に関してもバイオインフラの話が関連してくると思いますし、AI、ビッグデータに関しては量子コンピューティング、量子シミュレーションといった部分が密接に関連してくると思われます。例えば、現在のAI技術のベースはノイマン型の計算だと思いますが、量子的なシミュレーションが具体的にどのように現状を革新できるか具体的な絵が描けると良いのではと感じました。
【上田室長】  なるほど。例えば計測センシングの観点で生命科学系への当然ながら応用なり展開なり考えられると思いますが、こちらの検討グループの量子計測・センシングの系ができたときにどのような研究が展開するかについても、ライフサイエンス系の進展が当然あり得ると思いますので、そのような議論がなされるのかなと思われます。
 あるいは、非ノイマン型コンピュータについても、量子シミュレーションにあります最適化やサンプリングといったアニーリング計算の進展というのが、少し関連については深くは検討してませんが、現在のCMOSを使ったアニーリングマシンもあるようですし、場合によってはそういったところで関連するかもしれないというのと、そもそも量子シミュレータの系でどういう模擬実験が可能かというところにライフ系の話も含まれるのかなと思います。その上で、ライフ系の基盤系の話については、また飯田先生と御相談させてもらった方がよろしければ、と思います。
【雨宮主査】  基本的なことは、ここの4つの項目について、今後委員の方にそれぞれ1人ないし2人にリエゾンに入っていただくこと、また、委員の外の方に主査になっていただいて、検討グループを立ち上げて、今年の夏までに検討結果を本委員会に報告していただくということです。多分この辺のガイドラインができていれば、検討グループで更にプラスアルファの留意事項、検討事項も含めて議論が行われると思いますが、今日の委員会としては、こういう検討グループを作ることについて了解が頂ければ、進めたいと思います。検討するポイントの中においては追加コメント等があるかと思いますが、個別にリエゾンの委員に入っていただくことになりますので、全体的に何か御意見等あれば、どうぞ。
【中村先生】  先ほど、既にあるものには、それを用いるというようなお話があったと思いますが、資料6別添に例えばNICT(情報通信研究機構)の量子通信のロードマップがあります。今回4つの項目には、このような量子通信に関する記載が入っていないというのは、これを充てるというような御意見でしょうか。例えばEUのQuantum Manifestoとか、UKのものとか、海外の資料を見ていると、例えば量子情報処理という中には計算と通信とがいつも一緒に入っていますが、こういう資料を例えば海外に発信するときに、量子通信がごっそり抜けていると少し奇異な印象を与えるかなと感じたので、そこはどこかで融合できればいいのかなと思いました。
【上田室長】  ありがとうございます。後で説明するつもりでしたが、資料6に添付していますのが、NICTのホームページで掲載されているロードマップです。日本の研究機関が作成したロードマップということで、量子暗号や量子通信系について一定程度取りまとめられており、事務局としては、これについて再度屋上屋を重ねるのではなく、これをほかの分野で出てくるロードマップと同様に参照していただいて、最終的な量子科学技術委員会のまとめに向かっていくのが全体として効果的・効率的ではないかと思います。ここでの各4つのロードマップ検討グループと、NICT等のロードマップを参照しながら全体としてまとめていただくのがよろしいのではないかと思います。
【岩本委員】  公開されるときには、ほかを参照したのもあると思うのですが、そういう扱いはどうなるんですか。今、中村先生が懸念されたように、文書でコメントをされるということですか。例えば量子通信についてはこれこれを参照してほしいということでしょうか。
【上田室長】  こちらのロードマップ自体は公開されているものですので、量子科学技術委員会で引用することについては問題ないかと思います。
【岩本委員】  では、引用するという形ですね。
【雨宮主査】  ほかに何かありますか。
【城石委員】  1つだけよろしいですか。先ほど大森委員や岩井委員がおっしゃってくださったように、資料6の一番初めに書いてある、より国民の目に見える形というところをどのような形でやるかをできるだけ考えていただけるように、最初に序言を書いていただけると有り難いなと思いました。御検討よろしくお願いします。
【雨宮主査】  よろしいでしょうか。
【大森主査代理】  細かい点でよろしいですか。この資料自体、すごく複数の観点から慎重に書かれていて、あまり穴が見つからないんですけれども、実際運用する上で若干気になるところがあります。留意点ですけれども、例えば量子情報処理と極短パルスレーザーの項目dのところに、ある時点毎に系を外部研究者がどのように利用できることになるかといった利用環境についても考察する、と書いてあります。これをそのままパッと読むと、今までの装置供用を想像するんですよ。例えば放射光ビームラインみたいに、施設側が施設を整備して、外部利用者というのは、そこに応募して、その場所に来て、基本的には外部利用者だけで動かすというようなふうに捉えられると、特に量子シミュレータみたいなものだと、若干誤解を生む可能性があると思います。
 残念ながら、現時点での量子シミュレータの装置というのは、ビームラインみたいにユーザーフレンドリーではなくて、非常に複雑なものです。なので、そういったビームラインのようなレベルまで行くのにはもう少し時間がかかると思いますので、dの定義として、外部研究者が例えばシミュレーションの模擬実験の対象を提案して、装置を所有している人間が外部利用者の提案に基づいて、提案者と共同研究するということまで含めて外部利用と定義しておいた方が、恐らく運用上無難であると思いますので、例えば必要に応じてそのようなことを付記するとか、そのような配慮がなされてもよろしいのかなと感じております。
 以上です。
【根本委員】  すみません。利用環境を外部から利用できるようにするということについて、そこまで厳密に最初から決めた上で議論する必要があるんですか。つまり、もともとクラウド利用等もあって、今までのように大きな施設をどうやって外部の人が利用するかというようなSPring-8のような利用の仕方だけではないわけですよ。これからどんどん利用の仕方が変わっていくと思うので、留意事項に書いてある、これがそういうことを意味するんだ、というように最初から言わなくてもいいような気がします。
【大森主査代理】  そのように捉えていただけると大変有り難いんですが、セーフティーのためにと思いまして。
【上田室長】  ここでいう外部研究者は、プロジェクト進行中に共同研究する人もいれば、クラウド上で利用する人もいる、というように柔軟な意味に捉えた方がいいという御提案でしょうか。
【根本委員】  いや、外部研究者がどういう人たちで、どういう使い方をするのかということは、必ずしも従来考えられているような外部研究者が施設を一緒に利用するというような枠組みには乗らないかもしれないということですよね。
【大森主査代理】  それはそうです。というか、そういうふうなことを期待されると少しロードが重過ぎるということですね、量子シミュレーションの場合は特に。なので、できるだけ自分たちの首を絞めないようにするために、そういった次善の策をある程度付記しておくか、あるいは、こういうことですよという認識をみんなで共有しておくということが心地よいなというふうに思うわけであります。
【根本委員】  そうネガティブにおっしゃらなくても、新しい形の利用環境というものが可能かもしれないというような考え方でもよろしいと思うので。
【大森主査代理】  ええ、言いたいことはそういうことなんですけどね。
【根本委員】  自由度を持たせるという。
【大森主査代理】  ただ、こういうふうに書いてあると、わりと装置供用を思い浮かべる方がおられるのも事実なんですね。
【岩井委員】  それは全くそのとおりで、私もそのように思いました。つまり、極短パルスレーザーも、これは大規模施設ほどではないけれども、例えば理研とか東大の物性研究所にアト秒X線の拠点のようなものを作って、それをみんなで使うことを前提にしているのかなと、dを見たらやはり思いますね。だから、今、大森委員の話を聞いて、僕も少しあれっ、と思いました。だから、その危険性はあるかもしれません。
【上田室長】  事務局としては、できたからにはいろんな方に使ってもらう方が望ましくて、具体的に今の放射光施設みたいな共用施設になるかどうかは別として、いろんな方に使ってもらえるような利用環境がどう考えられるかという趣旨で書いておりますので。
【大森主査代理】  「使う」の定義が問題なんですね。
【上田室長】  なるほど。
【岩井委員】  必ずしも共同利用みたいな拠点を作るということを前提にしているわけではないんですね。やりとりはもちろんあるでしょうけど。
【上田室長】  そのスコープは排除しないと思いますけれども、それ唯一を前提にしているわけではないと思います。
【雨宮主査】  利用環境についても考察する。わりとそこは自由度があるとは思いますので、とにかくそういう項目も議論の事項の1つというぐらいで。それは定義しないとリスクはありますよね。
【大森主査代理】  ええ、そうです。定義することによるリスクもあると思います。ただ、岩井委員がおっしゃるような誤解をされる方も恐らくおられるのも事実だと思うので、そこら辺は事務局にお任せします。
【上田室長】  はい、分かりました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 それでは、また細かなところはリエゾンの委員になっていただく委員と事務局とのやりとりで詰めていただければと思います。
 では、この案については、この委員会として了承ということにさせていただきたいと思います。
 これで今日の議事は全て終わりましたが、委員の方から全体を通して何か御発言はありますでしょうか。
 特になければ、事務局の方から伝達事項等お願いします。
【上田室長】  事務的説明の前に1つだけ紹介させてください。参考資料2に、先ほど平野委員から御紹介ありましたが、QSTが第1回量子生命科学研究会を今週、そして裏面に7月には恐らく日本で初めてになると思いますが、国際シンポジウムを企画されています。ちょうど事務局から説明しましたように、戦略目標も立って、量子とライフ、一緒になって考えていこうという気運が重要だと考えていまして、そういった中で、QSTにこういう自由闊達(じゆうかったつ)な議論をするフォーラムを設定していただけることは意義があることと考えております。ありがとうございます。
【吉川補佐】  それでは、事務局の方から事務的なことを御説明させていただきます。
 本日の議事録につきましては、後ほど委員等に照会させていただきますので、また御確認のほどよろしくお願いいたします。
 次回の量子科学技術委員会ですけれども、開催を4月28日の午前というふうに予定しております。また御連絡等いたしますので、御協力をお願いいたします。
 本日の資料について郵送を御希望の方は、封筒に入れた後に、机上に置いたままにしていただければと思います。また、不要な資料、ドッジファイルについては、机上に置いたままにしていただければと思います。
 それでは、長い時間かかりましたが、以上をもちまして第10回の量子科学技術委員会を閉会させていただければと思います。よろしいでしょうか。
【雨宮主査】  はい。どうも今日はありがとうございました。

―― 了 ――


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