資料1 試験研究炉ならびに設備に関する課題・要望

2017年8月8日
一般社団法人 日本電機工業会

1.はじめに

 本資料は、試験研究炉等研究開発基盤の現在置かれている状況について、利用者である産業界(メーカー)として整理を行い、今後の国内の試験研究炉の在り方に対する要望をまとめたものである。

2.現状と課題

 産業界(メーカー)ではこれまで以下のように、耐放射線性の材料開発・新燃料や制御材の開発・先進的安全系の開発等に試験研究炉を用い、成果を上げてきた。
・燃料用材料の開発
・炉心反射体の開発
・中性子吸収材/高性能制御棒の開発
・高耐食ステンレス鋼の開発
・高速炉用水素化物制御棒等の開発
・原子炉雑音による炉内診断技術の開発
・燃焼度/未臨界測定技術の開発
・原子力材料の経年劣化機構解明および評価技術開発等
 1) 照射誘起応力腐食割れ挙動評価技術の開発
 2) 照射材補修溶接技術の開発
 3) 照射下応力緩和評価技術の開発
 4) RPV監視試験片再生技術の開発 等

 しかしながら、近年は国内の試験研究炉が様々な理由で利用できない状態にあり、新規の開発案件は、次表に例示するように海外の試験研究炉を用いたり、計画の変更(延期・縮小など)を余儀なくされたりするなど、影響が生じている。
 また、海外試験研究炉への試験業務委託が増えることにより、原子力の開発に必要な基礎・基盤技術の習得機会が減少し、人材育成への影響が懸念されるとともに、国内での試験に比べ制約(輸出入管理、情報管理、仕様調整等)が大きく、開発の迅速性・柔軟性・経済の確保にも影響が懸念される。

【海外炉活用、計画変更の例】

案件

区分

対応

次世代軽水炉用燃料用被覆材の開発

国プロ

海外炉の活用

高速炉用水素化物制御棒の開発

国プロ

軽水臨界集合体で代用

5%超燃料の開発

国プロ

計画凍結中

1F燃料デブリ臨界管理技術の開発

国プロ

KUCAの再起動を待ち試験実施中

軽水炉燃材料詳細健全性調査

国プロ

計画中断

高燃焼度燃料破損限界試験

国プロ

計画中断(海外炉の活用)

安全向上に資する新型燃料の既存軽水炉への導入に向けた技術基盤整備

国プロ

計画中断(海外炉の活用)

高燃焼度燃料(ペレット/被覆材)の開発

電力共研

海外炉の活用

MOX燃料の開発

電力共研

海外炉の活用

3.産業界(メーカー)としての要望と提言

 (1)原子力政策
   前提として、原子力発電・燃料サイクルがしっかりと政策として位置付けされており、国内において原子力事業の継続に関し予見性の高い制度となっていることが必須である。

 (2)国内試験研究炉の新設
   プラント実機での性能試験は現状実施が困難な状況であることから、過酷で特殊な原子炉環境を模擬できる試験研究施設は、原子力の信頼性向上のためには必須である。
   原子力創生期の設計者は、試験研究施設での機器開発等を経験しているが、近年これらがなくなることで、設計者が実際の原子炉動作や機器に触れる機会を失いがちとなっている。優秀な設計者・技術者を育成する観点からも必須であると考える。
   既設原子力プラントの更なる安全性向上および今後建設される国内外プラントを世界最高水準の性能とするためには、先進技術の開発・導入が必要であり、下記に示す単独あるいは複数の試験研究炉もしくは設備の存在が必要である。
   ・材料照射試験炉:高速中性子/熱中性子/ガンマ線の照射
    (原子炉実機環境模擬、燃料異常過渡試験/限界性能試験、医療用照射、RI製造)
    ※JMTRが廃止になると照射試験は海外に頼らざるを得なくなるため、原子炉材料の開発にJMTRクラスの照射炉は必須である。また、軽水炉のみならず高速炉の開発にあたり、高速炉臨界集合体の再建、および高速実験炉「常陽」の早期利用再開が望まれる。
   ・照射試験が終了した試験体の検査、照射済み試験片を組み込んだ試験体の組立ができる照射後試験設備
   ・臨界実験炉
    (軽水減速/Na減速、動特性試験)
   ・大型熱流動試験設備
   ・安全系機能試験設備
   ・試験炉使用済燃料処理施設

  これらの試験研究炉・設備は、以下の観点より国内にあることが望ましい。
   ・世界の原子力開発・安全研究を日本がリードする意思の明示
   ・国内規制基準の策定に資する燃材料データの取得や、国内規制基準を満足する燃材料開発に必要な照射試験技術の維持
   ・商用炉の使用済み燃料を用いた燃料異常過渡試験等においては、海外炉利用による使用済み燃料の国外輸送に伴う核セキュリティリスクの増加
   ・国内人材が容易にアクセスでき、人材育成面で優位
   ・試験計画調整業務の迅速性・柔軟性・経済性

 (3)国内試験研究炉の維持管理体制
   先進技術開発のためには大規模試験施設が必要であるが、民間単独での施設維持は難しいため、国あるいは公立の機関による所有・維持管理が望ましい。また、研究部門からは独立した、維持管理に機能を集中した体制を採ることが望ましい。

以上

お問合せ先

研究開発局 原子力課