原子力科学技術委員会 原子力研究開発基盤作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成29年11月22日(水曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省 15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 国として持つべき原子力研究開発機能
  2. 原子力施設供用の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

山口主査、渥美委員、五十嵐委員、木藤委員、多田委員、中島委員

文部科学省

西條原子力課長、上田原子力課課長補佐

オブザーバー

東京大学物性研究所附属中性子科学研究施設柴山教授、福井工業大学工学部来馬教授

5.議事録

(山口主査) それでは、定刻となりましたので、ただいまから第4回原子力研究開発基盤作業部会を開催させていただきます。
 本日は御多忙のところ御出席賜りまして誠にありがとうございます。
 報道の方はいらっしゃらないですね、撮影の方は。
 それでは、本日は原子力研究開発基盤作業部会、こちらの作業部会を設置しました当初から電気事業連合会より尾野委員が委員として務めていただいていらっしゃったのですが、今回異動になられたということで、尾野委員の後任として渥美委員に就任いただいてございます。それでは新たに就任されました渥美委員から一言お願いしたいと思います。
 では、よろしくお願いします。

(渥美委員) 今、御紹介いただきました電気事業連合会原子力部の渥美でございます。尾野にかわりましてこのたび委員に就任することになりましたので、是非よろしくお願いいたします。

(山口主査) どうぞよろしくお願いします。
 それでは、本日の議題でございますが、お手元の議事次第をごらんください。
 第1番目の議題として「国として持つべき原子力研究開発機能」、2番目の議題として「原子力施設供用の在り方について」となってございます。17時30分までという予定でございますが、議事の進み方次第では適宜、早く進めば早めに終了させていただきたいと思います。
 それでは、最初に事務局から委員の出欠状況、それから配付資料の確認をお願いいたします。

(上田原子力課長補佐) 本日は委員8名中6名、中島委員におかれましては少し遅れていらっしゃるということでありますが、6名の御出席をいただいてございますので、定足数であります過半数を満たしておる状況でございます。
 続きまして、配付資料でございますが、議事次第に記載させていただいてございますとおりでございますが、資料といたしましては資料1から4、資料1として「JRR-3中性子ビーム利用の現状と将来」というカラーのA4横刷りの資料、それから資料2といたしましては「我が国における研究用原子炉について」という、これはA4縦で1枚両面刷り、資料3といたしまして「試験研究炉ならびに設備に関する課題・要望」という資料、これもA4縦の資料、それから資料4といたしまして「米国で実施されている施設供用に係る取組について」ということで、A4横のカラーの資料ということと、あとは参考資料1-1から1-4までを配付させていただいてございます。
 資料に欠落等、若しくは落丁等ございましたら議事の途中でも結構でございますので、事務局の方までお申しつけいただければと思います。
 以上でございます。

(山口主査) ありがとうございました。資料の方はおそろいでしょうか。
 それでは、最初の議題に移らせていただきます。
 「国として持つべき原子力研究開発機能」ということで、本日は東京大学の物性研究所の柴山教授に出していただいております。それで「JRR-3中性子ビーム利用の現状と将来」という資料1ですが、こちらのテーマにつきまして御説明いただきたいと思います。
 では、柴山先生、お願いいたします。

(柴山教授) 東京大学物性研究所中性子科学研究施設長をしております柴山と申します。
 今日はこのような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。
 早速ですが、資料として横長のもの、そして参考資料として1-4、これは震災の翌年、中性子科学会がまとめた「次世代研究用原子炉の建設に向けて」という資料がございます。後で適宜紹介させていただきますが、またお時間のあるときにごらんになっていただければと思います。
 それでは、本題の方に入らせていただきます。
 「JRR-3中性子ビーム利用の現状と将来」ということで今から少し説明させていただきます。
 まず1枚めくっていただきますと、中性子ビームの利用の特徴というものをまず御紹介、御説明したいと思います。
 中性子ビームというのは多目的プローブでありまして、回折、散乱、反射、ラジオグラフィなど様々な手法や装置を用いて物質や材料の結晶構造、磁気構造、非晶構造、ダイナミクス、励起、緩和などを調べることができる非常にユニークな研究手段でございます。また、放射化分析による微量元素定量などにも使うことができます。
 2つ目の特徴としましては、巨大施設・多種多様のサイエンスを展開することができる。世界中でより大規模な中性子ビーム利用施設の建設が進んでおりまして、装置の高度化なども進んでおります。世界をリードする研究施設に世界中から研究が集中しておりまして、ハイインパクト研究はこういうところで独占される状態になっております。例えば、ドイツ、ミュンヘンにありますFRM2という原子炉、それから最近ではシドニー、オーストラリアのANSTOが持っておりますOPAL原子炉、これらがその例かと思います。
 3番目としましては、定常中性子とパルス中性子があります。定常中性子は御存じのように原子炉から出されるものであり、パルス中性子は核破砕から出されるものでありますが、これらがそれぞれの特徴を生かしたプローブとして多彩なサイエンスを支援しているということでございます。
 その下にあります2つの地図は、まず右の方が世界を3極に分けまして、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア-オセアニアという各地域におきまして、それぞれ原子炉及びパルス源を持って中性子ビーム研究が展開されているということでございます。
 左はアジアにおけます原子炉及びパルス源でありますが、丸を書いたものが出力と場所、オレンジのものが原子炉ですね、黄色のものがパルス源。ちょっとこの資料が古いものですから、十分現在のものを反映していないかもしれませんが、このようにアジアの地域においてたくさんの原子炉、中性子ビーム源がございます。
 次のページにいっていただきますと、中性子ビームの利用の現在と将来ということで、パルス中性子源との相補性があります。J-PARCが建設される当時からパルス源ができたら原子炉は要らないのではないかという議論が、大分いろいろなところから聞かれました。しかし、私たち中性子ビームを使った研究をしている者からとりますと、やはり両方は絶対に必要であると。
 その例を今から少し説明しますと、装置の特性面から見ると、メゾスコピック構造、例えば数十nmから数百nmの構造を調べようとすると、小角散乱、いわゆる定常的なビームが圧倒的に有利になります。それからラジオグラフィ、いわゆるエックス線の透視に相当するようなものですが、これもやはり定常ビームが必要であると。それに対してパルスビームを使うことに有利であります反射率、これは表面構造に適していますが、あるいは回折、結晶構造解析等においてはパルス中性子ビームが必要だろうと。ということで、やはり両方の線源が必要であるということが常識となっております。
 その例としまして、外国の例を見ますと、例えば米国ですとオークリッジにHFIRという原子炉と、それからSNSというパルス中性子源がございます。欧州にいきますとラウエ・ランジュバン研究所ILLにおきまして世界最大規模の原子炉がございますし、イギリスにはISISがございます。さらに、将来的にはESSが、スウェーデンに建設をしているパルス源ができつつあります。中国では北京郊外にCARRがありますし、それから深センというところにCSNS、パルス中性子源がもう今動き出しております。それからオーストラリアにいきますと、今言いましたシドニーにあるOPAL原子炉、そしてメルボルンには放射光施設と、この場合、エックス線との相補性ですが、このようなものがあると言われています。
 このような中性子源を使いますと、突出したサイエンスが世界中で繰り広げられてございます。例えばエネルギーですとリチウム電池、燃料電池、太陽電池などの研究が盛んに進められておりますし、これは大学レベルだけではなくて、産業界も一丸となってこの研究がしのぎを削っている状態であります。新材料におきましては高温超伝導、それから超強磁性、マルチフェロイクス、高密度メモリ等々、たくさんの材料が中性子研究を通して出てきております。また、省エネ材料におきましてはImPACTでしなやかタフポリマーが今進んでおりますが、そういう研究、あるいは高吸水性樹脂、アクチュエーター、センサーなど、いろんなところでやわらかい材料が注目されております。また、バイオ、医学、薬学におきましてはタンパク質の結晶構造解析、あるいはさらには医用応用として治療とか代替器官等の開発応用にも進んでおります。さらには文化財保護、非破壊検査という観点からは中性子ラジオグラフィを使った研究がますます実用化に向けて進んでいるということであります。
 そして、少し目を転じまして、大学が行ってきました共同利用について少し説明させていただきます。その次のページですが、JRR-3に設置された共同利用装置というものでございます。これはJAEAが持っている装置、それから大学が持ち込んだ装置がほぼ等数あります。下の右側にあるグレーのところがJAEA所有の装置、大きく左側に書いたものが大学の装置群であります。東大物性研が9台、東北大3、京大2という数の装置群を持ち込んでいます。私の場合、共同利用を推進しております関係上、大学の方だけ説明させていただきますと、平面図に装置そして並びにどこが所有しているかというのはここに書かれております。
 このような装置を駆使しまして、年間申請課題数が約300、そして利用者が人・日で計算しますと6000、ユニークユーザーにしますと約400という研究が震災直前まで行われておりました。論文の発表数は約100、これは私の資料の後ろの方に資料3というのがございまして、そこで見ますと、東大というか大学だけで100報、そしてJAEAの方を入れますと200報以上がピーク時では出ております。後でそこに触れさせていただきますが、このような形で原子炉を1つ持つことによって多彩な研究がこのように展開されてきたというわけでございます。
 次のページにまいります。
 中性子散乱共同利用統計を見ますと、東大物性研は原研の創設とほぼ同時期に開設されました。1957年に創立されまして、60年から共同利用を開始しております。それから、組織替えを度々繰り返しまして、1990年代には施設として独立し、東海に施設を構えるようになりました。ちょうどそれはJRR-3の改造、JRR-3Mと一時呼んでおりましたが、それと時期を一致しております。横のグラフを見ていただきますと分かりますように、JRR-3が改造された頃から極端にというか非常に急激に利用者数、そして課題数が増えていることがお分かりかと思います。
 その後、10年の間に何度も概算要求、補正予算等々で装置の改造、高度化を進めてきました。2010年前後には先ほど申しました年間6,000人・日の規模、そして課題数が300、発表論文が100報程度というところまで至りました。
 ところが、その直後に震災がありまして、完全に活動が停止したというような状況になります。
 その右側、どんな分野に使われていたかといいますと、4分の3がハードマター、いわゆる金属、磁性体、超伝導等々の研究でございます。そして4分の1がソフトマターあるいはガラス、液体等の研究、更に生物系の研究もこの中に含まれてきます。
 その下に累計としまして統計をとり始めました1996年から今年11月の現在までで学術論文が1,968報、そして博士・修士論文が268という形で、ここにも数字にありますように、人材育成に非常に大きな貢献をしてきたと自負しております。
 現在、これが全て停止しているという状態です。
 次のスライド、資料を見ていただきますと、これはこの部会の第2回に報告されたという資料を拝見しまして、また持ってきました。JAEAが集計されたもので、平成27年度までの施設利用状況ということで、横に年度がありまして、各部門別といいますか装置別の利用があります。青いバーがいわゆるJRR-3、JRR-4でございますが、震災が起こった平成23年度からガタンとビーム利用がなくなっているということがあります。
 私がここで申し上げたいのは、この22年度の場合でいいますと801件の利用のうち約半分が大学共同利用ということで、JRR-3はJAEAと大学共同利用が車の両輪といいますか、飛行機の両エンジンといいますか、そのような形で運転されてきたということであります。それが今は全て止まっています。
 次のページ、お願いいたします。
 海外の実験支援派遣プログラムというのを御紹介いたします。
 2011年に震災が起こって原子炉が停止したわけですが、私たち、共同利用を推進するがわとしては研究を途絶えさせるわけにいかないということで、それ以降、海外の実験支援をすることにいたしました。そのチャートを見ていただきますと、物性研究所にまず申請書を出していただきます。そしてその出した人たちがそれぞれ外国のファシリティで課題を採択されますと、物性研がその旅費等々を支援しましょうという、こういうプログラムであります。
 ISSP/PACという、下に破線が書いてありますが、これは3号炉が再稼働しますと自動的に止まると、すなわち3号炉を中心に研究すると。だから、一時しのぎ的な形でこの今プログラムを運営しています。実際、これ、非常にうまくいっておりまして、多くの研究が海外の研究炉で行われております。実際、研究の継続性を何とか担保したということには有効でございましたが、長期的には研究の衰退、人材の枯渇につながることは必至でございますし、物性科学等々において大きな遅れがもう既に生じております。
 特に大型装置を使った研究が必要な場合、これは海外になかなか持っていけませんし、それから知的財産が絡むようなもの、これについてもやはり海外でやることに対しては躊躇(ちゅうちょ)されるものがあります。さらには学生をたくさん連れて行こうとしたときに、それは旅費の問題等々で不可能に近いわけです。そういうこともありまして、これはやはり3号炉が再稼働するまでのプログラムとして私たちは位置づけております。
 その具体的な統計を次のページで示したいと思います。
 これは震災が起こりました2011年以降の海外の派遣者の統計でございます。左側に各ファシリティ、それから国の名前がございます。2011年におきましては震災直後でございましたので海外の施設が手を差し伸べてくれまして、課題を受け入れましょうということがございました。私たちは施設の長たる者が集まりまして、優秀な課題について海外にお願いするというやり方をしたのが2011年であります。
 以降、2012年からは、海外の施設はもう震災終わったのだから受入れはしませんと、特別扱いしませんということになりましたので、こちらで独自に集めまして、募集をしまして、そしてなおかつ御本人たちが海外で受け付けられたものに対して支援するという形でプログラムを行いました。この表の更に少し特徴を申し上げますと、3番目にありますHANARO、これ、2013年までは数字がありますが、その後はゼロです。これは韓国におきましてもHANAROが地震対策のため研究炉を、現在もそうですが停止したことによります。一方で、その上にありますOPAL、ANSTOですが、2014年ぐらいから数が非常に増えています。これは東大物性研がANSTOと協定を結びまして、総合研究協定でかなり支援をするということで数が増加しているということです。
 更にもう1つ申しますと、この数字の中で赤字と黒字がございますが、赤字が原子炉を利用したところに派遣して、黒字がパルス中性子源、これをごらんになっていただいても分かるように、いかに中性子定常炉が重要であるかと、皆さんが行かれるかということがこれでお分かりかと思います。
 その次のページが採択課題・未実施課題及び海外実験支援課題数の推移というものを表にしたものであります。これは物性研が全国共同利用でやっているものの統計でございます。2011年、これが震災が起こった年でありますが、課題募集はそのときもう既に行っておりまして、250件超の課題がございました。それが年とともに徐々に減ってきています。これは中性子離れを端的に示すものであるわけでございますが、何とか食いとめているというポジティブな見方もできるかと思います。それから、その横が緊急課題といいまして、海外の施設で通ったから是非行かせてほしいと、後付けで申請されてきた課題が徐々に増えつつあります。等々、こういう形で見ていきますと、統計で真ん中あたりの課題総計が1,383件、この7年間でありまして、そのうち救済されたのが赤字で見ますと大体15%が課題として何らかの形で実現できたものであります。しかしながら、原子炉のニーズが非常に強いというのは明白であるかと思います。
 さて、次に、本題になってきますが、ビーム炉の長期停止による重大問題というのを幾つか挙げさせてもらいました。
 まず1つは研究の沈滞化とありまして、中性子ビームを利用した基礎研究、具体的には固体物理、物性物理、高分子科学、生物物理などをはじめ、物質科学、特に新物質開発などの研究に大きな打撃を与えております。
 研究・ノウハウの海外流出、日本で発見された新物質の多くが海外施設にて研究され、海外施設の成果としてハイインパクトジャーナル等に発表されています。例えば、最近の例でいきますと物性研の量子相転移近傍でのエキゾティック超伝導などの研究は、物性研で開発されたものですが、NISTで実験されてそこの成果となっています。また、京大原子炉ではタンパク質の構造解析などを行っておりますが、これはILLで実験が行われたということになります。
 3番目としましては、研究者の中性子離れ、エックス線その他の手法を利用した研究等へシフトせざるを得ない状況がございまして、その結果として国内の中性子関連の研究室が残念なことにどんどんなくなってきております。具体的には京大、阪大、東北大などで学部によっては中性子の研究すら完全になくなってしまっているという状況に陥っております。
 4番目、人材育成の遅延・低下、原子炉に設置した散乱装置は回折、散乱、反射などの原理を学び、それを生かしたり改良することが容易であるため、学生の教育や技術者の養成に適しているが、それができないと実験物性物理学や材料科学の発展に大きな支障を来し、ひいては日本の学術レベル、技術力の低下につながります。実際、J-PARCの建設に携わった人たちの多くは原子炉で鍛錬した、研鑚(けんさん)を積んだ方々ばかりでございます。
 5番目、装置の老朽化、運転停止の長期化により装置が老朽化し陳腐化しているということで、再稼働後の運転時に多くのトラブルが発生する危険性が高まっていることを危惧しております。
 それから、6番としては装置、共同利用ノウハウの途絶ということで、装置を運転、管理できる人材がどんどん欠乏していくと。
 当初、1年、2年で再稼働されると見られていたものですが、それが3年になるとドクターコースの学生さんは中性子を知らないで出ていく。5年になりますとマスターからいないと。今もう7年、8年となってきますと、もうほとんど原子炉の中性子を運転できる方も減ってきますし、実験できる方も皆無になるというような状況に今なりつつあります。非常に危機的な状況であります。
 次に、次世代原子炉のあり方としまして、これは先ほど少し申しました今日の参考資料1-4のまとめのところの一部を取り出したものであります。
 これは中性子科学会が震災の後、1年ほどかけてまとめた報告書で、将来次世代原子炉はどうあるべきかということを書いたものです。その一部ですが、JRR-3の高経年化対策を継続的に行う必要があろうと、それから、JRR-3の運転停止が予想される2030年頃までに次世代の中性子源の建設が必要である。それは高性能の装置群による総合的で自由度の大きな研究環境を実現する必要があろうということをこの報告書の中では書いております。
 次がJRR-3の経年化対策及び次期研究炉の必要性ということで、先ほどから経年化対策並びに次期炉の必要性を申し上げたわけですが、日本発のすぐれた研究を維持するために不可欠であると。原子力工学はもとより、物性物理学、そして新材料の開発、エネルギー材料、電子材料、アイソトープ製造、医学・薬学・農学への波及効果を考えると、是非とも経年化対策をまず行い、そして次たる研究炉の建設計画を達成していただきたいと思います。
 2つ目としましては、研究炉の運転や研究炉建設はJAEAの再活性化につながるということで、研究炉建設に触発される原子力工学等の技術革新、人材の育成ということで、私がJAEAに口出しできるものではありませんが、はたから見ていましてもやはりJAEAは福島問題等々で非常に忙しくされていますが、やはりポジティブな原子炉建設というのは非常に研究の起爆剤になるのではないかと想像しております。
 次に、再稼働後のJRR-3の利用としまして、いろんなところから、入り口が幾つかあると。例えば3号炉を利用するに際してもJAEAに直接申し込む場合、そして大学共同利用を申し込む場合というのがあるというのが指摘されておりました。それにつきましては、震災の直前にJRR-3 RINGシステムによる課題申請、この左下に黄色で書いてあるところがありますが、この共同申請システムができております。できた途端に原子炉が動かなくなってしまったわけですが、この形を使いますと大学・研究所の方々は施設に直接申し込んでもよろしいし、あるいは大学共同利用・共同研究拠点と呼んでおりますが、私たちのところを使って申し込んでいただくこともできます。産業界はもちろんJAEAに直接研究依頼をすることもできますし、いろいろ枠が広がっておりますので、共同利用という形で大学を経由して研究についていただくこともできるだろうと。そういう意味で原子炉を使った、特に3号炉を使った研究というのは非常に活性化すると期待しております。
 最後に、研究炉のJRR-5の構想というのが2015年にJAEAの研究炉部のワーキンググループの方から紹介されました。既に御存じかもしれませんが、一言でいうと複合炉でございます。これを作ることによって照射とビーム利用の両方のニーズを満たすものができるだろうと。ただ、ここで重要なことは、左上のポンチ絵にもありますように、結構なスペースが必要であるということ、そしてその研究炉を円滑に最大限に活用するためにはそれを支援する大学、国研、あるいは地域のサポートが必要だと思います。そういうことが望ましいと今考えているところであります。
 ちょっと駆け足でございましたが、これで説明を終了、すみません、あと資料が、1が東大物性研の沿革がございまして、原子力機構とほぼ同時期に歩調を合わせて発展してきたということが書かれています。
 資料2及び3が共同利用の論文統計、2が東大物性研のみ、この数字は読字だと見にくいのですが、右下にJ-PARCのNACですね、2016年、私、NACのメンバーでもありますので、そこでの論文成果を比較したものですが、今、J-PARCの成果と拮抗(きっこう)する程度、あるいはそれより成果を出していたということをここで訴えたいと思っています。
 資料3はJRR-3からの発表論文、今これRINGシステム等々が統合されましたことによってJAEAと両方の統計がとれるようになっております。それを全部合わせたものを新たに作ってまいりました。2006年のピーク時ですと260件ぐらいの論文が出ております。2011年以降は先ほどから申しておりますように、海外炉を頼るような形で論文が出ている程度で、かなり減っております。
 あとは研究ハイライトを幾つか紹介させていただきました。
 そして、あとは将来の中性子利用体制、これも先ほどの1-4の資料にございますが、大型、中型、小型の中性子源をうまく使っていきましょうということがここで述べられております。
 そして、資料の7は日本学術会議第3部会が2011年8月に出しました理学・工学分野における科学・夢ロードマップというのがございます。このうちで中性子が関係していると思われるものに丸をつけてありますが、半分以上が中性子研究に関係したものであるというふうに私たちは考えております。
 ちょっと長くなってしまいましたが、以上です。

(山口主査) 柴山先生、ありがとうございました。
 それでは、御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。何か御質問、コメントなどございますでしょうか。
 では、木藤委員から。

(木藤委員) どうもありがとうございました。
 本当に素人な質問で、唐突な質問なので申し訳ないのですが、JRR-3が今日の議題だと伺ったときは、JAEAの方が来られて説明があると思っていまして、先生の方から御説明いただいたというのはどういうことなのでしょうか。

(柴山教授) 私が答える立場にあるかどうかちょっと分からないのですが、私、指名されたがわでして、あえて言うならばこの間、もんじゅの有識者会議に代理出席をいたしまして、国から見たときに、JAEAを通して見たときに、なかなか大学共同利用が見えていないことが過去にもたくさんありました。実際にこれだけ3号炉が有効利用されていますよということを御説明する意味でも今回私が指名されたのかなと思っておりますし、それから、AONSAといいまして、アジア-オセアニア地区の連盟みたいなのがございまして、そこでファシリティディレクターミーティングというのがございます。それに日本代表は私ということで、そこでは3号炉全体の説明をさせていただいています。
 今回ちょっと御依頼の意図がよく分からなかった部分もありましたので、大学共同利用ということに限ってお話ししてしまった部分が多々ありますが、ビーム利用ということに関しては、そういう意味ではJAEAのことを十分御説明できなくて申し訳ないと思いますが、そういうような背景がございます。

(山口主査) では中島委員。あ、事務局からいきますか。

(上田原子力課長補佐) すみません、少し柴山先生から御説明いただいた、一応事務局の意図として御説明させていただきますと、第2回に原子力機構の方からはいわゆる施設の設置者としての説明は頂いておりまして、一方で試験研究炉ということであれば大学であるとか産業界であるとかユーザー側の視点も必要だろうということがまさに幅広く議論していく上で必要だというところの中で、前回はJMTRのユーザーということで東北大学の永井先生からも御議論いただきましたが、ビーム炉の方においても大学の利用という観点からプレゼンというか御説明いただき議論できればというところが一応御説明いただいた背景ということでございます。

(山口主査) では、中島委員、どうぞ。

(中島委員) 京大の中島でございます。ちょっと遅れて来まして申し訳ありませんでした。途中から聞いていたので聞き逃したのかもしれないのですが、海外の炉を利用されていろいろ御苦労されているということなのですが、これの財源というのはどこから捻出されたのでしょうか。

(柴山教授) 財源は、基本的に東京大学原子力専攻が持っておりますビーム利用の派遣旅費でございます。具体的に言いますと1,670万円ございまして、これは年7サイクル175日、原子力研究所、JRR-3で実験するために用意された予算でございます。今、実際、東海に行っても実験できないわけですから、そのお金が浮いた状態になっています。これを有効利用しようということで私の方が原子力専攻の方にお願いしまして、お認めいただいて、そういう形で使わせていただいているということでございます。

(中島委員) ありがとうございます。ということは、経常経費というか、特にこのために何か補助金というか特別な予算申請したわけではないということですね。

(柴山教授) そのとおりです。もう少し言いますと、原子力専攻が1,670万円、一応固定という形で予算がついているということと、物性研は450万、物性研は物性研旅費として東海村に行く予算を持っております。今のところその原子力専攻予算を使ってこれをやり繰りしております。
 以上です。

(中島委員) 了解しました。それで、採択率というか申込みに対して実施が15%程度救済されたということですが、例えばこれが予算が1桁というか6倍、7倍、8倍になると15%が80%、90%となるものなのでしょうか。

(柴山教授) それは違います。これはあくまでも私たち東京大学物性研究所に申請された課題のうち、同じ人が海外の施設で申請を採択された課題になります。ですから、ある意味数字は独立したものなのです。ですから、何%救済したではなくて、申請書がよければもっと採択いただく、そうすると今度予算がなくなってしまいますので、当然、打切りは行いますが、現在のところ予算内で何とかしております。ですからちょっと私の書き方が悪くて15%救済したということになってしまうかもしれませんが、少なくともこの方々は海外で活躍されているということでございます。

(中島委員) ありがとうございます。

(山口主査) よろしいでしょうか。
 では、多田委員、どうぞ。

(多田委員) 大変分かりやすい御説明ありがとうございました。JRR-5は、先生が基本設計をされたわけではないのかもしれませんが、分かっていたら教えてください。炉の大きさとかラインの数とか、そういったものは何か予測の上に構成されたのか、それとも単に大体倍あったら、今の倍のライン数があったら何とかなるという、そういう割と漠然としたものに基づいて作られたのでしょうか。

(柴山教授) これについても私が答える立場にありませんが、私が知る限りというか想定する限り、まず熱出力が30MW、これは世界の今スタンダードになりつつあるものですね。それと、我が国では照射炉、JMTRの後継とそれから3号炉の折衷炉にするのか2つ作るのかというのは常に議論されているところであります。これはJAEAの方々が苦肉の策として2階建てにして両方を満たそうということを考えられたことだと思っております。
 ビームの数、これはポンチ絵で適当に書いてありますが、ビーム炉の場合はタンデム型に装置を幾つか並べることができます。ということで、現在のニーズ、現在といっても2010年前後のニーズですが、それに基づいてどの程度のユーザーが来るかということで少なくともビーム炉に関しては出されていますし、それから諸外国、先ほど言いましたドイツのミュンヘン炉、ANSTO等々の情報交換等々からこういう数字が、あるいは配置が出てきたと私は考えております。

(多田委員) ありがとうございました。

(山口主査) ほかには。では、渥美委員、どうぞ。

(渥美委員) 私も海外での救済の研究についてお聞きしたいのですが、海外炉で研究した場合の得られた成果というのはどのような形に帰属するようになる形になるのかというのが1つと、あと海外派遣のとき、先ほど旅費の話ですとか宿泊費の話が出ていたのですが、利用するに当たってある程度費用負担とかそういうのがあるのかというのは、2点ちょっとお聞きしたいと思って、よろしくお願いします。

(柴山教授) 分かりました。まず知的財産的な帰属でございますが、私たち研究者が行きますと最終目標は論文化でございます。これについては当然クレジットと申しますが、アクノウレッジメントで向こうの施設、そして東京大学のプログラムを使ったということで、東京大学物性研究所並びに原子力専攻にクレジットがくるような形でアクノウレッジメントをとっている。ですから、先ほどの論文統計はそういうものに基づいているものでございます。
 それから、旅費に関しましては、当初1人当たり30万、何とか旅費だけを面倒見ていたのですが、特に地方大学の方々は旅費だけもらっても赤字になってしまうということをいろいろお聞きしましたので、今、日当も入れて35万に引き上げております。これですと大体の研究ができる、4、5日等々、それがアメリカだろうとヨーロッパだろうと、できるぎりぎりの線になっています。あとは自己負担ということで、1課題当たり2人まで派遣するようにしております。

(渥美委員) ありがとうございます。

(山口主査) ほかにはどうでしょう。ちょっと私からも。先ほどから出ている原子力専攻の方、私、おりますので、いろいろと御一緒させていただいているのですが、ちょっと将来どういうふうにしていくかという観点で、米国は別としても欧州は必ずしもそれぞれの国がそうやって研究のインフラを用意してやっているわけではなくて、どちらかというと国境を越えて共同利用的なシステムで多分うまくやっているのだというふうに思いますが、例えば日本でこれから将来こういうビーム利用ということで施設を持つときに、どのような形が理想的なのか、今日の前提は日本の中に炉とパルス中性子源と両方あるのがいいという、そういう文脈でのお話だったのですが、今の現実的な問題とかいろいろなことを考えて、どういう方向性というのを考えていらっしゃるのか、それが1点目と、もう1つ、今日は特に研究の利用というのもあったのですが、ユーザーとか運営とか考えると産業利用の方をどれぐらいの割合でどういう仕組みで動かすのかというのもまた重要なポイントなのだと思うのです。ちょっとその辺の、大学が共同利用なりで研究として論文を書くために使うものと、それのビームラインの一部を産業界にオープンにして使っていく、そのための戦略といいますか、その辺についてのお考えがありましたらお聞かせいただけないでしょうか。

(柴山教授) まず第1点目ですね、国に関しての話ですが、よく議論されることとして、もう1国で持つのは大変だから、例えばアジア地区で持ったらいいかということも常に出てきております。それも私、なるほどと思ったことは多々あるのですが、昨今、例えばアジアだけを見ても非常に不安定な状況でございます。そういう意味でやはり日本がリードする意味でも原子炉を持っている必要があると思っております。その一方で、例えばこの間、先週、ANSTOに実験審査委員として行ってきたのですが、向こうは第2ガイドステーションを作ろうと、ガイドホールを作ろうとして、今度、作ってもお金がないんですよ、装置を作る。そういう意味で日本にも入ってくださいというような声かけをこれからしようということを考えています。ですから、グローバル化というのは1つの視野として見ておく必要はあるかとは思っております。
 ただ、やはりその場合でも長期に人を派遣したりすること、それから当然実験による負担、旅費もかかるということを考えると、トータルな意味で日本が持つ方が、技術力を養うという意味、それから長期的な戦略の意味においても絶対日本に優位性があると思っております。
 一方で中性子のビーム利用におきましては非常にグローバル化が進んでおりまして、先ほど、震災が起こった後というのは世界中から手を差し伸べてくださいまして、うちにはこれがあるよということで実験できるような環境があります。それは世界的な形で互助関係ができています。その意味におきましても逆に日本にそういう装置があることによって、他国で何かトラブルがあったときにすぐに使っていただけると。今のところ一方通行で私たちは使いに行くばかりで、使っていただくところが余りない。HANAROがまだ動く前は日本が受入先となって共同研究をたくさんしたことがございます。
 2点目ですが、産業界、これはむしろ大学共同利用というところのルールの方が足かせになっておりまして、例えば共同研究の申請は大学関係者でないとできないというのはまだ少し残っているようで、今、ルールを調査中でございますが、むしろここの箇所を教えていただけるとうれしいのですが、我々としては産業界の方に対して大変ウエルカムな形で使っていただければ。実際、それが、産業界の方がプリンシパルインベスティゲータとしてならないように今なっていますので、その場合は私たち、大学の先生が主たる研究者となって共同研究の形でもう既にこれも10年以上、少なくとも私個人でもやっておりますし、それから、今、うちの研究所も国際共同拠点と今なろうとしている過程で、海外まで取り込もうとしているのに、国内で産業界どうのこうの言っている場合じゃないだろうという今議論が盛んに起こってきています。ですから、せっかくの有用な資産でございますので、できるだけ多くの方に使っていただきたい。むしろ産業界の方は非常に最先端な問題をお持ちになられますので、非常に研究の活性化にもつながると私は思っています。
 例えば、今日の資料の1つにありました、ものづくりどうのこうのというのがありましたが、あのマップの中に燃料電池とかリチウム電池、入っていないのですよね。ですから、あれからもうバババッと出てきて、やっぱり最先端なものはなかなか予想の中から出てこないと思いますので、その意味でもやっぱり産業界、産学で刺激をし合うというのは非常に重要かなと思っております。

(山口主査) ありがとうございます。
 いかがでしょうか。あと何かお聞きになりたいことありましたら。
 あとはもう1つ、先生が大学とか研究機関が近くにあってという、立地とかそういうお話をどこでしたか、されていましたかね。そういう意味では、やはりユーザーという意味では、例えば今、JRR、茨城県にあるのですが、何かその辺の次に考えるときにはインフラとかも含めて当然考えていかないといけないのですよね。そうすると、いろんな研究機関の連携とか、あるいはスペックをどう決めていくかとか、立地をどう決めていくかというその辺の決め方について、大学だけで決めるわけでは当然ないのだろうと思うのですが、何かそういう、何と言いますかね、共同体みたいな形で具体化に向けて検討を進めていく、インフラとかそういう研究機関がどこがどうユーザーであってという、そういう具体的な動きというのは今何かお考えなのでしょうか。

(柴山教授) まず、私たち実際共同利用をやっておりましても、こういう研究炉ができた場合、大学がそばにあるということは非常に重要かと思います。例えば、国研ですと研究員の方々、入所してだんだん年とっていくと新しい人が入ってこないのですね。人事が停滞化するとますますそれが高齢化します。ところが大学ですと必ず新しい人が入ってきます。具体的な例で言いますと、ミュンヘン炉の場合、ミュンヘン工科大のキャンパスの中に原子炉がございますね。バイエルン州が支援しているし国も支援している、大学も出している、そしてもともとあったユーリッヒ研究所、これはケルンの近くですが、そこも出しています。ということで資本体系も、それから組織的にも、いろんな方が入り混じって大学のキャンパスの中に原子炉を作っているという例がございますし、ですから、大学は少なくともそばにあった方が、大学の先生自身がその装置担当者になったりすることもできるわけです。
 同じようなことがANSTOの場合、シドニー郊外、シドニー空港から車で小1時間ぐらいのところに行ってしまいますね。非常に便利で、かつシドニー大学がございますし、また近隣に幾つかの大きな大学がございます。そういうところは非常に有機的に使えている。そして、今度は台湾でいきますと、台湾の放射光を見ますと、あそこに清華大学がありますね。もうほとんど目と鼻の先にある。そういう形で一番いいのはやはり大学を近くに持っている。
 今の場合、例えば東海ですと最近茨城大学に原子力専攻の、量子ビームの専攻もできましたね。ああいう形が理想的だろうと思っているところであります。

(山口主査) あれですかね、だからやはりそういうユーザーの立場で人が集まりやすいかとか、継続的に人の流れがあるかとか、そういう話も含めていえば、大学というのは相当重要なプレイヤーであると。

(柴山教授) 一番、手っ取り早いと言うと言葉は悪いですけれども、人材育成できる場でもございますので。

(山口主査) 大学の中にお持ちの方もいらっしゃるのですけれども、はい。
 いかがでしょう。ほかに何か御質問や御意見などはありますでしょうか。よろしいですか。
 では、今日、柴山先生には大変インパクトのあるお話を頂いたと思いますし、我々もJRR-3がずっと止まっているという問題はぼんやりとは認識しつつも、これだけの大きな影響が現在もあって将来的な懸念事項も多々あるということが相当クリアにお示しいただいたと思います。
 柴山先生におかれましては、本日はどうもありがとうございました。
 それでは、続きましてもう1件のテーマですが、「我が国における研究用原子炉について」につきまして、福井工業大学から本日は来馬先生がいらしていただいています。
 では、来馬先生から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

(来馬教授) ありがとうございます。貴重な時間というか、お呼びいただいて、またお話をさせていただくということをまずお礼申し上げます。
 中身は大体今までの3回の議事録というか、そういうことを見させていただいても十分いろんな角度から御検討されているし、今も先生から御提案もあったように、私が踏み込んで何かを言うという話は特段ないと思うのですが、少しだけ私のプロフィールも含めてちょっとだけお話しさせていただければと思っております。
 私そのものは福井出身で、それで大学を大阪大学に行って原子力ということだったものですから、卒業した1972年にたまたま福井県庁に呼ばれて入ったといえば入ったわけですね。それ以来、37年ほど定年まで原子力だけをやってまいりました。地方自治体における原子力というのがなかなか想像されにくいと思いますが、いろんな意味で地方から見た安全対策というのを追究してきたつもりです。
 もちろん地方の立場、すなわち福井県の立場というのはいろいろあるのですが、今この時点で見れば、非常に多数の原子力発電所が立地し、それからいろんな課題、難題も今抱えて大変な状況にあるわけですね。別に福島の事故があったからという単純な話ではないと思います。立地の当初からやはりいろんな状況の中でそれをいろんな人が乗り越えてきたのだろうと思います。
 たまたま今日は偶然にもといいますか、もんじゅの問題で協議会、国と地元の協議会が開かれるという話がたまたまありますが、これもなぜこのようなときにこのことがというのは、ちょっと御説明している時間はございませんが、なかなかそういう意味で地方が抱える問題、原子力を巡っては大きな問題がどうしてもあります。
 それを今ここでお話しするというよりは、そういう県で、自治体でやってきたことも少し大学で人材育成に使えないか、あるいは貢献できないかということで、今は大学、地元の福井工業大学におります。福井工業大学の原子力をやる立場というのは、やはりまさに地元の大学ですから、原子力発電所がある地元の大学ですから、できるだけ地元への貢献も含めて人材育成、すなわち学生を、やはり原子力の現場でしっかりと教育した学生をそこで地域のために、あるいは産業のために役立たせる、そういうことを願ってもう13年ほどたちますが、やってまいりました。
 非常に大規模でもないし、歴史あるわけでもないのですが、福島のこともありましたが、学生はやはりこの厳しい状況の中でも原子力をしっかりとやって、例えば福島の廃止措置、あるいは福島の復興、そういうことにやはり頑張ろうという学生もしっかり育っていますので、来年春、例えば東京電力に入るという学生もまさに福島のために自分は東京電力へというようなことも含めて、やはりこの教育というか我々の人材育成の中で何のためにどういう学生をというのは必ずしも決まりませんが、いろんな取り組みをしてまいります。
 その中で、今、中島先生もいらっしゃるように、我々、最近は先ほどから議論されているように福島の事故もありまして学生をそういう原子炉で教育するということが不可能な状況が続いています。幸いにもようやく今年9月から近畿大学の研修が再開されまして、うちの学生も2年生とか3年生を中心に30名、参加させていただきました。30名一遍ではちょっと難しいので、ある種距離感はそこそこ近いので10名を3班に分けて毎日往復すると、こういうことで先生の方が大変かなということだったのですが、ただ、これもたった1日の研修をしても、これは学生はなかなか行って何をして何を学んでどう帰ってきたんだという話になりますので、事前に2回、研修を希望する学生はしっかり教育をして、どういう実験実習、あるいはその中身、それをしっかりと事前に2回やって、それで例えばちょっと出席できない、ちょっと理解度が低いというのはもう参加させていません。やはりそれだけの中身が、せっかく長いいろんな意味で近畿大の先生方の思いで再開したところですから、そういう貴重なものを使わせていただくということで、そういう準備をさせていただいて、頑張ってきました。学生にとってやはり通常で授業していることとはまた違う経験ですから、やはりそれは重要、貴重なことだったと思います。
 もともと先ほど言いましたように福井県、原子力、こういうことをやってずっとまいりましたが、きっかけはどうしてももんじゅという話がちょっと出てしまいますが、もともとやはり福井県が原子力をどう地方として取り組むかというのが誰も想像するように、何よりも安全でなければいけないことであるとか、やはり住民とかの理解がしっかりとなければいけない、同意といいますか、そういうことがなければ進められない。それと、3番目には地域が、恒久的という言葉はちょっと印象が難しいですが、要するに一過性じゃなくて、その地域に原子力がある、それが30年のプロジェクトが50年、100年かは分かりませんが、そういう長期的な恒久的な地域の振興につながることもまたあわせてやってほしいということを3つの基本としてやってまいりました。
 今日も実は先ほど申し上げました、もんじゅの協議会でもありませんが、そういうもんじゅのナトリウム漏れのこともあって、改造工事を議論する最終判断のときに、やはり福井県が15基の原子力発電所があるということは関西に対して見れば送電先なのですね、5割近くの電力を供給するという貢献をもちろん持っているのですが、それだけで地域で交付金が交付され、あるいは税金が、あるいはその他いろんな雇用、様々な1つの地域への波及効果、これはもう当然のごとく期待されるし、またそういう効果があるわけですが、その中でやはり点とは言いませんが、発電所が個々に点々と存在していることを嶺南という原子力エリアのところは広域的、あるいは面的にもっと考えて波及効果が及ぶことはないのかということを1つの思いとして、エネルギー研究開発拠点化計画というものを実は平成17年に作ったのですが、それも実は私が担当いたしました。それはここで申し上げる時間はありませんが、その中の1つとして、やはり福井の例えば敦賀、もんじゅがある敦賀をいわゆる人材育成なり研究開発なり、あるいは産業なり、そういうところにつながる方法はないだろうかということもありまして、例えば今、福井大学にすごく国際工学、原子力工学研究所というものも、地元の期待も含めて、あるいは福井大の協力も得て今できております。徐々にまたそこで研究あるいは人材育成が進みつつあります。
 そういうことと併せて京大、あるいは近畿大も含めて、関西エリアあるいは中京エリア、それから北陸エリア、そういうエリア全体の大学研究機関がものすごく連携していく方法、あるいは共同に何か利用していく方法を連携していくためには、何らかの核となる施設が必要なんじゃないかなということは当初から議論がありました。ただ、そうは言っても福井にそういうベースとなる研究機関であるとか、JAEAを除くとほとんどありませんので、やはりそれを徐々に高めながら、将来の将来としてはそういう必要性、大型の共同利用に資するような、そういうことと考えたときに原子炉というのは、研究炉というのはあるのかなと思って、現在的には原子力学会も、それから日本学術会議も、こういう日本で新たにやはり研究炉を作るべきだという、そういう流れができておりますが、10年ほど前にはそこがまだなかったときに、是非そういう将来のやはり高経年化というのですか、どうしても20年、50年とたっているのを考えると、是非ということをいろいろ働きかけてきました。そのときにはまた山口先生にもお世話になりましたが、先ほど柴山先生から御紹介ありましたミュンヘン工科大のFRM2も先生方と一緒に視察をさせていただいたり、あるいはカダラッシュの当時は建設が始まったばかりで構想を聞いていくという話でしたが、あるいは同じくCEAのサクレーに教育用の原子炉、オシリスですかね、ありましたので、そういうところでもいろんな話をお聞きしました。
 そういうことで福井が立地県になるかどうかのことはもちろん別ですが、やはり日本の原子力あるいは人材、研究、そういうもののために是非そういうものが必要じゃないかなということを訴えるというか、思いを持っていろいろやってきました。
 現時点ではようやく流れといいますか、先ほどというか、もう提言とかいろんな形で学術会議あるいは原子力学会も出していただいていますので、あとはこういう委員会、そういうところでしっかり議論された上で日本としてどうあるべきか、研究をどうすべきか、もちろん研究炉だけではないのでしょうが、研究基盤をどう整えて将来の日本の原子力をどう支えるのだろうということがまさに問題になると思いますので、なっていると思いますので、是非この部会でそういう議論をきちっと方向づけをしていただけると有り難いなと思います。
 百聞とは言いませんが、今まで出ていった学生で研究炉での実習を経験していない学生がいます。それでも例えば関西電力に入れば、今、高浜発電所の運転直員をしているという学生、研修でやっているだけですが、本当に直員にはならないと思いますが、そういうことを考えるとやはり非常に残念な時代がずっと続いてきたのではないかなと思います。やはり原子力をずっとやってきた人間としては、スリーマイルアイランドの事故にさかのぼることもなく、やはり原子力発電所にかかわる、特に運転とかにかかわる人にとって臨界であるとかそういうものが実際にペーパーじゃなくて、教科書じゃなくて、現場でしっかりと経験する、制御棒がやはり自分で使ってみる、そういうことができるとこれは現場でのいろんなことにもちろん役立ちますし、やはり一番大きなのは、本当に福島事故以降の我々の人材育成の方針の転換とも言えますが、安全であるように頑張って作るのだと、それはもちろん産業界も含めて安全なものを作る、それから事業者が安全に運転する、これは当然ですが、福島の事故があったということは、もし万一のときにそれに対応できる人材もまた必要だということも言えるのではないかなと。そうなると、やはりいろんな意味で総合的なそういう原子炉の問題、いろんな立場でいろんな仕事をするにしても、やはりそのことをしっかり経験、体験として分かっているということは人材育成上、あるいは現場の安全上、絶対必要じゃないかというのを強く感じております。
 先ほどもちょっと言いました、サクレーのオシリスといいますか教育用の原子炉、これはもうちょっと前ですが、文科省の補助金をもらって我々も大学連携で、夏の大学ということをやって1週間学生を缶詰ではないですが、京大、阪大、名古屋、福井も、あるいは金沢も、東工大も、とにかく日本全国に働きかけて、そういう夏の大学校みたいなことをやったのですが、そこの中で特に優秀な5名なら5名を選んで、フランスのサクレーに連れて行って、1週間、実際は1週間ないのですが、3日か4日、教育させました。ところが、英語力の問題もあるのですが、やはり全く原子炉を知らないのがいきなりサクレーに行って運転実習みたいなことになって、全く役に立たないというか、向こうの先生も困ってしまうぐらいの状況になったと。私は行ってないのですが、一緒に行ったのがたまたま日本原電の運転員をしたことがあるのが若狭研にいて行ったんですね。だから、その日の夜、もう原子力の運転というのはこうやるんだよというのを現場で教育したと言っていました。それでようやく次の日からは少し向こうの講習というかそこでの教育が、物すごく優秀な方々なのですが、本当の意味ではやはりちょっとそこまでは、そこまでいっちゃうと原子炉のシミュレーターとかそういう話になるのですが、それもまた現実ありましたので、いろんなことをもう少し大学でやらないと、本当の意味ではしっかりとした人材というのは育たないのかなと思います。
 その後、先ほど言いました山口先生たちと同じサクレーに行って、俺が学生に教えたという先生と話をしたら、その先生は、いや日本の学生はおとなし過ぎるなと、何の発言もないんだよなとか言って、質問してほしいなとか言っていました。そういうことは別として、やはりいろんな意味で日本がまだまだ原子力をしっかりとやっていく上では大学における、これはもちろんうちの大学ではなくても、多くの大学、全部そうだと思いますので、そういう機会、チャンス、それをしっかりと準備していく、それがやはり我々福井のためにもなるのはもちろんですが、国際的にもやはりそういうことが重要な状況、アジアのことも含めて考えればそうだなと思います。今、福井もIAEAの研修の一部を受け入れるとかそういう形で国際的な協力の中でも頑張ろうとしていますので、今回の研究炉の問題も日本全体として考えていくのはもちろんですが、更にやはりアジアであるとかIAEAをしっかりと取り込むというのも変ですが、IAEAとうまく研究炉が一緒になってやれるような、そういうものを是非期待したいなと思います。
 中身が余りなくて申し訳ないのですが、私自身としては、最近の議論でいくとJMTRの後継の問題とかそれから教育の問題でいくと、そんな大きなものは要らないのではないかとか、そういう議論は当然あると思いますが、先ほど柴山先生がおっしゃったようなミュンヘン工科大も行ってきましたが、まさに大学の中にあってFRM1という古い、日本でいうとJRR-1みたいなやつを廃炉にして、その建物だけを利用して隣にFRM2を作って、多くのビームを、原子力のビームを作って様々な医療であれ薬品であれ、あるいは自動車産業というのか、いろんなものを産業も含めて大学が中心となってやっているという姿は、やはり何となく見てきたところでは理想的な展開をされているなと思いましたので、是非そういう先進的なことも含めて議論をまとめていただけたら有り難いなと思います。こういう機会を与えていただきまして本当にありがとうございました。よろしくお願いします。

(山口主査) 来馬先生、ありがとうございました。
 福井県は今お話あったとおりで、研究のいろんな施設というのを拠点化計画で、私も阪大のころ、拠点化計画でいろいろ一緒に議論させていただきましたところなのですが、では、御質問や御意見などありましたらお願いいたします。どうでしょうか。
 来馬先生、福井県庁にいらっしゃって、今は大学でそういう学生の原子力教育とか非常に、福井というどちらかというと東大、京大とかそういうところとはまた違ったスタイルでの教育でいろいろ御尽力いただいているところなので、経験からもいろんなお話を伺えると思うのですが、いかがでしょうか、何かございますか。
 木藤委員。

(木藤委員) 御説明ありがとうございました。先生のたどってこられた道とかお人柄とか、いろんなことが感じることができまして有り難いと思いました。先生がおっしゃった中で、1つ目は福井のこと、福井からのお話だったと思いますが、日本全体で考えていかなくてはというふうにおっしゃったところはとても賛同するところと、国際的なこと、日本に閉じてもいけないし、外からの人にも来て使ってもらえるようなことというのも必要かなというふうに思いまして、賛成しながら聞きました。先生がおっしゃった中で、産業ですよね、地元の産業、ドイツの例を実際見てこられたということですが、そういういいイメージを持たれているので、是非そういうことも私たちというかみんなも共有しながら、イメージを共有化して作っていかないといけないかなと思いました。ありがとうございました。

(山口主査) ほかにはいかがでしょうか。
 1つ、今、資料で、具体的にはお話なかったのですが、ポスト京大炉・近大炉というところがあって、先ほど柴山先生のお話でも大学が研究炉を持つのは重要だというお話をされて、現在、福井地区なので福井大と福井工大とに原子力の学科がありますよね。その辺、ちょっと福井県というお話になるのですが、福井大とか福井工大で研究炉かどうかは別にしても少しそういう研究施設を大学が運営するということの実現性といいますかね、あるいは可能性とか、そういうのが果たして地域の活性化といいますか、あるいはそういうところが福井県以外への発信力といいますか、そういうものとしても効果があるのかとか、ちょっとその辺、もし福井県の大学がそういう研究の施設を運営するとか、そういうことについてもしお考えがありましたらお聞かせいただきたいのですが、ポスト近大炉、京大炉というのものの関係といいますか。

(来馬教授) そうですね、それはちょっと名前が悪かったのかなと思いますが、別に京都大学、近畿大学にかわって経営するとか運営しようという意味ではなくて、まあまあ50年以上の実績のある炉、またそれを運営されてきた実績のあるところですから、それを簡単にかわるという話ではなくて、もちろん、もし福井ということになれば全く新しく、僕はですが、個人的にはやはり運営体制を作り直すというか新しく作らなければいけないのではないかなと思います。それは大学に戻るのでしょうが、もともとJAEAもありますので、やはりJAEAと大学、もちろん電事連というか電力の協力も必要だと思いますが、そのありようは今まさに議論されているところだと思います。
 先ほども出ましたが、カダラッシュのJHRもヨーロッパタイプで共同利用、すなわち建設費を負担すればそれに応じて時間が与えられるみたいな、単純に言うとですね。そういう共同利用を最初からもう前提として作るというのは、今後の運営を考えると、その中心は誰になるか、日本政府なのか、あるいはJAEAになるか、それは別として、やはりそれをアジアに広げる、あるいはIAEAと協力してそういう枠組みを作った上での共同利用、あるいは運営というのを考えることのつもりでちょっとポストとかいう言葉を使いましたが、これはそういう意味のポストではないです。そうは個人的には思います。

(山口主査) どうぞ、柴山先生。

(柴山教授) 今、山口主査が言われたことで少し訂正をさせていただきたいと思います、私の発言に対する訂正なのですが。大学等が原子炉等の施設を持つということに関しては非常に私は否定的でありまして、もう今、セキュリティの問題等々を考えますと大学では原子炉を持つことは絶対不可能です。多分、皆さん御存じだと思いますが。実際、東大の弥生炉も廃炉にしましたし、それからKURの川端所長もやはり京都大学で原子炉を持つのは非常に大変だと、人件費等々もありますし、まずセキュリティだということで、仮に福井の今原子炉の話が出ましたが、これができるのはやはり国か、あるいは原子力の専門機関であるJAEAを置いてほかにはないと思います。私の発言で、もしそれが大学側のキャンパスにあるからといって大学が持つような形でもし受け取られたのだったら訂正させていただきたいと思います。あくまでもバイエルン州あるいはドイツ国がたまたま大学の敷地内に持っていると、そういう形で有機的に運営しているということを申し上げた次第であります。訂正させていただきます。

(山口主査) ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 中島委員。

(中島委員) 今まさにおっしゃられたとおりでございまして、今、うちは京都大学として研究炉を2つ、KUR、KUCAの管理をしていますが、やはり非常に新規制基準の方も厳しいですし、あと今話ありましたセキュリティ対応、非常に厳しくなっておりまして、今後どうしたらいいかというところは今所内でも議論しているところでございます。やはり、これでどこかで手放すというか運営をどこかにお願いできると大学としては非常に助かります。ただ、どこまでというのが、後々使い勝手がどうなるかというところが難しいところでして、余りにもがんじがらめで規則最優先とかでやられると、例えば、ちょっと融通がきかなくなって、やりたい実験1つやるのに相当準備とか手続に時間がかかるということになると、やはり困るということで、虫のいい話でありますが、そういう良い面は残しながらもしっかりと体制なり経費なり人員なりが整備された運営というのが理想的ではありますね。あと、例えば人を育てるという意味では運転管理に大学が例えば全然さわらないというよりは、やはりある程度絡んだ方が、大学の人を育てるという、利用じゃない側の人ですね、安全管理する人、そういう意味合いもあるかとは思いますが、実際そのようなのができるかどうか分かりませんが、理想的にはそういったものが良いのではないかなと思っております。

(山口主査) ありがとうございました。
 どうぞ。

(来馬教授) 言い忘れたといえば、ちょっとやはりミュンヘン工科大に行ったときに、そこは、工科大という名前はあるのですが、総合大学みたいな、医学もあれば全部そこへキャンパスが集まってきているという話になりましたが、それはそれとして、そこの炉心の設計みたいな話で、あのときやはりちょっとびっくりしたのは、やはり実際にどこまで詳細に反映されたかは別として、学生の公募で炉心のアイデアを募集している、コンペみたいにやってというのはたしか聞いたような気がして、これは非常にある種いいアイデアというか、原子力人材というとどうしても学生をどうこれから、あるいは高校生、中学生も含めてどう原子力に魅力あるということを、これにはやはり本来作るというか新しく作る、あるいは何かを作っていく、それをみんなで考えるとか、そういう競争をするとかというのがやはり1つのイベント的と言われるとちょっとまずいのですが、しかし、そのためには勉強しなきゃいけない、そのためには、提案するためには努力しなきゃいけないというところを、例えばこの研究炉を作っていく過程で最後どうなっていくかは私も分かりませんが、やはりそういうものを何か全国の原子力を学ぶ学生でもあっても何かあり得たら面白いなというのは一言、ちょっと言わせていただきたかったなと思いました。忘れました。
 それともう1点、先ほどの地域の問題、やはりミュンヘンへ行ってもバイエルン州そのものはドイツの中では原子力を受け入れる州で、だから工科大も原子力を例えば1号を廃炉にして2号という形もとれたということを言っていますように、やはり最終的には京大の2号炉の問題もそうでしたが、しっかりと地元とコミュニケーションがとれるところをやはり想定しながら是非議論を進めていただきたいなと思いました。ありがとうございます。

(山口主査) ありがとうございます。
 非常に、もちろん研究炉へのニーズというか研究のアウトカムはもちろん重要なポイントであるのはもちろんなのですが、今日の議論でも運営の仕方とか共同利用の在り方とか、地域とどう協力し合うかとか、ほかの研究機関がどう運営に関わるかとか、外国ではアメリカの大学は研究炉を持っているところがいっぱいありますし、やはり日本なりのいろんな工夫をどうやって、あと、中島委員からレギュレーションの在り方とかも御指摘いただきましたし、多分、ここの中でまとめるときにはそういった多様な視点をきちんと入れ込まないと、絵に描いた餅になりかねないので、今日は大変有意義な御議論をいただいたなと思います。
 ほかにもし何かございましたらお伺いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、来馬先生、どうもありがとうございました。

(来馬教授) どうもありがとうございました。

(山口主査) では、続きまして、実は前回の作業部会で多田委員から御説明いただいたところで、試験研究炉ならびに設備に関する課題・要望という、そういう資料がございました。それで、多田委員の中でその施設が利用できない影響ということで整理いただいたのですが、少しそれに補足情報を書き入れたものを今日用意していただきました。それが資料3ですね。お配りしてございますので、多田委員からこちら追加で前回の補足ということで説明お願いしたいと思います。
 では、よろしくお願いします。

(多田委員) 前回、第3回の作業部会で説明させていただいて、そのときに今お話があったように、幾つか表を拡充した方が有り難いというお話があったので、それをさせていただきました。文章のところはもうほとんど変わっていないので、説明は省かせていただきます。一番最後の表のところだけ見ていただければと思います。ここで前回頂いた宿題が2つほどありました。1つは区分のところ、国プロとか電力共研とか書かせていただきましたが、これらが福島の事故の前なのか後なのかという、そういう宿題を頂いていたので、区分欄でアスタリスク1をつけたところ、これが福島の事故後に起きたプロジェクトということになります。それ以外のものは福島の事故の前から継続しているもの、それからその前に終わっているものでございます。
 それから、表の右端の方に変更前、変更後と書かせていただきましたが、もともとどの炉でやろうとしていたか、JMTRほかが止まったことによってどうなったかということを変更後に書かせていただきました。1つ1つ説明をしても大変なので、説明は省きます。ハルデンのところにアスタリスク2というのがついていますが、これは変更前のところにハルデンというノルウェーの炉を使うということですから、変更前から海外ではないのかというふうに思われるかもしれませんが、もともと日本に対応できる炉がなかったので、ハルデンを使わざるを得なかったと。要するに国内にそういったスペックの炉があれば国外に出て行かなくても済んだというのがアスタリスクの2でございます。
 それから一部は、アスタリスク3というのは、高燃焼度燃料の被覆材の開発をするのに柏崎の5号機で実機の照射というのも一応あったということを追記で書かせていただきました。
 この中のプロジェクト、多くのものは継続であったりしているのですが、あるいは再稼働できないで試験が止まっているというものもあるのですが、幾つかのものは福島の事故の後、予算をほかのものに振り向けるということで計画が凍結されているというものもございます。だからこれは、照射炉が、試験炉が止まっているからということだけではなくて、予算的なことで止まっていると、そういうものも多々あります。
 変更前のところでJMTRというのが幾つかありますが、もちろんJMTRで照射をしようとしていて、2007年からでしたかね、JMTRが止まったのは。

(中島委員) 2007年じゃないですかね。4年かけて整備して、2011年に再稼働予定でしたから。

(多田委員) 止まっていたのですが、福島の事故がなければ再稼働しようというもくろみで、あるいは福島事故後もしばらくの間はJMTRは再稼働する予定でJMTRでの照射を計画をしていたというプロジェクトも幾つかございます。
 そういったようなことで各プロジェクトについて対応、それから変更前、変更後、どうだったかという情報を追記させていただきました。

(山口主査) ありがとうございました。
 この件、前回一度御議論いただいたところですが、何かもし御質問ありましたら伺いますが、どうでしょう。よろしいでしょうか。
 では、五十嵐委員、どうぞ。

(五十嵐委員) 資料の方ありがとうございました。とても分かりやすくまとめていただいたのですが、このお話が出たときは、変更によってどのぐらいの影響が出ているのかということをもっと見やすくしていただけたらとお願いしたかと思います。本日の資料と御説明で、およそ想像もつくのですが、どのぐらいの影響が出て、いかに困っているかを、更に具体的なデータを出していただけるものがあるとよりよいかなと思いました。全体的に望ましいとか、そういうお話は本当に言葉では分かるのですが、その説得力という意味では、特に外に出すに当たっては、やはり実際の本当に現場を見ていらっしゃる産業界からの数字というのはすごく参考になるかと思いますので、またの機会があれば是非御検討いただきたいと思います。

(多田委員) ありがとうございます。どのくらい影響があったかという定量的に示すのは非常に難しいのかなと思いますが、全体的に言いますと、これは試験炉が止まっている、止まっていないということではなくて、福島の事故があったことで次世代炉の開発というものが止まってしまったということになります。ですから、より経済性の高い、あるいは安全性の高い原子炉を計画していたわけですけれども、照射試験が必要なものはやろうということだったわけですが、その試験ができないだけではなくて、開発自体、プロジェクト自体が止まっているという方が私どもには影響が大きいと思っています。ですから、今、エネルギー基本計画の議論をされていますが、将来の原子力の在り方をどういうふうにするかによってこういったことはまた変わってくるというか、変えていただきたいというのが私どもの希望です。原子炉に対して前向きになるとそういった次世代炉という話も出てきますし、そうすると照射炉、試験炉ということももっと必要になってくるということになろうかと思います。
 次世代炉の話だけではなくて、これからということでありますと、安全性向上ということに関してやはり試験炉、実験炉というのは大切になってくると思いますので、これが止まったことによってマイナスの影響をどれだけ、私どもが思っていたような成果が得られない、そういったマイナスというものではなくて、今ある問題に対するインパクト、安全性向上ということに対するインパクトの方が照射炉、試験炉が止まっていることは大きいのかなというふうに思っております。

(五十嵐委員) ありがとうございます。

(山口主査) 先ほどの柴山先生のお話だと研究炉が止まっていると論文数が書けなくなって、修士、ドクター、学生がとれなくなると、クリアに出るのですが、これは複合的な構造になっていて、なかなか研究炉そのものの停止による直接的な影響が幾らかという数字では非常に出しにくいところではあろうかと思いますが、悩みの程度は多少は伝わったのかなと思いますので、多分ちょっとこれ以上定量的にというのはなかなか難しいと思うのですよね。また、でも、もし何かまた補足があればいずれやっていただいてもいいと思いますし、これはこれで具体的に施設が、これがなくなるとこういう結果になるというのは対比でお分かりいただけると思いますので、ちょっとこの辺で御了解いただければと思います。
 では、大体この1番目の議題「国として持つべき原子力研究開発機能」については、以上の3つの資料で審議いただいたところで、この辺で打ち切りたいと思います。
 では、続いて2番目「原子力施設供用のあり方」、まさに施設そのものというよりも、どう運営していくかとか、そういう話に関わるものなのですが、そちらの議題に入りたいと思います。
 それで、こちらの方は事務局、文部科学省より米国で実施されている施設供用に係る取り組みについてということで、上田課長補佐から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

(上田原子力課長補佐) 原子力課の上田でございます。
 実は前回のこの作業部会の議論の中で、日本の国内の研究施設における施設供用の仕組みというところを少し整理して御紹介させていただいたところでありますが、引き続き国内における原子力関係の施設の供用をどうするかでありますとか、前の議題でも御議論いただきましたが、今後の運営の体制であるとか、産学官の連携をどういうふうにやっていくのかというところの検討の材料になればというところで、本日、アメリカの方で取り組まれている取組について少し紹介させていただければということで資料の4を用意させていただいてございます。中身の方、説明させていただきます。
 めくっていただきまして2ページでございますが、アメリカのエネルギー省による原子力施設供用施策の概要ということでございまして、上の四角のところのNSUF、これは英語でNuclear Science User Facilitiesの頭文字をとった略称になってございますが、NSUFという仕組み、これが米国エネルギー省の原子力局が実施する原子力の研究開発支援策の1つのメニューとしてございます。この資料の真ん中あたりに、すみません、DOE-NEというのは米国エネルギー省の原子力局の略称ですが、DOE-NEによる原子力の研究開発の支援策ということで3つほど紹介させていただいてございますが、3つ大きな取組のくくりがございまして、上から大学に対する研究開発の支援と、それから真ん中にございます原子力エネルギー実践技術、これはどちらかというと産業界に対する研究開発の支援のプログラムということ、そして一番下にこの研究開発の施設を活用した研究開発の取組をするという、こういう3本立てでやっているもののうちの一番下の部分を本日御紹介させていただいているということでございまして、このプログラムでございますが、これは原子力の研究開発を行おうという研究者に対しまして原子力の施設を利用した研究開発機会を提供するということを目的に2007年に設立されまして、今年はちょうど10年目だということでございまして、当初はアメリカの国立研究所の1つでありますアイダホの国立研究所のATRという照射を行う試験研究炉からのスタートでありましたが、対象施設は今徐々に拡大をしてきているところだというところでございます。
 具体的なプログラムの内容につきましては、また追って御説明させていただきますが、ピアレビューによる課題採択のプロセス、これを通じて専門的な技術や知識、最先端の原子力研究施設をユーザーに無償で提供して原子力エネルギーの研究開発、それからインフラストラクチャーの強化を推進するという、こういった取組になってございまして、資料の一番下の右の方に、これで行われる取組ということで4つほど上げてございますが、科学的、技術的な審査を行い、更に研究施設とその実現可能性の検討、それから研究経費の査定を行った上で研究費、それから施設利用料を完全に負担する、それから研究開発を実際行っていくことへのサポートをやっているということが実際行われている取組だということでございます。
 次のページをめくっていただきまして、具体的な活動の流れを簡単に御説明させていただいてございます。このNSUFでは、試験研究炉を活用した照射若しくは照射した後の試料の分析をホットラボなんかで行うときのこういった試験に対する研究プロジェクトを実施するということでございまして、課題の審査、これはいわゆる公募型のプロジェクトになってございますので、いわゆる一般の研究者から課題を提案してもらって、それを採択するという流れになりますが、その審査の基準としては、これは我が国でやる場合でも大体科学的、技術的に研究として成果が出るかとか実現可能性があるかというところを見るのですが、このほかに、DOE-NE、DOEの原子力局のミッションとの関連性というところも見るというところが少し特異な点として入っておるというところでございます。
 ちょっと繰り返しですが、採択された課題につきましては研究のサポート、それから施設の利用等々必要な経費についても完全に負担をするということで、その下に少しポンチ絵のような形で課題採択に係る流れということを書かせていただいてございまして、よくある公募型のプロジェクトでいきますと、最初の一番左側の課題の申請受理を受けた後に、フローが2つ、上と下に分かれていますが、下のフローの流れですね、科学的・技術的審査、これは我が国のこういう公募型のプロジェクトでもよく行われる審査になるのですが、これと並行して上の流れで、これはアメリカのエネルギー省の原子力局のミッション、下にちょっと書かせていただいてございますが、国家のエネルギー環境及び安全保障のニーズを満たすことができるリソースとしての原子力技術の進歩、それから原子炉の老朽化の調整に取り組むための材料や燃料照射メカニズムの解明、それから次世代の材料や燃料調査などという、こういう政策ニーズを満たしているかどうかというところも併せて審査をし、その審査を通過した課題については、今度は実際に原子力施設を運営している施設の運営側も一緒になってその研究開発がどこの研究施設でどういう実験をすれば実現可能性があるのかどうなのかというところ、それから実際にそれに必要な研究費用だとかスケジュールはどうなのかというところも原子力の施設も一緒になって作り込みを行った上で課題として採択をするという、こういった流れで活動が進んでいくというふうな形になっておりまして、この原子力施設のパートナー施設が年々拡大をしているという状況でございます。
 次のページをめくっていただきますと、これはNSUFの運営に関するサポート体制ということで、これもこのプロジェクトのホームページ等でもこういった情報が公開されておるわけでありますが、現在、もともとこのアイダホの国立研究所、名前のリストが載っているところでいうと、左の下側のNSUF Staff(INL)と書いてある、ここがいわゆる中核機関、アイダホの国立研究所のスタッフになるわけでありますが、このアイダホ国立研究所以外の多くのパートナー施設の研究者がこのプログラムの運営スタッフとして参加をし、プログラムの企画、課題採択、それから課題の管理などの運営を実施するというところで、実際にその施設を運営している人たち、中性子照射ですとかイオンビームの照射ですとか、そういう照射後試験を行うという、こういう人たちがしっかりコミットメントをして運営をやっているという、こういう手厚い体制でプログラムの運営をしているという実態でございます。
 1枚めくって次のページに移っていただきますと、これが実際に今このプロジェクトに参加をしている施設の一覧ということでございまして、プログラムの開始当初はアイダホの国立研究所のATRという研究炉のみだったのですが、翌2008年から大学、国立研究所等パートナー施設を徐々に拡大をしておるというふうな状況になってございまして、現在、米国内では8つの国立研究所、それから11の大学、それから1つの企業、企業はウェスティングハウス社でありますが、こういった組織がパートナー施設として参画をしており、徐々にこういった活動を広げていっているということでございます。
 この資料でちょっと色がついた丸、幾つかついておりますのは、試験研究炉、それから照射後の試験を行うホットラボのような施設、それからガンマ線照射、ビームライン、それぞれ各施設がこういった多様な施設を持っているのですが、これを1つのプログラムの中でまとめて活用できるような形ということで運営をしているということをあらわさせていただいてございます。
 次のページをめくっていただきますと、これはNSUFのこれまでの成果の推移ということでございまして、グラフを2つ用意させていただいてございます。これも公表の資料ではございますが、上のグラフにつきましては、これは実際このNSUFに申請をして採択をされた課題数の各年度の推移ということをあらわしているのが上のグラフになってございます。こちらを見ていただくとお分かりのとおり、だんだん採択課題数を増やしてきている、だんだん規模を拡大してきているという傾向にあるということが特徴の1つであります。それともう1つ特徴的なのは、これは米国内だけでずっと2014年までは採択をされてきていたのですが、2015年、2016年、この棒グラフのウグイス色の棒がちょっと出てきていると思いますが、これはインターナショナルアワーズということで、米国外からも申請を受け付けていて、ただしこれは海外から申請をする場合はアメリカにも共同の研究者がいて、それと一緒になって提案をしないといけないという、そういう制約条件はあるものの、海外からもこのプログラムに応募をして、採択をされればこういう施設を活用した研究プロジェクトに参画ができるというふうな形になっているということをあらわしてございます。
 それからもう1つ下の棒グラフでありますが、これは実際のジャーナルの発行でありますとかこういったもの、プロジェクトを通じた会議の開催数というのをあらわしていますが、こちらも2013年以降予算が増えたということですとか、パートナー施設がどんどん増えているという、こういった要因も背景に実際のアクティビティもどんどん増加してきているということで、かなりこのプロジェクトにアメリカの方も力を入れてやっているという状況が見てとれるということでございます。
 1枚めくっていただきまして次の7ページでございます。
 先ほど少し国際的な公募という話もさせていただきましたが、国内だけでの展開だけではなくて、NSUFは今、欧州の施設でありますとか、それから海外のユーザー施設群とも連携を始めているというふうなことも情報としてございまして、例えばベルギーのベルギー原子力研究センターが米国エネルギー省と2017年にMOUを締結して連携開始をしているということで、MOUの中の連携の一環としてこのNSUFの施設群と、それからベルギーが持っています研究炉のBR2ですとか、燃材試験用のホットラボと一緒に連携をした研究をやろうというふうなことで、これは実際にもう連携が始まっているパターンと、それから絵の下の方にも書いてありますが、ノルウェー、ドイツ、スウェーデンの原子力施設ともプロジェクト間での連携をやろうという話、それからイギリスにも実はこういうイギリス国内の産学官の施設をいわゆるハブのようにまとめたコンソーシアムのようなプログラム、同じようなNNUFとこちらは言うみたいですが、こういうプロジェクトがあるのですが、この施設群と施設群との間で何か連携ができないかということが今米国と英国の間でそういった連携検討が話として進んでいるというふうなことで、米国内でもこのプロジェクト拡大はしてはいるのですが、更に国際的にこういった施設をうまく融通し合うというか、活用するような形で何かできないかという検討は国際的な動きとして進んでいるという状況だということを紹介させていただいてございます。
 最後に、8ページ目にまとめということで、書かせていただいてございますが、NSUFの機能については以下が特徴的な点として3点、挙げられるかなということで赤字で書かせていただいてございますが、この課題の審査でありますとか研究の支援機能、ユーザーズオフィス機能と、それから研究、それから施設利用の資金を支援する機能ということでファンディング・エージェンシーの機能になるかなと思います。それから原子力の関連施設の連携を構築してユーザーに最適な施設を提供するハブ機能、これが一体的に運用されているというところが1つ特徴的なところではないかなというふうに思われます。
 さらに、アメリカではNSUFが非常に利便性の高いシステムということで、ほかの実はDOEの原子力局がやっているような研究開発のプロジェクトのアクセスルート、なかなかアクセスルートというのはイメージしづらいところがあるかもしれませんが、施設を使ってDOEの原子力局が運営をしていますほかの研究プロジェクトのお金をとりたいと思ったとき、このNSUFの窓口にこういう研究開発を施設を使ってやりたいという提案をぽっとNSUFに送ると、施設の利用とそれからDOEの原子力局がやっているほかの研究のプロジェクトもまとめて受け付けをして、公募のプロセスに乗っけてくれるという、そういう窓口の一元化に近いようなことをやってくれるというふうなところで、ほかの研究開発プロジェクトともこういう一体的な運用ができつつあるというふうな特徴があるということが、図られているということが進んでいるということでございます。
 最後に論点ということで、赤囲みで書かせていただいてございますが、今後、国内の原子力施設を有効に活用し、それから今後の運営体制の検討を行って研究技術開発を発展させていくということに当たって、こういった海外の取組事例も参考にしながら、我が国としてどういった仕組みがいいのかということはしっかり検討するべきではないかというふうに思いますが、その際、今回のNSUFの取組から見ると、ユーザーズオフィス機能、ファンディング・エージェンシー機能、ハブ機能をあわせ持った一体的な運用体系をとっている形でありますとか、課題審査から研究支援までを関係する各施設、各機関が連携した手厚いプロジェクトマネジメントの体制を組んでいるというところ、それから将来的に国外施設と連携を視野に入れた制度設計を行っているというところ、こういったところは今後我々としても考えていく上で参考になるべき点、考慮するべき点ではないかというふうなことをまとめさせていただいてございます。
 資料の説明については以上でございます。

(山口主査) ありがとうございました。
 それでは、御質問ありましたらどうぞお願いいたします。
 では、五十嵐委員からお願いします。

(五十嵐委員) 大変分かりやすい御説明をありがとうございました。また詳細にお調べいただいてありがとうございます。非常に理想的な形の一つであり、こういった形が求められるのかとは思うのですが、実際のところ、日本でそれが可能なのかというところはどうなのでしょうか。大変素人的な質問で、それを議論するのがここだというお返事かもしれないのですが、実際の形として実現可能なのかということを素朴にお尋ねしたいです。もう1点、論点のところで我が国独自のというふうに書かれていて、これはどういう点を考えていらっしゃるのかということ。あと、どうしてももとの職業柄、こういう理想的なものを見ると、でも弊害があるのではないかと考えてしまいます。いいお話ばかり挙げていただいたのですが、こちらのやり方が抱えている課題があるとすればどういう点があるか、教えていただければと。すみません、3点、お願いします。

(上田原子力課長補佐) まず1点目は実際にこういった仕組みがとれるかどうかというところだったかなというふうに思いますが、当然、制度設計の仕方によってこれと同じようなスキームを日本で全くとれないということはないと思いますので、それはどういう仕組みというかこれを作っていくのかなというところで参考にしながら、同じような形のプロジェクトということが、とり得る可能性は当然あるかなと思っていて、例えば今でも日本の場合でも研究開発をするための資金を提供するファンディング・エージェンシー機能というのは当然あります。それから、東大の柴山先生のお話にありましたが、各施設をほかのユーザーが使うための機能という、日本の中ですぐれた仕組みでやっている仕組みはあると思いますので、例えばそういったものを組み合わせる仕方、ただ、そこの制度設計のすり合わせをどういうふうにやっていくのかというところはまさに検討する必要があると思いますが、そういったやり方でできることはできるのだろうとは思ってはいます。
 ただ、あとは本当にこういったやり方でやることが日本の場合というか、いいのかどうなのかというところは、まさに我々が抱えている状況だとか、研究開発の現場の事情だとか、そういったことはいろいろ考える必要があるかなとも思っていまして、1つやはり大きいのは、アメリカの場合、全てまさに理想的に見えるのですが、これはまさにアメリカのエネルギー省の原子力局の政策目的を達成するという、それに合致をすれば施設も全部面倒見ましょうと、研究費も全部面倒見ましょうと、ありとあらゆる支援をなるだけ一元化して一体的にやりましょうということになっていて、いわゆるトップダウンの研究開発をがっとやる場合には非常に有効かなと思っているのですが、ではトップダウンの研究開発ばかりやっていていいのかどうなのかという議論も当然あると思いますし、そういう意味でも我が国においてどうなのかとか、そういったところを見ないといけないという点は、そういったところでいい面ばかりではあるものの、ではアメリカのやっているやり方と同じやり方だけを一辺倒でやればいいのかというところはいろいろ議論する必要があるかなというふうに思っています。
 あと、実際、多分、確かにこうやって紹介するといい面ばかり見えてしまうのですが、実際、現場では多分、こういうのを運営していくに当たっての苦労だとか弊害というのもあるとは思っているのですが、なかなかこのタイミングまでその弊害までは調べ切れていないので、そこのところはしっかり深掘りをして我々も引き続き見ていく必要があるかなと思っていますが、現時点でなかなかこういったところで苦労しているというところまで調査し切れていないところは不足なのですが。

(五十嵐委員) ありがとうございます。

(山口主査) ほかにはいかがでしょうか。
 では、レディファーストで、木藤委員。

(木藤委員) すみません、すぐ終わります。ありがとうございます。
 質問はとても簡単でして、最初に柴山先生が御説明いただいたこの仕組み、物性研の仕組みというのは今のDOEとかいうところのある程度役割としてそういうものも持たれているのですかということですか。ユーザーズオフィス機能とか、それはまた別のところにあるのですかというのが質問でして、最初にもお伺いしたいかなと思ったのですが、そこのところをお願いします。

(柴山教授) その質問は私の方で。

(木藤委員) で、いいですか、すみません。

(柴山教授) 私も逆に質問があったのですが、まず、御質問にお答えします。
 これは中性子ビーム利用の歴史にさかのぼりまして、原子力研究所の時代に、まずは原子力研究所の中にも優秀な研究員がいっぱいおられたわけですが、やっぱり大学、これは日本学術会議の答申からも出てきた形で研究炉を作らなければいけないというようなこともありまして、大学主導の形で大学が自由に研究展開できる形を作りたいと、それはまさに物性研が当時、全国共同利用研でございましたので、物性研が音頭をとってやると。やるからには全部面倒を見るという形で今、装置の面倒、宿泊施設、それからプログラムの審査、ピアレビュー、全部物性研の十数名のスタッフでやっております。それは非常に大変なのですが、先ほどの300課題をこなしているわけですね。ですから、これは世界でも例を見ない体制です。そのやり方自体がいいかどうかということは今後厳しくなっていきますので、特にセキュリティの問題が入ってきますと、我々自身もその問題にこれから立ち向かっていかなければいけませんが、今の御質問に対しては、日本ではユニークな形で大学が中心とする共同利用、文科省がやっている共同利用の一環としてやっていると。並行してJAEA御自身も施設供用等々の形でプログラムをやっておりますし、私、そちらの審査委員の部長を兼ねているから大体分かるのですが、部会の部長をやっているのですね。ということでございます。
 ですから、例えば今のお話を日本に置きかえると、JAEAならJAEA、そういうファシリティを持った機関がそういうプログラムを運営し、それを国が支援すると。例えば旅費とか運転経費等々というような形であれば、実現可能だと思います。

(山口主査) では、渥美委員から先に。

(渥美委員) 御説明ありがとうございました。今、大分柴山先生に答えてもらったような気もするのですが、やはり理想的にはこういうふうにたくさん連携して一元的に審査してというのは非常にいいような気がするのですが、集中すれば集中するほど審査に時間がかかったりとかそういう弊害も出てくるのではないかと思っていて、彼らがいっぱい案件をさばくに当たって、何かすごくいい取り組みをしていて、そういう弊害をなくしているのか、あるいは実際弊害として何か申請したけれども通るまでにすごい時間がかかっているとか、そういう問題が発生しているのかとか、相当なリソースが必要だと思うのですよね。そういうところをどう解決しているのかなというのを御存じだったら教えていただきたいなと思いました。

(上田原子力課長補佐) 採択まで期間がどれぐらいかかっていて、そこが弊害になっているかどうかというところに関しては、ちょっとまだリサーチ不足なところがありますので、最初の五十嵐先生の御指摘でもないですが、どういったところで問題があるのかというところの中で、そういったところも洗っていきたいかなとは思っていますが、本日の資料の中でも例えば4ページのところで、運営のサポート体制ということでメンバーのリストを書かせていただいておりますが、ここの人たちがエフォート100%、全部このプロジェクトに入っているかどうかというところまでは我々も分からないところではあるものの、やはり運営に当たってはかなり手厚い体制を敷いているなというのはこの人数を見ても我々も思うところではありますので、やはりそういう一元集中をしてやるということに関してかなりプログラム運営のところでもリソースが要るなというところはやっぱりこういう人数を見ても、こういったところである程度しっかりと手当てをすることで、そういったところを乗り越えようとしているのではないかなというところは、推察にはなりますが、思っているところではございます。

(山口主査) では、柴山先生。

(柴山教授) その前に渥美委員に対する私のコメントを、よろしいでしょうか。
 まず、ピアレビューに関しましては、私たちの場合は年に1回やっております。それから、ANSTOの場合ですと年2回やっています。前期、後期みたいな形で。オークリッジはもう少しやっているのですかね。全て今、中性子ビーム利用の話でございます。ということで、それからさらには今、J-PARCなどは年2回今やっているわけですが、更に緊急で、特に産業界からの要望に対して応えられるようなシステムを入れようということで取り組んでおります。やはりサイクルが大学よりも早いのですね。ということで、それから秘密保持等々の問題もありますので、非常に特別扱いといいますか、注意を払いながらやるということが必要になってくるかと思います。
 ここまで私のコメントでして、ここで質問よろしいですか。

(山口主査) はい、どうぞ続けて。

(柴山教授) 上田様に御質問させていただきたいのですが、これは調査としては、照射に関する調査という形に限定したものと思ってよろしいのでしょうか。例えばアメリカですとビーム利用、中性子の散乱などですとオークリッジから商務省のNISTなどが独自にプログラムを実施しております。それはここには出てきていないので、あくまでもこれに限っているのか、あるいは、ちょっとその趣旨が分からなかったからお聞きしたいたいなと思いまして。

(事務局) 照射の話です。

(柴山教授) 分かりました。ですから、もし今後、研究炉全体のことをお話しされるということであれば、ビーム利用のことに関しても調査していただくともっと具体的な形で分かるかなと。それに関してもう1つの質問は、これ、ヨーロッパとも連携を始めているという御説明があったかと思いますが、日本は全然まだかかわっていないのでしたか。

(上田原子力課長補佐) 御説明させていただきますと、1つは、先ほど、今、事務局からもありましたが、照射だけというところで、特にやはりこれ、紹介させていただいているのはDOEの中の原子力局、エネルギー利用の方にかなり重点を置いているところの特にトップダウン的にやっているようなところでありますので、また中性子の利用だとか基礎研究みたいなところでどういう取組をしているかというところはまた別途あるのだろうなというふうに思ってはございます。
 それから、日本でこういったところの取組の具体的な議論ということなのですが、まさにこれからというふうなところかなと思ってはございまして、米国との間では、2国間の原子力の科学技術も含めた委員会がありまして、そういったところでいろいろDOEの関係者と議論してございますが、やはりこういった施設、お互いそれぞれ持てる施設、何でも持てるような時代でもないので、お互い持っている施設で関心があるものについては供用するような形で何かできないのかというふうな話をしている中で、今後恐らく日本もJRR-3なりHTTRなり常陽なり、研究施設が動き出せばまさにこういう施設間の連携というところの具体的な話ができるのだろうなというふうなことは考えております。まさにこれからと思っています。

(柴山教授) 御存じかもしれませんが、中性子の散乱に関しましては30年来、日米中性子散乱協力事業というのがございまして、さかのぼること大平・カーター会談からということで、1980年に締結されて81年ぐらいから実施して、日本側の代表が今、東大物性研、そしてJAEA、アメリカ側がオークリッジ、そしてブルックヘブンと4者でやっておりまして、ブルックヘブンが、原子力が止まった後は、向こう側はDOEと、オークリッジがまとめてやっているというプログラムがずっと続いております。またそれも今回の検討の例になるかなと思います。
 どうしてそれが始まったかといいますと、日本のその当時の中性子ビーム利用、非常に貧弱でありまして、当然3号炉もなかったわけでして、当時、ブルックヘブンが世界をリードする原子炉を持っておりました。ということで、物性研はブルックヘブンと非常にいい関係でありましたし、JAEAはオークリッジと関係を結んでおったと。それをまとめて日米協力事業という形でやろうと。向こうに行けば立派な原子炉、そして装置があるということで、主に日本の研究者の養成をやるというふうな形で始まったと聞いております。その後、3号炉が動き出しまして、ほぼ並立するような形で、むしろ研究者交流という形で今に続いております。それもまた一度、多分、文科省の中にいろいろ資料もありますし、部門は学術局か、今は量研室に移っていますね、担当が。そこで資料もありますので、是非御検討いただければいいかなと思います。

(山口主査) ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。大体よろしいでしょうかね。
 それでは、どうもありがとうございました。
 以上で本日の予定しておりました議題1、2、終了いたしましたが、あとそのほか、委員の方から全般を通じて何かございませんか。よろしいでしょうか。
 では、あと3番のその他ということで、事務局からの連絡事項、もし何かございましたらお願いします。

(上田原子力課長補佐) 本日も長時間の御議論をいただきましてありがとうございました。
 次回の開催につきましては、現段階では1月頃で予定をしてございますが、また改めまして事務局の方からメールで日程等の御相談をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 また、毎回のことではございますが、今回の議事録の案につきましては、こちらもまとまり次第メールにて御相談させていただきますので、御協力いただければと思います。
 以上でございます。

(山口主査) それでは、以上をもちまして第4回の原子力研究開発基盤作業部会を終了させていただきます。本日はありがとうございました。


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研究開発局 原子力課