原子力科学技術委員会 原子力人材育成作業部会(第7回) 議事録

1.日時

平成28年6月22日 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. 中間取りまとめ(案)について

4.出席者

委員

山口主査、上坂主査代理、五十嵐委員、可児委員、木藤委員、来馬委員、沢井委員、中島委員、長谷川委員、浜崎委員、森口委員、和佐委員

文部科学省

田中研究開発局長、板倉研究開発局審議官、髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)、上田原子力課課長補佐

オブザーバー

中富経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課課長補佐

5.議事録

(山口主査) それでは定刻となりましたので、ただいまから第7回原子力人材育成作業部会を開催いたします。本日は、お手元の議事次第のとおり、「中間取りまとめ(案)」となっています。まずはじめに事務局から出席状況と配付資料の確認をお願いします。
(上田課長補佐)事務局でございます。本日は宮浦委員が御欠席、上坂委員が遅れて御到着予定でありますが、13名中11名の委員出席となっており、定足数である過半数を満たしております。続きまして本日の配付資料の確認をさせていただきます。資料番号1-1として「中間取りまとめ(概要)」、資料1-2として「中間取りまとめ(案)」、資料1-3として「作業部会における主な意見」、それから参考資料1として本作業部会の委員名簿を配付しています。資料の不備等ございましたら事務局までお申しつけください。
(山口主査)ありがとうございました。それでは、本日の議題に入らせていただきます。前回の作業部会では中間取りまとめの骨子についていろいろと御意見を頂いたところでございます。本日は中間取りまとめ(案)について事務局から説明を頂き、その後に議論に入りたいと思います。では、事務局よりお願いします。
(上田課長補佐)説明させていただきます。資料1-1では概要版を配付させていただいていますが、資料1-2の中間取りまとめ(案)に沿って説明させていただきたいと思います。まず、「1.はじめに」にて、背景を書かせていただいています。我が国はこれまで、原子力の平和利用を推進する立場から、長期的な政策の下、原子力分野の人材育成に必要な施策を進めてきましたが、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた国民の不信・不安の高まりを受け、原子力分野に関心を持つ学生が減少する等、この分野における優秀な人材の確保は厳しい状況にあるとの評価がされています。また、人材育成において重要な施設や教育現場についても、多くの課題を抱えていると指摘されています。このような状況を踏まえ、平成27年4月に本作業部会を立ち上げ、関係機関からのヒアリングや議論を重ねながら検討を進めてきたところでありますが、議論を開始してからおよそ1年が経過したこのタイミングで、これまでの議論で出された課題や施策の方向性について、中間的な整理としてこの取りまとめを作成したところでございます。人材育成の課題については当然のことながら、継続的に議論を進めることが大事ですので、中間取りまとめ以降も引き続き、関係機関と連携・協力の上、継続的に議論を行うこととする、ということを「1.はじめに」で書かせていただいています。
次に、「2.原子力分野の人材を取り巻く状況」ということで、我が国の原子力分野の人材を取り巻く様々な状況について、御報告させていただいています。まず、「原子力分野を目指す人材の推移等」ということで、ここでは人材の推移等の状況を定量的なデータをもとに書かせていただいています。昭和32年以降、国立大学・大学院を中心に、「原子力工学」や「原子核工学」等という名称を付した学科・専攻が設置されてきたところでございますが、平成5年以降、これらの学科・専攻の多くは改称・改組されたということで、具体的な図を11ページの図1に記載させていただいています。また、文部科学省の学校基本統計によると、原子力関連学科・専攻に入学する学生の数は、東電福島第一原発事故前の平成22年度調査では合計317人であったのに対して、東電福島第一原発事故後の平成24年度調査では合計269人と減少しました。平成27年度調査では、合計298人と回復している状況であります。それから、日本原子力原産協会及び関西原子力懇談会が主催する合同企業説明会に参加する企業及び学生の数は、東電福島第一原発事故前の22年度では、65社、1,903人であったのに対して、東電福島第一原発事故後の平成24年度では34社、388人と減少しました。その後、平成27年度において、参画する企業の数は55社と回復していますが、学生の数については337人となっています。専攻別の参加実績を見ると、原子力・エネルギー系については一定の水準で推移していますが、機械や電子、化学、人文系統等の分野の学生については、大きく減少した状況が続いています。これらの統計については、東電福島第一原発事故前後における学生の動向を必ずしも正確に表したものではございませんが、この作業部会で議論を進めるに当たっては、参考になると考えています。次に、「原子力分野に係る人材育成の環境」を記載させていただいていますが、文部科学省の学校教員統計によると、原子力分野を専門とする大学教員の数は、平成16年度調査では438人であったのに対して、平成25年度調査では345人と減少しています。また、原子力分野の人材育成を行う上で重要な原子力関連施設は、設置から長期間を経ていますが、稼働を目指す原子力機構、京都大学及び近畿大学が所有する研究炉及び臨界実験装置は現在、新規制基準への対応により、停止を余儀なくされている状況であります。本作業部会でも御報告を頂きましたが、このような状況を踏まえて日本原子力学会では、「我が国における研究炉等の役割について」という中間報告書を本年3月に取りまとめており、人材育成における研究炉等の重要性を指摘しているところであります。
3.では、「原子力分野の人材育成に当たっての基本的な考え方」ということで、本作業部会で御議論いただいた内容を整理させていただいています。まず(1)では、「原子力分野で活躍する人材の認識と現状把握」ということで、「原子力分野で活躍する人材」といえば、電力会社やプラントメーカーの原子力発電に携わる技術者や研究者をイメージしやすいところでありますが、当然そういった方々のみならず、原子力産業の裾野の広さに応じた多様な人材が存在しています。また、大学や研究機関における教員や研究者、推進及び規制に携わる行政官、医療や農業、工業等の分野において放射線の利用に携わる者も原子力に関係する人材であると考えられ、状況に応じた議論を進める必要があります。本作業部会ではまず、エネルギー基本計画を踏まえ、原子力のエネルギー利用に係る人材を中心に議論することとしました。また、本作業部会でも御指摘がありましたが、人材育成に係る施策を議論するに当たっては、現状の把握とともに今後必要となる分野と規模の定量的な把握が求められますが、現時点では十分な分析が存在していないところであります。今後の施策の方向性の議論に当たっては、将来的な人材のニーズを捉える必要があるところでございます。(2)では、「原子力分野の人材育成に関する基本的な考え方」ということで幾つか整理させていただきました。まずは東電福島第一原発事故の状況を踏まえた原子力分野が抱える課題への対処ということで、東電福島第一原発事故以降、原子力については様々な問題が顕在化している状況であります。いずれも困難かつ長期間にわたる取組が求められるものであり、これらの課題に適切に対応するために必要となる人材の育成に取り組む必要があります。下に幾つかの課題を挙げさせていただいています。東京電力福島第一原子力発電所の廃炉、既設プラントの安全性維持・向上、老朽化した既設プラントの廃炉、放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための取組、核不拡散や安全対策に加え、プラントの新設の支援等、原子力利用先進国としての国際貢献、我が国が2030年度の電源構成における原子力依存度20~22%程度を実現するために必要となる取組、それから核燃料サイクルへの取組をあげており、このような課題に適切に対応できる人材をしっかりと育成する必要があります。次に、「原子力分野の社会的受容性の確保」を記載していますが、東電福島第一原発事故やその後の原子力を取り巻く状況の変化を真摯に受け止め、社会との信頼関係を構築するためにも、原子力に携わる全ての関係者は、我が国における原子力エネルギーの役割や安全な利用のための種々の対策等に関する丁寧な説明を継続的に取り組むべきであるとともに、原子力の意義や重要性を伝える努力を継続すべきであります。それから、「原子力分野の人材育成において産学官の各機関が果たすべき役割」ということで、原子力分野の人材育成を考えるに当たり、国、大学、産業界等が果たすべき役割を整理しています。まず国及び地方公共団体における役割は、原子力に関する政策の企画立案及び推進に取り組むことであります。また、大学や研究機関等で行われる人材育成や研究開発の取組を支援することや、原子力行政に携わる行政官の専門性の向上を図ることが役割としてあります。それから大学等の研究教育機関における役割は、原子力分野を専攻する学生に加え、その他の幅広い分野の学生に対して、原子力に関する質の高い教育を行うことであります。また学生のみならず、社会人における再教育の場としての役割も期待されています。最後に産業界における役割は、業務を通じたOJTにより現場を支える人材を育成し、原子力に係る安全性向上や技術維持・継承に努めるとともに、原子力産業で働くことの魅力、国家の基幹を支える使命感等を若者に対して伝えることであります。また、現場見学やインターンシップ等の産業界を知る機会を学生に多く提供する役割も期待されます。これらの役割のもと、産学官の関係機関が一体となって原子力分野の人材育成に係る取組を進めていくことが重要であり、各機関が連携するプラットフォームとして設立されている原子力人材育成ネットワークの場が果たしてきた役割が大きいところであります。本作業部会でも原子力人材育成ネットワークの取組について御紹介いただいたところではありますが、これまでもIAEAとの連携による国際研修プログラムの実施や人材育成に関するロードマップを策定されながら、各種活動を進めているところであります。産学官の関係機関は、ロードマップに沿った取組を推進するとともに、原子力人材育成ネットワークを活用して我が国の戦略的な人材育成の実現に向けた種々の活動が進められることが期待されるということを記載しています。
次のページに、「4.原子力分野の人材育成の課題を踏まえた今後の施策の方向性」をまとめています。これまでの議論を踏まえ、まず直近の課題とそれを踏まえた今後の施策の方向性を以下に整理しています。まず、「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」ということで、我が国として人材育成・確保に係る一貫した施策を議論するに当たっては、現状の把握とともに、今後必要となる分野と規模の定量的な把握が求められていますが、現時点では十分な分析が存在していない状況であります。今後の施策の方向性の議論に当たっては、将来的な人材のニーズをとらえる必要があるという現状課題がございます。これに対する施策の方向性としては、文部科学省は、原子力人材育成ネットワーク等の関係機関とも連携の上、今後の原子力の事業を継続していく上で我が国で必要とされる人材の量と質のニーズの把握を行うとしています。それから2つ目では、「原子力分野の人材育成に携わる関係機関の連携」ということで、各省庁が実施する人材育成の事業については、省庁間の縦割りが指摘されている等、各機関において人材育成の取組が独自に実施されているために一貫性を欠いているとの指摘があります。また、企業の現場を見ることや社員との交流の場を持つことは、その分野を目指す学生にとって大きなインセンティブに繋がると考えられるとともに、社会人による専門性を活かした学生への教育や大学での社会人に対する再教育への期待は高い一方、我が国では一般的に学界-産業界間の人材の交流が進んでおらず、人材のミスマッチや学生への魅力発信の機会減少につながっているという指摘があります。これに対する施策の方向性としては、我が国で必要とされる人材の量と質のニーズを踏まえた上で、文部科学省は関係省庁、関係機関が作成しているロードマップ等との整合性を図りながら、人材育成・確保に係る総合的な施策のロードマップの作成を行う等、関係機関の横断的な人材育成の在り方の立案に向けて、関係機関と連携しながら継続的な議論を進めるとしています。また、文部科学省、経済産業省、原子力規制庁がそれぞれにおいて原子力分野の人材育成に関する事業を実施しており、政府一体となった人材育成体制の構築を図る観点から、平成29年度から事業運営の連携強化を図るとしています。加えて文部科学省は、産学官が連携した人材育成の取組を支援する「国際原子力人材育成イニシアティブ事業」等の人材育成事業を通じて、企業や研究機関でのインターンシップ等の取り組みを促進する等、学界-産業界間の人材の交流を進めるとしています。3つ目は、「原子力分野の人材育成施策の継続性等の課題」ということで、国際原子力人材育成イニシアティブ事業の中間評価でも御議論を頂きましたが、原子力分野の育成に関する事業実施は重要であるという御意見を頂いた一方で、幾つかの課題についても御指摘を頂いたところでございます。例えば、人材育成は長期的な視点で取り組むべきであるが、採択された課題の実施期間が短く継続性に課題があることや、研究施設の維持に費用の充当ができない等の事業費の使途についての指摘がありました。これに対する今後の施策の方向性としては、文部科学省は、事業の中間評価結果や大学等の関係機関との意見交換を通じながら、国際原子力人材育成イニシアチブ事業の実施期間や事業費の使途等について、平成29年度概算要求に向けて事業の改善を行うとしています。また、これまで実施された優良事例や成果物の抽出を行い、優れた人材育成の取組が他の機関においても普及・定着するような取組の検討を行うとしております。最後でございますが、「原子力分野の人材育成で重要な役割を担う施設に関する課題」ということで、ホットラボや研究炉等の放射性物質を取り扱うことのできる施設は、学生のみならず、教員や研究者等の教育や研究の場として重要な役割を果たしていますが、稼働から何十年も経過しており、施設の老朽化対策や維持管理等については多くの負担が必要とされています。また、原子力機構、京都大学及び近畿大学が所有する研究炉等は現在、新規制基準への対応により、停止を余儀なくされている状況にあり、人材育成や研究開発に大きな影響を与えていると指摘されています。これに対する今後の施策の方向性としては、研究炉等が人材育成において非常に重要な役割を果たしていることから、原子力機構等の研究炉等を所有する各機関においては、一日も早い再稼働を目指して新規制基準対応に取り組むこと、また文部科学省は、引き続き各機関に対する必要な支援を行うとしています。また、我が国で必要とされる人材の量と質のニーズを踏まえた上で文部科学省は、既設の研究施設の現状を踏まえた今後の在り方についての調査・検討を行うとしています。
最後に「5.おわりに」でありますが、本中間取りまとめで示した課題以外にも本作業部会としては様々な御意見を頂いているところでありまして、十分に御議論できていない論点も指摘されていますので、これらの課題・論点については引き続き議論するということで、以下に挙げさせていただいています。具体的に申し上げますと、若手教員・研究者の確保や雇用について、原子力関連学科を持たない大学へのアプローチについて、行政官の専門性の向上について、原子力分野における女性の活躍・参画の拡大について、原子力分野の人材の国際化について、初等中等教育段階における児童・生徒の関心を高めるための施策について、次世代の人材育成を担う教職員の支援について、社会的受容性を確保するための施策についてこれまで御意見を頂いているところでございますので、議論を行う必要があるとさせていただいています。資料1-2については以上でございます。
それから前回も御議論いただきました、資料1-3の「原子力人材育成作業部会における主な意見」については、前回の作業部会での御指摘を踏まえて修正させていただいたものを配布させていただいています。事務局からの説明については以上でございます。
(山口主査)ありがとうございました。それでは事務局からの御説明について、御意見や御質問がございましたらお願いします。では森口委員、お願いします。
(森口委員)大きく分けて2つありますが、1つ目は、3ページの一番下の「大学等の研究機関」の項目についてです。これまでの作業部会でも何回か発言しましたが、いわゆる原子力分野を専攻する学生だけではなく、電気や機械等の非常に幅広い分野の学生に対して関心を持ってもらわないと、人材はなかなか育たないと思います。中間取りまとめの12ページに、合同企業説明会の参加推移を載せていますが、3.11以降、原子力・エネルギー系の学生はある程度のところで推移していますが、それ以外の化学や機械、情報等の分野の学生は戻ってないわけですよね。そこがまさしく大きな課題となっていますので、中間取りまとめの3ページから4ページに書いてあるように、幅広い分野の学生に対して原子力に関する質の高い教育を行うというのは、それはそれにこしたことはないのですが、現実に大学のことを考えると、例えば機械系の学科の教員が原子力に関心を持ち、学生に対していろいろな話をするということの方が大事だと思うので、その辺をどうするのかということを具体的に書く必要があると思います。「質の高い教育を行うことが期待される」との記載は確かにそうなのですが、実際に行うとなるとなかなか難しいと思います。一つのやり方として例えば、6ページに「原子力分野の人材育成施策の継続等の課題」が書かれており、この中で文部科学省は国際原子力人材育成イニシアティブ事業を行っていますが、ほとんどが原子力関連学科の先生を中心に進められていると思います。それはそれで重要なのですが、研究開発の事業も含め、原子力に関心のある他分野の先生からの参画を募り、いろいろと行ってもらうことが重要だと思います。機械や電気等の先生が事業費をもらって研究する場合、当然、学生と一緒になって研究を進めるわけですから、研究に携わった学生が原子力に関心を持ち就職の際に原子力分野を志すきっかけとなり得るので、その辺をもう少し深掘りした書き方をしていただく必要があると思います。
それから2点目は、6ページの「原子力分野の人材育成で重要な役割を担う施設に関する課題」の項目についてですが、研究炉というのは人材育成の観点でも非常に重要である一方、研究炉が停止しているために海外に行かざるをえない悲しい状況もあるので、規制対応を踏まえてしっかりと動かすのは当然大事ですが、研究炉を所有する大学は財政的に非常に厳しい状況にあると思いますので、「文部科学省は、引き続き各機関に対する必要な支援を行う」という腰が引けている表現ではなく、人材育成の観点から基盤的な支援が必要だというような前向きな表現にした方が良いのではないかと思います。
以上の2点に加えて、全体の意見もさせていただきます。前回の作業部会でも申し上げましたが、やはりこういう報告書は、誰がいつまでに何をするということをしっかり書く必要があります。今回の資料は前回に比べて改善されていると思うのですが、いつまでにというところが十分書かれていませんので、もっとしっかりと書く必要があると思います。
(山口主査)ありがとうございます。原子力以外の分野を専門とする学生への教育と研究炉の御指摘を頂くとともに、やはり提言を踏まえて具体的に実行に移すためには、いつまでにというものをきっちりと書くべきという御指摘と思います。御指摘の点も踏まえて後でも議論したいと思いますが、もし事務局で何かその都度お答えできることがあれば、御発言いただければと思います。他にはいかがでしょうか。では長谷川委員、お願いします。
(長谷川委員)5ページで「人材のミスマッチ」という表現があるのですが、具体的にどういうところがミスマッチなのかということをもう少しかみ砕いて書いた方が良いのではないかと思いました。必要とされる分野の人が足りないということなのか、言い方が悪いのですが、逆に必要とされる分野の人が足りすぎているということなのかが「人材のミスマッチ」という表現だけでは分かりにくいと思います。教育の現場にいる者としては、シビアな表現を使われている印象を受けました。それからもう一点は、1ページ目の「原子力分野を目指す人材の推移等」のところで、「学科・専攻の多くは改称・改組された」という一文があるのですが、なぜこうなったのかというところが何も書かれていません。文部科学省なり学界全体の流れとして、これまでの流れを変えていく必要があるという雰囲気があったわけであり、その理由を1行程度でも良いのできちんと記載しないと、「多くは改称・改組された」という表現では、何となく流行に流されたとも受け止められかねないと思います。学科の名称を変えるというのは、学内でもいろいろありましたが、非常に大変な作業でしたので、なぜこうなったかという理由は簡単でも良いので書いた方が良いのではないかと思います。また、入学者数データについてですが、このデータだけを見ると東電福島第一原発事故以降に入学者が減少しているとも読めるのですが、もう少し遡ってみると平成22年度に急増しています。大学の入学定員は簡単には変えられないはずなので、何か新しい学科がつくられたためとも考えられます。ですので当時は原子力ルネッサンスの影響を受けて、定員を超えた多くの入学者があったというよりは、別の要因によりこのような傾向になっているとも考えられます。先ほども学科・専攻の変遷について触れましたが、一部の学科・専攻については、この統計データには乗らないということや、それぞれの学科・専攻の定員が少しずつ増えたために右肩上がりになっているということも考えられますから、もう少し踏み込んだデータ分析を行う必要があると思います。
それから前々からよく言われていますが、他分野の教員等の人を引き込んでくるというのは、非常に重要であります。現在、私どもの大学で行っている廃止措置の人材育成プログラムでいうと、建築や機械、材料等、今まで原子力分野に関わったことのない分野の人たちも巻き込みながら進めています。ですから、そういうプロジェクトをうまく始動する形で事業を進められれば、他分野からの人は集まってくると思います。ですから、原子力に限った投資ではなく、もう少し関連分野を広げた形でのテーマ募集を進めていけば、関連する教員や研究者も参入してくるのではないかと思います。また、大学の教員が少ないという状況については、やはり国立大学等の教育現場では、教員の研究レベルで人事評価が行われているので、研究レベルを上げて活性化しないことには、人材が育たないと思います。その研究レベルを上げるためには、我々自身が努力して、様々な研究テーマや予算を獲得していく必要があるのですが、何かそういうところで研究レベルを上げられるような、なおかつ他の分野からの参画を積極的に取り込むような枠組みを提示していただけると、もっと研究者も参入してもらえるのではないかと思います。
(山口主査)幾つか質問もあったかと思うのですが、事務局から補足説明がありましたらお願いします。
(上田課長補佐)ミスマッチの記載については、欲しい人たちを集めることができていないという状況を指しています。原子力は、機械や電気等の総合工学を中心とする分野である一方、データに出ていますように、原子力以外の分野の人材は離れてしまっている状況ですので、そういうところを意識して書いたつもりでございましたが、御指摘いただいたとおりもう少し丁寧に書く必要があるかなと思っています。またデータの分析についても、もう少し踏み込んだ記載が必要ではないかという御指摘を頂きましたので、事務局にて少し考えたいと思います。
(山口主査)何でもかんでも書き込むというわけではなく、中間取りまとめの定見に繋がるような分析を書き込んでいただけたらと思います。人材のミスマッチの原因を十分に把握できていないので、必要とする人材の量と質の明確化を行うと理解していたのですが、それを今、ミスマッチの原因が分かるのでしたら、それはそれで半分解決したようなことかもしれませんが、長谷川委員から御指摘いただいた内容を、最後にある課題や施策の方向性の中で適宜加筆していただけたらと思います。
(髙谷戦略官)長谷川委員から御指摘を頂きました、学科・専攻の改称・改組や入学者数の推移については、事務局案としては敢えて事実を客観的に書くようにしました。それは正直なところ、これがなぜ起きたか等の分析が十分できてないというのが今回調査した反省かなというのもありますので、書けるところは私どもで分析をして書いていくにせよ、それ以外のところについては、なぜこういうことが起きたのかということを今後しっかりと調査をしていくという形にさせていただければと思います。
(山口主査)ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。では、五十嵐委員。
(五十嵐委員)長谷川委員の御意見とも重なると思いますが、2点、質問があります。「5.おわりに」の2番目に「原子力関連学科を持たない大学へのアプローチについて」という表現がございますが、少し唐突に感じています。これが出た背景には、資料1-3における「国が担うべき役割・課題」の中で、「国の公募事業は、国立大学の常連校が採択されている印象であり、原子力関連学科・専攻を持たない大学へのアプローチが必要である」という森口委員の御意見から来ているかと思います。もちろんその点も重要ですが、ここでの記述は、今、長谷川委員が御指摘されたように、もっと広い分野を取り込んでいくという意味まで広げた表現にした方が良いかと思いました。この書きぶりでは、「原子力関連学科を持たない」というようにきっちりと分けてしまっている印象を受けましたので、その辺の事務局の意図を伺いたいと思いました。
2点目は、5ページの「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」についてですが、人材の規模だけでなく質というのも重要であるということをこの作業部会でも指摘され議論してきたかと思いますので、その質の部分がどのような形で入っているのかということをお聞かせいただければと思います。
(山口主査)事務局からお願いします。
(上田課長補佐)1つ目の「原子力関連学科を持たない大学へのアプローチ」については、長谷川先生から御指摘を頂きましたとおり、原子力は幅広い分野から支えられる分野であり、幅広い分野としてのアプローチが必要であるということを念頭に置いて書いたところでありますが、御指摘のとおり、原子力関連学科を持つ・持たないで分けた印象にもなると思いますので、表現については修正させていただきたいと思います。2点目の規模等の指摘でございますが、これまでの作業部会において、量的・質的分析の必要性の指摘がございました。原子力の分野においては、産業界においても様々な現場があり、業務や職種においても様々な違いがあると思いますので、そういった業務や職種に携わるにはどういう能力が必要なのかという分析も行えればと思っています。そういう意味では、ここでは「規模等」としてまとめていますが、もちろん質的な部分も重要であると考えています。
(五十嵐委員)ありがとうございます。
(山口主査)私も昔から競争的資金に携わらせていただいていますが、原子力分野とそれ以外の分野との融合して進められるプログラムはこれまでも幾つか行われてきました。つい最近でも、原子力以外の分野と連携することを条件に募集するプログラムも幾つかあります。単純にそれらをまた繰り返すというよりは、これまでも指摘されている人材育成施策の継続性と繋がりますが、事業をとおして連携がうまくいき出したとしても、事業の終了とともに次第に連携の機会が減少していくということもありますので、その辺は深掘りして対策を考えていくことが重要かと思います。では沢井委員、お願いします。
(沢井委員)2点ほど申し上げたいのですが、3ページでは「原子力分野が抱える課題」が幾つか書かれており、例えば、高レベル放射性廃棄物の地層処分についても重要な課題であると思いますが、これは核燃料サイクルへの取組で読むことになるのでしょうか。それともう1点は、5ページの2つ目の四角内の記載で「大学での社会人の再教育への期待は高い一方」という記載についてです。これは恐らく私と上坂委員とでは意見が違うのかなと思うのですが、企業の人は、会社の外の教育機会をなかなか活用しないということに少し問題意識を持っています。以前も触れられましたが、ただその中でもプロジェクトマネジメント教育と人材の国際化だけは、企業ではなかなか補えないので外に期待したいという説明があり、産業界がどんどん大学に期待するという状況ではなかったのではないかなと思いました。
(山口主査)ありがとうございます。最初の指摘は、何かリファーする材料があって書ければ良いのかもしれませんが、あれが抜けてる・これが抜けてると書き出したらきりがないと思いますので、少し重点化をしていただければと思います。2つ目の御指摘は、ここに書いてあることと認識が違うのではないかということですよね。
(沢井委員)上坂委員は恐らく、今回の記載ぶりのお考えかなと思われるのですが。
(山口主査)「大学での社会人の再教育への期待は高い一方」と書くと、企業から大学に対して社会人を再教育してほしいという期待は高いけれども、現実に大学がそれを受け入れられていないというふうにも読めてしまいます。沢井委員の御指摘はそうでなくて、企業の方にはそういう期待が余りないという御指摘ですが、浜崎委員は以前に関連した御発言をされていた気がするのですが、何か御意見はございますか。
(浜崎委員)期待がないわけでは当然ないと思うのですが、逆に期待の方が高くて大学が受け入れてくれないという状況でもないと思います。
発言の機会を与えていただきましたので少し加えて発言させていただきたいのですが、前回の作業部会では、社会人の再教育という観点では学協会がそれなりの役割を果たしているのではないかということを申し上げました。ここでも書かれているとおり、「学界-産業界間の人材の交流が進んでおらず」と書かれており、確かに人材の交流というところまではなかなか進んでいないと思いますが、学協会というのは産学が協力して何かしらのことを実施するプラットフォームを提供していると思います。企業で働く者が、大学の先生方と同じ場所でお話をする機会というのは、こういう作業部会でもございますが、学協会の場というのが実は一番多いのではないかなと感じています。学協会となると、学部生の参画は難しいところがあると思うのですが、大学院生ぐらいになれば、学協会の活動にも本格的に参画できると思いますし、そういった活動を通じて産業界の人とも密接にコミュニケーションできたりとかできると思います。
(山口主査)ありがとうございます。資源エネルギー庁の自主的安全性向上・技術・人材ワーキンググループの中でも議論がありましたが、人材育成といってもいろいろとあり、それを関係機関の連携という一言で整理するのではなく、また、社会人の再教育についても関係機関の連携の中に押し込んでしまうのは、少し無理があると思います。そういう枠組みで考えると、学協会が中間取りまとめの中では一度も出てきてないですね。学協会が人材育成に与える影響は、私も少なからずあると思いますので、この中のどこかでキーワードを入れていただければと思います。他にはいかがでしょうか。では来馬委員、お願いします。
(来馬委員)2ページの「「原子力分野で活躍する人材」といえば、電力会社やプラントメーカー」という表現についてですが、すぐ後に「のみならず」という表現が出てくるので、それはそれで良いとは思うのですが、少し直接的過ぎる印象を持ちます。やはり原子力は総合的な分野であり、放射線も含めて科学技術全体にわたるものですので、人材に触れる際には、そちらを最初に触れて、今回の中間取りまとめではここに絞りますという流れの方が良いのではないかと思います。また、1ページで「原子力分野に関心を持つ学生が減少」と記載されていますが、これも私は少しニュアンスが違うと思います。福島のことも考えれば、社会が信頼を失っているということで、その信頼を取り戻すにはコンプライアンスや倫理観、あるいは情報公開や説明責任という、直近でも出てきていることに対してしっかりと応える人材育成というのがまずベースにないと困ると思うので、どこかで是非表現してほしいというのが1点であります。それから、3ページのところで40年を超えたプラントの許可という話が出てくるのですが、これをこういう「老朽化した既設プラント」と一言でくくられると、とんでもないプラントを稼働しているという印象になります。老朽化したプラントを無理して動かしていると。単に40年を超えているということで老朽化と表現されるのは如何なものかと思いますので、是非検討していただきたいと思います。廃炉という言葉も同じであります。地元は意識して廃止措置という言葉を使っているので、ここも一度、検討してほしいと思います。また、3ページに国及び地方公共団体の役割の話が出てきますが、この意味がよくわかりません。人材育成という際に国は国、地方は地方、大学は大学とそれぞれバラバラに人材を育成して、一緒にやりましょうというのはできるのでしょうか。人材育成するときにも、もう少し総合的に一体的にやらなきゃいけない、連携して人材育成するにはどうしたらいいのかということをどこかに表現できないかなと思います。そういう意味で、「政府一体となった」という5ページの表現は良いので、是非こうあってほしいと思います。この文章は、「文部科学省は」とか、主語を明確にしてほしいと思います。最後に、7ページの「5.おわりに」で、「原子力分野における女性の活躍・参画の拡大について」が、後回しの議論になっているのがちょっと納得できないところです。発言が弱かったのかもしれませんが、原子力の現場で女性が活躍できる状況をつくっていかないと、原子力は変わらないと私は思っています。5ページに、「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」が表現されていますが、施策の方向性には量や質の記載があります。ここでいう質というのは、女性がそこに参画できるかできないのかに関わると思いますし、女性が今、原子力や産学界のいろんな分野でどの程度活躍されているのか、それに対して今後、どういう目標を持ってその女性の活躍する状況、条件、環境をつくるのかということも、こういうところで是非記述してほしいと思います。そのためのニーズの把握等の中に女性という部分を是非取り入れて数値目標化することが必要です。原子力だけが社会の現状から取り残されるのは困るので、ちょっと長くなりましたけれども、御検討をお願いします。
(山口主査)ありがとうございます。事務局にお答えを求められている部分もあるかと思いますが、表現のところについては最終版に向けて注意して修正をしていただければと思います。5ページの「将来に必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」については、必要となる人材というのを今後の施策の方向性の中に書き込むべきだという御指摘でよろしいでしょうか。
(来馬委員)2ページで、「エネルギー基本計画を踏まえて」との記載があり、施策の方向性としてそういうふうになっていくのは仕方ないと思いますが、2ページの(1)の書き方が少し限定的である印象を持ちます。もう少し大きく捉え、原子力分野の人材は大変幅広いという話に触れ、本中間取りまとめではエネルギー基本計画に基づきエネルギー利用に焦点を当てるという方向性なら良いと思いますが、やはり最初からそこしか考えてないと受け止められる記載ぶりは如何かなと思いました。
(山口主査)わかりました。ただ、そこの記載は文書が長いからいけないのかなとも思います。「のみならず」という言葉でつながっており、様々な人が含まれますという文脈で書かれていますので、もう少し表現の見直しをしていただけたらと思います。もう一つの御指摘は、どういう人材を対象とするかという整理を中間取りまとめで行われていますが、それ以外のいろいろな人材に対しての視点は、「5.おわりに」として、今後視野に入れるという書き方になっているのでしょうか。それともそこまでは範囲にはしないという書き方になっているのでしょうか。
(上田課長補佐)作業部会の中でも、例えば放射線の関係の人材をどうするかという御指摘がございましたので、それは当然、この課題の一つに入り得ると思います。何かここで、今後の範囲を限定しているというものではないと思います。
(山口主査)この範囲を一度絞るというのは、この作業部会でも御意見いただいたところであり、私も良いとは思うのですが、この作業部会で絞り込んだスコープ以外の人材については、このように位置づけているというスタンスの記載をどこかにしてもよいかなと思いました。また、政府一体となった人材育成体制の構築は、誰が行うのかという御指摘についての記載については検討していただきたいと思います。それから女性の活用についての指摘ですが、私個人的には施策の方向性の中に女性を特出しして記載するのは余り好きではなく、一般論で書く方が良いのではとは思いますが、ただ女性に活躍していただくということは重要なポイントなので、中間取りまとめのどこかで追記ができるのでしたら、追記していただけたらと思います。恐らく来馬委員の御指摘は、「5.おわりに」の中で1行だけ触れられるのではなく、もう少し丁寧に書くべきだということだと思いますので、そういう方針でよろしいでしょうか。
(来馬委員)5ページの「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」で、量と質の把握の記載が出てきます。これはこれから把握すると思いますので、幅広い意味で人材育成のニーズの中には、女性についても含まれてくると思いますので、少し分かりやすく書いていただけると良いのではと思いました。
(山口主査)よくわかりました。今のお話を伺って思ったのは、大学で原子力を勉強している女性の多くは外国人です。外国人の女性は非常に沢山、原子力の分野を勉強しておられるので、やはり何か調べてみる価値はあるかもしれないですね。他にはいかがでしょうか。では中島委員、お願いします。
(中島委員)私の大学では研究炉を持っているということで、やはり施設の今後についてが気になっています。それについては6ページで研究施設について触れられており、研究炉も含まれていると思いますが、現状としては京都大学のKURや原子力機構ですと3号炉やJMTR等がある一方、もう既にかなり経年化しています。また、使用済燃料の問題もあり、それらを踏まえると、頑張って今後10年程度が今の体制でいける範囲かなと思っています。現在、新規制基準への対応等を進めている大学において、このままずっと研究炉の維持を行うことはほとんど限界に近いところに来ており、なるべく早く解決の道を見つけていただきたいという思いはあります。ただ当然、本当に今までの規模の研究炉が必要かという議論も必要となりますし、先ほど触れられた将来の人材の見通しを行えないままで新しいものをつくるとか、今のものに手を入れて使えるようにするということを進めるのはなかなか難しいと思います。また、将来の人材の見通しをどのようにして把握するかというところもやはり難しいところであり、中間取りまとめによると、「原子力人材育成ネットワークと連携の上」とありますが、やはり我が国として原子力エネルギーの利用を将来2030年を超えてどういう規模で維持するかというところがなかなか見えない現状で、仮に新しい研究炉をつくるとなり、これから準備を進めたとしても運転開始は恐らく10年後ぐらいになってしまうと思います。それが仮に30年間運転するとなると、長期的な人材育成の具体的目標が見えないままでは予算もやはりつきにくい訳ですのでどういうふうにしていけば良いか分かりませんが、少なくとも今後の施策の方向性で、「今後の在り方についての調査・検討を行う」という書きぶりですと、のんびりしている印象を受けますので、もう少し緊急性があるところを明確にする必要があると思います。施設がない状態になると、試料の照射をするにしても、海外へ行く必要が生じてしまいますので、そうならないための施策を打ち出していただきたいと思います。
(来馬委員)関連して1点だけよろしいでしょうか。
(山口主査)どうぞ、来馬委員。
(来馬委員)先ほど総合的な分野という話をしましたのは、今、御指摘があった研究炉を将来考えるときに、エネルギー利用のための、原子力人材だけのための研究炉ということはないと思います。総合的な、科学技術全般に係るというのが原子力には本来あります。そこから出てくる研究炉であれば、それは医療であれ材料であれ、薬学や宇宙であれ、様々な分野の利用という議論になるので、どれだけの人材が必要だから、どれだけの研究炉が新たに必要だという話は単純には出てこないと思います。最初に大きく捉えた上で、それぞれの分野の課題とか人数があって、研究炉については将来どうするのかという課題として議論すべきと思います。
(上坂主査代理)関連でよろしいですか。
(山口主査)どうぞ、上坂先生。
(上坂主査代理)研究炉はやはり短期プロジェクトの政策で運営するのではなく、長期的なベースロードとしてあるべきであり、先日もこの場で説明させていただきましたが、原子力学会が調べた結果ですと、かつて20基あった研究炉がおよそ半分の11基になっています。教育を受ける人数もそこでは調査していますので、研究炉の必要性を裏づけるデータにはなったかと思います。もちろん研究炉は、エネルギーのみでなく科学技術や医療にも利用されており、多くのユーザーは、動かないのだったら外国へ行くことになると思います。ただ原子力系はやはり原子炉もつくり、人材育成も行うということが頭にあるので、研究炉は日本につくらなければいけないという意識は強くあります。実際の研究炉の応用を見ると、物理応用等の方が多いのですが、研究炉を日本で維持管理する必要性については、やはり原子力界から声を上げる必要があると思います。
(山口主査)今の議論は、研究炉あるいは研究インフラに移っていますが、もし他に御意見がありましたらお願いします。長谷川委員、お願いします。
(長谷川委員)研究インフラの例えばの話ですが、研究炉が国内に仮に1基だけあり、全国各地にある大学や教育機関の人たちが皆、外国へ行くのと同じようにその1か所の研究炉へ行くかというと、そういうわけにはいかないかと思います。各大学や研究機関では、放射性物質を取り扱うことのできる施設がある一方、そのような教育施設や教育の機会を一度失ってしまい、集約された施設に多くの学生や研究者が行かざるを得ない状況になると、使いたいときに使えない、新しい取り組みがやりにくい、一度トラブルが起こると教育研究活動が全国的な範囲で止まってしまうという状況になり、大変な状況になります。やはり様々な分野の人に原子炉や放射線についての基本的な教育をするに当たっては、ある程度の集約は必要かと思いますが、身近なところできちんと施設や設備を地道にそろえていかないと、幅広い分野の人を取り込みかつ教育や研究のレベルを上げていくことは難しいと思います。そういう意味で、この中間取りまとめでは、割とたくさん書いていただいたので、是非その辺は積極的にアピールしてほしいと思います。
それから追加で発言させていただきますが、人材育成に当たって、他の分野の人がなかなか参画してこない理由の一つに、社会に対する原子力の説明の面倒さがあると思います。我々は全くそのようなことはないのですが、なぜその研究を行わなければならないのか、今後何年も続く放射性廃棄物管理をなぜ行わなければならないのかに対して一つ一つ説明することは、例えば機械や化学の人が原子力に参画する際に、成果の影響や社会的な影響が非常に大きいために「面倒だな」等といろんなことを思うわけであります。普通の科学技術ではそこまで言う必要のないことも原子力の場合には、プラス面もマイナス面も結構、社会に対して説明を行う必要があります。それが面倒くさいので原子力以外の分野から入りにくいという状況もあると思います。ただ逆に言うと、人材育成に当たっては、これからの時代はどんな技術であれ社会に対する良い面や悪い面の影響を正しく説明していく必要があるということを学生に知ってもらうことが必要であると思います。特に原子力はそれが顕著なので、人材育成に当たっては、このようなスタンスが求められているということをどこかで書いていただければと思います。また、2ページの「原子力分野で活躍する人材の認識と現状把握」については、社会に対する影響が大きな技術であることを踏まえ、原子力分野を正しく理解し、広めていくことの必要性をどこかに書いた方が良いと思います。
(山口主査)ありがとうございます。研究炉の話に戻りますと、今まで頂いた多くの意見は概ね6ページに集約されていると思うのですが、「文部科学省は、既設の研究施設の現状を踏まえた今後の在り方についての調査・検討を行う」については、研究炉に実際に携わっている立場から見ると、もう少し喫緊の問題として捉え、もう少し課題やニーズを浮き彫りにするべきだという御指摘はそのとおりかなと思いました。ここでは「調査・検討を行う」と書いていますが、私の知る限りでは相当長い間、調査・検討が行われていますので、そろそろアクションに移すような一石をここの中に入れてはいかがかなと思います。また、欧州ではいろいろな研究炉については役割分担の下、戦略的にスクラップ・アンド・ビルドが進められていますが、日本でも例えば研究拠点をどこに置く等の戦略性を、「今後の在り方について調査・検討を行う」というところに含まれていると思いますので、ここの表現は少し強化していただければと思います。それから、2点目の御指摘は、なかなか書きにくいところがありますが、「原子力分野で活躍する人材の認識と現状把握」で御提案がありましたように、社会性というものが人材において重要だということを、ここのあたりで明記していただければ良いかなと思います。他にはいかがでしょうか。では木藤委員、お願いします。
(木藤委員)繰り返しになる部分もあるかもしれませんが、6ページの研究炉については指摘のとおりで「調査・検討」だけでは弱く、その後に「我が国としての戦略を立てる」ということを是非記載していただければと思います。ここでは我が国の人材についてしか触れられていませんが、アジアにおける日本の役割を考えると、他の新興国等からも日本に来て研究炉を利用するという視点も必要だと思いますので、そのような書きぶりをお願いしたいと思います。それから、「1.はじめに」において「継続的に議論を行うこととする」と記載がありますが、過去の検討を振り返っても、繰り返し繰り返し言われていることがなかなか実現できていないというのが人材育成の課題そのものなので、是非ここでは議論だけで終わらないような書き方をお願いしたいと思います。議論するべきものもありますが、迅速にアクションに移すことが重要であり、実際に行うということを書いていただきたいと思います。それと、5ページで「文部科学省は、人材育成・確保に係る総合的な施策ロードマップの策定を行う」とあり、非常に重要なところであると思いますが、施策ロードマップについてどのようなものを考えているのか少し御説明いただけないでしょうか。総合的な施策ロードマップというのができれば、その中に研究炉についての検討や、アジアにおける我が国の役割についても含まれると思っていますので。
(山口主査)ありがとうございます。総合的な施策ロードマップの策定について、具体的な中身等の補足説明がございましたら、御説明いただけますか。
(上田課長補佐)当然、このロードマップをどのように進めていくのかをしっかりと検討する必要があると思っていますが、一方で、中間取りまとめにも書かせていただいていますが、例えば資源エネルギー庁や原子力人材育成ネットワークでも人材育成の課題を捉えた上でロードマップを策定されています。その中には、御指摘いただいた海外の人材育成の取組をどのように進めるか、産業界での人材育成の取組をどのように進めるかという総合的な取組をまとめていただいている部分があると思いますので、整合性を図りながら人材育成の課題全体が包含できるものを検討させていただきたいと思っています。
(山口主査)よろしいでしょうか。
(木藤委員)はい。よろしくお願いします。
(山口主査)では森口委員、お願いします、。
(森口委員)今の点についてですが、だから「いつまでに」を書く必要があると思います。ロードマップの策定はいきなりできないでしょうから、少なくとも文部科学省においてロードマップの案をいつまでにつくるとか、6ページの研究炉についても調査・検討だけでなく戦略をいつまでに立てるといったところを書かないと、いつまでたっても進まないと思います。
(山口主査)ありがとうございます。今の御指摘も何度も出ているところなのですが、これまでの御意見を踏まえて文部科学省として、又は本作業部会として、優先度を認識しながらメリハリをつけて書いても良いのではないかと思います。今年度中に作ることは難しいとは思いますが。木藤委員が、中間取りまとめでは総合的なロードマップ策定が重要なポイントではないかと御指摘されたように、やはり重要な提案というのは幾つかあると思いますので、それが明示的に分かるような記載をしないと、何年かたって振り返ってみたら議論を継続していましたねと指摘されないようにしたいと思います。他にはいかがでしょうか。では可児委員、お願いします。
(可児委員)今のロードマップに関連してコメントさせていただければと思いますが、4ページに原子力人材育成ネットワークでの具体的なロードマップの説明がありますが、この説明が「(2)原子力分野の人材育成に関する基本的な考え方」の中で触れられているのに少し違和感があります。「各機関が果たすべき役割」の中の説明だとしても位置づけが違うように思いますので、仮にロードマップの策定に重きを置いてまとめられるのであれば、他の機関が策定されているロードマップについても情報を併せて整理される方が良いと思いました。
(山口主査)ありがとうございます。確かにここのところは、基本的な考え方のような話も入っているし、原子力人材育成ネットワークがこれまでプラットフォームとして重要な役割を果たしてきたという現状認識の話も入っているので、整理していただき適切な場所に割り振っていただければと思います。ただ、「産官学の関係機関が一体となり」のところは、先ほど来馬委員の御指摘もありましたとおり、それぞれの機関・組織がそれぞれの役割をしっかり認識した上で一体となって人材育成を進めることが重要であるという趣旨は、基本的な考え方にしっかり書いていただいた方が良いと思うので、留意していただければと思います。それでは森口委員、お願いします。
(森口委員)関連で発言させていただきますが、この中間取りまとめは文部科学省が原案を書いたので、「今後の施策の方向性」では国がやるべきことを中心に書いてありますが、当然、人材育成を進めるに当たっては、産官学の連携が重要であります。学や産に対してこれをやれとは言えないので期待するぐらいの表現になるかもしれませんが、例えば学であれば、学協会等で横断的な議論をすることを期待するということも調整して書ければ良いのではないかと思いました。
(山口主査)資料1-3の中には、産学官の各機関が果たすべき役割が書いてあるので、それを受けて、施策の方向性に書くということでしょうか。
(森口委員)どこまで書けるかわからないのですが、「産はいつまでに○○することを期待する」という結びにはなると思いますが、中間取りまとめとして記載しても良いのではないかと思いました。
(山口主査)ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。では上坂委員、お願いします。
(上坂主査代理)学界と産業界の話がありましたので問題意識を1つ申し上げたいと思います。私は国際人材育成等の仕事にも携わっていて、ヨーロッパやアメリカの大学も見ているのですが、特にヨーロッパの大学は産業界との議論を10年前から進めており、学問だけでなく、社会で生きていく能力も大学で教えていると言われています。彼らからシラバスを見せてもらうと、例えば炉物理等の専門知識の下に、ディベート能力やコミュニケーション力等のいろいろな能力があります。ヨーロッパでは、社会のニーズを聞きながら社会で役に立つ教育が大学で行われており、人事も産業界の人が入ってきています。ところが一方、先ほど長谷川委員がおっしゃったように、日本の教員人事は研究力であり、論文の数となっています。昨日の新聞では、アジアの大学ランキングにおいて日本の大学だけが結構落ちているという記事が掲載されていました。それは研究教育力だけなく、国際化や経営も求められているということだと思います。今のように研究だけ進めていくという国は日本だけになってきているのかと思います。要するに、日本の大学は研究寄りである一方、産業界は非常に現場寄りであるため、両者の間には距離があり、なかなか人事交流が図れないかもしれません。大学はもっと産業界の人を入れる必要があるだろうし、企業としては博士号やMBAを取った人がもっと活躍できるような仕組みを入れなければ、人事交流が止まり、隔離してしまうと思います。私と山口主査は東京大学の専門職大学院で社会人教育に携わっており、5年に1度、JABEE(一般社団法人日本技術者教育認定機構)による厳しい評価を受けています。そこでは報告書の作成やコメントへの対応、現地調査を受け、学生に対してどれだけの能力を教えているのか、そのエビデンスをどこで見るのか、達成度はどうなのかというのを項目ごとに求められています。専門職大学院というのはそこまでやらされています。その一方、一般の大学院というのは自由度が高く、アドミッションポリシーやカリキュラムをどうしているかが求められています。ですので、学界と産業界の人材交流の一体化というのは、世界のスタンダードとはだんだん離れてきているところに日本が置かれている気がします。文部科学省でも恐らくこれは大きな課題であり、研究開発局だけではなく高等教育局や学長が集まる会議で議論されることかもしれませんが、教育現場に携わる我々としては非常に苦労しているところがあるので、その辺のお考えをお伺いできないでしょうか。
(板倉審議官)上坂委員から御指摘があった点は正に、原子力分野だけの話ではなく、高等教育局や科学技術関係局を含めて取り組んでいるところであります。特に高等教育局での取り組みとしては、四、五年前に経済産業省と一緒になり、産業界の役員と大学の学長とのラウンドテーブルを設置し、様々な議論を進めているところであります。その中でいろいろな課題が出されましたし、それを踏まえて幾つかの大学の改革の取り組みが進め始めたというところであります。まだ道半ばではありますが、そういう方向に向けて、大学教育や行政の在り方全体は舵を切り始めたところであります。そういう中で原子力分野の特有の問題はもちろんあると思いますが、大きな流れはこれと同じですので、取り組みをしっかりと参考にしながら、ロードマップの中に落とし込んでいきたいと思っています。
(上坂主査代理)私の実感ですが、土木工学が一番社会との連携や国際化が進んでおり、参考になる気がします。恐らく理系の公務員の出身も土木が多いと思います。また、技術士等の国家資格も一番、土木の世界で認知されていると思います。その次が原子力である実感がありますので、土木工学科・専攻の状況もしっかり参考にしていく必要があるとも思っています。
(山口主査)ありがとうございます。今のミスマッチのところは、先ほども議論があったのですが、上坂委員から御紹介いただいた海外の事例を少し書き加えていただくのも一つの手かなと思いますので、御検討を頂ければと思います。
(上坂主査代理)以前に上田課長補佐とお話した際にも触れましたが、「欧州教育制度のチューニング ボローニャ・プロセスへの大学の貢献」という本が出されおり、如何にしてステークホルダーと議論し、社会に役立つ能力を大学の教育に盛り込んでいるかが書かれていますので、中間取りまとめでも少し触れていただいてもよろしいかと思います。
(山口主査)ありがとうございます。浜崎委員、お願いします。
(浜崎委員)産学の話になりましたので、もう少し現場に近いところのお話をさせていただきたいと思います。私がメーカーにおいてマネージャーだった頃を少し思い出しているのですが、部下になる人間を教育するときに、OJTとOff-JTというのがあります。これらをどういうバランスでやらせるのかは結構悩ましい問題であるとともに、先ほども触れましたが大学側へ再教育のニーズがあるのかどうかというのも難しい質問ですが、本人たちはかなりあると思います。若い人たちは恐らくみんな受けたいと思っているけれども、では受けさせられますかというのが企業側の問題でして、ある企業や組織に所属して給料をもらう立場になると、勉強ばかりをさせるわけにはいかず、やはりそのお金に見合った仕事を行ってもらい、その上での教育となりますので難しいところであります。ではOJTというので何か奨励する策は何かないのだろうかというと1つありまして、文部科学省の国際原子力人材育成イニシアチブの公募事業で私が所属する企業が採択され、社内の若い技術者が学生を相手に講義を行ったり、会社の仕事についていろいろとコミュニケーションをしながら教えたりする機会があります。それが若手の技術者の中でのモチベーションアップに非常につながっていると思います。ですのであの事業というのは決して受ける側の人材育成だけでなくて、行う側、特に若手の技術者たちのモチベーションアップや、コミュニケーション能力のレベルアップにつながっていると思います。企業がそのような事業に携わる場合には、産学連携の場のプラットフォームとして有効に機能しているなという実感があります。
(山口主査)せっかくなのでお伺いしたいのですが、今の例は、そういうプログラムが企業の若手の人材育成に役立っているということですよね。
(浜崎委員)そうです。
(山口主査)一つのポイントは、では大学がどういうプログラムをオファーできれば、個人ではなく組織としてそういうものに入ってこられるかだと思います。例えば大学に行ったら仕事に必要な資格が取れるというのはすぐ思いつきますが、もし大学がこういうプログラムを用意していれば、産学連携が進み、企業としても人材交流がやりやすくなるというような御意見や御知見はございますか。
(浜崎委員)今、山口主査がおっしゃった資格というのは、恐らく一つの大きな魅力にはなってこようと思いますが、それ以外ですとどうでしょうか。
(山口主査)例えば先ほど、海外では企業のニーズを酌み取り、大学がそれに応えるようなプログラムを提供しているとのお話がありました。企業の大学に対するニーズというのは、なかなか日本では思い浮かばないため、仕事のやり方や大学教育そもそもの考え方が日本と外国で違うのかなとも思えます。ちょっとそのあたりに少し突っ込んでおくのが、今のミスマッチを紐解く上では重要かと思いますので、他の委員でももし御存じのことや御意見がありましたらお願いいたします。浜崎委員、お願いします。
(浜崎委員)民間企業からのお話ですと、大学では基礎学力を鍛えてください、実務能力は会社に入ってからつけさせますという言い方をすることが非常に多いと思うのですが、実際、日本の企業はそういう発想のところが多いと思います。私自身もそういう実感はするのですが、ただ、やはり大学じゃないと勉強できないこともたくさんありますので、それはしっかり勉強してほしいと思います。会社に入ったら身に着けることのできない基礎学力は絶対にありますので、それは間違いなく大学で身につけてほしいと思います。
(上坂主査代理)一例ですが、IAEA原子力マネジメントスクールでは、世界から講師を集め、3週間の集中講義でマネジメントについて教えるのですが、IAEAはこれを修士課程に持ってこられないかと活動しています。また、仕事を休んでこられない社会人を対象に、eラーニングシステムで勉強し、1学期半年で2コマぐらいの取組も行っています。大学には企業の経験者が多く、特任や客員の方も多いでしょうから、本当に経営のプロみたいな方が大学にいる訳であります。そういう方がカリキュラムをつくり、eラーニングをつくり、自分で講義をしています。横でパワーポイントが流れ、ニーズがあればディスカッションもでき、eラーニングベースで、数年かけて修士号を取ることができます。ところが、日本でそういう修士号となれば必ず2年来て研究を行い、修士論文を書く必要があります。だから、先ほどの修士というのは日本の修士にはなじまないのです。それは正に大学のシステムの問題かと思います。専門職大学院というのは研究しない大学院なのですが、それでも2年を1年に凝縮したような大学院でも朝から晩まで勉強会を行い、夜は宿題をするというような感じでして、それでようやく修士という感じなのです。ですから、大学での学位の考え方も全然違うと感じています。
(山口主査)この中間取りまとめの範囲には収まりきれない話かなとも思いましたが、上坂委員が前に御紹介いただいた際に、アメリカにおいては、修士では研究は行わず、教育だけを一生懸命行うと話がありました。アメリカは原子力に限らず、大学を出るとPEを取り、それがないと仕事が実際にできないという形になっていますので、やっぱりそうすると制度上の問題というのがあるのかもしれません。根本的な問題なので、少し問題提示として書いていただければと思います。
(上坂主査代理)ここに書くのはなかなか難しいところとは思いますが。
(山口主査)記載の工夫をするのは手だと思いますし、やはり今までの議論を聞いていると、施策の方向性に書いた「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」の中に、そういう問題も含めて産業界からのニーズは何なのかというところを本日の議論のキーワードを幾つか入れていただくのが良いかなと思いました。他にはいかがでしょうか。沢井委員、お願いします。
(沢井委員)今、上坂先生が御発言されたことは私が最初に申し上げたことと関連しますが、やはり「企業の人が社員教育を大学に期待していく」といった楽観的な状況ではないということをお話しされたのだと思います。上坂先生がお話された修士課程の在り方や、小生が先に申しました社会人教育に対する企業の意識づけなどで、大学も企業も変えていかないと技術者の継続的能力向上の点で大変なまずい状況になろうかと思いますので、継続的な改善を図るという路線は重要かと思います。大学の話に戻りますが、大括り化というのは大学を取り巻く環境の中で是非キーワードで入れていただきたいと思います。初めの会合のときに長谷川委員が御発言され、印象的だったのがPhysical ReviewやJournal of Nuclear Materialsとは言われなかったけれども、それらを同じ尺度で評価されてはたまらないという話があり、それは正にそう思いました。原子力機構も業績審査をしますけれども、引用数も気にしますが業務の様子も当然加味をします。例えばある1人の燃料研究者が、原子力機構では窒化物燃料をADSのためによく研究しています。その人がたまたま酸化物燃料の論文を書くと、それだけで被引用数が多いということも起こります。被引用数というのはそういうものなのです。どんなにたくさん論文を出したとしても、業務に整合性があるかや、十分貢献しているかという視点が入ります。大括り化になると、客観性を重んじるので画一的な評価基準になるので、そこを改める必要があるというのが今の御議論だったと思います。大括り化というのは大きな反対要因かなと思いますので、御検討をいただければと思います。
(山口主査)大学の流れとしては大括り化の流れはありますよね。大学の基礎教育と原子力のような専門教育のギャップをどう埋めるかという問題として捉えるのがよいのですかね。今の大括り化の話は、学部の人数と大学院の人数が違うという長谷川委員の御指摘のとおりであるかと思います。学部は大括り化されているので、原子力という言葉が入ってこないという現状かと思います。他にはいかがでしょうか。五十嵐委員、お願いします。
(五十嵐委員)「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」のところで、産業界が求めているという点を強調するようなお話が出たかと思います。前回の作業部会後に提示された事務局案では、「日本原子力産業協会等の関係機関とも連携の上、今後の原子力事業を継続していく上で、産業界が求める人材の量と質のニーズの把握を行う」という一文がありました。ただ、今回の資料ではなくなっていました。それは何か理由があるのかと思いますが、ここで「産業界が求める」ということを余り強調しすぎるのはどうなのだろうかと考えます。大学での教育や就職だけを重要に考えているようにも受け取れるからです。私としては、今後の原子力の施策等にもどんどん意見を言っていくことができる専門家を育てていくという研究面や教育面も同様に重要だと思いますので卒業生を産業界に輩出していくという意味だけにとられないようにする必要があると思いました。また、海外の状況などを入れるのは非常に良いと思いますが、そのためにはやはり裏づけのデータが必要だと思います。以前、女性について「その他」に簡単に書かれているのは非常に残念だと申し上げましたが、もし女性のことを挙げるならば現状として日本の原子力分野における女性がいかに少ないかという客観的データを示す必要があると考えます。学生が少ない、産業界でも少ない、そういうデータがあった上で書かないと、女性を増やそう、活躍させようと一言だけになってしまいます。ただこれは余り議論できなかった部分なので、新しいデータを加えていただきたいとまでは言えないので、今回はこういう書き方になるのかとは思うのですが、そういう議論もあったことがわかるような形にしていただければと思います。
(山口主査)本日の議論では、「将来必要となる原子力分野の人材の見通し(規模等)の明確化」の中に、研究インフラも必要な人材のニーズを踏まえてという文言がありましたし、人材を確保する上で女性がこういう分野に入っていただくことによって人材に対してプラスの効果があるのではないかというお話、それから、産業界のニーズを踏まえてどうやって人材を確保するかという話というような、人材の見通しの明確化をする上でポイントとなるキーワードが指摘されましたので、ここの中に例示をしていただくことが必要ではないかというのが本日の結論だと思います。そういう中で女性の活躍・参画の拡大というのは、五十嵐委員や来馬委員からも御指摘いただいたように、「おわりに」の中に一言だけで触れられるのではなく、4.の中に関係するキーワードとして挙げていただいてまた議論していただければと思います。恐らく今の説明で五十嵐委員の懸念には齟齬がないと思いますが、御了解いただければと思います。他にはいかがでしょうか。長谷川委員、お願いします。
(長谷川委員)産業界が求める人材を大学が輩出するという言葉は聞こえが良いですが、例えばうちの専攻では仮に、原子力工学を学んだ学生が全員、原子力分野へ行きますというと、今度は他の人が入ってこなくなる恐れがあります。大学というのは、やはり幅広い人材を育てる役割を担っており、学生にとっても当然、いろんなところに行く職業選択の自由があります。その中で、大学で勉強し、学んだことを活かせるというのが大事な話であり、1対1のように卒業した人はほぼ原子力へ行きますと仮になると、そういうところを志望する学生であれば良いけれども、他に行きたい学生にとってはそこを志望しなくなるため、大括り化した学科の中においても来る学生が減ってしまうわけであります。ですので、そういうところも行くことができるという言い方をしないと、大括り化の中で生き残っていけないところがあり、そこは結構苦しいところであります。やはりいろいろなエンジニアリング全体をある分野の大括りした学科の中で勉強し、そしてその中で原子力の基礎を学んだ人がそこから原子力の産業を選ぶ選択肢があるというようなスタンスが、大学における教育の中では必要だと思います。実際に学生の就職担当をしていると、電力会社へ行くならあそこはいいけれども、他のところへは行きにくいんだよねという変な噂が一度立ってしまうと、それだけで学生の志望が変わってしまいます。教育を受けた学生が1対1で全て原子力の分野に行くとは大学のスタンスとして書きにくいと思いますので、「積極的に行く人が多く選択する」のようなぼかした言い方の方が私としては良いと思います。
(山口主査)ありがとうございます。そういうことを踏まえると、そもそも大学は一言で表現され、原子力の専門教育を行う場は一体何なんだという問題に突き当たってくるのでこれ以上ここで議論してもとは思いますのでやめますが、原子力分野の人材も育成されるような大学教育の在り方というのが、この次のステップとしてあり、制度論の問題に結局は行き当たるとは思いますが、今の長谷川委員の御指摘もちゃんと留意しておくべき重要な点だというふうに、私も感じています。
他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。場合によっては、今日で中間取りまとめの議論を終え、案を取るというストーリーもあったと思うのですが、御意見もたくさん出ましたし、もう1度修正した上で議論を行った方がよいのかなというのが私の感想です。事務局はいかがでしょうか。
(上田課長補佐)全く異存はございません。
(山口主査)それでは大変お忙しいところ恐縮ではございますが、本日、たくさんの御意見や修文案を頂きましたので、もう一度、作業部会にて議論させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
(山口主査)それでは、また事務局と相談させていただきたいと思います。本日は活発に御議論いただきまして、ありがとうございました。最後に事務局から今後の流れについて御説明をお願いいたします。
(上田課長補佐)御議論いただきました内容を事務局にて修正させていただいた上で、また次回の作業部会にて議論いただきたいと思いますが、日程調整については改めて事務局から御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。以上でございます。
(山口主査)では、また事務局から連絡がありましたら、調整の御協力をお願いします。それでは、以上をもちまして、第7回原子力人材育成作業部会を終了します。どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付)