原子力科学技術委員会 原子力人材育成作業部会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年3月17日10時00分~12時10分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. プラントメーカーにおける原子力人材育成の取組について
  2. 電力会社における原子力人材育成の取組について
  3. その他

4.出席者

委員

山口主査、上坂主査代理、五十嵐委員、可児委員、木藤委員、来馬委員、沢井委員、中島委員、長谷川委員、浜崎委員、森口委員、和佐委員

文部科学省

田中研究開発局長、板倉研究開発局審議官、岡村原子力課長、髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)、上田原子力課課長補佐

オブザーバー

中原 経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課原子力戦略企画調査官、吉村 一般社団法人日本電機工業会原子力技術委員会委員長

5.議事録

(山口主査) 定刻となりましたので、ただいまから第5回原子力人材育成作業部会を開催いたします。本日は、御多忙にもかかわらず御出席いただきましてありがとうございます。それでは早速、議事に入らせていただきます。本日の議題ですが、まず産業界からのヒアリングとして、「プラントメーカーにおける原子力人材育成の取組について」、それから「電力会社における原子力人材育成の取組について」を御紹介いただき、それから「その他」について御議論いただく予定でございます。では最初に事務局から出欠と配付資料の確認をお願いします。
(上田課長補佐) 本日は宮浦委員から御欠席の連絡を頂いているところであり、来馬委員、森口委員におかれましては遅れていらっしゃる予定でございますが、定足数である過半数の出席を満たしています。
続いて本日の配付資料の確認をさせていただきます。資料1として「原子力人材・技術の維持について」、資料2として「原子力産業界【原子力発電所】における人材育成について」、資料3として「これまでの議論のまとめ(中間まとめ骨子案)」をお配りさせていただいています。それから参考資料1として本作業部会の委員名簿、参考資料2としてこれまでの議論を踏まえた主な論点、参考資料3として本作業部会の今後の進め方を配付させていただいています。資料の不備等がございましたら事務局までお申しつけください。
(山口主査) ありがとうございました。資料についてはよろしいでしょうか。それでは、議題に入らせていただきます。
前回までの原子力人材育成作業部会では、教育・研究機関からのヒアリングとして近畿大学や京都大学、JAEAから原子力人材育成の取組やそれぞれの機関が所有する施設について御説明を頂いたところです。それで本日は、産業界における人材育成の取組や大学への期待ということで、プラントメーカーや電力会社の方から取組等を聞かせていただこうと思います。
では最初に、日本電機工業会原子力技術委員会で委員長を務めの吉村様に御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
(日本電機工業会 吉村委員長) 吉村でございます。本日は、電機工業会の技術委員長という立場で、プラントメーカーから見た原子力人材の課題や技術の維持に向けての取組を紹介させていただきます。資料の表紙をおめくりいただきまして1番目に、原子力を支える技術ということを説明させていただきます。皆さん御存じのことかと思いますが、原子力を推進するに当たっては、3E+Sという社会的な使命に応える必要があります。そのために我々としては、原子力固有の技術のみならず、電気・機械等の高度な設計能力や製造能力、プロジェクトマネージメント、エンジニアリング能力といった非常に幅広い人材が必要であります。これらについては、これまでの継続的な原子力発電プラントの建設により人材を維持してきたということである一方、東京電力福島第一原子力発電所事故以降は、課題を抱えながら進んでいるという状況にあります。次のページでは少し中身を細かくして、どういう人材が原子力を支えているかという資料を載せています。2ページ目は、平成24年の新大綱策定会議資料から抜粋したものであり、原子力発電所の基本設計から建設、試運転という流れの中でどのような分野の技術が必要かということを整理しています。ページの上部に記載していますが、原子力を活用する上では、原子力固有の技術が必要になるとともに、設備においても非常に高い品質が要求されるため、高度なプロジェクトマネジメントやエンジニアリング能力が必要とされています。ページの下部には、原子力を支える具体的な技術を載せており、原子力は、炉心や安全設計、被ばく評価等の原子力固有の技術が必要であるとともに、一般的な発電システムで共通の機械や電気設備等も必要であり、これらを支える人材によって成り立つ業界でございます。3ページ目では、原子力を支える技術分野の広がりについて記載させていただいており、プラント設計から建設、試運転、運開まで持っていくために必要な人材を紹介していますが、これだけではなくその後の運転を継続するための人材の厚みの維持が必要であります。また、技術開発とのフィードバックとして左側に載せていますが、プラントを建設した後の継続的な運転の中で保守やトラブル対応が必要となり、更なる改良に向けた技術開発によってフィードバックをかけながら常に新しい技術や知見を身につけていくことが必要であります。また、単にプラントを建設するだけではなく、プラントの維持に必要な人材や1Fを含めた廃炉のための人材等、様々な技術分野でより充実した人材のニーズがあるということを3ページ目の右側に書かせていただいています。4ページ目では、原子力を支える国内のサプライチェーンについて記載させていただいていますが、国内の原子力建設においては、設計・建設・保守に係る企業だけではなく、原子力発電所を成立させるために様々な設備を提供してくださる原子力特有の技術を持つ400以上の企業、更にそれを支える一般の産業界というのがあって初めて成り立つということでございます。このページの左に矢印で「約5万人規模」と記載していますが、これは、原産協会が行う人員統計等のアンケートで算出された規模感であります。これまでは、発電炉の話をしていましたが、更に核燃料サイクルという分野に視点を広げるということで、5ページ目では核燃料サイクルにおける技術・人材の維持について記載させていただいています。核燃料サイクルにおいても高速中性子、ナトリウム冷却材、高温・低圧といった特有技術が必要とされ、そこの人材も必要とされています。それから右側の再処理についても、未臨界維持や化学処理、負圧・閉じ込めといった特有技術が必要とされ、原子力分野の人材を考えるときには発電炉の建設、保守、運転だけではなく、核燃料サイクルというところまでの視野を広げて我々は考えなければいけないということを書かせていただきました。
ここまでが原子力に必要な人材の中身や広がりについて紹介させていただきましたが、6ページでは、その人材が今どうなっているかという現状について説明させていただきます。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、原子力の社会的受容性が低下し、原子力を志望する学生数の低下が言われています。その一方で、既存発電所の安全性向上や廃炉プラント数の増加により、国内の原子力産業人材の維持・増加が以前にも増して必要となっています。また、海外での原子力発電需要というものが引き続きある中、それに対応する人材も必要とされています。原子力産業の人材の必要性は増加傾向である一方、原子力産業を志望する学生の数というのは減少傾向にあります。下に原子力産業セミナーへの参加者数を示したグラフを載せていますが、やはり原子力を専攻してこられた学生の志望はある程度のレベルで横ばいになっていますが、それ以外の分野の志望が極端に下がっており、先ほど説明しました幅広い人材を必要とする産業構造において、この結果はアンバランスのような現状を表したものであるかなと思っています。7ページでは、ではこういう人材を確保していくためにどういう施策が必要かということを記載しています。一つ目は、まずやはり原子力人材・技術の維持のためには社会的受容が前提であることを載せています。原子力の信頼が回復し、原子力産業や原子力分野の基盤に対して貢献したいという志望者が増えていくという環境が必要であります。そして2つ目は、どちらかというと教育現場に対してメーカーが期待する内容になると思うのですが、専門知識も必要ですけれどもそれにも増して基礎学力というか科学的思考力のしっかりした人材を我々は求めているということを載せています。後でも出てきますが、結局のところ専門知識というのは、産業界においても習得が可能であり、我々の社内教育においてもそういう専門教育に集中している一方、プロジェクトマネージメントや総合的エンジニアリングの能力が求められるときにおいては基礎学力が求められます。私の感覚ですと、今後は以前にも増して廃炉や1F、海外への対応においては、これまで長い間経験してきた建設、運転、保守ということも当然ながら、新たなチャレンジが求められていきます。それでやはり新たなチャレンジに対応できる人材というのがやはり一番重要であり、そういう人材がどういう素養なのかというのは議論があるとは思いますが、ここに書いてある基礎的・科学的な思考力という問題解決に対する多角的アプローチのセンスが身についている人をメーカーにとっては必要と思っています。そのような人をどのようにして育てていくのかというのは我々としても課題ですし、そういうところが教育現場とも連携して取り組んでいかなければならないのかなと考えています。それらに対しては研究開発も有効ということで、やはり社会受容性の向上や基礎学力の向上、専門知識習得というところで国、大学、事業者、メーカーは全ての施策に対してそれぞれの役割を持ちながら進めていく必要があります。その中でも◎のところが、主要な役割を果たしていただくべきであるという意味でつけさせていただきました。次のページ以降は、これらの項目について、メーカーという立場でどのようなことを行ってきているかということを紹介しています。
8ページ目では、メーカーが他の機関とも連携しながら進めている原子力人材の育成の取組を載せています。1番目は原子力人材育成ネットワークを通じた活動であり、原子力基礎教育シリーズセミナーや見学会に対してメーカーは、講師を派遣したりセミナーのプログラム構築に人を派遣して協力するという取組を行っています。また、施設見学についても、他の関係機関と連携しながら進めています。9ページは学会を通じた活動について記載していますが、学会を通じた活動についても若手研究者発表討論会やその他の学会企画活動参加について協力をして一緒に進めています。その他の活動として社外PA・教育支援活動を記載していますが、大学や寄附講座等への講師派遣を進めることで、原子力産業の在り様を外に紹介し、人材育成に貢献する取組を継続的に行っています。
次の10ページでは、メーカーの中においてどのような技術者育成を行っているかを紹介させていただきます。一つ目は継続的教育・研修を通じてのプロフェッショナル人材育成ということで、技術者のベースとなる基礎的な教養としての技術者倫理教育を行っています。それから、資格取得等をモチベーションにして専門的な知識を習得してもらうために、技術士等の各種資格取得支援のためのスキル教育を行っています。それから、年々注目度が上がるものですが、国際人材養成コースといった研修に積極的に若手を派遣するというようなグローバル教育研修・派遣も行っています。ただ、一番下にも記載していますが、やはり教育や研修をとおして知識は身につきますけれども、結局のところ、実践力や経験という意味ではやはりOJTに勝るものはないので、メーカーにとってはやはりOJTを通じてのマネージメント・エンジニアリング能力向上が重要であり、継続的な現場での機会創出が必要であります。ではそういう現場での機会は何かということを11ページに記載していますが、一つには国内プラント新設があり、かつては継続的なプラント建設によるOJTによって技術の継続性を維持できていました。平成26年の原子力小委員会で出させていただいた資料ですけれども、プラントを一つ建設するに当たっては、基本設計から据付け、試運転で運開するまでには10年という期間がかかります。下部のグラフで表していることは、10年間一様に仕事の内容があるわけではなく、仕事が設計からだんだん現場に移っていくという流れがあるため、こういう10年の山が10年間に2つぐらいあると技術伝承が進むという概念を表現したものであります。なので、現在はまだ新増設を議論する段階ではございませんが、プラントメーカーとしては将来的にこのような新設というプロジェクトが国内にあるということは安定的な人材維持にとっては非常に重要であるというメッセージであります。
それから、12ページにおいては研究開発の必要性について記載しています。プラントを設計して建設する人材は、実際のプラントの建設に携わることで維持できるのですが、やはり建設というのは既にでき上がった技術を実践することであり、それだけでは新しいものを生み出すという研究開発の面での訓練は難しいということで、やはり研究開発プロジェクトが重要であります。ここでは次世代BWR及びPWRを載せていますが、安全性の向上や事故教訓の反映、安全性を高めた原子力発電所で国際社会に貢献するためには、国を挙げた研究開発の取組を実行していくことが必要であると考えています。13ページにおいても研究開発を記載していますが、ここでは原子力発電の利用を支える様々な要素技術の開発や基礎研究についてであり、こういうようなものをメーカーが社内である規模の研究開発投資をしていくためには、原子力発電の利用計画が将来的にわたって見通せることが必要です。また、基礎研究の継続は重要である一方、産業界から見るとやはり長期的な目で必要な基礎研究というのは、メーカーだけで続けることは難しく、国や研究機関の役割を期待しているところでございます。
14ページでは、国内実績に基づく国際展開を記載しています。国内での新設がなかなか見込めない中、メーカー各社が世界市場にチャレンジしているところであります。この図は海外に現在、どれくらいの原子力発電の開発計画があるかというのを示したものです。アジアを中心に、原子力導入に対する動きが活発になっており、日本の技術に対する期待があるのですが、新興国の需要に応えるためにはやはり国内基盤の維持が前提であります。どの原子力発電導入国においても、現在の日本メーカーの技術力や経験に対する信頼は大きいのですが、やはりそうは言いながら日本の原子力政策は今後どうなるのか、日本の技術力や経験、人材は今後も維持されるのかということを諸外国は見ているわけであり、そこの信頼関係がないとなかなか任せてもらえないということがあります。15ページでは、そのような中で日本のメーカー各社が現在取り組んでいる幾つかのプロジェクトを書かせていただきました。日本の技術に対する期待は大きくあり、我々は1Fの教訓を踏まえて、世界で最も信頼できる安全な炉の原子力開発を欲している国に対してしっかりと提供していくということが我々の社会的使命だと思っています。いずれにしましても長期にわたってその信頼に応えるためには、やはり日本で継続的な原子力の基盤が見通せるかということが非常に重要であります。16ページでは、海外プラントの新設だけでは技術・維持には限界があるということを少し書かせていただいています。冒頭で、原子力の建設を支える人材やサプライチェーンの縦の広がりを説明しましたが、やはり海外のプラントであると設備の調達や据付工事は当然、海外のリソースを利用することになります。ここに書かせていただいているように、現地に近い分野というのは必ず海外ではローカライゼーションということで現地企業を使うということになりますから、原子力に関連する汎用技術を有する企業や地場企業の高度な技術・人材の維持に対する貢献が期待できないということであります。また、海外プラントの建設というのは、習熟した技術で習熟したものを建てるということですから、新しい開発要素を海外で培うことは厳しいところであり、人材をそこで育成することは難しいというふうに考えています。
17ページでは、原子力産業界で働くことの意義・魅力を書かせていただきました。ここではエネルギー安定供給への貢献や日本経済の発展への貢献、環境問題への貢献、国際社会への貢献と書かせていただきましたが、原子力を担うということは、国の施策といった社会的使命と課題の解決に向けて技術で挑戦することであり、非常に大きな役割を担いながら皆が仕事に携わっています。そういう使命感や熱い思いをこれからこの業界に入る人たちにどう共感してもらい、賛同してもらうかというメッセージを我々は発信していきながら産学官で協力しながら人材育成を図っていきたいと思っています。最後の18ページにまとめを書いていますが、ただ今説明した内容がそれぞれ箇条書にまとめていますので、説明は割愛いたします。説明は以上でございます。
(山口主査) どうもありがとうございました。いろいろとインプットしていただいたかと思います。それではただ今、吉村委員長から御説明いただきました産業界での取組につきまして、質問や御意見等お願いしたいと思います。では長谷川委員、お願いします。
(長谷川委員) プラントメーカーという立場として今回の説明では計装や制御の方に焦点が当てられたと思うのですが、中に入っている燃料や化学の基礎学力をどれくらい身につけさせればよいのかというところについて、私どもの大学では悩みの一つとしてあります。例えば再処理の分野では化学が結構必要だと思うのですが、プラントメーカーであればどのくらいの化学の知識が要求されるかについて、イメージでも結構ですので教えていただけないでしょうか。
(日本電機工業会 吉村委員長) 化学領域ですと、再処理だけではなく、現在1Fで苦労している水処理が大変重要な部分です。また、材料開発のところでも化学の知識が必要とされており、具体的な規模については数字にできませんが、特定の分野において専門的な化学屋が必要とされています。
(長谷川委員) プラントの保全やメンテナンスの部分については化学の知識が必要とされ、プラントメーカーとしても重要な分野であるかと思いますが、そういうところで活躍する人材を確保するために、プラントメーカーはどういうところまでの知識や人材を大学に対して求めているかについて、後でも結構ですので教えていただけますと我々が教育プログラムをつくる上で非常に有益だなと思いました。
(可児委員) よろしいでしょうか。
(山口主査) では可児委員、お願いします。
(可児委員) 私はプラントメーカーの研究所で化学の仕事に従事しており、そこでの現状を説明させていただきますと、化学といっても原子力で化学を学んできた人もいますし、一般的な化学工学や材料の分野といった原子力以外のところで化学の関連分野を学んだ人もいます。原子力固有の部分については先ほど吉村委員長からもお話がありましたが、入社後にいろいろと学ぶ機会がありますので、大学では基礎的な化学の考え方を身に着けてきていただけると、入社後も活躍していただけるのではないかと思います。また、大学で化学に関する機器の知識を持っていると、プラントメーカーでは設計やプラント運転管理をする部門において活躍していただけるのではないかと思っています。
(山口主査) 今の点はこれまでも議論になりましたが、例えば大学で研究に重点を置くのか教育に重点を置くのか等、産業界から見て大学の教育にどこまで期待するのかという大きな論点かと思います。原子力という総合工学から見ると、化学はこれまで余り中心に据えてこなかったテーマかもしれず、それぞれの分野で様々な御意見があろうかと思いますが、恐らくこれから中間まとめに向かっていく際に産業界が求める大学での教育の在り方や資格の問題について含まれてくるかと思いますので、これからも一つの論点として議論させていただければと思います。その他に御質問などありましたらお願いしたいと思いますが如何でしょうか。どうぞ、沢井委員。
(沢井委員) 本当は電力の方の御説明も聞いてからお伺いしようと思っていましたが、これからプラントメーカーの方は原子力のエンジニアの雇用について、総合職又は専門職のどちらに重点を置かれているのかについて教えていただけないでしょうか。というのは、例えば機械学会のCPDは、様々な資格を取ることができる一方、そちらへ注力すると会社の中での評判が悪くなるという日本的な雇用の環境によりやめてしまいました。原子力では上坂先生が中心となってカリキュラムの標準化やCPDを行っておられますが、これについては割とエンジニアを専門職として捉える方向であります。本日の御説明にもありましたように、海外進出となると、例えば日立の場合ですとホライズン・ニュークリア・パワーを買収して一緒に働くことになり、グローバルスタンダートでエンジニアを処遇していくことが必要になると思います。
私、最近びっくりしたことがありまして、東海村ですと近所に大規模な外資のホームセンターがあり、そこで比較的専門性の高い薬剤師の募集を見たところ、正社員とパートタイムの時給が同じでありました。正社員の場合、総合職のような考慮があってパートタイムよりも時給が高いのだろうと思っていましたが、そうではない雇用環境があるわけですね。それをこれから原子力を志す若い人たちにどのような形で提示するのかについて、CPDの先行きも含めてお考えを教えていただけないでしょうか。
(日本電機工業会 吉村委員長) 難しい質問ですが、恐らく両方の気がします。これまでアメリカのパートナーといろいろと仕事をする機会がありましたが、向こうは人材のローテーションについてコンピテンシーを明確にし、資格や専門性をアピールしながら何のエンジニアだということでもってジョブアサイメントやジョブローリングされていました。今後日本でもそのような専門職としてアピールしていく必要があると思いますが、実はメーカーにおいてはそれだけでは仕事が回らないので、専門性だけでなく、従来の枠組みの中で処理できないようなことに対してチャレンジでき、全体を束ねることのできるマネジメントの人材も必要であります。横断的なことを取りまとめ、問題解決の枠組みをつくってマネージしていくということには、その分野での専門的な経験と知識が必要であるため、これも一つの専門性だと思っています。従来の工学分野での専門性というと割と定義がしやすいですし、専門性を伸ばすためのガイドもしやすいのですが、技術をベースにしたマネジメント力をどのようにしてカバーしていくかというところが課題の気がします。
(山口主査) では、浜崎委員、どうぞ。
(浜崎委員) 先ほどの話題に関連してですが、資料10ページのスキル教育の中に技術士・プロジェクトマネージメント資格ということを書いていますが、今おっしゃた課題解決能力というのは技術士資格では相当重視している分野であります。最近の試験問題についてはホームページに掲載されていますので、御覧になったことのない方は是非見ていただければと思います。例えば、「あなたは新規制基準対応のマネージャーになりました。さあ、どう計画しますか。」という問題が出題されています。これを一体どのようにして採点するのかと心配になるくらい難しい問題が出されています。そういったこともあり、原子力学会の教育委員会もやらせていただいており、技術士資格の取得というのを継続研鑽の一環で奨励して、毎年実施する講習会では今年も45人に受講していただきました。原子力学会教育委員会の立場として是非、こういったものもツールとして活用していただきたいなと思っています。
(上坂主査代理) 原子力学会で今度セッションをやりますよね。プレス発表は行ったのですか。
(浜崎委員) 御紹介いただきましたので案内させていただきます。3月26日に原子力学会春の年会があり、そこでの教育委員会セッションで技術士資格を取り上げます。そこで今申し上げたことも発表し、最後には上坂先生に締めの挨拶をお願いしているところでございます。
(山口主査) では、森口委員、どうぞ。
(森口委員) 大学にいますので、学生の視点から述べさせていただきます。現在、原子力人材のみならず理系人材もかなり厳しい状況にあります。進学率の上昇に伴い、大学に進む18歳の人口が増えてきたのですが、それもいよいよ減少に転じるという2018年問題が現在懸念されています。また、ここ数年の傾向として文高理低が言われています。一時期は理系の人気が伸びた時期があったのですけれども、最近は文高理低で理系志望が少し減りつつあり、大学の先生方も実感されているのではないかと思います。そもそも理系を志望する学生が減っていく中で、原子力を志望する学生となると非常に厳しい状況になるので、その辺はむしろ文部科学省の方で理系人材の対策を行っているかと思いますので、それも良く踏まえてほしいなと思います。また、学生の数が減ってくる中でも基礎学力はしっかりとつけてもらうことが大事であると思っています。
また、大学の学生を見ていますと、そのときそのときに注目を浴びるものに対しての関心が高く、就職も当然ながらそうなっているということがあります。もちろん原子力にとっては非常に厳しい環境であり、もちろん頑張っていく必要があります。そういう中でやはり原子力の中でも、バックエンド対策については今後も長い期間が続くので、バックエンド対策について学生がやってみたいなと思うようなことをアピールしていく必要があると思います。
(山口主査) ありがとうございます。では、上坂委員。
(上坂主査代理) やはり国内のビジネスだけやっていたときは、恐らく専門職だけでよかったと思うのですけれども、海外展開を踏まえると国際的なビジネスのセンスも必要とされます。私はIAEAの人材育成の活動に携わっているのですが、その中ではエンジニアライジングマネージャーとマネージャーライジングエンジニアという2つのコースを作り、こういう科目を教えるべしというコンピテンシーエリアマップと、何を教えるべきかというアブストラクトを皆で議論してアップしています。例えばIAEAマネジメントスクールは、そのマネージャーライジングエンジニアのコンピテンシーエリアマップに合わせてカリキュラムが作られており、あと6週間コースはエンジニアラインジングマネージャーに合わせて作られています。吉村委員長とも話しているのですが、やはり企業での教育だと技術は教えられるけれども、国際的な展開等は一企業だけではなかなか教えることができないので、原子力人材育成ネットワークが重要であるということもおっしゃっていただいています。
(山口主査) ありがとうございます。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 私はここ数年、大学にて就職担当をしています。今年も就職活動が佳境に入っているのですが、プラントメーカーはものづくりの企業であるため、学生にとってはそこで働くことのイメージが非常につきやすいと思います。例えば日本製鋼所に見学に行った際には、そこではどこに納める圧力容器かという国ごとの納入先が書いてあったりして、それを見ると、いかにも様々なところに出てるなということが実感できるわけであり、学生にとってはそこで製品を作っていくことができるという実感を得ることができます。ですから、今はどちらかというと重工メーカーへの志望率が高い状況であります。そういう意味からすると、企業で働くことにおいて華々しく見えるものがあるというのは、若い人を引きつけることができると思います。ですから、いろいろな人が知恵を出し合いながら、ものをつくり続ける現場を見せ、アピールすることが若い人を引きつける一番大事なポイントではないかと思います。実際に、プラントメーカーでの見学会に参加した学生は、参加後に帰ってくるとやはりあそこへ行きたいと言ってたりします。
(山口主査) ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。どうぞ、五十嵐委員。
(五十嵐委員) メーカーの御報告ということで大変よくまとめていただいて状況もわかりましたし、これから必要なことも分かったと思うのですが、先ほどからの議論を伺っていて私にはやはり違和感というものがあります。どのような違和感かと言いますと、資料の13ページにまとめていただいているように、「原子力発電の事業計画が不透明では企業の研究開発投資が維持できない」という部分を置き去りにして議論が進んでいるような気がするということであります。ここの作業部会ではそこは考えずに議論する場なのかもしれないのですが、実際に先日の大津地裁の決定を見ても、原子力に関する一般への社会的受容が進んでいないと思います。この作業部会でもずっとそこの部分が不明確なまま議論をしているとともに、どのような人材がどれくらい必要かというところがはっきりしていない状況に、私としては議論に参加しづらい部分を感じています。ここにいらっしゃる皆さんは、ほとんどが原子力の専門家であり、原子力が今の日本にとって必要である現状を既に御存じであると思うのですが、ただ今申し上げた議論は必要だと思います。その部分の議論がいつできるのか、又は議論しなくていいのかというところが非常に気になりますので、どなたに向けた質問かは分からないのですが、私のこの辺の違和感をどのようにすれば解決できるのか、どなたか御教示いただければ大変幸いに存じます。
(山口主査) ありがとうございます。では来馬委員、どうぞ。
(来馬委員) 今おっしゃった件については、どなたかが答えていただければと思いますが、先ほどの長谷川先生のお話とも関連していますが、私も大学にて就職担当をしており、先日開催されました原子力産業セミナーに参加してきました。本来は木藤委員が言うべきことかもしれませんが、我々の学生はいつもどおりたくさん参加しましたけれども、全般ざっと見た感じでは参加した学生が少ないなという気がしました。原子力産業全体を支えているのは原子力を専門で学ぶ人材だけでなく電気や機械を専門とする人材で成り立っているところですが、五十嵐委員がおっしゃったように、「原子力はちょっとクエスチョンだね」というネット社会等を通した世間や社会の考えから学生は影響を受けていると思います。東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で、私の大学でも入学者が激減しましたが、5年を経てようやくこの春の入学者は、事故前まで回復するところまできました。そういう意味で、うちへ入ってくる学生については原子力の将来はどうなるんだろうという考えを持っているかもしれないけれども、いろいろな先輩からの意見を含めて、原子力に対して魅力や期待を持って入ってきていると思います。ですから学生にとっては、原子力に関するネガティブな情報がたくさんありますが、やはりプラントが必要だ、海外との連携が必要だ、もっと人材が必要だということをアピールする方法を考えていく必要もあるのではないかと思います。電気や機械等を専門とする人材へのアピールや巻き込んで産業を進める方法を考えないと、全く変化はないと思います。そういう意味でいくと、なぜ激減しているのか、それはどのようにしたら回復するのかということをいろいろな角度から議論していく必要があると思いました。
(山口主査) はい、ありがとうございます。吉村委員長、どうぞ。
(日本電機工業会 吉村委員長) 先ほどの話を聞いて、我々の議論の観点に余りなかったと思いましたので発言させていただきます。原子力人材を日本において今後どうすべきかということを考えるときの一つに、国際競争や海外との関係があるかと思います。多くの原発を新設していこうとする国においては、同時に人材の厚みを大きくしていこうとします。典型的な例が中国であり、現在、あのようなペースで発電所をつくりながら原子力人材を確保しようとしています。それで、日本が将来原子力としてどのようにして世界に貢献するのかということを考えたときに、私はプラント等のハードウェアを造る人材は、その規模に対抗するような規模に日本が追いつくべきであるという議論ではないと思っています。何が重要かというと、やはり日本が原子力で先端的な研究開発ができていくということが一番重要ではないかと思っています。メーカーの場合は、目の前でプラントを建てて事業として回していくということに対して人材の規模が設計され、人材の維持に努めるのですが、やはりそこだけを見ていても十分ではないと思います。一番懸念しているのは、我々が継続的に行ってきた新しい原子力技術や炉に対する研究開発規模が全体的に縮小していくことであります。そこはメーカーだけでは難しいところであり、日本の技術開発をどのように進めていくかというビジョンがないと維持が難しいと思います。
(山口主査) ありがとうございます。いろいろと頂きました御意見については、ここで一つ一つ答えるという性質のものではなく、これまでのヒアリングで御説明いただきました話をこれから論点として結びつけていく必要があると思います。本日、吉村委員長から説明いただきました話を踏まえると、これからはマネジメント能力というものが必要であり、メーカーとしてはOJTで行うので、機会創出を是非お願いしたいというような話でありましたが、今後の日本の原子力として、人材育成が先なのかビジネスが先なのかという話があり、議論が余りかみ合っていないところがありました。
それでお願いと言いますか、これから委員の方に是非議論いただきたいところがあります。吉村委員長は非常にうまく説明をまとめていただき、研究開発がメーカーとしても非常に大事だというお話をしていただいたのですが、ただ一方メーカーだけではできないのでというお話でありました。例えば先ほど、長谷川委員がおっしゃったように、R&D等をとおして、産業界としての魅力をいろいろと打ち出していくことができると思いますので、このようなビジョンや方針というものを国としてしっかり打ち出してほしいなと思います。研究開発が大学教育や国のエネルギー政策とうまく結びつけることについて、これから先はそういう議論になればいいなと思いました。そういう意味で今日は様々な意見を出していただいたのですが、まだうまく繋がっていないという印象を受けており、なかなかこの時間だけでうまく整理できないのですが、次回以降は中間まとめに向けての議論もありますので、本日頂いた御意見については考えをまとめていただいて、また御意見や御提案をいただければと思います。本日の吉村委員長の説明を踏まえて、メーカーからのこういう声がちゃんと国の施策や大学の教育とうまくリンクができていないというのが皆さんの御指摘のポイントかとも思いますので、メーカーからも積極的に発信していただき、うまくつながるように努力していただけたらいいかなと思いました。ただ今、メーカーから幅広な御意見を頂きましたが、逆に例えばメーカーにこのような人材育成の取組を行っていただいたら如何かというものがもしありましたら、御発言をいただけないでしょうか。少なくとも今の技術力やメーカーの力というのは、人材育成に欠くことができないものなので、組み込めていけるようになればと思いますけれども如何でしょうか。もしよろしければ、次の電力会社からの御発表後でも御意見をいただければと思います。では、吉村委員長、どうもありがとうございました。
では続きまして、和佐委員から電力会社の取組等について御説明をお願いしたいと思います。
(和佐委員) 日本原子力発電株式会社の和佐でございます。まず、発表に当たりまして一言申し上げさせていただきたいのですが、先週の金曜日の3月11日をもちまして震災5年を迎えました。実はその3月11日、帰還困難区域であります富岡の方に行ってまいりました。そこのところは5年前と変わらず、建物はあるがまだ人は戻れないというところであり、原子力に携わる人間としても決して他人事ではないと改めて思った次第です。今後も真摯に皆様の声を聞きながら対応していきたいと思います。それでは、発表させていただきます。
資料の仕立てですが、まず電力会社が行う高専・大学生への人材育成の取組について御説明をさせていただきます。1ページ目を御覧いただければと思いますが、人材育成について大きく2つに分かれています。一つ目は電力会社が募集をかけて実施しているインターンシップであり、二つ目は高専や大学からの依頼又は電力会社が企画した研修であります。この研修の内容としては、発電所の視察や発電所員がトレーニングで使用する研修施設を利用した研修であります。研修を実施するに当たってはお金がかかるということで、予算につきましては文部科学省や経済産業省の公募や学校の予算の中で依頼を受けて行っています。ただ、これらの研修については、受講学校や受講人数が限定されているところであります。また、公募による研修については今までの議論にも出ていますが、採択期間を終えると予算上、同じ内容での研修継続が難しくなっています。括弧書きで書いていますが、国内学生人材育成については、産官学が連携して教育を行う体系的な教育プログラムの継続性が必要であると思います。教育プログラムといっても、企画して実施する特化型のものもあれば、ベースとなる基礎型等があると思いますが、学校や現場の産業、全体を統括する国が縦割りでなくてどこか一つのテーブル上で議論をして仕組みをつくり、評価できるようなシステムが必要かなというふうに考えています。2ページ目では、当社が行っています研修の例を挙げています。先ほどの議論で、現場や魅力を伝えてほしいという御意見がありましたが、この研修では研修センターでの教育だけでなく、実際の現場を見てもらうところに重点を置いています。1番から8番まで書いていますが、1番から3番については、当社が企画したものでございます。これらについては、原子力を専攻する方に更に興味を持っていただくための研修と、原子力以外を専攻する方に原子力発電所というところがどういう場所で自分の学ぶ専門がどのようなところで活躍できるかというところを見ていただく研修の二つに大別することができます。また5番については、今後、長期に及ぶ廃止措置で活躍が期待される人材育成として協力しています。あと6番から8番については、原子力を専攻する学生が座学等をより理解するために、発電所の実機と同じシミュレーターを活用した研修であり、3ページには研修風景を写真として載せています。これは、廃止措置技術研修を東海第一発電所で実施しているところの写真です。東海第一発電所は既に停止して燃料はありませんので、左上の写真中に、蜂の巣のようなところは炉心になります。また、右下の写真は中央制御室を見学してもらっている写真となっており、左下の写真がシミュレーター実習風景になります。このシミュレーターは当社が独自開発したものであり、PWRでは敦賀2号機、BWRでは東海第二発電所のシミュレーションを実施することができます。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故の事象挙動を検証できるようになっています。
4ページ目に移りますが、ここでは電力会社自らが社員に対して行っている教育について、どのような課題を持ちながら実施しているかについて紹介をさせていただきます。原子力発電所では教育というのは、先ほど吉村委員長から御説明がありましたように、OJTが主になっています。そのOJTを主にしながらOff-JTによる教育を充実させているところであり、資料では業務知識・技術の標準化を挙げていますが、これは原子力人材育成ネットワークによる「原子力人材育成の課題と今後の対応-原子力人材育成ロードマップの提案-」で御提案いただいているものでございます。電力としては、これに対して一つ一つ検証しながら補填するべきもの、新たに取り組むべきものというところを、優先順位をつけながら作業を進めているところであります。各電力では、それぞれが教育のレベルを決め、仕組みを整備して研修を実施しているのですが、それが果たして日本の原子力においてどのようなレベルになるのかという標準レベルという指標が必要であろうということで作業を進めているところであります。さらに、システマチックアプローチトレーニングというもので、一つ一つ分解しながらそれに対する教育というのを決めていく教育体系があります。例えば時計の場合ですと、機種によってぜんまい仕掛けが異なるために、それを分解して点検する方法が変わり、そのための教育もまた変わります。また、機器や技術の進歩に伴い、教育自体のレビューもどんどん膨らみ、コアとなるところの教育が薄まってしまうというところで、この標準というところは、ベースとなる技術やそれをどう確認するかというところに絞り込んだイメージで考えていただければと思います。5ページでは標準化の範囲を載せていますが、これは保安規定の業務で定める運転管理、燃料管理、放射線管理、放射線廃棄物管理、保守管理、水質管理として挙げています。この表下にあるWANOというのは、世界標準とされる欧米での標準的なプログラムであり、このWANOと日本の電力会社で行っている業務を今、照らし合わせて実施しているところであります。6ページ目ですが、標準化の目的と手順作業を示しています。左手にある世界標準のWANOと、右手にある日本の電力の保安規定を照らし合わせながら、標準的なコアとなるべき教育を抽出して、それを標準版として作成することを進めています。以上が電力として進めている代表的な取組であります。
7ページ目では、原子力発電所で求める人材セクションを載せていますが、ここは先ほどから御議論がある原子力発電所で働くための魅力へと繋がるところかと思います。電力会社の場合ですと、原子力発電所の建設と運転、さらには今後発生する廃止措置という3つのセクションの中で人材を求めているところであります。この中で魅力を伝えることはなかなか難しく、書き物で御説明しても学生たちになかなか理解いただけないので、先ほど説明しました公募事業をとおして魅力を伝えているところであります。8ページ目の既設原子力発電所運転管理というところでありますが、現在、再稼働申請をしている原発43基でございます。その中でも九州電力の川内1・2号機と関西電力の高浜3・4号機については再稼働実施炉となっていますが、高浜3・4号機については先ほど議論がありました大津地裁による判決がありますので、今後、それに対して真摯に対応するとともに、新規制基準対応を進めているところでございます。3.11以降、原子力発電所の再稼働がなかなか進まない中で魅力を伝えることは難しいですが、様々な基準や国民の皆様が考えているところに応えながら、原子力発電所の魅力を伝えていけたらと考えています。発電所の運転においては、抽象的な言い方をすると分かりづらいので、どういうものが技術として必要なのかをまとめており、炉心・燃料管理の他、運転管理については原子力専攻の学生が活躍してもらえると思います。また、保守管理ですと機械・電気専攻の学生、環境・放射線管理ですと化学分析というように、原子力だけではない様々な学生に活躍してもらえると思います。環境・放射線管理の所帯は、各電力においては小さいのですが、この化学分析という水質管理がプラント運転にとって非常に重要なセクションとなりますので、優秀な学生に来ていただきたいと考えています。続いて発電所を運転するに当たってですが、起動した後も長期にわたって健全であるという維持管理が必要になります。この維持管理は定められた手順で進められるのですが、それに加えて自分たちが日頃の経験や海外の知見から出されたアイデアを基に新たな技術開発に取り組んでいます。例えば敦賀発電所の系統ですと、炭素鋼が酸素リッチになりますと酸化してしまうということで、脱気をして酸素のない状態にしていました。ただ余りにも酸素がないとかえって酸化が起きてしまうので、系統を少し脱気した後に酸素を入れるということを独自で考えて実施しています。給水系の出口のところで少し酸素を入れ、わずかな酸化被膜をつくることにより、それ以上の酸化を防ぐものであり、化学分析の現場の方のアイデアであります。次に廃止措置では、東海第一と浜岡1・2号機の他、敦賀1号機、美浜1・2号機、玄海1号機、島根1号機の5基が新たに廃止措置を行う計画であります。さらに今後につきましても、経営的判断によって計画停止炉は継続して増えることが予想され、廃止措置作業が必要となります。さらに、計画停止に伴わない東電福島第一原子力発電所の廃炉措置が必要となります。この廃炉措置というのは、学生にとっては取壊しや後始末のようなイメージを持たれてしまい、自分たちで新たな技術開発を行うというイメージがしにくいのかなと感じています。ただ廃止措置というのは、30年オーダーで実施されるものであります。そうすると、発電する期間とほぼ変わらない期間にわたって廃炉作業が実施されることになります。しかも廃止措置は海外においても実施されていますが、いかにして安全かつ効率的、合理的に進めていくかというプロジェクトマネジメントが重要視されています。弊社におきましても、廃炉措置に携わる社員については、このプロジェクトマネジメントの資格取得を推奨しています。海外で学んだりして専門的な知識を身につけるだけでなく、自らが廃炉措置のプロジェクトを進めていくという責任感を持たせながら、現在取り組んでいます。先ほどの繰り返しになりますが、廃止措置には余り作業がないのではないかというイメージを学生は抱きがちでありますが、廃炉措置という作業だけでも原子力を起動するに当たって必要とされる作業に匹敵する量が必要であり、11ページ目にこの廃止措置の具体的な技術や作業について記載しています。解体工事計画や解体で出てきた廃棄物の処理計画、再利用のためのクリアランス計画、壊すに当たっての安全評価が必要となるとともに、発電とは違い廃止措置というのはお金を生む作業ではありませんので安全を大優先にしながら効率的に実施するための廃止措置費用の確保や国等の審査への対応に取り組んでいるところでございます。12ページ目の資料は廃炉研修で紹介した資料ですが、東海第一発電所には大きな熱交換器が4基あり、その一つの解体工事を紹介したものであります。工法としては、熱交換器をクレーンで上から釣り上げた状態で下から部分的に切るというだるま落としのような工法を当社が新たに考えて取り組んでいるところです。この技術を今後、PWRの廃炉でも活用できないかというところで、トライアルで実施したものでございます。今後は2基目の解体工事に取りかかるのですが、ここでも別の工法を試行することによって様々な知見を高めていき、安全かつ効率的な工法を開発していきたいと思っています。13ページ目には、東電福島第一原子力発電所廃止措置に関する業務を示しています。14ページ目に記載していますが、電力会社は、JAEAやプラントメーカーとともに、技術研究組合国際廃炉研究開発機構の組合員として、日本の技術を集めながら1Fの廃炉作業に取り組んでいるところであります。この中の研究開発で挙がっているのは、使用済燃料プールからの燃料取り出しに係る研究開発であります。中が見えない状態で如何にして作業を進めるかということや、溶融した燃料デブリをどのようにして取り出すかということや放射性廃棄物の処分があります。このような研究をする場所として、JAEAの楢葉遠隔技術開発センターがつくられています。また、計画停止炉及び東電福島第一で培う廃炉措置技術は、将来の海外における廃止措置工事にも大きく貢献できると思います。ただ、既に海外においても様々な手法で廃炉が進められており、国によって環境や手法が違いますので、そういったものを取り入れながら日本にとって一番良い方法を考えていくことによって、海外での廃止措置に取り組むことができると思います。15ページ目が国際廃炉研究開発機構の役割のイメージを示したものです。先ほど説明しましたIRIDというところが、研究開発の役割を担っているところであります。楢葉遠隔技術開発センターの施設を見学させていただきましたが、ドーナツ型でプラントの一番下にあるサプレッションチェンバーという大きな設備からの漏水をいかに防ぐかというところを研究するために、東電の実機と同じトーラスのサプレッションチェンバーが設置されています。また、それが収まっている施設のフロアの高さや階段、形状も全て東電の炉と同じ様にしてつくられています。実際に今後、そこにセメントを流した後に分解し、どのようにセメントが流れたのかという、計算コードや手法の事前検証を行うこととしています。また、実際の現場では高線量の場所がありますので、どのようにして遠隔操作を進めていくかという研究施設が提供されています。
続いて16ページ目では、新設炉について説明させていただきます。現在はABWRという炉の建設をJ-POWERが進めています。先ほども吉村委員長から説明がありましたが、技術伝承をするに当たっては、プラントメーカーや電力に限らず、規制当局にとって重要な機会であります。この新設については、様々なセクションの人間や専門性を繋げながら、大きなものを造り上げていくので、このようなところで学生の皆様方にも魅力ある現場としてアピールできるのではないかと思います。
最後になりますが17ページ目では、電力が学生に求めるものや人材像を記載しています。これは平成24年4月の原子力人材育成ネットワーク 実務者段階人材育成分科会の資料から抜粋していますが、大学等の高等教育機関に原子力産業として期待する事項は、基礎学力、専攻分野の基礎知識、語学力の他にシステム思考力や現場力であります。このシステム思考力というのは、自分の専門だけでなく専門外の知識も広げていくことによりグローバルに物事を見ていくということであり、専攻分野の基礎知識に繋がることかと思います。吉村委員長からも御説明がありましたが、原子力発電所というのは、機械や電気等の技術が複合した巨大システムであり、原子力のみでなく様々な専門のスペシャリストが活躍する場所であります。ただ、どのようなものを大学で学ぶべきかというところですが、それはその人の適材適所があり、原子力を専攻したからといって原子力の知識が求められる場所に配置されるのでなく、マネジメントに携わる場所に配置される場合もあります。会社に入ってからセクションごとに教育プログラムがありますので、そこで学んでもらうことになります。ただ、教育プログラムで新しい技能を身につけるに当たっては、基礎ができてないと次の応用へはなかなか難しいものであります。機械工学分野を例にとると、材料力学、水力学、熱力学、機械力学の4力学のベースがきっちりとできた学生であればその後、十分対応できると思います。一方、前回までの議論でありましたが、研究炉の停止に伴って大学生が研究炉で研究できない現状につきましては電力として危惧しています。電力は発電所を運転しますので、そこで経験を積むことができるのですが、実際に座学だけでなく、自分たちで考えて失敗を繰り返すことや工夫して新しい発想を養いながら研究開発をすることが非常に重要であり、これが先ほど説明したシステム思考力や現場力につながると考えています。また、グローバル化による語学力についても重要となります。海外の原子力産業と競争・議論するに当たり、この語学力が弊害になってなかなか議論ができないということが見受けられ、電力としても語学力に力を入れているところであります。弊社におきましても原子力を考えている新興国から、プラントをつくるだけでなく、原子力のプラントを安全に運転する人材育成も提供してほしいというお話が来ており、こういうところに対しても電力のノウハウを提供して貢献できるかなと思う一方、やはり語学力がないとコミュニケーションがとれないというところであります。
現在はプラントがなかなか運転再開ができておらず、原子力における魅力を伝えるのはなかなか難しいところではありますが、電力としては現場を広く公開しながら見ていただくなど、自分たちで取り組めるところを探していくことが大切であると思います。また、廃炉措置においても、運転に匹敵するぐらいの人材が必要であるということも説明させていただきました。すぐに新設はできませんが、今後は国内において新設を行い、そこでのノウハウや実績を積むことが重要であるということ、そのためにも学生の皆様には、基礎学力と専攻分野の基礎知識、語学力というところに力を特に入れていただきたいと考えています。以上でございます。
(山口主査) 和佐委員、どうもありがとうございました。それでは、御質問や御意見がございましたらお願いします。どうぞ木藤委員。
(木藤委員) ありがとうございました。吉村委員長と和佐委員の御発表を聞きまして改めて思いましたことは、震災があり、原子力産業を志す若い方が減少している状況である一方、海外では中国などでの大きな原子力開発が進められ、そこから日本への原子力の技術協力への期待が続いており、原子力業界が変わってきているという御説明だったと思います。いつも人材育成で一緒に仕事をさせていただいており、なかなか申し上げにくいところではありますが、私たちはこの人材育成については、何をどのように変えて対応していくのかというところが余り変わってないと改めて思わざるを得ないと思います。というのは、今まで数十年にわたって原子力発電を安定的に進めていくことが一番の目的であり、それが魅力であったという御説明であり、今はそれができないので困るため、では新しくつるくしかないという御説明に聞こえました。これまでの反省も含めて思いましたが、それですと変化に対応できていない状況にあると思います。つまり、新しくつくることはなかなか難しいから、あの福島の事故の教訓を踏まえて、安全への技術開発により投資をし、今までになかった新しいところにも研究開発の投資をし、吉村委員長がおっしゃった従来の枠でないところにも投資をし、そこに人材が必要であり、是非若い人に来てほしいと説明することがなかなかできていないのだなと思いました。先ほど来馬委員の御発言でもありましたが、原子力産業セミナーという合同企業説明会を産業界で開催し、来馬委員からも学生を連れてきていただきました。しかしながらお話でもありましたとおり、参加者が減りました。集計後に最終的なまとめを行う予定ではありますが、企業ブースは増えた一方、参加学生数は昨年の250人から188人へ減少しました。イベントへの参加数なので、その結果をどのように見るかというのはなかなか難しいのですが、一つの指標にはなるかなと思っています。企業ブースにおいても人気のあるブースやそうでないブースがありましたが、それは有名だからということでは必ずしもないと思いました。その企業でどのような仕事が待っているのかということを学生がイメージしやすい企業へは、学生が行くという気がしますので、先ほどの話にありましたが、電力やメーカーの企業から、我が社にはどのような学生に何人来てほしいということをはっきりと言う必要があるのではないかと思いました。原子力産業協会は、原子力人材育成ネットワークの共同事務局なので、是非これからも力を合わせながら、そういう方向で進められたらと思いました。
(山口主査) 吉村委員長、和佐委員から今の御意見について何かございますでしょうか。和佐委員、どうぞ。
(和佐委員) どれだけの雇用があるのかという数字は見通せないところであります。ただ先ほども言いましたように、3.11で停止していたプラントが4基再稼働を果たし、今後更に他のプラントも再稼働を目指しているところであります。3.11を受けて定められた新規制基準に従って取り組むものが非常に多くなり、発電所で必要な要員も増えることになると思います。そういったものをもう少しわかりやすく御説明できればというふうに思いました。
(山口主査) 他に何かございますか。吉村委員長、どうぞ。
(日本電機工業会 吉村委員長) 先ほど長谷川委員からも御発言がありましたように、海外の建設の機会というところが、メーカー側が発信しやすい部分であり、学生も結構興味を持ってもらえていると思っています。ただ、先の長い研究開発ニーズ等のアピールについては、私どももこれから考えていく必要があると感じており、そこは御指摘のとおりだと思います。今までなかなか魅力の発信が積極的にできていなかったことについては、反省すべきところかもしれないと思った次第です。
(山口主査) ありがとうございます。今の木藤委員の御発言については、今までもそのような意見が出されていたのですが、ただ、産業界から発信せよと言ってもそれはなかなか難しい面もあり、これまでも指摘が出ていた国の考え方や、大学の在り方を含めて連携して進めるべき話かと思います。学生から見ると自分たちの就職先ということで、そこが一番目に見えるので出してほしいということなのですが、決してどんどん出してほしいという話だけではなく、国を含めた連携体制を含めた課題だと思います。他にはいかがでしょうか。どうぞ、中島委員。
(中島委員) 今、山口先生がまとめられたのでもういいかなと思いましたが、例えば電力会社は何人欲しいと言っても、やはり学生は自分の一生の職場を決める時に新規制基準の対応だから人が要ると言われても、それが終わった後はどうするのかということを考えてしまうわけであります。そうすると先ほど五十嵐委員が御指摘されましたように、将来的にわたって日本は原子力利用をどうするのかというところがはっきりしないまま、どれだけと言うことはなかなか難しいのが現状であります。この次の資料だと思いますが、資料3での原子力人材育成に当たっての基本的な考え方と課題の中で、将来必要となる原子力人材の見通しの明確化というのが挙がっており、そこの議論が不透明なまま、どんな人材ですかと言われてもやはり難しいと思います。私個人は必要だとは思っていますが、仮に国として原発をフェードアウトしていくということであれば、海外は別としてやはりそれに向けた人材育成しかできないと思います。そういうところがグレーなまま議論するのは難しく、そういうままで電力やメーカーに何人ですかと要求しても、答えるのが難しい質問であると思います。この作業部会でどこまでやるかは調整していただければと思いますが、多分皆さんの頭の中に同じような答えがあるのではないかなと思います。
(山口主査) ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。森口委員、どうぞ。
(森口委員) 同じ意見ですが、せっかくこの作業部会でまとめるわけですので、ある程度具体的な方向を出す必要があると思います。先ほどの五十嵐委員もありましたように、現実的に見ると新規にということはなかなか難しいですから、そういうことはある程度前提に置いて、その中で何が必要かということをやっていく必要があると思います。現在の日本で抱えている課題として必ず行わなければならないことは、廃炉や廃棄物の問題でありますので、その辺についてはある程度、研究開発するものはないのでしょうか。やはり大学サイドもそれをしっかりとやるとかをはっきりと打ち出していかないと、もう既に原子力を始めた以上、必要なものですから、そこをかなり必要だと言っていく必要があると思います。実際に、電力でもそこが非常に重要だと言っているわけであり、じゃあそうなったときにどういう技術開発が必要で、どういうことを大学サイドで行う必要があるのかということも議論する必要があると思います。いずれにしても、抽象論ではなく具体的にどの分野でどれくらいのニーズがあるのかということを詰めていく必要があると思います。
(山口主査) ポイントをクリアに御指摘いただいてありがとうございます。全くそのとおりであり、これから是非そういう方向で進めたいと思います。他に御意見はいかがでしょうか。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 感想ですが、17ページ目に、具体的にどういうものが必要かということを書いていただいて、非常に有り難いなと思いました。また、原子力人材の将来像がどうなるのかというところが一番問題になっていると私も認識しています。以前は電力会社というと、非常に就職の人気が高いところでありました。それはなぜかと言いますと、電力供給をしているというそれぞれの社員のプライドが学生たちに伝わり、電力会社に行きたいなと思ったわけであります。自信喪失ということもあるかもしれませんが、むしろ今、安全で当たり前というところを自らのプライドとして電力会社の方が学生たちに語れるかということなのだろうと思います。社会全体からのリスペクトとプライドというのが、若い人がその職を選ぶ一つのポイントではないかと思います。安全が当たり前であり、それでベースロードをきちっと確保していくということに対して、原子力がどのようにして役割を果たし、自分たちがどのように関わっていくのかということを若手の社員たちが学生に語っていただけると、志望者が増えていくのではないかと思います。具体的に物がなければ、じゃあ具体的にこういうふうにやることがいいんだという、理想像のようなものを輝いて語れるような社員教育をしていただくと、学生たちもどんどん行くのではないかと思います。
文部科学省の会議で発言するのは違うかもしれませんが、規制側の人材育成もよく言われています。規制側であろうが開発側であろうが法に従わなければならないのですが、我々工学部の人間にとっては工学系の知識はある一方、法律の解釈については全く駄目であります。工学とは違いますが、やはり法律には精神があり、それに基づき我々はこうやっているということを学生に伝えると、安全に運転することに対するプライドになるのではないかなと思います。ですから、新規制基準対応において、ひたすら従えばいいという訳ではなく、それに対してどのように向き合っているのか、その結果として何が得られるのかという前向きな考え方ができるような教育はないのかなと私自身は思っています。
(山口主査) ありがとうございました。その他に御意見はございませんでしょうか。どうぞ、和佐委員。
(和佐委員) 恐らく個人的な意見になるのですが、先ほど五十嵐委員がおっしゃった違和感について、国内だけではなく海外も原子力発電の利用というところがあるのかなと思います。それに対して一体、日本の原子力の技術というのがどのようにして関わるかというところが大事であると思います。国内だけを見るのではなく世界を俯瞰し、そこに対して日本の原子力技術がどのように関わっていくかというところのビジョンを持っていくと、国内においての原子力の役割や方向性を出すことができるのかなと思います。それを議論するには、やはり国もそうですが、アカデミアである学校と産業界が同じテーブルの中で真面目な議論をしていかないと方向性を示すことは難しいと思っています。
(山口主査) 他にはいかがでしょうか。沢井委員、どうぞ。
(沢井委員) 本日、電力の方から御説明を頂いて少し違和感がありました。先ほどの説明ではチャレンジングなところに力点を置いている印象であり、長谷川委員が指摘された安全に運転しているというプライドを持っているという部分も御説明いただいた方が良いのではと思った次第であります。また、挑戦的なことを行う人のニーズがあるような印象を受けたのですが、安全を確保する人材が継続的に供給されることが極めて大事と思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。
(山口主査) 今の御質問と関係してですが、親委員会である研究計画・評価分科会のコメントで、大学生の人材育成はいろいろと分かったが、社会人の人材育成はどうですかという御指摘がありました。今までそういう議論はなく、吉村委員長の説明でもOJTで行うとの御説明でしたが、例えばそういう社会人の人材育成をもう少し体系的にやる必要があるとか、沢井委員が御指摘になった、どういう分野の人材をどれだけ社会人として就職した後に育成するかというところも、今後の議論のポイントの一つかなと思いました。今の御質問でもし、お答えがございましたら一言いただけないでしょうか。では和佐委員、どうぞ。
(和佐委員) 詳しい説明は難しいのですが、電力も一電力で物事を考えるのではなく、やはり国内の電力全体で人材育成を議論しています。その中で当然、専門的な分野もあるのですが、やはり根本は安全・安定運転であり、それを守るための技術と教育に現在取り組んでいるところであります。テクニカルではない部分については、JANSIも入っていただきながらいろいろな教育というのを開発しているところであります。弊社におきましても3.11を受けて、専門的な技術力を高めるためのテクニカルな訓練を実施している一方、それに対してあなたはどう考えるべきかという思想的なものを考えるソフトスキル研修については、社内でも取り組んで進めているところです。漠然とした言い方で申し訳ないのですが、電力は個々の電力で物事を考えるだけでなく、全体を俯瞰して原子力発電所というところのあるべき姿や人材育成を考えていくべきと思います。
(日本電機工業会 吉村委員長) OJT以外の教育というのは、原子力人材育成ネットワークで実施するプログラム等の外の教育機会を活用しています。例えば海外人材の育成のプログラムについては、早稲田大学とも一緒になって実施していますが、海外も国内も共通で扱われるマネジメント教育については、メーカーは積極的に人を出しています。国内にいては、グローバル環境下での経験を積むことはなかなかできないので、そういうところが今、外に求めている分野になっています。
(山口主査) ありがとうございます。時間になってしまいましたが、既に中間まとめ骨子案の議論も大分していただいたと思います。和佐委員の御説明について質問等がなければ次の議題に移りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
では、事務局からその他の議題として、資料3を御説明いただきたいと思います。
(上田課長補佐) それでは、資料3の説明させていただきます。本作業部会では夏頃をメドに中間まとめの取りまとめができればと思い、これまで議論を進めてきたところであり、その論点については参考資料2で整理しているところであります。これから中間まとめの取りまとめに向けて議論を進めるに当たって、まず議論のたたき台で事務局の方でまとめたものが資料3でございます。1.では「はじめに」を書いた後に、2.では「原子力人材を取り巻く状況」として、これまでの原子力を取り巻く現状のデータ整理に触れた上で、3.では「原子力人材育成に当たっての基本的な考え方と課題」をまとめて書かせていただいています。(1)では「人材育成に関する基本的な考え方」として、原子力分野で活躍する人材について触れた後に、東日本大震災後の状況を踏まえた既存プラントの安全維持や廃炉、廃棄物減容化など、原子力分野が抱える課題の解決のための人材育成としてまとめています。それから本日の議論にもなっています社会的受容性の確保についてもまとめています。それらに対して、人材育成に取り組む各機関の役割を(2)でまとめています。(3)では、「原子力人材育成の課題」として、将来必要となる原子力人材の見通しの明確化や施策の継続性、それから関係機関の連携の在り方や研究・教育を行う施設等の人材育成の環境に関する問題がこれまでの作業部会で出されていると思っています。裏ページの4.では、「今後の施策の方向性」として、課題に対する施策の方向性を箇条書でまとめているところであります。これまでの作業部会では、様々な論点が出されており、夏までにまとめることは難しいと思っています。その辺は継続的議論を続けていくべきこととして、5.の「その他」として整理しています。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございます。本日は時間もございませんので、大きな全体構成について意見をまず伺い、各項目については適宜追加していけばよいかと思います。また、これまで出された意見をつなぎ合わせていく作業がこれから必要だと思いますし、その上で森口委員から御指摘がありましたように、具体的な施策としてきちんと提言ができるように進めていく必要があると思います。事務局から資料3の構成について説明を頂いたところですが、大きな構成を変えた方がいい等の御意見はございますでしょうか。森口委員、どうぞ。
(森口委員) 1点だけコメントをさせていただければと思いますが、まとめる際には、具体的に誰がいつまでに何をやるというのをはっきり書かないと意味がありません。私も役所にいたときにはそうしましたが、とにかく抽象的な記載だと全く意味がなく、誰がいつまでに何をするということをはっきりと書く報告書にしてもらいたいと思います。
(山口主査) ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。どうぞ、上坂委員。
(上坂主査代理) 今日の議論の中でも、学生をいかに引きつけるかという話がありましたが、それは理工分野のみならず、リスクコミュニケーション等の文系分野も含めてだと思うのですが、そうするとやはり原子力発電だけで捉えるのではなく、放射線応用や医療応用等まで広げ、多くの学生に関心を持ってもらうという視点がないと、いい学生はなかなか集まらないし、やはり文部科学省で議論することが必要かなと思います。
(山口主査) ありがとうございます。分野横断・連携をとおして入り口を広くするということかと思います。他にはいかがでしょうか。どうぞ、五十嵐委員。
(五十嵐委員) 先ほどの私の発言に対して、様々な委員の方から御発言いただきましてありがとうございます。皆様、問題は共有しているという認識を持ちました。今後、これで議論を進められたらと思うのですけが、やはり原子力ありきや再稼働ありきで議論を進めてしまうと、ますます乖離してしまうというところを危惧しておりまして、なぜ原子力が必要なのかということをもっと丁寧に説明していく必要があるのかなと感じました。
(山口主査) ありがとうございます。人材が必要だから建設が必要だみたいな順序の逆の問題がよく指摘されており、五十嵐委員の御指摘の点は十分踏まえて議論させていただきたいと思います。他にいかがでしょうか。
(五十嵐委員) 追加で失礼します。先日、親会の研究計画・評価分科会に出席し、第5期科学技術基本計画において、原子力は国家戦略上、重要な技術分野であり、原子力科学技術委員会を中心に議論を進めていくこと等が議論されました。科学技術基本計画自体に原子力という記載はなかったのですが、文部科学省の方で挙げられたということで私も重要分野かとは思います。ただ先ほども申し上げましたように、大変厳しい原子力規制委員会の新しい基準に適合したにも関わらず、今回このようなことがあったことを真摯に受けとめる必要があるかと思いまして、方針を決めたからということでは、まだまだ足りないかなと思います。先ほど来馬委員がおっしゃったように、人材の議論の方から、状況に対応したものが見えていくのかなと思いました。
(山口主査) ありがとうございます。他にいかがでしょうか。どうぞ、木藤委員。
(木藤委員) 原子力人材という言葉をもう少し丁寧に説明し、それを使っていった方がいいということを最初の頃に宮浦先生がおっしゃっていたかと思いますが、とても強く印象に残っておりまして、そういうことも考えていただけたらと思います。
(山口主査) 他にはいかがでしょう。いろいろと留意すべき点や重要なポイントを出していただきましたので、この中間まとめの骨子案はこういう構成で進めるとして、その中のドットで幾つか書いているポイントは充実させていくということで、事務局とまた御相談の上、議論の材料を提供差し上げたいと思います。それでは最後にその他として事務局から連絡事項等がありましたらお願いいたします。
(上田課長補佐) 本日は長時間にわたりまして、大変ありがとうございました。次回の日程につきましては調整をさせていただいた後、改めて事務局から御連絡させていただければと思います。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございました。次回は中間取りまとめの骨子案をしっかりと議論する場にさせていただきたいと思います。以上をもちまして、第5回の原子力人材育成作業部会を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。

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研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付)