原子力科学技術委員会 原子力人材育成作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年7月7日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3階 2特別会議室

3.議題

  1. 原子力人材育成作業部会について
  2. 原子力人材育成を取り巻く状況について
  3. その他

4.出席者

委員

山口主査、上坂主査代理、五十嵐委員、可児委員、木藤委員、来馬委員、沢井委員、中島委員、長谷川委員、浜崎委員、宮浦委員、森口委員、和佐委員

文部科学省

田口研究開発局審議官、増子原子力課長、髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)、上田原子力課課長補佐

オブザーバー

中富経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部原子力政策課課長補佐

5.議事録

(上田課長補佐) それでは定刻となりましたので、ただいまから第1回原子力人材育成作業部会を開催いたします。本日は御多忙にもかかわらず本会議に出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は原子力人材育成作業部会の最初の会議ですので、冒頭は便宜的に原子力課の上田が議事を進めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
本作業部会は、原子力人材育成に関する現状と課題を踏まえた今後の原子力人材育成に係る政策の在り方について調査・検討を行うことを目的とし、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力委員会の作業部会の一つとして本年4月に新たに設置されました。
まず初めに研究開発局審議官の田口より御挨拶させていただきたいと思います。
(田口審議官) 皆さん、おはようございます。研究開発局で原子力を担当しております審議官の田口でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
本日は委員の皆様におかれては御多忙の中、本作業部会に足を運んでいただきありがとうございます。原子力の人材育成につきましては御承知のとおりかもしれませんが、数年前に東大の原子力工学科がなくなったところから関係者の中で問題意識が生じてきているところでございます。東京電力福島第一原子力発電所事故の前、当時は原子力ルネッサンスという言い方をされていて、これから原子力をもっとやっていかなければいけないのに原子力を志望する学生あるいは大学の中で学ぶ学生というのが減ってきたということで、そのための人材が足りないというコンテクストの中で議論をされたことがございます。そのときはここにいらっしゃる委員の方にも御協力いただいていますが、原子力産業協会を中心に関係機関連携で幅広く人材育成を図っていくための原子力人材育成ネットワークというものをつくりまして、今日に至っていると思います。
一方で東京電力福島第一原子力発電所の事故後、原子力が社会との関係で更に厳しい状況になるとともに、原子力発電所の安全規制や福島原発の廃炉の問題で人材は前にも増して必要になってきているということで、この作業部会を開催させていただくことになっております。
3.11の前の議論では、ともかく関係機関で人材育成の機関をつくろうということで原子力人材育成ネットワークという機関をつくったわけでございますが、本作業部会におきましては、社会の情勢の変化、あるいは求められている人材の質、内容ともに更に突っ込んだ議論をしていただきたいというふうに思ってございます。
人材育成の非常に重要なプレーヤーである大学においても、昨今の成長戦略の中で研究や教育を含めた大学全体の役割の再認識、見直しが行われるというところでございます。そういった状況を踏まえて是非、人材育成や人材育成を支える基盤の施設、インフラのようなところを含めて御議論をしていただければ有り難いというふうに思ってございます。
是非、文部科学省といたしましても、この問題に正面から取り組んでよい結果を残していきたいと思ってございますので、委員の皆様の御指導、御鞭撻、本作業部会での活発な議論をよろしくお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(上田課長補佐) それでは本日の資料1-3に名簿をつけてございますが、原子力人材育成作業部会の委員として御就任いただきました13名の委員の方を紹介させていただきます。
フリージャーナリスト 五十嵐道子委員。
(五十嵐委員) 五十嵐でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 東京大学大学院工学系研究科教授 上坂充委員。
(上坂委員)上坂です。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 株式会社日立製作所研究開発グループ原子力システム研究部主管研究員 可児祐子委員。
(可児委員) 可児でございます。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 一般社団法人原子力産業協会人材育成部総括リーダー 木藤啓子委員。
(木藤委員)木藤でございます。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 福井工業大学工学部教授 来馬克美委員。
(来馬委員) おはようございます。来馬です。よろしくお願いします。
(上田課長補佐) 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構原子力人材育成センターセンター長 沢井友次委員。
(沢井委員) 沢井でございます。よろしくお願いします
(上田課長補佐) 京都大学原子炉実験所教授 中島健委員。
(中島委員) 中島です。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 東北大学大学院工学研究科教授 長谷川晃委員。
(長谷川委員) 長谷川です。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 三菱重工業株式会社エネルギー・環境ドメイン原子力事業部炉心・安全技術部次長、一般社団法人日本原子力学会教育委員会委員長 浜崎学委員。
(浜崎委員) 浜崎でございます。よろしくお願いします。
(上田課長補佐) 東京農工大学副学長 宮浦千里委員。
(宮浦委員) 宮浦でございます。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 東京理科大学副学長 森口泰孝委員。
(森口委員) 森口でございます。よろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 東京大学大学院工学系研究科教授 山口彰委員。
(山口委員) 山口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) 日本原子力発電株式会社総務室人材育成グループ課長 和佐尚浩委員。
(和佐委員) おはようございます。和佐です。よろしくお願いします。
(上田課長補佐) 以上13名、よろしくお願いいたします。
また本日、経済産業省より原子力政策課の香山戦略企画調査官の代理といたしまして、中富課長補佐がオブザーバーとして御出席いただいております。
(中富課長補佐) よろしくお願いします。
(上田課長補佐) なお山口委員におかれましては、原子力科学技術委員会主査より指名を受けまして、本作業部会の主査を務めていただくことになってございます。それでは皆様、よろしくお願いいたします。
それではまず山口主査より御挨拶をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(山口主査) 主査を指名されましたので、原子力人材育成作業部会の進行を取りまとめさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
人材育成の話は、いろいろなところから最近は非常に期待が大きく、また特徴的なところが幾つかあるのかなと思います。1つ目は継承性で、いろいろなものが連続的に動いていかなければいけないということです。ある日突然、ぽんと生まれてくるわけではありません。それから2つ目が非常に時間がかかるということです。御存じのとおり、いきなり専門家がぱっとあらわれるわけではありませんし、計画的に時間をかけて人材育成をやっていかないといけないと思います。それから3つ目には非常に分野横断的であるということです。そういう意味ではこの作業部会ではいろいろな分野で経験とかお持ちの先生方に集まっていただいたと思います。
今のような点を踏まえて皆様の経験とお知恵を拝借し、原子力人材育成がこれから長期にわたって安定的にしっかり人材が担保されるように、この作業部会で考え方を取りまとめるお手伝いをさせていただきたいと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
(上田課長補佐) ここからは山口主査に議事の進行をお願いしたいと思います。
また、主査におかれましては参考資料1にございますが、原子力科学技術委員会運営規則第2条第7項の規定に基づき主査代理を御指名いただきますようよろしくお願いします。
(山口主査) それでは主査代理を指名させていただきます。私としましては、これまで非常に人材育成に関して産官学協力を進めていただいておりました上坂委員に是非、主査代理をお務めいただきたいなと考えてございます。どうぞ上坂委員、よろしくお願いいたします。
議事に入る前に、本日は最初の部会ということでございますので、皆様から簡単に一言ずつ御挨拶を頂戴したいと思います。最初に上坂主査代理からお願いしたいと思います。
(上坂主査代理) ただいま主査を補佐する役目ということで新たな役目を仰せつかりました東京大学の上坂でございます。私は、東海村にあります専門職大学院原子力専攻の常務委員で教育担当を行っております。また、本郷の原子力国際専攻も兼務しておりまして研究開発も行っております。
また、田口審議官から言及がございました原子力人材育成ネットワーク活動に関しましては、戦略検討会議や海外人材育成分科会、それからIAEA原子力エネルギーマネジメントスクール実行委員会の主査を務めております。更に原子力学会の副会長を務めておりまして、特に去年から浜崎委員に教育委員長をお願いして、原子力学会も教育強化、人材育成強化という方向で動いております。更に6月24日、原子力学会の上塚会長、藤田旧会長の合同記者会見があり、そこでも研究炉の休止の問題を取り上げました。それについて早速、NHKがその日のニュースに取り上げ、非常に社会の関心が強いところであります。主査を補佐して頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
(山口主査) どうもありがとうございました。
では続きまして五十嵐委員から順番にお願いいたします。よろしくお願いします。
(五十嵐委員) どうしてもアイウエオ順だと先の御挨拶になってしまって申し訳ございません。五十嵐でございます。20年ほど朝日新聞社に勤めておりまして、科学部門を中心に様々な取材をしてまいりました。新聞社にとって原発というのは、特に科学部にとっては一番大きなテーマの一つです。新人記者は最初に原発のある都道府県に配置され、そこで取材をいたします。そういった長い取材の経験を生かして御意見を申し上げたいと思います。また、朝日新聞をやめたのはちょうど東日本大震災の少し前でした。その後に震災が起きてしまって、私はジャーナリストとして何ができるかということを悩んだ時期もあったのですけれども、震災後に東北の方に取材とボランティアに行ったときに、東北の学生さんたちや原子力について学んでいる学生さんたちとも話をさせていただく機会もございました。
そういった若い方たちの御意見なども伺った経験を生かして、この作業部会でも何かお役に立てればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
(可児委員) 日立製作所の可児でございます。私は研究所の方で勤務しております。
ふだんは研究の業務と新しく会社に入ってこられた若手の指導等もしております。そういった点でこれから産業界に入ってこられる方に対してどういうところを期待したいかということや、また逆に大学や学生さんが産業界にどういうことを求めているのかをこの場でお話を伺えると有り難いなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
(木藤委員) 原子力産業協会の木藤と申します。今ほどもお話が幾つかありました産官学連携の原子力人材育成ネットワークにおいて事務局の一人として務めています。原子力人材育成ネットワークは緩やかな連携協力につながる仕組みを持っておりまして、できましたのは震災の前の年でございます。その後に震災が起きまして、ここではどういうことを求められる、どうしていかなければいけないかという議論を関係者内でさせていただいております。このたびこのような場を設けていただいたことはとても有り難いと思っております。というのは、原子力人材育成ネットワークの中ではどうしても原子力関係者が集まっており、それだけでは立ち行かない産業であるにもかかわらず、原子力の人たちだけの話ということにどうしてもなりがちなので、是非今回このような場で幅広い御意見を頂いて原子力業界が何をしなければならないのか、また、どのようにしたら一緒に原子力産業というものを考えていっていただけるのか、いろいろお知恵を頂きたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
(来馬委員) 福井工業大学の来馬といいます。福井工業大学の原子力技術応用工学科に所属して4年ほどですが、もともとは福井県庁で原子力安全対策の業務に従事させていただきました。そういう中で安全というのはやはり人材だということで、原子力発電所立地の地元の立場からいろいろとお話しできればと思います。人材育成の点で今の大学で直面していますことは、やはり学生が研究炉で実習・研修を受けられないという状況がここ数年続いていることです。この状況が、非常に大きなマイナスになっているのではないかということを危惧しています。学生の今後のことを長い目で考えると、研究炉を日本はどうすべきか、今の状況でいいのかということについて、教育あるいは研究の視点として是非皆さんの御意見を伺いたいと思っております。よろしくお願いします。
(沢井委員) 原子力機構の沢井でございます。人材育成センターのセンター長をやる前には材料の研究分野におりました。本日は人材育成でよくお目にかかる方が多いのですけれども、久しぶりにお会いしたのは長谷川先生で、10年ぐらい前に長谷川先生と同じ分野の研究をやっておりました。
人材育成につきましては先ほどから御説明があります原子力人材育成ネットワークの事務局長を務めています。事務局長については原子力人材育成センターセンター長がやることになっておりまして、去年1年間勉強をさせていただき今年から務めさせていただいております。センター長として勤める中で感じましたことを冒頭に申し上げてもいいのかなと思いますが、原子力人材というものは大変広範囲にわたっていると思います。今、研究炉が足りないとか再稼働休止が続いているから作業員の技能が落ちるとか、様々なレベルの問題が、原子力人材という一言で言われてしまうので、処方箋を考えるときはもうちょっとその辺の分解度を上げて考えるべきかと思います。またそのバリエーションですけれども、先ほど、研究炉の実習ができないというようなお話がありましたけれども、原子力人材は必ずしも原子力工学科だけから人を呼んでくるのではなくて、様々な分野から卒業生を引き入れることが重要かなというふうに思っています。私自身が金属工学科の卒業生ですので、そのように思います。
また皆さんにいろいろ教えていただければと思います。以上でございます。
(中島委員) 京都大学原子炉実験所中島でございます。私どものところは名前のとおり研究用原子炉を2基有しておりまして、先ほどからちょっと話題になっておりますが、現在は新規制基準対応で長期停止中のために、ここ2年ほどは学生には実験の機会を与えられないまま卒業してしまうという非常に残念でもったいない状況になっているということでございます。短期的には停止しておりましていずれは再開する予定ではございますけれども、ただその後も将来にわたって原子力の人材育成をどうやっていくかというと、やはり古い施設ばかりになっておりますので、そこら辺の将来の実験教育といったのをどういうふうに考えていったらいいかなというのは一つございます。
それから私は、専門は原子炉物理という分野で原子力の分野でしか使えない学問であり潰しがきかない分野でございます。先ほど沢井委員も専門は材料とおっしゃって、研究者の裾野も広いのですが、原子炉物理というのは原子力の分野でしか潰しがきかないために、最近、学会の部会とかを見ても、若手の炉物理の専門教員が非常に少なくなっておりまして、これもまた今後の人材育成という意味では非常に大きな問題かなと思います。
そういうところの観点から貢献できればと思いますのでよろしくお願いいたします。
(山口主査) では長谷川委員。
(長谷川委員) 東北大の長谷川でございます。私の専門は材料で、原子力の材料や新型炉とか核融合における材料の研究を行ってまいりました。今、私どもは原子炉そのものではなくて、周辺の施設でいろいろな安全のための試験や放射性物質の取扱いを実際にやっております。その中で、研究施設がだんだん使えなくなってきているということを実感しています。これについては別の会議でも発言させてきていただきました。
また私は、大学では3.11の後の年から現在まで就職担当をやっておりまして、大学院と学部学生の就職のお世話をずっとやってまいりました。私どものところは1学年が40人前後と所帯が小さいということもありまして、工学研究科の他のところよりも手厚い就職のケアを行いまして、企業の担当の方や役員の方とかと非常に密にコンタクトをとりながら、我々の所の学生をできるだけ原子力産業に就職できるようにいろいろと努力してまいりました。3.11の前後で原子力と取り巻く状況が変わった中で、現在も多くの企業の皆さんから求人があるということを肌で感じながら、学生たちの将来を一緒になって考えてきました。
それともう一つ、私は青森県の委員会において新しい施設の建設等についてもいろいろと議論を行っています。そちらでは原子力にかかわる地元の人材を県内で育てたいという県の希望を踏まえ、その中でどういうふうにこれから東北大学として協力していけるかということについても検討しております。特にそれに関しては、社会人修士や社会人博士という社会人教育について、ここ10年近く、私どもの専攻と青森県とでいろいろ努力を続けてまいりまして、ようやく目途がたてられそうになってきたかなというところでございます。これは私個人というよりも、私どもの専攻全体としてこの10年近くを随分と地道に学生の教育や社会人の教育、そして原子力施設立地地域での小・中・高等学校などでの教育活動を行ってきた成果ではないかと思っています。
こういう活動を続けてきた中で、古い施設というのは原子炉だけではなく、RIの取扱い施設や大型の加速器施設とかとございますけれども、それらが原子力工学科や多くの原子力関連の研究施設が建設された創生期から、現在50年近い時間を経て、老朽化が進んでいることを実感しています。これからそういう施設を使っていかに学生たちが放射線や放射性物質というものをちゃんと取り扱っていけるかというようなことをいろいろと危惧しながら、教育と研究に当たっているところでございます。よろしくお願いいたします。
(浜崎委員) 三菱重工の浜崎でございます。現在は炉心・安全技術部という部署に所属している技術者ですが、これまでに非常に様々な仕事をさせていただきました。スタートは先ほどの中島先生と同様、私も原子炉物理の出身でPWR炉心の核設計というところから仕事を始めました。その後、燃料サイクル施設の安全設計に従事し、科学技術庁から文部科学省でもお世話になりました。科学技術庁、文部科学省ではアジア地域原子力協力、特に、アジア原子力協力フォーラムを担当させていただき、非常に貴重な経験をさせていただきました。
その後、平成16年に技術士資格制度に原子力・放射線部門ができたのを受けて、早速受験し、平成17年に二次試験合格、平成18年に技術士登録をいたしました。 それ以降、資格取得を奨励する方の立場に回っていろいろと活動していたのが誰かの目に留まったものと見えて、こういう人材育成や教育に関連する場に呼ばれるようになりました。気がついてみると原子力学会の教育委員になり、教育委員会の委員長まで仰せつかっているという現状でございまして、自分でも不思議に思っているところでございます。教育、人材育成について、特別な見識を持ち合わせているわけではないのですが、何かしらの貢献ができればと思っております。
メーカーは、現在、新規制基準への対応等で非常にチャレンジングな状況に置かれており、皆、非常に頑張っています。若い皆さんへは、我々の仕事はチャレンジングではあるものの非常に面白く、魅力ややりがいのある仕事であるということを発信していくのが、我々の一つの役割と思っておりまして、採用活動などでもそういったメッセージの発信に努めるようにしております。よろしくお願いします。
(宮浦委員) 宮浦でございます。私は、教育は工学部でやっておりますけれども、原子力分野は全くの専門外であります。また、大学では原子力の専門学科等は持っておりませんが、恐らく関連する物理や機械などの学科はございます。
今回、委員に入れていただいた理由は、他の委員会等で人材系を担当しており、そこで若手研究者の問題を議論しているからだと思います。若手研究者の問題は恐らく分野を超えた問題ではないかと思いますので、Ph.D.の優秀な人材をいかに各分野で確保するかという視点や世界と闘える専門性をどのように高めるかという視点を議論すると同時に、融合分野への対応性を持った人材の議論をしないと専門分野だけの議論しかできないことになってしまいます。若手人材の場合は、融合分野で議論できる人材にするということが非常に大きな話題になっており、そこでは任期付きの研究員の問題等も常に話題になります。融合的議論ができ、かつ専門性の深い若手人材をいかに有期雇用等のシステムも踏まえながら養成するかというのが恐らく原子力の分野でも同じ課題を抱えているのではないかと推測しております。
また人材系になりますと最近よく議論されておりますのは、若手研究者はもちろんですけれども、高校生あるいは中学生といった次世代の育成という将来を見据えたアプローチが重要だということです。大学に入ってから専攻する分野を設定するのはもちろんですけれども、理系離れも言われて久しい中、高校あるいは中学へのアプローチも常に議論しているところでございます。
また、大学と産業界間の研究者の流動性という面が非常に問題になっております。ある統計によりますと、産業界から大学へ、また大学から産業界への研究者の移動というのが、ゼロ%に近いような状態であり、そういう人の流れを活発化させることが専門を深めると同時に若手を育てる面で重要ではないかと思っているところです。どうぞよろしくお願いいたします。
(森口委員) 東京理科大学副学長の森口でございます。文部科学省の会議室で挨拶すると、つい文部科学省のと言いたくなってしまうのですが、2年ほど前まで文部科学省におりまして、今、役所側で並んでいる方々も仲間としてついこの間まで一緒に仕事をしていたところであります。私自身は昭和51年に科学技術庁に入りまして、科学技術庁の大きな柱の一つである原子力政策に携わる機会が多くて、スリーマイル事故やチェルノブイリ事故、辞める直前ですと3.11など、いろいろな経験をしましたし、原子力政策が順調に進んだ時期もいろいろと経験しておりますので、そういう観点から何かアドバイスできるかと思っております。
あと私は現在、東京理科大学におりまして、作業部会のメンバーの方々を見ますと、やはり国立大学の方が多くて私立大学は少ないなという印象を持っている次第であります。来馬先生は公立でしょうか。
(来馬委員) 私立です。
(森口委員) 私立大学では来馬先生と2人ですので、私学の立場からいろいろと言いたいことがありますのでよろしくお願いします。
(和佐委員) 日本原子力発電株式会社から来ました和佐と申します。今は本店の方で人材育成をやっておりますが、もともとはBWRである敦賀1号機の運転員として従事していました。その後、ATRのふげんで3年間、停止まで運転員として従事していました。その後、運転員の教育全体を見ていたのですが、3年前に会社全体の教育を見るのと同時に、御存じのとおり、うちは原子力専売ですので、プラントが止まっている状態の中で原子力に貢献するという点で原子力の導入を考えている国への支援や廃炉関係というところをお手伝いしています。
共通資産というところで言うと人材というところになります。現在も文部科学省や経済産業省との公募関係でいろいろと原子力専攻の学生の教育にも携わりながら、裾野を広げるというところで原子力以外の理工系学生や高専などに対する学生にもアプローチをしているところです。鹿児島や熊本など様々な学校を訪問して、先生方が共通して言われることは、3.11というのは福島だけの問題ではないということです。これはずっと数十年かかるものであり、そういったものは原子力にかかわらない学生であっても将来は復興の一助となる人材になり得るということを今の学生に伝えたいという先生方の熱い思いというのを行くたびに感じました。私のところは原子力をやっておりますので、そういったところで少しでも現場を見ていただくといった実習の場を通じてお手伝いできないかと思って動いております。
今回、このような場にお呼びいただきましたので、少しでも民間電力企業としてお手伝いできることがあればと思って参加していますので、よろしくお願いいたします。
(山口主査) 皆様、どうもありがとうございました。もう既に幾つかのポイントを御指摘いただいたこともあり、皆様の関心も非常に高いということもよくわかりました。どうもありがとうございました。
それではこれから議事に入らせていただきます。本日の議題はお手元の議事次第に書かれておりますとおり、1つ目に原子力人材育成作業部会について、2つ目に原子力人材育成を取り巻く状況について、それからその他という3点でございます。
それでは最初に事務局より出欠と配付資料の確認をお願いいたします。
(上田課長補佐) 本日、全ての委員に御出席いただきましたので、定足数である過半数を満たしてございます。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に資料一覧がございます。非常に多岐にわたっておりますが、まず資料1-1として原子力人材育成作業部会の設置について、資料1-2、原子力科学技術委員会における作業部会について、資料1-3、原子力人材育成作業部会委員構成員、資料1-4、原子力人材育成作業部会の公開の手続きについて(案)。
資料2に移りまして、エネルギー基本計画の概要、資料3-1、主な国立大学における原子力関係学科・専攻の設立の変遷、資料3-2、「原子」を名称に含む学科等の推移、資料4-1、「原子」を名称に含む学科等の学生動向、資料4-2、学校基本統計における学生動向、資料5、学校教員統計における教員動向、資料6-1、原子力関係企業の合同就職説明会における学生参加者数の推移、資料6-2、原子力関係企業における就職動向、資料6-3、原子力関係従事者数の推移、資料6-4、原子力関連企業における原子力関係従業員年齢構成、資料7、文部科学省の関連施設一覧、資料8、文部科学省における原子力人材育成の取組、資料9、経済産業省における原子力人材育成の取組、それから参考資料1として運営規則をつけさせてございます。非常に多くなっていますが、資料の欠落等ございましたら、事務局までお申しつけください。議事の途中でございましても、お気づきの点がございましたらお申し出いただければと思います。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございます。それでは、議題の1番目に入らせていただきます。事務局の方で資料を用意していただいてございます。それぞれ説明いただいた後に質疑、議論の時間をとりたいと思います。
初めに1番目の原子力人材育成作業部会について事務局より説明をお願いいたします。ここは事務的な部分が多くございますので、まとめて説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。
(上田課長補佐) それでは資料を御説明させていただきます。資料1-1から1-4まで通して御説明させていただければと思います。まず資料1-1、原子力人材育成作業部会の設置についてでございます。当作業部会の設置の目的ですが、今後、原子力の安全確保や国際協力への対応に加えて、東京電力福島第一原子力発電所や今後増えていく古い原子力発電所の廃炉などの課題への対応のため、高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展することが昨年に閣議決定されましたエネルギー基本計画において記載されているところでございます。これらの状況を踏まえ、原子力人材育成に関する現状と課題を踏まえた今後の原子力人材育成に係る政策の在り方について調査・検討を行うための作業部会といたしまして、本作業部会を科学技術・学術審議会のもとに設置をするということで、この4月に決定をさせていただいたところでございます。
2.に主な審議事項を記載しています。まず原子力人材を取り巻く現状の整理と把握が必要だと考えております。特に原子力関連や学部・専攻の推移ですとか、学生の志望動向・就職動向、更に大学教員の推移等の現状把握が必要であると考えています。それから原子力専攻における専門的な人材育成のあり方、更に産業界が求める人材育成に向けた大学や教育機関のあり方、それから原子力人材育成における国の役割、人材育成に必要となる研究施設、設備のあり方等、これらのことを審議事項として想定しております。
スケジュールといたしましては、2か月に一度のペースで作業部会を開催し、これらの課題について審議を行うことができればと考えております。
資料1-2ですが、こちらは今年の4月に当作業部会の親会でございます原子力科学技術委員会において作業部会の設置決定された際の資料でございまして、この作業部会は6つございますが、一番下のところに原子力人材育成作業部会ということで本作業部会の設置が決定されています。資料1-3は本日、御出席いただいております皆様方の名簿となっております。それから資料1-4に移っていただきまして、本作業部会の公開の手続に関する規定の案でございます。こちらの資料は案ということで後ほど、お諮りさせていただければと思います。公開の手続につきましてはその他の作業部会と同様の手続となってございますが、まず1.で会議の開催につきましては、開催の原則1週間前までにインターネットに掲載するとともに、当省の広報室の方に掲示をするということを定めております。2.で傍聴につきましては、これは一般傍聴者、報道関係傍聴者、委員関係者、それから各府省関係者同様でございますが、前日の12時までに当省の庶務担当まで登録をしていただくという規定です。裏面に移っていただきまして、3.に会議の撮影、録画、録音についてということで、傍聴者につきましては主査が禁止することが適当であると認める場合を除きまして、撮影、録画、録音を行うことができることを規定しています。これらを希望する場合には傍聴登録時に登録をしていただくということで、撮影用等の照明器具、カメラ等の使用は原則として会議冒頭のみとさせていただくということです。それから(3)でございますが、作業部会の記録につきましては委員皆さんに確認いただきました議事録をもって公式の記録とするということで、確認いただきましたらホームページに掲載するという形になります。4.その他でございますが、傍聴者が会議の進行を妨げると主査が判断した場合には退席を求めることができることとする。また、主査が許可した場合を除いて会議の開始後の入退場は禁止するということでございます。傍聴者数につきましても会場の都合等で人数制限する場合があるということでございます。その他、詳細は主査の指示に従うこととするということでございます。以上が公開の手続ということになります。
資料の説明は以上でございます。
(山口主査) それでは以上4点の資料について説明を頂きましたところで、確認事項や御質問などございますか。
(長谷川委員) 「公開の手続について(案)」の議事録についてですけれども、最近、他の会議の議事録を拝見すると、速記録になっているのですよね。非常に読みにくいのですけれどもそれを読みやすいように変えていいものでしょうか。口でしゃべっていますので、文章がだらだらと長くなってしまって、本来、自分が言いたかったことが結果的に見ると大分違ってしまうことも結構あります。ですので、議事録としてちゃんと読めるようなものにしてもよいものなのか、又は速記録として書いているものなのかの位置づけについてと、自分の発言について、本来言いたかったことに合わせるために文章を変えて良いのかについて教えてもらえないでしょうか。
(山口主査) 事務局はお答えいただけますか。
(上田課長補佐) その点につきましては、速記というよりも御発言いただいた要点や議論の流れをきちんと把握するための議事録になるかと思ってますので、委員の皆様方におかれましては、これはこういう趣旨ではなかったという部分につきましては読みやすいように又はわかりやすいように修正して構いませんし、事務局も公開するときには、話し言葉になっている部分については、なるべくわかりやすい形で必要な修正させていただこうと思います。会議が終わったところで御意見を賜ればと思っております。
(長谷川委員) ありがとうございます。
(山口主査) 他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。では資料の1-4の「公開の手続について(案)」についてですが、ただ今議事録の確認の方法や考え方について御説明がありましたとおり、これは会議の流れや議論のポイントをきちんと記述されるために必要な議事録として修正していただくということでありました。
それで、この公開の手続についてはこの案のとおりでよろしいでしょうか。
それでは案を取って、このような公開の手続ということで進めたいと思います。
次の議題に移らせていただきます。続きまして議題の2番目、原子力人材育成を取り巻く状況についてでございます。こちらも事務局から説明をお願いいたします。
(上田課長補佐) それでは資料2から御説明させていただきます。資料の数が多くなってございますので、それぞれ端的に御説明させていただければと思います。
まず資料2でございます。こちらは昨年4月に閣議決定されましたエネルギー基本計画の原子力人材育成の関連部分を抜粋させていただいている資料でございます。エネルギー基本計画中には人材育成ということでまとまった章立てや項立てはないのですが、ただ、各部分におきましてもやはり人材育成が重要だということでして、資料2で抜粋させていただいている部分に、それぞれ高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展するということが必要であることということ、また、廃炉が円滑かつ安全に行われるように廃炉の工程において必要な技術開発や人材の確保についても引き続き、これからも取り組みを推進していくということが政府の方針ということで決定されております。
続きまして資料3-1を御覧いただければと思います。この資料は主な国立大学における原子力関係学科・専攻の設立の変遷を時系列で掲載させていただいたものになってございます。線表の矢印のうち、赤色の矢印は大学における原子力工学関係学科の推移、青色の方は大学院における専攻ということで色分けをさせていただいております。昭和32年に東京工業大学、京都大学、それから大阪大学において原子力工学専攻を設立されて以降、各大学や大学院で原子力工学関係の学科・専攻というのが徐々に増えてきていたところでありますが、東京大学において平成5年に原子力工学科、原子力工学専攻がシステム量子工学科、システム量子専攻にそれぞれ改称されて以降、その他の大学においても原子力工学関係の学科・専攻が、他の学科に編入される形や、他の名前に改組するような形でかなり名前が変わってきているという状況になっております。昭和32年に最初に設置された原子力工学専攻が今日に至るまで残っているのは、東京工業大学、京都大学の専攻だけということになってございます。それから東京大学においては平成17年に原子力国際専攻、原子力専攻がそれぞれ設置をされているということで、主な国立大学における学科・専攻の変遷としてはこのような形で進んでいるということです。
関連いたしまして、資料3-2の方にも大学の学部、それから大学院の専攻の変遷ということで資料を書かせていただいております。こちらの方は機械的に学科・専攻の中に「原子」という名称を含む学科・専攻の推移ということで書かせていただいております。この大学の集計を見ても、昭和59年度には大学で10学科、大学院で11専攻あったものが平成16年度にはそれぞれ1学科、5専攻まで減少し、平成27年度においては3学科9専攻と少し盛り返してきているというふうな状況が見てとれます。
次の資料ですが、資料3-2と関連いたしまして「原子」を名称に含む学科等の学生の動向を文部科学省原子力課で毎年調べており、今年度分につきましては日本原子力産業協会に御協力いただきまして、集計をとっております。左側が応募者数、右側は入学者数ということで、学部、修士、博士それぞれの応募者数、入学者数の平成20年度から27年度までの推移を書かせていただいております。平成22年度から23年度のところで入学者数、応募者数も減少の傾向に転じております。これは東日本大震災の影響ということでありますが、入学者数を見ていただきますと、25年度から26年度、27年度と横ばいからやや回復の傾向が見られます。左側の応募者数について、平成25年度から27年度に非常に伸びている状況に見てとれるのですが、これにつきましては福井工業大学の専攻の入学制度で、複数の学部に併願することができるというのがありまして、その制度の関係で応募者数が伸びているのですが、入学者数を見ていただきますと、大体の傾向がつかめるのではないのかなと考えております。こちらが資料4-1です。
資料4-2で、また同じようなグラフになってしまって恐縮なのですが、先ほどの資料4-1は機械的に名称に「原子」を含む学科・専攻の学生の動向というのを調べておりますが、こちらの4-2の方は学校基本統計における学生の動向ということで、文部科学省の教育担当部局の方で統計法という法律に基づきまして、毎年度、学校基本統計調査というのをやっています。これの中で原子力関連学科という定義づけの中で入学者数の推移調査というものを昭和48年からずっと行っており、それをグラフにしたものが資料4-2でございます。先ほどの資料4-1の入学者数と比べても、大体、入学者数のトレンドは同じかなと思っておりますが、更に昭和48年から非常に長いスパンで傾向を見てとれることができます。これを見ますと、平成4年度をピークに入学者数というのは減少しております。平成19年度以降、再び増加の傾向に転じております。原子力ルネッサンスの頃がちょうどこの頃で、そういった影響もあるのかという分析ができると思うのですが、東日本大震災以降、また減少しています。近年はほぼ横ばいに推移しているという状況です。このグラフの裏の資料は、学部1年から博士3年までの学生数の推移を表したグラフになります。大体、入学者数のピークから少しずれるような形で同じような曲線を描いている状況です。
資料5は同じく学校教員調査をもとにした教員動向ということで、原子力関連の学部・専攻の年齢別教員数の資料がこちらの資料です。平成16年、19年、22年、25年度とグラフに示しており、平成16年度には438名でしたが、平成25年度には345名と約100名の減という状況になっています。また、16年度のグラフ、25年度のグラフと見比べていただきますと、若干わかりにくいところもありますが、やはり16年度に比べると、40歳以下の若手の教員数というのは少なくなっている傾向が見てとれると考えています。1枚めくっていただきまして、こちらのグラフにつきましては原子力関連の教員数の推移をあらわしたグラフになっております。青色が国立大学、赤色が公立大学、緑色が私立大学ということで、私立、公立につきましては若干増減が見られるところですが、国立大学における教員の減少という状況が非常に大きく見てとれます。次のページ以降は参考で、機械工学関連の教員動向、電気通信工学関係の教員動向を載せております。機械工学、電気通信工学、いずれにおいても教員の総数は平成16年に比べると減少しているという傾向と、若手の教員の数が平成16年度に比べると減っているという傾向は、原子力関連以外の工学関係でも見てとれる状況であるかなというふうに考えてはおります。
資料6-1ですが、こちらは原子力関係企業の合同就職説明会における学生の参加者数の推移で、日本原子力産業協会のデータでございます。左側のグラフの棒グラフが参加学生数ということで、東京電力福島第一原子力発電所事故以降、説明会に参加する学生の数というのは激減しているという状況であり、平成22年度の説明会には1,903名の学生が参加しておりましたが、23年度以降は非常に低い数字で推移をしています。また、右側のグラフに参加学生の専攻別人数の経年変化があり、平成22年度にはこれらの企業説明会に電気・電子系、機械系、文系等、原子力・エネルギー系以外の多くの学生が参加しているという状況が、東日本大震災以降のデータを見ますと、原子力・エネルギー系の専攻の学生については参加者数に大きな変化は見られていませんが、それ以外の専攻における参加学生数の減少という点では著しい影響が見てとれます。平成26年度では参加企業・機関数は回復傾向が見られますが、学生の数は回復傾向にはなっていないという状況です。
それから資料6-2ですが、こちらは原子力関連企業における就職動向ということで、最初のグラフは原子力関係メーカーを対象にしたデータでございます。調査対象機関は小さな字で書かせていただいておりますが、こちらのグラフから読みとれますのは、メーカーにおける原子力部門の採用数におきましては2009年をピークに減少傾向にありましたが、近年は回復しつつあるという状況にあるということです。また赤色の折れ線グラフが原子力専攻の比率、採用の割合を示しておりますが、原子力専攻以外の比率については東日本大震災以降、減っている一方、原子力専攻の割合が増えているという状況でありましたが、近年は原子力専攻、それからその他の分野専攻の割合というのが徐々に以前の水準に戻りつつあるのではないかというのが読みとれるデータになっております。裏面には電気事業者を対象にしたデータで、この調査対象機関も下に書いてございますが、軽水炉を持つ11社の電気事業者の就職動向です。電気事業者における原子力部門の採用数ということでいきますと、東日本大震災以降は減少し、近年は横ばいという状況でございます。また、赤色の折れ線グラフを見ていただきますと、原子力専攻の比率が伸び続ける一方、原子力専攻以外の専攻の比率というのは減少している傾向が続いている状況だということが見てとれます。
続きまして資料6-3ですが、これは原子力関係の従事者数のグラフでして、オレンジ色は鉱工業他の従業員数、つまりメーカー等の従業員の数であり、下の青色は電気事業者従業員数であり、それの合計が赤色ということです。全体としていずれも2000年台以降、少し増えているような状況ではあるのですが、近年はほぼ横ばい状況かなというのが従業員の数ということになってございます。
それから次の資料6-4です。こちらの資料は従業員の年齢構成ということで、まず1枚目にありますのはプラントメーカーである東芝、日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工業の3社における年齢構成のグラフということで、21歳から25歳の比率は少し低く、それ以外はかなりバランスがとれている年齢の構成になっているという状況でございます。裏面は電気事業者における従業員の年齢の構成ということで、こちらもバランスはとれている状況です。
次の資料7ですが、文部科学省関係の原子関連施設を地図上に置いた資料です。赤色の文字で後ろに「停止中」と書いている施設が震災以降における新規制基準対応等で現在運転していない施設です。大学の研究炉でいきますと京都大学のKUR、KUCA、それから近畿大学炉があり、また原子力機構の臨界実験装置、研究用原子炉等の施設は止まっておりまして、人材育成に重要な役割を果たすこういった施設は現在、原子力規制庁の審査のため動いていない状況です。
最後に資料8、文部科学省における人材育成の取り組みです。後ろに詳細な資料をつけていますが、時間の都合上、1枚目の主な取り組みのところだけ紹介させていただければと思います。文部科学省では、公募事業で人材育成や研究開発の支援等を行っている状況でございます。上から国際原子力人材育成イニシアティブ事業、こちらは平成22年度から実施している事業であり、平成27年度予算額は3.5億円で、産学官の原子力関連機関が連携し、効果的・効率的・戦略的に行う機関横断的な人材育成活動を支援するということで、大学、企業、研究機関等からの公募により実施させていただいている事業になっています。それから1つ下、英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業ということで、こちらは文部科学省が決定した東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置の加速プラン等を踏まえて、国際共同研究をはじめとした原子力の課題解決に資する取り組みの人材育成や研究開発の支援をしていくという事業になっております。それから3番目が放射線利用技術等国際交流事業で、これはアジアの研究者を招聘し、放射線利用技術・原子力基盤技術等に関する研修を行うとともに、我が国からも専門家を派遣して取り組みを行う事業であり、平成27年度の予算額は1.5億円です。それから原子力システム研究開発事業、多様な原子力システムに関して基盤的研究から工学的検証に至る領域まで、大学等において革新的な研究開発や技術開発を実施するというための事業ということで、平成27年度は約20億円の予算額でございます。それから原子力発電施設等研修事業費補助事業ということで、これは立地県が実施する原子力分野の基礎及び技術レベル向上のための研修等の補助金として、例えば土木関係や電気関係で原子力関係の事業に携わっている技術者の研修を自治体が行う場合への支援ということで、国から自治体に交付しているというものでございます。それから一番下、本日、沢井センター長に御出席いただいておりますけれども、原子力機構の人材育成センターということで、原子力機構の運営費交付金で、様々な施設、広範な専門家、豊富な知識経験等に基づいて、国家資格・原子力技術者の国内研修、国際研修、大学等との連携協力等を実施しているというものです。また、右側に簡単な説明になってしまってますが、原子力人材育成ネットワークということで、こちらは平成22年11月に国の呼びかけによりネットワークを設立していただき、現在70機関の参加機関が参画して戦略的に人材育成を進める取り組みというものを議論していただいている状況です。
資料の説明については以上です。
(山口主査) どうもありがとうございました。それから、本会議につきましてオブザーバーとして経済産業省からも御出席いただいてございます。資料9、こちらが経済産業省における原子力人材育成の取組の説明資料になってございますので、こちらについて説明をお願いしたいと思います。どうぞお願いします。
(中富課長補佐) それでは、経済産業省から簡潔に御説明をさせていただきたいと思います。昨年4月に第4次エネルギー基本計画が閣議決定され、原子力については、いかなる事情よりも安全性を最優先すべきであるとされており、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や老朽化した原子力発電所の廃炉を安全かつ円滑に進めていくためにも、高いレベルの人材の育成・確保は極めて重要な課題と言えます。その上で、弊省におきましては平成27年度、1.5億円の予算を計上して、我が国の事故の経験を含めた先進国への安全性向上への貢献ということも意識に入れながら、民間企業や教育機関等に委託を行いまして、原子力人材育成の取組を進めています。弊省事業では、委託の元で、例えばモデルになるような先駆的な取組ですとか、地域に根づいた電力会社の協力会社等の現場人材の育成ですとか、それから産業界が学生を効果的に獲得できるようにというためのインターンシップ等の取組というようなものについて、事業者からの提案を踏まえて、企画競争によって毎年約10件前後、採用をして取り組んでおるという状況でございます。
本日は詳しい説明は割愛させていただきますけれども、弊省の方では総合資源エネルギー調査会のもとにワーキンググループを立ち上げ、1年ほどの議論を行っておりまして、その中で「軽水炉安全技術・人材育成ロードマップ」と、それから電気事業者等の産業界を含めた原子力にかかわる者に関するものとして「原子力の自主的安全性向上の取組の改善に向けた提言」をまとめております。この中で、事故時のプラントの状況変化を熟知し、緊急時の意思決定を独立した立場から監視することのできる人材や、リスク分析、リスク管理等を行う能力を備えた人材の育成の重要性等が提言されています。特に、これは弊省がアプローチすべき電気事業等の産業界における課題であるというふうに御指摘を頂いておりますので、今年度の本事業におきましても、昨年度に引き続き、こういったところを意識して、取り組んでおるというところでございます。
簡潔ではございますが、以上でございます。
(山口主査) どうもありがとうございました。以上、資料9まで文部科学省、経済産業省での原子力人材育成についての取り組みを御紹介いただいたとともに、現状を考える上で有用なデータを御紹介いただいたところです。
それで次回以降、論点整理を少しずつ行っていくということですが、それに向けて、今回は第1回ということでございますので、自由討議という形で今の資料を含めまして質問・意見などを頂きたいと思います。ということですので、今日は余り枠をはめずに自由な視点で御発言を頂いて、それを踏まえて次回以降のまとめ方を少し考えてみたいというふうに思いますので、どなたからでもどうぞ御発言をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。
(森口委員) いろいろな資料を見せていただき、具体的な解決策というより、むしろ検討の視点みたいなものを思いついたので、幾つか指摘をしたいと思います。
まず1点目は、これは先ほど議論でもありましたけれども、原子力はいわゆる総合技術ですから、原子力の名を冠した学科あるいはその類似の学科という動向ももちろん重要だと思いますけれども、原子力に携わる方はまさしく機械、電気、土木、物理、化学と、非常に広い学科を卒業した学生であり、そういう学科における人材養成が非常に重要になると思います。私自身もそうですけれども、学科としては機械工学科を卒業していますが、当時の指導教授が原子力を主にやっていたので、原子力に興味を持って科学技術庁に入ったということもあります。ですので、原子力工学科・専攻の動向をいろいろ分析されていますけれども、その他の学科において原子力を対象としたような、一部でもいいですけれども、そういった教員をどう育てていくかというのも重要というふうに思っていますので、その辺の策も必要かなというのが1点です。
それから人材といっても、原子力関係人材というのは非常に広くて、まずは大学における教授などの教育研究者もありますし、研究機関における研究者、それから電気事業者、プラントメーカー、もっと言うと地方自治体の職員あるいは中央官庁の職員とかも人材であり、それぞれによって育成についても多少違ってくるので、そこを整理して議論する必要があると思います。ここでいう議論か分かりませんが、私の出身である中央官庁でいいますと、文部科学省、経済産業省もやはり最近は原子力人材が育っていないと感じております。端的に言うと、かつてはそういう担当をする課も多かったということもありますし、また、1種職員ですといろんな経験をするために2年や3年ごとに異動していくのに対して、いわゆる2種職員はかなり専門性をもって仕事に従事するけれども、そういう機会も減ってきているということで、やはり何といっても中央官庁も原子力の推進だけということではなくて、原子力を理解する人材がいないということについて問題だと思っています。
それから今、申し上げた人材でも、いわゆる高等技術者や中堅技術者がいると思うのですけれども、特に中堅技術者といいますか、そういう方々というのは現在、中教審でも実践的な職業を行う新たな高等教育機関の検討が行われていますから、そういうところとリンクして中堅技術者の育成を図っていくことも必要かなと思います。
それから資料5の2ページ目のデータについて、原子力関連の教員の数も全体は減っていますが、これを見ると、国立大学はどんどん減っている一方、私学は普通に安定しているのです。これは理由がわかりませんが、やはり国立大学には頑張っていただかないとなかなか厳しいなというふうに考えています。それの裏返しになりますけれども、こういう形で頑張ってはいるのですけれども、なかなか私学が経営の厳しい中でいろんな国の公募型の事業や共同事業がありますけれども、はっきり言って国立大学の常連校が採用されているなと感じます。それはそれで結構なのですけれども、やはり私学を対象にすると、私学は数も圧倒的に多いし、学生数も圧倒的に多いですから、そういう意味でそういう学生を対象に原子力に興味を持ってもらうことも非常に大事なので、そういうことも是非考慮いただきたいと思っています。
それから今後の原子力について言うと、もちろん新規の炉もあるのかもしれませんが、やはり大きな課題としては廃炉とか廃棄物の問題が出てきます。そういうものは後処理みたいに感じられてしまいますので、学生にどう興味を持ってもらうかというのが非常に重要な課題だと思います。特に学生というのはやはり就職状況に大きく左右されるので、そういう分野に採用が多いとやはり関心が向くと思うので、そういうことをメーカーや電力事業者と含めて議論したいと思っています。
それとよく一般に言われますが、何といっても子供の数が減ってきて、あらゆる分野で非常に厳しい状況ですから、そういう中で何といっても重要なのはやっぱり女性活躍促進かと思います。女性に原子力分野に興味を持ってもらうことが非常に大事だと思いますし、先ほども意見がありましたけれども、小中高向けにどのように発信するかというのは重要だと思います。
それともう1点、原子力人材についてはいわゆるエネルギー・原子力発電のことにかなり焦点が当たっていますが、当然ながらRI等の放射線利用の人材も重要だと思いますし、議論が必要であると思います。以上でございます。
(山口主査) どうもありがとうございました。他にはいかがでしょうか。五十嵐委員、どうぞ。
(五十嵐委員) 様々な貴重な資料をありがとうございました。原子力という言葉で切っていただいて調べていただいているわけで、まずこれが中心のデータになるかと思うのですけれども、それぞれの実態はそれぞれの学科で全部違うと思うのですね。だからここをいろいろどういう実態かを更に知っていく必要があるかなと思います。また、産業への就職の状況についても原子力という名前だけで切っては見えない部分がたくさんあるかなと思いますので、そこをもうちょっと掘り下げていく必要があるかなと思います。一方、この言葉で切っていることについて、これまでも幾つか御意見が出ておりますけれども、原子力人材は、原子力に限ったものではない分野横断的な視点で見ていかないとと思うので、ここを更に抜け出して見ていく必要がもっとあるのかなというふうに感じました。
(山口主査) ありがとうございます。原子力という名前で切っているという点について、上田さんの方で先ほど少し違うデータの見せ方で御説明されたと思いますけれども、原子力というキーワードでくくったものと、名前は違うけれども、中で原子力の分野を教えているという整理の仕方も多分示していただいたと思いますけれども、今の御指摘について、もう少しこういうデータを丁寧に分析していくことによって、いろいろと見えてくるものがあるという非常に重要なポイントだと思いますので、何かございますか。よろしいですか。
(上田課長補佐) そういう意味で申しますと、実は今まで原子力関係の学生動向の調べということで公表させていただいておりましたものが、原子という名前だけ機械的に抽出して、調査・公表した結果でした。今回、これまでと違う形でお出しさせていただいたのが資料4-2です。これは学校基本統計における学生動向ということで、生データ自体は今までもあったのですけれども、これは名前だけで切ったというよりも、各大学からそれぞれ大学設置申請や学科設置・変更時に、自分の学科・専攻は原子力に関係するところだと申請を出したところについてピックアップしたデータということになっています。それから、これはまだ我々の方も精査する必要があるところでありますけれども、冒頭の資料でも原子力工学関連の学科・専攻から名前を変えていった学科・専攻の中でもそれぞれ、例えば研究室の中で個別に原子力をやっているところや関連研究をやっているようなところもあり、そういったところもうまく抽出できないかと検討しているところですので、御指摘を踏まえて、よく議論できるようにしていきたいと思います。
(五十嵐委員) ありがとうございます。言葉が足りなかったのですけれども、もう少し社会科学的な分野がもっと必要になるかなというふうに考えてございます。リスクマネジメントであるとか社会リテラシーという言葉が流行語になってしまいましたけれども、先ほど、御意見も出ましたように原子力について理解してもらうことや若者から知っていただくということが非常に重要なので、そういった取り組みがどういうところでどうされているかということも知りたいと思いました。申し訳ございません。
(山口主査) ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 今の統計のところですけれども、平成8年から学部生の人数が落ちていますよね。これは多分、私どものところは特にそうなのですが、単独学科での募集をやめて、幾つかの学科を大括り化して、入学時は例えば機械なら機械系でとって、学部の途中で原子力に変わっていくというようなシステムになっているところが恐らく多くなっているのだと思います。このシステムが広がっていったがために「原子力」と名のつく学部への「入学者」がだんだん減っていき、最後にはゼロになっているのだと思います。そういう学生の募集の仕方をしているので、学科単独での「原子」あるいは「量子」という名前で探しても、入学者の数がゼロになるのは当たり前なのです。このデータだけが社会に注釈無しで出ていくと、誰も学部では原子力教育を受けていないという話になってしまいます。こういう調査をやるときには、例えば平成8年より前は、みんな同じシステムで単独学科で恐らく「原子」、「量子」と名のつく学科で学生をとっていたので、この統計に乗っていたのだと思うのですけれども、平成8年からどんどんいろんな大学での学科あるいは専攻の構成が変わっていって、学部生のとり方が各大学でばらばらになって変わってきたのを認識して調査すべきだと思います。募集形態や実態が変わってきているので名前だけ変えてさがしても、ゼロはゼロなのだと思います。私どもの東北大学の原子核工学科も、名前が変わったところの一つです。ですから、こういう結果になるのは当たり前だなと思います。
それから全体を見ていて気がついたのですけれども、資料3-1で括弧で「他専攻に改組」という情報が入っていますが、データが間違っているところがあります。例えば私どもの東北大学量子エネルギー工学科は「他専攻」と書いてありますが、これは間違いです。実際は単独で原子科核工学科がそのまま一つのコース(量子サイエンスコース)として残っています。
それから大学院の専攻も「他専攻に」となっていますけれども、これも間違いです。このまま見ると一つの専攻が幾つかの専攻に分かれたように見えます。しかし私どものところは分かれていなくて、そのまま残っています。私どものところは、設立時にの専攻の講座が、名前や研究内容に多少の変遷はあるもの、今でも引き継がれているというシステムになっています。資料の表記がどうしてこんなふうになっているのかよくわからないのですけれども、少なくとも私どものところは「他1専攻」や「他2専攻」と書いてありますけれども、そのような分裂や再配置はなく、名前が変わったまま数の増減もなく残っています。他にもこのような間違いがあるのではないかと思います。
ただ、間違っている部分がありますが、この情報は結構大事で、正確な情報を集められるならば、実際にもともとの専攻が幾つか、例えば機械と電気と材料系に分かれたとかという情報も入るようになっています。したがって全体の動向を見る上ではこの情報はすごく大事です。
この作業部会での議論のもとになるこのような情報については、それぞれの大学の当該学部や研究科で確認したものでないと、全然違う実態の上に立って議論することになってしまう可能性があるので、そこは気をつける必要があると思います。
(山口主査) ありがとうございます。参考にしていただいて、よろしくお願いします。どうぞ、来馬委員。
(来馬委員) 先ほど、学科と学生動向の資料のところのコメントで、応募者数が結構増えているのは、うちの大学の入試で複数学科を選んで、その中で合格を出した後、学生が学科を選択するというシステムに変更したためです。残念ながら見た目、応募者数とかは増えているのですけれども、実際の入学者は減っているということになっており、学生の中でどういう選択基準があるかどうかは別として、なかなか原子力学科に入ってこないというところが今の課題かなと思います。それはやはり今、全体に共通していますが、原子力に対する魅力の問題があると思います。廃炉や福島復興の課題もある中、原子力は必要だけれども、必要なだけでは学生は集まってこなくて、やはり原子力へ進んだらどう面白いのだろうかとか、確実な就職先であるのだろうかとかが明確に学生に伝わっていないのかなと感じています。応募はあるけれども入学してくる学生は実際少ない。我々の定員が今35名だとすると、今年は応募者あるいは合格者はそれを上回るぐらい出ていますが、入学したのはその半分ぐらいというところの危機感があるというのも現状なのですね。
今年の春に卒業した学生が、ちょうど先ほどの原子力ルネッサンスの時期、すなわち東京電力福島第一原子力発電所事故前の時点で既に入学が決まっていた学生で、定員を超えるぐらいの人数が入ってきて、彼らがちょうどこの春に卒業して就職しました。それは先ほど、森口委員もおっしゃったように、例えば原子力規制庁、関西電力、プラントメンテナンスや非破壊検査などの原子力関連企業へ35名のうちの7割ぐらいは入っていっているわけですね。
だからやはりそういう学生は3.11の前に原子力を選び、その後に3.11が起きて、入学までの1か月弱の中で悩むという時期があったのですけれども、入ってからはほとんどの学生は頑張って原子力をやり続けて原子力関連企業等に就職したということです。やはり就職は確実にあるよというのは大事ですが、そもそも学生が入ってこなければ学科を維持することは難しいので、これから入ってくる学生をどうするかということを含めて、原子力の魅力は何だろうということを考える必要があると思います。また、卒業生の働いている原子力の職場の魅力がなかなか世間に伝わっていかないというところにも今、悩みがあると思います。廃炉が悪いわけではないのですけれども、新しく入ってきた学生のほとんどは、やっぱり新しい原子力をやりたいと入ってきているのですね。そういうところはこれからやはり人材を議論する上では、原子力が将来にわたって、どう夢のある内容・分野かというところをアピールするというところが一つと大事かなと思います。先ほどありました日本原子力産業協会の就職セミナーですけれども、原子力の学生はやはり来ているわけですが、先ほど意見もありましたとおり、本来、原子力の産業を支えているのは電気とか機械とか、もっと幅広い人材なのですけれども、そういう分野の学生に原子力の魅力が届いてないというところに危機感を覚えます。やっぱり原子力は原子力人材をどう育てるのかというコアの部分と、原子力産業を支えている電気・電子等の様々な分野の方々に原子力の魅力を持ってもらうという両方の面を議論していく必要があるのではないかなと思いました。以上です。
(山口主査) ありがとうございます。はい、どうぞ。上坂委員。
(上坂主査代理) 学部の教育は非常に重要である一方、各大学の事情で組織の改編とか融合でなかなか見えにくくなっているのですが、是非そこをゼロにしないで数字を入れていただきたいなと思いました。例えばカリキュラムを見ると、我々はシステム創成学科というところで入っているのですが、ざっくり言えば旧船舶と旧資源と旧原子力で教育は3分の1ずつやっているのでそこは3分の1だと思います。学部から大学院を通した長い教育が絶対必要で重要だと思いますので、是非、学部はゼロにしないでいただきたいなと思います。
また、いろいろとすばらしい総括的な資料をありがとうございます。学科・専攻の設立変遷なのですけれども、どこの大学も苦労されて維持されているのではないかと思います。やはりスリーマイル島原子力発電所事故以降、30年以上前から人気の低下はあったわけで、その中で結果的には組織の規模は維持しているのではないかと思います。
したがって、現状は恐らく3分の1ぐらいが昔の30年前の原子力工学科で教えていたことで、カリキュラムは薄くなっているのではないかと思います。そういうことは就職先にも影響が出ております。3分の1程度が原子力業界に行き、それ以外の方は他の業界に行かれる。それはいいことだと思うのですけれども、そういうことで規模は維持しているけれども、守備範囲を広げて、狭義の原子力発電等に関するところは3分の1程度になっているのではないかなというふうに推測します。
ただ言い方は悪いかもしれませんが、そういうふうに薄く広くなっていくことは、工学部全体に言えることではないかなと思います。機械工学科、電気工学科とか見ても、キーワードはエネルギー、環境、医療、情報とか経営とか、どこも同じキーワードを言っていて、それこそ工学部や工学系全体が文系と理系の境もないモラトリアム的なところもあって、その要素が大学全体にもあるのではないかなという印象があります。是非ここは文部科学省の作業部会なので、全体に向けての意見も言っていきたいなと思います。
それから、これも文部科学省の方で議論されて、いろいろ公開されておりますが、大学も一様でなく、トップレベルの研究開発型と実務教育型と地域貢献型で特徴を出しているという議論があるかと思います。これは原子力にも当てはまるのではないかなと思います。私もIAEAの仕事で世界中の大学を回っているのですけれども、やはり教育の仕方、研究開発型か実務型か、あと研究をやらせるのか講義だけなのか、あるいは学位をどう考えるか、それは本当に、ヨーロッパ、アメリカ、アジアで違うのですね。例えばヨーロッパは、EUでまとまろうというところもあると思うのですが、非常に統一化しています。20年前からボローナプロセスということで、ヨーロピアン・クレジット・トランスファー・システムをつくって、いろいろなモジュールを各大学でやって、学生は回りながら修士を幾つも取れるとかの取組もやっております。非常にそれは実務教育的なのです。一方、アジアやアメリカは研究開発的であると。ですので、例えば人材育成ネットワークでは、原子力発電に特化した実務的な教育や人材育成というのは、日本で研究開発型の大学一つでやるのは厳しいので、オールジャパンでやったらどうかということを議論しながら、その策を議論しているところです。
それで今回、いろいろまとめて、文部科学省や経済産業省の施策を見させていただいているのですけれども、やはりこちらは短期間の人材育成ですよね。ですので、教育と人材育成をどこの大学でやって、どこをオールジャパンでするかとか、そこの役割分担をしっかり考えていった方がいいかなと思います。私は、文部科学省での教育と人材育成の違いの議論を参考にしながらやっておりますけれども、教育に関しては非常に議論の範囲が広くなってしまうのですが、文部科学省の人材育成の作業部会ですので、そういうことへも提言できればなというふうに考えております。以上です。
(山口主査) ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。どうぞ、長谷川委員。
(長谷川委員) 人材育成のところですが、福島の事故を起こした炉の廃炉と、いわゆる運転寿命がきた炉の廃炉という言葉が一緒くたになってどんと出ています。原子炉に関わる企業がこの両方の廃炉にかかわる人を一斉に求めているのでしょうか。そうじゃないのではないかという気がします。実際、メーカーが廃炉にかかわっても、本来のものを作るという行為には直接的にはならないのではないかと思います。現実にここにははっきり書けないのかもしれないのですが、海外でのビジネスで原子炉をつくるとか、日本ではリプレースというところで、新しいものをつくっていかないとものつくりの技術も継承できないし、新しい技術の発展もないわけですね。
福島の廃炉は本当に大事だと思うのですけれども、それは既にある事故を起こして内部がめちゃくちゃになったものをどう壊していくか、どう扱っていくかということなのだろうと思います。寿命が来たと言われた原子炉については既に日本ではJPDR、世界でも研究炉などの廃炉作業が実際に行われて、計画的に実施されてきれいな更地になっているということもあります。現実に今正常に運転している原子炉を今後順次廃炉にしていくとして、通常は炉を止めてから実際の廃炉の解体などの作業にかかるまで、放射能レベルを下げるのに10年近い年月がかかります。そちらの「廃炉」に今それほど人材が要るのか、メーカーでこの方面の人材を欲しがっているのか、そこはどうなっているのでしょうか。メーカーが本当に欲しがっている事故を起こした炉の廃炉に関わる人材には、溶け落ちたと言われる燃料などの処理や処分もありますが、炉内の現状の確認や、状況の改善と安全に維持すること、本格的な作業を始める前の調査や関係する技術開発に係わる人材を欲しがっているのではないかと思います。
工学部というものつくりについて教育している私としては、学生がどういうところに働いて、いわゆる原子力をこれから担っていく人材になってほしいかというと、やはり作っていく方なのですね。多くの学生もそちらの方に魅力を感じるように思います。事故炉を壊すにしても、それを次の新しいものの建設に活かせるなら、ものつくりとしての魅力はあると思います。原子力は日本も世界もこれからどうなるかはっきりとはわからないですけれども、海外にも展開しているというようなことで、就職先として原子炉メーカにアプライしている学生も結構います。 原子力の人材育成のための教育内容として何が必要なのか、今ここでは事故を起こした炉をどうするか、つまりは事故炉の廃炉というのを頭に書かざるを得ないのはわかるのですけれども、今後幅広い人材を集めるにはやはりそれだけではないのではないかと思います。以上です。
(山口主査) ありがとうございます。他にはどうでしょうか。どうぞ浜崎委員、お願いします。
(浜崎委員) 今、メーカーのお話が出ましたので、メーカーの方からお話しした方がいいかなと思いまして発言します。確かに廃炉に対して人材を求めているかという問いかけだったかと思うのですけれども、廃炉といいましても福島第一の廃炉と一般の原子炉の廃炉というのは性質が違うと考えています。福島第一原子力発電所の廃炉というのは、よく国難とも言われますが、非常に多くの課題を含んでいて、そこには研究開発的な課題もたくさんあります。私は、その中には若い人が魅力を感じるようなテーマもあると思います。
確かに、一般の廃炉の方は、海外では多くの実績もあり、国内でも進行中です。福島第一に比べれば、余りチャレンジングな課題はないということは確かかもしれません。しかし、廃炉に対して人を求めていないということはないと思っています。
新設につきましても、確かに海外案件はありますし、国内では具体的な話になってございませんけれども、原子力発電の比率を20%から22%に維持するためにはリプレースということも今後、視野に入ってくるだろうと期待しています。新しいものをやっていきたいという若い人が多いというのは我々としても大変有り難いところです。是非そういう人たちに向かって、魅力ある仕事であるというメッセージを我々の方からも発信していきたいと考えております。
(山口主査) ありがとうございます。他にはいかがでしょう。中島委員、どうぞ。
(中島委員) 今、廃炉の話が出ましてあれなのですけれども、メインはやっぱり1Fというか、福島対応ということになるかと思います。浜崎委員からありましたように、やはり技術的に非常にチャレンジングなことをこれからやらなければいけないというところで、そういうところに対しての人材のニーズや技術開発のニーズが当然あって、学生の立場から見てもやりがいのある仕事ということではあるのではないかなと思います。ただ、それがトータルするとどのぐらい必要かというのは、私はなかなかわかっておりませんけれども、廃炉関係をやられている先生方の話を聞くと、長期にわたってとにかく人材を供給してほしいということはよく言われています。
それとは少し違う話なのですけれども、この作業部会のタイトルの原子力人材というのがどういうスコープなのかというのが、なかなか私もまだ見えてこなくて、今の廃炉にしても、あるいは新型炉開発とか、いわゆるエネルギー利用の原子力というのは大きな分野なのですけれども、大学の原子力の研究とかいわゆる原子力関連の研究室では非エネルギー関係の原子力利用を非常に多くやられております。JRR3や我々のKURが止まっており、研究炉が動けば人材育成ができるというようなロジックになっておりますけれども、例えばJRR3とかKURみたいなああいう大型の研究炉を使う側の利用者としての研究者や学生というのは、どちらかというと非原子力関係の人が割と多いと思います。基礎、基盤的なビーム利用とか、広い意味での材料とかそういうのは入れれば原子力になるかもしれない。エネルギー利用にもつながるのですけれども、もうちょっと基礎的なところをやっている方が多いと思います。
だから、例えば我々のKURがどんどん動いたからといって、必ずしも発電炉とかエネルギー利用の原子力の人材育成が進むかというと、なかなか必ずしもそうではないと思います。当然、そういう方向に持っていこうと思えばできますけれども、そこのところをここの場でどこまでの原子力人材の枠を考えるのかというのが非常に私もまだうまく整理できていないところがあります。
あともう一つ、文部科学省あるいは経済産業省が人材育成の取り組みで今までいろいろやられて、私どもも施設を持っている側として人材育成という場を提供することで、申請してお金を頂いて、いろいろ施設の整備とかもやらせていただいているのですけれども、正直なところを申しますと、なかなか使う側としては使いにくい仕組みになっているなというのが本音です。本来、基本的な原子力の人材育成で必要な項目というのは、非常にベーシックなところをまずは実験でもやらなければいけないのですけれども、そういうところはこういう人材育成の事業の中ではなかなか取り上げてもらえないというのが実情です。そういうのは大学の本来業務だから運営費の中でやりなさいと言われる。ところが大学の運営費というのはどんどん削られていって、できるだけ競争的資金をとってきなさいと言われる。そうすると、どちらもお金が出ないという話になっています。
そういった中で、やっぱり本来やるべき基礎的なところをしっかりやらなければいけないというふうに我々は考えていますけれども、そういうところを何かうまくすくい上げてくれる仕組みができてくれれば有り難いなと思います。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございます。この作業部会のアジェンダの中に研究炉も含めた施設の話や国の役割というのがあって、今、中島委員から御意見がありましたが、中島委員は研究炉のある意味ではオーナーという立場でもありますし、今の研究炉とか、それを運営しようと思ったら、じゃあ国の役割はどうかということが非常に重要になると思います。また最初、森口委員から官庁の中で原子力人材がいなくなっているのではないかという御指摘もありましたし、それはきちんと政策なり、こういうプログラムを進めていく上でしっかり理解していただいた人は役所の中にもいていただかないと、うまくコミュニケーションもできないし動かないと、そういうことだと思います。
今の国の役割とか人材育成の中で、皆さんが重要だと言われるのは実験施設とか研究炉とかのインフラが重要だとおっしゃるわけで、少しそのあたりも御意見を伺いたいと思います。
いかがでしょうか、何か特に。例えば上坂委員はずっと東大の弥生ブランケットという施設を維持していただいて、国といろいろ連携しながら予算を使いながら、ああいう施設に長い期間、かかわってこられたのですが、そういう意味で何か御意見なりお考えかとかがあったら伺いたいと思いますが、どうでしょうか。
(上坂主査代理) 先ほど、中島先生からもお話がありましたように、研究炉とか核燃料使用施設、加速器、放射性同位元素使用施設というのは非常に規模が大きくて、また、安全やセキュリティ管理にとても人とお金がかかるということです。今日も御紹介があったプログラムの中に研究開発もあるのですけれども、これはやはり期間、規模を見ても中規模であって、運営交付金でやっていかなければいけないところを大きく補塡するという性格的でもないのですよね。したがって、施設の維持管理は運営費交付金でやっていかなければいけないし、定員でやっていかなければいけない。それがどこの組織でも、非常に苦しい状況です。実質そういうことを、新規プロジェクトをとって特任の教員等をお雇いして、研究開発もやりながら、一部そういうところも補っていただくというふうな形で苦しい運営をやっているということですよね。したがってそういう研究炉や大型施設を充実させる大規模の方策がなかなかないというのが非常に苦しいところです。もちろん研究開発プロジェクトをとっていけばいいのですけれども、なかなかそういうので我々が獲得しやすい応募事業は減っているというのが正直なところです。そういうことを言っても打開しなければいけないので、我々としても何とか、みんなで協力して大きなプロジェクトを考えていこうということで、いろんな場で議論をしているのです。自助努力でやれるところも限界があります。やはり規模が大きく安全、セキュリティが高いものですから、ベースのところは運営交付金でサポートしていただき、プラスアルファで攻めにいくところは外部資金をとっていくような状態になっていただければなと思います。
今、本当にそのベースが減っていますので、今を維持するために新しいものを無理してとっていかなければいけないというのが正直な状況です。JAEAも大きな施設がいっぱいあるので、いろいろ大変かなと思うのですけれどもね。以上です。
(山口主査) ありがとうございます。今の点、きちんとここで議論をしておかないと、現実問題としては理想論だけを語っていても動きませんので、またしっかり御意見をいろいろ伺いたいと思います。
他にはどうでしょうか。どうぞ宮浦委員、お願いします。
(宮浦委員) 人材育成の話題なのですけれども、現状を踏まえてどのような人材がどれぐらい不足しているのか、必要なのかというのを、専門外ですので把握しきれない部分があります。資料を拝見しますと、例えば就職説明会の参加学生が劇的に減っているのは、エネルギーあるいは原子力の冠のない、例えば電気・電子系ですとか機械系の学生かと思います。これをもう一度上げたいのか、あるいは原子力エネルギー関連の学生を中心に育てて、高度人材にすればそれで数は足りるのか、欲しいのは学部学生なのか、あるいは修士が必須なのかというあたりのニーズをどうしたいのかというところを一度、明確化した方が議論しやすいように感じました。恐らく修士が必須、大学院教育を受けた人材でないと話にならないということであれば、教員の確保というのはすごく重要だと思いますので、先ほどグラフの中で若手教員が非常に減っているような印象であり、例えば30代ですとか若手教員の優秀な教員をこの分野にいかに確保するか、その方法はテニュアトラック等を含めてどのような手法で確保するのかというような、どのような人材をどれぐらい必要なのかの戦略に沿って議論していただく側面があると考えやすいように思いました。
(山口主査) どうもありがとうございます。いろいろ貴重な意見を伺ったところですが、少し時間が迫ってきていまして、今日は御自由に意見を頂くという趣旨でしたので、今後、参考になる論点を出していただいたと思います。またその他、御発言できなかった方も次回以降、伺うような場を持ちたいと思いますので、是非継続的に御意見をいただければと思います。あるいはメールとかで御意見を送っていただいても、また事務局で整理してまとめていただけると思います。
それでは、続きましてもう一つ、その他の議題ということで事務局より御説明があるかと思います。どうぞよろしくお願いします。
(上田課長補佐) 活発な御意見を頂きましてありがとうございました。本日は第1回ということで委員の皆様方から御意見を頂きまして、これらの論点を事務局で整理させていただきます。また先ほど、主査からも発言がございましたけれども、本日の議論の場で言い足りない部分や御意見があるということでしたら、事務局の方にメールをいただけましたら、整理した上で次回以降、議論を進めさせていただければと思ってございます。
スケジュールとしましては冒頭にお話しさせていただきましたが、2か月に1回程度、論点を整理して原子力人材育成ネットワークや経済産業省等、人材育成の取り組みを進めていただいております各機関の取り組みのお話を伺いながら、議論を深めていただければなというふうに思います。以上でございます。
(山口主査) ありがとうございます。
以上で本日予定していた議題が終了となりますけれども、ただ今事務局から御説明いただいた今後の進め方とか、あるいは全般につきまして、もし御意見等がありましたらお伺いしたいと思いますが、何か御発言ありますか。よろしいでしょうか。
それでは、以上で本日の予定していた議事が全て終了いたしました。先ほど、事務局から御説明がありましたとおり、大体2か月に1回ぐらいの予定で議論を進めていきたいということでございますので、今後ともよろしく御協力をお願いいたします。
それでは以上をもちまして、第1回原子力人材育成作業部会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

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研究開発局研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当)付

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