核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース(第18回) 議事録

1.日時

令和元年6月6日(木曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 原型炉開発総合戦略タスクフォースの議事運営について(非公開)
  2. 原型炉開発に向けたアクションプランについて
  3. 原型炉設計合同特別チームの活動について
  4. 原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携強化について
  5. アウトリーチ活動について

4.出席者

委員

岡野主査、笠田主査代理、伊神委員、今澤委員、奥本委員、木戸委員、坂本委員、蓮沼委員、東島委員、福家委員、藤岡委員、吉橋委員

文部科学省

新井研究開発戦略官、阿南室長補佐、吉澤核融合科学専門官、徳澤学術調査官

オブザーバー

量子科学技術研究開発機構六ヶ所核融合研究所 飛田健次 副所長
自然科学研究機構核融合科学研究所 今川信作 教授

5.議事録

【吉澤専門官】  本日は御多用中のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。第18回、第10期の第1回の原型炉開発総合戦略タスクフォースを開催させていただきます。
 本タスクフォースは、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会核融合科学技術委員会により設置されております。タスクフォースの主査につきましては、核融合科学技術委員会の運営規則第2条第3項に基づきまして委員会の主査が指名することになっております。既に岡野委員が指名されておりますので、今後の議事の進行につきましては岡野主査にお願いしたく存じます。
【岡野主査】  核融合科学技術委員会主査の御指名によりまして、本タスクフォースの主査を務めさせていただきます岡野でございます。よろしくお願いします。

(議題1 非公開)

【岡野主査】  ここで、文部科学省の新井研究開発戦略官より御挨拶いただけますか。
【新井戦略官】  皆様、改めまして、文部科学省の新井でございます。今回、タスクフォース第10期となります。第10期といいましても、科学技術・学術審議会の第10期でありまして、核融合の議論が文科省で始まってから第3期目になります。第10期のタスクフォースの最初に当たりまして、御挨拶を申し上げます。
 まず、皆様方におかれましては、大変お忙しい中、委員に御就任いただきまして、誠にありがとうございます。核融合には豊富な燃料があり、安全性、あるいは環境保全性に特徴を持つというところで、将来的にはエネルギー問題と環境問題を根本的に解決する可能性があるエネルギーです。文部科学省としても、旧科技庁時代から、あるいは旧文部省時代から、学術面も含めて推進しております。最近の政府の流れで行きますと、去年、新しいエネルギーの基本計画というものを決定しておりますけれども、その中でも、長期的な視野に立って推進していく技術課題として位置付けられているところであります。
 現状では、核融合というものは、科学的・技術的実現性を検証していくというスケジュールで、今世紀中葉に実用化のめどを立てるところを目指して研究を進めているところです。大きなプロジェクトとしては、皆さん御存知のITER計画が2025年のファーストプラズマに向けて建設の進捗も60%を超えてきており、組立・据付が本格化していくというステージにあります。
 それから、ブロードアプローチとして日欧でやっている拠点についても進捗が大分ありまして、最近の話題で言いますと、QST那珂核融合研究所のJT-60SAに主要機器であるセントラルソレノイドコイルの取付けが行われ、プレスでも取り上げられました。
 核融合科学研究所につきましては、創立30周年ということで、先般、式典が行われましたけれども、こちらも非常に研究が進んでいると思いますし、レーザー核融合の方についても、阪大を中心に学術研究が進んでいると思います。
 そういった進捗があるところですけれども、今後、エネルギーの実現に向けては、長期的に、オールジャパンで取り組んでいくものだと思います。このタスクフォースでは、アクションプランに基づいて研究が進んでいるのか、その進捗を見ていただき、あるいはアウトリーチの観点から、いかにこのコミュニティーを盛んにしていくかという御議論も非常に大事になってくるかと思っております。
 そういった大事なタスクをお願いしておりますので、どうぞ御活発な御議論をよろしくお願いいたします。
【岡野主査】  戦略官、どうもありがとうございました。
 議題2の「原型炉開発に向けたアクションプランについて」に入りたいと思います。最初に、アクションプランの位置付けについて、文科省さんから御説明をお願いしてよろしいでしょうか。
【新井戦略官】  資料2を御覧いただければと思います。アクションプランの本体については机上のファイルに入っておりますけれども、アクションプランとは何ぞやという位置付けについて、簡単に御説明したいと思います。
 資料2の1ページに、「原型炉開発の技術基盤構築を進めるための体制」というポンチ絵があります。アクションプランは、今後、原型炉開発にあたりどういった技術を進めていく必要があるのかを整理して、目標あるいはスケジュールとしてまとめたものになります。この原型炉開発総合戦略タスクフォースでは、アクションプランを策定し、その進捗管理をしていくというところになります。ここで御議論いただいたことを核融合科学技術委員会に報告して、承認を得ながら進めていくというところであります。
 原型炉開発に向けたアクションプランでありますので、その方針は、原型炉合同特別チームに下りてきます。特別チームには、正に核融合の実現に向けたいろいろな技術が必要だというところで、理論解析、超伝導、炉設計、ダイバータ・ブランケット、燃料システム、プラズマ、加熱等々の分野がありますけれども、こういったものについてプランニングをした上で、特別チームに活動方針を提示します。
 あとは、大学等との連携については、大学ではボトムアップの活動で種々の学術研究をやられていますけれども、その活動についてもアクションプランを提示することで、これを踏まえて研究を進めてもらうことを期待する位置付けのプランでもあります。
 次のページで、「核融合開発に係る研究開発政策の検討状況」を示しております。役所として核融合を進めるために、いろいろな政策文書を出しております。直近ですと、「原型炉研究開発ロードマップについて」というものをまとめています。その前に、「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」という文書があります。この辺が最新の政策文書でありますけれども、それに前後する形でアクションプランを策定しております。さらに戻ると、一番上の平成17年からいろいろ文書がある中で、技術的にどういうものを構築していく必要があるかという在り方を初めてまとめたのが、平成28年2月です。その後、ITERの計画変更などを踏まえて改訂した最新のものが平成29年12月で、その時々の状況も踏まえた改訂も加えながらやっていく性質の文書と考えております。
 資料の右側は、先ほど申し上げた平成29年12月現在の最新の政策文書、「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」の概要でありますけれども、こちらで技術課題の解決に向けた開発の進め方を整理するということで、アクションプランを位置付けています。その下に、原型炉段階への移行に向けた考え方とありますけれども、原型炉に向けて中間チェックアンドレビューを行いながら、きちんと技術開発は進んでいるのかというところを核融合科学技術委員会でも確認しながら進めていきましょうというところを政策文書に盛り込んでおります。正にアクションプランに基づいた進捗の評価というところがチェックアンドレビューの基盤となると考えております。
【岡野主査】  新井戦略官、どうもありがとうございました。
 今、戦略官から、アクションプランはどういうものかという御紹介いただきましたが、その内容を私から御紹介する前に、お話ししたいことがあります。戦略官にこのアクションプランを御紹介いただいたのは、私からすると大変感慨深いです。というのは、2008年に我々は核融合のロードマップと、それに伴いアクションプランに匹敵するワークブレークダウンストラクチャーという、1,000項ぐらいあるアクションを全部書いたものを作っています。当時、こういう委員会に持ってきてお話しさせていただいたんですが、そのときは、あくまで核融合業界が自主的に作ったもの、よくできたと言っていただいたに過ぎませんでした。日本の公式なアクションプランにもロードマップにもならなかったわけです。今や戦略官自らアクションプランを御紹介いただけたというのは、私から見ると大変な違いだと思っています。こうして、政府としてアクションプランを見ていただいて、もちろん予算の制約の中でですけれども、これに沿って進めると宣言いただいているというのは、非常に心強いことだと思って感謝しています。 それでは、アクションプランの中身を少し御紹介したいと思います。現在のアクションプランは、平成29年12月に改訂して、昨年度のタスクフォースによってフォローアップを行ったというものでございます。アクションプランをもう一遍見ておいていただいた方がいいかと思うので、机上にある資料のファイルをご覧ください。今、ここで全部見ていただくことは無理ですが、数ページめくっていただくと、横印刷になって、表のように項目がいっぱいあるのが分かると思うんですが、これがアクションプランになっています。
 例えば一番分かりやすいところで、2枚目が全体を司る計画という意味で、概念設計の基本設計という、炉設計のアクションプランとなっています。時間が2015年から20年、20年から25年、25年から35年と分けてあって、余り細かく書くと分かりにくくなるので、大ざっぱな5年置きあるいは10年置きぐらいの枠に、その間にやらなければ次に進めないこと、必須なことがリストされています。我々の認識では、原型炉を建設し始めるために必要な研究は、考えられる限りでは全部網羅していると考えています。
 もちろん、一くくりにして書いてある部分だってあると思いますが、もしもここに入っていない原型炉に必須の技術が発見できたら、それはもう絶対入れないといけませんから、もちろん引き続き探しますが、現状で発見されているものは全て入っていると思います。逆に言うと、アクションプランのどれが重要かとよく聞かれますが、私はいつも、もちろん重要なものはある、あるけれども一つ残らずやらないと原型炉は造れないと答えています。小さいからやらなくていいというものではなく、買えば済むものもありますが、それも買わないといけないので、そういった項目がみんなリストされていると思っていただければと考えています。
 今後、フォローアップに併せて、作った頃の委員の先生方もできればお呼びして、一つ一つのアクションプランを15の項目別に、それぞれについて、今後は少しずつフォローアップしていきたいと思っています。
 次に、フォローアップの内容について御紹介いたしますと、資料3に「チェックアンドレビューに向けたアクションプランの進捗状況調査について(案)」というのがございます。先ほどのアクションプランにも書いてありますが、前段階のチェックアンドレビューを行うのは2021年頃です。簡単に言うと、JT-60SAという今建設中の装置が動いたところでチェックアンドレビューに入ります。それから2025年にもう1回、ITERの着火を機会にチェックアンドレビューに入ります。少し先の段階に進んで、2035年頃に原型炉建設に進むべきかどうかという最終的なチェックアンドレビューをします。そういう計画になっている今後のチェックアンドレビューに向けた進捗調査のスケジュール案が書かれています。
 経緯を読ませていただきますと、原型炉開発総合戦略タスクフォースは、平成28年2月に、「原型炉開発に向けたアクションプラン」を取りまとめるとともに、その後のITER計画のスケジュール見直し等に伴いアクションプランの再検討を行い、平成29年12月18日開催の核融合科学技術委員会において、現時点におけるアクションプランとして承認を得たというものになっています。
 チェックアンドレビューに向けた進捗状況調査の必要性については、「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」という報告書がありますが、これにおいて、第1回中間チェックアンドレビューが2020年頃、第2回が2025年から数年以内とされていて、それらに向けて、アクションプランが着実に実施される必要があるということになっています。
 タスクフォースは、我が国の原型炉開発の司令塔として、アクションプランの実施状況についてオールジャパンの立場から把握する責任を有していると考えられることから、タスクフォースにおいてアクションプランの進捗状況を調査して、核融合科学技術委員会に報告することとするというものでございます。
 今後のタスクフォースにおけるこういった進捗状況の取りまとめですが、以下のような計画にしております。この10期のタスクフォースで、まず今年度にアクションプランの進捗状況の確認を行いたいと思っています。新任でなっていただいた委員の先生方も多いので、第2回から急にアクションプランのフォローアップをしますといってもなかなか難しいだろうと思っているので、まだ計画段階ですけれども、アクションプランの成立してきた経緯も含めて、専門家の方も招きながら、お話を聞いていこうかと考えています。そうして中身を御理解いただきつつ、進捗を調査していくことにしたいと思っています。
 来年度になりましたら、10期における進捗評価を取りまとめようかと思います。どんなものを取りまとめるかというのは、一昨年度の例が次のページからあるので、それをこの後に御紹介します。それから来年度、次の期にはチェックアンドレビューにいよいよ入るので、それに向けた検討を行います。どういうチェックアンドレビューをするか、誰がするか、別途委員会を作るのか、そういったことも含めて検討していきます。もちろん、ここで決めるというよりは、ここの意見を核融合科学技術委員会に答申して、そこで決めていただくことになっていくと思います。
 11期のことまで私が言うのもはばかられますが、いよいよチェックアンドレビューをする、非常に大変な段階に入ると思っています。それまでに、この今期のうちに、できる限りの調査をしておくべきかと考えています。
 次のページを見ていただくと、これが先ほど申し上げた課題毎のアクションプランで、小課題名が書いてあって、その中のアクションで2020年までに終わっていなければならないものだけ拾っているのが、このフォローアップだったはずです。その先のところはまだフォローアップしていなくて、先は見通せていることを確認しているところになっています。
 どんなフォローアップだったかというのが、このページの一番上に書いてあります。どういう評価だったか概要が分かるようにしてあるので、復習のために、これを読ませていただきます。
 まず、課題名0、炉設計ですね。2020年頃のチェックアンドレビューに向けた課題はおおむね順調であるが、先進ブランケットをテストする原型炉TBMについては、単に先進概念を比べるだけでなく、TBM用としての成立性の判断条件が必要な点で加速が必要である。安全確保指針についても、人材の不足から2018年度からの着手となっており、チェックアンドレビューに向けては加速が必要と判断した。2025年頃のチェックアンドレビューに向けた課題は、現時点では順調だと、今から5年以上前の段階では判断しています。
 ここで念のために先進ブランケットという言葉を定義しておきます。先進ブランケットというと、2種類のものを想像する人がいるんですね。今のITERと全然違う先進ブランケットというものがあり得ますね。液体金属で冷却するとか、磁場の範囲が全然違いますとかいうのがあるんですが、ここで言っている先進ブランケットは、ITERよりは先進的な冷却をしているという程度のものですね。あくまでも、現在、JT-60SAとITERで開発できる範囲のブランケットという、材料が違うということですね。少し違うとかそういったもので、そこは非常に混乱するので、誤解のないようにしていただきたいと思います。
 磁場範囲が違うやつは何と言っていましたかね。新概念とか言っていましたか。何か違う名前にしてあるんですよね。だから、ここで言う先進ブランケットは、そういう磁場範囲からして全然違うものという話ではないというのを、是非記憶にとどめておいていただきたいと思います。
 それから、次が1番、超伝導コイルですが、2020年のチェックアンドレビューに向けた課題はおおむね順調と判断しています。ただし、コスト削減のためITERとは異なった方式も検討しているスーパーコンダクト全体の概念を確認するには、産業界からの更なる参画が必要とされています。
 コスト削減のためにITERと異なる方式というのは、製造方法のことですね。全然違う超伝導コイルになるという話ではなくて、今のITERの製造過程では、コイルを巻いてから焼いていますけれども、それを逆にできないかとか、そういう製造過程をより効率的にする方法はないかとか、そのようなことを考えていると聞いています。もちろん安くするために必要だということですね。異なる方式というのは全く違うものという意味ではないので、誤解のないようにお願いします。
 それから、課題名2はブランケットになります。個体増殖・水冷却ブランケットについては、2020年頃のチェックアンドレビューに向け、増殖増倍材料のスペックを早期に明確化し、基本設計を加速する必要がある。ブランケット工学試験設備については設備計画の加速が必要。それから、トリチウム工学試験については計画の加速が必要である。先進ブランケットについては、今後、概念選択の方向性の決定及び基礎データの取得などが必要となっています。
 ここで先進ブランケットというのが出てきているのは、これも先ほどの先進と意味が異なっています。ITERのテストブランケットというのは、日本案として水冷却のものが入りますが、その延長上で考えられるものではなくて、例えばガス冷却であるとか液体金属で冷却するとか、そういったものをここは含んでいます。つまり、そういったものがないと将来の経済性の改善につながらないかもしれないので、先進ブランケットを原型炉の初代ブランケットとしては使わないものの開発はしておかないといけないという認識です。そのために、この原型炉に向けたブランケットの課題の中に先進ブランケットというものが入っています。あくまでも水冷却が日本のメーンですが、だからといって革新的なものをやらないわけにはいかないというのが認識です。
 3番目の課題がダイバータでございます。ダイバータというのは熱を受け取る部分で、現時点で非常に厳しい、かなり大きな課題を残している部分になります。読ませていただくと、原型炉の初期フェーズでタングステン/銅合金水冷却ダイバータを選択するのであれば、デタッチメントプラズマの実時間制御は不可欠な要素であるが、現時点ではデタッチメントプラズマの理解が不十分である。デタッチメントプラズマの素過程の理解とそれに基づく制御シナリオの確立を目指したアクションプランが策定され、それに沿って研究開発を実施しているものの、その目標達成には多くの項目で加速が必要である。
 ダイバータというのは非常に難しい課題がたくさんあって、今後特に難しい分野であると思っています。そういう視点もあって、このタスクフォースとは別に、ダイバータについてはワーキンググループが立ち上がっていまして、そこでまた専門家の皆さんで集まって、いろいろ議論していただいています。その議論をタスクフォースにフィードバックしていただいて、アクションプランにはその議論がちゃんと入ってくるようになっています。特にダイバータだけにこういうものがある理由は、ダイバータは課題として非常に厳しいという認識をしているからでございます。
 それから、デタッチメントプラズマというものが出てきています。一言で言うのは難しいけれども、ダイバータ板というのがプラズマの下にあって、そこにまともにプラズマが流れてくると、溶けてしまいます。それを高温のまま流れてこないように、途中で温度を捨てながら、ダイバータ板に当たるときは十分に温度が低いという、そういったプラズマを作らなければいけなくて、その一つの方法がデタッチメントですけれども、それを確実にできるのかというのが非常に大きな課題があります。ITERとJT-60SAでしか試験できず、しかも原型炉と同じ条件では試験できないですから、なかなか厳しいというのがここに書いてある内容でございます。
 課題名4が加熱・電流駆動システムです。2020年頃のチェックアンドレビューに向けた項目はおおむね順調であるが、高信頼性に関する項目についてはECH、NBともに加速が必要であり、そのためには共通課題を進める枠組みの整備と人員確保が必要ということです。
 加熱についてはITERの方で相当進みますので、そういう意味では現状では比較的順調ですが、明らかにITERと原型炉とで違うのは、高信頼性というところで、何か月も動かないといけないわけですから、メンテナンスが簡単にできるかとか、そういった課題が残っているというのが、ここに書いてあることでございます。
 次が課題5、理論・シミュレーションになります。アクションプランの進捗そのものは全般的に順調であり、QST六ケ所研に核融合研究用スパコンが導入され、計算機資源の確保もなされているが、ほとんどの分野で人的資源が不足している。特にプラズマエッジ第1原理系シミュレーションコードの重点開発・利用、ダイバータシミュレーションコードの重点開発・利用、炉心プラズマ統合シミュレーションコードの開発・利用は、第2回までのチェックアンドレビュー項目の達成と強くリンクしているが、人的資源が不足しており、今後、チェックアンドレビューに向けての進捗が遅れる可能性があるため、加速が必要との評価をしたということになっております。
 そのとおりで、日本は特に理論・シミュレーションの人材が足りないという認識をしています。ダイバータなんかも特にそうですが、ヨーロッパは結構な人がいるんですよね。日本は、確かにスパコンはすごいものが入りましたが、人的資源が不足しています。どこの領域も不足はしていて、人的資源が不足していると書き始めると全部書かなきゃいけないんですけれども、特に理論・シミュレーションは心配があるので書いていただくことにしました。非常に不足していまして、そう簡単には育てられないので、今後の対策を地道にやっていく必要がございます。
 6番の項目が炉心プラズマですね。炉心プラズマについては、ITER及びJT-60SA研究計画について、QSTを中心に大学等からの参画を得て国際的な議論が進展している。特にJT-60SA研究計画は、極めて順調に議論が進展している。LHD、ヘリオトロンJ、QUEST、GAMMA10などの装置がそれぞれの特徴を活かした研究開発を展開するとともに、プラズマ壁相互作用の基礎研究やモデリング・シミュレーション研究にも進展が見られるとあります。
 そういう意味では、これからJT-60SAとITERが動こうというわけですから、炉心プラズマは非常に順調であると思っていいはずですし、それが順調じゃなかったらITERは着かないので、順調であるという判断になっていますが、もちろん、今後、人が十分いるうえで研究を進めるということでは、安心はできない分野であります。
 ちなみに、6番目にプラズマが出てきているというのは、今回のアクションプランのある意味の知見でして、別に重要じゃないと言っているわけではないんですけれども、プラズマが上にあって炉工が下だという、そういう認識は絶対に間違っています。炉工だけあっても核融合はできないですけれども、プラズマだけすばらしいのができても核融合はできないので、そういう意味では、いろいろな順番から考えて、プラズマが6番目に出てきています。これは別に下げたというわけじゃないですよ。重要度が低いわけでも何でもないですが、何が何でもプラズマという状況からは脱却しているというのが一つの特徴だと御認識いただけるといいと思います。
 それから、課題の7は燃料システムになります。トリチウムの取扱いに関するデータ取得は順調に進展しているものの、ITERや原型炉に向けたスケールアップの検討は加速が必要。ITERでの設計や運転情報の有効活用が必須であり、ITERのトリチウムプラント調達スケジュールを踏まえたデータ入手戦略の見直しが必要である。それから、リチウムにはリチウム6と7があり、リチウム6の方が都合がいいのですが、その確保の方策の検討として、イオン伝導体膜による開発が極めて順調に進展しているとなっております。
 これはどうリチウム6を濃縮するかという話が最後に書いてありますが、トリチウムと重水素は燃料だという認識がよくありますけれども、実を言うと天然資源にトリチウムはなくて、リチウムが燃料資源になります。そのリチウムはどうやって手に入れるのという話になったときに、買いますというのでは危ないので、日本の海から取れればいいと考えているということですね。
 これは非常に深く認識しているものでして、天然にない燃料を使うというのは今までに一例しかないんですね。それは高速増殖炉です。プルトニウムは天然にないですから、それに引き続き、核融合は天然にない燃料を使う炉になります。プルトニウムの場合は、軽水炉が既に作ったプルトニウムが山のようにあるという状態からスタートしていますので、全然違うんですね。核融合炉は、トリチウムがない、リチウムも十分にはないという、そういうところから気にしないと、核融合はできたけれども入れる燃料がないということにならないとは言えないというのを、きちんと考えているということでございます。
 次が、課題名8、核融合材料と規格・基準です。低放射化フェライト鋼に関しては、大量製造技術の確立や関連する要素技術開発なども概ね順調であると言えるが、照射効果に関するデータ取得、照射による劣化モデルや関連する規格基準の構築に関しては加速が必要な状況である。先進ブランケット材料については、利用方法やデータベースの構築についてNIFSや大学の協力を得つつ検討が始まっているものの、加速が必要である。その他、ダイバータ材料や計測・制御機能材料についても、照射に関して加速が必要であるということです。
 核融合中性子源の設計については、これは青森に置こうとしている分だと思いますが、これに関しては順調に進捗しているということです。
 それから、9番目が安全性です。安全性が9番目でいいのかという御意見もあろうかと思いますが、9番目の重要度という意味ではなくて、非常に重要だと認識して、ここに入っております。安全法令規制に関する活動については、BA活動の一部として実施されており、順調に推移している。安全性解析・評価に関しても、特別チームにおいて基本的なコードの整備がなされつつある。核融合炉の安全性の議論が深まるにつれ、安全を担う人材の拡充が必要と考えられるので、長期的な視点で若手人材の確保が急務であるということです。
 現在、安全性については随分と研究が進んだと思いますが、若手人材をもっと投入していかないと長続きしないので、今、不足しているというよりは、今後、投入する必要があると認識しています。
 それから、10番目が稼働率と保守です。これは原型炉、そして実用炉のときには非常に重要になる課題ですが、2020年頃のチェックアンドレビューに向けた課題はおおむね順調と評価している。しかしながら、保守方式と炉設計構造は表裏一体であり、炉構造側の成立性とセットで見極める必要がある。炉構造側の成立性が難しい場合、保守方式の見直しが必要という評価ですね。
 これだけ読むと何を言っているか分からないかもしれないので、少しだけ補足すると、核融合炉にはプラズマに直接面しているブランケットという部分がございまして、そこは寿命が2、3年しかないんですね。それを総取り換えしないといけないというプロセスが、言ってみれば軽水炉の燃料交換みたいな感じで入ってきます。それをなるべく大きなモジュールでスポッと抜ければ早いわけですが、それには核融合炉に非常に大きな穴を開けないといけないわけで、穴が開くということは、そこにサポートが置けません。もちろん超伝導コイルの隙間を通してという条件もありますし、そう簡単に大きな穴が開けられるような構造ではないので、炉設計全体で、例えば電磁力で潰れないかという応力や、中性子が当たって大丈夫かというものも全部含めたところでコンシステントになっている設計でなければならず、メンテナンスだけ考えて、穴が大きいと大丈夫と言っているわけにいかないというのが、ここに書いてあることですね。そこまで含めると、メンテナンス方式が変わると炉設計も変わるということなので、早くメンテナンス方式を決心しないと炉設計が進まないと言っているということでございます。
 次が11番目、計測・制御ですね。原型炉に向けた計測制御の検討は研究会の報告書としてまとめられており、磁気計測や平衡解析などは一部大学の寄与が期待され、全日本的に情報交換や議論の場が作られつつある。そのため、該当項目は「順調」とした。今後は特別チームの炉設計との整合性や検討の確度を高める必要があり、特別チームとの共同活動が求められる。一方で、照射試験を個人レベルで実施することは非効率であり、これは一人一人の研究者がアメリカの照射炉を使って照射するという意味ですけれども、そういう意味で実施することは非効率であり、ITER用機器の照射試験と併せて、実施する体制作りと効率的な照射試験リストの作成・国内外の照射施設の利用計画を検討すべきである。非常に限られたリソースしかないので、特に今、止まっているものが多いですから、そういう意味で、うまく使いたいということです。オフライン予測についてはシミュレーション研究者との共同が必要であるが、現状ではその体制ができていない。そのため、それらの箇所は「加速が必要」としたとなっております。
 計測・制御については、ITERあるいは現行の装置と違うものが原型炉では必要です。めちゃくちゃ中性子が来るので、今の計測器を取り付けられない可能性があって、原型炉の計測が不安な運転では動かせないですから、今のうちから非常に計画的な研究を進めておくことが必要であるという認識ですね。必ずしもITERに必須という話ではなく、うっかりしていると見落としてしまう可能性がありますので、計測・制御はしっかり書いてあるということになります。
 それから、12番目が社会連携の項目でございます。社会連携というのがこういう技術課題のアクションプランや計画に入ってきたのは、今回が最初だというのを是非再認識してほしいと思っています。これまで核融合の分野では、分かってはいたけれども技術的課題だけを書いていて、これとこれとこの技術さえできれば核融合炉は大丈夫という話になりがちでした。前回からのタスクフォースでは、核融合炉が技術的に成立しても、国民の理解が得られなければ建設できないと非常に強く認識した上で、今まではひょっとしたら片手間仕事でやっていたかもしれないけれども、今回は社会連携を強めるためのアクションを専門的に本気でやらないとチェックアンドレビューは通りませんよという決心を見ていただくため、ここに項目が入っています。
 アウトリーチヘッドクオーターの設置に向けては加速が必要であるものの、関係機関による準備委員会が設置されるなど、必要な処置について検討が開始されたところである。これは一昨年度の認識でございまして、後で新井戦略官から報告があると思いますが、今現在はそれなりに進んでいます。
 それから、13番はヘリカルです。これは核融合科学研究所と京都大学でやっているヘリカル装置のことです。ヘリカルのアクションプランではなくて、ヘリカル装置を使って原型炉を開発するときに一緒にできる部分が書いてあると考えていただきたいと思います。ただし、ヘリカルは磁場核融合炉なので、ほとんどの課題は共通ですから、ヘリカルの計画がほぼここに書いてあると思ってもらっても、そんなに違和感はないようになっています。説明は特にはないですけれども、また今後、少しずつ御説明していきたいと思います。
 それから、14番にレーザー方式について書いてあります。これは大阪大学のレーザー科学研究所でやっていらっしゃるレーザー方式についてですが、レーザー方式に関しても、レーザー核融合装置を使って、今考えている磁場トカマクの原型炉のための研究は何ができるかということが幅広く書いてあります。
 レーザー方式は磁場方式と全然違いますから、ヘリカルとは違って、レーザー核融合に必要な技術がかなり抜け落ちてしまいます。本来、これはトカマク原型炉のアクションプランでありますが、レーザー方式についてあるべきものが書いていないというのは大変申し訳ないし、まずかろうと思ったので、参考としてレーザー炉特有の技術もここに書いてあります。14番と参考のところを見ていただくと、レーザー核融合炉の全体のアクションプランが見えるようになっています。
 非常に素早く御紹介したので、中身は分からなかったかもしれませんが、こういった評価を、今年度を準備段階として、来年度にはやらなければいけないということになります。今後は、このアクションプランについて、いきなりフォローアップということではないものの、その必要性を認識しながらスケジュールを立てる形で作業していくと思っていますが、前回のタスクフォースでのフォローアップの流れで言いますと、委員全員でやっていただく上で、自分の分野はここだという、特に中心になる方を課題別に決めさせていただくことなっています。継続していただいている委員の方は同じように継続していただけばいいと思いますが、入れ替わった方は専門性も違うので、今後、具体的にはメールベースで皆さんに御質問して、それぞれの課題に1名か2名ぐらい就いていただきたいと思います。その課題だけ見ていればいいということではありませんが、主になってやっていただく場合、例えば担当になったからといって、自分が全部を書くと思う必要はないんですね。そうではなくて、それぞれの研究所であるとか、大学の研究室であるとか、そういったところに問合せをするための窓口、言ってみれば編集長みたいなものだと思っていただきたいんですけれども、自分一人だけで書くというのはできないので、いろいろなところに問合せして、現状どうですかとヒアリングしたりしていただくというところですね。それをやっていただきたいと考えています。
 実は先ほど皆様の専門分野を聞かせていただきつつ、私として考えている案があります。ただし、これは決定ではありません。今から御提案をしますので、後でもう一度私にメールを頂いて決めたいと思います。これは私の専門分野じゃないので無理ですねとか、違う方がいいですねということがありましたら、是非後で言ってください。これは私が、今、皆様の専門分野を聞いていて、こうかと思ったことを申し上げるだけなので、メモをしていただければと思います。
 伊神委員は、お話を聞いていると、加熱の御専門ですよね。加熱をメーンに見ていただければと思っています。
 今澤委員は計測が御専門だと思うんですけれども、ITERをされているので、炉設計にも絡んでいただければと思っています。全体を見ていただけるかと思います。
 奥本委員は社会連携をお願いできないかと思います。
 笠田主査代理は、かなり労が重くて申し訳ないですけれども、材料とブランケットを引き続きお願いできればと思っています。
 木戸委員については、スーパーコンダクターをお願いします。
 坂本委員には、引き続きダイバータをお願いできればと思いますし、もちろんヘリカルの方もフォローしていただければと思っています。
 蓮沼委員ですが、保守管理をやっていただくことをお願いします。
 東島委員には何でもやっていただけそうな気がしますが、プラズマが御専門だと思うので、プラズマのところと、それから、トリチウム系の燃料の二つを見ていただけないかというのが今の私のイメージです。
 きょうは御欠席ですけれども、中島委員には、理論シミュレーションをお願いしたいと思っています。
 福家委員には、引き続き安全の方をお願いできないかと思っています。
 藤岡委員はレーザーの御専門なので、レーザーを見ていただくのは当然ですが、プラズマ物理の方と、それからアウトリーチの話もしていただいていたので、よろしければ社会連携の方も一緒に相談させていただけると有り難いと思います。
 吉橋委員は、先ほどのお話からすると、ブランケットを手伝っていただくのかなという感じがします。
【吉橋委員】  そうですね。ブランケットとか、中性子関係の損傷のところでしょうか。
【岡野主査】  あとは、今、六ケ所に加速器を作ろうとしていますので、その辺もフォローしていただければと思います。ということは、ひょっとすると材料系も一緒にやっていただくことになると思います。
 一人でやるということではなく、今、何人かに複数の課題をお願いしましたけれども、数名で力を合わせて編集長をやっていただく、そういう流れだと思っています。後でまたメールを差し上げますので、よろしくお願いします。
 それから、委員ではないので申し訳ないですけれども、徳澤専門官には、引き続き計測を手伝っていただけないかと思っています。あと、全体の見渡しにも御協力いただければと思っています。私自身は炉設計の専門家なので、炉設計も見ながら、全体を一緒に見させていただいて、全体の取りまとめもお手伝いいただくという形にしたいと思っています。
 今、勝手にお名前を申し上げましたけれども、これは決定という意味ではなくて、御意見を下さればと思います。あるいは、私はこっちもできますよというのを言っていただければ、御協力いただきたいと思っています。何か御質問や御意見がありましたらお願いいたします。担当については後でメールでお願いします。
【今澤委員】  私の理解では、このアクションプランのチェックアンドレビューは、ITERのファーストプラズマとかDT運転とかにリンクしているんだろうと思っているんですけれども、2020年というと、今やITERのファーストプラズマとはもうリンクしなくなるとは思うのですが。
【岡野主査】  2020年に関しては、ITERとは最初から関係がありません。「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」を見ていただくと、何をチェックアンドレビューするかという項目がございます。第1回中間チェックアンドレビューは2020年です。ITERに関しては、ITERの技術目標達成計画の作成になっていますので、そういう意味では達成できています。JT-60SAによる研究開発開始、これは非常に大きな項目になりますね。JT-60SAの運転は始まっているのがチェックアンドレビューの前提になりますので、ここが遅れると、チェックアンドレビューそのものを考え直す必要があります。2025年の2回目の方は、ITERのファーストプラズマを見てからと考えています。
【今澤委員】  分かりました。ありがとうございます。
【岡野主査】  それでは、議題3の「原型炉設計合同特別チームの活動について」に入りたいと思います。本タスクフォースは、合同特別チームによる研究開発の進捗状況を把握し、助言等を行うということになっております。本日は、今年の3月まで特別チームのリーダーでいらしたQST六ケ所核融合研究所の飛田副所長に、平成30年度の実績と令和元年度の活動計画について御説明いただきたいと思います。
 それでは、飛田副所長、よろしくお願いいたします。
【飛田副所長】  飛田でございます。まず、原型炉設計特別チームの活動報告を御説明させていただきます。
 特別チームでは、アクションプランで特別チームと書いてあるところは全て取り組もうという姿勢でやっています。作業内容は非常に広範になります。進め方ですけれども、フラットにどの分野もちょっとずつ進めるのではなかなか進捗が見えにくいので、この年はここを重点的にとメリハリを付けてやっています。
 そういう意味で、きょう御説明する内容も、活動の考え方とか、去年はこんなところにハイライトを当ててやりましたとか、そういうところに重み付けをして説明したいと思います。その他の項目については、簡単に説明してまいりたいと思います。
 2ページを御覧ください。原型炉設計の流れですけれども、大きなチェックポイントは2025年の原型炉概念設計の完了でございます。原型炉概念設計の完了というのは、原型炉を構成する機器の技術仕様がちゃんと決まって、次の段階で原型炉の実規模の工学研究開発ができる準備を整えるということだと考えています。
 その5年前の基本設計、2020年のターゲットというのは、概念の完成に至る骨格のところを作ることと思っていまして、今、取り組んでいる概念が、2ページの下にありますように、プラズマ主半径が8.5メーター、ITERが6.2メーターですので、それと比べると二回りぐらい大きいプラズマになります。出力規模はITERの3倍程度です。
 3ページが特別チームの取り組んでいる主な活動になりますけれども、当然ながら、原型炉設計開発活動がメインの仕事になります。これ以外の活動として、まず、ワーキンググループ活動です。特別チームの活動はオールジャパン体制で行いますが、日本の原型炉の概念を提示しなければいけないので、国内の支持を得ることが非常に大事だと思っており、そのために、特別チームの内と外の研究者、技術者の意見を聞きながら、原型炉の基本方針はこうしたいという合意形成をしながら進めるための活動になります。
 アクションプランには(開発課題の)キーワードが幾つも並んでいますが、実際に何をやるかというのは、専門家を入れて理解を共有しながらやる必要があると思っていまして、そこを固めるのもワーキンググループ活動の役割です。
 それから、核融合エネルギーの長期見通しというのがありますけれども、これは核融合の外の専門家の意見を聞きながら、核融合を今後どのように進めていくかという意見聴取を行う場と考えています。これについては後で詳しく説明します。
 4ページには、原型炉設計活動に関わるところについて書いてあります。現在、チームのメンバーは96名でございまして、QST、産業界、大学等、それぞれバランスが取れている状況です。年に何度も技術会合を行って、意見交換をしながら概念を固めていくということをやっています。
 またワーキンググループ活動のことが書いてありますけれども、先ほど申し上げたように、アクションプランはキーワードを並べたものなので、その中身を詳細化する必要があります。そこをどう理解するかというのを専門家が集まって開発内容を具体化して、スケジュールはこんな感じで取り組んで、大学等の分担まで踏み込んで、うちの大学はこういうことができますというところまでやりました。
 昨年度はダイバータ、運転計画、理論シミュレーション、超電導コイルについて報告書を作成し、QSTのレポートとして印刷しております。
 続いて、5ページですけれども、これは長期見通しに関するものです。核融合は非常に規模の大きい開発費を使っておりますので、なぜ核融合をやるのかというのを明快に外に対して説明できないといけないということがあります。そのために、低炭素社会に向けた核融合の役割ということを、地球環境産業技術研究機構、略称RITEの協力を得て行っているものです。
 RITEは、従来のエネルギーだけでは、産業革命のときよりプラス2度の上昇に抑えるというパリ協定の目標達成は難しいという見解であり、そのために、革新技術としての核融合に注目しているとのことで、一緒に協力しながら、(どのような場合に)核融合がどういう役割を果たせるかという評価を行ったものです。
 図はその一例ですけれども、経済成長や人口の不確実性、幾つかのCO2の抑制のシナリオ、核融合エネルギーのコストの不確実性などの振れ幅を考慮し、130ケースの検討を行いました。その結果の一つをここに示しました。
 あと、核融合は特殊な資源も使いますので、資源として成り立っているかという見通しを付ける必要もあります。例えば燃料の増殖に使うベリリウムとか、プラズマの対向材料に使うタングステンとか、超伝導コイルに使うニオブなどは、今後見ないといけない資源だと思っていますが、昨年度はベリリウムについて調査しています。現在、世界のベリリウム生産は非常に少ないものの、埋蔵量自体は豊富で、核融合開発のボトルネックにはならないことが確認できました。
 次のページから原型炉設計の説明ですけれども、昨年度、特に力を入れて取り組んだのは、設計要件の一つである数十万キロワットを超える定常かつ安定な電気出力を本当に出せるのかという問題です。これは核融合炉本体ばかりを設計していても答えは出ないもので、ダイバータの設計をきちんとやって、除熱パワーの限界はどこまでかというのを理解したり、プラント全体の、冷却水とかタービンとか電源系を含めて所内電力はどれぐらい要るかという見積ったりしないといけません。ですから、プラント全体の検討を行って、原型炉で電気が出るかというところを検討したのが、去年の炉設計の中心的な成果です。
 それについて説明しますので、7ページを御覧ください。今、1.5ギガワット、1,500メガワットという出力の原型炉を設計しようとしているんですけれども、これで出てくる電気は640メガワットになります。これが総電気出力になりますけれども、重要なのは、ここから所内電力を引かないといけません。内訳としてポンプ動力や冷凍電力があります。
 ポンプ動力を出すには、冷却配管がどういう構成になっていて、例えば配管径とか、接続長とか、冷却水の流速がどうなっているかというところまで検討して、水の圧力損失を評価しなければなしりませません。ここは結構膨大な作業になるんですが、一次検討ですけれども、ここを何とか終えて、71メガワットと評価しました。
 冷凍電力というのは、超伝導コイルを冷凍するための消費電力ですが、これも超伝導コイルの物量やロスがどれだけあるかを評価して、最終的に、所内電力と(加熱・電流駆動のための)循環電力と合わせて380メガワット程度という値が出ました。
 正味として残るのは250メガワット程度ということで、今の段階では余り満足できる値ではないですけれども、評価の手法が確立できて、今後はここを頑張れば所内電力をこれだけ減らせるだろうという第二段階の合理化を行うための足掛かりはできたと思っています。そういう意味では、炉設計をここまでやった例は過去にはなくて、昨年度の設計検討で進んだところだと思っています。
 8ページは超伝導コイルです。これは基本的にITERの手法を踏襲してやろうとしているので、特に大きなところはないですけれども、産業界からはコイルの製作公差や設置公差が厳し過ぎるという意見があるので、ここを緩和したらどうなるかという検討をしています。緩和すれば、最後に組み上げたときの磁場に誤差が出ますけれども、それをどうやって補正してやるかという検討も行って、ここもうまくいきそうだという見通しが得られています。
 次は9ページでございます。ブランケットの増殖材料というのは、このような箱の中に詰められるんですけれども、大きい箱を1個置いただけだと、中の冷却配管が破損したときに、内圧が掛かって箱が変形します。そうすると、それを基にして事象が進展していって、安全上の問題になる可能性があるので、箱が頑丈で変形しないようにしたいということで、構造を耐圧構造にしました。170気圧に耐えるようにするという検討です。ハニカムリブ構造というのを採用すると、トリチウムも十分生産できるし、耐圧要求も満たせることが確認できております。
 10ページがダイバータでございますが、これについては、これまではスパコンを使ったダイバータシミュレーションで膨大な時間をかけてようやく1個の答えが出ていました。昨年度のシミュレーションで、何ケースかようやく計算できるようになってきて、図の緑の領域で書いてあるところが設計ウィンドーになります。ダイバータで除熱できる熱量というのは10メガワット平米が上限になるので、それより下が設計領域になっており、1.5から2ギガワットぐらいの核融合出力でも答えがあるということが分かってきたので、ダイバータ設計では大きな進展があったと考えています。
 次が11ページ、加熱・電流駆動ですけれども、これについてはNBIとECHという二つの方式を考えておりまして、これまで具体的に原型炉の図面の中に落とし込んでいなかったので、これをやりました。これを図に示しております。電気を作らないといけないので、システム効率を上げる必要があって、NBIはこれぐらい、ECHはこれぐらいのことを目指してほしいという目標を書いております。今後は、NBIであればビームエネルギーがこれぐらい、それからECHだったら周波数をこれぐらいにしたい、それからそれぞれの必要パワーの評価に取り組んでいきたいと思っています。
 理論シミュレーションについては12ページになりますが、左側にシミュレーションコードの改良について説明があります。右側は理論シミュレーションのワーキンググループ活動です。理論については大学のアクティビティーが非常に高いんですけれども、これまでの問題は、各大学の研究室が独立にやっていて、原型炉に必ずしもつながらないという問題がありました。非常にもったいないので、足並みというか、方向をそろえて原型炉を進めていく上で大きな力にしようということで、このワーキンググループを設けました。理論シミュレーションの原型炉に向けた開発計画や役割分担まで踏み込めたことは、理論のコミュニティーとしては非常に大きい出来事だったかと思います。
 13ページは炉心プラズマでございます。重要なのは、設計側で考えている設計パラメータと、今、プラズマ研究に取り組んでいる人の意見のすり合わせです。原型炉のパラメータと炉心プラズマ研究のターゲットの整合性という観点で意見交換を行って、原型炉の骨格となる設計パラメータの妥当性の議論を行っているところです。
 14ページは燃料システムです。トリチウムは研究分野がかなり細分化されていて、なかなか組織化が難しかったんですけれども、昨年度末から、主だったトリチウムの専門家を集めて、原型炉に向けた設計方針みたいなものを決めてしまいましょうということで活動を始めました。
 図に描いてありますけれども、一つは環境中トリチウムの規制の考え方、これは施設の中でトリチウムの管理をどのように考えるかとか、環境放出をどのように考えるかということです。燃料サイクルはどのような構成にするかとか、あるいは壁と吸着するとトリチウムは損するんですけれども、そのデータをどのように取得していくかとか、そういう計画を立てて、これから役割分担や研究計画について、来年度の中頃をめどに報告書にまとめる予定です。
 15ページは材料に関する研究開発です。ブランケットの構造材料である低放射化フェライト鋼は、核融合炉内で厳しい中性子照射を受けて特性が劣化していきます。これを図の青いところに描いてあるんですけれども、図の奥の方が照射のない状態で、図の手前に向かってどんどん照射が厳しくなってくると、材料の特性が左側の方に寄って劣化してきます。
 一方、負荷分布というものがあります。これは熱応力であったり電磁応力であったりしますけれども、照射劣化のラインがこの応力に近付いてくると、もう材料の寿命で、ここで使えなくなります。問題は、材料の照射データは十分ではないので、推定して寿命がここまでですよと言わねばならないことです。そのために、限定的な照射データで寿命を推定するには今後どういう開発戦略で進めるべきか、合理的なアプローチが判明してきたということです。
 16ページは安全性でございます。安全性で問題にするのは、可動性、動く放射性核種をプラントの中に閉じ込められることです。核融合で問題にするのはトリチウムになります。まず検討が必要なのは、ごく微量ですけれども、通常時に放出されるトリチウムです。これについては先ほどの14ページのトリチウムワーキンググループで管理目標値のコンセンサスを形成して、それを満たすように設計しようと思っています。
 それから、トリチウムを閉じ込める第一のバリアは原型炉の真空容器になるんですけれども、ここが事故時に損傷しないようにすることが重要です。これまでは余り炉設計が明確でなかったので、大規模な事故を仮定してパッシブにその影響を緩和することだけ考えていました。昨年度からは実際の配管構成に対して安全解析を行って、事故時における真空容器の内圧は以前の解析よりも上がりにくいことを確認しました。また、一方向にしか水が流れない逆止弁を活用すれば、真空容器内への冷却水の流出速度を抑えられて、安全の緩和効果が高まることが確認できております。
 17ページは稼働率と保守に関する検討ですが、保守概念について詳細化を進めているところです。大きな概念は図に描いてありますけれども、バナナ型のブランケットセグメントを引っ張り上げるにはどういう機器構成にしたらいいかという検討を行っているところです。
 保守の手順や時間の見積りというのも昨年度行いました。メーカーの評価だと、ブランケットについては1セクター分のセグメントを交換するのに60日、ダイバータだと30日ぐらいかかるということです。全部を交換すると結構かかることになりますが、並行作業を行うことで、稼働率は70%ぐらいまで行けるのではないかということを一次評価で得ております。
 18ページは今年度の活動計画になります。特別チームが活動を始めて5年目に入っているんですけれども、総括して言えば、原型炉の基礎概念のところは、大体この方向でよかろうと思っていて、2020年頃の第1回チェックアンドレビューに向けて、これを文書化していくのが大事です。その意味で、報告書の作成作業というのを重点項目と位置付けています。
 あと、今の設計について、設計の基本方針はこれでいいかどうかというのをコミュニティーに確認する必要があるので、トリチウム、設計パラメータ、増殖ブランケット、計測・制御検討ワーキンググループを立ち上げて、国内の専門家の意見を広く伺い、2020年以降の原型炉概念の更新に生かしたいと思っております。
 最後の19ページは、昨年度の主な外部発表の状況を示しています。主だった国際会議で招待講演や口頭発表の場を頂いて、発表しております。
【岡野主査】  飛田副所長、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御発表に対し、御質問等がありましたらお願いいたします。
【藤岡委員】  様々な検討をされていて、大変活発に活動されていると思うんですが、検討された結果、例えば知的財産みたいな形で国際特許を取られているとか、そういう成果がこの活動でどれぐらいあるのかというのと、この前の進捗状況調査の議論で言葉が何度か出てきた人材育成という意味での活動はどのようにして行われているのかという、この2点を教えていただければと思います。
【飛田副所長】  特許ということに関しては、まだ余り具体的なものはないので、出せる状況にはないと思っています。
 人材育成について、実は原型炉設計に関わりたいという先生はいっぱいいらっしゃいますが、原型炉は若い世代のものだと思うので、できるだけ中堅以下の先生方に特別チームに加わっていただいて、ご自身の研究にも生かせるような場としております。
【伊神委員】  原型炉ということは、もちろん定常運転ということだと思うんですけれども、プラズマ電流というのは、ブートストラップと、あと加熱での電流駆動で賄えるという見通しは、もう立っているんでしょうか。
【飛田副所長】  そういう設計になっています。定常を確認するのはITERの恐らく中期・後期、あるいはJT-60SAとシミュレーションとの併せ技が手掛かりになると思いますけれども、原型炉設計では物理に余り踏み込めないので、定常運転にするにはこれぐらいのパワーが要りますという評価にとどめていますが、設計全体のコンシステンシーは取れていると思っています。
【今澤委員】  資料をパラパラ見て、アクションプランの中で、安全のところが手付かずというか、弱いんじゃないかと思いながら見ていたんですけれども、それは合同特別チームの中でやっているんでしょうか。それとも、今後、ワーキンググループみたいなものを使って、外部と連携してやっていくという想定でしょうか。
【飛田副所長】  安全については人材が非常に苦しいところで、人材の多くは原子力分野にいるんですけれども、今、ほとんど人材が福島対応に向けられていて、核融合への協力が得られない状況です。ですから、メーカープラスQSTの人間、あとは、そんなに安全性をやっているところは多くないんですけれども、大学からの協力も得ながら何とかできることをやっているという状況で、これから頑張って人材を増やして将来に備えましょうという、今はそういう時期ではないかと思っています。
【岡野主査】  それでは、議事4の「原型炉研究開発体制の強化のための大学等の連携について」に入りたいと思います。アクションプランの実現に向け、大学等には技術課題の解決や人材育成への貢献が期待されています。その方策としてQSTが従来行っていたものに加え、今年度よりNIFSが取りまとめを行う大学等を対象にした共同研究を開始することになっておりまして、これまでのタスクフォースにおいて実施体制や今年度の公募テーマ案について議論いたしました。
 両機関において公募を行い、この度、実施課題が決定いたしましたので、QSTの飛田副所長、NIFSの今川教授より御説明をお願いいたします。
【飛田副所長】  前半部分については飛田から説明いたします。
 昨年度まではQSTがプロジェクト指向型の共同研究を実施しておりましたけれども、今年度から大学の自主・自律を前提としたいろいろな研究を原型炉研究開発に取り込むということで、新たな体制で始まるものです。
 1ページの図を見ていただくと、共同研究がQSTラインとNIFSのラインと二股の構造になっており、これを全体でうまく足並みをそろえてやる必要があるということで、タスクフォースの下に共同研究ワーキンググループが設置されております。これはタスクフォース、それからQST、NIFSの代表で構成されるものです。ここにプロジェクトディレクター的機能と書いてありますけれども、これは共同研究の大方針を決めます。こういう分野はQSTが、こういう分野はNIFSが担うという大方針を決めて、具体的な研究テーマの案については、その下の共同研究調整サブグループ、これはQST側、それからNIFS側の委員会等の代表の先生方で構成されるものですけれども、この中にプロジェクトオフィサーという役割の方が置かれて、共同研究の進捗を管理し、原型炉に向かって(共同研究を)どのように活用するかということも含めて助言していく役割を担っております。
 2ページを御覧ください。新しい体制での共同研究の公募を行って、QST側、NIFS側で採択の課題が決まりましたが、それを受けた5月の会合では、お互いに重複がないということを再確認して、プロジェクトオフィサーの役割、要はどの方がどの分野を分担するかということを協議いたしました。来年度、また新たなテーマで公募いたしますので、そこに向けたスケジュールについて意見調整を行っております。
 3ページは、QSTの行った新規の公募の課題と応募件数、採択件数を示したものです。一つに炉設計がありまして、これは安全性に関するものですけれども、公募を行って1件の応募があり、それを採択としました。安全性は増やしたい分野ですけれども、できる大学が限られていて、なかなか増えないというのが実情です。
 ダイバータを強化する必要があるということで、シミュレーションに関する公募を行って1件の応募があり、これを採択としています。
 材料に関するものは、(3)と(4)がブランケットの構造材料である低放射化フェライト鋼の実験とシミュレーションに関する公募です。これは1件ずつ応募があって、いずれも採択となりました。
 (5)は、強力核融合中性子源A-FNSについて、QSTの手が回っていないところを大学に共同研究でお願いするというもので、これについては1件の応募があり、それを採択しました。
 4ページを御覧ください。新規の課題では、5件採択になりました。これ以外に、表を見ていただくとお分かりのように、継続案件が多数あります。継続案件については、毎年、QSTの委員会で評価を行って、継続の可否を決めているということになります。基本的にこの共同研究は研究期間3年と考えておりまして、更に延ばすことで成果が挙がるようであれば、最長5年までは認めるということで進めております。
 以上がQSTの状況です。
【今川教授】  続きまして、核融合科学研究所の今川でございます。報告させていただきます。
 5ページ目ですけれども、NIFSは今回新しく公募を行うということで、大学が得意とする分野を大学の自主・自律という観点で応募してもらいました。三つの形にしようということで、一つは課題指定型として研究期間3年、総額1,500万ということで、これまでQSTさんで進められているものに比べると予算総額を増やして、大学の機能強化も含めてやれるように金額を増やす試みをしております。あと、人材育成という観点も大事なので、若手優先枠を設けました。
 もう一つ大事な点は、これまでQSTさんの場合はプロジェクト指向なので、QSTさんが課題を提示されるんですけれども、我々は大学コミュニティーの意見、提案を受け入れる課題提案型を含めて、三つの種目で公募をいたしました。
 どういう課題を指定するかというところはいろいろ議論がありまして、NIFSとしては準備委員会を設け、半年ぐらい議論をしました。今回については、アクションプランに書かれている内容で、特に大学への期待が大きいと準備委員会の方で判断したものとして、ブランケットの中でも先進ブランケットを一つ取り上げました。
 ダイバータについては、ダイバータの材料機器開発と、大学にある実験装置を使ってダイバータのシミュレーションを高度化するという内容を課題といたしました。
 もう一つは、燃料システムについても、大学でトリチウムの取扱施設がありますので、その辺を公募できるものとしました。大きくは三つの分野で、項目にすると七つの項目に分けて公募をいたしまして、応募件数としては、液体ブランケットのMHD圧力損失低減について2件の応募がありまして、そのうち1件は若手優先の応募があり、若手優先の方が採択となりました。
 2番目の液体ブランケット異材接合部の増殖・冷却材との共存性研究につきましては、2件の応募がありまして、1件が採択されました。
 3番目のダイバータ機器健全性評価技術の開発については、1件、若手の方の応募があったんですが、残念ながら全体の予算の都合もありまして、採択には至らなかったということになります。
 その次の4番目、耐照射性向上に向けたダイバータ用タングステン合金の開発については1件の応募があり、採択となりました。
 その次、5番目ですが、ダイバータ用タングステン合金の再結晶抑制技術の開発については、これは問合せはあったんですけれども応募までは至らなかったということで、0件でした。
 6番目のダイバータデタッチメントプラズマ中の原子分子過程実験とモデリングついては2件応募がありまして、1件が採択となりました。
 7番目の燃料循環システム要素技術につきましては、2件の応募があって、1件の採択となりました。
 課題指定課題については、10件の応募があって、そのうち5件が採択となりました。
 次のページ、7ページ目を見ていただきたいんですが、1番目から5番目までが、若手も含めてですけれども、課題指定型の採択案件でございます。研究課題と、代表者の氏名が並んでいます。
 6番目が課題提案型です。今回、実は課題提案型には9件の応募があって、いろいろなバリエーションがありまして、一番下の枠のところに分野をまとめてありますが、超伝導コイルから1件、ブランケットは指定課題とは違うところから2件、ダイバータについても指定課題とは違うところで各々2件ずつの4件で、この中身としては、液体ダイバータというかなり先進的な内容の提案がありました。あと、加熱について1件、材料について1件という応募があって、それぞれ頑張って提案していただいて、採択側はなかなか悩ましかったんですが、審議の結果、予算の制約がありまして、先進ブランケットの小型試験というところで1件採択され、課題指定型の5件プラス課題提案型の1件ということになりました。
 ですから、大学コミュニティーから提案があったことについて、来年度の公募にどのように反映していくかということが、これから調整ワーキンググループの中での議論になるかと思います。
 次のページ、8ページ目が公募・実施スケジュールになっております。現在、採択通知は出ていて、共同研究が開始されたところです。来年、年明けに成果報告会を行いまして、合同成果報告会については来年の6月頃ということで、今、調整を進めているところでございます。
【岡野主査】  どうもありがとうございました。それでは、御質問がありましたらお願いします。
【笠田主査代理】  詳細な説明、ありがとうございました。今回、こうやって、めでたく非常に多い件数で応募があって、その中から優れた提案が選ばれたと思います。今後、この研究の進捗を、プログラムオフィサーの所属する共同研究調整サブグループ等で見ていくというのも大変よくできていると思います。一方で、これをアクションプランの進捗に対してチェックしていく上で一つポイントとなるのは、この共同研究は、全てある意味要素研究といった形になっていて、これを多分、ものによっては統合化して、炉設計に反映していかないといけないと思います。ここで出た成果をどのように取り込んでいくのか、合同特別チームの方にインプットしていくというところなどもあると思うんですけれども、そういったメカニズムはどのようにお考えでしょうか。
【飛田副所長】  最終目標は、おっしゃるように、設計に反映できるというのが一番いいと思っていて、そのための一つの仕掛けが合同の報告会になります。あと、それ以外では、プロジェクトオフィサーにどう動いていただくかというところに尽きるんですけれども、全ての方が特別チームのメンバーでもありますので、そういう人たちと連携を密にして、設計にどのように反映するかというのを頻繁に議論するのが大事かと思います。
【今川教授】  1点補足しますと、NIFS側の体制としては、各研究課題について所内世話人を置くんですけれども、その所内世話人がプロジェクトオフィサーを兼ねています。なので、プロジェクトオフィサーが直接各課題をコントロールするというのが仕組みとして設けてあります。
【岡野主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、次は議事5「アウトリーチ活動について」に入ります。長期にわたる核融合エネルギーの実現に向けては、社会への信頼の醸成や人材育成が重要であり、前期タスクフォースで原案を作成した「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」や「原型炉研究開発ロードマップ」においても、アウトリーチ活動や中核となるアウトリーチヘッドクオーターの必要性を述べたところです。これを受けまして関係者で御検討され、この度、アウトリーチ活動が開始されました。
 新井戦略官の方からアウトリーチ活動の概要を、具体的なアウトリーチ活動については東島委員より御説明をお願いしたいと思います。なお、説明のうち資料7については、非公開資料となりますので御承知おきください。
 それでは、お願いいたします。
【新井戦略官】  資料6を御覧いただければと思います。私の方からヘッドクオーターの話を中心にしたいと思います。1番目の背景でありますけれども、核融合研究開発は非常に長期間にわたり、広範囲に及ぶ研究開発をしていかなければいけないという点と、あとは、国民に理解していただき、サポートしていただくことが必要だという点が、アウトリーチ活動にきちんと注力していくというところの問題意識だと考えております。
 あとは、ITERのことを考えてみますと、ITERは関係各極の連携をやっているわけですけれども、現地で活躍している人数については、日本からの参加者が一番少ないという状況になっています。そこにきちんと貢献していくという観点と、原型炉に向けた人材育成という観点からも、理解を更に深めて、ITERによりたくさんの人に行ってもらうところも、アウトリーチ活動の大きな目的の軸の一つかと思っています。
 2番目の活動方針でありますけれども、そういった問題意識もあって、各研究機関あるいは大学から関係者で集まって、核融合全体について、一般国民あるいは産業界や学術コミュニティーなど、対象によって多様なアプローチをどういった形でできるかというのを検討すべく、ヘッドクオーターを立ち上げたということであります。
 大きな新しい組織を作るというよりは、各機関に既にそういった活動をされている方もいますので、お互いのポテンシャルを生かして、委員会形式みたいな形で進めていきます。その上で、タスクフォースで御議論いただいたりご助言を頂いたりしつつ、皆さんのお力を借りながら進めていく方向でやっていくといいかと思っています。
 文科省の関係では、核融合関係でより魅力的な、いろいろな皆さんに読んでもらえるようなホームページを作成するということで、今、検討を進めているところであります。
【岡野主査】  ありがとうございます。東島委員の方からお願いいたします。
【東島委員】  それでは、私の方からは、現在のヘッドクオーターの活動状況ということで御報告したいと思っております。
 これに関しては、我々QSTとNIFSが事務局ということで、全体が始まっております。資料7を御覧いただきますと、最初のページに、まず、どういう方をターゲットにして、いろいろな活動をやりますかということを書かせていただいています。例えば小学生や中学生、高校生、大学生、産業界ですね。こういうところに向けてどういうものを考えているのかを、一覧に書かせていただいています。
 例えば最初に図鑑のことが書いてありますけれども、こういうものは、実際に形になるのにはかなりの時間がかかったりすると思います。ですので、そういう意味では比較的長い目で見ながらやるものも含めて、我々としては活動を行っていきたいと考えているところです。 一方、我々の核融合に関して、今後、メディアに対してどういうものを出していくのか、現状、メディアにはどういうものが載ったのかというのが、次のページに書かせていただいているものになります。これがどんどん増えていくように、ヘッドクオーターとして考えていきたいかと思っております。
 同時に、それぞれの組織でそれぞれの方がアウトリーチ活動をされるんですけれども、どんなアウトリーチ活動をしたかということについては、紙にまとめて、ヘッドクオーターの方に報告して、管理することを現在考えております。
 そういう意味では、対象をきっちり考えて効果を測りつつ、先ほど戦略官からもおっしゃっていただきましたけれども、刺さるアウトリーチを進めていくように注意していきたいと考えてございます。
 現状は、いろいろな方がこういう活動をしたいということで進めていくんですけれども、ある程度の期間が経ったときに、今までやってきた活動はどうだったのかという分析を行って、次のアプローチとして、足りないところに関しては当然フォーカスを当てていきますし、逆に効果的だったところに関しては、拡大したり継続したりというところで進めていきたいと考えております。こういうものを蓄積して核融合研究開発に関する全体の戦略を練っていけたらいいかと考えてございます。
 一方、戦略官からもおっしゃっていただきましたけれども、文科省さんのホームページというのは、現状、全体を解説しようということで、今、作業が進んでいます。これができた際には、コミュニティー、特に国内、場合によっては海外まで含めて大々的な広報を行っていきたいと思っておりますので、そういう意味では、それぞれが持っている活動やアイデアをどんどん募集して取り込んでいくような格好でと考えてございます。
【岡野主査】  ありがとうございました。ただいまの御報告に対して、御質問とか御助言がありましたらお願いいたします。
【藤岡委員】  一つだけお願いですが、我々大阪大学のレーザー研もこういうアウトリーチ活動に貢献できると思いますので、是非情報共有の中に入れていただければと思います。
【新井戦略官】  大阪大学レーザー科学研究所には正に委員としても入っていただいているので、連携していければと思います。
【吉橋委員】  QSTとNIFSで主にされていると思うんですけれども、関係する学会でいろいろされている活動とも一緒に考えていくということはないんでしょうか。
【吉澤専門官】  今、実はプラズマ・核融合学会へは、この活動に御協力をお願いしたいと、資料をお渡ししてお願いしているところです。なので、今後はもちろん、協力できるところは一緒にやっていきたいと考えています。
【岡野主査】  ありがとうございました。
 私から1点だけ、アウトリーチヘッドクオーターの予算というのは特にないんでしょうか。
【新井戦略官】  特定の予算はないんですけれども、こういったアウトリーチ広報というのは、ほかの分野でもいろいろ大事だということがある中で、特別に核融合だけそういった予算を確保できるのかという事情もございます。とはいえ、例えば人的資源にしても、物を作るお金にしても、文科省にもありますし、各大学や研究所にもあるかと思いますので、少しずつリソースを出し合って何かできないかというものを検討していきたいというのが、このヘッドクオーターの趣旨であります。
【岡野主査】  ありがとうございました。そういう雰囲気ができてきたのかと思っていて、大変感謝しています。どうもありがとうございます。
【笠田主査代理】  アクションプランにアウトリーチ人材育成というのがあって、その具体的な内容として、アウトリーチ教育体制及びプログラムの検討をやらなければなりません。それに関連して、リスクコミュニケーションに関するマニュアルの作成という部分に多少関係するかもしれないんですけれども、今、核融合研の共同研究を利用して、京大の武田先生、NIFSの後藤先生、光産業創成大学院大学の森先生と一緒に、核融合アウトリーチガイドブック(仮)の検討を進めています。
 それはどちらかというと研究者向けで、核融合というのは総合科学・総合技術なので、それぞれ専門の先生だと、できる範囲、分かる範囲がすごく限られているんですね。そういった研究者が何か別の領域の説明をしなくちゃいけないときに参考になる参考書を作ろうということです。その頭出しをこれから始めようということでやっていますので、関係機関の方々には、アウトリーチヘッドクオーターの活動としてまず認めていただきたいというのがありますし、今後御協力いただきたいというところです。
【岡野主査】  ありがとうございました。
 本日用意しております議事は以上ですが、このほか、特に報告、審議すべき案件はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、きょうはこれで閉会したいと思います。本日は御多忙の中、御出席いただき、ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)