資料1-1 原型炉開発に向けたアクションプランの検討について(案)

原型炉開発に向けたアクションプラン
目次

1 原型炉開発に向けたアクションプランの検討について

2 アクションプラン構成表
0.炉設計
1.超伝導コイル
2.ブランケット
3.ダイバータ
4.加熱・電流駆動システム
5.理論・シミュレーション
6.炉心プラズマ
7.燃料システム
8.核融合炉材料と規格・基準
9.安全性
10.稼働率と保守性
11.計測・制御
12.社会連携
13.ヘリカル方式
14.レーザー方式
参考資料:レーザー炉独自の開発項目

3 アクションプラン項目別解説
0.炉設計
1.超伝導コイル
2.ブランケット
3.ダイバータ
4.加熱・電流駆動システム
5.理論・シミュレーション
6.炉心プラズマ
7.燃料システム
8.核融合炉材料と規格・基準
9.安全性
10.稼働率と保守性
11.計測・制御
12.社会連携
13.ヘリカル方式
14.レーザー方式
参考資料:レーザー炉独自の開発項目


補足1 原型炉開発総合戦略タスクフォース・メンバー表
補足2 会合実績


原型炉開発に向けたアクションプランの検討について(案)

平成28年2月
原型炉開発総合戦略タスクフォース

1.はじめに
科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会核融合科学技術委員会(以下、「委員会」という)に設置された「原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、「タスクフォース」という)」では、委員会における原型炉に向けた技術基盤構築のための体制整備についての審議に資するものとして、諮問に沿い、「原型炉開発に向けたアクションプランの策定」について検討し、この検討課題に対する答申をアクションプラン案としてとりまとめた。アクションプラン案はアクションプラン構成表とアクションプラン項目別解説からなる。また、今後の検討課題についても整理を行った。

2.アクションプランについて
○核融合原型炉開発のための技術基盤構築の中核的役割を担うチーム(以下、「合同コアチーム」という)報告(平成26年7月及び平成27年1月)にある検討を元にしつつ、実効的なフォローアップと時宜を得た体制整備の進捗状況を確認できるアクションをアクションプラン構成表にまとめた。

○検討作業はタスクフォース委員が中心となりつつ、合同コアチーム報告で必要性が指摘された「ダイバータ研究開発の戦略的加速」については、核融合エネルギーフォーラムにおける検討結果(「ダイバータ研究開発の戦略的加速の方策に関する評価・検討報告書」核融合エネルギーフォーラムITER・BA技術推進委員会)を反映した。本報告の取りまとめにあたり、ITER・BA技術推進委員会の下で詳細な検討を行っていただいたダイバータ研究開発加速戦略方策検討評価ワーキンググループに感謝申し上げる。また、平成27年6月に活動を開始した日本原子力研究開発機構六ヶ所核融合研究所を拠点として設けられた原型炉設計合同特別チーム(以下、「特別チーム」という)の取組との整合性についても留意した。

○合同コアチーム報告からの改善点
タスクフォースでは、アクションプランの策定にあたり、合同コアチームが取りまとめるに至らなかった、ヘリカル方式及びレーザー方式についての調査・検討と、核融合エネルギーの社会科学的検討を行った。
合同コアチーム報告においては、「第三段階核融合研究開発基本計画における今後の核融合研究開発の推進方策について」(平成17年11月原子力委員会決定)及びその裏付けとなる「今後の核融合研究開発の推進方策について」(平成17年10月原子力委員会核融合専門部会)に示された方針に沿い、まずトカマク型を主案として原型炉を建設するための計画が示されている。現時点における原型炉研究開発においては、不確実な要素が依然として大きいことから、この主案の確実な進展を図るとともに、革新的な技術、代替技術の研究開発を展開していくことも必要である。そのため、タスクフォースにおいては、ヘリカル方式、レーザー方式の研究開発は、将来を展望する革新的技術の研究開発に必要な規模にて並行して行われるべきことを認識しつつ、それらが原型炉に向けた共通の技術基盤を提供できる部分について、アクションプランに取り入れることとした。
ヘリカル方式については、ヘリカル型定常核融合炉に向け、自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、「核融合研」という)を中心に進められる研究開発の多くの部分が、上記の原型炉に向けた共通の技術基盤を提供しうると考え、アクションプランにも位置付けている。一方、レーザー方式については、磁場方式とは大きく異なる原理を用いることから、現在進められているレーザー方式特有の研究開発が、トカマク型原型炉に向けた共通の技術基盤の提供に資する部分は限定的にならざるを得ない。しかしながら、その共通の技術基盤への寄与が、レーザー方式の研究開発計画全体から見てどのような位置づけにあるかを明らかにしておくことは、我が国の核融合研究開発の全体像を俯瞰する上で必要であることから、参考資料として「レーザー方式特有の開発に関するアクションプラン」を示すこととした。
また、核融合エネルギーの社会科学的検討に関しては、核融合エネルギーが広く社会に受け入れられるための要件、そのための方策等について議論し、社会連携活動をより効果的に行うことが、原型炉建設に向けて社会の理解を得るためにも重要と考えられることから、本アクションプランでは新たな項目として、「社会連携活動」を置くこととした。なお、研究開発そのものを目指す他の項目とは異なり、社会連携活動については、これまで必ずしも組織的な取組がなれさてきたとは言えないため、本アクションプランでは、活動を本格化するために必要な体制の構築も一つのアクションとして示した。

○アクションプラン構成表について
本報告書の構成では、まずアクションプランを表形式で示した「アクションプラン構成表」を掲載し、その後に、項目別の補足説明を付属することとした。
アクションプラン構成表は、それを見ただけで、その時期に実施すべきアクション、完了しなければならないアクションを把握できるものにするとともに、次の考え方に基づき、アクションの時期を大きく四つに分けて示すこととした。まず、原型炉段階への移行に向けた中間チェック・アンド・レビュー(C&R)及び原型炉計画を中核とする第四段階への移行判断の時期については、合同コアチーム報告の考え方を踏襲し、それぞれ、ITERのファーストプラズマ点火が見込まれる2020年頃と、ITERにおいて重水素と三重水素を燃料とした核燃焼(DT核燃焼)実証が見込まれる2027年頃と仮定した。さらに、当面必要なアクションをより具体化するため、中間C&Rまでの間を2期に分けて検討することとし、具体的には、以下のように整理した。

1)現在~2016年度 現時点ですでに実施中、またはすぐに開始すべきアクションを示す。
2)2017年度~2019年度 中間C&Rまでに実施すべき、または完了すべきアクションを示す。
3)2020年度~2027年度 中間C&R以後、移行判断までに実施すべき、または完了すべきアクションを示す。
4)2027年度~2035年度 第四段階への移行判断後、建設開始までに実施すべき、または完了すべきアクションを示す。

アクションプラン構成表における「課題」名は、合同コアチーム報告で整理された課題に準じることとした上で、全体を統合する意味で第0番とした「炉設計」や、新たに追加した課題を含め、全部で15課題がある。
また、各課題の解決に求められる具体的な研究開発を「項目」と呼ぶこととし、黒字はアクションを開始する項目、赤字はアクションが完了する項目で、両者が一対となってその項目の実施期間を示す。ただし、同じ期間内に終了するアクションに関しては、アクション名は黒字とし、終了時期だけを赤字とする一項目の形式で示した。
併せて、各アクションについて、責任をもって実施することが期待される機関・組織を示した。ただし、その実施に当たっては、適切なリソースや体制が整備された場合を前提としており、この前提条件を満たすための方策・施策は、核融合科学技術委員会などにおいて今後も引き続き審議され、適切に整備されていくことが必要である。

○アクションプラン項目別解説について
アクションプラン構成表は、必要な取組(項目)の一覧性に重きをおいており、各項目の具体的な内容がわかりにくい部分もあるため、個々の項目の補足説明を別に示した。15の課題それぞれをアクションプラン構成表に示す四つの期間に分けて、その期間内におけるアクション項目を構成表の上から順に記載してある。したがって、記載順が時間軸に沿っていないこともあることに注意されたい。

○委員会における体制整備の審議に関して、喫緊の取組として3点に留意いただきたい。
1)「ダイバータ研究開発の戦略的加速」については、引き続き組織的な検討が必要である。ダイバータ研究開発加速戦略方策検討評価WG報告における「課題解決のための運営のあり方を特別チームの総合調整グループが検討することが適当」との指摘への対応策の検討とともに、核融合エネルギーフォーラムの主体的な関与の継続をお願いしたい。
2)社会連携活動において示した「核融合アウトリーチ活動ヘッドクォーター(HQ)」については、これまで核融合分野におけるアウトリーチ活動が十分ではなかったこと、また、この問題は人材育成とも深く関わることから、この状況を改善、解決していくために、日本全体を統括して活動しうる組織の必要性を指摘したものである。この活動組織を実現するための措置を検討し、必要な対策を講じるよう、委員会における審議の深まりを期待したい。
3)アクションプランの実効性を高めるためには、原型炉設計を担う特別チームのさらなる強化等による産学官の共創の場が必要不可欠である。この際、アクションプランの遂行に求められるリソースを論じる前提として、責任をもって実施する中心機関・組織を明らかとすることが必須である。アクションプラン構成表では「責任をもって実施することが期待される機関・組織」をあげたが、委員会における体制整備の審議においては、BA協定期間終了後の国際連携活動等も視野に入れた具体的な検討を進めていただきたい。

3.今後の検討課題
○タスクフォースにおいては、アクションプランの時系列展開において最大のクリティカルパスとなるITER計画について、現在のベースライン文書に示されている計画(主なマイルストーンとして2020年ファーストプラズマ、2027年核融合(DT)燃焼、等)に基づき、検討を行った。一方で、ITER計画においては、現在、年次計画の見直しが進められており、その結果次第では、アクションプランについても見直しを余儀なくされる部分が生じると考えられる。その際は、ITER計画の変更と整合した形にするとともに、ITER計画の進捗の影響を直接受けない項目については、引き続き着実な推進を図れるよう、アクションプランを統合的視座から最新のものとする必要がある。

○アクションプランの更新にあたっては、ITER計画の支援強化と、ITER計画及び原型炉開発に向けた基盤構築の加速の強化に留意する必要があろう。

○特に、以下の点を重要課題として指摘する。
1)炉心プラズマにおいては、ITER計画の遅れが燃焼プラズマの実現に直接的な影響を及ぼすことから、ITERファーストプラズマ達成後に早期に運転制御手法を確立し、円滑にDT運転へつなげていくことが極めて重要である。そのために、最もITER支援研究への貢献が期待されるJT-60SAにおいて、先行して大型超伝導トカマク装置での運転制御手法を開発し、十分な知見を蓄積しておくこと。特に、ITERでの運転を制限する可能性があるELM、ディスラプション及びダイバータへの熱負荷の制御手法の確立が重要である。また、ITERは運転初期からフルタングステンダイバータを採用することとなっているため、欧州のJET等タングステンダイバータを採用している海外の装置との共同研究を実施し、実験データを蓄積すること。原型炉開発に向けた基盤構築の観点からは、JT-60SAにおいて高性能プラズマの定常維持手法の開発、モデリングによる性能予測精度の向上等を進め、原型炉設計に反映していくこと。さらに、ITERでの実験に向けて世界的に研究開発を主導できる人材の育成と全日本的に実験に参画するための体制を構築すること。
2)ダイバータにおいては、原型炉環境下において想定される熱負荷条件と現在のダイバータ機器の除熱性能の間に大きなギャップがあると認識されている。ダイバータプラズマ制御シナリオの策定、高い信頼性や予測性を持つダイバータシミュレーションコードの開発、実機における実験研究や線形プラズマ装置による基礎研究の密接な連携、海外の装置での共同研究の必要性、さらには新たな研究開発のプラットフォームとしての原型炉ダイバータ模擬定常高密度プラズマ実験装置及び中性子照射材料・機器の熱負荷試験が可能な熱負荷試験装置の建設等、ダイバータ開発は総合的な取組が際立って必要である。このために必要な措置の検討を進めること。
3)ブランケット開発においては、ITERに設置するテストブランケットモジュール(ITER-TBM)を含めたテストブランケットシステム(TBS)の開発が、原型炉ブランケット開発において最大の知見が得られる場であると考えられる。このために、構造材料や機能材料に関するデータベースや、熱流動、トリチウムを含めた統合システムとしての知見を速やかにまとめ、必要なデータを取得できる体制を強化し、ITERへの設置に必要となる規制に関連する規格・基準への対応をITER 計画に対して遅滞なく遂行すること。加えて、ITER-TBM 試験の成果は国際協力の面からも評価されることから、他極の取組と合わせて留意すべきこと。また、IFMIF-EVEDAを継承する核融合中性子源の活用について、核融合中性子照射場に起因するクリティカルな課題を精査し、運用計画を早期に策定すること。先進ブランケット材料については、核融合研、大学が進める基礎学術研究を着実に進めるとともに、原型炉ブランケットとの適合性を常に炉設計に照らしてフィードバックできるような情報公開・交換を促進すること。


(補足1)

第8期科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース
構成員名簿

(主査)
岡野 邦彦 慶應義塾大学大学院理工学研究科特任教授
(主査代理)
笠田 竜太 京都大学エネルギー理工学研究所准教授
池辺  靖 日本科学未来館科学コミュニケーション専門主任
石井 康友 日本原子力研究開発機構核融合研究開発部門核融合炉システム研究開発部BA計画調整グループリーダー
大場 恭子 日本原子力研究開発機構原子力科学研究部門企画調整室技術副主幹
柏木美恵子 日本原子力研究開発機構核融合研究開発部門ITERプロジェクト部NB加熱開発グループサブリーダー
坂本 隆一 自然科学研究機構核融合科学研究所教授
澤  直樹 三菱重工業株式会社エネルギー・環境ドメイン原子力事業部核融合推進室設計・開発2チームリーダー
竹永 秀信 日本原子力研究開発機構核融合研究開発部門企画調整室長代理
西村  新 自然科学研究機構核融合科学研究所教授
福家  賢 株式会社東芝電力システム社原子力技術部プロジェクト第五担当グループ長
藤岡 慎介 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター教授
(オブザーバー)
上田 良夫 大阪大学大学院工学研究科教授、プラズマ・核融合学会理事
(科学官)
山田 弘司 自然科学研究機構核融合科学研究所教授
(学術調査官)
江尻  晶 東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授

(平成28年2月現在)

(補足2)

第8期科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会核融合科学技術委員会 原型炉開発総合戦略タスクフォース
開催状況

第1回(平成27年6月12日)
議題
1 原型炉開発総合戦略タスクフォースの議事運営等について
2 核融合分野における国内の研究開発の進捗状況及び原型炉に向けたこれまでの検討状況について
・トカマク分野
・ヘリカル分野
・レーザー分野
・原型炉に向けた国内外の検討状況
3 原型炉開発総合戦略タスクフォースにおける検討の進め方について(案)
4 その他
      
第2回(平成27年7月17日)
議題
1 BA活動の進捗状況等の調査について
2 六ヶ所核融合研究所における研究開発について(ヒアリング)(非公開)
3 その他

第3回(平成27年8月28日)
議題
1 JT-60SAのヒアリング(非公開)
2 BA協定期間終了後に必要な研究開発等について(非公開)
3 アクションプランについて
4 その他

第4回(平成27年10月27日)
議題
1 アクションプランの検討状況について
・炉設計
・ブランケット・材料
2 核融合の社会との関係について
3 その他

第5回(平成27年12月1日)
議題
1 レーザー方式における核融合研究の進捗状況に係るヒアリング
2 アクションプランの検討状況報告
・超伝導、加熱電流駆動
・理論・シミュレーション、炉心プラズマ、計測制御
・安全性、社会連携、社会経済戦略
・燃料システム、稼働率・保守性
3 その他

第6回(平成27年12月24日)
議題
1 ヘリカル方式における核融合研究の進捗状況に係るヒアリング
2 ダイバータ研究開発の加速方策に係る検討結果ヒアリング
3 アクションプラン素案(ヘリカル、ダイバータ部分除く)審議
4 その他

第7回(平成28年2月2日)
議題
1 アクションプラン案について
2 その他

第8回(平成28年2月25日)
議題
1 アクションプラン案について
2 核融合分野人材育成に関するアンケートについて
3 その他

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

八木
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))

-- 登録:平成28年03月 --