5.理論・シミュレーション研究
理論・シミュレーション研究、特に第1原理シミュレーションコードや統合シミュレーションコードの開発には大型計算機が必要となる。2015年現在、核融合科学研究所のプラズマシミュレーター、BA活動の1つとして日本原子力研究開発機構で運用されているHelios(日欧共同利用)が主な計算機資源として国内の核融合コミュニティーに利用可能である。このうち、核融合専用計算機であるHeliosの運用期間は2016年12月までであるが、2017年以降も原型炉研究開発のために占有的に利用できる大型計算機が必要である。各段階において原型炉研究開発のために必要となる計算機資源量の推計を表1に示す。
表1
年 |
~2016 |
2017~2020 |
2012~2024 |
2025~2028 |
2029~2032 |
計算機資源量 |
1.5PF |
2~4PF |
10~20PF |
50~100PF |
500PF~1EF |
大型計算機を構成するハード、ソフトの技術開発速度は非常に速く、物理、工学分野等の研究者、技術者が最新の大型計算機を効率的に利用するために要求される数値計算技術のハードルが非常に高く成っているのが現状である。この状況を改善し、多くの核融合研究者がより効率的に大型計算機を利用し、研究開発を効率的に推進するには計算科学の専門家からの支援が得られる体制の構築が必要である。
また、大型計算機は実験データ解析にも必要な研究インフラである。現在、JAEA六ヶ所研究所では、BA活動の一環としてITER遠隔実験センター(ITER REC)を構築している。RECでは、六ヶ所からのITERの遠隔実験だけでなく、ITERやJT-60SA等の実験データを集積し、核融合研究のためのデータセンターとして機能することも想定している。上記の大型計算機はRECと連動し、核融合実験データの解析とその解析データを利用した原型炉研究開発にも利用されるべきである。
5.1 炉心シミュレーション(2015-2035)
炉心プラズマ第1原理シミュレーションコードの開発(J、N、大、'15~'35)
電磁流体モデル、ジャイロ運動論モデルなどの核融合炉心プラズマを記述する第1原理的モデルを大型計算機を用いてシミュレーションすることにより、より実験に近い炉心プラズマを計算機上に再現し、炉心プラズマのシミュレーション研究、解析研究を行う。また、統合シミュレーションコードで必要となる物理モデルの構築のためのデータ、また、統合シミュレーションコードの検証のために用いるとともに、可能なコード、サブルーチン等を統合シミュレーションコードに移植、結合する。
利用可能な計算機資源、原型炉設計における緊急性等を考慮し、2020年まではプラズマエッジ第1原理シミュレーションコードの開発に重点を置く。2021年以降は、ディスラプション、燃焼プラズマ、乱流輸送に関する第1原理コード群の開発に重点を移す。
炉心プラズマ統合シミュレーションコードの開発(J、N、大、特、'15~'35)
輸送コードを基幹とし、加熱・電流駆動、ダイバータ/SOL等に関するシミュレーションコード、第1原理シミュレーションコード群との結合を行い、炉心プラズマ統合シミュレーションコードの基礎を完成させる。
ダイバータシミュレーションコードに関しては、原型炉開発における緊急性、重要性を考慮し、中間C&Rが行われる2020年までに重点的な開発を行い、以降も継続的な開発を行う必要がある。
また、原子分子過程、壁相互作用のモデル化を行う。
核燃焼プラズマ統合シミュレーションコードの開発(J、N、大、特、'20~'35)
乱流輸送モデル、MHDモデル、プラズマエッジモデル、高エネルギー粒子モデル(α粒子含む)の高度化、第1原理シミュレーションコード群との結合を行い、核燃焼プラズマ統合シミュレーションコードの基礎を完成させる。
また、JT-60SA,ITER実験との比較、検証を行う。
原型炉プラズマ統合シミュレーションコードの開発(特別チーム、'27~'35)
核燃焼プラズマ実験との比較・検証に基づく核燃焼プラズマ統合シミュレーションコードの改良とプラントシミュレーションコードとの結合による原型炉プラズマ統合シミュレーションコードの開発。
5.2 プラントシミュレーション
工学基礎コード群のインターフェイス整備・材料中の分子動力学解析など工学コードの開発(J、N、大、特、'15~'35)
熱解析コード、電磁力解析コード、応力解析コード、中性子解析コードなどの工学基礎コード群の開発及びインターフェイスの整備。
材料中の分子動力学解析コードの開発。核融合炉材料に関するシミュレーションコードとしては、微視的なスケールを対象とするコードから、巨視的なスケールを対象とするコードまで、いくつかのスケールに対応したコードの開発が必要となるため長期に渡る開発の継続が必要となる。
原型炉基盤コードの整備(J、N、大、特、'20~'26)
工学基礎コード群のインターフェイスの充実、ブランケットなどのトリチウムシステム系コード、発電システム系コード、アクチュエーターシミュレーションコードなどの原型炉を構成する各システム系コードの開発。
原型炉統合コードの開発(J、N、大、特、'27~'31)
原型炉プラズマ統合シミュレーションコード、各原型炉基盤コードの結合による原型炉統合コードの開発。
核融合炉統合コードの開発(J、N、大、特、'32~'35)
制御ロジックの組み込み、ITER、SA等の実験との比較・検証を行い、発電システムとしての核融合炉統合シミュレーションコードの開発。
5.3 制御用シミュレーション
プラズマ応答特性・制御系モデリング(J、N、大,特、産)
制御用シミュレーターの構築に必要な炉心プラズマ応答特性のモデル、制御系モデルの構築を行う。
プラント挙動を予測可能な制御用シミュレーターの開発(J、N、大、特、産、'20~'26)
核燃焼プラズマ統合シミュレーションコードの実時間化による制御用シミュレーターの基礎整備。
制御用シミュレーターの整備(J、N、大、特、産、'27~'31)
原型炉基盤コード群の結合による制御用シミュレーターの整備。制御シミュレーターを利用した制御ロジックの開発。
制御用シミュレーターの改良(J、N、大、特、産、'32~35)
制御ロジック、アクチュエーターの改良。
八木
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164
-- 登録:平成28年02月 --