資料5-1 今後の社会と科学技術イノベーションとの関係深化における具体的な取組例(案)

平川秀幸
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター


※以下では、国が国立研究開発法人科学技術振興機構を通じて実施するものも含めて、国の取組として記載している。
※また、このほか、大学等(大学、研究機関)に期待する取組も記載している。

 

(1)共創・共治に向けた多様なステークホルダーの対話
1 対話支援の組織的な機能の充実
・国は、政策や研究開発における多様なステークホルダーの参画促進のため、以下のような機能を持つ対話支援の組織的な機能を充実させる。
a)コンサルテーション
b)専門家、ファシリテーター、コーディネーター、科学技術コミュニケーターの紹介
c)専門家、ファシリテーター、コーディネーター、科学技術コミュニケーター向けファシリテーション研修
d)ツール開発、普及
e)対話実施支援(ロジスティクス)
f)対話のアーカイブ
g)対話結果(ディスコース)分析とレポート
h)事例の紹介と展開
i)議論すべき議題の探索と提案

2 対話ネットワークの構築
・社会の中で多様な対話の場をつくり、政策や研究開発への参画に対する意識の醸成、日常化、緊急時に向けた準備のため、国は、科学館、公民館、図書館等の社会教育施設における対話ネットワークを構築する。その機能としては、以下のようなものが考えられる。
a)科学館等は、大学等と連携し、ELSI、テクノロジーアセスメント、リスクコミュニケーション、アウトリーチの場などネットワークを構築するとともに、大学との連携を推進する。
b)専門家、ファシリテーター、コーディネーター、科学技術コミュニケーター向け対話トレーニング
c)科学館等職員向けファシリテーション研修
d)情報提供資料、データベースなどの対話リソースの提供
e)専門家、ファシリテーター、コーディネーター、科学技術コミュニケーターの紹介

 

 

(2)ELSIへの対応及びリスクコミュニケーションの強化のための取組
 以下では、「ELSIへの対応」には、ELSIに関する人文学・社会科学的な研究(ELSI研究)だけでなくテクノロジーアセスメントも含むものとする。また、これらの取組とリスクコミュニケーションの活動を総称して「ELSI研究等」と略記する。

1 ELSI研究等の推進
・国は、研究開発プロジェクトの事前評価において、サイエンスメリットだけでなく、研究活動やその将来の成果に関するELSI、リスク及び多様性の確保等社会の求める事項まで含む幅広いインパクトを評価項目として設ける。
・国は、NPO法人等によるELSI、リスク及び多様性の確保等を含む科学技術活動、社会的課題に関する調査及び分析に関する取組を支援する。

2 ELSI研究等の推進のための組織的な機能の充実
・国は、ELSI研究等を推進するため組織的な機能を充実させる。
a)ELSI研究等の成果を、新たなELSI研究等や、社会の様々なステークホルダーによる政策提言等において活用できるように集約、アーカイブ、公開する。
b)ELSI研究等に係る研究・調査成果や政策提言等を、関係する政府機関や研究開発法人、学協会等に媒介する。
・大学等は、ELSI研究等の取組を支援する組織的な機能を充実させる。

3 研究者評価と支援体制
・国は、Researchmap等を活用して、ELSI研究等に取り組む研究者の記録をアーカイブし、研究者評価に役立てる仕組みを構築する。
・大学等は、研究者の採用、人事評価に当たって、ELSI研究、多様性による新たな研究等の取組の実績を考慮する。

 

 

(3)人文学・社会科学・自然科学連携型取組の推進
・国は、自然科学系の研究者と人文・社会科学系の研究者が相乗効果を発揮できるよう、異分野の交流、相互インターンシップ、対話の取組を推進する。
・国は、研究開発プロジェクトにおいて、人文学・社会学者の参画、インプットを得て協働する取組を推進する。
・大学等は、大学院生の教育において、自分の研究と社会との関わりについて考えさせる取組を推進する。
・RRIを推進するため、RRI推進の方法論の改善に向けた以下の取組を行う。
a)国は、大学等において、複数の分野の専門家や社会のステークホルダーが協調してRRIに取り組む個々の活動とその活動の基盤となるプラットフォーム創出を促すプログラムの実施を支援する。
b)国は、大学等における協働の方法論の研究開発における取組を支援する。
c)大学等は、RRIに係る研究やそれを実施する組織的な機能を充実させる。
d)国は、RRIの経験の蓄積、共有のためのアーカイブを整備する。

 

 

(4)社会と科学技術イノベーションをつなぐ人材養成及び確保
1 職業としての科学技術コミュニケーターの養成及び確保
・国は、専門家、ファシリテーター、コーディネーター、科学技術コミュニケーター等が、科学技術と社会に関する考え方、ワークショップ等におけるファシリテーション等の実践的スキルを身につけるための研修プログラムを提供する。
・国は、科学技術コミュニケーターやファシリテーターが活躍できる機会の拡大に努めるとともに、研究者や研究機関のアウトリーチ活動を支援する科学館や科学技術コミュニケーターをあっせん・紹介する。

2 職能としての科学技術コミュニケーション能力の涵養
・大学等は、研究者が自らの研究と社会との関係を考え、社会に対して責任ある研究・イノベーションを推進するために、社会との対話、協働を進めるための能力や、社会リテラシーの向上に資する取組(例: 総合研究大学院大学での取組例、アリゾナ州立大学のPH.D plus、科学史教育等)を行う。
・大学等は、国が提供する研修プログラムや科学技術コミュニケーター等を活用し、研究者の社会リテラシーの向上を図る。

 

 

(5)科学技術コミュニケーション活動の推進
1 研究活動の内容や成果について国民との対話を行う(アウトリーチ)活動の推進
・国は、一定以上の国の研究資金を得た研究者に対し、アウトリーチ活動等社会への波及を継続的に行うよう求める。
・国は、研究開発の評価において、アウトリーチ活動の実績等社会への影響を評価項目として設ける。
・国は、Researchmapを活用し研究者によるアウトリーチ活動の取組をアーカイブし、研究者評価に役立てる仕組み等を構築する。 
・大学等は、研究者の採用、人事評価に当たって、アウトリーチ活動の取組の実績等社会への影響を考慮する。
・大学等は、アウトリーチ活動の取組を支援する組織的機能を充実させる。
・国は、アウトリーチ活動に関する事例を収集し、研究者に情報提供するとともに、必要な研修プログラムを提供する。

2 科学館、公民館、図書館その他の社会教育施設における科学技術コミュニケーションの推進
・国は、科学館等における科学技術コミュニケーションが、知識の習得にとどまらず、多様な参加者に開かれた、創造、問題解決の場へ発展させるための支援を行う。
・科学館等は、大学、研究機関のアウトリーチ活動と連携した、先端科学技術の企画展、巡回展の実施を行う。

3 国民の科学技術リテラシーの向上
・国は、国民が科学の暫定性、不確実性などに対処し、科学技術と社会をめぐる諸課題に関与する力を高めるための取組を支援する。
・国は、国民の科学技術リテラシー向上のため、個人としてリテラシーを身につけるだけでなく、問題解決に向けて個々人が得意な分野で互いに助け合ったり、専門家や研究機関等が非専門家をサポートしたりするような社会的ネットワークの力(集合的な科学技術リテラシー)を高める活動を支援する。
・国は、情報弱者、デジタルネイティブなどの多様な国民のニーズを把握し、グローバル化に対応した情報発信に努める。

 

 

(6)市民参加型研究(シティズンサイエンス)の推進
・国は、オープンサイエンス、コミュニティ・ベイスト・リサーチ(CBR)などのシティズンサイエンスを推進するためモデル的支援をする。
・国、大学等は、シティズンサイエンスの実施に必要な情報や設備、施設、その他ツールのオープン化に向けた仕組みを推進する。
・国は、シティズンサイエンスに関する事例を収集し、アーカイブ化する。

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