原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第23回) 議事要旨

1.日時

令和4年4月5日(火曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

   1.核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成について
   2.その他

4.議事要旨

【船曳補佐】定刻となりましたので、ただいまより第23回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。本日は御多忙にもかかわらず、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
今回の作業部会おきましても、前回同様、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催いたします。これに関連した確認事項などもありますので、議事に入る前まで事務局にて進めさせていただきます。まず、オンライン開催に際しての留意事項を御説明いたします。
 一つ目です。委員の皆様におかれましては、現在遠隔会議システム、Webex上で映像及び音声が送受信できる状態となっております。御発言される場合は挙手ボタンを押していただくと挙手マークが表示されますので、順番に事務局より指名いたします。もう一度ボタンを押すと挙手マークが消えますので、御発言をいただいた後は挙手ボタンを押して手を下ろしてください。
 二つ目です。会議中にビデオ映像及び音声が途切れている場合、その時間帯は御退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時事務局宛てにお電話にてお知らせください。
 三つ目です。傍聴される方におかれましては、映像及び音声をオフとしてください。議事進行の妨げになる行為を確認した場合には、遠隔会議システムから御退席いただきます。
 四つ目です。議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日文字起こしをいたします。事務局以外の会議の録画及び録音はお控えください。
 以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
 本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれているとおり、核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成についてとなっております。
 最初に、事務局より本日の出欠と配付資料の確認をいたします。
 本日は、京都大学 中島先生は御欠席ですが、8名の委員の方に御出席いただいております。定足数である過半数を満たしております。また、小松崎委員がまだ出席されていませんので、後ほど確認いたします。
 続いて、本日の配付資料でございますが、委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにて配付資料をお送りさせていただいておりますので、各自のお手元にて御確認いただけますようお願いいたします。
 配付資料は、資料1、今後の核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成について(案)となってございます。
 資料の欠落等がありましたら、事務局までお知らせください。また、議事の途中でもお気づきの点がございましたらお申しつけください。
 事務局からは以上でございます。それでは出町主査、よろしくお願いいたします。
【出町主査】ありがとうございます。出町でございます。
 本日もお忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。早速ですが、本日の議題に入らせていただいてよろしいでしょうか。
 本日は、議題1が核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成についてでございます。
 皆さん御存じのとおり、核不拡散・核セキュリティ分野というのは多岐にわたる分野にまたがっておりまして、まず、人材育成の状況を把握することを最初の目標に、会議を1年間やってまいりました。前回と前々回の2回にわたりまして、様々な核不拡散・核セキュリティの中の、ある意味トップのキャリアを送られてきた方々、業界のよくお詳しい方にインタビューをお願いして、この分科会の参考とさせていただいた次第でございます。
 本日は、その2回分のインタビュー内容を基に作成した報告書の素案がございますので、様から御意見をいただくべく、本日の会議を実施したいと思います。
 では、早速ですが、報告書の素案につきまして、事務局より御説明をまずいただいてよろしいでしょうか。
【佐藤企画官】報告書の素案について説明させていただきます。お手元にございます資料1に基づいて説明してまいりますけれども、全部で5ページございます。三つのパートに分けて御説明させていただきたいと思います。
 1ポツの「はじめに」、2ポツ、「本作業部会の位置づけ」、3ポツの「これまでの主な取組」について初めにご説明し、その後質疑応答をさせていただきたいと思います。その後、4の「課題」、5の「対応策」について説明、質疑応答を。最後に、6番の「おわりに」について説明した後に、質疑応答ということで全体を進めさせていただきたいと思います。
 それでは初めに、1ポツ「はじめに」について説明していきたいと思います。
 我が国は非核兵器国の中で唯一核燃料サイクル関連施設を有し、広く原子力活動を実施していることから、核不拡散・核セキュリティ分野における貢献が国内的にも国際的にも強く期待されているところであります。
 平成29年6月、この作業部会が取りまとめました中間取りまとめでは、核不拡散・核セキュリティの研究、技術を支えるものとして、以下の提案がされております。
 不拡……(機材トラブル発生。報告書4.以降の事務局説明より録音再開。間の1.~3.に係る委員意見は、委員の確認の下、次のように記録する。)
 
1.はじめに
『〇我が国は非核兵器国の中で唯一核燃料サイクル関連施設を有し、広く原子力活動を実施していることから、核不拡散・核セキュリティ分野における貢献が強く期待されている。』
 
喜多委員)「核燃料サイクル関連施設」は、例えばURENCOのウラン濃縮工場はドイツやオランダなど他国にもあり「唯一」有しているとの表現は違和感がある。記載するのであれば、「唯一核燃料サイクルのフルセット施設を有し」との表現がいいのではないか。
 
小澤委員)喜多委員とかぶりますが、「非核兵器国の中で唯一核燃料サイクル関連施設を有し」ている事、「広く原子力活動を実施」している事、後に続く「貢献が強く期待されている」との間で論理が飛躍している様に感じる。書くとするならば「フルセットの核燃料サイクル施設を受入れており、継続した透明性のある管理を行っている」などの「原子力の平和利用を前提としての率先した貢献」との説明ではどうか。表現は工夫して欲しい。(その後、具体的なアイディアを主査から問われ、繰り返しキーワードを述べた。)
 
五十嵐委員)他の委員の意見にもあった様に、「平和的利用」という言葉はぜひ入れていただきたい。また、口頭説明で事務局が触れていたように、「国際的にも国内でも貢献が期待」されている点も記載した方がよい。
 
中熊委員)他の委員より発言があった様に表現に違和感がある。「非核兵器国の中で唯一」というタームを活かすのであれば、「核燃料サイクル施設」ではなく「使用済燃料再処理施設」と記載してはどうか。歴史的にも日本が再処理施設を保有することに起因して国際的に透明性ある核セキュリティの議論がなされてきたものと認識している。
 
直井センター長)他委員意見にもあったとおり、核不拡散・核セキュリティを確保しながら原子力の平和利用を推進してきた知見・経験がある。だからこそ国際的な信頼関係を構築できたと理解している。その日本が、その経験を活かして、これから原子力平和利用を開始しようとする国等に対して、貢献することは国際社会からも求められている。との表現はどうか。
 
『〇このような提案に加え、近年、我が国では、核不拡散・核セキュリティ分野の専門人材の高齢化や、大学における本分野の教官の減少等の理由により、同分野を担う人材の確保及び育成が急務となっている。
〇また、持続的な核不拡散・核セキュリティの確保のためには次世代の専門家の育成が不可欠であり、大学生や高校生等に対し、核不拡散・核セキュリティ分野への関心や興味を喚起する必要性がより一層高まっている。』
 
小澤委員)対象を「大学生や高校生等」と、「等」があるものの限定している様に見える。これは、終身雇用を前提としている様に思える。もっと広いのではないか。
三つ目〇と四ツ目〇は、三つ目の〇は、教員が減っている事へのアプローチが必要であることを述べているのに対し、四つ目の〇では、学生に向けた関心や興味を喚起するためのアプローチ方法であるのに「また、」で繋がっているため、因果関係があるようにも読める。別であるため、より区別できる表現に直してはどうか。
 
五十嵐委員)ここで対象を高校生、大学生等としているのは、この分野の専門家や教員不足を受けたものであろうと考えるが、もし「文化の醸成を図る」ことを目的としたものであるならば、現在の学生のみでなく、将来をみて、小さな子供や他分野の方など、さらに広くアプローチをしていく必要があると理解している。
 
 
2.本作業部会の位置付け
『〇また、昨今のロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、我が国の核セキュリティ体制の強化は急務である。核セキュリティに関する基盤的施策を推進する文部科学省及び関係機関においては、今次とりまとめを参考に施策を推進することを強く期待する。』
 
小澤委員)ウクライナ侵攻については重要と認識しているものの、これは武力による軍事侵攻なので異なる世界と考えている。平時の備えと緊急事態とが混ざってしまうので、誤解される恐れがある。平時の核セキュリティと戦争時の核セキュリティとは別物であり、今回のお題の人材育成とは分けて整理するべきではないか。ウクライナの事態が終わっても人材育成はずっと続ける必要があるため、背景としての記載にとどめ「様々な状況を想定して」などの表現ではどうか。
 
五十嵐委員)今回、本報告書を取りまとめた目的である人材育成は、平常時・緊急時を含め、広く、また中・長期的な人材育成の必要性であると考えている。「踏まえ」という表現で続けると、ウクライナ侵攻への対応が、人材育成の前提となる様に思えてしまう。記載をするなら、「様々な想定外事象が起こりえるため、それらにも対応できるような人材育成が必要」との主旨で繋げた方が良いのでは。
 
中熊委員)私も、ウクライナ侵攻の「踏まえ」は一足飛びと感じる。今回の事象の様な侵攻には、まず外交による抑止や国防が重要である。その上で、国会で議論されていたように、福井県警のような原発特別警備部隊の対応について話が出てくるものと考えている。侵攻により求められる事=核セキュリティとまではいかない。また“人材育成”と“体制強化”は時間軸が異なるものであり、報告書内、丁寧に表現する必要があると考えている。
 
事務局)原子力施設が狙われるという想定外の事象により世間の喚起を呼び起こす意図であり、戦争にも対応するための人材育成というロジックではないため修文させていただく。なお、本内容の詳細については「6.おわりに」で説明させていただく。
 
直井センター長)ウクライナ侵攻により世間からの核セキュリティへの注目が高まっており、強化の動きが出ていることも事実ではある。
 
小松崎委員)遅れての参加となり申し訳ない。本部分について、文章に唐突感はあるがとても重要な項目であり、これを機に核セキュリティへの世界の関心が高まっていることも事実であるため「今回の事象の様に、想定していないインシデントに対応できる人材の育成が求められている」と繋げてはどうか。
 
出町主査)侵攻と限定せずに「非常事態への対応も考える必要がある」との表現でもいいかもしれない。非常時への対応には、多方面の知識を有した人材が必要であると繋げたい。
 
(以降、録音再開)
 
【佐藤企画官】……社会全体を通じて核不拡散・核セキュリティに関する認識が薄いというコメントもございました。
 将来の子供たちに本分野の魅力を伝えていくためには、まずは広く国民が本分野の重要性を理解することが必要であり、社会全体における核不拡散・核セキュリティ文化の醸成が不可欠であるということも課題としていただきました。
 このような課題に対して今後どのような対策を打つべきかということで、5ポツでまとめたところであります。
 ヒアリングの際には、短期的、中期的、長期的という視点でもって議論を進めるようにしてきたところでありますけれども、中期的とされてきた融合領域については、いよいよ中期的とは言っていられない、短期にやらなくてはいけないというコメントもありましたものですから、ここでは短期的な視点で可能な限り速やかに対応すべき事項というものと、もう一つ、中・長期的な視点で継続的に取り組むべき事項と二つに分けて、報告書を取りまとめております。
 初めに、(1)について説明していきます。核不拡散・核セキュリティ分野で得られる知識、経験は幅広い分野に利用可能であり、潜在的に高い人材の流動性を有します。よって、本分野の人材不足に対応するためには、単に数を増やすということだけでなく、人材そのものの質の向上及び多様な学問領域からの人材の参入を促すべきであると。
 次です。限られた教育資源で効率的かつ効果的に教育を行うためには、ISCNが大学との連携を推進する拠点となることが重要であると。これにより、講義等を維持拡大しつつ、連携対象大学の学生が学部や専門分野を超えて自由に参加できる受講ニーズに応じた学習機会を充実させるべきであると考えております。これによって、個別の大学が持つ教員不足という課題を解消することもできますし、広く学生に本分野の重要性をアピールすることができると考えられています。
 また、このような連携の際には、大学や研究機関等の既存のネットワークも活用しつつ、講義や実習の場に電力会社やセキュリティ会社等の民間企業、関連学会及び他研究機関からの講師を招聘する、また学生部会を有する学会と協働した活動を実施するなど、大学だけはなく、幅広いステークホルダーとの横のつながりを深化させるべきとされています。これにより、学生に対し本分野で働くことに対するイメージや動機づけを与えるとともに、例えばISCNが有する核物質防護実習フィールドなど、これを活用した産学連携プロジェクトの創出といった副次的な効果が期待できるなど、核セキュリティ自体のグレードの底上げをもたらすことができると考えられております。
 本分野においては、技術的な能力のみならず、多様な文化的背景を持つ人々、異なる意見を持つ人々の意見を、調整しまとめることができる総合的なマネジメント能力を養うべきとされています。そのためには、国際機関で活躍するための専門性やマネジメント力をつけるためのキャリアパスが重要であります。例えば、IAEAをはじめとする国際機関、海外の研究機関へのインターンシップなど積極的な人材交流を充実するなど、人材育成における国際連携を強化するべきとされています。
 核不拡散・核セキュリティ分野の人材がサイバーセキュリティやAIなどの知識を専門家と同等のレベルまで取得することは、資源的にも時間的にも現実的ではありません。当該分野について、いかに高度な専門性を持った人材を本分野に引き入れ、総合してディフェンス力の高い核セキュリティを構築するかを、各分野の機密性も鑑みて今後さらに検討していくべきとしています。
 ISCNにおいては、IAEAが実施するサイバーセキュリティに関わるトレーニングを日本語に訳して国内企業に対して提供するなど、今でも国際レベルの教育を提供する体制が整備されていますけれども、例えばこの制度を発展させて、核セキュリティを学ぶ学生に対してもサイバーセキュリティなどの新分野に触れる機会を提供することも有効であるとしています。ここまでが短期的な視点で、可能な限り速やかに対応すべき事項として、対応策としてまとめています。
 続きまして、中・長期的な視点で継続的に取り組むべき事項。これは決して中・長期的にスタートするものではなくて、今からでも継続的に取り組むべき事項ということでまとめているものであります。
 本分野では、前述のとおり、個別の専門知識のみならず、その時々の社会情勢により常に学ぶべき内容が変動し続けることから、柔軟性及び適応性を備えた人材の育成について、これもまた継続的に検討する必要があると言えます。
 未来を感じさせるようなセキュリティシステムやそれに携わる者を魅力的に見せていくなど、直感に訴えられる広報活動・仕掛けづくりも有効であるというふうにここではまとめております。説明については以上です。
【出町主査】委員の皆様から、今の4、5につきましてコメント等ございましたらお願いいたします。井上委員、お願いいたします。
【井上委員】先ほどどうやら電波が不安定だったので1回ちょっと外に出てしまって、もしかしたら重なった質問等々があったかもしれませんが、幾つか質問があります。一つは、最初の「はじめに」で、平成29年6月に本作業部会が取りまとめたところ、人材育成スキームの構築及び核不拡散・核セキュリティ文化の醸成を図るということが前提にあり、3ページ目の(3)の核不拡散・核セキュリティ文化の醸成という部分ができていると思いますが、これに関してはすごく大きなテーマであり、恐らく組織の中で文化をつくるというのも大変難しいところであるところ、そこを社会全体の文化を醸成しようというのは更に大きなことになりますので、ここまで書くのはちょっと違和感があるなと思っています。もしかしたら「核セキュリティのさらなる啓蒙」などの文言にしておいたほうが、下の二つの丸に合うのではと感じました。
 「文化を醸成する」と簡単に言ってしまうのですがこれは非常に大きなことで、一般の社会におられる方の中に文化をつくるのは一足飛びになっていると感じます。多くの方はまだこの内容で触れていないというのが現実だと思いますので、まずは啓蒙からというようなのが現実的なのかと思ったりしました。まず一つ目は以上です。
【出町主査】社会全体の文化醸成は日本を変えるかのような、おっしゃるとおり大きな話だと思います。
【井上委員】今も啓蒙活動をされていて、これを更に行うのがまずは次のステップに必要かと思いまして。最終的には文化の醸成になるのかもしれませんけれども、現状の記載ぶりとしては、現実的な感じがあまりしないということです。
【出町主査】(3)の二つ目の丸の最後のところについてはその継続が不可欠と。
【井上委員】はい。書きぶりとしては「継続的な啓蒙」、「さらなる」とかでしょうか。「さらなる」だったらさらに発展している感じがします。
【出町主査】承知いたしました。また、ここで一旦ちょっとこの点について手がたくさん挙がっているので、井上先生よろしいでしょうか。
【井上委員】そうですね。
【出町主査】この点についてもし御意見ございましたら。五十嵐委員、お願いします。
【五十嵐委員】社会の文化醸成などについていろいろな分野の議論を見ているのですが、「啓蒙」という言葉はあまり使わなくなってきているかな、と。「啓蒙」だと上から目線というか、いいことを知らしめる、という感じがいたします。最近はまたその逆の方向も出て来ているのですが、やはり東日本大震災の後の科学への不信感から同じ目線に立つことが重視され、それで「文化の醸成」という言葉が都合いいのではということで広く使われるようになったと認識しております。それはそれで少し違和感がある、という井上先生のおっしゃることもそのとおりだと思いますが、「啓蒙」に戻ってしまうのは避けた方がいいかと。
 「理解の増進」という言葉もありますが、こちらも、いいことなんだからと押しつけているというような感じがしてしまいます。難しいところですが、言葉遣いについては事務局で御検討いただければ。【井上委員】「啓蒙」だと少し上から目線なのだと、よく分かりました。「共有」などはいかがでしょうか。
【五十嵐委員】そうですね。「共有」というか「社会連携」など、共にやっていくというイメージがよいかと。言葉遣いのことで申し訳ないのですが。
【井上委員】いえいえ。
【出町主査】布目委員、お願いいたします。
【布目委員】私も、「啓蒙」という単語は今使わないなと思いました。ただ、井上先生のおっしゃるとおり「文化の醸成」というと大きくなり過ぎてしまうので、共に考えられる社会をつくっていくとか、そういう場や機会を設けるとかという、双方向で考えられる、語り合えるような仕組み、考え方を記載していただいたらいいのではと思います。
【小松崎委員】今お話を伺っていて、「共有」もいいなと思いながら、僕は「共感」のほうがいいかなという感じもしました。
 それで、井上先生がおっしゃることはもう本当によく分かる一方、核セキュリティは一部の専門家がやる話ではなくて、日本全体でやらなければいけない話であり、国民全員共通の重要課題であるということは間違いないかと。
 ちょっと別の例で考えてみると、マイクロプラスチックだとかは、5年前、社会は全国的な課題とか思っていただろうかと考えると、決してそんなことないと思います。ところが今は、小学生のお子さんもプラスチックをどう減らそうかとか、コンビニあるいは産業界挙げてプラスチックを何とか減らしていこうと、これは言ってみれば文化になりつつあるかと。環境保護とか、サステーナビリティーという言葉が効いてきて、ようやく文化として根づき始めたのが今の状況だと。やはり核セキュリティも避けて通れない非常に重要なもので、我々日本人全員にとって重要であると思います。
 なおかつ先ほど少し議論があったように、もし何か紛争や様々な暴力行為などがあった時には、今まで考えてなかったことに対しても手をこまねいているわけにいかないと。だからこそ、特定な分野の専門家がやるべき仕事ではなくて、みんなで力を合わせて共感を持って、全員で取り組んでいこうとしていくのが、「文化の醸成」という言葉を使った最大の動機だと思います。そのため、共感や共有やみんなでトライしていくことをこの柱にするのであれば、最終的にそれは文化の醸成を目指すことで、立場を鮮明にすることは価値があることではないかなと。
 それから、プラスチックのように、数年で思いのほか意識が変わる国民性を我々は持っていることを強みと考えれば、こういうふうに訴えておいて実際にそれに見合った活動を専門家のサイドから仕掛けられれば、共感や共有に繋がって意外と短い期間で文化という姿になれるのではないかと。
 この文化が醸成されたらまずいことでなければ、高い目標として挙げておいたほうがいいかと思います。
【出町主査】今の御意見について、委員の先生方からございますか。
(なし)
【出町主査】私の理解ですが、「文化の醸成」という言葉は非常に大事ですが、多分「社会全体の」という枕言葉が皆様に引っかかったのだと思います。
【小松崎委員】少し追加させていただきますと、非常に素朴な言い方になりますが、他人事だったのが自分事になることが大事だと思います。
 私は仕事で非常に密接な関わりがあったので、自分事として見る視点は出来上がっているのですが、一般の企業に勤めていらっしゃる方や一般の社会の方たちが、この核セキュリティを自分事として考えていらっしゃるかどうかと。自分事として考えることが、「文化」が意味することであれば、「社会」も掲げておく必要があろうし、あるいはみんなの力を求めて、力を合わせてということであれば「共感」が必要かと。自分事という意識をいろんな分野の専門家の方が持って力を合わせたとき、原子力の専門家だけがやっていることとは異なった新しい取組ができると考えれば、「社会」を掲げておくことが非常に重要だと。
 つまり、最後にまた同じことを言いますが、他人事じゃなく自分事としてこの課題を考えて、具体的な行動を連携して取れるようにするのが目標で掲げられていると思うので、表現やいろんなことは工夫が必要かもしれませんが、掲げた旗は下ろすべきではないと私は感じております。
【出町主査】対象とするのは核セキュリティという狭い分野の一つだけ、専門性だけじゃなく、日本全体ということはおっしゃるとおりだと思いまして、この要素は消さないほうがいいと思います。ただ「社会全体」と「醸成」とは両方パワーワードなので、もう少しバランス取って、意味は消さないように言葉を考えていく必要がありますね。
【佐藤企画官】「(3)核不拡散・核セキュリティ文化の醸成」は大事だとタイトルとして残した上で、二つ目の丸のところ、例えば「核不拡散・核セキュリティ文化の継続的な理解増進が不可欠」とか、「理解増進」のところをどう変えるかは調整したいと思います。
【出町主査】私の勝手な意見ですが、あんまり控え目過ぎなくてもいいかと思います。
【井上委員】「理解の促進」とか「共有」とか、意識の共有を意味する形ですね。「文化の醸成」はもともとその意識の共有から生まれ出るかと思いましたので、機会をどう設定するかなど問題はあると思いますが、「広く意識を共有する」とか、「共に」がキーワードだと思いますので、そういう言葉が入っていれば。「共に」が大事なのかなと思います。
【出町主査】この(3)のタイトルで醸成は結果として醸成されるのは理解できるけども、
最後の「文化を醸成させるぞ」が多分よくないという感情、印象受ける方がいるのではないかと。いろんな意見をいただきましたので、ここは注意して修文をお願いいたします。
【佐藤企画官】承知しました。
【出町主査】では、井上先生の御意見の途中でしたので、次よろしいでしょうか。
【井上委員】この今後の対応策等々で、大学生が非常に中心の対象になっているように見えますが、今後、何か学び直しと言いますか少しキャリアを積んだ方も大学に戻ってくる方もおられますが、その方々も対象でしょうか。
 というのは、この分野は1回学んだらそれで終わりというわけではなくて、どんどん発展して融合していくという話が先ほどありましたが、そうなってくると、1回学んだきりではなくて、途中で知識を得たいために戻ってこられる方も対象なのかと思っています。
「講義や実習の場に」とか、「学生部会を有する」とか、今後の対応策の1番の3番までは完全に学生、いわゆる高校生から大学に入ったような学生さんをイメージしておられると思うんですけれども、もちろん大学院生もですが、また学び直しで戻ってこられた学生さんも想定されているのかという質問です。
【出町主査】少なくとも、学び直す方を排除するものではないと思います。
【井上委員】積極的にその人たちを受け入れるという話でもないということでしょうか。
もしかしたら学ぶ方を積極的に新たに受け入れる仕組みを何か考えるとか、もう一つ入れてはいかがかなと。自分の専門の中で連携をしながら、スキルの拡大をしていくという観点からよいのではと。
【出町主査】なるほど。学び直しをされる方を文言として出しておくということですね。喜多先生、手が挙がってますが、この点でしょうか。
【喜多委員】リカレント教育については人材ネットワークでもいろいろ行っており、そもそも重要さは分かっていますが、私の意見は別の点です。
ただ、井上先生の意見は、学生とは要するに若い学生だけでなく、現役の社会人に対しても同じくということですね。
【井上委員】はい。
【出町主査】「社会人学生」をキーワードとして入れるとカバーできる気がしますが、文科省としては、民間の働いている方も対象になりますでしょうか。
【事務局】大学及び研究機関で働いておられる方であれば、対象になると考えています。
【出町主査】中熊委員、お願いいたします。
【中熊委員】井上委員のおっしゃったことは私も賛成でして、我々事業者の立場はこの委員会でも何度か御発言させていただいておりますけども、電気事業者の立場で申し上げれば学生時代に専門性をこのセキュリティ分野だけ有した方が必要なわけではなく、社会人になってからセクションに入って、そこで育ち、それから専門性を高めていくため、そういう分野を高めていく取組が必要だと思っていますので、原子力施設、原子力分野の中にもそういう事業種があると認識していただいた上で、やはり社会人を教育の場に受け入れるようなプラットフォームは、これは文科省さんにということではなく、大学や、あるいは研究機関であれば、そこは意識してやっていただかなければいけない部分だと思っていますので、そういう記載を少し入れていただくのは非常に有効かと思います。
【出町主査】この件について、五十嵐委員いかがでしょうか。
【五十嵐委員】今、伺っておりまして、この作業部会で最初から議論になっていた点が報告書のまとめ方に影響があると感じました。例えば社会人教育とかリカレント教育は、文化の醸成などにはすごく重要だと思いますが、文科省として今すぐ必要なのは専門的な場所で核セキュリティの専門家として役立つ人材も育てなければいけないということで、その芯の部分と周りの部分があると思います。その点がうまく書き分けられるといいかと思いました。
 先ほども申し上げましたが、高校生や、もっと小さい小学生、中学生ぐらいから核セキュリティについて知ってもらうのも重要ですけれども、やはり大学生、大学院生に向けての取組も重要ですので、これらがうまく合体できるようになるといいかと思い、手を挙げさせていただきました。
【出町主査】今、中熊委員、五十嵐委員からありましたように、全体通してだと思いますが、対象が今現役の学生さんだけでなく、社会から戻ってきた方にも、大学であれば立場は学生さんとして、もしくは研究機関で教育する時にはまた別の立場になるかもしれませんが、そういう方々にももう少し積極的に門戸を開く表現に全体的に見直すという御意見だと思いますが、事務局さんいかがでしょうか。
【佐藤企画官】承知しました。ポイント分かりましたので、追記したいと思います。
【出町主査】委員の先生方、その方向でよろしいでしょうか。
(異議なし)
【出町主査】井上先生、ほかにございますか。
【井上委員】4ページ目の一番上の丸ですが、5の今後の対応策の1の短期的な視点のところの4番目で、「本分野においては、技術的な能力のみならず」と始まる部分ですけれども、これも非常に大学生を想定した書きぶりになっているかと思います。「海外の研究機関へのインターンシップ等」で「積極的な人材交流」とありますが、インターンシップだと学生さんが対象でできることも限られていまして、国際機関等での活躍に関しては、仕事を一緒に行う立場での人材交流を経験していくほうがよろしいと思いますので、仕事を通して人材育成ができるような書き方に、具体的には「インターンシップや出向など」などとしていただけたらと思います。
【出町主査】インターンシップで学ぶだけでなく、出向して実務をするということですね。
【井上委員】そうですね。「インターンシップや実際に実務を行う出向などを通じて」という書き方もよいかと思いましたが、書き方に関してはお任せします。インターンシップだけとすると学生さんが対象かと思ってしまうかと。
【出町主査】先ほどの議論と同じ方針でございますので、事務局さん、お願いいたします。
【佐藤企画官】承知しました。ありがとうございます。
【出町主査】それでは次は喜多委員、お待たせいたしました。お願いいたします。
【喜多委員】2ページの4、課題の(1)の1ポツ目について、最後に「理解促進が求められる」と書いてあるのですが、読むだけだと対象が分からないと感じました。学生なのか社会全体なのか、理解促進というとよく社会全体に対する理解促進だとも言いますが、この対象をはっきり書かれたほうがいいかと、これが1点です。
 それからその二つ下の丸、「他専攻と合併するなどの例が増加している」と。核不拡散・核セキュリティの専攻が合併した例は聞かないので、これは原子力工学科についてかと感じました。原子力工学であれば、例えば東海大学が原子力と応用化学科が合併したかと。ただ事実関係として、核不拡散・核セキュリティという分野ではないと思います。
 そして、3ページの5の今後の対応策の(1)の最初の丸ですが、ここの「潜在的に高い人材の流動性を有する」の点、これはそうかなと思うのですが、そこの後に、「数を増やすだけでなく、人材そのものの質の向上及び多様な学問領域からの人材の参入を促すべき」とあり、これ自体は間違ってないのですが、「流動性を有する」からいきなりここに飛んでしまうと論理が飛躍しているように感じました。
 そして4ページ、先ほど井上先生が言われたパラグラフですが、「本分野においては、総合的なマネジメント力を養うべき」というのも間違いではないのですが、「本分野においては」と言う必要もないかと。いかなる分野においても総合的なマネジメント能力を養うべきだと思います。「本分野においても」と言えば済むかもしれませんが、特筆することでもない気がしています。
【出町主査】最後の御意見からいきますと、4ページの「本分野においては」を「も」にするのは皆様御異存ないかと思いますが、よろしいですか。
(異議なし)
【佐藤企画官】承知しました。
【小松崎委員】小松崎ですが、よろしいでしょうか。
【出町主査】お願いいたします。
【小松崎委員】今のパラグラフが大分気になっております。総合的なマネジメント力を養うことは、国際機関で活躍するキャリアが密接に関係している論調に読めます。
 今後の核セキュリティを考えたときに、総合的なマネジメント力は今、出来上がってないと感じております。それをつくり上げるためには多方面の専門分野が絡み合って、総合的にどう取り組んでいくかを新たな試みとしてつくり上げなければいけないと思っております。これを前提としたとき総合的なマネジメント力は、果たして国際機関でキャリアを積むこと、それしかないんだろうかと。
 そのため、この「海外のキャリアパスが重要であり」と「が重要であり」と書くのではなく、仮に「キャリアパスも重要であり」と言えば少しは和らぐかなと。
 あまりこの部分を強調するのは、今回の全体の趣旨を考えたときに本当に効果的なんだろうかということです。こういうことをやる人がいなくなってしまうと困る、だからこういう人をつくろうという課題が眼目であれば強調しておくべきと思いますが、他分野との協調とか他方面との協調ができて総合的なマネジメントができる能力が、新しいリスクマネジメントには必要だという見方をすれば、これから求められる総合マネジメント能力を持ったリーダー像というのは新しく描くべきであって、こういう書き方で規定してしまうと、また元に戻ってやはり特定分野の専門家たちの行動に逆行するような感じがしました。心配し過ぎなのかもしれませんが、強調しないほうがいいかと。いかがでしょうか。
【出町主査】今回のインタビューでキャリアパスのことをいろいろお伺いしたので、そのことをここに入れ込んでいたと思うのですが、今、小松崎委員のおっしゃるとおり、そのような危惧もあり、確かに分けたほうがいいのかもしれないですね。井上先生、お願いいたします。
【井上委員】国際、という文言も私は違和感がありました。色んなキャリアパスがある中で、どのキャリアを進んだとしても、分野融合を可能にしたりするような、異なる分野や文化的背景を持つ人々や異なる意見を持つ人々の意見を調整するという能力は必ず必要になります。国際機関はそのキャリアパスの一つであるだけで、本当に密接につながっているかというと違和感があると私も思いました。やはりこちらは分けて書くほうがいいかと。
 どんな技術的な部分以外の能力がこの分野で必要かというと、他領域の人々と一緒に働く能力であるとか、意見を調整しまとめるなどだったりするので、そういう総合的なマネジメント力が必要になるのは当然だと思います。その先に、国際機関や、全く違う分野で活躍する人々の知識を活用しながら新しい領域に出ていく、新しい領域を開拓していくのかと。そのようなニュアンスが伝わる書き方になればいいかと。
【出町主査】皆さんよろしいでしょうか。五十嵐先生、お願いいたします。
【五十嵐委員】私も、ここは総合的マネジメント能力と、なかでも非常に大事な国際連携について、二つ分けるのがいいと思います。井上先生がおっしゃったように「その一つとして」としていただくと、よりその国際連携の部分が際立つかと。総合的なマネジメントが全体として重要であるとしたうえですね。
【出町主査】では、少なくとも分けた上で、できたら前半のほう「総合的マネジメント力を養うべき」の後に具体的な文を1文、2文追加してもいいのかもしれません。
 あと、喜多委員のコメントに戻りまして、2ページ目、1ポツの一つ目の丸について「理解促進」の対象は誰かですね。こちらは、1個前の文章、「学生にとって」と書いていますが、先ほども全体通して対象をちょっと広く取りましょうという話もあり、ここの部分を「学生にとって」と限定する必要あるかという気がしてきました。
【喜多委員】社会全体のという感じもしますよね。
【出町主査】学生に限定する必要はないかもしれないですね。広く見れば皆学生かもしれませんが。ここも先ほど申し上げた、全体通した修文の方針に基づいて見直すことでいかがでしょうか。
【佐藤企画官】4ポツ(1)の一つ目の丸、どのような内容を扱うか、どのような業務に携わることができるかは、主として学生にとってだと考えています。一方で、御指摘がありました理解促進が求められるのは学生のみならずだと思いますので、それが分かるよう修文をしたいと思います。
【出町主査】喜多委員のもう一点の御指摘、その二つ下の、「他専攻と合併するなどの例が増加している」という文が、事実に反するということも、原子力全体では確かに合併していますけど、専門の核不拡散・核セキュリティだけ、は聞いたことないかと思います。こちらも修文ください。そのほかいかがでしょうか。
【喜多委員】5の(1)の最初の丸、高い人材の流動性から質の向上という話にいきなり飛ぶのがよく分からないかと。何かが抜けているような。ここは、高い人材の流動性を有しているので、せっかく育てた専門家が減ってしまうかもしれないから、人材不足に対応するためには数を増やすだけではなく質の向上も大事という意味でしょうか。
【出町主査】数を増やすことは、もうここだけに集中するのでなく積極的に外から取り入れることで対応するという意味です。今、布目先生手が挙がりましたがいかがでしょうか。
【布目委員】今、喜多委員がおっしゃっているところではなく、その前のところですが、課題の(1)の表題が「継続的な教育機会の確保」となっていて、学生さんが対象とあるので、対象は学生なのかと皆さま引っかかるのかと思うのですが、そこらとの前段のような感じで、教育の機会は学生、本当の若い学生でなく教育・研究機関であるとか、もう一度学び直す機会であるとか、そういういろんな機会があって多様な方々に場を設けていくのが重要だという文をおいて、であると社会全体への理解促進がなければそういう人たちが増えていかない、のように書かれるといいのではと感じた次第でございます。
【出町主査】追加するのは最初の方ですか。
【布目委員】課題の1の最初ぐらいに、全体としての対象的なものと、それに対してこうしたほうがいいのではないかと流れがあったほうが、いいのではないかなと。今の文章ですと限定感が強いなと感じます。
【出町主査】5の(1)の一つ目の丸で、「人材の参入を促すべき」とあるのは、教育するほうの人材を指しているのか、それとも教育を受けるほうか、改めて読んで分からなくなってきたので、まずは明確にしたいと思います。私は教育をするほうかと思ってますが。それによって喜多委員の回答にもどう答えればいいか方向性が見えてくるかと思います。
【喜多委員】人材問題は、必ず数の問題と質の問題が両方出てくる話なので、別にここだけに限ったことでもないという気もします。
【出町主査】私の印象としては、核不拡散・核セキュリティの学生さん、専門家を増やすのは無理だから、他分野の人たちに協力してもらおうと、他分野の人材の人に教育して核セキュリティとかの一部になってもらおうと見えたのですが。喜多委員、どう思われます。
【喜多委員】高い流動性ということから、せっかく教育、訓練したけどどんどん外に出てしまうのはしようがない、その分をほかの分野からの人で補って数も質も高めましょうと、何となく受けまして…。
【出町主査】私も第一印象はそうでした。ただ、ただ読み方によっては、さっき申し上げたように、教育する人材を一足飛びに増やせないので、ほかの分野から呼ぶと読めるます。事務局さんとしては、ここの意図はどうでしょうか。あと、ほかの委員の先生方は――五十嵐委員、お願いいたします。
【五十嵐委員】手を挙げたのは別のところなのですが、今のところについては、非常に人の流動性があり、また、その専門性をいろんなところでも生かすことができるといういい面も含めた広い意味合いが持てるといいかと思いました。マイナス面だけでなくて、多くの分野で活躍する人も出せるし、ほかからも流入できると補足するといいかと。
【出町主査】小松崎委員、お願いします。
【小松崎委員】「流動性」と文字では書いておりますが、文章を読むと流動性を言いたいわけではなく、この核不拡散・核セキュリティでいろいろやってきた方々が、能力は高いしほかの分野でも十分活躍ができるだけの能力が潜在的にあると言っていると感じました。これ、全体で見ると褒めているんですよね。辞めてしまうことを問題にしていたらこういう書き方をしないかと。流動性よりも、汎用性とか他分野での能力の発揮度合いが高いとか、が言いたいことかと。事務局のお考えはいかがですか。
【事務局】小松崎委員のおっしゃることを書いたところが正直なところであります。よって、「増やすだけではなく」――後ろのほうにかけるべく、前段を入れたところがあります。しかしながら、これまで御指摘のとおり人材育成される側なのかする側なのか、両方取れる書きぶりになっているので、表現を工夫したいと思います。
【出町主査】「流動性を有する」というポジティブなことを書いたのに、後半の「よって」の文が、ネガティブな印象を強く感じます。私の取り方だけかもしてませんけども、核セキュリティをやっている人間だともう対応できないから、ほかから呼んでこよう、呼ぶしかない、なネガティブに解いてしまいました。それだと何か、これから学生さんをはじめ人材に対するアピールにはどうかと。
【小松崎委員】私は、専門が原子力ではないものですから、そういう点で見ると、やはり原子力の勉強した人は理科系の人間の中で見るとすごいと思います。そのため、ほかの分野でもきっと力を発揮する能力をお持ちの方が多いだろうという前提で見てました。
 ただし、その裏腹で数は少ない。そのため、その方々が今までやってきた専門性のほかに核セキュリティまで専門家になれというのは無理があるので、他方面との付き合いの中でというのが今までの流れだったと理解しています。
 ですから、事務局が書きたかったことは、ほかの分野との連携とかは潜在的にやる能力はあるだろうと。その人たちが減ってしまうことを心配するのではなく、違う分野からいろいろ人を入れたときも、うまく調和することが可能でないかということを前提に、丸ポツを書いているかと、ポジティブなものとして受け止めました。
【出町主査】今、小松崎委員からもありましたように、意図は理解いたしました。ただ、ネガティブに受けてしまう人もいるかもしれませんので、総合的に修文をお任せします。中熊委員、お願いします。
【中熊委員】今のところ、「人材の参入を促すべき」の参入する場所がどこなのか、教育エリア、研究エリア、あるいは現場がある事業エリアなのかが、よく分からないなと感じました。あるいは全てに対してこれは言っているのかと。
 いずれにしても、この核セキュリティを高度化していく、要は強化していくことが目的だとすれば、その次の4ページ目の二つ目の、サイバーセキュリティだとかAIのようなところ、他分野の方々と結構融合して、しっかり高度化をしていかなければいけないという、文言も記載していただいてますが、まさにもうこういうことでないかと私は思っています。
 教育分野であっても、それから研究エリアであっても、事業エリアであっても、同様に他分野との融合のようなことをやっていかないと、多分、今後のセキュリティの高度化というのは図られていかないということをもしここでおっしゃっているんだとすれば、もう少しそういう趣旨で書いていただいたほうがいいかと。何も教育者だとか、あるいは学ぶ側だとか、そういうことだけの話をしている、狭義の話を表しているわけではないと思いましたので、もしそれが合っているのであれば、そういう趣旨に変えていただいたほうがいいかと思います。
【出町主査】事務局さん、ここの部分は中熊委員がおっしゃったように、人材として広い範囲を考えていると思いますが、それでよろしいですか。
【佐藤企画官】おっしゃるとおりです。
【出町主査】修文についてはお任せいたしますが、この趣旨でよろしくお願いいたします。
 関連して今、気になったのが、4ページ目の上から二つ目のポツ、上から2行、3行目の部分が少し批判的な感じがするのですが、もう少し柔らかい感じになりませんか。
【五十嵐委員】私、手を挙げていたのはここのことで、「資源的にも時間的にも現実的ではない」とまで言い切ってしまうのはどうだろうかと思いました。
 今、議論があった他分野との連携という中で、特にこのサイバーといいますか、AI等の分野についてはあまりに専門化が進んでいて、核セキュリティ分野の方がすぐに追いつけないということは、これまでの議論でもあったことかと。そのためその内容は書きつつ、表現の問題ではありますが、「より専門的なところから入っていただいて連携する」というような、うまく書いていただけるといいかと思いました。専門性の高い方々同士が連携するのが重要で、いろいろな分野との融合が必要な中でも、特にここはそうだと強調されている部分だと思うので、書き方を工夫していただければ。
【出町主査】文言として「緊急性」など言葉を入れると、つながる気もします。
【小松崎委員】五十嵐委員のお話を伺っていて、なるほど、そういう受け止め方もあるのかと思ったのですが、私としては、核セキュリティ分野とは別にサイバーセキュリティ分野という分野があるわけではない、という捉え方が必要だと思います。本来核セキュリティの中にはサイバーセキュリティやそれからAIも入っているしと、核セキュリティは非常に学際的な分野であるべきものというのが私の考えです。
 ただ、従来はそれが非常に狭く捉えられて、ごく一部の専門家の方たちがやっていることが核セキュリティだと、社会も考えていたと。昨今のように、コンピューターによって脅威にさらされることが現実に起きてきて、実はサイバーセキュリティも核セキュリティを考える大事な要素の一つだったと、この間、お話もしていただいたわけですよね。
 そのため、集合論のように考えると、核セキュリティという集合があって、それとは別にAIという集合があってという捉え方ではなくて、核セキュリティの学問の体系としては、一つの体系ではなくていろんな学問が集まった総合的な学問だと立場をシフトする必要があると思います。
 例えばAIだと、何か嫌なことがあったときに被害がどれぐらい広がるかAI技術を使ってシミュレーションするとかは、当たり前のようにできなければいけないわけですが、そういうAIシミュレーションを、実際に専門的に教育を受けた方が今、核セキュリティ分野で仕事しているかというと、ごくまれなケースかと。では、今の核セキュリティ専門家にAIの専門家にもなってくれというのは、それは無理なので、ここに書かれているように新たに入れなければいけない要素であるサイバーセキュリティやAIに深い知見を持つことを期待するのは無理だという立場を鮮明にしたほうが、むしろ協力関係は前に進みやすくなるのではないかと思います。
【出町主査】チューダーマンというのは変ですが、今の書き方ですと、核セキュリティとサイバーセキュリティとAIなどは別物だという印象も強くなってしまうと思います。それから、核不拡散・核セキュリティ分野にとってサイバーセキュリティやAIも大事な一つの分野であるみたいな枕言葉とする表現、「よって」などを入れるといいのかと。
 重要なのは後半の文章ですよね。いかにサイバーとかAIで高度な専門性を持っている人を引き入れるかと、そのための枕言葉だと思うのですが、まず一つ目として修文しなければいけないのは、セキュリティ分野の一つで、サイバーも、AIもと言った上で、「専門家と同等レベルまで取得する」と明確に書くのは嫌だなという感じがするので、柔らかく書ければ。意図は必要です、ただ急務だから、サイバーとAIの専門家と協力すると、全体通した他方面の知恵を入れると……。
【小松崎委員】専門家の方々は核セキュリティ等で今までずっと実施されているので、確立された分野とお考えなのは当たり前だと思います。ところが、セキュリティ分野の全体から核セキュリティの方向を見ると、いろんな要素がある中の一つだと。
 どちららが今後重要かというと、セキュリティは本来人間が生き延びるために必要なもの、と非常に広範に捉えるならば、その構成する要素は世の中の移ろいや様々な技術の進歩によって変わっていかなければいけない。核セキュリティそのものの概念を変えておかなければいけないが、それがまだ不十分だというのが私の考えでして、したがってAIだとかサイバーセキュリティだとかは全部、核セキュリティを構成するコンポーネントであるという考え方で申し上げています。
【出町主査】核セキュリティとサイバーセキュリティ、AIは別物じゃなく要素だと分かるような修文を事務局さんにてお願いします。井上先生、お願いいたします。
【井上委員】5番の今後の対応策の(1)の一つ目の丸について、先ほどは全然議論に出ませんでしたが、「数を増やすことではなく、人材そのものの質の向上」の「質」は具体的にはどういうことを指しているのでしょうか。高い教育レベルなのか、専門性の深さなのか。
【出町主査】その後の文を見ると「いろんなところから参入を促すべき」なので、バラエティーに富ませるという意味の質だと受け取りました。いろんな人を入れて質を上げたいと。事務局さん、どうでしょう。
【佐藤企画官】主査の御指摘どおりだと思います。
【井上委員】分かりました。それから、皆さんのおっしゃっているところ、自分も専門性を持ちつつ、ほかの専門性に対する理解があるとか、人材マネジメントの世界でいうT型人材のような、ある程度専門性が深くなりながらもほかのところも分かる、そんな人材がこれからいろんな分野を統合してセキュリティを構築できる人材だとするならば、先ほどのページ4の1つ目の丸、「総合的なマネジメント能力」に、加えて統合する力のような要素も含めておいたらいかがかと思いました。
【出町主査】今の御意見、「総合的なマネジメント力を養うべき」の後に追加の文として、その内容としての具体案を一つ、統合力ということを入れるべきというふうに理解いたします。よろしいでしょうか。
【井上委員】そうです。
【出町主査】今、御示唆いただきましたので、事務局さん検討をお願いいたします。五十嵐委員、お願いいたします。
【五十嵐委員】先ほどのサイバーセキュリティとAIのところは、私の言葉が足りず申し訳ございませんでした。、基本的には小松崎委員の御指摘と全く同じように感じております。
 また細かいのですが、気になったのは「6 おわりに」の前の(2)中・長期的な視点で継続的に取り組むべき事項というところです。2番目の丸のところ、「未来を感じさせるようなセキュリティシステムや」の文章について、こういった見える形で魅力を示すことの重要性は、何回かこれまでの議論で申し上げてきましたし、それを入れていただいたことはとてもありがたいのですが、これだと直感的な表現のみなので。もう少し言葉を添えていただけるといいかと思いました。御検討いただければと思います。
【出町主査】小松崎委員、指名ですいません。何か、修文案があれば。
【小松崎委員】今、五十嵐さんのお話聞いていて、私も表現がもう少し大所高所から押さえるようなものがよいかと。これは文化の醸成そのものに直接働きかけるアクションなわけですよね。ですから、「魅力的に見せていく」という軽い表現ではなくて、いかにこれが重要かを、リスクコミュニケーションだとか様々なことを含めて、社会がこれに関心を持っていくようなことが大事で、そのためには広い意味での広報活動だとか、そういうことが重要であるというふうな、もうちょっと高い目線で表現していただくほうが生きるのではないかと思います。
【出町主査】今、小松崎委員のおっしゃった言葉の中で「重要性」という言葉、最初の頃からこの中でも議論したと思うんですけども、まずその核不拡散・核セキュリティがいかに重要か理解することを、要素として入れればよいと思いましたがいかがでしょうか。
【小松崎委員】遅れて途中から参加だったので申し訳ないのですが、先ほど冒頭に議論のあったウクライナの話などは、それがないと実際には生きてこないと思います。
 ウクライナの話を入れるならば、やはり今まで考えていたことでは不十分だし、将来にわたってサステインにするためにはこの核セキュリティがいかに重要か分かったけど、何をするかとは分からないことが多い、ということが分かってきた。この分野の専門家だけではなくて、企業の経営者や、サプライチェーンが途切れて現実に仕事に影響が出てくるような人たちが、このようなことを非常に今回は重く受け止めたと思います。
 そのため、やはり社会が円滑に動いていく上で、なくてはならないことの一つが核セキュリティで、それをやっていくためには分野の専門家の皆さんの今までの苦労に上乗せしていろんな専門領域が必要になるので、より拡張していこうではないかと。それには人材を新たに養成することは大事だし、その人たちは連携にたけてなければいけないし、総合的なマネジメント能力や、時としては統合する力も持っていなければいけないということが、ここに述べられているわけだと思います。そういう重さをここに入れていただけたらありがたいなと思います。
【出町主査】そのいかに重要か、ある意味議論を全てここで集約するつもりのと。
【五十嵐委員】私もそのとおりかと思いますので、よろしくお願いいたします。
【出町主査】では私の提案として、今、五十嵐委員と小松崎委員のおっしゃったとおり、結局まとめと重要なことをここでも1回まとめると。例えば想定外のことが起こり得るということですね。あとはサステーナブルな社会を実現するためには核セキュリティが重要だと1回ここでまとめて、かつ、重要だから、未来か、皆さんで取り組む価値があると。修文で大変ですけど御検討いただけますでしょうか。
【事務局】難しいですけどトライしたいと思います。
【出町主査】では時間がちょっと超過しそうですが、最後6。御説明をお願いいたします。
【事務局】4ページ、「6 おわりに」について説明いたします。
 今般のロシアによるウクライナ侵攻においては、ロシア軍が稼働中の原子力発電所を含む原子力施設を攻撃するなど、国際秩序の根幹を揺るがす未曽有の事態として、核セキュリティ上も国際社会に大きな脅威をもたらしたと、これは事実関係を述べております。
 二つ目の丸です。本事案を踏まえ、今後は国際社会としても、サイバー攻撃等の現実的な脅威に対応するため、核セキュリティ施策の一層の強化が求められることが予想される、これは予想として記載しております。
 三つ目ですけれども、しばらく飛ばしまして5ページ目です、ISCNにおいて、アジアを中心とした原子力事業所等向けの包括的な核物質防護の設計及び評価に関するトレーニングコースを提供し支援することに加え――ここまでは今までやってきたことであります。ここから先が、サイバー攻撃など新たな脅威に対応するためのドローンやAI検知技術を用いたトレーニングコースの新設、これが一つ目、二つ目が、事案発生後の対応に備えた机上演習の強化が二つ目、最後に核物質防護実習フィールドの拡充など、これら三つについて早急に検討する必要があると。これは例示列挙ですけれども、今三つを挙げたところであります。
 ここについては、直井センター長にちょっと補足をいただければ助かります。
【直井センター長】今特に、サイバー攻撃については規制庁からも、うちの核物質防護実習フィールドを使って、いわゆるPPシステムに対するサイバー攻撃に対する準備をするためのトレーニングを提案いただいて検討していますし、また、今年度からドローンを使って、現状のPP設備でどれぐらい検知できるか試験を行った後、その結果を使ってコースに組み込んでいくことも考えています。
 それから、AIの検知技術を用いたトレーニングコースの新設につきまして、我々としては、例えば今、大規模イベントですとか、大規模な商業施設などに核物質なりRIを持ち込んでテロを起こすというようなところを、RIを検知する広域モニタリングという技術開発をやっているのですが、それにAIの検知技術を組み合わせて不審な人物の動きをキャッチすると、AIで検知することを組み込む技術開発を行っておりますので、これからはこの方向で行っていきたいと考えています。
 特に今、核物質防護実習フィールドは、10年ぐらい経って建屋が老朽化して厳しい状況にありますので、ここはしっかりと拡充していきたいと考えているところでございます。
【出町主査】今の御説明に御意見いかがでしょうか。喜多委員、お願いいたします。
【喜多委員】先ほども同じような話があったのですが、このウクライナ侵攻は武力攻撃でサイバー攻撃の話では少なくともないので、丸の一つ目と二つ目が「踏まえて」ではつながらないかと。この「本件を踏まえ」を取ってしまえばいいんですかね。「今後は国際社会としても」――本当は「武力攻撃のみならず」と書きたいところですが、それは書かないとして「サイバー攻撃等の」とすればつながると思います。
【出町主査】「本事案を踏まえ」だとつなぎはよくないですね。委員の皆様、「本事案を踏まえ」は取ってもよろしいでしょうか。
(異議なし)
【出町主査】では今ので、最後のポツのISCNさんの今後の活動の拡大についてはよろしいですかね。ウクライナの件については、冒頭に1回、後で「6 おわりに」でやると残しておきましたけども、「2 本作業部会の位置付け」では「また、昨今のロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、体制の強化は急務である」とあり、それと連動していると。
 少し追加で言うと、今後想定してなかった核セキュリティインシデントにも対応する必要があるんだということを書いておくと、「もたらした」で終わるだけじゃなくてだからどうなのかが分かっていいと思います。福島事故みたいに想定外なことが起きないように、核セキュリティでも、と強調するのがいいのかと思うのですが。
【喜多委員】まだ私の中でも、今回のロシアによる武力攻撃が核セキュリティ事案なのか、事案と言ってしまっていいのかどうか整理が自分の中でつかないのですが。むしろ「未曽有の事態として原子力施設の安全上も」とか、「国際社会に大きな脅威をもたらした」でもいいかもしれないなと思いますが。
【出町主査】小松崎委員、お願いいたします。
【小松崎委員】これは間違いなく核セキュリティ事案であると考えないと、私は違和感があります。対処可能なインシデントかどうかはまた別問題ですが、セキュリティを考えるときの対象インシデントであることは間違いないと。もしこれを核セキュリティの対象外にするとしたら、核セキュリティの概念が分からなくなるかと。
【喜多委員】私の理解では、これは戦争法上の問題だと考えています。ジュネーブ諸条約の第1議定書に軍事施設への攻撃禁止という箇所があり、それに対する違反ではないかと。だから核セキュリティじゃないという理由にはならないのですが、引っかかっているところです。
【小松崎委員】おっしゃることはよく分かりますす。確かに国際ルールでどうなっているかを押さえておくのは必須だと思いますが、私がやってきた仕事でいうと、ルールを守らない人がいるからセキュリティ会社が要ると考える。法律では決められているけど、守らない人がいるからセキュリティが脅威にさらされると。
 ですから、実際に守る守らない、守るべきものは何かということを知った上で、もしそれが守れなかったときにどれぐらいのリスクがあるのかとか、看過できるのかとか、それをあらかじめちゃんとアセスメントして、その確率を計算したり、その確率的な期待値を計算したりして、これはこれぐらいのコストで対処すべきだとか、これは脅威は脅威だけども今現在は対処できないものというふうに振り分けするのがリスクマネジメントの非常に重要なポイントだと思います。そういうリスクマネジメントという点からいったら、法律に関係なくやはりこれは核セキュリティの対象、重要アイテムであると捉えるのが正しいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
【出町主査】私もそのとおりだと思いますね。中熊委員、お願いいたします。
【中熊委員】先ほど冒頭にも少しお話しさせていただいたのですが、今回ここで議論している核セキュリティの定義も、今の議論で、ここに出席されている方の中でかなり温度差があると思いました。
 私は喜多委員にかなり近い意見なんですけれども、やはり国家間の戦争、それに伴う侵攻の話が、核セキュリティの中でカバーすべきなのかは、それは違うと思います。それは、繰り返しになりますが外交や国防の世界の中で食い止めるべき話であると。
 一方でテロのような、ある何かの集団が来るような話、これは検知してタイムディレーをちゃんと取ってそれを防御するための時間を稼ぐような話が、ある意味、セキュリティという世界の中でしっかりとやっていかなければいけない話で、最近のサイバーなどでの、何とかして防御するという手だてを講じるということも、これもセキュリティの分野だろうと思います。
 ここの定義を、皆さんここにおられる方が全然違う認識の中で議論をすると、少しこのドキュメント自体が宙に浮いてしまうというか、しっかりとした文書にならないのではと逆に危惧します。
【小松崎委員】発言してよろしいですか。
【出町主査】お願いします。
【小松崎委員】今の御意見にはちょっと異論を感じておりまして。それはセキュリティの定義の問題ではなくて、セキュリティ対策として現実に手が打てるかどうかという現実的なその対策のことをおっしゃっているかと。
 実際に例えば、国連の安全保障理事会はSecurity Councilという英語名ですから、あそこはセキュリティ全般を扱うと。ところが、veto――拒否権を使われれば何もできないわけで、セキュリティ対策の対象にするかということと、それが防げるかとか対策可能かということとは別次元の話だと。
 今回これをセキュリティがどういう定義だったかを議論する必要を感じていないのは、今まで何年もかけていろんな話の中で、例えばサイバーセキュリティは今まであまり核セキュリティの中で重要視してなかったけども、大事だということで専門家にもお話をしていただいたと。つまり、核セキュリティの領域というのを拡張しなければいけないというコンセンサスの下に、今我々が気づけることについては追加していこうではないかと。したがって定義をどうするかということよりも、この対象範囲は広がっていくわけで、そこにどう対応していくかを構築しておかなければいけないという考え方のほうが僕は合理的だし正しいんじゃないかと思うんですけども、いかがでしょうか。
【中熊委員】私は、定義は非常に大事だと思っています。サイバーセキュリティのようなものは、そういう我々民間あるいは規制機関ですとか、我々事業者あるいは研究機関が様々な施策を考えることによって、対応のできる範疇であると思っていますし、それが我々原子力施設を日本国として運営していくに当たって、我々の手だてができるものだと私としては認識しております。そういう新たな脅威が発生するのであれば、その範疇の中では核セキュリティの中に組み込んでしっかりと対応していくべきものだと思っています。
 ただ一方で、繰り返しになりますが国家間の戦争みたいなものに関しては、これはもう核セキュリティの分野の中で議論をここでし出すと、この人材育成という観点でも、それこそ変な話を申し上げますけど軍人を育てるだとか、外交上にスキルを持った人間みたいなところまで範疇に入ってくるような気もしますし、定義を曖昧にしてしまうと、ここで論じなければいけない人材育成という範囲が何なのかというところまで少し曖昧にしてしまうような気がします。
 ですので、ウクライナ侵攻はホットなイシューですし、そういう文言を取り上げることを全く否定しようとは思いませんけれども、殊さらにそれをこの核セキュリティの中に入れるということ自体は、私としてはあまり賛成できないと思っています。
【出町主査】布目委員、いかがですか。
【布目委員】私は、中熊委員とか喜多委員の御意見に賛成でして、今回の事案があったので核セキュリティという問題に目が行ったというのはもちろんそのとおりだと思いますが、逆にそれを引き合いに出すことで、これまでやってきた核セキュリティという問題がゆがめられてしまうというと言い過ぎかもしれませんけれども、違う方向性に行ってしまうのではないかなと感じることもあります。
 今回、人材育成という視点で議論をしている中なので、やはり軍事でのセキュリティという問題とこれまで議論してきた問題というのは分けて、一応置いておく、ことが重要かと思います。そのため、「それを踏まえて」みたいな言い方には、違和感を覚えます。
【出町主査】五十嵐委員、いかがですか。
【五十嵐委員】今の議論とははずれてしまうかもしれませんが、この文書は「今後の核不拡散・核セキュリティ分野における人材育成について」であるのに、終わり方が、ウクライナ侵攻についてで始まった「急務である」という文章でいいのかという違和感を持って今、皆さんの御意見を伺いました。
 私としては、「はじめに」の最初の文章の議論で出たように、日本の立場として国際的にも、今後この分野の人材が貢献していくために目指すことがあって、「おわりに」があると思います。また、私のように原子力が専門でない者から見ると、どちらかというと小松崎委員に近い印象を持っておりまして、核に関するセキュリティだから核セキュリティだと受け取るのが一般の人だと思います。
 あまり広げないほうがいいという御意見もよく分かる気もするのですが、この文書として最後に何を書くのかというのは事務局も含め御検討いただければと思います。
【出町主査】五十嵐委員の意見についての私のコメントですけども、「おわりに」はまとめになるので、ウクライナの前に1から5までのまとめを書くのがよいと思います。
 その上で追加的に、更なる「おわりに」としてウクライナを書くのはいいと思ったのが一つ目で、あと御意見聞いていて思ったのですが、ウクライナの話を持ち出した次にサイバーの話を記載しております。そうすると、ウクライナの事例だけに特化するような核セキュリティの深化というか改良に私は思えてしまうのですが、ここはそうでなくて、ウクライナは一つの例で、考えてもいなかったようなことが起こり得ることを改めて気づかせていただいたと言っていると思います。
 そのためそこを少しクリアにして、想定外のことにも対処しましょうと。具体的に何かは日本中で議論している最中であり書けないと思います。あくまでこのぐらいのことは想定外で起こるのだ、ということだけで止めておいて、想定外のことを核セキュリティでも考えましょうとすることでいいかと思いますが、どうでしょうか。
(異議なし)
【出町主査】よろしいですか。ではまず、「おわりに」は最初、全体のまとめをお願いします。改めてウクライナは一つの例という形でお願いできればと思います。小松崎委員、中熊委員よろしいでしょうか。
【小松崎委員】核セキュリティは非常に広範で、まだ見えてないところもあり得るけども、今回のウクライナの件というのは予想外で起こってびっくりしたと。ただ、我々の委員会としては扱うべきテーマとは考えていないというのは言っても構わないと思います。ただ、セキュリティで生きてきた人間からするとセキュリティそのものだと思っています。
【中熊委員】出町主査の御提案でいいと思います。少しだけ、ミサイルが来るのを防ぐとか来たときにどうするかなどはさすがに、この分野の中では議論できないと思っていますので、私が申し上げたかったのは、端的に申し上げればそういうことです。
【出町主査】そういうことで。承知しました。「おわりに」については修文させていただこうと思います。
(なし)
【出町主査】いろんな御意見いただきまして誠にありがとうございます。
 後で事務局さんと主査の私とてもう1回もんで、本日いただいた意見を取り入れて改定版を作成いたしたいと思います。また今後ともいろいろ御意見伺うと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 議題は以上でございますが、連絡事項あると思いますので事務局よりお願いいたします。
【事務局】本日の作業部会の議事要旨案につきましては、出来次第メールにて確認依頼をさせていただきます。
 また、次回の作業部会におきましては、委員の皆様に既に通知していますとおり、5月18日に開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、何とぞ御理解、御協力のほうお願いいたします。
【出町主査】では、次は第24回が1か月ちょっと先にございますので、またぜひ御出席の御協力をお願いいたします。それでは時間が超過して申し訳ございません。以上で、第23回の作業部会を終了いたします。誠にありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)