原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会(第14回) 議事要旨

1.日時

平成30年2月1日(木曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 10階 政策課会議室

3.議題

  1. 核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)の平成29年度活動報告
  2. 豊かで安心な社会のための、セキュリティ文化を土台としたサービスイノベーション(非公開)
  3. 今後の作業部会の進め方

4.議事要旨

(上坂主査) それでは定刻となりましたので、ただいまから第14回核不拡散・核セキュリティ作業部会を開催いたします。
 本日はご多忙にかかわらずご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の議題です。お手元の議事次第に書かれておりますように、1番が核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)の平成29年度活動報告。2、豊かで安心な社会のための、セキュリティ文化を土台としたサービスイノベーション。3、今度の作業部会の進め方となっております。
 本日小松崎委員からご紹介いただく、2のテーマのみ、資料と議事録のみ非公開とさせていただくということをご了解いただきたいと思います。
 まず、今回新たに就任した委員をご紹介したいと思います。
 参考資料1、第9期の核不拡散・核セキュリティ作業部会の委員名簿をご覧ください。これまでお世話になりました尾野昌之委員が退任されまして、後任として渥美法雄氏が就任いたしました。本日はご都合によりご欠席ですが、今後よろしくお願いしたいと思います。
 次に、文部科学省の人事異動により7月3日付で、核不拡散科学技術推進室長として、嶋崎室長が着任しておりますので、一言ご挨拶のほうをお願いいたします。
(嶋崎室長) 昨年の7月3日付で、核不拡散科学技術推進室長に着任をしております嶋崎でございます。昨年の6月末に、今後の核不拡散・核セキュリティ研究開発の進め方について中間まとめをいただいてから大体半年がたちまして、今後、より具体的にどのようなことに取り組んでいくのかについて、この作業部会でご議論いただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
(上坂主査) よろしくお願いします。
 それでは、次に、事務局より本日の出欠と配付資料の確認をお願いいたします。
(道川補佐) 本日は渥美委員と中島委員が欠席ということで、9名中7名の委員にご出席いただいておりますので、定足数である過半数を満たしております。続いて、本日の配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第をおめくりいただきたいと存じます。
 まず資料1としまして、日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センターにおける活動について。続きまして、同じく資料1の別紙となっておりますが、原子力平和利用と核不拡散・核セキュリティに係る国際フォーラムというタイトルがついております。続きまして、資料2、これは横長の資料になりますけれども、豊かで安心な社会のための、セキュリティ文化を土台としたサービスイノベーショというタイトルがついております。続きまして、資料3は、核不拡散・核セキュリティ作業部会の今後の進め方(案)となっております。最後に、参考資料としまして、本作業部会委員名簿となっております。また、机上配付としまして、座席表、それと第12回作業部会の配付資料をつけさせていただいております。もし資料の欠落等がありましたら、事務局までお知らせいただきたいと思います。議事の途中でもお気づきの点がございましたら、お申しつけください。以上でございます。
(上坂主査) よろしいでしょうか。資料をご確認ください。
 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
まず、議題1ですが、核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)の平成29年度活動報告です。それでは、ISCNの直井センター長より、お願いします。
(直井センター長) それでは、ISCNの人材育成支援活動と技術開発技術開発のワークショップや技術シンポジウムなどイベントを通じた情報発信ということで、我々が29年度に実施してきていることを簡単にご説明させていただきます。
 まず、人材育成事業です。人材育成支援事業をISCNで始めたときに、半年ぐらいかけまして、外部の専門家に集まっていただいて、どういうコンセプトで、どういった活動をやっていけば良いかというような議論をいただきました。それをいわゆる事業の戦略という形でまとめさせていただいています。核不拡散・核セキュリティの国際的な共通枠組み及びIAEAのガイドライン等を考慮しつつ、日本が原子力平和利用を進める中で培った経験、地域や各国の特徴を生かした人材育成に取り組むこと。2点目として、対象国の管理監督層及びトレーナー育成を目指したトレーニングを実施して、アジア地域での人的ネットワークを構築していくこと、さらには、核セキュリティコースとして、まずIAEAとの国際的な枠組みを参考にした核物質、放射性物質、及び関連施設に対する不法行為の予防・検知・対応。次に保障措置・計量管理制度コースとしては、IAEAの保障措置制度と要件、核物質の計量管理手法・技術、追加議定書、各国の保障措置・計量管理の経験。そして二国間協力を進めるための具体的な協力内容を確認するための、核不拡散に係る国際的枠組みコースという、この3のコースを設定いたしました。そのときには短期目標、中期目標、長期目標という3段階に分けた目標をつくっていただきまして、これに従って事業を進めてきてまいりました。
 7年間実施してまいりまして、現在の状況について簡単にまとめてみました。まず核セキュリティですけれども、アジア諸国につきましては、依然として核セキュリティに関する国内体制の整備の支援が必要な状態にありまして、4点ほど挙げておりますけれども、今後ともこういった協力をしていく必要があるでしょう。それから国内につきましては法規制等は全て整備済みですが、核不拡散(保障措置)や原子力安全に比べますと、核セキュリティは若干歴史が浅く、能力強化が必須になっています。また、内部脅威ですとか放射性物質のセキュリティ、大規模イベントへの対応ですとか、コンピューターセキュリティ、こういった新たな脅威が出てきていまして、そういう対応も必要となっているというようなことで、国内向けについては3点ほど、こういった支援が必要になってくるだろうと考えています。
 保障措置ですが、アジア諸国、やはりその保障措置に関する国際条約の批准ですとか、国内体制の整備支援が依然として必要な状況にあろうかと思います。そして、保障措置に関わります体系的なトレーニングも引き続き提供していく必要があると思いますし、政策立案者等の政府関係者に対する意識の啓発ということも重要になってまいります。
 国内は基本的には計量管理制度や保障措置の規制は整備済みですが、次世代の人材育成が必要になってきます。IAEAの支援ですけれども、イランの問題とか活動が非常に大きく拡大している中で、効果的にその検認活動をするという上でも、JAEAが施設を提供しながら、IAEAの査察官の能力強化を支援していくということも重要になってくるというふうに考えています。
 それで、具体的に核セキュリティ分野の人材育成支援ですけれども、この分野は、アジア地域/国内向けコースとしまして、核物質防護システムの設計、評価手法、IAEAのさまざまな核セキュリティに係るガイドラインですとか放射線防護侵入検知システムの性能評価試験、さらにはシナリオ開発、図上演習、核セキュリティ文化の醸成、さらには国内政府機関向けの核物質防護、これは初級から上級まででございます。さらにはIAEAのトレーニングコースを年2回、ISCNがホストするというような活動を進めてきております。
 また二国間協力として、核物質防護基礎・応用コースですとか、核セキュリティ計画を作ってどうやレビューするか、国境管理における核セキュリティはどうするのか、さらには核セキュリティ文化を醸成するさまざまな活動を展開しております。具体的に29年度に実施しましたトレーニングコースですが、核物質防護に関わるトレーニングコースとして、国内向け、それからアジア各国向けに核物質及び原子力施設の物理的防護に関わる包括的な2週間のトレーニングコースを提供しております。それから国内関係者向けのPPトレーニングコースとして、規制庁の新任検査官ですとか、警察庁、海上保安庁、陸上自衛隊化学学校、それから東大、東工大の大学さんにこういったトレーニングコースを提供しております。
 また、IAEAと共催で実施したトレーニングコースとして、原子力発電プログラムにおける核セキュリティ体制の構築に関する地域トレーニングコース、さらには東京オリンピックを控えて、大規模イベントにおける核セキュリティシステム及び対策に関するワークショップを実施いたしました。
 また、ワークショップ・セミナーでございますけれども、ASEANのセンター・フォー・エナジー、ACEというふうに略しておりますけれども、ACEと一緒になって、フィリピンのマニラで「放射線源のセキュリティ」に係るワークショップを開催いたしました。また、昨年7月でございますけれども、ワシントンDCにおきましてDOE、NEI、これはニュークリア・エナジー・インスティテューションですか、アメリカの電事連の原子力部みたいなところですけれども、そこと一緒にワークショップを開催いたしました。
 それから核セキュリティ文化の醸成の活動といたしまして、国内の原子力発電所で事業者向けの核セキュリティ文化講演会をやっております。これは基本的には原子力発電所さんからの要請に応じて我々が出かけていくというような形でやっておりまして、平成25年度からやってきており、今年度は12施設で13回、689名が参加し、トータルしますと4,000名近い方にこの講演会に参加していただいております。それから、この講演会以外としましては、WINS、世界核セキュリティ協会との共催でのワークショップというのを、東京で1日半かけてやっております。これも国内向けの文化醸成としてやっておりまして、これはWINSさんが開発した演劇セッション型のワークショップでして、役者さんが舞台の上でさまざまな課題を含む核セキュリティ事案の芝居をして、その芝居に基づいてディスカッションを展開していくというような形でございます。先週、東京で開催をいたしました。安全とセキュリティのシナジーをテーマに、ワークショップを開催いたしました。
 それから保障措置分野でございますけれども、国際コースとしまして、国内計量管理システムのコースを毎年1回2週間のコースとしてIAEAと一緒にやっております。そして、このコースに参加した人の中から6、7名の技術者の方を選んで、実際の核物質を使って非破壊分析の実施をするというフォローアップトレーニングというのを、欧州委員会のジョイント・リサーチ・センターと共同でやっております。それからIAEAの査察官向けとしましては、再処理施設の査察官育成のためのトレーニングコースをIAEAに向けて、またDCVD、これはデジタル・チェレンコフ・ビュアー・デバイス、福島第一の3号炉の使用済み燃料プールから共用のプールに移すときに、IAEAが初めてこのデジタルのチェレンコフ・ビュアー・デバイスを検認に使ったんですけれども、そのトレーニングコースなんかも提供しております。さらに派遣コースとしまして、これは基本的には二国間協力なんですけれども、追加議定書の申告に関わりますワークショップですとか、保障措置の基礎コース、計量管理の基礎コースというのも提供しております。
 29年度に実施しましたトレーニングコースは、冒頭に申し上げましたSSACの2週間のトレーニングコースと、EC/JRCとジョイントでやっておりますSSACのフォローアップコースをやりました。それから再処理施設の査察官の育成コースをやりました。ワークショップ/セミナーについては、先週、タイで外務省さんと経産省さんに手伝っていただきまして、追加議定書と大量破壊兵器の物質識別トレーニングに係るセミナーというものを実施しております。タイは昨年の11月にようやくアディショナル・プロトコルを批准し、その批准を受けまして、政府関係者高官を集めて意識を高めるセミナー、それから輸出管理、担当者ベースを対象にしたトレーニングコースというのを実施いたしました。
 それから右側にちょっと特記事項として挙げておりますのが、日・イラン協力です。これは包括的共同作業計画(JCPOA)の着実な履行に向けた日本政府からの協力としまして、イランの実際に保障措置を担当している人たちに、保障措置のトレーニングコースを提供するということで、イランの原子力庁の関係者の方26名に東海村に来ていただいて、IAEAと一緒に1週間トレーニングコースというのを提供いたしました。これは核管センターさんですとか原子力規制庁の保障措置室にも手伝っていただいて、また外務省の方にも参加していただいて、日本やJAEAの経験の共有も行い、オールジャパン体制でイランの査察官のトレーニングを提供しました。常日ごろイランの保障措置担当者はIAEAと対峙して行っており、第三国に来ていただいて、トレーニング目的だけで学習していただくという非常にいい機会であったというような評価をいただき、外務省さんでは来年ももう一回開催し、ISCNにも協力してほしいというような話もいただいております。
 それから、これが人材育成支援の実績でございまして、棒グラフは年度ごとの参加者のトータル、それから折れ線グラフはトレーニングを実施した回数でございます。上は全部のコースですけれども、大体1年当たりに20のコースを開催して、500名ぐらいが参加するというような状況になっています。参加者の分布としましては、やはり核セキュリティコースはステークホルダーが非常に広範なものですから参加者が多くなっております。
 それから、枠組みコースにつきましては、初めの4年ぐらいで大体アジアの対象国の枠組みコースを終了してしまいまして、ほぼやっていなかったんですけれども、今月にラオスで久しぶりにこの枠組みコースを実施する予定になっております。それから、最近はセンター・オブ・エクセレンス連携の促進ということで、こういうトレーニングセンターを各国つくりなさいということをIAEAは慫慂しておりまして、各国、トレーニングセンターを自国の専門家のためにつくっております。IAEAはさらにそういったセンター、ニュークリア・セキュリティ・トレーニング・アンド・サポートセンター、NSSCと呼んでいるんですけれども、そういうセンターのネットワークを2012年につくりまして、このネットワークに対してもISCNの経験を提供するということで協力をしてきております。また、このネットワーク、4年前から私は副議長、2年前から議長をやっておりまして、そういった意味でも、このネットワークへの貢献を果たしております。
 今年度ですが、年次大会を日本でホストするということで、実際には水戸と東海村でやるんですけれども、1週間、3月5日から9日までネットワーク会合を開催する予定でございまして、60カ国から80名程度の参加者が水戸に集結する予定です。
 それから、センター・オブ・エクセレンス、アジア地区に韓国と中国に同じようなセンターができ上がっておりまして、この3つのセンターの連携をIAEAを交えて調整して、協力を連携していくというような活動もやっております。さらに二国間協力でセンターを支援するという活動は、インドネシアとカザフスタンでやっております。インドネシアは規制側と推進側、原子力庁、BAPETENとBATANという、この2つの組織を一緒にまとめて協力をしておりまして、このBAPETENとBATANから技術者の方、規制官の方をISCNに招き入れ、3カ月ぐらいの実習をし、帰って彼らがトレーニングするところに我々が参加をして、彼らのトレーニングを実施するのをサポートするというような形で、インドネシアの支援をしております。
カザフスタンにつきましては、昨年5月に、INPという研究所に核セキュリティトレーニングセンターというセンターが立ち上がりました。日米でそのセンターの運営も含めて協力していきましょうということで、日米カザフスタンによる三カ国協力がスタートしております。今年度既に、来週トレーニングコースに我々が講師を派遣し、5月にもトレーニングコースに我々が講師を派遣するというような形で、トレーニングの支援を行っております。
 それから先ほど申し上げましたけれども、今年2月、今月の21、22日、ラオスで久しぶりにこの平和利用のセミナーを実施する予定になっております。
 続きまして、技術開発について説明をいたします。
 初めは核鑑識技術開発でございます。核鑑識につきましては、平成26年度から分析技術の高度化・迅速化というようなフェーズに変わってやってきておりまして、もともとは23年から3年かけて基礎的な技術開発を終え、現在は分析精度を高める、さらには分析時間を短縮するというような高度化開発をやっております。1つの例といたしまして、迅速な年代測定法というのをJAEAが開発をしております。これはIn-situ Isotope法といいまして、サンプルの中のトリウムの組成、さらにはウランの組成、この2つを測定するだけで、このウランとトリウムの崩壊系列の比率を明確にし、それで年代を測定するという技術を開発しました。この方法はスタンダード試料が要らない、さらには非常にスピーディに、迅速にその測定結果が出るということで非常に有効な方法を開発いたしました。さらに、今現在進めていますのは、電子顕微鏡で例えば見つかったウランの粉末なんかを写真で撮るわけですけれども、その実際の画像データを自動的に解析して、ライブラリの中から似たようなものを引っ張ってくる、そんなような技術開発を日米でやっております。
 次が、核共鳴蛍光NDA技術実証ですけれども、コンテナの中に、ちょっと厚めの遮へい物に隠ぺいされた核物質を検知する技術開発でございまして、これは非常に壮大な技術開発なんですけれども、それに非常に強度の強いガンマ線をプローブに使おうという技術開発でございます。これにはまず初めに、その単色、エネルギーが単一のガンマ線をつくり出すという技術開発と、その単色のエネルギーのガンマ線を使って検知するという、その2つの技術開発が必要でございます。今、神戸の県立大学が所有しておりますニュースバルという放射光施設を使った実証試験と、さらにはそのシミュレーションコードの中でNRFという現象を、ガンマ線をその核物質の原子核に当てて発生させるんですけれども、そのときにNRFという現象とともに、実際に当てられたガンマ線が弾性散乱で返ってくる。そうすると同じエネルギーが出る。それがNRFのエネルギーと同じガンマ線が出てくるものですから、それが識別できないので、それを識別するためのコードの改良というのを、Duke大学というところにあります、ハイインテンシティ・ガンマソースという、そういう施設でもってやっております。こちらは並行して、兵庫県立大学のニュースバルでの実証試験とコードの検証という、この二本立てでやっておりまして、来年度、再来年度にこのコードの改良が完了します。、そのコードの改良とともに、こちらの実証試験も30年、31年と予定をしておりまして、実際の実測値とシミュレーションデータを比較するというようなことで、技術開発を進めてきてございます。
それから3つ目の技術開発、これはアクティブ中性子非破壊測定技術開発でございます。実際に中性子をサンプルに当てる問いかけ法、当てた中性子によって反応する核分裂反応でガンマ線、中性子が出てくる反応を使って、中の核物質の量ですとか、例えば爆弾が入っていた、爆薬が入っていた、そういったものを検知するというような技術開発でございます。これは4つの基本的な技術を1つの装置で実現しようというようなことでやってきておりますけれども、初めの技術がダイアウェイ時間差法というものです。これは核物質サンプルに中性子を当てますと、核分裂を誘発して速中性子が出てきます。その速中性子を測定することによって、中に入っている核分裂性の核物質量を定量するという技術開発です。これにつきましては、再処理工場の最初の溶解液、その濃度が大体プルトニウム1リッター当たり1グラムぐらい入ってくるんですけれども、その濃度を定量できる、すなわち例えば20グラムのバイアル瓶に試料を採ったときに10ミリグラムぐらいになるんですけれども、そのプルトニウムはこのDDAを使って定量できそうだというところまで実証してまいりました。それから中性子を当てたときにガンマ線が出てきます。例えば爆薬に入っていますニトロ基と反応して、窒素に中性子が当たると非常に強いガンマ線が誘発されて出てきます。そのガンマ線をキャッチして、この中には窒素が入っている、爆薬が入っていそうだというところを明らかにするというところも明確にしております。
それから、次の技術がNRTA。これは26年度まで実施してきました中性子共鳴透過分析法というものでございまして、核物質に中性子を当てますと、あるエネルギーのところは核物質特有に共鳴吸収といって、あるエネルギーの中性子を吸い込みます。その吸い込んだ中性子のエネルギースペクトルから中に入っている核物質を定量するという技術でございまして、今、京大の原子炉と、それからEC/JRCにあるベルギーのへールという、GELINAという中性子を取り出せる施設があるんですけれども、そこでもってこのパルス中性子の幅、それがこの分析データに与えるというような影響を試験して、明確にしております。
 それから最後の技術、遅発ガンマ線分析法、ディレイド・ガンマ・アナリシスというものですが、これは非常に新しい技術開発でございまして、中性子を核物質に当てますと核分裂します。核分裂する核分裂片の収率が、例えばプルトニウム239とウランの235では若干その収率が変わります。その収率が異なるところを利用して、核分裂片から出てくる短半減期の非常に強いガンマ線のスペクトルを分析することによって、おおもとの核分裂をした物質がプルトニウム239なのかウラン235なのかということを明らかにする技術開発です。これも同じように2つの試験を今やっておりますけれども、1つ目は、EC/JRCがイタリアのイスプラに持っておりますPUNITAという試験装置があり、D-T中性子源があります。その中に試料を入れまして、入れている槽で核分裂を誘発して、一旦この外に出します。外に出たガンマ線を測定して、短半減期の非常に高い強度の核分裂片の量をここで測定することで、中に入っていた物質がプルトニウム239なのかウラン235なのかというのを明確にするための試験を今やっております。
 それから、もう一つは、さらにその先を行くんですけれども、中性子源としてD-T中性子源よりももっと小さい、カリフォルニウム252という線源を使ってやってやろうということで、今月末から来月にかけて、EC/JRCのPERLAという試験装置を使ってやる予定でございます。これも同じように、こちら側は中性子源をシャトルして動かして、サンプルのガンマ線を測定するという計画をしております。これも同じようにガンマ線の量から核物質量の分布を明らかにするという方法の技術開発でございます。
 それから、次の技術開発でございますけれども、先進的プルトニウムモニタリング技術開発です。これは既に東海の再処理工場に保管されている核分裂性生成物を含む高い放射能を含むプルトニウム溶液を、リアルタイムでオンラインでサーベイできないかという技術開発でございまして、コンクリートセルの中にあるタンクの中に、ガイドチューブから測定器を中に挿入し、ガンマ線と中性子線を測定して、中に入っているプルトニウムが移動していないか、量が減ったり、増えたりしていないかということを確認できるかという技術開発でございます。実装に向けた将来的なそのエンドユーザーに対しても、こういった技術を提供していきたいというふうに考えております。可能性については、かなり使えるんじゃないかというようなところまで実証ができてきております。
 それから、最終的に今やっている技術開発がどういった形で社会実装されるんだというイメージをまとめたものです。ニュースバルでやっている試験は、最終的には港湾におけるコンテナの中に隠ぺいされた核物質を定量するということで、港にこういう加速器を設置して、ガンマ線をつくり出して、そこで検知をするというようなことが考えられます。既にアメリカではパスポートシステムといいまして、こういう単色のガンマ線ではないんですけれども、連続のガンマ線を使ったNRFを使った検知システムでかなり大規模なものを導入していまして、それと比較しますと余り変わらない大きさで、価格も余り変わらない価格で着実な検知ができるので、最終的にはこういったところに実装できるのではないか。
 それから、発電所の中の使用済み燃料の中に入っているプルトニウムだとかウラン235も、直接的にこれを測定することができます。使用済み燃料の部分欠損を検認する保障措置システムの中でも使うことができますし、または使用済み燃料のレポジトリですね。大量にその使用済み燃料を廃棄するような施設で、処分する前に測定するというのであれば、これぐらいの資本をかけても意味があるのではないかというようなことを考えております。
 それから中性子問いかけ法です。アクティブ中性子非破壊測定試験ですけれども、さまざまな用途が考えられます。例えばNRTAという技術を使うと、福島の溶融燃料の分析などにも非常に高精度な分析結果を得ることができますし、また、DDA・PGAという方法を使いますと、例えば空港のスーツケースに隠された核物質なんかの検知もできますし、また、DGA、ディレイド・ガンマ・アナリシスなんかというのを使うと、再処理工程の今までは測定できなかった高線量率下のサンプル中のプルトニウムの定量、ウランの定量、そういったものにも応用がきくのではないかと考えております。
それから、これに関連しまして、この核セキュリティ補助金で実施してきました技術開発は大体この3月に節目を迎えるものが2件ございます。その2件の技術開発について、海外から専門家に来ていただき、開発成果の評価をいただくというような技術開発ワークショップを3月中旬に予定をしております。IAEA、アメリカのDOE、フランス、さらにはEC/JRCからも評価者には参加していただいており、また、国内からも原子力規制庁、文科省、核物質管理センター、日本原燃、それから大学の方にも参加いただいて、ワークショップで我々の技術を評価していただけないかというようことを考えており、今これに向けた準備を進めているところでございます。
それから技術シンポジウムは昨年の作業部会の中でも報告させていただきましたけれども、いろんなニーズを聞くためにこういうようなシンポジウムを開催しております。
それからイベントを通じた情報発信ということで、12月に「核テロ対策の強化と人材育成」東京2020オリンピック・パラリンピックに向けてということをテーマに、国際フォーラムを実施しました。これはまた後で堀のほうから簡単に報告させていただきます。それから、ワシントンDCでワークショップをやったり、それから文科省の情報ひろば、この1階にありますけれども、ブース展示をさせていただいたり、IAEAの国際会議でブース展示をしたりして、我々の活動についての発信活動というのをやっております。
次に堀のほうから報告します。
(堀副センター長) ISCNでは年1回、国際フォーラムをやっておりまして、理解増進や、あるいは我々のやってきた成果を皆さんと共有する目的でやっております。
 今年は、先ほど直井のほうからも話がありましたけれども、2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えているということで、大規模イベントにおけるテロ対策について焦点を当てました。また、その核セキュリティの強化には人材育成が重要になってきますので、大規模イベントのテロ対策、それから人材育成、特に産官学の連携といったテーマでフォーラムを開催しております。フォーラムとしましては、午前中に基調講演や基調報告を行って、午後に2つのパネルディスカッションを行っております。
 概要ですが、昨年12月7日に時事通信ホールで開催しております。参加者は166名のうち、官公庁から33名、いつもよりも多い方が参加しておりまして、この半分以上は警察の方が参加されておりました。
 まず基調講演ですが、、大規模イベントにおけるテロ対策ということで、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会の警備局長の今井さんからご講演をいただきました。人材育成では、DOEの国家安全保障庁、NNSAのGlynnさんという方からアメリカで取り組んでいる保障措置の人材育成について紹介がありました。またISCNの直井のほうから活動報告を行っております。
 基調講演で今井さんからオリンピックのイベントというのはどんなイベントなのかという話が最初にあった後、それに向けての心構えとや準備状況について紹介があり、テロ対策につきましては多角的なリスク要因の分析をまずしているそうです。そして効率的、効果的なセキュリティチェックを検討しているそうです。それから、特に強調されたのは、やはりサイバー攻撃というのがかなりの脅威なので、それの対策、それから、その他の課題も含め、技術立国日本ならではの先進技術を駆使したオールジャパン体制で対応していくという話がありました。
 それから、人材育成のほうでは、NNSAがネクスト・ジェネレーション・センター・イニシアティブというイニシアティブのもとで人材育成プログラムをやっています。その中で課題として挙げていたのは、専門家の高齢化による経験・知識の継承の困難性、それからキャリアパスの多様化というものを課題で挙げております。実際に取り組んでいる人材育成では年代別に分けて、例えば若手では国立研究所での実習やインターンシップを拡充したり、あるいは中堅キャリア層とかシニア・プロフェッショナルに対しては、そのスキルを生かした活動の場を提供するといったような形で、知識・経験の継承を目指しているというお話がありました。
 それから、パネルディスカッションなんですけれども、1つ目のパネルディスカッションは「核テロ対策強化」ということで、座長は私が行いました。EC/JRCのAbbasさんという方、それから岩城さんという元陸上自衛隊の化学学校の校長先生、それから米国国土安全保障省・DHSのRynesさん、それからIAEAのTottieさんという方からお話がありました。まず最初に岩城さんのほうから想定される脅威というのはどんなものかという問題提起がありまして、ドローンとか、そういったものを使うとより広い範囲にいろいろなものをまくことができるので、その対策が必要だということ、イベント会場だけじゃなくて原子力施設がターゲットになり得るということで、しっかりそういった場所を守っていかなければいけないという話がありました。
 あとTottieさんからは、IAEAが作成している核セキュリティシリーズ18番という文書があり、その概要についての報告と、これまでのイベントでも協力したというお話がありました。
 またDHSからは、いろんな技術開発に取り組んでいることの紹介。そしてEC/JRCから、いろんな国におけるトレーニングを含めまして、取組について説明がありました。
 それから、もう一つのパネルディスカッションは、人材育成支援ということで、主に外国の大学の先生とかをお呼びしました。お一方はテキサスA&M大学のSunilさんという方、それから基調講演をやったGlynnさんに入ってもらいまして、それからタイのチュラロンコン大学のポーさんという方と、それから韓国科学技術院のKAIST、大学院大学なんですが、Yim教授、こういった方をお呼びして、それぞれが取り組んでいる核セキュリティ分野の能力構築について意見交換をしました。
 その中では、原子力分野の専門家だけではなく、政策研究者、緊急時対応者、それから治安機関等、多岐にわたる専門家の育成が必要であるという話、いろんなCOEや政府機関、あるいは産官学の協力が重要であるという議論がありました。
 結果として、大規模イベントに向けてテロの脅威や想定される被害、検知・防護等の技術開発の課題対策について、知見・経験を共有することができました。それから、核セキュリティに関する人材育成のため、国際協力の重要性やセキュリティに関する知識・文化のギャップの解消方法、それから技術系、政策系の融合のための人材育成について議論が行われました。また、パネル討論の2つのテーマの分野について、講演と討論を通じて一般参加者に対する情報提供と理解増進の機会を設けることができたことが挙げられます。
 まとめとしましては、脅威の認識を踏まえて核セキュリティ強化に係る制度整備、技術開発、人材育成の取組みについて議論を深め、それらを通じた核セキュリティ分野に対する理解増進を概ね達成できたと考えております。
 資料に各パネリストのディスカッションの内容が簡単にまとめてあります。報告者のプレゼン資料はISCNのホームページに掲載しております。
 以上でございます。
(上坂主査) ありがとうございます。
 平成29年度のISCNの人材育成、技術開発、それから国際フォーラム活動等、ご説明いただきました。どこからでも結構ですので、ご質問とかコメントがございましたらよろしくお願いいたします。
 人材育成に関して、ここまでとても多くの方々を育成されていると思いますが、その方々、いつも訓練と言われるんですけれども、この後どうされているかですね。その後どういう部門にポジションを移されて、どうされているかとか、そういうのはいかがでしょうか。
(直井センター長) はい、ありがとうございます。2年ほど前に、ちょうど活動を開始して5年目に、うちのトレーニングコースに参加した人たちにフォローアップのアンケートというのと、フォローアップのインタビューというのを現地に出向いてやりました。継続的に保障措置や核セキュリティの業務についているという方が大体6割ぐらいおられて、その何年間か継続してずっとトレーニングで教えてもらったことが生きているというような回答が得られています。
 それから、追跡調査の中では、例えば保障措置関係ですけれども、15年ぐらい前のうちのコースに参加した人が核物質管理部長になっていたりとか、それからIAEAに入って、我々のトレーニングを受けた後にIAEAに入って、今度はトレーニングコースでもってISCNに講師で来たとか、そういうグッドプラクティスなんかも発見してきております。継続的にこういうフォローアップの作業はやっていこうと思っております。なかなか定量化するのが難しいんですけれども。
(上坂主査) ほかにいかがでしょうか。
(五十嵐委員) よろしいですか。ご報告ありがとうございます。
国際フォーラムやシンポジウムで情報交換されてすごくすばらしいと思います。実際のところ、各国、各地域、各機関で、背景も異なり、考え方の違いなどがあると思うんですけれども、その辺どうでしょうか。対策の緊急性や必要性など、そういうことを共感・共有できているのかどうか。漠然とした質問で申しわけないのですけれども、それぞれの温度差というか、状況や考え方の違いというのは出てくるものなのかどうか、私も参加できればよかったのですが、どうでしょうか。
(堀副センター長) 例えば人材育成ですと、タイの方からの報告では、タイは原子力発電をやっていませんのでRIについてとか、あるいは水規制とかどうするかというのが中心になってきます。それに比べてアメリカのやっている技術開発というのはまさに核物質を持ち込まれて何かされるということを想定したもので、そういう意味で、やはりそういうギャップはあったんですけれども、我々としては幅広く捉えられるという意味で、そういうギャップがあってもいいのかなと考えています。
(五十嵐委員) それぞれ参加された各国、各機関で、そうした情報を共有されて、今すぐその国で必要であったり、起こったりしている問題でないとしても、その問題を共有されて帰国されたということですね。
(堀副センター長) そうですね。参加された方は皆さん有益だったというふうにおっしゃられていまして、基本的に人を育てるとかという考え方をお互いに学び合えるという面では、それぞれ何か得るものがあったのかなという気がしています。
(五十嵐委員) 表現がいいかどうかわからないのですが、危機意識というか、たとえば、テロであるとか、そういうものに対しては、どのくらいそれぞれの国の方が自分の問題として感じていらっしゃるのか、何かありましたか。
(直井センター長) 核セキュリティに関していうと、日本だけではなくて、やはり核テロまでは起こらないのではないかという認識を持っている方は結構おられると思います。ただやはり例えば発電所が攻撃されるとか、インサイダースレットで例えばタービンの油を抜き取られる実例がもう発生しています。実害がもう既に出ているので、やはりそういったところに対しては相当その感受性を高めないといけないのではないかと感じています。
(五十嵐委員) 素人の質問で申しわけございません。
(直井センター長) いえいえ、ありがとうございます。
(上坂主査) ほかにございますでしょうか。どうぞ。
(多田委員) どうもありがとうございます。いろんな技術を開発されていらっしゃいますが、こういう技術は開発しっ放しだと、すぐ廃れてしまいます。したがって、どこかに実装しないと、その技術が定着しないし、革新もなかなか進まないのではないかと思うんですけれども、おのおのその実装程度というか、そういうことがもし教えていただけるのであれば教えてください。
(直井センター長) 例えば核共鳴蛍光はかなり大規模な加速器を設置した上でということなのでお金がかなりかかります。50億円とか、そういう規模でかかりますが、実際アメリカのパスポートシステムというのは100億円ぐらいかけて、アメリカに入ってくるコンテナの中の核物質を検知するという形の施設として既に適用されているのがあります。現在我々が開発しているこの技術開発に、アメリカのホームランドセキュリティ省がかなり興味を示してきておりまして、実現するならアメリカの港にに入れる可能性はあるのではないかと思っています。
 それからもう一つアプリケーションを想定しているのは、使用済燃料からダイレクトにプルトニウムの量とウラン235の量を定量できるという技術です。これは例えば個別に発電所の部分欠損を検知するために50億、60億かけるかというと、IAEAは絶対かけません。ただデポジトリで何千体、何万体という使用済燃料を、例えば1カ所の使用済燃料の処分場に廃棄するといったときに、廃棄する前に測定してデータをちゃんととっておこうというようなことに使うのであれば、これぐらいお金をかけてもありかなという気は私はしています。
それからもう一つの中性子のアクティブ法については、これは確実に実装を目指してやっています。これは再処理工場で今まで測定できなかった高レベルの放射性廃液中の核物質の測定ですとか、さらには、例えば廃棄物の中に、ごくごく微妙に残っている核物質量の定量とか、そういったものには使っていくことができると思いますし、福島のデブリの計測にも使えると思います。この間ビデオを見せていただいたら、かなりふわふわのデブリでした。だから、TMIと同じようにかなり細かいものがデブリとして出てきているというような印象があったんですけれども、このNRTA(核共鳴透過分析)については、そういう粉末状のものをターゲットにセルの中に入れて測定するというようなことを考えていたましたので、それは非常に使い勝手はいいんのではないかと感じました。も、そういった意味ではアクティブ中性子はかなり実装を目指してやっております。
(多田委員) ありがとうございます。
(上坂主査) ほかにいかがでございましょう。
中国と韓国で同じような組織が一緒にスタートし、連携していると思いますけれども、規模感といいますか、人材育成は同じぐらいの規模で活動されているのでしょうか。
(直井センター長) 中国も韓国も基本的には国内の専門家向けのセンターです。8割方、国内向けの技術者を育成するためにセンターです。ただ、規模は非常に大きく、例えば中国のこのセンターは、スタッフが100人を超えていまして、例えば実際の保障措置の分析ラボなんかも持っていたり、それから核セキュリティではシューティングレンジ、実際に射撃訓練をやったりするような施設もあったりしています。韓国もこのセンターのための5階建てのビルディングに、その周りにはそのテストフィールド等も完備されております。ISCNのほうがかなり先行しており、ソフトウェアとか活動内容でもトップを行っているんですけれども、施設的にはやっぱり韓国、中国のほうがすごいですね。
 特に中国なんかは、研修生の宿泊施設、ラボ施設、さまざまなトレーニングのための教室とか、バーチャルリアリティですとかシューティングレンジを含む施設が入っていて、相当大きな敷地の中で展開されています。
(上坂主査) 6ページの表の見方がわからなかったんですが、左のこの円グラフと右の棒グラフで色の対応がどうなっているのか。セキュリティコースはすごく多いのは、この赤色が右でどう見ていけばいいんですか。
(直井センター長) 参加者数という上の棒グラフは、この3つのコースが全部入っています。全部入った年度展開で、毎年何人の人がISCNのトレーニングコースに来ているかというので、コースも全部のコースが入っています。
(上坂主査) これじゃ、右と左で色が違うんですね。
(直井センター長) 違います。ごめんなさい、そうなんで、ちょっとわかりにくくてすみません。
(上坂主査) そうですね。わかりました。これをそろえていただけると、わかりやすい。
(直井センター長) そうですね、はい。すみません。
(五十嵐委員) よろしいでしょうか。戻りますけれども、先ほどのお話で、中国のセンターの施設が非常に充実しているということでした。中国が国として核不拡散や核セキュリティの分野の人材育成に対して最近になってかなり資金を投入しているということが言えるんでしょうか。
(直井センター長) 中国のセンターは、アメリカのDOEが大々的に協力をしていまして、中身の分析機器ですとか、さまざまな資機材は全てアメリカからの提供です。建物と人は中国が自分で集めてきますけれども、物自体は例えばサーベイメーターとか侵入検知センサーだとかそういったものも全てアメリカが全部提供しています。
(五十嵐委員) 昨年でしたか、ISCNの評価をさせていただいて、その中で日本らしさ、アジアの中での日本らしさというか、その特徴を出していっていただきたいというまとめ方をしたと思うんですけれども、そのあたりは今後どうなんでしょうか。どこに向かうのかということなんですが。いろいろな研究や、また人材育成もやっていただいていると思うんですが、その中でここが日本の特徴であるとか、ここは伸ばしていくべきだという部分がありましたら、教えていただきたいと思います。
(直井センター長) やはりJAEAに設置されたセンターというところが我々のいいところで、原子力施設そのものを持っています。例えば中国のセンターはセンター独立、それから韓国のセンターはKINACという保障措置と核物質防護と輸出規制の規制当局が作ったセンターなので、現場は持っていません。我々は再処理工場もありますし、プル燃もありますし、さまざまな研究炉もありますし、そういう現場を持っています。そういった現場をうまく使いながら、さらにはバーチャルリアリティシステムとPPフィールドの実施フィールドですとか、そういうトレーニングツールを整備しまして、日本にしかできないトレーニングの提供という形でカリキュラムの開発もやっていますし、ということで特徴を出そうとしています。
(嶋崎室長) 事務局から一言。
そういう意味で、今回のシリーズを作業部会の中でもご議論いただこうと思っております。今日もご発表いただいたように、多岐にわたる活動を国内向け、または国外向けのトレーニング研修等もなされているんですけれども、今後、5年、10年と中長期的に見たときに、我が国の中のほぼ唯一の人材育成、技術開発機関としてのISCNがどういうところを目指していくべきかということを、ISCNの中でも一層しっかりまた考えていただいて、技術的な部分は外部の評価部会、評価のパネルなんかで議論して、結果をまたこちらに報告をいただいて、要するにこの作業部会の中でご議論をいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
(上坂主査) ほかにいかがですか。
(布目委員) 核セキュリティ文化の醸成のコースについて、発電所などでやっていらっしゃるようですが、文化はとても重要ですね。技術的な面を高めるのはもちろんですけれども、安全文化が必要と言われています。そういう意味で、この文化的な面というのは海外、特にアジア、中国とか韓国というのはどのような現状なんでしょうか。私は少し心配があるなという感じがするのですが。
(直井センター長) そうですね。中国は余り、私も情報を得ていないんですけれども、韓国は、例えば保障措置の追加議定書を批准する前に、レーザー濃縮技術開発をIAEAに申告せずにやっていたとか、その文化が欠如したようなところがあって、それ以降、核セキュリティ文化の教育を研究者や原子力施設の従業員に義務づけるという法律ができまして、かなり着実にその文化醸成活動をやっています。
 中国は余聞きませんが、あれだけ原発が建ってきたりすると、ちょっと心配な気がしているんですが、情報がないと余り評価をできないです。韓国はかなりやっています。
(布目委員) さきほど五十嵐委員がおっしゃられたように、日本的な特徴としては、進んでいるものだと思うので、そういうところをもっと広げていくこともされるとよろしいのじゃないかと思います。
(直井センター長) そうですね。ありがとうございます。
(上坂主査) それは単独でやらないで、IAEAとしてやったほうがいいですよね。IAEAチームが取り組んでいますが、IAEAに依頼して対象を全部呼んで、セミナーをやって、世界で回していって国際標準化をやっていくとか、そういう形でIAEAを通してみてはどうでしょう。。それで、危ないところにどんどんIAEAから行ってもらうというかね。
(直井センター長) そうですね。実を言うと、IAEAの核セキュリティ文化のオフィサーというのはISCNの卒業生が行っています。
(上坂主査) そうですね。まさにチャンスですから。
(直井センター長) そうなんですね。そういった意味ではIAEAと連携をとりやすいので、ぜひやっていきたい。
(上坂主査) 
私たちは今、人材育成ネットワークで、原子力エネルギーマネジメントと、それからインフラストラクチャーのIAEAスクールをやっています。今、IAEAでそれを統合・整理するため、カリキュラムの標準化と、地域性・特色の明確化の会議が実施され始めました。日本であったら福島に行くとか、企業を見るとか、そういう特徴とスタンダードのところをきっちり作っていきましょうという会議の今、統合が始まっているんですね。ですので、ぜひセキュリティのこの教育もIAEAを通して、そういう方法で統一していったらどうですか。
(直井センター長) はい、そうですね。
(小松崎委員) よろしいですか。勉強になりました。ありがとうございました。
 ちょうど今、布目委員や五十嵐委員がおっしゃったようなことと関係するんですけれども、どうも離れた世界の話になっている。それで、僕は今AIの委員とか、いろいろやらせていただいているんですが、具体的にいうとAIの専門家の皆さんは本件に関心を持っているんだろうかとか、あるいはサイバーセキュリティの専門家たちは、この核セキュリティに関心を持っているんだろうかというふうに思うと、違うのかなと。
 逆に、核の専門家の皆さんはサイバーセキュリティに関心を持っていらっしゃるのかとか、バイスバースの関係なので、これから、本日僕からお話しする時間をいただくので、そこでも申し上げようと思うのですが、多岐にわたる技術がどううまく連携するかというのが結局文化をつくっていくために非常に大事なベースになりますので、今日ご説明になられたような活動が、例えば関係者では流布しているけれども、そうじゃない世界には余り伝わっていないとするならば、なかなか声が大きくならないし、関心が高まらないしという問題も起こりかねないなという気がするんですね。
 ですから、今後はこの領域の専門家以外の、多分野の専門家の方たちもここに目が向くような、そういうふうな能動的な活動もさらに加えてやられたほうがいいのかなという感じがいたしました。
 以上でございます。
(上坂主査) 
そういう意味では、やはりソフト的なAIやバーチャルリアリティは、非常に広がっているし、学生さんたちも関心を持っています。ソフト的なところも一緒にどんどんやっていったらどうでしょうかね。当然、もうやられていると思いますが。
(堀副センター長) 核鑑識なんかは少しずつAIで発展するようなことをやろうとしています。技術開発のほうはこれから徐々にと思っています。
(上坂主査) ほかによろしいでしょうか。
 それでは、ちょっと時間も押していますので、次の議題に移りたいと思います。
 議題2の豊かで安心な社会のためのセキュリティ文化を土台としたサービスイノベーションについて、小松崎委員より、お願いいたします。 これは、冒頭申し上げましたように、資料と議事録のみ非公開とさせていただきます。
【以下議題2は非公開】
それでは議題3の、今後の作業部会の進め方について、事務局よりどうぞお願いいたします。
(嶋崎室長) それでは、資料3をご覧ください。
お手元に昨年おまとめいただきました中間取りまとめの内容と本文自体も置かせていただいております。中間取りまとめでは、現在の核不拡散・核セキュリティ研究開発をめぐる状況ですとか、今後の推進に当たっての基本的な考え方、かなり広範にわたる領域についてご議論をいただき、あるべき姿、取り組むべき課題についておまとめをいただいたと認識をしてございます。
本日の第14回作業部会以降、1の論点に書かせていただいておりますけれども、主に2つの軸でご議論いただいてはどうかと思います。1つは、今日前半にご報告をいただきました支援センター、JAEA/ISCNの活動における核セキュリティ事業に関する評価を1つの軸とすることです。他方、ISCNの活動だけが核セキュリティ事業の全てでは当然ございませんので、今日小松崎委員のほうからご紹介があったような活動を視野に入れながら、産業界、他分野との連携も含んだ技術開発、それから人材育成について中長期的にどういうところを目指していくべきなのかと、こういった2つの軸でご議論をしていただいてはどうかと思います。
具体的には、こういった関連から、核不拡散・核セキュリティの技術開発及び人材育成にとって、今現在の喫緊の課題は何かということに絞ってご議論をいただくとともに、その中で、特に我が省、文科省の施策として今後必要な取組について抽出をいただき、中長期的な目標とあわせてまとめていただくようなご議論をしていただくとどうかと考えてございます。
かといって、月に1回、2回なんて物すごく高頻度でご議論いただくわけにはいきませんので、大体夏ぐらいまで今回も入れて4回ぐらいで、スケジュールのところにもございますけれども、以下のようなスケジュールで作業部会のご議論をしていただいてはどうかというご提案でございます。今回はISCNのこれまでの活動についてレビューをいただきました。また、セコムから見た取組ということで、核セキュリティも含めてセキュリティ文化ということに関する取組の事例をご紹介いただきましたけれども、次回の第15回は、大学もしくはアカデミアにおける取組ということで、講師の方もお招きをしながら、あるいは出町先生のほうに核セキュリティに関する技術開発の一例として、お話をいただくよう今お願いをしているところでございます。
こういったご紹介を次回していただいて、中身と意義といたしましては、中間取りまとめまで提起をされた課題について、具体の事例を通してもう一度、眺めていってみたらどうかというふうに考えています。
後半に書いていますのは、技術開発においては、特に今日もそういった議論がございましたけれども、具体的にこれが何を目指しているのか、テクノロジー・レジデンス・レベルなんていう話をよくされますけれども、具体的に今何ができるところまで来ているのかという観点で議論していただくと、まさに今取り組むべき課題、喫緊の課題という議論につながるのではないかと思います。あるいは人材育成についても、日本らしさ、アジア諸国の中での日本のポジションはどうかというご議論も今日はございましたけれども、核セキュリティ・核不拡散の分野で中長期的にどういったゴールを設定していくべきかというところで、ご議論を深めていっていただいてはどうかと思います。
後半の2回でございますけれども、時期的には年度を越えて、夏ごろを予定してございます。夏までに2回できるか、秋口までにかかるかというのはこの議論の進捗度合いに応じてということだと思いますけれども、これまで今回を含めた2回、あるいはその次の会でご議論いただいた喫緊に取り組むべき課題について、ある程度少し、そんなに長くなくて構わないので、作業部会としての意見という形で紙に取りまとめていただく。その中でも、可能であればISCNの活動についても毎年度の事業報告、事業計画だけではなくて、今後の中長期計画に反映できるようなたたき台となる中長期的な目標についても、作業部会への意思表明のような形でおまとめいただけると、今後またさらに議論が深められるのではないかと、このように考えてございます。今日はなかなか時間も限られてございますので、今日いただけるコメントは今日いただきまして、また次回以降それぞれのご報告、ご発表の後に進め方についても適宜ご議論、ご意見をいただければと思っています。
事務局からの説明は以上でございます。
(上坂主査) この資料は別の資料がございますね。これはどうしましょう。これからの議論に使いましょうか。
(嶋崎室長) これは前回の中間まとめの中で、今回での議論ではございましたけれども、俯瞰図等、取りまとめていただいているものがございます。それを一般のウェブ等で公開はいたしませんけれども、次回以降も含めて毎回、ご議論いただく際にはお手元に置かせていただいて、適宜参照いただきながらご議論いただければと、このように考えております。
(上坂主査) はい、わかりました。
 それでは残りの時間で、今後の進め方について意見交換をさせていただければと思います。いかがでございましょうか。
(小松崎委員) よろしいですか。この間、室長に非常に丁寧に説明いただいて、よく理解できたの、あの後少し感じたことがございた。というのは、私はたまたまAIや情報セキュリティのそういう活動に関わりが深いものですから、そうすると日本で今、大事な課題の最たるこのテーマであるAIですとか情報セキュリティがこっち側に向いていないと何かおかしいなと。ですから、こちらサイドの提言の中に、やはりAIを活用して云々とか、情報セキュリティについての記述をもう少し豊かにしていくとか、こっちからのりしろを少し大きくしておくというのは、やはりすごく大事なのじゃないかなと。それで、久しぶりにこの会が行われていると思いますが、その間に爆発的にAIが広がっているとか、大きく変わりましたね、ここのところで。あれは自動運転のためというのが一番大きなモチベーションになっていると思うんですが、ここにこそ、あれを国家レベルで知恵を使うという方向性はぜひ入れておくべきではないかなと感じた次第でございます。
 以上でございます。
(嶋崎室長) 政府全体、文科省の中でも理研にAIPセンターという新しい人工知能センターができたり、産総研にも数年前にできたり、また、それを束ねるような観点での大きな会議体ができていますね。今さらながらの感はあるものの、AI、ビッグデータということで政府全体としても力を入れている中で、こういった分野との連携がどうかということを、少しこちらの作業部会側からも人を呼んできて話ができるのかとか、どういうふうにできるか、またちょっと企画をしてみたいと思いますけれども、ご提案をさせていただきたいと思います。
(上坂主査
こういうAI、バーチャルリアリティ、ビッグデータ、それらをどんどん適用していく必要があると思います。一番研究的に近いのは出町先生のところでしょうか。
(出町委員) 今おっしゃったAIには、2つあると思っています。個別の例えばセンサー技術とかに関するAIと、あとサイバーのほうのAIと2つあると思いますが、この場でサイバーの現状を1回聞きたいと思っています。サイバーセキュリティがどこまで今行っているのかという情報を、原子力に限らない人から見て今どういう状況かと1回聞いて、それを原子力に適用する場合どういう問題点、どことどこをつなげると原子力にこれが適用できるのかというところを検討できればと思います。少し個別過ぎると思います。
(上坂主査) 以前、内閣府の方から話をいただきました。全般のサイバー攻撃対応の話がありました。
(小松崎委員) すごく素朴に言いますと、核施設そのものは多分独立したネットワークとか、そういう配慮がいくと思うんですが、それを管理している方々の事務所、オフィスは非常に脆弱であるということがあり得るんですよね。そうすると、そこをアタックされて、結果としては施設そのものに甚大な影響を及ぼすという玉突きのような攻撃というのを考えると、実は核に絡むところについては事務所レベルまで非常に高いセキュリティレベルが確保されていなければいけないというのが、私たちの考え方なんですよ。でも、事務所だからいいやとか、安易にUSBで何とかするみたいなことでとんでもないことが起こる。あとは、海外では水道の施設が相当アタックを受けて、それで入れる薬剤も遠隔でいじられていたということがあります。ところがすぐにキャッチできたので事なきに至ったんですが、もし万が一、塩素の量を大量にするとか、それを知らないでお子さんが飲んだりするということを考えると、ぞっとしますよね。ですから、割とインフラ系も今、攻撃の対象になっているようです。
(出町委員) おっしゃるとおり、うちのほうもJAEAさんと一緒に検討したんですけれども、直接そのシステム・ソフトをコンピューターで壊しに行くのではなくて、妨害破壊行為的なもの、または間違った行動を誘導するようなことも、原子力界は検討しなければいけないんです。例えばですけれども、その  調整パネルに間違った誘導、表示をさせて、それでもって安全対策を間違ったほうに誘導するというのも結構現実的、かつシビアな行動になってしまう、サボタージュになってしまうことがわかったんです。そういうのも考慮に入れて、今後はそのAIというか、サイバーを考えなければいけないということがよくわかったんです。
(小松崎委員) そうですよね。かなり具体的なことを申し上げますと、緊急時のマニュアルというのはできるだけみんなで共有したくなりますよね。ところが、そのマニュアルが外に対して割と脆弱だとして、マニュアルを改ざんされると、それがよかれと思って対策したら、とんでもないことになるなんていうのはあり得ない話ではないですよね。マニュアルも徹底的に守ろうとすると、いざというときに見るのが面倒臭くなるなとか、だから、ついついオープンにしたくなるんですけれども、マニュアルを改ざんされたらどうするんだという目線で見ておかないと、とても危険だと思うんですよね。
(上坂主査) そうですね。先週、東大の施設でPP訓練をやりましたが、全部ブラインドでやりました。何が起こるか、何も知らされないで。私も何度もやっているので慣れながらやるのですが。それで講評を受けます。しかし、それらの情報も、以後来なくなりましたね。 直井さん、ISCNの方でもヴァーチャル・リアリティを使われていますね。米国ではサンディア国立研究所が進んでいるようです。内容が機微でして、共同研究もやりにくいということでした。しかし、民間のスポンサーの力があるとすると、社会実装として、連携して、特にそのソフト的なところ、サイバーセキュリティ技術を強化することはできるでしょうか(直井センター長) 現状ではISCNにサイバーの専門家というのはおらず、一方で電力会社ですとか、規制側から来るニーズとしては、サイバーセキュリティ対策はすごく高いです。現状、IAEAのサイバーセキュリティのコースをホストしています。IAEAでは2週間のサイバーセキュリティのコースを、実際のテストベッドを使ったコースとして開発していまして、2018年からオープンします。なかなかおもしろそうで、アイダホと韓国とオーストラリアと3カ所でやるコースです。そのテストベッドには大型のコンピューターがあります。
(小松崎委員) 2週間ですか。
(直井センター長) 2週間です。
(小松崎委員) それでは、もともとあるレベルの人をセレクトして、そこで2週間とやるんですか。
(直井センター長) 恐らくそうですね。堀さんは見に行きましたよね、あのアイダホの。
(堀副センター長) 設備は見に行ったことがありますけれどもね。
(出町委員) 侵入するだけではなく、侵入されると同時に妨害破壊されたら、原子力発電所の場合被害が甚大になりますが、そういう観点から見ているのでしょうか、それとも単に侵入を防ぐことが目的の議論なのでしょうか。
(直井センター長) アイダホは私も行きましたが、少し微視的になり過ぎて余り使えないのではないかという気もしました。例えば、いわゆるPPシステムにサイバーアタックをして、変に作動するようなことをするという再現デモしか見学できなかったので、そう感じた次第です。
(出町委員) さっきおっしゃった、そのシナリオが大事で、こことここと、例えば警備員もそうですけれども、こういうシナリオでいくと最終的に炉損傷に行くよみたいなことを検討した上で、じゃ、そういうときどこを重点的に守りましょうという観点で、安全はそういうことをやっているんですけれども、サイバーもそういう観点で守らなければと思うんです。
(直井センター長) 今IAEAで開発しているのは、どこが脆弱なところをサイバーで攻撃されると危ないというような、そういう分析を含めてやるようなコースにはなっていないです。
(小松崎委員) 私の知っている範囲ですと、日本とアメリカとは全く環境が違っており、アメリカではホームランドセキュリティは横断的に連邦政府がやるわけですよね。そうするとNSAがあったり、FEMAがあったり、CIAがあったりしますでしょう。ああいうのを前提に核事故が遭った場合にはこうだという総意になっているかどうかです。だからIAEAが単独で何かするというよりも、それよりも上位の概念でホームランドセキュリティを優先して、それのプロトコルのもとに多分組み立てているはずなんですよ。だから、そのIAEAのところだけ見ちゃうと、もしかしたらわからないのかもしれません。全体として指揮権はどこに移るのかとか。いざ大きなインシデントだったら、IAEAが全部司るということではなく、もう完全に国のレベルに移管されるはずですから。
 日本の場合、そういう仕組みじゃないので、だからちょっと全体の系としてどうかというようなことで教えていただくとわかりやすいですね。
(上坂主査) 私も出町先生の研究を勉強して、JAEAさんの研究や技術を見ていますが、アメリカとの連携は、ホームランドセキュリティ等の機微情報があってなかなか共同でできません。だけど、サイバーセキュリティ、セコムさんの技術があれば、国内でもそのソフト的なところを入れて、強化していく作業があるのではないかと思います。それがまさに社会実装になるのではないかと思いますね。
(出町委員) 資料に、「安全とセキュリティのインターフェース」という言葉がありましたが、サイバーセキュリティの安全とのインターフェースということでしょうか。ここの課題になると思います。
(直井センター長) この間、WINSでやったのは、インシデントのコースでした。設定としては、原子力施設の水処理施設で塩素ガスが漏れるという事故が発生するんですね。それは最終的にはテロだったんですけれども、その初期段階で塩素ガスが出たので全職員を避難させたというものです。
(出町委員) 多分コンフリクトの話ですよね。セキュリティと安全の。
(直井センター長) ええ。そういうな設定だけでやったんで、ちょっとコンピューターとサイバーセキュリティの安全というのは余りやっていません。
(上坂主査) どうですかね。産業界からのご意見としまして、核セキュリティと社会実装について。
(多田委員) 視点が全然違って、細かい話になって恐縮なんですけれども、ここでTRLという言葉が出てきたので、ちょっと引っかかりました。TRLは、もともとNASAが作ったレベルで、あるレベルに行っていないと宇宙船に採用しないよという、そういうレベルだったというように記憶しています。
 原子力分野でも使おうと、私は以前、社内で原子力向けのTRLというのを作って、やろうとしたことがあります。しかしやはり少し、1回その定義を見直してきちんとしておかないと、そのままだと使えません。核不拡散・核セキュリティ用にもう一度定義を1回最初にしておかないとTRLで評価ができないのではないかということをコメントをしておきます。
(嶋崎室長) 事務局としては、どちらかというといろんな分野で今このテクノロジー・レディネス・レベルという言葉が使われ始めていて、まさにご指摘のとおり厳密な定義がなされないまま、どれぐらいその技術が進歩をして、何ができるようになっているのかというレベルの概念と、実際に実装できるような議論を始めますと、なかなかそのきちっとした数値で、4から6だったらだめで7以上だったらオーケーみたいな議論ができるところまで成熟したと思っていたら、極めて少ないというふうに認識をしています。一般名詞にしては、ちょっと不適切な表現だと反省はしておりますけれども、ここではなかなかそこまでのものということよりは、どこまで技術が進歩しているかということを踏まえてというふうにご理解いただければと思います。
なかなかこの部会で、そこまで詰めていくかというと、ちょっとやっぱり時間をとって作業をしないと難しいかと思います。
(多田委員) 厳密にする必要はないと思うんですけれども、ある程度レベルをきちんと決めておかないと、話が空中戦になってしまうと思いました。
(小松崎委員) 僕は、それができればもちろんそれが一番いいと思うんですが、現実的に難しいと思うんですよね。領域が広いので。そうすると、むしろ積極的にやるべきものというのは、サイバーセキュリティ分野での最新の成果を適用するとか、ほかの技術領域の成果を積極的に適用するんだという記述が多分一番わかりやすいはずで、それが適用されることをフィージブルにするためには常に連携していなきゃいけないとか、そこのところをきちっと記述しておく。
 じゃないと、例えばハードウェアセキュリティ一個とっても、極めて専門的な領域なのでわけがわからなくなるんですよね。そうするとハードウェアセキュリティでその素子そのものの安全性が担保されるテクノロジーをうまく使うとか、そうせざるを得ないと思うんですよ。そういうふうなアプローチかなという気がしますね。
(上坂主査) そうですね。私は原子力学会の立場で言うと、文科省さんがやられている人材育成の作業部会とか、原子力の基盤技術の作業部会に関連して、原子力学会の分科会があります。研究炉による人材育成の分科会と関連していまして、学術会議では研究炉を使った研究の小委員会があって、そことも連携しています。原子力学会では核燃料・RI施設に関連する分科会を立ち上げて議論を進めています。この作業部会のみならず、原子力学会・学術会議の小委員会・分科会と連携してやっていってもいいかなと思いました。
 ほかにご意見、ございますでしょうか。はい、どうぞ。
(五十嵐委員) 今日小松崎委員や布目委員からお話が出た文化の醸成ということ、また、いろいろな人を取り込んでいくということで、広報であるとか、人材育成も、この領域の方だけではなくて、もっと広く、また、もっと長期的に、小学生から知ってもらう工夫であるとか、そういうこともこの会では議論していくことかなと思います。その点をいつも心にとめておきたいと思いますので、広報の仕方、広報という言い方がいいのかわからないんですけれども、そのあたりもお願いします。
(上坂主査) そうですね。そういう意味では小松崎委員にご活躍いただいており、原子力学会でもお話をして頂きました。ぜひ今度、小松崎委員にち核セキュリティの部分も入れていただいてと思っています。非常にご実績があるので。
(喜多委員) 実は先月うちで調査をやったときに、あなたは原子力産業に勤める、または転職するつもりがありますか。家族が転職するといった場合に、賛成しますか、反対しますかという世論調査したんですよ。年代別に。若い人が一番抵抗ないんですけれども。年代が上になるにつれてどんどん抵抗感がふえて、男性よりも女性のほうが抵抗感がある。非常におもしろい結果が出まして、そのうち紹介できるかと思います。
(上坂主査) そうですね、はい。
(五十嵐委員) ぜひ。大変興味深いです。
(上坂主査) そこも重要ですね。
 じゃ、以上で大体時間に来ましたけれども、よろしいでしょうかね。
 ほかにご意見とか連絡事項はございませんでしょうか。
 どうぞ、じゃ、お願います。
(道川補佐) 事務局から、お知らせいたします。次回の作業部会につきましては、後日日程調整をさせていただこうと思っております。
 また、本日の作業部会の議事録及び議事概要案につきましては、でき次第、メールにて確認依頼をさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。
(嶋崎室長) 補足で、きょうの会合を含めて、またご意見等ありましたら、事務局のほうへメール等で構いませんので、適宜おっしゃっていただければ、発表内容ですとか報告すべき、用意すべき資料等を、また順次用意をして対応していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(上坂主査) それでは、以上で第14回核不拡散・核セキュリティ作業部会を終了いたします。
 ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局開発企画課核不拡散科学技術推進室、研究開発局研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))