資料1-1 今後の核不拡散・核セキュリティ研究開発の進め方について(中間とりまとめ)(案)

平成29年○月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
原子力科学技術委員会
核不拡散・核セキュリティ作業部会


1.はじめに
 近年、核不拡散や核セキュリティ体制強化に向けた世界的な流れが加速している中で、我が国として、これまで蓄積してきた経験や高度な研究・技術力を通じて、国際的な核不拡散・核セキュリティ強化への貢献や、我が国の保障措置システムの高度化・効率化に資する基礎研究等、関連の施策を講じてきた。
 国際的には、潜在的な核テロへの懸念の増大による核セキュリティ強化の必要性に対する認識の高まりを受け、2010年以降、継続的に核セキュリティ・サミットが開催され、首脳レベルでも核テロ対策に関する基本姿勢や取組状況、国際協力の在り方等について議論されてきた。
 2016年春の第4回核セキュリティ・サミットをもってサミットプロセスは終了したが、核セキュリティに対する国内外の関心は引き続き高まっており、国際原子力機関(IAEA)等の国際機関・枠組み、日米核セキュリティ作業グループ(NSWG)等で議論され、各国の対応状況についても継続的にフォローアップがなされている。
 我が国において、核不拡散・核セキュリティを担保することにより、社会の安全・安心を確保し持続可能な社会を構築していくためには、関連の取組を継続的に行っていくことが不可欠である。とりわけ、研究開発や人材育成のような活動は、長期にわたって着実に行われることが不可欠である。
 他方、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が予定される中で、短中期的な視点にも立ち、我が国の核不拡散・核セキュリティの確保に繋がる取組を行うことも非常に重要である。また、米国の新政権においても核セキュリティは重要政策課題と引き続き重要とされている。
 今後、我が国としては核不拡散・核セキュリティの確保に関して一層の注意を払って対応していくことが重要である。
 これらの状況の中、核不拡散・核セキュリティの確保にあたっては幅広く様々な取組を相互に繋げて実施していく必要がある。文部科学省は研究開発や人材育成の役割を担っており、これらを戦略的かつ効果的に推進していくことが益々重要になっている。今後、大学、研究機関等と連携し、当該分野の研究開発や人材育成等に取組み、社会的要請に応えていく必要がある。
 これらの状況を受け、核不拡散・核セキュリティ作業部会において、有識者、学会、研究機関、関係省庁等の協力を得つつ、核不拡散・核セキュリティ分野の国内外のニーズ、本分野における我が国の強みや研究開発課題等を整理し、核不拡散・核セキュリティ分野における研究開発の今後の推進にあたっての基本的な考え方、課題及び今後の施策の方向性を取りまとめた。

2.核不拡散・核セキュリティを取り巻く状況
(1)国際的な議論
・2009年4月、オバマ米大統領がプラハ(チェコ)において演説を行い、「核テロは地球規模の安全保障に対する最も緊急かつ最大の脅威」とした上で、核セキュリティ・サミットの開催を提唱し、2010年以降、約50か国(約40名の首脳レベル)、3国際機関が参加し、計4回の核セキュリティ・サミットが継続的に開催されてきた。
・2016年3月に米国のワシントンD.C.で開催され、同サミットの最後となった第4回会合では、核セキュリティ・サミット終了後も引き続き核セキュリティ強化に取り組むため、IAEA、国連等の国際機関・枠組みにおいて引き続き議論されていくことになり、IAEAが核セキュリティ強化の取組において中心的な役割を果たすこと、また、各国がそれぞれ、今後も核セキュリティ強化に向けて継続的に努力していくことが確認された。
・その後、2016年12月に開催されたIAEA核セキュリティ国際会議においては、我が国からは、核セキュリティ・サミットでコミットした核物質の最小化と適正管理の取組を引き続き実施すること、核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)を通じた核セキュリティ分野の人材育成や能力構築支援を継続すること、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けたテロ対策強化のため、大規模国際行事の核テロ対策に知見を有するIAEAとの協力を行っていくこと等を表明した。
(2)国際的な研究・技術開発とそれを支えるものの現状と課題
1)核不拡散(保障措置)研究・技術開発
・各国がIAEAと締結している保障措置協定に基づいて、施設者は核物質の同定、測定等を行い、計量管理を実施し、IAEAは当該国において、核物質の転用や未申告活動が行われていないことを確実にするために、測定、検認、検知、封じ込め、監視等の技術的手段を適用している。
・IAEA自身は技術開発を行わないが、保障措置の技術的課題・ニーズを、長期R&D計画、2年間の開発実施支援計画といった文書で公表し、加盟国がIAEAのニーズを踏まえ、主に加盟国支援計画(MSSP)の下で技術開発を行い、その成果をIAEAに提供している。
・IAEAの加盟国はIAEAのニーズ・課題を踏まえ研究開発を実施しており、IAEAの長期R&D計画2012-2023では、未申告活動や申告施設の不正使用を検知する技術、使用済燃料の部分欠損を検知する非破壊測定(NDA)技術、新しい施設に対する保障措置技術等といった中長期的なIAEA保障措置の技術開発のニーズ・課題が挙がっている。
2)核セキュリティ研究・技術開発
・核物質、放射性物質、関連施設及び輸送を含む関連活動を対象とした犯罪行為又は故意の違反行為に対抗するために、各国は核セキュリティ措置としてそれらを予防・検知・対応する手段を適用している。
・核セキュリティの脅威として、核物質・放射性物質の盗取、妨害破壊行為、不法移転、その他の不法行為が想定されており、IAEAは、それらに対抗するための勧告、実施指針等の文書を作成し、各国は、それらの文書に従って、核セキュリティ強化のための対応を行っている。
・IAEAの文書のなかで、核検知、核鑑識技術等の核セキュリティ研究開発の重要性が指摘されているが、核セキュリティ上の脅威はその国によって異なることから、実効性のある核セキュリティを担保する上で、その国の状況やニーズに即して開発が行われることが必要である。
3)核不拡散・核セキュリティ研究・技術を支えるもの
・各国は、IAEAと締結している保障措置協定に基づいて、核不拡散(保障措置)を担保する人材育成等の取組を行っている。
・また、核セキュリティ上の脅威はその国によって異なることから、その国の状況やニーズに即した核セキュリティに関する人材育成等の取組を行っている。
・なお、IAEA核セキュリティ国際会議における「核セキュリティに関する国際会議閣僚宣言」では、「国内・域内の核セキュリティ強化のためのセンター(COE)等の活用を含め、教育訓練の機会の提供等を行うためのIAEAとIAEA加盟国の努力を支援する。」と表明しており、IAEA加盟国は上述の取組を引き続き実施していく必要がある。
(3)日本の取組
・上述のとおり、核不拡散や核セキュリティにおける体制・技術開発の強化に向けた世界的な流れが加速していく中で、我が国は、第1回核セキュリティ・サミットにおいて、アジア地域を中心に、核セキュリティを強化するためにキャパシティ・ビルディング支援等を行うためのセンターを日本原子力研究開発機構(JAEA)に設置すること、また、核検知・核鑑識技術開発を日米等の国際協力で実施し国際貢献すること等を表明し、関連の取組を行っている。
・研究開発・人材育成の観点では、JAEAは上述の核セキュリティ・サミットの発表を受け2010年12月に設置されたISCNにおいて、核鑑識、核検知・測定による研究開発や、核物質防護実習フィールドでの実習、ワークショップの開催等による人材育成支援を行っている。
・核物質の最小化と適正管理に関する取組としては、第4回核セキュリティ・サミットの「核セキュリティ協力に関する日米共同声明」で表明した通り、JAEAから高速炉臨界実験装置(FCA)の機微な核燃料の撤去を完了した。今後、上記声明で表明した京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)の低濃縮化を通じた高濃縮ウラン燃料の全量撤去等の取組を実施していく。
・学会における自主的な活動としては、日本原子力学会において原子力に携わる全ての関係者が、核不拡散・保障措置・核セキュリティに関する状況を十分認識した上で原子力技術の研究開発を推進することが必要かつ重要とした上で、2007年より核不拡散・保障措置・核セキュリティ連絡会を設置し、継続的に同会合を開催している。また、2015年より同学会標準委員会の下に設置したSafety & Security分科会において、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、安全と核セキュリティのインターフェイスに関する検討が行われている。更に、核物質管理学会日本支部においても、核セキュリティ強化に向けた研究会等が開催されている。
・環境整備の観点では、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(昭和32年法律第166号)、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」(昭和32年法律第167号)及び「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」(昭和33年法律第162号)の改正法が2017年4月7日に成立し、今後、同改正法に基づいて、危険性の高い放射性同位元素を取り扱う事業者に対し、防護措置を義務付け、テロ対策の充実・強化を図ることとされている。

このように、国内外において核不拡散・核セキュリティに関する重要性・必要性は否応なしに高まっていると言っても過言でない。


3.核不拡散・核セキュリティ研究開発の今後の推進にあたっての基本的な考え方
(1)基本的な考え方
・現在、核不拡散・核セキュリティの取組として求められていることとしては、過去4回の核セキュリティ・サミットの議論をはじめとする国際的な場において、核セキュリティに関する条約の順守、核物質及びその他の放射性物質のセキュリティ強化・規制を含む核物質等の適正管理、核セキュリティ強化に向けた研究開発、人材育成支援、人的資源の開発、教育及び訓練を通じた核セキュリティ文化醸成のための取組の促進及び核不拡散・核セキュリティにおいて国際会議等でコミットした取組の実施等が挙げられている。
・このこともあり、今後、我が国が核不拡散・核セキュリティを担保していくうえで、核不拡散・核セキュリティにおける研究開発や人材育成を行っていくことは、我が国において極めて重要である。
・文部科学省は、科学技術、研究開発、人材育成を担う担当省庁として、核不拡散・核セキュリティにおける研究開発や人材育成の取組を行うとともに、研究開発の成果を社会に繋げていくこと、また、当該分野における技術的、科学的な動向を把握していくこと等により、我が国の核不拡散・核セキュリティの確保に貢献していく責務がある。

(2)文部科学省の役割
・文部科学省としては、核不拡散・核セキュリティの確保という社会的・国際的要請に応えるため、核セキュリティのためのキャパシティ・ビルディングを行う必要がある。
・まず、核不拡散・核セキュリティを確保するため、本分野における研究開発を促進する必要がある。
・さらに、核不拡散・核セキュリティを今後持続的に確保していくため、人的資源の開発、教育及び訓練を通じた核不拡散・核セキュリティ文化の醸成に努める必要がある。
・加えて、我が国において効果的・効率的に核不拡散・核セキュリティを確保するため、幅広く様々な取組を相互に繋げて実施していくことが重要であることから、文部科学省、大学、研究機関同士が連携し、研究開発、人材育成に取り組める体制を構築する必要がある。
・ISCNについては、核不拡散・核セキュリティにおけるこれまでの研究開発や人材育成支援の実績について米国やIAEA等を始めとする国際社会からも高く評価されており、その経験を活かして、今後も継続的に関連の取組を展開していくべきである。


4.課題
 我が国にとって、核不拡散・核セキュリティに関する研究開発や人材育成は必要不可欠である。特に、研究開発を行うにあたっては、成果展開のターゲットを明確にし、ニーズを踏まえて戦略的に実施する必要がある。また、人材育成を行うにあたっては、研究開発や技術を支えるものとして、大学、研究機関等と連携し、中長期的に行う必要がある。そのための課題は以下の通りである。
○国内外の状況や将来も見据えた、詳細にわたる研究開発分野及び推進すべき研究分野の明確化及び推進すべき研究分野を本格的に推進する体制の整備
○研究開発と社会実装への隘路の解消
  実用化への道筋の明確化
  ユーザーとの連携の強化
  関係行政機関間との連携
○核不拡散・核セキュリティの取組を今後持続可能なものとし、将来にわたる安全・安心を確保する担い手を育成するため、文部科学省、大学、研究機関等の役割分担を踏まえた人材育成スキームの構築及び核不拡散・核セキュリティ文化の醸成
○受益国のニーズや他の国の研究拠点・中核研究拠点との役割分担を踏まえた人材育成の取組や核不拡散・核セキュリティ分野に国内外の人材を引き付けるための更なる取組


5.今後の施策の方向性
 我が国の核不拡散・核セキュリティを確保する上で、研究開発・人材育成の取組を行うことは非常に重要である。また、それらの取組を行う上で、関係省庁、関係機関間の連携並びに海外との連携も重要である。なお、研究開発を行うにあたっては、社会実装に繋がっていく取組を行っていくことが重要である。
(1)核不拡散・核セキュリティ研究開発
 核不拡散・核セキュリティ分野の研究開発を行うにあたって、国内外の状況や将来も見据え、詳細にわたる研究開発分野及び推進すべき研究分野を明確化する必要がある。
1)研究・技術開発のニーズ
○核不拡散・核セキュリティ研究・技術開発に関するニーズの把握
-成果展開のターゲットを明確にし、ニーズを踏まえて戦略的に実施する必要があるため、昨年、研究・技術開発を実施している研究機関等及び研究・技術開発成果を技術移転していく可能性のある機関からヒアリングを行いシーズ、ニーズを把握した(参考資料3)
-継続的に関連省庁等へのヒアリングを実施するなど、シーズ等を把握していくことが重要
○核不拡散・核セキュリティを支える技術開発に係る国際シンポジウム
-国内外における技術開発のニーズ・課題に関する情報収集・共有や国際協力・連携の促進等を行うため、ISCNにおいて2015年度より国際シンポジウムを開催している
-継続的に上述の情報収集・共有、国際協力・連携の促進等の取組を行うために、国際シンポジウム等を開催していくことが重要
2)今後の方向性
研究開発を行う際は、上記ニーズ調査、国際シンポジウムだけでなく、以下のような点も考慮し、核不拡散技術・核セキュリティ研究の今後の方向性を記した俯瞰図を作成し、実施することが重要である。
・日本の強み(国際的な動向調査)、国際協力の観点も踏まえて整理する。
・核不拡散・核セキュリティ分野の研究開発の推進にあたっては、核不拡散・核セキュリティ上のリスク、脅威は何かを分析・評価した上で、研究開発を最適化して行っていく。
・他方、核不拡散・核セキュリティをとりまく状況として、サイバーセキュリティに関する課題が世界的に顕在化し、モノのインターネット(IoT)が急速に進展する中、これらへの対応及びグローバルに社会実装していくことが必要になる。これらを踏まえて対応を検討する。
・また、これまで限られた時間で俯瞰図案について精査を実施してきたが、国際協力の観点も踏まえて、さらに時間と労力をかけて継続的に精査・分析する。

(2)核不拡散・核セキュリティ研究・技術を支えるもの
 核不拡散・核セキュリティの取組を持続的に取り組んでいく上でも文部科学省、大学、研究機関等の役割を明確にし、中長期的な視点で人材育成を行っていくことが不可欠である。同時に、そのような人材育成が可能となるよう核不拡散・核セキュリティに対する社会からの理解を得ることも重要である。また、核不拡散・核セキュリティ技術に対する意識を高めるような取組も重要である。これらの取組を行うことで、人材育成スキームの構築及び核不拡散・核セキュリティ文化の醸成を図る。
1)人材育成
○大学等の役割
-学部・大学院レベルの学生や研究生レベルに対する人材育成を行う機関として、大学等の教育・学術研究機関の果たすべき役割は大きく、核不拡散・核セキュリティの人材育成を持続的に行っていくことに対する貢献が期待されている。大学等が課題を明確にしつつ、これらの人材育成を担っていくことが重要
○大学等が役割を果たす為の推進方策
-他方、上記のように人材育成により持続的に核セキュリティを実現していく中、大学のような学術研究機関が本来の目的を果たせるよう配慮した取組の検討(例:機密指定の解除(Declassify))が必要であるとともに、各機関がそれぞれのキャパシティも考慮に入れ、効果的・効率的に核不拡散・核セキュリティのための取組を行っていく
-原子力の分野全体のみならず、核不拡散・核セキュリティ分野に特化したような人材育成プログラムの必要性
-また、これらの研究開発を支えるための分析等を担う支援人材の育成も重要な視点
○ISCNの役割
-IAEA総会や核セキュリティ国際会議において、セミナー・トレーニング等を通じた核不拡散・核セキュリティに関する国際的な普及啓発、文化の醸成等の重要性が指摘されており、こうした要請に対応する上でISCNの継続的な取組は重要
○ISCNと大学との連携
-核不拡散・核セキュリティを持続的に確保する上でも人材育成を担う大学が役割を果たし、裾野を広げていく
-効果的・効率的に核不拡散・核セキュリティに関する人材育成を行っていく上で、ISCNと大学における拠点機能、拠点間ネットワークの構築していく
2)その他のソフト的な対応
-研究開発等についても今後は分野限定せずに、国内外の機関とも連携していく
-サイバーセキュリティや人の動きに着目した防止策を講じることが重要
-ISCNの活動のみならず、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)の核セキュリティの取組も今後のアジア展開に貢献していく
-研究機関等における核不拡散・核セキュリティの取組を実効性のあるものにするために、各機関等が自主的に取り組む核不拡散・核セキュリティ文化の醸成も重要であり、このような核不拡散・核セキュリティ文化の醸成にあたって研究機関等は、原子力学会等のコミュニティと協働して取り組んでいくことが期待される

(3)国際戦略
 ISCNの人材育成支援や研究開発活動の実績はIAEAや国際社会の場からも既に評価されているが、核不拡散・核セキュリティを実効あるものにしていくため、また、国内に閉じられた活動のみでは自ずと実効性に限りがあることから、国際的な視点は不可欠であるため、以下の点に留意しつつ、これらの分野の国際協力を進展させていく。
-IAEA等の国際機関との協力・貢献
-国際的な活動との連携例(ISCNと世界核セキュリティ協会(WINS)との国際会議、ワークショップの開催等)
-日米核セキュリティ作業グループ(NSWG)の枠組を活用した協力
-アジア地域との協力(ISCN人材育成、FNCAの枠組み、日中韓のCOE協力枠組の検討等)

(4)社会実装につなげるための取組
-基礎研究から社会実装に繋げていくための取組が重要(既存の基礎研究であっても研究が進展する上で社会的なニーズをこれまで以上に参酌すること、また、あるべき今後の社会を踏まえて新たな研究開発を行っていくこと等)

(5)関係省庁、関係機関間の連携
-核不拡散・核セキュリティは多岐にわたる取組であり、社会からの要請や実装に向けた視点も今後益々必要となることから、関係省庁・関係機関間の一層の連携が必要


参考資料


(参考資料1)
第9期 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会
原子力科学技術委員会 核不拡散・核セキュリティ作業部会 委員名簿

主査  上坂  充   東京大学大学院工学系研究科 教授
      礒   章子  公益財団法人核物質管理センター事業推進部長(平成29年6月13日まで)
      五十嵐 道子  フリージャーナリスト
      尾野  昌之  電気事業連合会原子力部長
      喜多  智彦  一般社団法人日本原子力産業協会人材育成部長
      小松崎 常夫  セコム株式会社顧問
      多田  伸雄  一般社団法人日本電機工業会原子力部長
      出町  和之  東京大学大学院工学系研究科 准教授
      中島  健   京都大学原子炉実験所 教授
      布目  礼子  一般社団法人日本原子力学会 理事

(平成29年6月現在)



(参考資料2) 技術開発俯瞰図の策定に向けた本作業部会の公開の在り方
平成29年5月10日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
核不拡散・核セキュリティ作業部会決定

1.背景
 第7回核不拡散・核セキュリティ作業部会(平成28年5月30日開催)の議論を踏まえ、本作業部会において、核不拡散・核セキュリティ分野の国内外のニーズ、本分野における我が国の強みや技術開発課題等を整理し、今後進めるべき技術開発テーマを同定するために必要な情報を俯瞰図等にまとめることとした。
 本作業部会は、「科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会運営規則(以下、運営規則)」に則り進めることとしており、会議の公開については、運営規則第4条を踏まえ、原則公開(人事、行政処分、作業部会において非公開とすることが適当であると認める案件を除く)としている。
 第7回作業部会において、今後の技術開発俯瞰図策定に向けた議論の過程で、核セキュリティ等の観点で機微な情報を含む意見交換を実施する必要が生じる可能性があり、非公開で議論を行うことが適切な場合があるとの指摘があった。そのため、第7回以降の作業部会において、可能な限り会議を公開するという前提条件の下、包括的かつ正確な情報の把握、率直な意見の交換を行うため、俯瞰図とりまとめに向けた本作業部会の公開の在り方について整理を行っている。
 なお、当作業部会の上位の委員会にあたる科学技術・学術審議会において、平成29年度より、第8期から第9期へと期がかわったが、第9期の核不拡散・核セキュリティ作業部会においても第8期同様、「技術開発俯瞰図の策定に向けた本作業部会の公開の在り方」の考え方について、引き続き継続していく必要がある。

2.方針
 技術開発俯瞰図のとりまとめにあたり、作業部会は、原則として会議を公開することとする。但し、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年6月13日法律第69号)第5条に定める不開示情報を扱う場合(扱う可能性がある場合を含む)は非公開とする。

3.公開・非公開の態様
(1)公開部分については、一般からの傍聴を可とし、議事録を公表する。非公開部分については、一般には公開せず、委員、事務局のみが会議に参加するものとするが、議論の深化に資すると考えられる場合は本分野の専門家を参加させることができる。また、議事録も非公表とする。
ただし、公開部分について機微と考えられる意見交換がされた場合には、原則、次の作業部会での合意をもって議事録から削除することも可とする。また、非公開部分について、公益性の観点から公開すべき情報を含むと考えられる場合には、作業部会の合意をもって議事概要を公表することも可とする。
(2)議事録は、話し言葉を文章としての表現に修正するなど、内容の修正を伴わない最低限の修正を事務局で実施し、作業部会の委員の確認を踏まえて取りまとめる。

4.今後の作業部会の取扱い
○第12回作業部会(平成29年5月10日)
  1)核不拡散・核セキュリティ作業部会の設置について【公開】
  2)核不拡散・核セキュリティ作業部会における「今後の核不拡散・核セキュリティ研究開発の進め方について」(中間とりまとめ)(素案)【公開】
  3)技術開発俯瞰図について【非公開】
○第13回作業部会(平成29年6月頃予定)
  1)核不拡散・核セキュリティ作業部会における「今後の核不拡散・核セキュリティ研究開発の進め方について」(中間とりまとめ)(案)【公開】
  2)技術開発俯瞰図について【非公開】

なお、現在作業部会において技術開発俯瞰図の具体的検討に入っているため、例えば、前半は非公開、後半は公開とするなど、公開部分と非公開部分に分けて検討を実施する。

(参考)
○科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会運営規則(抜粋)
(会議の公開)
第4条 委員会等の会議及び会議資料は、次に掲げる場合を除き、公開とする。
 一 委員会等の主査の職務を代理する者の指名その他人事に係る案件
 二 行政処分に係る案件
 三 前二号に掲げるもののほか、個別利害に直結する事項に係る案件、又は審議の円滑な実施に影響が生じるものとして、委員会等において非公開とすることが適当であると認める案件
(議事録)
第5条 委員会の主査又は作業部会の主査は、委員会等の会議の議事録を作成し、所属の委員等に諮った上で、これを公表するものとする。
2 委員会等が、前条の各号に掲げる事項について調査審議を行った場合は、委員会の主査又は作業部会の主査が委員会等所属の委員等に諮った上で当該部分の議事録を非公表とすることができる。
(雑則)
第6条 この規則に定めるもののほか、委員会等の議事の手続その他委員会等の運営に関し必要な事項は、委員会等の主査が当該委員会等に諮って定める。

○行政機関の保有する情報の公開に関する法律(抜粋)
(行政文書の開示義務)
第五条  行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
一  個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項 に規定する国家公務員(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第四項 に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条 に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分
二  法人その他の団体(国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、次に掲げるもの。ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報を除く。
イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの
ロ 行政機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの
三  公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
四  公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
五  国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
六  国の機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 独立行政法人等、地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

(参考資料3)
核不拡散・核セキュリティ技術開発に関するニーズ調査について(結果)

1.概要
本作業部会における、核不拡散・核セキュリティ分野の技術開発に関する俯瞰図の策定に向けての議論に資するため、本分野の技術開発の現状やニーズ等に関し、関連省庁へのヒアリングを実施した。
 ヒアリングの結果、核不拡散分野においては、非破壊測定(NDA)技術を用いた核物質の計量管理の精度の向上に対するニーズが把握できた。また、核セキュリティ分野においては、核テロの防止に資する技術開発として、サイバーセキュリティ対策やドローンへの対策に資する技術へのニーズが把握できた。核テロの検知に関しては、小型化、実用化が今後の技術開発に向けた課題として提起された。核テロに対応するための技術として、核テロの現場における放射線測定技術、核鑑識技術に関するニーズが把握できた。核鑑識については原子力機構の技術力の維持に対する期待がある。

2.ヒアリング調査結果
(1)技術開発の現状
1)核不拡散分野
○日本原燃が建設中のMOX燃料加工施設(J-MOX)に適用される保障措置機器の開発を核物質管理センターに委託し、米国のロスアラモス国立研究所との協力の下で実施(MOX原料キャニスター、燃料製造工程から採取したMOX粉末、ペレットのサンプル、MOX燃料集合体のγ線や中性子線を測定し、それらのPu量を定量する非破壊測定機器を開発している)。

2)核セキュリティ分野
○原子力施設に対するサイバーセキュリティ対策、原子力施設の侵入検知センサーやカメラの性能評価、車両進入阻止アングルの性能評価等を実施。
○核テロの現場において初動対応にあたる人員の放射線安全を確保するための機器(中性子線量を測定する無線式個人線量計、モニタリングカーの機能を集約したキャリングケース型の放射線測定装置、核物質からの中性子線を1/3に低減する中性子防護盾等)の開発を実施。核鑑識に関しては現場での対応に必要な範囲において技術開発を実施(ウラン濃縮度の測定技術等)

(2)具体的なニーズ
1)核不拡散分野
事業者による計量管理の正確性をより向上させるような技術開発に対するニーズを把握することができた。具体的には以下の通り。
○軽水炉の使用済燃料中の核物質の計量管理について、現状では、燃焼コードによる計算値が用いられているが、より精度の高い NDAにより直接計量する技術が開発されれば、再処理施設において溶解後、実測により計量した量との受払間差異(SRD)をより少なくすることができる。
○廃棄物中に内包される微量の核物質の測定には誤差を伴うため、廃棄物の計量管理の精度を向上させるNDA技術が開発されれば良い。
○再処理施設では、それぞれの工程における密度、液量を計測する技術とサンプル分析を組み合わせて計量管理を行っているが、NDAだけで出来るとタイムリーに測定が可能であり、また、サンプルを取る必要がなくなることで廃棄物を出さずに済み、査察側にも事業者側にもメリットがある。
○MA(マイナーアクチノイド)含有燃料に対する計量管理には、現状の測定機器では対応できないことから、今後、核変換技術等のために、国内でMA含有燃料が用いられることがあれば、NDA測定機器の開発にニーズが生じる。
○プルトニウムの同位体測定等に用いられるガンマ線測定用のゲルマニウム検出器は冷却が必要だが、これに用いることができる冷却の必要がないガンマ線測定器があれば良い。

2)核セキュリティ分野
1>予防技術:
○テロリストの脅威に対抗するため、堅牢な輸送容器の開発が望ましい。
○特に重点的に考えていることがサイバーセキュリティ対策。IAEAの関心も高い。
○原子力施設で使用している監視カメラやセンサーの性能が分かれば事業者に対して指導がしやすい点で関心がある。
○侵入監視センサー・監視カメラ技術、防護扉・フェンス等の性能評価は、米英仏は国の機関で実施している。バイオメトリクス、禁制品探知技術の評価についても、米国では国の機関が行っている。
○原子力施設に対する妨害破壊行為を行う可能性のあるドローン対策に関心がある。
○ドローンの接近を探知する装置や飛行を妨害する装置の開発を希望。

2>検知技術
○ISCN(核不拡散・核セキュリティ総合支援センター)が取り組んでいる技術開発は大がかりな装置が必要で、小型化、低コスト化が課題。
○現状の放射線計測システムは十分機能しており、現段階では技術開発のニーズは感じてはいないが、テロのリスクは高まっており、将来的には、ISCNで開発しているようなアクティブ型の検出器の導入が必要になる可能性がある。
○検知技術は持ち出しに対する対策として事業者にとってニーズがある。

3>対応技術
○「予防」だけでなく、「核物質が盗まれた後にどう対応するのか」といったことに必要な研究開発を行って欲しい。例えば革新的放射線イメージング技術の開発により核物質・放射性物質の同定、隠匿された位置情報の取得の精度向上に期待。米国では、遮蔽できていない中性子の到来方向を把握する実験を行っているが、10度程度の分解能だった。
○ダーティボムの飛散予測と飛散検知の基盤研究(例えば、小型の無線検出器を上空からばらまき、汚染範囲を予測する研究開発)を行って欲しい。
○緊急時に放射線環境下で人が近づかなくても計測や防護ができるロボット技術の研究開発が望ましい。
○一般的に放射線や放射性物質の環境下においては、線量だけでなく時間管理の出来る個人線量計や、ホットスポットの分かるメガネのようなものがあれば、様々な対応機関にとって有用と思われる。
○核セキュリティ事案発生時の対応の観点から、核鑑識技術は維持して欲しい。
○核鑑識用分析技術開発はITWG、IAEA等の国際協力に支障の出ないようにしてほしい。
○核鑑識に関して科学警察研究所が実施するのは、現場で試料を採取し分類するところまでで、詳細な分析はJAEA等の研究機関に依頼する必要があると考えている。
○核鑑識にはデータベース構築が重要。

4>その他
○ISCNが実施している核セキュリティに関する人材育成事業は有益であり、続けて欲しい。

お問合せ先

研究開発局開発企画課核不拡散科学技術推進室、研究開発局研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))