第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年8月20日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省東館15F特別会議室

3.議題

  1. 環境エネルギー科学技術をめぐる最近の状況について
  2. 平成27年度の事後評価の進め方について
  3. その他
  4. 平成28年度概算要求に係る事前評価について(非公開)

4.出席者

委員

橋本委員(主査代理)、市橋委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、小長井委員、関委員、関根千津委員、田中委員、手塚委員、花木委員、松橋委員、渡辺委員

文部科学省

長野環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、田島課長補佐、鏑木課長補佐、西川地球観測推進専門官

オブザーバー

東京大学大学院 小池教授

5.議事録

【橋本主査代理】  ではただいまから、環境エネルギー科学技術委員会の第2回会合を開催いたします。お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 安井主査が本来司会をされるのですけれども、急用のため欠席ということで、委員会運営規則の第4条第7項に基づきまして主査代理の指名を受けております橋本が議事進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の委員会は、委員会運営規則により、議題の3番目までを公開とさせていただきたいと思います。議題の4番目につきましては、事前評価に係る案件があることから非公開の扱いにいたします。傍聴者の皆様におかれましては、議題(3)が終了した時点で御退席をお願いすることになりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず、事務局より、本日の出席者の確認と、初めて出席いただく委員及び事務局の異動について御紹介をお願いしたいと思います。お願いします。
【田島課長補佐】  はい。それでは、本日御出席の委員の先生方13名と過半数に達しましたので、委員会は成立という形になります。
 今回初めて御出席の委員の方を御紹介させていただきます。お二方いらっしゃいまして、まず、市橋委員でございます。
【市橋委員】  東京都環境科学研究所の市橋と申します。もともと行政に携わっていまして、ここ7年ほど研究の方をやっております。専門は地球気候変動の適応策をやっておりまして、バックグラウンドは土木技術になります。よろしくお願いします。
【田島課長補佐】  それから、加藤委員でございます。
【加藤委員】  北海道大学理学研究院の加藤と申します。よろしくお願いいたします。専門は錯体化学ですけれども、前回出席できなくて申し訳ありませんでした。これからよろしくお願いいたします。
【田島課長補佐】  また、今回は、議題(1)において地球環境情報統融合プログラムの御説明を頂くために、東京大学大学院工学系研究科教授の小池先生に御出席いただいております。
【小池教授】  小池です。よろしくお願いいたします。
【田島課長補佐】  続きまして、事務局の異動につきまして御報告をいたします。
 環境エネルギー課長の原が異動いたしまして、後任に長野が着任をいたしております。
【長野環境エネルギー課長】  長野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【田島課長補佐】  また、環境科学技術推進官の木下が異動いたしまして、後任に樋口が着任しております。
【樋口環境科学技術推進官】  樋口晋一です。よろしくお願いいたします。
【田島課長補佐】  以上でございます。
【橋本主査代理】  それでは、事務局から一言ずつ、自己紹介を兼ねて簡単な御挨拶を1人3分程度で頂きたいと思います。長野課長、お願いします。
【長野環境エネルギー課長】  長野でございます。今回、環境エネルギー課長に着任いたしました。この分野につきましては初めてではございますけれども、さかのぼりますと、実は20年前には宇宙利用の担当、リモートセンシングの担当をしておりました。そのときはちょうど陸域観測技術衛星(ALOS)の衛星計画を作ったところでございまして、リモートセンシングの実利用プロジェクトを東南アジアで始めたりとかですとか、日本における地震の――当時、兵庫での地震がございまして、そのときの断層を衛星観測で行ったりですとか、そういったことが思い出されます。それから、2ポスト前には国際戦略の担当でございまして、そのときには政府開発援助(ODA)との連携の地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の担当もしてございました。それから、一つ前にはナノテクノロジー・材料担当でございまして、材料は言うまでもなくエネルギーの分野と非常に密接に関係しているということでございまして、全く関係ない分野ではなく、いろんな周辺をいろいろ回ってございましたので、ようやくこのど真ん中、環境エネルギーの分野を担当できることになったということで、大変うれしく思ってございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございます。樋口推進官、お願いいたします。
【樋口環境科学技術推進官】  7月1日にこちらに異動になりました樋口晋一と申します。前はインド大使館で3年ぐらい働いていまして、日印の科学技術協力と、あと現地での非政府組織(NGO)へのODA、草の根無償資金協力というのがありまして、それを担当しておりました。大分違う仕事ですけれども、先生方の御指導を得てこの分野を推進していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございました。
 小池先生につきましては後から、御説明をいただく際に、冒頭に御挨拶、御紹介をしていただければと思いますので、お願いいたします。
 それでは、議事に入る前に、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
【田島課長補佐】  はい。それでは、資料を確認させていただきます。まず、議題(1)環境エネルギー科学技術をめぐる最近の状況についての関連資料といたしまして、配付資料1-1で「環境エネルギー科学技術に関する懇談会」構成員の主な意見、資料1-2で「地球環境情報統融合プログラム」のこれまでの成果についてを入れております。議題(2)の事後評価の進め方についての関連といたしまして、資料2-1、平成27年度環境エネルギー科学技術委員会における事後評価の実施について(案)、資料2-2といたしまして、気候変動適応戦略イニシアチブ気候変動適応研究推進プログラムという資料を入れさせていただいております。また、議題の(4)、非公開の議題でございますけれども、こちら、平成28年度概算要求にかかる事前評価についての関連資料といたしまして資料3を入れさせていただいております。また、参考資料といたしまして、参考資料1から参考資料4までの資料を入れさせていただいております。乱丁、落丁あるいは過不足等ございましたら、事務局にお申し付けいただければと思います。
 以上でございます。
【橋本主査代理】  よろしいでしょうか。
 では、議事に入りたいと思います。本日は、お手元の議事次第にあるとおり三つの議題を予定しております。
 最初に、議題(1)環境エネルギーをめぐる最近の状況についてです。1点目として、「環境エネルギー科学技術に関する懇談会」の経過について、2点目として、「地球環境情報統融合プログラム」のこれまでの成果について御報告いただきたいと思います。
 まず、「環境エネルギー科学技術に関する懇談会」の経過について、小長井委員から御報告をお願いいたします。
【小長井委員】  懇談会の座長を務めさせていただきました小長井でございます。
 それでは、早速、資料1-1をごらんいただければと思いますが、最初に、構成員の主な意見を御紹介する前に、設置の趣旨等をもう一度ちょっと見ておいた方がよろしいかと思いますので、ずっとめくっていただきまして、最後の9ページというところを見ていただければと思います。今回、どうしてこういう懇談会を設置したかということでございますが、環境エネルギー技術については何としてでも革新的なものを開発していかなければいけない、創出しなければいけないということで、少し若手・中堅どころの方からの意見を聞いてみようというような趣旨だと思いますが、そういう方々、一線で活躍されておられる方を集めて意見を聞く会を持ったということでございます。現在まで都合4回議論を重ねておりまして、きょうの資料はそれをまとめたものでございます。きょうここで御紹介申し上げて、更に追加で議論する必要がある場合には、また継続して懇談会を開かせていただくということでございます。
 この2の検討事項のところを見ていただきますと、どういう観点で議論を重ねたかということですけれども、環境エネルギー科学技術に係る研究開発の在り方ですね、特に府省連携のこととか、分野横断、社会実装、それから、ここには書いてございませんが、プラス国際連携というようなことについて議論させていただきました。きょう御紹介申し上げるのは、その場でコンセンサスを得たということではなくて、かなりいろんな分野の方がおられますので、そのうちの代表的な意見をまとめさせていただいたと、そういうものでございます。
 その次の最後のページを見ていただきますと構成員名簿になっておりまして、上から江面先生からずっとございまして、分野が多岐にわたっております。バイオの先生から化学系の先生から、あと、私のように太陽電池をやっている者から、エネルギーマネジメントをやっている者までございまして、こういうメンバーで議論させていただきました。オブザーバとして国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)がいろいろ最近の動向等の紹介をされたと、そういうものでございます。
 それでは早速、時間もございませんので、その意見の方を御紹介申し上げます。10分でということでしたので、丁寧に御説明できませんので、ちょっとかいつまんで紹介させていただければと思いますが、まず、開いていただいて1ページ目でございます。
 最初に「戦略的な研究開発の推進」ということで、まず第1項として「戦略的な研究開発の重要性」ですね、これについて議論いたしました。皆さん、エネルギー問題について大変よく分かっておられる方でございまして、最初はどちらかというとかなり現実的なお話が多かったと思いますけれども、これからのエネルギー政策を考える上でエネルギー問題の貢献度といいますか、技術ポテンシャルかける量的ポテンシャル、これをちゃんと見極めてやるべきであるというもっともな話もございまして、そういうことを念頭に置いて先へ進めたわけであります。
 それから、これからのエネルギー開発といっても、今、御承知のように、火力発電を見ましても、トリプルのコンバインドサイクルまでいきますと70%のエネルギー効率になると言われておりまして、そういうものも見据えた上で研究開発を進めるべきではないかという意見がございました。
 それから、エネルギーというのは大変多岐にわたっておりますので、これからはエネルギーミックスでどのように組み合わせていくかということにもなりますが、丸の4項目目にございますように、総括的な研究者による目利きですね、これはいろんな分野で今言われていると思いますけど、やっぱり目利きの方が重要だなということでございます。
 それから、五つ目の丸は、これも今、いろいろ議論あるところでございますが、バックキャストでデバイスや材料を先導することが必要であるということでございます。
 その次の六つ目の項目も同じですけれども、システムレベル、材料レベル、原理レベルの科学がお互いに支え合うことが重要であるというようなことでございます。
 下の方の括弧書きのところの「イノベーションを生み出す基礎基盤研究」ということでございまして、やはり基礎基盤研究、大変重要ですので、余り過度に一つの項目に集中するのではなくて、いろいろやるべきであると。長くやってほしいと、そういうことでございます。
 それから、ちょっとおやっと思ったのは、1ページの一番下に書いてある項目でございまして、今、スモールスタートということがかなり叫ばれていて、それが採用されつつあるかと思いますけれども、私もこれ、賛成でございますが、橋本先生は大変強く推しておられるわけですけれども、同時に、先端的低炭素化技術開発(ALCA)でやっているようなステージゲートですね、これは、私、大変うまくいっていると思ったんですけれども、中にはどうもステージゲートが気に入らないという方がおられるみたいでございまして、ちょっと勘違いされているかもしれませんが、ステージゲートを設けると単純に短期的成果を求めるような傾向があるので注意が必要ということで、これについては私も橋本先生の分科会の下で一応まとめ役をやっておりますので、そうではないという話をちょっとしておりましたが、そういうふうに感じている方もいたということでございます。
 めくっていただきまして、幾つか飛ばして三つ目くらいのところを見ていただきますと、やはりこれからは異分野融合だということでありまして、これも常に叫ばれていることではあるんですけれども、もうちょっと積極的に異分野の若手研究者の共同提案によるファンディング等をやるべきではないかというような意見がございました。
 それから、四つ目の丸でございますけど、大学の間接経費等にも言及される委員の方がおられて、もう少し自由に決めさせてもらえないかというような、これはちょっとアメリカの大学のことを意識している意見でございますが、そういう意見もございました。
 それから、五つ目に、かつての石炭の液化のこともちょっと書いてありまして、光が当たった瞬間はいいんだけど、ちょっとブームが去ると減衰してしまうというのもよくないという。なるべく一つの技術をもう少し息長くやっていった方がいいのではないかという意見もございました。
 それから、下の方の「多面的な評価」ということでございまして、研究者の評価というのは大変難しいところでございます。今はどうしても被引用回数とか論文の数とかが問題になりがちなんですが、システム的な観点で見ると必ずしも被引用回数というのが社会実装とつながっていない面がありまして、新しい評価方法――じゃあ何がいいかというと、なかなかすぐに答えは出てこないんですけど、それはやはり新たに考えていった方がいいのではないかと、そういう意見でございます。
 次の3ページ目に移らせていただきまして、上の方ですね、ゲームチェンジングな研究をやる場合の評価の仕方、ゲームチェンジング的なものをやるということはかなり難しいテーマに挑戦しているわけですので、必ずしも成功するわけではないと私も思っているんですけど、そのときの評価をどうするかということで、国際的に見るとピアレビューをやっている例が多いかと思うんですけれども、日本でもそういう制度を入れた方がいいのではないかという意見がございました。
 それから、次の2.の「エネルギー科学技術に関する分野別及び異分野融合の研究開発」ということでございまして、これはいろいろバイオマスの研究の在り方とか、それから、今、太陽光発電の在り方ですね、それから、だんだん原油からシェールガスに移りつつあるような、そういう動向を踏まえての研究課題とか、褐炭を使ったらどうかとか、いろいろ意見がございました。ここら辺はちょっと時間がありませんので、見ていただければと思います。
 それから、4ページの方を見ていきますと、丸の三つ目でございますけれども、どうしてもエネルギーマネジメントというよりもスマートグリッドと私もまだ言ってしまうことが多いんですけど、委員の方から、それはやっぱりアメリカから出てきた言葉であって、本来、エネルギーマネジメントと言うべきだという大変強い意見がございまして、これから私もちょっと書き換えようかなと思っているところでございます。
 それから、「異分野融合」、ここのところの丸の二つ目、今まで述べてきたことと同じなんですけど、やはり異分野で研究プロジェクトを立てる場合にはプロジェクトマネジャーが重要ですねということでございます。
 それから、丸の四つ目ですね。戦略的な目標を設定して進める場合には、アンダーワンルーフでやるべきであると。つまり、違う分野の方が同じところで共同でやっていくということが非常に重要だと、そういう指摘がございました。府省連携についても、違う府省のものが同じ屋根の下でやるというのは大変重要なことであると考えております。
 それから、5ページ目に参りましょうか。あとはそうですね、特に変わった意見はないかと思いますが、「エネルギーと環境」等について、既にこれは対応できているところも一部あるのではないかと思うんですけれども、地球環境情報とエネルギーマネジメントの関係とか、それから、「エネルギーと環境」の丸の二つ目のところに書いておりますように、自然環境への影響の問題とか、そういうことも常に考えていくようにということ。
 それから、三つ目の丸として、技術開発に伴うリスクですね、これは地球環境とか生態系への影響を含めてですが、そういう議論がございました。
 そして、丸の四つ目にありますように、これからエネルギーも多様になってまいりますので、どんな形でどういうエネルギーを組み込んでいくかというのは、やはり社会受容性ということが非常に重要になってくると思いますので、社会科学とか人文学の研究者の知見も入れる必要があるんじゃないかと、そういう意見がございました。
 それから、5ページの下の3.の「研究開発成果の社会実装」と。これは今いろんなところで議論されているとおりでございまして、府省連携、一気通貫型の産学連携を推進していくべきであると、そういう御意見でございます。
 6ページ目は、あとは大体同じですが、例えばこれから新しいエネルギーを導入していくにしても、どうしても規制が掛かってきて、大規模に実証できないような場合もあるので、特区的なものを創った方がいいのではないかというのが真ん中辺りに書いてございます。
 それから、「国際化の推進」ですね。この環境エネルギーというのは全地球的な問題ですので、やはり世界の研究者と共同してできるような体制が望ましいと。ただし、今まで国の予算を使っている場合には、海外に研究費を出すことはなかなか難しいわけでございますが、かつてそういう研究テーマもあったんですけど、それをもうちょっとこういう分野で積極的に導入できないかというようなことで、中堅どころの先生からは大変積極的な意見を頂いたところでございます。
 簡単でございますけど、以上です。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございました。
 では、ただいまの御報告について質疑を行いたいと思います。発言のある方はお願いいたします。どうぞ御自由に。いかがですか。
 それでは、私から。小長井先生、どうもありがとうございます。懇談会の構成員は大体40歳の前半ぐらいの方でしょうか。後半の人もいらっしゃるかも分かりませんが、メインは40歳ぐらいの方々ですよね。
【小長井委員】  ええ。
【橋本主査代理】  ですので、若手と言うのには少しひねているかもというのはありますけど、中堅どころの方で議論をされて、先生もおっしゃっていましたけど、そんなに目新しい意見が出てきていない。中堅どころの方だからもう少し過激なというか、違った視点の意見が出てくるのかなというふうに期待していた向きもあるのですけど、それほどでもなくて、どこまで言っていいのか分からなかったというところもあるんでしょうし、それから、やっぱりこういう問題は結構常に議論されていてされ尽くしているというところと両方あるのだと思うのです。ですけど、こういう中堅どころの方々が、あるいはもうちょっと若い方々が、こういう観点でファンディング等々を含めて議論することが重要かなという気がいたしまして、議論していく中で情報が入っていくので、彼らはますます考えが高まってきて次のステップに行くというような、そんな感じを期待しているところなのですけど、その辺どうでしょうか。これまでこの議論は何回くらいされたんですか。
【小長井委員】  これは全部で4回議論を行いました。
【橋本主査代理】  4回。それで、回を追うごとに何か高まったとか、そういった感じはありますか。
【小長井委員】  そうですね、最初はやはり、各先生方、自分の分野を持っておられるので、大局的な立場で見るというよりも、自分の技術が例えばどのくらい将来使えそうかという話になりそうだったので、私の立場としては、そうではなくて、ここでは、各技術が目標に向かって体制をどのように持っていったらうまく達成できるかという議論にしてほしいということを申し上げて、結局、最後、どのくらいの割合でどういう技術が使えるかというのは国が決めるといいますか、国民の考えを入れて決めていくわけですから、そこはあんまり議論しないでほしいと。例えばトリプルの火力はもっとやるべきだとか、どういうふうにすべきだとかって、そういう話ではなくて、バイオに持っていけとかそういうのではなくて、もうちょっと各プロジェクトがどのように進むべきかというようなことで議論していただきました。大体いつもだんだん同じ方に盛り上がったというのではなくて、こんな感じでということでやりました。
【橋本主査代理】  ありがとうございます。今、私もエネルギーに関わる研究をやっていて、そういうプロジェクトの報告等々も聞いていますが、当たり前ですけど、そんなに新しいアイデアは出てこないんですよね。予算を付ける可能性があるから考えろと言って、それですぐに出てくるというのはおかしいわけです。ふだんから当然研究者は考えているので、もちろん予算の話などは一つのきっかけにはなり得るとしても、それを言われたからといってすぐに新しいアイデアが浮かぶというものではないのです。そういう中で常々思うのですけど、国の予算の制度や仕組みそのものではないのですが、実際の運営上で新しいプロジェクトを作るということで、常に新しいものは何かないかと言われ、現場ではかなり実はみんな困っていますよね。もう絞り出しているのに、更に新しいのを出さなくてはならないというので、絞り出してごまかしてみたいなところがかなりあるようにも思います。その辺に関して何か彼らなりに意見があったりすると、もう少ししっかりと政策的にも反映できるのではないかなという感じもしているのですけれども、その辺に関しては何か出なかったですか。
【小長井委員】  そういう意味では、こういうテーマを取り上げるべきじゃないかというものについても、既に例えば昨年とか今年から始まっているものも結構ありますので、もうちょっとこちらからも情報をしっかり提供してから議論してもらった方がよかったかなという気もします。私自身はかなり最近の動向を知っていますので。例えばナノバイオインフォマティクスをエネルギー材料に入れていくとかいうようなこととか、いろんなことが私はインプットされているんですけど、皆さんやはりALCAとか、これを見るとさきがけとかCRESTで実際にやっておられる方なので、自分が今抱えている問題点が多かったような気もします。
【橋本主査代理】 分かりました。どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか、御意見は。
【小長井委員】  特に、そうですね、これが重要だという意味では、私は国際研究というのがやっぱり重要かなと思っているんですけど、どうしても日本の場合には海外に研究費を出すことが難しいということもありますので。本当はそこが出ているといいんですけどね。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も昔は国際共同研究というのがあったんですけど、ああいうものはもうなくなってしまったわけですし、あとは是非いろんな研究者がアンダーワンルーフでできるというのが一番重要ですので、いろいろ大きな拠点をやっても、本当の拠点といいますか、アンダーワンルーフでやることが重要なんじゃないかなという気がしました。常にそういう中堅どころの分野の違う人が一緒に来て議論することこそ重要じゃないかと思いました。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございます。
 いかがですか。松橋先生、何かありませんでしょうか。松橋先生もよくいろんな方を集めてヒアリングをやっておられますよね。
【松橋委員】  そうですね。悩ましいところなんですが、そうですね……。
【橋本主査代理】  私は、こういう中堅どころの方がやはりかなり政策的なこと、それから国全体としてどんな研究が行われているということも知識として持っていて、その上で、総論ばかりを議論するのではなく、御自身の研究にしっかりと入ってもらうというための情報を得て、また情報交換する場というのが大変重要じゃないかなとふだんから思っているのです。そういう観点で見たときに、まだ最初ということもあるのかもわからないですが、いかがでしょうか。
【松橋委員】  そういう意味では、橋本先生にしても、私にしても、いろいろな会議にも出ていますし、エネルギー全般の法的な問題から技術的な問題に至るまで一応網羅的にいろんなことを知ってはいるんですよね。その上で、技術革新を起こすのであればどこをやればいいのかというのは考えるんですけれども、確かに、国ですとか研究機関のファンディングを見たときに、そこまで全体を見ながらやれるという人は非常に少ないので、結局、御自身の得意なところで何かアプリケーションが出せるところを探して出すというパターンになるから、それでやったときに、結局、研究成果が出たときに、全体の力になるという環境エネルギーであれば、そこ全体を、社会を動かすような力になるというところまでなかなか行き切らないと。特にエネルギーの場合は技術だけではなくて法制度の問題とか非常に大きいですし、ステークホルダーの調整みたいな要因も結構入っていますので、技術としては非常に面白いんだけれども、成果が出たときに残念ながら世の中を動かすに至らないというのが多いのは事実で、どうやってそれを技術革新から本当の社会実装ですね、ただ単にどこかで一つやりましたというのを社会実装と言うんじゃなくて、イノベーションにつながるというのは、それが五つ、10個、100個と続けて起こって、社会がガラガラガラと動くような形になっていかないといけないので、そこに至るような、それを引き起こすようなファンディングの仕組みというのはなかなか難しいなという感じはしております。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございます。
【小長井委員】  結局同じことなんですけど、今ここに集まっていただいた方というのは自分なりに専門分野を持っていて、そこはやっぱり超一流の方で光っていると思うんですね。ですから、そういう方がこれから年を重ねるとともにだんだん周辺のところも勉強していただいて、最後は俯瞰(ふかん)的な立場でどうすべきかということが言えるようになる。要はそういう人を育てるのが実際重要なんだと、そういうことかもしれません。
【橋本主査代理】  小長井先生ありがとうございました。今後、こういう懇談会をどのようにするかは、また事務局の方で引き取っていただいて検討していただければと思います。どうもありがとうございました。
 では、続きまして、次の報告に入らせていただきたいと思います。「地球環境情報統融合プログラム」のこれまでの成果について、小池先生、お願いいたします。15分ほどでお願いします。
【小池教授】  それでは、今、主査の橋本先生の方から御紹介ありました「地球環境情報統融合プログラム」、これは5年のプログラムで、5年間のプログラムの最終年度にあります。実はこれは、この前に更に5年間のプログラムがございまして、データ統合・解析システム、DIASというんですけれども、そのプログラムが2006年からスタートいたしまして、5年・5年、2期目の10年目の最後に今ございます。その間に、この地球環境情報をどのように効果的に使って新たな科学的な知見を生み出すとか、あるいはそれを社会に役立てて公共的な利益を生み出すかということについて御紹介をしたいと思います。
 大きく四つございまして、一つは、世の中に非常に多様で超大容量のデータがございます。これをどのように私たち科学者が使えるようにするか、さらに、それを社会にどう役立てていくかということのデータのアーカイブでございます。多様ということですので、いろんな分野、いろんな形態のデータがあります。ある分野、二つの分野があったときに、異なるテクニカルタームで同じものを表したり、同じテクニカルタームで違う言葉・概念を表したりしております。そういうための相互利用性の向上、インターオペラビリティーといいますが、そういうことに取り組んでまいりました。そういう二つのアーカイブと相互利用性の機能がございますと、多様なデータ、超大容量のデータから必要なデータを選び出して、そしてそれを手元に置いて、科学的な知の創造とか社会的な利益を創出するということが可能になるわけです。
 このシステムでございますが、2011年の3.11の前までは生産技術研究所にこのシステムを置いておりましたが、3.11のとき東京大学も電力カット。これは非常に大きなハードディスクを運用しますので、当時、世の中にない低電源のシステム、要するに使わないときは眠らせておいて、使うときに起こして電力を使うという最先端のシステムを入れていたんですが、これで開発したというような形なんですけれども、それも7割カットというようなことが一時ございまして、平日は運用できなくて、土・日だけで運用するというようなことでしのいだことがございます。そういうこともございまして、かつ、今、学術情報ネットワーク(SINET)という科学技術情報のネットワークが今度SINET5にバージョンアップいたしますが、こういうSINETの一番ハブのところにこういうデータシステムを置いておきますと、世界中のデータを集め、かつそれを国内外で利用する環境が整いますので、現在、国立情報学研究所の千葉分室に半分置いております。さらに、関東圏の電力事情が悪くなったときに離れたところでバックアップできるように、北海道大学と北見工業大学に小規模なシステムを置いて統合的に運用しております。
 こういう基盤の上で、私ども最初に取り組んだのは非常に地味な仕事でございまして、地上の観測データ、これは非常に多様で、しかも研究者だけがやっているわけではなくて、いろんなオペレーショナルなセクターもやっているわけですが、そういうところのデータを登録し、その品質を確認し、いいデータと悪いデータを、データを取得した人あるいはデータを提供した人が手軽に確認し、そして、このデータはどういうデータであるか――メタデータと申しますが、そういうメタデータを付与するのにサポートシステムを作ってまいりました。それで、科学的なプロジェクトのみならず、ここに、アジアとかアフリカの現業の機関がこういうものを使ってそれぞれの地域のデータを手軽にアーカイブするということが可能になり、そういうところからのデータが集まるようになっております。
 それから、市民の方がとって、それを専門家が同定することによって価値あるデータになる、これは特に生物多様性の分野では非常に重要なわけですけれども、こういう市民観測のデータ。クラウドソーシングといいますけれども、それは単に集めるだけではなくて、その集まったデータを、品質を確保しながら市民とともに共有することによって、これが市民運動化していくというようなことを支えるアーカイブシステムも作りました。
 それから、超大容量ということでいいますと、気候変動予測モデルの出力というのが非常に大きくなっております。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書、これがちょうど2011年の3.11のときに計算がどんどん始まっている中、河宮委員はこの計算をされる方だったんですが、私ども、これを地球シミュレータから受けてどんどん蓄積するという、先ほど言いました電力が制限される中でそれを何とかやったわけですが、おかげさまで、河宮委員の言葉をかりれば、この日本のモデルが世界中で一番よく使われている。その理由は、DIASの中にアーカイブされて、それがいろんな方に使われる環境が提供できたからだと言われております。これ、世界中のデータで1.6ペタバイトというような、この一つ前のIPCC第4次報告書のときは34テラバイトだったわけですが、この6年余りの間にこれだけ増加している。それから、現在、地球シミュレータの特別推進課題で日本の気候変動の適応策を作るために100個のアンサンブル計算をすると。それが3ペタバイトになると。こういう超大容量のデータを今アーカイブしているところでございます。
 それともう一つ特徴的なのは、ひまわり8号が打ち上がって、この間、天津の爆発の映像なども出ておりましたが、非常にバンド数が多くて、高分解能で、しかも時間間隔が2.5分に1回というような形でデータが取得される超大容量のリアルタイムのデータがあります。国土交通省は、ゲリラ豪雨対策のために39基の特殊レーダーを日本の政令指定都市周辺に配置しておりますが、これ、XバンドMPレーダ雨量観測(XRAIN)といいますけれども、これも両方とも1日当たり50ギガバイトというような超大容量のデータがリアルタイムで流れてきます。こういうリアルタイムのデータをアーカイブして、リアルタイムにユーザーに提供するというシステムを開発してまいりました。
 こういうデータのアーカイブについてですが、それと同時に、多様なデータ、先ほども言いましたが、いろいろな分野で使われているテクニカルタームの関連性を見いだすことによって、それを検索システムでデータを選んでいく。そのとき、このテクニカルタームはどんな意味を持つのかという辞書とのリンクのようなシステムを作りました。このシステムは非常に国際的に高く評価されまして、地球観測に関する政府間会合(GEO)というのが10年前にできております。このデータ統合・解析システムというプログラムも日本のGEOへの貢献として始まった経緯がございますが、この中でオントロジー、用語の体系ですけれども、その部分にここで開発されたシステムが使われております。
 次に、このようにしてきちっと品質管理をし、どういうデータであるかということを記述したデータ、これは700種類に及ぶデータが、今10ペタ余りのデータがアーカイブされておりますが、これを検索すると。どういう分野のデータであるかというのを二次元のマトリックスで選べるようになっておりまして、そこを選びますとそれに関連するデータリストが出て、それを見ますと、その中にそれを記述するメタデータというのが得られます。そのメタデータそのものをダウンロードして使うということも重要な利用の一つですが、そこからデータをダウンロードしますと、データ提供者が示したデータポリシーに沿って、例えばこれはフリーに使ってよいとか、ある既定の宣言を了解すれば使ってよいとか、データ提供者にコンタクトして初めて使えるとか、そういうデータ提供者の意図に沿ったデータポリシーを実現するような形でデータ提供のコントロールをやっておりまして、ユーザーがそのままダウンロードできるという形になっています。このように作られたいろんな分野のメタデータは、先ほど言いましたGEOのポータルの中にも埋め込まれておりまして、世界中のユーザーがこのGEOのポータルを使ってDIASにアーカイブされているデータを使えるようになるとか、あるいは、これは今、国際的にも非常に注目を浴びているものですけれども、こういうメタデータというのはいろんな形態があるんですが、そのいろんな形態を相互に翻訳できるソフトウエア、GI-catというものをイタリアと一緒に開発してきておりますが、こういうものを使って常にアップデートされたメタデータをDIASが持つことによって、DIASのユーザーがそれぞれのデータセンターに入ってデータを取得できるというようなことを実現しております。こういうデータのダウンロードということに関するソリューションを開発してきたわけです。
 このようにシステムがございまして、その上に基盤となるソフトウエアを開発してきて、そしてこういうデータインフラの上にいろいろな分野の研究者が科学的な知を創造するとか、あるいは社会と連携して公共的な利益を創出する研究開発を進めております。
 これまでの10年間に及ぶ分野としては、こういうシステムを開発して、そして、それを徐々に基本的なシステムから社会で使えるようなシステムに開発すると。私の研究は水の分野でございますので、どうしても水分野に最初に焦点を当てて進みました。それが2011年からの第2期のフェーズでは、この兄弟プログラムとしてグリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)環境情報分野というプログラムができて、その中で六つの分野を定義していただいて、そのグループと連携して分野の拡大ということを進めております。25ペタバイトのシステムになって、現在260機関、約1,400人が具体的に使っているというシステムでございます。
 このDIASと、それからGRENEの環境情報が連携して、この六つの分野とどんなソリューションを出しているかということを簡単に御説明いたします。まず一つ、自治体との協働の例ですが、市民参加型の地球環境保全、これは北海道の黒松内町というところですが、ここで町の行政の方、市民の方とステークホルダー会議をやって、ここには朱太川という、構造物が全くない川が流れておりまして、川真珠貝という国際的にも非常に貴重な種が、70年の寿命を持っている貴重な種が子供から親まで全部いる川がございます。かつここはブナの北限でもございまして、もともと環境に関するリテラシーの高いところでございますが、この中でステークホルダー会議をやって、朱太川を中心とする様々な環境のテーマを作り、川ですから、その川の水の流れがどうであって、そして土砂がどのように流れているか。それで、ここは酪農をやっておるんですが、酪農の影響によって汚染がどこまで進んでいるかというような情報と、こういう生物多様性の町民ぐるみ、これは小学生、中学生も含めて調査をやって、それをDIASを通してアーカイブし、そのときに専門家が判定をするというような形で生物多様性のデータベースと、それから水であるとか、土砂であるとか、物質循環であるとかということの統合的なデータシステムができて、これが市民に使われているというものでございます。
 同じようなことを八王子市でも取り組んでおりまして、ここでは、都市と健康と生物多様性と気候、水の分野の研究者がこのDIASのデータ基盤の中で相互に情報をやりとりしておりまして、都市のクオリティー・オブ・ライフ、生活利便性の指標でありますが、それと生物多様性の関係であるとか、災害ポテンシャルの関係について相互にデータをやりとりしながら、地域の住民と地域の行政が入って地域の計画なりマネジメントをやっていくということをサポートしています。これは、今、町・市でございましたが、長野県には長野県の環境研究所というのがございますが、そこが中心になって長野県のいろいろなセクター、これは大学だけとか研究教育機関だけじゃなく現業の機関も含めて、そこから気候変動に関わるデータを集めてDIAS上にアーカイブする、これは実はもう始まっておりまして、さらに、そのアーカイブされたデータを使って具体的に適応策の技術開発をやるという、そのデータベースとして使っていくということを、現在、この後半の方は企画中でございます。このように自治体の環境保全とか防災に関する利用が進んでいます。
 同じようなことは実は国際的にも行われておりまして、これはカンボジアの水資源気象省ですが、ここはかんがいもやっておりますので、このトンレ・サップ湖、メコン川に関わるこの地域の問題、気候の変化がどのように影響を与えているかということを行政とか各地域の代表の方と御相談をして、カンボジア政府としてどんな取組が必要であるかということを明らかにして、水の観測と、ここは農業生産で持っている国といいますか、農業生産が主体の国ですので、稲作がこの先、まずは今年どうなるかということと、気候変動とともにそれがどう変わるかということを統合的に国の行政・地域の行政の方が見られるようなシステムを、今、現業で運用しております。そのサポートをしてきたわけで、これはそれだけじゃなくて、そういうものを中央のお役人が地方のお役人に現場でオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)をやると、そういうもののサポートも進んで、国としてこういうデータの利用が進んできております。
 国内では、先ほどのリアルタイム系のデータが非常に重要で、このシステムは常に気象庁と国土交通省が持っているデータをリアルタイムで取得して、常に川の水の流れとか土地の水分量を常時計算で出しておきます。そこに気象庁の数値、気象予測、これ、15時間予測ですが、15時間予測で強い雨が今後降るというふうなシグナルが来ますと、現在の雨量のデータを使って過去15時間前だとか、これ、3時間ごとに更新されますので、9時間前に予報されたデータがどれだけの誤差を持っているかということを評価して、そして雨のアンサンブル予測、誤差を含んだ幅を持った雨の15時間予測を出しています。それをこの初期値が計算されている流出モデルに入れると、洪水のアンサンブル予測が出てくるわけです。それがどれぐらいの精度であるかというと、これは観測地で二つの台風で出しているものですが、これぐらいの精度で出てくると、これを使ってダムの水を事前に放流しておいて、ダムのポケットを開けておいて洪水を効果的にためて水資源に使うということを、これは利根川で国土交通省と共同でやっている。
 同じようなことをリアルタイムのデータで、広島の土砂災害がございましたが、XバンドMPレーダーのデータは、1分ごとに250メートルの、しかもキャリブレーションなしで雨が測れるデータですので、これを時間積分したものと、それから現在の強度がありますと、ここで非常に累積雨量も多いし、強度も多いと、そういうところを注目いたしますと、そこの1個のグリッドは、横軸が累積雨量、縦軸が強度ですが、それぞれの地域にはクリティカルラインというのが決められておりまして、これを超えると土砂災害が起きるということで、そのグリッドをクリックしますとこの線にだんだん近付いていくのを、国であるとか地方の行政担当者の人が見て警戒情報を出すというものの支援に使うというようなことが進んでいます。
 こういうことをもっと民間でも使いたいということで、東京電力が発電ダムの安全管理、これは紀伊半島で台風12号による大きな災害が出たときに発電ダムの管理の問題が起こりましたが、それを安全管理し、かつエネルギーの有効利用をするためにこのシステムを使いたいということで、現在、共同の研究をしておりますし、同じようなものが海外に提供されて、これはチュニジアへの480億円ぐらいの円借款の基本計画に使われております。
 こういうことで、DIASはおかげさまで10年間発展してまいりました。毎年いろいろなテーマを決めてフォーラムをやったり、あるいは利用ワークショップをやったりしてユーザーを拡大しておりますが、今後、これをより発展させて運用化していくというフェーズが次のフェーズであろうと思いますので、よろしく御審議をいただければと思います。
 以上でございます。
【橋本主査代理】  はい、どうもありがとうございました。
 それでは、今の御報告、これまでの成果について質疑を行いたいと思います。発言のある方はどうぞ。どのような観点からでも結構です。松橋委員。
【松橋委員】  どうも、大変貴重な勉強になる御説明を頂きまして、ありがとうございます。
 水資源の問題について、特に国交省を中心に大変御心配されていると。今後、気候変動が進んでいった場合に、水資源をどのぐらい確保できるか、あるいは渇水なんかが起きたときのダムの保水量の管理ですとか、そういうのが非常に真剣に議論されているのを伺ったことがあるんですが、このシステムで例えば温暖化が進んでいるどれぐらいの将来、例えば20年後、30年後ぐらいの各地域の水資源確保の管理に対して実際どのぐらい使えるのか、その不確実性といいますか、その辺りをちょっと教えていただけると有り難いです。
【小池教授】  これはデータ基盤でございますので、この上で研究を進めるということになりますが、RECCAという気候変動適応研究推進プログラム、私自身、代表者をやらせていただきまして、利根川の解析をこのシステム上でやらせていただきました。利根川は洪水が増えると。しかし、雪が減るんですね。雪も全部、現在気候と将来気候で計算できるようにしておりますが、雪が減るために5月から6月の出水がなくなるために、ダムがかなり空になるんです。そうしますと、6月から7月の梅雨時期の豪雨は効果的に上流でためられるので、ダムがない場合は洪水は増えるんですが、現在のダムを使うと雪が少なくなるために洪水に関するダメージはそれほど増えないという結果が出てきております。ただ、一方で、今申し上げましたように、そういう雨が降らないと、逆に豪雨が降らないとダムが空っぽになったまま夏を迎えますので、渇水の被害が非常に大きくなるという結果が出ております。ただ、夏場、上流部だけじゃなくて下流部を見ますと、下流部の中小規模の豪雨が増えるんですね。2050年から2100年ぐらいの解析結果を見ると。そうしますと、そういうところで貯留をするということを何らか工夫をすると夏の渇水に対応できるという報告を、このデータ、このシステムを使ってさせていただいております。そういうようなことが実際に成果として上がってきており、国交省に対してそういう可能性を検討するようにという科学的な提言をしております。
【松橋委員】  どうもありがとうございます。
【橋本主査代理】  ほかにいかがでしょうか。
【河宮委員】  よろしいですか。
【橋本主査代理】  どうぞ。
【河宮委員】  ありがとうございます。国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の河宮ですけれども、大変勉強になる講演、どうもありがとうございました。
 DIAS等は、私自身が中に入って仕事しているわけではありませんけれども、連携していろいろ仕事させていただいて大変助けになっているわけなんですけれども、これだけのシステムを作り上げて、そのシステムを見渡してみると、ソフトウエア工学上の成果としての意義も大変大きいように思います。ちょっとこの先、注文になるんですけれども、そういうところでソフトウエア工学上の成果として国際学会とかできちんとプレゼンスを示していくというところが少し足りないような気がしていて、そういうところもちょっとあった方がいいのかもしれないなと思うのと、ひょっとしたら私の認識不足かもしれないんですけれども、その辺のところについて何か御意見あれば。
【小池教授】  これは、私はデータシステムの専門家ではなくて、データを使う方の専門家です。これの発端は、世界気候研究計画(WCRP)という中で、地球の水循環の全データをアーカイブしよう、2年半分のデータをアーカイブしようと。1997年に、私、こういうプログラムを提案させていただいて、じゃあ実施をしようとして見積もったところ、それは1997年段階で300テラバイトだったんですね。これは今から十七、八年前のことですので、0.3ペタバイトですので、天文学的な数字でした、当時。これはドメインの研究者では全く不可能で、我々のパートナーである、今、国立情報学研究所の所長でいらっしゃいますが、喜連川優先生と昔から懇意だったので、「300テラのデータがあるんですけど」と97年の段階で声をかけたら、そのとき、そういうレベルのデータを扱ったIT、特にデータインフラの研究はなかったんです。ですから、DIASの研究は、今、ユーザーとしての研究成果をお示しいたしましたが、データシステムとしてはトップの研究なんです。これで論文はどんどん出ています。逆に言うと、データシステムのトップの研究者と我々ドメインの研究者が組んでやってきたので、これだけ――自画自賛になりますが、いいものができたと。
 今のお話で、やはりデータ量も指数関数的に本当に増えております。特に河宮先生がやっておられる気候システムの問題だとか数値計算で出てくるアウトプットをいかに効果的に使うということになると、データシステムの利用は不可欠でございまして、そのときにいかにトップのITのグループと研究を組み立てていくかということが鍵だと思います。ですから、今の御懸念は、実はこの本質的な在り方で解決していると言うとあれですが、DIASが成り立っているのは、そういうデータインフラ系のトップの研究者がそのそれぞれのトップのジャーナルに出せるような研究が進んでいるからというふうに……。
【河宮委員】  じゃあ、そちらの方でも成果の発表は進んでいるということであれば、多分、私の認識不足のところもあったなと思うんですが、いや、今のようなコメントを申し上げた背景として、私も、気候科学の分野でこういう情報発信をどうしようかという、ある意味エンジニアリング的な会議に出ることもあるんですが、そこでいろいろコメントを受け取るのは、DIAS、いろいろ協力してくださって大変有り難くて、とにかく技術的なレベルは非常に高いのだけれども、どうもDIASに関わっている人の顔が見えないところがあるというコメントをちょっと聞くことがあって、それは多分、今のお話を伺っていると、気候分野そのものにそれが関わってこなかったのかなというところがちょっとあって、それで申し上げたんですけれども。
【小池教授】  二つあって、一つは、気候もそうですけれども、地球環境の分野はどちらかというと分散的なデータ利用の形態を作ってきています。分散的なデータ利用の形態のグループが気候モデル診断・相互比較プログラム(PCMDI)を中心として気候システムのデータシステムを作ってきているんですが、DIASは集中型システムで、分散型にやるとどうしてもデメリットがあるものを、巨大なシステムを持つことによってそのデメリットを解消し、その上でいろんなほかとつないでいくという、要するに、データインフラのやり方の違いで多分顔が見えてこないというところが一つあると思います。
 それから、私は気候も少しWCRPのデータアドバイザリーカウンシルの共同議長をやっておりまして、そのコミュニティーのレベルとDIASのレベルははるかにこちらの方がデータインフラとしては上になっています。
【河宮委員】  ありがとうございました。
【橋本主査代理】  時間なのですけれども、私から1点だけ。大変重要な研究で、そういう基盤ができてきて、これからどうするのかということなのだと思います。こういった災害、防災の重要性を鑑みて、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のプロジェクトでも一つ動いておりますけれども、そういうところとの現段階における連携などはどうなっているのでしょうか。
【小池教授】  私、実は昨年の10月からクロスアポイントメントで土木研究所の水災害・リスクマネジメント国際センターのセンター長を拝命しておりまして、ICHARMという組織ですが、こことNIED(国立研究開発法人防災科学技術研究所)と協定を今結ぶ準備をしております。共同研究はもうスタートしておりまして、SIPの防災科学技術研究所のレジリエント防災・減災研究推進センター、藤原広行さんがセンター長ですが、私はICHARM側のセンター長で、共同研究をしております。それで、そこのDIAS系との違いは、SIPの防災は、いろんなセクターが持っているデータをデータシステムに、ミドルウェアというんですが、それを翻訳するソフトを1個1個作っていって、そしてそれがみんなで共有できるシステムづくりに力を入れていただいております。DIASはそれをアーカイブしながら出口につなぐ役割をしようということを……。
【橋本主査代理】  そういういろんな災害に絡んだビッグデータを統一的に使えるようにしようというのでSIPが動いているわけですけれども、そことしっかり今は連携されて動きつつあるということですね。
【小池教授】  はい。
【橋本主査代理】  分かりました。どうもありがとうございました。
 では、時間になりましたので、ここで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、議題(2)気候変動適応研究推進プログラムに係る事後評価の進め方についてです。
 前回の本委員会において平成27年度の研究評価計画等についての御承認を頂いたものですけれども、その中のうち事後評価の進め方について当委員会にお諮りするものであります。まず、事務局から事後評価の進め方について御説明をお願いします。よろしくお願いします。
【樋口環境科学技術推進官】  はい。説明をさせていただきます。樋口です。
 資料2-1でございますが、「平成27年度環境エネルギー科学技術委員会における事後評価の実施について(案)」という資料を説明させていただきます。
 先ほど橋本先生からも御紹介ありましたが、4月20日に決めていただきました研究評価計画、これに基づきまして事後評価をどのように行うかというのを定めたいと思っております。
 事後評価の対象課題としましては、これはもう4月に決めていただいているとおりでございますが、気候変動適応研究推進プログラム、平成22年度から26年度まで実施をしましたもので、RECCAと呼ばれているものです。その下にはプロジェクトが12個走っております。
 二つ目ですけれども、次のページに行っていただきまして、事後評価の調整グループというのを置いて評価を進めていただこうかと思っています。このメンバーはその次のページの別紙1でございまして、これをきょう決めていただこうかと思っております。構成員の一覧としては、市橋先生、関先生、高村先生、山地先生、渡辺先生、主査として高村先生にお願いできないかというのが案でございます。
 三つ目は事後評価の実施についてということですけど、これは4月に決めていただいている内容をそのまま書かせていただいておりますけれども、プログラムの自己評価ということで、PD、POから各課題の研究代表者の協力を得て、プログラム全体としての自己点検結果の報告書を以前に決めた様式に沿って作成をしていただいて、事後評価調整グループの先生方に提出をすると。その調整グループの方では、報告書と発表を受けまして事後評価票に、これも決めていただいた様式ですけれども、書いてある評価項目に基づいて評価を実施して原案を作成していただくと。その上で、(3)でございますけれども、この委員会で確定をして、最終的には研究計画・評価分科会に報告をすると、こういう手続でございます。
 四つ目が評価の視点、これは今回決めていただくものですけれども、別紙2にまとめておりまして、これにつきましては、1、2、3、4、5とありまして、これは4月に決めていただきました様式2-2の自己点検結果報告書の柱立て五つを引っ張ってきまして、それぞれもう少しブレークダウンをして書いております。
 目標の達成状況ですけれども、研究を推進するために十分かつ最適な体制がとられたか。研究課題内の連携は十分に行われたか。単一の研究課題を越えて、RECCA内の他の課題との連携・協力が行われたか。また、他の研究開発プロジェクト等との連携状況はどうだったか。研究開発スケジュールは、効率的に進められ、計画通り進捗したか。計画外の事象が発生した場合には、適切に対応したか。中間評価で指摘された事項に対する対応状況はどうか。5年間の達成目標に沿った、あるいは目標以上の成果が出たか。
 2番目の研究開発の成果でございますが、創出された成果は、科学的・学術的にどのような意義があるか。研究内容や成果の水準は、有効なものであり世界的に見て優れているか。気候変動適応研究に関する研究水準の大幅な底上げに貢献したか。科学技術の動向や社会的ニーズの変化に十分対応したかということでございます。
 三つ目の波及効果でございますが、プログラム開始当初に対象地域の自治体等が期待していた成果が得られたか。学会や論文等による研究成果の発表は、質量ともに十分か。広報・データ公開等は、一般向けを含め十分に行われたか。我が国の研究開発、国際競争力の強化等に貢献するような人材育成が行われたかということでございます。
 四つ目の今後の展望でございますが、創出された成果は、気候変動による影響に強い社会の実現にどのように貢献する、又は貢献したか。創出された成果及び最新の社会情勢を踏まえた上で、今後どのように類似の研究開発を進めていくべきか。DIASに格納された研究成果は、今後どのように活用される見込みか。
 それから、五つ目の終了後の実用化、それから自律的な取組の継続に向けた方策でございますけれども、創出された成果は、研究対象地域の自治体等における適応策の立案・実施に資する科学的知見となったか。また、それらはどのように活用されたか、又はされていくか。それから、創出された成果は、研究対象地域の自治体等における適応策の立案・実施に応用できる可能性はあるかという、この二つを実用化・今後の方策として評価の基準として考えていくということかと思います。
 評価の視点の(案)と、あと、先ほどの事後評価調整グループのメンバーというのを今回審議いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【橋本主査代理】  はい、ありがとうございます。今、御説明ありましたように、資料2-2に対象となるプログラムが書かれておりますけれども、このプログラムについての事後評価で、評価の実施方法については前回もう決まっておりますので、それの進め方の確認ということになります。きょうここでお諮りすることは、別紙1の評価を行う構成員と、それから別紙2の評価の視点をブレークダウンしたもの、この二つですね。それでよろしいですね。
【樋口環境科学技術推進官】  はい。よろしくお願いします。
【橋本主査代理】  はい、ということですが、いかがでしょうか。
 それでは、別々に行きましょう。まず別紙1の委員について、この委員は変更したほうがよいというのがあれば言っていただくとして、特になければ、この委員で御承認いただけますでしょうか。よろしいですか。はい、どうもありがとうございます。
 では、別紙2の評価の視点ですが、これも特段何か変わったものでもなく、通常のこういうものの評価についてを書き下していただいたというような気がいたしますが、何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。よろしいでしょうか。では、御承認いただいたということで、どうもありがとうございます。事後評価調整グループの皆様におかれましてはよろしくお願いしたいと思います。
 では、続きまして、議題(3)はその他です。最初に述べましたように、議題(4)がありますが、こちらは非公開の扱いになりますので、まず、その他を先に進めさせていただきます。きょう、今ここに出ている以外に取り上げるものがありましたら、申出いただければと思います。事務局からは特にないということですが、よろしいでしょうか。
 では、特にないようですので、ここで議題(3)までを終了させていただきまして、これから議題(4)に入りたいと思います。傍聴者の皆様におかれましては御退席をお願いしたいと思います。

(傍聴者退室)

(議題(4)について議論)

【橋本主査代理】  では、予定の時刻になりましたので、ここで終了したいと思います。
 事務局から連絡をお願いいたします。
【田島課長補佐】  はい。本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様方にお送りさせていただきます。御確認いただきまして、修正等がありましたら御指摘を頂きたいと思います。最終的には文部科学省のウェブサイトに掲載をさせていただくことで公表をさせていただきます。
 また、旅費、委員手当等の書類につきましては、御確認いただきまして、お帰りの際に事務局に御提出をお願いいたします。
 資料につきましては、机上に置いておいていただければ、後日、郵送させていただきます。
 次回の会合につきましては、改めて日程調整の御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【橋本主査代理】  では、どうも長いことありがとうございました。また今後よろしくお願いいたします。
 これで閉会させていただきます。

―― 了 ――

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