資料1-1 「環境エネルギー科学技術に関する懇談会」構成員の主な意見

平成27年8月

1.戦略的な研究開発の推進

(戦略的な研究開発の重要性)

  • エネルギー科学技術の研究開発戦略を検討するに当たっては、主観ではなく科学的根拠に基づき、現実的なタイムスケールを引いて議論の土台を共有した上で、優先順位を考えることが重要。
  • 我が国のエネルギー需給を巡る課題の解決に貢献するためには、実現可能性や量的貢献の観点からどのような技術を開発するか戦略的に検討する必要がある。(エネルギー問題への貢献=技術ポテンシャル×量的ポテンシャル)
  • 例えば火力発電の超高効率化技術のような、リードタイムも考えた上で、20~30年後に実装される可能性の高い技術の基礎基盤研究を支える着実な取組も重要。
  • エネルギー科学技術の研究開発を進めるに当たっては、総括的な研究者による目利きが重要。
  • システム側からバックキャストして課題を設定し、デバイスや材料の開発を先導することができる研究者の育成が重要。
  • システムレベル、材料レベル、原理レベルの科学がお互いを支え合うことが重要。中でも原理を大切にすることが革新的技術シーズを創造することにつながる。

(イノベーションを生み出す基礎基盤研究)

  • 長期的な視点で考えるべきエネルギー分野の基礎基盤研究を支える上では、短期的な過度の選択と集中ではなく、出口を絞りすぎない細くても長い支援が必要。予算規模と出口のバランスを考えるべき。
  • 各種研究資金制度においてスモールスタート・ステージゲート評価方式を導入することが考えられる。同時に、ステージゲート評価方式については、単純に短期的成果を求めることにならないよう、運用には留意が必要とも考えられる。
  • イノベーションを起こすには、過度の集中的な研究費の配分を行うのではなく、幅広く多様な研究が行われるように支援することが重要ではないか。
  • 自由に幅広く支援するスキームと、より伸ばす部分を集中的に支援するスキームをいかに的確に組み合わせるかが鍵ではないか。
  • 研究者のキャリア形成を考える際に、若手研究者が視野を広げ、自立して研究を行えるように支援することが重要ではないか。その方策として、異分野の若手研究者の共同提案に対するファンディングや、若手研究者が研究費によりポスドクを雇用することが可能なファンディングを推進してはどうか。
  • 研究費の効率的・効果的な使用のため、研究費の人件費への充当、大学の自立的なマネジメントに基づく間接経費比率の決定、高額設備の共用促進等、諸外国の先導的な研究資金制度を参考にした制度改革が求められる。
  • 過去のファンディングでは、光が当たった瞬間コミュニティができ、光が消えた途端にコミュニティが廃れるということがあった(例:石炭液化)。このような分野の極端な盛衰が生じるのは良くないのではないか。
  • キーワードが生まれたり消えたりということが頻繁に起こるが、エネルギー分野の実際の研究活動は長期的視野で考えるべきものである。外国の受け売りではなく、自ら考えた言葉で息長く研究を続けること、それを国際的に受け入れてもらうことが大切ではないか。

(多面的な評価)

  • 社会実装される技術の開発は、必ずしも学術論文として高く評価されるとは限らない。例えば新材料の実装過程やシステム研究は論文を書きにくいために、研究者が離脱しがちである。このような技術の研究開発を推進するためには、大学の研究者等の評価に当たり、論文発表のみならず多面的な評価を行うことが重要。
  • 大学の研究者等の評価に当たり、論文だけでなく多面的な評価を行う観点から、ファンディングやファンディングのレビューを更に効果的に行えるような仕組み、人材の養成が重要ではないか。
  • 社会への貢献等、論文発表とは異なる評価軸で研究者の顕彰を行う仕組みを考えてはどうか。
  • ゲームチェンジングな成果創出を促進する観点から、プロジェクト評価に当たって、個々の研究者の業績を積み上げて評価するのではなく、ハイリスクな研究を組み合わせてリスクをマネジメントし、チームとして革新的な成果を創出できたか評価する仕組みを考えることが必要ではないか。また、その評価については、国際基準でのピアレビューを基本とするべきではないか。

2.エネルギー科学技術に関する分野別及び異分野融合の研究開発

(分野別の研究開発)

  • 2050年頃には世界の人口は90億人を超える見込みであり、食料生産を倍増させる必要があることから、エネルギー源としてのバイオマス生産は食料生産と競合しない形で進める必要がある。さらに食料残渣バイオマスの利用も進められれば、食料生産との共存も可能。(例:ブラジルのサトウキビ利用)
  • 太陽光発電技術の開発に当たっては、シリコン基板の薄膜化、タンデム化、ターンキー装置で簡単に量産できない技術の開発が重要。また、太陽電池の設置環境等により実際の発電効率等が大きく異なるため、世界市場を前提としたグローバルな環境(狭隘地、寒冷地、高温地等)を想定した実環境評価が重要。さらに、化合物薄膜系など高効率を目指すものや、ペロブスカイトなど萌芽的な太陽電池材料も研究課題としては重要と考えられる。
  • 従来の原油から化石燃料・化成品等を製造する化学産業が、LNGや石炭、バイオマスを原料としたものに変わりつつある。我が国の化学産業もこの流れに対応できるよう、大学や研究機関等も関連技術の研究開発を行うことで支えることが大切。
  • 石炭(褐炭)の高効率利用は木質バイオマスの高効率利用の技術につながる。将来的な木質バイオマスの利用も見据えた褐炭の利用に関する研究開発はあり得るのでないか。
  • 天然ガスの燃料電池による高効率利用は水素の燃料電池による高効率利用の技術につながる。将来的な水素社会を見据えた天然ガスの利用に関する研究開発はあり得るのではないか。
  • エネルギー損失の三大要素は発電、運輸、熱利用。産学官でロードマップを共有し、基礎基盤研究を進めるべき。
  • エネルギーの負荷変動を吸収するためには、電力の直流・交流変換や高圧化、超伝導の更なるブレイクスルー、有機ハイドライド等の水素、圧縮空気、キャパシタといった技術が注目されるのではないか。
  • システム最適化、エネルギーマネジメントといった分野においては、基礎基盤研究が薄い状況であり、これを進めていく必要がある。

(異分野融合)

  • 創エネ・蓄エネも重要だが、省エネも重要であり、これらを融合させて進めていくことが大切ではないか。
  • 環境エネルギーというのは包括的な視点を持つことが重要な分野であり、様々な分野の研究者を集めてプロジェクトをマネジメントすることが可能なプロジェクトマネジャーの育成が重要。
  • チーム間融合を進めるには、真のターゲットを絞って共同して研究開発を進めるやり方がよいのではないか。
  • 戦略的な目標を設定して研究開発を進める際には、アンダーワンルーフで様々な分野の研究者や異なる府省の事業で空間を共有して研究開発を進める取組が効果的なのではないか。
  • 異なる学会に所属する若手研究者等が、互いの分野をオーバーラップして一人二役、三役できるような人材を育成することが必要ではないか。例えば、戦略的創造研究推進事業や大学における若手研究者等向けの安定的なポストの創設により、後押しすることはできないか。
  • 異分野融合を促進するには、それを後押しする評価の仕組み(研究成果が異なる分野の論文で引用された場合は高く評価される等)や、そのような評価に基づく人材流動性の確保が重要ではないか。
  • 応用研究を支える基礎基盤研究や省庁をまたがる複合領域の基礎研究が空白域となっている。特に、環境エネルギーと防災、交通等の複合領域における公共性の高い研究成果の創出が期待される。
  • 情報科学技術については、地球環境情報や気候予測、マテリアルズ・インフォマティクスといった形でクロスオーバーする。情報基盤は共用の設備として整備し、その情報の利活用等に当たっては公募型の研究を行うなど、「協調」と「競争」をうまく使い分けることが大切ではないか。
  • 府省連携は進めるべきだが、それ自体が目的化するのは避けるべき。予算の有効利用の観点から判断する必要。

(エネルギーと環境)

  • 地球環境情報をエネルギーマネジメントに活用できるよう、気象的観点を入れて考えてはどうか。
  • 低炭素社会に向けたシナリオを考える際には、物理や化学に加え、自然環境への影響等の生物的なパラメータも考慮することが必要ではないか。化学・生物・環境がお互いにネガティブな影響を与えることもあるので、バランスの取れた効果(恒常性の維持)をよく考える必要がある。また、これを経済的な価値に換算する学問も重要。
  • 技術開発に伴うリスク(地球環境・生態系への悪影響を含む)について、技術開発と併せて議論の俎上に載せ、利用側の判断で選択できるようにすることが大切ではないか。
  • 今後の技術開発に当たっては、社会受容性についても併せて議論することが不可避。社会科学・人文学の研究者の知見も入れることが必要ではないか。

3.研究開発成果の社会実装

  • システム全体の経済性を評価して、研究開発した要素技術を統合していくことが重要。世界を視野に入れた府省連携一気通貫型産学連携の研究開発を推進するべき。
  • 社会実装に向けては、既存技術を含む代替技術との比較分析や安全性に関する検討等、研究開発段階から技術のマーケティングを行うことが重要ではないか。具体的には、産学共同研究や起業等の経験を通じ、研究者がこのような視点を養うことができるような環境を創り上げていくことが大切である。
  • 太陽光発電等における日本の産業競争力を強化するためには、発電効率向上等の技術開発に加え、標準化・認証の獲得も考えることが重要。また、太陽電池単体ではなく、モジュール、パワコン、蓄電池までセットにしたシステムで考えることも重要。
  • 研究開発成果を我が国の産業競争力の強化につなげる観点から、研究現場で役立つオープン・クローズ戦略のガイドラインのようなものがあると良いのではないか。
  • 社会実装に向け、システムとしての経済性の検証を進める際には大規模実証が求められる。特区を利用したり、海外と協力したりといった取組が必要ではないか。
  • 国立研究開発法人に中小企業が気軽にアイデアを持ち込み、相談できるようなシステムがあると良いのではないか。

4.国際化の推進

  • 環境エネルギーはまさに地球規模課題であり、地球全体に貢献するための科学技術を推進することが重要。
  • 国際連携による技術移転を進め、科学技術外交に貢献することが重要。
  • 地球規模課題であるからこそ、国際的な協調領域が広く存在することを踏まえ、環境エネルギー分野での国際共同研究プロジェクトを推進することが重要ではないか。
  • 我が国の研究開発戦略の国際的な認知度を高め、我が国から世界的な研究開発の潮流を作り出す観点から、我が国の研究開発戦略を海外に発信する取組を強化するべきであり、プログラムマネジャーや科学技術政策の責任者が国を代表してそのような役割を積極的に果たせるようにすることが必要ではないか。
  • キャリア形成を見通した上での外国人留学生・研究者の受入れを進めることが大切ではないか。

(参考)環境エネルギー科学技術に関する懇談会の設置について(第1回環境エネルギー科学技術委員会(平成27年4月20日)資料4-2)

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