資料4-2 核融合原型炉研究開発の推進に向けた人材の育成・確保について

1.原型炉研究開発とそれに求められる人材と育成
1.1.原型炉
-  現在最も開発段階の進んだトカマク方式を原型炉の炉型として、技術課題の達成がコミュニティ全体の共通目標として定められている。
-  ITER計画・BA活動は技術課題を達成し、原型炉に向けた技術基盤を構築する上での大きな柱である。
-  一方で、研究開発の加速と技術の深化には、開発研究と平行して、それを要素還元して学術として体系化・普遍化することが重要であり、それが更に炉設計の信頼性を高める「知の循環システム」を構築することが重要である。
1.2.求められる人材
-  核融合炉で必要とされる技術は、高度でかつ広範囲に及ぶ。そして、核融合炉はそれらの技術を有機的に統合させた巨大で複雑なシステムである。そのため、個々の技術を開発する基礎力と課題解決に足る高い専門性、及びそれを実践する技能を持つ人材が求められる。また、核融合炉としてのシステム構築をするため、全体を俯瞰する広い視野を持ち、個々の技術を統合する能力も求められる。
-  ITER計画・BA活動はいずれも国際プロジェクトで実施されており、またこれ以外にも多くの国際協力の枠組みがあり、さらに原型炉開発でも一部国際協力となる。研究機関・大学、企業の人材に、国際プロジェクトで創造的な仕事が遂行できるための国際共創力を有することが求められる。
-  核融合が国民に選択され得るエネルギーとなるよう、対話のためのリスクコミュニケーションの能力、及び人文社会科学の知見を持つ人材も不可欠である。

2.現在の課題と必要な施策・実現方法
-  長期的な計画に基づいて原型炉開発を進めるためには、それを担う人材が継続的・安定的に輩出・育成されなければいけない。

  • 大学院には、学生の興味を喚起し、核融合及びその関連分野を専攻した一定数の人材を学術界や産業界など各界に輩出することが求められる。そのためには、大学教育・研究の活性化と博士課程学生数の増加が必要である。
  • 進行中のITER計画・BA活動は人材育成の面でも極めて重要なプラットフォームであり、それを有効かつ戦略的に利用すべきである。
  • ITER計画やBA活動などの国際的開発研究は、国内の学術研究や民間も含む技術開発研究とも連携させ、互いに発展させることが重要であり、そのため基礎研究環境・産業基盤の維持・充実を図るべきである。
  • 社会に核融合研究の重要性の理解と興味の喚起を促すとともに、、他分野への波及効果と、他分野からの参入の促進を図ることが求められる。

-  これらの人材育成環境を整える上の課題として、

  1. 多くの人材が参入するための、長期的ビジョンを示すロードマップの提示
  2. 広範で多様な専門分野の習得や、ものづくり、システム統合を経験する産学が連携した大学院教育プログラム
  3. ITER機構での日本人専門職員数の増大と、日本での研究開発、原型炉設計へのフィードバック
  4. 継続的なプロジェクトの維持と産業界の人材確
  5. 国内・国外研究機関間、産学間、プロジェクト間、分野間など広い範囲での人材流動性と多様なキャリアパスの確立
  6. 核融合研究の知識普及・興味喚起と、社会からの支持を得るためのアウトリーチ活動

が挙げられる。これらを喫緊(3年程度)の課題、中・長期的(10年程度)課題としてブレイクダウンして示すとともに、考えられる必要な施策・実現方法の例を示す。


A)喫緊の課題

  1. ロードマップの早期提示
    →アクションプランをもとに、ロードマップを作成
  2. 柔軟な履修制度等による、一専攻や一大学に留まらない全日本的な大学院専門教育。システム工学などへの産業界からの寄与。
    →既存のネットワーク(双方向共同研究や核融合ネットワーク、核融 合フォーラム)などを利用し、大学間での連携制度設計。
  3. ITER機構日本人専門職員数の増大
    →ITER計画・BA活動に参画する多様な仕組みを量研機構・核融合 研を中心に制度設計。
  4. ITER、JT-60SA、LHDなどの大型装置からの受注量の確保、様々な試験装置(中性子照射、ダイバータ試験等)の新規装置建設による継続的な発注、及び原型炉設計活動への産業界の参画促進
    →特別チームに参画する企業に対する支援の強化。
  5. 大学・核融合研、産業界からのITER計画・BA活動、原型炉設計への参画
    →クロスアポイントメント制度の整備などによる流動性の促進。
  6. 戦略的なアウトリーチ活動の展開
    →アウトリーチヘッドクウォーターの創設

B)中・長期的課題

  1. 関連分野だけでなく、核融合以外の広範囲の分野へロードマップの提示と
    →コミュニティが実施するアウトリーチ活動に対して支援を強化し、 継続的な広報活動を推進する。
  2. 産業界との連携や、国内外の研究機関の大型装置、ITER計画・BA活動も有効利用した、継続的な大学院教育。核融合を専攻した学生が研究機関や企業にて核融合開発に従事するのみならず、総合工学の強みを活かし、広い分野で活躍して我が国の科学技術を向上させるなどの出口戦略
    →ロードマップを示し、核融合を学んだ新卒の採用意欲の向上。
  3. ITER機構で経験を積んだ人材の国内でのキャリアパス
    →ロードマップを示し、産業界がITERでの経験を持った人材を獲得する機運に繋げる。
  4. 国内装置建設の経験による技術レベルの向上とその技術の継承。国内では原型炉設計に必要な試験装置建設を通した継続的な発注と人材の長期的確保
    →企業人材の長期的確保を念頭に置いた具体的な施設建設計画の立案・提示。
  5. 他分野と核融合分野間での流動性の促進
    →関連する大型プロジェクトとの共同研究の促進
  6. 世代を問わず、社会に広く興味の喚起
    →コンテンツの拡充

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研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

吉田、工藤
電話番号:03-6734-4163
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(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)