原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成26年7月23日(水曜日) 14時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 16階 科学技術・学術政策研究所 会議室

3.議題

  1. 第2回作業部会での指摘について
  2. 水素製造の技術開発と産業や社会への貢献のあり方
  3. 高温ガス炉の利用系技術についての研究開発の現状と今後の課題
  4. その他

4.出席者

委員

岡本主査,亀山主査代理,飯山委員,伊藤委員,梅田委員,北川委員,國本委員,小竹委員,鈴木委員,湯原委員,米田委員

文部科学省

田中研究開発局長,田中研究開発局審議官,増子原子力課長,笹川原子力課課長補佐

オブザーバー

塩谷経済産業省原子力政策課課長補佐,上塚日本原子力研究開発機構理事,國富日本原子力研究開発機構原子力水素・熱利用研究センター長,稲垣日本原子力研究開発機構原子力水素・熱利用研究センター副センター長

5.議事録

【岡本主査】 それでは,定刻となりましたので,ただいまから第3回高温ガス炉技術研究開発作業部会を開催いたします。
 本日は御多忙にも関わらず御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 それでは,早速ですが議事に入りたいと思います。本日の議題は,お手元の議事次第に書かれておりますとおり,「第2回作業部会での御指摘事項について」,「水素製造の技術開発と産業や社会への貢献の在り方」,及び,「高温ガス炉の利用系技術についての研究開発の現状と今後の課題」です。
 それでは,最初に事務局より出欠と配付資料の確認をよろしくお願いいたします。

【笹川課長補佐】 本日は,11人全員の先生方から御出席との御連絡を頂いております。一部の先生が遅れていらっしゃいますが,予定通り進めさせていただきます。いずれにしても,定足数である過半数を満たしております。
それでは,本日の配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第を御確認ください。こちらに配付資料1から4と記載がございまして,それぞれ資料1「第2回作業部会における指摘事項への回答」,資料2「水素社会の実現に向けた方向性/様々な水素製造方法の比較検討」,資料3「高温ガス炉とその利用技術の研究開発に期待すること」,資料4「高温ガス炉熱利用技術の研究開発の現状と今後の課題について」でございます。資料の過不足等ございましたら事務局にお申し付けください。
 以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。

議題(1) 第2回作業部会での指摘について

【岡本主査】 それでは,本日の議題に入ります。議題1「第2回作業部会での指摘について」ですが,今月11日の第2回作業部会において,高温ガス炉の特性に関する具体的な研究開発状況と今後の課題について,日本原子力研究開発機構から発表がございました。この際に先生方から幾つか御指摘事項を頂いております。本日の熱利用に関する議論に入る前に,御指摘事項への回答を日本原子力研究開発機構からよろしくお願いいたします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それでは,お手元の第2回作業部会における指摘事項への回答という資料をもちまして,御説明をさせていただきます。
 本日御回答させていただく項目は,まず1番目に炉型の話と技術開発項目の件。次に,1980年代に海外の高温ガス炉が停止した理由。最後に,南アフリカのPBMR計画,それから米国のNGNP計画の状況について,御説明をさせていただきたいと思います。それ以外に経済性等の御質問もありましたが,これについてはまた次回に御回答をさせていただきたいと思います。
 2ページでございますが,今回ここで示させていただくのは,高温ガス炉の実用化に向けて,既に完成した技術と今後必要な技術開発でございます。
 3ページに示しますように,炉型を三つに分けさせていただきました。まず,左側の炉型が750℃の高温ガス炉で,これは蒸気タービンの発電システムを考えています。中央のシステムが,出口温度が850℃の高温ガス炉で,発電システムとしてはガスタービンの発電システムを考えています。それから,一番右側が950℃の高温ガス炉で,これはガスタービン発電と水素製造のコージェネレーションに使うタイプの原子炉です。これに,それぞれ炉型の出力の大きさ等を考えて,評価をしております。
 次に,4ページに, 日本原子力研究開発機構の方でまとめさせていただいた,今までに既に開発が済んでいる項目と,今後必要な研究開発項目を示しています。
 まず,750℃の蒸気タービンシステムですが,これについては250MWtの小型のものから600MWtにつきまして,その燃料あるいは炉に関する関係においては,基本的には開発が済んでおります。残っていますのは,実用高温ガス炉関係の安全基準を作っていくということです。それから,データ整備というところで,燃料と黒鉛については,燃料についてはまだ高燃焼度のデータの取得が必要であり,また,黒鉛については,重照射,つまり照射量が多い状況での黒鉛のデータを取っていく必要が残っています。
 それからあと,2番目の欄が850℃の高温ガス炉です。これはガスタービンシステムのものでありまして,まず250MWtと,それから600MWtに分けています。これについて言えば,250MWtについては,燃料についてはやはり基本的には開発が済んでおります。開発が済んでいるというのは,HTTRの燃料をベースにして,この250MWtの原子炉を建設していくことが可能ということを示しています。
 右側の方に移りまして,当然のことながら,まだガスタービン発電の技術については,技術開発項目がもちろん残っています。そのために,その真ん中のところでHTTRに接続をして試験をしていくという必要があります。また,750℃の原子炉と同じように,安全基準を策定していく必要がございます。
 それから,850℃の原子炉については, 600MWt,これは大きいタイプで出力密度が高く,しかも燃焼度が高くなるというタイプになりますので,HTTR用と同じ燃料では少し除熱性能が不足しているということで,除熱性能向上用の燃料要素の開発が必要になります。もちろんHTTRを使っての試験が必要になりますし,当然併せてガスタービンに関する技術が必要になります。それからあと,一番右側の欄ですがデータの整備においては,750℃の原子炉と同じように,高燃焼度用の燃料のデータ,それから重照射量の黒鉛のデータが必要になります。
 最後の950℃の原子炉でありますが,これについては850℃と基本的には炉型の方は同じで,やはり600MWtの出力密度が高い,燃焼度が高いものについては,除熱性能向上用の燃料要素の開発,それからHTTRでの試験が必要になります。
 あと,850℃の原子炉に追加いたしまして,水素に関する技術開発が必要になり,当然熱利用設備を接続する,水素製造設備を接続するための安全基準を策定する必要があります。それから,データ整備については750℃,850℃の原子炉と同じでございます。
 あと,ここには皆共通ということで示してございませんけれども,注2に示しますように使用済燃料及び黒鉛廃棄物の処理に関する検討,直接処分に関する検討,廃棄物低減に関する検討は,それぞれ各炉に共通な課題として実施してまいります。
 以上が,今までに完成した技術と今後必要な技術開発というのをまとめて示したものです。
 次に,海外高温ガス炉の停止の理由についてです。米国,ドイツで運転していた高温ガス炉が1980年代に停止した技術的な理由を示しています。
 次のページに表として示しておりまして,まず,アメリカのフォート・セント・ブレインでありますけれども,ここで起こった一番大きな技術的な問題は,ヘリウム循環機器の水軸受からシール水が炉心へ浸入したということでございます。これについては,HTTRではこういうことが起こらないように,循環機については回転軸をヘリウムガスの動圧により浮上させるガス軸受を採用しております。水軸受は採用しないという設計を採用しています。
 それからあと,フォート・セント・ブレインでは炉心の領域,領域というのはブロックが7個集まった部分のことを示していますが,そこの各領域の出口ガス温度に変動がありました。これは炉心の各領域の流量を調節していましたために,炉心の半径方向に最大42kPaの圧力差がそれぞれの領域で発生しまして,それに伴ってクロス流れが発生した。本来縦方向に流れなくてはいけない冷却材であるヘリウムガスが,横方向に流れてしまったことにより,最大200℃の温度差が発生したということがありました。これによって,炉心の構成要素が動いて温度変動などが発生したということが起こっています。
 こういうことを防ぐために,HTTRでは炉心の圧損をまず10kPaぐらいに低減したこと,さらに,各領域の流量調節をしない,同じ流量を流す設計といたしました。こういうことによりまして,径方向の圧力差がわずかで,炉心構成要素が動くことはないということにしております。
 次に,制御棒の駆動機構の故障については,ドライブシャフトの摩擦係数が予想以上に大きかったこと。それから腐食により,制御棒挿入に失敗したということがございました。これについては,水浸入に起因することがほとんどでありまして,水が入ることによって駆動装置が腐食したと原因が推定されています。これについては,HTTRでは摩擦係数に余裕を見ること,さらに,ヘリウムガスを循環設備からドライブシャフト側の方へ流すということもします。また,もちろん水浸入を防止するという対策も採っています。
 その次,溶接作業中にオイルを含んだものに火がついて,ケーブル燃焼・破損が起こったこと。これについては,HTTRでは不燃性・断熱性のケーブルを採用しています。
 最後の項目の制御棒と制御棒駆動ワイヤーの継ぎ目欠陥と,蒸気発生器リングヘッダ部のクラックについてです。これは全て水浸入により発生したと考えておりまして,HTTRでは水浸入を防止するための安全対策を採用しています。
 次に,ドイツのTHTRについてです。ドイツのTHTRでは,球状燃料,我々と違って,丸いペブルベッドと呼ばれる燃料を使っております。その取り出し管の流れ,燃料の流れと冷却材の流れが逆方向であることから,それに起因して燃料球の取り出しが不能になるという故障が起こっています。これについては,HTTRではそういった燃料を採用しておりませんので,こういう問題は発生いたしません。
 次に,制御棒の挿入による燃料球の多数破損が発生しております。これはペブルベッド型の場合,制御棒をそのペブルベッドのボールの中に挿入していくということで,燃料が破損いたしました。これはHTTRではブロック型の炉心ですので,燃料と制御棒が直接的に接触するということはありません。
 最後に,高温ガス炉のダクトがあるのですが,そのダクトの表面に金属の断熱板があります。この断熱板を,THTRの場合はボルトで固定するということをしていました。それが一部破損して,下の図に示しますように,その金属の断熱板が少しめくれ上がってしまったという故障が起こっています。これを受けて,HTTRではこういったようなボルトは使用せずに,ライナーと耐圧管の間をうまく熱膨張を拘束しないような方策を考えておりますので,そういったボルトの破損は起こりません。
 THTRはこういったような故障で運転が停止されましたが,実はこの程度の故障は軽微で十分修理可能だったと言われていまして,ただ,ドイツは既にその時期に原発廃止というような方向に動いておりまして,政治的や財政的な理由から運転を停止したと言われております。
 次に,最近の南アフリカのPBMR,それから米国のNGNPの状況について御説明をいたします。
 PBMRプロジェクトについてですが,これは2010年9月に南アフリカの公共企業大臣がPBMRプロジェクトの投資を中止するということを発表しています。原因としては,主要顧客や投資団体が未確定であるとか,追加投資の必要性であるとか,米国のNGNPプロジェクトへこのPBMRで参画しようとしていたのですが,そのような機会が失われたこと。それから,丸5示しますように,原発の新設プログラムにおいて,軽水炉を採用するような動きがあるということ。それから一番大きなものとしては,南アフリカの経済が非常に悪くなりまして,やはり資金的なめどが付かなくなったということが非常に大きな原因と言われています。
 次のNGNPプロジェクト,これは米国の計画ですが,これについては2005年の包括エネルギー政策法(EPACT2005)で規定されておりまして,これについては産業界と国が建設費を分担して建設するということが法律に書かれているのですが,その合意がまだ民間と政府の間でなされていないことが一番大きな原因であり,設計のフェーズ1を行った時点で,今,止まっている状況です。これについては研究開発が全て止まっているわけではなくて,米国規制委員会との規制の枠組みに関する協議であるとか,官民パートナーシップの構築に向けた取組であるとか,燃料,黒鉛を中心とした研究開発などを引き続き実施しております。
 更に米国のエネルギー省は,2014年6月に米国政府監査院が上院歳出委員会向けに発行した新型炉研究に関する報告書の中でNGNPについて触れていまして,プロジェクトの進展に向けた戦略を策定すべきと言っております。したがいまして,近い将来プロジェクトが進展するということも期待されている状況です。
 この説明は以上です。

【岡本主査】 どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの日本原子力研究機構からの説明について,御質問・御意見があればよろしくお願いいたします。
 湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 意見でありますが,4ページの炉型と技術開発項目の中で,技術開発・基準整備という欄があります。ここに耐熱材料であるとか高温構造設計基準ということが抜けているのでしょうか。もし抜けているようでしたら,開発項目の中で,特に高温ガス炉の場合には非常に重要である項目ですので,安全基準と並んで材料と高温構造設計基準というのを入れられるのが適切ではないかと思います。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 まず,高温の金属材料については,HTTRで使ったハステロイXRという金属がそのまま実用炉で使えると考えておりまして,これについては新たな開発は不要と考えております。
 ただ,構造基準を,今,そのHTTR用にありますが,これを実用炉用に変えていくということは必要だと考えています。それをここで書かなかったのは民間規格化ということでございまして,その民間規格化ということに関して言えばここには書かないという方向でまとめました。いずれにしても,ただそういう規格を作っていくことが必要であるということは間違いございません。

【湯原委員】 それではコメントを言わせていただきたいのですが,HTTRの高温設計基準の考え方は,もんじゅの高温設計基準ともうほとんど同じで,私もその辺の策定に当たりました。1980年代初めの頃で,その後非常にこの高温設計基準が進展しております。そういうものを入れるのと,ハステロイXRについても1980年代の開発のものでありますので,その後,耐熱合金というのは飛躍的に発展しております。ニッケル基技術を中心にして,750℃にしろ850℃にしろ950℃にしろ,そういう意味でこういう原子炉を開発する,プラントを開発するというときには,民間に任せるということではなくて,私はその民間を任される立場側の規格委員会の委員長を5年やっておりましたけれども,データ無しに基準はできません。やはりR&Dを積み重ねて,破損モードというものをきっちり規定することを開発項目の中に入れて,そのデータに基づいて,競争力のある高温設計基準,耐熱材料を作っていくというのが競争力の中核になると考えます。
 以上です。
 主査が何かこの点についてコメントしていただけると幸いですけれども。

【岡本主査】 材料は非常に重要な視点であると思っておりますが,前回日本原子力研究開発機構の方から話がありましたように,技術開発項目というのは,今,ここに10個ぐらいしか横に並んでおりませんが,これ以外にもいっぱいあって,その中で日本原子力研究開発機構としては重要だと考えるものを出されているのだと思っています。
 当然,材料の話とか,それからこの30年間のプログレスがあり,更によいものが作られているといったことも含めて,この中に最終的には表にしていけば,ロードマップにするときには,これはもう開発できているとか,これに関して開発を続けていかなければならないとか,という形にまとめざるを得ないと思っておりますので,そういうところも含めてしっかり考えていければいいと思います。材料については多分日本が非常に強い分野ですので,そこは一つの売りになるかもしれないという感じです。よろしいでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。これは今,非常に簡単にまとめているので,次回か次々回にその開発のロードマップを示すときに,もう少し細かいもので示させていただきたいと思います。そのときに,もう少し細かいところも入れた形で説明をしたいと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
 では,亀山主査代理,お願いします。

【亀山主査代理】 同じ4枚目の項目の図についてですが,先ほどの議論でも安全基準のことがありましたが,この中で「熱利用施設接続のための安全基準」と書かれていますが,この文言からすると,接続におけるそのインターフェースの部分のように感じられますが,実はこの熱利用施設のところの3項目目に「革新的水素製造技術」と。これは,ガスタービンや蒸気タービンは既設で,安全性はもう十分に確立されていますが,この「革新的な製造技術」というのは,これは新しく登場するプラントなので,インターフェース部分だけではなくて,やはりこのプラントについての安全基準といいますか,運転の際の安全性についても十分配慮していただけたらと思います。もう当然入っているとは思いますが,ちょっとこの文言だと接続の部分だけのように思われたので。
 といいますのは,これは結構世界で注目されているプラントなので,これが実験中にもし何かトラブルが発生しますと,また周りからいろいろ批判されるので,開発中においても十分安全性を保ちながら開発することがやはり大切かなと思って,あえて申し上げました。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 本日の最後の項目でも御説明いたしますが,今,この中でもちろん水素製造設備なんかも取り扱っています。ただ,基本的に我々が考えている安全の考え方と申しますのは,水素製造設備というのはある程度原子力プラントから離すことにして,それで水素製造設備そのものは既存の一般の化学設備として製造できるようにする。そこから出る水素とかの影響によって原子炉に問題があるということがないようにするという基準を作っていかないといけないと考えています。それを「接続技術」と言わせていただいています。

【亀山主査代理】 分かりました。では,その水素製造の方は従来のプラントの安全基準を基にきちんと策定されると。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【亀山主査代理】 分かりました。

【岡本主査】 そのほか。伊藤委員,お願いします。

【伊藤委員】 すみません,質問ですけれども,これまでのアメリカ,ドイツのちょっとしたトラブルによって停止というのはあると思いますが,この技術で想定し得る最悪のアクシデントというのは,具体的にはどんなことが考えられるのか,ちょっと教えていただきたいと思ったのですけれども,難しいですよね。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 この原子炉の場合でやはり一番厳しい事故というのは,配管などが完全に破断をして,そしてその炉心の中に空気が入っていく。空気が入っていくことによって,炉心にある黒鉛が酸化することが一番この現象にとっては厳しい事故になると考えています。もちろん,その中でも原子炉の安全は確保できるように,我々の安全評価の中ではそういう結果になっていますけれども,考えられる最悪の事故というのはそういうことだと思います。

【伊藤委員】 具体的にそれが起きた場合というのはどういう状況になって,例えば関わっている人の命に関わるようなことが実際にあるのかどうなのかということは。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今のところ我々の評価によれば,空気が入っていっても炉心が一部わずかに酸化するだけですので,例えば,そこで燃料の温度が上がってしまって燃料が壊れて,そこから放射性物質が出るとか,そういうことは起こらないとの評価をしております。だから,別にそこのそばにいても特段問題はないというのが,この原子炉の特徴です。

【伊藤委員】 分かりました。

【岡本主査】 これ,多分今後いろいろ議論していかなくてはいけないのですけれども,高温ガス炉は非常にシビアアクシデント,炉心溶融を起こしにくい原子炉で,多分人為的にやらない限りは起きないような感じですけれども,でもいろいろオプションを考えていかなくてはいけないというのは,今後しっかり考えていかなくてはいけない。
 ちょっと話がずれますけれども,私もよく黒鉛というのは燃えるという印象があるのですが,今使われている黒鉛はほとんど燃えないというか,表面が酸化して,一酸化炭素とか爆発性の可燃性のガスは出てきますけれども,通常練炭を燃やしているようなイメージとは全く違う,高級な黒鉛は燃えないとのことですので,そのあたりは場合によったらもう少ししっかり説明いただくといいのかもしれないかなと思いますが。

【國本委員】 すみません。補足説明させていただきますと,高温ガス炉の中に使われている黒鉛といいますのは非常に高純度化されておりまして,先ほど岡本先生の方がおっしゃったように燃えにくいという特徴を持っております。それが一番高温ガス炉の炉心材に使われる黒鉛としての要求特性ですので,そういうものを我々としては御提供させていただいております。

【岡本主査】 本日の回答とはちょっとずれますけれども,この安全を考えていく上でどういう場合を考えていかなくてはいけないか,福島の事故の反省点もあって,新しい基準ではいろいろな考えられる全てのことを考えようということになっていますので,そこについては別途,原子力学会の委員会等でも議論しているところであります。
 それでは,梅田委員,お願いいたします。

【梅田委員】 4ページの開発項目の表ですけれども,750℃,850℃,950℃と3種類ある中で,前回までの議論でフェーズ1というか,比較的実用化に近いものと,もうちょっと時間が掛かるものと,そういう区別の話がありましたけれども,この表で言うと750℃及び850℃がそれに相当するのか,あるいはちょっと中を見てみますと,例えば出力密度,燃焼度とも高いものというのはこれから必要なのですけれども,ちょっとほかの二つに比べたら時間が掛かるのかなという気がします。一方で,250MWtについては,燃料も黒鉛も,高燃焼度の方が試験が進んでいた経過があるということだったのではないかと思います。そういうことを考えると実用化には近いのかなと思いますけれども,いずれにしてもこの表の中のどの範囲が短期的なフェーズ1に相当するのか,ちょっとその辺を確認させていただけないかということです。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 この表でいきますと,まず750℃についてはかなり実用化に近いと考えていまして,既存の技術で基本的にはできると考えています。それから,850℃については,まずガスタービンの技術についてはまだすぐに実用化可能というわけではなくて,どうしてもその技術開発がまだ必要であると考えています。600MWtの場合ですと,やはり出力密度を2.5W/ccぐらいから6W/㏄ぐらいに2倍強ぐらいには増やさないといけないので,除熱性能を上げるような燃料の開発が必要になり,850℃,950℃に関わらず,いずれも必要になると考えております。もちろん,水素に関する技術開発も,これはまだやっていく必要があると考えています。
 以上のようなことでよろしいですか。

【梅田委員】 750℃の600MWtの出力密度ですね。それが今の技術でいけるのか,そこはちょっとまだ時間が掛かるということですか。250MWtの出力密度で燃焼度高というのは,これはもうほとんど手の内に入れていると見てよろしいのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 750℃であれば,出力密度が高で燃焼度が高でも,従来型の燃料を使ってやれると思っていますが,850℃,950℃になると,現状の燃料要素ではちょっと厳しいかなと。だからそこは少し時間が必要になってくると考えています。

【梅田委員】 では,750℃で出力密度高というのは,前回の説明のときにはスリーブをなくせば出力密度を上げられるという話でしたけれども,それをしなくてもできるということですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。750℃の部分であれば多分大丈夫だろうと。

【梅田委員】 なくてもいけるということですか。分かりました。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。燃料温度をある程度抑えられる,100℃分だけ下げられるので,そこで750℃であれば何とかなると考えています。ただ,この750℃の600MWtの原子炉については我々まだ詳細設計をやっていないので,そこについては,あともう少し正式に詳細設計をしていく必要があると思っていますが,今のほかのいろいろな設計例から判断するには,多分750℃であれば大丈夫であろうと考えています。

【梅田委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 そのほか。小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 最初の3ページの図ですけれども,750℃でヘリウムガスタービンとの組合せというのは,余り好ましくないのでしょうか。というのは,750℃になれば,蒸気発生器を使わなきゃいけないのかどうかというところがまず一つお聞きしたいのですけれども。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今,高温ガス炉のガスタービン発電システムで850℃の効率は大体45%になります。今までにアメリカとかドイツの先ほどのフォート・セント・ブレインとかTHTRというのは,効率39%ぐらいまで行っています。あと,今,中国でやっているHTR-PMでも40%を超えるというようなことも言っているので,750℃でガスタービンにすると,余り効率向上のメリットが出てこなくなると思っていますので,効率向上して経済性を上げるという観点から言うと,やはり850℃ぐらいが最適点なのかなと思います。

【小竹委員】 なるほど。ただ,前回の御説明のときにありましたけれども,蒸気発生器の伝熱管破断に伴って水がグラファイトと接触するようなことを考えると,そこら辺の知見はまだ乏しくて,今後の研究開発課題ですという御説明があったかと思うのですが,そういう観点からいきますと,かえって安全研究という観点では結構なお荷物を背負い込むのかなという気がしまして,最初効率は悪いかもしれないけれども,より高温ガス炉として適した形のものを追究していく。そうして実証していくというストーリーの方が,結局あちこち寄り道しなくて済むのではないかと。むしろ空気侵入だけに備える対策で安全を防護していく。それであればより実現性の高い安全性になるではないかなと感じましたが,それについて,御意見はどうでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。確かに蒸気タービンの水浸入というのは一つ問題で,そこを防ぐためにはやはりアクティブな機構が必要であるということにもなりそうですので,やはり固有の安全性を使ってパッシブに安全を保つという考え方と矛盾してくるところもあるので,やはり高温ガス炉のメリットを生かすとしたら850℃のガスタービン,あるいは750℃のガスタービン,ガスタービンを使った方が有利であるということは,そのとおりだと思います。

【小竹委員】 それともう一つ,最後の海外高温ガス炉の停止理由についてですが,前回も質問させていただきましたけれども,いわゆるTHTRで熱遮蔽板の留めねじが,普通の常温から高温の状態まで持っていく間の熱膨張で緩んで,脱落したという事例が何度か発生したというのがありました。
 このHTTRの話は当然そうですけれども,その次のこれから目指そうとしている,30万kWeぐらいの電気出力のものでも,こういうボルトを使うような熱遮蔽構造,そういうルースパーツの発生要因になるようなことは,こういう対策でほぼ解消できるとおっしゃっているという理解でよろしいですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい,そのとおりです。今,HTTRで使っている配管系というのは,この右側のようなもので,これはその前のHENDELという10MWtのヘリウムガスループを作って,その配管とかそういう断熱構造を確認したときも同じやり方を使っています。HENDELでも,それからHTTRでも,特に問題が発生しておりません。ですから,この形で全て実用化に行けると我々は考えます。

【小竹委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 では,米田委員,お願いします。

【米田委員】 すみません。今の小竹委員の御質問に関連しまして,もしも750℃で蒸気タービンということにするのであれば,蒸気発生器(SG)についてはやはり課題があるということで,こちらに残すというか,4ページの方に入れられた方が,ロードマップの方でもよろしいのですけれども,そのようにされた方がよろしいのではないかと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。ここは私も二つと言っていたのが九つになったので,ちょっとびっくりしているのですけれども,実はこの一番上の250MWt・750℃というのは,これ,今,中国の石島湾で作っているプラントそのものですね。今,間もなく出来上がるプラントが,一番上の750℃・250MWtで,これはSGです。彼らSGでやります。
 これ,九つもあるとちょっと発散するので,多分この中から,多分石島湾は一つ中国にできますので,SGの問題は若干ありますけれども,日本でも十分可能であろうと思います。やはりこれは九つ全部やると話が発散するので,多分一番上と下と真ん中あたりをちょっと適当に三つぐらい選んで,ロードマップを議論していかないといけないのかなと。若しくは,この開発項目をそのままもう少し充実させた形で,今,10項目ぐらいしか出ていませんけれども,今いろいろ議論いただいた点とか,それから前回いろいろ御提示いただいた点も含めて,A3一枚ぐらいに書いて,こうすると次に何をやらなきゃいけないかというのが非常によく見えてきていて,例えばソフトウェアとしてはやはり基準作りが非常に重要である。ハードウェアとしてはガスタービンの技術,それから高燃焼度化の技術,それから新しい除熱性の向上燃料,そして水素製造と,大きくこの中で四つのハードが見えてくるかなと思います。そういう形を踏まえた上で,その三つなら三つのプラントを作るということで,技術的なロードマップを後ろから作っていくという形が分かりやすいのかなと,この表を見ていて感じた次第です。
 もし可能であれば次回あたり,もう少しこれを充実した形で議論させていただけると,これをベースにロードマップを作るときに非常に参考になると思いますので,もしよろしければそのような形でやらせていただけると有り難いのですが,いかがでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 分かりました。次回までにちょっと御相談させていただいて,次回,議題とさせていただければ,その辺りを盛り込みます。

【岡本主査】 湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 要・不要と2種類しか判定条件がなくては不十分です。例えばガスタービンだと,航空機タービンで1400℃はやっているわけだし,発電だってもう1500℃の燃焼温度をやっているのだから,950℃が何だと思いますが,メーカーの方々は3社おられるから,日本の最も得意なガスタービンをこんなふうに850℃とか950℃で「要」と書かれるのはちょっと遺憾なのではないかと思います。それと燃料の高燃焼度化というような,原子炉を含めたそういうのとは大分レベルが違うと思います。

【岡本主査】 そうですね。

【湯原委員】 そういう違いが分かるような表がいいのではないかと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。多分この表を作ると,それが自動的にロードマップに見えてくるような気がしておりますので,これを少し充実させた形で,ただし九つ全部考えていると話が発散しますので,三つぐらいに絞って議論させていただければと思っています。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい,分かりました。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

議題(2) 水素製造の技術開発と産業や社会への貢献の在り方

【岡本主査】 それでは,ちょっと予定より時間が過ぎてしまいましたけれども,議題2に移らせていただきます。「水素製造の技術開発と産業や社会への貢献の在り方」について,亀山主査代理,飯山委員からの御説明を準備いただいております。御説明いただいた後,御説明について質疑,議論を行わせていただきたいと思っております。なお,それぞれ御説明いただいた後,議論をしたいと思っています。
 まず初めに,亀山主査代理より,資料2「水素社会の実現に向けた方向性/様々な水素製造方法の比較検討」についての御説明をよろしくお願いいたします。

【亀山主査代理】 それでは,資料2を御覧ください。まず,話としては,水素社会というのは,我々水素をやっている方では最近非常に当たり前の話ですが,普通の人はいきなり水素社会と言われると何だということがあるかもしれませんので,水素社会の実現の意義と課題をちょっとまとめてきました。それから,ISプロセスというのは水素製造ですが,ほかの水素製造プロセスにどういうことがあるのかということも,簡単にまとめてきました。最後のまとめのところは私個人の意見をまとめたものです。
 まず初めに, 3枚目で,これはエネルギー基本計画のところで,「水素社会の実現」ということをはっきりうたっております。これが高温ガス炉の開発もうたっていたというのが1回目にあったと思いますが,3章のところで水素社会の実現に向けた取組を加速するということを国が基本計画でうたっているということに,世界が非常に注目したということで,6月に世界水素エネルギー会議の20回目が韓国で行われましたが,非常に国の水素ビジョンを各国皆注目していました。
 その中では,ここに書いてあるようないろいろなエネファーム,家庭用の燃料電池の普及から水素自動車の普及,それから水素発電。この水素発電について,ちょっと高温ガス炉との関係がありますので,後で説明します。それから,安全な供給に向けた研究開発と,現実味を帯びたロードマップを作るということで,これが6月23日に作成されたという流れです。
 4枚目では,なぜそういう水素社会を日本がビジョンの中でうたっているかということですが,ここに書いてあるように五つの理由が挙げられています。
 まず,エネルギー供給の多様化ということで,日本としてはエネルギーがほとんどない国ですから,外国に頼らざるを得ない。化石燃料中心で今は動いているわけですけれど,いつまでも化石燃料があるわけではないので,日本としては将来は究極は再生可能エネルギーを逆に輸入するという立場になると。そうした場合に,一次エネルギーがいろいろ変わっても,そのたびにころころ利用系が変わっては日本の社会が困るということで,水素というエネルギーを中心とした水素社会を作っておくことで,化石燃料から徐々に再生可能エネルギーにシフトしても,実際の社会の方は水素である程度動くということであれば影響がないということから,エネルギー供給源の多様化ということがあります。
 それから,当然環境負荷ということで,化石燃料の場合は二酸化炭素が発生しますが,将来再生可能エネルギー等からですと二酸化炭素フリーという意味です。
 それから,エネルギーの有効利用ということで,省エネも含めて高効率な利用ができるということと,エネルギー高効率,それからあと負荷変動とか,そういうときにも水素に替えることで,化学エネルギーで貯蔵ができるということです。
 それから,最後のところは非常時対応ということで,いざというときにそれぞれのところで,例えば燃料電池車のところにある水素で家の発電ができるとか,又は水素バスで学校とか病院のところの発電がローカルですぐできるとか,そういう緊急時へのいろいろなレジリエントという意味もあるということでした。
 では,どんな水素社会かというのが次の5ページに書いてあります。現在は工業プロセス用に水素が製造されておりますし,宇宙ロケットの燃料にも使われていますが,そろそろ燃料電池車が,来年トヨタから発売されるということですが,エネファームというのは,これは都市ガスから水素を作って,燃料電池で電気を起こすと同時に熱利用するというものです。これも現在7万台,家庭で普及していまして,2030年には500万台に行くと予想されています。これはエコキュートというのが同じような急速な伸びをしたので,それにならってこの家庭用の燃料電池もそういう伸びがあるだろうと。ただ,それはあくまでも天然ガスなので,天然ガスが枯渇して水素という話はすぐには訪れないので,どちらかというと上の水素自動車ですね。この水素源が将来確保できるかということになる。更にこの将来のところでは,いろいろな水素利用の研究開発,機器開発が行われているということで,水素利用技術が社会の中に入ることで,将来のいろいろな輸送系とか発電系のものが水素で行われるということです。
 6ページには,うちの水素エネルギー協会で出しているホームページですけれども,要するにこの真ん中の水素の形を,水素を利用する社会を構築しておけば,現在はこの右側の天然ガス,石油とか石炭,化石燃料から水素を供給されるけれども,将来は再生可能エネルギーからの水素ということで,先ほど申し上げましたように社会の方は水素で作っておけばいいと。
 この真ん中のところに一応核熱というのは,水素協会ではちゃんと書かせていただいていますが,世の中ではもういきなり化石燃料から再生可能エネルギーという,そっちの方の話に行っているのですが,実は本日の話は,どうもこの核熱からの発電がないと水素の供給が不十分だというのが結論ですね。水素社会を全部再生可能エネルギーで賄おうとしたら,とてもじゃないけれども足りないというようなことが,本日の骨子になると思います。核熱から水素が供給されるということです。
 7枚目には,先ほどエネルギー基本計画のところで出ていましたロードマップで,6月23日にできたものです。ここではフェーズ1というところで2030年ぐらいまで,フェーズ2のところで20年から30年以降のところについて,どんな技術がどのくらいの量,登場するかということが書かれています。
 ただ,高温ガス炉の開発のスピードから見れば,フェーズ1,フェーズ2の方はある意味では化石燃料からの水素ということで,フェーズ3あたりに,必要ならば再生可能エネルギーと併せて安全な高温ガス炉からの水素が社会で求められるようになるのではないかということで,フェーズ3あたりがこのロードマップで言うと登場の場かなと思います。これでは2040年頃に石炭からガス化してできたガスでの水素,そのときには二酸化炭素を出ますので,固定して地下に埋める二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)という方法,再生可能エネルギーから水素を作って運んでくるという二酸化炭素フリーの水素,さらに,ここに書いてありませんけれども,高温ガス炉からの水素というのもあり得るということです。
 8枚目には,では,量的に水素がどれくらい必要なのかということを示しております。例えば水素で発電して100万kWeの原子炉1基ぐらいの発電を行おうとすると,年間24億立方メートルぐらいの水素があると原発1個ぐらいという感じですね。
 では,この24億立方メートルの水素は,ほかのもので見ると,例えば自家発用,つまり,各企業や工場などにおいて,自家発用の水素発電を10万kWeの燃焼でやれた場合には, 7基弱ぐらいに相当するし,先ほどの燃料自動車については何と220万台。ですから,この原発1基分ぐらいの水素で,燃料電池車は200万台強賄えてしまうというので,水素自動車がどんどん普及したとしても,ある意味では水素の量はたかが知れているという感じです。燃料電池バスですと4.5万台ということに相当します。
 それから,先ほどの家庭用燃料電池,これは多分都市ガスが,まだまだシェールガスなどもあって続くと思いますが,この24億立方メートルの水素で,この家庭用燃料電池105万台を賄えてしまうということになります。2030年にはこの燃料電池が500万台になるということで,これの5倍と。ただ,そのときも恐らく天然ガスを使うだろうと。その先には水素に変わると思いますが,そうすると100億立方メートルぐらい,こんな感じです。
 9枚目ですが,現在いわゆる産業界ではいろいろな意味で,水素を作っています。作って,余っているのは自家発電用に使っていると。現在ではちょっと外販用に2億立方メートルぐらいは売っているけれども,あとは自分たちで使っていると。2015年ぐらいになると,燃料電池車が出てきたとしても,0.01億立方メートルというちょっとだけですね。それで,まだ国内需要,いわゆる潜在的に水素を出せというミッションがあれば余力がありますので,大体110億立方メートルから170億立方メートルぐらいは国産で水素ができちゃうのですね。だから海外から再生可能エネルギーで水素を持ってこなくても,もし必要ならば国産では更に上乗せのこのグリーンの部分を国内で供給できる,できるキャパシティーは持っているということです。
 では,2030年になると,燃料電池車としても先ほどの原発1基分の27億立方メートルぐらいしか増えないので,そうすると,まだ国内の水素で賄えるとなります。そうすると,やはり水素社会というのはこの燃料電池車だけでは駄目で,水素社会を作るとしたら,やはり水素発電という,いわゆる化石燃料から発電して二酸化炭素を出しそれをCCSで固定するというシナリオの中に,なるべく早く水素での発電を導入する必要性があります。これは大量に海外から運んでくるということを考えると,少しずつ運ぶとものすごく高くなるわけで,もし水素社会を作るとして,それで海外から水素を運ぶとなると,大量に水素需要がないといけないということで,ここでやはり水素発電の必要性というのが出てきているということです。それでもある程度国内の水素を賄えますけれども,水素発電のウエートを多くしていければ,海外から90億立方メートルぐらいの水素を運んでくることになります。この90億立方メートルを再生可能エネルギーとしたらという話になっています。
 10枚目に示しますのが,もっと2040年,50年の頃ではどういう形で水素が使われるかということですが,このグリーンのところが水素発電ですね。ですから,2030年では少量ですが,その後,水素発電でいわゆる化石燃料を使った発電に替わってくることによって,二酸化炭素削減に貢献するということで,かなり水素発電のウエートが大きいということが分かるかと思います。そのほか,水素エンジンでの発電と,ブルーの方が,これがトランスポーテーションということで,輸送用の水素ということですが,これをざっと見ると,かなり水素を使った発電が水素社会のかなりウエートを占めてくるのではないかと。
 では,この水素を全部海外から持ってくるかということが関係するかと思いますので,先ほどのロードマップのフェーズ3における課題を11枚目からピックアップしておきました。フェーズ3のところでは,結局水素供給をしないといけないですけれども,これは世界的にやはりミッションとして2050年に二酸化炭素発生量を半減するという,これは日本も一応ミッションと考えていますので,その2050年でそういうのを達成するとしたら,これは世界全体ですけれども,どういう技術が寄与するだろうというグラフがこれになっています。原子力がこの時点でもちゃんと8%ということで,そのほか発電効率を高めるとか,再生可能エネルギー――グリーンの部分ですね――を導入するとか,それからCCSで二酸化炭素を固定するとかいうようなこと。それから,省エネに相当するものをやると。こうやって頑張って半減するという絵が描いてあります。
 では,だからこれを日本はどういう技術で行うかということについて,12枚目に示しております。課題2のところでは再生可能エネルギー由来の水素ということですが,これについては現在工業用で小規模な規模での製造しか行われていないし,再生可能エネルギーからの水素というのはまず電気を発生して,電気分解で水素を作るというのがポピュラーですけれども,それ以外のいろいろな光触媒を使ったり,いろいろな熱を使ったりという方法がありますが,これはこれからの課題だと言われています。ドイツでも再生可能エネルギーから電気を作って,水素に変化する取組が積極的に行われています。
 課題3の方では,そういう中で更に中長期的な技術と考えると,ただ発電して水素を作って運ぶとなると結構高くなるので,もっと効率のいいものということで,光触媒から直接水素を作るとか,高温ガス炉,ここで一応高温ガス炉の熱を利用したISプロセスというのがロードマップのところの中に書かれています。そのほか,アンモニアに換えて運びやすくするというといったことがこれからの中長期の課題と言われています。
 次の13ページでは,現在どんな技術で水素が作られているかということですが,副生水素,ついでにできる水素ということですね。苛性ソーダとか製鉄とか石油化学のところで,本来の生産とともに水素が副生的にできてきます。これは主に自分たちで発電して電気として利用しているということで,もしその水素社会ということになると,この生産量とともに比例して水素が出てくるということになります。自分たちで発電していますので,その水素を売ってくれと外から言われると,では,自分たちは化石燃料で発電して賄うということで,二酸化炭素も出る可能性はあります。
 それから,目的生産,積極的に工業プロセスの中で水素を使うということで,水素化脱硫だとか重油の水素化で水素を使ったり,アンモニア合成で水素を使ったりするので,プロセスの中に水素プラントがあるわけですね。その水素プラントはかなりキャパシティーがあるので,必要となればここからフルにやれば,かなりの量の水素を日本に供給できると。
 それから,目的生産で,あえて新しく水素を作る水電解設備を導入するとか,化石燃料の改質でやるという場合,これはインフラ整備から始めて,水素を作るということになります。それから将来技術としては,光触媒とかISプロセスという形で水素を製造する技術があります。
 14ページには,その水素を作る際にどれだけ1立方メートル当たり二酸化炭素を発生するかということを示しています。作り方によってやはり水素,二酸化炭素の発生量が違っているという具合です。おまけで出てくるというのは本来の製品,鉄だとかソーダのところで作るために二酸化炭素を発生して,おまけで出てくる水素を供給するとなると,その水素の1立方メートル当たりの二酸化炭素負荷は低くなるわけですけれども,あえて水素を電気分解で作ったり化石燃料から作ったりすると,丸々それは二酸化炭素発生を伴うということで,ここに書いたように変わってきています。原子炉,ISプロセスについては熱源の二酸化炭素排出量によって,つまり,ペレットの製造などいろいろなところで二酸化炭素を発生させて作るので,そういう意味があります。
 15枚目には,ISプロセスということで,これは詳しくはこの後紹介があると思いますけれども,二酸化炭素は発生しないということで大いに期待されている技術です。
 16枚目には,コストということで,いわゆる中で作っているので,売るためではないので,製造コストですね。どのくらいの値段でできているかということで,1立方メートル当たりの値段を見てみますと,20円。これは副生で出てきますから安く売れるということで,20円から,下の方になると,これは再生可能エネルギーから電気分解でやるとなると136円とか,やはり作り方によってコストが様々であると言われています。
 17ページには,エネルギー総合工学研究所の村田さんの論文を秋鹿先生が講演のときに引用したのが分かりやすいので,借用してきました。これは横軸に原油の値段が書かれていまして,将来原油の値段がどんどん上がってくると,それぞれの原料から水素を作ったときの水素価格がこのように変わってくるということです。
 この中で一番下のところはガソリン,いわゆる自動車用ですね。ガソリンの自動車への熱利用に相当する水素の値段がこのくらいだということですから,ガソリン自動車に代わって水素自動車で走るとなると,燃料的にはこのあたりと。これはちょっと縦軸が違って見にくいというのは,1立方メートル当たり何円というと1立方メートル当たり30円ぐらいのところが水素1kg当たり336円ということで,1バーレル当たり100ドルだと,それぐらいが等価になっていると。
 それに比べて,原油の値段が上がってきますと,石油精製からの水素価格もどんどん上がってくるし,これからはCCSも入れて二酸化炭素を固定するとなると更にブルーのように上に上がってくる。ですから,高温ガス炉からの水素が幾らで出せるかということで,高い値段でしか出せなければ多分水素社会では受け入れられないけれども,これが比較的安い値段でできるということになると,みんなこの原油がどんどん上がっていったときに,国内での水素供給に際して,こんな高い水素で社会がやるのかという議論はある可能性があります。ですから,この値段を見ながら,高温ガス炉の利用系で水素がどれぐらいの値段で出せるかというのは,水素社会側から見ると非常に関心度が高くで,高ければもう相手にされないし,異常に安いという水素となると,副生水素に替わっての水素利用は出てくることになります。
 18ページには,文部科学省と経済産業省が連携して,2050年ぐらいを想定した二酸化炭素フリー水素の研究開発のエネルギーキャリアプログラムについて示しております。本プログラムは,去年から始まって,今年の7月からSIPという新しいプログラムで,向こう4年続くというものです。
 これはどんなイメージかといいますと,19枚目に,将来,海外で再生可能エネルギーから水素を作り,又はアンモニアとかメチルシクロヘキサンを作って,それを日本に運んできて水素社会に水素を供給するという,そのための研究開発というものです。現在は化石燃料からの水素で動くけれども,将来はそれが必要だということです。
 その中でISプロセスが重要な役割をしていまして,原子炉の方では900℃の熱で,実際にはISプロセスで使う温度は800℃から850℃だということで,ISプロセスや太陽からの熱ではとても高過ぎるということから,ここでは新ISとうたってその温度をぐっと下げるということで,下げるには膜分離とか何かで分離をすることで,低温での分解が進むようにするということで,その膜分離のところを研究開発しています。
 もう一つの方は,このISプロセスをモディファイして,いきなりアンモニアを作ったらどうかというので,これはISNサイクルというサイクル。Iはヨウ素で,Sは硫黄で,Nが窒素というサイクルも検討されています。
 21ページが,太陽からの高温熱650℃を想定したときの,今回のエネルギーキャリアプログラムでの温度になります。硫酸の分解の方は,高温ガス炉の方が800℃ですが,文部科学省のSIPの太陽熱利用では600℃に下げるということで,目標としては600℃以下で40%以上の熱効率を出そうということで,今,動いています。
 22ページは,農工大の方の戦略と書きましたけれども,右側の方は650℃の熱を使ってアンモニアを直接作る。それから,左の方は太陽電池での発電した電気を使って水と空気からアンモニアを作るというもので,化石燃料に依存しないサイクルを発表しています。
 23ページ目が,アンモニアの,これがISNサイクルということで,ISサイクルのヨウ化水素分離の部分が二つの反応に替わって,最終的には窒素が原料で,水と一緒に入って酸素とアンモニアができるということで,これは,今,日本原子力研究開発機構と連携しながら,アンモニアの反応の方は農工大学で,あと硫酸分解とかブンゼン反応と言われる下の水の入ってくる反応ですが,これはもちろん日本原子力研究開発機構がずっとやってきたものなので,連携しています。
 それによってどれぐらいの熱効率かというのを概算したのを24ページに示しております。ISサイクルのエネルギー変換効率は,日本原子力研究開発機構の論文によると53%から76%の可能性があるということで,もし上のISサイクルにおけるトータルの効率が40,50,60%となったときに,アンモニア1kg当たり必要なエネルギーが63MJから42MJというあたりになります。現在天然ガスから水素を作って,ハーバーボッシュという方法でアンモニアを生産していますが,それは水素1kg当たり30MJ。それから,太陽発電をして水電解をした水素でアンモニアを作ると1kg当たり45MJということで,比較的太陽から電気分解して水素を作ってハーバーボッシュでやるのに近い値が出る可能性があるという,これはあくまでも推算値です。
 25ページは,ハイブリッド法ということで,プラズマで二酸化炭素を分解して,室温で一酸化炭素と酸素にして,その一酸化炭素と窒素と水からアンモニアが合成できるということです。これはどっちかというと農家の方で,太陽パネルを置いてアンモニア水を作るものとして研究しているのですが,これを例えばプラズマの部分が発電の電気であれば,もうアンモニアが2段でできるということで,これはあえて書かせていただいたのは,将来高温ガス炉だけを海外に売るのではなくて,その利用系として発電設備と,それから水素製造設備と,場合によってはアンモニア製造設備も一緒に利用系も技術供給するのに使えるかなということで,ちょっと書いてみました。
 最後に26ページ,私の私見ですが,高温ガス炉技術で世界のトップランナーであることの意義は,前にも申し上げ,皆さんもお考えのように,安全性の確保の意味ではやはり日本がリーダーシップを取って開発していかないと,いろいろなところが後から開発したものが商業用になるとやはり問題があるのではないかということで,そういう意味では安全性を日本が基準を確保する責務,原爆被災国であり原子炉事故経験国でもある日本が,高温ガス炉を利用した技術で,今現在一番開発トップランナーにいるわけです。これが途中でリタイアしてほかの国に任せたらどんな技術が世の中に出てくるのか心配であります。そういう意味からも,技術開発は安全性確保重視でトップランナーとして安全性の確保された技術の見本を示すミッションがあると思います。
 2番目は,やはり再生可能エネルギーだけでは,日本の水素社会に対する将来の需要,特に電力供給が困難になるということです。今,化石燃料でどんどん発電して,ものすごいお金が海外に出ているわけですけれども,それがだんだん二酸化炭素の制約の問題も出て,水素に置き換わったときに,その発電を全部海外の再生可能エネルギーで作った水素では賄えないのですね。そうなるとどこかから水素を持ってこないといけない。そうすると,海外に高温ガス炉の需要がこれから出てきたときに,日本の安全を重視した高温ガス炉が海外に行ったときに,そこから水素を優先的に供給してもらうと,ある意味では供給確保になるということで,そのときに水素技術とかアンモニア製造技術とか,そういうものも一緒に提供するということが戦略的に良いのではないかということで,その意味では技術は確保しておくということです。
 それから,特にASEANなんかに日本の原子炉を供給することで,エネルギーセキュリティーの点から,水素とかアンモニアというもの,又は電力でも海底ケーブルで結構長距離輸送できますので,そういう意味ではアジアの方からエネルギーを確保する意味でも重要かと。
 あと,利用の多様性というのと,最後ですが,そういう意味で高温ガス炉が将来登場する時期になったときに,水素が3万円とか3,000円とかでは駄目なので,やはり1立方メートル30円程度の価格でできるのかどうかを検討して,それができるのであれば,ある程度それはアピールポイントなので,社会の受容性が高くなるのではないかと思います。
 以上です。

【岡本主査】 どうもありがとうございます。
 それでは,ただいまの亀山主査代理からの御説明について,御質問,御意見等ありましたら,よろしくお願いいたします。

【北川委員】 すみません。ちょっと理解ができなかったので教えてほしいです。9ページの図で,これが現在,2015年,2030年と,要するに需要が増えていくという図を説明されたと思うのですが,この下の方にある自家消費のところが……。

【亀山主査代理】 現在使われている。

【北川委員】 これはそれを引いてあるだけなのですね。

【亀山主査代理】 そうです。

【北川委員】 この部分。

【亀山主査代理】 ええ。

【北川委員】 分かりました。この部分はカウントしないということではないですね。

【亀山主査代理】 ええ,そうです。

【北川委員】 はい,分かりました。

【岡本主査】 そのほかいかがでしょうか。これは非常に分かりやすくて夢のある話なのですけれども,ちょっと教えていただきたいのは,この新ISプロセス,このカチオン交換膜の技術が非常に鍵になりそうな気がしますけれども,これがあれば,例えば,今,議論している750℃の高温ガス炉でも水素が作れるということになるのですか。

【亀山主査代理】 ええ。一応これは太陽からの水素,二酸化炭素フリー水素ということで,今,ナショナルプロジェクトで進んでいますが,何も太陽とは限らない。750℃の高温ガス炉ができれば,そのままスライドはできます。

【岡本主査】 これ,ISプロセスもかなり大変ですけれども,これの新ISプロセスも何年ぐらい先には出来上がる。

【亀山主査代理】 これは2030年に小型のプラントを動かして,実用は2040年から2050年ぐらい。

【岡本主査】 なるほど。気の長い話。やはり膜の部分が非常に難しい。

【亀山主査代理】 そうですね。やはり膜分離で大量に,実験室レベルならできるんですけれども,大量に何億立方メートルを製造するとなると,膜の耐久性を含めて,かなりハードルが高いという。

【岡本主査】 なるほど。膜の価格等も含めていろいろなことがあるわけですね。

【亀山主査代理】 そうですね。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】 二つありまして,一つ目は10ページの費用分散なのですけれども,このラージスケールパワープラントでの水素の需要というのは,これは何を使った発電というものがこの頃には多くなるという。

【亀山主査代理】 これは現在,御承知のように原子炉が停止したために,天然ガスを普通の市価の4倍ぐらいで買ってきて,それで火力発電でまあまあやっていますね。だからそれが水素発電に替わっていくという意味で,ですから100万kWe相当の発電の水素発電設備が全国各地にできる,それで電力供給をすると。

【鈴木委員】 要するに二酸化炭素を排出できなくなるので,水素を燃料とせざるを得ないだろうということで,こういった量になってくるという予想なのですか。

【亀山主査代理】 そうですね。2050年に半減というミッションがあるので,そうすると水素発電を増やしていく必要性があるということで,いわゆる化石燃料からの,今の発電にとって代わる部分ということです。

【鈴木委員】 はい,分かりました。
 あと,例えば16ページの水素製造方法のまとめがありますが,こちらに石炭ガス化,例えば褐炭などから石炭をガス化して水素を作った場合の製造コストを載せるとすると,どこかに入っているんですか。

【亀山主査代理】 これは載っていません。日本では石炭から水素,一応製鉄の方でやっていますけれども,将来的にはオーストラリアの褐炭からガス化して,それを水素にして持ってくるというのはかなり有望なプランですけれども,それですと大体35円です。シップ価格ということで,来たときに35円で買えると。実際にステーションで売るとなるとその2.5倍ぐらいの経費が掛かりますけれども,そういう意味ではこのレベルで言うと,海外の石炭からの水素は非常に安くなります。35円ぐらい。ですから,それと原子炉からの水素がうまく競合するかどうかですね。褐炭は結構ありますので,100年ぐらいはありますので,高温ガス炉からの水素の値段が高いとなったら,褐炭からの水素を液体水素にして運んできたらという話は当然出てくると思いますね。

【鈴木委員】 はい,分かりました。

【小竹委員】 水素の貯蔵のことですけれども,大量に作っていったときに,貯蔵したり輸送したりする技術についてですが,最近ではどんな技術開発が進展したのでしょうか。

【亀山主査代理】 まず,水素の液化技術はもう完成されていますので問題はないですね。それからあと,水素吸蔵合金に吸収させる。これも日本がトップランナーで,ただ大量にはやっていないですが,技術的にはどういうものを使えばいいかがはっきりしています。
 それから,メチルシクロヘキサンという有機化合物に水素を入れて持ってくるというのは,これはもう千代田化工建設というエンジニア会社が実際にもう小型のプラントも作って,水素から水素の運転もしていますので,あとはそれをスケールアップするだけなので,有機ハイドライドについては問題ないと。
 それから,アンモニア合成については,もう電解で水素にして,ハーバーボッシュという方法,既存の技術でやればもうアンモニアはすぐできますので,液体水素で運ぶよりかはアンモニアで運んだ方が輸送費は安いと,船の建造費も安いと,そこら辺は大体見えている技術ですね。ただ,アンモニアをこの新ISとハーバーボッシュ法で作る技術とか,ISNで直接作る技術とかとなると,これはもう,ただこれからは革新的な技術ということで,製造法についてはまだこれからですけれども,運ぶべき液体のアンモニアとか,液体の水素にする技術であれば,既存の技術と発電技術,電解技術ですぐにでも実現できます。

【岡本主査】 そのほか,よろしいでしょうか。
 湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 無理なことをお聞きするのではないかと思いますが,高温ガス炉から熱が与えられるとして,新化学法,ISプロセス,それと高温水蒸気電気分解,SOFCを逆です。大体コストを比較することはできるでしょうか。

【亀山主査代理】 多分日本原子力研究開発機構さんはそれをやっていると思うので,それは次の機会に。

【湯原委員】 はい,分かりました。

【亀山主査代理】 稲垣さんは分かっていますか。高温水蒸気電気分解について。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 基本的にはいろいろな情報がありまして,実は高温水蒸気電解については,現在,私どもは研究開発を行っておりませんので,海外からの情報になりますけれども,やはり30円台から40円台というレベルになっているかと思います。ISの方につきましては非常にざっとした計算でございますけれども,後ほど示させていただきますけれども,20円台ぐらいを目標に研究開発を進めている状況でございます。

【岡本主査】 そのほか,よろしいでしょうか。
 では,梅田委員,お願いします。

【梅田委員】 9ページのこの2030年の供給ですけれども,海外供給で90億立方メートルとありますけれども,この海外から供給される場合,海外で再生可能エネルギーによって作った水素を輸入するということなのでしょうか。

【亀山主査代理】 多分,この段階では石炭だと思います。再生可能エネルギーで発電した水素よりは,この30年代であれば,もう簡単に石炭のガス化から発電して水素を作る,又はその水素を有機ハイドライドの形にして持ってくるということ。

【梅田委員】 ということは,海外で水素を作っても,その二酸化炭素は出ているわけですか。

【亀山主査代理】 そうですね。だからCCSで。

【梅田委員】 ああ,CCSでやっている。

【亀山主査代理】 先ほどの石炭のガス化からの水素は,CCSの費用も含めて35円ぐらい。

【梅田委員】 そうですか。分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。今もありましたが,大体30円というのが非常に大きなパラメータ,開発目標なのかなという気がしますけれども,それでは,続いて飯山委員より,資料3「高温ガス炉とその利用技術の研究開発に期待すること」についての御説明,よろしくお願いいたします。

【飯山委員】 それでは,資料3に基づきまして,高温ガス炉とその利用技術の研究開発に期待することを述べさせていただきます。大半が亀山先生の資料と重なっておりまして,思いは同じなのかなと思いました。
 2枚目は,なぜ自動車業界がこういった,我々電気自動車もやっておりますが,燃料電池自動車も発売しようとしているのかということのバックとしてとらえているものです。車会社は2010年に比べて,世界の車の規模は2030年には世界で倍になると言われておりますけれども,決して自然に大きくなるとは思っておりません。ここに書いてあります四つの項目というもの,エネルギー,温暖化,渋滞,交通事故といったものが,自動車産業が持続的に可能な成長を遂げるだろうかということに対しての大きなリスクであると認識しております。
 エネルギーはもちろんですし,地球温暖化もそうです。また,ちょっと毛色が違う渋滞,交通事故というのは,やはり皆さんがこれから都市の中で,新興国なんかは大きく成長してくると思いますけれども,トランスポーテーションとして車を選んでいただけるだろうかというポイントではないかというところでございます。こちらは知能化というか,自動運転という分野で対応しようとしております。今回の水素については,この上のエネルギーと温暖化というものに対する自動車会社としての備えだという認識を持って進めております。
 3枚目において,そのビジョンとして,やはりゼロエミッションということが非常に大事であると思います。ゼロエミッションというのは,いわゆる走行中に有害なものを出さない,あるいはそれの燃料もそういった有害なものを出さないで作るというゼロエミッションというものが,社会において必要ではないかということで,弊社日産はゼロエミッションのリーダーになるというカルロス・ゴーン社長のメッセージもございます。
 4ページですが,二酸化炭素削減はやはり人類に課せられた使命だと思います。私たちが試算をした結果ですけれども,これは温暖化による気温上昇を2度以下にするために必要とされる二酸化炭素の濃度450ppmを守るために,年率3%の成長を前提に,2050年には2000年比で9割の二酸化炭素削減が要るのではないかとされています。これは新車の削減率を示しております。9割というのは非常に大きなものですけれども,2010年までの2000年からの10年はほぼこの線に沿っておりまして,いろいろなエンジンの改良とかHEVの導入とかでこの線に沿って低減してきております。
 ところが,5ページを見ていただきますと,やはり更に2050年までに行くには,更にゼロエミッション車の投入というのが不可欠になると思っております。ハイブリッド車も相当燃費がよくなりますけれども,やはり5割の削減率でございます。当面はこういった内燃機関,ICE,あるいはHEVを広く投入していくことを進めておりますけれども,究極的にはやはりゼロエミッション車の投入が必要だと思っております。同時に電気や水素をゼロエミッションで製造するということが両輪で必要となってまいりますので,その意味において今回の高温ガス炉というものは,発電及び水素というものをゼロエミッションでできる非常に有力な技術であると認識をしております。そういう意味で,できるところからやるということで,まず電気自動車を発売しております。また,燃料電池車も今後発売していくというようなことで進めてきているところです。
 6ページですけれども,電気自動車にまず我々は注目いたしておりますけれども,これは御承知のように多様なエネルギーで動きます。ミソは,一旦バッテリーにためて使うということであると思います。この点が我々の考え方の大きな変換ではないかと思っております。原油から直接ガソリンを使っていろいろ使うというのに比べますと,電気はいろいろなところから作られます。それをバッテリーに一旦ためるという概念が非常に新しいのではないかと。
 それは,水素も実は同じではないかということを7ページに示しております。水素も原子力,水力,風力,いろいろなものから作られます。それを一旦容器にためて使うということです。水素もどこから来ても同じ水素であります。それを一旦ためて使うという概念で,電気とほぼ等価なものに車としては捉えることができると思っています。
 8ページにおきまして,水素,電気というのは,お互いに高効率で変換可能でございます。電気分解と燃料電池によってお互い変換可能ですので,電気ではできないような1,000kmを超えるような送電とか大陸間の輸送とか,そういったものは水素で初めて可能になってくるわけで,こういった電気と水素をうまく使い分ける社会,世界というものが今後必要なのではないかと思っております。
 9ページに燃料電池自動車の主な部品を示します。床下に黄色い燃料電池スタック,これは発電をするものです。高圧水素容器の中に,ここでは700気圧で実用化しますけれども,700気圧の高圧の水素を入れて,燃料電池スタックで発電をして,インバーターで電圧・周波数を整えてモーターに電気を送って駆動するというものです。リチウムイオン電池も積んでおりまして,これはハイブリッド車と同じようにブレーキの回生エネルギーを貯蔵するなど,いろいろなものに使っております。
 この中において,青で示したインバーター,モーター,リチウムイオン電池などは既にハイブリッド車や電気自動車で実用化をしております。大量に生産をしている工業製品になっておりますが,現在最終的な開発に残っているのは,燃料電池スタックと高圧水素容器です。
 高圧水素容器は,今は700気圧の高圧で水素を貯蔵いたしますが,実はここの技術が一番遅れてきているのではないかというところでございます。液体水素とか水素吸蔵合金とか,もっと小さい容積のものでいきたいところですけれども,なかなか重さとか,液体水素で言えばボイルオフというような1週間たてば減ってしまうとかいう問題もありまして,現在はこの高圧水素容器で実用化を開始するというところです。
 これまでも,実はメタノールとかいろいろな液体燃料で,それを車に積んで,そこから水素を取り出して動こうとしてまいる努力もしましたが,やはりそういうシステムですと,車自身の重さが大きく複雑になってしまいますので,やはり今は水素を作っていただいて,それを供給して動くということになっていくと思っています。
 10ページに,燃料電池自動車の本格普及に向けた課題というふうにまとめてみました。これは導入というよりは,更に導入の後,本格的に普及するかどうかという観点の課題です。やはり燃料自動車自身の低コスト化というのは,燃料電池自動車のメーカーとしての責任として,お求めやすい価格の実現に努力しております。また,コスト低減のためには量産規模を確保したいということで,私どもはダイムラー,フォードと組んで一つのモデル当たりの生産台数が一番増えるような形で導入しようとしています。こういった量産規模を確保すること,さらには材料をもう少し安い材料で作るといったところは,まだまだ実は材料のみならず生産技術も含めた基礎的な研究開発が必要な状況でございます。
 2番目が水素インフラの構築です。今,パブリックに公的に水素を自由に販売するというような状況ではございませんので,今ない水素ステーションを作っていかなくてはいけません。この数を増やすということと,どこに持っていくかということは,お客様にとって利便性が高いように工夫をして,設置を始めているところです。
 その中でも,結局最後は一番大事かなと思うのは,やはり水素価格と安定供給ができるかといったところです。ここは価格,先ほど亀山先生からの1立方メートル当たり30円以下で,いわゆる工場渡しというのでしょうか,製造価格,製造コストの目標がございましたけれども,これについては自動車からの見方も後で御説明しますけれども,やはり経済的なメリットがないと,いかに燃料電池自動車に魅力があっても買っていただけないと思っています。
 この点について電気自動車の例を御紹介します。電気自動車は航続距離がやはり限られますが,それでも,既に累計で12万台を世界で売りました。買っていただいたお客様は非常に満足度が高いのです。それは,お客様の生活スタイルが,航続距離が少なくて済んでいるというものもありますけれども,やはり1km走るのに1円から3円という,ガソリン車に比べると数分の一の経済的メリットが非常に大きなものではないかなと思っております。水素の価格も経済的にメリットがないと,やはり燃料電池自動車というのは買っていただけないというところではないかと思っています。
 3番目は,先ほど言いましたように700気圧という高圧の水素で燃料電池自動車の実用化を開始いたしますので,やはり安全性というものについて社会的に皆さんに受け入れていただき,安心していただくということだと思います。ここは標準とか基準というものは非常にしっかりできてきておりますので,これにのっとって適切に作られたものをちゃんと適切に使えば,既存のガソリンや都市ガス,LPGなどと同じように安全に使えるということを本当に御理解,納得していただくことが大事だと思っています。
 一方,11ページ,水素について,亀山先生の資料と大分ダブりますので御紹介を簡単にしたいと思いますけれども,今,考えている水素を売るというやり方は,2通りの水素の供給源を考えております。都市ガスを用いて,オンサイトというのはステーションで水素をその場で作るという形と,オフサイトという,他のどこかの場所,例えば製油所とかいうところであらかじめ水素を作って,それをスタンドに運んでくるという二つを考えられております。スタンドに来たら圧縮機で高圧にして,蓄圧器でそれを貯蔵して,ディスペンサーと呼ばれる充填をするもので,プレクールというマイナス40℃に下げて,700気圧で供給するというようになります。
 12ページ,ロードマップについては,先ほど亀山先生からも御紹介がありましたけれども,やはりフェーズの1と2では化石燃料を用いて,燃料電池自動車の水素市場というのは限られておりますので,現状のもので対応できるかなと思いますけれども,フェーズ3で水素発電とか大量に使った場合は,やはり新しい水素の供給が必要であるということだと思います。
 13ページもそれと同じことでございまして,ロードマップにおいても,一番下の海外の未利用エネルギーからとか,有機ハイドライドから液化水素等での形とか,いろいろな提言が盛り込まれております。
 14ページに日本の水素の現在の状況ということで多少資料がありますけれども,今の生産の余力はありますとなっております。これはやはりエネルギー,特に石油メーカーの製油所の自家設備で水素を作る設備が余っているということのようです。ただ,どうして余っているか,また,製油所の中で水素をなぜ作っているかというと,オクタン価を上げるとか,ガソリンの商品性を高めるためにどうしても水素を使うということです。つまり,付加価値を高めるための非常に重要な水素の製造装置であるということになりますので,2系統を持っています。つまり,設備が1系統ですと,故障したり定期点検したりするときに製油所全体が止まってしまうので,そのようなリスクを避けるために2系統を持っていると伺っております。常に2系統あればこのような余力が生まれるということですけれども,1系統が定期点検に入った場合,あるいは一つの系統が故障した場合はその余力がなくなるわけですね。
 自動車にとってはこの燃料というのはどんなことがあっても安定供給してほしいわけです。したがって,そういう製油所の水素製造能力は,自動車用燃料として目的生産可能と思われていますけれども,実は完全な目的生産が常に可能な能力かというとそうではなくて,やはり限定的な能力であると思われます。やはり燃料電池自動車にとって安定的に供給できる水素というものは,やはりいわゆる余剰設備とか余った力,余った能力というのは,なかなか実際は期待しにくいのではないかという見方をしております。
 そういう意味で,15ページ,これも亀山先生と同じ図でございます。同じことを言いたいのですけれども,燃料電池自動車は赤の数字で,亀山先生もおっしゃっていました2015年0.01億立方メートル,2030年27億立方メートルという数字はそんな多くないということで,緑色の国内供給の中で吸収できるではないかというところだと思いますけれども,先ほど言ったように,製油所などの余っている能力というのは実は余らないときがあります。定期点検とか故障になった場合は,誰が安定して供給してくれるのでしょうかということを考えますと,本当に頼っていいのかなというのは多少不安なところがございます。やはり安定供給ができる能力を持つということは大事なのではないかと思います。
 ここで,ロードマップのところでは海外供給と明記されておりますけれども,これは国産の高温ガス炉というものがこのロードマップの議論の中ではなかなか俎上(そじょう)に上らなかったのではないかという認識でございます。こういった海外供給と記載されているこの中に,あるいは国内供給の余力というものではなくて,目的生産をきちんとする国内でも海外でも安定的に生産できる水素の製造能力というものが,実は非常に大事なことではないかなと思います。
 そういった海外供給の事例ですけれども,我々から見ますと,16ページと17ページですけれども,もう民間企業でこの取組を既に表明をして始めているところがある段階に来ているというのが非常に大きなところかと思います。例えば海外供給のクリーンな水素の候補の一例として,これは川崎重工業のホームページですけれども,先ほど亀山先生がおっしゃった褐炭というものを明記して,既に民間会社として取り組むというようなことが出ております。
 また,その運搬の技術についても,シクロヘキサンという千代田化工建設のお話も出ましたけれども,17ページに,もう既にホームページで,こういったシクロヘキサンを用いて海外から大量に水素を安定して輸送できますよということに取り組みますという民間企業としての表明が出ているということは,もう非常に大事なステップに来ていると考えております。
 問題の水素価格,18ページですけれども,これは考え方ですけれども,先ほど自動車会社から見ると,下の赤のランニングコストと呼ばれる1km走るのに幾ら掛かりますかといったところでお客様は判断をされているのではないかと考えております。
 今までの内燃機関,ICEと書いてありますけれども,大体このレベル,赤で言いますと7円/kmから15円/kmとか,そういったレベルの範囲にあるようです。特に一般の普通車であれば,例えば右の方の10㎞/リットルと,ガソリン1リットル当たり10km走る車が従来のAT車とかでは普通でした。これが,ガソリンが140円とか160円ですと,大体13円/kmとか15円/km掛かっておられたと思います。今,ハイブリッド(HEV)がやはり1リットル20kmとか30km走るのですが,これは軽自動車も似たようなものだと思いますが,これは非常にマーケットの中では燃費を気にするお客さま方が皆さんチョイスされている範囲だと思います。
 我々は,燃料電池自動車はこのハイブリッド車と同等以下のランニングコストであるべきだと考えます。そうしますと,その上に水素1立方メートル当たり10km走るというような燃料電池の性能を仮定いたしますと,大体60円とかそれ以下で,いわゆるお客さんが買う価格ですね。コストではなくてプライスです。価格60円ぐらいがやはり目指すべき姿ではないかというと,コストは,先ほど亀山先生も価格の2.5分の1というようなことをおっしゃっていましたけれども,1立方メートル当たり30円以下が求められますね。やはり二十数円とか,そういうレベルでの水素の工場渡しを可能にするということがどうしても必要になるのではないかと思います。
 ちなみに,一番左にバッテリーEV,BEVとありますけれども,これが先ほど言った1円/kmから3円/kmの範囲内にあり,非常にクルマの運転にかかる燃料代が安いということが分かります。こういったポートフォリオというのでしょうか,こういった位置付けで水素の価格を自動車からは目標として考えております。
 もちろん水素ステーションの建設コストとか,そこに運ぶためのトレーラーとか,いろいろな人件費とか,いろいろなものが入りますので,なかなか正確な見積りは難しいですけれども,大まかに言うとやはり1位立方メートル当たり30円以下,余裕を持って1立方メートル当たり25円以下とか,そういったところを工場渡しの目標にまずは置くべきなのかなと。そこを精査して,可能性を探っていただければと思っております。
 19ページに,水素の燃料の仕様として掲げさせていただきました。これは,燃料電池は変な不純物が入りますと,触媒が被毒をして性能が出なくなりますので,このISOの14687-2で国際的に今の水素性状を取り決めております。水素の燃料比率というのは,全体のポンプされる燃料の中の99.97%以上とか,水は5μmol以下とかの規定があります。
 この中でやはり非常に敏感だなというところは,真ん中辺の一酸化炭素です。一酸化炭素0.2μmol/mol以下が要求されています。あと硫黄ですね。全硫黄化合物(H2S(硫化水素)換算)0.004μmol/molが要求されています。ホルムアルデヒド,蟻酸(ぎさん),アンモニア,あとハロゲンですね。こういったものは非常に微量でも入りますと,ずっと蓄積をして燃料電池の出力がどんどん低くなります。高温ガス炉とその熱利用技術で想定しているIS法によれば,そのプロセスから言って有害な成分が入らないのかもしれませんけれども,是非こういったところを非常に保証できるようなものになってほしいなと期待をしております。
 最後ですけれども,やはり自動車業界にとってはゼロエミッションというものは非常に大きな重要なキーワードだと思っておりまして,電気自動車,燃料電池自動車の普及をしたいと思っておりますので,電気や水素というものを競争力ある価格で,しかも安定的に供給できるようなことが大事だと思っております。今回の高温ガス炉技術とその利用技術の構築というものは,そのために非常に適しているのではないかということで,今後,ステークホルダーの皆様の連携と協力に期待したいと思っております。
 以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの飯山委員からの御説明について,御質問・御意見があれば,よろしくお願いいたします。

【米田委員】 すみません。19ページの不純物の濃度ですけれども,今まで余り高温ガス炉の方で出てくる水素のこういった不純物の議論を見たことがなかったように思うのですが,これらは回避できそうだという見通しでよろしいのでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 ISプロセスでは,反応の過程で水素系にはヨウ素を使いますので,若干ヨウ素が混じる可能性がありますので,基本的にはPSAみたいな精製装置みたいなものが必要だとは,今,考えております。それを使えば,この純度は十分満足できると考えております。

【米田委員】 ありがとうございます。

【北川委員】 水素の安定的な供給が非常に重要だというお話だったと思いますけれども,高温ガス炉を水素供給源と考えるときに,水素を使うユーザーの立場である自動車業界は考えておられると思うのですが,逆に水素安定供給を確保するために,高温ガス炉で水素を作るところまで自動車業界が入っていくような,インベストをしていくようなお話は,業界の中ではあるのでしょうか。

【飯山委員】 いや,まだそういう話は出ておりませんが,どなたも作らないのであればやる可能性はあると思いますが,作られる方がいるのであれば,是非サポートさせていただきたいというところだと思います。

【北川委員】 今の軽水炉に対する電力会社という図式と同じだと思うのですけれども,誰が一番それを欲するかといいますか,そこに投資しても確保したいかというところが非常に大事だと思います。この自動車業界というのがやはり書いておられるところから見ると,確実な水素供給を求めるステークホルダーとしてはかなりの重要なところにいらっしゃるのではないかという感じもいたしました。例えば自動車産業の中で,水素供給源としての高温ガス炉に投資するということを検討するといった議論はなされていないでしょうか。

【飯山委員】 その点で,我々電気自動車のリーフを発売させていただきましたけれども,実は急速充電器とホーム充電をおやりになろうという方は実はいらっしゃらなかったのです。ですので,私どもが入って急速充電器を自分で作ったり,急速充電器の設置をディーラーさんにお願いしたりしているというようなことでやりました。水素については,売りたいという方が,今,いらっしゃいますので,石油業界さん,ガス業界さん,そういう方を是非サポートしたいなというスタンスです。

【岡本主査】 そのほか,よろしいでしょうか。湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 9ページで説明いただきましたが,燃料電池のスタックと高圧水素容器がまだやはり非常に問題だというお話でしたが,大体どのぐらいの比率になっているのですか。トヨタが700万円で売り出して,ガソリン車だったら200万円程度の車で,700万というと500万円なのでしょうかね。
 そうすると,その500万円の差で燃料スタックとか高圧水素容器の占めている割合から考えて,今のコストのどのぐらいを下げればいいか。例えば高圧水素容器というのは値段がよく分からないのですが,最近では,35MPaはクリアで,次が70MPaだというお話だったと思いますが,蓄圧器も82MPaまで来ていると。値段がさっぱり分からないのですが,量産することによってそれが非常に安くなって,さっきの500万円の差がどのぐらい詰まるのでしょうか。

【飯山委員】 そこは,今,一生懸命やっております。感覚的で大変恐縮ですけれども,実は燃料電池スタックの方が,今,コストダウンの見通しがかなり見えております。中に使う触媒の量を減らすとか,大量に部品を作ってコストを下げられるとか,そういうことがありますので,下げる見通しというのは見えてきております。
 見えていないのは,実は高圧水素容器の方でございます。カーボンファイバーを使った複合樹脂のCFRPの価格がなかなか下がらないものですから,それが大半のコストを占めておりますので,実は一番高額な部品になってしまうのではないかというぐらいです。実は燃料電池単価のコストが下がると思っておりますので,このあたりを総合しますと,端的に言いますと3分の1とか,そういったぐらいのコストを技術で下げたいと。残りを量産の効果で下げていって,大本のメッセージというか,ロードマップにもありますけれども,同じ車格のハイブリッド車と同等の価格で売れるようにしたいというのが目的,目標でございます。

【湯原委員】 ありがとうございました。

【伊藤委員】 車に適している水素ということで,どんなものから作っても,それは水素の質というのは変わらないのでしょうか。

【飯山委員】 はい。水素は水素ではないかと思いますが,実は不純物は大分変わります。特に天然ガス由来のアメリカですとヘリウムが多いなど,いろいろな不純物として何が入るかというのはかなり違うようですので,それで19ページで,上から2番目に全非水素ガス比率で300μmolとあるのですけれども,同じ数字が,実はヘリウムにも300μmolとあります。これは,全部足すと300μmolを超えてしまいますけれども,そういう意味ではなくて,やはり産地とかいろいろ取れるところによってもどうも不純物が違うようですので,それを考慮して国際的にこうやって決めてきております。なので,同じ99.97%以上が水素ですけれども,中にほかに入ってくる不純物が大分違う水素ができてくるというような御理解でいいのではないかと思います。

【伊藤委員】 そうすると,高温ガス炉によって生成される水素というのは,天然ガスなどに比べると不純物は少ないと見ていらっしゃるのですか。

【飯山委員】 そこが,私どもも先ほどヨウ素が入ってくるのではないかということで,ちょっとヨウ素については実は評価をしていないと思いました。ですので,ヨウ素について国際的な評価をきちんとして,必要であればISO化するとか,分かりませんけれども,そういった研究はちょっと必要なのかなと感じました。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 不純物につきましては,ただいまおっしゃったように化石燃料の場合,いろいろな産地が異なるとかいうのもございますし,IS法の場合はヨウ素が蒸気圧みたいな形で混ざるという可能性はございます。ただ,それを純化する技術というのはもう既に確立されておりますので,それを用いれば,燃料電池車に安定したきれいな水素を供給できるというのは,もう現状の技術で十分可能でございます。

【伊藤委員】 ありがとうございました。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。
 1点だけ,これは日本国内でのお話で,海外から水素を輸入するという話ですけれども,世界的に見たところでどのような動向になるとお考えでしょうか。例えば,中国などは到底こういうところには当分まだ来ないでしょうし,アメリカとか先進国中心なのかなと思いますが。

【飯山委員】 少なくとも私どもが聞いている範囲では,なかなかこういったクリーンな水素製造を検討しているという話は余り伺っておりませんが,天然ガスや水素の輸送のために,しかも欧米はパイプラインで非常に大量にネットワークがもうありますので,それを使ってやるのではないかなと考えますが,亀山先生,いかがでしょうか。

【亀山主査代理】 ドイツなんかでは再生可能エネルギーで発電して,水分解でできた水素を5%ぐらい混ぜて,二酸化炭素発生量を抑えるというのは国家的にやっていますね。多分水素自動車用よりかは,そういうパイプラインに入れる方が向こうは関心事なのではないかと思います。

【飯山委員】 そうですね。パイプラインに入れることで,負荷変動の非常に大きな水素の製造でも安定して使えるようになるという意味ですね。

【亀山主査代理】 はい。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 そのほか,はい,お願いします。

【梅田委員】 ちょっと素人なのでよく分からないのですけれども,高圧水素容器ですね。これは先ほど700気圧ということで,相当内圧が高いなということだし,水素ってこれから使うことで,これはまだ実績がないので,万が一今後事故とかあれば,やはりいろいろ普及の上でも影響が出てくると思いますが,この辺の安全基準とか,あるいはそれを満たすような安全の確認とか,どの辺までできているのでしょうか。

【飯山委員】 そこは非常に我々も重要に思っています。世界中がそう思っていまして,実は昨年6月にGTR(Global Technical Regulation)と呼ばれる世界技術基準というものが,この高圧水素と,あとこの燃料電池の自動車の水素に関する安全,そして燃料電池自動車の高電圧の安全について,国連で採択をされました。
 この思想は,各国で,今,いろいろな基準とかがありますけれども,それを網羅した中で一番厳しい技術基準を共通で設けましょうというものです。それにのっとって,各国はちゃんとレギュレーションとして法律を整備しなさいとなりましたので,少なくとも高圧水素容器については,それにのっとれば,例えば1万回の充填をしても問題ないようにしています。この1万回というのは,毎日充填を繰り返して30年続ける回数に相当します。圧力容器を減圧して加圧して,減圧して加圧してというサイクルを,クルマで想定される寿命を超える以上にやっても漏れないとか,衝突を想定したときの衝撃試験とか,いろいろな厳しい試験を一つのタンクに連続して負荷して,車の一生に経験するであろう負荷を一つのタンクに全部集中して試験をして,それで最後,必要とされる残留の強度が残りますかというような非常に厳しい試験を課すことになりました。
 それで,タンク自身の安全性も保つようにしましたし,また,火災も,隣の車が燃えてこの水素容器も加圧されたときに破裂しないように,ヒューズ弁というのですか,溶けてある安全な方向に水素を抜くとか,そういった車両として安全を守るという技術基準を実は作ってまいりました。なので,変な話ですけれども,車が出る前にちゃんと基準とか標準はできたと。クルマの方が出るのが遅いのではないかと言われるかもしれませんけれども,そういった意味で,私たちとしては車として安全を保つ上には必要な基準・標準が準備できてきたのかなと思っております。

【梅田委員】 分かりました。ありがとうございます。

【伊藤委員】 すみません,もう一点いいですか。
 ランニングコストのところなのですが,今,消費者としてはガソリン価格が上がったり下がったりということにかなり振り回されていますけれども,現段階だと,やはりガソリン由来とか天然ガス由来ということになると,やはり同じように価格というのは変動する水素を使わざるを得ないという状況ではあるということですか。

【飯山委員】 そうですね。今の水素は,例えば先ほど最初に御紹介した製油所で作られる水素というのは,結局原油から取り出したナフサというものを原料に水素を作っておられるようですので,やはり原油が原料ですので,それによって上下するのではないかと思います。
 ただ,アメリカではシェールガスと呼ばれる非常に新しい安価な天然ガスが出てきて,それは,今,原油価格とは全然連動しない価格になっていますので,アメリカはまた全然別の,そういうシェールガスから作れば,もっと安くて安定して原油に左右されない水素の価格ができるのではないかと思っています。

【伊藤委員】 そうすると,高温ガス炉で作られる水素というものができると,価格的に安定して,消費者も安心して使えるという点はあるんですか。

【飯山委員】 ええ,自動車会社としてはそうなることを非常に期待しております。

【伊藤委員】 ありがとうございました。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 そのほか,よろしいですか。非常に大きな将来の水素ユーザーとして,可能性のある夢のあるお話で,本当にありがとうございました。是非これも一つのアウトプットとして検討できるといいなと思っております。

議題(3) 高温ガス炉の利用系技術についての研究開発の現状と今後の課題

【岡本主査】 それでは,若干時間が遅れ気味でございますけれども,資料ナンバー4,議題3に移らせていただきます。「高温ガス炉の熱利用技術の研究開発の現状と今後の課題について」と題しまして,日本原子力研究開発機構より説明,よろしくお願いいたします。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 それでは,資料ナンバー4高温ガス炉熱利用技術研究開発の現状と今後の課題につきまして,説明させていただきます。
 まず,本資料で2ページに移りまして,本資料で説明する内容といたしましては,まず高温ガス炉熱利用技術とはどういうものか。そしてその主要技術でございます水素製造,発電,そして高温ガス炉と水素製造などをつなぐための接続技術における状況と課題につきまして説明させていただきます。
 最初に高温ガス炉熱利用技術の概要につきまして,説明いたします。4ページを御覧ください。4ページの高温ガス炉の熱利用技術を右側の表におきまして,高温の水素製造,それから温度が下がって発電技術,そして低温の低温熱利用技術として,こういうものを現在主として考えてございます。
 このうち,水素製造技術につきましては熱化学法ISプロセス,メタンの水蒸気改質,化石燃料を使った水素製造技術ということで,日本原子力研究開発機構で研究開発を行ってございます。また,発電技術につきましてはヘリウムガスタービンの研究開発を行ってございまして,そして最後の欄になりますけれども,接続技術を日本原子力研究開発機構で研究開発の状況でございます。これらの技術における今後の課題等につきまして説明させていただきます。
 5ページでございますけれども,ここでは各技術がどういうものかというものを簡単に紹介させていただいおります。まず,熱化学法ISプロセスでございますけれども,これは先ほど亀山先生から御説明がございましたように,水をヨウ素と硫黄を使った化学反応で熱分解をするという技術でございます。これによりまして,大体水の分解には4,000℃ぐらいの高温熱が必要でございますけれども,それを900℃ぐらい,高温ガス炉の熱を使って水素と酸素に分離できるという技術でございます。この特徴といたしましては,水分解による水素製造でございますので,水素製造プロセスの過程で二酸化炭素排出がございません。そして原料が水で,エネルギー源が原子力になりますので,資源制約がないという大きな利点がございます。
 メタンの水蒸気改質の技術でございますけれども,これはメタンと水蒸気を反応させて水素を作るという,現在世界で最も一般的に行われている水素製造技術でございます。メタンと水蒸気の反応は吸熱反応でございますので,高温ガス炉を使った場合はこの反応熱を高温ガス炉で供給するという形になります。このメリットといたしましては,原子力エネルギーで反応熱を補いますので,その分の化石資源を節約して有効利用ができるという長所がございます。メタンと水蒸気反応というのは技術的には確立されておりますので,すぐにでも接続ができるものでございます。
 6ページ,発電技術に移りまして,ヘリウムガスタービンについてでございます。これは,高温ガス炉で出てきたヘリウムで直接タービンを回して,ヘリウムガスタービンを回して発電する技術でございます。このメリットといたしましては,蒸気タービンに比べて高効率発電が可能であること,また,冷却水が不要で津波の恐れがない内陸に設置できる,あるいは水を使いませんので,水浸入事故等が発生せず,高い安全性が確保できるという利点がございます。
 接続の技術でございますけれども,これらの高温ガス炉と水素製造などの主として高温熱利用施設を接続するための技術でございます。水素製造等に関しましては,熱利用施設からの可燃性ガスや有毒ガスの漏えいに対する安全性確保,あるいは熱利用施設というのは原子炉にとって除熱設備に当たりますので,そこの除熱能力が変動したとしても,原子炉を安定に運転するための技術というようなことの技術開発を行ってございます。
 それでは,水素製造技術について説明いたします。8ページを御覧ください。これは水素製造技術に関する研究開発の流れを示したものでございます。図の色で,青は既に開発が終了したものでございまして,オレンジは開発中並びに今後の計画を示してございます。
 まず,ISプロセスにつきましては,運転,効率,耐食機器に分かれてございまして,まず運転につきましては,技術開発をほぼ完了してございます。また,効率につきましては,HI濃縮技術ということで開発を行ってございまして,現在効率的に40%のめどを付けてございます。現在更にその効率向上を目指した研究を進めてございます。
 また,ISプロセスについては硫酸など非常に腐食性の高い物質を使いますので,それに対する耐食機器技術というのが非常に重要な課題でございます。それが工業材料製機器技術と呼ばれるものでございます。現在耐食性を主眼に開発を進めてございまして,材料選定が終了して,主要な機器,ガラスライニング,ブンゼン反応,そしてHI分解,硫酸分解,これらの信頼性を確認するための試験を行ってございます。
 なお,工業材料製機器の技術の中であります丸7のHI分解器,丸8の硫酸分解器につきましては,今年度中にその技術開発を完了する予定でございます。これら運転,効率,耐食機器の技術を統合いたしまして,丸9の連続水素製造試験を進めてございます。また,硫酸分解につきましては一種セラミックス材を使ってございまして,これを高圧ガス環境下で使用するため,高圧ガス保安法の特認に必要な設計研究を進めてございます。
 また,将来の経済性向上を目指しまして,丸11から丸13の機器小型化,要素技術開発を併せて実施しております。丸14の水蒸気改質技術につきましては,基礎技術となります,ヘリウム熱交換型の水蒸気改質器の開発を行いまして,実際にヘリウムガスループを使った実証試験等を実施しております。
 次に,9ページが水素製造技術の達成度を示したものでございまして,ISプロセスにつきまして記載させてございます。運転,効率,耐食機器によりまして,現在達成された技術を書いてございまして,今後の課題といたしましては,運転につきましては連続水素製造試験による性能検証。効率向上につきましては,性能向上で濃縮エネルギーの低減,あるいは膜の大型化。耐食機器につきましては,全系機器の信頼性確認,あるいはセラミックスの設計方針の確定,将来技術として,機器小型化,要素技術開発,これらのことが今後の課題として残ってございます。
 それでは,10ページでございます。これはISプロセス技術開発,いろいろ行ってございますが,それらがISプロセスのどの部分に相当するかを示したものでございます。ISプロセスは三つの化学反応から構成されておりまして,それぞれブンゼン反応工程,硫酸分解工程,ヨウ化水素分解工程となってございまして,それらの技術開発を行ってございます。また,全体を統合した技術といたしまして,左上に書いてございますように運転制御技術,あるいは工業材料の機器技術,そして連続水素製造試験と,このような研究開発を行ってございます。
 これらの技術開発につきまして,次に説明いたします。11ページを御覧ください。これは全体の運転制御技術の研究開発でございまして,ISプロセスを構成する三つの化学反応を連鎖化させて,定常的に水素を製造するという技術開発を行ったものでございます。技術開発の要点といたしましては,バッファによる循環物質の変動吸収,あるいは流量調整による反応制御等を行いまして,11ページの右図に示しますように,1週間でございますけれども,安定して水素,酸素との製造に成功してございます。ただ,この時点ではまだ金属等を用いた耐食機器の技術ができてございませんでしたので,この試験につきましてはガラス製の機器を使って試験を行ってございます。
 それでは,12ページを御覧ください。12ページは,今度はやはり運転制御技術に必要なISプロセスの状態量を測定するための技術開発でございます。先ほど連続運転を行いましたけれども,その連続運転に必要な反応が正常に保たれているかどうかを知る上で重要な測定値がブンゼン反応と呼ばれるところの組成でございます。ただ,このブンゼン反応は非常に強酸性の硫酸,あるいはヨウ化水素酸を使いますので,これら強酸性の溶液の中で計測できる機器がございませんでした。
 このため,間接的に,いわゆるブンゼン反応器の容器の外部から間接的に組成を計測するための技術開発を行ってございます。それが放射線密度計を用いた技術開発でございます。右下のグラフがその開発結果を示したものでございまして,まず,図の横軸に示すような濃度の組成を最初に作成いたしまして,縦軸は実際にその密度計を使って測定した結果でございます。グラフの中で直線が引いてございますけれども,この直線上に乗れば,実際の組成と測定値が一致したという結果でございまして,この結果に示しますように非常によい精度でブンゼン反応の組成を計測するということができまして,その技術開発を完了してございます。
 次に,13ページでございます。これは, ISの効率向上に係る技術開発でございます。効率向上で重要なところは,ブンゼン反応で硫酸とヨウ化水素という物質を生成いたしますが,そのヨウ化水素を濃縮するというのが非常に重要な技術課題となってございます。その技術課題を開発したものでございます。
 なぜヨウ化水素を濃縮する必要があるかと申しますと,ブンゼン反応後,ヨウ化水素を分解する際に蒸留するわけでございますけれども,水分が多いと,その水分の蒸発エネルギーに非常に大きなエネルギーを取られて,それで効率が低下してしまうということがございます。その技術開発といたしまして,電気透析,陽イオン交換膜を使った濃縮技術を開発してございまして,これによりまして耐久性の向上とか,あるいは濃縮エネルギーの低減等の技術開発を行ってございます。この技術開発によりまして,現状ISプロセスの水素製造効率を40%程度の見通しを得てございます。
 今後の計画・課題といたしましては,更に効率の向上を図るための濃縮エネルギーの低減とか,あるいはまだ小型の膜しかできませんので,それを大型化するとか,そのような技術開発が残されてございます。
 それでは,14ページにつきまして説明させていただきます。ISプロセスの非常に大きな課題であります,その硫酸とかヨウ化水素という強腐食性の機器に対する耐食機器の技術開発でございます。
 まず,どのような材料を選定するかということにつきましては,ISプロセスの液相,気相,あるいは温度という条件におきまして,どのような材料が使えるかという腐食試験を行いまして,右図に示しますような使用環境に適応できる材料を選定してございます。例えば,右図の上の方にございます硫酸の蒸発・分解については炭化ケイ素を使うと。液相の部分につきましてはガラスライニング,そして一部炭化ケイ素を使うと。あるいは低温のブンゼン反応につきましてはフッ素樹脂被覆を使うとか,このような材料を選定いたしまして,それをベースに主要な反応器等の製作を行ってございます。
 それでは,15ページでございます。これは工業材料製機器の技術開発の一例を示したものでございまして,硫酸の液相等で使いますガラスライニング,これは炭素鋼の内側に耐食性のガラスをライニングしたものでございますけれども,これが硫酸等に対して耐食性を有しているか,あるいはガラスと炭素鋼では熱膨張率が違いますので,熱サイクルを掛けてその健全性を確保できるかとか,そのような試験を行ったものでございます。
 右図はその硫酸中の耐食結果を示したものでございまして,試験開始直後,1時間とか2時間等は非常に腐食量が多くなってございますけれども,時間がたつにつれまして,例えば100時間程度になりますと,そのガラスの表面に耐食性の酸化被膜(SiO2(二酸化ケイ素))等が形成されますので腐食量が低減する。そうしますと10年とかいうレベルで考えますと,目標どおりの腐食量に抑えることができるというような結果を得てございます。
 次に,16ページでございます。これは反応器の中のブンゼン反応器の結果を示したものでございまして,ブンゼン反応器につきましては100℃ぐらいの低温で使いますので,低温の硫酸,ヨウ化水素という腐食環境で使いますので,その内面にフッ素樹脂をコーティングした反応器でございます。フッ素樹脂の場合,腐食というよりも,むしろ金属と被覆面の熱サイクルによる剝離みたいなものが問題になりますので,本試験により熱サイクルを掛けまして,その健全性を確認したという結果でございます。
 17ページでございます。これは,今度はHI分解,ヨウ化水素を分解して水素を取り出す化学反応器の信頼性確証を行ったものでございまして,HI分解の基層につきましては,耐食性のニッケル基合金が使えますので,それを使いまして反応器を構成したものでございます。現在,この反応器を使いまして信頼性試験を行ってございまして,今年度中にその耐食性,健全性の確認を完了する予定でございます。
 次に,18ページでございます。これは硫酸を分解する反応器の技術開発を行ったものでございます。硫酸は最高850℃の雰囲気で分解いたしますけれども,これにつきましては耐えられる材料として,炭化ケイ素(SiC)を選定してございます。そして,左側の図に示しますように,炭化ケイ素のチューブとガラスライニング材でできたマニフォールドを結合させて反応器を試作いたしまして,実際硫酸分解等の耐久性等の試験を行っている状況でございます。この機器につきましても,平成26年度に腐食等に対する信頼性確証を終了させる予定でございます。
 これらの耐食機器の技術,あるいは運転制御技術等を統合いたしまして,連続水素製造試験というものに現在着手しております。この装置につきましては平成26年度に完成いたしまして,現在試験を進めているところでございまして,その信頼性確証とか水素製造の検証等を行う予定でございます。
 それで,20ページのところでございますけれども,これは硫酸分解器でセラミックスを使います。実際高温ガス炉等に使う場合には,高圧ガス保安法の環境下で使うことになります。ただし,セラミックスは高圧ガス保安法としてまだ認可されておりませんので,その特認を行うための技術開発を行っている状況でございます。現在小型の試験片を使いまして,その設計をするための強度をどのように設定するか,左側の図でございますけれども,そのような研究開発を行いまして,実際に装置を製作いたしまして,高温ガスの保安法の認可を取得する予定でございます。
 21ページからは,将来技術としまして機器小型化,経済性を向上するために機器をコンパクトにするという技術開発を行ってございます。丸11がその硫酸分解器に関する技術開発でございまして,触媒層内の反応促進等を図ることによりまして,触媒管1本当たりの反応量を増やしまして,将来的に本数削減とか,そういう反応器の小型化を目指した研究開発でございます。
 次に,22ページでございますけれども,ブンゼン反応器周りの小型化を目指した技術開発でございまして,現在ブンゼン反応,右上のところに化学式が書いてございまして,ヨウ素と硫黄がある環境で水を入れて,ヨウ化水素と硫酸を作ります。ただし,この反応の過程では過剰のヨウ素を入れていますので,それを削減することによりまして,反応器あるいはその周辺機器を低減するという技術開発を行っているものでございます。この技術開発につきましては,先ほど亀山先生からお話がありました内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムによって実施しているものでございます。
 23ページ,これはやはり内閣府の戦略イノベーション創造プログラムにおきまして実施しております研究開発でございまして,HI分解の反応促進,膜を使った反応促進技術の開発でございます。これによりましてHI分解,現状20%でございますけれども,それを更に50%,60%ということに反応率を上げることによりまして,装置の小型化というものを目指した技術開発でございます。
 24ページのところでございますけれども,これが水蒸気改質技術の開発の結果を示したものでございまして,実際にヘリウム熱交換型の水蒸気改質器を試作いたしまして,右下にありますようなヘリウムガスループを使いまして,実際に水素製造を行ったという結果を示したものでございまして,高温ガス炉用の水蒸気改質技術というのは,これによって確立されたと考えてございます。
 次に,発電につきまして説明いたします。26ページ,これが発電に関する技術開発の流れを示したものでございまして,先ほどと同じように青色は既に開発が終了したもの,オレンジは開発中並びに今後の計画を示してございます。
 既技術といたしましては圧縮機,コンパクト熱交換器の技術開発を完了しておりまして,これらの技術は三菱重工と共同で実施したものでございます。今後の技術課題といたしまして,軸シール,あるいはFP沈着等の技術開発が残されているというものでございます。
 27ページ,これは今までに達成された技術,今後の課題を示したものでございまして,先ほど申しましたように,今後の課題としましてFP沈着とか,あるいは軸シール,大型化等の技術開発が残されている状況でございます。
 それで,28ページはそれぞれ技術開発がどのような機器に相当するかというものを示したものでございまして,前置きの圧縮機,そしてコンパクト熱交換器は再生熱交換器システム,そしてFP沈着低減技術というものはタービンで,これらのところに適用される技術でございます。
 29ページがタービン圧縮機器技術の開発状況を示したものでございまして,実際600MWt規模の3分の1スケールの圧縮機を試作いたしまして,ヘリウムループによる試験を行ったものでございます。そしてその試験結果でございますけれども,その試験結果から実機における圧縮効率を推定いたしますと,92%という非常に高い性能を得られてございます。ガスタービンの技術開発につきましては,ドイツ,アメリカ,中国で行ってございまして,実際にヘリウムループによる技術開発を行った国は日本とドイツでございます。ドイツの効率は85%程度でございますので,日本の技術は非常に優れているという結果を得たものでございます。
 そして30ページ,これは再生熱交換器用のコンパクト熱交換器技術の開発経過を示したものでございまして,再生熱交換器では,原子炉の熱出力相当の熱交換を行いますので,従来のシェルアンドチューブではとても既存の容器内には収まらないと。そこでプレートフィン,超細密フィンを使いましたプレートフィンの開発をすることによりまして,非常にコンパクトな熱交換器の開発に成功したというものでございます。
 31ページ以降は今後の発電システムの技術開発項目でございまして,まず一つが軸シール技術,発電機のガスタービンとか圧縮機とか,それらの回転軸が圧力容器を貫通いたしますので,その部分の漏えいをどう防止するかという技術開発でございます。軸シール技術というものにつきましては,もう小型化等では実用化されておりまして,それを今回大型化するためにいろいろな確認試験が必要という形で,今後の技術開発として挙げてございます。
 32ページ,これは実際ガスタービンを一次系に置いた場合に,核分裂生成物(FP)がガスタービンのところに沈着するという問題がございますので,今後のメンテナンスを考えますと,そのFP沈着を低減する必要があると。そのための技術開発といたしまして,そのタービン材料の改良を行ってございます。FPは材料の結晶量の境界等に沈着しやすいものでございますから,結晶粒を大きくすることによってその沈着部分を減らすといった技術開発を行いまして,実際FPの量を減らそうという技術開発でございます。
 33ページ,HTTRでは開発は不要でございますけれども,これが将来の実用炉に向けた大型化・高温化メンテナンス技術でございまして,タービンローターとかシークエンスのクリアランス確認とか,あるいは高温・効率化に向けたローターブレードの冷却システム,あるいはメンテナンスをどうするかというような技術開発が,今後の課題として残されてございます。
 それでは,35ページに移りまして,将来の接続技術に関する研究開発でございます。接続技術に関しましては,機器要素といたしましては,異常時に原子炉と熱利用設備系を隔離するための高温隔離弁という機器,あと丸2以降にありますように,水素製造システムを接続するための安全基準というソフトの面の研究開発が残ってございます。
 36ページが,その高温隔離弁という機器を試作した結果でございます。この試作製作につきましては,三菱重工業からの協力を得て製作したものでございます。実際に900℃で使える弁座盛金材の開発,HTTRの2分の1スケールのモデル試験を行いまして,実際性能は目標値に対して10分の1以下という,非常に良好なシール性能を得てございます。HTTRにつきましては,既存のこの技術で十分対応できますけれども,将来実用炉みたいな大型化する場合には,この弁の口径の大型化が必要と考えてございます。
 37ページは,水素製造設備を接続するための安全基準の話でございまして,水素製造を接続する場合には,例えば可燃性ガス,有毒ガスの漏えいに対してどう確保するか。あるいは水素製造設備を一般産業で作った場合,水素製造設備で過渡変化が起こった場合,原子炉への影響をどう防止するか,そのような技術課題が重要なわけでございます。
 38ページにつきましては,先ほど申しました水素製造設備に熱過渡が起きても原子炉の運転を安定に維持するための試験を,実際HTTRを使って模擬試験を行おうというものでございまして,熱交換器,水冷却器を使いまして,HTTRの原子炉に外乱を与えまして,それでも原子炉が安定に運転できるというものを実証する試験でございます。
 39ページにつきましては,これも実際に水素製造システムの事故,言ってしまえば伝熱管破損によります二次系の減圧事故を模した試験を行うことによりまして,その模擬に対して原子炉がどういう挙動を通すか,そのような模擬試験を行うものでございます。先ほどの試験と併せまして,プラント解析コードの検証,そして安全基準の策定に反映したいと考えてございます。
 40ページ以降が,実際にHTTR接続試験の概念を示したものでございます。まず,HTTRとISを接続した場合,これは中間熱交換器以降の二次系にISプロセスを接続したプラント図でございまして,これによりまして,HTTRと水素製造を接続するための安全基準を策定する,あるいは水素製造システムの定格運転,異常模擬による設計の妥当性の検証というものを行う予定でございます。
 41ページ, HTTRにガスタービンを接続したものでございまして,中間熱交換器以降の二次系にガスタービンを接続したものでございます。これによりまして,ガスタービンの定格運転とか,あるいは負荷変動,需要に対して負荷幅を自由にコントロールできるとか,そのような試験を行いまして,設計の妥当性を検証しようと考えてございます。
 42ページ,最後でございますけれども,今度はHTTR接続試験でコージェネレーションシステムを想定したものでございます。これは中間熱交換器(IHX)の二次系にガスタービンを設置いたしまして,二次系に設置したIHXを通して,三次系に水素製造システムを接続するというものでございます。これによりまして,コージェネレーションシステムの実証,あるいは発電と水素製造の自由な製造量の変動みたいなコージェネレーションシステムに要求される運転制御等の試験を行いたいと考えてございます。
 以上でございます。

【岡本主査】 どうもありがとうございます。最後のページはよろしいですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 すみません,失礼いたしました。
 それでは,参考資料といたしまして,44ページ目のところに水素製造コストの試算を示してございます。これは以下にちょっと条件が書いてございますけれども,20円台の水素製造コストを行うためにはどうすればいいかというものを試算したものでございます。
 まず,緑で示したものがエネルギー費のものでございまして,これがいわゆる高温ガス炉の建設費・運転費等を含めたものでございます。それが20円ほど。水素1立方メートル当たり20円ほどになってございまして,青色部分が水素のプラントの建設費,そして赤い部分が運転維持費等でございます。現在,資本費が通常の改質プラントの2倍程度と想定してございましてけれども,そういう目標で研究開発を進めれば25円台が可能であると考えてございます。多少ISプラントの建設費が上昇したといたしましても,水素製造コストに占める割合は小さいものですから,何とか20円台が確保できるのではないかというのが,考えている現状でございます。
 以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございました。
 それでは,委員の皆様から御意見,御質問等,よろしくお願いしたいと思います。
 では,亀山主査代理,お願いいたします。

【亀山主査代理】 ISプロセスについては,先ほどの説明で小型の連続試験が実際にもう行われて,30リットルは……。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 200……。

【亀山主査代理】 ガラス製の。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 ああ,ガラス製は30リットルです。

【亀山主査代理】 そうですね。あれが世界に公表されて,やはりISプロセスの優秀性といいますか,可能性を理解して,今度アメリカとドイツとイギリスが,3国が連合軍でISプロセスを連続で運転しようということで予算が付いて,それぞれの国が一つの反応を担当して,アメリカで全部つなげて運転しようとしたという話を聞いていますが,それがうまくいかなかったということなのですが,それに対して,なぜ日本はそれがうまくいくのかを,ちょっとお聞きしたいと思います。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 今,おっしゃいましたのは,実はアメリカとフランスが組んで……。

【亀山主査代理】 フランスですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。技術開発を行ったものでございまして,実際,反応がうまくいきませんでした。そこは,どうもブンゼン反応のところでヨウ素の結合とか,そのようなことが起こったみたいでございます。それらにつきましては,私どもはもうガラス製の容器を使って,どういう組成にするかとか,そのあたりのノウハウを持っていますので,今回特にその面は心配してございません。

【亀山主査代理】 それですと,今度はだから連続的に動かすのは世界で初めてということになりますよね。三つの反応を全部つないで。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 三つの反応をつなぐこと自体につきましては,ガラス製の機器でやってございます。それで今回やるのは,材料がガラス製ではなく,プラント化が可能な金属系統に変わったということ。なおかつ,前はガラスですので,光学的な機器が使えたのですけれども,今回そういうものを使えませんので,先ほど申しましたように,放射線密度計を使った新たな機器等を開発しまして,そういう総合的な試験を行うというのが今回の課題でございます。

【亀山主査代理】 是非それは成功させてほしいと思うと同時に,そこでトラブルが起きないように,急がずじっくりやっていただきたいと思うので。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。安全に気を遣って進めたいと思います。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。では,鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】 41ページですとか42ページに,負荷を変えたシミュレーションの結果でしょうか,これ,出ていますけれども,そもそもこの炉の使い方として,一般的には原子力発電ベースロードで負荷変動はしないというのが今までの考え方だったと思うのですが,これは例えば火力などのように,負荷変動させて使うという前提なのでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 そういう使い方もできると考えてございます。例えば電気と水素を作る場合,夜間は電気が減りますので,その分水素を作っておくとか,そういう多様な運転ができるのがこのシステムの特徴の一つと考えていますので,そういうものをこの接続試験で確認したいと考えております。

【鈴木委員】 はい,分かりました。
 42ページの下の図でちょっと教えていただきたいのですが,原子炉の出力一定で,発電の出力が下げたようなシミュレーションのカーブが出ていますが,そのとき発電効率が一定となるのはどういう計算というか,入熱が一定でアウトプットが変わっているのに,効率が一定というのはどういう意味でしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 この制御の致し方としましては,全体のシステムの圧力を下げるとか,あるいはバイパスを使って流量を下げるとか,ちょっといろいろなことをやりまして,それで圧縮機パージの圧力損失とか,そういうのを防止するような運転の仕方をやっていますので,基本的に発電効率は一定に確保できるとシミュレーション上はなっております。

【岡本主査】 分母が違うのではないの。

【鈴木委員】 そうですね。はい。分かりました。

【岡本主査】 多分,今,発電効率の分母に来ているのが熱エネルギーで,原子炉が分母に来ているわけではないってことですよね。原子炉が分母に来ていたら発電効率は当然変わるので。

【鈴木委員】 ええ,多分そうですね。多分変わる。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 分かりました。

【岡本主査】 熱エネルギーが分母に来ているという。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 そういう意味で言えば,発電に行く熱と水素に行く熱を分けまして,それぞれその熱量を分母にしてやっています。

【鈴木委員】 分母にして出ていると。はい,分かりました。
 すみません,もう一つだけ。19ページ,連続の水素の製造試験装置ですが,カラーで装置の外観写真が載っていますが,これ全部で毎時0.2立方メートルですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 これで毎時0.2立方メートルになってございます。一見大きく見えるのですけれども,これは試験装置ですので,実は各反応に単独で動かして,いろいろな試験ができるような装置を付加していますので,ちょっと大きく見えていますけれども。

【鈴木委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 そのほか。小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 14ページのところで,先ほどこれから実験されると伺っていました硫酸の蒸発分解のところで,炭化ケイ素を用いた材料,この20ページでしたっけ,こういうその設計の基本的な考え方ですけれども,要はSiCですから,熱過度とかでやはり熱衝撃に弱いではないですか。そういう意味で熱過度に対する設計条件とか,それはこういうところの部位ではどの程度想定しておられて,それに対してこの材料的に十分だというようなかなり確証に近いものがあるという理解でよろしいでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 熱過度も基本的には応力ですので,実はこの左下の横軸に有効体積というのがありますけれども,これが実はちょっと応力を含んだパラメータになってございまして,そこで実際熱応力等も考えてございます。それで強度等を推定してやりますので,その熱応力とか,そういうものに対する健全性は確保されてございます。

【小竹委員】 そのとき,プラントでも過流量とか,過少流量になったときの温度変化とか,あるいは急にポンプが止まったとか,そういうことによる熱過度ができるではないですか。そういうことを想定して,成立性があるということですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 そうです。そのとおりでございます。

【小竹委員】 なるほど。ありがとうございました。

【岡本主査】 それでは,梅田委員。

【梅田委員】 2点,ちょっとお伺いしたいのですけれども,一つは32ページのFP沈着低減技術ということですが,元々被覆粒子燃料というのは,FPが出にくいということで,それでループの汚染とか,そういうところが少ないというのがメリットだと思いますけれども,それをこれは更に減らすということでしょうか。もしそうであればなぜこれ,これは非常にメンテナンス上重要だということでしょうか。それとも,とにかくできるだけ減らそうということでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 高温ガス炉の燃料というのは非常に高温で,運転中もFPが出にくいものですけれども,かなり長期間運転していきますとプルトニウムがだんだんできてきて,そこから銀が出てくるんですね。銀は比較的燃料の被覆燃料の部分を透過しやすいような,拡散しやすいような傾向があって,それがこういうようなガスタービンの上に付くという事例があるんですね。そうしますとメンテナンス性が落ちたりするので,そういうことをできるだけ防ぐために,できるだけFPが沈着しにくくなるような技術開発もしておこうということです。

【梅田委員】 分かりました。ただ,その対策として結晶粒を粗大化するとかいうのがありますけれども,こうことをすると逆に強度が落ちるという可能性もあると思うので,その辺もちゃんときっちり押さえていかれるということでよろしいですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 開発につきましては,もちろん強度を確認しつつ適用できるかということを確認していきます。

【梅田委員】 分かりました。
 あともう一つは,39ページなのですが,熱利用系の事故模擬試験ということで,ここには例ということで,こういう二つの故障を重畳したようなシナリオが書かれていますけれども,ほかにもいろいろなシナリオ,例えばこの配管のギロチン破断とか,いろいろな事象が考えられると思いますが,これが一番クリティカルであるとか,そういうふうな体系的な検討はされているのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 これについては通常の安全評価の考え方に従って,当然体系的に評価していきます。基本的には水素製造システムについては,水素製造システムの方の圧力が原子炉側に比べて低くなっていまして,水素等は原子炉側に行かないという基本的な思想に従って設計をすることを考えています。
 これについては,どちらかというと原子炉の安全というよりも,その熱利用施設そのものを一般産業施設として使うことを考えたときに,どういったことを考えたらいいかという方向から想定した事故としての試験をここに記載しています。

【梅田委員】 ということは,原子炉側にとって最も厳しいという事象は,それはそれで考えないといけないと思いますけれども。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 原子炉側にとって一番厳しい事故というのは,やはり一つは水素が爆発して,それによって原子炉の建屋等が損傷するということです。これについては当然そういうことがあってはいけないので,隔離距離を取るというような思想,それを安全基準の中で考えるということになります。
 それは,その前の37ページのところに書いてありすけれども,二つあります。安全基準というのは,まず安全要件が左と右にありまして,その原子炉側の安全を守るのが,可燃性・有毒ガス漏えい時における原子炉の安全確保ということで,これは原子炉施設と水素製造施設を隔離することによって漏えいの影響がない,あるいは爆発性の影響がないということ,これで原子炉側の安全を確保する。
 それから,もう一つ右側にあるのが,今度は水素製造施設そのものを一般産業で作るということです。実際に原子炉の安全に必要なのは左側だけになって,右側は,その化学プラントそのものを一般産業として作るためにはどういう条件があるかということで考えて,まとめているものです。先ほど提案したような試験というのは,右側に記載しております一般産業法での建設の条件を満足するための試験ということになります。

【梅田委員】 分かりました。では,ここにある試験と例とありますけれども,これ以外にも幾つか試験をされるということですか。それとも,これがやはり今のところは最も厳しい条件というふうに考えるのですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今,これはHTTRを使ってやろうとしている試験で,ある程度制限があるので, 一つの例としてこれをやろうと考えています。ほかにもできる試験があればやろうと思いますが,今はこの試験が一番全体を代表できるような試験ではないかと考えています。

【梅田委員】 分かりました。ありがとうございます。

【飯山委員】 二つお伺いしたいのですけれども,一つ目は12ページですか,非接触オンライン計測の技術を開発されたということで,これは製造時にこういった放射線密度計を使ったモニタリングというのでしょうか,そういうシステムを使う製造プロセスになるだろうという理解でよろしいのでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 そのとおりでございます。

【飯山委員】 そうすると,この放射線密度計というのは,要は安い計測機器なのでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 必ずしもそれほど……。

【飯山委員】 値段については,安いものなのでしょうか。

【岡本主査】 X線,レントゲン写真です。

【(日本原子力研究開発機構)】 一般工業機器として市販されているものでございます。

【飯山委員】 分かりました。すみませんでした。

【岡本主査】 ガンマ線を使うのですけれどもね,レントゲン写真は。

【飯山委員】 レントゲン写真と同じようなもので,よく分かりました。ありがとうございます。
 それとあと,20ページにセラミックスの設計方針ということで,高圧ガス保安法の特認のための準備をされているということですけれども,これの見通しはいかがでしょうか。要は我々も高圧ガス保安法を水素容器でいろいろ対応するのですけれども,いろいろこういう設計の根幹に触れるようなところのデータというものは,非常に多く取らないといけないのかなという認識もあります。この辺りの困難度とか見通しというのがあれば,教えてください。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 この特認につきましては,実は2年ほど前から東京の高圧ガス保安協会と内々に話を進めておりまして,こういう設計の基本的な考え方で,ある程度我々もデータを取っていますので,それに対してデータを示していて,基本的な理解は頂いております。あとは実際設計して作るという段階になりますので,その作る段階で更に附属的なデータ追加は要求されるかもしれませんけれども,我々としてはもう基本的な見通しはできていると考えております。

【飯山委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 では,北川委員。

【北川委員】 すみません。ちょっと2点教えていただきたいのですけれども,最後の御説明でコストのお話がありましたが,この算定をするときに,発電される電気は全てこれに使われるという仮定ですか。それとも余った電気は何かどこかに売る計算になっているのですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 これは全て中で使用するという。

【北川委員】 電力は全てここで消費されるということですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【北川委員】 もう一点ですけれども,水素製造技術で,これから工業化,実用化とかスケールアップをされていく,研究開発が進むというお話でしたけれども,既に実験室規模でできている機器を単純に大きくするようなものと,数を増やして能力を上げようとするものと,両方あると思いますが,その大型化をすることを目指しておられていて,単純に小型のものを大型にするのが難しいというような技術課題は,どういうところがあるのでしょうか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 一つは硫酸分解のところだと考えてございます。基本的にはこれは反応管のモジュール化という形で対応しようと思っていますけれども,やはりどうしても余り細い管では対応できませんので,何とか大型化したいと考えてございます。現状ではまだちょっと設備等の問題はありますけれども,メーカーに聞いたところでは,長さ4mまでは何かできそうだという話は伺っていますので,そのあたりが一つの尺度になるかなと考えております。

【北川委員】 ありがとうございました。

【湯原委員】 質問していて,なかなか質問が難しいと思いますけれども,最後の44ページに,「プラントの建設費は同規模のナフサ改質のプラントの2倍とする」と書いてありますが,普通こういうスモールスケールのものを,30倍,10倍,100倍などにしていく際には,ケミカルプラントの場合,スケールアップ則というのがあります。そうすると,今の場合ですとHTTRの値段は大体分かっているわけですね。それから,今,作ってきたISプラントが,今の規模だったら分かるわけですから,そういうものを10倍,100倍とスケールアップしていったときに,いわゆる化学プラントで言うところのスケールアップ則に従ったら建設コストが幾らになるのかとか,そんな検討が必要だと思います。いきなりナフサプラントの2倍と言われても,なかなか評価できないのではないかと思います。
 だから多分,海外でもプロセスヒートをいろいろなケミカルプラントに与える場合の試算をやっていると思いますが,そんなやり方でやらないと,評価に困るという感じですね。
 その上でお聞きしたいのですが,25.4円という数字が出てきていますよね。これは目標値でしょうか。今のナフサプラントを2倍とすれば,25.4円ぐらいでできるということですか。

【稲垣副センター長(日本原子力研究開発機構)】 目標値と考えてございます。

【湯原委員】 もう一点だけ,私は強度屋という面もありますので申し上げますが,やはりSiCのセラミックスで,これは40気圧でしょうか,圧力容器900℃というのは,やさしくないということです。それで高圧ガス保安協会の見解がどうかは分かりませんが,プロの方々でも,なかなかこれは慎重にやっていって,うまくくぐり抜ける話だろうなと,そんな表現でこのところはコメントしておきたいと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。個人的な印象は,インターフェースのところが一番弱そうだなと思っているので,湯原先生の御指摘のところあたりも含めてしっかり見ていかなければいけないのかなという気がしています。
 私からもちょっとあるのですけれども,最初に湯原先生の方からコメントがあったのですけれども,これ,課題がすぐにでも解決できそうな課題と,ちょっとこれはという課題と,難しさが物すごく山,谷,下手すると100倍ぐらい難しさが違うようなところがありますよね。
 ガスタービンあたりはある意味もう今の技術の延長で,やろうと思えばすぐできるだろうと。ところがISプロセスは,今,200リットルですか。それを10万倍ぐらいでかくしないといけないと。その辺りのスケールアップの効果は非常にいろいろまだ課題は多いだろうなと思っています。ソフトウェアの部分については,比較的まだいろいろなことが考えられるのかなと思いますけれども,ハード的なところはやはりどうしても最後まで残るところも幾つかあるような気がしています。
 そういう意味で,恐らくこれからロードマップに落とし込んでいって,本日,最初に九つのプラントが出てきて,この中では二つのプラントで,今,御説明いただきましたけれども,その中でもやはりハードルの高さ低さ,それから見通しのありなし,それから実効性,ある意味コストに対するベネフィットみたいな話になろうかと思いますけれども,その二つのプラントでも三つでもよろしいですけれども,それらについて,ロードマップとしてちゃんと定量的に評価できるようなデータを,本日,ある程度御紹介,定性的ですけれども,委員の皆様はそこら辺大体感覚的には分かったかなという気はするのですけれども,ロードマップを作る上では多分そのあたりの部分が一番重要になってくるのかなと思っています。
 あるべき姿と,それから実際できるということと,何年後,10年後を目標にするのか,3年後を目標にするのか,恐らくそのあたりでも大分変わってくるような気がいたしますので,そのあたりを是非しっかりまとめていただけるといいなと思った次第です。
 何かコメントに対して,回答ありますか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 冒頭でも言わせていただきましたが,原子炉の方の経済性の評価については本日まだ御説明できていないので,それについては次回,ちょっと文部科学省さんとも相談して,次回,時間を決めていただいて説明します。この水素のコストについてのエネルギー比というのは,その原子炉のコストから出ているので,そこをちょっと説明させていただかないと,なかなかこれが正しいのかどうかというのは御理解いただけないのかなと思っています。
 ただ,ここで言いたいのは,エネルギーコストがかなり多くて,水素側のプラントの費用というのは意外に少ないというような評価になっているというのは,定性的には御理解していただいけるのではないかと思います。

【湯原委員】 この場合のエネルギーコストというのは,何のエネルギーでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 原子炉からの熱のコスト。

【湯原委員】 原子炉のHTTRが与える熱のコストという意味ですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 そうですね。実用炉が与える熱のコストです。

【湯原委員】 先ほどの主査のことに少しコメントしたいのですが,こういうふうにプラントシステムを頭に描いて,各要素について1ジャンプなのか,2ジャンプなのか,3ジャンプなのかということだと思うのですね。そういうことを見ていくというのは私も大賛成で,そういうふうにして少し細かく見た方がいいのではないかと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。本日,提示いただいた九つのプラント中には,0ジャンプもあれば,10ジャンプぐらいあるやつも入っていますので,そのあたりを含めてロードマップの中に,多分まず1ジャンプで行けそうなのは幾つか,先生方も頭の中にあると思っていますので,そういうものを踏まえつつ,整理をして最終的なアウトプットにまとめたいなと思っている次第でございます。どうも御注意,ありがとうございました。
 そのほか,よろしいでしょうか。

【小竹委員】 次回,経済性の話が出るということで,先ほどの水素製造のコスト評価における考え方ですけれども,究極,ここに書いてありますように設計費がゼロになるくらいのいわゆる習熟した段階,いわゆる標準化した段階ではこれぐらいになるだろうというのは理解できます。やはり開発で一番難しいのは初号機コスト,あるいはこの新しい材料で新しい構造を作っていくときに,どれぐらいの作業量,コストが掛かるかというところが非常に厄介でして,ましてや先ほど岡本先生もおっしゃいましたけれども,HTTRの何十倍,何百倍ぐらいの大きなものを作っていかなくてはいけない。そういうことに対して,要素技術によって難しさのでこぼこがいろいろあると思うのですね。
 ですから,少なくとも全部見ることはそう簡単に短時間でできるものではないですけれども,先ほどのSiCの加工方法からどういうふうにつなげていくかとか,いろいろハードルはあると思うのですね。やはり高温ガス炉に特徴的な部分や主要なところは大まかに見て,やはりここはこれぐらいの不確かさを考慮するとか,そういうやり方でないとまずいと思います。ベストバリューというか,成熟した段階での値を目標値として提示して,経済性を論ずるのはいかがなものかなという気がしています。
 ですから,是非次回,御説明いただくときには,そういう幅のところでどういうところが重要な点かということをクリアにしていただいて,御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。特に水素の方は多分不確かさが大きいと思うので,ちょっと算定の仕方が難しいですけれども,そういうのをベースに考えていこうと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。御注意,ありがとうございました。今の部分は恐らくメリットの部分を明確化するということのときのために,可能な限り同じ土俵でメリットが比較できるということが重要かなということだと思います。
 そういう意味だと,メリットはコストだけではなくて,例えば燃焼度を上げるとかいうことになると,廃棄物量の問題や安全性ですね。やはり小さい方がそれなりに冷えやすいというような問題もあるでしょうし,このあたり,最初のときに申し上げましたけれども,この九つのプラントの表を是非充実していただいて,この委員会の先生方に「こんなものだね」というふうに合意を頂ければ,それがロードマップに焼き直すときのバックデータとして,例えば一般の方々を含めて説明するときに非常に分かりやすいものができるのではないかなと思っています。多分,この資料を一般の方々に説明しても何のこっちゃ分からないので,これを一段焼き直した形で,ロードマップに反映する一つ前の段階という形に是非作っていただけると有り難いなと思っています。
 多分そこが,我々のこの委員会の一つのアウトプットで,それをベースにロードマップが作られていくという認識でありすけれども,よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。そのほか,何か,御発言はよろしいですか。
 はい,ありがとうございました。それでは,本日,いろいろ御意見いただきましたが,今回と同様に,また最初に御指摘事項への回答を含めて,次の議題に進ませていただくような形を取らせていいただければと思います。
 以上で,本日予定した議題は終了となります。そのほかに御意見,連絡事項等ありますか。なければ,事務局からお願いします。

【笹川課長補佐】 今回の会議の議事録案につきましても,でき次第,委員の皆様にメールにて御相談をさせていただきます。
 以上でございます。

【岡本主査】 それでは,第3回高温ガス炉技術研究開発作業部会を終了いたします。
 どうも御協力ありがとうございました。

 

 

── 了 ──

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