原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成26年7月11日(金曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3階 2特別会議室

3.議題

  1. 高温ガス炉の研究開発に係る論点について
  2. 高温ガス炉の特性に関する具体的な研究開発状況と今後の課題について
  3. その他

4.出席者

委員

岡本主査,亀山主査代理,飯山委員,梅田委員,北川委員,國本委員,小竹委員,鈴木委員,湯原委員,米田委員

文部科学省

田中研究開発局長,田中研究開発局審議官,増子原子力課長,石川原子力課課長補佐,笹川原子力課課長補佐

オブザーバー

香山経済産業省原子力政策課戦略企画調整官,國富日本原子力研究開発機構原子力水素・熱利用研究センター長

5.議事録

【岡本主査】 それでは,定刻になりましたので,ただいまから第2回高温ガス炉技術研究開発作業部会を開催いたします。
 本日は,御多忙にも関わらず御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 それでは,本日の議事に入ります。本日の議題は,お手元の議事次第に書かれているとおり,高温ガス炉の研究開発に係る論点について,高温ガス炉の特性に関する具体的な研究開発状況と今後の課題についてであります。
 お手元に今後のスケジュール,これは前回の資料の抜粋でございますけれども,予定が書かれてございますが,ここにありますように,第2回,本日がこの高温ガス炉の特性の話。それから次回,水素製造などの熱利用の話。それから,第4回が国際状況を踏まえた方向性ロードマップの議論につなげるために,本日は,まずはその特性に関する具体的な研究開発の状況と,今後の課題という題目で議論を,是非していただきたいというふうに思っております。
 それでは,最初に事務局より出欠と配付資料の確認のほどをよろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 それでは私の方から,出欠と配付資料の確認をさせていただきます。
 本日は伊藤委員が御欠席ということで,そのほか10名の委員の先生方に出席いただいております。
 配付資料でございますが,本日は,お手元の議事次第にございますように,資料1といたしまして,高温ガス炉技術開発に係る論点というものと,資料2といたしまして,高温ガス炉技術固有の技術について,研究開発の現状と今後の課題についてということで用意させていただいております。もし不足等ございましたら,途中でも事務局までおっしゃっていただければと思います。
 以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。

議題(1) 高温ガス炉の研究開発に係る論点について

【岡本主査】 それでは早速ですが,本日の議題に入りたいと思います。
 この資料に従いまして御説明いただいた後,質疑,議論を行わせていただきたいと思います。
 それでは,まず初めに議題1「高温ガス炉技術の研究開発に係る論点」について,事務局より説明をよろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 それでは,資料1に基づきまして説明させていただきたいと思います。
 前回の第1回の作業部会で,事務局の案として論点などを一旦整理させていただいたものを資料として配付させていただいておりましたが,当日の議論を踏まえまして,少し論点として再整理が必要であろうということで,今回,改めてこの高温ガス炉技術開発に係る論点ということで整理をさせていただきました。
 まず,前回の部会でもお話がございましたように,高温ガス炉について,大きく二つ,おおよそ出口温度として750℃から850℃のところの,技術的には比較的短期での実用化が可能である炉型と,950℃程度の高温の熱利用を視野に入れた炉型ということで,一つの切り口としては,こういった二つの炉型について,それぞれの研究開発の方向性について御議論いただくのがよろしいのではないかということで,前回,御意見を頂いておりますので,最初の考え方として整理させていただいております。
 それでは,大きくまず1点目,「国民の信頼に応える技術開発」というところでは,前回の資料でも書かせていただいておりますけれども,例えば以下のような世界的な原子力安全に貢献する研究開発を推進することが必要ではないかというところで,一つ目の丸として,安全基準分野における我が国主導の国際標準の確立といったような観点。二つ目といたしまして,想定し得る事故時の対応を含め,いわゆる「固有の安全性」の実証。熱利用や多重事故,地震等の自然災害等への対応などを考慮した総合的な安全性の検証。三つ目として,使用済燃料の低減など環境負荷低減に貢献する原子炉技術の高度化。四つ目として,水素製造など熱利用の高度化といったようなことを論点として挙げさせていただいております。
 2点目といたしまして,「将来的な実用化の検討に向けた論点」ということで下線を引かせていただいておりますが,将来的な社会的・経済的有用性について検討を行いつつ,費用分担の在り方も含め,研究開発段階からの産業界との連携,実用段階での産業界への技術移転等も見据えた研究開発の方向性を示すロードマップを構築するべきではないかということで,次のページまで含めて3点ほど論点を挙げさせていただいております。一つ目が,実用化に当たっては,廃棄物処理や立地も含めた実用炉の成立性についての技術的・社会的な観点からの検証が必要ではないか。また二つ目として,実用化に当たっては,ガス炉の出口温度や出力等を考慮した最適な機能について検証が必要ではないか。また最後ですけれども,各ステークホルダーの意見を踏まえつつ,研究開発を進めることが必要ではないかということで挙げさせていただいております。
 3点目「国際展開の在り方,国際競争力の確保」というところでは,四つほど論点として挙げさせていただいております。一つ目のところが,将来的な技術の国際展開も見据えて,各国の動向を把握しつつ,我が国の技術の国際標準化に向けた取組が必要ではないかということ。二つ目として,アメリカ等の高温ガス炉の実証経験を持つ国との国際協力でありますとか,相手国の技術レベルを考慮しつつ戦略的に進めるべきではないかということ。三つ目として,カザフスタン等の新規導入国等への将来的な国際展開に当たっては,相手国における技術的・社会的な観点からどのような機能が必要かというような検討が必要ではないかということ。それと最後に原子力の安全性向上を進める人材育成の推進という観点も重要ではないかということで,前回の御議論いただいた内容も含めまして,改めて論点ということで整理をさせていただきました。
 以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。ただいまの事務局からの説明について,委員の皆様から御質問,御意見があればよろしくお願いいたします。
 基本的に,前回いろいろ議論していただいた内容を事務局の方で取りまとめていただいたということで,基本的にはほぼ反映されていると思いますが,よろしいですか。
 小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 前回もちょっと気になったのですが,実用化というときに,ここでおっしゃっているのは,いわゆる発電炉としての実用化なのか,あるいは多目的利用,水素製造とか,そういう熱利用という観点の実用化なのか。あるいは,その辺はまだ漠としたままなのか。どうも実用化という意味合いが,最後の2ページ目の冒頭で,軽水炉が主流だった中で高温ガス炉を利用していくというふうに書いてられますと,発電炉として考えられているように見えるんですけど,ちょっとその辺を明確にされるのか,あるいはそれも論点の中に入るのか,それはいかがでしょうか。

【増子原子力課長】 基本的には,発電炉としての活用については,論点として入れていただくのは当然ですけれども,将来の出口として,750℃を目指すか950℃を目指すかというのはかなり違ってくると思います。基本的には,950℃を目指すなら,熱利用と,発電のハイブリッドな形になろうかと思います。あるいは,750℃ぐらいでまずは技術を確立して実用化を目指すということになれば,かなり発電というところを意識したことにもなると思うので,その辺についてこれから御議論いただいて,ロードマップの整理をしていただけたらというふうに思っております。

【小竹委員】 そうしますと,前回もちょっとあったのですが,ここの中で論点に入っていますけれども,いわゆる出力規模ですね。普通,これまで軽水炉も高速炉も基本的には大型化という方向で考えられていましたけれど,この前の議論でも,例えば電気出力30万kWeぐらいを念頭にというイメージで実用化を考えているという理解でよろしいですか。

【増子原子力課長】 基本的に,先般もお話があったように,固有の安全性を維持するということの限界的な出力というのが30万kWeと言われていますので,実用化を目指す上では,30万kWeというのをターゲットに置きながら,どういうような活用ができるかというのを考えていくことになろうかと思います。

【小竹委員】 分かりました。

【岡本主査】 ありがとうございます。そのほか,よろしいですか。
 米田委員,お願いします。

【米田委員】 もし発電炉での今の議論となりますと,経済性のことは議論しなくてよろしいのでございましょうか。

【増子原子力課長】 次回以降,そういうコスト的な面について,日本原子力研究開発機構,メーカーとも過去にそういう算定をしたこともありますので,そういうものも開示しながら御議論いただくという機会があると思っております。

【小竹委員】 ちなみに,30万kWeで発電炉の経済性を論じられるときに,30万kWeの原子炉の,いわゆる技術的成立性について,ざくっとしたものかもしれませんけれども,耐震性も含めた,そこら辺の適応性というのも同時に提示していただけると理解してよろしいですか。

【増子原子力課長】 はい。それで大丈夫です。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【田中局長】 当然,議論の対象になると理解しています。

【小竹委員】 分かりました。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 我々も,以前,経済性の検討もしていますし,それから技術的な成立性も検討していますので,それについては次回にでも,もちろん提示できると思います。

【岡本主査】 よろしいでしょうか。
 それでは,いろいろ御意見を頂きましたが,基本的にはこの論点,これをバージョンアップしつつ,最終的なゴールに向かって議論をしていければよろしいかと思います。若干,中身についてはいろいろコメントを頂きましたが,この方向で進めさせていただきたいと思います。

議題(2) 高温ガス炉の特性に関する具体的な研究開発状況と今後の課題について

【岡本主査】 それでは,本日のメーンの議題となりますが,議題2「高温ガス炉の特性に関する具体的な研究開発状況と今後の課題について」であります。
 それでは,日本原子力研究開発機構より説明をお願いしたいのですが,下に目次がありますが,6項目と多くの議題がございますので,まずは1から4までについて説明いただき,そこで議論をさせていただいた後,5番,6番というふうにさせていただければと思います。
 それでは,まず1から4についての説明をよろしくお願いいたします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それでは,最初に1から4までの御説明をさせていただきます。
 めくっていただきまして,3ページのところですが,燃料に関する研究開発という表が示してございます。
 まず,HTTRを建設するために燃料についてはかなり研究開発を実施してきてまいりました。例えば燃料の製造技術であるとか燃料の照射性能の把握ということで,HTTRの場合は燃焼度が少し低めで33GWd/tまでの照射性能の把握をしています。
 あと,燃料の特性のうちで,核分裂生成物の保持性能や燃料被覆破損機構の研究を実施してきています。それに加えて,HTTRを建設するために必要ということで,燃料設計基準や燃料の検査基準等の策定についても実施してきております。
 現在,高温ガス炉技術の完成に向けた研究開発を実施しておりまして,現在ではHTTRによる運転によりまして燃料健全性を実証しているという最中でございます。これが終了した後には,炉心から取り出して燃料の照射後試験を行い,その燃料の状況を確認する。その結果,商用製造技術の確立につなげる予定です。
 あと,燃料が,HTTRの場合ですと33GWd/tと多少低めですが,実際,実用炉ですと100GWd/tであるとか,更に大きいところを目指しておりますので,高燃焼度化に関する照射試験を実施していく予定です。
 それから,破損機構については引き続き研究を続けるということと,除熱性能を向上させた燃料要素の開発を実用炉に向けて実施する予定でございます。これについては照射試験込みで考えておりまして,最終的には原子炉の高出力密度化を達成する方向にしたいと考えております。
 あと,設計基準については,HTTR用はできているのですが,まだ実用炉向けには完全には完成していないので,HTTRの基準をベースに,その設計基準案を作り,規制庁により評価を頂く方向でございます。
 それぞれの研究について簡単に紹介いたしますと,まず燃料の製造技術については,SiC三重被覆(TRISO)の製造技術を原子燃料工業株式会社さんと共同で行ってまいりまして,既にHTTRの初装荷燃料と第2次燃料の製造を行っておりまして,初期の破損率が少ない非常にいい燃料を製造する技術を確立しております。
 それから照射性能については,HTTRを建設する前に,日本原子力研究開発機構にあります材料試験炉のJMTR等を用いて照射試験を行っておりまして,既に900個近くのコンパクトを実施しています。これでも非常に高い燃焼度,70GWd/t,設計の2倍ぐらいのところまでいっていまして,それでも燃料が健全で安定であるということを確認しております。
 次にまいりまして,燃料特性でございますけれども,核分裂生成物の保持性能の把握ということで,JMTRで照射した燃料を加熱炉に入れまして,それが何℃ぐらいで燃料が破損してくるかという試験をやっております。その図が真ん中に描いてある図でありまして,こちらに示しますように,1600℃ぐらいでは完全に安定で破損はしない。その後,2200℃ぐらいから少しずつ破損が始まるということで,1600℃,1800℃ぐらいまでは全く破損が起こらない燃料であるということを確認しています。
 それから,次のページですが燃料被覆破損機構の研究ということでは,破損のメカニズムとして,燃料の真ん中の核が移動して,その周りの被覆層を損傷するような機構や,あるいはフィッション・プロダクトとして出るパラジウム等が,そのSiCの被覆層に損傷を与えるというような機構がありますので,これについても評価をしております。HTTR用燃料については,この辺は確立しておりますので,今後,高燃焼度燃料のための試験を実施していく予定です。
 あと,次の照射後試験では,これはHTTRから取り出した試験を使いまして,その健全性等を確認していくという試験を行います。
 それから,次の9ページの高燃焼度化でありますけれども,これについては,今,高燃焼度燃料についての照射試験を国際科学技術センターの枠組みでカザフスタンにて実施しています。これについては,燃焼度100GWd/tぐらいまで照射を実施する予定です。
 これだけでは少し不十分ですので,将来的にはJMTRを使って最高160GWd/tぐらいまでの燃料照射を行って,その健全性を確認する予定であります。
 それから,次に10ページで除熱性向上の燃料要素の開発ですが, HTTRの場合は,燃料コンパクトがスリーブと言われる黒鉛のさやの中に入っています。右の図に示しますように,スリーブと燃料コンパクトの間に非常に小さなギャップができますが,そこのところの温度差が100℃ということで非常に高くなります。ここのスリーブがないと,その分,燃料温度が低くなるということで,燃料の高温での健全性が高くなります。このような新たな除熱性能向上を目指した燃料要素の開発検討にも,今,着手している状況です。
 次に,黒鉛に関する研究開発ですが,これもHTTRのための研究開発ということで,製造技術の開発と,それから構造設計方針の策定のところまでを終了しています。これを用いてHTTRの黒鉛を作成しています。
 現在は,更に実用炉の条件下での黒鉛特性を評価することを目的とし,新たな照射試験等を実施している状況です。
 最終的には,高温ガス炉における黒鉛構造の民間規格化ということで,実用炉用の民間規格を策定していく予定です。
 その次の13ページ,製造技術の開発,構造設計方針の策定ですが,製造技術については,東洋炭素さんの方で,等方性を持った黒鉛を静水圧成形法により製造する技術を確立しています。これについては,日本の方が,海外で製造した黒鉛に比べまして2倍ほど強い強度を得ているという結果を得ています。
 それから,あと黒鉛の構造設計方針の策定では,その黒鉛を作るための規格を既に策定しております。
 次に参りまして,検査基準の策定や供用期間中の検査ですが,原子炉の運転中にときどき黒鉛を取り出して試験をする供用中検査の手法の開発も行っています。
 それから,実用炉の規格の原案の話ですが,黒鉛は,照射により黒鉛の寸法が変化します。照射によって一旦縮み,また膨張しますので,黒鉛の寸法変化に関する規格,あるいは,照射によって熱伝導率が変化するということで,熱伝導率の変化に関する評価を行って構造規格の原案などの策定を済ましております。
 次の16ページの黒鉛特性評価,供用期間中検査においては,更に実用炉の条件ということで,中性子の照射量が最大2.8×10の26乗n/m2(ニュートロン平方メートル)になるぐらいのところまでのデータを取得して,実用炉用の黒鉛の健全性を確認していく予定でございます。
 それから,次に金属・高温機器に関する研究開発ですけれども,これもHTTRまでの研究開発で,高温用の金属材料ハステロイXRの開発を行っております。
 そのほかに,原子炉圧力容器材料の2 1/4Cr-1Mo鋼のデータベースの確立等を済ませております。
 そのほかの材料につきましては,特に研究課題はないということで,HTTRを建設することによりまして高温金属の開発はほぼ終了している段階であります。
 ハステロイXRについては,現在,HTTRの中にサーベイランス試験片が入っておりまして,これをいずれは取り出して,運転中の健全性を確認していくということが残された課題であります。
 ハステロイXRについては,次の19ページに示しますように,米国で開発された基本合金系のハステロイXについて,一部,その合金成分等を最適化することで,酸化に対して強い,かつ高温でのクリープ強度も強いという材料を,既に開発を済ましています。
 それから,次に炉工学に関する研究開発でありますけれども,これについては,HTTRのための研究開発ということで,この設計に必要な核設計計算コードを開発しています。この中では,特に高温ガス炉の場合ですと,コンパクトの中に被覆燃料粒子が入ることにより,均質性が二重になっていると言われておりまして,このような二重非均質性を取り扱うコードの開発を済ませています。これについてはVHTRCという臨界実験装置を用いまして,核設計計算の精度を評価しております。
 これによりまして,核設計計算コードの開発をしまして,更にその手法の改良,核データの検証等を,HTTR等を用いた試験結果を用いまして,今,実施しているところです。ここについては,ほぼ終了しています。
 あと,燃焼を考慮した核設計計算の手法の精度評価については,現在,実施をしているというところです。
 それで,22ページ,核設計計算コードの開発の手法ですけれども,これについては,HTTRを建設する前にVHTRCという臨界実験装置を作りまして,この実験装置の実験結果と解析結果の比較により,ここに示しておりますような核計算を行うに重要な実効倍率や制御棒反応度価値等のパラメータが,その開発した核設計計算手法によって,十分な精度をもって評価できるということを確認しております。
 次に,23ページ,核データの検証ということで,この中でもHTTRでの実験の結果を使いまして,一部の核データの検証を済ませております。
 それから,最後になりますけれども,今後やるという話では,燃焼を考慮した核設計計算手法の精度の評価ということで,運転中の制御棒の位置を確認することによりまして,燃焼期間中における核設計の精度が十分であるということを,今後,評価していく予定でございます。
 1から4までの説明は以上です。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,ただいまの1から4番までに対しまして,委員の皆様から御質問,御意見をお願いしたいと思います。
 亀山主査代理,お願いします。

【亀山主査代理】 はい。3ページ目のところに燃料に関する研究開発の流れが書いてありますが,平成2年から現在までが書かれていますが。その先がちょっと見えないのですが,これは平成何年ぐらいまでの話でしょうかというのが一つと,燃料の製造技術のところで,実際の工程の中で発生する廃棄物といいますか,歩留りと,その製造の中で廃棄する物質の量がどれぐらいあるのかというあたりのお話を,伺えたらと思います。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 燃料については,高燃焼度化について,特に製造技術にブレークスルーが必要というわけではなくて,基本的には,燃料核を少し小さめにして被覆層を厚くするようなことで高燃焼度の燃料ができるということです。今後は,高燃焼度までの照射をして,それで健全性を確認していくということになります。
 あとは,照射炉としてJMTRをどれぐらい使えるかとか,予算の問題もあるのですが,基本的には,ここの開発というのは,10年あれば十分,高燃焼度の燃料のデータは取ることができます。実際に照射で炉の中に入っている期間としては, 3年ぐらい入れておけば十分なデータを取れることになります。
 それから,燃料の歩留りですかね。

【亀山主査代理】 はい。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それについては。

【北川委員】 私の方からお答えさせていただきます。
 4ページに原子燃料工業という会社名を成果のところに書いていただいておりますけれども,日本原子力研究開発機構さんと一緒に研究開発を進めてきまして,実際,HTTRの燃料を作らせていただいたのは我々ということになります。
 ただ,このHTTRの燃料というのは,初装荷燃料,それからそれの取替え用としての2次燃料というのを2回製造しているのですが,その2回目の製造が,もう既に10数年前に終わっておりまして,それ以降は,全く商用規模では作っておりませんので,それ以降は商業規模での生産の経験がないということになります。
 その当時の,どれぐらいの歩留りで作っていたかという数字につきましては,その当時,この部署におりませんでしたので,本日,応援に来てもらっている本田の方から,数字を覚えていれば御説明ください。

【原子燃料工業(本田)】 すいません,代わりに御説明します。
 90%以上の歩留りを確保しております。

【北川委員】 以上でございます。

【亀山主査代理】 そうしますと,100%ではないので,製造工程で出てくる物質については,実際には貯蔵でやるのか,何か再利用が可能なのか。

【北川委員】 作り損ねた燃料は焙焼しまして溶かしまして,再利用することができます。

【岡本主査】 前半の件で,「10年」と言われたのは,この160GWd/tだと思うのですけれども,例えばこのカザフスタンの100GWd/tあたりが出てくるのはいつぐらいなのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 これは,今,実施していまして,来年中に結果が出ます。

【岡本主査】 ということは,ここの部分として,実用化が160GWd/tまでいけば非常によろしいのだとは思いますけれども,そこまで照射しないのであれば,ここの部分がさほど大きなハードルになっているということではないという理解でよろしいでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。ちょっと先ほど申し上げましたように,技術的に何か問題があるということではなくて,あとは照射だけなので。照射をすぐにやり出せば,本当に,160GWd/tまででも3年ぐらいでできるというふうには思っています。

【岡本主査】 小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 二つございます。一つは,燃焼度の考え方ですけど,ここでおっしゃっている燃焼度というのは,いわゆる炉心内での照射ピークの位置あるいはピーク・燃料体に対してだと思われるのですが,このガス炉の場合,大体,炉心燃料の取出平均という観点で言うと,炉心取り出し平均燃焼度と燃料体のピーク燃焼度の間にどれぐらい差が出るのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 ここで言っている160GWd/tというのが大体ピークで,そこまでやろうということで書いています。平均的には120GWd/tぐらいが。

【小竹委員】 ピーク燃料体の160GWd/tは,炉心取り出し平均でから120GWd/tぐらいまでになる,そういうイメージですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい,そうです。

【小竹委員】 分かりました。
 もう一つ,金属材料,高温機器に関する研究開発のところで,ハステロイXRの話がございましたけれども,こういう新材料を使うことであれば,炉内構造とか冷却系のところの溶接部等々に,熱負荷の厳しいところに,内部に熱遮蔽構造を設ける必要はない構造が可能だという考えなのでしょうか。こういうことを聞きますのは,熱遮蔽構造がルースパーツの原因になっているということが,過去の原子炉で指摘されていたと思うのですけれども,こういうハステロイXRを使うことで,熱遮蔽構造を排除できて,ルースパーツの発生可能性を低減できるというふうに理解していいのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 ハステロイXRについては,例えば1次系と2次系の間の伝熱管に使っているのですけれども,1次系は,直接,950℃のヘリウムガスが出てきて,2次系が最大905℃ぐらいになります。そこのところには何も特別に材料があるというわけではなくて,直接的に,その高温雰囲気中にさらされているという状況です。

【小竹委員】 原子炉容器の中,炉心燃料の周りとか,あるいはノズル部分のところとかに熱遮蔽構造を設ける必要はないという構造が実現できるということですね。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい,そうですね。原子炉の中では非常に高温ですので,そういうハステロイXRは耐圧部材なんかには使っておらず,中間熱交換器の部分だけで使っていいます。

【小竹委員】 ということは,原子炉容器の中では,やはり熱遮蔽構造は必要になってくるということですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 そこは全部黒鉛でできています。そういったところの非常に高温のところには金属は使えないので。

【小竹委員】 使えないと。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【小竹委員】 分かりました。

【岡本主査】 梅田委員,お願いします。

【梅田委員】 10ページの除熱性能向上燃料要素の開発ということで,このスリーブをなくせばギャップがなくなって温度は下げられることによって,出力密度を上げられるということですけれども,出力密度が上がったら,逆に固有の安全性といいますか,先ほど30MWtが上限ぐらいじゃないかということですけど,それが更に上げられるのか,それともほかの安全性の裕度が上がるのか,あるいはまた別の意味で経済性が上がるのか,その辺の狙いを教えていただけますか。もう一つは,それができるのであれば,開発期間はどれぐらい掛かるのか,その辺も教えていただけますか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 ここのギャップを排除した燃料にしますと,基本的に言いますと,燃料の温度が低くなります。そうしますと,例えば事故時でも1600℃を超えないという温度条件を設定していますが,それに対して余裕が出てくるので,高出力密度化ができてくるということになります。
 ですから,高出力化をしても,その燃料の温度の条件が変わらないので,固有の安全性を十分担保することができるというのが,この新しい燃料の特徴です。
 これについては,まだ作っているわけではないので,その設計の検討をして,それから装置を作って照射をするということが必要になってきます。これについても,最大では10年ぐらい掛かると思います。ただ,これについては,初期の原子炉においてこの燃料を使わず,例えばスリーブを使ったHTTR型の燃料でも持っていけますので,高出力化等を目指したときには,このような燃料の開発が必要だと考えています。

【梅田委員】 分かりました。非常に面白いといいますか期待できる内容かと思うのですけど,この2.5から6という出力密度ですけど,これが要するに出力を3倍にできるということですか。そこまではいかないのですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 2.5というのはHTTRの出力密度で,それの3倍ぐらい,この6ぐらいまではいけると考えています。設計的には,これでも十分,固有の安全性を守れることは明らかにしています。

【梅田委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 飯山委員,お願いします。

【飯山委員】 教えていただきたいのですが,7ページに,「破損」という言葉が載っております。基本的に,この燃料の破損が今の最大の課題で,あとは,黒鉛とかハステロイ材など,そういうものについての耐久についてはほとんど問題がないという見通しを持っておられるという理解でよろしいのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 まず,黒鉛については,先ほどちょっと説明した構造設計基準,その指針に基づいて設計をしていまして,その設計の範囲内で設計をする限りは破損しないと考えております。もちろん,そのための材料データ等も取得しておりますので,そこは,多分,間違いないと思います。金属についても,同じです。
 燃料については,セラミックスで割れるものですから,完全に100%破損ゼロとはできず,実験的に少しずつ,その破損メカニズムを検討して,どれぐらい破損するかということを研究で明らかにしていくということを,今,実施しているところです。

【飯山委員】 そうしますと,7ページに設計式とか設計曲線とか,既に大分御検討されたものが提示されておりますが,これは下記の理解でよろしいのでしょうか。つまり,今までの検討により,この範囲で設計をすれば安全委使用できるのではないかという設計式や設計曲線が出てきたので,それを確認するために,今,照射試験をやられているという理解でよろしいでしょうか。
 別の言葉でいえば,今の見通しでは,3倍とかの高い燃焼になると,もう少し,今,作られている燃料よりは小型にして,構造を改善しないといけないのではないかということは分かっているけれども,今あるもので,設計するのであれば,このようにやればいいという推定を出されているものを,今,検証をしているところだと,そういう理解でよろしいのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 そのとおりです。特に,この一つの燃料が破損するメカニズムで一番大きいのは,この被覆層の中で核分裂生成物ができて,中でガスが発生して内圧が上がったために破損するというのが一つのメカニズムになっています。それを防止するために被覆層を厚くするということを推定して,そういう燃料を作って,それの照射試験をしていくということを,今,やっております。

【飯山委員】 そうしますと,燃料の破損の対応としては,発生する内圧を外側の被覆層で抑え込むという思想ということですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 破損のメカニズムのうち,内圧破損の防止についてはそれでやります。

【飯山委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 よろしいでしょうか。恐らく次の5番,6番の説明とも関連してくるかなと思いますので,もしよろしければ,次の5番,6番の説明を頂いた後で,全体を通して御議論いただければと思いますが。では,よろしくお願いいたします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それでは,安全基準,事故時安全性に関する研究開発について御説明をいたします。
 まず,26 ページに表が示してあります。これもHTTRのための研究開発ということで,発電用軽水炉の安全基準をベースにいたしまして,各種の基礎研究等を行った結果も反映して,高温ガス炉の特徴を考慮した上で,HTTR用の安全基準というのを策定していただいています。
 それと,併せて耐震,これも非常に重要ですので,炉心の耐震試験を実施して,耐震の評価手法を開発しています。耐震の基準については,基本的には発電用軽水炉と同じものを採用しています。
 それ以外に,安全評価の手法を確立しておりまして,そのために必要なデータの取得を済ませています。
 現在は,次の実用炉に向けた安全基準の検討をしている状況であります。
 まず,HTTRを使った各種の停止性能や冷却性能に関する性能,それから閉じ込め性能に関する試験を実施していること。
 あと,実用高温ガス炉の安全基準の案の検討を,今,しているところです。
 それから,あと熱利用施設接続のための安全基準の案,これについても検討を実施しています。これについては,IAEAの指針であるとか,国内の新規制基準などを参考にしつつ,この案を定めさせていただいておりまして,現在,原子力学会の研究専門委員会等で審議いただいているという状況です。
 将来的には,これはIAEAで国際標準化しまして,その後,HTTRの接続をする前に原子力規制委員会により最終的に評価いただいて,この安全基準を作成していただきたいと考えています。
 まず,今まで実施してきた試験の中で炉心の耐震性に関する試験ですが,ブロックですから,地震時の応答特性を明らかにする必要があるということで,炉心の耐震試験,これは水平・鉛直炉心断面模擬試験体の2分の1スケールを用いた振動試験。それから,あと炉床部だけをモデル化した炉床部の模擬試験体。これは,3分の1スケール。それから,実規模の1領域──1領域というのは,その真ん中の辺,図でありますと少し黒く染まっているところですが,ブロックのカラム数であると7個を1領域と呼んでいますが,そこの部分の領域を模擬した試験を実施して,ブロックに加わる衝突荷重,それから最大加速度等の応答特性を明らかにしまして,その耐震評価手法を確立しています。この手法を用いて応力を評価して,それを,その耐震設計指針に照らし合わせて評価をしているということです。
 それから,5-丸2,5-丸3 については,特にこれは安全評価に必要な各種のデータを取得してきたという説明であります。
 それから,次の30ページの空気侵入。これは,高温ガス炉では一番厳しい事故ですが,その空気侵入に関する事故ということで,空気侵入の挙動がどうなるかという試験。それから,黒鉛の酸化がどうなるかというような試験をHTTRの建設前に実施しています。
 それから,次の31ページは,HTTRを使った試験で,高温ガス炉の安全性を確認するというものの一つでありまして,制御棒を引き抜いて,そのときに全くスクラムをさせない,制御棒を挿入しないという条件の中で,その原子炉がどういうふうな挙動になるかというものを確認したものでありまして,こういった状況でも原子炉が安定に所定の状況に落ち着くということを確認しています。
 それから,同様に32ページでは,1次系の流量を部分的に喪失する試験を行ったり,33ページのように炉心の流量を完全に停止させる試験を行ったりして,その状況の中で原子炉が安定に静定するということを確認しています。例えば,この33ページですと,下に図が示してありますように,炉心の流量を完全に停止してしまって,その状況で制御棒も全く動かさないという状況に置いても,原子炉出力が自動的に落ちて,燃料温度も上がらないということを,燃料については解析的に確認をしています。
 それから,次に34ページに,将来的な試験では,この炉心の中の1次冷却材を止めるだけではなくて,HTTRの場合ですと,その圧力容器の外側から輻射(ふくしゃ)等で圧力容器を間接的に冷却するという装置がありますが,ここの中の冷却材流量も止めてしまう。ですから,完全に冷却が行われないような状況でも,原子炉が安全な状態であるということを確認する試験を実施する予定です。
 それから,あと燃料については,引き続き燃料の燃焼が進んでも健全であるということを確認する試験を,今後も続けていく予定です。
 そのほか,36ページ,37ページについては,HTTRの中の配管系等にヨウ素などが沈着する,付いてしまうようなことがありますので,こういった量がどれぐらいになるかという試験。
 それから,燃料からどういうふうな過程で放射性物質が出てくるのかというようなことも評価するような試験を,今後,実施していく予定です。
 それから,次の38ページですけれども,熱利用施設接続のための安全基準の策定も行っていく必要がありますので,それに向けての検討を,今,実施しているところです。これについては,原子炉施設に水素製造設備等が付きますので,こういったような場合の安全要件ということで,可燃性,それから有毒ガス漏えい時における原子炉の安全性の確保が必要だということが一つの安全要件になります。このためには,原子炉施設と水素設備を隔離していく必要がありますから,こういうことに対しての検討と,それから安全基準を作ろうとしています。
 あと,この水素製造設備を一般産業設備で造るような場合に対する条件としては,水素製造設備に起因する過渡変化時に原子炉の安定な運転が確保できるというような条件が出てきますので,こういう条件が正しいかどうかというようなことを,今,原子力学会の委員会で評価を頂いています。これについては,26年度に原案を作成して,今,この委員会としての評価を頂くということです。
 将来的には,IAEAで国際標準化を目指す予定であります。
 それから,同様にその下の高温ガス炉の実用化に向けての安全設計の考え方ですが,これも同じ委員会で,今,評価を頂いていまして,炉心の溶融を起こさない設計にするというのが高温ガス炉の特徴でありまして,特に固有の安全性,受動的安全設備による安全確保で安全が担保できるということを目指しています。
 特に,レベル3の状況で炉心損傷の防止のときに,設計基準を超えるような状況でも炉心の損傷が起こらないということが高温ガス炉の特徴と考えておりまして,こういったような安全設計の考え方を認めていただけるように,今,いろいろと審議を頂いているという状況です。
 安全設計の考え方では,HTTR,実用高温ガス炉,それから発電用の原子炉と書いてありますが,その安全設計の主な相違点でいきますと,発電用原子炉の場合ですと,真ん中の炉心冷却のところで,強制冷却系を使って炉心を冷却すると。一方で高温ガス炉の場合は,安全系として使うものであれば,実用高温ガス炉であれば,その間接冷却系のみで済むと。それから格納施設についても,発電用軽水炉,HTTR等では鋼製で耐圧の容器が必要になりますが,実用高温ガス炉の場合では,そういったような鋼製で耐圧・気密を必要とするような容器は必要ないということで,コンファインメントと呼んでおりますが,こういったようなものを付ければ十分だろうというふうに考えております。あと,こういったようなことをここでいろいろ,今,御議論を頂いているという状況です。
 それから,次に41ページで,自然現象に対する考え方ですけれども,これについては,まずHTTRですけれども,これは新規制基準で追加となった竜巻,火山,森林火災等を含めた自然現象について,高温ガス炉の特徴を考慮した上で安全上重要な機器を定めて,対応できることを示す予定です。
 耐震設計では,他の試験炉と同様に,「原子力発電所耐震設計技術規程」を準用して,地震動Ssを設定した上で,この設計を行っています。
 それから実用炉についても,これは新規制基準に基づいてそれぞれ対応をしていくということを考えています。特に,これについて我々高温ガス炉だけが特別な耐震基準を採用するというようなことは考えておりません。
 あと,42ページは,この安全評価の方ですが,この考え方は,これについても基本的には発電用軽水炉に準じた考え方をとっていまして,運転時の異常な過渡における判断基準,それから事故時の判断基準を定めて,それで原子炉が安全であることを評価で確認していくと。
 それから,次の43ページ,事故事象の選定の仕方についても,やはり軽水炉と同じ考え方を採用していまして,それぞれの判断基準に対して,一番厳しくなるような事象を取り出して評価をしています。
 例えば,44ページはその中で高温ガス炉の安全評価の例という中では一番厳しい,1次冷却設備の二重管破断事故,減圧事故とも呼んでいますが,こういうような評価でして,その場合は,ヘリウムガスが全部圧力容器から外に出てしまった場合で,その原子炉冷却ができるか。それから,あと炉心の黒鉛の酸化によって放射性物質が出ないかどうか,どれぐらい出るかというようなことを評価しています。
 45ページに,今までに実施した高温ガス炉,その実例ですけれども,燃料温度が制限温度にいかないこと,それから,あと酸化量も所定の量以内の中に収まっているというようなことを示しているものです。
 あと,最後の水侵入ですが,これはちょっと,我々が今までいろいろ設計を進めてきた原子炉が,高温ガス炉,ガスタービンのシステムでありまして,蒸気タービンのシステムについては,日本原子力研究開発機構としては余り力を入れて今までやってきていないのですが,水侵入を防止する対策としては,隔離弁を付けるとか,ドレン設備を付けるとか,あるいは水系の圧力を下げるとか,そういったような方法があると思うのですけれども,これについては今後少し検討していく必要があるというふうに考えております。
 それから,次に使用済燃料,それから黒鉛廃棄物に関する研究開発ですが,これについては,HTTRのための研究開発ということで,前処理の試験。これは,被覆層をはがして,その中側の燃料核を取り出すというものですが,こういったような前処理の試験は既に終了をしています。
 現在は,まず中間貯蔵に関する検討ですが,これについては既に評価をして終了しています。それから,使用済燃料の発生量の評価,これについても軽水炉と比較した評価をしています。それから黒鉛廃棄物の評価,これもほぼ終了しています。
 今後,実施していく内容については,再処理に関しては,前処理試験について,その使用済燃料に対する処理の検討,それから試験が必要になってまいります。
 それから,次の中間貯蔵以降の話ですが,これはなかなか政策的な問題がありますので,認められるかどうかというのは分からないですが,直接処分に関するような検討を,今,実施しています。
 あと,廃棄物の低減の技術ということで,高温ガス炉でMAがほとんど出ないような炉心の設計なども,今,進めているところです。
 次の49ページのところの前処理ですけれども,これは被覆層を剝ぐ工程ですが,その上に示してありまして,燃料を解体して,焙焼して,まず炭素系の部分を取ると。その後,SiCの層は機械的に破損して,それから更に内側の炭素の層を焙焼して取ると。それを溶解するということで,出てきたものについては,その後六ヶ所再処理施設,例えばですけれども,そういったような六ヶ所再処理施設につないでいくということができるということで,前処理工程ができれば,それ以外に再処理施設そのものに大幅な開発が必要ではないというふうに考えております。
 その前処理の工程ですけれども,現在やってきた研究は,解体する工程,それから焙焼する工程,破砕する工程でございまして,これについては,原子燃料工業株式会社さんの方で特に力を入れてやっていただいてきました。
 今後の計画としては,HTTR燃料交換後に使用済燃料を用いた検証試験を行っていく必要があると考えています。
 それから,中間貯蔵に関する検討でありますけれども,これは,空冷でも貯蔵ができると。空冷自然循環で貯蔵できるということを評価しておりまして,その成果としては,実用炉レベルでも炉停止後15日程度で空冷自然循環による貯蔵が可能ということで,水がなくても安全に長期間保存できるという評価をしています。
 あと被覆燃料粒子のSiC層が非常に安定だというような評価がありまして,耐熱性もすぐれているということから,この暫定保管をしても安全性が極めて高いということを評価しています。
 それから,次に52ページに使用済燃料の発生量の評価ですが,これは,発電効率が高いこと,それから燃焼度が大きいということで,0.28倍ぐらいに使用済燃料の量が少ないということは確認しています。
 それから,あと黒鉛廃棄物についてなんですが,実用高温ガス炉の600MWtぐらいを例として,全体の黒鉛廃棄量を評価しています。これは,燃料体というのは定期的に取り出さないといけないので,燃料体のブロックについては廃棄物になるということで,これを評価しています。
 そうすると,黒鉛廃棄物の量としては,60年間運転しても50mプール2杯分ぐらいになるということを明らかにしていまして,あと黒鉛の中にC-14ができるんですが,その量としては,右の図に示しますように,浅地中ピット処分ができる領域であるということを評価しております。
 あと,最後になりますけれども,やはり使用済燃料の処理というのは非常に重要な問題でありますので,これについては,今,いろいろと検討を進めているところです。高温ガス炉の場合,軽水炉と同じように二酸化ウランUO2を使いまして高温ガス炉を運転しますと使用済燃料が出ると。しばらくの間,暫定保管をすると。一番上のラインは,再処理をして通常どおり軽水炉と同じように軽水炉サイクル,高温ガス炉サイクル,軽水炉MOXサイクル,高速炉サイクルにつなぐような,全く同じような燃料サイクルとしても使えます。
 それから,もう一つ,2番目ということで,中間貯蔵をして再処理をしてADSにつないでMAをなくすというようなこと。
 それから,あと直接処分が安定であるということで,将来的には直接処分も可能ではないかということも考えておりまして,こういったような検討も,今,進めているところです。
 ただ,潜在的有害度の図をその左のところに示していますけれども,これについて言えば,やはり核分裂炉である以上,MA等ができる限りは,どうしても,天然ウランレベルになるためにはADS等を使わなければかなり長くなってしまうというのは,これはほかの軽水炉等とも同じ欠点だというふうに思います。
 あと,トリウムを使うとか,高濃縮度のウランを使うというようなことをすれば,MAをすごく少なくすることはできるのですが,そういうのは設計的には検討していますが,まだちょっと実用化というところまでは,少し時間が掛かるかなと思っています。
 以上です。

【岡本主査】 ありがとうございました。それでは,ただいまの日本原子力研究開発機構からの説明について,御質問,御意見があればお願いいたします。
 亀山主査代理,お願いします。

【亀山主査代理】 ちょっと基本的な質問で申し訳ないのですが,今の実際の冷却機能を外したときに自然に冷却するという,データが示されているので,それで一応理解はできますが,原理的には,我々がやっている反応工学では,発熱曲線と冷却曲線の形から,安定点のところで操作すれば,温度が上がっても自然に冷却するし,冷えてもまたちょうどいい点という理屈で説明しますけど,その場合には,両側に不安定点があって,一旦そっちに行ってしまうと,もうどうしようもないという不安定状態があります。一つは,この燃料の燃焼が,発熱曲線というのが,非常に高温になってくるとそれほど発熱しないようなパターン。だから,自然冷却,つまり熱くなっても伝熱での放熱の方が勝って安定になるのか。ちょっと,そこいら辺の発熱曲線が特徴的,ペレットをカーボンで固めているためなのか,ちょっと原理的なところを御説明いただければと思いますが。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 例えば,33ページがその一つの例ですけれども,原子炉の場合ですと,核分裂がずっと進んでいる状況の中で,例えば冷却材が少し下がったりすると燃料の方が上がります。そうすると,その燃料はウランの238と235の二つの物質からなりますが,ウランの238の共鳴吸収,燃料が上がると共鳴吸収といって中性子をたくさん吸収してしまう,そういうようなことがありまして,それによって一気に出力が落ちて止まってしまうと。
 先生がさっきおっしゃったように,しばらくしますと,少しずつすると,今度,燃料の温度がだんだん下がってきますと,逆に出力が出るようなところが出てくるのですね。それが,この図で言うと,8時間ぐらいのところで原子炉出力がちょっと出ているところが見えると思うのですが,そこでピークが出て,そうするとまた燃料温度が上がって,そうするとまた出力が落ちると。ちょっと見えないのですけど,ここで少し振動するような状況が起こって,それであるところに静定して,安定な状況になるというのがここのプロセスです。

【亀山主査代理】 はい,分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 よろしいですか。
 小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 ちょっと一つ二つ質問があります。
 まず,31ページの制御棒引き抜き模擬試験というところで,想定されているのは引き抜くという形で書いてありますけど,これは飛び出しとは違うのでしょうかというのが,まず一つ目で,高圧系であれば軽水炉でも1本飛び出しというのは基本的な考え方でしたので,そこの考え方を一つお聞きしたいのと,あと,その上のところで,空気侵入事故の,このグラフはいまいち分かりにくいところがあるんですけど,例えば想定事故の中で配管破損があって空気が入ってきた。それによって,そこにある格納容器内,コンファインメント内にある量が制限されれば,当然,多重故障とかを考えても,ここの範囲で収まるということは言えると思うんですけど,そこのもう一つ嫌な話は,そういう厳しい事故の後でも,何らかの地震を重畳して放射性物質の閉じ込め性能を確認するというのは以前からやられています。そこら辺が,いわゆる脆化された構造物のところが大丈夫だというようなところまで,今,押さえられているのかどうかというのが二つ目です。
 それから三つ目は,先ほど少しコンファインメント,コンテインメントの説明がありましたが,コンテインメントであれば,空気侵入に対しての酸素との反応量はポテンシャルで決まるわけですけれども,コンファインメントであれば,当然,それは逆にインリークしてくる話がありますので,その問題があるから,格納容器との関係は厳しくなるのかなというのがあります。
 それから四つ目が,ちょっと気になるのは,いわゆる大破断とかそういう厳しい事故ではなくて,実際想定されるリークですね。ヘリウムガスリーク,それを検出する方法とか,そういうR&Dは,今,どの程度進んでいらっしゃるのかというのが四つ目。
 最後ですけど,これは最後のページでございましたけれども,確かにこの基本路線は再処理でいきますというふうに読めるのですけれども,この毒性,潜在的有害度のところで,MAを燃やさないとこのレベル,数百年オーダーに落ちてこないというのは,ここではADSとおっしゃっていますけれども,普通,高速炉のサイクルであれば,同じように作れるわけですので,ADSじゃないとできないというのは,ちょっと言い方がまずいのではないかなと思います。
 以上です。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 最後のところからいきますと,ここでちょっと,ADSだけと言っていますが,これは,当然,高速炉でも燃やせますので,ここはおっしゃるとおりでございます。すいません。
 あと,最初の方からいきますと,その制御棒の引き抜きの試験ですけれども,これについては飛び出しではありません。実はそんなに多くなくて,反応度添加率最大約1セント,合計の添加反応度7セントの非常に小さい反応度でやっていまして,これはただ実際にどれぐらい,その安全のフィードバックの効果がどう効くかというのを確認したようなものです。
 実際には,やはり高温ガス炉の場合でも,実用炉の設計なんかですと,1本飛び抜けても大丈夫ですが,全部抜けるようなことになると,それはやはりどうしても問題にはなります。それが,制御棒引き抜きについてはそういうような状況です。
 あと,次が酸化のお話ですけれども,酸化については,空気がある程度制限なく無制限に入ってきた場合,今,燃料にSiCの層がありますけれども,そのSiCの層に被覆層,酸化皮膜でSiO2(二酸化ケイ素)の被覆層ができて,それによって,それ以降の酸化が大幅に進まないというのが固有の安全の原理になっていまして,そういうことによって,追加的に大幅な酸化が起こらないというふうに考えております。
 それに合わせると,コンファインメントとコンテインメントの議論なのですけれども,コンファインメントの場合ですと,おっしゃるようにどうしてもリークしてきてしまうんですけれども,そのある程度のリーク量に対しては,そういうようなSiO2(二酸化ケイ素)の膜ができるとかいうことで,十分対応ができるというのが我々の安全評価です。
 あと,それから小リークの件ですけれども,小リークについては,特に問題となるのは,ヘリウムガスがリークしても,それそのものは特に有害であるというわけではなくて,あとは,燃料の温度が上がり過ぎて,それが検知できなくてというようなことになってしまうと思うのですが。それについては,従来どおり圧力の下がるのを見るとか,そういうことでとりあえずは止めると。ただ,全部抜けてしまっても,基本的には,先ほどの大破断ではないですけれども,燃料が最終的に許容値を超えて上がってしまうということはないというふうに考えています。

【小竹委員】 ありがとうございます。まず空気侵入のお話ですが,燃料の懸念よりも,むしろグラファイトとの反応によってCOの発生量が増えるとか,あるいはグラファイトの脆化が進むとか,それでS2とか,まあ,S2というのが,今,議論されているのでSsですか,じゃないのですけど,そういう地震との重畳をしたときにちゃんと健全性が担保できるかというのが一つの論点です。
 それから制御棒の飛び出しに関しては,これは御存じのように軽水炉の安全設計審査指針,昔からそうですけれども,「1本」というのは単に1本という意味ではなくて,基本的には1ドルを超える反応度を与えた場合に,それがドップラー効果によってピークを打つというのが,軽水炉で言う固有の安全性でございます。そういう観点での,いわゆる,普通,加圧系の安全審査のときはそういう説明をこれまでずっとしてきているわけですけど,そういう話では,高温ガス炉の場合,どのように説明できるのかなというところをお聞きしたかったわけです。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 黒鉛については,黒鉛の酸化というのも評価しています。それで,黒鉛の酸化については,空気が入ることによって表面から少しずつ酸化してくるような状況になります。
 今,炉心を支えるというようなものでは,原子炉の燃料体を支えるようなところのブロックの下にサポートポストという,プレナムを造るようなポストがあるんですが,そういうところが,どの程度,酸化するかということはきちんと評価をしています。あとは,炉心の温度が下がってくる間にどれぐらい酸化するかということの競争になるわけですけれども,それによって十分強度が満足できる範囲であるということを,今,確認はしています。
 それで,あと制御棒の1ドル等の反応度ですけれども,実験的にはとてもできないので,あとは設計評価等でやるということでありまして,一つは,高温ガス炉の場合の特徴としては,過剰反応度が余り大きくない。運転中の過剰反応度はかなり低くとれるようなことがあって,それぞれの制御棒が持っている付加価値を減らすというようなことで,燃料の温度上昇を防止するというような,そういう設計を考えています。

【小竹委員】 ありがとうございます。

【岡本主査】 よろしいでしょうか。そのほか。
 梅田委員,お願いします。

【梅田委員】 今,少し議論があったことに関連するのですけど,耐震評価については,グラファイトの強度というのが一つの基準になると思います。この試験とか解析ではオーケーということなのでしょうけれども,実機スケールになって,もっと出力アップすると,グラファイトの高さが高くなることにより,耐震上,ちょっと厳しくなるような気もします。それに加えて,最近,地震荷重がどんどん増えていると。そこのところを踏まえたときに,実規模にしたときに,やってみないと分からないところがあるのでしょうが,成立性がありそうかどうかという,その辺の感触をお聞きしたいのが一つ。もう一つは,安全の深層防護のところですけど,このガス炉自体は,固有の安全性ということで,炉心溶融がないということであれば,このレベル4のときのSAとか,そういうのはどういうふうに考えられているのかなと。その2点を教えていただきたいのですが。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 最初の耐震の黒鉛ブロックの件ですけれども,今,HTTRでも実用炉の場合でも,ブロックは積層して積み上げた構造になっていまして,それを動かないようにするために,我々,ダウエルピンと呼んでいるのですけれども,三つぐらいの突起を出して,それが重なることで上下が動かないようになっていて。地震で揺らされると,そこのダウエルピンと呼ばれる構造物に亀裂が入って壊れたりするということが問題ですね。
 だから,これについて言えば,今の耐震設計基準は非常に基準地震動が大きくなっていますけれども,それに合わせて,そういう一番弱い部分の構造物を強化していくということで,設計的に対応できるというふうに考えています。
 それから,深層防護の考え方については,シビアアクシデントが起こらないということであれば,シビアアクシデント・マネジメントをしないでいいということにはなると思いますけれども。これは,今,そういうことでいけるかどうかというのは,いろいろと原子力学会の委員会の中でも評価を頂いているという状況です。

【梅田委員】 ということは,今のところシビアアクシデントあるいは炉心溶融,それは考慮しなくていいという考え方ですかね。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今,我々が考えているのは,炉心のある技術的とか科学的に考えられる,確率でもいいのですけれども,そういう範囲の中であればシビアアクシデントは起こらないというふうに考えています。例えば,それを超える,もうめちゃくちゃな仮定をする,非常に考えられない仮定をするとか,そういうことまでいくと,そこはちょっと保証できないのですけれども,あるそういう合理的な仮定の中では,シビアアクシデントが起こらないというふうに考えていまして,そういう安全基準が成り立つかどうかということを,今,審議いただいているというところです。

【梅田委員】 分かりました。

【岡本主査】 今の件,たまたまその議論に私も少し絡んでいるのですけれども,基本的には,ちょっと英語で恐縮ですけれども,Practical Eliminatedという,実用上の無視できるかどうかというところの議論に近付いてくると思います。
 ただ,まず将来的にはAMが要らないという話になるかもしれませんけれども,まずは,炉心損傷は起きないのですけれども,起きたと仮定してどうするかという議論はしておいた方がいいねということは,今は議論をしているところであります。だから,全く考えないというわけではないのですけれども,仮想的に考えて,その場合,どうするかということは考えておいた方がいいかもしれない。それの経験を積んでくれば,Practical Eliminatedが実証されれば要らないのかもしれない。そのあたりは,今後の議論の話であります。

【梅田委員】 それを聞いて安心といいますか,やはり想定外を想定するというのが,多分,見方として強くなっているので,今みたいな考え方はいいのではないかなというふうに思いました。
 ついでにですけど,この辺の安全評価に関しては,余り触れられていないのですけど,確率論的なPRA評価ですね,そういうのはされているのでしょうかね。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 確率的な安全評価についても,HTTRの安全評価のときには,まだ義務付けられてはいなかったのですけれども,一応,その事象の発生確率等々の評価はやって,どれぐらいの確率になるかというようなことは提示しています。
 今後とも,そういう確率的安全評価についても実施していく必要はあるかというふうには思います。

【梅田委員】 継続的安全性向上という意味で,やっぱりPRAが一つの重要なツールなので,それは引き続きやっていただきたいなと思います。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【岡本主査】 亀山主査代理,お願いします。

【亀山主査代理】 今も議論を聞きながら,ちょっと質問が出たのですが,製造工程で,説明では,原子燃料工業さんの技術が非常にすぐれていて,グラファイトも天下一品のやつで,強度も他国の2倍の強度をペレットは持っているという説明でよろしいですけれども,これからよその国が日本の技術をまねて作ったときに,粗悪な炭素で似たような形を作られ,燃料を同じだと言って例えば売り出されるのは良くないと思います。ちゃんとそのときのグラファイトの純度から燃料と大きさの中の配置が先ほどお話にあったように,発熱しても自動的に中性子が出て吸収して真っ赤にならないように作られている保証が大切です。それが下手に作ると真っ赤になっちゃうと。そこいら辺の,この本来持っている安全性を担保できるためのスペックというものを,日本がちゃんとレシピではっきりしておかないと,粗悪品でまねて作られたもので安全だということだけ宣伝されて,事故を起こすと,もう信用を失ってしまうので,そこいら辺の,原子燃料工業さんの方では,ちゃんと安全に本来の自然に冷える性能を保つためのスペックというのは確立されているのでしょうか。それは門外不出で出さないのか。将来的には,それを日本が標準でもって定めて,粗悪品で作ったら駄目だとしていかないといけないと思いますが,そこいら辺は,今後,研究の課題かもしれませんが,現状はどうなっているのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 HTTRの燃料を作ったときに,併せて燃料の検査基準というのもきっちり作りまして,それに基づいて,我々としては,品質を担保するという形にしています。ですから,粗悪なものをどこかの国が作ったとしたら,多分,その検査基準はパスしないだろうと考えています。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。

【飯山委員】 よろしいでしょうか。

【岡本主査】 飯山委員,お願いします。

【飯山委員】 ちょっとお伺いしたいのですが,その42ページに,安全評価に向けての考え方の基準というのがございます。燃料の最高温度が1600℃と書かれておりますが,これはどういうところから来ていると考えればよろしいのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 燃料の研究のところの6ページをちょっと開けていただきたいのですけれども,燃料を照射した後に,加熱炉に入れて,燃料が破損するかどうかというのを確認している試験ですけれども,この結果を見ていただくと,1800℃ぐらいではまだ安定で,2200℃ぐらいから壊れてくるような。この実験結果を受けて,それに更に余裕を見て,1600℃であれば全く破損も起こらないということで,その1600℃を超えないということを判断基準にしています。

【飯山委員】 そうすると,この1600℃というのは,この温度に到達しても燃料は再利用可能な温度なのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 もちろん1600℃を超えなければ幾らでも。

【飯山委員】 幾らでも使えるという,そういうものだということでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい,そうです。

【飯山委員】 分かりました。
 それと,あと43ページの最後のところに1次冷却設備二重管破断事故時に,多重故障を考慮しても安全が確保されることが必要と書いてあるのですが,これの理解は,例えば1次冷却設備の二重管が破断して,更にこのページの,例えば事故の代表事象としてある他の事故が重なっても大丈夫なような安全を確保することが必要だということを意味しているのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 そうではなくて,1次冷却設備のそういう破断事故が起こったときに,例えば安全系が動かなきゃいけないというシステムがあったときに,その安全系が全く動かないとか,そういうようなことを重ね合わせると。例えば,ポンプを動かさなきゃいけないというシステムであると,本来,ポンプが動かないといけないのだけれども,それもまた動かないというふうに考えるということです。それぞれの事故の重ね合わせ,例えば,一次冷却設備破断事故とほかの事故が重なっているというのは考えていません。共通の要因で,例えば地震だけでもし同じことが起こっちゃったら,そういうときにはいろいろなものを考慮しますけれども,要因が違う場合については,一緒に起こるということは考えないです。

【飯山委員】 そうすると,基本的にはこの「多重」というのは,それぞれの事故において,それに伴って動くべきもの,安全を確保すべきものが動かなかった場合,そういう場合を考えているということなのですね。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【飯山委員】 分かりました。ありがとうございます。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。
 湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 まず,最後のページについて,使用済燃料の高レベル廃棄物についてですが,この黄色い絵がありますけれども,黒い線というのは,直接処分と書いてあるけど,これは高温ガス炉の燃料について引いた線なのでしょうかという質問と,全体的に言うと,やはり高レベル廃棄物をいかに低レベル化できるかということは,軽水炉も含めて非常に重要な問題で,高温ガス炉の場合,少なくなるのは先ほどで分かりましたけれども,どこまで低レベル化できるのかということは是非お聞きしたいと思います。 この黄色い絵について,これは高温ガス炉の燃料特有の線で引いたものなのかどうなのか,教えていただきたいと思います。
 もう1点は,やはりバウンダリが多少気になります。高温ガス炉の原子炉容器にしても,配管にしても,基本的に熱的なバウンダリと圧力バウンダリを変えているわけです。それで圧力バウンダリ,原子炉容器の壁というのは,常時,正常状態ではコールドレグの温度にしているわけだから。ところが,サーキュレーターが停止したり,事故ですからブラックアウトのようなことが起こった場合にはサーキュレーターも停止しますが,やはりどうしても炉心の中の温度は一定に保たれる,あるいはそれ以上は上がらないにしても,圧力バウンダリの方に高温化が押し寄せていくのではないかと。そういうことの健全性はどういうふうに考えていくのだろうかという,その2点についての質問です。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 まず,その黄色いところの図ですけれども,これは我々が設計をした600MWt,30万kWeぐらいの高温ガス炉についての使用済燃料を評価したものです。ですから,軽水炉ではありません。それでも,やはりこういうふうに多くなるということです。
 高温ガス炉の場合で,使用済燃料を低減する方法というのは幾つかあるんですけれども,一番いい方法は,高燃焼度燃料を使って,高燃焼度を使うということは,ファータイル,つまり238みたいなのを非常に少ない状況にして,それで炉心の中に長期間滞在していることができますから,それを滞在させていくと。そうすると,燃焼だけが進んで,MAが出ないと,そういうような炉心が最適な炉心になります。
 それに対しての唯一の問題点は,やはり濃縮度が20%を超えるというのがなかなか作れない。これが一つの問題でして,ドイツなんかで昔やっていたときには本当に90%を超えるような非常に高濃縮なウランを使ってやって,しかも長いこと炉心に置いておく。それで直接処分とするのが一番いい方法だったので,本来であればそういう形がとれればいいかなとは思うのですけど,そこが一つの方法ですね。
 あと,トリウムを使って,それでMAを作らないというような方法も,それは一つの方法としてあるかと思いますが,やはりトリウムの技術が必要なので,多少は時間が掛かるかなというふうには思いますが。前者の方法がとれれば,それは比較的簡単にできますが,ちょっとこれは政策とか政治の問題があるのでなかなか難しいのかなとは思っています。
 それから,バウンダリの問題ですけれども,高温ガス炉の場合は,確かに耐熱のバウンダリと圧力のバウンダリを分けているのが実態です。圧力バウンダリについては,全部それぞれの金属について,制限温度と,それから圧力を設けていまして,それぞれの事故の事象において,その耐圧,例えば圧力容器であるとかの温度の評価をして,それが許容値以下であるということを確認することでバウンダリを守るということをしています。確かに中の原子炉温度は高いですけれども,それでも圧力容器の温度が高くなって許容値を超えてしまうということは,評価上は今のところはないです。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 はい,お願いします。

【田中局長】 ほかに質問がないようですから,恐縮ですけれども,前回の議論との関わり合いで,前回は,本日の資料1にあるように,二つの炉型を少し念頭に置いて議論をしていただくというふうになったのですけれども,本日の議論というのは,1でも2でも全く変わらない議論なのか,1と2とやっぱり違った議論をする必要があったイシューなのか,その辺はどうなのでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今,750℃でありますと,例えばさっきの除熱量の優れた燃料で,しかも出力密度を上げるとかいうような炉心を造ろうとしたならば,750℃でしたら,例えばああいったような除熱量の優れた燃料というのは要らないことになります。一方で950℃だと,やっぱり要るということになりますし,幾つかそういう違うところが出てきます。

【田中局長】 したがって,前回の議論を踏襲してやっていただくのであれば,1の場合にはこんなこと,2の場合には,それに加えてこういうことというのを少しお分けいただいて,提案していただいたらよろしいのではないかなと思います。

【岡本主査】 おっしゃるとおりだと思います。これ,先ほども最初の燃料のところで私もちょっとコメントをさせていただいたのは,現在に比べて,750℃だったらこれが必要でと。950℃だったらこれが全部必要になるわけですけれども。例えば,その中で750℃であれば要らないものがかなりいっぱいあって,先ほど10年という話がありましたけれども,それが短くできるとか。そういう話が,多分,技術的な問題としていっぱいあると思います。後ろ側の安全研究とかそういうものは,安全の考え方等については,基準等については,これはもう余り変わらない気はするのですけれども。ただ,やはり750℃と950℃だとクライテリアが全く変わってくるので,そこで余裕が随分全然違ってくるということになろうかと思います。そのあたり,是非,しっかり資料の方にも反映いただけると議論として分かりやすいと思うので。これは,少し改定を。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 検討いたします。

【岡本主査】 はい。

【湯原委員】 今の点に関してですが,HTTRの実績があるわけですから,それの延長上に,エンジニアリング的延長上に引いた場合に,何MWeの大きさぐらい,かつ温度条件950℃,850℃,どこまで確実にできる範囲にあるのか。例えば,さっきのスケールで50万kWeにするのだったら,炉心設計からやり直さなきゃいけなくて,データも取り出さなきゃいけないとか,いろいろ問題はあると思います。HTTRの実績を踏まえて外挿していく場合に,温度と出力の大きさでどこまでは確実にできる線なのかということを示していだけると,いつまでに実用プラントをどうすればいいのかということも見えやすくなってくると思います。そんなふうに絞り込んだらどうでしょうか。

【岡本主査】 ありがとうございます。本日の議論は技術的な議論がしっかり書かれているので,それを二つ,750℃にした場合には,多分,今,750℃に必要な技術開発,それから950℃に必要な技術開発,そこを明確にするとともに,小竹委員からもいっぱい言われていますけれども,具体的な炉型,それから出力,そういったものも含めて,これは,例えばすぐにでもできるといったようなものを絵で見せていただけると,多分,皆さんの共通認識になると思います。
 はい,小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 まさにそこなのですが,多分,温度は,燃料要素とか,いろいろな要素技術開発のハードルの高さが変わってくることでよく分かるのですが,安全とか,いわゆる技術的実現性を見るときには,ガスタービンと組み合わせるのか蒸気発生器(SG)なのか,あるいはコンファインメントなのか格納容器なのか,それによって随分変わってくると思うのですね。そこら辺をクリアにしていただかないと,なかなか実用化の方向が見えないのではないかと思います。

【岡本主査】 最初の方にも議論がありましたけれども,この300MWeの設計をされていて,経済性も含めていろいろ議論されていらっしゃいますので,そういうものについて,一度,御紹介いただくことがいいのかなというふうには思います。

【小竹委員】 追加ですいません。短くですが,要は,1980年代にドイツとかアメリカでTHTR,Fort St.Vrainが,それぞれ3年,8年ぐらいの運転しかしていないのですけど,私どもがちょっと気になっていますのは,なぜそれが短期間で終わってしまったのか。つまり,やっぱり何か問題がいろいろあったと思うのですね。それに対して,政策的なところは置いておいても,技術的な点について,これから同じような30万kWeを目指すのであれば,その当時の問題点は何があって,それはどう克服されるのか,そこは非常に重要な点だと思うのです。
 私どもが一番気になるのは,PBMRとかアメリカのNGNPにしても,建設実現に向かっていこうとしたときにつぶれてしまったという事実です。もしそこに技術的なものが何かあるのであれば,そこは注意してチェックしていく必要があるのかなと思うのですけれども,そこが分かりましたら,是非,次回,御説明いただければと思います。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それについては説明できます。時間があればですけれども。

【岡本主査】 そのほか,いかがでしょうか。
 米田委員,お願いします。

【米田委員】 すいません,格納容器かコンファインメントかという,その差みたいなものですか,なぜHTTRでは格納容器で,もっと高温になるとコンファインメントでいいのかと,その辺のことがちょっと説明からは分からなかったのですが,教えていただけますでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 HTTRのときの安全審査なんですけれども,炉心の中から出てくる核分裂生成物というのを,その時代は,定量的に評価したのではなくて,軽水炉のやり方では,例えば希ガスは100%出る,それからヨウ素は50%出るといったような,そういう軽水炉の基準があるんです。そこは,本来,高温ガス炉ですと,ベスト・エスティメートを評価すれば,そこは全然出ないという評価ができるんですけれども,当時,そこの評価を受けたときには,なかなか思い切ってそこまで判断基準を,その評価のやり方を変えていくというのはなかなか難しくて,当時の安全に関する委員会の中でそういう評価を受けたんですけど,委員の先生方もそこまで思い切って変えるというところまではいかなかったんです。だから,基本的に軽水炉と同じようなものが出てくる,放射性物質が出てくるというふうに考えたときには格納容器が必要になってくると。
 現在やっている我々の実用炉の設計というのは,そこはもう全部実際に起こったベスト・エスティメートに保守性を置いたような形で評価した上で,安全評価をしていることになるので,コンファインメントのような少し基準の弱いものでも安全性が担保できるということです。

【米田委員】 多分,普通の,一般の方が聞くと,格納容器があった方が安全なのではないかという思いもちょっとあるのかなと。そこに対して,コンファインメントで大丈夫ですということの説明をきっちりできるようにしておくことが必要かなと思います。一般の方々に向けてです。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 はい。

【岡本主査】 ありがとうございます。
 鈴木委員,お願いします。

【鈴木委員】 先ほど小竹委員の方から,過去の海外の開発が何年かで終わってしまっているという,技術的なハードルについてはもう既に検討されているというお話だったんですけれども,技術的以外にも,社会の潮流ですとかほかのエネルギーの動向ですとか,そういったところも,当然,今からそういったものを開発すべきかというのを考えるときに,エネルギーのシナリオとか,そういったものも加味してやるかやらないかというのを見極めるべきだと思いますので,技術的な面以外にも,そういったところもこれから議論する場というのはあるんでしょうか。

【岡本主査】 この委員会は,技術的なところで議論をしてくださいと,成立性等について議論をしてくださいという諮問を受けておりますので,そこの背景的な部分は,恐らく別途経済産業省等をはじめ,文部科学省さんも含めてやられるのかなと理解はしております。
 私がアメリカとドイツの違いで一番気にしているのは35ページだと思っていて,これが正しいかどうかは別として,ちょっと後で御注意いただければと思うんですけれども,米国とかに比べてクリプトンが運転中に出てくる量が桁違いに,日本の場合,3桁ぐらいいいんですね。だから,そういう意味では燃料の製造技術が非常にすぐれているというところがあろうかと思います。やはり,こういうところが最終的に日本の技術の一番すぐれたところで,それがHTTRを世界でもトップクラスの炉にしているんだと思っていますけれども。こういう事実も踏まえつつ,議論していければ。可能であれば,技術的に議論をしていきたいなと思っております。恐らく,報告書の中には,そういう視点も重要であるというふうなことを書けるとは思うんですけれども,それは,ちょっとこの場ではないと思っています。そういう理解でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 北川委員,お願いします。

【北川委員】 燃料のことを随分褒めていただいてうれしいんですけれども,先ほども少し述べましたが,我々の経験は,もう既に10数年前にやったきりというのもありまして,やはりこれから技術をいかにつないでいくかが重要な論点と考えます。ノウハウも含めて,施設もそうですけれども,つないでいかないと,昔はすごかったですよというようなことにならないように,炉の方の研究開発も非常に大切ですけれども,インフラと言ってもいい,燃料のところの技術,施設,人を維持しながらということになると思います。そこは,論点の中には明示的には入っていないですけれども,産業界の在り方というところも御議論いただけたらなというふうに思います。

【岡本主査】 その点も,人材育成等については非常に重要な視点ではあると思いますけれども,この点もちょっと,この中では提言の一つとして,コメントとして書くことはできると思いますけど,そこを中心に議論し始めると,多分,8月では間に合わないので,可能な限り,技術的な範囲の中から。ただし,重要な視点として,社会的な問題であるとか,人材育成の問題であるとか,そういうものを忘れてはいけないということは書けるかなというふうには思っております。
 そのほか,よろしいでしょうか。
 それでは,若干,時間は早いですけれども,以上で,本日,用意しておりました議題は終了となります。
 そのほか,御意見,連絡事項等。もし御意見等,委員の皆様からあれば。よろしいですか。
 それでは,事務局の方から。

【石川課長補佐】 それでは,本日頂きました御意見を踏まえまして,少し整理するところは整理して,次回のときにまた御報告,資料として御議論いただけるものを少し準備できるように,事務局としても調整させていただきたいと思います。
 また,次回の日程につきましては別途メール等で連絡させていただきます。
 本日の議事録につきましても,でき次第,また先生方に御確認いただこうと思いますので,どうぞ,よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 それでは,以上で第2回高温ガス炉技術研究開発作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

 

 

―― 了 ――

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