原子力科学技術委員会 高温ガス炉技術研究開発作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成26年7月11日(金曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3階 2特別会議室

3.議題

  1. 高温ガス炉技術研究開発作業部会について
  2. 高温ガス炉技術の研究開発の政策と研究開発を巡る現状について
  3. 今後の進め方について

4.出席者

委員

岡本主査,亀山主査代理,伊藤委員,飯山委員,梅田委員,北川委員,國本委員,小竹委員,鈴木委員,湯原委員,米田委員

文部科学省

田中研究開発局長,田中研究開発局審議官,増子原子力課長,石川原子力課課長補佐,笹川原子力課課長補佐

オブザーバー

香山経済産業省原子力政策課戦略企画調整官,上塚日本原子力研究開発機構理事,國富日本原子力研究開発機構原子力水素・熱利用研究センター長

5.議事録

【石川課長補佐】 それでは,定刻となりましたので,ただいまから第1回高温ガス炉技術研究開発作業部会を始めさせていただきたいと思います。
 本日は御多忙にもかかわらず,御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は作業部会の最初の会議ということで,冒頭便宜的に事務局の私,石川の方から議事を進めさせていただきたいと思います。
 まず,作業部会を始めるに当たりまして,研究開発局長の田中より挨拶をさせていただきたいと思います。

【田中局長】 研究開発局長の田中でございます。本日は本当にお忙しいところ御出席を頂き,また,新しいこの作業部会の委員を快くお引き受けいただきまして,本当にどうもありがとうございます。
 皆さん,御存じだと思いますけれども,国としての今後のエネルギー基本計画が今年4月に閣議決定され,その中で高温ガス炉という記述が明確に記載をされたところでございます。また,つい最近6月24日でありますけれども,いわゆる骨太の方針や成長戦略が閣議決定されておりまして,国の考え方を大きく決定をするという,それぞれの閣議決定でも高温ガス炉が明確に位置付けられたところでございます。
 高温ガス炉につきましては,日本原子力研究開発機構あるいは大学で長い歴史があるものではありますけれども,最近いろいろなところで注目を集めている状況にございます。文部科学省としても,この高温ガス炉について,今後の研究開発の在り方あるいは推進の仕方ということを地に足を着けてきちんとした議論を進め,国民各層からの寄せられている期待に対して,きちんとお答えを申し上げたいと思います。
 そういう意味で,各分野で御活躍をされている委員の方々にお願いを申し上げて,中身の濃い研究開発の在り方に関しての議論を今後活発に進めていきたいと思っています。本当にお忙しいとは思いますけれども,是非日本のエネルギー計画あるいは研究開発を支える,この高温ガス炉の分野について,忌たんのない御意見を頂きたいと思ってございます。よろしくお願い申し上げます。

【石川課長補佐】 それでは,初めに作業部会の委員の皆様を簡単に紹介させていただきたいと思います。資料1-3にこの作業部会の委員の先生方,委員の一覧がございますが,資料1-3を御覧いただきながら,座席の順で紹介させていただきたいと思います。
 まず,伊藤聡子委員でございます。

【伊藤委員】 よろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 続きまして,飯山明裕委員でございます。

【飯山委員】 よろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 続きまして,岡本孝司委員でございます。

【岡本主査】 岡本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 続きまして,梅田賢治委員でございます。

【梅田委員】 梅田です。よろしくお願いします。

【石川課長補佐】 続きまして,亀山秀雄委員でございます。

【亀山委員】 亀山です。よろしくお願いします。

【石川課長補佐】 続きまして,北川健一委員でございます。

【北川委員】 北川でございます。よろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 続きまして,國本英治委員でございます。

【國本委員】 國本です。よろしくお願いします。

【石川課長補佐】 続きまして,小竹庄司委員でございます。

【小竹委員】 小竹でございます。よろしくお願いします。

【石川課長補佐】 続きまして,鈴木朋子委員でございます。

【鈴木委員】 鈴木でございます。よろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 続きまして,湯原哲夫委員でございます。

【湯原委員】 湯原です。よろしくお願いします。

【石川課長補佐】 最後に,米田えり子委員でございます。

【米田委員】 米田でございます。よろしくお願いいたします。

【石川課長補佐】 なお,岡本委員におかれましては,この作業部会の親の委員会に当たります原子力科学技術委員会の主査より指名を受けまして,この高温ガス炉技術研究開発作業部会の主査を務めていただくことになりましたので,どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは,せっかくですので一言御挨拶を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 それでは,この大事な作業部会の主査を拝命いたしました東京大学の岡本でございます。
 先ほど田中研究開発局長からもお話がありましたように,この高温ガス炉につきましては,今年の一つの大きな話題になっているかなと思います。ある意味でエネルギーをどう考えていくかということに関しては,非常に幅広いオプションを持って,それこそ太陽光から始まり,揚水とか水素利用とか幅広いオプションを考えていくことが非常に重要だと考えております。その中でも高温ガス炉というのは高い安全性ですとかSiCセラミックスで燃料が覆われているであるとか,非常に特徴を持った形の原子炉であります。
 原子炉というとある意味,非常に社会にアレルギーが大きくあるわけですけれども,その中で軽水炉とは全く違い,非常時に自ら勝手に止まるとか勝手に冷えるとか,そういうような特徴を持っております。同じ原子炉であってもそういうものがあるということを含めて,しっかり議論をしていく中で,我が国が今後,将来に向けてどういうふうに高温ガス炉を含めた開発をしていけばいいのかということを,本作業部会において考えていける機会にしたいと思っております。
 日程的には若干詰まっておりますけれども,この中でしっかり密な議論を委員の皆様とさせていただいて,より良いアウトプットが出せるようにしたいと思っておりますので,是非御協力のほど,よろしくお願いしたいと思います。
 それでは,このまま進行してよろしいですか。

【石川課長補佐】 それでは,ここから岡本主査の方に議事の進行をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,初めにこの委員会の規定が参考資料として付いておりますが,この規定の第2条第7項に主査があらかじめ指名する者がその職務を代理するとなってございます。ということで主査代理の指名を最初にさせていただきたいと思っております。
 私としましては,亀山委員にお願いしたいと考えておりますので,よろしくお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,今回最初の委員会ということもあります。先ほど簡単に御挨拶いただきましたが,皆様からまず一言ずつ簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。まず亀山主査代理の方から一言お願いしたいと思います。

【亀山主査代理】 主査代理ということで,岡本先生が来られないときに私ができることがあればしたいと思っております。私もこの高温ガス炉のお付き合いは40年ということで,学生時代から熱化学水素製造に携わっております。東大の吉田邦夫先生の下で,利用系の部分でドクターを取らせていただいたということで,この委員会でもどちらかというと,将来のエネルギー利用の点から水素利用も含めた形で私の意見を述べさせていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,1人30秒程度で順番にお願いしたいと思います。席の順番でまず伊藤委員からお願いします。

【伊藤委員】 フリーキャスターの伊藤聡子と申します。
 私は皆さんの中では一番庶民の立場に近いと思うんですけれども,それほど詳しい知識もあるわけではありません。ただ,原子力というと先ほど伺ったように,一般にとってはまだまだアレルギーのある部分でもあります。だけれども,イラクの情勢なども鑑みると本当に日本が置かれている情勢を冷静に考えなければいけないという部分でもあると思いますので,私は勉強させていただくという立場と,やっぱり今後の水素利用とかそういう部分でも,もしも本当に応用ができるものであれば,今までのものよりもいいものなのではないかという意識はあります。後ほどまたよろしくお願いいたします。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,飯山委員,お願いします。

【飯山委員】 飯山でございます。日産自動車で燃料電池自動車の研究開発をやっております。
 ゼロエミッションということは車業界にとって非常に大事なテーマでございます。車の方は電気自動車及び燃料電池自動車で御提供できると思いますけれども,その電気あるいは水素をゼロエミッションになるべく近い形で安定して大量に生産,製造することが必要であると思います。燃料の大量安定供給という意味で,今回の高温ガス炉とその利用技術は,非常に大きなポテンシャルがあると思っておりますので,この機会に是非勉強させていただきながら,いろいろな御議論をさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 それでは,梅田委員,お願いいたします。

【梅田委員】 三菱重工業の梅田でございます。
 私自身はずっと会社に入って以来原子力をやっていまして,その中でも機器の設計から燃料設計,それからいろいろ,最近はシステム関係全般の技術取りまとめをやっています。高温ガス炉につきましては,この半年ほど前に外部評価委員会というのがあって,その中で委員をさせていただきまして,そのときに少し勉強させてもらったのですが,やはり先ほど岡本先生がおっしゃったように,高温ガス炉というのは固有の特徴を持っていて,大きな可能性を感じるところで,私としても非常に興味があるところです。この委員会を通じて今後の実用化とか研究の進展に貢献させていただければいいかなと思っています。よろしくお願いします。

【岡本主査】 北川委員,お願いいたします。

【北川委員】 原子燃料工業の北川でございます。
 弊社は軽水炉燃料,高温ガス炉燃料,両方を作って納めさせていただいている会社でございます。先ほど先生からありましたように40年,50年先を見通して,大きな研究開発の議論をこれから皆さんとさせていただくわけですけれども,一方,産業という面では,高温ガス炉燃料を作る会社というものも余りありませんし,大きな絵を描くときに産業をどう育てていくかというところも問題提起をしていきたいなと考えております。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 國本委員,お願いいたします。

【國本委員】 東洋炭素の國本と申します。
 当社は高温ガス炉の炉心に使われている黒鉛というものを製造しております。日本原子力研究開発機構さんの中にあるHTTR並びに中国で現在建設中のHTR-PMという原子炉がありますが,そこにIG-110黒鉛というものを使っております。できれば日本の国力を高めて,これを輸出産業としてやっていければいいと考えております。よろしくお願いします。

【岡本主査】 小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 日本原子力発電の小竹と申します。
 私は入って以来ずっと軽水炉の安全,しばらくしましてからは高速炉の安全あるいは設計プロジェクトを担当してまいりました。高温ガス炉につきましてもその時々でいろいろ安全に関して,あるいは技術的成立性についていろいろ御議論させていただいてきております。今回私の個人的な知見だけではなく,将来的なユーザーになるかもしれない,その立場での発言をさせていただくことになろうかと思います。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 鈴木委員,お願いいたします。

【鈴木委員】 日立製作所の鈴木と申します。よろしくお願いいたします。
 弊社は原子炉を作っておりますが,私は今回熱利用ですとかそういった観点,化学工学の観点から参加させていただいております。私自身は水素燃料用の触媒ですとか現在では熱利用ということで,淡水海水化プラントですとかそういったところのプロジェクト開発等を行っている部署におります。そういった発電のみならず熱利用とかそういった周りからの高温ガス炉の利用がどういったものであるべきかというところから御意見をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【岡本主査】 湯原委員,お願いいたします。

【湯原委員】 湯原と申します。
 高温ガス炉については1980年代に関与いたしました。その後,地球温暖化問題をずっとやっておりまして,高温ガス炉,特に産業用のプロセスヒートが非常に重要だという認識で,高温ガス炉の位置付けはしておりました。もう一つ,私は海洋という専門がありまして,現在総合海洋政策本部で参与をしておりまして,海洋産業の創出というようなこともやっております。よろしくお願いいたします。

【岡本主査】 米田委員,お願いいたします。

【米田委員】 東芝の米田と申します。よろしくお願いいたします。
 当社はHTTRの中間熱交換器のところの開発にIHIさんとともに尽力させていただいています。私自身は軽水炉の更なる安全性高度化のための技術開発を促進している部隊におります。そういう意味ではこちらの高温ガス炉の方につきましては,専門家ではございませんが,今後このHTTR,水素製造をどのように進めていくかということにつきまして,メーカーの立場から議論に参加させていただき,また勉強させていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【岡本主査】 ありがとうございました。それでは,これから議事に入りたいと思います。
 本日の議題はお手元の議事次第に書かれていますとおり,高温ガス炉技術開発作業部会について,高温ガス炉技術の研究開発の政策と研究開発を巡る現状について,今後の進め方についての3点です。
 それでは,最初に事務局より出欠と配付資料の確認をお願いいたします。

【石川課長補佐】 それでは,私の方から確認させていただきたいと思います。
 まず委員の出欠でございますが,本日全員の委員の方に御出席いただいております。
 続いて,本日の配付資料でございます。議事次第のところに配付資料がございますが,まず資料1-1といたしまして,高温ガス炉技術の研究開発に係る作業部会の設置について,続きまして資料1-2といたしまして,原子力科学技術委員会における作業部会について,資料1-3といたしまして委員の構成。資料1-4といたしましてこの部会の公開の手続について(案)というものを資料に入れさせていただいております。
 また,資料2-1といたしまして,文部科学省からの資料として政策の現状と課題についてというものと,資料2-2といたしまして,日本原子力研究開発機構からの資料として,研究開発の経緯と現状について,それと資料3といたしまして,この作業部会の今後の進め方ということで資料を入れさせていただいております。最後に,参考資料1として,この委員会の親になります原子力科学技術委員会の運営規則を入れさせていただいております。もし乱丁,落丁,過不足等ございましたら,事務局までお申し付けいただければと思います。以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。

議題(1) 高温ガス炉技術研究科発作業部会について

【岡本主査】 それでは,本日の議題に入ります。
 事務局及び日本原子力研究開発機構から資料の用意をしていただいておりますので,それぞれ御説明いただいた後,質疑,議論を行いたいと思います。なお,議題ごとに質疑応答の時間を設けて進めたいと思っております。
 まず初めに議題1「高温ガス炉技術研究開発作業部会について」ということで,事務局より説明をよろしくお願いします。まとめての説明,よろしくお願いいたします。

【笹川課長補佐】 お手元の資料1-1から1-4について,まとめて説明をさせていただきます。まずお手元の資料1-1,1-2について御覧いただければと思います。
 こちらは,高温ガス炉技術の研究開発に係る作業部会の設置についての資料でございます。本年の4月11日に閣議決定されましたエネルギー基本計画を踏まえ,水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ,固有の安全性を有する高温ガス炉について,今後の研究開発の在り方について調査,検討を行うための設置部会を設置するということで,科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会の下に高温ガス炉技術研究開発作業部会を設置することとなりました。
 原子力科学技術委員会決定の設置紙につきましては,資料1-2の1ページ目を御覧いただければと思います。また,資料1-2の2ページ目に科学技術・学術審議会の組織図を添付してございますので,そちらも合わせて御覧いただければと思います。
 次に,資料1-3につきましては,先ほど岡本主査から御紹介いただきましたので,省略させていただきまして,次に進ませていただきたいと思います。
 資料1-4「高温ガス炉技術研究開発作業部会の公開の手続について(案)」を御覧いただければと思います。こちらにつきましては,1ぽつ のところで会議の日時・場所・議事の掲示について,2ぽつにおきまして傍聴について,3ぽつにおきまして会議の撮影,録画,録音について言及させていただいております。特に会議の撮影,録画,録音についての(3)につきましては,作業部会の記録は,委員の先生から確認いただいた議事録をもって公式の記録とするとさせていただいております。また,その他の事項については4ぽつのその他の事項にまとめさせていただいております。

【岡本主査】 ありがとうございます。以上,御説明いただきましたが,特に資料1-4の公開の手続については,この事務局から提示された案で御了解ということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,御了解いただいたということで,次の議題に移りたいと思います。どうもありがとうございます。

議題(2) 高温ガス炉技術の研究開発の政策と研究開発を巡る現状について

【岡本主査】 それでは,続きまして議題2「高温ガス炉技術の研究開発の政策と研究開発を巡る現状について」であります。事務局及び日本原子力研究開発機構より続けて説明をお願いいたします。まずは文部科学省の方から資料2-1「高温ガス炉技術研究開発を巡る政策の現状と課題について」を用いて説明をよろしくお願いいたします。

【笹川課長補佐】 皆様,お手元の資料2-1を御覧いただければと思います。岡本主査から言及いただきましたとおり,文部科学省と日本原子力研究開発機構より続けて説明をさせていただきますが,文部科学省からは政策の観点から現状と課題についてお話をさせていただければと思っております。
 1ページ目ですが,高温ガス炉研究開発の政策的位置付けということで,今までの政府の政策の中でどのような位置付けを高温ガス炉がされてきたかということについてまとめさせていただいております。高温ガス炉については,昭和47年原子力委員会決定の「原子力の開発利用長期計画」において,製鉄,化学工業,海水の淡水化も含めた,多目的の高温ガス炉の開発について言及されております。また,昭和53年の「原子力の開発利用長期計画」については,実験炉の建設について記載されております。同計画の57年につきましては利用系技術,製鉄,水素製造等についての研究開発について, 62年におきましては基盤の高温ガス炉技術の基盤確立,高度化を図るとともに,高温工学に関する先端的な基礎研究を進めるという形で記載されております。また,平成6年の同計画においては,高温工学試験研究炉(HTTR)を活用した研究開発の計画的な推進を図ることが重要であるとされております。
 平成17年は原子力政策大綱,今後10年程度に進めるべき原子力政策の基本的な考えを示すもので,同じく原子力委員会から決定されるものでございますが,こちらにおきましても高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発等について,推進していくとされております。
 平成20年におきましても,今度は地球温暖化に貢献する原子力技術の革新的な技術開発ロードマップということで,水素を製造する技術を確立する観点から,高温ガス炉について記載がされております。
 また,直近の政府決定につきましては,エネルギー基本計画がございます。こちらにつきましては次の2ページ目のところで詳細をお話しさせていただければと思います。
 2ページ目を御覧いただければと思います。エネルギー基本計画につきましては,平成14年エネルギー政策基本法に基づきまして,国の長期的,総合的かつ計画的な推進を図るために基本的な計画を策定することとされております。このたびのエネルギー基本計画は,平成26年度に閣議決定をされているものでございます。
 こちらにおきまして第4章戦略的な技術開発の推進の2ぽつ「取り組むべき課題」の部分で,「水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ,固有の安全性を有する高温ガス炉など安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する」とされているところでございます。
 次に,1枚めくっていただきまして,6月24日に閣議決定されました,「日本再興戦略改訂2014」及び「経済財政運営と改革の基本方針2014」でございますが,こちらにおいても,「高温ガス炉など安全性の高度化に貢献する技術開発の国際協力等を行うとともに,こうした分野における人材育成についても取り組む」とされているところでございます。
 1から3ページ目までで,今までの政策的な背景について説明させていただきましたが,4ページ目で,今後本作業部会で御議論いただきます政策的論点といたしまして,「高温ガス炉技術の研究開発に係る政策的論点」の事務局案を記載させていただいております。
 大きく3つに分けて記載させていただいておりますが,まず, 1点目として原子力の安全性に対して厳しい意見がある中で,国民の皆様の信頼に応える技術開発をしていくということを念頭に,想定し得る事故時の対応を含めた,いわゆる高温ガス炉が言っております固有の安全性の実証に関する研究開発,また,使用済燃料の低減など,環境負荷低減に貢献する原子炉技術の高度化に関する研究開発,温室効果ガス排出削減等に貢献するための水素製造など,熱の利用技術の高度化に向けた研究開発を「国民の信頼に応える偽実開発」として記載させていただいております。
 2点目として,「将来的な実用化の検討」について記載させていただいております。現段階で高温ガス炉は研究開発段階でございますが,研究開発段階から今後の産業界への技術移転等も見据えた研究開発の方向性を示すロードマップを構築するべきではないかということでございます。また,経済性,効率性を向上させるための研究開発を進めていくべきではないか,また,高温ガス炉につきましては水素製造や熱利用ですとか多様な利用系が見込まれるため,立地地域や産業界の各ステークホルダー等の意見を踏まえつつ,研究開発を進めることが重要ではないかなどという観点について記載させていただいております。
 最後に「国際展開の在り方,国際競争力の確保」についてでございます。現在,高温ガス炉につきましては日本が世界一の技術を誇っているということではございますが,中国等の新興国でも高温ガス炉の技術開発や実証炉等の計画が進められているところでございます。これに対して各国の動向を把握しつつ,我が国の技術の国際標準化に向ける取組が必要ではないかということ,また,我が国の現在持っている技術的な優位性を支えるとともに,国際協力の活用や将来的な国際展開,また,原子力の安全性向上を進める原子力の人材育成の推進が重要ではないかということで,現在事務局案としてまとめさせていただいているところでございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,引き続きまして資料2-2「高温ガス炉技術に関する研究開発の経緯と現状について」ということで日本原子力研究開発機構からよろしくお願いいたします。

【上塚理事(日本原子力研究開発機構)】 日本原子力研究開発機構で高温ガス炉を担当しております理事の上塚と申します。私どもの方から研究開発の経緯と現状を御説明させていただきますけれども,その前に少し御挨拶をさせていただきます。
 御承知のように日本原子力研究開発機構は現在もんじゅの問題やJ-PARC事故を受けて集中改革を行っている期間にございます。その改革の中で今後どういう研究開発をしていくかということと,次期中期計画の中でどういう研究を重点に置いてやっていくかということで,今,盛んに検討しているところでございます。高温ガス炉に関しましては,先ほど文部科学省から御説明がありましたけれども,私ども1969年にこの研究に着手してございます。45年ぐらいの歴史がございます。その中で着実に研究開発を進めてきておりますけれども,東京電力福島第一原子力発電所事故以降,特に高温ガス炉が持つ安全性というところに非常に着目していただいたと思います。世の中の期待が非常に大きくなっているなと感じているところでございます。
 この作業部会の報告を踏まえて,是非今後研究開発を着実に進めていきたいと考えておりますので,是非よろしくお願いいたします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 それでは資料2-2「高温ガス炉技術に関する研究開発の経緯と現状について」を用いまして,日本原子力研究開発機構原子力水素・熱利用研究センターの國富の方から報告をさせていただきます。
 1枚めくっていただきまして目次でございますけれども,最初に高温ガス炉について概要を御説明いたします。その後,高温ガス炉の原子力関係の研究開発の内容について説明をいたします。その後,熱利用技術の研究開発について触れていきたいと考えていきたいと思います。
 2枚めくっていただきまして,3ページでございますけれども,高温ガス炉開発の経緯で,まず,なぜ高温ガス炉が開発されたかということですが,英国の黒鉛減速炭酸ガス冷却炉を皮切りに,各国で軽水炉に競合するシステムとして高温ガス炉の開発が開始されてまいりました。
 米国,ドイツでは政府と民間が連携いたしまして,経済性のすぐれた蒸気タービン発電を用いた高温ガス炉の原型炉が開発されてきています。
 また,ドイツとか日本におきましては,石炭ガス化や還元製鉄のための熱利用高温ガス炉の研究開発を実施してきています。
 その後,スリーマイル島の原子力発電事故を契機といたしまして,炉心溶融事故が起こらない小型モジュール炉の概念が提案されてまいりまして,また,更に経済性の向上を目指したガスタービン発電炉の高温ガス炉の研究が進められてきているということでございます。
 高温ガス炉特有の技術ですが,やはり出口温度が非常に高いということで,高温に耐える被覆燃料粒子を開発して,その技術を持っているということ。それから,炭酸ガスでは,冷却材として使用することは困難で,構造物と反応しない不活性であるヘリウムガスを使うということが一つの技術の特徴でございまして,そのヘリウムの取扱い技術といったところが特徴になってまいります。
 次に4ページに移りまして,高温ガス炉の特徴です。第一の特徴として優れた安全性を有しているということです。東京電力福島第一原子力発電所事故によって強く認識された軽水炉のリスクということで,例えば炉心溶融とか水素爆発といったことが原理的には高温ガス炉では起こらない,起こす可能性がないというのが特徴でございます。
 高温ガス炉に例えば東京電力福島第一原子力発電所と同じような状況が起こった場合どうなるかは,その下に示してございまして,制御棒が未挿入でも自然に原子炉出力が低下いたします。また,崩壊熱除去のための炉心冷却設備が不作動でも,電源がなくても原子炉は自然に冷えてまいります。その後,原子炉は自然に静かに停止していくということで,大量の放射性生成物が外部に放出されるということはございません。
 それともう一つの特徴が右側でございまして,高温ガス炉は950℃の熱が取り出せるということで,非常に多様な熱の利用が可能になります。その下の図にその一例を示してございます。例えば水素を作って,高温の熱を供給して,水素還元製鉄に使うあるいは水素を燃料電池自動車に供給する,高温の熱を化学石油コンビナートに供給する,もちろん発電もできますし,発電以降の排熱を使って海水の淡水化をするということもできます。
 このように高温ガス炉では多様な熱利用が可能であることから,化石燃料からの二酸化炭素排出量を大幅に削減することが可能になります。
 それから,非常に温度が高いということで,軽水炉に比べて例えば発電であれば発電効率が高い。高温ガス炉の場合では50%程度まで発電効率を高めることができます。それから,熱を非常に高い950℃の領域から低温の領域まで段階的に利用するということで,非常に高い熱利用率を得ることができます。80%程度ぐらいまで熱を利用することができるということが次の特徴です。
 次に,5ページ目に移っていただきまして,この高温ガス炉といいますものは第4世代原子力システムに定義されます。第4世代原子炉システムというのは,ここに示しますような六形式が定義されておりまして,我が国においてはもんじゅ等のナトリウム冷却高速炉のほか,VHTRに関する研究が先行しています。この二つの炉形につきましては,かなり早くから日本の国内で研究開発を進めておりまして,超高温ガス炉につきましては,HTTRと呼ばれる試験研究炉も既にあります。こういうようなことから,この高温ガス炉とSFRの研究が先行しているという状況であります。
 次に,6ページに移りまして,高温ガス炉開発の歴史と将来展望について説明いたします。まず,日本ではR&Dを1960年代から行ってまいりました。その後1990年代に我が国最初の高温ガス炉でありますHTTRを建設いたしました。その後2004年には950℃の熱の取り出しに成功しておりまして,引き続き試験研究を行っているという状況でございます。
 諸外国に目を向けますと,イギリスにおきましてDragon炉という最初の高温ガス炉が造られましたが,これについては運転を終了しています。ドイツにおきましては15MWeの実験炉を造りまして,その後,THTR-300と呼ばれます発電用の原型炉を建設いたしました。いずれにつきましても1980年代の後半には運転を終了しています。
 なお,ドイツの原子炉AVRにつきましては950℃の炉内最高温度を達成していますが,日本のようにこの950℃の熱を原子炉の外に取り出したという実績はございません。
 次に,アメリカでありますけれども,アメリカもPeach Bottomという実験炉を造りまして,その後,発電用の原型炉ということで,Fort St.Vrainという炉を建設いたしました。これら2つの炉については1980年代の後半に運転を終了しています。その後,2000年代の半ばになりまして,次世代発電プラント,原子力プラントということでNGNPというプラントのR&D,設計が今行われているという状況です。
 それから,中国につきましてはドイツの技術を基にいたしまして,1990年代から急速に研究開発を進めています。まずHTR-10という研究炉を建設いたしまして,これについては試験研究を続けています。それに加えてHTR-PMという発電用の実証炉を今建設している状況です。
 それから,韓国につきましては,NHDDと呼ばれます原子力水素開発実証計画というのがございまして,これのR&D,設計を進めている状況であります。
 その次の7ページ目に,今の概略の現状を示していまして,先ほどの中国のHTR-PMにつきましては2017年末に建設完了ということを言っております。また,中国の福建省,南の方ですが,新たな高温ガス炉の建設計画が進められています。
 米国につきましてはNGNP,次世代原子力プラントの計画が引き継がれていますが,最近天然ガス価格下落の影響もありまして,建設に進むという段階には今は至っていません。
 それから,米国,韓国では高温ガス炉システムの建設に向けたユーティリティやユーザー,ベンダーからなる産業界のアライアンスが設立されておりまして,高温ガス炉の建設に向けた支援活動を行っております。
 ドイツにつきましては,既に原子力から撤退する政策になっておりまして,高温ガス炉計画については実用化せずに終了しています。
 それ以外の国としてカザフスタン,インドネシアなどで日本の原子炉技術を導入して,高温ガス炉の建設をしたいという国が今,現れております。
 次に,高温ガス炉技術研究開発に進みます。9ページに高温工学試験研究炉(HTTR)の概要を示してございます。HTTRは我が国初の黒鉛減速ヘリウムガス冷却型高温ガス炉でございまして,原子炉熱出力が30MWt,原子炉出口冷却材温度が950℃です。一次冷却材のヘリウム圧力が4MPa,出力密度は2.5W/ccとなっております。
 その下にHTTRの概観及び内部の写真が示してございます。このHTTRを建設するに当たりましては,日本原子力研究開発機構では多くの研究開発を実施していまして,燃料・材料,炉物理,熱流動に関するR&Dを行っています。これについては後で少し述べさせていただきます。
 この高温ガス炉(HTTR)については臨界が1998年,2004年に原子炉出口温度950℃を達成しています。2010年に連続50日の950℃運転を実施しておりまして,合わせて安全性実証試験ということで,炉心の流量を喪失する試験を実施しています。
 現在は新しい規制基準に基づきまして,安全評価等を実施しておりまして,再稼働に向けた準備を今行っている状況でございます。
 次に,10ページですが,燃料の研究開発です。HTTRの燃料はこの真ん中に示されますように1mm弱の非常に小さな燃料からなります。この燃料は真ん中に0.6mmぐらいの燃料核がありまして,それを4層のセラミックス層で覆うような燃料となっています。このような被覆燃料粒子を隣に示すようなコンパクトに固めて,それを炉心に装荷する構造になっています。この燃料につきましては,原子燃料工業と共同で商用規模の燃料製造技術を確立しています。高真(しん)球度・高密度の燃料核の製造方法,被覆技術,コンパクト成形技術などの確立を済ませています。その後,日本原子力研究開発機構ではHTTRを運転したりして,その燃料の性能を実証しています。
 右の図が示しておりますのは,950℃の50日連続運転をしたときに燃料から放出されるクリプトン88,希ガスの量を示したものです。こちらに示しますように米国の原子炉,ドイツの今までの実証炉によりその放出率が2桁から3桁低いということで,非常に高性能な燃料が製造できているということが示されます。また,運転中にクリプトン88の放出率が変わっておりませんので,被覆粒子燃料が破損をしたというようなことはございません。このように燃料については民間企業を含めた世界一の国産技術のみで建設を行うことができます。
 次に黒鉛,金属材料の開発について説明をいたします。金属材料については950℃の中間熱交換器で使うハステロイXRを三菱マテリアルと共同開発しています。これについては米国で開発されました既存の合金ハステロイXをベースに,各種の合金成分を添加することにより,ヘリウム中の不純物による腐食を抑制すること,ボロンの含有量を最適化することで,クリープ特性を大幅に改善しています。
 黒鉛材料につきましては,高強度,耐放射線性のすぐれた黒鉛を東洋炭素と共同で開発しておりまして,この黒鉛につきましては中国の原子炉であるHTR-10及びHTR-PMで使用されています。
 次に,12ページに炉物理の研究開発の成果を示しています。炉物理の研究開発につきましては,HTTRを建設する前にVHTRCという臨界実験装置を作りまして,この試験装置を運転することによって,炉物理に関する各種のデータを取得しています。この結果,核設計の計算手法等の比較によりまして,HTTRにおける核設計の計算手法の精度が所定の誤差以内に収まるということを確認しております。
 次に,13ページに移りまして,熱流動の研究開発の成果です。熱流動の研究開発につきましては,Helium Engineering Demonstration Loop,HENDELというHTTRと同じ温度,圧力での炉心,炉床部構造物などの実証試験を行うヘリウムガスループというのを造って試験を実施いたしました。
 炉心については燃料体スタック実証試験部,炉床部構造物については,炉内構造物実証試験部を造りまして,燃料の伝熱性能であるとか炉内構造物の構造健全性などを確かめております。それから,この試験部にヘリウムガスを送るヘリウムループを運転することによりまして,ヘリウム純化設備,ヘリウム循環機,ヘリウム冷却器,高温配管等の性能を検証してございます。
 次に,14ページですが,これはHTTRの950℃試験の運転で得られた成果を示しています。炉心の特性ということに関しましては,燃焼期間中の制御棒の位置を計測いたしまして,制御棒の位置がほとんど変わらないこと,つまり非常に過剰反応度を一定の状況に保つことができるということを確認しております。
 それ以外にも冷却材の管理ということで,ヘリウム中の不純物の濃度管理技術を確立するとか,中間熱交換器のような高温機器の性能を確認すること,プラントの制御ということで,流量温度の制御が安定にできるということをHTTRの高温試験運転で確認しております。
 15ページは高温ガス炉の安全性に関する研究を表としてまとめております。高温ガス炉では,この表に示しますように想定する事象としては,反応度添加であるとか冷却機能喪失,被覆粒子燃料の閉じ込め機能喪失,放射性物質の拡散,黒鉛の酸化等が非常に大きな事故事象となりえます。
 個々の想定する事象につきましてはそれぞれ想定されうる原因を特定いたしまして,研究を実施してきています。例えば一番上の反応度添加,停止機能喪失につきましてはHTTRを用いまして,制御棒引き抜き模擬試験を実施しています。また,冷却材の流出,冷却機能喪失については,これもHTTRを使った安全性実証試験を行っています。被覆粒子燃料の閉じ込め機能の喪失についても,各種のデータを取得してきていますが,今後更に高燃焼度における閉じ込め性能の確証試験等などを実施していく予定でございます。
 それから,高温ガス炉の場合,配管破断事故が起こると,炉内に空気が侵入いたしまして,黒鉛が酸化するというのが一つの問題です。このような酸化挙動を解明するために,HTTRの建設の前に空気侵入事故模擬試験あるいは黒鉛酸化試験を実施して,その挙動を確認してきています。その一部について以降説明をいたします。
 16ページでございますが,HTTRを使った安全性実証試験ということで,冷却機能の喪失を完全に模擬した試験について記載しております。この試験ではガス循環機を完全に停止いたしまして,一次冷却材流量を完全にゼロにいたしました。また,このときに原子炉のスクラム操作などはしない。したがいまして,制御棒は同じ位置にとどめたまま全く動かさないという状況にいたしました。
 左の図がまず流量を示していまして,流量が100%から一気にゼロになるということが分かると思います。これに伴いまして,原子炉出力は温度のフィードバック効果によりまして,全くスクラムもせずにゼロになるということを実験的に確認しています。そのときの燃料の温度は,その一番下の図に示しますが,これは試験では計測ができませんが,解析により評価いたしまして,非常に低い温度で安定しているということが分かります。
 このように原子炉の冷却材流量がゼロになった場合でも,温度フィードバックによりスクラム操作なしで原子炉が自然に停止し,原子炉は一定の低出力で安定し,自然に冷却されるということが確認できています。このように高温ガス炉はすぐれた安全性を持っているということが確証できています。
 17ページは空気侵入事故に関する研究開発の成果を示しています。左側の図は一次冷却系の配管が破断したときに,どのように空気が入ってくるかということを確認する試験であります。このように黒鉛とヒーターからなる試験装置を作りまして,配管破断を模擬した弁を開けて空気を入れるという試験を実施しています。これによって,破断してもすぐに空気が入るというわけではなくて,ある程度遅れて空気が入っているということなどを明らかにしています。
 また,右の図ではヘリウムの中に酸素を混ぜまして酸素,空気が入った場合に炉心の黒鉛がどのように酸化していくかという試験を実施しております。このように酸化に関する実験もしておりまして,これらの試験結果につきましては全てHTTRの安全評価に用いられています。
 次に,熱利用技術の研究開発について御説明をいたします。19ページに高温ガス炉の熱利用を示してありまして,左の図に示しますように高温ガス炉の場合は950℃の熱を水素製造に使い,発電に使い,更に低温熱利用にする。熱を段階的に使うことができます。
 これにつきまして,まず水素製造の技術については,熱化学法ISプロセスの研究開発を日本原子力研究開発機構で実施しています。それ以前にメタンの水蒸気改質についても,試験研究を行っておりまして,この研究開発は既に終了しています。発電の技術については,ヘリウムガスタービンの発電技術を日本原子力研究開発機構で今,研究開発を実施しています。それ以外の蒸気タービンの技術については,既にメーカーで技術が確立されています。また,低温熱利用についても既にメーカーで技術が確立されております。
 それでは,熱化学法ISプロセスとヘリウムガスタービンについて御紹介をいたします。20ページですが,熱化学法ISプロセスですが,水の熱分解を行う場合には,4000℃以上の高温の熱が必要になりますが,このISプロセス,ヨウ素と硫黄を利用した場合には約900℃の熱で水を熱分解することができます。
 こちらの下の図が化学反応を示しておりまして,ヨウ化水素の分解反応,硫酸の分解反応,それぞれの反応から戻ってきたヨウ素並びに二酸化硫黄と水を混ぜて,再びヨウ化水素と硫酸に戻すブンゼン反応の三つの反応工程からなります。この硫酸の分解反応にちょうど900℃という高温ガス炉の温度が最適に利用できるということになります。
 この化学式を三つ足していきますと,実際に水を入れると水素と酸素だけが出てくるということで,このヨウ素と硫黄はプロセス内で循環して,有害物質の放出がないということがこのプロセスの特徴であります。高温ガス炉と組み合わせるということで,全く炭酸ガスを排出するということはありません。
 次に21ページですが,熱化学法ISプロセスの研究開発の歴史と現状です。これは1997年に原理検証試験を実施いたしまして,その後工学基礎試験ということで,2004年には毎時30リットルの水素を一週間連続製造する試験に世界で初めて成功しています。その後,このガラス製機器から工業材料の機器を用いた連続水素製造試験装置という方向に移っていまして,この試験装置は今年の3月に完成しています。今年度からはこの装置の試験を開始しているところです。将来的にはこのような熱利用系をHTTRに接続して,熱利用技術の確証をしていきたいと考えております。
 22ページ目は今説明しました連続水素製造試験装置の写真を示しています。これは水素製造量としては毎時200リットルでありまして,対象機器を扱っている点が特徴です。全て工業用材料ということで実用化に非常に近くなっております。また,計測制御についても新しい計測制御システムを使っております。
 次に23ページでありますが,ガスタービン発電システムの研究開発の現状です。ガスタービンにつきましては,日本原子力研究開発機構と三菱重工業で3分の1スケールのガスタービンシステムにある圧縮機を造りまして,それをヘリウムガスでループに入れて運転をして,その圧縮機性能を確認しています。そのタービン圧縮機の写真が下に示してありまして,世界最高効率の92%でヘリウムガスを循環できるということを既に確認しています。
 それから,熱を回収するためのコンパクト熱交換器の開発もしていまして,これについては超細密オフセットフィンを採用した低コストのコンパクト再生熱交換器を開発しています。今後,HTTRにこういったガスタービンシステムを接続して,高温での安定性試験,運転制御試験等を行い,残された技術の確証をしていきたいと考えております。
 最後まとめますと,高温ガス炉は固有の安全性を有する原子炉でございまして,二酸化炭素排出量の大幅な削減に貢献が可能であります。我が国は世界一の高温ガス炉技術を持っています。現在HTTRの運転を通じて高温ガス炉の安全性,高温核熱の安定供給性の確証をしています。また,熱利用技術として,ISプロセスによる水素製造技術,ガスタービンの発電技術の研究開発を今実施しているという状況です。
 説明は以上です。

【岡本主査】 ありがとうございました。それでは,ただいまの事務局,日本原子力研究開発機構からの御説明について,委員の皆様から御質問,御意見等を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。梅田委員。

【梅田委員】 一つよろしいですか。事務局の方に一つお伺いしたいですけれども,エネルギー基本計画,最初に説明いただいた資料の2ページの下に,取り組むべき技術課題として,高温ガス炉等の研究開発を国際協力の下で推進するということで,国際協力というのが何か前提のように思えますが,この辺の考え,背景を教えていただければよろしいかと思いますが。

【笹川課長補佐】 国際協力におきましても,国内の技術を基にしての国際協力ということになりますので,国内の技術開発も含めてと承知しております。

【梅田委員】 では,特にこれが前提条件というわけじゃなくて,飽くまで国内の技術をもって,国内で開発したものを国際に使っていくという理解でよろしいですね。

【増子原子力課長】 補足いたしますと,高温ガス炉の場合は日本が一番進んでいるということと,カザフスタン等様々な国から日本の技術についての期待が高いということが背景にあります。そういった日本の技術を国際展開する上でのニーズが高い国との国際協力と,あとはアメリカ等の過去にガス炉の実績がある国とこれから協力しながらやっていくといった,二つの側面でこの国際協力というのが書かれていると承知しています。

【梅田委員】 ということは世界の状況の背景もあるということですね。分かりました,ありがとうございます。

【岡本主査】 そのほかいかがでしょうか。亀山委員,お願いします。

【亀山主査代理】 今,国際的な協力というお話もあったのですが,将来日本のこの原子炉を国内だけではなくて海外に持っていって,そこからクリーンな水素にして運んでくるという構想はエネルギー基本計画の中でも持続可能エネルギーを将来受け入れるための水素社会を築くというシナリオと符合しますが,そのときに先ほどの御説明では,韓国も中国も同じように恐らく諸外国に対して売っていこうとされるのではないかと思います。そのときにいわゆる安全基準とかその辺りの概念は国際的な統一的な基準というのが今,整理されようとしているのか,それとも安く売ってしまうという競争になりかねないのか。その辺りがちょっと心配で,できたら日本が今一番リードしている,一番安全性について配慮して造っている国として認めてもらえるならば,安全基準というものを日本がリードして,これを商用にした場合にはこういう安全基準を満たしたものというものを国際社会に提案するミッションもあるのではないかと思います。
 それを今からやらないと韓国,中国,名指しでは問題かもしれませんが,そういうところが商業的になってくると,基準ができていないと競争的な価格の話になってくると。だから,今からやるべきことだと思います。先ほどの説明の中で国際的なこの原子炉についての安全基準の議論はどのようになっているのでしょうか。

【増子原子力課長】 御指摘のとおり,先ほど資料に入っていた第4世代の原子炉については,まだグローバルスタンダードのセーフティの基準というのはほとんどできておりません。もちろん議論に入っているものはありますが,第4世代の中で一番進んでいる高速炉でも,まだ国際的な基準のところまでいっておりません。
 そういう意味では第4世代については高速炉についてもガス炉についても日本が先頭を走っているということもありますので,これから日本原子力研究開発機構がHTTRを使っていろいろな安全性の実証実験を実施していくことについて,まずは将来の国内的な実用化を目指し,その際に規制当局にはたらきかけて,まず国内的にオーソライズしていくことが重要であると考えています。その上で国際的なスタンダードまで持っていくというプロセスをにらみながら展開していくというのは重要だと思います。
 先ほど中国,韓国という話がありましたが,韓国はまだ実験炉もできていない段階です。中国は実証炉という話がありましたが,これはドイツが開発をやめた後,技術を導入しただけで,安全基準ができているということは承知しておりません。そういう意味では,技術と同時に規制技術についてもしっかりと日本から国際的にはたらきかけていくというのが御指摘のとおり重要だと認識しています。

【岡本主査】 非常に重要な御指摘であると思いますけれども,これについては日本原子力研究開発機構からも。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 日本原子力研究開発機構もこの安全基準は非常に重要だと考えておりまして,まず規制庁には直接原子炉を造っていかないと申請ができない状況にあります。現在は,原子力学会の中にこの安全基準を議論する委員会を作っていただきまして,そこで,各専門の先生方に御議論を頂いているところです。これで安全設計基準の案というのを今年度中に作りまして,我々の計画ではそれをIAEAに持っていきまして,IAEAの中で日本主導型の安全設計方針というのを認めてもらうようにしたいと思っています。このIAEAの方につきましては,IAEAの研究協力計画ということで,今の予定ですと今年度末ぐらいにそれが始まるという予定になっています。
 ですから,まずは案の段階ですが,そういう方向でできるだけ世界をリードできるような安全設計方針というのを作っていきたいと考えています。

【岡本主査】 これは多分,国際戦略を考える上で物すごく重要な視点であると思っておりますし,逆に福島のような過酷事故を経験した日本であるからこそ,それを踏まえた高温ガス炉の安全設計基準というものが作れるんだと思っておりますので,それは非常に重要な視点で,しっかり議論できればと思っております。
 そのほか。はい,お願いします。

【亀山主査代理】 今のお話に関連しますが,とかく本体の方の安全だけをかなり真剣に考えがちで,実際には本体を売っても,利用系がないと使えないわけですね。利用系については,日本は更にいろいろ水素製造をはじめ,最近は文部科学省の長期のプロジェクトで,今度はSIPに変わりますけれども,あそこで研究されているアンモニアの製造も,うまくすればこちらが実用化になったときにもつなげられるので,日本としては発電,水素と,肥料用にも使えるアンモニアと,そういうものも研究開発しているわけで,そのときにそこをつないだ場合のいろいろな安全性についてもやっぱりきちんと議論しておかないと,本体は安全だけど,いざ接続したり,またつなぐために実験をしたりしている最中に何か事故が起きたとすると,本来は危ないじゃないかというイメージを国民は持ちかねないので,是非本体と同時に利用系の研究開発においてもその安全性という安全運転の視点を忘れないで,研究するということは大切なように思います。

【國富センター長(日本原子力研究機構)】 そのとおりだと思っておりまして,先ほど申し上げた原子力学会の委員会においても,IAEAの委員会においても熱利用系を接続した水素製造するということの安全基準についても,一緒に審議いただいている状況です。

【岡本主査】 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。米田委員,お願いします。

【米田委員】 東芝,米田でございますが,本委員会の結果を報告書にまとめるというようなことが書かれていたと思いますが,今,出していただいている資料も全部そういう形でまとめられていくのだと思いますけれども,その報告書は誰を対象にどういうところに出していくのかということを冒頭で皆様の同意を得ておかないと,少し方向性がずれたりすることがあるのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。

【笹川課長補佐】 私の最初の説明が不足していて大変申し訳ございませんが,資料1-2を御覧いただきまして,こちらの高温ガス炉技術研究開発作業部会におきましては,文部科学省の審議会である科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会原子力科学技術委員会の作業部会となっておりまして,そちらの作業部会で行われた議論につきましては,原子力科学技術政策一般について御議論いただきます,親委員会の原子力科学技術委員会の方に報告をされる形になります。
 また,先生方の御議論をまとめていきまして,今後の研究開発の方針について,参考にさせていただくということになります。

【米田委員】 そういたしますと,これは一般の方々が見るような資料ではないと,そういったことを配慮した分かりやすい記述的なことには配慮しなくてもよろしいということでしょうか。

【増子原子力課長】 基本的には専門的な報告書というよりも,こういう原子力を取り巻く環境を考えると,高温ガス炉のような新しい炉形については国民の皆さんに理解を得るというのは非常に重要ですので,その辺は詳しく分かりやすい記述にしたいと思っていますし,当然,文部科学省の審議会の中での作業部会ですが,最終的には文部科学省のホームページにも載せますし,いろいろな委員会で各種報告していくということになろうかと思っております。

【岡本主査】 ありがとうございます。ただいまの質疑は非常に重要で,非常に細かいところに入り込んでいって,分かりにくい資料が出来上がってくる可能性があるわけですけれども,それであっては先ほど公開について御議論いただきましたけれども,公開をする意味も余りないと思いますので,そういう意味では誰が読んでも分かりやすい資料ということを可能であれば心がけたいと思っております。伊藤委員。

【伊藤委員】 基本的な質問ですけれども,まずこの高温ガス炉というのを日本で造って稼働させるということが大前提なのか,それともまず新興国,途上国の方で需要があった場合にそちらで造って,そして日本は水素の需要があるので,それを持ってこられるようにしようということが主なのか,どちらでまず考えておられるのかということを一つ目,お聞きしたいのですけれども。

【笹川課長補佐】 まさにそういったことについて先生方に産業界との今後の取組も踏まえて御意見をいただければと思っております。

【伊藤委員】 個人的には日本に造る方向で考えるべきなのではないかなと思います。そうじゃないとなかなか国際協力,競争にさらされた場合にやっぱり自国で造っていないものが果たして勝てるのだろうかという部分はあると思うんですね。なので,本当に津波がいつ起こるか分からないという地理状況も日本にはありますので,内陸にもし造れるというのであれば,そちらの方向というのは日本がまさに追求していくべき技術なのではないかという気はするんですね。
 ただ1点だけ,廃棄物というのはどうしても出てしまうことだと思うんですね。そうすると今,本当にある廃棄物でさえもう埋める場所がなかなか決まらないという状況で,新しいものが出ていくということに関して,これが核燃料サイクルの中でガラス固化体になるのかどうなのかということも,ちょっと私は分からないのですけれども,そこも含めてどうやったら理解を得られるのかというのは,やっぱりすごく難しいことかなと思っております。

【増子原子力課長】 今の御指摘は非常に重要だと思っていまして,日本で技術を確立していないものを国際展開かというとなかなか理解が得られないと思います。そういう意味で今,日本原子力研究開発機構にHTTRという試験炉があるので,まずはそこでしっかりと技術的な確立をした後に,国内的にどういう炉形にするかという点が今回の部会で議論の対象になると思っています。その上で海外展開する上で,どういうふうな戦略を持つべきかについても議論していただけたらと思います。まず,この高温ガス炉自体の知名度が非常に低い中で,エネルギー基本計画やいわゆる骨太の方針等に書かれているというところにかなり違和感を持たれている方もおられると思います。
 政治向きな話は申し上げなかったのですが国会,自民党の中でも高温ガス炉議員連盟が発足して,政治の中でも高温ガス炉を,日本でも軽水炉に変わるものとしてのオプションとして持つべきだ,あるいは海外にも展開すべきだという議論もありますので,その辺は幅広い視点から議論をしていく必要があろうかと思っています。

【岡本主査】 ありがとうございます。ただいまの廃棄物のことについては非常に重要な視点で,今日の資料の中に何で入っていないのだろうなと思いますけれども,こちらについては何か日本原子力研究開発機構の方から。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 廃棄物については次回再度きちんと説明する予定でありますけれども,廃棄物はやはりどうしても出てきます。ただ,使用済燃料の量については今の軽水炉の発電システムと比べますと,単位発電量当たりで4分の1ぐらいに減らすことができます。これはセラミックスの燃料を使っているということで,炉心に長く滞在して燃やすことができるので,ごみが4分の1ぐらいになるということは言えます。ただ,それはでも最終的にゼロにならないという問題はあります。
 あともう一ついいのは,セラミックスの燃料ですので非常に長期間安定に置いておくことができるので,空冷で燃料を冷やしたまま貯蔵しておくというオプションもあります。だから,そういったことでいずれは例えばADSみたいな加速器による消滅処理と,どこかでつないでという方法もあるかと思いますが,いずれにしても今のシステムよりは随分少なく安定に置いておくことができるというのは,この高温ガス炉燃料の特徴になっています。

【伊藤委員】 それは直接処分ということになるんですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発協会)】 現状においてはもちろん直接処分というのはできませんが,直接処分をしても安定に置いておくということもできる燃料であるというのは,そういうことは言えると思います。もともとドイツとかで始められた原子炉は,全て再処理はせずに直接処分にしようという方向で話が進んでいました。

【岡本主査】 このあたりは非常に重要な視点であると思いますので,次回しっかりと議論していきたいと思います。簡単に言えば,燃料がガラス固化体の中にもともと入っているというようなものであると考えていただくと分かりやすいのかなと思います。ですので,再処理するなり直接処分するなりいろいろなオプションはとれると。逆に言うとオプションがあり過ぎるので,まだはっきりと見えていないところがありますが,そのあたりはある程度優劣をしっかり考えた上で,考えていかざるを得ないのかなと。そのあたりは次回是非議論させていただければと思います。
 鈴木委員,すいません,よろしくお願いします。

【鈴木委員】 水素製造というか製造するためというかなり明確な一つの役割が打ち出されておりますが,この御説明いただきました資料の1ページ目に,従来の水素製造技術を置き換えてという記述がありますけれども,もうそこは従来の水素製造技術とのベンチマークはもう済んで,こちらが例えば一番エネルギー効率とかそういったものでもいいと,既にそこはベンチマーク済みというところから始まるのか,今回の議論の中でもう一度そういったところ,ほかの例えば褐炭のガス化ですとかいろいろ選択肢があるかと思います。そういったものも今回の議論の中でもう1回出てくるのか,それはどちらでしょうか。

【笹川課長補佐】 資料3に今後のスケジュールがございます。第3回のところに水素製造など多様な熱利用に向けた研究開発の現状と今後の課題というところがございまして,ここのところで詳しく御議論いただければと思っております。

【鈴木委員】 それはもうほかの選択肢も含めての議論ということ。

【笹川課長補佐】 その通りでございます。

【亀山主査代理】 私,水素エネルギー協会の会長をしておりまして,それから,この間できました水素燃料電池のロードマップの審査委員にもなっていましたので,国の水素関係のロードマップに関した情報は押さえていますので,3回目のときにそこら辺を詳しく説明したいと思っています。現在はこの原子力の水素ありきではなくて,いろいろなオプションがあって,今後原子炉の国際的,国内的な認知とともに,今のところ非常に有望な候補者ではあると。もちろん石炭からの水素というシナリオもありますので,そこいら辺は3回目に私の方の情報を御披露したいと思っています。

【岡本主査】 ありがとうございます。それでは,飯山委員,お願いします。

【飯山委員】 全体,技術的なところは次回以降細かく御説明と議論があると思いますが,資料2-2の1-4の高温ガス炉開発の歴史と将来展望のところで,他国が750℃のレベルにとどまっています。その中で日本が950℃の炉ができます。あと,さらに,その高温の取り出しも唯一できているといったところのポイントは,何か日本の固有のいい技術があるからできているかという理解でよろしいでしょうか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 まずさっき申し上げました燃料の技術については,かなり高温の運転でも安定な燃料ができているということ,それから,もちろん黒鉛もありますし,外にヘリウムガスを取り出すためには配管の技術なんかも必要になるのですが,その高温材料のハステロイXRなんかを持っているのも日本だけですし,そういった意味では我々の技術をもってしてのみ,外に950℃を取り出せるのだと思っています。

【飯山委員】 ありがとうございます。

【岡本主査】 そのほかいかがでしょうか。じゃあ,小竹委員,お願いします。

【小竹委員】 実用化のイメージについてお尋ねしたいのですが,まず安全の部分には耐震設計とかそういうのがありまして,やはり地震のときにどれぐらい耐性があるか,それと大きさ,出力の問題,それが将来的な実用化段階でのコストを考えるときには重要になろうかと思います。
 そういう意味で今,御存じのように新規制基準の中では非常に厳しい耐震条件が課せられておるというのが日本の条件ですね。海外とは随分違う状況があります。そういう中で,ここで御議論するこれから実用化とおっしゃっておられるイメージですね。大型炉を目指していくのか,あるいは小さいものといっても結構HTTRもそれなりの大きさでございますし,それが10万kWeとかの電気出力,それぐらいになりますとかなり大きなものになります。そういうものが本当にこれからの新規制基準で想定される地震条件に耐え得るものか,できそうかどうかというのもちょっとこれまで拝見したことがないので,それの技術的成立性の見通しというのは重要ではないかと思います。それが1点。
 それと先ほど高温ガス炉の優れた安全特性は,私ども学生時代から十分理解しております。ただ,安全というのは今申しましたような外部事象,地震とかの影響,それに対する裕度というのも一つ重要になりますし,もう一つ,今回の東京電力福島第一原子力発電所事故の反省として,多重故障のことを考えて新規制基準もできております。そういう意味でこの高温ガス炉でもここに書いてございますような空気侵入あるいは水侵入に対しての多重故障時の影響評価もきちんとやらないと,トータルの安全性としてはなかなか言えるものではないのではないかと。その全体像がないといわゆる典型的な,得意なところでのいいところばかり紹介するという比較は余り適切ではないのではないかなと私どもは感じます。
 その辺を今後技術論の中ではきちりと御説明いただいて,どういう方向を目指してやられようとされているのか,それによって私どもの意見もまた変わってくるかと思いますので,よろしくお願いいたします。

【増子原子力課長】 今,御指摘いただいた実用化のイメージですけれども,確かに耐震設計については,地震が起きて,配管が破断して,空気が入る,水が入るといったらかなりの事態になります。
 ただ,それでもどれだけ抑えられるかというところの技術的な立証説明は次回以降,日本原子力研究開発機構から説明させていただき,実用化のイメージについて議論していただくべきだと思います。出力の規模も高温ガス炉が固有の安全性を維持するには,大体電気出力で30万kWeと言われていますが,本当にそこまで持っていくのかどうか。あとはHTTRである程度技術が確立したとはいえ,一気に実用化にはいけませんので,次にどういう炉形が必要か,その辺についてもイメージを議論していただけたらと思っております。

【岡本主査】 ありがとうございます。私からもちょっと今の件に関して1件あるのですけれども,この話,第4世代が突然出てきているのですけど,私のイメージは950℃で,ここはVHTRと超高温ガス炉と書いてありますが,これについてはかなりまだまだ今後研究開発が必要であろうと。
 ですから,残念ながら水素製造につなげるにはもう少し20年とか先の話だと思っているのですけれども,一方で今,中国で造られているような750℃,それにヘリウムガスタービンを付けたようなシステムというのは,うまくすれば明日にでも設計が始められるというような,今,実用化の話がありましたので,実用化の非常に近いレベルにあると。耐震設計,シビアアクシデント設計についても非常に詳細な議論がなされてきています。
 そういう意味では,可能であれば二つに議論を分けた方がいいのかなと思っているのは,750℃,例えばカザフスタン等,中国等含めて考えられているような,ある程度実用化に非常に近いような原子炉と,水素製造を含めたもう少し第4世代の,ちょっと20年先の炉と二つを一緒くたに議論すると話が発散して,それこそいいとこどりにしか見えないような報告書になってしまう可能性がありますので,ある程度しっかりとした実用化をはっきり見据えた,例えば10年後にある,だから,5年後に建設というのはちょっと難しいかもしれないですけれども,遠くない将来に計算ができるものと20年後に開発が終了するもの,そこら辺をしっかり分けて議論した方がいいのかなというのは強く思っているところであります。
 耐震設計にしても,日本は確かに厳しいのですが,先ほどから世界標準ということがありますけれども,世界標準をベースに考えていく。例えば高速炉なんかで考えられているのは免震とかそういうやり方も当然組み合わせられることも可能でありましょうし,日本で造るということはある意味前提ですけれども,もう少しオプションをしっかり持った形でやっていくことが必要だと思います。
 やはりその中で私はどうしてもシステムとしての安全の成立性よりも廃棄物の問題が気になりますので,廃棄物までを含めたトータルとしての成立性という形をちゃんと実用化ということを考えていくことが重要かなと今,小竹委員からのコメントと感じた次第でございます。
 これは質問というより何となくコメントという形になっておりますけれども,そのほか湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 高温ガス炉の対象と範囲をある程度定めておかないと,議論が発散してしまうと思います。また,開発期間と予算規模もある程度想定しておかないと議論が発散してしまうと思います。そういった対象や範囲,開発期間や予算規模の検討もこの委員会のビジョンですと言われると議論が発散してしまうと思うので,ある程度は提示していただきたいと思います。例えば,HTTRでは,今まで投入した資金が建設費とR&Dを含めて,20年間ぐらいで2,000億円ぐらいだったと思います。商業炉,実証炉までに必要なお金はもう少し大きいのではないかと思いますが,そういうお金を国が全部出すのか,あるいは民間事業者というものとのコンバインドでするのかなど,ある程度そういう範囲と規模を描いたビジョンを初めに共有化していただかないと,議論が発散してしまうと思います。また開発期間としては,第4世代は2030年から実用化ということが国際的なコンセンサスだから,それを前提で考えるのでしょうか。それも条件にしてもいいと思います。
 それから,廃棄物の問題をやるとなるとこれもトリウムの問題がまた出てきますし,これもまた議論が発散してしまうと思います。ドイツのTHTRにしても,アメリカのFort St.VrainにしてもPeach Bottomにしても,燃料はトリウムです。だから,燃料の種類も限定しておかないと議論が発散するなという予感がしています。
 それともう一つ,過去のいきさつをどこまで引きずるのかということですね。950℃,つまり1000℃を決めた当時には,電力ではなく,熱利用の鉄鋼から始まっているわけです。産業用のプロセスヒートということが前面に出て,熱電供給ということは,軽水炉とFBRの国の中心的な路線があったということもあると思いますけれども,当時,引っ込んでいたと思います。そういう過去にあったしがらみをどこまで引きずるのでは,議論が分かれてしまいます。
 その上で,先ほどから話に挙がっているすぐできる炉,いわゆる日本原子力研究開発機構さんがよくリードプラントと言われる,HTTRから1桁スケールアップさせた高温ガス炉を目標において現実的なR&D計画を立てるのか,又は,エネルギー基本計画や骨太の方針で言われたとおり,水素製造を含めた多様な産業利用に向けたR&Dの計画を立てるのかということは,範囲の一つだと思います。
 それから,国際協力の下というのもこれもまたいろいろな議論が出そうなので,国際協力の在り方として,三つか四つの具体例を挙げていただいた上で,国際協力の優先順位というものを考えていかないと,幾らでも議論が発散してしまうと思います。
 ですから,いろいろな観点について,幾つかのオプションを会議の前にお知らせいただければ,もう少し的を絞った,深めた議論ができるので,高温ガス炉に対するビジョンとスケジュールとR&D計画ができていくのではないかと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。この資料2-1,文部科学省の資料の4ページ目に政策的論点ということで3項目まとめていただいておりますけれども,私としては今の湯原委員の御意見とも関連すると思いますけれども,まずは中国等と同じ750℃クラスの実用化プラントについては,例えば一つのサンプルプラントのようなものを提示いただいて,それに対する課題とロードマップのようなものを明確化する。
 それプラスもう少し熱利用,先ほどから御指摘いただいています水素製造を含む熱利用を考えたような950℃については,できれば過去のしがらみは全く捨てた形で,改めてそういうものを造る場合にどういうような課題があって,どういうようなロードマップになるのか。個人的にはその二つのロードマップをちゃんとしっかり分けて議論していかないと,そこで混在させるとどうしても話が発散するような気がしていますので,私としては簡単に言えば750℃実用化プラントと950℃,第4世代プラントといったような形で,大変やりにくいかもしれないですけど,二つのサンプル的なターゲットを持った上で,それぞれの課題と研究開発課題,優先順位というものを考えていけると分かりやすいのではないかなと思いますが,いかがでしょうか。湯原委員からの御指摘を岡本なりに少し整理させていただきましたが,ほかの委員若しくは事務局からのコメント。飯山委員,お願いします。

【飯山委員】 そうなりますと,それぞれ利用技術はそれぞれに対応してやるということですか。つまり例えば水素で言うと950℃の方で検討し,ヘリウムのガスタービンですと750℃でも検討するというように,それぞれの炉の温度に応じた利用をその炉のプロジェクトの中で一緒に開発をするという理解でよろしいでしょうか。

【岡本主査】 サンプルプラントを考えるということはそういうことになろうかと思います。水素は950℃でないとISサイクルが回りませんので厳しいですけれども,プロセスヒートという意味ですと750℃でもいろいろな応用がある程度はあり得るのかなと思っておりますので,そういう意味で温度を750℃と950℃と分けさせていただきましたけど,そこの間にはかなり大きなギャップがあると個人的には思っておりまして,950℃の方が多目的で非常にいろいろなものに使える,オプションがいっぱい出てくるのですけれども,少し第4世代には,若干まだハードルが高い。
 750℃についてはある程度中国で造られているということもありますし,さほどハードルは高くはないだろう。それぞれについて恐らく規格基準のようなものも違ってくる可能性もあるという形で,その二つに対するロードマップを作るということがいいのかなと思っております。それは熱利用の方も合わせてと。亀山委員,いかがでしょうか。

【亀山主査代理】 750℃は水素と関係ないというお話もありましたが,実は750℃で高効率に発電していただければ,簡単に電気分解で水素ができますし,ハーバー・ボッシュでもってアンモニア肥料もできるので,特にインドネシアのように将来人口が世界2位になるところでは,エネルギーと同時に肥料が必要なのですね。
 そういうところで日本のこの安全な原子炉を国際協力で供与してやると,そこで発電でエネルギーも出せるし,水素からアンモニアで向こうの肥料にもなるし,日本はこちらから技術供与したので,是非そのうちの何割かは水素でいただければ,750℃でも日本のエネルギー政策の中で,海外からわざわざ太陽から作らなくても,太陽から発電して水素を作らなくても,高温ガス炉で発電した水素キャリアで運ぶというシナリオにもなります。水素に関してはどっちでもできますと申し上げます。

【岡本主査】 ありがとうございます。お願いします。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 ちょっとガスタービンについては少し微妙で,実は850℃ぐらいが最適な温度なので,750℃と950℃と二つになっちゃうと,ちょっとガスタービンは入れにくいというのがあるので,その辺少し我々の方で考えさせていただければと思います。

【岡本主査】 別に数字に余り強くこだわりはないものですから,一つは実用化プラント,この将来的な実用化の検討に向けた論点ということの実用化プラントの部分。熱利用を主として考えるVHTR,第4世代ということで分けて御提案,議論させていただければと思うのですけれども,ちょっと個人的には余りガスタービンにこだわらなくてもいい気もしますが,その当たりは実用化の議論の中でしっかり議論できればいいのかなという気はしております。

【亀山主査代理】 この冒頭で安全基準を考えましょうということですが,750℃にこだわらないですが,実用化レベルでの安全基準と多目的な950℃での安全基準は違ってくると思います。実用化ベースにおいて日本としてイニシアチブをとって,標準,安全基準はこうだといって,それから高温の利用のときもこういうふうにあるべきだと言わないと,日本が950℃にこだわって,最高級のガス炉の話で突っ走ってしまうと中国,韓国はあれは別の話ですよと,うちは750℃の実用化でやるから,安全基準は私たちが決めたのでやっていこうという,恐らくそういう戦略で来ると思います。だから,日本としては両方きちんとイニシアチブをとるには,相手の国の動きを見て,実用化の炉のケースとその上を行くケース,両方ロードマップで描いて安全基準のイニシアチブをとるとした方が私はいいと思います。

【岡本主査】 御注意ありがとうございます。私もその御意見に賛成です。
 そのほか委員の皆様からいかがでしょうか。若しくは事務局はそういう考え方でよろしいですか。はい。よろしいですか,そのほか,國本委員お願いします。

【國本委員】 先ほどからお話が出ていますように実証炉とこれからの研究炉ということですけれども,これからの研究炉に対してどういうR&Dをしていくのか,今ある技術でどういうものができるのかというのを区別していくといいかなと思っています。

【岡本主査】 ありがとうございます。もちろんそのVHTR,超高温ガス炉については,今後しっかりとしたR&D,ロードマップを作っていかなくてはいけないと思っておりますので,そこは忘れないようにしたいと思います。湯原委員。

【湯原委員】 今,国際的な安全基準の動向は,揺れていて,流動的な面があるような気がします。ASTRIDも,20か条の安全規制を新たにフランスの規制局が要求しているというのを見ていると成り立たないようなことをどんどん言われていると感じます。だから,今議論されている安全基準に余りとらわれずに,検討していく方がよいと思います。私は今の議論がずっといくとは思えないし,このままでは原子力が競争力をどんどん失っていくし,バランスを欠いているところがあるのではないかと私は見ています。
 IAEAの安全基準に当てはめていった場合にどうなるかということを考えるのはいいけれども,それにとらわれてある方向を決めていくというのはしない方がいいと思う。地震の問題は先ほどあった議論のとおりで,今の耐震基準は破損まで大体10倍から15倍の安全率を持っているわけだから,ガス炉の建築がどうこうということも余りとらわれない方がいいと思います。
 重要なのは,ガス炉の性能と機能と産業上へのインパクトであり,実現までの開発期間と予算規模だと思います。そういう意味で主査が言われるように,二つの温度領域に分けて考えるのも私はいいのかなと思います。また,水素製造方法としても,高温水蒸気電解やSOFCのコストなど, IS法を考えたときとは違う状況になっています。IS法を決め, 1,000億円のHTTRを造ると決めた1980年台当時とはいろいろな分野でイノベーションがあり,技術レベルも変わっているから,整理していかなくてはいけないと思います。そういった整理を踏まえて,議論していくべき温度領域が浮き上がると思います。

【岡本主査】 重要な御指摘だと思います。それはIAEAに持ち込まれた議論をするというのはそういうことも含めてやられるのだろうと思っている次第であります。
 もう一点は,やはり新知見をしっかり考えていくと。昔作ったロードマップにとらわれ過ぎないということが重要で,それは再処理路線を必ず堅持しなきゃいけないということもある意味,少しいろいろなオプションの一つであるという形に考えることも含めて,直接処分の在り方等も含めて新知見,環境条件,新知見がどんどん増えてきている中で,最適なロードマップという形を考えていくということが必要だろうと思っておりますので,そのような形で進めさせていただくということでいかがでしょうか。
 そういうような形で今,いろいろな御意見を頂きましてどうもありがとうございました。

議題(3) 今後の進め方について

【岡本主査】 それでは,この資料2につきましてはここまでにさせていただきまして,資料3,今後の進め方,大分今の資料2の中で議論が入ってきてございますけれども,まずは事務局の方から今後の進め方についてお願いしたいと思います。

【笹川課長補佐】 それでは,お手元の資料3,1枚紙になりますけれども,こちらを見ていただきまして,こちらは1ぽつ,議論いただきたい論点ということと,2ぽつ,今後のスケジュールということがございます。
 議論いただきたい論点については,岡本主査もおっしゃっていらっしゃいましたように,先ほどの議題2の方でかなり先生方から御議論いただきましたけれども,今後の進め方についてどういった観点から見ていただくかということで,研究開発の意義はどこにあるのか,将来的にどのような社会的・経済的有用性があるか,安全性の確保の関係,多様な熱利用の関係,また環境問題への貢献の観点があるのではないかということが1点。
 また,2点目として,現時点において高温ガス炉の技術開発をしていくということについて技術的な課題,社会的な課題についてが2点目。
 3点目といたしまして,人材育成の貢献や国際協力による研究の加速及び技術の国際展開の見込みがあるかどうかについて。
 4点目につきまして,上記の事項を含めまして,実用化に向けて費用分担も含めて産業界とどのように協力してやっていくべきであるか,また今後の研究開発の進め方はどのようにあるべきかといった観点から御議論いただくのがよろしいのではないかということを事務局としてはまとめているところでございますけれども,こちらについて御議論をいただければと思います。
 合わせまして,今後のスケジュールについても一緒にお話をさせていただければと思います。こちらは全5回の作業部会を予定しておりまして,今回が第1回となりますが,第2回,第3回を7月中旬,下旬,4回,5回については8月上旬,下旬と考えておりまして,第2回については高温ガス炉の特性に関して,具体的な研究開発状況がどうなっているのかということと今後の課題について。第3回,第4回につきましては,先生方からも発表いただく機会になるかと思いますけれども,水素製造など多様な熱利用に向けた研究開発の現状と今後の課題,国際状況を踏まえた研究開発の方向性について御議論いただければと思います。また,第4回の終わりには今後の研究開発に向けたロードマップの事務局案を出させていただければと思います。8月下旬に中間報告書の取りまとめとさせていただければと思っております。

【岡本主査】 ありがとうございます。ただいまの今後の進め方について,委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。

【増子原子力課長】 いずれにしても先ほど来,各先生方から今後の進め方についていろいろな御議論がありましたので,資料3については第2回までにもう一回事務局の方で先生とも相談させていただいて,再整理して今後の進め方については提示させていただきたいと思っています。

【岡本主査】 ありがとうございます。まとめますと基本的にここに書いてある四つのぽつについてはどれも是非この中で議論させていただきたいと思いますけれども,その中の前提となる高温ガス炉のプラントのイメージができれば実用化炉という,実用化にすぐ近い,すぐ近いといっても10年という時間はかかると思いますけれども,その程度の比較的低温の高温ガス炉,いわゆる次世代,第4世代炉の超高温ガス炉,この二つについてそれぞれそのロードマップを作っていくという形にさせていただければと思うのですが,この辺りはいかがでしょうか。事務局としては作業量が倍になってしまうのでちょっと大変かもしれないのですけれども,よろしいでしょうか。米田委員,お願いします。

【米田委員】 そのお考えでよろしいかと思うのですが,気になるのが出力というのは余りパラメータにはなってこないものなのでしょうか。温度だけでの議論をされているように感じるのですけれども。

【岡本主査】 もちろん出力も先ほどからHTTRの10倍にするとかそういう話がありましたけれども,それも一つのオプションだと思いますが,高温ガス炉の場合,大きくし過ぎるとせっかくの固有の安全性が失われるとかそういう特徴もありますので,おのずと軽水炉のように100万kWeということはあり得ないということが大前提になっているかと思います。その中で最適なところをしっかり考えていければいいのかなと。その中にロードマップの中に実用炉として提示するときに,温度だけでなくて出力についても一つのオプションとして出していただければと思っておりますが,よろしいでしょうか。

【米田委員】 950℃ですと30万kWeですか。750℃にすればもっと大きくなるのでしょうか,これは興味として伺っているのですけど。温度に対して何か依存性はあるのですか。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 余り影響はないですね。やはり固有の安全性を保つための大体の最大の出力が600MWtぐらいとなっています。

【米田委員】 分かりました。同じということですね。

【岡本主査】 お願いします。

【飯山委員】 すいません,確認で申し訳ありませんが,今回の名称としては高温ガス炉技術開発ということですけれども,同時にこれは利用技術,つまり先ほどのヘリウムガスタービンとか水素製造とか,それも含めた技術開発を意味しているという理解でよろしいのですね。

【増子原子力課長】 基本的にそれで結構です。

【梅田委員】 私も確認なのですけども,やはり高温ガス炉という特長を生かすという意味で,さっき出力のお話がありましたけど,100万kWeとかできなくて,これを生かすためには30万kWeぐらいが限度であると。しかもかなり高温までいけるということで,いわゆるこれまで使っている軽水炉の集中立地型とは区別して,この高温ガス炉というのは分散型の熱電併給炉という位置付け,そういう認識なのですけど,その辺り,皆さんは同じような考えなのでしょうか。あるいは今の発電所を全部取ってかわるようなイメージではないと思っているのですけれども,その辺はいかがなのでしょうか。

【岡本主査】 何かありますか。

【増子原子力課長】 これは出口の話ですから,一気に今の軽水炉体系をこれに変えるというのはなかなか難しいと思うので,まずはモジュール型でこういう高温ガス炉みたいなものはどういう展開ができ得るかというところをまず御議論していただかないと,先に出口ありきの議論はなかなか難しいと思います。

【岡本主査】 このロードマップを作る中でいろいろ議論していけばいいと思いますが,私はその集中立地型を全く排除はしておりませんで,例えば中国で最初に造ろうとしていたのは10万kWeを40基作って400万kWeという発電所を設計していたりします。それは今,ちょっとまた変わっているようですけれども,そこは逆に言うと設計のオプションの一つだと思いますので,必ずしも分散配置だけではない在り方もあってもいいのかもしれない。そこはちょっとロードマップの中で議論できればと思います。

【梅田委員】 私も完全に排除するという気はないのですけれども,やはり最初は特長を生かしたところを開発していくのがいいと思いますし,さっき主査がおっしゃったように,2種類で割と温度が低いところ,現実的なところをやりながらその先の開発をつなげていくというのもいいかと思うのですけれども,ただ,最初はやはり高温ガス炉の特徴を最大限活用するような方法とか,研究を進めていくのがいいのではないのかなと思います。

【岡本主査】 御注意ありがとうございます。そのあたりは次回しっかり御提案いただければと。では,北川委員お願いします。

【北川委員】 ちょっとこれは日本原子力研究開発機構さんにどんな感じか教えていただきたいんですけれども,今は世界一の技術,基盤があると思うのですが,先ほど主査から10年ぐらいで実用化プラントということでまずは検討しようというスピード感が示されましたが,10年後にも日本が世界一と言えるのか,もっと急がないといけないというようなことはないでしょうか。ちょっと不勉強で分からないのですけれども。

【國富センター長(日本原子力研究開発機構)】 今の技術は明らかに世界一だと思います。ただ,やっぱり物すごく中国とかが追い上げてきているのは事実なので,新しい研究のステップに入っていかないと,どこまで我々の技術を世界一で維持できるかというのは分からないので,例えば熱利用技術であれば,早くHTTRとつなげるような方向に持っていけたらと思います。

【岡本主査】 ありがとうございます。10年というのは飽くまで目安でございまして,恐らく一番重要なのはこの中にもありますが,人材育成とかそういう観点からも一つ大きなロードマップを作る上で重要な視点になってくるかなと思っております。そのほかいかがでしょうか。湯原委員,お願いします。

【湯原委員】 何回も世界一という言葉が出ますが,問題はプラント開発力です。新しい概念のプラントを開発していくのに,本当に日本のプラント開発力が世界一であるかどうかが問題だと思います。950℃のHTTRを運転しているから世界一だというわけではないと思うのです。
 そういう観点で,プラント開発をするときの基盤は,R&Dをどう蓄積していくのかだと思います。あるいは,プラント開発の分野で得意な面があるわけですが,日本がプラント開発で成功したのはIGCCです。IGCCは2トン/dayから2,000トン/dayまで,1,000倍のスケールアップを4段階に分けて商業炉を開発したわけです。こういった段階的なスケールアップのステップを積み上げていく開月が,非常に重要です。
 岡本主査が言われるように, 10年で確実に商業的に耐えるものに対するロードマップを作るというのは,エネルギー基本計画とか骨太の方針にかなっていると思います。しかし,温度で世界一というのを強調するのではなくて,世界一を維持していくために,プラント開発力を磨いて開発を推進していくということが重要だと思います。

【岡本主査】 御注意ありがとうございます。しっかり気を付けて使っていきたいと思っております。そのほかよろしいでしょうか。
 それでは,先ほどもありましたけれども,この資料3については,基本的には今日の御意見を踏まえた形で次回もう少しバージョンアップした形で御提示いただく。ただ,この方針については特に問題ないというか,この方針に沿って進めさせていただくという形でよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは以上で本日予定していた議題は終了となりますが,その他に委員の皆様,事務局等から御意見,連絡事項等ありますでしょうか。よろしいですか。

【笹川課長補佐】 事務局から連絡事項を補足させていただきます。

【岡本主査】 お願いいたします。

【笹川課長補佐】 本日の会議の議事録案につきましては,でき次第,委員の先生方にメールで御相談をさせていただければと思います。また,今後の作業部会のスケジュールにつきましては,先ほど御説明させていただきましたように,全5回の開催,8月下旬に中間取りまとめを頂くことと予定しております。以上でございます。

【岡本主査】 ありがとうございます。2か月で全5回という非常に集中的でありますが,しっかりとした議論をして,いいものを作り上げていきたいと思っております。
 それでは,以上で第1回高温ガス炉技術研究開発作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

 

 

―― 了 ――

 

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