平成30年1月19日(金曜日) 16時00分~17時00分
文部科学省 5階3会議室
主査 藤崎 一郎 第一主査代理 牧島 一夫 第二主査代理 角南 篤 専門委員 金山 秀樹 専門委員 木村 真一 専門委員 倉本 圭 専門委員 古城 佳子 臨時委員 知野 恵子 専門委員 続橋 聡 専門委員 中村 昭子 臨時委員 西島 和三 専門委員 向井 千秋 臨時委員 米本 浩一
研究開発局長 佐伯 浩治 研究開発局審議官 大山 真未 研究開発局宇宙開発利用課長 谷 広太 研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 庄崎 未果 研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐 原 真太郎 (国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)) 理事 山本 静夫 執行役 伊東 康之 経営推進部参与 五味 淳 (三菱重工業株式会社) 宇宙事業部副事業部長兼営業部長 小笠原 宏 (清水建設株式会社) 宇宙・ロボットグループ長 青木 滋
【藤崎主査】 議題1は国際宇宙探査の在り方についてという,この報告書でございますが,これは議論の後,主査預かりとさせていただきまして,皆様方のコメントを踏まえて,最終調整したものでございます。そして,12月6日の宇宙開発利用部会で決定されております。これはもう,皆様御承知のとおりでございます。
きょうは,これを宇宙基本計画工程表に反映いたしまして,そして,それから来年度予算,それから日米間の主な動きということがございますので,これについて,庄崎室長からお願いいたします。
庄崎室長より,国際宇宙探査の在り方について,資料23-2-1から資料23-4-2に基づき説明。
【藤崎主査】 宇宙基本計画工程表,そして来年度予算,それから日米間のやりとり,最近の飛行士をめぐる状況について御説明いただきました
が,この点について御質問はございますでしょうか。あるいは,御提起ありますでしょうか。
【古城委員】 アメリカの大統領の件について,今説明していただいたのですけれども,どのぐらい具体的なことが,いつごろわかりそうかという,予
測は立てられるものでしょうか。
【庄崎室長】 御指摘いただいたとおり,今,大きな方針が出されているということで,これが具体的にどうなるかということについては,引き続き,私たちも情報収集をしています。
1つ聞いていますのは,NASAの長官がなかなか決まっておりませんので,そこが決まると少し前進するのではないかという話は伺っています。
【藤崎主査】 アメリカはかなり,この一時,火星にというところから,こういう月近傍のほうに戻ってきて,これでいろんな姿が急に現実的な大きな方向ができてきたわけでございますけれども,このアメリカの,まだ実は政権が発足して1年がたたないうちに,非常に大きな転換が見えたわけですが,NASAの長官は変わらないままでこれだけできたのは,やはり,今の政権の幹部の中に,新しい政権になったらこういう方向に変えようというような動きが何かあったように見受けられますか。
【庄崎室長】 以前の小委員会でも御紹介したかと思いますけれども,国家宇宙会議が立てられて,NASAというよりはその上のレイヤーとして,そこで意思決定をしてきたというのが1つ,大きな動きとしてあると思います。
【藤崎主査】 そこへどうしてこんなに,ペンス副大統領の表明が,この10月になったのか,非常に好ましい方向だから,今のでいいのですけれども。これはいろいろ,皆様方でじっくり見守っていって,また変な方向に行かないようにきちんと見ていく必要がありますね。
三菱重工業株式会社小笠原部長より,資料23-5-1に基づき説明。
清水建設株式会社青木グループ長より,資料23-5-2に基づき説明。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
今,両者から企業の参画というところで,貴重な御意見を御説明いただいたわけですが,皆様方から御質問,あるいは御意見等はございますか。
【西島委員】 詳細な説明,どうもありがとうございました。
三菱重工さんの産業界の波及効果,強力なことをやると,多分,大きな波及効果があるとは思うのですけれども,新しい要素技術に対する考え方,知的財産化,これをどう考えるかということで,例えば特許であるとかノウハウ,その割合をどう考えるかということで,特許の場合は公開はするけれども,ある意味,独占性があるということですよね。ということは,特許をおさえるということは,産業としては非常に魅力はありますけれども,ある意味で波及効果をとめることになるので,その辺の兼ね合いをどういうふうに考えていくか。それから,先ほど,その後で7社というのがありましたけれども,この7社の中での知的財産の取決めというのは文書化されているものなのでしょうか。
【向井委員】 三菱重工の話なのですけれども,ここの特に2ページの産業基盤とか技術基盤のところを培われたということなのですが,これはどのベースになっているのかということです。いわゆる,ISSの開発フェーズと,ISSは,今,ある意味維持されている,維持の状況でのフェーズとはちょっと違ってくると思います。これ,ここに投入していた人材の種類だとか人材の規模を含めて,全然違ってきてしまうと思うので,一番伺いたいのは,ここの650社,400社,こういったのが現在のISSの維持状態の状況でも,というのは,つまり2024年以降にエクステンションしたような状態でも高い技術開発というのに期待できているのかというのが1つ。
それと2番目の,外国との6社でやっていたときの,かなり外国の人たちは,アグレッシブにやると思うので,そのアグレッシブさというのが,日本の三菱重工さんと比べたときに,どのぐらいの違いがあるのか,あるいは,逆に同じくらい三菱重工はアグレッシブにやっているのか,状況が伺いたいと思いました。
【米本委員】 ご説明資料の2ページにあるように,今までISSの開発に携わってきた成果として技術基盤だとか産業基盤技術ができたことは確かです.しかし,これらはみんな,宇宙機関への提案で検討されたものです.意地悪な質問かもしれませんが,もし宇宙機関がなかったら,民間だけで三菱重工としての有人月面探査構想のような夢を描いたかどうか,教えてもらえますか。
【知野委員】 先ほどの6社,7社の説明のところで,月の裏側のことをかなり挙げていらっしゃいましたけれども,最後のページで「国・政府機関の主導的開発・整備に期待」。そうすると国が違う計画であっても,三菱重工さんとしては特に異議はないのでしょうか。それとももっとやはり月の裏側だということを主張されたいということなのでしょうか。
【藤崎主査】 1つ私の方から,10ページにスピンオフ,スピンインの御説明がございましたが,月面ということだけでなく,この宇宙探査全体というのを三菱重工さんからごらんになって,スピンオフなどはどんな感じの効果を,考えていけばいいかも,あわせて御説明いただければ有り難いなという気がします。
それでは,まとめて御説明いただけますでしょうか。
【小笠原部長(三菱重工業株式会社)】 たくさん御質問いただきまして,ありがとうございます。では,資料の前の頁方から順番に答えさせていただいてよろしいでしょうか。
向井先生のご指摘に関連して,2ページ目のところで,ISSの産業基盤,650社が生み出されたというのが書いてあります。そもそもこの技術基盤がつくられたのは今もそうか,ないしは開発のときがそうだったのか,それが御質問内容と理解しています。基本は開発のときです。実態は,今は劇的に減っています。したがって,先ほど申し上げたHTV-Xが立ち上がったので,ようやく,ここから何とか盛り返せないかと思っているというのが,正直なところです。
次に,5ページ目で海外企業とのアグレッシブさの違いについてのご質問がございました。三菱重工とほかの6社と比べてとどうか。正直なところ,余り差を感じませんでした。全部の会社と話していて共有したのは,ISSのプログラムで育ったエンジニア,技術者が散ってしまうとの懸念です。産業界は仕事がなくなるとすぐほかのプログラムに人が行ってしまいますから,やはりそれが一番感じている危機感で,みんな同じ思いでした。したがって,先ほどの知野委員のご質問にもあるのですが,ミッションについての技術的な観点の細かな良否はあるにせよ,とにかく探査関係で1つプログラムを立てて,世界全体で,今の,ある意味,資産ですから,これを散逸させないように,何とかしたい。そこは共有の思いでした。特にそれはどこの国のメンバーの思いが弱いとか強いとかはありませんでした。
それから,宇宙機関がなかったら絵を描いたか,描かなかったかというお話が,これは米本先生からありました。先ほどの絵の中でいうと,後ろから4ページ目の有人月面探査構想は,私どものエンジニアが自ら描いた絵で,これは恐らくエージェンシーがなくても描いたプランです。もともと何からこの構想を行うに至ったかかというと,『次の仕事をつくらないといけないね』という中で,1つの出口なり,将来のアクティビティの場というのは月面だろうというのは,エンジニアから出てきました。これは宇宙に限ったエンジニアだけではなくて,先ほどありましたけれども,パワープラントをやっているエンジニアですとか,ロボットをやっているエンジニアからも出てきた話で,それで全社横断的に何人も集まって描いた絵ですので,必ずしもエージェンシーがなければやらなかったかというと,そうでもないと思います。もちろん,エージェンシーがあって,こういう活動をやっているからこういうことを考えたという,そのきっかけにはなっていると思いますけれども,100%という関係ではないと思います。
それから最後の方のまとめのページで,10ページのところでしょうか。7社の間で特許の関係はどういうふうに整理しているかというところですが,残念ながら,まだこの探査の関係で各社で特許を取ろうとか,それから特許は自分のところで取った方がいいのか,それから戦略的にそれは公開した方がいいのか等いろいろあると思うのですが,そのような議論できるほど,技術の中身が詰められていないというのが正直なところです,探査に関して言うと。7社での検討は,概念設計のまだ入り口というところでして,知的財産の議論が必要なほどの詳細な検討には至っていないとの認識です。技術の根幹は,開発の中でやるようなものですから,そこをまだ調整できていない。是非,技術の根幹に関わってくる開発をやりたいというのが,多分,各社が言うことだと思います。
次に,別のミッションの場合はいかがでしょうかと知野委員から頂いた話だと思いますが,L2の話をみんなでしましたが,L2以外だったら三菱重工,やる気がないか。いや,そんなことはございません。先ほどのお話のとおりで,ポストISSのプログラムというのは非常に期待していますので,是非,やらせていただきたいと思っております。
最後に,月ではなくて,宇宙探査全体に広げたときにスピンオフ,スピンインという観点で見たときにどうかというお話がありましたが,例えば,ロボット探査の世界に行ったとしても,例えばニュー・ホライズンズが冥王星に行くとか,あのようなプログラムが日本の中で起きれば,ないしは,当然,「はやぶさ」プロジェクトにも我々も少しは関与させていただいていますので,その中で技術を得て,それが地球の,民生の生活に当然落ちていくと思います。必ずしも有人探査に限った話ではないですし,ロボット探査でもスピンオフ・スピンインはあり得るというふうに思っています。アイテムが変わってくるだけだと。
【藤崎主査】 三菱さんの場合,航空機もつくっておられますけれども,それにもスピンオフされておられますか。
【小笠原部長(三菱重工業株式会社)】 はい。具体的には,先ほど,2ページ目のところで,新しい要素技術,有人宇宙技術というお話をさせていただきました。その中で,安全管理の考え方が非常に厳しかったというお話をしました。安全設計について,我々の民間機のエンジニアが,ISSのときのS&MAの活動状況を聞きにきました。やはり,安全のところは気にしますので。
【西島委員】 探査に関しては,これからというのはわかるのですけれども,例えば,では,「こうのとり」は,技術戦略とか,それからそれがどこから見ても,あれだけのものだったものが産業界に波及効果を持っているという実感,知的財産。例えばどのくらいの特許で成立されていて,それがどのぐらいの価値を生み出していくというのが,押さえてありますか。
【小笠原部長(三菱重工業株式会社)】 基本的な整理としては,開発はJAXAさんです。開発に伴って発生する知的財産は,JAXAさん,ないしは,JAXAさんと各メーカーが共有させていただくといった形かと思います。三菱重工は,探査関連でそれほどたくさんの特許を出してはいないとの認識です。
ただ,「こうのとり」の近傍接近システムのセンサ類を三菱電機さんが海外に販売されていますので,その過程で知的財産のような話があったのではなかろうかと。これは推測です。
【藤崎主査】 もしよろしければ,先ほど御説明いただきました清水建設の方の御説明についての御質問はいかがでしょうか。
【牧島第一主査代理】最後の14ページの個人的な考察というのが大変面白かったので,これに関して2つお尋ねします。まず,これまで青木様が御社の中で宇宙に関して仕事をやってこられたのは,この1から4までのどの立場に当てはまるのでしょうか。たぶん4ではないと思いますが。
もう一つ,御社としては今後どちらの方向に進みたいと思っておられるか,またその際に,自分たちが進みやすくなる上で,政府なりJAXAなりに要望があれば,教えていただきたい。
【知野委員】 今の牧島先生の質問とも関連してくると思います。というのは非宇宙企業ということで,大タイトルに書かれているのですが,ちょっと違和感を覚えたのは,バブル期に既に記者をやっておりまして,有人月基地とか,そういうときに必ず建設会社,清水建設さんを初め,こういう月面基地の図なり,既に随分研究を進めているというお話をお聞きましたので,やはり,宇宙企業の一員であるというふうにみなしてまいりました。
それで,そのときからかなり研究をしているということで,研究者の方たちも育っていたというふうに聞いていたのですが,そういうノウハウなり知識とか人材育成に関しては,引き続きつながっているのでしょうか。
それから,会社として,どのように過去と今をお考えになっているかということについて教えてください。
【角南第二主査代理】 今,牧島先生と知野先生の話に加えて,現状で,30年前からと,清水建設さんが特殊だったのかということも聞きたかったのですが,今はむしろ,世界の建設業界の中で,それでも我が国の清水建設さんを初めとして,30年前のこの取り組みというのは,今でもユニークなのか。例えば他国の建設関係でいえば,むしろかなり質の高いインフラ演出を宇宙に向けるという意味において,かなり力を入れてきている他国の,あるいは競争相手がかなり来ていて,もう既に日本としては質の高い建設技術を宇宙へというのは,もう何となく危機的ということはないのですけれども,その辺の,30年の間にどういうふうであったのかというのを聞きたかったです。
【米本委員】 私も30年程前に日本ロケット協会のメンバーとして,宇宙旅行の研究をしました。その活動の一環で宇宙ホテルを検討されている清水建設さんとは,おつき合いをさせていただきました。そのとき以来ずっと疑問に思っていたことがあります。このようにほとんど見返りのない研究投資を許す会社って,すごいなと。宇宙開発に関係する企業といえども,その投資をしたから見返りを期待する筈です。しかし,それがないところで30年も宇宙関係の研究投資をし続けてこられたのか,その理由を簡単に教えていただければと思います。
【木村委員】 特にETS-7の写真とか,大変懐かしく思い出しているところです。皆さんと,多分,関連する質問になると思うのですが,先ほどの話で,地上技術と宇宙技術をデュアル開発していくという道を示してくれたというのが,多分,イノベーションハブの1つの大きな役割ではないかと思います。非宇宙企業のまま,宇宙技術を開発していく上で,この様なデュアル開発の路線をお考えなのではないかという気もしています。これに対して,今回のお話の中で御紹介された例は,どちらかというと純粋に宇宙を希求した技術だと思うのですが,例えばデュアル開発のような形で,宇宙が目指せるような作戦というのはお持ちではないでしょうか。
【青木グループ長(清水建設株式会社)】 何で非宇宙企業かと申しますと,利益が出ていないという,これだけでございます。
30年やってきた宇宙開発なのですけれども,やはり,三菱重工さんも言っておられたように,人材の育成が非常に大きいかなというふうに思っております。私自身もロボット,宇宙をやったことで,実は数年前から福島原発の廃炉の方,かかわっておりまして,ここで機械の遠隔操作ですとか,そういうロボットというもの,携わってきましたので,その辺で生きてきているのかなというのが1つございます。
その他,他国での話ですけれども,キャタピラーなんかが一時期入ろうとしていたのですけれども,やはり,向こうは政府が変わるとどんどん政策が変わってしまいますので,その切れ目でやはりなかなかやりにくいというのが出てきているような感じを受けております。ゼネコン自体は,海外ではこういう活動は余りやっていないというのが実情でございます。
それからイノベーションハブなのですけれども,デュアルというのは非常に,先ほどもお話ししましたように,興味はあるのですが,企業としては,デュアルユースをやりながら,本業に生かすのであれば,多分,自社で出資するので,もっとリスクをとってもいいような方向に話が広がるといいなというふうには,個人的に思っております。
あと,何で会社が許すかという話なのですけれども,これは1つは,もちろん,利益は出ていないのですけれども,会社イメージ。要は,CSRとか社会貢献という意味では非常に大きい話ではないかと思っておりまして,現に私がここに来ているのも普通だったらあり得ない話なのですけれども,こういう場で皆さんにお話ができる,非常にそれだけでも成果かなと思っております。
以上でよろしいですか。
【知野委員】 さっきの質問いたしました,その当時からの人材のは引き継いでいるのでしょうか。あるいは,どうなっているのでしょうかといった部分をお願いします。
【青木グループ長(清水建設株式会社)】 私が最後あたりになります。今,人を少しとりつつありますので,何とか,私が退職するまでには育て上げて,次に引き渡したいなというふうに思っております。
庄崎室長より,第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)の準備状況等について,資料23-6-1から資料23-6-3に基づき説明。
【藤崎主査】 これは私が申し上げることでもございませんけれども,2年前のワシントンの会合は,単に閣僚及び実施機関の長の会合でございましたが,今回は日本の発案として,高校生のS-ISEF,35歳以下のY-ISEF,産業界のI-ISEFという3つのサイドイベントというか,むしろどちらが大きいかわからないような,非常に大きな会合を行うこと。そして2番目に,文章として共同声明に加えてISEF運営規約,国際宇宙探査の原則というものを設けることを目指す,まだ設けておりませんけれども,これも日本の考えで,初めてのことだろうと思います。そして中身的にも,今の国際情勢を踏まえて,月・火星・その他の太陽系の探査活動を広く共有された目標とすること,有人・無人の活動を最大限に,持続可能な形で行うこと,そして民間の力を活用していくというような,こういう新しい今の動きを全部盛り込んだ形で,イベントも行うし,かつ,文書もまとめていくという点で,はっきり言って今までのISEFと全く違う新しいISEFを今,日本がつくっているということを,自信を持ってよく説明していっていただきたいというふうに思いますので,よろしくお願いいたします。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課