原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年9月13日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口主査、澤田委員、中島委員、長谷川委員、藤田委員、矢野委員、和気委員

文部科学省

田中研究開発局長、田中研究開発局審議官、西田放射性廃棄物企画室長

オブザーバー

横溝日本原子力研究開発機構理事、大井川日本原子力研究開発機構研究推進室長

4.議事録

【山口主査】それでは定刻となりましたので、ただいまから第3回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。本日は、お暑い中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。それでは、これより議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれておりますとおり、群分離・核変換技術に関する施設の検討状況と人材育成、国際協力その他についてです。それではまず、事務局から定足数と配布資料の確認をお願いいたします。

【西田室長】放射性廃棄物企画室長の西田です。先日は、汚染水の現地会合がありまして、欠席をしてしまいました。大変申し訳ございませんでした。まず、本日の出席の確認ですけれども田中先生から御欠席の御連絡を頂いております。全8名中7名の委員に御出席していただいておりますので、定足数である過半数を満たしております。続きまして、本日の配布資料の確認をさせていただきます。議事次第に記載しておりますように、資料1として、J-PARCの核変換実験施設の検討状況について。資料2として、国際協力による群分離・変換技術に関する研究開発の推進について。資料3として、第2回作業部会で御指摘いただいた事項について。資料4として、中間的な論点の取りまとめの骨子案というものをお配りさせていただいております。配布資料の中で、不足等ございましたら事務局の方までお伝えいただければと思います。以上です。

【山口主査】それではただいまから順次、議題に入っていきたいと思います。今日もプレスの方はいらっしゃらないですね。それでは前回と同じように事務局、それから日本原子力研究開発機構(原子力機構、JAEA)が資料を用意していただいております。それぞれ説明していただきまして、そのあとで質疑・議論を行わせていただきたいと思います。初めに議題の1番目、群分離・核変換技術に関する施設の検討状況と、それから議題の2番目、人材育成について、こちらを原子力機構から説明をお願いいたします。では、よろしくお願いします。

【大井川室長】原子力機構の大井川です。よろしくお願いします。それでは資料1に従いまして説明させていただきたいと思います。J-PARC核変換実験施設の検討状況ということで、まずは施設概要と位置づけについて説明させていただきます。
 3ページですが、加速器駆動システム(ADS)の実用化に向けたロードマップということで、簡単な図を付けております。現在、我々はループ実験だとかKUCA(京都大学)を使った実験等、基礎実験を行っている状況です。これから、原理実証的な実験ということでJ-PARCの核変換実験施設の方に移っていきたいと考えております。それから、ほぼ並行した形で、ベルギーでMYRRHA計画というのが立ち上がっていく予定になっています。それらを二つ上手く組み合わせて、研究開発を進めていきたいというふうに思っております。最終的には実用のADSプラントにつなげていくわけですが、J-PARCの核変換実験施設、ベルギーのMYRRHA計画、それぞれの役割を果たした末、それらの成果を実用のADSプラントに反映していくということです。最終的に、2030年代に実用規模で展開できる知見・経験を得ていくということが、今の我々の考え方であります。詳細については、このあと説明させていただきたいと思います。
 4ページですが、施設概要と位置づけについて、ADSの実用化に必要な技術開発です。我々、ADSの実用化に向けてこのような技術開発があると考えています。まずは、加速器についてですが、大出力化・効率、信頼性、コストの向上、これらを果たしていかなければいけないと考えています。これに関しまして、J-PARCの加速器は今ありますので、その経験の蓄積や、高度化、あるいは、J-PARCだけじゃなくて世界中にいろいろな加速器がありますので、それらの経験を積んでいくということが必要かと思っています。それから構造・機器について、ADSには非常に特有な構造があります。ビーム導入部だとか炉容器、上部構造、炉内構造物等があります。それから燃料サイクルがあり、MA(マイナーアクチノイド)含有燃料の製造だとか再処理は、先日、説明させていただいたような部分ですが、こういうのについては、原子力機構の基盤技術を生かしたR&D、あるいは、メーカーに技術的にはお願いしたりするところもあると思いますが、そういうことで進めていきたいと思っております。それから右側にいきますと新型炉の物理ということで、MAを装荷した炉心の核特性だとか未臨界システムの挙動、制御等の技術的な課題があります。それから下の方では、核破砕ターゲット工学ということで、材料照射とかPb-Bi(鉛-ビスマス)利用技術、こういうのが必要で、陽子ビーム窓の成立性だとか寿命評価というのをしていかないといけないと考えています。この右側の二つの課題に関しまして、J-PARCに核変換実験施設(Transmutation Experimental Facility)を略してTEFと呼んでいますが、これを建設して、この課題解決に当たっていきたいと思っています。すなわち、個別の重要課題の克服と基盤データ蓄積を目的とした二つの施設、核変換物理実験施設とADSターゲット試験施設の二つで構成する核変換実験施設を整備していきたいと思っております。この二つの施設の詳細については、また次に説明させていただきたいと思います。
 5ページですけれども、その詳細にいく前にJ-PARCの概要です。鳥瞰図の左下から陽子ビームを加速していきます。まずはLINACで400 MeVまで加速します。現在はその400 MeVの陽子を3 GeVのシンクロトロンの方に投入し、更に加速して、中央部、おむすびの中央にあります物質生命科学実験施設に一部入れて、それから一部は更に加速するための50 GeVのシンクロトロンに入射して、ハドロン実験施設だとかニュートリノ標的に入れます。こういうことでJ-PARCが動いております。我々は、LINACで加速された400 MeVの陽子を、この絵でいきますと左側に受けまして、いろいろな実験をする核変換実験施設を整備したいと考えております。
 6ページでは、その施設の中身が書いてあります。施設は先ほど言いましたように二つの実験施設で構成します。右側がADSターゲット試験施設のTEF-Tです。Tは、TargetのTです。ここでの目的は大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの技術開発及び材料の研究開発を行います。ここでは核燃料は使わないで、放射線発生装置としまして、Pb-Bi合金でつくりました核破砕ターゲットの技術開発を行うことを目指します。陽子ビームは400 MeVで、250 kWです。先ほどありました、物質・生命科学実験施設というのは、1 MWという出力を受けることになります。それに対して出力としては4分の1という施設になります。それからこの施設では、あとでお話ししますが多目的照射エリアというところを設けまして、陽子だとか中性子を用いたいろいろな実験ができるようにしたいと考えております。それから左側の施設は、核変換物理実験施設TEF-Pと名付けております。Pは、PhysicsのPです。目的としましては、低出力で未臨界炉心の物理的特性の探索とADSの運転制御経験を蓄積するということです。施設区分は、原子炉施設になります。臨界実験施設と呼ばれる原子炉の基礎基盤的な実験をする、そういう施設の範ちゅうになります。陽子ビームは、同じく400 MeVですけれども出力は非常に低くて、10 Wという出力を受けようと考えております。この一応、原子炉施設ですので熱出力というのが出まして500 W以下という非常に小さな、いわゆるゼロ出力と呼ばれる実験施設になります。運転直後に炉心にアクセスすることが可能になる施設です。陽子ビームはこの絵でいきますと、左下の方から入ってきまして250 kWが主に核破砕ターゲットの方、すなわちTEF-Tの方に導かれ、その中から10 Wを抽出しまして、TEF-Pの方に一部導入するというコンセプトになっています。
 各施設でどういう実験をしたいのかという位置づけですけれど、まず、7ページはTEF-Tの方です。ADSターゲット試験施設では、まずは材料データを取るということが非常に重要なミッションになります。左に書いてあります図ですけれども、横軸が照射温度で、縦軸が照射損傷量(DPA)ということになります。前回お話ししましたけれども、ADSの技術的な課題としましてビーム窓の成立性というのがあります。ビーム窓が照射にどれくらい耐えるのかというデータが非常に重要になってきます。既にいろいろな世界中の加速器でデータが出てきています。例えばSTIPと書いてある実験がありますが、比較的温度の低いところのデータは、そういうふうにそろいつつあるということです。ただ、前回も少し紹介しましたがMEGAPIEという、これは緑で書いてある部分ですけども、流動Pb-Bi中での照射だったのですが、照射時間が短かったということもあって、温度はそこそこ高い300℃少しのところまでいっていますけれども、照射量としては少なかったようです。我々がADSプラントとして目指すところというのは大体500℃で、15DPAを超えるようなところの照射データが欲しいということです。こういうところの照射ができる施設ということで、TEF-Tの方を考えていきたいと思っております。それから、ここに書いてある既存の加速器というのは、こういう照射の専用施設ではなくて中性子源の施設として整備されたものを流用してというか中性子源として使いながら材料のデータも取るということをやっています。なかなか融通が利かないということもありまして、TEF-Tが整備できれば、こういう材料の重照射の専用施設として非常に意義が高いということで考えております。
 次に8ページは、今度は物理施設TEF-Pの方です。この図は、既に前回もお示ししたようにADSはMAを非常にたくさん含む炉心で構成するということですが、まだまだ核データの信頼性が高くはありません。JENDL-3.3からJENDL-4.0に変わっただけで、非常に大きな変化があったということで、こういう体系の核特性の予測精度というのをしっかりと押さえないとなかなか核変換のシステムを実現することは難しいだろうと考えています。そういうことで、こういうMAだとかPu(プルトニウム)だとかを含んだ体系での実験というのが非常に重要になってきます。
 それから9ページですが、こちらはMAだけではなくて核破砕中性子と高速中性子増倍体型を組み合わせるということが重要だということを示したスライドになります。左側は、核破砕中性子源の体積分布を示したものです。横軸がZ方向ですから入射方向の距離で、それから縦軸がそれに垂直方向の距離です。我々は、ADSで最終的には1.5 GeV(1,500 MeV)の陽子を使いたいのですが、その絵が三つの絵の中の下に示されています。こういう大体20 cm奥まで非常に高い中性子源密度というのが構成されるということで非常に特徴的な中性子源の形になっています。それに対しまして、我々、400 MeVということで少し体積の広がりとしては小さいですけれども、それでもそこそこ体積的に広がった中性子源というのを実現できるということが分かります。こういう中性子源が未臨界の炉の中に入ったときにどういうふうに増倍されていくかという実験をすることができます。それから右側の図は、今度は横軸が中性子のエネルギーを示したものです。Spallationと書いてある赤いのが、1.5 GeVで入射したときの中性子のスペクトル分布です。高速中性子、102ですから100 MeVだとか1,000 MeV、1 GeVあたりを含めて中性子が非常にたくさんあるということです。このD-Tと書いてあるのは14 MeVの単色の中性子源で、それを使った実験だとか、Cf-252(カリフォルニウム)というは自発核分裂の中性子源ですが、そういうのを使った実験とかは、スペクトルの特に高エネルギー部分の違いというのがあるということで、このSpallationの中性子を使った実験というのが非常に重要であると思っています。それらをまとめますと、赤で囲んであるところにありますが、実用のADSのシステム特性を精度良く検証するには核破砕中性子源と高速中性子スペクトルを持つ未臨界炉にMAを装荷して実験を行うことが不可欠だと思っております。
 続きまして、11ページですけれども、施設具体化に向けた研究開発ということで今の我々の取組について御説明したいと思います。これは施設建設における主な課題ということで幾つかまとめたものです。赤で示したのが、この資料に出てくる課題になっています。青で示したところは、J-PARCの既存の施設、水銀ターゲット等に準拠する課題ということで、それらの知見を十分に生かすことができるだろうと考えているものです。例えばLINACからのビーム取り出しに関しては、既にJ-PARCの方でも経験を積んでいるわけで、そういうことを使っていこうと考えております。それから右回りにいきますと、核破砕ターゲットの部分です。これはこの施設特有というか、Pb-Biを使ったものということで研究開発を今、進めているところです。それから遮蔽体・ホットセル設備、ターゲットの保守については水銀ターゲットで、今、経験を積んでいるのを上手く生かしたいと思っております。それから放射性物質の処理設備ということで、Pb-Bi特有の反応生成物Po-210というのができますので、この除去について研究をしているところです。それから多目的利用ということで、このあと少し説明させていただきたいと思います。それからTEF-Pの、物理施設の方ですが、当然、新規制基準に対応した設計というのをしていかないといけないということです。これについてはまだ、どういうふうなことが基準になっていくかというのを見守っているところです。特に大きな問題はないのではないかというふうに考えているところです。それからMA燃料を使うということで、その管理だとか取扱いについての研究開発を行っています。それから原子炉と加速器の結合の部分というのも研究開発を行っているところです。今日、赤で示していないですが、ここについても少し説明させていただきたいと思っています。それからTEF-P向けの低出力のビーム取り出しというのについても研究開発を行っています。
 12ページはまず、TEF-Tの核破砕ターゲットです。右にありますように二重の円筒型になっていまして、外側はPb-Biが流れて、反転して内側を陽子ビームの方向と同じ方向に流れ去っていくという形のもので考えています。照射用の材料をその陽子ビームに当たるように置いて、ここの温度が比較的高くなるように、このPb-Biの方向というのを決めています。陽子ビームが入ってくるところは少しへこんでいるような形にして、Pb-Biの冷却が上手くいくようなコンセプトにしていきます。これについてSTAR-CDを使った熱流動解析を行っておりまして、その結果が右下の図になっています。高いところで大体457℃。そういう結果が、この条件で出てきています。この条件を使って、今度はABAQUSというコードを使って構造解析をして、この構造が成り立つための範囲というものを解析しております。今、我々の得ている結果としましてはターゲットが許容し得るビーム密度というのが、大体30 μA/cm2だろうというふうに得ています。実用のADSの陽子ビーム密度というのは、大体20 μA/cm2と考えておりますので、この施設、このターゲットのコンセプトで我々が得たい陽子ビーム密度による照射が可能であるということが確認されております。
 それから13ページは、先ほど少し言いましたPo(ポロニウム)についてです。これが除去できるということを確認するための試験を行っています。JRR-4でPb-Biを照射して、Poを作って、それを昇温してどれくらい揮発するかというのを調べています。それから揮発したPoが、フィルターで捕獲できるかというのを調べておりまして、そういう実験結果が右のグラフにあります。DFというのは、除染係数ですけども400位が確保できるということを確認しております。
 続きまして、14ページ、物理施設の方です。MAを使うということで、遠隔の取扱いというのが必要になってくるだろうということで、その概念というのを検討しているところです。大きな方の図は、右下の方からビームが入ってきまして、中央にある炉心の方に導かれるという図になっています。中央の炉心を拡大したのが左にあります図です。ここでは、四角形のマトリックスと呼んでいますが、こういう格子に円柱状のMAの入ったピンを自動で装填していくような遠隔装置を検討している状況です。それからMA燃料というのは、発熱もしますので、それを貯蔵するための貯蔵庫の検討だとか、それからこれを貯蔵庫から炉心のところまで運んでくるための方法だとかを検討している状況です。
 15ページです。低出力陽子ビームの取り出しということで、これは下の方のポンチ絵を使って説明させていただきます。J-PARCのLINACで加速されているのはH-ビームと言いまして、陽子に二つの電子がくっ付いているイオンとして加速されてきています。それを偏向電磁石まで持ってきて、そこで一部にYAGレーザーを照射します。そうすると照射された部分だけが電子が1個剥ぎ取られまして、中性化します。中性化した陽子は、この電磁石で曲がらないので、照射されたところから接線方向に飛んでいくということになり、非常に弱いビームですけれども、それを取り出すことができます。本流の方は偏向電磁石で曲がって、TEF-Tの方に導かれます。こういうことで非常に弱い10 Wという陽子ビームを取り出そうと考えております。H0ビームは取り出されたあと、ここには書いていないですけどカーボンのフォイルを通しまして、今度はH+に変換して、また電磁石を通してTEF-Pの方に導くということで考えております。そのためのR&Dもしております。上のグラフは、バックグランドが大きいところですけども、そこにレーザーを照射すると少し中性化されたビームというのが、検出されたことを示しているグラフになっています。
 それから16ページは、そうやって取り出した非常に弱い陽子ビームを今後どういうふうにTEF-Pの方に導くかを示しています。図の右下の方から10 Wビームが入ってきまして、ビームシャッタAというのがあって、それからコリメーターを通して、偏向電磁石を置いて、ビームシャッタBというのを置いて、炉室の方に導く。こういう構造で考えております。一応、原子炉施設なので原子炉施設の安全は、この施設の中でちゃんと担保するということで、幾つかのビームを止めるための機構というのを備えるようなことで考えております。それからここには、ビームダンプが置いてありますけれど、そのビームダンプを使った実験というのもできるようにしたいと思っていまして、そのための運転モードなんかも考えているところです。以上が、大体実験施設に関するR&Dの状況です。
 続きましてTEF-Tに関する多目的利用、それからユーザーコミュニティ、人材育成についてお話しさせていただきたいと思います。18ページです。TEF-Tの多目的利用ということで、J-PARCには陽子だとか中性子を照射という観点から使えるところが多くないというか、ないと言って過言ではないと思います。物質・生命科学実験施設なんかは、取り出した中性子ビームを使う施設になっています。こういう重照射が可能な施設がないということで、非常にいろいろな目的に使うことができると思っています。例えば、材料照射ということで当然ADSの構造材を照射するのですが、そのほか新型半導体の宇宙線耐性の研究なんかにも使えるかなと考えています。それから発生しました中性子を使って、RIの製造を行うというような提案も頂いたりしております。それから先端的な物理学として超冷中性子ビームだとか短寿命の核ビーム、核データの測定なんかの提案というのも頂いております。ターゲットのこの絵でいきますと、左側のところに多目的照射エリアというのを設けて、これらの要望というのを可能な限り受け入れられるようなスペースを確保しておきたいと思っています。
 19ページは、そういうことでユーザーからの提案を受け入れるというアクティビティについて幾つかピックアップしたものです。少しもう古くなりますが、2008年頃にはこの施設に関するLetter of Intentというのを広く募集したところ、100名を超える研究者が関心を示して、38件の実験というのがTEF-P、TEF-T両方ですけれども提案されたという経緯があります。それから原子力学会のアクチノイド・マネジメントに関する炉物理実験施設の研究専門委員会というのが設けられ、物理施設のTEF-Pにおける実験の検討を行い、十分な量のMAだとかPuを扱うことのできる施設が必要であるという指摘を頂いているところです。それから最近では2013年、今年の2月にTEFの多目的利用、特にTEF-Tの照射エリアですが、ここに関するワークショップというのを開催いたしまして、90名以上の参加者に参加いただきました。先ほど言いましたような多目的な利用について検討をしましょうということになっています。
 20ページが、その結果というか頂いた提案というのを入れれば、例えばこういう配置で何とかなるかもしれないという検討をしている例になっています。陽子ビームが入ってきたところに当然Pb-Biのターゲットを置きますが、その横にRI製造のポートみたいなのを置いたり、あるいは、左側に分岐ラインをつくって、いろいろな物理的な実験ができるようにしたりというようなことを考えております。
 続きまして21ページは、人材育成という観点です。少し実験施設から離れますけれども、この群分離・核変換の技術というのは、長期にわたって我々が高レベル廃棄物の処理処分というのに対応するために取り組まなければならない課題だと考えています。日本だけじゃなくて、世界でも同様に考えられているところです。それから広範囲にわたる最先端の科学技術を駆使して初めて実現可能になるということで、いわゆる原子力の世界だけじゃなくて原子核物理だとか、あるいは加速器工学だとか、そういうところまで含めた幅広い分野の協働作用と言いますか、そういうことで達成することができるということです。こういう先端性があるということで、若い世代にアピールできる課題であると考えております。ただ、多くの国内の実験施設が原子力に関して言うと、老朽化してしまっているということで、最先端な高度な実験がなかなか難しいという状況です。我々はJ-PARCという世界最先端の加速器を持っているわけで、これを上手く利用して、こういう実験ができるような場をつくっていくということが必要だと思います。今、国としての原子力技術に関する取組・展望というのが不透明な中、こういう施設を整備することで若い世代の挑戦に応える環境の整備が可能になるのかなと思っております。人材育成という観点で、これまで我々のやってきた取組について少し説明させていただきたいと思います。
 22ページは、J-ACTINETによる人材育成の取組ということで、元々ACTINETというのはヨーロッパの方で行われていた国、機関あるいは大学なんかを横断的にまたがった実験を主にした、MAを使った研究のネットワークです。これに倣って日本でもJ-ACTINETというのを立ち上げて10以上の大学だったと思いますが、それから原子力機構や電力中央研究所とかが一緒になって、やはりMAを使える実験施設というのが非常に貴重になってきていますので、融通し合ったり、若い人を育てていったりというアクティビティを展開しているところです。実績のところにありますが、サマースクールを開催したり、計算科学スクールだったり、あるいは欧州のサマースクールに若い人を派遣したり、国際会議に派遣したり、こういう取組をしてきているところです。
 それからADSに関しましては、23ページにありますが、ヨーロッパとアジアの若手の国際ワークショップを2009年、少し前になりますが、原子力機構で開催しております。元々アジアの、中国・韓国・日本が毎年1回、ADSに関するワークショップを開いて、情報交換しているということを続けてきています。2003年からやっていますけれども、その一環と、それからヨーロッパのEUROTRANSというADSのプロジェクトにおける人材育成の一環というのがありまして、これを上手く結びつけて、こういうワークショップを開いて国外15か国から32名が来ています。そういうワークショップを開いて人材育成にも貢献しているところです。
 24ページは、少し提言的なことを書いているわけですが、まずは、こういう分離変換というテーマはあるのだということを中学生だとか高校生だとか、そういう人に知ってもらう、そういうアピールしていくことが、まずは大事なのかなと思っています。その上で大学と研究機関が上手く連携して、学部時代からこういう研究テーマがある、最先端の研究現場も見ていただくということで、高いモチベーションを持ってもらうということも必要です。そのことによって優秀な学生さんにも原子力に興味を持ってもらうということが必要かなと思っています。それから三つ目は、研究機関としての考えというか気持ちですけれども、人材育成というのが今、少し重荷というか、メリットは何だということが問われるようなところもあります。ヨーロッパなんかを見ますと、研究機関が研究者養成に相当程度関与して、大学の教育の一部を担っているようなところもあります。それからその見返りとして、研究機関の本来業務を一部、学生に担わせて研究者も助けられている。そういうウィンウィンの関係の形をつくっていくのが非常に重要かなというふうに思っています。このJ-PARCが整備されれば、群分離・核変換の技術の研究拠点ということで形成できると考えますので、そこで原子力の研究だとか人材育成に大きく貢献できるのではないかというふうに考えています。
 25ページが、施設の整備計画になります。ビームラインとTEF-Tの建設を先行して始めようと考えています。2015年、平成27年度に建設を開始したいということで線引きをしています。それからTEF-Pの方は原子炉施設ですので許認可が必要になりますので、大体3年の期間をとって、平成29年度の後半ぐらいに着手するというようなことで考えられたらなと思っています。それからあとで説明しますが、MYRRHA計画というのが大体2016年度からスタートする予定です。こういう三つで進めていくということを考えております。一番右のところに建設経費の見込みというのを書いております。大体TEF-T、TEF-P含めて200億強と思っています。MYRRHAに関しましては、全体の10%負担と考えると125億ということになるかということで、ここに記載しております。
 26ページは、この計画に関してのJ-PARCの国際諮問委員会からの提言というのを載せさせていただきました。J-PARCでは毎年、国際諮問委員会というのを開催しておりまして、今年2月に行われたのが第12回です。私は第1回からずっと参加して、それまでの核変換施設の検討状況等について説明してきております。今年に関しましては、提言1にありますように、TEF-Tを先に行い、ADS向けの材料試験に集中し、かつ可能な限り多くのパートナーを組み入れたJ-PARCのTEF-Tに対する強力な計画策定を支持するということを言っていただいております。提言2のところでは、MYRRHA計画とTEF-Tの間に明確な共同計画が合意されるべきであるというようなことを言っていただいております。提言3に関しましては、赤で書いたところだけ説明しますが、本来の目標と共存できる汎用性のある施設を建設するため、他の潜在的なユーザーの意見を聞いていくべきであるということです。これにも応じて、先ほどのワークショップも開いているところです。提言4としましては、TEF-Pも含めて包括的なスケジュール策定をしていくためのR&D活動を支持するというふうに言っていただいております。
 以上、まとめますと、施設としましては今、材料の試験、それから多目的利用を行うTEF-Tと、それからADSの物理的な実験を行うTEF-Pの二つを提案しています。このあとまた国際協力のところで話しますMYRRHAと上手く連携していきたいと思っております。それから施設具体化に向けた取組を行っておりまして、今後の課題のところにありますように、施設の詳細な設計検討と新規制基準への対応、あるいは、低出力ビーム取り出しだとかPb-Bi機器の信頼性検証等、そういう建設を前提としたようなR&Dに移っていきたいと考えております。多目的利用とユーザーコミュニティということで、幅広いユーザーの意見を取り入れていきたいと思っておりますし、人材育成にも活用していきたいと考えております。以上です。

【山口主査】どうもありがとうございました。それでは御質問等、お受けしたいと思いますが。何か御意見や御質問ございますか。

【中島委員】よろしいですか。

【山口主査】中島委員、どうぞ。

【中島委員】最初のロードマップのところに比較があります。J-PARCの施設とMYRRHAとの違いがここに書いてあるわけですが、要するにJ-PARCでやらなきゃいけないという一番のモチベーションになるようなところがあれば教えてください。

【大井川室長】はい。やはり一つは、陽子ビーム窓の材料です。いろいろな新しい材料も含めて照射して、そのデータを取っていくというのはMYRRHAではやはりできない。あれはもう本当に中性子源の大きな施設として運用しないといけないので、そういう小回りの利く照射実験というのは、もちろん炉側ではできるのですが、ターゲット側では無理だと考えております。それからMYRRHAの方は、燃料としてMOXを使うということになっていますので、核変換そのものをこのMYRRHAでやっていくわけではありません。ですから、MAに関する核データの検証だとか、そういうところをやはりTEF-Pの実験施設でやっていくことが必要です。ただ、逆に言うと大きなADSのコンポーネントの開発だとかは、J-PARCの方ではできないので、それはMYRRHAの方でやっていって、それらを併せて実用化を見通していくというふうに考えています。

【中島委員】MYRRHAは、臨界炉ですか。

【大井川室長】まず、未臨界で始めると思うのですけれども、臨界にもできるようにしようと考えています。

【山口主査】よろしいでしょうか。どうぞ。

【長谷川委員】TEF-Pの件で、先ほど、窓材の開発ということもおっしゃっている。最初、この炉に集中すべきだというふうにIAC(国際諮問委員会)は言っているわけです。ということは、イメージとしては12ページにあるようなターゲットのモックアップをつくって、当初の予定だと最低600日もてばいい。600日もたせるためには、どのくらい安全率を持たせて運転するかは分かりませんけれども、まず、そこで材料が十分使えるかどうかということと、600日あるいは700日ぐらいの連続運転が必要だろうと思うのです。今、このお話の中では一つ、メインミッションであるというTEF-Tの中で多目的利用というお話をされているわけですけれども、とにかく600日あるいは700日、800日を連続運転すると最初からそんなことできるわけがなくて、止まったりしたりと、いっぱいあると思うのです。だから、多目的利用というときに2段階で、要するに中性子が出れば何でもいいやという人もいれば、長時間、安定してビームが出ないと使い物にならないというのもあるわけです。多目的利用も一緒に始めますと言って、最初からどんとやりますというようなことは、少し知っている人ならあり得ないと思いますが、一方で、こういう核変換というものに対して、夢を売っているところがあるわけです。そこのところは、多目的利用についても、例えば段階を追って、メインミッションが終わったあとはこういうことができますとかということは、はっきり言っておかないと手は挙げたはいいけど最初から約束したようにビームが出ないではないかとか、多分そういうことで相当もめる、話が違うとかなる可能性がある。例えば、多目的利用についても十分メインミッションが終わったあととかということは、はっきり言った方がいいのではないかと思います。

【大井川室長】はい。ありがとうございます。正にそのとおりで、こういうユーザーコミュニティの人が集まってもらうワークショップ等を開いても、やはり我々のミッションはまずこれです、これを優先してやります。ただ、中性子は生まれますので、それを上手く使うことを考えてくださいという言い方をしますので、そこは誤解がないように我々も気をつけようと思います。

【長谷川委員】それからこの何百日というのがあった上で一旦、600か700か分かりませんが、仮にできたとする。そのできたやつを取り出して、その材料を疲労調査して、具体的に、この材料がOKというふうになるには恐らく冷却して、試験をしてというと更に2年位かかる。通常の、我々の経験からすると。そうすると仮にオペレーションが始まって、そこから安定的運転が始まるまで、今のJ-PARCでどのくらい水銀ターゲットが安定的に動くまでの時間があったかいうのを考えると、600日と言ったら正味で約2年、終わってから冷却が恐らく1年。先ほどのMEGAPIEでやった試料が、実際に使われるようになるまで現実的に何年かかったかということを教えていただいてですね、今、現実的にこれが終わって、ターゲットの一応目標値までできて、それから照射後試験までやって、そこが全部できるまで大体どのくらいの年月がかかるのか。

【大井川室長】まだ見通せてないところもあるのですが、MEGAPIEが5年以上かかっています。冷却して解体して、それをサンプルに切り刻んで、輸送する。それは実は、ホットラボの空きを待っていたとか、いろいろあるのですけれども。今、先生におっしゃっていただいたように、やはり取り出して2年ぐらいで何とかサンプルを作って、材料試験の方には回したいなとは思っています。

【長谷川委員】私も以前、STIP-1とか2の計画段階とかで実験をやらないかと幾つか声かかって一緒に検討させてもらったのですけれども、とにかく照射実験に対する見通しがすごく楽観的です。今、おっしゃったように当初2年で終わるはずが5年かかってもまだ始まらないというのが現実にあるわけです。仮に照射ができたとしてもそれで完成ではなくて、実は、材料の選択とか評価とかって、そこからが始まりなわけです。割とその辺は楽観的に考えて、照射さえすればあとは運んでくるのをただでできるし、実験もできる。当初、できると言っていたときに、一方で原子力機構のホットラボがどんどんダウンしていって、ホットラボの施設がなくなってきている。ですから全体として、これだけで全て完成するわけじゃなくてこのあとに何が必要か。前からも多分、山口先生なんかもおっしゃっていましたけども、周辺の核燃料を扱うのだとか、あるいはホットラボだとか。そういうのを含めると本当にこの金額だけで済むのかと。だから、ちゃんとここまでこういうものをやっていかないといけないし、現在動いている、シャットダウンしているからいけないとか、あると思うのです。ホットラボって一度作ると壊すのは簡単だけど、今の時代、もう一回作るのはものすごく大変です。あれだけのものを作っていって、そこできちんとした実験をやらない限りは、これだけお金かかって照射しました、あとは我々が材料の評価の方だけど、材料評価の人がちゃんとやらないからいけないのですという話じゃなくて。そこまでいって窓材を作る、なぜその窓材が必要かということは、その窓材は安全バリアの一番先頭で、ここが破れたらそこで、ぽんとPb-Biがビームになって飛んでいってしまって、そこで加速器が止まってしまう。だから一番初めにトラブルが起こるのもここだし、ここも安定的に使えるかどうかが核破砕性中性子源のポイントだから、ここはきちっとやるのが必要だという。そこのところをちゃんとやらないと核データ、あるいは中性子源に走っても現実にその機械ができなければ何ともならない。メインミッションはこれで、これをやるにはこれだけの日数がかかって、その間は、ほかの人はちょっと我慢してくださいとか、ほかの人がやるならこういう実験がありますとかというのをはっきり言う必要がある。それから、それに関係している多目的利用というところが今見るとフロアだけなのです。イメージからいうとJ-PARCはターゲット施設周辺のビーム実験室のようにここに遮蔽体をごろごろ並んでいるというような実験、多目的利用室をイメージすれば良いですか。

【大井川室長】まだそこまで考えていない。基本的には我々は、スペースは用意しますけども、そこの遮蔽だとか装置そのものは、こう使うユーザーが用意するというイメージで考えています。我々としてはTEF-Tの遮蔽というのは、しっかりとつくらないといけない。それはつくりますけれども。そこから中性子を取り出せるようにはしておく。そういうことでは考えています。

【長谷川委員】私、加速器のことを良く知らないところもあるので、教えてほしいのですけど。ついこないだJ-PARCのビームが異常に流れてターゲットが溶けるということありました。TEF-Pの、Pの方はレーザーでアクティベートできなきゃいかないなんてないと思うのですけれども、全体の出力の4分の1がくるということか。

【大井川室長】そういうわけではなく、全電流の半分がTEFの方にくる、そういう切り分けのマグネットを入れようと思っています。

【長谷川委員】そうすると、私はJ-PARCの実験で長時間安全運転がどのくらい必要か良く分からないのですけれども、一方で、TEF-Pの方は連続運転で長時間安定してでてきてほしい。だから、今のJ-PARCの中で上手く切り分けはできるのでしょうか。つまり加速器が365日ずっと動いているのか。

【大井川室長】そんなことはないです。今どんなサイクルでやっているかというのは、3週間ぐらいの運転をしてメンテナンスして、またそれをやって、それから夏の間は何か月か止まって、大きなメンテナンスをするというそういうサイクルがあります。

【長谷川委員】そうすると例えば600日というのは、正味600日だけどその間もメンテナンスを加えると、それは3倍になるかもしれないのですね。

【大井川室長】3倍というか、2年では終わらないということですね。3年ぐらいで終わると考えています。

【長谷川委員】今のお話だと、最初のターゲットの第1スクリーニングが終わるまでには3年から4年。あるいは6年くらい。照射が終わるまでに6年。

【大井川室長】そういうことでまずは、我々も600日という最終的なところにいきなりはいかないと思うので、徐々に増やしていって、データを重ねていこうと思っています。それからビームを20 μA/cm2でやると600日ですけど、そこを少し絞って、そうするとサンプル自体は少なくなるのですけれども、照射量の高いサンプルを早めにつくるということも考えられると思っています。

【長谷川委員】とにかく、いろいろオペレーションの条件とか、本来のメインのミッションを完遂するということが、非常に大事です。そこは、プロジェクトを支持している人たちもメインのミッションがやはり大事だよと言っているわけだから。そこのところを、あんまり夢ばかり書かないで、リアリスティックなものをやる必要があるのではないかと思います。そうしないと、あとで足を引っ張られるとまた困るなと思います。

【大井川室長】はい、分かりました。我々、それがミッションなので、良く考えているところです。

【山口主査】ありがとうございました。それは、今おっしゃったのはタイムスケールの話です。それからADSのJ-PARC本体だけじゃなくて、周辺施設も含めた施設運営計画の話。実際に動かしているときのマネジメントの話。少しその辺が、現実感ある計画が提示していただきたいという御指摘であろうかと思います。何らかの形で、答えていただければと思います。

【大井川室長】はい、分かりました。

【長谷川委員】特に、評価していくときのホットラボは、本当にすぐでないと使えないのです。私たち大学で、ちょこちょこやっているようなことはハンズオンというか手で扱っていますけれども、前のSTIP-2とか何かでも結局は、ホットセルの中でリモートハンドリングをやらなきゃいけない。そこのところがすごく大変だからホットラボが空くまで待っているうちにホットラボが終わってしまったとかという悪循環だったわけです。これだけできれば、これにだけお金を入れればいいという話ではなくて、これに対して、ここの施設は原子力機構としてしっかり担保していかなきゃいけないとか、周辺のこともしっかりやっていかないと、ものをつくったけれどもそこから先が進まないということになる。やはりやっていくと、どんどん予算が膨らむ、規模が延びる。こんなのでいいのかというのが出てくるかもしれないですけどね。最初のうちに、それはやはり明らかにしておくことが必要だというふうに思います。

【山口主査】はい、重要な御指摘いただきましてありがとうございます。矢野先生、どうぞ。

【矢野委員】窓のことなのですけど。これはディスロケーションを見るのですよね。違いますか。

【大井川室長】ディスロケーションというのは。

【矢野委員】この窓の耐性というか、プロトン(陽子)を照射して、何百日かやっていくと弱くなって破れる。そういうことですよね。

【大井川室長】はい。弱くなるというか、どちらかと言うと硬くなっていくということです。

【矢野委員】要するに、プロトンが入って、温度もありますけれど。それで我々のところでウランビームの400 MeVくらいのかなり強いのが出るのです。定量的に見られないですけども、それで照射するのと、どちらが早く答えが出せますか。

【大井川室長】DPAというどれだけの原子が動いたかという意味では、そういうイオン照射の方が有利なことがあります。それだけならJ-PARCを使う必要はないのですけど、やっぱり核破砕で生じるいろいろなHe(ヘリウム)だとかH(水素)だとか、そういうものが結晶の中でどういうふうに分布するかというデータが最終的には必要になってくるので、そこは取りたいのです。

【矢野委員】昔のIFMIFみたいに。だけど、あれは昔、ウラン-プロトンでやろうと、αをインプラントして、ニュートロン(中性子)の代わりにウランで。その方が、全てのことがシビアサイドにいくので。ただ、加速器が二ついるのです。だから、プロトンでJ-PARCでやるのは正攻法です。せっかく日本には、そういうファシリティがありますから、一工夫するとより早く答えが出る可能性は何かあるような気はしているわけですね。これは、今日ちょっと定量的に言えませんから。

【大井川室長】検討させていただくということで。

【山口主査】ほかに何かは、いかがでしょうか。はい、どうぞ。澤田委員。

【長谷川委員】すみません。今の御指摘で、ちょっと簡単にお話しだけさせていただいていいですか。それは材料の問題で、原子炉とか核融合の中性子の材料加工というところで、その問題になります。加速器を使うと、今おっしゃったディスロケーションじゃなくてディスプレイスメント、はじき出しの量だと思うのですが、その材料中の結晶構造の変化とかは分かるのですが、安全性を担保する強度が、延性がどのくらい落ちるかというデータはそれでは得られないのです。やはり今、さっき大井川さんがおっしゃいましたけども、はじき出しだけではなくて、核変換で中性子やトランスミューテーションで出てくるHやHeだとか様々なものが入ってくると、やはり気長に時間がかかりますが、実環境での照射をやっていかないと本当に安全性を担保するところの強度と強度の変化と延性の変化というデータは得られないのです。そこは、我々もすごくまどろっこしいなと思ってやっているのですが、やはり最後にものを作って安全性をというところになってくると、どうしてもこういう実機でやらないと駄目だというところが出てくるのだというふうに理解しています。

【山口主査】では、澤田委員。どうぞ。

【澤田委員】3ページのところのロードマップ。TEF-Pで、MAを大量に用いてと書かれています。このTEF-Pでは、MAがどれぐらい必要とされているかということ、あと工程表がございました、25ページです。これを見ると、2022年頃から運転に入るということですが、それまでにMAをどうやって調達されようとしているのか。これ第1回作業部会のときに、そういったものはできるだけ日本で調達したいとおっしゃっていましたけれども、そのお考えを教えていただければと思います。

【大井川室長】はい。MAは、最大で数十kgぐらい使えるような施設として整備したいと思っています。ただ、それだけのMAを調達してくるというのは非常に大変だというのは御指摘の通りです。今の原子力機構の施設を使えば、年間に数本のピンをつくるというのは可能かもしれないと思っています。ですから、そういうのを炉心に装荷して、数本のピンからスタートして徐々に広げていくというような、そういうアクティビティで、まずはスタートしたいと思っています。それから2021年とか2022年に運転開始のときに、いきなりMAを入れた実験からスタートというよりは、加速器との結合という実験からスタートするのかなと思っています。ただ今後、本当に核変換あるいは分離変換というのに取り組んでいくということになれば、やはりMAをかなり大量に使えるような施設の整備というのも必要になってくると思いますので。これに関しては、やっぱり原子力機構の中で将来的な計画ということも含めて、議論をしていきたいと思っているところです。

【澤田委員】そういうときに是非ともADSだけではなくて、今後国内のそういった施設が老朽化して使えなくなっていくという状況もありますので、FR(高速炉)による変換も含めて計画、貢献されていってはどうかと思います。

【大井川室長】当然そのように考えています。原子力機構の中でADS、FBR(高速増殖炉)のあまり垣根を考えずに、どういうものが必要かということを正に検討をしているところです。

【山口主査】どうぞ。

【和気委員】この研究開発分野において、特に技術をどう評価するかというときに、日本にはほかに比較できる研究がないというわけで、必然的に国際的な評価軸が必要になってきます。MYRRHAが国際連携拠点、あるいは我が国のパートナー施設としては非常に重要な軸になっているということが良く分かります。一方、考えられうる超長期の将来システムからどのような社会的便益が得られるか判断することは、例えば前回の議論で対象となったような半減期を数千年単位に短縮できるという物理的可能性などについて、社会的便益として国民はどのように評価したらよいか、特に費用・便益分析の枠組みで判断・評価することは相当に難しいことですし、こうした経済的な手法はあまりなじまないと思います。そこで現実的には費用をベースに比較・評価すること、すなわち予測される費用計算をベースとした国際比較が一つ重要な視点であると思います。ところで、MYRRHAの予算費用は円換算で約1,200億円、この数字がいわばヨーロッパで実施される同様の技術開発分野の国際プロジェクトに必要な資金規模ということになります。これを基準に考えてみますと、25ページの御説明では、我が国の国内プロジェクト予算規模は約200億ということになります。単純に金額だけを比較することに問題があるとしても、少なくとも200億円という計算金額が、国際的なプロジェクト予算計上の常識からして、例えばどのような費用が客観的に将来予測されているのかなど、もう少し御説明を頂いた方が判断・評価がしやすいと思います。例えば、考えられうる範囲で、維持費とか周辺の建設、あるいは、新しい基準の対応とかというものも加えた全体の研究開発プロジェクト費用として計上しておかれた方がよいと思います。少なくてもこの評価委員会に提示された数字200億円が、今後プロジェクト規模として、恐らく一つの判断材料として用いられていくと思います。できる限り客観的かつ保守的に見積もられた数字を提示されることが好ましいと思います。雑ぱくな言い方をいたしますと、1,200億円規模のMYRRHAプロジェクトと200億円規模のJ-PARCの二つの施設建設とが、どのような役割分担、あるいは国際的な位置づけになるのかもう少し知りたいと思います。

【山口主査】今のお話は次に、国際協力のテーマがありますから。その中で議論してもよろしいですか。今、同じ図が次の資料にありますので。そのときに併せて、今の和気委員の説明に対して議論していただきたいと思います。

【和気委員】25ページのこの数字、82億、129億というのには建設予算に含まない費用があるのではないですか。

【大井川室長】そうです。

【和気委員】本来は、含めて議論すべきではないかと思います。MYRRHAの予算の中には、そういう費用項目が入っているのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。確認だけお願いします。

【大井川室長】MYRRHAは、当然ライセンシングというか、それも含んだ施設をつくる費用です。それから運転維持とはまた別に計上されていて、別のところに必要資金として書いてあります。だから、1,250億円は建設費だけとなっています。

【山口主査】いずれにしても、そのへんはもう少し現実的な予算なり、見積りというのは必要であるという御指摘が一つ。あとはMYRRHAとJ-PARCとの関係で、多分どういう予算を分担するかとか、どう研究成果なりをシェアするかとか、そういう御指摘だと思います。ちょっと、その次の資料でもし追加でお答えありましたらお願いします。あとは、ほかには。藤田委員、どうぞ。

【藤田委員】今のお話ですけれども、やはり核変換実験施設での課題をまとめてはあるのですが、施設建設における主な課題がいきなりここの課題に落ち込んでしまっている。全体的にどういうところを目指そうとするから、どういう研究テーマがあり、どういうところが今課題だよというふうにしていただけると全体像が分かるのですけど、いきなり個々の課題に落ち込んでしまっている。これでは、もっとほかに落ち度はないのかとかいうことが非常に気になるのですが。

【中島委員】その辺少し関連して。

【山口主査】はい、中島委員。

【中島委員】この3ページのロードマップを見ると、J-PARCのTEFができて、MYRRHAができるとADSの実用プラントがもうできるような形に見える。本当にこれで、その次の途中のスペックというのが全くないロードマップで、データなり、あるいは必要な知見が得られると考えているのか。あるいは、もう少し段階が必要なのかどうか。そこがやっぱりトータルとしてどのくらいお金、期間も含めてかかるかということにかかってくると思うのです。

【山口主査】はい。多分、前回にも同じような議論ありました。もう少し技術マップなり何なり、そういったものでしっかり具体的などういう技術開発要素があるのかというあたりを明確にすべしという意見を頂いております。多分、今、中島委員からの御指摘も含めて、多分お答えになるとすれば非常に簡単に一言では答えられない話だと思います。一度そこのあたり説明をまたしていただいて、その質問は今、少しとっておいて後でお答えいただくというふうにしたいと思います。よろしいでしょうか。

【大井川室長】はい。

【山口主査】あと、ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】人材育成のところですけれども。若い世代にアピールできる課題というのは非常に重要ですが、やはり我々メーカーから見るとある程度、実用化の目途と言うのか、それが描けるようなテーマに対して、これが大学といわゆる研究機関だけじゃなくて、メーカーの若い人材もこういうところに参加して(勉強をする若しくは実績を積む)、研究開発から技術開発への流れは結構、研究所がやってDeath Valleyがあるにもかかわらず、いきなり実用化してDeath Seaに直面すると言われているような形がありますので、そこを含めて、検討していただけたらと思います。

【山口主査】はい。これも初回に、やはり原子力機構がこういう人材育成の中核となって、是非やっていただきたいというお話ありました。今日は原子力機構が、人材育成をやることの限界みたいなお話もおっしゃっていたのですが、今、御要望としてやっぱり組織にせよ、リソースにせよ、一番集中しているところは施設とかですね。今の御指摘が大学だけではなくて、民間の技術者も含めた連携の在り方というのは、やはり原子力機構として考えていただくというのは非常に大切ではないかと思いました。

【大井川室長】実は、非常にいいところ指摘していただいたと思っています。我々の取組も大学側を見ているだけじゃなくて、やはり実用側もしっかり見据えて、メーカーと手を組んでやっていかないといけない。フェーズが上がれば上がるほど、そういうところを意識しないといけないと思っています。今回、一つフェーズを上げたいというふうに我々、思っていますのでメーカーとの連携というのは、ますます重要になると思っています。

【横溝理事】ロードマップや技術課題をもう少し広げて、各所にメーカーの協力も見えるようにしていけば良いと思います。

【山口主査】はい、ありがとうございます。あとは、よろしいでしょうか。それではもう一つ、国際協力というのが次のテーマでございますので。それと併せて、そちらを御説明していただいて、またディスカッションいたただきたいと思います。では、原子力機構の方から御説明をお願いします。

【大井川室長】では、資料2に従いまして国際協力について説明させていただきたいと思います。
 2ページですけれども、基本的認識ということで、先ほどから言っていますように廃棄物処理の負担軽減というのは、原子力を継続して利用する国だとか、原子力からはもう撤退するという国、それからこれから原子力を導入する国の全てで共通する課題であります。それから分離変換技術は、極めて広範囲な技術が協働することで成立するということです。一国だけで全部をするということになると、非常に大きな負担が生じるということです。それから必然的に再処理の工程を含むということもありまして、核不拡散の枠組みの下で国際協力による研究開発の推進が適切であろうと考えております。我が国は、核燃料サイクル技術だとか高速増殖炉技術、それから大強度の陽子加速器技術等を既に有しているということで、この分離変換技術の研究開発を先導できる高いポテンシャルを有していると考えております。ということで、我が国が国際社会において放射性廃棄物処理処分の負担軽減のための研究開発を先導すべきではないかというように考えております。
 3ページからは、主な国際協力の現状です。高速炉関連について示しておりますけども、第四世代炉の国際フォーラム、あるいは、その中では、少し資料を加えていますが常陽・もんじゅを用いたアクチノイドサイクルの国際実証GACIDなんかも含んでおります。それからCEA-DOE-JAEA、フランス・アメリカ・日本の高速炉の覚書による協力。日米・日仏、そういう二国間の協力、それから電力中央研究所とは、欧州と金属燃料の協力をしていると聞いております。こういうことで高速炉について、いろんな協力が今、走っているところです。
 ADSに関しては、4ページ目です。先ほどから言っていますMEGAPIEという国際協力実験があり、フランス・ドイツ・イタリア・スイス・ベルギー・アメリカ・日本・韓国が参加して、2006年にターゲットの照射というのを行いました。現在、ターゲットの解体を終えて、照射後試験を各国で分担して実施している状況です。それからあとで述べますけれども、EUROTRANSだとかCDT等といった欧州枠組みプロジェクトへの参画というのをしているところです。それから先ほどワークショップの話がありましたけれども、アジアの国々とそういう情報交換をずっと続けているところです。それからベルギーの原子力研究センター、SCK・CENと略していますが、これと原子力機構とが協力取決めを持っています。ADSの分野ということで、ADS及び実験施設の設計研究、被覆管とかビーム窓の材料開発、Pb-Bi技術を含むことで協力をしております。それから先ほどから出ていますMYRRHA計画の参画というのを検討しているところです。
 5ページは、主な国際協力の状況の国際機関ということで、OECD・NEAですけど、1990年から隔年で情報交換会議を開催して、1回目は水戸ということで、日本がこの頃から、この分離変換技術については先導するという役割を担ってきています。それから核燃料サイクル作業部会等で様々な活動が推進されておりまして、導入効果の検討だとか、いろいろなベンチマーク計算だとか、Pb-Biのハンドブック、高出力加速器利用ワークショップ、先進燃料の熱力学データベースの整備等、こういうことが今も進められている状況です。IAEAに関しましては、高速炉技術作業グループTWG-FRというのがありまして、その下でFBRだけではなくて、ADSに関しても様々な活動が行われておりまして、炉物理のベンチマークだとかステータスレポートの作成等を行ってきております。
 個別についてなんですが、6ページはGACID計画ということで、これはもんじゅ作業部会で使われた資料そのままですが、アメリカでMAの原材料を提供してもらって、フランスで燃料ピンをつくって、日本の常陽、もんじゅで照射するという計画が進んでいます。
 それから7ページは、ADSに関するEUROTRANSというヨーロッパの非常に大きなプロジェクトです。予算規模等がありますけれども、5年間で大体42.3Mユーロですから60億円弱ぐらいを投入したかなり大規模なR&Dのプロジェクトでした。参加国は14か国から10企業、19機関、大学も17大学が参加しています。アメリカ、それから日本は我々、原子力機構、ベラルーシも参加したということです。正にこういうところでは、大学・研究機関・企業というのが一緒になって、研究開発を行うという、ヨーロッパでは非常にそういうのが上手に進められているなという印象を持っております。目標のところを少し飛ばしたのですけども、具体的には、右側にあります欧州実用核変換施設(EFIT)と呼んでいる将来のADSの技術開発検討をするというのと、その手前の実験炉級のADS、XT-ADSというものの設計と、それの建設に進むかどうかの判断材料を提供するとことを目標に置いておりました。
 8ページがその成果です。このEUROTRANSというのは、大体五つの領域で構成しております。設計研究、それから加速器と未臨界炉の結合実験、核変換用先進燃料、材料と液体重金属技術、核データという五つの領域で構成しています。設計研究では先ほどのEFITと、それから実験炉級ADSのXT-ADSです。こういう設計を行っているとともに加速器だとか核破砕ターゲットの設計、要素技術開発もやっております。それから加速器と未臨界炉の結合実験では、ベルギーのVENUSという臨界実験装置があるのですが、元々軽水冷却の実験装置だったのですが、Pb-Bi模擬体系に改造して、DT中性子源と結合してGUINEVERE実験というのを行いました。現在は、FREYA実験という名前に変えて継続されています。燃料に関しましては、ヨーロッパは酸化物の分散型燃料CERCERと呼びまして、PuとMAの酸化物と母材としてMgOを使う。それからCERMET、これは同じく酸化物が燃料ですけども、母材としてMo(モリブテン)、濃縮Moを使うということです。これらについて彼らは集中的に研究開発を行っていまして、我々の窒化物と相補的な関係にあるということで、我々もこの酸化物の情報というのを彼らから得ているところです。それから右側には、CERMET燃料の例というのがあります。こういう小さなペレットですけどもつくって、物性を測ったり、照射をしたりしているというところです。それから領域4の材料関係です。Pb-Biでは腐食というのが問題になるのですけれども、いろいろな実験を行いまして、高温部で550℃以下であればT91で、これは9クロム1モリブデン鋼ですが、こういうのを使うということ、それから低温部480℃以下では、SS316Lが使用できるという結論を得ております。さらに被覆管用にはAlコーティングをしたような材料の検討も行っています。それはもっと高温になる場合にはそういうのを使うことになります。Pb-Biの熱流動試験も行っております。彼らはEUROTRANSの中では、窓なしターゲットと言いまして、ビーム窓がなくて、自由液面をつくって、そこにビームを打ち込むようなそういう概念の検討をしておりました。核データについては、そこに書いてあるようなデータの整備を行っております。これが終わりまして、それ以降は分野ごとのプログラム、材料だとか燃料だとか核データと、ADSのために集まるというよりは、それぞれの分野でADSも含めて、第四世代炉も含めて研究開発をしていくという分野ごとのプログラムになっていっています。それから実験炉級ADSへの取組としてMYRRHAが出てきまして、それに向けての取組というように発展しています。右側の絵は、下の方の絵はドイツの方で捉えた腐食試験の例になっています。15,000時間という非常に長い試験時間を確保して、健全性というのを見ているということです。
 9ページは、MYRRHAに関しましてのCentral Design Teamということ。これはMYRRHAの設計を行うチームで、ヨーロッパの8か国の19機関が参加しております。我々もこれには参加しました。総予算は、あんまり大きくないのですけども非常に多くの機関が参加して実験施設の設計を行ったりしています。それから右側は、GUINEVERE実験からFREYA実験ということで、臨界実験装置を改造してこういう実験を行っています。右側にありますようにフランスでつくられたGENEPI-3Cという重水素の加速器を持ってきて、偏向電磁石で下のタンクのところに入射して、その周りに燃料が置いてあります。燃料もフランスから持って来た燃料だったと思います。こういう実験を行って、ADSの開発を行っているという状況です。
 10ページからは、MYRRHA計画への参加についてということです。10ページそのものは、既に第1回のときに各国の状況のところで説明しましたので、ここでは割愛したいと思います。
 11ページには第1回に説明したのとは少し変えていますが、スケジュールを示しています。上のところ、2014年から2015年かけて、大体仕様を確定していき、それから入札を行っていきます。2016年からConstructionを始めていくというスケジュールになっています。我々が参加するという場合の手続として1から4を書いています。まずは関心表明を出すということで、これは、今年の2月に理事長名で送付済みです。関心がありますよという、そういう手を挙げるということだけです。二つ目は、意思表明書というのがありまして、我々としてはかなり重いというふうに思っていますが、貢献の程度と条件の受入れを確約するレターになります。これは今回の評価結果に基づいて、先方と交渉していくということで作っていくことになるのかなと考えております。そのあと交渉ができ上がれば、連携協定ということでPartnership AgreementをSCKの方と締結して、最終的には各国が集まって、MYRRHA共同体協定を結びます。これはマルチラテラルなConsortium Agreementになります。今、SCKの方から言われているスケジュールでは、これが2014年末となっていますが、このスケジュールで進むかどうかというのは、まだ不透明なところもあると思っています。支出の予想のところですけれども、建設フェーズでは、先ほどもありましたけれども建屋と装置、エンジニアリング、それから彼らのいいところは、予備費というのをしっかり見えるように積むところです。こういうので960Mユーロ。今のレートでいくと、1,250億円ぐらいかなということで、先ほど示させていただいたところです。これに対して収入のもくろみということで、ベルギーが40%を負担するというのを約束していまして、そのほかをEU諸国、アジア諸国、その他から調達しようというのが彼らのもくろみになっています。
 12ページですけれども、我々としてのプロジェクトの参加のメリットをここに書いております。まず、MYRRHA計画の特徴ですけども、高出力(MW以上)の加速器駆動未臨界炉としては初の施設であるということです。それからロシアの潜水艦以外では、液体重金属の冷却炉としても世界初ということです。MAの核変換そのものはここで行うわけではないですが、ADSの実現のために必須となる実験炉級ADSとして極めて有効な知見・経験を得ることが期待されると考えております。それからJ-PARCの核変換実験施設との関係ということで、先ほど中島先生の方からもコメントがありましたけれども、ターゲット試験施設の方は、ビーム窓材料の開発・寿命評価のための施設としてMYRRHAの高度化だとか将来の実用ADSのためのデータを提供するということで、役割の分担というのが明確だと思っています。物理実験施設の方は、核変換用ADSの炉物理試験や核データの積分検証等を通じて、将来のADS、高速炉のためのデータも提供できるというところが特徴かと思っています。ということで、MYRRHAとJ-PARCは提携することによって核変換技術の実用化に向けた課題の効果的な克服が可能になると考えております。
 それで13ページが、もう一度出てきて、今の段階から進んで、このJ-PARCとMYRRHAを上手く連携して進めることで、この実用につなげていきたいと思っております。先ほど中島先生からありましたが、我々としては出力の規模としては、いわゆる高速炉の開発段階でいくとMYRRHAが常陽に相当して、実用ADSプラントがもんじゅに相当するような、スケールアップのプロセスとしてはそういうイメージです。大きな施設としては、この間には必要ないのかなと思います。ただ当然、実用ADSに向けて必要な固有のR&Dというのがあると思いますので。Pb-Biのためのポンプの大型化だとか免震構造のための工夫だとか、様々なR&Dは並行して進めていくことが必要だと思っています。それについては、また次回に詳しく御説明できればと思います。
 14ページに、このMYRRHAプロジェクトへの参加についての貢献方法ということで我々が今、考えていることをここに示しました。参加国は最低でも48Mユーロ、約62億円を拠出する必要がありまして、このうち最低4.8Mユーロですから、その10%を2014年末までに支払うというふうにSCK・CENからのレターには書いてあります。我々は、日本には10%、すなわち96Mユーロ、125億円程度の貢献が期待されていると理解しています。貢献は、現金(in-cash)と現物(in-kind)ということで可能だというふうになっていますので、今後の交渉次第ではありますができるだけin-kind、現物で貢献するということを目指していきたいと思っています。例えば、ADSターゲット試験施設を使って材料性能を評価して、それを上手くMYRRHAの方に反映していきます。MYRRHAの最初の設計には間に合わないかと思いますけど、MYRRHAの高度化なんかにこれを使っていくようなことで何とか貢献ということでカウントできないかと思っております。それから今、我々が所有しています現有のループ試験施設を使って、MYRRHAのビーム窓設計の検証を行うとか、そういうR&Dで、貢献するということです。その下の三つは、本当にMYRRHAの機器の調達という意味で超伝導加速器システムの機器の供給だとか、炉容器だとか炉内構造物の供給、あるいは、場合によってMOX燃料の供給なんかも含めて、できるだけ現物での貢献というのを考えていきたいと思っています。
 15ページが、MYRRHA計画に参加することによるコスト節減効果ということで、我々が、非常にラフなエステメーションですけれども考えているところです。J-PARCの核変換実験施設が220億円位です。設計費だとかR&Dも含んでいるので、先ほどの表の金額を足した金額よりも少し多くなっています。それから運転維持費だとか実験費に10億円が20年必要だと仮定すると200億円が必要になります。これに実験炉級ADSを、MYRRHAと全く同じと考えますと1,250億円が必要になり、これを自前でつくれば1,250億円そのものが必要ですが、今回これを10%負担するということにすれば125億円で済むことになります。運転維持費、実験費が大体30億円×30年と考えると900億円ですが、それが10%で済むとすれば90億円で済むということになります。トータルしますと2,570億円に対して、国際協力では635億円で済むということで、大体4分の1の負担で済むのではないかということです。しかもMYRRHA計画となり、我々が自前でこういう実験炉級ADSをつくることを考えれば、時期的にも早く前倒しになっているというところもあります。早期に核変換技術を加速して、研究開発を行っていくということに非常に有効ではないかと思っています。そのほかR&Dも含めて建設フェーズにおいて、これは大体23年までかなと思いますが、大体40億円の負担で、平たん化して考えられるのかなと思っています。また、in-kindの貢献ということを増やしていけば負担低減というのも可能かなと思っています。それから現在、J-PARCの核変換実験施設には他国からの参画ということでの負担軽減というのは考えていないのですけれども、そういうこともMYRRHAと一緒にやるということで考えていくことも可能かと思っています。
最後、16ページはその他の分野ということで。分離に関しましては、特に進んでいるのはCEAですので、そことの協力ということを今後やっていかないといけないのかなと思っています。ただ、多国間の協力というのは核不拡散の観点から、なじまないのではないかと思っています。それから燃料に関しましてはフランス、それから欧州のITU、アメリカ等が高いポテンシャルを有しています。それから照射場というのが非常に重要になってきて、日本は常陽、もんじゅを持っていますので、これを上手く使っていくということがキーになるのかなと思っています。それから乾式処理についてはアメリカ、欧州が高いポテンシャルがあるのですけども、特にアメリカが、実用規模というか工学規模でやっていったという実績がありますので今後の連携が重要になってくるかなと思っています。そのほかの新興国に関してもまだ、今のところは技術的には得るところが少ないかもしれませんが、技術力の向上だとか人材育成ということからも積極的に受け入れていくということも必要かなと思っています。以上です。

【山口主査】はい、それでは御質問や御意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ、長谷川先生。

【長谷川委員】この国際協力の中で、先ほどMYRRHAの方が最初は窓なしでやっていて、それから窓ありに変わった。ビーム出力を見ていくと、日本のADSに比べると向こうは10倍高くて、実用化に向けて更にまた10倍、100倍と桁が上がっていきます。熱流動的な解析からすると熱屋さんは固体壁より液体壁がいいと昔からこういうとき言っています。どういう経緯で、MYRRHAが液体から固体に変わったのかというのは、日本のADSは、窓材が保つものを作ることにすごく注力しているわけです。そこのところその経緯がはっきりわからない。熱屋さんからすれば、液体窓がいいのだから、将来のことを考えたら固体窓を一生懸命やらなくてもいいじゃないのという意見が出ると思うのですが、その辺どうでしょうか。

【大井川室長】はい。MYRRHAはずっと窓なしでやってきたのですが、国際的な評価委員会というのが開かれたときに、このスケジュールでやるとすれば窓ありでやらないと窓なしではまだまだR&Dが必要だろうということが言われています。窓ありの方は、MEGAPIEで一応成立するという実証がなされているということもありましたので、このスケジュールでやるということで、窓ありに変えているという経緯があります。

【長谷川委員】その先を見据えてという話じゃないのですね。

【大井川室長】そうですね。

【長谷川委員】MYRRHAの出力の範囲内では窓ありでやらないと、とてもこの炉心の方のターゲットだけじゃなくて、周りの消滅処理のプロセスというものが進まないから、全体としてこの計画をやるためには、まずとりあえずは窓なしでは諦めて、窓ありでやるとそういう理解ですか。

【大井川室長】すみません。消滅処理自身は、MYRRHAではやらない。MYRRHAは今、SCKが持っているBR2という照射炉の代替の照射炉になるのですが、そのスケジュールからいくと、彼らとしては早く作りたいのでしょう。ただ、窓なしターゲットだとまだまだR&Dがかかるだろうということで、これは窓ありで進めるということに決めました。

【山口主査】今のお答えは、ある意味では肩透かしであって、日本で窓材の開発に相当のリソースをつぎ込むということが妥当であるかどうかという問いなのです。窓なしがまだまだ研究開発要素があるから、窓材というのはどちらが日本にとってやるべき選択かというのはやっぱり答えていない。今つくるとしたら窓ありだという話ですから、少しその辺はもう少し、今の長谷川先生の御指摘については要検討かなと思います。

【大井川室長】実は、そういう意味では我々は窓なし概念というのも可能であれば採用したいというのは、ADSの実現というのを考えたときにはあるわけです。ヨーロッパがそこを頑張ってやってくれているから我々は、窓ありを頑張ろうという。そういう関係で、ずっとこの10年以上、進めてきたという経緯があります。ただ、彼らが窓ありに転換したということで今、窓なし概念のR&Dそのものはほとんどストップしているという段階になっています。これは国際的な本当のADSを実現に向けてというコミュニティの中でも窓なしをどうするのかというのは、良く話し合わないといけないかなと思っていますが、まだ、そこに議論が進んでいるという状況ではないです。

【山口主査】ほかにはいかがでしょう。どうぞ、矢野委員。

【矢野委員】ずっとその話、窓の話を何年も聞かされています。ビームのパワーと関係しているのですから、窓ありと窓なしはうんとビームのパワーがないときはどっちでも成立しているのですか。

【大井川室長】窓なし概念は、ビームのパワーというよりは液面の安定性になります。

【矢野委員】炉の方の問題ですか。

【大井川室長】いや、加速器から核破砕ターゲットまでの問題だというふうに思います。蒸気が出てきて、それがどういうふうになるかとか。いろいろ。

【矢野委員】加速器の方に工夫があればいいのですか。

【大井川室長】重金属を安定に流して、そこに自由液面をつくるというのは実験上やれば上手くできるのですけど。そこに何MWというビームが入ってきて、本当に安定して、それを保てるかというのはそう簡単ではないです。

【矢野委員】安定な液膜をつくれるかということですね。

【大井川室長】そういうことです。

【矢野委員】だから、ゼロパワーであれば。

【大井川室長】ゼロパワーであれば、それは言ってみれば水銀を上手く滝のように流して、そこにビームを打ち込めばいいわけですよね。

【矢野委員】ビームパワーがどんどん大きくなると、どこかで液面が安定にならないということになるのですか。

【大井川室長】そうじゃないかと思います。ベルギーでは、それの検討をするために電子ビームで水銀だったと思うのですけども、その液面に照射して、安定できるかどうかというようなところまでやって、彼らとしてはできるというふうに思っていたのですが、まだこういう実用炉のシステムの中に入れるためにはまだまだ未熟かなという評価だったのだと思います。

【山口主査】セパレーションをやるとすごい発熱が出てくるのでなかなか大変な問題のように思いますよ。でも、いずれにしても今のお話は例えば、窓材の開発にしてもなかなか一筋縄ではいかないかと思いますよ。少しその辺のセレクションというのは、何らかの判断基準なりがいずれは要る可能性もありますしね。もうちょっと前向きの理由付けというのは、あってしかるべきかなと思いました。はい。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】二つありまして、一つは11ページ、収入のもくろみの方です。アジア諸国で日本は、10%です。残りはどこが出すのかということと、最後のページで乾式処理について言及してくださっているのですが、今年の秋から韓国がPRIDE(50 kg/dでしたか)という乾式プラントを動かすので、韓国は今、資金もポテンシャルもすごく上がっていて、一番脅威かなと思います。当初は、アメリカと日本を見ていましたけど、もう今、韓国は日本を全然見ないで、アメリカを見ています。そこは、記述していただきたいなとお願いします。

【大井川室長】ちょっと一点。私の方が教えていただきたいのですけども、その韓国の乾式プラントというのは、対象としているのは高速炉使用済燃料なのか、それとも軽水炉なのかどちらですか。

【藤田委員】軽水炉から高速炉に持って行く系で、課題はあるようですが、韓国は軽水炉の再処理は湿式では認められていないのですが、高速炉に持っていこうとしている。御存じか分からないのですが、電解還元法というので酸化物から金属に還元するのですけれども、そのときに韓国独自な概念として高レベルの廃棄物を圧倒的に減らすことを考えている。例えば、Zr(ジルコニウム)の被覆管が出てくるのをリサイクルするとかというようなことも考えて、軽水炉の燃料も一応、完全な湿式の再処理ではないのですが、再処理もどきをして、高速炉の燃料をつくる。それも金属燃料にする基本的な考え方は、アルゴンヌの金属燃料の乾式再処理ですけども。そこに持っていくところにはオリジナルの考え方を入れている。しかも、アメリカとか日本の場合は金属燃料というのはUとPuとZrの合金なのですけど、Zrについてはまだどうするかというのは決まっていないのですけど、韓国はそのZrをリサイクルするというようなアイデアも出している。その実証をPRIDEという50 kg/dだったと思うのですが、Uを使ったプラントなのですけど、この秋から動かすというふうに聞いております。

【大井川室長】あともう一点。先ほどのアジアからですが、私が得ている情報では中国が我々と同じようにEOIというExpression of Interestというのを出しています。韓国も2機関ほど興味を示しているというふうに情報は聞いています。詳しく、どこがいつどういうふうな手を挙げるというのは、まだ情報としては持っていません。

【藤田委員】10%というのは、中国分の10%ということなのですね。

【大井川室長】それぐらいのイメージかなと思っています。

【藤田委員】ありがとうございます。

【山口主査】ほかには、いかがでしょうか。どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】国際協力ということで、まず、日本がMYRRHAに貢献するということで、先ほどお話がありました。最初の資料1の方で工程表がありまして、日本からTEFの成果をMYRRHAの方に反映していく、貢献していくというのは時間的には大丈夫なのですかという話があります。あともう一つ、逆に、日本が貢献する結果として得られるものが、貴重な経験が得られる、開発費用がセーブできるとかあるとは思いますが、具体的に何が得られるのだということ。先ほど冒頭、山口主査がおっしゃったように技術マップがきちんとあって、その中の、ここのギャップが大きくて、ここはMYRRHAから得るとか、そういったことをより具体的にまとめておかれるべきだと思います。

【大井川室長】先ほど山口主査からもありましたように、次回そういう整理も含めてお示ししたいというふうに思っています。それからTEFがMYRRHAへの貢献が大丈夫かというところは、正に我々、お尻に火がついている状況です。やはりできるだけ早くTEF-Tを運転まで持っていって、MYRRHAがそんなにこのスケジュールで進むのかというのも念頭に置きながら、できるだけ我々の方は早めに進めたいと思っているところです。

【山口主査】ありがとうございました。ほかには何かございますか。よろしいでしょうか。あと一つ、二つ議題がありますので、次に移らせていただきたいと思います。前回の作業部会で御指摘いただきました事項のうち、一部について回答資料を今日、用意していただいております。こちらは原子力機構の方から説明いただきたいと思います。資料3です。お願いいたします。

【大井川室長】前回の指摘事項について。この間は技術の現状についてお話ししましたが、やったことがつまみ食い的に書かれていて懸案事項が何かというのは分かりにくいという話がありました。それを少し並べました。ただ、次回また、技術的な全体像もみながらこれは説明させていただいた方がいいのかなというふうに思い始めています。
 簡単に言いますと、2ページの方は分離技術に関してです。全体的にやっぱり専門家の不足ということ、それから施設としてMAを使えるというところのインフラ、それから装置だけじゃなくて人材、技術の継承、そういうところに問題が生じつつあるということです。それからメーカーとの連携というところが本当の実用化に向けては必要な段階になっているということです。それからそういう意味でもフランスがかなり成果を上げていますので、情報交換が必要ということが書いてあります。
 3ページの方は、ADSに関するものです。これはもう本当に技術的なマップの話になりますので、今日は割愛しようと思いますが、よろしいですか。

【山口主査】はい。

【大井川室長】4ページの方は、燃料に関してです。やはり技術的なところなのですけれども、燃料のふるまいコードの開発なんかがやっぱりまだ遅れているところがあり、そういうことで安全設計をちゃんとやっていくということが課題になっていると思っています。それからここも専門家の不足というところが問題になっていくということから、乾式再処理に関してもメーカーとの協力だとか、ホットじゃなくてコールドでもいいのですが、準工学的なそういう試験が必要な段階になっているということ。それからアメリカとの協力が必要ということを今、考えているところです。この辺も少し整理して、次回またお話ししさせていただきたいと思います。
 5ページは、このADSの果たす役割について大きなグランドピクチャーが必要ではないかということ、それから移行期についての定義が必要ではないかということで、5ページと6ページにそういうのを持ってきています。5ページは、ADSの役割ということで軽水炉利用から軽水炉に分離変換をプラスするような状況では、サイクルのところで再処理工場に群分離工程が付加されて、ADSが軽水炉からのMAを核変換するという役割があります。そこから高速炉への移行期に入っていき、そこでは高速増殖炉が導入されるとともに、高速増殖炉の再処理が始まるという移行期・過渡期があります。高速増殖炉が、最終的に全てリプレイスする、高速増殖炉でリプレイスされたあとには、高速炉からのMA核変換をADSが請け負うというそういう役割があるというふうに考えています。最後の行、高レベル廃棄物の処分ということでは、今の従来型から軽水炉時代から含めて高度化された地層処分というのに役割を果たすことができると思っています。
 6ページは、移行期の定義です。これは原子力委員会、2009年のチェックアンドレビューのときに示したスライドそのものを持ってきています。当時は、2050年ぐらいには58 GWの発電容量で一定としまして、プルサーマルが少し入ったあと軽水炉から高速炉への移行期があり、最初は高増殖型のFBRがあってその後、低増殖型のFBRに移行していくということを考えて、議論していました。細かい想定条件等は、見ていただければと思いますが、前回、お示ししましたときには40 GWという想定で簡単に考えていますので、この58 GWとは全く同じ想定ではないということに御留意いただければと思います。
 それから7ページですけども、分離変換とその目標設定ということで回収率についてお話がありました。まず、右側の図が良く出します潜在的な有害度の図ですが、使用済燃料ですと、原料としては天然ウラン9tを下回るまでに大体10万年かかるわけですが、U、Puを99%分離してという再処理をしたHLW(高レベル放射性廃棄物)ですと、大体1万年弱かかります。それからまだプラスして、MAを90%分離すると、1,000年強位かかります。99%分離しますと数百年になります。MAを100%分離した場合と99%分離した場合というのは、ほとんどこのグラフ上では重なっているということで、99%分離・核変換することができれば究極的な目標に非常に近いところにあるというふうに思っています。ということで、我々の目標としては高レベル廃棄物に含まれるMAの99%核変換と設定します。そうしますと、最初の群分離の工程と、それから乾式処理でADSを大体1回20%核変換しますので、5回ぐらい乾式処理が回るということで、ここでのロスを何とか抑えていくということで、1回あたり0.1%。すなわちMAの分離工程で、99.9%の回収効率。それから乾式処理で99.9%の回収効率ということを達成すれば、簡単な算数では99.4%。すなわち99%が達成できるということで今、我々は目標として、それぞれの工程で99.9%というのをおいているところです。これがもっと悪くなったら破綻するのかと言ったらそういうわけでもないですけれども、我々の目標としては、全体としてやはり99%というのを目指していきたいと思っています。
 それから8ページ、9ページは個別の場合の、処分場の面積低減についての考え方です。これも2009年のチェック&レビューのときに示したスライドを二つ持って来ました。簡単に言いますと、この表のHCと書いてあるのが、非常にコンパクトに処分できるという条件です。ガラス固化体にMAが1%以下しかいかなければFBRからのMAガラス固化体の場合、すなわちMAをリサイクルFBRの場合ですと、1%以下であればこういう集積的な処分ということが可能になります。それからガラス固化体ですが、Sr-Csを取り除くようなガラス固化体が下の高含有ガラス固化体というところですが、この場合だとMAの移行率を0.3%ぐらい以下に抑えたいということです。ですから、我々の目標設定としては非常にコンパクトな処分というのを目指すのであれば0.3から1%ぐらいのMAの移行率というのを確保したいと思っています。
 それから9ページの方は、ガラス固化体へのSr-Csの移行率ということです。こちらは置いておけば30年の半減期でどんどん減っていきますので。貯蔵の期間というのをどれくらい短縮できるかということになっていきます。今のところ同じようにHCと書いてある部分で、赤字で0.3%以下というのを設定していますが、0.3%以下というのを達成できれば貯蔵期間の延長というのが非常に短くて済む。それが1%から10%漏れてガラス固化体の方に入るようになると、貯蔵期間というのが少し長くなっていきますよという結果になっています。ということで、我々としては今、Sr-Csの移行率というのは0.3%、これはかなり高い目標なのですけども、こういうのを設定したいというふうに思っているところです。以上です。

【山口主査】はい、ありがとうございました。それでは今の資料、何か御質問等ございますか。いろいろと前回御指摘、御質問いただいた点で上手く整理して答えていただいたかと思います。はい、どうぞ。藤田委員。

【藤田委員】7ページのこの資料、非常に分かる資料で納得したのですが、ちょっと気になったのは、確かこの工学的に、例えば、廃棄物に含まれるMAを分離工程で99.9%回収する。乾式も99.9%回収する。これは工学だと結構大変かなという気はします。湿式はちょっと分からないのですけど、乾式の場合は同じ電解槽の中に燃料をずっと入れ続けて、それで回収するので、99.9%回収は一応、可能なことはある程度、技術的にも分かっているのですが、ただ、やっぱり工学的に99.9というのは、目標としてはかなり高いのかなというふうにちょっと個人的には感じました。

【大井川室長】御指摘の通りだと思っていて、これから少し工学的なフェーズに移っていくと、そういうところも含めて、ちゃんと考えていかないといけないと考えています。そこをやっぱりメーカーとも議論しながらやっていきたいと思っています。MA90%の回収率になるとグラフにあるように数百年と言っていたのが、1,000年を超えてしまうことになるので、やはりこの辺を何とか実現するために、技術的なところを英知結集してやっていきたいなと思っています。

【藤田委員】そうですね。そこが日本の目指すところで、海外に対抗できると言うのですか、そういう技術開発をして、日本のステータスを上げたいというふうに思います。

【山口主査】こういう形で見せていただくことが研究開発投資のインセンティブになるわけですし、それが技術開発のドライビングフォースになるので、現実的にこれが達成できるかどうか、あるいはどこまで妥協するかというのはまた別の問題として考えるというのがあります。やはりこういう見せ方というのは、是非いろんな形で出していただきたいなと思います。いかがでしょうか、ほかには。よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。また改めて、次回にそのほか技術的なテクニカルのところはまた整理して、御説明いただくということですので、よろしくお願いいたします。それでは、あともう一つありまして、今回の作業部会で事務局からは10月中を目途に中間取りまとめを行いたいという目標の設定がございます。それで今後、これまでの審議を踏まえまして具体的な取りまとめ作業に入ってまいります。今回、事務局の方から骨子案の資料が提出されております。少し、その辺を説明いただいて御意見いただきたいと思います。では、事務局から。

【西田室長】放射性廃棄物企画室の西田です。今、資料4に今回の中間的な論点の取りまとめの骨子案という資料をお配りさせていただいています。まだ、骨子案というにはちょっとおこがましいような感じです。ただ、これまでの御議論いただいた項目を並べさせていただいた形になっております。今回の作業部会ですが、御議論いただきましたことを文部科学省の予算の中で、具体的に反映していきたいと考えております。平成26年度要求について、財務省との協議が10月以降本格化していくことが予想されております。その時点でまとめられる内容を中間まとめということで考え方、方針をある程度まとめさせていただき、それを踏まえまして、予算の中に反映させていただければと考えております。したがいまして、今後、原子力機構の事業計画等がより具体化していけば、引き続きそちらの評価をさせていただきたいと考えています。今回、項目としてはこのような形でまとめさせていただいておりますが、今後、次回に向けてこの中身の肉付けをさせていただきたいと考えています。この肉付けを提示させていただくに当たり、委員の先生方から今後、留意するべき点等の御意見を頂きまして、それも踏まえて、中間取りまとめの中に反映をしていきたいと考えているところです。そこで、ここから先はお願いになるのですが、各委員の先生方におかれましては、今後の取りまとめに当たっての留意すべき点につきまして、後ほど文章等で事務局まで御提出いただければと考えてございます。これは様式、分量は全く自由です。大変恐縮ですが、9月25日あたりを目途に留意点等を事務局の方に送っていただき、次回までにある程度の中身を取りまとめて、また事務局の方から説明をさせていただきたいと思います。次回は、今、御指摘いただきました宿題事項の続きと中間取りまとめのたたき台を事務局から御説明させていただく形で考えております。よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【山口主査】大変お忙しいところ申し訳ないところではありますが、やっぱり中間取りまとめとしてしっかりしたものをつくるために、やはり文書を出していただくのがいいのかなと思います。それで、いろいろ御意見いただく上で、今日の段階で、資料4について、もし、御意見等ありましたら伺っておきたいと思います。特に御指摘は、今の時点でございますか。大体これまで御議論いただいたような基本的考え方、それから研究開発状況、それから国際協力の話、それから評価と言いますか、課題とかロードマップ、それで最後に人材育成、そんな構成で考えて、事務局の方で考えておるようでございます。こういう内容で、項目ごとに書いていただいても結構だと思います。別に全ての項目というわけでございませんので、是非御意見を25日までに、お送りくださるようにお願いいたします。

【中島委員】メールとかでリマインドをしていただけますか。

【山口主査】適宜、また御連絡を差し上げてください。

【長谷川委員】それに当たって、今回の議事録はちょっと間に合わないかもしれませんが、前回の議事録とかを参考にさせていただきたい。

【西田室長】議事録をお送りするときに改めてリマインドをさせていただきたいと思います。

【長谷川委員】よろしくお願いします。

【山口主査】それでは以上をもちまして、本日予定していた議題は終了となりますが、最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。

【西田室長】はい、次回の作業部会の日程でございますけども、また改めて日程調整をさせていただいた上で、また皆様方に御連絡をさせていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように議事録につきましても後ほど、御確認のために送らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

【山口主査】それでは、以上をもちまして第3回の群分離・核変換技術の評価作業部会を終了いたします。どうも遅くまでありがとうございました。

―了―

お問合せ先

研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室

(研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室)