原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年9月9日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口主査、澤田委員、中島委員、長谷川委員、藤田委員、矢野委員、和気委員

文部科学省

田中研究開発局長、田中研究開発局審議官、増子原子力課長、石川原子力課長補佐

オブザーバー

横溝日本原子力研究開発機構理事、大井川日本原子力研究開発機構研究推進室長、松村日本原子力研究開発機構グループリーダー

4.議事録

【山口主査】おはようございます。それでは定刻となりましたので、ただいまから第2回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。本日は御多忙のところ御出席いただきまして誠にありがとうございます。それでは、これより議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれている通り、群分離・核変換技術に関する検討の経緯と開発状況についてです。それではまず、事務局から出欠の確認と配布資料の確認をお願いしたいと思います。

【増子課長】おはようございます。原子力課長の増子でございます。本日は、担当の放射性廃棄物企画室長の西田が、汚染水問題で現地事務所に併任となり、現地の調整会議第1回が開かれるということで欠席させていただいております。私の方から出欠の状況を御説明します。まず、田中委員から欠席の連絡を受けております。また、日立GEの澤田委員から多少遅れるという連絡を受けております。本日は8人中7名の委員に出席いただくことになりますので定足数である過半数を満たしております。続いて、本日の配布資料の確認をさせていただきます。

【石川課長補佐】それでは本日の配布資料を確認させていただきます。議事次第のところに配布資料を記載してございますので、そちらを確認いただきながら資料を御確認いただければと思います。まず、資料1が群分離・核変換技術に係る検討の経緯(再整理)。それと資料2-1が加速器駆動システム(ADS)の導入シナリオとその効果。資料2-2が群分離技術の研究開発状況。資料2-3がADSによる核変換技術の研究開発の状況。資料2-4が、核分裂生成物の核変換技術の現状についてということで、配布させていただいております。資料1が事務局、資料2が日本原子力研究開発機構(原子力機構)からの資料になります。もし、乱丁・落丁、資料過不足等ございましたら御連絡いただければと思います。以上です。

【増子課長】それでは続きまして、山口主査に議事の進行をお願いする前に、主査から主査代理の指名をお願いしたいと考えております。これは第1回作業部会の配布資料、参考資料1、運営規則第2条第7項の規定に基づくものです。

【山口主査】それでは運営規則の第2条第7項に事故があるときに、代わりをお願いする委員の方を主査代理として指名することになってございます。私の方からは澤田委員に主査代理をお願いしたいと考えてございます。本日、澤田委員、少し遅れていらっしゃるということですので、後ほど確認を取らせていただきたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。それでは本日の議題に入ります前に、前回の作業部会で皆さんから御挨拶を一言ずつ頂いたのですが、まだ中島委員からはそのような時間をとっておりませんでしたので最初に一言、御挨拶を頂ければと思いますのでよろしくお願いします。

【中島委員】おはようございます。京都大学原子炉実験所の中島でございます。私は、核変換のところ、今日も一部紹介があるかと思いますけども、京都大学の原子炉実験所では、世界で初というプロトン加速器を使った核破砕中性子源によるADSというのをやっております。ただ、これまでは、どちらかというとサーマル体系での、我々としては次期の中性子源のための核変換、加速器未臨界炉ということですけど、今年度から、福島事故を受けて、やはり廃棄物処理のために核変換技術が重要であるということを改めて認識しております。今後は原子力機構と連携して、我々の施設も有効に活用していただければと思っております。そういう観点で、実験等やっている立場からこの委員会に貢献できればと思います。よろしくお願いいたします。

【山口主査】どうもありがとうございました。それでは、ただいまから議題に入らせていただきたいと思います。前回の資料で公開の手続についてということで、プレスの方が撮影等ある場合にはお受けすることになってございます。今日はいらっしゃらないようですね。前回と同じように事務局、それから原子力機構から資料の用意をしていただいております。それぞれ御説明いただきまして、その後に質疑、それから議論をさせていただきたいと思います。なお、議題ごとに質疑応答の時間を設けて進めたいと思いますので、御承知おきください。初めに議題の一番目、群分離・核変換技術に関する検討の経緯として事務局より資料1について説明をお願いいたします。

【石川課長補佐】それでは私の方から資料1につきまして、御説明させていただきたいと思います。資料1については、群分離・核変換技術に係る検討の経緯と再整理ということで書かせていただいております。基本的には2009年の原子力委員会の中で一旦、チェックアンドレビューということで分離変換技術の検討委員会が設けられまして、報告書がまとめられております。このあと原子力機構の方から開発の現状について御説明があるかと思いますが、その前に2009年のときにどういった形で導入の効果であるとか研究開発レベルについて報告がなされているかというところを事前に、再整理をさせていただいて、御説明させていただきたいという趣旨で、資料1を入れさせていただいております。
 まず、1ページ目、分離変換の導入の効果ということで、当時の報告書に大きく(1)から(4)、四つほど挙げております。一つ目が、(1)の潜在的な有害度の低減ということで、分離変換の導入の効果ということで記載されているところです。簡単に読ませていただきますと、MA(マイナーアクチノイド)の分離変換を行うことによって潜在的有害度が10分の1から1,000分の1に減少する。特に、炉取り出し後の100年以降ではその効果が大きいということ。また、高レベル放射性廃棄物の潜在的有害度が軽水炉燃料の原料である天然ウランとその娘核種のそれを下回るまでには1万年を要するというものが、分離変換を導入することで、この期間が数百年までに短縮されるというようなことが一つ、導入効果として記載されているところです。
 2ページ目ですが、地下水シナリオに基づく被ばく線量について。一つ目として、MAの分離変換を燃料サイクルに取り入れない場合でも取り入れた場合でも、線量は100万年経過後の10-5 mSv/yでピークとなります。下のグラフ、赤線のところのピークが105から106の経過年のところで、10-5 mSvのところでピークを迎えるということです。こちらに関しては、さほどの違いはないということです。ただ、1,000万年以降の被ばく線量が一桁程度下がっているというところで、違いがあるということが書かれております。報告書の中におきましても、MAの分離変換は地下水シナリオに基づく実効線量に対しては実質的な影響は与えないというような評価がなされているところです。
 3ページの方ですけれども、処分場に対する要求への影響です。廃棄体発生量の低減ということで記載されております。地層処分するべき高レベル放射性廃棄物のガラス固化体発生量に関しまして、MAの分離変換を行うことでUO2燃料軽水炉の場合に10%の削減。MOX燃料軽水炉の場合に50%減少というようなことが評価されています。一方で、高速炉ではガラス固化体発生量が固化体に含まれる酸化物含有量で制限されるためということで、MA分離変換を導入する効果は小さいということが当時の段階の評価ということで記載されているところです。
 また、4ページ目で処分場に対する要求への影響ということで、処分場面積に関しての評価がなされています。MA分離変換を導入した場合では、通常のUO2燃料軽水炉の場合で80%程度に低減できるということと、MOX燃料軽水炉の場合には30%程度に減少できる。高速炉の場合には40%程度の削減が見込まれるということです。
 5ページ目、6ページ目のところに移らせていただきますが、こちらでは処分場に対する要求に影響を与えるパラメーターということで、定置前貯蔵期間の短縮という観点で評価をされています。一つ目のところですが緩衝剤温度制限100℃とする場合に、高速炉燃料に対してMAの分離変換を行わないときは貯蔵期間を65年にする必要があるということと、Am(アメリシウム)の影響が軽減されるまで地上において340年間貯蔵する必要があるということ。二つ目のところですが、MAの分離変換を導入した場合に40年の貯蔵で定置することが可能ということと、Amを含んでいないということで貯蔵期間を60年とすれば定置面積を小さくできること。240年間貯蔵するとすれば集積配置も可能というようなことが示されております。また、最後ですが、MAの分離変換と発熱性核分裂生成物の分離との両方を導入した場合は、高含有ガラス固化体は5年間の貯蔵後に4分の1の定置面積で定置を行うことが可能といったような評価がされているところでございます。
 最後6ページ目です。岩種・定置方法に関しての効果というところも記載しておりますけども、ここにつきましては下のグラフでも御覧いただけますように硬岩のところに横に置く、軟岩のところに縦に置く、横に置くというそれぞれの方法について検討が行われているようです。この中で貯蔵期間50年、100年、300年を想定して評価した結果、それぞれ多少の差があるものの、いずれの場合においてもMAの分離変換の効果が見られるということが評価されています。2009年の報告書の段階で、こういった分離変換の導入効果があるということが報告されているところでございます。
 その上で7ページ目ですけども、当時のチェックアンドレビューで提示したロードマップと現状になります。この図の見方といたしましては、下の方に少し書かせていただいておりますが、二重線の四角で囲んでいるところが、ほぼ終了している部分というところです。黄色をつけているところが今後10年間の中心部分ということで、評価されているところでございます。緑のところが今後、国レベルで評価を踏まえて進めていく部分ということで評価をされているところです。現在の状況というところで、燃料及び燃料サイクルの開発段階につきましては、黄色の中でのデータベースの拡充というところが進捗として見られるということを伺っているところです。また、ADSにつきましても今後10年間の中心部分と言われている技術の開発が進められているというところです。加速器につきましてもJ-PARCの運転経験ですとか信頼性向上というものが進んでいるというところで、現在の状況がこの辺にあるのではないかということで、書かせていただいております。
 この中で、丸数字で1、2、3、4、5、6と付けている箇所がありますが、こちらに関しまして、8ページからですけども、当時の検討会での指摘事項と現状の対応状況というものを簡単にまとめております。当時の指摘事項としては、加速器の性能コストが実現しているかどうか、ビーム窓の工学的成立性の確証、また未臨界炉心の制御等、炉物理の課題に関しての指摘。それとPb-Bi(鉛‐ビスマス)冷却炉の設計・安全性に関する確証。また窒化物燃料の乾式再処理に関しての御指摘と、最後のところはこちらも窒化物燃料に関してですが、それが製造できることに関して高い信頼度で確証することといったようなことで指摘があります。それぞれの対応状況といたしまして、右側のところにそれぞれの概念設計であるとか、評価を実施しているということを記載させていただいております。
 最後、9ページ、FBR(高速増殖炉)サイクルでの当時の指摘事項と現状の対応状況ということで、本作業部会では参考資料として載せさせていただいております。以上です。

【山口主査】どうもありがとうございました。それでは、事務局からの説明資料1につきまして、御質問や御意見等ございましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

【澤田委員】よろしいですか。

【山口主査】どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】7ページで、現在の状況の破線がありますが、この図は下に向かって、時間的に流れていくと思いますが、この破線の上にある黄色い箱の部分は、これは終わったということですか。それとも今やっているという意味ですか。線の上流側に、箱があるので。

【石川課長補佐】その点については、現状ではある程度、技術的な実証等ができてきたのではないかと判断しているところです。これから、機構の方から実際、開発状況等を御説明いただいた中で先生方に御判断いただければと思っております。

【澤田委員】分かりました。はい。またあとでお願いします。

【山口主査】よろしいでしょうか。今の点、いわゆる平成21年の評価の時点で、今後10年間の中心部分ということで指摘されているものです。実績的には半分くらいは過ぎているということだと思います。あとでその辺の進捗が、当初の見通しに比べてどうであったのかという観点も必要かと思いますので、是非御紹介ください。ほかには御質問等ございますか。どうぞ。

【和気委員】やはり7ページのロードマップ現状について。現状が、当然ながら福島第一原発事故前段階の社会環境の中で評価しているということです。もちろん長期にわたる技術開発はある意味での安定的なロードマップの上にあるという見方もあり得ます。しかし、それとて社会環境の変化がこのロードマップにどのくらい影響があるのかということもやっぱり視野の中で評価しなければいけないというふうに思います。この7ページが、とても重要な、私どもが考える重要な出発点じゃないかなというふうに思っております。

【山口主査】ありがとうございます。今の澤田委員、それから和気委員の御指摘は、多分、つながっている御指摘だと思いますので是非御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか、ほかに何か。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】同じ7ページで。これはもう既に、この核変換システムがある程度、確立したということなのでしょうか。例えば、一番左の、燃料及び燃料サイクルの開発段階ということですと、もう既に窒化物をつくるという段階が始まっています。これは、導入するところまでは今回行っていないという理解でよろしいでしょうか。

【山口主査】少しお答えいただきますか。

【石川課長補佐】今回の中では、燃料につきましては一応、当時の段階で二重線の四角のところまではできているという前提です。黄色のところは今後10年間というところでの話です。今回、先生方に御議論いただこうと思っているところは、核変換システムの技術開発段階といったところです。燃料の方に関しましても例えば、実験室レベルでの研究はある程度進んできているというふうに考えております。それが例えば、準工学レベルと言いますか、サイズが大きくなったときに可能かどうかというところが、これからという段階だと思っております。そういう意味では、実験室レベルでの様々な実証というところでは進んできている中で、それが今どういう、次にいく段階なのかどうかというところを御議論いただければというふうに考えてございます。

【山口主査】はい。大体よろしいでしょうか。次の議題が開発状況ということになっておりますので、いろいろ具体的な点は次の資料と併せて、御審議いただければと思います。何か、この資料に、追加で質問等ございますか。では、よろしければ次の議題に移りたいと思います。その前に澤田委員いらっしゃいましたので、先ほど、澤田委員に主査代理をお願いしたいということで、私の方から御提案させていただきました。いかがでしょうか。お引き受けいただけますでしょうか。

【澤田委員】謹んでお受けいたします。あまりこのような経験ございませんが、いざという時に、役割が果たせるかどうか心配な点はございますが、皆様の御支援いただきまして、やらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【山口主査】どうもありがとうございます。では、よろしくお願いします。続きまして議題の2番目、群分離・核変換技術に関する開発状況についてです。こちらは、原子力機構より資料2-1から2-4まで続けて説明をしていただきます。それからまとめて質疑応答の時間を設けたいと思っております。それでは説明をお願いいたします。

【大井川室長】原子力機構の大井川です。よろしくお願いします。それでは、資料に従いまして説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料2-1加速器駆動システムADSの導入シナリオとその効果です。前回、導入効果については説明をさせていただいたのですが、少し御質問もありましたので、少し詳しく御説明したいと思っています。
 2ページ、まずADSの導入シナリオです。どういう局面でADSが、活躍することができるのかということについて、3点挙げています。一つ目は、軽水炉から高速炉への移行期ということで軽水炉の使用済燃料を再処理したときに出てくるMAの核変換です。このときは1 GWの軽水炉を大体40基運転したときに出てくる年間1 tのMAが対象となります。これを800 MW熱出力というADS 4基で核変換するようなイメージになります。再処理をしたときのPu(プルトニウム)というのはプルサーマルであるとか、あるいは高速炉で使用していくということになるのが、この移行期になります。二つ目が、その移行が終わりまして高速炉の平衡期になったときで、高速炉から1.2 tのMAが出てきます。これに対してはADS 5基で核変換することができるということです。それから三つ目、福島での事故等も踏まえて原子力の依存度がこれから低減していくというようなことを考えたときです。例えば、軽水炉使用済燃料が今、日本に17,000 tほどたまっていると聞いております。この中に含まれるMAだとかPuも含めて、大体200 tあると概算されると思います。これを核変換するということを考えますと、800 MWのADSが、一つで年間0.25 t、すなわち250 kgのPuだとかMAを核変換できますので、800基・年が必要ということになります。ADSの寿命を40年と考えますと、合計20基のADSが必要になります。ただし、例えば20基を一気に入れても燃料が足らなくなりますので、例えば8基、6基、4基、2基とだんだんと導入する基数を少なくしていくというようなことで、この場合なら4世代、160年間かけて200 tのPuだとかMAを核変換していくことになります。このようなことがもう一つADSの役割としてあるのかなと考えております。大体これがADSを導入したときの規模のイメージだというふうに御理解ください。
 それから次の3ページは、前回ADSを入れたときの処分場の話が出てきましたけども、その基礎となります廃棄物の発生量について示した資料になります。左側P-Tなしとありますのが、通常の再処理をしたときの廃棄物で、高レベル廃棄物であるガラス固化体が5,500 m3出てきます。これに対しまして、分離変換を導入しますと使用済燃料を再処理・群分離して出てきますのが、その他の元素に対するガラス固化体が1,200 m3、Sr-Cs(ストロンチウム‐セシウム)の焼成体が700 m3、Na(ナトリウム)廃棄物・廃溶媒、これはLLW、低レベル廃棄物になりますが11,000 m3、それから白金族が、これは利用すると考えますが16 m3。こういうものが出てくることになります。それから右側にMAが流れていきまして、これをADSで核変換していくと、これに対しまして、乾式再処理・燃料製造等で出てきます廃棄物が、溶解性のFP(核分裂生成物)がソーダライトで70 m3、金属FPがZr(ジルコニウム)合金として60 m3、その他ZrN(窒化ジルコニウム)、ハルが出てきます。この中で発熱性の廃棄物というのが赤で示してありまして、Sr-Cs焼成体と溶解性FPのソーダライトになりますが、ほとんどがSr-Csで代表できるということになります。それから前回に少し御議論がありましたけれども、低レベル廃棄物、2次廃棄物が出てくるということでNa廃棄物・廃溶媒が11,000 m3出できます。これはコンクリートピット処分が可能であると考えています。原子力委員会のホームページ、新大綱策定会議等の資料にありますけれども、今、日本原燃株式会社の方では合計60万m3のピット処分というのを計画されているということです。それに比べると2%に相当する2次廃棄物が増えるということになります。
 続きまして4ページ。処分場に対する効果について示したのが、二つのグラフになっています。左側は、貯蔵年数が横軸に、0年から400年までとってあります。縦軸は発電量あたりの処分場の定置面積になります。黒の丸で示しているのが、現状のガラス固化体になります。貯蔵年数、すなわち廃棄するまでに貯蔵しておく年数というのを長くとればとるほど処分場の面積を小さくすることができるという、そういうグラフになっています。これに対しまして、核変換をしますと、赤で示したものになりまして、最も処分場の面積を小さくできるのが240年くらい貯蔵年数をとった場合です。大体通常の50年冷却するガラス固化体に比べまして、二桁弱の処分場面積の低減が可能になります。それからそれに加えまして、分離も含めます。Sr-Csを分離して、冷やしてから捨てるということまで加えますと、大体300年強置いておきますと非常に狭い面積、二桁の面積の低減というのが可能になります。それから前回、御指摘ありましたが分離のみで効果はあるのかということですが、分離だけではどうしてもAm-241の発熱がありますので処分場の面積を劇的に減らすことはなかなかできないというのがグラフの示しているところです。それから右側のグラフは、同じく横軸は貯蔵年数で、縦軸は発電量あたりの貯蔵容量ということにしています。貯蔵容量と言いますのは、貯蔵に必要な面積と、それから貯蔵の年月を掛け算したものということで、ここで定義した指標になります。この貯蔵容量というのが、大きくなればなるほど貯蔵の負担、経済的な負担といってもいいかもしれないですが、これが大きくなると考えれば良いと思います。黒で示しましたのが、先ほどと同じように通常のガラス固化体に関するものです。貯蔵年数が増えれば増えるほど、その貯蔵容量というのが増えてしまいますが、これは当たり前の話です。それから核変換のみを行いますとAm-241がなくなりますので、貯蔵を長くすればするほど処分の面積は減りますけれども貯蔵のための貯蔵容量というのが増えていくということになります。これに対しまして、Sr-Csを分離するという工程を入れますと分離したことで貯蔵に適した熱に強い廃棄物にできますので貯蔵の面積を非常に小さくできるということで、この貯蔵容量が減ります。分離変換技術を両方組み合わせて320年程度の貯蔵を行いますと、50年冷却の通常のガラス固化体とほとんど同じ貯蔵容量で処分面積の100分の1への低減というものが可能になるということです。以上が、処分に関する効果です。
 まとめますと、核変換のシナリオにつきましては、高速炉への移行期には4基から5基のADSで対応し、原子力発電の依存度が低減していくような場合では20基くらいのADSでPuを含めた核変換ということを考えていくことになるかと思います。それから処分場に関しましては、発熱性の廃棄体量というのが低減され、一方で、コンリートピットの処分対象の廃棄物が増えます。また、Sr-Csの長期貯蔵と組み合わせれば処分場の面積が大体100分の1にできるだろうということです。以上が、ADSの導入シナリオとその効果に関しての説明です。
 続きまして、資料2-2の方に移りたいと思います。資料2-2の方は、群分離技術の研究開発状況ということで、こちらの方はこれを専門で研究しております、原子力機構の松村リーダーの方から説明したいと思います。

【松村リーダー】原子力機構の松村でございます。よろしくお願いいたします。群分離技術の研究開発の状況につきまして、資料2-2に基づきまして御説明いたします。
 まず、平成21年度の原子力委員会のチェックアンドレビューにおきまして群分離技術に関する評価がなされております。ADSによる階層型のシステムにつきましては、旧原研が開発を進めていた4群群分離プロセスにつきまして実廃液で2リットル程度の試験によって実験室規模でのプロセス成立性が確認された。また、これにつきまして経済性や廃液処理の効率化に限界があるとの評価によって実用化を目指した研究開発が停止されたということにつきまして、試験等を実施した結果としての判断として適切であるという評価を頂いております。また、共通開発課題につきましてはAm、Cm(キュリウム)の抽出剤として開発された3座配位の抽出剤TODGAにつきまして、沈殿生成を回避できる強力で効率的な抽出剤であり、その成果は極めて高く評価できると頂いております。またその他、新たな抽出剤の創成に関する基礎的な取組も行われており、群分離プロセスの性能を飛躍的に高める可能性が期待されると評価いただいております。一方、Sr-Csの分離につきましては現在、プロセス成立性実証のための小規模試験が実施されている段階で、処分シナリオを前提とした見通しを判断できる状況ではないと。所定の回収率を得ることができるプロセスを探索しているフィージビリティ研究段階にあり、HLW(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場に大きな効果をもたらす可能性が期待できることから引き続き、重要な研究開発課題として取り組むことが望まれると。また、白金族元素の分離につきましても模擬廃液を用いたビーカースケール試験による原理実証の段階であるということで、白金族元素の利用も含めた分離の意義を再確認する必要があると評価を頂いているところでございます。
 4ページにまいりまして。分離プロセス全体に対しまして枢要課題に対する取組の在り方として、分離技術の実用化には工学規模でのホット試験が必要であるが実験室規模でのホット試験、工学規模でのコールド機器開発、模擬高レベル廃液による試験等によって知見を蓄積し、実廃液による試験の実施可能性を見極めた上で工学規模試験に移行するべきであるとの御指摘を頂いているところでございます。
 5ページにまいります。この平成21年度の原子力委員会のチェックアンドレビュー、これ以降の開発の方針につきまして現在ここに示しますような方針に基づいて進めているところでございます。このページの左側にお示しいたしましたのは、平成12年のチェックアンドレビューで提示いたしました、分離プロセスに関するロードマップでございます。平成21年度のチェックアンドレビューでは、ロードマップをお示ししておりませんので。こちらをお示ししております。まず、4群群分離法でございますが、平成14年までにプロセス実廃液試験まで実施しております。4群群分離法では、MAの分離についてはリン酸系の抽出剤と水溶性の錯化剤の組合せによる2段階の分離を採用しており、Sr-Cs分離は無機イオン交換体。白金族元素等の分離は硝酸の除去により、酸性度を低減化させることによって沈殿として回収するといった方式を採用しておりました。これにつきましては、廃棄物の低減化に限界があるということで開発を終了しまして、今後の新規分離法の開発における参照するプロセスであると位置づけました。この後、私どもとしましては以下のような方針で進めています。MAの分離については、脱硝が不要で廃棄物発生量の少ないDGA系の抽出剤によるプロセスの開発を進めています。MAとRE(ランタノイド)の分離については新規抽出剤の開発を進めます。Sr-Cs分離は、無機イオン交換体の改良と抽出クロマトグラフ法の適応を検討すると。白金族元素等の分離につきましては、溶媒抽出法等の適応を検討するといったことで進めてまいります。
 6ページ目にまいりまして、現在の開発の状況につきまして簡単に御説明いたします。MAの回収につきましては、MAとREの共分離の部分につきまして、抽出容量を改良したTDdDGA抽出剤によるプロセスの検討を進めております。現在のところMAのトレーサーを含む模擬廃液を使った試験を実施いたしまして、模擬廃液中のAmを99.99%以上回収することに成功しております。この分離プロセスの後段になります、MAとREの相互分離プロセスにつきましては新規抽出剤の開発を進めておりまして、高い分離性能を有する数種の候補抽出剤を見いだしているところでございます。Sr-Csについては、抽出クロマトグラフ法の適応によりまして小規模の実液試験を実施し、ほぼ満足する分離性能を見いだしております。白金族元素、Mo(モリブテン)等の分離については溶媒抽出法の適応を検討しておりますが、コールドの模擬廃液の分離試験を実施しましてプロセスの成立性について確認をしたところでございます。今後の計画ですが、MAの分離回収につきましては平成27年度、平成28年度頃に実廃液の試験を実施することを検討しております。こういった計画で進めているところでございます。Sr-Cs及び白金族元素等の分離については、それぞれ要素技術として確立することにしまして、確立後にMAの分離回収とシステム化を図るといった方針で進めております。
 次のページ以降、MAの分離につきまして一部成果を御紹介いたします。TDdDGAといいますのは、DGA系の抽出剤の中で側鎖がC12のドデシル基であるものでございます。抽出容量は改良されております。これを抽出剤として用います。
 8ページにお示しいたしましたのが、このTDdDGAを用いた抽出プロセスの全体のフロー図でございます。右側にフィード液として用いた模擬廃液の組成を示しております。AmとNp(ネプツニウム)をトレーサーとして添加しております。これに対しまして抽出溶媒はTDdDGAを用いて、抽出段及び逆抽出段としてそれぞれ8段、12段を用意してフローをさせております。
 次のページにまいりまして、こちらにそれぞれの抽出段におけるNpとAmの濃度のプロファイルを示しているものでございます。抽出率としましては、Amの99.99%を回収しました。さらに抽出したあと、逆抽出におきましてAmの93%を回収しました。回収率が93%で、若干まだ有機相の方に残ってしまっているということで、条件の最適化を今後進めていこうとしております。
 次にまいりまして、10ページでございます。AmとREの分離に適応可能な新規抽出剤の開発としまして、こちらにお示ししましたような候補となる抽出剤の開発に成功しております。2種類ございまして、ソフトドナー系の抽出剤、ハイブリッド型の抽出剤。それぞれの系統について、さらに2種類ございます。左側がTPEN系の抽出剤。右側がハイブリッド型抽出剤でございます。今後につきましては、これらの中から最適なものを選定しまして、プロセス化を図っていくというように考えております。
 以上、まとめますとMAとREの共分離の部分につきましては、TDdDGA抽出剤による分離プロセスによってトレーサー量のMAを含む模擬廃液を使用したフローシート試験を実施しまして、Amの回収率99.99%を達成いたしました。平成27年度から実廃液試験を実施する方向で現在プロセスの最適化を進めているところでございます。MAとREの相互分離については、高い分離性能を有する新規抽出剤の開発を達成いたしまして、これらの候補の中から最適なものを選定いたします。また、平成28年度から実廃液試験を実施する計画でございまして、それに向けてプロセスの構築をこれから進めていくところでございます。Sr-Cs分離、白金族元素等の分離については、フィージビリティ研究段階として適応可能なプロセスの探索を進めて、有望な手法を見いだしつつあるところでございます。プロセス化を図りまして、MAの分離とのシステム化を考慮するといったことでプロセスを要素技術としての確立を図ってまいります。以上でございます。

【大井川室長】それでは続きまして、資料2-3加速器駆動システム(ADS)による核変換技術の研究開発の状況ということで説明させていただきたいと思います。
 まず、3ページ、これまでADSというのを何回もお話ししているのですが、原理等について十分に説明していなかったので、ここで説明したいと思います。ADSの仕組みについて、左下の絵で説明します。超伝導陽子加速器で陽子を大体1 GeVから1.5 GeVに加速します。それを右下のところにありますようにタンク型の容器の中の赤で示した核破砕ターゲットのところに導きます。右側の絵にありますようにオレンジ色の核破砕ターゲットに陽子が当たりますと、核破砕反応というのが起こりまして、大量の高速中性子が発生します。一つの陽子あたり、大体このエネルギーですと30個くらいの中性子が発生すると考えてください。この核破砕ターゲットの周りに長寿命の核種でありますMAを置いておきます。そうしますと、その中性子でMAが核分裂を起こしまして、核分裂による核変換が行われます。核分裂したときに、また中性子が出てきますのでその中性子も次の核分裂に使うということで、連鎖反応を利用した核変換を行っていくことを考えております。連鎖反応ですけども未臨界状態になっていますので、陽子ビームを止めて中性子の発生を止めますと、連鎖反応は即座に止まるということで安全性の高い効率的な核変換が可能になります。未臨界状態では、大体一つの中性子を20倍に増倍しながら核変換していくことを考えますので、一つの陽子が30個の中性子を生んで、その一つ一つの中性子が20倍に増倍されて核変換するということで、一つの陽子が600個の中性子を生んで、効率良く核変換するということを目指しております。核分裂をするときに熱が発生しますので、その熱を回収しまして、その熱でまた発電をして加速器へ給電し、少し余った電力があれば電力網へ売電します。ということで、このシステム全体としてはエネルギーの収支バランスがプラスになるように考えていきたいと思っています。エネルギーバランスとしましては、陽子ビームが最大30 MWで、800 MWの核分裂エネルギーが出てきまして、発電が270 MWになります。加速器に100 MW給電して、残りの170 MWを売ります。こういうことが可能だと思っております。わざわざこうやって未臨界で核変換するのは、MAをたくさん含んだ体系で臨界状態にしますと非常に制御が難しいということがありますので、未臨界でこういうことを行うことになります。
 我々は、こういうシステムを提案しておりまして4ページにありますように平成21年のチェックアンドレビューのときには幾つか御指摘を頂いております。一つ目が加速器に関するところで、特に加速器に関しましては信頼性というのが非常に重要になってくると考えております。今J-PARCのリニアックの運転が始まっておりますので、そこからのデータを用いてADSの信頼性についての研究を行っております。これはあとで説明させていただきたいと思います。それから陽子ビームが、ADSに入ってくるところにビーム窓という構造物があるわけですが、このビーム窓は陽子ビームが通過していくということで設計上非常に難しいものになっております。そこで、成立性の見込める窓の概念というのを検討しています。これもあとで御説明したいと思います。それから未臨界炉心の制御等に関する炉物理的課題というのも指摘されておりまして。これに関しましては、新たに評価されましたJENDL-4.0という核データライブラリーと誤差評価システム等を使いまして、今の核設計の信頼性というのを検討しております。それからここに書いていないですけども京大炉のKUCA(京都大学臨界集合体実験装置)を用いた実験等で未臨界の基礎的な実験もやらせていただいている状況です。それから四つ目は、Pb-Bi冷却炉の設計及び安全性を高い信頼度で確証をするということです。今、Pb-Biを冷却炉とした原子炉は世界で動いておらず、ロシアの潜水艦で少し経験があると聞いています。その情報自体も我々はあまりタッチできていないということで、ヨーロッパを中心にPb-Biの研究というのは非常に盛んに行われていまして。我々もヨーロッパ等と連携しながらADSに関する安全評価ということで、レベル1PSA(確率論的安全評価)手法なんかを用いながら、高速炉の安全コードSIMMER-3も少し使わせてもらいながら動特性解析を実施しております。これについても少しあとで説明したいと思います。
 そのほか、5ページ。枢要課題に対する取組の在り方ということで言われている項目があります。ADSに関してはいろいろ今、申し上げたようなところの研究が必要であるということで、海外の同種の取組だとか加速器中性子源、それから高速増殖炉の実用化を目指した研究などとちゃんと連携しなさいと言われています。それから核破砕中性子源と高速未臨界炉心の組合せということで、J-PARCの活用が期待され、その際には、京大炉での実験成果を十分に参考にしなさいというようなことが言われました。
 6ページが、先ほど皆さんからコメントいただいているものですけれども、我々の今の考えとしては、オレンジ色の現在の状況というよりも上が全部終わっているかと言われると必ずしもそういうふうには思っていませんが、大体目途はついていて、逆に言うと、その下の特にADSの部分というのはJ-PARCの第2期部分への取組に移らないとなかなかもう進展できないような状況になってきていると考えており、こういう書き方をさせていただいております。燃料サイクル、左側の部分に関しましてもデータベースの拡充が終わったのかと言われると、それはまだ終わっているわけではなく、少し、MA窒化物燃料サンプルの試作だとか電解精製のMA回収の研究なんかをしながらデータベースの拡充を図っている状況です。そういうように相互に関係しているということで、御理解いただければと思います。右側の加速器に関しましても今、正にJ-PARCの運転経験の蓄積を行って、そこから加速器の信頼性向上をどうするべきかという作戦を考えているところですので、この上が終わっているわけではなく、次のステップに進みながらこういうこともやっていきたいということが今の状況であるということです。それから和気先生の方からありましたけれども、震災が起こった後もこれを平成21年度のそのままでいいのかということがありましたけれども、正に見直すということが非常に重要だと思っています。藤田先生の方からもありましたように、これまでは窒化物で流れているのだけどもそれで決まりかということだったのですが、先ほど私、シナリオのところで少し言いましたけども、Puを含めた核変換も考えていくと窒化物ではなくて、酸化物なんかも含めて、非常に幅広く見ていかないといけないと考えており、正にこういうロードマップを見直していかないといけない時期なのかなと思っているところです。
 7ページは、今、我々が検討しているADSです。先ほど言いましたように陽子ビーム1.5 GeVで、核破砕ターゲットと冷却材にPb-Biという液体の重金属を使うことを考えております。入り口温度が300℃、出口温度407℃ということで、温度は非常に低めに設定してあります。これが発電用の原子炉でしたら、できるだけ高く設定したいわけですけれども、我々、発電を主目的にしていないので、もちろん発電もしますけれども、やはり安全に集中的に核変換するということを優先して考えますと、ここの温度を最適化して、できるだけ低めに抑えるということで300℃にしております。熱出力が800 MWで、MA2.5 tをこの中に入れることができます。燃料組成は我々、MAをできるだけ効率良く核変換するということで窒化物燃料を使っています。MAとPuを窒化物にしたものと、それからZrNを希釈剤として混ぜるという燃料組成を考えております。核変換効率は、2.5 tに対して年間10%ということですので、年間250 kgのMAを核変換できます。燃料交換としましては、600日ですから2年で燃料総取替えということを考えています。ですから、1回の燃料取り出し時には、20%をすなわち500 kgのMAが減っていて、また次にそれを再処理して500 kgのMAを加えて、次の燃料にするという燃料サイクルを考えています。主循環ポンプが2基、蒸気発生器が4基あります。Pb-Biですので中間熱交というのは必要なく、直接蒸気系をこのタンクの中に入れるということが可能になります。ですから非常にシンプルにつくることができます。それから崩壊熱除去系が3系統ということで、何かのときにはこれで除熱ができるという形になっております。続きまして、各研究開発の分野についての代表的な成果について御説明したいと思います。
 8ページは、加速器に関してですが、左側のグラフが、J-PARCのリニアックの運転データです。いろんなコンポーネントがあり、それに対して、平均トリップ間隔が示されています。トリップというのは、加速器が停止することで、トリップ間隔とは、停止して再起動した後、次に停止するまでにどれだけ時間があったかというのを示しています。ですから、このグラフの高い方、数字の大きい方は信頼性が高いということになります。ですから、これを見ていただきますとRFQだとかビームロスモニターというのは、この段階では非常に良くトリップする原因になっていたということが分かります。こういうデータを用いまして、実際のADSでどれくらいビームトリップが起こってしまうかというのを検討したのが右側のグラフです。これは横軸にビームトリップ、今度は止まっている時間です。0秒から10秒止まって、すぐ立ち上げることができる場合、それから10秒から5分、5分以上止まっていた場合という三つに分けています。黄色がアメリカのLANSCEとつくばにあるKEKBというデータから出したものです。それから青がJ-PARCのデータから出したものです。これに対しまして、赤の線で書いてあるのは、許容ビームトリップ頻度です。それぞれのビームトリップの時間に応じましてトリップの許容できる頻度というのが決まります。例えば、0秒から10秒でありますとビームトリップの許容できるのは大体2万回です。それに対して今の実績から考えられる評価値というのが、それを下回っているというので、そこは設計が成立するだろうと考えております。一方で10秒から5分に関しましては、まだ許容のビームトリップ頻度クリアできていませんので、でこれを下げていくということが必要になります。それから5分以上というのもまだ10分の1くらいにトリップ頻度を下げるということで、設計上の工夫というのをこれからやっていかないといけないということです。どういうコンポーネントがキーになっていて、それをどういうふうにするかという作戦を今、こういうことを見ながら検討しているところす。
 続きまして、9ページはビーム窓の検討についてです。ビーム窓というのは、右側にありますように青で試験管のように書いてあるところです。試験管の内側は真空状態になっていて陽子ビーム飛んできまして、その外側にはPb-Biの液体重金属が流れており、そこに陽子が当たって核破砕反応が起こります。その周りには、MA等を含んだ燃料が並べられている状況です。ですから試験管の底というのは、陽子ビームが通過するときの熱だとか、あるいはPb-Biの圧力だとかがかかるということで設計が非常に難しい部分になります。ここでは設計の外圧について、ノミナル値は0.8 MPaですが、これを1 MPaと仮定しまして。これに対して、安全率3ということですから、3 MPaをかけても挫屈による破損はしないということを条件として考えております。検討条件としましては、ビーム条件、Pb-Bi流速、ビーム窓温度等を決めて検討しました結果、右下に試験管の先端のところを拡大して示しているのですが、厚さが大体2 mmから3 mmあればもつということが計算上分かっております。それから、陽子が通過していきますので照射による影響というのも考慮する必要があります。影響そのものは、挫屈耐性を増すということ方向に効くのですけども、一方で、DBTTという延性ぜい性遷移温度というのが上昇してくるということが起こりまして、今のところこれを直接的に判断できる照射データというのがありません。そこで、今後、こういうデータを取っていくということが非常に重要であると考えています。それからPb-Biというのは腐食というのも起こりますので、そのデータを蓄積していくことや、熱流動のデータを蓄積していくことも併せてやっていかないといけないと考えています。遅れましたけども、ここでビーム窓に使おうと思っている材料というのは、改良9クロム1モリブデン鋼という鉄鋼材料を考えております。
 それから10ページは、ADSの核特性に関してです。左側のグラフは、赤と黒の線があり、横軸BOCとEOCとありますが、BOCというのは燃料サイクルの一番初めを示し、EOCというのは最後を示します。先ほど600日燃焼させると言いましたけれども最初に燃料を入れたときがBOCで、600日後がEOCです。これに対してK-effというのは、臨界にどれだけ近いかという指標です。これが1になりますと臨界です。これが低いと未臨界です。我々は、ADSの設計にJENDL-3.3を使って、BOCのK-effを0.97に、最終的にはEOCでそれが0.94を下回るくらいの設計をしていたのですけども、最新のJENDL-4.0に核データを変えたところ一気に臨界に近いような値になってしまったということで、まだ核データの精度というのが、我々が要求しているものよりも非常に精度が良くないとわかりました。その差がどういうところからきたのかというのが、右側の絵でして。Am-241だとかPbの同位体の核データ等が、まだJENDL-3.3とJENDL-4.0とで大きな違いがあったということです。そのほかAm-243だとかPu-239だとか。通常の原子炉ですと、U-238だとかがたくさん入っているのですけど。そういうのを含まないこういう体系に対しての核データだとか、核特性の精度の向上というのが非常に重要なポイントになると考えております。それから未臨界の炉心ということで、KUCAでの加速器との結合実験についても京大と協同してやっているところで、それについては参考の方に入れております。
 続きまして、11ページです。ADSの動特性解析ということで、ADSの典型的な事故事象というのをいろいろ検討しております。レベル1PSA手法と書いておりますけども、どういうことが起こるかというのをいろいろ検討しておりまして、特にADS特有の事象というのがありまして、ビーム窓破損だとかビーム電流の増大だとか、こういうことについては、通常FBRでは起こらないということで、こういうことも考慮しながら当然通常のFBRで考えられている除熱源の喪失だとか流路閉塞だとかも検討して、どういうことが起こり得るかというのを検討しております。左の図は一つ、流路閉塞が起こったときの解析例でして、SIMMER-3を使った検討です。どういうことかと言いますと、横軸でRadial3と書いてあるところが、一番内側の燃料になるのですけども、ここの下から入ってくるPb-Biが途絶えたという仮定で解析、検討をしています。そのときにどういうふうになるかなんですけども、実はADSの燃料というのはダクトレス燃料といって燃料のピンが集合体でむき出しになっています。ラッパー管というカバーがない設計になっており、そのおかげでPb-Biが横から入ってきてくれて、冷却が比較的ちゃんと行われ、流路閉塞によって、燃料が融け出すというようなことは、こういう場合は起こらないと考えております。それから右側のグラフは、ULOF時の燃料被覆管温度ということで、これもほとんど起こらないというふうに考えておりますけども。ポンプが止まったときに、ビームが出続けるというようなことが起こったときにどうなるかということで、被覆管の温度がこういうふうに上がっていきますけれども、あるところで自然循環が起こるようになりますのでどんどん上がり続けるわけではなく、ある一定の値に落ち着くということなります。このとき、燃料についても同じようにグラフがあるのですけども燃料の融点だとか被覆管の融点を超えるということはないのですけども。被覆管については、かなり高温になるので、クリーブ破損等の検討が今後必要になってくるということが課題と思っております。
 続きまして、12ページからは燃料関係です。平成21年のときに指摘されていたこととしまして、窒化物燃料の乾式再処理に関する燃料サイクルシステムの実用性を示すということがあります。特に乾式再処理というのは、高速炉の中では金属燃料高速炉の方で非常に進んで検討されていますので、それとの連携をするようにと言われております。それからもうひとつとしましては、窒化物燃料について燃料の性能だとか高燃焼度を達成できるというようなことを目指して、あるいは製造がちゃんと成り立つということを示していくということが言われています。共通課題としましては、Cmを含めたMA燃料の基礎データベースが不十分であるということ、それから燃料製造の工学規模による技術的成立性の判断が必要だということ、それから今後の進め方になりますけども、相対的に施設負荷の小さい燃料ピン・ペレットレベルでのデータの充実を図って、集合体レベルの施設設計・建設・試験に向けて必要な基礎データの取得を継続するということが言われています。それからADS用MA高含有燃料に関しましては、MA含有率の高い燃料の工学規模による製造技術についての知見が乏しいと指摘されているところです。
 こういうことに対しまして、13ページにありますようにいろいろな対応をしております。Cmのデータの取得でありますとか、あるいは電解残渣からのPuとかMAの回収方法の考案等を行っているところです。それから燃料に関しましても不活性母材ZrNを含んだようなMA窒化物のペレット調製条件の確立だとか、熱物性の取得等を行っているところです。
 具体的に14ページから説明していきたいと思います。14ページの左側は、再処理におきましてPuだとかMAの回収率を上げるということが非常に重要になっていますので。それを回収する方法としまして、溶融塩中にPuだとかMA等を入れて回収する方法の開発について示しています。ここではPuだけですけども、ZrNとPuが入っていまして、CdClと溶解させていってPuがそこに溶け出てきて、Zrは溶け出てこないで残るというようなデータがここに示されております。不活性母材含有MA窒化物特有の課題ですけども、電解残渣からのTRU、MAだとかPuの回収に関しての回収法を考案しましたということが、左側で示されています。右側の方は、ADS燃料の模擬ペレット試料の調製手法を開発しましたということです。ZrNとTRUの窒化物の固溶体というのを別々に用意しまして、それを粉砕・混合・成型しまして窒素と4%水素の気流中で加熱します。これを一旦また、粉砕・混合・成型することで密度を高めまして、もう一度加熱をしてペレットを焼結するということで非常に理論密度の高い良いペレットの調製ができるようになりましたということが、14ページに示されています。この写真、少しぼやけていますけれども、写っていますのは、ZrとPuとAmの窒化物のペレットになります。
 15ページですけれども、今つくりましたような小さなペレットを使いまして熱伝導率の測定等を行っております。左のグラフは、熱伝導率でして、横軸にZrN、不活性母材の含有率を0%から100%まで振ってあります。100%ということはZrNだけになっていて、0%のところはPuとAmの窒化物だけということです。熱伝導率はZrNが増えるに従って上がっていくという挙動が見えます。赤で示したところは、ZrとNp、Pu、Am、Cmという我々が核変換の対象と思っているTRU全てを含んだような窒化物の調製も行っているということで、そのデータを取っているところでございます。それからページの右の方は、これは窒化物ではなくて酸化物ですけども、Cmをかなりたくさん入れまして、Cmがα崩壊したときの影響というのを見ています。α崩壊が起こりますと、熱伝導率がどんどん悪くなるという挙動が示されております。かなり加速試験というか、Cmの割合が大きいので極端に出ていますけども、こういうことも考えないといけないと思っています。ただ、窒化物に関しましてはこんなに極端なことは起こらないというふうに考えているところでございます。以上が、大体今の技術開発の現状です。
 これを我々が、どういうふうに評価しているかということで、研究開発段階の考え方というのを16ページから示しております。ここでは原子力学会の研究専門委員会がありまして、そこで技術成熟度の評価・検討というのをしているのを紹介します。技術成熟度、TRLというふうにも呼ばれますけども。Technical Readiness Levelsというものです。NASAだとかJAXAで活用されているものになります。こういうのを考えながら現状と今後の方向性について議論をしております。右の下にあります表ですけども、TRLというのが、1から9まであります。それぞれ段階が、1が一番ベースになりまして、9というのが実用化の段階です。それを幾つか経ていって、1から9に向かっていくという、そういうレベルの評価になります。我々、ADSに限って言いますと、左側にありますように基礎試験の段階があって、それから要素技術開発の段階で原理実証を行う、これが我々、今後また紹介させていただきますJ-PARCの核変換実験施設の部分かなと思っています。それからプロトタイプ、これは実験炉級ADSというふうに考えられまして、ベルギーのMYRRHA計画なんかがこういうところに相当するのかなと思っています。最終的な実用プラントにつなげていく、こういう開発段階がありまして、我々大体原理実証段階にいこうかというその辺のところにいるということになります。TRLというのは、次の段階に進むための課題認識を関係者で共有するということで非常に重要でありまして、特にADSあるいは核変換というのは、非常に幅広い分野の連携が重要で、燃料だとか核設計、再処理等の水平連携や、基礎基盤から工学技術、プラント技術という垂直連携といったもののための情報共有に非常にいい役割を果たすというふうに考えています。ただ、あまりレベルが2だとか3だとか4だとか、どこにあるかということだけにこだわらないのがいいということをここに書いてあります。
 17ページが現状について、示したものです。これは少し古いです。原子力学会誌の2010年に出したものですから、そこからまた3年ほど進んでいるということです。大体レベル3にあるというのが、3か2にあるというのが当時の評価で、そこからデータも積み重ねていますので、大体3から4にあるのではないかというふうに思っていますが、レベル5というところに非常に高いハードルがあるというふうに考えています。それはMAというのが、非常に供給体制というのが弱く、あるいは、そういうもの使う施設というが少ないということです。ADSに関して言いますとMAの試料の調達と新たな炉物試験が必要なMA核データの積分実験が必要です。それから燃料に関しましては、MAを用いた小規模のホット試験。これは数十g規模のMAを使います。こういうものと、それから準工学規模コールドのユニット試験。これは数kg規模です。こういうことをやっていかないといけないと思っています。全ての分野において、相当量のMAを用いた試験が可能なインフラの欠如というのが次の段階に進む障害になっているというのが、今の我々の考えです。
 ということで、18ページ、ADSと燃料について、これまでの成果のまとめを示します。今、説明したところなので繰り返し説明するのをやめておきますが、最後の研究開発の進捗ですけれども、平成21年の原子力委員会のチェックアンドレビューで指摘された具体的な技術開発課題に解決に向けて、研究開発をやっているということです。それから原理実証段階に進むための基盤データを取得するとともに、工学的課題克服のための要素技術開発が進行中であると考えています。大体TRL3から4にいるということです。
 19ページですが、今後の課題としまして先ほど言いましたようにADS燃料サイクルの工学技術基盤の完成、TRL5というのを目指していきます。ADSに関しましては、Pb-Biの核破砕ターゲットの運転だとか材料照射データを充実していくということが一つのポイントです。それから二つ目としましては、MAを装荷した炉物実験だとか核破砕ターゲットと高速未臨界体系の結合実験、それからある程度の出力規模によるADS設計とか建設を考えていくということがADSの方で重要になります。それから核燃料サイクルの方に関しましては、主工程の小規模ホット試験が必要です。先ほど言いましたように数十g規模と、それから準工学規模というのをやっていきます。備考のところにちょっと書きましたけれども、ADSの燃料サイクルというのは非常に規模が小さくて済みますので、従来技術の準工学試験というのはもう既に実機規模になります。それからMA高含有燃料の照射挙動だとか機械的特性の把握、ふるまいコードの整備等を行っていく必要があります。
 それから最後のページには、前回コメントがあったと思いますが、コストの評価というのを示しています。非常に予備的なものなので、あまり精度は高くないのですけが、こういうことを考えています。これは2005年のときに我々が検討したもののままです。ADSの部分で、建設・運転維持・解体まで含めたコストというのが、1基あたり4,560億円というふうになっていまして。加速器の部分が1,580億円で、合計で6,140億円と考えています。これを4基は導入する。これは先ほどの移行期を想定していますけども、2兆4,600億円。それにプラス群分離工程、MA燃料製造、再処理を入れます。そこからADSによる発電による売電を抜いて、それから処分場の建設コストの低減も引きます。これもあまり精度が高くないのですけども、処分場面積の低減がそのままダイレクトに効くと考えて出したものです。そうしますと合計で1兆3,400億円の負担増ということで。これは、割引率0で考えているのですけども、大体発電コストで0.12、0.13円/kWhくらいの上昇になるかと考えています。消費者価格で考えますと、大体1家庭あたり12円か13円の負担増というようなことになるのではないかなと思います。それからもし、ADSを単純な発電システムというふうに考えますと21円/kWhというコストになると検討しております。青で示したADSのコストと、それから処分場建設コストの低減効果というのは非常に、両方とも大きいので、今後、これの高精度化をやっていかないといけないところかなと思っております。以上で、この資料の説明は終わります。

 最後ですが、資料2-4。核分裂生成物の核変換に関して、前回御質問がありましたので我々の考え方、現状について説明したいと思います。
 2ページは、使用済燃料の中の主な長寿命核種をリストにしたものです。左側がアクチノイドで、右側が核分裂生成物FPになります。各表は核種、半減期、それから線量換算係数と含有量を示しています。線量換算係数というのは、1 kBqが体に入ったときに何μSvに換算されるかということで、この数値が高い方が、放射能あたりの危険性が高いということで理解できると思います。こうやってみますとMAというのが、線量換算係数が200だとか110だとか非常に大きな値になっています。それに対しましてFP核分裂生成物の方は線量換算係数というのは、そんなに大きくなくって、I-129(ヨウ素)が110で一番大きくて、それ以外はそんなに大きくないということが分かります。核分裂生成物の方を見ていただきたいのですけども、長寿命ということですが、Sr-90とCs-137というのは、それぞれ半減期が30年くらいということで、これを長寿命というふうに考えるかどうかというのはちょっと議論になるとかと思いますが、この表の中では入れております。ということで、核変換の対象として考えられるのは、こういうFPになりますということです。
 3ページの方を見ていただきたいと思います。再処理経過後の潜在的な有害度の変化です。これは高レベル廃液にヨウ素を加えたものですけども、こういうふうになっています。大体1,000年以降というか、100年以降と言ってもいいかもしれないですけども、支配しているのは主にAmだとかNpだとかのMAであるということが、これで分かっていただけるかと思います。ということで、我々のプライオリティとしては、まずMAの回収・核変換ということを考えているわけです。それからFPで考えますと、Tc-99(テクネチウム)だとかI-129というのが長寿命かつ量が多いというのが、これを見ていただければ分かるかと思います。
 それから4ページは、地層処分からの公衆被ばくの評価です。地下水シナリオでの評価です。先ほども出ていましたけれども、左側はガラス固化体からということで支配しているのはCs-135というのが一番のピークを示します。それからSe-79(セレン)だとかZr-93というのが、それに次いであります。この観点からはこの3核種くらいが、核変換がもし可能であればやることがいいかなというふうに思われます。それから右側は、TRU廃棄物からの公衆被ばくの検討で、I-129というのが非常に大きな割合を占めているというのが分かると思います。
 ということで、5ページに移ります。公衆被ばくの観点からはI-129とCs-135、潜在的な有害度の観点からTc-99、こういうのが核変換の対象として考えられます。I-129については中性子の捕獲によって、Xe(キセノン)の安定同位体となります。それで我々も少し検討しているということです。Tc-99の方は、中性子の捕獲によってRu(ルテニウム)の安定同位体となります。それからCs-135につきましては中性子捕獲ができればBaの安定同位体となりますが、Csはほかに133だとか137とかいろいろ入っていまして同位体分離をするということが課題になるということです。
 6ページはI、Tc、Csの核変換について少し考察したものです。上の表には、生成量が書いてありまして、軽水炉ですとIが4.6 kg、Tcが20 kg、Cs-135は10 kgと、これぐらいが発生します。ADSで、これを核変換しようと思いますと、ADSは軽水炉10基に相当する部分を核変換したいというふうに考えるわけですけども、核変換の目標値というのは、左の表にありますようにそれぞれ46 kg、200 kg、108 kgという非常に大きな値になります。それから高速増殖炉は最終的には自分で生じたものを自分で消していくということが可能であればいいだろうということで、それぞれ目標というのが6.6 kg、21 kg、34 kgとなります。ADSに比べると、低い値が目標になるということです。
 こういうことに対して7ページにありますように、いろんな検討されておりまして。7ページの左側は、ADSの軸方向と径方向のブランケット部分にIあるいはTcのターゲットを入れたときに、どれぐらい核変換できるかということを示したものです。右側は、横山さんたちの研究の成果ですけども、高速炉のブランケットと炉心の間にLLFP、長寿命FPの集合体を入れて核変換するということを検討されています。
 その結果、8ページですけれどもADSはIについては10基分を何とか核変換できますが、Tcについては3基分ぐらいが限度であろうと思われます。それからFBRに関しましてはI、Tcについては、目標としていました自分自身からの長寿命核種を核変換することが可能ですが、Csについてはなかなか難しいのではないかというふうに考えられます。
 ということで、まとめ9ページですけども。今、申し上げた通り、I-129、Tc-99、Cs-135あたりが核変換の対象としてはあるのですけど、まだこれの詳細な検討等は進んでいないというのが現状だと思っております。以上です。

【山口主査】ありがとうございました。30分ぐらいございますので、これから御質問や御意見をお受けしたいと思います。資料いろいろありますが、順番というよりいずれの資料でも結構かと思いますので、御質問等お願いいたします。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】まず2-2の資料で、群分離についての研究開発状況。先ほどの、いわゆるADS駆動システムの前のMAを回収する観点で研究開発されている部分だと思うのですけども。まず、回収率としてどういう値をターゲットにするべきなのかということをきちんと定義して、それに合った回収プロセスを選択する必要があるのではないかと。ここは、かなりデータベースとしては非常にいろいろやられているのですけども。例えば6ページですね。MAの分離・回収のところでAmを99.99%回収できたという事実があるのですけど。99.99%回収する必要が本当にあるのかどうかと。それから全体のプロセスで見たときに、今はMAを回収するにはどういうプロセスがいいのかと。次に、先ほどLLFPにありましたCs、Srを次に回収するのにはどういうプロセスがいるのか。最後に白金族元素を分離回収するのには、どういうプロセスがいいのかということを原理に基づいて根本的に見ていただきたい。今の資料ですと、旧原子力機構がやってらっしゃるシーズオリエンテッドに開発が進められているように感じるので。ここで群分離・核変換ということを一度見直すのでしたら、そこからきちんとやっていただきたいと。

【山口主査】今の点、少しございますか。お答えは。

【松村リーダー】はい、御指摘の通りであると考えております。MAの分離につきましては、回収率99.99%程度は必要であろうと考えています。ですから、ここで99.99%回収することに成功と書いてありますけども、これはあくまでも模擬廃液におけるトレーサーの回収率でございまして、我々としては、実廃液でこれを行った場合には回収率は下がる方向だと考えています。どうしても様々な妨害要因がございますので、どうしても下がってしまうということですので。あくまでも実廃液で目指すのは99.99%です。ですから、現段階ではもっと奇麗な体系ですので。こういったことに成功したという事実でございます。例えば、分離の目標値につきましては、例えばMAについては99.9%であると申し上げましたけれども。白金族元素等につきましてはもう少し低い値でも構わないであろうと考えているところでございまして。このあたりは、きちんと整理してまいりたいと思います。

【藤田委員】もう少しよろしいでしょうか。

【山口主査】はい、どうぞ。

【藤田委員】今ここで、基本的に溶媒抽出がメインになっているのですけれども。いわゆる実用化という観点からですとピューレックスは、TBPとドデカンでずっときて。廃棄物の処理、つまり2次廃棄物の処理は、TBPとドデカンだけを処理すればいいのか。ここでMAを回収する、あるいはSr-Csとか白金族を回収するのにそれぞれ違う溶媒を使うと、それぞれに対して2次廃棄物の処理プロセスが必要になるということで。確かに回収率からすると、この抽出溶剤がベストかもしれないのですけど。トータルで見たときに、やっぱり2次廃棄物の発生量を考えて方法を選択していただきたいのです。例えばの話なのですけど、白金族は最後だからあまり重要でないと思うのですけれども。旧原研ではなくて旧核燃料サイクル開発機構(JNC)では、白金族を電極で回収しているのですね。それはもう全電極を入れれば、白金族は自動的に析出してくる。何も新たな抽出剤を使わなくてもできるので。このシステム自身は旧原研さんベースでやられているのですけども、JNCでやられている研究開発も上手く取り込んで最適なプロセスというか、評価をやっていただきたいと思います。

【山口主査】どうぞ、いかがですか。

【松村リーダー】御指摘の通りであると考えています。白金族元素の回収につきましては、実はJNCの方で開発を進めておりました電解回収法については法人統合後、我々のところにきておりまして、実は、私どものグループで電解回収法の開発は進めているところでございます。今回こちらの方には入れておりませんけれども、それは技術として、要素技術の一つとして進めているところでございます。もう一つ、廃溶媒の処理につきましては、正に御指摘のような問題はございまして。4群群分離法は、開発を中止したいというところです。その後の新しい抽出剤については、全てC・N・H・Oのみからなる分子を用いておりまして。最終的な廃溶媒の処理法については、焼却すれば全て気体になって、分解されるというものを採用しております。ただ、問題となりますのはプロセスで一旦使用したあと、溶媒を再生するプロセスが必要になりますので。抽出剤の種類が増えますと、それぞれについて違った溶媒再生プロセスを用意する必要があるといった問題が生じます。そういったところについては、十分評価を進めていきたいと考えております。

【山口主査】ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【矢野委員】基本的なところですが、この委員会の検討結果では、要はADS開発というのは必要なのであると、多分それを結論づけるのだと思うのです。ADSを使う分離変換技術というのが、将来、どれだけ実現性があるのかというのに踏み込んで、その点で考えるときに、オメガ計画というので言われ始めて、ずっと言っている何百年後とかいうのは少し違和感があります。一般の人間から考えると1万年後と300年後というのは多分同じじゃないかと思うのです。例えば100年後、分離変換を入れたときとこれをやらないときに、100年後どう違うか、というような、割に近い時間スケールの物差しにしておかないと、あるときは長く言い、あるときは短く言い、あるときは狭く言い、あるときは広く言うというのが、何となく基準が定まっていないようにとられはしないか。専門の人たちの集団ではそれで頭の中が整理できるかもしれませんけども、国民に対して、だからこれは是非やるべしというときには、もっと分かりやすいような時間スケールにすべきではないかと思います。それから処分場がこれだけ、例えば何分の1になると言っても、もとのままでもいいじゃないのというのもあるわけで、別に何分の1というのが、どれほどに何分の1で、何を稼いだのかというのが何となくはっきりしない。導入効果を表現するときの基準というものを、この委員会としては、例えばこういう基準でいこうとか、ある程度決めた上で、現実的に確かにこれは導入しがいがあるというような答えに、持っていっていただきたいなと一つ思います。それとMAは、燃えるから燃やすのですけど、最後FPはどうするかという話がありました。それで例えば、FPの話が出てくる3ページ目の、使用済燃料の中で、ぱっと見た感じだとCs-137とSr-90が魔法のように消えてしまうとなると、これで潜在的有害度がかなり減るわけです。例えば100年後とかにすると、Sr-90とCs-137を消してしまえば、かなり低減するわけです。じゃあ、それをどうやって消すかはまた別としてです。あまりにも先のことまで言うと、我々がターゲットにすべき放射性核種を誤るという心配があります。私は、加速器が専門ですので、このADSシステムで提案されている加速器について言いますと、この性能のものはそんなに難しいものだと思いません。もう既にある装置を幾つか並べれば、既にこの性能に達しているわけですから。だから、これは夢の加速器じゃなくて、これは現実的にある加速器で、それをどうやって安くつくるかというのが目標になります。トリップする頻度ですが、これをあまりにも厳しくしてしまうと、こんなものはもちろん実現できないのです。それでもトリップというのが、すごく、炉のシステムにとってはクリティカルなのであるとすると、加速器を1本にしないで2本、3本にする。初期投資はかかりますけど、トリップ頻度は、うんと下がる。例えばここで800 MWのサーマルエナジーをつくって、270 MWのエレクトリックのパワーにして、100 MWを1本の加速器に供給する。何も170 MWを売電する必要はなくて、あと2本をつくって、20 mAの3分の1で3本を動かすわけです。そうすればトリップ頻度は、ものすごく下がります。ただ、加速器については、ほぼ上手くできているのではないかと思うのです。窓も随分良く検討されて、もう少しで現実味があるのだと思います。果たして、こういうMAをしっかり燃やせる、炉ができるのかというのは私、専門家ではないので興味があるところです。自信を持って、誰かがいずれはできるようになりますよという段階なのか、相当、要素開発から始めて、いろんな試験を続けていかないと現実的にならないのかどうか。そっちの方は、加速器屋としては答えがないので専門家の見込みを聞きたいものです。加速器の方としては、これは十分実現できる装置であるというふうに私は思います。

【山口主査】はい、ありがとうございます。今のお話しあたりも非常に奥の深い話だと思います。少し最後に整理して、論点を少し挙げたいと思います。ほかにいかがでしょうか。御意見等。どうぞ、はい。

【長谷川委員】2点ございますが。最初の2-1の資料、シナリオによるADSの導入事例というのがあるのですけども。軽水炉から高速炉。移行期、平衡期というのは、良く見るエネルギーをどちらがやったら、どのぐらいやるかという年を追って、最初は軽水炉をあって、その次に高速炉をあるというああいうシナリオに基づいてやっているのですよね。漠然と数字だけ出されると皆が知っていると言いながらああいう図面を入れておいた方が移行期、平衡期が良く分かるのではないかと思うのですね。もう一つ、平衡期については。最終的には全部、高速炉で全てを賄おうというような平衡期だと思うのですけども。例えば、ここの上でADS 5基で核変換という話が、ずっと書いてあるのですけども。その下のところに原子力依存度低減期と書いてあって、これはもう8・6・4・2となくなっていくということは、これはもう高速炉は使わないということが前提ですか。最低、高速炉ずっと動かしていてADS 5基となるわけですが160年かけて8・6・4・2と減らしていって、最終的にはADSは使いませんということは発生源がなくなるということですね。

【大井川室長】使用済燃料の中のMA、Puを全て核変換するには、これぐらいの基数と年月が必要だということです。

【長谷川委員】毎回出てきている、毎年出てくるものを消費していく、消滅させるために160年。そういう意味。

【大井川室長】毎年じゃなくて今貯まっているものです。

【長谷川委員】今、貯まっているものですよね。だから、ここの最後のシナリオと上のシナリオは全く違うと。

【大井川室長】全然違います。

【長谷川委員】下の方は、ここはもう高速炉をやりません。今あるものを全部燃やすなら160年かかりますからこれだけいります。こういうことですよね。そうすると、ちょっとこういうシナリオの書き方としては、あまり明確ではないので。ここは、はっきり分けて書かれた方がいいと思います。上の方でADSが高速炉から、これから5基で核変換ということは、高速炉が全部を賄うとなると、とにかくADS5基あれば一応、高速炉から出てくるものはなくなっていくというシナリオがはっきり分かると思うのですが。そこのところ、もうちょっと説明の仕方、考えられた方がいいのではないかと思います。もう1点は、私は以前、J-PARCの水銀ターゲットのことで伺ったことあるのですけども。窓材の件について。今はいいのが見つかるのではないかという話なのですけれども。今までの例えばJ-PARCの水銀タイプとか他のポールシェラーとかいろんなところで液体金属がターゲットの場合に、何が起こるかということをどのくらいわかっているのか。水銀ターゲットのときも最初は大丈夫だよと言っていたのがキャビテーションで穴がどんどん開いてしまって、駄目になる。先ほど、ビームをトリップするのをできるだけ減らす理由の一つは、恐らくビーム変動があるたびに、ターゲットのところで温度変動があるとその分でキャビテーションあるいは熱疲労ということが起こるわけです。実は、加速器は良くできる。それから炉心の周りも大体想像がつく。ただ、良く分からないのはビームウインドウとそのターゲットのところとなると先ほどウインドウ破損が、システム全体を止めてしまう一番の事象だとするとそこのところを今どのように考えているのか。そして、またここの新しくつくると考えられている技術が、次のベルギーでの加速器にそのまま転用というか、反映できるのか、その辺少し教えていただきたい。

【大井川室長】資料の2-3の25ページの参考資料を御覧ください。我々は、いろいろな国と協力してポールシェラーの加速器にPb-Biの液体の核破砕ターゲットを導入するMEGAPIEというプロジェクトに参加しました。これは2006年の8月から700 kWという非常に高い出力の入射に成功して、大体4か月の運転に成功しています。水銀ターゲットのキャビテーションの話というのは、あれはちょっとパルス運転の話で、ADSではそういうショートパルスは考えていないので、あまり問題にはならないというふうに考えています。こういうPb-Biの核破砕ターゲットの実証試験というのは、行われています。ただ、これは連続ビームで入っているのですけども、かなり低めの温度で運転されていまして、我々がADSで本当にデータが欲しいところの温度よりも少し低いので、もう少しそういうADSの条件にあった照射試験というのを今後やはりやっていかないといけないと考えています。そこのところが多分、我々の一つのブレイクスルーに必要な技術なのかなと思っています。そういうことでJ-PARCを使った実験というのを今回やっていきたいということで、これは次回に少し詳細について説明させていただきたいと思っているところです。それからMEGAPIEの試験は、つい今年になってから先端の陽子が当たっていた部分を切り刻んで、照射後試験をやるということです。25ページの左下のところにありますようにサンプルを各国でシェアしまして、JAEAも幾つかサンプルを輸入というか、運び込みまして、これから照射後試験をやっていこうというふうに考えているところです。以上です。

【山口主査】何かございますか。

【長谷川委員】すみません。要するにビームトリップをして立ち上がるときは最初のパルスと同じですよね。そういう連続運転のときはじわじわと原子炉も同じで出力をあげていくので問題はないが、結局すとんと落ちてまた戻ったとき、そういう問題というのがあると思うのです。そういう意味ではやはり、MEGAPIEでそういうことが実際あったかどうかというのは知らないのですが、現実問題としては、今までの液体金属の、日本自身が持っているターゲットで持っている事象やなんかをどうやって生かしていくか。場合によっては、ADSというのは今で言うと結構長く使う。燃料交換の間までずっと安定して動かなければいけないわけです。だから、そういうものをどうやって安全性というか、長期信頼性を担保する必要があるのということは、こういう今までのも含めて、しっかりと知らしめていくということが必要ではないかなと思います。

【大井川室長】はい、ありがとうございます。実は、MEGAPIEも4か月の間に何回もビームトリップはしています。それから我々、先ほど加速器のところでビームトリップの解析をしているのは当然ビーム窓にかかる負荷というのも検討していて、それでビームトリップの許容頻度というのを決めていますので、逆に言いますと、そのトリップ頻度を超えると、もうそのビーム窓は交換するのだと、そういう運用になっていくのだと思います。

【山口主査】ほかには、いかがでしょうか。どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】この作業部会が、ADSが技術的選択肢になるかどうかの判断材料を頂いて、進めるべしというようなことを最終結論に出すとすると、やっぱり、これまでもいろいろと御意見が出ていると思うのですが、研究開発の全容がどうあって、どこまで進んでいるかという、この間もそういうお話があったと思うのですけど、例えば資料2-3の4ページで、ADSに関する指摘事項と対応状況ということで、2009年に、原子力委員会から指摘がありましたと、それに対して対応状況が今このようになっていますということをお書きいただいているのですけども、この指摘事項を実現しようとすると、この先全体で何が必要で、それで、ここまで終わっていて、そして、この先こんなふうにやっていきますというようなところをもうちょっと具体的に、先ほどもあったフローチャートというか、同じ資料の6ページにそういうことが書かれていると思うのですけども、もうちょっとそこを詳しく書いていただくことが今後の判断の上で大事かなと思います。それからそういう全容を見渡す上で、先ほど原子炉の方がどうなるのかというようなことが矢野委員からあったのですけども、私は逆に加速器のことは良く分からないのですが、原子炉についてもう少し概念設計的なことをしっかりやられて、それでどんな課題があるのかというところを設計の中から見通すということも必要であると思います。重要な課題をもしかしたら見落としているかもしれませんので、そういうことも今後やっていくべきではないかなと思います。以上です。

【山口主査】はい、ありがとうございます。ほかには、いかがでしょう。どうぞ、中島委員。

【中島委員】今、炉の方の設計をというお話がありましたけど、ADSの特徴として、未臨界で安全であるということがうたわれています。ただ、基本的にやはり崩壊熱が出るというのは今の炉と同じなことで、800 MWなりの熱が出れば、それに応じた崩壊熱が出るということです。そうするとやはり今、福島第一原子力発電所で問題になった事故後、シビアアクシデントと言いますか、崩壊熱除去が十分できますかというところで、コストの評価とかありましたが、やはり新規制基準という、これがどういう法律上で扱いになるか分かりませんけれども、そういったものに対する対応も今後は多分、設計の中で取り入れる必要が出てくるのかなと思います。どこまでやるかというのは、もう少し、今の段階ではまだ早いかもしれませんけども。多分、最終的には、そういうことも評価したコストを挙げなくてはいけないのかなと思います。

【山口主査】はい、ありがとうございます。ほかにはございますか。どうぞ、和気委員。

【和気委員】技術の素人的な質問ですみませんが、分離変換という技術に対する社会的ニーズとして、例えば福島事故の、今どういう燃料をどういうふうに安全的に処理するかという中長期的な研究課題を突き付けられている中で、この溶融燃料の処理に伴う、必要な技術的課題と、今ここで議論している核分離、核物質の核種の分離が、変換までいかないにしても分離技術との間にどの程度の基盤技術的なものとして共有できるのかどうかについて確認させていただきたいと思います。つまり、相当程度に現実的に応用可能なのか、あるいは、大きな技術開発シェアの中に溶融燃料の処分問題に伴う、新たな技術開発ニーズとして位置づけられるのかどうかというところをお聞かせいただきたいと思います。

【山口主査】これは大井川さんから、ちょっとお答えいただいてもいいですか。

【松村リーダー】私の方から御説明いたします。福島の溶融燃料につきましては、私ども一部、処理の技術開発に参加させていただいているところでございます。溶融燃料は一旦、完全に溶融してしまったものが様々な構造材であるとかほかの、例えばコンクリートであるとか。そういったものと反応して、冷えて固まっております。そういったものを、例えばこういった分離のプロセスにのせるためには一旦溶解させるというプロセスが必要です。我々、今それを溶解に関しまして基礎的なデータを取りつつありますけれども、溶融燃料は固まっておりまして、非常に溶解しにくい塊になっております。通常の再処理で行っておりますような硝酸での溶解ができないという状況にありますので、まず、ここのところを解決する必要がございます。それをした上で、きちんとした溶解液の形にすれば、そこからあとは何とか再処理であるとか、こういった核種分離であるとかそういったプロセスにのせることは可能であろうと考えております。

【山口主査】ほかには何かございますか。大体よろしいでしょうか。少し整理してみると、今日のお話しは開発の状況です。これはこれで非常に多くのインフォメーションがあります。前回は、これまでの経緯のお話しがあって、それから国内外の状況ということで国のプロジェクトとしての開発プランのようなお話し。今日、開発の状況ということになって、何となくそこにちょっと抜けているところがあるのかなと今日聞いていて、あるいは皆様の御意見を聞いていて思いました。抜けているところの一つ目は、高レベル廃棄物とかも含めたグローバルピクチャーと言うようなものです。それはここの分科会のミッションとは違うと思うのですが、もう少し大きな話。先ほど矢野先生から時間スケールについて着眼点を変えると開発目標も変わってくるのではないかというような主旨のお話をされました。そういう意味では、この分科会での議論の横にグローバルピクチャーみたいなのがあって、その中でこの群分離・核変換技術がどう位置づけられるかという話を横目に見ながらやるようなのが一ついるのかなというふうに思いましたね。それからさっき開発状況の話に突然入ってというお話ししたのですが、ちょうど藤田先生が言われたようにトータルプロセスとして目標設定が一体どうなっているのかというのが、何となく見えにくいと思います。いきなり個別技術の目標のところに、ポンと入ってしまったと思うのです。私もこれを見ていて原子力委員会の前の評価に対して、お答えとして右側の欄に対応状況が書いてあるのですが、この指摘事項と対応状況を比べますとどうも答えになっていない。つまり指摘事項は、例えばビーム窓なら工学的成立性を実証することという問いに対して、窓の概念を提示というのは、これは進捗状況の報告であって指摘事項に対する答えになっていないと。それはやっぱり目標設定というのが、まだぼやっとしているところがあるのではないかなと思ったのです。その上で、最初にロードマップについて何人かの委員の方から御指摘がありました。あのロードマップ、ずっと見ていたのですがやはり今の話というのは、時間のスケールとかそれが重要ですが、あまり時間スケールが入っていません。あとはロードマップでは、元々こういう研究開発を将来その都度レビューを行いながら進めます。その理由は何かというと、将来に新しい技術が出てくるかもしれない、それから環境が変わるかもしれないと。そういう意味では、その時点その時点の最新の状況を踏まえつつ、研究開発を最適な方向に導いていきましょうということであるとすれば、このロードマップだけだと今の問いに答えられていないのだと思うのですよね。それと併せて、そのあと開発状況の議論にいくには、このロードマップに加えて技術マップとギャップ分析が必要だと。ギャップ分析の話、ちょっと今日も御意見が出たのですけども。このロードマップで、ADSと燃料、それからサイクルの話、加速器の話それぞれ課題が指摘されたのですけども。ここに書かれているものは、やはり研究開発をやる技術マップにはなっていないので。その部分も何らかの形で道標と言いますか、こういうものがいるのかなと。そうすると現状の技術とのギャップが見えてきて、ちゃんとギャップ分析を踏まえてどこに投資をすれば良いかとかは、もう少し容易に議論できるのではないかなと。今、ちょっと気が付いたような話では、一つグローバルピクチャーの話ですね。それから二つ目に目標設定の話。それから三つ目に技術マップとかギャップ分析とかそういう話。少し、ちょっとそのへんは、やっぱり最終的に進めていく上では改めて今の状況を踏まえて、再構築したらいいのかなと。多分、委員の先生方の御意見ではそういう話であったかと思います。少しそのへんも検討していただけますでしょうか。あとは何かございますか。もし、ないようでしたらもう一つ。今日御欠席の田中委員から資料を頂いています。資料番号はないですが、事務局から少し御紹介いただけますか。

【石川課長補佐】すみません。それでは、机上に本日御欠席でございます田中委員の方からコメントを頂いておりますので簡単に紹介させていただきたいと思います。まず、一般的なことということで全般的な指摘でございますけれども。まず一つ目、平成21年の原子力委員会の指摘事項とその対応は、具体的な説明が必要だろうという御意見。どういうことができているといったようないい面ばかりだけではなくて、上手くいっていないことですとか懸念されているようなことも明確にしながら進めるべきという御意見。あとはサイクル関係の研究開発との連携、関係といったところもはっきりさせる必要があるのではないかということ。あと3点目といたしまして、国際協力について、ベルギーで行っているADS開発等との関係も明確にすることが必要ではないかという御意見。全般的なこととして3点ほど御意見を頂いているところでございます。個別のところでは裏面も含めて12点御指摘を頂いております。分離・回収のところに関する話でございますとか、分離のところの先ほどもお話にありましたようにビーム窓の健全性、冷却、腐食の問題でありますとか、窒化物燃料に関しての御指摘でありますとか、12点ほど御指摘を頂いております。詳細については少し時間も押していますので省略いただきますが、次回以降、またこの辺も踏まえまして資料等を作成させていただきたいと思います。以上でございます。

【山口主査】ありがとうございます。それでは以上で、本日予定していた議題は終了となりますが。委員の先生方からそのほかに意見等ありますでしょうか。それでは、どうぞ。藤田委員。

【藤田委員】全体のスケジュールというか、次回はどういうことを予定しているのか。例えば、先ほど、今日御指摘になったことを次回までに回答していただくのか。あるいは今度、研究開発をどういうふうに進めていくとかというある程度のスケジュール感をお伝え願いたい。

【山口主査】この分科会のロードマップについて、少し御説明いただけますでしょうか。

【石川課長補佐】次回のこの作業部会では、核変換のところで、次のステップとして、ある程度の規模の設備・施設の検討状況でありますとか、先ほどの田中委員からの御指摘にもありましたが、国際状況をテーマに説明させていただくのと人材育成をどういう形で今、進めているかといった議論を中心に考えているところです。ただ、本日御指摘いただいている点もありますので、その辺は次回までにどこまで御指摘いただいた点について回答できるかというところは少し検討させていただきたいと思っています。全体としては、前回の第1回のときにも少し全体のスケジュール感をお話しさせていただいたかと思いますが、10月末ぐらいに、本日も技術開発的な御意見いただいておりますので、そういったことについて一度中間的なまとめを、現時点までのまとめということをさせていただいて、次の段階にまた入っていきたいというふうに考えております。

【山口主査】はい。ほかにはよろしいでしょうか。それでは長時間にわたりましてありがとうございました。では、最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。

【石川課長補佐】今、私の方から申し上げましたことと重複いたしますけれども改めて申し上げます。本日頂いた御意見も一旦また整理させていただきまして、次回御報告また御議論いただきたいと思っております。また、今日の議事録につきましても出来次第メールで御確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。繰り返しになりますが、次回は今週13日(金曜日)、16時からということで予定をしております。タイトなスケジュールで大変恐縮ですが、御協力いただければと思います。事務局からは以上でございます。

【山口主査】はい、ありがとうございます。では、以上をもちまして第2回群分離・核変換技術評価部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

―了―

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