4.データ統合・解析システム(DIAS)の長期的・安定的運用に向けた検討事項

4.1.DIASの現状と今後の課題

整備状況・成果

 DIASの整備が進んだ結果、超大容量・多様なデータの統合・解析により、環境変動と社会活動、資源変動、災害等との関係の解析が可能になったほか、様々なデータのメタデータを標準化された様式でアーカイブすることにより、分散しているデータベースから効率良く、使いやすい形で必要な情報を得られるようになった。例えば、DIASに構築した利根川ダムの最適操作システムのプロトタイプを高度化し、水管理データや気象予測データ等の膨大なデータをリアルタイムで統合・解析し、ダムの水位や流量を管理できるシステムを開発した。この成果により、洪水流量予測を高い精度で実現することが可能となった。更に、このシステムを実用化するため、現在、渇水や洪水の被害低減及び、効率的な水資源管理を図る観点から、試験的に利根川水系の河川管理に適用している。
 国際的にも、全球地球観測システム(GEOSS)に参加する世界各国のデータセンターとの接続を実現しており、GEOSSへの国際貢献を進めている。
 このように、2006(平成18)年度以降の国費投入による継続的な研究開発により、DIASは着実に整備されてきたところであるが、2015(平成27)年度において、現在実施している基盤整備や高度化・拡張、研究者等に対するDIASの利用支援体制や解析ツール類の開発が完了する。
 これらに加え、DIASを活用した研究事例を創出することを目的とした「大学発グリーンイノベーション創出事業環境情報分野」においては、気候変動をはじめとする多様な環境問題に貢献する技術・情報を取り扱う能力を持った人材が育成されてきている。

長期運用体制への移行

 DIASは、2016(平成28)年度以降、長期運用体制へ移行する予定である。長期運用体制への移行とは、国費のみに依存した運用から脱却し、関係府省による利用の促進や、民間活力の利用も含めた自立的な体制への移行にほかならず、長期運用体制移行後における、データ統合・解析に係る「出口」戦略を早急に整備すべきである。以下、具体的な検討課題を提示する。

4.2.長期運用体制への移行に向けた検討課題

戦略の明確化

 DIASプロジェクトには、超大容量・多様なデータの統合・解析により、新しい価値を創出するビッグデータ的な研究開発プロジェクトとしての側面と、データベースとしての社会的インフラを構築するプロジェクトとしての側面とがあった。
 DIASのプラットフォーム整備段階では、事業関係の研究者が利用者の中心とならざるを得ないが、2016(平成28)年度以降、DIASが本格運用を開始するに当たり、利用者の範囲を拡大することが想定されている。これまでDIASは国費による研究開発段階にあったことから、利用者は主に研究関係者に閉じていたが、今後は、気候変動への適応に向けた技術開発における活用等を通じ、企業等による利用も積極的に進めるべきである。
 その際、利用者、データ提供元、研究成果提供者(利用アプリケーションのプロトタイプ作成者)、DIAS運用者それぞれの役割及び責任の在り方や、海外の事例も参考にした、官民がそれぞれ保有するデータを持ち寄り新たな価値を生み出すための協働の在り方等についても検討すべきである。

我が国が保持すべきデータの特定及び利用促進

 あらかじめ、世界規模のデータベースの統合に係る動向や、我が国がこれまでに蓄積した資産にも留意しつつ、我が国にとって国際貢献や産業競争力強化の観点から国際交渉力を高めるために保持すべきデータを特定すべきである。
 その上で、特定されたデータを得るために必要な資源の集中化や、情報収集、統合・解析に関する具体策、特定したデータに係る明確な公開(非公開)方針を定める必要がある。
 なお、企業がデータを加工し提供するなど、ビジネスとして活用する場合や、自治体等が広く市民へ情報発信に利用できるようにするためには、一定の質を担保したデータの提供が求められるほか、基となるデータの提供元や利用条件、信頼度を示さなければならない。DIASには多様なソースから集積されたデータが保管・提供されるが、これらのデータの個々の信頼性の担保が必要となる。

利用体制の確立

 今後、利用者が、よりアクセスしやすい環境を実現するためには、組織的かつ自立的な支援体制を構築することが不可欠であり、早急にその実現に必要な要件を明確化し、長期運用を担う主体を選定する必要がある。具体的な利用者支援課題例としては、利用者のデータ加工の負担を省くためのデータフォーマットの統一や、国費への依存を減らしつつ安定的に運用するための有償利用も含めた利用ルールの整備、DIASの戦略的な活用を促進するためのデータアーカイブの優先順位を決める指針の整備等が挙げられる。その際、利用者の選定、共有データ・非公開データの取扱い方や、利用対価の徴収方法については慎重に検討する必要がある。

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