宇宙開発利用部会 宇宙科学小委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成25年4月22日(月曜日)15時30分~18時20分

2.場所

文部科学省16階特別会議室

3.議題

  1. 宇宙科学小委員会について
  2. 宇宙科学分野の現状等について
  3. 宇宙科学研究の推進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

専門委員 秋山 演亮
専門委員 磯部 洋明
臨時委員 井上 一
専門委員 小川 博之
臨時委員 川合 眞紀
専門委員 北野 和宏
専門委員 久保田 孝
専門委員 高薮 縁
臨時委員 瀧澤 美奈子
専門委員 常田 佐久
専門委員 永田 晴紀
専門委員 秦 重義
臨時委員 藤井 孝藏
専門委員 山田 亨
臨時委員 横山 広美
専門委員 吉田 哲也
専門委員 渡邊 誠一郎

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長 柳 孝
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹内 英
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 村上 尚久

5.議事録

【竹内企画官】  それでは定刻になりましたので、ただ今より、宇宙開発利用部会宇宙科学小委員会の第1回会合を開催させていただきたいと思います。委員の皆様方には御多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、宇宙科学小委員会が設置されてからの最初の会合となりますので、議事進行につきましては主査にお渡しするまでの間、事務局のほうで進めさせていただきます。
  まず、議事に先立ちまして、本日御出席いただいております委員の皆様のお名前を五十音順に紹介させていただきます。秋山委員、磯部委員、井上委員、小川委員、川合委員、北野委員、久保田委員、高薮委員、瀧澤委員、常田委員、永田委員、秦委員、藤井委員、山田委員、横山委員、吉田委員、渡邊委員です。また、本日は御都合により欠席されておられますが、東京大学大学院理学系研究科教授の永原委員と、高エネルギー加速器研究機構教授の野崎委員のお二人にも、構成員として宇宙科学小委員会に御所属いただいておりますので、合わせて紹介申し上げます。
  続きまして、本日の会議の成立について説明いたします。本日時点で、宇宙科学小委員会には19名の委員に御所属いただいており、本日は17名の委員に御出席いただいております。運営規則に定める過半数以上の要件を満足しておりますので、本日の会議が成立していることを報告させていただきます。引き続き、本日の配布資料について説明いたします。議事次第に資料名を載せておりますとおり、資料1-1-1が「宇宙科学小委員会の設置について」、資料1-1-2が「宇宙科学小委員会の当面の進め方について(案)」、資料1-2が「宇宙科学分野の現状について」、資料1-3-1が「JAXA宇宙科学研究所におけるトップサイエンスセンター構想」、資料1-3-2が「宇宙教育の意義と実施上の問題点」、資料1-3-3が「宇宙科学研究の推進のために」でございます。それから委員のほうには、ペーパーファイルにとじ込んだ机上配布資料と、内閣府が公表しております宇宙開発利用関係予算の省庁別集計をお配りさせていただいております。過不足がございましたら、お知らせいただけると幸いです。

(1)宇宙科学小委員会について

【竹内企画官】  それでは議事に入らせていただきます。一つ目の議題は「宇宙科学小委員会について」でございます。お手元の資料の1-1-1を御覧いただけるようお願いいたします。宇宙科学小委員会ですが、4月4日に開催されました宇宙開発利用部会において設置が決定されております。調査検討事項につきましては、資料1-1-1の「2.調査検討事項」の3項目、「宇宙理学及び宇宙工学を含む宇宙科学のコミュニティが世界のトップサイエンスセンターとして機能するための方策」、「宇宙関連分野の人材育成のための方策」、それから、「その他宇宙科学研究の適切な推進のための方策」でございます。次のページは、宇宙科学小委員会の構成員の名簿でございます。
  それから、主査についてですが、宇宙開発利用部会運営規則に従いまして、柘植部会長から井上委員を御指名いただいております。また、運営規則に従いまして、井上主査から主査代理としまして永原委員を御指名いただいており、永原委員には御快諾いただいておりますことを報告申し上げます。ここまで、御意見、御質問等ございましたらお願いいたします。
  よろしければ、以降の議事進行を主査にお渡しさせていただきたいと思いますので、井上主査、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

【井上主査】  御指名を頂きましたので、主査として、以降の議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。では、引き続いて、宇宙科学小委員会の当面の進め方について事務局から説明をお願いします。

事務局(竹内企画官)から、資料1-1-2に基づき、説明があった。

【井上主査】  ありがとうございます。ただ今の御説明について御意見、御質問があればお願いいたします。
  私から一つ申し上げますと、26年度概算要求を念頭に7月頃までに中間取りまとめということになりますと、恐らくスケジュール的には厳しいことになると思いますので、私としては必ずしもそれにこだわらず、自由に意見交換することも大事なのではないかと思います。その中からいい方向が出てくれば、概算要求に向けて取りまとめさせていただくということだと思います。そのように考えればよろしいのではないかと思います。

【柳課長】  事務局から、多少補足説明をさせていただきたいと思います。少し戻りますが、資料1-1-1の3ページ目に参考資料として、この宇宙科学小委員会の親に当たります宇宙開発利用部会において、昨年の12月18日に取りまとめていただきました「文部科学省における宇宙分野の推進方策について」という報告書の抜粋をお示ししています。その中で、宇宙科学について今後検討すべきこととして、「ア.世界を先導する宇宙科学研究の推進」のところに、宇宙科学はこれまでもがんばってきていて、いろいろな取組がなされているわけですが、「その際、新規分野・融合分野への取組の促進、ISAS(宇宙科学研究所)と各大学との連携協力の強化、国内大学研究者の流動化の促進、外国人の受入れ促進など、ISASを中心とした宇宙科学コミュニティが世界のトップサイエンスセンターとして機能するような取組について具体的な方策を検討すべきである。」とあります。では、具体的に何をやっていけばいいのかということになりますと、その次に、「当該検討に当たっては、宇宙開発利用を先導していくとの観点や学術研究の特性に配慮し、当部会に検討の場を設けるなど広く関係者の意見を集約しつつ施策の具体化に取り組むべき」とありますので、このあたりの記述を踏まえて、この宇宙科学小委員会が設置されたという経緯がございます。先ほど「26年度概算要求を念頭に」と申し上げましたが、予算要求だけに向けた議論というわけではないということに異論はございません。ただ、その資料の最後に「宇宙基本計画」の抜粋も添付していますが、この「宇宙基本計画」は、宇宙の全体を考える方向性を示すという位置付けで今年の1月に策定されたものですので、この4月からが新宇宙基本計画元年に当たるというように考えております。そのため、新たに定められた基本計画を踏まえて、宇宙の今後の体制を作っていくための予算要求が、いろいろ出てくるのかなと考えております。従いまして、文部科学省としても、26年度概算要求に必要と考えるものを入れていくことが、基本計画が新しくなったことを踏まえた対応としてあるのではないかと考えております。
  そこで、宇宙科学に関わっている方々に、宇宙科学としてどう考えているのかということを御議論いただく場として、この小委員会を設置いただきました。委員の構成を申し上げると、1/3程度が宇宙科学に関する大学共同利用機関的な役割を果たしているISAS、それから1/3程度が大学で宇宙科学に関係しておられる方、そして残る1/3程度が宇宙科学以外の分野で先端的なことをやられている方や、例えばマスコミ関係などの第三者的な方に入っていただいております。それぞれの目から見て、何を行っていくのがいいのかという観点で議論をしていただく中で、予算だけでなく、文科省の取組や旗の振り方についても、そこは余計なことをするなという御意見でも構いませんので、いろいろな視点から御意見をいただければ有り難いと思っております。

【井上主査】  ありがとうございました。今の発言を含めて、御意見はございますか。
  それでは、いろいろ議論をしていく中で、このあたりの内容に戻ってくる部分があるかと思いますが、当面は資料1-1-2に沿って進めていきたいと思います。

(2)宇宙科学分野の現状等について

【井上主査】  よろしければ、次の「宇宙科学分野の現状等について」の議題に入りたいと思います。これは、今後の議論の基礎となるものだと思いますので、事務局から説明をお願いします。

事務局(柳課長)から、机上配付資料(内閣府公表の宇宙開発利用関係予算の省庁別集計)及び資料1-2に基づき、説明があった。

【井上主査】  ありがとうございました。ただ今の説明について、御意見、御質問、あるいは補足していただくことですとかがありましたら、お願いします。

【山田専門委員】  簡単な質問ですが、資料の最後のほうの進路のデータですが、課程修了後の直近の数字でしょうか。それとも数年後の数字になるのでしょうか。

【柳課長】  直近になります。この数字は、平成20年度から23年度の学位取得者255名を追跡したものですので、直近の状況になります。もう少し長期的にフォローしていけば、どういうふうに人が動いていくのかということが分析できて面白いかと思っていますが、現在は、そこまでデータがそろっていない状況です。

【川合臨時委員】  専門外のところがありますので基本的なことを教えていただきたいのですが、JAXAの中でのISASの位置付け、人的ポーション、それから研究としての仕分というものは、どういうふうになっているのでしょうか。

【井上主査】  どなたにお答えいただくのがよろしいでしょうか。むしろ藤井委員がよろしいでしょうか。

【藤井臨時委員】  今日はそのような立場で来ておりませんが、常田所長は4月に就任されたばかりですし、3月まで副所長をやっておりましたので私の方からお答えします。人数的に言うと、JAXA全体の1/8くらいです。予算的には、年度によって先ほどの資料にありましたように150億円だったり200億円だったりしますが、1/8から 1/10の予算比率になります。ほかに、何を申し上げればよろしいですか。

【川合臨時委員】  三つの研究機関が一緒になって、基本的にはJAXAとして一体運用されていると思っているのですが、ISASだけを取り上げてここで議論していくわけですので、位置付けがもう少しはっきり分かるといいなと思っています。経緯は分かっているつもりですが、一緒になる前の位置付けをそのまま継承しているということでしょうか。

【藤井臨時委員】  基本はそれで結構です。先ほどの資料にありましたが、宇宙科学には、「宇宙理学と宇宙工学の学理とその応用に関する研究」という位置付けがありますから、ある意味、宇宙開発利用全体を先導する部分、そういう部分が入っております。一方、科学衛星や探査機というものを宇宙科学としてやってきましたので、実際の科学衛星や探査機を打ち上げるという事業も宇宙科学研究所の責任になっています。それを通じて宇宙開発利用全体を先導するようなイメージを持っていただければいいかなと思います。あと、教育職を持っているということが一つの特色です。

【川合臨時委員】  教育の部分は分かります。

【柳課長】  今の関連で申し上げると、独立行政法人は、基本的に学術と実社会との結線的な役割を果たしていると思っています。JAXAも同じで、ISAS以外の部分では、学術研究の成果を実社会につないでいくための役割、ニーズがどうのとか社会全体が今何を求めているのかというところが、一番重要だと思います。しかし、ISASの場合はもう一つ別の視点がありまして、先ほどの資料の4ページ目で申し上げましたように、「学術研究の特性に配慮」する必要があります。要するに、真理探究ですとか学術としての価値を見いだしてやっていく部分がありますので、その部分については、ISAS以外のところとは性格付けが多少違っていると思います。先ほど藤井委員が「教育職を持っている」とおっしゃったことに通じると思いますが、大学の先生と同じような役割を果たしているというところが、ある意味、大学の学術研究に近い世界になっているのだと思います。

【藤井臨時委員】  なかなか理解していただきにくいかもしれません。

【井上主査】  私から一つ申し上げたいことは、ISASというJAXAの組織という目で見るのではなく、宇宙空間を使って学術の研究あるいは科学技術に関する研究を、大学と一体となった大学共同利用システムとして行っていくという観点で議論をしていくものだと理解していただきたいと思います。JAXAの中の組織という見方で議論すると、少し違う視点の議論が入ってしまうと思いますので、まずは最初に申し上げたとおり、大学共同利用システムとして見ていただくことが大事かと思います。

【川合臨時委員】  実は私は、JAXAの国際宇宙ステーションの公募課題を選ぶ「きぼう」利用推進委員会の委員も務めさせていただいているのですが、そこには大学のプロジェクトが提案されてきて、そこはそことして学術としての価値を判断している部分もありますので、そろそろ相互乗り入れすべき時期が来ているのかなと感じていました。ISASと、ISAS以外の学術が関わってくる研究提案が、全く別々に議論されていることが不思議な気がしたものですから、今後は乗り入れについても議論していくのでしょうか。それとも、飽くまで独立に進めていくのでしょうか。

【藤井臨時委員】  そこはJAXAの中でも議論があるところですが、何とも微妙なところです。と申しますのは、宇宙科学研究の予算はISASに来ますけれども、先ほど井上主査が言われたように、ある意味、コミュニティ全体の予算でもあるわけです。そういう性格の予算と、JAXAが主体となって進めるものとは一体にできないところもあります。しかし、言われたように、国際宇宙ステーションは大学の先生方が利用されている部分もありますので、議論の進め方については気をつけないと混乱する可能性があります。大事なポイントだと思いますが、この場にその議論を入れるかどうかは、主査の御判断だと思います。

【秋山専門委員】  私もそれは非常に重要な問題だと思います。例えば資料の10ページに、予算が「宇宙科学」と「宇宙科学+探査」と二つ書かれていて、平成19年までは「宇宙科学」と「宇宙科学+探査」の予算が同じなのですが、平成20年以降は違っています。これは、ISASのほかにJSPEC(月・惑星探査プログラムグループ)という組織ができて、科学と探査は別だという議論が出てきたことが理由だと思います。私もずっと探査に関わってまいりましたが、特にこの10年、ダイナミクスが非常に失われていると感じております。また、8ページに論文の被引用数の数が出ていますが、実はこれは過去の遺産ではないかと思っていまして、現時点でこれが将来10年後の姿を示しているかと言うと、そうは思えない部分があると思います。
  問題点は二つあると思っておりまして、一つは川合委員がおっしゃったように、国際宇宙ステーションも含めて、ISASが科学そして探査に関して強力なリーダーシップをとるという宣言がまず必要で、そこで統合された意思統一の下で世界に向かっていくということが、まずは体制論としてあります。もう一つは、これは今後も議論になると思うのですが、ISASが輸送システムを失ったということが大きな弊害になっていると思っています。これは、いろいろな経緯があって現状になっているので、非常に難しいところではありますが、輸送系と探査機を一体で検討する体制からJAXAの中のそれぞれの担当部門として考えるという体制になったことで、いろいろなそごが起きているように思います。具体的には、今度H-ⅡAで打ち上げられる「はやぶさ2」(小惑星探査機)について申し上げますと、当然「はやぶさ2」としてのプロジェクトマネージメントはきっちりやられているのですが、打上げを全体として見てみると、その輸送能力を隅々まで利用しようと考えてもいろいろな制約があったりするわけです。昔、ISASでは、M-Vの能力を最後まで使い尽くすということができていたわけですが、いろいろ判断場所が分かれてしまったことで、輸送能力が最大限に利用されていないという問題などがあると感じています。そう考えると、ISASが輸送手段を独自に持つべきなのか、それともISASと輸送本部の協力をどう考えるのかということがあると思いますので、今後、是非とも検討が必要だと思います。この二つの問題を考えないと、今後10年、20年先の日本の宇宙科学には、我々の先達(せんだち)が築いていただいた偉大な成果がなくなってしまうのではないかと危惧しております。是非、このところは議論を深めていただきたいと思います。

【井上主査】  今、提起された、一つ前の時代の大学共同利用システムに含まれていた部分と、JAXAになったことでいろいろなことを一緒に考えなくてはならない問題については、よく整理しながら議論したいと思います。我々としては、ISASが大学と一緒にやっていく大学共同利用という考え方について、どこまで今のようなことを含めて新たに整理して新しい格好を作っていくかということを考えることが、多分重要なことだと思います。今、大変重要な問題点を提案いただいたと思いますが、ほかにこの資料の説明について御意見、御質問はありますでしょうか。

【藤井臨時委員】  先ほど山田委員がおっしゃった進路などの統計についてです。私はこのデータを用意する側でもあったので、私が言うのも変な話かもしれませんが、「航空宇宙分野」と「非航空宇宙分野」と分けている部分、これは必ずしも切れないところがあります。ここでは航空宇宙で分類されていますが、例えば富士重工業で車をやっていたらどうかとか、きりがないところがあります。そういう点で、誤解が生じないよう注意いただきたいと思います。線引きはきりがなく難しいのでどうにも議論ができないのですが、そういう要素もあるということだけ御認識いただきたいと思います。

【井上主査】  ほかにはいかがでしょうか。よろしければ次の議題に移りたいと思います。

(3)宇宙科学研究の推進方策について

【井上主査】  次の議題は、「宇宙科学研究の推進方策について」です。本日は3名の委員から、宇宙科学研究の適切な推進方策についての議論のきっかけとしていただくための御意見を述べていただこうと思います。それぞれの委員から御意見のプレゼンをしていただいて、それに基づいて議論していただければと思います。
  最初に、藤井委員から御意見を頂きたいと思います。先ほどから紹介されていますように、3月までISASの副所長を務められていて、今回の宇宙科学コミュニティで世界のトップサイエンスセンターを目指すという話が出てきた経緯にも関わっていらっしゃると聞いていますので、その辺のことをテーマとして述べていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【藤井臨時委員】  改めて、宇宙研(宇宙科学研究所)の藤井でございます。4月になって、自由な立場になりましたので、自由に意見を述べさせていただくということでこの資料を用意させていただきました。「JAXA宇宙科学研究所におけるトップサイエンスセンター構想」というタイトルがついております。先ほど、柳課長からもお話がありましたし、秋山委員からも課題という形でこれに関連する話があったと思いますが、2ページの下のほうに、改めて宇宙開発利用部会の推進方策の文章を書かせていただいております。「新規分野・融合分野への取組の促進、大学との連携協力の強化、流動化の促進、外国人の受入れ促進、コミュニティが世界のトップサイエンスセンターとして機能するような取組について具体的に検討すべき」ということです。また、宇宙科学は宇宙開発利用を先導していくものである一方で、学術研究の特徴に配慮しながら進めなさいということが、先ほどの柳課長の資料に書かれています。ここにトップサイエンスセンターという言葉が出てきていますが、この4月からの5年間が第3期の中期目標・中期計画の期間になりますので、昨年来、JAXAの中でもこのトップサイエンスセンターなる議論を行ってきました。その際に、文科省から、「トップサイエンスセンターとは一体何ですか。先ほど紹介した文章を読むと宇宙研がやろうとしていることそのものではないですか。宇宙研とトップサイエンスセンターは何が違うのですか。トップサイエンスセンターになるのは宇宙研ですか、コミュニティですか、国ですか。」という質問をたくさん受けました。ということで、上に「目指す姿(私見)」として書かせていただいております。青いところですが、「優れた研究者が集う所からは優れた研究成果が生まれ、その成果が更に優れた研究者を引き寄せるという好循環が存在している状態」になっていることを、私はトップサイエンスセンターだと思っていて、これは宇宙科学に限らない話です。その状態では、下の矢印のところにありますが、「あるレベルを超えて世界的にトップレベルという認知度を得た組織では、一定の条件を満たす運営がなされることを条件に、こういった好循環」、どんどんいい成果があがり、人が更に集まり、更にいい成果が出るという好循環が起こると思っています。こういう状態に必ずしも宇宙研はなっていないという危機感を、この10年くらいの間、宇宙研のある種の方々が思っていまして、これがトップサイエンスセンターを立ち上げる背景になっています。二つ目の矢印のところにいきますが、先ほどから若干話があったように、宇宙研の最も大切な機能は、「特徴ある優れた宇宙科学プロジェクト」、これは惑星探査であってもいいですし、天文観測であってもいいですし、工学分野、例えば小川委員がやられているような再使用ロケットのようなものでも構わないと思いますが、そういうものの「創出とその実行」にありますから、そのプロジェクトの現場である宇宙研において、先ほど申し上げた好循環、優れた学術研究から優れたプロジェクトが生まれ、そこからまた新しい学術研究ができるという好循環を生んで、更に成長していくような状態にしなければならないと思います。それが残念ながら、ここしばらく失われているのではないかということを、先ほど秋山委員も御指摘されたのだと思いますし、私たちも感じているところです。これが、私の思い描くトップサイエンスセンターのイメージです。理学の先生方のイメージとしては、例えば、Kavli Foundation(カブリ財団)の名前をつけた研究所が16ほどありますが、宇宙研がこの名前をもらえるような研究所になると思っていただいてもいいかもしれません。
  次のページに行かせていただきます。御存じの方もいらっしゃると思いますが、20年前に、NATURE(ネイチャー誌)の編集長でありますジョン・マドックス氏が、21世紀に残す最高の研究所はどこかと言って、宇宙研を取り上げてくれました。宇宙だけではなく、科学全分野が対象です。細かいことは申し上げませんが、今これが維持できているかというと、自ら所属していながら申し上げにくいのですが、なかなか「うん」と言いにくいところがあります。そういうことも、一つの背景です。文章自体は後でじっくり読んでいただければと思います。
  次のページとその次の2ページでは、JAXAのトップサイエンスセンターという議論が、これまでどうなされてきたのかを簡単にまとめています。さかのぼること2005年3月に、JAXAの長期ビジョンというものを作りました。宇宙研からは私と、高橋忠幸先生と、今は京都大学教授の山川先生が代表になって主に議論したのですが、この中にトップサイエンスセンターという用語が出てきます。上のところの小さい字を見ていただくと、「世界に先駆けて、多様な波長域の宇宙観測と独自手法による太陽系探査を実施」することで、ここには「日本を」と書いてありますが、「日本を宇宙科学のトップサイエンスセンターにする。」とういう表記になっていました。ここには、理学的な観測のところだけが強調されていますが、次の丸印の最後のところには、「トップサイエンスセンターに不可欠な先端的な技術開発への挑戦」が先ほど申し上げたことを実現するには絶対必要であると書いてあります。工学がどうしても大事になってくるということで、新たなイメージの観測機器などもこの中に含まれています。これが8年前に、長期ビジョンの中で大切だと、JAXAが進めるべきと書いたことになります。その後、2006年12月に、当時の宇宙開発委員会の計画部会でも同様な議論があって、ここでは少し人材育成に焦点が置かれて、同じようなことが議論されました。次のページ、2007年です。このときは、WPI(世界トップレベル拠点)の公募があった年で、宇宙研ではなくJAXAとして、理事長も了解し、経営企画もサポートして応募しました。残念ながら通りませんでしたが、そこでもトップサイエンスセンターという言葉が出てきています。そこでは「宇宙を舞台にした21世紀の科学分野にイノベーションをもたらす研究を先導することを目的として、広範囲の理学・工学研究分野の連携による「宇宙理工学」の世界拠点を構築し、革新的な宇宙科学ミッションを実現する。All JAXAによる世界トップレベル宇宙科学拠点をたてる。」と書かれているものがトップサイエンスセンターです。後ほど、「参考2」の資料がありますので御紹介します。その後、下に書いてあるように幾つかの議論があって、最後のところは宇宙開発利用部会での議論につながるところですが、JAXAの中でもこういう議論がなされたということで、トップサイエンスセンターという言葉がこの場にあがってきているという経緯になります。というわけで、そのときどきで人材育成に焦点が当たったり、新しい芽出しの学術研究であったりと少しずつ色彩が違うのですが、危機感は共通してやってきているということが分かっていただければと思います。
  6ページです。それでは、この議論を10年やってきた背景に何があったのかと言いますと、最初に申し上げたように、これは宇宙研の今の姿そのものではないかということだったわけですが、そこにはある種の危機感がありました。まず、中期計画に沿った宇宙科学プロジェクトの実行とその背景となる学術研究は、それなりにしっかりやれるだろうと宇宙研自身も思っていますし、実際に、プロジェクトもそれなりに十分な学術成果を生み出していると考えています。しかし、先ほど秋山委員が言われたように、今出ている成果はかなり前の成果であって、今後10年後、20年後に同じようにできるかというと、今、皆さん、大きなプロジェクトに追われて忙しく、能力を持っていてもなかなか学術研究に時間を割けない状況があります。四角で囲んでありますが、そういうことも背景にあって、弱い分野がなかなか強化できない、コミュニティがなかなか広がらない、新分野の創出ができていない、学術という面で勝負できる人材、これは宇宙という冠を外して、例えば工学でいえば材料であったり、流体であったり、そういうそれぞれの学術分野で勝負できる人がどれだけいるだろうかということが心配のもとで、20年前と比べるとかなり細ってきているという印象を持っています。その下の青いところ、少し表記が悪いかもしれませんが、宇宙研が単なるプロジェクト実施組織になってしまっていて、プロジェクトを自分たちの学術を実現する場として使うのではなく、仕事としてプロジェクトをやるようなイメージになりかけているのではないかということをとっても危惧しています。そうであるとすると、10年先は何もなくて、もしかすると教育職である必要もないのかもしれません。それで本当に日本の宇宙科学は大丈夫ですか、若しくは日本の宇宙開発利用を先導するという宇宙科学を本当に実現できますか、ということが危機感です。ファンディング組織と書いているところは、大学連携のようなことでお金を大学に流すのですが、単にお金を流してそれで終わりということではいけないのではないかということです。右にある絵ですが、プロジェクトは宇宙研の柱ですのでその部分はそれなりの領域として色を塗ってあります。現状と望ましい姿がどれほど違うかこの図ではわかりにくいかもしれませんが、望ましい姿では学術研究重視のところまで少し薄い色を伸ばしております。こういうふうに少しずつ変えなくてはいけないということです。そうであれば、下に書いてありますが、何らかの思い切った施策を打って、国際的に人が集まり、弱い分野を強くし、人が育ち、それが日本の宇宙開発利用を支えるような、そういう場を作っていかないといけないのではないかということがトップサイエンスセンター構想の背景です。
  次のページです。では、非常に初歩的と言いますか、一歩、二歩の部分しか実現できていませんが、宇宙研は実際に何をしてきたかということを紹介させていただきます。一つはインターナショナルトップヤングフェローシップというプログラムで、今、私が運営委員長をやっておりますが、若い人を年棒約1,000万円で、世界から公募で集めました。これは、既に3年経過したところです。細かいことは省略しますが、数十倍の倍率のところをかなり優秀な方々が来てくださっていて、これから来られる1名を含めて現在6名が在籍しておりまして、この3月で3年の任期を終えた方が2名います。成果を具体的にお話したほうがわかると思いますので終了された方の例をお話しますが、サラ・バートマンという若い女性研究者は、カッシーニの観測、これまで宇宙研になかった土星関係の研究を持ち込んだり、ハッブル望遠鏡に観測提案をしたりしています。つまり、宇宙研になかったものを持ち込んでくださったわけです。それから、これから上がるSPRINT‐A(惑星分光観測衛星)とハッブル望遠鏡の協力のような提案もしていますので、分野と分野をつなぐということもやってくださいました。また、ポシャック・ガンディーという方、彼は高エネルギーX線の分野なのですが、彼の影響でX線分野の大学院生が赤外線分野で論文を書くということも起こっています。こういうふうに、分野をまたがることをこの方々はやってくださったわけですが、一方で、宇宙研全体と彼らのコミュニケーションが良かったかというと、残念ながら今そういう状態にではありません。それは先ほど申し上げた、人が足りない、プロジェクトに追われるという要素があるからだと思います。
  8ページです。ほかにも幾つか、研究系の再編ですとか、後ほど磯部委員からお話があるかもしれない大学連携拠点ですとかにも取り組んでいます。三つ目の黒丸は私たち教育職職員にとってはとてもうれしい話で、宇宙研には科学推進部という事務的なこともサポートしつつ推進を促進する組織があります。一般職の方の組織です。ここが国際化をしようと自主的に言ってくださって、今、国際化を推進してくださっています。これは小さい動きですが、いい動きだなと思っております。6番目に「TSC(トップサイエンスセンター)構想の現状」と書いてありますが、ここまで雑ぱくな話をさせていただきました。それでは、新しい施策として具体的に何をするのかということですが、実は何も煮詰まっていない状況です。宇宙研の活動に関するコミュニティ代表の場である宇宙科学運営協議会の議長を私がやっていた関係もあり、そこにワーキンググループを作っていただきまして、トップサイエンスセンターなるものの定義を明確にして、具体的に何をやるのか議論してくださいというお願いをしました。少し遅れ気味ではありますが、現在、議論が始まったところです。
  9ページです。こことこの次が一番大事なところです。これは前所長の小野田先生も大変危惧している部分だったのですが、なぜ、これまでの議論が具体的施策提案に結びついてこなかったかと言いますと、考える時間がとれないという、先ほど申し上げたようなことが一番大きな理由になっていると思います。二つ目の「個別課題対応の施策」というのは、先ほど申し上げたトップヤングフェローですとか大学連携拠点ですとか、お話しませんでしたが客員講座ですとかの個別の施策だけでは、なかなか大きくは動かないということです。研究者の意識そのものも変わらないといけないので、もう少し大きな何かを打ち出さないといけないということが一つあります。それから、理念はいいのですが、仮にそれが実施できたときに、具体的に優れた人が来てくれるかということ、優れた研究者が来てくれるような動かし方をしなくてはいけない。流動化促進についても、人事制度とか組織規定とかいろいろな制約がありますので、こういうものも突破しないといけない。宇宙研の受入れ体制も大切で、せっかくいい人が来てくれても、なかなか現在籍研究者は時間をとれないということがあるかと思います。こういう状況を合わせ、宇宙研の先生方の意識も変えて、状況を改善していくことをやらないと、なかなかよい結果に結びつかないということが気になるところとなります。それから、村山先生のIPMU(数物連携宇宙研究機構)などは理論屋さんですので人が動きやすい場だと思うのですが、宇宙研特有のものに携わる研究者たちについては、例えば海外の優れた人がすっと宇宙研に来ることができるかというと、簡単ではありません。ものと一緒じゃないといけないところがありますので、こういう方々の招聘(しょうへい)の難しさもあります。理学の観測機器などについても同じようなことがあるかもしれません。ということで、実現を可能にできるのか、実現すべきかということを、是非ここで御議論いただければ有り難いなと思っています。
  最後に、「8.具体的な施策」と書いてありますが、まだまだ具体的には書けておりません。予算と人材。人材については、宇宙理学委員会や宇宙工学委員会に携わっているような、腰まで、あるいは首まで宇宙科学につかっている方々がいる一方で、足の先とか、足首までのような方々もたくさんいらっしゃいます。そういう人たちの優れた学術要素を引っ張り込むようなところが、海外も含めた人材の流動化に非常に大事なところだと思っています。それからサポートする環境が大事です。赤いひし形で幾つか書いてありますが、芽が育ち、ダイナミックに活動できるような仕組みがそこにあると、ある種の学術研究、そして最終的にはプロジェクトの提案に結びつけるような活動にできると思います。その組織形態はいろいろ考えられると思いますが、トップレベル拠点で申請したものは宇宙研の外に作るイメージでした。「参考2」に、「IRISES提案」ということでお示ししています。ほかにも、JAXAあるいは宇宙研の中に、特別な研究特区を作るということもあるかもしれません。宇宙研自体が変わっていくということでもいいかもしれません。ただ、繰り返して申し上げますが、優れた人に来ていただく施策というのは、先生一人がポンと来るのではなくて、ある種のグループが、それも例えば所属を変えなくてもよい状態で相模原のキャンパスに来られるような仕組みを具体的に考えられると、申し上げたことが少し実現できるかなという気持ちを持っております。拠点で行われる研究の具体候補です。今日は中身の話をほとんどしておりません。ただ、理学と工学が一体となって行う非常に面白いテーマは、やはり太陽系探査が大きな柱として絶対にあると思います。これはJSPECがやるとか宇宙研がやるということではなくて、大きな柱になります。そこに、天文系の先生にも入っていただき、工学も含めて、皆でそこに向かっていく中で、先ほど申し上げたような外の力をしっかり入れて、今まで実現できなかった工学技術を使うというイメージを描けたらいいなと思います。もちろん、惑星探査は一つの大きな例ですが、それ以外をやらないということではなく、それ以外のことついても、テーマによって弾力的にそれぞれが進むようなグループができるという形がいいかなと思っております。例えば、私は、シミュレーションとか設計手法の研究をやっていますが、その中に設計探査という手法があります。これは、ものを設計するときに設計に影響を与えるパラメータが30個あるとしますと、どのパラメータがどれだけ設計に寄与しますかということを分析する道具でして、現在SOLAR-Cというプロジェクトの軌道に適用したり、火星飛行機の設計に利用したりしています。世界には我々以上に優れた方もいらっしゃいますので、にして、そういう方に来ていただければ、何か設計のやり方自身が変わっていくことがあるのではないかと思います。そして、こういうものが宇宙科学全体に使えるものになっていく。それが私自身の一つの例です。同じような研究テーマを、先生方がみな持っていると思いますので、こういうものを持ち寄って、しっかり議論していくのがいいかなと思っております。長くなりましたが、最後のページには、是非この小委員会で具体化に向けた議論をお願いしたいと書いてあります。予算をどのようにとってくるかとか、いろいろなことがあります。例えば、宇宙研が再来年度打ち上げるASTRO-H(X線天文衛星)にも予算が必要ですから、それらに影響されると困るのですが、やはり危機感を共有していただき、是非これを具体化することを御議論いただければと思います。以上です。

【井上主査】  ありがとうございました。早速どうぞ。

【横山臨時委員】  藤井委員、ありがとうございました。トップサイエンスセンター構想、非常に魅力的で、特に人の交流によって新しい学術が生まれるというところは魅力的な話だと拝聴しました。分野は違うのですが、私はこの数年、共同利用の研究所及び機構の評価や審査に長く携わらせていただいておりまして、共同利用センターとしての役割というものは非常にコミュニティとして大きいという印象を持っております。それに対する危機意識ということで本日のお話を頂いたと理解しているのですが、質問は、こういうトップサイエンスセンターを目指していくということながらも、やはりコミュニティの要望としての共同利用としての体制は、当然のことながらしっかりと維持して伸ばすことを前提にしたものであるということでしょうか。

【藤井臨時委員】  全くそのとおりでございます。

【磯部専門委員】  インターナショナルトップヤングフェローシップのお話で、新しく来られた方が土星の研究を持ち込まれたということは大変すばらしいことだと思いますが、その方が離れた後、土星の研究の分野は、ISASにずっと残っているのでしょうか。

【藤井臨時委員】  一緒にやっていた研究者は残っていますが、今後どれだけ成長するかについては、申し訳ありませんが自信がありません。そこは、おっしゃるとおり、大事なところだと思います。

【渡邊専門委員】  大変面白い提案だと思いますが、一方で共同利用機関ということですのでコミュニティ、特に大学まで含めて全体としてトップサイエンスというものを作っていくという構図が本来はあるのかなと思います。そのときに、ISASあるいはJAXAの中に置くのか、あるいはそれを超えたところに置くのかということについては、戦略として是非考えていただきたいところだと思います。私も、今ISASが抱えている問題点はいろいろあると思っておりまして、こういうことを目指したらいいなということはもちろん理解できるのですが、果たしてこういったものを抱え込んだときに、今抱えている問題をどう解決していくのかという点では、なかなか難しいなという気がしています。ですので、どういったやり方を目指すのかについて、もう少し自由度を持って検討をして、最終的にJAXAやISASに置くのがベストであるとなることはいいと思いますが、検討の段階ではもう少しいろいろな可能性や形を考えて、コミュニティの広い意見を聞いていくことが大事なのかなと思いました。

【藤井臨時委員】  資料には書かせていただいておりますし、先ほども申し上げましたが、まず運営協議会で議論を始めていて、その結果は理工学委員会にも展開しようと思っています。それから、「宇宙研が」と聞こえたかもしれませんが、最初に申し上げたように、そこは宇宙研であっても、宇宙科学コミュニティであっても、日本であってもいいわけです。ただし、現場というものは大事ですので、相模原という場所は非常に重要な場所になりうるのではないでしょうか。そこが全てというわけではありませんが、少なくとも一つの拠点になることは、いい進め方としては必要と個人的には思っております。大学に幾つか分かれてということもありえると思いますし、それはこれからの議論でしょう。今年、いきなりこの施策を何十億円、何百億円で動かすというよりも、今、渡邊委員が言われたように、もう少しじっくり考える時間が必要なのかもしれません。そこも御議論いただければと思います。ただし、何らか動かし始めるということが、多分大事なことではないかと思います。

【渡邊専門委員】  お伺いしたいことは、先ほど挙げられたISASの問題点、20年前にNATUREに書かれたような時代から大分変わってしまったということと、こういった提案をされてどういうふうにその問題点を改善しようとするビジョンをお持ちなのかということです。そこが少しつながらない気がしたわけです。もちろん、そこは非常に難しい問題ですぐには解が出ないという部分があるのかもしれませんが、今のISASの執行部におられる方がどういうビジョンを持っておられるのかについては、お聞きしたいと思います。

【藤井臨時委員】  私は執行部から外れましたので言いにくいところもありますが、昔、宇宙研が生まれる前、東京大学宇宙航空研究所には、プロジェクトをやっている人以外に、基礎研究をやっている方がかなりおりました。旧航空研究所と言ってもいいかもしれません。材料だったり流体だったり燃焼だったり、いろいろな方がおられました。私もその一人ですし、宇宙研の安部先生もその一人です。そういう人が今、消えつつあります。もちろん、プロジェクトをやっておられる中で、いい学術研究をやられている方はたくさんおられるのですが、私自身は若干そのことが心配で、基礎的な部分の足腰が弱くなってきているのではないかと感じています。それからもう一つ、プロジェクトの負担が大きすぎて、追われてしまっている状況があります。それを、トップサイエンスセンターで学術的なことをサポートする方に来ていただいて、一緒になって研究することで補おうというところがつながりになります。まだ十分議論したものではないという意味では、おっしゃるとおりです。

【井上主査】  今の御意見は、先ほどの資料の図における研究者の負担であるとか重点の置き方を表した白と青の混ざり具合について、トップサイエンスという状態ではない上側の色を、サイエンスを上げることで白くする方法だけではなく、青い部分を薄めるということについて、そこがどんどん濃くなったのはなぜかということについても考えて、そこを別の点から和らげようという配慮も必要だとおっしゃったような気がします。そこには、プロジェクトの一つ一つが大きくなってきたということもあると思います。

【藤井臨時委員】  並行して考える必要があると思います。

【常田専門委員】  今、宇宙研の執行部の見解はどうですかという話が出ましたのでお答えしたいと思います。4月から宇宙研の所長になりました常田と申します。ここに書かれている藤井委員がまとめられた危機感については確かに共有しているのですが、一方で、それほど状況がひどいのかなという印象もあります。現在も動いている「すざく」(X線天文衛星)や「ひので」(太陽観測衛星)という衛星は世界最高の衛星で、大量の査読論文をたたき出しています。ひとたびミッションが成功すると、そこには人が集まってきますし、輝かしい成果を生み出しているという状況については認識しておかなくてはいけないと思います。ここのページだけを読むと、何となく研究所が終わるような印象を持ってしまいます。

【藤井臨時委員】  そう受け取られるような書きぶりだったとしたら、申し訳ございません。

【常田専門委員】  「はやぶさ」(小惑星探査機)の成果を見ても分かるように、ポジティブな面はあると思います。一方、謙虚な姿勢も大事で、今、井上主査がおっしゃったように、ミッションの規模が非常に大きくなっている一方で研究所の規模は変わらないということや、「あかつき」(金星探査機)に見られるように、残念ながら軌道上での飛行状況が良くないということがありますと、失敗に対する影響が非常に大きいという宇宙科学分野の特性もあります。したがって、書かれているような問題は確かにあって謙虚に受け止めなくてはいけないと思いますが、このトップサイエンスセンター構想だけで、そこに書かれたものが全てきれいに片付く、あるいは片付けなければいけないという問題設定をすると、解のない状態になってしまいます。したがって、ここに書かれている学術とプロジェクトの関係の問題などは、国立天文台でもKEK(高エネルギー加速器研究機構)でもどこでも共通の問題があるわけですので、日々の研究所の改善の努力の中で対応していくことだろうと思いますし、それは我々がやらなくてはいけないことだと思います。ただし、もう一つは、こういう議論の中で、トップサイエンスセンターという形である面をかなり良くしていこうという部分があると思います。今回は後者のほうを議論していただくことで、構想の概念はいいと考えていることに、具体的に肉付けをすることに皆さんのお知恵を拝借したいと思います。

【永田専門委員】  幾つかありますが、まず、プロジェクトがだんだんと大きくなってきたということは、何も宇宙研に限った話ではなく、恐らくいろいろな研究分野で起こっていることだと思います。それよりも、基本的に、大学や研究者はプロジェクトをやるのが余り上手ではなくて、ノウハウの蓄積とかも余り上手ではなくて、その辺はやはりメーカーとか企業のほうが上手ですので、そこをうまく分担してできるとハッピーなわけですが、プロジェクトが大きくなるとそのような分担がなかなか上手にできなくなるということがあると思います。プロジェクトが小さい間は、会計的にもいろいろな工夫をすることができて、かなり大学と民間企業とがべったりくっついて二人三脚でやっていくことができて、それができている間はものすごく効率的に進んでいて、実はお金も効率的に使えているわけですけれども、そこに透明性を持たせていろいろな企業が入ってこられるようにクリアにしなさいと言われると、いきなり無駄なお金が増えて、無駄な仕事も増えて、しかし学術成果は上がらないということになってきているのではないかと思います。これはいろいろなところに起きていて、恐らくは宇宙研にもボディブローのように効いてきているということを、ここ最近ずっと経験されているのではないかなと想像しております。そういうことを、プロジェクトと研究という話を伺ったときに感じました。
  それから、もう一つは学術の話とはかなり離れた議論になってしまうと思いますけれども、藤井委員の「目指す姿(私見)」の好循環が生まれるというところに、「優れた研究成果が生まれ、その成果が更に優れた研究者を引き寄せる」とありますが、これだけで次に回っていくかといえば、実はもう一つ必要で、集まってきた優れた研究者が「稼ぐ」ということが必要になります。その部分がないと、次の成長には絶対に行かないわけです。ですから、「稼ぐ」ということをどう考えるか、それは例えば、優れた研究者が研究費を担いでくることを想定しているのか、あるいは、優れた研究者が競争的資金をどんどん取ってくることを想定しているのか、あるいは、能力を高めたところでドンと予算要求しましょうと考えているのか、それによって、かなり戦略が変わってくると思いますので、その「稼ぐ」というところも含めて議論をしていかないと、なかなか好循環を生み出すのは難しいなと思いました。

【井上主査】  ありがとうございました。答えられますか。

【藤井臨時委員】  言われたとおりで、説明しませんでしたが、優れた方が来ることで外部資金を取りに行きやすくなるということで好循環が生まれることには賛成です。そういう努力をしていこうと考えています。

【山田専門委員】  既に出た御意見と重複する部分もありますが、最初に危機感としてまとめられたことについて、その構想自体は大変興味深い構想ですし、人材交流を刺激するという意味では大変有意義な構想とは思うわけですが、それが最初におっしゃった宇宙研の危機感に対する解決になるかと言うと、やはりそれはそうではない印象を受けてしまいます。まだ初見ですので分からないところもありますが、基本的にはトップサイエンスセンターとしてやるべき研究を宇宙研がやっているという事実が、人を集めるものではないかと思いますので、年俸1,000万円で何人呼んできたということではなく、本当に宇宙研としてどういう科学研究をやるのかということを中心に据えられるべきではないかと思いました。

【藤井臨時委員】  若い方を招聘(しょうへい)するトップヤングフェロー制度を発展させればいいと申し上げたつもりはなくて、例えば、「参考2」にトップレベル拠点の申請をしたときの資料があります。これだけを読んでも分からないと思いますが、このときに呼ぼうとしたのは海外の有力な方々です。それから、大学の先生方にも声をかけて、新たな組織を作りましょうと提案しました。そのときは、東京大学から「二人の先生を是非」と推薦されて、私は面識がなかったのですが、いきなり電話をしました。「東大を辞めることになります。しかし、これは面白いので乗りますか。」と申し上げたところ、「構いません、東大を辞めます。参加させてください。」とおっしゃってくださいました。そういう研究者が各分野にいらっしゃると感じていますので、そういう方々と、ある程度の土台を作る部分の予算があることが大事だなと思っています。

【山田専門委員】  もちろん、そういうエミネント(著名)な方も含めて、ネームバリューを持って実際に科学研究を進めているドライバーになるような方を導入して、一つの形を作っていくこと自体はよく分かるのですが、その研究が宇宙研として進めるプロジェクトと密接に関わっていないと、と言いますか、その研究が宇宙研の中心の課題でないと、やはりそういうものは宇宙研自体を変えていくドライバーにはならないのではないかということが、私の感想です。トップサイエンスセンターを中に作るか、外に作るかという議論を提起されましたけれども、やはり宇宙研自体でどういう科学研究をやるかということが主眼になって、それと合わせてこういうものを整理していかないと、結局は本質的な解決にならないのではないかと考えます。

【藤井臨時委員】  そこは先ほど申し上げたとおり、考えているつもりでおります。

【井上主査】  時間の関係がございますので、藤井委員の御意見に基づいた議論はここで終わらせていただいて、次の御意見を頂きたいと思います。次は、秋山委員です。秋山委員は和歌山大学宇宙教育研究所の所長として、宇宙をテーマにした人材育成に取り組まれておられますので、その観点をベースにして御意見を述べていただければと思います。

【秋山専門委員】  私は昔、惑星科学にいたのですが、10年前くらいから宇宙教育にシフトしておりますので、その話をさせていただきます。
  めくっていただいて2ページ、「我が国における」といきなり宇宙科学を飛び越えた話になってしまっているのですが、現状我が国の経済は右肩下がりになっていて、どんどん経済力が落ちています。また、経済力だけが問題ではなくて、左下に「我が国の企業数の推移」を書いていますが、この解釈はいろいろあると思うのですが、新しい未来を作ろうという気構えがある人が減ってきているのではないかということが、社会的に持っている大きな問題点の一つではないかと思っています。
  これをどうするかという問題なのですが、次のページ、現在、基本的に社会が固まってきていますので、学生たちは決められた範囲の中で決められた手順をいかに個人単位で効率よく実施できるかという、その処理能力が高い個人を目指すということに重点が置かれていまが、それは全て「想定内」でないとできないわけです。仕事全体を見渡すような考え方ができなくなっていまして、例えば仕事量が300で、それを5人でやるとすると一人の仕事量は60だねということは当たり前の話ですが、個人主義では、「僕は30しかできないです。」というところからスタートするわけです。30が5人で150、そうすると残りの150はということですが、「それは僕の問題じゃないです。マネージャーが考えてください。」という問題になってしまいます。経済が右肩上がりのときは、「残り5人を足しましょう。」で良かったわけですが、今はそうなってはいませんので、これを何とかしないといけないということです。
  次のページ、企業はとっくにそういうことは言っておりまして、「企業が求める人材像」というところで企業が重視する点というのは、コミュニケーション能力であったり、主体性であったり、協調性であったり、チャレンジ精神であったりするわけでして、例えば創造性の不足というような問題に関しては、みんなが協力することで何とかうまくやっていきませんかというように、そういうことができる人材を、今、企業は求めているということです。
  それに対しまして、次のページ、宇宙教育で我々がやっていることは、生徒の自主性をどうやってくみ出すかということでして、教育学的にはActive Learningという考え方があるのですが、これは単に教えられるだけではなくて、生徒にやる気を起こさせるようなテーマを選定して、そのテーマに対してアウトプットのクオリティや実施方法も自分たちで考え出して、チームとして問題に対処させるということを実践的にやることによって、こういった問題が解決できるのではないかということです。もう一つ、次のページ、一人でやるのではなくチームでやることに加えて、各年齢層、小学生、中学生、高校生、大学生・院生、社会人がそれぞれ「教え、教えられながら」というように役割分担をすることによって、ちゃんと地域や日本を支えることができる人材を育てるということが、現在、教育に求められていることではないかと思います。その中で宇宙を取り上げる理由は、学生に興味を持たせて「やってみたい。」と思わせる、チャレンジングなフロンティアに対処する人材を育成するテーマとして教育全般で優位性があると思っているからであります。
  7ページですが、宇宙基本計画の中にある人材育成に関する内容の一覧をあげています。昔は、「魅力ある教材としての宇宙の利用」と「宇宙関係の技術者・研究者の育成」が、かなり大きく取り上げられていたのですが、今回からはアプリケーションに重点を置いた宇宙基本計画になっておりますので、赤色の部分、「我が国の宇宙外交/海外マーケット獲得のための戦略的ツール」という視点がかなり取り入れられていまして、実は、教育というものをどんどんうまく使っていきましょう、海外にも輸出していきましょうということが、かなりうたわれています。
  次のページは、文科省の宇宙分野の推進方策です。もちろん文科省ですので、右上の1(魅力ある教材としての宇宙の利用)、2(宇宙関係の技術者・研究者の育成)、3(我が国の宇宙外交/海外マーケット獲得のための戦略的ツール)のうち、2に大きな比重が割かれているわけですけれども、1と3もかなり取り上げられているという現状になっております。
  こういったことを受けまして、次のページに、「宇宙教育の分類」を書かせていただきました。私が所属しているところが「ものづくり・ことづくり・萌芽(ほうが)的」なところですので、これを取り上げていますが、後ほど磯部委員から別の視点の話もあるかと思います。ここでは、小学生から院生、あるいは技術者・研究者までに対して、最初は「A)宇宙を利用した科学技術全般に対する萌芽(ほうが)的な教育」をやっていきましょうというようなところから始まって、次はチームでやる「B)プロジェクトマネージメントに関する一般的教育」、そして「C)宇宙関連技術・知識に関する専門的教育」といったものをやって、最後には、いきなり国家プロジェクト的な50億円、100億円の巨大なプロジェクトを回すことはできませんが、そのようなものに対して早くから参入することによって経験を積んで、最終的には実際の大型プロジェクトを回せるようになるというようなプログラムが必要だと思います。そのような中で、ここにもいろいろ書いていますが、具体的な教育プログラムが現在いろいろと取り上げられています。
  次のページですが、これをもう少し、高度と運用時間で整理して書いています。宇宙にいきなり行くことができるわけでもありませんので、地上に近いところから申し上げると、係留気球というバルーンを使ったり、UAV(無人航空機)、これは自動で飛行するロボットと思っていただければいいのですが、そういったものを使ったりですとか、簡単な小さなロケットやもう少し大きなロケット、ただし高度は500メートルとか4キロメートルくらいまでしかないのですが、そういったものに缶サットと呼ばれるものを搭載するとか、さらには成層圏に到達するバルーンというようなものがあります。その上には、キューブサットというような実際に宇宙へ行くものですとか宇宙ステーションでいろいろやりましょうというように、テーマに基づいて様々なことをやっています。
  次のページ、最近よく言われるものとして、缶サットと言われる空き缶サイズの衛星ライクなものを使って様々な実験をしますとか、その次のページ、小型ロケットの打上げということでは、国内ではモデルロケットと言われる火薬を使った教育用のロケットや、永田委員も研究されているハイブリッドロケットという火薬も高圧ガスも使わない新しいタイプのロケットを打ち上げることによって様々なシステムを学び、研究するということをしています。もう一つ、次のページ、バルーンサットとありますが、これは30キロメートル程度までですが、日本が得意とするバルーンを高校生・大学生も使いましょうということで、こういったものにもチャレンジすればいいと思います。次のページは、日本の超小型衛星ですが、2003年に世界に先駆けて東大・東工大が、キューブサットという10センチメートルクラスの衛星を上げていますし、昨年からは国際宇宙ステーションから放出するツールを日本は持っていることを示しています。こういったチャレンジングな先端的な宇宙教育というものは、実は、メニューとしてはかなりそろってきているという状況になってきています。
  私は、こういうものづくり系のことしかお話しませんので、それ以外は後ほど磯部委員にお願いするとしまして、こういったものをやるときにどういう問題があるのかと言われたときに、15ページですが、実はこういった実験をどうやってやるのですかと言われたときに、JAXAの基準と教育基準を分けないといけないということが、我々が最初に直面した問題です。具体的に言いますと、JAXAは、基本的に失敗してはいけないわけです。プロジェクトの計画段階で失敗する要素を全部つぶしなさいということで、それは、50億円、100億円、1,000億円というミッションをやるときに当然あるべき姿です。ところが学生の教育に当たっては、必ずしもプロジェクトの計画段階で絶対成功するものでなくてもいいわけでして、もちろん成功することが望ましいのですが、いきなりはできないわけです。教育プロジェクトは、失敗をしながら学ぶことが非常に重要です。ここで散々失敗すると、実は大きなプロジェクトでは同じ要素で失敗しなくなるわけです。その経験をさせましょうということです。実は我々は、学生実験をするときに、JAXAの施設を100パーセント使っているわけではありませんで、むしろそれ以外のところの開発を進めております。右側に日本地図がありますが、北海道大樹町、ここは永田委員をはじめとする北海道の方々が2000年から使われているところです。それから、秋田の能代、ここはJAXAの実験施設のそばですが、ここでは陸上発射や陸上回収のロケットの打上げができるようになっていまいして、最近では海に向かって20キロメートル程度まで打てるようになっていますし、毎年8月には、日本中の大学生が400人程度集まって1週間から2週間の大規模な実験を共同実験としてやっています。そのほかにも、和歌山の加太とよばれるところですとか伊豆大島でも、陸上打上げのロケットを使って様々な実験をやっています。失敗してもいいけれども、失敗したときでも周辺に悪影響を及ぼしませんよというところをまず確保するということが一つ、あともう一つは、必ずしも最先端でなくていいので、研究ではなく教育ですので、繰り返し、繰り返し、同じフェーズを何度も実験できる場所が必要なわけです。そういうことでは、キューブサットの打上げの選考基準には、研究と教育が混同していると感じていまして、例えば「何がすごいのですか」とよく聞かれることがあるのですが、ここには教育的視点を入れて、「前と全く同じです。ただし、教育に関わっている学生が違います。」という繰り返しの視点も一緒に入れてやっていただければと思います。また、我々がサポートできていないものとしては、そういった実験場に、様々な省庁にわたる許認可権に関わるものがありまして、そこの部分はなかなか大学等が単独でできるものではないということですので、このあたりは検討いただきたいと思います。
  次のページですが、今、この宇宙教育を海外に輸出するという話があります。どういうことかと言いますと、現在、衛星を作って打ち上げられる国は10より少なくて8か9くらいしかないわけですが、それに対して海外の衛星を購入している国は55か国くらいありまして、無料で使っている国は100から150くらいだと思います。これが50年後になると、その下にあるようにフェーズが動いていくのではないかと思います。そのような中で、日本に協調的な宇宙クラスターを作っていく、要は日本の基準を受け入れて、その国で生産するものも日本標準として受け入れられるようにするとか、人的交流によって様々な協働プロジェクトをできるような体制を作らないといけないということが目的です。
  次のページを見ていただきますと、各国の宇宙関連の人たちはManager、Engineer、Technician、Laborという、恐らくこういう四つの層になっているだろうと思います。ここで、Manager層の部分は、政府間協力・Agency間協力などで関係が築かれていくのだと思いますが、大学とか学校においては、EngineerやTechnicianという宇宙機のシステム設計ができる人とかその製造の現場監督ができる人といった技術者レベルを育てるということをやっていますので、そういう中で海外とのネットワークを強化すること目指していくということです。
  次のページは、その具体的な例として、缶サットリーダトレーニングプログラムを挙げていますが、日本の宇宙教育のコンセプトを海外の先生たちに指導するわけです。先ほどのページで言いますと、Technician層に指導することによって、こういった日本の教育を世界的に広げていって、学生時代から人材交流を進めることによって、その後の産業化に必要不可欠な太いパイプを作りましょうということで、4年ほど前からやられております。
  ページをめくっていただいて、缶サット教育というものは世界中で行われているのですが、星印はCLTP(缶サットリーダ養成プログラム)に参加していただいている各国の数と場所を示していまして、世界でやられています様々な大会で、日本と協力的な体制作りが進んでおります。このことによって、将来宇宙を担う人材として、かなり日本と親しい人が存在することが見て取れると思います。
  もう1ページめくっていただきまして、これは私がプロジェクトディレクターをやっております文科省のUNIFORMプロジェクトですが、これは50キログラムサイズの衛星の開発をやっています。ところがこのプロジェクトでは、2号機、3号機に関しましては、開発と言いながらも1号機のまるまるコピーを作ります。そこに海外からの技術者に来ていただいて、無料でtechnology transfer(技術移転)を行います。その代わりに、これは地球を観測する衛星ですが、これと同じものを各国で作って打ち上げてもらって、そうすることで地球観測のインフラを各国で共有し、各国の人たちが自分の国でも産業化ができるような世界を作りましょうということを目指しています。
  次のページ、宇宙教育の意義は、単なる人材育成だけでなく、広く現代に求められている新しい人材育成、教育手法としての優位性があるということと、海外に対する戦略的な位置付けが明確化されているということが、いい点としてはあると思います。
  次のページですが、それでは今後の問題点は何ですかということですが、実は、文科省の中で、位置付けやビジョンをもう少し明確にしていただければと思います。これまで、ボトムアップでかなり活発に進んできまして、実施主体はJAXAの宇宙教育センターですとか大学ですとかがありますが、そろそろ全体の指揮を、例えばこの宇宙科学小委員会でとっていただければと思います。それから、教育というのは、文科省の中では教育局がやられているわけですが、今回の議論は研究開発局の中で特に宇宙に関する人材育成ということですので、そうすると予算の面でいろいろと問題があります。例えば私が聞いております話ですと、JST(独立行政法人科学技術振興機構)等に配分される教育予算は、特定分野に関する費用は担当部局がお金を出しなさいということで、なかなかあてがいにくいということがあると聞いています。また、教育とキャパシティービルディングと研究は違うという概念を分けていくことが必要ではないかと思います。
  最後のページですが、現在、大学生・院生の技術者・研究者の育成支援は、宇宙研を中心にかなりやられています。これは非常にいいことだと思うわけですが、先ほど宇宙研がどこまでやるのかという話もありましたけれども、宇宙研にプラスして、周りの関連大学にもちゃんと予算を割り当てるということが重要だと思います。宇宙基本計画の中では一定金額の予算となっていますが、この予算を宇宙研だけに割り当てるのではなく、周辺の大学のコースにも割り当てるというような最適化に関する検討が必要ではないかと思います。次に、高校生・大学生の教育については、実は今のところはほとんど支援を受けておりません。先ほどの資料1-2で、JAXAと大学の連携の例として京大と慶応大学の例がありますが、25ページの和歌山大のところはJAXAによる支援はないです。これは、ほかから予算をとってきた民間支援の例ですが、このあたりについても、是非サポートが必要かなと思います。特に現在、北大、秋田大、和歌山大とかが、日本全体の教育実験の拠点となるところをサポートしてやっているわけですが、実は予算もついてないし、人も配置されていません。ここは、是非サポートが必要かなと思います。そのことが、次のところに書いてありますけれども、これは研究開発局ではなくて教育局になるのだと思いますが、文科省には教育系の共同利用拠点の予算があるわけですね。これは実習船とか演習林とか、日本全国の大学が使えるような拠点に予算が割り当てられるわけですけれども、そこに今、宇宙は含まれていません。それがあれば、我々も参入できるかなと思っておりますので、是非ここは文科省の中で縦割りではなくて、宇宙教育は重要だということでやっていただければと思います。小中学生に関しましては、JAXAの宇宙教育センターがかなりかんばっていまして、全国津々浦々に拠点ができております。ただ、これまでは宇宙教育センターを中心に、ある意味お金を使ってまとめてきたわけですが、JAXAの宇宙教育センターからYAC(公益財団法人日本宇宙少年団)の本部に予算がつかない状態で各拠点を作ってきていますので、今後それをどうまとめていくかということが見えてきていないという問題があります。ちょっと上に戻って高校生・大学生の部分ですが、今我々は、一部の大学等で活動を進めていますが、日本全国の津々浦々の大学での活動までにはなっていません。これはJAXAの宇宙教育センターと協力してやっていますが、考え方が違うところで、JAXAの宇宙教育センターとしては全国津々浦々に小中学生と同じように回したいのでしょうが、なかなかそれができていない状態です。そこのところは、ビッグピクチャを描くことによって改善されるのではないかと思っています。

【井上主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【横山臨時委員】  楽しそうな非常に魅力あるプログラムで、大変楽しく伺いました。17ページに関しまして、2点質問がございます。最初の文章に「海外に日本の宇宙教育を輸出し」とあります。先生方に申すまでもないことですが、宇宙に関することは安全保障に関することが多くございます。日本においても先ほど御説明がありましたが、偵察衛星を上げておりますし、政治的に今でも微妙な状況です。今後、特にアジアに教育を輸出するとき、教育そのものは非常に優れていても、交流で起こるイデオロギーの衝突は、子供の間でも必ず起こるのではないかと懸念しております。そうしたことに対して、どのようにお考えになるのかということが1点目です。2点目ですが、三つ目に「ビジネスモデルを目指す」とあります。もちろん、ビジネスモデルを確立できるようになれば喜ばしい面も多いと思うのですが、これも言うまでもなく、特にアメリカにおいては冷戦科学を背景に成長したものでありますし、日本でも国の支援がなければ非常に難しい状況にある中で、ビジネスモデルとはどういうものを目指そうと考えて書かれておられるのか、この2点をお伺いしたいと思います。

【秋山専門委員】  はい、ありがとうございます。まず、各国との具体的な調整の部分ですが、実は缶サットは衛星の部分とロケットの部分がありまして、そこで少し動きに差があります。ロケットの部分は今のところ解なしと言いますか、かなり控えめにしています。唯一の具体例としましては、早稲田大学で毎年やっている宇宙イベントに、一度だけ韓国の学生が参加したことがありますが、今のところそれ以上の協力関係はありません。ここに関してはまだまだ調整が必要かなと思っております。一方、衛星のほうに関しましては、教育レベルとして言えば、我々が使っているものはそれほど高度なものは使っていなくて普通の小さな電子機器から始めていますので、ここのところは様子を見ながら徐々にやっていこうと考えています。それから営業部分のプロジェクト、学生に対してではなく社会人のキャパシティービルディングのための実用衛星のtechnology transferの部分に関して申し上げますと、こちらは本当の衛星技術になりますので、ここに関しては該非判定と言って、それぞれの技術を輸出していいものかどうかということについて厳密に審査を受けながら進めるということです。そのことは、ビジネスモデルにも関係するのですが、私は、宇宙関係のビジネスは六つのタイプがあると思っていまして、1番目と2番目は放送衛星などの静止衛星のビジネスで、衛星を売るビジネスとそれを使うビジネスです。ここは、現在のところ唯一成立しているビジネスだと思いますが、世界中でし烈な競争をしています。この部分に関しては、technology transferはかなり難しくて、現在のところ日本は250機くらいある世界のビジネス衛星のうちの1機しかシェアをとっていない状況ですので、世界中を競争相手としている日本としては、technology transferはできませんし、ここは日本ががんばるところだと思います。ただし、海外に衛星を売るという部分に関して、衛星以外のところでの協力ということで、教育協力というツールとして、いわゆるパッケージの一環として輸出するということはあると思います。3番目、4番目というのは新しいインフラを作るとか、衛星の部品を売るというビジネスです。1番目と2番目が民間主導の中で政府がサポートをするわけですが、3番目と4番目は、まだまだ政府ですとかJAXAなどの国を代表する機関の協力が必要な部分で、具体的に言えば、準天頂衛星のような新しいインフラを日本の技術で作っていきましょうということです。これは新幹線や地デジのビジネスのように、日本の高い技術を使ってそういうものを作って、日本で試してそれを売るという形ですので、ここには官の力がいるわけです。また、これまで日本が開発してきた様々なセンサーなどは、コンポーネントとして海外に売れるわけですけれども、これも日本の官なりJAXAなりが中心になって進めるべきものと思います。ここのところについても、当面technology transferはないと思います。日本の技術的優位性を世界に売らなくてはいけないわけですので、そこはある意味、ブラックボックスではないですけれども売っていくわけです。ただし、日本のコンポーネントを使ってくれる国を増やすという努力はしないといけないと思います。5番目のビジネスは地球観測、大型衛星ではなくて小型衛星の部分と考えています。実は、今、地球観測はビジネスになっていないわけです。大都市圏における観測データは売れるのですが、それ以外のデータは実は誰も買ってくれなくて、買うというか使ってくれるところは、各国の政府であったり国連だったりするわけです。そのインフラ用に日本とかアメリカとかヨーロッパが費用を負担しているという構造になっています。この負担はかなりなものになっていますので、先進国は自分たちだけが費用負担することはやめたいと思っているわけです。これに対して、日本は今、UNIFORMというアプローチをしていまして、ブラジルとかインドネシアとかトルコといった新興国に対して、ある程度のtechnologyはtransferしてしまおうと考えています。その代わりに、大きな衛星ではなくて、小さな衛星をそれぞれの国が作ってどんどん打ち上げて、そのデータを一緒に使っていきましょう、データを共有化しましょうねという約束のもとに、ある程度のtechnology transferをしましょうという作戦です。先ほどのコンポーネントを売るというビジネスのつながりで言いますと、こうすることによって地球観測の費用を日本や先進国だけではなく世界中が負担すると同時に、世界中で産業として進んでいくわけです。しかも、たくさんの衛星が上がることで時間分解能も良くなっていきますので、データ利用としてもどんどん使いやすくなって、リアルタイム観測もできるのではないかと思います。そういう意味で、ここの部分に関してはどこまでやるかを判断しながら、technology transferするのだと思います。6番目は打上げビジネスですが、これはなかなか難しいところでして、ビジネスというより安全保障の問題も考えながらやることかもしれません。そういう意味で、私がここで言っているtechnologyはtransferですとか教育の協力というのは、5番目の部分をターゲットにしながら考えているところになります。

【横山臨時委員】  2点目に関しては、また別途伺いたいと思います。1点目に関してコメントだけですが、私が申し上げたのは技術流出の心配ではなくて、子供たちが教育の場で国際交流をするときに、その背景にいろんなイデオロギーがあると、そのコミュニケーション自体の教育効果がどういうものになるか、恐らく未知数のところがあるのではないかと思います。そうしたところの設計までも今後は含めていただけると、多くの方が安心して参加できるかなという印象を持ちました。

【秋山専門委員】  なかなか理工系だけだとその辺は難しいので、おっしゃるとおり、まずは文理融合をやらないといけないと思いますし、もう一つは、そういうことを恐れずにその頃から交流するということも重要ではないかと思います。おっしゃるとおり、今後進めたいと思います。

【井上主査】  ほかにいかがでしょうか。

【永田専門委員】  今の1点目に関する話で、御指摘の趣旨からそれるかもしれませんが、宇宙基本計画の中の32ページから「宇宙を活用した外交・安全保障政策の強化」というところにいろいろと記述がありますが、結局のところ宇宙技術を使った教育での海外貢献というものは安全保障の一環としてやるという背景がかなりあると思います。その辺は、過去の活動でも意識されているところで、例えば19ページの「世界に広がる缶サット教育」で、今どういうところに拠点ができているのを見ると、日本のそばで言いますとインドネシアをはじめとするASEAN(東南アジア諸国連合)諸国ですとかモンゴルですとか、つい最近安部総理が歴訪されたところと重なるところがあるということは決して偶然ではありませんで、そういうところもしっかりと意識されていると私自信は認識しております。

【久保田専門委員】  基本的な質問ですけれども、宇宙教育というと二つ意味があると思っていまして、一つは宇宙を題材にして人材を教育するという話、もう一つは将来宇宙に関わる研究者・技術者の育成という、二つの意味があると思いますが、今回の問題点の指摘としては前者と思ってよろしいのでしょうか。それとも両方でしょうか。

【秋山専門委員】  9ページになりますが、宇宙をテーマにした教育は片かっこのAに相当する部分だと考えています。そこの対象としましては小学生・中学生が基本で、一部高校生も入ってくるとは思いますが、今日お話したいと考えていたことは、むしろ宇宙をどんどん使っていくための宇宙に関する技術の教育と、もう一つはプロジェクトマネージメントに関する教育です。チームで学ぶと申し上げたところは、宇宙にも非常に大きく関係してくると思います。実際のところ、高校生レベルで参加する生徒のほとんどは宇宙関係には行きませんし、文系の生徒も多いと思いますが、彼らが興味を示すことは、どうやってチームでものを回すのかということで、そういう意味では前者と後者が入り混じった話になっています。高校生・大学生に関しては、そういったところをターゲットにやっていますが、大学生も院生になると、だんだんと宇宙の技術に傾注していくという考え方でおります。

【井上主査】  私のコメントを少しだけ申し上げると、今、秋山委員がおっしゃったことは非常に大事な点だと思います。今、高校生・大学生に行われている教育と、最初に藤井委員がおっしゃったように、もっと規模の大きなものをやっている宇宙科学の現場がある意味できゅうきゅうとしているという間には、久保田委員が2番目に言われた「宇宙に関わる人材の教育」という部分が欠けてきていることがあると思います。研究者が、自分たちだけでやるというレベルではなくなってきていますので、大学まで教育してきた部分の更にその上に重ねて、我々が宇宙科学と言っているプロジェクトの現場を担ってくれるEngineerであるとか、Technicianという人たちを教育していくことをしっかり考え、大学で学んできた次のキャリアパスというか、流れとしてその人材を活(い)かしていくようなものを作っていくということは、非常に大事なテーマになるのだろうと思います。そこが今はないのだと思います。下からいろいろとできてきたものの上に、今日、最初に指摘されたようなところにつながるものとして、どういうものを用意していったらいいのかということを、是非この場で議論できればいいかと思います。少しコメントし過ぎたかもしれません。

【瀧澤臨時委員】  今、井上主査が言われたことはトップクラスの専門的な教育をどうするかということだと思いますが、私がお伺いしたいと思ったことは、むしろ最初の部分です。小学校・中学校レベルに対して全国津々浦々でやられているということで、秋山委員は、かなり精力的にいろいろなことをされていると思うのですが、今、抱えていらっしゃる問題については、秋山委員のような活動をする主体がもっと必要なのか、あるいは予算的な問題なのか、あるいは予算があればそういう受皿になるようなところはどんどん作られていく素地(そじ)はあるのか、そういう段階はどのように理解すればいいのでしょうか。

【秋山専門委員】  津々浦々にいっぱいあるものについては、国が全体としてまとまるべき段階かなと思っているのですが、小学生・中学生に関しては、JAXAが宇宙教育指導セミナーとして宇宙教育指導者を作っています。そこで、我々は何に困っているかと言うと、高校生、それから大学生も同様ですが教える人がいないということです。ここが非常に大きな問題になっていまして、現在は、一部の大学の先生たちが教えているのですが、大学の先生にとって、実は教育というのは大きな比重になっていないわけです。これは本来、なるべきだとは思いますが、今は研究がメインになっています。そう意味で、高校生のような若い人を教える人をどう確保するかが、非常に大きな問題になっていますので、何が足りないかと言われれば、教える人が足りないという回答になります。もちろん予算がつけば、教える人を確保できるのでしょうが、次は、その人たちを束ねる組織が必要になります。今のところ、小中学生に関してはJAXAの宇宙教育センターの宇宙教育リーダーという考え方が、かなり成功を収めていますので、実は高校生に関しても、特に缶サットに関しては宇宙教育リーダーの仕組みに乗っかろうとしていて、全国津々浦々に缶サットのやり方・考え方を教える人を配置しようと思っています。ただ、JAXAの宇宙教育センターは、高校生までを対象とはしているのですが、本当に高校生あるいは大学生まで踏み込むかについては、少し悩みどころで、これからどうするかというところです。もう一つ大きな問題点は、場所の確保です。先ほど申し上げたように、実験ができる場所は日本に何か所かあるわけですけれども、端的に言うと北大と秋田大と和歌山大の三つが多大な犠牲を払いながら維持しているわけでして、サポートは何もない状態です。こういう拠点を維持するということに関しては、全国共同利用機関の一環として、例えば宇宙研の職員として配置いただいてもいいのですが、そういうことが必要ではないかと思っています。例えば、一番易しいのは秋田の能代で、あそこにはJAXAの施設があって、そのすぐ隣でやっています。しかし、そのJAXAの施設には教育職が配置されていませんので、もし配置していただけると、例えば日本全国の学生が集まるイベントも運営できると思います。また、今、利用機会が増えてきている場所は、和歌山の加太と伊豆大島で、伊豆大島と加太は和歌山大が面倒をみていますが、幾つかの大学にそういう実験をちゃんと回すような人を配置するということが多分重要で、その一つの突破口が先ほども申し上げた「教育系の共同利用拠点」の予算ではないかと思っています。これは教育局の予算ではないかと思うのですが、そこに宇宙のほうからも応募させてくださいということが認められると、こういった拠点も認められて人がつくのではないかと思います。つまり、隅々で教える現場レベルの教育者と拠点を守る人、この二つが重要だと思います。

【井上主査】  これも、最初の部分とつながる部分ということで申し上げますと、秋山委員がおっしゃっているような「失敗が許される場所」については、失敗の定義であるとか、どの程度まで許されるとかいう部分に大変難しい問題がありますが、少なくとも今の宇宙研の置かれている立場、今のJAXAの中の考え方には、そこが入らない部分があります。これも重要な点で、そのような場所を用意していくということも、恐らくは同じ考え方で最初の部分につながるところがあると思いますので、整理が難しい問題かもしれませんが、考えていくべき点があると思います。

【秋山専門委員】  今の話ですが、実際にやってみると分かりますが、我々の教育拠点でやるときの実験計画書はこれだけの(注:薄い)厚さでいいわけです。しかし、JAXAの施設を使うとなるとこれだけの(注:厚い)厚さになるわけですよ。ここが、教育という観点からの問題点だと思います。昔の宇宙研は、多分これくらい(注:中程度)の厚さだったと思いますが、このような3段階が必要だなと思います。

【井上主査】  おっしゃるとおりだという気がします。よろしければ、予定を越えておりますので、最後の磯部委員からのプレゼンに移りたいと思います。磯部委員は、京都大学の宇宙総合学研究ユニットということで、まさに学際部分の新しい開拓、若しくは人材育成に取り組まれておられますので、そのあたりをベースに御意見をいただければと思います。

【磯部専門委員】  京都大学学際融合教育研究推進センター宇宙総合学研究ユニットという覚えにくい名前の組織ではありますが、そちらに所属している磯部と申します。もともと私のバックグラウンドは理学、天文宇宙物理でして、常田委員とも近いのですが、主に太陽物理の研究をしておりました。後ほど説明しますけれども、京大に宇宙総合学研究ユニットが生まれて、そこは理学・工学・人文系まで含めて総合的に宇宙研究をやっていこうということで5年くらい前にできた組織ですが、そこの専任教員としてここ数年、宇宙をキーワードに学際的な研究を推進するということをしております。その立場から今日はお話させていただきたいと思います。
  1枚めくっていただきまして、最初に宇宙科学とはどこまでが範囲かということで川合委員からも御質問があったと思いますが、狭義には宇宙研でやっている理学・工学ですが、我々のような大学の研究者や一般の人からすれば必ずしもそうではなくて、宇宙環境を利用した研究だと思います。JAXAで言いますと、ISAS以外にもISS(国際宇宙ステーション)やGOSAT(温室効果ガス観測技術衛星)のような地球観測衛星がありまして、GOSATは先端的な目的もありつつやっているわけですが、地球の大気の観測をしているという点では一種の地球科学、サイエンスとしてやっているわけでして、大学の先生は純粋に学術研究としてあのデータを使って研究をしているわけです。そうすると、それは地球科学であって宇宙ではないと言われるかもしれませんが、地球科学での大気の観測は宇宙研でやっている惑星大気の観測にも関係しますので、そこに明確な線を引く意味は、少なくともJAXAの外から見ると全くないと認識しております。そのような中で、日本の宇宙科学は今まで高い評価を得てきていて、宇宙基本計画でも二つの側面を書いておりますけれども、一つには重要だから「一定規模の資源を充当」という言い方をされているわけですが、これは、当面増えることはないということを言っているのだと思います。一方、課題と書きましたけれども、何人かの方がおっしゃいましたけれども、ミッションがどんどん大型化してきている中で予算が一定ですと、ミッションの間隔が増大するわけで、そうするとサイエンスの成果もさることながら、人材育成などにもだんだんと影響してきますし、更にもう一つ、新しい分野が入りにくくなるということがあると思います。一方、宇宙科学の人にとっては、特に宇宙基本計画の政策のほうから「基礎的な研究開発だけでなく、社会的課題の解決や宇宙利用の拡大につながる成果が求められている」ということで、宇宙科学は宇宙開発利用の全ての基本となるものではあるわけですが、それが基本だから純粋に学術研究だけやっていればいいということが、世間では通らないということになってきていると思います。
  2ページですが、大学の立場から「宇宙科学の発展のために」ということで、我々の提言は、二つの方向への発展を図るべきということで、宇宙科学はウイングを広げるべきだと思っています。ウイングを広げる方向は二つあって、一つは課題解決型の研究で、より実社会に広がる研究を行っていくという方向と、もう一つは境界領域、先ほど藤井委員のほうから「足首だけ宇宙につかった人」という表現がありましたけれども、そういう人たちをどんどん増やして、もっと宇宙を使ってもらって宇宙科学の幅を広げることが大事だと思います。そのためには、大学が非常に大きな力を持っていると思っていまして、もちろん大学には宇宙の研究者もおりますが、宇宙ではない研究者もたくさんおります。半分だけ宇宙、足首だけ宇宙という人もいっぱいいるわけで、そういう総合力を使って学際的な研究と、それから研究だけではなくて人材育成をやることが大事だと思います。特に二つ目のところ、小中学生・高校生の教育ということで秋山先生からお話がありましたけれども、JAXAの宇宙教育センターで定められている対象は小中高までで、高校生にはそれほど力を入れていないのが現状ということでしたけれども、少なくとも組織的には高校生までが入っていて、一方で大学院教育も行われているわけですが、学部教育がJAXAのスコープの中には入っていないと私は認識しています。これは非常に重要で、先ほど主査から、下から積み上げていったものとトップの間という話がありましたけれども、学部生はまさにそこに当たると思っています。そこをやるのは恐らく大学だと思うわけですが、ここが非常に重要なところだと思っています。重要なことは、先ほどウイングを広げるべきだと申しましたが、ウイングを広げることで他分野に取られるのではなくて、広げることで全体のパイを大きくしていわゆる一番トップの宇宙科学研究を発展させるという方向性だと思っています。
  3ページですが、「課題解決型研究への発展」ということで、私自身が良く理解している太陽物理学を例に話をさせていただきます。太陽物理は、昔も今も、天文学の一分野で純粋学術なわけです。私も、どなたかの役に立つということで太陽研究を始めたわけではないのですが、やり始めると、太陽の活動が地球気候に影響するとか、宇宙天気予報と呼ばれるものですが宇宙・地上インフラの障害や宇宙飛行士の被ばくの問題があるということが分かってきて、先般定められた宇宙基本計画の中でも、宇宙天気予報という項目は学術研究ではなく、宇宙状況監視(Space Situational Awareness)の項目に入っています。もちろん、そういう流れは太陽物理の研究者も認識しておりまして、天文学の一部としてやりながらも、徐々に社会実装につなぐ応用科学的な研究、例えば宇宙天気予報のアルゴリズムをどう確立するのかですとか、工学的に言えば、放射線に強い衛星を開発していくという段階にあるわけです。しかし、宇宙天気予報は総務省のNICT(独立行政法人情報通信研究機構)が業務的にやってはいるのですが、ユーザーとして使っている方々はそんなに多くないとNICTの方はおっしゃっています。そもそも社会的ニーズがどれくらいあるのかとか、コストをかけてどこまで精度を向上させるべきなのかというレベルの話、あるいは事業化の検討等、社会実装に向けた研究をこれからやらないといけない段階に来ていると思います。このように、宇宙科学を区切るのではなくて、一体となって純粋科学から社会実装へ向けた研究を推進していくべきだと思います。今、太陽物理は「社会実装」のほうに裾野を広げようとしているということだと思いますので、これを一つの例として、課題解決型に発展させていくことでトップサイエンスを目指すということです。
  4ページ、次は学際的研究のほうにウイングを広げるということについてですが、冒頭申しましたように宇宙科学をどう定義するかは別としまして、宇宙に関連した学術研究は非常に広くて、京都大学宇宙総合学研究ユニットがやっているものについて、横軸に理工学的なものから文系的なもの、縦軸にアカデミックなものから実用的なものということで並べました。アカデミックなものとは、千年後とか1万年後に利益になるといいものと言い換えても良いと思いますが、そういうものまで幅広い分野にあるわけで、しかも互いに重なりあっているわけです。この中の特定のトピックだけを宇宙科学と捉えるのではなくて、少なくとも大学としては、学術研究を発展させるというのが大学の一つのポジションですので、そういう意味で宇宙というのは幅広い範囲の研究に様々に発展する余地がある分野であるから、大学としても宇宙の学際的な研究をプッシュするべきだというポジションで捉えていると理解しております。
  5ページは、京都大学の取組の紹介ですけれども、2008年に宇宙総合学研究ユニットができました。ユニットとは、いわゆる何とか研究科とか何とか研究所の間をまたぐような形で、部局横断型で研究者が参加するような組織をユニットと呼ぶという京大の用語です。目的は、「宇宙理工学の基礎研究の推進と、生命、エネルギー、環境などの関連分野、人文社会系まで含む融合領域の学問の開拓を目的とする」ということで、現在13部局70人の併任教員が在籍しております。赤で書いているものが、いわゆる文系の研究科や研究所で、青で書いているものがエネルギーや防災という周辺領域、人間・環境学というのはもともとから文理融合的なところでちょっと区分けが難しいわけですけれども、また先ほど横山委員から秋山委員への御質問で、アジアとかに出ていくときのイデオロギーについての御質問があったと思いますが、京大にはアジア・アフリカ研究研究所がありまして、これはtypo(誤記)ではありませんで、ここは地域研究としてフィールドワークをやっているところです。彼らとしても、衛星の地球観測データを利用したいという部分があるのですが、もう一方で、京大でも天文の分野でペルーですとかアルジェリアで地上望遠鏡を展開して、我々のトップサイエンスと現地のサイエンスのボトムアップと人材育成を同時にやろうというプロジェクトをやっていまして、そういうことをやるときに地域に入っていくときに、こういう地域研究者たちはそれぞれの地域に人材コネクションと信頼関係を築いているわけですので、そういう人たちと組んでいくことで、何も知らない我々が単独で行く場合に比べて、横山委員が御指摘されたような問題は軽減されやすいのではないかと思っておりまして、そういう点でも、アジア・アフリカ研究研究所の方々とこれから連携を深めようとしているところです。また、京大の宇宙拠点は、JAXA連携の窓口としてもやっていまして、2010年に宇宙研から共同研究ということで御支援いただきまして、「宇宙環境の総合理解と、人類生存圏としての宇宙環境の利用に関する研究」、これは理学・工学の総合的な研究というものが始まっています。それから、去年ですが、民間の会社との共同研究が始まりました。株式会社ブロードバンドタワーは、いわゆるビッグデータ解析に強いIT系の会社なのですが、太陽物理も含めて最近の宇宙のデータはどんどん膨大になってきていて、取ったデータのほとんどは死蔵している状況になってきていますので、この巨大なデータをいかにうまく活用するか、サイエンスだけでなく教育ですとか社会問題、防災問題に活用するということで、このようなIT系の会社と組んでこういう研究をやろうとしています。
  6ページと7ページでは、どういう研究をやっているかについて紹介したいと思います。また太陽を中心とした例になりますが、学際的な研究ということで、例えば右上は、太陽のような、太陽にそっくりの恒星を観測してみると、我々が知っている太陽フレアの千倍とか1万倍というような猛烈なフレアが起きていて、千年に1回くらいは我々の太陽でも起きるかもしれないという研究結果が出ていまして、これは非常に重要なことだと思います。しかも、面白いことには誰がやったかと言うと、京大の学部生がこれをやりました。京大の天文台長の柴田先生が、学部1回生の授業で「君たち、どうせ暇でしょう。暇ならば研究しませんか」と誘って、それから自主ゼミで1年間勉強して2年目でデータ解析してすごい発見をして、学部生の名前がずらりと並ぶNATURE論文までもっていくとか、彼らは学部生であるというのにすばる望遠鏡のPI(主任研究員)として観測時間を取ってくるというように、全く単位とは関係なしに面白いユニークな研究をやってきてくれています。これは天文とか、より基礎物理の分野ですけれども、一方、そのような巨大なフレアが起きて地球にやってきたらどうなるかということで、それを地球物理の方々と研究している例が左下です。いわゆる対流圏、下のほうの大気を研究している方に、もし太陽が今の2倍明るくなったらどうなるか計算してくださいとお願いしたところ、うちの計算コードはそんなパラメータを考えたことはないとおっしゃって、そこを何とか計算していただいたところ、とんでもないことになりますという話です。それから、右下のほうは、1989年に太陽で起きた紫外線フレアで大きな被害が出た原発の被害の実例です。そういった防災までを含めた研究をやろうとしています。
  次のページは、人文系の研究です。衛星データを使って人類学的な研究をやるとか、あるいは倫理学的研究、これは一昨日名古屋の応用哲学会で「宇宙倫理を考える」という、初めて宇宙で哲学を考えるセッションがありまして、私も発表してきました。人類学会でも6月8日と9日に、慶応大学で宇宙人類学のセッションが開かれます。人類学のほうは神戸大学の先生方がプッシュしてくださっているのですが、もともとは京大の宇宙ユニットのアクティビティから始まっていまして、5年前にスタートしたところから学会でセッションができて、一つのジャンル的なものとして始まりつつあるというところまでもってくることができたと思っております。実は、宇宙ユニットは研究組織ですので、学生をとることができません。しかし、宇宙ユニットでこういう研究をやっていると聞きつけた文系の学生ですとか、農学部の学生ですとか、あるいは他大学の学生といった人たちが、自分も宇宙をやりたいと相談に来ています。正式に学生を受け入れることはできませんので、自主ゼミでもいいから勉強会をしようかと、そんなレベルで今、意欲のある学生たちを相手している状況です。ですから、逆に言うと、非常に大きなポテンシャルがあるはずなのに、それを拾いそこねている状態だと思っておりまして、これを何とかきちんと単位や学位が出るような教育プログラムにもっていくことが重要であろうと思っています。
  8ページですが、これは久保田先生の御質問にもありましたが、我々は宇宙を「活用した」教育もやっていまして、宇宙の特性である、最先端の科学技術であると同時に誰でも興味を持つことができる存在という特徴をうまくつかっています。これには私も入っていますけれども、宇宙研究者というよりは京大のIPS細胞研究所の科学コミュニケーショングループですとか総合博物館の先生方と一緒に、宇宙を活用した教育プログラムを作って、ワークショップ形式で行っています。現在は京都の中だけでローカルに展開しているのですが、京都の中と言っても教育委員会と組んでやっていますので、我々自身がやるだけではなく、小中高の先生の教育研修で使っていただいて、更に実際の授業で使っていただくという形でやると、回数が膨大に増えるわけです。先ほど秋山委員から、教える人がいないという御意見がありましたが、このように教育研修に入っていくと、一気に教える人がケタ違いに増えますので、そういうアプローチが成功している例であると思っています。
  9ページ、我々の将来計画ですが、今は宇宙ユニットという形で主に宇宙研からサポートを頂きながらやっていますが、一応今年度で終わりということですが、更に発展させて、特に人材育成まで行う組織にしようということで、概算要求なども含めて様々な資金調達をしようと画策しているところです。そういうことを通して、この資料の中で申し上げた学際的な研究を、修士・博士論文のテーマとしてやっていくということを実現したいと思っています。強調したいことは、下に書いていますが、人材育成するためには具体的でチャレンジングな研究課題が不可欠だと思っていまして、トップレベルの研究でなおかつ誰もやっていないようなことをできる研究者を、宇宙だけではなくいろいろな分野の間をまたげるような人材を、研究者としてのトップレベルの人材を育成するような体制を何とかしようと思っています。
  10ページと11ページは、そういうことをやるときにどういうサポートが必要かということで、これは一つの例として京大のユニット長をされている谷森先生から頂いた資料ですが、ポイントは、理論的な研究や人文学的な研究は小さい組織でできるのですが、工学的ものづくりとなるとどんどん大きくなってしまうということで、これは非常に重要なところです。大学でこのような研究を行う場合には、科研費レベルでやれるミッションをどんどんやっていくことが、多様なサイエンスをやると言う意味でも人材育成をやるという意味でも重要であるということです。谷森先生は、気球を使った比較的手軽な、数億円から10億円程度でできるミッションを考えておられるわけですけれども、そういう小型で比較的手軽なミッション、気球であるとかロケットであるとかというものを、もう少し大学が使いやすくしていただけると、我々が申し上げたような効果的な研究と人材育成が非常にやりやすくなるということで、この資料を谷森先生から頂きました。
  ということで、最後のページに最初に申し上げたことと同じことを、改めて書かせていただいています。

【井上主査】  ありがとうございます。

【吉田専門委員】  ここまで皆さんが宇宙科学という言葉を使っていますが、この言葉の定義をまずはっきりさせないといけないなと思います。恐らく宇宙科学研究所が考えている宇宙科学というのは、宇宙を利用してできることとか宇宙へ行くこととかというように、我々の意識の中では、宇宙へ行かなくてはいけないことが本質的であるような科学がターゲットになっていたと思います。そういう面では、天文学とか宇宙物理学と書いてしまうとぼんやりとしてしまうわけでして、その中でも宇宙へ行かなくてはならないものというものがあって、そういう分野が宇宙科学であったと私は理解しています。それに対して、今ここで話されている宇宙科学は、宇宙に関連した科学であればいいという話になっていて、宇宙科学のミッションが非常にぼやけてしまっているのではないかという危惧があります。今のお話の中で、「学際的な」とか、「宇宙科学の裾野を下げて」という言葉が出てくるわけですけれども、少なくとも宇宙研で学際的な宇宙科学を担当している私自身としては、宇宙へ行くことが本質的であって必然性があるという考え方を整理して議論をしていただきたいと思います。さもないと、宇宙科学研究所が持っている役割やトップサイエンスセンターの在り方を考える際の宇宙科学と、一般的に言われている宇宙科学が混同されてしまうように感じました。

【磯部専門委員】  おっしゃるとおりで、こういうところで議論するときはちゃんと整理しないといけないと思いますが、学術研究としてはそこを区切る必要性は全くなくて、むしろぼやかして広げていたほうが発展すると思います。そこが難しいところですが、conventionalな宇宙科学と言われる太陽とかX線とかというものと天文学は、さすがに切れないと思います。それを離れたサイエンスと思っている人はいないと思いますので、含めて議論しなくてはいけないとなると、区切りはどこまでとなってしまうわけです。

【高薮専門委員】  私は地球観測の分野、ある意味で外部から来ておりますので、どこで質問しようかと思っていたのですが、磯部委員が踏み込んでくださったので、少し全般的なことを藤井委員と文科省に伺いたいと思います。まず、この会議はISASを中心とした宇宙科学を議論すると定義されたわけですが、藤井委員は、宇宙理学と工学を推進することによって宇宙開発利用を先導するとおっしゃいました。また、前もって頂いております推進方策の文章には、宇宙を「知る」、「支える」、「使う」という三つの項目があって、宇宙を「知る」と「支える」に取り組むことによって宇宙を「使う」と書かれていて、それは藤井委員がおっしゃったことと同じことになると思います。しかし、宇宙を「使う」というところには地球観測が入っていまして、宇宙理学と工学、あるいはここに書かれている宇宙を「知る」と「支える」ということを発展させて、例えば地球観測につながるかというと、必ずしもそういう方向にはなっていないように思います。ですから、藤井委員のおっしゃる「宇宙開発利用を先導する」という分野として、どこまでを含むと考えていらっしゃるのか、これは文科省のほうにも同じ質問をしたいと思います。つまり、この小委員会は、その裾野についてどこまで議論することを考えていらっしゃるのか。ここの一部には地球観測が書かれているのですが、必ずしもつながっていないと思いますので、そこは切り分けるものなのか、ちょっとでも関わっていればいいというものなのか、そこが分からないところがありますので方針を教えていただきたいと思います。これは磯部先生のおっしゃっていたこととつながることだと思います。それからもう一つ、秋山委員が六つのビジネスタイプを挙げられたときに、地球観測に関しては先進国が費用を負担しすぎているのでたくさんの国に分担してもらう形が良いというようなことをおっしゃったのですが、地球観測の分野においても、全ての技術が発展途上国で分担してもらえるというものでは全くありません。やはり地球観測の科学的発展や科学的貢献を進めるのは重要で、それについての取扱いを考慮していただく必要があります。そのあたりについてコメントいただけましたらお願いします。

【柳課長】  まず、文部科学省としてこの小委員会の射程について申し上げると、この小委員会に参加いただいている皆さまの御意見と御判断もあるとは思いますが、確かにISASをどうするかという議論が一つの中心ではございますが、議論としてはそこに限定するわけではなく、磯部委員がおっしゃったような範囲で幅広く議論していただき、宇宙科学に関わるところをどう進めていくのか、その中でISASはどういうことをやれば良いのかということでお願いしたいと考えております。その上で、ISASから漏れ落ちたところはどうするのかについては、例えば文科省が直接大学と関係を作って、大学にその種の支援経費を直接支出するといったような議論もあろうかと思います。先ほどの教育の議論について申し上げますと、我々がこの設置ペーパーを書くときに悩んだことは、宇宙科学の中に人材育成が全部入るのかと言うと、実はそうではないわけでして、では、どう書けば良いのかということでした。先ほど秋山委員がおっしゃったように、原子力とか宇宙は、一般社会からは特殊な分野のように扱われていますので、より一般化した分野を扱っているJSTは、文科省の所管の法人ではありますけれども、そこに秋山委員がやられているような話で手を挙げても、「それはちょっと。」と言われる可能性があって、「それはJAXAさんの支援で何かやっているのではないですか。」というような扱いを受けやすいように思います。しかし、そういうところが弱いとすると、我々としては何か取り組んでいくべきだと思いますし、それをここで御議論いただいて、ISASがやるべきであればISASだし、ISASがやらないのであれば文科省としてどういうやり方をすればいいのかということを御議論いただければいいと思っています。従いまして、この小委員会が自らたがをはめて、これ以上は議論してはいけないということではないと思っています。
  もう一点の地球観測の話ですが、我々が推進方策に書いた宇宙を「知る」、「支える」、「使う」のうち、宇宙を「使う」ところに地球観測が入っている理由ですが、地球観測分野の衛星利用についてこれまでのことを振り返ると、JAXAが作ってきた衛星は、実は研究開発衛星という位置付けでして、同じものを定常的に打ち上げるというものではありませんでした。確かに、過去、MOS-1(海洋観測衛星「もも1号」)と、MOS-1b(海洋観測衛星「もも1号b」)というものもありましたが、あれはフライトモデルとそのエンジニアリングモデルがあったから使ったというだけで、基本的にはJAXAの研究開発衛星というのは1個打ち上げるだけで、その後に全く同じものを打ち上げるということはないわけです。しかし、地球観測の分野においては、同じ衛星を定常的に上げることによって、継続的に観測する意義は重要であるという御意見ですので、そういう要請になったものについては、それは純粋な宇宙の利用ではないかと考えています。もちろん、JAXAとしては新しいニーズがあった場合に、例えばこういうセンサーを開発して欲しいという話があれば、それを技術基盤として支えるわけでして、地球観測については、この両方があるのではないかと思っています。従いまして、推進方策の宇宙を「使う」のところに書いていることは、地球観測についてそれぞれの行政官庁としても行政目的を持っているわけでして、例えば経産省であれば鉱物資源が行政事務の範囲に入っていますが、鉱物を探すために宇宙を使うという行政ニーズがありますし、我々文科省全体で申しますと、科学技術の向上ということが行政目的であるわけですけれども、この観点から地球観測をやる人たちにデータを提供し続けるという行政ニーズがございます。そうしますと、文科省としては、それは宇宙開発としてやるものではなくて、先ほど申し上げたもう一つの視点からの取組だと考えていまして、具体的には宇宙開発利用課ではなくて環境エネルギー課という部局が主に面倒を見ています。つまり、我々宇宙開発利用課としましては、宇宙という言葉が付けば全部我々の課が担当するということではなくて、そういう部局とも連携して、新しい技術開発をやるから衛星を上げるという以外の部分、例えば地球観測の観点から見たときの観測データの継続性といったところにも取り組むべきだというふうに、そこの宇宙を「使う」という部分を捉えているところです。

【井上主査】  そろそろお約束の時間になろうとしていますが、今、大事な議論が行われていると思いますので、少しだけ時間を延長して、このまま議論を進めさせていただきたいと思います。
  私から一言。この絵について、まず整理したほうがいいと思うことは、工学の役割ではないかと思います。この絵で言うと、上のほうに縦に書いてあるものが、宇宙空間のインフラなり技術を使って、それぞれのある種の目的に向かって動いていく「宇宙を使う」という部分ですが、それに対して、それを横糸的に支える宇宙空間のインフラなり技術、あるいはそれを支えていく人材といったものが下のほうにベースとしてあります。そういう部分が「宇宙を支える」というところで、それを作っていくことが、文科省の推進方策では非常に重要であると言われている部分です。いろいろな縦のものごとをやっていくときに、学術的な理解がベースを作っていくような部分で、技術的基盤とかインフラと言うときにそこを先導するのは宇宙工学ですので、それが、宇宙科学が横に伸びて、そこでの重要な役割を果たすべきだというイメージだと思います。藤井委員もおっしゃっているように、工学が宇宙空間を利用する技術的な新しい可能性を切り開いていって、いろいろなものが新しく展開していくわけですけれども、新しい可能性を展開するときには、「その結果は、何に使われるのですか。」ということを、工学はいつも聞かれます。そのときに、いろいろな可能性が、地球観測もありますし、磯部委員がおっしゃったいろいろな可能性もありますので、工学はそのように使われていくということで、広く眺めておくということが宇宙科学にとっては重要なことだと思います。

【藤井臨時委員】  井上主査が宇宙研の本部長のときには、私たちとしては、宇宙開発利用を先導する宇宙科学、あるいは支える宇宙科学と言ったときには、工学のイメージが大変強かったと思います。それにプラスして、観測機器ですとか、それも一種の工学と言えますけれども、そういうような新たなものを考案して、非常に小さな観測機器とか軽量な観測機器を開発して、地球観測やほかのものに提示してきたわけです。それから、宇宙研にはロケットもありましたので、例えば新たなハイブリッドや再使用といったロケットなども、JAXA全体、日本の宇宙開発利用全体をけん引するものとしてありました。そういうものが先ほど申し上げた宇宙科学の役割だと思います。それから地球観測については、JAXAができたときに、地球観測を宇宙科学に入れるべきかどうかという議論をかなりしたのですが、なかなかうまくいきませんでした。私は専門ではありませんけれども、地球科学と惑星科学は、同じ大気を持っているという点、大気惑星という意味では同じでしょうから、そこを明確に区別することはなかなか難しくて、そこに踏み込むと宇宙科学の枠はどこだという議論になってしまいますので、余りこだわらずに、地球観測も含めて、全体として良くするにはどうすればいいのかという議論をできれば良いと思います。

【井上主査】  また少しだけ言わせていただくと、宇宙科学研究所では、先ほど吉田委員がおっしゃったように、宇宙空間を使っていかないと新しい成果が出せない部分に特化した学問分野がまずは先導的に行われていたわけでして、そのために人が来て、大きなプロジェクトを動かすには宇宙研に常駐していないといけませんから、そういう人たちが来ていたという意味で、宇宙研がドライブしないといけなかったわけです。一方、地球観測とか地球環境科学は、地上でやることと宇宙でやることがある割合で混ざっていて、あるパラメータについては宇宙空間でやったほうがいいし、あるものについては地球からやったほうがいいわけで、研究者にとっては、宇宙空間を使うことは研究の一部になるわけです。そういう部分の研究者が、宇宙空間を使うことに特化した格好で宇宙科学研究所に移ってきて、どっぷりと首までつかることは非常に難しいと思います。そこはやはり、広い観点での宇宙科学として、学問として宇宙空間を使っていく大事な部分ですので、そのやり方については新しく考えていくべきだと思います。そこは、今までの宇宙科学研究所では必ずしもうまく考えられてこなかったと思いますので、これを機会に、そこを是非考えていただきたいと思います。

【秋山専門委員】  先ほどのビジネスという観点での御意見について、少し言葉足らずでしたので補足いたします。おっしゃるように、地球観測についての高度な部分はまだまだ出せないと思います。これは、先ほどの4番目のセンサーの部分と、3番目のインフラの部分に関わると思っていまして、先ほどは新しいインフラの例として準天頂衛星だけを申し上げましたが、当然地球観測衛星もこの区分に入ります。この部分は、日本はかなり力を入れていかないといけないと思っています。一番分かりやすい例は可視カメラの映像でして、分解能が10m以下になると安全保障上の問題があると言われていますが、本当は1m以下とも言われていますので、グレーゾーンの5mくらいから以上の可視カメラの映像、地球観測ですとか付随するほかの映像についてはどんどん世界でインフラ代を共有負担して、データは一緒に使いましょうということです。そのためのデータプラットフォームの予算が、昨年、戦略室に組まれましたが、残念ながら余りそういうふうにはなっていませんので、まずはいろいろな国からの受皿になるデータプラットフォームが作られなければいけないと思います。具体例としては、トルコで、10大学が連合して衛星を上げたいという計画を立てたところ、こういう計画は衛星を作りたい人が作るわけですので、トルコ政府が何と言ったかと言うと、「上げるのはいいが、それは何に使うのか」と。そのとき、私はUNIFORMというプロジェクトをやっていて、いろいろな国のデータを入れた共通データベースを作るという提案をしていましたので、大学側は「自分たちは1機しか上げないけれども、日本が何機か上げてほかの国も入ってくるので、1機分のデータをあげると一緒にたくさんのデータが使える。」と説明すると、トルコ政府も了解しました。そういう枠組みを作ろうと考えていますし、産業化にもつながる部分だと思います。

【高薮専門委員】  それぞれクリアにしていただいてありがとうございました。宇宙開発利用という意味では、広い視点から、たま出しとしてはそれぞれで出せばいいという柳課長の御説明と、それから、全体としてここでの議論を狭めるわけではないということで承りました。ありがとうございます。

【川合臨時委員】  2時間ほど位置付けを聞かせていただいて、少し理解できたような気がします。まず、理化学研究所の理事をしている立場からこの組織を見ていると、羨ましいと思うところがあります。JAXAができたときには、ほかの独立行政法人に先んじて、省庁を越えて一つの組織の中に皆さんが入られて、特徴ある施策を推進する意思を具現化したのだと思っています。藤井委員からの、トップサイエンスセンターとして宇宙科学研究所を位置付けるためにどうするかという話は、まさに、トップサイエンスセンターとしての役割を担うことを機構の中で位置付けられている研究所ということだと思います。そうすると、どうしてそうなってないかというところが一つのポイントで、失礼なことかもしれませんが思ったことを申し上げますと、まず教育職である意味合いがどこにあるかなということが、話を聞いていて疑問に思いました。と言いますのは、宇宙科学は多くの大学に拠点があって、それぞれに教育と研究を実施しています。一方、機構にある宇宙科学研究所は、一大学に所属するのではないメリットを生かして、多くの大学に分散している宇宙科学の拠点をまとめ、かつそのポテンシャルを引き上げるような位置付けになれるように見えます。このような視点に立つと、トップサイエンスセンターとして何を中核に据えるかを、もし白地から考えることができるのであれば、いろいろな可能性があるのではないかなと思いました。日本全国の大学、若しくは世界中の大学をパートナーとした上で全体構想を考えることができるような立ち位置にあるということは、宇宙科学研究所の特別なメリットだと思いますので、是非理想的な研究所の在り方を検討いただきたい。教育という面では、研究を通じて、この分野の若手人材の育成をすることこそが、宇宙科学研究所の役割だと思います。理化学研究所では、ある種の戦略研究センターを設立するときには、コミュニティから熱烈な要望があり、最終的には内閣府なども含めて、国としてナショナルセンターのような位置付けをもった組織として認定されます。このようなセンターは研究分野を代表するもので、その運営を最終的に理化学研究所が担うという経緯を経ております。このような経緯で設置されたセンターの運営は難しく、突出した成果を求められます。したがって、大学などのコミュニティと意図的に差別化することが求められます。このような考え方を先鋭化させていくとコミュニティと切れてしまう傾向があり、ミレニアムプロジェクトとして発足した理研の戦略センターの多くは、10年ほど経(た)った今現在、研究コミュニティとの協力をとりつつ、先鋭化をするというところをどうするか、ということが大きな悩みになっています。宇宙科学研究所の場合、宇宙科学分野を統合した法人の中に置かれていて、しかも大学全体の共同利用という位置付けも有しています。先鋭化された我が国の宇宙科学を担える立場にあると言えます。JAXAという独立行政法人の中に、先鋭科学研究のどの部分を置くのかということを精査されると、かなり特徴ある宇宙開発利用のセンターになると思います。本当にコミュニティが支えて作っていくセンターにできると思います。ただし、固定した科学テーマを20年の長期にわたり継続し続ける組織には無理があるでしょう。国の大きな予算は科学技術基本計画に沿って設定された課題に対して配分されますので、長期にわたって一つの課題で予算を確保することは、難しいと思います。しかし、コミュニティ全体が本当に支えているセンターであれば、人員の流動化を図ることによって、ある種のCenter of Excellence的なテーマを常にそこに集めることも可能でしょう。そういう意味で羨ましさを持って藤井委員のお話を聞いていました。ただし、宇宙科学研究だけに特化して独立した課題を遂行するセンターとして機能するのは、長期戦略としては得策ではないと思います。むしろ、多くの大学が抱える科学テーマの中の一つの要素として位置付け直すと、宇宙科学分野はいろいろな課題を提案できそうな気がします。それは、新しい宇宙基本計画の中でも、位置付けられていそうな気がしますし、JAXAそのものが目指しているトップサイエンスセンターとの位置付けとも合うように思います。

【井上主査】  かなり基本的な問題を提起いただいたような気がします。

【常田専門委員】  川合委員のコメントは、非常に参考になります。宇宙研には、理学委員会・工学委員会というものがありまして、ワーキンググループもあります。例えば、X線天文学の研究者が世界の状況を考えて次のミッションとして何をしたらいいかという議論を、宇宙研の中の研究者と外の研究者が一緒にやっている、そういうワーキンググループが10個から15個と、少し多いかなと思うところもありますが、あります。もう一つ、宇宙科学研究所の中には、天体物理をやる研究系と惑星科学をやっているグループというように、二つの理学があったりするのですが、最近は、天文学で太陽系以外の惑星というようなことが出てきている一方、「はやぶさ2」のように始原的な小惑星に行って探査をするというものもあって、天文学と惑星科学の融合が起きています。そのあたりを母体にして、藤井委員のお話の最後にも出ていましたけれども、理学と工学、もう一つは理学と工学の協調というファクターもあるわけですけれど、そういうプラットフォームの中で、特定テーマでトップサイエンスセンターをやっていこうという土壌はあると思います。具体的には考察がいるとは思いますが、先生の御意見は的確だと思いました。

【川合臨時委員】  天文学とか幾つか名前を挙げられましたが、それは宇宙科学研究所の中に閉じていないですよね。JAXA全体として背負っているミッションとかなりオーバーラップがあるような気がしまするので、そういうところを実現することと、基礎学理をやるというところとを、上手に持ちあげることができないのかなと思います。

【藤井臨時委員】  現状JAXAの中に宇宙研があって、それが大学から孤立したようなイメージを持たれて話された気がしたのですが。

【川合臨時委員】  いいえ。それは全然ないです。

【藤井臨時委員】  後で、現状をもう少し説明させていただければと思います。

【井上主査】  これから議論する上で、大事なポイントだと思います。それからもう一つ、私から言うべきことではないかもしれませんが、私が問題だと感じている点は工学です。これまでの宇宙研には固体ロケットの開発という大きな柱があって、その能力を上げることで観測をする側は新しいことをやれるようになって、その結果、学問が大きく広がってきたわけです。しかし今や、固体ロケットの能力を上げるという工学の柱はなくなっていて、新しい柱、こういうものがあれば理学的な新しい展開がどれほど開けるかというような柱、本来工学が引っ張るような柱が見えなくなっています。その新しい展開を開くことへの敷居が非常に高くなって、例えば、先ほど藤井委員が再使用ロケットという言葉を使われましたけど、再使用の輸送系を作ろうとしてもそこにかかる費用が大きくなってきていていますので、「それができたとしてペイするのですか。」ということに答えていかないと、最初の一段を越えることができないわけです。そういうことをみんなで考えないと、先に進んでいかない時期に来ているわけで、トップサイエンスセンターはそれを探していくということが、非常に大事な柱になると個人的には思っています。

【川合臨時委員】  そういうこととの関係が、外部の人たちには分からないわけです。

【藤井臨時委員】  詳細は、後ほど説明させていただくとして、一つだけ。人材の流動化についてですが、例えばあるプロジェクトが立ち上がると、それを提案した大学の方が宇宙研に移動してこられてプロジェクトを動かしたりはしています。ですから、今、流動性がないわけではなくて、やってはいますがもっとやらないといけない、特に井上主査が言われたように、工学のところをもっと流動化させなくてはいけないということがあります。

【井上主査】  今、おっしゃった議論は重要な部分だったと思いますので、次の議論の機会に・・・

【秦専門委員】  すみません、企業のほうから、日本航空宇宙工業会の立場から一言コメントさせていただきますと、今の井上主査のお話でようやく理解できたことは、最初に学術研究への応援が少ないという指摘があって、プロジェクトより学術研究というお話があったことから、トップサイエンスという言葉が誤解を招いたのではないかと思いますが、サイエンスですから理学の議論だと思っていました。

【藤井臨時委員】  そこは最初に申し上げたように、サイエンスとは宇宙理学と工学の学理とその応用ということで、エンジニアリングを含んだ広い意味のサイエンスです。

【秦専門委員】  そうしますと、企業の側も従来から、センサーですとか計測機器の関係で随分と貢献はしてきたわけですが、宇宙産業の母体が小さくなると企業の余裕もなくなってきて困りますので、なるべく企業の参加を含むような部分を増やしていただきたいと考えております。そうなりますと、この位置付けは非常に大事なところとなりまして、やはり、今後とも工学を捨てないで、エンジニアリングサイエンスといった統一的なところで宇宙全体のレベルアップを図るというように、是非ともその方向性の議論を深めていきたいと思います。まずは1回目ですから、今後ますます議論は深まると思います。サイエンスという言葉の誤解がないように、宇宙科学の再定義という話もありましたけれども、必ずしも理学研究だけではないということを確認していただければと思います。プロジェクトよりは学術研究と言われますと、プロジェクトは当然のことながら企業の参加の度合いが深いわけですが、学術研究は閉じこもった学者の研究のようなイメージを持ちます。

【藤井臨時委員】  多分、プロジェクトよりは学術研究が大切との説明と理解されたイメージが私の意図したことと少し違うのだと思います。学術研究は、最初に申し上げましたが、最後にはそれをプロジェクトに反映すること始めて成果につながるというところがあると、そういう世界だと思っています。それが最終的には日本の宇宙開発利用全体を先導することにつながっていくところでもあります。これは誤解のないように、学術のほうを増やしてプロジェクトをおろそかにしろと言っているつもりはありません。

【井上主査】  最後の御質問ということで。

【瀧澤臨時委員】  今のことに関連して藤井委員にお伺いしますが、プロジェクトより学術研究という中で、例えば全く新しい素材を開発するとか、全く新しい手法を開発するといったことを、研究として、最初から企業と一緒にやるという発想は・・・

【藤井臨時委員】  ありえると思います。企業のほうが進んでいるものもありますから、それはしっかり見ていくべきです。

【瀧澤臨時委員】  研究が新しいことを生みだしていくこともあり得るということですか。

【藤井臨時委員】  ありえます。

【井上主査】  もしよろしければ、今日はここまでとしたいと思います。必ずしも議論が深まったということではないかもしれませんが、多くの委員に議論に参加いただいたことで理解が共通化の方向に向かったのであれば、意義が深かったと思います。それでは、最後に事務局から事務連絡をお願いします。

【竹内企画官】  いろいろ御議論いただきありがとうございました。論点の整理につきましては、本日頂いた御意見を基に、事務局のほうで分かりやすい項目的な形でまとめさせていただいて、次回の議論の基とさせていただきたいと思っております。

(4)その他

【竹内企画官】  最後に事務連絡でございますが、会議資料と議事録の公開について連絡いたします。宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は公開となりますので、文部科学省のホームページに掲載させていただく予定です。また、議事録につきましても運営規則に基づきまして、委員の皆さまに確認させていただいた後に、ホームページに掲載を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。

【井上主査】  終了予定時刻を過ぎてしまいましたけれども、これで本日の議事を終わりにしたいと思います。どうも長い間、ありがとうございました。

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