<人材育成に関して>
1.宇宙科学の現状と問題点
1.1)宇宙科学の推進力
宇宙科学が目指すところは、宇宙空間を利用するための手段の研究開発と、宇宙空間を利用した研究活動を通じ、世界第一級の学術成果を生み出すことである。これまで、宇宙科学研究所を中心に、大学共同利用の理念の下、宇宙空間を利用する新しい手段・能力を自ら開発し、その新しい手段・能力を最大限に活かした科学衛星を順次開発して、その使命を果たしてきた。
ここにおいて、重要なことは、宇宙空間を利用する新しい手段・能力が導入されることがあって初めて、それらを利用した新しい研究が大きく広がることである。これまでの日本の宇宙科学が成果を上げ続けてこられた重要な点は、ロケットの飛翔能力の向上と、それに歩調を合わせた衛星・探査機の各種能力の向上が、着実に行われてきたことだったと思われる。
しかし、ここに来て、
等の理由から、宇宙空間を利用する新しい手段・能力を導入する宇宙工学研究が、十分に行われなくなってきている。
1.2)宇宙空間を利用する研究分野の広がり
これまでの宇宙科学は、地球磁気圏プラズマ分野やX線天文学分野といった宇宙空間に出て始めて観測・実験が可能となる分野が、宇宙工学分野とともに、分野全体の存在価値をかけて、その最前線を切り拓いてきた。しかし、衛星能力が大幅に向上し、探査機の太陽系空間進出も比較的容易になって、宇宙空間を利用した観測・実験を行おうとする研究分野が増大してきた。また、政策的に導入されてきた地球観測衛星や、国際宇宙ステーションの微小重力環境等を利用した、地球環境科学や、物質科学・生命科学等において、新しい学問的展開がなされつつある。
考えていくべきことは、新しく宇宙科学に参入しつつある分野においては、地上での実験や地上からの観測に大きなウェイトがある研究環境がまずあって、その上に、宇宙空間に出ることで得られる新しい情報を付け加えようとする面が大きいことである。これらの分野の研究者にとって、宇宙空間を利用することは、全体の研究の一部であって、少なくとも試験的にいろいろとやってみる段階では、自らの研究者人生をかけて衛星や探査機の開発に乗り込むことは、なかなか難しい環境にある。これらの宇宙空間を利用し始めた新たな研究分野が、宇宙空間で着実に成果をあげ、新しい学問展開を行っていくためには、試験的実験の段階から十分な技術支援を受けられる体制を整えていく必要があろう。
1.3)宇宙工学専門技術者の不足
これまでの科学衛星開発は、その科学目的の実現を指向する分野の理学研究者が主体となり、技術的な部分を工学研究者が支援する形で行われてきた。しかし、搭載観測系が大型化し高精度化するにつれ、衛星開発そのものの工学研究の要素は薄れ、工学研究者が、研究者としてではなく、技術者として衛星開発に関わる面が大きくなってきた。これまでの科学衛星が、限られた予算の下で大きな成果をあげてこられた陰には、工学的見識が高く現場経験が豊富な宇宙工学研究者の果たしてきた大きな役割があった。しかし、今や、宇宙工学者による科学衛星計画への参加には、工学研究というより技術支援の要素が大きくなって、本来の宇宙工学研究にかける割合が大きく減少する事態が生じている。これを解決するには、工学的見識が高く現場経験が豊富な宇宙工学の専門技術者を育成、充実させて、各種のプロジェクトの技術支援にあて、工学研究者が本来の工学研究に十分な時間をかけられるようにするべきである。
2.今後に向けて
以上のような現状分析の上に、これからの宇宙科学として何を考えていくべきかにつき、考えるところを2点記したい。
2.1)宇宙科学を牽引する宇宙工学の長期ビジョン
1.1)で述べたように、宇宙科学は「宇宙空間を利用する新しい手段・能力が導入されることがあって初めて、それらを利用した新しい研究が大きく広がる」ものである。これまでは、M-ロケットの飛翔能力の向上が宇宙科学を牽引してきたわけだが、今や、その時代は終わった。今後に向けては、これからの宇宙科学に新展開をもたらし、ひいては、宇宙空間のもっと広い利用に新展開をもたらす、将来の宇宙空間輸送・航行システムを見据えた宇宙工学としての長期的な研究開発ビジョンが求められよう。そして、宇宙空間を利用する様々な科学分野側は、その長期ビジョンに即した新たな戦略をたて、宇宙工学長期ビジョンに結集して、さらなる新展開を目指すべきであろう。
宇宙工学長期ビジョンで目標とする将来宇宙空間輸送・航行システムの実現に向けては、現在宇宙研で行われている、小型衛星計画以下の規模の各種共同利用実験を再整理しつつ予算規模を増やして、「自由な発想」に基づいて競争的・挑戦的な実験を行っていく特長は活かしつつ、宇宙工学技術開発に向けては、統一的・戦略的に小型規模実験を行っていく体制を作るべきだろう。
2.2)宇宙工学専門技術者の育成と充実
次には、上で述べた宇宙研で行われる小型規模飛翔体実験の活動の場を活用して、これからの宇宙開発プロジェクトを担う、「自分で考え自分の手を動かす」訓練を積んだ宇宙工学専門技術者を育成する体制を作り、以下にのべるような各種活動の中核技術者として大きな戦力にしていくことを考えるべきである。ここにおいては、しっかりした指導者層を整備し、技術者育成プログラムを作り、系統的に専門技術者の指導・育成が行われるようにするべきである。そして、育成の先には、中型衛星規模以上の科学衛星はもちろん、JAXAの各種プロジェクトの重要な要員となる道があり、さらには、宇宙空間の様々な政策的利用に対応した技術的専門家としての道や、宇宙機器関係企業の宇宙専門技術者としての道も、あるべきだろう。また、近年いろいろな大学で盛んになってきている学生教育の超小型ロケット実験や、超小型衛星実験の指導者としての道も整備されてしかるべきだろう。宇宙研を核とし、宇宙機器産業や関係大学と連携した、宇宙工学専門技術者育成体制の整備が望まれる。
以下、盛り込むべき事項ではありませんが、
トップサイエンスセンター構想具体化に向けた議論が、問題提起されたままになっており、余り議論されていないので、集中的に議論してはいかがでしょうか。
宇宙科学研究を推進するには,現場である宇宙での実践を通して学ぶことが肝要と考える。かつて,平均,年1回固体ロケットを打ち上げ,年1回天文衛星あるいは工学実証探査機を打ち上げてきた。自らがプロジェクトの一員となり,プレーヤーとして技術を磨いてきた。諸先輩の後ろ姿をみて,プロジェクトの進め方を学んだ。大学院生も加わり諸検討の1つを担ってきた。
しかしながら,ミッション規模も大きくなり,数年に1回の打ち上げ機会となっている現状,検討会などの議論ばかりとなっている。またプロジェクト化及び打上げまでに幾つもの審査会が設定され,新しいチャレンジができない状況となっている。
いままで,10年程度の実現を見据えた多彩な宇宙科学プログラムの計画立案と必要な最先端技術研究が,宇宙研を中心に大学,研究機関,企業の研究者により実行されており,既にミッションとして遂行すべき段階の成熟度に達している計画もある。一方で,実行が期待される宇宙科学プロジェクトは,世界レベルの成果創出と国際的競争と協調などの理由のために,より大型化,より高頻度化,より高度化が求められ,様々な面で計画とその内容が多様化する状況にある。
そこで,小型あるいは中型規模の衛星や探査機を毎年打ち上げ,科学(サイエンス及び工学)ミッション推進する環境を整備することが重要である。プロジェクトメンバの一員としてプレーヤーとして参加することにより,将来の宇宙科学を担う人材育成がなされる。
また新しい科学技術の創出に向けて,「はやぶさ」のような挑戦的なミッションも推進すべきである。その良い例が惑星探査であり,「見たことがないものを観たい」という人間が本来有している欲求を満たすミッションを行うのがよい。具体的には,月の縦孔探査や火星のマルチランダや航空機による広範囲な探査,金星バルーン探査など魅力的なミッションを打ち立てるのがよい。
1.冒頭に、タイトルの「宇宙科学研究」の定義をはっきりとさせ、本とりまとめは「宇宙分野のみについて述べる」ことを明確にする必要があると考えます。
これまでの議論から本委員会はISASの今後の研究推進方策を議論するための委員会であると理解しました。24年12月の宇宙分野の推進方策において、宇宙利用は宇宙を知る、宇宙を支える、宇宙を使う、の3本の柱にまとめられており、「宇宙科学」は宇宙を知る柱の中に定義されていますので、ここにおける「宇宙科学」とは宇宙分野における科学についてのみと考えてよいと思います。
一方、一般的な言葉として「宇宙を利用した科学」には、地球観測を利用した科学が重要な部分として存在します。一般には「宇宙科学」と「宇宙を利用した科学」は言葉だけでは明確な違いがわかりにくいところがあります。本委員会は地球科学の議論を含むものではありませんので、本とりまとめの扱う範囲をきちん定義し、「地球観測を利用した科学も宇宙を利用する重要な科学研究であるが、本とりまとめで「宇宙科学について記し、「宇宙を使う」分野である地球観測等は扱わない」旨について明示しておいていただく必要があると考えます。
よろしくお願いいたします。
「大学・大学院における人材育成を含めた宇宙科学研究の適切な推進のための具体的な取組」
大学を横断して宇宙教育を橋渡しする活動及び組織が必要であるが、幸いなことに、そのような組織として「大学宇宙工学コンソーシアム(UNISEC)が既に存在している。2002年4月に9団体から始まった加盟団体数は、2013年6月現在、40校から59団体が参加する組織へと成長した。学生会員は550名以上、学生会累計数は、2000名以上である。しかし、参加団体数の成長に見合った資金獲得が困難で、慢性的な資金不足及び存続の危機が続いている。UNISECに金銭的な支援をとは言わないが、UNISECが獲得しに行けるような、大学を横断して宇宙教育を橋渡しする活動への予算配分を充実させることが必要である。
「国に期待する支援施策」
JAXAを始めとする従来の宇宙プレーヤーの枠組みを超えた、幅広い層から宇宙関連研究/技術開発への参入が必要である。そのためには宇宙関連活動の規範となる法的枠組みが必須であるが、現状では未整備である。例えば、ロケットの運用を規定する法律は我が国には存在せず、火取法、消防法、高圧ガス保安法等、関連法令による規定しかない。宇宙活動法の整備が急務である。
「宇宙科学コミュニティが世界のトップサイエンスセンターとして機能する方策」
コミュニティの構成メンバーとして、大学等のアカデミックスタッフだけではなく、メーカー等民間企業の役割も重視すべきである。例えば、宇宙関連プロジェクトにメーカーが加わるタイミングは、現状では競争入札を経た後であるが、小規模ミッションにおいてはミッション提案の段階からメーカーと一体となったチーム編成を可能とする制度運用を検討すべきである。
「学術研究の視点からの宇宙科学研究所や宇宙科学コミュニティの課題」
用途を宇宙科学に特化したロケット開発を行ってきたことこそが、我が国の宇宙科学の強みであったと思う。宇宙輸送系開発を一本化すべきという議論の中で、宇宙科学と輸送系開発が乖離することを危惧している。ハレー探査やはやぶさが、数百億円規模の前半という低価格であれだけの成果を残したことを考えると、輸送系開発の一本化が必ずしもコスト合理性のある選択だとは言えないと考える。宇宙科学コミュニティの中で輸送系開発が果たす役割については慎重な議論が必要である。
[宇宙開発活動への企業参加の在り方について]
(問題点)
宇宙科学のみならず宇宙関係の研究開発活動への企業参加は計画遂行の重要な要素です。
現状では大学等の研究機関と企業との関係は一部の共同研究(企業側も費用を負担)を除いては請負若しくは製品納入の契約形態に止まり、研究開発の開始前段階から双方が協力して検討を行うには多くの制約があります。
特に契約に至る段階においては公平性・透明性が求められ、価格競争等が重視される傾向にあり、企業側の保有する能力を十分に引き出すには柔軟性に欠ける面があります。
(制度改善の方向)
米国では民間企業の潜在的能力を引き出し、研究開発の国際競争力を高めるため、国の研究開発機関は国の調達規則(Federal Acquisition Regulation) によらない柔軟な運用を可能にする制度を設立しております。
この制度はOTA(Other Transaction Authority)又はOther Transaction(OT) Agreementと呼ばれ、1960年代のNASAへの適用を初めとして、以降、多くの政府研究開発機関に活用されており、主に以下の特徴を有するものです。
等々です。
我が国においても同様の制度を設立し、研究開発に係る契約形態は政府調達の規則の例外として扱われることが研究開発機関と企業の双方にとって有益であると思料します。
本意見は当面の予算措置とは異なりますが、研究開発活動の基盤整備の施策として検討することを提案します。
宇宙科学コミュニティを世界のトップサイエンスセンター化する方策として,宇宙科学に大きな変革をもたらす可能性を有する大学,研究機関等の優れた研究者(国内外を問わない)を一定規模招聘し,それを循環させる制度の確立と招聘のための教育等の人的補償のための経費を用意すること。必要経費や補償などの点で違いはあるが,トップヤングフェローのシニア版であり,できれば研究者個人ではなくグループ単位で実施できることが望ましい。なお,JAXAの厳しい人件費制限から,ISASの海外客員枠は現在年間のべ1名のみ(これを数か月ずつ数名で分割利用している)である。この枠組みの充実も併せてお願いしたい。
1.「宇宙を知る」宇宙科学研究の今後の推進方策について
宇宙科学研究は、理学及び工学の政府・研究組織・企業の知見及び技術を結集して進める必要があるまさに総合的な国力が問われる課題である。これを持続発展的に進めるためには、科学研究を進めるコミュニティの自律性を基本としつつ、これを、「大規模なナショナル・フラッグシップ」計画から「小規模かつ先鋭的な科学研究課題」までを広い視野で配置し、柔軟に比重配分を進める推進策・運営策が必要である。
1-1 宇宙科学のグランドビジョン
ボトムアップ的科学研究の重要性は言を待たないが、一方で、長期的な戦略なしには、持続的発展はいずれ行き詰まるだろう。ここで重要なのは、設定する「長期的な戦略」に、適切な具体性と柔軟性を併せ持つことである。これを「グランドビジョン」と呼ぶことにする。
JAXA/ISAS が大学を含む研究者、企業、そして政府が一体として進めるべき「ナショナル・フラッグシップ」的プロジェクトを持つことは、日本における宇宙科学全体の持続的発展を進める上で不可欠である。そして、これを着実に実施するためには、予算そのほか環境の現実的な見通しに基づく適切な時間スケールの設定とこれについての合意(コンセンサス)、この時間スケールにおいて目指すべき「基本的」な科学テーマの設定、そして科学衛星打ち上げ機会の設定である。
私見だが、この適切な時間スケールとは15年程度を想定するべきである。基本的科学テーマとしては、先例として ESA Cosmic Visionや NASA “Beyond Einstein”、”Great Observatories” などが挙げられるが、これらを盲信的に模倣するのではなく、日本で先進性を持つ科学分野と知見に沿って、活発かつ責任を伴う議論を行う必要がある。
これと相補的に、宇宙科学においては、「小規模かつ先鋭的な科学研究課題」の実施に当たり、大学などの研究者がこれに取り組むための環境を整備することである。宇宙科学では、個別のグループ、個別の研究者のみで、機器開発・打ち上げ・運用について環境も含めてすべてを進めることは困難である。これについては、JAXA/ISAS が一定の役割を果たし、柔軟かつ包括的にこれを支援・推進するための体制をとるべきである。一方、先日中止となった小型衛星プロジェクトの例を見るまでもなく、先鋭的かつボトムアップ的な研究課題のニーズをくんでこれを一律的なシステムで運用することは実際には大変難しい。大学等研究者と ISAS 研究者が日常的に相互交流し並列的に適切な数の計画を進めてゆくための組織的対応が必要である。
時に宇宙科学と対比される地上における天文学、宇宙物理研究では、国立天文台がすばる望遠鏡、ALMA干渉計、そして今後の TMT 計画のようなナショナルフラッグシッププロジェクトを進めており、これに対して、各大学は、それぞれ小規模ながら、観測地や観測手法、テーマの点で限られてはいるが先鋭的な研究や、あるいは教育、基盤開発に重点を置いた研究を展開する、という構図がある。宇宙科学では、これに対して
という点が異なる。これを認識して適切なバランス、仕組みを考えることが必要である。
1-2 企業と JAXA の取り組みについて
特に大型の宇宙科学ミッションの推進に当たっては、計画段階からの企業の積極的な参加と取り組みを奨励すべきである。コンプライアンスに基づいた、しかし戦略的な方向性を見いだし、企業における人材育成、企業の技術力向上にも寄与する方策を是非とも実施するべきである。
1-3 ISAS トップサイエンスセンターについて
トップサイエンスセンターの理念は非常に重要である。しかしながら、ISASに併存する、あるいはその一部として、限られた数の優れた研究者を集めたものを作っても、恐らくその効果は限定的だろう。トップサイエンスセンターが免罪符的に扱われ、また、ISAS 本体と乖離することも予想される。私見であるが、望まれるのは、ISAS自身がこのトップサイエンスセンターの機能を果たし研究組織となることであり、そのための、例えば理学と工学の垣根も外すような大胆な組織改革であると考えられる。
抜本的な組織改革は時間、リスクを伴うので、萌芽的という位置づけであれば、その機能を十分に議論し、試行する意義は認める。
1-4 JAXA / ISAS と大学研究者の意見交換
現在は、理工学委員会及び各小委員会が ISAS と大学研究者の接点となっているほか、JAXA と提携している大学では定期的に意見交換の場が持たれている。一方で、理工学委員会などでの議論は、総括的なもの、又は、進行中・計画中の既に具体化したプロジェクトについてのものが優先される。
ある程度の規模のミッションについては、具体化した段階で、これに参加する主体となる大学研究者を含む委員会的組織をISASとしてきちんと運用したい。
1-5 宇宙科学教育について
缶サットなどに代表される裾野の広い宇宙科学教育の取り組みは大変重要で、将来的には研究者・企業での人材を幅広く供給するという点で必須である。一方で、宇宙科学が大型化する中で、大型計画を推進してゆくための JAXA/ISAS+企業における人材輩出のためには、より高度で組織的な努力が必要とされると考える。具体的には、工学・理学分野の垣根を越えて、衛星システム及び各ミッションに応用可能な主要な技術システムを担当しうる人材・グループを意図的に育成することを、様々なミッションを通じて行うことである。例えば、JAXA では戦略開発研究本部がこれに当たると考えるが、宇宙科学ミッション全般に十分に還元される、あるいは科学ミッションに適した形で、このような人的資源を整備することが重要である。
宇宙科学研究が大型化していくことは科学が深まっていく中で必然であると考えるが、宇宙科学分野の裾野を拡げ、宇宙科学の将来を担う人材を育成できる場となる、飛翔機会そのものと研究者や学生が自ら手を動かすインハウス開発の機会の減少という弊害が生じている。
宇宙科学研究のメインストリームとなる大型計画と、宇宙科学への新規参入や若手育成の機会となる多様かつ小規模な研究機会が、適切な割合で実行されていることが、宇宙科学研究の推進に不可欠である。
大型計画の推進についてはロードマップの議論を通じて推進方策が定められるものと理解しているので、ここでは多様かつ小規模な研究機会の推進方策についてコメントしたい。
これらの研究は将来結実するであろう萌芽的な研究であるので、トップダウン的な重点化は必ずしも適切でない。研究内容を定めて推進するのではなく、研究者間の競争とピアレビューにより得られる研究機会の充実を図ることが重要である。
こうした飛翔機会を宇宙科学研究所というプラットフォームに充実させ、宇宙理学委員会、宇宙工学委員会の枠組みの下で推進することも一つの方策であるが、同時に、文部科学省科学研究費助成事業における「系・分野・分科・細目表」に総合科学である宇宙科学を例えば「理工系・総合理工・宇宙科学・○○」といった新分科として位置づけ、宇宙科学の立ち位置を明示すると同時に、宇宙科学の専門家によるピアレビューを実施できるようにすることは、競争的資金レベルで実施可能な多様な小規模研究を大きく推進させ、将来宇宙科学、宇宙利用を担う人材を育成する大学院教育にも大きく寄与することができると考える。
大学・大学院と宇宙科学研究所とのより有機的な連携をもとに必要に応じて企業も参加する形で宇宙科学の新たな推進体制を構築する。
などを拠点として設置し,それらを宇宙科学研究所や大学・大学院とネットワークで結ぶ。
研究開発局宇宙開発利用課