宇宙開発利用部会(第34回) 議事録

1.日時

平成29年5月9日(火曜日)15時00分~16時40分

2.場所

文部科学省 15階特別会議室

3.議題

  1. 部会長の選任及び部会長代理の指名について
  2. 宇宙開発利用部会運営規則について
  3. 宇宙開発利用部会の活動内容について
  4. 技術試験衛星9号機プロジェクト移行審査の結果について
  5. その他

4.議事録

今回の議事は,部会長の選任,部会長代理の指名等があったため,開会から議題(2)までは非公開で実施した。

(傍聴者・JAXA入室)

(3) 宇宙開発利用部会の活動内容について

【白石部会長】  それでは,三つ目の議題に入りたいと思います。宇宙開発利用部会の活動内容についてでございます。これについて事務局から説明をお願いします。

【事務局(山之内企画官)】  より資料34-3-1,34-3-2,34-3-3に基づき説明を行った。

【白石部会長】  これにつきまして御意見,御質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。よろしいですか。

(「異議なし」の声あり。)

 それでは,御異議ないようでございますので,これで決定とさせていただきたいと思います。
 なお,宇宙開発利用部会運営規則第2条第4項に小委員会に属すべき委員等は部会長が指名するとあり,第2条第5項には小委員会に主査を置き,部会長が指名する者がこれに当たるとありますので,この二つの小委員会に属する構成員と主査は,本日の会議終了後,速やかに私が指名するということにさせていただきたいと思います。
 一応,念のための確認として1点だけ申し上げておきます。資料34-3-1の一番初めのところです。1項の我々の所掌範囲は,文部科学省における宇宙開発利用となっています。ここについては委員の皆様に確認いただきたいと思います。日本政府の他の府省も宇宙開発利用をやっておるわけですけれども,これは我々の所掌の範囲外になるということでございます。
 それでは,次に四つ目の議題に移りたいと思います。

(4) 技術試験衛星9号機プロジェクト移行審査の結果について

【白石部会長】  技術試験衛星9号機プロジェクト移行審査の結果についてでございます。
 JAXAは,プロジェクトの企画立案と実施に責任を有する立場から,技術試験衛星9号機のプロジェクト移行審査を実施いたしました。宇宙開発利用部会では,JAXAが実施した評価結果について報告を頂き,調査審議を行うということになっております。
 今回は,実施フェーズへ移行する際に行う事前評価という位置付けで,この報告をJAXAにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【JAXA(布野理事)】  JAXAの布野でございます。技術試験衛星9号機に関しましては,関係府省,関係機関,それから関係企業のメンバーの皆様からなります「次期技術試験衛星に関する検討会」におきまして,将来の衛星構想が取りまとめられております。その検討結果を踏まえまして,JAXA内におきましては昨年の10月にプリプロジェクトチームを組織いたしまして,それから,同じく昨年12月にはシステム検討メーカーとして三菱電機さんを選定いたしまして検討してきております。
 それで,本年3月にJAXA内におきましてプロジェクト移行審査を実施いたしまして,プロジェクト移行は妥当という判断を社内においてなされております。
 本日は,その結果について,プロマネの方から御説明をさせていただきたいと思います。お願いします。

【JAXA(深津)】  より資料34-4に基づき説明を行った。

【三菱電機(関根)】  三菱電機の関根と申します。ただ今,JAXAプロジェクトマネージャの深津様よりお話がありましたとおり,本技術試験衛星9号機を基にした次世代の通信衛星をベースとしまして,当社としても全力でJAXAさんと速やかに,かつ着実に開発を行い,この衛星を商用衛星の受注拡大,あるいはビジネス拡大に必ず結び付けていきたいと思います。
 各技術分野の開発要素は多いですが,今後,JAXAさん及び関連企業の方たちと協力しながら着実な開発を進めていきたいと思います。

【JAXA(深津)】  説明は以上でございます。

【白石部会長】  どうもありがとうございます。
 それでは,今の御説明について御意見,御質問等があればどうぞお願いします。永原先生。どうぞ。

【永原臨時委員】  2点お伺いしたいと思います。御説明によりますと,この衛星は国際的に販売をしていくという目的になっております。そうしますと,多分,二つ重要な点として,能力とコストの問題があると思います。
 まず,能力の点で一つお伺いします。11ページに質量とペイロードの関係の図があるのですが,目標はこの青い星印のところだから適切であろうという御説明ですが,その下に書かれている諸外国,ボーイングやエアバスとかは,現在のデータですね。今現在世界的にはこのレベルで,日本がこれから作ろうと思っているものが,5年後にこの青い星だとするなら,5年後にどのぐらいまで能力が到達するのかという諸外国の情報が必要ではないでしょうか。諸外国の現在と比較しても余り意味がないのではないかと思うのです。それが質問の一つ目です。
 もう一つは,商業ベースと申しますか,国際的な競争力ということを考えたときに,国際競争に勝っていける,つまりコスト的に安く上げることができるポイントは何なのかという情報が必要ですね。きょうの御説明の中でその点を的確に理解できなかったのですけども,いかがでしょうか。その2点について,補足の御説明をお願いします。

【白石部会長】  それでは,よろしくお願いします。

【JAXA(深津)】  まず一つ目につきましては,確かにデータとして示せてはおりません。そこはJAXAといたしましても,常に調査をして取り込んでいきたいというように考えております。
 おっしゃるとおり,この先のことを考えると,これで十分なのかというところは,JAXAも問題点として十分認識しております。そこにつきましてはモニターをして,必要に応じて性能の向上も視野に入れて検討を進めていくのであろうとは思いますが,今回のようなホールスラスタは,まだ日本に一つも存在しておらず,飛んだことがないというところから考えますと,まずはホールスラスタを使った全電化推進衛星を開発して,それをもって市場展開に活用していただきたいと考えているところでございます。
 それと,二つ目のコストをいかに下げるかというところに関しては,一部繰り返しになってしまいますけれども,実際作るという面でのコストについては企業の方に考えていただくしかないのですけれども,技術という面でいきますと,全電化衛星という形で燃料を削減することによって,その分,多くのペイロードを載せることができ,結局,比率としては,通信能力が安く上げられるということに換算できますので,それでコスト競争力を持たせるという考え方でございます。

【三菱電機(関根)】  三菱電機ですが,一部補足させていただきます。御質問は,最初の11ページの競争力は今の競争力であって,将来はまた逆転されるのではないかという点だと思います。この表は,確かに現在の情報に基づいているものですが,当社もJAXAさんもいろいろな情報を集めており,欧米が現在開発中の将来に向けたスラスタやバスの諸元は,公開情報を把握しております。例えば,現在,目標としていますペイロードへの電力を,1トンあたり4kW,これは打ち上げ質量に対してですので,打上げ5トンで供給電力20kWというのは,数年後,5年から10年掛けても十分な競争力を持つと分析しております。そういった推定が入るので,ここでは明記しておりませんが,ベンチマークした上で開発目標の設定を行っております。
 2番目のメーカーとしてのコストダウンですが,JAXAさんは大推力スラスタや,電源など,要素技術の先端的な開発を各企業とやられております。メーカーの責務としては,安いロケットを使うというのは高効率な電気推進を使うことで実現するという意味で,海外も日本も共通ですが,衛星本体のコストダウンに関しまして,メーカー側としては機器の標準化,及びラインナップを,13 kW,18 kW,25 kWとそろえる計画であり,このバスモジュール自体の標準化で,低コスト化,工期を短縮することで,今は,日本の企業はまだコストが高い状況ですが,10年後を見ても,何割かのコストダウンにより,衛星本体でも欧米を凌駕するようなコスト目標を定めて,今進めているところでございます。

【白石部会長】  よろしいですか。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ,安岡先生。

【安岡臨時委員】  このようなミッションと衛星側のコンビネーションでいろいろなことをやっていかなくてはいけないと思います。例えば10ページで,ペイロードの質量がこのくらいまで増やさなければいけませんよという絵があって,極めて定性的な絵になっているわけです。ペイロードの性能として,これはNICTさんの方がやられるわけですが,世界最高水準のものを求めるのに対してバックキャスト的に,衛星はこう性能を出さなければいけないというのはあるわけです。ペイロードの質量と下の青いところの衛星性能には,当然,最適化が必要になってくるわけですよね。質問は,お互いのやりとりで,これが決まってきたものなのか,それともミッションの方の性能は,これで世界最高のものを決めるといって,そこからバックキャスト的に,自動的に衛星サイドの性能を決めるように設定されたのか,その辺はいかがでしょうか。

【JAXA(深津)】  分かりにくくて申し訳ありませんが,この図は技術試験衛星9号機のNICTさんとJAXAとのコンビネーションではなく,次世代の通信衛星における比率を想定しておりまして,ここは飽くまでもNICTさんということではありません。

【安岡臨時委員】  はい。それで構いません。

【JAXA(深津)】  その場合には,まず5トンに対してどれくらいペイロード側に与えられる重量が増やせるかという観点でやっておりまして,ペイロード側についてはいろんなユーザさんがいらっしゃいますから確定的なことを言う必要はないと思っています。逆にバス側がどこまで縮められるか,重量を削れるかという観点で考えておりまして,今の技術で言いますと,全電化技術を採用して,バス側,大体2.4トンまでだったら縮減できるだろうという観点で,こちらは描いております。
 5トン上限ですから,燃料を引きまして,約1.6トンのペイロード登載能力を提供できるだろうという形で10ページの絵は描いております。
 一方,技術試験衛星9号機におきましては,NICTさんと協力する中で,NICTさんが1トンぐらいのペイロード重量を考えておりまして,その中で最先端の技術を追い求めるということをやっておりますので,そこはペイロードの中身になりますから,この中では触れていないというところでございます。

【安岡臨時委員】  そうすると,これは衛星サイドの方でどれだけの性能が出し得るかというところで決めたのであって,バックキャスト的に決めたわけではない,そういう話?

【JAXA(深津)】  そうです。

【安岡臨時委員】  分かりました。

【白石部会長】  ほかに。どうぞ,白井委員。

【白井臨時委員】  2020年代の衛星はこれしかないかなというような感じがします。非常に説得力のある計画だと思うのですが,二つばかり教えてください。
 やはり遷移期間が長いというのが全電化衛星の弱点であることは世界共通の認識だろうと思うのですが,今回の目標は4か月ですということでした。先ほどの御説明で触れていなかったと思うのですが,従来の海外の先行している全電化衛星の遷移期間は6か月ぐらいという理解で正しかったかどうかを確認させてください。これが一つ目です。
 それから,もう一つ。非常に細かい話ですけど,ホールスラスタユニットを展開式にしているというのは,リスクを逆に増す面もあると思うのですが,ユニットを本体に付けない理由は何かなというのを教えてください。

【白石部会長】  どうぞ。

【JAXA(深津)】  一つ目につきましては,おっしゃるとおり,大体,今の実力でいきますと,イオンエンジンを含めて6か月程度であろうと分析しておりまして,4か月程度までいけば世界的には早い方向に行けるだろうという形で目標を掲げております。
 二つ目でございますが,展開式につきましては,おっしゃるとおり開発要素があると思っております。ただ,バス構体に直接取り付けますとどうしても傾いた形で付いてしまいますので,それとのトレードオフをした結果としてブーム形式を採用しております。
JAXAとしては,エンジンだけではなくブームを含めた全体のシステム設計,これが開発要素であると認識しておりまして,開発モデルとして,この部分を選んで重点的に開発に取り組んでいるところでございます。

【白井臨時委員】  ありがとうございました。遷移期間を2か月短縮できる・・・これは国際競争力という点でかなり強力なツールになるかなという印象を持ちました。

【白石部会長】  ほかにございますか。吉田委員。

【吉田臨時委員】  三つの切り口から質問させていただきたいと思います。順次質問いたしますけど,最初に,将来展望といいますか,位置付けについて質問いたします。6ページのところにも記載ございますが,今回,オール電化という新しい衛星バス技術とか,非常に大型化されたバスを作っていくということで,これがうまくいけば,将来,年2機ペースで国際受注を獲得してということが掲げられていますけども,通信衛星,大きく分けて静止軌道衛星と低軌道衛星があると思うのですが,低軌道衛星に関しては明らかに小型化が主流だと思います。依然として静止軌道は,リソースが非常に限られた空間ですので,大型化という方向性でよろしいかと思うのですけども,2020年以降,その時点を見たときに,本当に年間20機程度という需要があるのかというところについて,どういう情報に基づいて,この推算をされているかというところを含めて教えていただきたいと思います。多分,静止軌道を主体としたものと低軌道を主体としたもののサービスに,二分化していくと思うのですけども,静止軌道衛星が年間20機程度の需要があるのかという点を少し補足いただければと思います。

【白石部会長】  米本委員も続けてどうぞ。

【米本臨時委員】  質問は二つあります。一つ目は,11ページの技術試験衛星9号機の目標についてです。打ち上げ質量に対するペイロード電力において,世界的な競争力が獲得できることを示しています。しかし,打ち上げ質量は衛星個々にミッションの違いに依存します。したがって,打ち上げ質量あたりで20kWの発電量をもって競争力があるような示し方は,フェアではないと感じました。
 つまり,競合する衛星が2019年に打ち上がります。その2年後に,20kWというペイロード電力供給能力のある技術試験衛星を打ち上げても,打上げ質量比で2割ぐらい向上したからといって,その優位性を感じません。その辺について何か説明があればお願いします。
それから,二つ目は,成功基準についての考え方です。
例えば,発電量のペイロード電力のエクストラサクセスについて,サクセスレベルの20kWという電力供給能力を超えて30kWまでの能力を示すというのは,実際,そのように設計していないと達成できないわけですから,その能力をあえてエクストラサクセスとして書くものなのでしょうか。余計なお金を使ってエクストラサクセスをやっているような印象を受けますけれども,いかがでしょうか。
 また,同じエクストラサクセスとして,ホールスラスタのより高い性能や,3台噴射の実施は,そのような設計ができていないと実施できないことです。したがって,隠している性能マージンをもって,実はエクストラサクセスに見せかけているのではないでしょうか。

【白石部会長】  いかがでしょうか。どうぞ。

【JAXA(深津)】  1点目の年間20機の根拠でございますが,もともとは総務省さんの委員会で示された分析結果でございまして,ここではSJACさんに毎回,分析をいろいろしていただいております。当然,その場でも静止衛星が良いのか,それとも低軌道による通信衛星,昨今,欧米でもそういう企業がたくさん出てきておりますので,そのどちらが良いのかというところは議論があり,かつ,それを注視していくべきだという議論も頂いております。
 そういう意味では,JAXAの対応といたしましては,そういう状況を常にモニターをしながら,市場について大きく変わるようなことがあれば,適宜考慮していくということしか今のところは言えないかと思っているんですが,この検討会での活動は引き続き,資料の7ページで示しておりますようなプロジェクト推進会議で,定期的に市場動向が報告されておりますので,その情報を踏まえながら,対応していきたいと考えております。
続きまして,11ページのところにつきましては,いろんな観点でプロットさせていただいておりますので,見方によっては2割程度というのが何か意味があるのかという見方もありますけれども,20kWの意味につきましては,この前のページで20kW程度の能力を提供しないと,そもそも通信衛星としての基本的な能力を提供できないという観点で整理しておりますので,他の衛星との比較という意味で相対的に価値があるという整理をしております。その程度は持っていないと競争力は持てないという分析でございます。
 それから,エクストラサクセスにつきましては,JAXAといたしましては隠しマージンということではなくて,当然,フルサクセスについては必ず成し遂げないと基本計画等の政府の要請にも応えられないという観点から,これは確実にやるべきものと考えておりますが,やはり技術開発でございますので,確実にやるために設計マージンというものは当然有してやっております。ただ,開発ですので,いろんな観点から達成できないこともあるというところでして,隠しマージンという意味ではなく,設計にマージンを持たせて開発に取り組んでいくものと考えております。
 ちょっと特殊なのがホールスラスタのところでして,3台噴射という能力を持たせるのは,確かに最初から設計能力を持たせることにいたしております。ただ,技術試験衛星9号機におきましては2台のホールスラスタで静止軌道化させるという前提で設計を進めておりまして,4か月間という静止軌道遷移期間を次世代の通信衛星で達成できるようにする必要があります。2台を使用し技術試験衛星9号機でやるのに,なぜ次世代では4か月なのかというと,次世代では2台ではなくて3台同時に噴きますので,その分,期間が短縮できると。次世代では3台で噴射いたしますから,3台で噴射できる能力もシステム設計としては技術試験衛星9号機で達成しておきたいと考えておりまして,技術試験衛星9号機が静止化するためには3台運用は必要ないとは考えているのですけれども,次世代では必要な技術ということでエクストラサクセスに入れさせていただいているところでございます。

【吉田臨時委員】  よろしいですか。

【白石部会長】  どうぞ。

【吉田臨時委員】  先ほどの私の方からの1点目の質問に御回答いただきましてありがとうございます。静止軌道か低軌道かという話は,引き続きウオッチしながら進めていくという回答でしたけれども,打ち上げが想定されるのが2021年だと思いますが,それ以前の段階でもはや静止衛星の時代でないという判断される時点があれば,これは中止もあり得ると,そういう理解でよろしいでしょうかというのが,1に対する補足です。
 それから,私から,2番目,3番目の質問もありました。2番目は技術的な質問で,今回の資料の中で衛星の姿勢制御系について余り詳しい記述がございませんでしたけども,これは,リアクションホイールを用いた3軸姿勢制御衛星という理解でいますが,それで正しいでしょうか。
 そのときにコールドガスを使うような姿勢制御は一切考えずに,つまり,この衛星はコールドガスも含めて従来型の推進系は一切持たないのですかというのが2番目の技術的な質問でございます。
 3番目の質問ですが,本計画に先立って2019年の打ち上げ予定ですけども,光データ中継衛星という計画がありますが,高速で効率的な大容量通信という意味では非常に共通性があります。特にミッションとしては共通性が大いにあると思いますが,両者の位置付け,関係性についてどのようにお考えになっているかというところをお聞かせいただければと思います。

【JAXA(深津)】  一つ目ですが,静止衛星の重要性は変わらないとJAXAでは考えております。
 それから,二つ目でございますが,まずコールドガスジェット等は搭載を現時点では予定しておりまして,キセノンガスにおけるコールドガスジェットの制御を基本設計段階では考慮しております。これは,衛星を立ち上げた後,まだホールスラスタが起動していないときにはコールドガスジェットによる姿勢制御を想定しているためです。
 また,リアクションホイールは搭載いたします。リアクションホイールに対するアンローディングについてはホールスラスタを使ってやりたいと考えております。
 光通信に関しましては,JDRSにおける光通信というのを今開発しておりますので,それはJAXAとしてやっておりますが,技術試験衛星9号機の光通信に関しましてはNICTさんが取り組まれておりますので,そちらの方で実験されると考えております。

【吉田臨時委員】  私の最後の質問の趣旨は,光データ中継衛星とミッションという意味では性格がかなり似てくる部分があるのではないかなと思うのですけれども,そこに,何か切り分けがあるのかということだったのですが。

【JAXA(深津)】  いえ,あちらはデータ中継衛星でして,ミッションとしては違うものだと思っております。

【吉田臨時委員】  全然違うものだという認識ですね。

【JAXA(深津)】  はい。

【吉田臨時委員】  分かりました。

【白石部会長】  ほかに御意見はありますか。まず芝井委員,その後で髙橋委員よりお願いします。

【芝井臨時委員】  資料の26ページが移行審査の判定文書ですが,この文書で質問させてください。
 この技術試験衛星9号機は,26ページの文章の最初の3行が本来の目的であって,その次の1行,「衛星システムメーカーが将来の商業通信衛星市場で一定シェアを獲得することを目指している」というのは,将来の効果を書いてあるわけですね。それから,今回新たなやり方ということで,ミッション要求に対して,ここに書いてありますように三菱電機さんからのお考えも取り入れてミッション要求を再設定したということになっております。こうなりますと三菱電機さんが将来,これを利用する前提でシェアを獲得するということまで考えた上でミッション要求が設定されて計画されているということは,最後の商用のことも,どのように達成したかを最後に審査する必要があるのでしょうか。そこについて,十分な理解が得られませんでした。これは,かなり新たな試みかと思いますけれども,いかがでしょうか。

【白石部会長】  今の質問については事務局で説明していただく方がよいかと思います。

【事務局(山之内企画官)】  はい,事務局でございます。
ここの一定のシェアを獲得するというのは,飽くまでもさっき深津プロマネからも説明がありましたとおり,総務省のミッションのところでの検討会というのを立ち上げまして,そこで決められたことだと思っています。今回,JAXAとしては,それを実現するような,結局,バスの研究開発をされている,そこのところが文科省に関わるところだと考えております。ここの部分の評価については,JAXAの方でどのように考えているのか補足説明していただけないでしょうか。

【JAXA(深津)】  JAXAといたしましては,これまでの議論を踏まえまして,商用展開ということを目指して技術開発をする。そこを第一義的な範囲だと思っておりますが,それだけで終わらずに確実につなげていただけるように,三菱電機さんとは協定を結ぶような形で,我々の実証した技術がきちんと使っていただけるというところは見ていきたいと思っております。この部会で御審議いただく範囲といたしましては,今回の技術試験衛星9号機としての開発範囲ということだと理解しております。

【白石部会長】  どうもありがとうございます。
 それでは,次に髙橋委員,お願いします。

【髙橋臨時委員】  大変重要なプロジェクトだと思いますので,私からフェールセーフ設計についてお伺いしたいというか,ひとつお願いしたいことがあります。
 昨年,「ひとみ」が残念ながら電源系喪失ということでミッションを達成することができませんでした。今年の1月にもミニロケットで通信系の異常ということで,連続して痛い目に遭っているわけですけども,この衛星システム全体としてフェールセーフ設計の基本方針,基本的な考え方というものを,基本設計に入る前に明確にすべきではないかなというふうに思います。
 今回の資料では,それが示されておりません。今の段階でフェール設計の基本的な方針,あるいはコンセプトを是非明確にして,別途追加でもいいですので,資料なりにしておいた方がいいのではないかというふうに思います。以上です。

【白石部会長】  御質問についてはいかがでしょうか。

【JAXA(深津)】  資料に記載しておりませんが,基本,1故障許容設計というのを大原則としております。そこは,「ひとみ」の事例に限らず過去にありました衛星の事故の反省の基に,故障許容設計を大原則としております。それを部品レベルからシステムレベルまで採用しておりまして,具体例で申し上げますと,一つは,13ページのエクストラに書いておりますが,「片系で運用ができること」というのがございまして,太陽電池パドルが二つありますけども,一つのパドルが駄目になったとしても,もう一つのパドルだけで実験までができるようにということの要求を課しております。
 これは,国の重要な衛星であるということから,商用展開をされるかどうかは別にして,技術試験衛星9号機におきましては,片方のパドルが全く駄目になっても,残りの片方だけでも,その辺ができるというふうに設計の基本方針としております。
 もう一つ,ホールスラスタにつきましては,先ほど4台のうちの2台といっておりますのは,これは主系,従系と明確に分けておりまして,かつ従系につきましては実績のあるスラスタを採用して,主系での技術開発に専念したいというふうに考えております。そういうことからも1故障をシステムの上で許容するという設計で開発を進めております。

【白石部会長】  どうもありがとうございます。
 ほかに何か御質問,御意見等御座いますでしょうか。どうぞ,藤井委員。

【藤井臨時委員】  寿命の件で質問させていただきたいのですけども,15年必要ということですが,従来はそもそも何年ぐらいだったのかということと,長寿命化するために特別にされたことというのはどういうことかというのを知りたいんですけど。

【JAXA(深津)】  例えば技術試験衛星8型ですと10年間の寿命という形でやっておりますが,昨今,商用衛星等を見ておりますと15年ぐらいでやっておられまして,それぞれ衛星ごとによって機構物とか,そういうところが寿命品ではないかという議論もありますが,太陽電池パドル等の駆動系については代替技術として実績あるものになっておりますので,昨今は10年から15年に延ばすことに関して技術的な限界というものが余りないのではないかという議論がございます。
 ただ,15年間実際使ったというデータがありませんので,そこはきちんとデータをモニターしていきたいという考えでございます。JAXAの静止衛星は,最近は15年ぐらいになっていると思います。

【白石部会長】  ほかに何かございますでしょうか。はい,どうぞ。

【松尾臨時委員】  すいません,ホールスラスタのことで確認させてください。今回,国産ホールスラスタシステムを搭載するということになっておりますが,今回,このために技術開発する新しいものであるということでよろしいでしょうか。

【JAXA(深津)】  そのとおりです。

【松尾臨時委員】  その場合,今回,国産と書いてあるということは,既に諸外国には開発済みのものが存在し,対比させると先進の部分があるのか,若しくは新たというよりも追い付くような内容になっているのか。その辺についてはいかがでしょうか。

【JAXA(深津)】  性能的には300mNという推力を出すことにしておりますが,この推力は大きな方で,世界ではまだないと思っております。そのために6kWという大電力を使うというところも世界よりは大きいと思っておりまして,世界的には4.5kWぐらいの電力規模でやっております。
 このように性能については少し大きくしているところが違うと考えておりますが,方式につきましては,諸外国でもまだホールスラスタについて技術が完全に確立しておらず,いろいろな方式が採用されているという状態ですが,日本独自のというものではありません。

【三菱電機(関根)】  補足させていただきます。今のホールスラスタの御質問に関して,25kW級の衛星は,軌道上に行ってからペイロードに20kW供給するのですが,遷移軌道期間中というのは当然ペイロードオフですから発生電力は余るわけです。諸外国は1台の電気推進に対して4.5kW供給としていますが,JAXAさんと調整させていただいて6kWという大電力をホールスラスタに供給することで更に複数台で大推力,今開発中の欧米のエンジンに対して20%ぐらいの推力アップを狙って大電力を供給するようなシステムにしています。
 したがって,これによって電力が余る遷移期間中でオービットレイジング,静止化期間を短くできるというのは,大推力,大電力という設計等があって,かつ先ほど展開の話がありましたが,あれでかなり複雑な位置に電気推進を持ってくることで,効率的な推力の方向へ向けることが可能になり,これが欧米に伍して静止期間を非常に短縮できるというようなバックグラウンドになっております。それを基に開発を進めています。

【白石部会長】  まだほかにどうしてもという方おられますでしょうか。もしなければ,きょうの御報告を了承するということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり。)

 それでは,確認が得られましたので了承したいと思います。先ほどフェールセーフということがございましたけれども,JAXAの方では,是非,着実に開発をお願いしたいと思います。

(5) その他

【白石部会長】  では,それ以外に事務局から連絡事項があればお願いいたします。

【事務局(山之内企画官)】  事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 先ほど決めていただいた運営規則に基づいて,本日の会議資料は公開となり,後日,文部科学省のホームページに掲載させていただく予定でございます。また,議事録についても非公開審議を除き公開となりますので,委員の皆様に御確認いただいた後,文科省のホームページに掲載させていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。

【白石部会長】  それでは,これできょうの部会は終わりたいと思います。どうもありがとうございました。



以上

(説明者については敬称略)


お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課