資料1-6 今後の核融合原型炉開発に向けて

原型炉開発体制に向けたコメント

核融合エネルギーフォーラム調整委員
慶應義塾大学
岡野邦彦

 

1) 核融合エネルギーフォーラムにおける原型炉開発戦略に向けたこれまでの主な活動

◎社会と核融合クラスターに2005年12月に設置した「核融合炉開発ロードマップ検討委員会」において、日本の原型炉開発戦略を議論し、2007年9月に中間報告を発表した。この活動は、その後、同年10月にITER/BA技術推進委員会に設置された「ロードマップ等検討ワーキンググループ」での検討の基盤となった。同WGのロードマップと人材に関する報告が2008年になされている。

◎BAの炉設計活動の開始に伴い、炉設計に関する国内意見を集約することを目標に2009年に設置された「原型炉概念設計共同検討会」においては、原型炉概念の比較や今後の修正方針について多くの議論を費やし、現在、IFERCで進んでいる新しい概念設計、すなわち、従来のコンパクトな設計に比べやや大型だが工学開発と物理開発の相補性を重視し、早期実現性を高める設計へと進む国内の合意形成に貢献した。

◎2011年には、フォーラム内での意見をアンケートによって取りまとめ、上記ロードマップWG報告書も参考に、「原型炉に向けた研究開発の具体化について」をまとめた。そこでは原型炉の建設活動に入る前までに必要な作業とその緊急性を示した。特に重要な技術課題は、原型炉の設計研究、装置工学、ブランケット工学、ダイバータ工学、燃料工学、材料工学、の5分野を含む以下の8項目とされた。
 i)原型炉の概念設計とそれに続く工学設計の実施。
 ii)装置工学:超伝導磁石、遠隔保守、加熱電流駆動のR&Dと実機の概念設計。
 iii)ブランケット工学:モジュール試験。高フラックス中性子照射装置の整備。
 iv)ダイバータ工学:10MW/m2レベルの高温除熱機器概念の選択と評価試験。
 v)燃料工学:トリチウム制御、リチウム6濃縮研究、初期トリチウム確保戦略
 vi)材料工学:炉構成材料の技術基準確立と信頼性確保
 vii)環境安全性評価
 viii)先進プラズマ研究の推進
この内容は、2012年の本作業部会からの報告書「核融合原型炉開発のための技術基盤構築の進め方について」への基盤を提供した。


2) 原型炉開発戦略に向けた今後の体制

 原型炉に向けた国内体制構築を核融合エネルギーフォーラムの体制として明確にして活発な活動を実現すべく、社会と核融合クラスターにあった実用化戦略サブクラスターを、実用化戦略クラスターとして新たに位置づける。DEMO設計意見交換会、ロードマップ意見交換会は、それぞれDEMO設計サブクラスター、ロードマップサブクラスター下に位置づけ、活動基盤を明確にする。

 

原型炉開発戦略に向けた今後の体制


実用化戦略クラスター
 暫定世話人:清水克祐(原産協会)、坂本宜照(JAEA)、岡野邦彦(慶應大)
 暫定幹  事:後藤拓也(NIFS)、日渡良爾(電中研)

 産業界から2名の世話人/幹事を迎え、産官学の意見調整を推進しつつ、BA後の原型炉に向けた体制下におけるロードマップの見直しや技術課題を整理する。

 特に、コアチーム中間報告会では、昨今の原型炉の設計変更方針について、原型炉として十分な役割を満たすか、将来コスト競合性のあるプラントにそれでいけるのか、について不安視する意見もあった。これらは、ITERの建設より前に確立された従来型の重量ベース・コスト解析モデルによる結論、すなわち、小型=低コスト、大型=高コスト、という先入観が、日本ではいまだに強いためではないかと思っている。その後のITER建設経験や、IFERCでのEUとの議論も通して、必ずしも大きさとコストが同義でないことを我々は理解しつつある。それら最新の成果を会員にも提供し、「早期実現性」と「将来競合力への見通し確保」の両立を図った原型炉に関する意見集約を図りたい。


3) 今後の活動を強化するための要望

使い勝手の改善
◎ 現状で特に問題と感じているのは、予算利用の制約の多さ。基本的に国内旅費にしか使えず、かつ、講演等がある人にしか払うことができない。本来、フォーラム会合は、すべての参加者からの幅広い意見を聞く場としたいにも拘わらず、上記の制約のために、事前に調整した発表者が多くなり、シナリオのない自由な議論の時間が制約されている。

かなり大きな改革
◎ 研究予算の配分
 フォーラムで原型炉開発のために必要と判断した課題について、研究費や海外渡航費を提供する、あるいは研究員や一般職員を雇用できるような仕組みを工夫してほしい。それを将来、原型炉設計コア組織の一部に取り込めないか。あるいは、逆に、その組織の初期段階として設定してもよいのではないか。

◎ 産業界や他分野の人材との連携強化に向けて
 原型炉に向けて産業界や他分野人材との連携をさらに図っていくためには、東京近傍に何らかの核となる仕組みがあるべきである。机上でできる作業や討議を、都心から離れた場所に縛っておくのは非常に非効率であるし、産業界からの参加も得にくいのではないか。研究側の都合だけで、場所の集約を考えるべきでない。さらに具体的に言えば、原型炉設計チームの一部を、産業界や他分野と緻密な連携を図るため、東京に置くべき。さらにNIFSをはじめ、地方にも分室チームを置き、全国的な原型炉設計の連携を図る。
 それらの分室間で会議が遠隔でできるよう、ネット回線が強力なリモートオフィスを東京に作るべき。
 たとえば、現在のJAEA東京事務所では、青森や海外とTV会議さえつながらない。規則上、運用上、予算上などの制約があるものと推察するが、技術的には容易に改善できるものなので、仕組みを工夫してほしい。

4) 中間報告へのコメント
◎全体設計の進め方について
 従来のJT-60やJET、LHDまでは、概念設計時点にて装置のサイズや要求精度が既存工業技術の範囲内に十分に納まっているという見通しがあった。そのため装置の検討から設計において、まずは物理性能を満たす設計が優先され、その後からあと付けで工学的な技術設計をあてはめても全体の整合性が取れる、という方式で設計、建設が進められたように思う。
 しかしITER以降では装置の大きさと精度、必要とされる製造技術が産業界での技術者の能力も含め既存製造技術を越えてしまうところまで来た。従って原型炉においては、炉設計と製造に適用可能な工学技術開発と、物理的な研究開発を並行させて相互のバランスを取りつつ進め、装置全体としての物理と工学のバランスと最適化を図ることが必要不可欠である。
 物理的な目標と機器の構造概念、それを実現する機器の製造技術、ものを作る工作設備、製造技術者の能力(=人材確保と若い人の勧誘育成)、それにかかる費用、工程など、主要ポイントだけで良いと思うが、全体を通しての最適化を検討を進められる道筋を立てることが重要ではないか

◎その他の点について
 与えられた目標に対しては順調な成果を出したことを評価したい。また、若手の意識を高めた意義は大きいと考える。
 一方で、今回の中間報告では、原型炉の技術課題に注力する取捨選択がなされていないで、総花的に見える。資源は限られているのだから、優先順位をつけて取り組むべき。具体的には、ブランケット、燃料、安全、ダイバータであると考える。
 また、ロードマップとして、人材を切らさず、ITERの建設フェーズの進捗に合わせる形で時間軸を考えてほしい。特に、ファーストプラズマを見てから、というのは重大なポイントなので、何は待つ必要があり、何を前倒せるか、明確にしたい
 ITER、BAは実施機関とテーマが決まっているが、原型炉設計とR&Dは、いまだ実施主体さえない。その構築に至る道筋を皆で考えてほしい。具体的には、産業界と大学の取り込みが重要。ITER、60、LHD以外の人間の確保が必要ではないか。エネルギー全般、原子力分野、社会経済分野との情報交換が重要である。
 トリチウム技術や安全性、ブランケット試験等については、組織化した検討が必要ではないか。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

齊藤
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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))