資料1-3 今後の核融合原型炉開発に向けて

原型炉開発に向けた今後のコミュニティの体制について

核融合科学研究所副所長
金子 修


核融合研は大学共同利用機関として以下の使命を持つ。
この機能を最大限に活かし核融合発電の実証に向けたアカデミーの研究をリードする。

(1) 全国の国公私立大学の研究者のための学術研究の中核拠点として、個別の大学では整備や維持が困難な大規模な施設や設備を全国の研究者の利用に供し、効果的な共同研究を実施することで、我が国の学術研究の発展に貢献する。      (大学の研究活性化に貢献する使命)
(2) 核融合研究分野におけるCOEとして、重要な研究課題に関する世界最先端の研究を進めると共に、海外の研究機関や研究者との協力・交流を推進し国際的中核拠点としての役割も果たす。(自ら最先端研究を行う使命)

所属している組織の既存の枠組み、或いはその運用方法の変更で可能な原型炉開発への指向性を強化する取り組み(人材育成や共同研究、産学官連携の奨励を含む)

○核融合研では平成22年から27年までの第2期中期計画において「LHDを用いたプラズマ実験研究」、「スパコンを駆使した大規模数値実験研究」、「ヘリカル炉設計を背景とした核融合工学研究」の三つを研究の柱に据えることを明記し、具体的な対応として平成22年度より三つの研究プロジェクト体制を構築し、核融合炉実現に向けた研究の方向性を明確にしている。従ってそれらミッションを進めることが原型炉開発に貢献出来る。具体的には、
1) LHDでは長パルス運転を含めたPWI、プラズマの3次元効果、乱流物理研究など炉心へ外挿可能なプラズマの実現とその物理解明
2) 数値実験研究では3Dシミュレーションコードの2Dでの検証としてのトカマクへの適用、PMI評価など
3) 核融合工学研究では、R&Dとして進めている先進ブランケット開発、大電流超伝導導体の開発(高温超伝導を含む)、低放射化材料開発、受熱機器開発など(これらは、当時核融合フォーラムで検討されていたITER・BAと並行して進めるべき研究課題も参考に、大学として担える課題を選択)

○双方向型共同研究において、専門性の高い大学の研究センター間の連携を強化することにより、原型炉に向けたプラズマと工学の研究を加速。
1) 筑波大GAMMA10(PDX)によるダイバータ・PWI研究
2) 富山大-九州大、富山大-筑波大の連携によるプラズマ照射資料のトリチウム挙動研究
3) 東北大-筑波大、東北大-九州大の連携による中性子照射材へのプラズマ照射影響研究など(管理区域間の移動条件を検討中)

○一般共同研究(研究会を含む)や双方向型共同研究などを通じて、
1) 核融合理工学の基礎から安全性・社会受容性評価まで大学に置ける幅広い研究活動を展開
2) 多数の研究者による多様な研究アプローチを包含することで、例えばタングステンを始めとする材料データを幅広く蓄積
3) イノベイティブなアイデアを試す場の提供

○ネットワーク型など人的流動性の高い共同研究を推進することによる学生教育・人材育成への貢献

○日米協力(PHENIX)、日欧協力(post TEXTOR)による材料開発・PWI研究

所属している組織で追加予算が措置されることで可能となる取り組み

○予算措置の充実により、大学とのより強固な全日本的共同研究体制の構築が可能となり、核融合研が先導する形で全国の大学が一体となっての原型炉開発に向けた研究を加速出来る。核融合研の現状のミッションを背景とし、国外にも共同研究展開を図ることで貢献出来ると思われる取組としては以下が考えられる。

1) LHD実験研究では、
(ア) 受電設備と加熱装置の増力により、核融合炉に外挿可能な高性能プラズマでの長時間運転が可能となり、受熱機器開発などの工学課題、不純物除去やダスト制御法など核融合炉プラズマに関連する課題の解決に向けた研究が可能となる。
(イ) 重水素実験による高性能プラズマを背景に、原型炉に必要な計測とそれを用いた運転制御シミュレータ開発が行える。

2) 数値実験研究では、スパコンの性能向上と国内外との共同研究により、以下のような研究が大きく進展すると期待出来る。
(ウ) ITER運転シナリオの下での炉心プラズマにおける高エネルギー粒子物理
(エ) RMPを重畳した場合等の3次元MHD平衡・非線形発展の解析
(オ) 乱流輸送シミュレーションコードを用いた大規模運動論輸送の解析
(カ) 新古典輸送シミュレーションコードを用いた粒子・熱輸送におけるリップル磁場等の非軸対称性効果の解析
(キ) プラズマ壁相互作用のシミュレーション研究を基にした、プラズマ対向壁(カーボン、タングステン等)の物理特性・炉材料研究への貢献

3) 核融合工学では、設備の更新により実機に外挿できる規模の試験研究が可能となり、以下のような研究課題を進めることが出来る。
(ク) 高磁場・大電流超伝導導体の開発と評価 / コイル製作手法開発
(ケ) 先進ブランケット開発に向けた強磁場下での熱・水素回収 / 流動下での寿命評価
(コ) ダイバータ用高性能耐熱材料開発(LHDとの連携)
(サ) NBI用RFイオン源、高効率中性化セルの開発
(シ) 高性能低放射化材料と接合材の開発

4) 大学にある中核設備の更新による連携研究環境整備を図ることにより、双方向的な共同研究の加速が図られる。
(ス) 筑波大学PDXの高熱流束・長パルス化
(セ) 富山大学水素同位体研究センターへのプラズマ照射設備導入によるin situでの材料内トリチウム挙動へのプラズマ照射効果研究
(ソ) 東北大金属材料研究所大洗センターへのプラズマ照射設備導入によるin situでの中性子照射材料へのプラズマ重畳照射効果研究
(タ) 九州大学QUEST装置での高温壁PWI研究

5) ミッションの再定義に象徴されように大学の個性化が進む中で、大学において核融合を支える地道な基礎研究の継続が困難になりつつある。これを維持・促進する為にはインセンティブの付与が必要である。例としては
(チ) トリチウムの環境影響については近年研究を担う人材が少なくなってきているが、予算的なインセンティブを与えることでこれを復活させる。

所属している組織以外で実施してほしい取り組み(要望)

○JAEAにおいては大学の人間が利用しやすい共同研究制度の構築と環境整備(特に六ヶ所核融合研究所)
○大学共同利用機関においても設置が出来ない核融合工学の大規模R&D設備の導入とその共同利用・共同研究への展開
○規格・基準作りでは、学会・民間との連携が必要

行政に対する要望

○原型炉に向けた研究進捗状況の全日本的な視点での把握と適切な政策支援
○機関をまたがった人的流動性の高い共同研究システム構築への支援

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

齊藤
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))