資料1-2 今後の核融合原型炉開発に向けて

次段階に向けたJAEA核融合部門の在り方についての個人的見解

 

日本原子力研究開発機構
核融合研究開発部門  
牛草 健吉

      

 昨年7月3日に開催された第37回核融合研究作業部会において、原子力機構から当初BA期間終了後に、原型炉段階に円滑に移行する為の準備として、ITERを活用して実施する活動(ITERチームジャパン)、JT-60SAを活用して実施する活動(先進プラズマプラットフォーム)、六ヶ所BA活動で整備した施設を活用・拡充して進める活動(核融合フロンティア)の三つの活動を並行して実施することを提案するとともに、これらが原子力機構だけではなく、大学・研究機関、産業界、学協会をはじめ核融合コミュニティが施設・資源の共有化を図りながら一体となり取組むべきだと提案した。原子力機構が提案する並行して進める三つの活動を再度、整理する。

 

(1)ITERを活用して実施する活動(ITERチームジャパン)
 第三段階における我が国の中核装置である実験炉ITER計画はITER機構がその運営・ミッション達成の責を負っている。我が国として、この活動に主体的に参画するためには、国内機関であるJAEA職員、我が国の大学等や産業界の研究者・技術者が、ITERを用いた我が国固有の研究開発に取組み、我が国が必要としている研究成果を挙げ、技術データを蓄積して次段階への基盤構築を図ることが必要。このためには、我が国の研究者・技術者が、国内機関であるJAEAのスタッフとしてITERで活動できるような仕組みの構築が必要。ITERチームジャパンはこれを実現しようとするもの。

 

(2)JT-60SAを活用して実施する活動(先進プラズマプラットフォーム)
 日欧で共同実施するサテライトトカマク活動と並行して、トカマク国内重点化装置であるJT-60SAを利用し、国内の研究者等のITERを用いた研究開発を支援するとともに、我が国の原型炉のための高ベータ定常運転や先進ダイバータなどの炉心・炉工学技術を開拓するもの。

 

(3)六ヶ所BA活動で整備した施設を活用・拡充して進める活動(核融合フロンティア)
 六ヶ所BA活動で整備した施設を活用・拡充して、我が国の原型炉設計、原型炉基盤構築に必要な活動、R&Dの摘出と実施、TBMを含む原型炉ブランケット開発、核融合原型炉開発に必要な炉外コールド試験及び中性子源などを用いたホット試験施設の整備と活用、原型炉建設に必要な各種材料技術の確立、廃棄物の再利用・処理・処分技術の確立、原型炉建設に必要な理論・シミュレーション、ITERやJT-60SA等の装置・実験・解析データベースの集約・蓄積と分析・評価等により、核融合原型炉の技術基盤の構築を図るもの。機構、研究機関、大学・産業界などからなる本格的な原型炉概念設計チームの編成とその活動の実施、共同研究に供するための様々な原型炉に向けた工学試験設備の整備・拡充・活用を行うもの。

  実験炉ITER、JT-60SA並びに六ヶ所での研究施設など、規模の大きな先端研究施設を如何に、国内の研究者・技術者が原型炉の基盤構築という一定の方向に向かって十二分に活用していく仕組みを構築するかということが重要。

 

○原型炉基盤構築に向けたプロジェクトプランの全体マネージメントが必要
 原子力機構が提案する三つのプロジェクトは、大学・研究機関、産業界を含むコミュニティ全体の議論を通じてより効果的なものにすべき。このような議論を通じて、他の研究機関、大学、産業界の関連する計画も含めた、ブラシアップされたプロジェクト計画をコミュニティ全体の一つの大きなプロジェクト計画として、一体的に推進する体制を構築すべき。各研究機関、各大学、産業界などが、それぞれの果たす役割や結果を出すべきタイミング、準備・整備すべき内容を明確化し、その結果の評価をプロジェクト計画にフィードバックし、進捗に応じてリバイスされるべき。そのようなことを実現する為に、コンソーシアムのような形態で共通の目標に向かって活動し、リソースをプールすることが有効かもしれない。合同コアチームをそのように発展させ組織化する、あるいは、核融合エネルギーフォーラムなどにそのような機能を付加したり、その方向に発展的に変えて行くことも考えられる。

○原子力機構核融合部門の役割
 原子力機構核融合部門は、引き続き、ITERの国内機関、BAあるいはPostBAの実施機関としての役割を果たすべき。提案する先進プラズマプラットフォーム、核融合フロンティアとも欧州との国際協力活動と並行して、国内事業としての活動を併せ持つため、国内活動と国際協力を適切に調整することが必要。
 原子力機構は国内機関、実施機関として、これらの開発研究に主導的な役割を果たすべき。その際、コミュニティの総意を適切に反映しつつ(コンソーシアムなどの方針に基づいて)、ITER、JT-60SAをはじめブランケット試験施設、ブランケット用中性子照射施設など規模の大きな先端研究施設の整備、運用、これらを用いた研究開発活動をし、更に、これらの大規模先端研究施設を、広く研究機関、大学、産業界などの共用に供し、十二分に活用できるようにする責務を負うべき。共同研究者の共用に必要な環境の整備、経費の確保に加え、プロジェクトへの理解増進、成果の普及を組織的に行うことが必要。

○他機関との関係
 我が国の原型炉の技術基盤の構築は、研究機関、大学、産業界などが一体となって取組む国のプロジェクトとしての位置づけが必要。このためには、原子力機構核融合部門はもちろん、核融合科学研究所をはじめ大学や産業界の研究者・技術者が、原型炉基盤構築に対して主体的に取組み、それに対して一定の義務を負うべき。特に、核融合科学研究所の炉設計・炉工学研究や理論・シミュレーション研究に関連する活動の中に、上記の基盤構築活動の実施が明確に含まれるべきではないか。更に踏み込めば、原子力機構において、核融合科学研究所の仕事として原子力機構と一体となって炉設計・炉工学研究活動を行うこともあり得るのではないか。大学の共同研究の窓口として、大学関係者が原子力機構の施設を用いた研究開発を実施しやすいよう、調整する機能を果たすことも考えられる。
 原型炉の実現に向けて長期間にわたる研究開発が必要であり、人材の確保・育成が重要な課題。原子力機構は、上記三つの活動を軸に、若手研究者・技術者の共有、ファンドの共有、学生、教官、専門家の共有、施設・設備の共有を図り、流動性を保ちつつ弾力的に人材の育成、安定確保ができる場となる必要がある。これを実現するための具体的な方策を検討する必要がある。たとえば、原子力機構の那珂サイトや六ヶ所サイトに、大学や研究機関が常時駐在(あるいは駐在しているような機能)を置き、大学や研究機関の教育や研究開発活動の拠点として位置づけることも考えられる。

○共同研究・委託研究の拡充が効果的
 現在、原子力機構核融合部門は105件の共同研究を実施している。IFERC、IFMIF/EVEDA関連の65件のBA共同研究は研究資金を補助金から提供している共同研究。JT-60国内重点化共同研究6件、工学施設利用型共同研究9件は、交付金で小額ながら旅費を提供しているが、財政状況が厳しく予算確保が困難な状況。一般の共同研究25件については、一部資金提供しているものもあるが、基本的には資金提供のない共同研究。今後、ITERチームジャパン、先進プラズマプラットフォーム、核融合フロンティアが本格的に推進するにあたって、研究資金を提供する共同研究を大幅に拡充することは、オールジャパン体制で原型炉に向けた課題を解決する有効な手段となり得る。
 委託研究は、産業界や大学等に特定の課題についての研究開発を有償で委託するものであり、現在、補助事業の一環で、ITERのTFコイル接続部試験と超伝導コイル開発に関する技術調査を産業界や研究機関に委託するとともに、JT-60SA関連の研究課題について3件委託研究を実施している。原型炉基盤構築にむけた方向に大学・研究機関や産業界の能力を引き出す有効な手段であり、今後大きく拡充することが効果的である。

○共同研究者のために宿泊施設・交通手段などのインフラ整備などが必要
 共同研究者が、那珂、六ヶ所、カダラッシュにおいて、各拠点にある施設を活用して、効果的に共同研究を行う為の環境づくりが重要。特に、六ヶ所核融合研究所においては、宿泊施設の整備、交通手段の確保が不可欠。更に、共同研究者用の居室の拡充も必要。ITERの組立期・運転期に向けて、カダラッシュサイトにおける国内機関活動を円滑に行うための環境整備も行う必要がある。

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齊藤
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