資料2-1 核融合分野における研究開発の進捗状況-JT-60SA(日本原子力研究開発機構)

 1. 計画名  

JT-60SA計画(トカマク国内重点化装置計画と幅広いアプローチ活動サテライト・トカマク計画との合同計画)

 2. 実施機関名 

独立行政法人 日本原子力研究開発機構

 3. 計画の概要 

 JT-60SA計画は、原子力委員会の定めた「第三段階核融合研究開発基本計画」の中核であるITER計画の幅広いアプローチ活動として文部科学省ITER計画推進検討会が日欧共同で実施すべき事業と選定したサテライト・トカマク計画と、科学技術・学術審議会 学術分科会 基本問題特別委員会 核融合研究ワーキンググループ報告書「今後の我が国の核融合研究の在り方について」に定義されたトカマク国内重点化装置計画の合同計画である。目的は、ITER運転シナリオの最適化などのITERの支援研究、及び高圧力定常プラズマの運転・制御手法の開発などITERで行うことが困難な研究を実施して原型炉の設計を主導し、核融合エネルギーの早期実現を図ることである。本計画により、ITER・原型炉開発を主導する人材を育成する。我が国唯一の大型トカマク装置であり、世界の核融合実験装置の中で、ITERに対して最も大きな支援を行う能力を有するとともに、ITERでは実施が難しい高圧力プラズマ定常化研究開発を実現できる世界で唯一の装置である。幅広いアプローチ計画としての予算規模は日欧折半、全体で435億円であり、外国が200億円を越える大型の資金を我が国設置の研究開発装置に投資する初の事例である。日本原子力研究開発機構の臨界プラズマ試験装置JT-60の一部施設を再利用して、先進超伝導トカマク装置JT-60SAへと改修する。

 4. 主な研究計画及び達成目標  

【達成目標】
 臨界条件クラスの高性能プラズマを長時間(100秒程度)維持する実験をITERに先行あるいは並行して実施し、その成果によってITER計画を効率的に進める。また、原型炉において実用化につながる一定の経済性についての見通しを得るために、ITERでは行うことが難しい「原型炉で必要となる高出力密度を可能とする高圧力プラズマの長時間(100秒程度)維持」を実現し、原型炉の運転手法を確立する。

【研究計画】
 本装置は、現在建設中である。2007年度より機器の設計・製作を開始し、2012年度までに既存設備を解体して組立てを開始し、初プラズマを2018年度末に得て実験運転を開始する予定。
 日欧で合意された実施計画では、JT-60SAの運転は、i)初期研究期(軽水素プラズマを用いた総合機能試験と重水素プラズマを用いた実験研究:4-5年間)、ii)統合研究期(主要達成目標(臨界条件クラスおよび高圧力プラズマの長時間維持)を達成し、自律性の高い高圧力プラズマの定常維持に必要な加熱・計測・電流駆動方法と制御機器構成を決定:4-6 年間)、iii)拡張研究期(高圧力かつ放射損失割合の高いプラズマの運転限界を明らかにするとともに原型炉の標準運転シナリオ・制御手法を確立)の計画である。

 5. 期待される成果  

 ITER及び原型炉を直接見通すあるいは飛躍なく予測できるプラズマ領域で研究開発を進め、得られた高性能プラズマ実験の成果をITERに反映させるとともに、高圧力プラズマの定常化研究によって原型炉に必要な「総合性能」を実証しその運転手法を確立する。
「初期研究期」では、ITERの建設・運転に対して貢献可能な実験項目を優先的に実施し、ITERの加熱運転開始以前にこれを完了することで、ITERのコミッショニングシナリオや運転シナリオ確立へ貢献する。
「統合研究期」では、高圧力プラズマの定常化研究の成果により、原型炉の基本設計を確定する。また、高性能プラズマ実験により、ITERのDT運転の効率的実施に貢献する。
「拡張研究期」では、原型炉の運転・制御手法の詳細を決定するものであるため、原型炉の詳細設計・建設と並行しつつこれを進め、原型炉の運転につなげる。
 本計画は、国際計画であると同時に原型炉に向けた国内トカマク研究計画の中核としての役割を担うものであり、国内研究者200-300名及び欧州を中心とする外国研究者200-250名の参加が想定される。これにより、ITER・原型炉開発を主導する人材を育成する。

 6. 進捗状況及び主な研究成果  

 JT-60SAは、現在、建設期にあり、これまでに日欧合計22件(日本調達分13件、欧州調達分9件)、サテライト・トカマク総事業費に対して86%(日本分82%、欧州分89%)の調達取決めを締結し、機器製作が順調に進展している。真空容器については、40度セクターを6体完成した。超伝導ポロイダル磁場コイルは既に1体を完成し、大型コイル2体を製作中である。容器内機器として、炭素タイル、モノブロックターゲットやダイバータカセットの製作を完了した。また、我が国初となる放射化した大型核融合装置の解体作業であるJT-60の解体を2012年10月に完了した。2013年1月には欧州製作のクライオスタットベースを日立港から那珂核融合研究所まで輸送してJT-60本体室に搬入・設置し、装置本体の組立てを開始した。JT-60SA用の2周波数ジャイラトロン製作・試験や、JT-60SAの仕様をほぼ満足する負イオンビーム電流(110-130A/m2)の100秒間の生成の成功等、プラズマ加熱装置の開発も進んでいる。
 JT-60SAの研究計画については、JT-60SAの実験研究を担う若手研究者を中心に日欧の研究者コミュニティで密接な議論を重ねて企画・提案したJT-60SAリサーチプランVer.3.0(日欧案)を2011年12月に完成し公開した。その共著者数は332名で、日本145名(原子力機構73名、国内大学等(14研究機関、72名)、欧州182名(10カ国、23研究機関)、プロジェクトチーム5名である。現在、このリサーチプランに従って15件の日欧研究協力を実施中である。

 7. 今後の主な予定(今後の課題)

 <装置建設>
 国際合意した工程に従い、2019年3月のファーストプラズマに向けて日欧の機器製作及び組立て・試験を進める。日本担当分としては、超伝導ポロイダル磁場コイル、真空容器、真空容器内機器、熱遮蔽などの製作、及び装置本体の組立てである。また、JT-60SAで再使用するJT-60既存設備の点検・維持・保管運転をあわせて実施する。欧州製作機器の国内輸送(日本担当)や現地試験等を含めて、一層緊密な日欧共同作業を推進していく。
<研究計画策定>
 引き続き、日欧の研究者コミュニティにおいて、研究計画の策定活動を行う。特に、日欧協力によるプラズマ性能予測評価研究を進め、ITER及び原型炉を包含した核融合炉心プラズマ研究開発の体系的な研究戦略の中で、本装置の研究計画の詳細を決定していく。
<日欧共同実施体制の構築>
 幅広いアプローチ協定以降の協力体制については、日欧共同で運転及び研究開発を実施することが文部科学大臣と欧州委員会で合意(2006年4月)されており、その具体的な共同実施方針に関する日欧協議を進めている。現在までにJT-60SA共同利用ワーキンググループにおいて研究体制を合意した。今後、日欧の貢献配分や研究協力協定等を協議する。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

齊藤
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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力))