資料2-1 核融合分野における研究開発の進捗状況-BA活動(日本原子力研究開発機構)

 1. 計画名 

幅広いアプローチ活動 

 2. 実施機関名 

独立行政法人 日本原子力研究開発機構 

 3. 計画の概要 

   核融合原型炉の実現に必要な炉工学研究やITERだけでは実施できないプラズマ物理研究など日欧共通の関心課題について、ITER計画と並行して補完的に取り組む先進的核融合研究開発である。文部科学省に設置されたITER計画推進検討会による検討を経て選定された、原型炉設計・研究開発調整センター、ITER遠隔実験研究センター、核融合計算機シミュレーションセンターからなる国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業(青森県六ヶ所村)、サテライト・トカマク計画(JT-60SA)(茨城県那珂市)、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)(青森県六ヶ所村)が実施されている。日欧で取り決めた幅広いアプローチ協定は、2007年2月に署名、同年6月1日に発効した。総経費は、日欧が920億円を半分ずつ分担する。また、幅広いアプローチ協定に基づく実施機関として、文部科学大臣が日本原子力研究開発機構を指定した。

 4. 主な研究計画及び達成目標  

【主な研究計画】実施期間:約10年間
(1)原型炉設計・研究開発調整センター: 2010年度までに準備・調査し、2011-2017年度でR&Dと設計を本格実施。

(2)ITER遠隔実験研究センター:2012年度より設計・検討・整備を実施し、2015-2017年度で運転を予定。

(3)核融合計算機シミュレーションセンター:2011年度に計算機の搬入・据付けし、2011年度後半-2017年度で計算機運用。

(4)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA):2013年度までにターゲット系・試験設備系を開発、工学設計を実施し、2017年度までに加速器系の開発を実施する予定。

(5)サテライト・トカマク計画(JT-60SA): 2007年度より機器の設計・製作を開始し、2012年度までに既存設備を解体して組み立てを開始し、初プラズマを2018年度末に得て実験運転を開始する予定。

【達成目標】以下を実施して、核融合エネルギーの早期実現に資する。
(1)原型炉設計・研究開発調整センター:概念設計を実施し、核融合原型炉の共通概念を確立する。また、早期に必要な物理的、工学的課題についてR&D項目を抽出する。

(2)ITER遠隔実験研究センター:ITER実験施設とITER遠隔実験センターを高速ネットワークで結び、日欧のセンターからITER参加極の研究者がITERの実験条件の提案・データ収集・解析などを行う。

(3)核融合計算機シミュレーションセンター:ITERの燃焼プラズマ挙動、サテライト・トカマク装置の先進定常プラズマ挙動、次世代核融合設計、先進材料開発などに関連するシミュレーションを実施する。

(4)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA):IFMIFの主要機器である加速器系、ターゲット系、テストセル系の原型装置を整備し、その工学実証を行うとともに、IFMIFについて統合設計を行う。

(5)サテライト・トカマク計画(JT-60SA):臨界条件クラスのプラズマを長時間(100秒程度)維持する高性能プラズマ実験を行うとともに、原型炉で必要となる高出力密度を可能とする高圧力プラズマを100秒程度維持する。

 5.期待される成果 

(1)原型炉設計・研究開発調整センター:核融合原型炉に関する設計仮定の吟味、コスト、工程、安全性について統一的な見解を得るとともに、抽出した早期に必要な物理的、工学的課題についてのR&D項目より予備的なR&D(低放射化構造材料、原型炉ブランケットなど)の結果を得る。

(2)ITER遠隔実験研究センター:日欧の研究者が集い、ITER実験参加の一大拠点を形成する。

(3)核融合計算機シミュレーションセンター:シミュレーション結果を踏まえ、ITERやサテライト・トカマク装置のプラズマ制御方法を改善し、また、次世代核融合設計、先進材料開発などにフィードバックする。

(4)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA):IFMIFの主要機器である加速器系、ターゲット系、テストセル系についてはその工学実証を通じて要素技術を確立するとともに、IFMIFの統合設計としてサイト要件、安全評価、運転計画などを明確化する。

(5)サテライト・トカマク計画(JT-60SA):得られた高性能プラズマ実験の成果をITERに反映させるとともに、高圧力プラズマの結果を踏まえ原型炉の運転手法を確立する。
また、これらの研究を通じて、ITER・原型炉開発を主導する人材を育成する。

 6.進捗状況及び主な研究成果 

 IFERC事業では、2007-2009年度に原型炉の基本概念の検討やR&D活動の準備を終え、2010年度より本格的な設計活動とR&D活動を行うフェーズに移行している。
(1)原型炉設計・研究開発調整センター:2010年度に放射性物質(トリチウムや金属放射化物など)や特定化学物質であるベリリウムを使用できる原型炉R&D棟が竣工するとともに、同棟内の実験機器などの整備もほぼ完了し、原型炉技術としての5つのR&D(SiCf/SiC複合材、トリチウム技術、原型炉ブランケットのための材料工学、原型炉ブランケットのための先進中性子増倍・トリチウム増殖材料)を本格的に開始した。2012年度は、トリチウム水による実験、SiC/SiC の恒温強度データ取得、低放射化フェライト鋼の電気炉溶解及びスラブ製作、先進増倍材の造粒技術開発等を実施した。また、原型炉設計安全性研究の調達取決めを締結し、原型炉設計に関する技術調整会合等を通じてシステムコードや安全性等に関する日欧共同設計作業を実施した。

(2)ITER遠隔実験研究センター:2010年度に計算機・遠隔実験棟が竣工し、2012年度に遠隔実験センターの全体計画を策定した。

(3)核融合計算機シミュレーションセンター: 2010年度に計算機・遠隔実験棟が竣工して、計算機の冷却施設や電源設備などを整備するとともに、高性能計算機の機種がフランス・Bull社に選定された。本計算機は2011年8月から六ヶ所に搬入が開始され、2012年1月から運用を開始。Linpack性能1.23ペタフロップスを達成(2013年6月時点で日本第2位,世界第20位)。平均利用率80%以上を達成。

(4)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA):東日本大震災により被災した液体リチウム試験ループの復旧を2012年7月に完了させ、性能実証試験を同年9月から開始し、目標の最大流速20m/sを正圧下で達成した。日本が分担するプロトタイプ加速器用機器の調達を実施し、高周波入力結合器2台の製作を完了するとともに、欧州が調達するプロトタイプ加速器入射器の据付け・調整を開始し、ビームが通過する位置を0.1mm精度で設計要求値に合わせるために必要な基準参照点の位置決め(ビームライン測量)を実施した。IFMIFの工学設計の日本が担当する部分を実施し、設計記述書を完成した。

(5)サテライト・トカマク計画(JT-60SA):JT-60SAは、現在、建設期にあり、これまでに日欧合計22件、サテライト・トカマク総事業費に対して86%の調達取決めを締結し、真空容器40度セクター6体や超伝導ポロイダル磁場コイル1体が完成するなど機器製作が進展している。また、我が国初となる放射化した大型核融合装置の解体作業であるJT-60の解体を2012年10月に完了した。2013年1月には欧州製作のクライオスタットベースをJT-60本体室に搬入・設置し、装置本体の組立を開始した。また、日欧合計332名(日15研究機関145名、欧10カ国182名、プロジェクトチーム5名)で JT-60SA リサーチプランVer.3.0を2011年12月に完成した。

 7.今後の主な予定(今後の課題)  

(1)原型炉設計・研究開発調整センター:引き続き、本格化した原型炉技術としての5つのR&Dを継続し、研究成果のまとめに向けた活動を開始するとともに、原型炉設計の共同作業を継続する。

(2)ITER遠隔実験研究センター:施設の設計・整備に向け、設計および技術課題などの検討を行う。

(3)核融合計算機シミュレーションセンター:高性能計算機の運用を継続し、計算機増力の検討をするとともに、高性能計算機に最適化されたシミュレーションソフトなどの開発・整備を行う。

(4)サテライト・トカマク計画(JT-60SA):2019年3月のファーストプラズマに向けて日欧の機器製作及び組立て・試験を進める。日本担当分としては、超伝導ポロイダル磁場コイル、真空容器、真空容器内機器、熱遮蔽などの製作、及び装置本体の組み立てである。引き続き、日欧の研究コミュニティによる共同研究や研究計画の改訂活動を行う。JT-60SAの実験が本格化する幅広いアプローチ協定以降の日欧の共同実施について、現在までにJT-60SA共同利用ワーキンググループにおいて研究体制を合意した。今後、日欧の貢献配分や研究協力協定等を協議する。

(5)国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA):原型加速器入射器の据付けを行い、調整運転を開始する。リチウム試験ループの実証試験を継続する。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

齊藤
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))