資料2-1 核融合分野における研究開発の進捗状況-ITER計画(日本原子力研究開発機構)

 1. 計画名 

 ITER計画 

 2. 実施機関名 

 独立行政法人 日本原子力研究開発機構 

 3. 計画の概要 

   国際協力の下、実験炉の建設・運転を通じて、環境への負荷が少なく人類の恒久的なエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証するプロジェクトである。1985年11月の米ソ首脳会議における核融合研究開発推進の共同声明から始まり、概念設計活動、工学設計活動の後、2001年11月からは建設に向けた政府間協議が開始され、2005年6月のITER閣僚級会合において、ITERサイト地がフランス・カラダッシュに決定した。2006年11月に署名、2007年10月24日に発効したITER協定により、国際法上の法人格を有する国際機関であるITER機構が設立、同機構がITER計画を実施している。総経費は、約1兆7千億円(2006年10月末時点で換算)であり、日本の費用分担は、建設期9.1%、運転期13%(日本の調達分担は、欧州からの割譲分を合わせて18%)。参加極は、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極である。ITER協定に基づく国内機関として、文部科学大臣が日本原子力研究開発機構を指定した。現在、サイト整備や機器製作など建設が開始されている。 

 4. 主な研究計画及び達成目標  

【主な研究計画】スケジュール
建設期間:10年、運転期間:20年、除染期間:5年
初プラズマ生成予定は2019年、DTプラズマ運転開始予定は2027年であり、段階的に炉心プラズマの性能を上げて行く計画である。

【達成目標】
(1)核融合熱出力50万kWを達成する。
(2)エネルギー増倍率10以上の燃焼プラズマを実現(約400秒間)する。
(3)エネルギー増倍率5以上の燃焼プラズマにおける定常運転(約3000秒間)を実現する。 

 5. 期待される成果 

 核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証する。具体的には、次の通り。
(1)燃焼プラズマの物理特性を解明する。
(2)磁場や外部加熱入力、燃料供給などを駆使して、外部からの制御裕度が小さい燃焼プラズマを安定かつ効率的に維持するための制御技術を確立する。
(3)将来の核融合プラントのための工学機器(熱・粒子制御機器やトリチウム生成・取扱い技術など)を開発し、核融合エネルギーの生成・取出しに必要な工学技術としての有効性を実証する。
(4)ITERの建設・運転を通じて、超伝導磁石技術や核工学技術を含めたシステム全体として統合された技術の確立を図るとともに、核融合燃焼を行う装置としてのITERの安全性実証を行う。
(5)トリチウム増殖・発電ブランケット機能の実証を進め、発電ブランケットに関わる基本的な技術を獲得することができる。
ITERにおける核融合エネルギー利用の科学的・技術的実証の後、原型炉における発電実証段階へ移行することとなる。
さらに、核融合エネルギーの科学的・技術的な実現可能性を実証する過程において、超伝導技術の応用による電力貯蔵など、幅広い分野にわたる産業技術への波及効果も期待できる。 

 6. 進捗状況及び主な研究成果

  ITERは、現在、建設期にあり、ITERサイトにおいては、サイト整備が進められている。ポロイダル磁場(PF)コイル製作棟に引き続き、トカマク建屋基礎工事・ITER本部建屋が完成し、本年1月には仏教育大臣の臨席の下、本部建屋の竣工式が開催された。これを機に、サイトの所在地をサン・ポール・レ・デュランスと呼称することとなった。
一方、日本が調達を分担する調達機器であるトロイダル磁場(TF)コイル、中心ソレノイド(CS)、ダイバータ外側ターゲット、中性粒子入射加熱装置、ブランケット遠隔保守機器、高周波加熱装置、トリチウムプラント設備、計測装置については、設計検討を進めるとともに、調達取決めを締結して機器製作を進めている。2013年度末までに日本分担機器全体の88%の調達取決めを締結する。
以下に主な成果を記す。全部で19個製作するTFコイルの日本分担は、コイル4.75個(25%)分のコイル超伝導導体製作、コイル9個分のコイル製作、コイル19個分全てのコイル構造物製作である。このうちコイル超伝導導体については、素線91%の製作を完了し、コイル撚線については、91%の製作を完了し、超伝導導体については、84%を製作完了している。TFコイル及びコイル構造物については、実機コイル・構造物の1号機の調達契約を締結し、併せて、ラジアルプレートや構造物の実規模試作を進めているところである。年度内には残りのコイルと構造物の調達のための契約を締結する予定である。CS導体については、2009年度に調達取決めを締結し、2012年度から調達を開始した。外側ターゲットの全数を日本が分担するダイバータについては、実規模のプロトタイプ製作を継続するとともに、高熱負荷試験を行っているところ。中性粒子入射(NB)加熱装置については、NB試験施設の電源調達取決めに基づき、最終設計報告書の承認をITER機構より受けて製作を開始した。また、NB試験施設のための高電圧ブッシング調達取決めに基づき、大型セラミック全5体のうち2体の製作を完了した。高周波加熱装置においては、ITERで要求される1MW、1000秒クラスの170GHzジャイロトロン(高周波源)発振を実証し、現在ITER調達に向け機能試験、信頼性向上試験を行っている。なお、高周波加熱装置の成果については、平成20年度に文部科学大臣賞(研究部門)を受賞している。 

 7. 今後の主な予定(今後の課題)

  超伝導コイル導体の調達とトロイダル磁場コイル・構造物の実機製作、ダイバータプロトタイプの製作と高熱負荷試験を継続する。CSコイル導体の3モジュール分、NBTFブッシング・電源の第2期分の契約を締結するとともに、残りのTFコイル及び構造物の契約を締結し、日本が調達責任を有する全てのTFコイルに関する契約締結する。遠隔保守機器の構造・機構・制御に関わる詳細設計とマイクロフィッションチェンバーの詳細設計を継続する。2013年度に高周波加熱装置、周辺トムソン散乱計測装置、ポロイダル偏光計、ダイバータ不純物モニタ、ダイバータ赤外サーモグラフィー、ダイバータ熱電対、上部ポート統合機器、下部ポート統合機器の調達取決めを締結して詳細設計を開始する。高周波加熱装置については、ジャイロトロンの機能試験、信頼性向上試験を進めつつ調達取り決めを結ぶ。また、ファーストプラズマに用いられる予定のランチャー(高周波入射系)の設計開発を進める。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

齊藤
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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))