FPCC42における欧州ロードマップの議論

FPCC42(平成25年1月22-23日@IEA本部)における欧州ロードマップの議論

平成25年1月28日
原子力機構 高津

 欧州委員会の求めに応じて、EFDAはアドホック委員会を構成して、核融合ロードマップの検討を行ってきた。この委員会は、昨年末に最終報告書を欧州委員会に提出しており、今回、この委員会の議長であるロマネリJET所長(EFDAリーダー)から報告書の概要が紹介された。なお、この報告書は、欧州の次期(第8次)フレームワーク計画(8th Framework Program:2014-2020年をカバーし、Horizon 2020とも呼ばれている)の基礎となるものと理解される。
 ロードマップの検討では、1)ITERの成功が鍵、2)ITERと平行して、核融合照射環境での材料の特性を評価するためにIFMIFが必要、3)原型炉は、ITERから商用炉までの唯一の中間ステップ、4)2050年までに核融合は電力市場に参入する、という基本的な立場を掲げ、また、野心的ではあるが、現実性を失わないロードマップの検討を行ったとしている。具体的には、鍵となる8つのミッションにブレークダウンして、実施すべき開発項目、必要な試験施設、想定される必要資源と年度展開を示している。
 8つのミッションとは、1)プラズマ運転、2)熱除去(ダイバータ)、3)材料、4)ブランケット、5)安全性、6)原型炉設計、7)低コスト化(電気料金の競争力)、8)ステラレーターであり、今回の報告で強調された点は以下の通り。
1)プラズマ運転:研究開発は主にITERで行うことになるが、リスク緩和としてJETとJT-60SAの利用が重要。
2)熱除去:ITER路線のみではリスクが高く、緩和策が必要。ヌル点近傍の磁場配意の工夫が必要であり、その有効性を実証するため、国際協力で装置を準備すべき(Joint Divertor Tokamak Experiment Facility)。
3)材料:2020年までに基本材料を特定し、その後先進代替材を模索する。2020年代に原型炉の設計を固めるためには、それまでに核融合照射環境での材料特性を評価する必要があり、そのためには(IFMIFの建設を待つのではなく)IFMIF/EVEDAからの展開(成果物を利用して、早期中性子源としての利用)を図るのが現実的かつ効果的。
4)ブランケット:現在開発が進められている概念(増殖材:セラミック微小球かLiPb)はいずれもHe冷却であるが、原型炉では水冷却の可能性も考慮。

 この報告に対し、「2020年までに基本材料を選定することは可能か?」「2020-2030年代に必要となるトリチウムはどこから入手するのか?」「ブランケットの冷却材選定より、ダイバータの冷却材選定の方がクリティカルでは?(回答:水冷却)」「原型炉でも発電単価を目標にするのか?」といった質問があった。
なお、ロマネリJET所長のプレゼン資料を添付する。また、この報告書全文は http://www.efda.org/2013/01/bringing-fusion-electricity-to-the-grid/でダウンロード可能である。
(以上)

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

小野
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))