資料1-1 原子力科学技術の推進方策について

平成23年11月28日
原子力科学技術委員会

原子力科学技術の推進方策について <最終取りまとめ(案)>(抜粋)

 目次

1.基本的考え方
 (1)推進方策の目的・位置付け
 (2)課題領域と検討の視点

2.原子力科学技術を支える施策
(1)原子力に関する基礎的・基盤的研究の推進
(2)原子力人材の育成
(3)原子力と社会との関係・コミュニケーションの深化

3.我が国の重要課題達成に向けた当面の重点的取組
<課題領域1「震災からの復興、再生の実現、」>
・放射性物質による汚染からの環境回復に関する技術開発
・ロードマップへの対応
・原子力施設の廃止措置技術
<課題領域2「環境・エネルギー」(グリーン・イノベーション)>
・核融合研究開発
・高温ガス炉研究開発
<課題領域3「医療・健康・介護」(ライフ・イノベーション)>
・放射線被ばく医療研究
・放射線の医学的利用
<課題領域4「安全かつ豊かで質の高い国民生活」>
・原子力安全研究
・放射性廃棄物の処理・処分
<課題領域5「科学技術基盤」>
・量子ビームテクノロジー研究開発・利用促進
・原子力利用に係る技術基盤の維持・強化
<課題領域6「国際的取組」>
・事故後の海外諸国や国際機関との連携・協力
・保障措置、核不拡散、核セキュリティに関する研究開発

4.政策の方向性を踏まえながら検討を要する課題について
・高速増殖炉サイクル技術
・使用済燃料再処理技術

 <課題領域2 環境・エネルギー>
第4期基本計画では、安定的なエネルギー供給と低炭素化の実現に向けて、「原子力に関する研究開発等については、東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を踏まえるとともに、今後の我が国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を見据えつつ実施する。ただし、原子力に係る安全及び防災研究、放射線モニタリング、放射性廃棄物や汚染水の除染や処理、処分等に関する研究開発等の取組は、これを強化する。」とされている。また、「核融合の研究開発については、エネルギー政策や原子力政策と整合性を図りつつ、同時に、その技術の特性、研究開発の段階、国際約束等を踏まえ、これを推進する。」とされている。

 我が国においては、将来においてエネルギーを長期的・安定的に確保するとともに環境問題を克服する可能性を有する核融合の研究開発や、資源有効利用性、経済性、安全性、エネルギー効率性等に優れた高温ガス炉の研究を推進し、世界をリードする成果を挙げており、これらを引き続き推進していくことが必要である。

また、原発の依存度の低減に関する国民的議論が現在行われているが、現在、我が国のエネルギーの約30%は原子力発電によるものであり(中央電力協議会「平成22年度供給計画の概要」(平成22年3月)を参考)、既設の原発に係る安全性の確保等に関係する重要課題については、<課題領域4 安全かつ豊かで質の高い国民生活>において記載することとする。 

○核融合研究開発
核融合エネルギーは、将来においてエネルギーを長期的・安定的に確保するとともに、環境問題を克服する可能性を有している。また、安全性等の観点で優れた特性も有しており、その実現は人類共通の課題である。現在、国際約束であるITER(国際熱核融合実験炉)計画やBA(幅広いアプローチ)活動に加え、国内の重要施策として、トカマク方式、ヘリカル方式、レーザー方式及び炉工学の推進を図っているところである。ITER計画をはじめこれらの核融合研究開発については、長期的視野に立って、安全性の確保が何よりも重要との認識の下、安全性の研究をさらに深めつつ、引き続きこれらの核融合研究開発を着実に推進していく必要がある。

 (国際約束に基づくITER計画等の推進について)
 ITER計画は世界7極(日米欧露中韓印)により進められている、核融合エネルギーの実現に必要不可欠な国際共同プロジェクトであり、今般の東日本大震災後のスケジュールの遅れを最小化し、ITERの建設ができるだけ早期に実現するよう、我が国が分担する調達活動等を積極的に行う必要がある。

 また、BA活動は、ITER計画を補完・支援する日欧協力による重要プロジェクトであり、ITER計画の進捗を踏まえつつ、確実に取組を進める必要がある。

  (重点化計画における推進4分野について)
・トカマク(トカマク国内重点化装置計画)
 高ベータ定常運転(※1)を可能にする日本原子力研究開発機構のJT-60SA計画については、BA活動におけるサテライト・トカマクの進捗を踏まえて、また、安全の確保に最大限の注意を払いつつ、解体・改修を進めていくべきである。

 ・LHD(大型ヘリカル装置)計画
 核融合科学研究所のLHD計画では、プラズマに関わる学理の構築を行っている。今後、より臨界プラズマ条件(※2)に近い高性能の定常プラズマを実現するために、重水素実験に向けた準備を着実に行うとともに、プラズマに関する学術研究の中核拠点として大学等との共同研究を引き続き推進していくべきである。

 ・レーザー方式
 レーザー核融合については、現在、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターを中心として高速点火方式による第1期の実証実験(FIREXⅠ)が進められているが、次段階への移行判断のため、核融合点火温度(5千万℃-1億℃)の達成等の研究成果を確実にあげることが重要である。

 ・炉工学
 炉工学については、ITER計画及びBA活動との連携を図りながら、日本原子力研究開発機構における炉工学技術開発や、大学等における幅広い基礎研究を総合的に推進することにより、炉工学技術の基盤の形成を着実に図るべきである。

※1:ベータ値(プラズマ圧力/磁場圧力)が高い状態での連続運転で、高ベータ化は、核融合炉の経済性を高める上で、必要不可欠な要素となる。
※2:プラズマイオンが同数の重水素と三重水素で構成される時に、プラズマに注入したパワーと等しいパワーが核融合反応で発生する条件。

 ○高温ガス炉研究開発
高温ガス炉は、熱需要に応えることができ、地球環境問題の解決に貢献しうるとともに、自己制御性に優れるという安全上の特徴から、途上国等の原子力新興国における原子力利用に適しているといわれている。

独立行政法人日本原子力研究開発機構が開発してきた技術は世界的にも注目されており、高温ガス炉技術の開発に着実に取り組むことが重要である。

 

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

小野
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(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))