資料1-3 進捗状況について-FIREX1計画(大阪大学レーザーエネルギー学研究センター)

 1.計画名   

レーザー高速点火計画FIREX-1

 2.実施機関名   

大阪大学レーザーエネルギー学研究センター、核融合科学研究所、他

 3.計画の概要   

 レーザー核融合は燃料を太陽の中心を超える密度に圧縮し、その一部を高温に加熱することにより核融合点火を起こし、そこから発生するアルファ粒子により、周りの燃料を燃焼させ、高い核融合利得を実現させるものであって、磁場閉じ込め方式とは原理的に異なる新しい核融合炉の可能性を拓くものである。
 点火方式として、圧縮プラズマの中心に点火用高温プラズマを発生させる中心点火方式に対し、高密度圧縮プラズマを超高強度レーザーにより追加熱する高速点火方式は、はるかにコンパクトなレーザーで高いエネルギー増倍率が期待できる。
 高速点火実証計画FIREXでは、第1期(FIREX-1)において、燃料を点火温度まで加熱する。その成果により、第2期(FIREX-2)では、アルファ粒子の飛程より大きな燃料を加熱し、点火・燃焼を実証する。また、高速点火方式によるレーザー核融合炉への展望を明らかにするために、高速点火型レーザー核融合炉の概念検討に基づく炉工学開発を進める。

 4.主な研究計画及び達成目標

 レーザーによる高速点火計画FIREX-1では、大阪大学を中心として核融合科学研究所と協力して、燃料を点火温度まで加熱することを目標とする。そのために、以下の研究計画を実施する。
・LFEXレーザーの建設
 新たに加熱用レーザーとして、超高強度短パルスレーザー装置LFEXを建設する。このレーザーは波長1.053ミクロンの4ビームからなり、パルス幅0.5ピコ秒から20ピコ秒で、最大出力は10キロジュールとし、既存の激光XII号レーザーと同期運転を行う。
・圧縮燃料の高速加熱
 既激光XII号レーザーにより圧縮した核融合燃料を、LFEXレーザーを用いて5千万度以上の核融合点火温度に加熱し、高速加熱が可能であることを原理実証する。そのために必要となる、ターゲット製作技術開発、プラズマ診断技術開発、シミュレーションコード開発を行う。
・ レーザー核融合炉工学開発
 2006年に発表された高速点火方式によるレーザー核融合炉KOYO-Fの課題の解決を、双方向共同研究を通して進める。

5.期待される成果 

 FIREX-1による成果は、核融合炉の可能性を拡げるばかりでなく、我が国の学術基盤の強化とレーザー技術に関する知的財産権の確保に貢献する。
 さらには、FIREX-1の成果により、点火・燃焼の実現を目指す第2期計画(FIREX-2)に発展させるか否かの判断を行うことが可能となる。

 6.進捗状況及び主な研究成果  

 「高速点火」方式による点火燃焼を目指したFIREX計画が提案され、第1期計画FIREX-1(目標:5千万度以上の温度の実現)を進めている。これまでの主な進展・成果は、
・LFEXレーザーの建設・調整・稼働
 平成15-19年にかけてLFEXレーザーの建設が行われ,平成20年3月にパルス圧縮部を追加し、その後大出力ビーム増幅、パルス圧縮、集光照射に関する調整が行われ、全4ビーム中の2ビームまでについて、ターゲット照射実験への出力供給を開始した。
・高速点火圧縮加熱の統合実験実施
 重水素化ポリエチレン球殻に加熱レーザー注入路を確保するための金コーンを取り付けたターゲットを用いて、激光XII号レーザーにより圧縮された燃料プラズマの最大圧縮時に同期してLFEXレーザーを照射し高速加熱する圧縮加熱統合実験を、平成21年度より開始した。
 平成21年度における第1回実験では、LFEXレーザーのプレパルスが問題となったが、平成22年度における第2回実験においてはプレパルスを大幅に抑制し、LFEXレーザーによる高速加熱により核融合中性子発生数の増大を観測し、中性子数3.5x107を達成した。これは過去(平成14年度)における加熱実験の加熱中性子数を凌駕するものである。またこのときの加熱レーザーから燃料プラズマへの加熱効率は10-20%という高い効率であった。
 統合実験実施のため、ターゲット製作技術を向上し、高精度ターゲットの製作が可能となった。また、超高強度レーザー照射に伴う高エネルギーX線(γ線)過酷環境下で動作可能なプラズマ計測手法を開発し、高精度プラズマ診断が可能となった。さらに、流体コード、フォッカープランクコード、PICコードの連結により、高速点火ターゲットのシミュレーションとターゲット設計が可能となった。
・ レーザー核融合炉工学開発
 レーザーについては冷却Yb:YAGセラミックレーザーで建設可能の見通しが付いた。極低温ターゲット開発では高い燃料充填率が確認された(核融合研)。ターゲットのインジェクション、トラッキング、ビームステアリングでは必要な精度を出せる見通しが付いた(茨城大、岐阜大、広島大)。液体壁ではカスケード方式で安定な第一壁保護流が形成できることを原理的に証明した(京都大)。また、液体壁から突き出たビームポートは磁場で保護できる見通しが付いた(宇宙科学研)。LiPb/水の熱交換器を通してのトリチウムの拡散漏洩は二重管と従来技術を併用することにより許容できるレベルにまで抑える見通しが付いた(九州大、大阪大)

7.今後の主な予定(今後の課題)    

 今後、平成23~24年度にLFEXレーザーの出力を増強し、圧縮加熱統合実験により加熱温度の目標値:5千万度~1億度の実現を目指す。そのため、
・LFEXレーザーの建設・調整・稼働
 平成22年度まで2ビームだった出力ビーム数をフルシステムの4ビームに増強し、最大10キロジュールの出力を実験に供給すべく、平成23~24年度に調整・運転を行う。
・高速点火圧縮加熱の統合実験実施
 引き続き、圧縮加熱統合実験を行い、加熱LFEXレーザーの出力増大により、平成23~24年度に加熱温度5千万度以上の目標達成を目指す。さらに、先進的概念を導入したターゲット設計を行い、加熱効率の向上を図る。
 重水素化ポリエチレンターゲットによる実験を完了した後は、重水素クライオターゲットを用いた圧縮加熱統合実験に移行することを目指す。
 統合されたコード群を、FIREX-1の成果によりベンチマークし、これを用いてFIREX-2レベルでの点火・燃焼ターゲットの設計を行う。
・ レーザー核融合炉工学開発
 実験炉に向けてはビームステアリング後のダンピングの制御や、極低温ターゲットの連続供給技術の開発を行う。高速点火方式で商用デモ炉以降を造る場合の、点火ビーム最終光学系の研究を行う。また、福島の事故を受け、多量のトリチウムを使う炉や、ターゲット供給系の安全評価の研究を行う。

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