原子力科学技術委員会 核融合研究作業部会(第33回) 議事録

1.日時

平成24年9月25日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 今後の核融合研究開発の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

小森主査、疇地委員、岡野委員、小川委員、尾崎委員、金子委員、笹尾委員、髙津委員、東嶋委員、平山委員、森委員

文部科学省

坂本研究開発戦略官、中田補佐、飯嶋核融合科学専門官、山田科学官、門学術調査官

5.議事録

【小森主査】  それでは時間ですので、ただいまから第33回核融合研究作業部会を開催します。本日は石塚委員、大島委員、堀池委員から御欠席との御連絡をいただいております。
 本日の議事について御紹介します。本日は今後の核融合研究開発の在り方について、その他について御審議いただく予定です。
 続いて、配付資料の確認を事務局からお願いします。
【飯嶋専門官】  はい。配付資料につきまして、資料1が小川先生から提出いただいております、核融合エネルギーの特徴と核融合炉の安全性・安心感。
 資料2といたしまして、IFERCにおける安全研究の現状と研究計画。岡野委員から提出いただいたものです。
 参考資料1といたしまして、今後の核融合研究開発の在り方に関わる審議事項についてを配付させていただいております。
 以上です。
【小森主査】  最初の議題は安全性研究についてです。プラズマ・核融合学会でまとめました核融合エネルギーアセスメントについて、小川委員から、IFERCにおける安全性研究について、岡野委員より御説明願います。15分ずつでお願いします。
【小川委員】  それでは、私、小川の方から資料1に沿って説明させていただきます。
 この活動は、プラズマ・核融合学会の方で、核融合エネルギーアセスメントに関するタスクフォースを1年前に立ち上げましたが、その報告書の内容であります。
 本タスクフォースの趣旨は、そこに書きましたように、東日本大震災に伴う福島第一原発での事故のため、将来のエネルギー源としての原子力エネルギーの位置づけの見直しの議論が活発となっている。一方、同じ核エネルギーではあるが、核融合エネルギー及び核融合炉は、核分裂エネルギー及び原子炉とは異なった特徴・特性を有している。ここでは核融合エネルギーの特徴や核融合炉の安全性等の特性を踏まえ、核融合エネルギー開発に対するアセスメントをまとめる、というものでございます。
 実は私は今この学会の会長をしておりますので、私自身が中心となって企画しました。またメンバーとして、理事の方々に加わっていただいておりまして、小森主査をはじめ、笹尾先生、堀池先生、さらに疇地先生らも加わっておられます。
 それから専門委員としてそれぞれの分野の御専門の方に入っていただきまして、原子力機構、核融合研、それから大学や産業界から入っていただきました。さらにオブザーバーという形で山田科学官や門学術調査官にも入っていただきました。
 また、この活動をするに当たって、核融合科学研究所にいろいろな意味での御支援をいただきまして、その核融合科学研究所の共同研究との一環という形でも進めさせていただいています。
 それから本日私がお話しする内容のベースは、平成12年の核融合会議の開発戦略検討分科会の資料であります。この先駆的な研究を参考にしながら、最近のいろいろな観点から見直しを図ったものでございます。
 それでは具体的な内容に入らせていただきます。
 皆さん御承知のように、原子炉の安全性というのは、「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」というのが大原則です。ここで核融合炉では、核的暴走は起こらず、自動的に止まりますので、止めるというものは自動的に満たされていると言えます。この点が核融合炉の大きな特徴でありますが、福島の原発事故を見たときに、実は原子炉は福島第一も含めまして福島第二、それから女川原発も全部止まりました。従って、「止める」はきちんと機能したと言えます。ただし、福島第一原子力発電所で問題になったのは、その後の崩壊熱に対する除熱が十分ではなかったこと、そのために放射性物質の環境放出が起こってしまったという事です。つまり、「冷やす」、「閉じ込める」という観点がやはり十分ではなかったということだと思います。
 核融合に関しましても、やはりこの「冷やす」と「閉じ込める」に関しましては、ある意味では定性的には同じ特性を持っているところはあります。ただし、その定量性に関して違いがあると考えております。その辺の安全性・安心感というものに関して、今回は主にこの2点にフォーカスして議論し、まとめたものでございます。
 従って、まず核融合炉の崩壊熱に関する評価、除熱の能力に対する評価、それに対して安全対策はどうなのかを議論しました。
 それから次に、やはり放射性物質の閉じ込めに関して議論しました。閉じ込めるべく、いろいろな安全機能を課しますけれども、安心感という観点からすると、内包する放射性物質がどのくらいあるのかという点が重要となります。そこでこの点を定量的に評価する必要があるのではないかと考え、内包する放射性物質の定量的評価および環境影響について考察してみました。
 以上のような点を踏まえまして、社会の核融合に対する安心感の醸成に努めたいと思っている次第でございます。
 それではまず最初に、崩壊熱と内包する放射性物質の量のハザードについて主に議論をしましたので、御報告させていただきます。5ページ目の資料にありますように、核融合炉の崩壊熱を、もう一度きちんと最新のデータを使って評価したというものが、この5ページ目のものでございます。まず右上の表の中で見ていただくと、核融合炉を停止した直後、1日後、1箇月後、どのくらいの崩壊熱になっているのかと言いますと、3ギガワットの核融合出力のものに対して、全崩壊熱量としては停止した直後は54.1メガワット、それから1日後は11.3メガワット、それから1箇月後は3メガワットとなっています。これは核融合出力に対する全体の割合としてみると、直後は1.8%程度、1日後だと0.38%、それから1箇月後だと0.1%程度です。
 この全崩壊熱は、原子炉の崩壊熱に比べて小さいですけれども、桁違いに小さいというわけではなくて、十分除熱しなければいけない量であるということが認識されます。
 それから何がこのような崩壊熱の原因になっているのかというと、ブランケットに関しましては、第一壁の鉄からできるマンガン56、鉄の56のNP反応だと思いましたけれども、マンガン56、これが2.5時間ぐらいの半減期なので大きく寄与しています。それからダイバータに関しましては、後でも御紹介しますけれどもタングステン、これが1日ぐらいの半減期のものでして、大きく寄与しています。このようなものが主たる放射性物質になっているというのが見てとれると思います。
 続きまして、ブランケットの中でどのような分布になっているのかというのを示したものが次の図でございます。細かい話は抜きにしますけれども、右側に書いてありますように核融合停止後の全崩壊熱量は核融合出力に比例します。だから3ギガワットの核融合出力が1ギガワットなら、崩壊熱は3分の1になります。ですからITERですと、500メガワットしかないので、ITERの崩壊熱はかなり小さい値になっているというのが理解いただけると思います。つまり、核反応で発生するニュートロンを真空容器等で受けるわけですから、それはどんなサイズの炉でも、崩壊熱の総量は中性子の総量、つまりフュージョンパワーに比例するとなります。
次に重要となるのは、単位体積当たりの崩壊熱です。コンパクトな核融合炉と、大きな核融合炉だと、同じ核融合出力でも中性子フラックスが違います。フラックスとは、単位面積当たりの中性子の量ですけれども、それに比例して放射性物質ができますので、単位体積当たりの崩壊熱は中性子フラックスに比例します。
 ところで、構造材の温度上昇に関しては、どちらかというと単位体積当たりの崩壊熱密度に強く依存しますので、この点に留意していただければと思います。
 次7ページ目を見て下さい。これはブランケットではどこの部分が主な崩壊熱源になっているのかというのを示したものです。それからダイバータに関しましては、タングステンのモノブロックが割合大きな崩壊熱になっているということです。核融合のためにタングステンはいろいろ開発されていますけれども、タングステンというのは割合崩壊熱を出すものであるということを認識して、それを踏まえた設計を十分しなければいけないというのが見てとれるかと思います。
 そして、このような熱源をもとに、実際どのような温度上昇になるのかを解析しなければなりません。ただしそのためには、実は詳細な炉設計がないと、どういう熱チャンネルがあるのか分からないですから、必ずしも容易ではありません。因みに、詳細設計がされているITERでは、そのような熱解析がきちんと行われており、崩壊熱によってどの位温度が上がるかというのが評価されております。その結果、ITERとしてはフュージョンパワーも低いこともありますので、崩壊熱的には大丈夫であるということが判っています。
 それから原型炉に関しては、EUのデモ設計で崩壊熱および除熱解析をやっております。ここにありますようにブランケットの表面から出てくるのが熱伝導や、放射、対流等で外側のヒートシンクまで伝わるわけです。このパスを解析することにより、各機器の温度がどうなるかというのを示したのが左の図でして、数十日単位でどんどん温度が上がって行きますが、それでも1,200度くらいで飽和します。じつは、EUの炉設計では中性子のフラッグを下げ、この場合2メガワット/平米ぐらいに下げることにより、ブランケットの温度上昇を抑え、ブランケット溶融までは至らないような設計としています。EUはそのような指針を一つ掲げて、核融合炉を設計しているといえます。
 核分裂炉と比べたときに、核融合炉の崩壊熱の総量は数分の1と小さいですけれども、なぜ温度的にはこれだけ余裕があるのかというのを簡単に示したのがその次の図でございます。
 核分裂炉はやはり燃料のところがかなりコンパクトになっているのに対して、核融合炉はブランケット、それからそれ以外の遮蔽体や真空容器を含めて大きな構造体があります。これらは一種の熱のリザーバー的なものと言えます。核融合炉を設計する時に、核融合炉自体が非常に大きくなってしまうのは、経済性の観点からは大きなデメリットなのですけれども、こういう崩壊熱の問題に関しては、逆に大きな体積の核融合炉は、それが大きな熱容量になるという意味で、メリットになっています。
 以上、みてきたように、EUのような設計上の工夫をすることにより、冷却材損失時でも真空容器の健全性を維持できる可能性が高いと言えるのではないかと思います。それはただし設計次第というところであります。
 次のページへ行きまして、安全性の研究はやはり今後も重要になってくると思います。安全性の研究に関しまして、大別しますと、一つは安全解析コードの拡充が必要、それからもう一つはそれの妥当性を示すValidation&Verification実験(V&V実験)による検証が必要だろうということになろうかと思います。ここに示しましたコード群、それから実験は、ITERのために開発されたものがかなりですけれども、今後はこれらの研究をさらに発展させて、核融合炉に対しての安全性研究をより拡充していかなければいけないと思われます。多分その辺に関しましては、この後の岡野委員から、具体的な説明があるのではないかと期待しております。
 次に放射性物質に関して御紹介させていただきます。核融合炉の中の放射性物質の主なものとして、放射化物もありますけれども、やはりトリチウムというものが大きな揮発性の放射性物質として挙げられます。トリチウムは18.6keVのベータ線を出す放射線源ですので、核分裂炉で発生するヨウ素131とかセシウム137に比べて、1ベクレル当たりの被曝の影響度を見ますと、ヨウ素131では約500分の1ぐらいになっているというのがみてとれると思います。
 そしてこの考え方をもとに、平成12年の原子力委員会のときの報告書では12ページのようにまとめました。まず、安全性と安心感の違いについてですが、これは皆さんにあえて言う必要はないと思いますけれども、安全性というのは安全確保のために必ずやるもので、どういう機器も安全性が担保される設計になっている、設計すべきものであります。安心感というのはそれとはちょっと違うものであって、潜在するハザードがどのくらいなのかというものに対しての安心感です。従って、やはり一般の人達がもつ安心感という観点で、内包する潜在的ハザードがどの程度のものなのかというのを比較しております。
 核融合プラントのトリチウムが、この場合ちょっと古い設計だったので4.5キログラムと割合大きな量を仮定しました。それを軽水炉のヨウ素131と比較してみました。そうすると、ともにベクレル数で見ますと、10の18乗ベクレルくらいです。大体3分の1くらい核融合炉の方が小さいということですけども、まあ同程度のベクレル数です。ただし、先ほどの大気中の濃度限界を示しましたけれども、同じベクレル数に対して、約500分の1、トリチウムの方が人体に対する影響度が小さいと言えます。ということで、潜在的放射線リスクの指数という形でハザードのポテンシャルを計算すると、約1,500分の1くらいではないかといえます。
 私はこの数値を持って、100万キロワットの核融合プラントの持っている潜在的ハザードはその1,000分の1である1,000キロワット、約1メガワットの原子炉の持っているハザードとほぼ等価と見ていいのではないかというのを時々申し上げております。
 ただし、INES、国際原子力事象評価尺度では、トリチウムに対して、作業者を500分の1として評価するけれども、公衆に対しては50分の1で評価しなさいという数値になっております。そうすると、上記の1,500分の1という値は、150分の1くらいのハザードになることになります。いずれにしろ核分裂炉に比べて、核融合炉は数百分の1から1,000分の1くらいのハザードを内包していると評価されると思います。
 その次から3枚に関しては、そのINESがなぜそのような評価、つまり公衆に対して50分の1に評価せよとなっているのかというのをまとめたものです。実はこの次の3枚に関しては、門学術調査官が一生懸命調べまとめていただいたものです。内容が細かいので、結論だけ申し上げますと、公衆は成人の最大値を、作業者は成人の代表値を、それぞれ採用するようになっている点です。
 具体的に申しますと、次のページで、ヨウ素131を1としましたときにHTOトリチウム水というのは0.002、だから500分の1であると科学的には評価できると言っています。そのくらいで評価してもよろしいですよということです。
 その次のページの方の公衆被曝に関してですが、二つ表がありますけれども、下の表から見ていただいた方がよろしいかと思います。ここで、H-3、トリチウムの移動性としてはミディアムくらいだろうと言われています。因みに、数日か数箇月というくらいで移動する場合をミディアムと言います。トリチウムの移動性としては科学的に妥当と考えられるミディアムでの評価値を用いるべきなのですけれども、ここでは、数年か数十年の移動速度であるスローの値を用いて評価しています。その結果、トリチウムはヨウ素131と比較すると50分の1という値になります。
 なぜこのような評価値を用いることになったのかは不明です。たぶんトリチウムの環境動向というものに対するまだ研究の蓄積が不十分であることに起因しているのだと我々は思っております。
 その次にトリチウムの環境挙動について説明致します。大気中のトリチウムは1960年代の地上の核実験等で大分増えました。ただし、その後割合ゆっくりとした時定数で下がっています。一方、雨水中のトリチウム濃度は、大気中に比べると割合早い時定数で下がっております。なおこのように、数十年の時間スケールでデータを蓄積していかなければならないという、非常に時間のかかる作業であります。
 核融合研の方で1980年代からやはり大気中のトリチウム、それから水のトリチウムを測っておりまして、地道にデータを蓄積しております。将来、核融合炉がたくさん日本および世界に導入されたときに、やはりバックグラウンドのトリチウム量がどうかということは、こういう地道な研究の蓄積がベースになると思っております。
 ただし最近はこのような分野の研究者が減っていますので、この辺の研究をやはりエンカレッジしていかなければいけないのだというのが今回の調査で分かった一つの知見でございます。
 次の資料は、核融合炉の特性の一つである放射性廃棄物についてまとめたものです。核融合炉の放射性廃棄物は、100年のオーダーで大体減衰しますので、いわゆる高レベル放射性廃棄物というのはありません。
次の資料は燃料サイクルを示したものです。核融合炉の燃料サイクルは非常にコンパクトなものであると言えます。
 そして以上をまとめますと、核融合の利点としては、量的なメリットとしては平均的な崩壊熱密度が低い、放射線レベルが低いこと、それから質的なメリットとしては核暴走がない、高レベル放射性廃棄物がない、および核拡散に対する抵抗性が高いとなります。
 それからその次はやはり環境問題を考えましたときに核融合が21世紀後半の環境問題にどう寄与していくかが問題です。そのためにはどのような時期にどのような量で核融合炉を導入しなければいけないか、その解析例を20ページに示します。これは日本の評価例でして、ヨーロッパの評価例を21ページに示させていただきました。
 以上、最後の22ページ目には、このような観点で核融合はやはり環境に優しい、優れたエネルギー源であるという点を定量的にまとめさせていただきました。
 このような観点で核融合のエネルギーとしての特徴を抽出するとともに、やはり安全性及び安心感に対しての現在までの研究をレビューしてまとめたというのがプラズマ・核融合学会の活動ということであります。
 報告書に関しては、まだ完全ではないですけれども、大体でき上がっていますので、これを回覧させていただければと思います。以上です。
【小森主査】  ありがとうございました。それでは岡野先生、引き続きお願いします。
【岡野委員】  はい。それでは引き続きIFERC、これは国際核融合エネルギーセンターという六ヶ所村にあるBAの組織でございますが、そこにおける安全研究の現状と、研究計画を資料に沿って御説明させていただきます。
 1枚めくっていただいた1ページ目には、IFERCの原型炉設計活動の構造が書いてございます。IFERCの事業長は中島事業長で、そのIFERCプロジェクトチームの中に、原型炉設計チーム、つまりDDAユニットがございます。DDAユニットそのものの人数は、5名程度でございまして、ここは、原型炉の設計とか研究のコーディネーションをするという立場です。
 実際の研究はヨーロッパ、日本それぞれの国内のホームチームがやるという形になっていまして、この絵でいうと、下にあるDDA-EUというのがヨーロッパのホームチームです。日本側はDDA-JAで、プロジェクトマネジャーが原子力機構の飛田さんです。ただ日本チームはJAEAだけで構成されているわけではなくて、JAEAチームに加えて、大学、それから各種研究所や産業界とも契約を結んだ上で、オールジャパンのホームチームを構成しています。
 今回御紹介する安全研究は、ヨーロッパ側ではやらなくて、日本チームが実施するという位置づけの研究です。
 2ページ目は安全性研究がここまで立ち上がってきた経緯を御紹介するための資料です。実は3月11日の地震が発生したほとんど直後から、これは安全研究の強化が必要と感じて、IFERCはすぐ動いています。昨年4月に国内で安全計画に向けた、インフォーマルですけれども、専門家に集まっていただいた会議を開きまして、その話し合いをもとに、5月にはガルヒンクに飛び、Fusion for Energy、日本でいうところのJAEAに当たるEU側の実施機関ですが、そのFusion for Energyの責任者と安全研究の実施を相談しました。基本的にはサポートするという回答をいただきましたが、何しろ金額が大きいので、よく研究の計画を練ってくれという答えでした。
 次に、IFERCの事業委員会が9月27日にありましたので、ここで安全研究を議論させていただきました。本当はここでゴーサインをもらいたいと思ったのですが、基本的な支持は得られましたが、やはり研究をもう少し練るべきとの結論になりました。つまりヨーロッパでも安全研究をこれまでしてきたので、それとの調整はどうか、という意見がありまして、次の事業委員会までに計画をしっかり練るということで、ここは支持だけを得られました。
 それに対応しまして、何箇月間か計画を国内で練って、2月の日欧の原型炉設計技術会合で内容を討議したうえで、本年3月のIFERC事業委員会で再度計画を提案いたしまして、ここで合意を得られました。
 ここで合意された計画を、4月のBA運営委員会で承認をいただいて、ゴーサインという予定になっていたのですが、実は、ここでもう1年様子を見たいという意見が出て、2012年分の予算のみが承認され、その計画の実施状況を報告した上で2013年以降はゴーサインを出すという、そういうBA運営委員会の判断になりました。何か計画が悪いということではないのですが、安全研究は重要なので、かなりヨーロッパ側は慎重に物事を進めようとしています。
 この決定を受けて、2012年以降も含めた調達取決め契約がIFERC事業長に提出されておりまして、ただいま承認手続中です。
 2013年4月のIFERC事業委員会で成果をレビューし、2013年以降の計画も審議して、4月のBA運営委員会でゴーサインを出してもらうということになっています。ネガティブな意見がでてこういうことになっているわけではないので、おそらく2013年以後もこの調達取決めの計画のとおりいくであろうと思っています。
 それから次の4ページですが、DDAの安全性研究のスコープについて、概略をお話しします。まず目標ですが、定量的解析によりDEMOで重要な事故シーケンスを明らかにして、それから事故進展の防護・緩和のための安全設計を構築する。それからBAは2017年で終わるものですから、それ以降に原型炉を実際に設計するに当たっての安全設計ガイドラインを確立する。これは最終的な目標だと考えています。
 それから副産物については、安全研究の人材が非常に不足しているというのは後でお話ししますが、そういった新世代の人材を育成できるというのと、それからコード整備を進められるというのが副産物としてはあるだろうと思います。
 5ページに行かせていただきますと、ここでは安全研究の特殊性というか、基本的な考え方を御説明しています。ITERの安全研究というのは、非常に精密になされているわけですが、ITERの場合は立地場所も決まっていて、設計もほぼ決まっていて、その中での安全性研究ですから、よく言われる安全研究になっているわけです。それに対して、IFERCの原型炉設計活動でやろうとしているものは、原型炉が必ず一つに定まっていなくて、立地も分からないという中でやるわけですから、当然質の違うものになります。これはやりにくいことも事実なのですが、ポジティブに考えれば、原型炉設計の反映が容易にできるし、安全研究の成果を設計にフィードバックすることによって、柔軟にシステムを改良できるという意味では、早く安全研究を設計に反映できるというチャンスでもあると考えていますので、フィードバックをしながらやっていこうと思っています。
 もちろん、研究を実施するチームそのものが原型炉の設計チームでもあるのですから、当然コミュニケーションはよいはずで、順調にフィードバックができるはずだと考えています。
 作業スケジュールと体制が次のページにございます。先ほど申しましたように、現在はステージ1という段階で、準備期間という位置づけになっています。ここでどういう研究をするか、それからコード準備などは順調かというのをきちんと示して、それの実績をもとにホールドポイントの2013年4月までに報告を作成して、ピアレビューを受け、次のステージ2に入るということになると思います。
 主なる研究体制のメーンプレーヤーはJAEAのメンバーとそれから大学、研究機関、メーカーなどのオールジャパン体制になります。それからEUも何もしないということではなくて、ボランティア・ベースですが、過去においてITER、あるいはEUの原型炉設計の安全解析をやってきたエキスパートが参加してくれています。
 右の写真にもグルデンさんという赤いチョッキを着た方、EUの安全研究の権威なのですが、この方が実際に日本に足を運んだり、テレビ会議などで相談に乗ってくれています。
 次の7ページは、詳細は略しますけれども、日本のホームチームの安全研究の構成図です。JAEAのメンバーが中心ですが、それだけではなくて、大学、産業界、ソフトウエア・カンパニーを含みます。 爆発技術専門のソフトウエア会社なども入っています。予算が増額する予定の来年度以降は、さらに多くと契約を結んで、ホームチームを構成し、安全解析を進めるという計画です。
 それからこの中には核分裂炉の安全性、あるいはライセンシングの専門家も何人か入っていて、アドバイスを受けることができます。
 次のページが実際の作業に内容を説明するものです。詳細は次のページから順々に御説明しますので、このページは飛ばそうと思いますが、大事なことはホールドポイントがあって、現在は1年間の準備期間、ステージ1、にあるということです。
 ここでちょっと予算を説明しておいた方が、研究規模がどれくらいの大きさなのか分かりやすいと思うので、机上配付でDDA安全研究の予算計画というのを御紹介しております。先ほど申し上げたように、正式に認められているのは2012年分だけです。2013年以降の計画も出してあり、認められるとしたらこの額になるはずだと私は思っています。
 2012年から始まって、2012年は0.11kBUA、kBUAとはおおよそ1億円なので、1,000万円ぐらいのもので、2013年以後に比べれば少な目ですが、これは準備期間だからです。2013年度以降は0.86kBUAがずっと並んでますが、この間はきちんと契約を結んで、実際に各組織に研究予算を提供し、オールジャパンで研究を進めるということになります。
 実は原型炉設計そのものは0.80kBUAですから、いかに大きいか分かると思います。つまり、安全設計が加わることで、原型炉概念設計活動の予算は倍増するということになります。それだけ重要であるという認識を、BAの運営委員会に持っていただいているわけです。
 ただ、大事なことは赤字で書いていますが、JAEAチームの人員は倍増していませんので、実施はオールジャパンで協力いただけないとできないと私は考えています。
 次、元に戻しますが、先ほどの作業内容の次のページで、ステージ1、準備期間というところのページに戻っていただきたいと思うのですが、準備期間でやることは、安全要求の定義をまず決めないといけない。定義のイメージを一つ御紹介しますと、ヨーロッパでの考え方の例でございますが、ヨーロッパは核融合に対して、何か大事故があったとしても、核融合炉のサイトから1キロ以遠ではシェルタリングが要らない。それから避難も不要。住居を移動も不要。などの段階的要求を示していて、それが実現する線量目標が下の表のようなものです。こういう目標で安全研究をしている。ただしこれはヨーロッパの例です。あくまで1例でございまして、IFERCの安全研究でこれを目指すとは言っているわけではないです。赤文字で書いたのは個人的見解でございますが、ヨーロッパの考え方は非常に参考にはなりますが、日本にそぐわない部分もあります。日本独自の新展開を考えたいと思います。ただこの分野は例えばトリチウムの環境挙動の研究者なども日本にはいなくなっている、日本だけではなくて、世界にいなくなっておりまして、非常に問題が大きいなと思っています。長期的に分野の重要性を位置づけていただいて、人材を確保できる、育てる状況をつくっていく必要があるなというのが実感でございます。
 それから次のステージ1、準備期間のその2ですが、1-2、ソースタームの定義ですね。ソースタームというのは、放射能の量が一つのソースタームで、それがどこにあってどれぐらいあるか、それが一つの放射性物質のソースタームになります。これはもちろんトリチウムが主でございますが、原型炉の設計によると思われるので、これらのソースタームが原型炉のスコーピング研究との連携が極めて重要になります。
 それから次のページ。今度はソースタームのエネルギーでございまして、ソースタームだけであれば、閉じ込めておけばいいわけですが、それを何らかの形で膨張させて、噴き出させたり、何か爆発させたりするエネルギーがあるわけですね。それもエネルギーのソースタームであって、それもどこにどれくらいあるか、が重要です。例えば超電導コイルの磁気エネルギーとか、プラズマそのもののエネルギーといったものが対象になります。おおむねITERよりは2倍から4倍は大きな量になると思います。これも原型炉の設計等のリンクがあるので、原型炉のスコーピング研究との連携が非常に重要になってきます。
 その原型炉のスコーピング研究はどうなっているのかについて、現状を御紹介しておきます。現在はDEMO1からDEMO2、DEMO3という三つを想定して議論を進めているという段階です。DEMO1はヨーロッパの提案でして、ヨーロッパはかなり保守的な原型炉を構想していて、パルス運転のトカマクでもよいので、とにかく発電をしたいと言っています。
 そうすると、当然CS(セントラル・ソレノイド)の誘導でプラズマ電流を駆動するためには、大型なトカマク装置になりますので、ヨーロッパのは主半径10メートルと大きいです。一方、日本は、安全性が重要で、早く実現したいことに変わりはないが、経済合理性もやはり必要だろう、パルス炉では実用化への見通しも立たないだろう、という考えを持っていて、安全性と経済合理性も考えた定常原型炉を目指したいと考え、DEMO2、DEMO3を提案中です。ただし、これらは過去において皆さんがよく耳にされた日本の原型炉例、Slim-CSとか、Demo-CRESTとは違っています。設計ポリシーを若干変更し、定常炉でありますが、核融合出力は2ギガワット以下に落としたいと考えています。これは先ほど小川先生の御発表にもありましたが、安全性の視点です。
 それから、主半径はコンパクトな方が経済性は高いのですが、安全性も考えて、あとは実現性も考えて、7メートル級以上にはしたいと考えています。
 それからプラズマ性能に関しては、これはJT-60SAがどこまで実現してくれるか次第ですが、原型炉としてはあまり無理をしないところからスタートしたいと考えます。とにかく初期運用段階はベーターエヌが3くらいで始めて、ずっとこのままだったら経済性が悪いので、うまくいけばもっと高いところを目指す。これでもヨーロッパよりはちょっと先進的だけども、かつて日本案のような経済性を重視したかなりアドバンスな設計に比べると、安全側に目標を振った設計仕様になっています。
 それから一つ重大な違いは、ボルトセカンド(V・sec)イコールLpIpと書いていますが、これはどういう意味かといいますと、セントラルソレノイドを使った誘導電流で少なくとも定格値まではプラズマ電流が立ち上げられるような容量のセントラルソレノイドは用意しますということです。これで自動的に7メートル級の装置以上の大きさになります。十分なCSを用意しないと、例えてみれば、時速100キロでは走れる自動車なのだが、スターターがないので自力でエンジンがかけられません、ということになりかねないので、必ずCSは用意したいと考えて、今、設計を進めているところです。
 それから次のページですが、これは準備期間の3ですが、参照事象の同定ですね。これは先ほどのソースターム分析とか事故シーケンス分析から、DEMOで問題となりそうな事象を同定します。これすべてをやることはできないので、特に重要そうなものを選択するというのがこの準備期間の仕事です。
 それから次のページは4番目、計算コードの準備でございます。これは安全性解析コードを当然準備しているわけですが、大事なことは、安全解析の新しいコードを開発するということではありません。安全性の評価の方が大事ですから、動作が既に検証されていて、例えばITERに使われたとか、既に実験と合わせてあるとか、非常に定評のある、いわゆる有名なコードを使うべきだというのが我々の意見でありまして、そのために以下の青色で書いてあるようなコードを、準備しています。準備というものは、ライセンス契約が必要なものはライセンス契約をしているし、JAEAにソースコードが既にあるものはソースコードを探しだして、再整備するといったことをやっていて、既にステージ2に向けて、これらのコードはテストランを実施中でございます。
 現在のDDAの安全性研究の進展状況という表でございますが、これは今もう既にお話ししてきましたので、このページはちょっと省略させてください。今お話ししたような状況になっている、進んでいるということです。
 で、ステージ2は何をするかということですが、ここからは先ほど言いましたように、解析評価期間になります。計算コードについてはテストランではなくて、実際に動かし始めて、また同時に改造を始めないといけません。何の改造かといいますと、日本は水冷却、それからセラミックス増殖のブランケットを主案にしますから、そのための特有の化学反応過程が必要ですね。例えばベリリウム系の物質と水との反応とか、こういったものを熱化学解析コード、これは例えばMELCOR-fusなどですが、こういったものに入れていくという作業がまず入ります。それらのコードを整備した後で、参照事項に沿って事故シーケンスを分析するという研究にまずはなると思います。
 それから次のページにいっていただきますと、同じ解析なのですが、ここまでお話ししたのはあくまでも設計内で想定される事象という、設計想定事象ですね。BA運営委員会では、設計基準外事象が大事だと言われており、これはぜひやってほしいという指示がありました。
 設計基準外事象というのは、際限なく広げれば、いくらでもあるわけです。大きな隕石が落ちてきたらどうするとか、言い始めればいくらでも広げられます。とはいえ、ある範囲を決めないとできませんので、例えば長時間の電源装置、冷却装置、これをもう今の日本の状況で考えないわけにいきませんが、あるいは基準一つ一つの事象は基準内の出来事だけれども、それが同時多発したらどうか。つまり、理由は問わないけれど、同時に起きたときには何が起こるかという例を考えよう、という研究を進めようとしています。
 ヨーロッパの専門家の指摘ですが、大事なことはこういった想定外のことが起きた時も、あるところから急に悪化することがないようにすべきという点。例えば、だんだん圧力がかかって、一気に爆発し、それからはもう大変だとか、そういう「クリフエッジ」がないことが大事であるという指摘を受けていて、そういう設計になるように試みていこうと考えています。
 それからステージ2のその次の2-4、原型炉安全系の設計への反映ですが、これは先ほどから申し上げたように、これの安全系の一般的な評価が終われば、原型炉設計へフィードバックしながら、原型炉設計を変えていくというのがこの反映になると思うので、これは研究が進んでいけば、自動的に行われると考えています。
 それから次のページはDDA安全研究のアウトカムでございますが、最も重要なアウトカムは安全設計ガイドラインの構築だと思っています。ガイドラインは主に以下のような事項を含むべきだと考えます。
 例えば、放射性物質閉じ込めバリアの具体的な設計です。
 それから燃焼プラズマの出力制御の安全性からの変動制約を明示する。出力制御は核融合では大事な点かもしれません。
 それから閉じ込めバリアの健全性確保手法とその設計基準を示したい。設計基準というのは法的なという意味ではなく、科学的な意味での基準ですが、それを示したい。
 それから崩壊熱除去システムの具体的な案とその設計基準。もちろん何もしないでも大丈夫という設計であれば、それはそれで一番いいけれども、だからといって何も用意しないというのは間違った設計だと思うので、何かは用意するべきと思います。
 それからLOCA――LOCAというのはloss-of-coolant accidentで、冷却の損失ですね、とか、電源を喪失などへの対策を考えておくと。
 それから異常事象の防止策、緩和策の具体案とその設計基準も考えたい。特に、検討の中で発見された設計外事象については、可能な限りその緩和策を講じるということを考えたいと思っています。緩和策と書いたのは、その防止策がわかってしまったら、それは設計外事象ではなくなりますので、緩和策は最低限講じたいというふうに思っています。ただし、それがすべてに対してできるとは限りませんので、何が起こるかは解析しておきたいと考えます。
 以上で私の報告は終わりですが、ここからは私のこれまでDDAを2年間実施してきて感じたことを、意見として言わせていただきます。原型炉国内研究体制構築の必要性を非常に強く感じています。ここまでBAで安全研究、もちろん原型炉の研究もしているのですが、そこで特に感じるのは、やはりBAは日欧が合意できた研究以外はできません。例えば今回のDDAの安全研究のように、日本ホームチームが日本側の予算枠を使って実施する場合でも日欧合意が必要です。例えば今回の安全研究では、異常事象とその対策などについてはヨーロッパと合意が難しい部分も多々ありました。やはり、ヨーロッパはITERを実際誘致する国ですから、ヨーロッパの考え方として絶対譲れない一線みたいなものがあったりします。一方、もちろん日本も譲れなかったりする部分もあって、難しい部分は確かにありました。そういう点は、今回の安全研究には含めることができません。したがって日本の国内研究としての独自の安全研究も実施が絶対必要だと私は思っています。
 それから、本研究準備を通して、安全性の基礎を支える研究者が不足しています。これは非常に深刻な問題であることが判明しました。ITERを積極的にやっていた10年ぐらい前までは確かにキーパーソンがいましたが、みんな引退されたか、企業の方では別の部署に移られてそこで重要なポジションになられていて、もう核融合に戻れないというケースがほとんどでした。人集めに苦労した結果、ほとんど安全解析の人材が不足ということがはっきりと分かりましたので、これは長期的展望に立って、人材を育成できるという体制を立てていただきたいと思います。
 安全性というのは原型炉設計と切り離しては考えられないので、原型炉設計と安全性の両方の国内制度の増強は、今後の核融合研究の展開には必須ではないかと考えています。以上でございます。
【小森主査】  ありがとうございました。それでは、今御説明のありました二つの件につきまして、御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。
【岡野委員】  私自身から一つよろしいですか。崩壊熱が、量はともかくとして、質的には同じだとおっしゃったのですが、核分裂炉というのは、核燃料そのものがハザードを持っていて、同時に発熱もする。それに対して、さっきもソースタームの話を私しましたけど、核融合では放射性物質のソースタームとエネルギーのソースタームが違うのであって、核燃料が発熱して溶けていくのとは質的にかなり違うのではないかと、私は思います。
【小川委員】  はい、そのような考え方もあろうかと思います。例えば出ていった放射性物質はヨウ素とかセシウムですよね。で、それが燃料に内包されているという意味では御指摘の通りかと思いますが。溶かすものと出ていくものが燃料中に存在しているという意味では、まあ違うと言えば違うと言えますが。考え方の違いですけどね。どこをどう見るかの違いですけれども。
【岡野委員】  燃料ピンに集中しているという点は、質的に違うかなと。
【小川委員】  何をもって、質的に違う?
【岡野委員】  燃料ピン、核燃料が溶けるというのと、フェライトでできたブランケットの壁が溶けるというのは違うことですよね、質的に。
【小川委員】  というか、でも環境から見たときには、放射性物質が出ていくかどうかが重要だと思いますが。
【岡野委員】  それは同じだと思う。
【小川委員】  そう。だから今見ているのは、財産保全という立場でなくて、環境に出したときの立場から見たときというだけで、財産保全という立場から考えれば、おっしゃるように違うのかもしれません。
【岡野委員】  あと、溶け落ちた時にも、再臨界しないということは決定的に違うと私は思います。溶け落ちて、下に全部たまりましたと言われても、フェライトの塊ですからね。
【小川委員】  それはだから核暴走をしないという点で、核融合のアドバンテージだという点で大いに違うと思います。
【岡野委員】  そうですね、核暴走の中には入っています。
【小森主査】  はい、どうぞ。
【金子委員】  前回の小西先生の議論にもあったと思うのですけれども、今、岡野委員がおっしゃったように、確かに核分裂の場合には、燃料の部分にそういった崩壊熱等集中するわけですが、核融合の場合は放射物としてのトリチウムは、広い炉系内の一体どこにどれだけあるかよく分からないと小西先生はおっしゃるわけです。そうすると、安全性を考える意味では、プラズマの炉心部分だけではなくて、周辺の装置も含めた安全性の構築というのが非常に重要になると思うのですが、その辺はいかがでしょう。
【小川委員】  例えば回覧中の資料におけるITERの安全性評価を見ていただければお分かりのように、一番ITERで厳しいと思っているのは、トリチウム貯蔵の部分ですかね。そこで火災が発生した時どうなるかを分析しています。従って、ITERでは、それぞれの機器にトリチウムがどう分散しているかというのをきちんと同定し安全評価をしておかなければならないとなっております。
 このようなトリチウムのプラント内での分散性に着目し、それを先駆的に指摘されたのは藤家先生、前の原子力委員長の藤家先生でした。核融合炉というものの安全性を見たときに、核分裂と違うのは、核分裂は皆さんおっしゃるように危険なハザードが燃料に集中しているのに対して、核融合ではそういう放射性物質が分散していると指摘され、分散的システムであると定義されました。そういう観点から安全の考え方を構築すべきというので藤家先生はGEM‐SAFEという考え方で、いかに分散するものを独立制御するか、安全を確保するかというコンセプトを立ち上げられて、論文を書いていらっしゃいます。
 今、金子先生がおっしゃったように、核融合としての放射性物質の特性、つまり分散しているという特性ですね、このような特性を踏まえたうえでの安全対策は考えていく必要があるとは思います。
【小森主査】  どうぞ。
【髙津委員】  岡野委員、どうもありがとうございました。1点コメントというか、質問をさせていただきたいのですけれども、17ページで説明いただいた設計基準外事象というのは、設計では起こらないはずのものだけれども、何がしかの過程を置いて起こったとしたら、どういう影響があるかという評価をするということは、小川先生の御発表でも、安心にもつながる大事なことだと思うのですけれども、やられていること自体が一般の方が聞いて、確かに適切な設計基準外事象を取り上げているのかというのは、ある種のみんな理解はいると思うのですね。そのことを考えますと、16ページに事故シーケンスの分析という作業をやられると書かれているので、これは非常にいいと思うのですけれども、ITERの初めのころに、故障モードが事故にどうつながるかという分析をシステマティックにやって、一応全システムを考えると、こういうことが起こり得るシナリオですというのを分析がなされて、想定される事故事象をピックアップしたことがあると思うのですね。
 そういうあるリアクターをイメージして、FMEAのような分析をやられるのかどうか。また私もどの程度みんなが安心感を持たれるか分からないですけれども、確率論的安全性評価といいますか、そういうものをやって、起こり得る確率としてはこの程度だけど、影響を評価しましたというのをあわせて聞くと、ある種の安心につながるかと思うのですが、そういったことも、このIFERCの活動でやられるような予定がおありなのかというのを、ちょっと教えていただけますでしょうか。
【岡野委員】  まず、原型炉はまだ確定した設計がないので、ITERの安全研究ほど細かいことはできないと思いますが、重要と思われるものをピックアップして、そのシーケンスは極力解析するということはしようと思っています。
 ただ、人員からいっても、コストからいっても、ITERと同じことを求められたら、それはできないというのは言わざるを得ないです。そこで、特に重要と考えられる事象、ITERで発見されたものの中でも原型炉ではいろんな数字が大きくなることで、ITERでは大丈夫だったけれども原型炉ではもう一度見直す必要がある、という事象がいくつかあると思います。それらをピックアップしてやっていくというつもりでおります。
 それからPSAとは、確率的なセーフティー・アナリシスですね。電中研にも軽水炉のPSAはやっている者もいたりして、話を聞くことはあるのですが、核融合は実績データがなさ過ぎるので、PSAを持ち込むのは無理かなというイメージは持っています。ただ準備をしておいて、どんなデータを集めればいいかということならできますが、ITERが動かないうちは、PSAの元データも集まらないかなと思っていますが、それはいかがお考えですか。やれればそれにこしたことはないですが。
【髙津委員】  おっしゃる点はそのとおりだと思うのですけれども、例えば私も学生時代のにわか勉強みたいなもので、WASH-1400という原子炉の自己評価なども、かなりデータがないところを、3か10かの確率で評価していって、この程度のことが起こり得るというもので詰めていったというようなアプローチもあるので、分からない点もありながら、ある程度全体をふるいにかけました。大事なものはこれだろうという判断に至りましたという説明が片方であると、やられている自己評価が非常に説得力が出るのではないかと思いますが。
【岡野委員】  分かりました。そういう確率の計算はするべきなのだろうと思います。
【小川委員】  よろしいですか。
【小森主査】  どうぞ。
【小川委員】  今、髙津委員が言われたように、なかなか具体的なものがないと設計できないですけれども、私も20年くらい前に藤家先生と核融合の安全のところをちょっとかじらせていただいたときに、藤家先生も具体的なものがない中で、どう安全を見るかというのはなかなか苦労されて、藤家先生自身が提案されたのが、機器対応で安全設計をやるのではなくて、機能として見ようと。だから、核融合プラントというものを、先ほど、金子委員も言いましたように、いろいろなところにRIが分散する可能性があるので、機能として見たときに、どういう機能がどうなるかと。そうすると、それのバリアがどこにどう入るかと。そうすると、そのバリアが壊れる確率とかそういうのを見てどうしようかと。そういうのを藤家先生がGEM-SAFEとして立ち上げられたので、今もう一度実は勉強し直していますが、多分そういうところから核融合の安全性というのをグローバルに見ていくのかなという感じはしております。
【小森主査】  森委員どうぞ。
【森委員】  岡野先生の発表の12ページのところで、日本のプロポーザルのDEMO2と3ということを今考えているわけです。そこのところで安全性の観点から核融合出力は2ギガワットという話ですが、定性的にもちろんこの核融合出力が小さければ安全性上有利というのはその通りですが、一体その安全性を確保する上で、何ギガワットが適切なものなのかというのは、装置の設計にも関係すると思います。ギガワットの数値そのものが重要なのではなくて、多分「冷却材が喪失したときに最大、ここのことまでしか起きませんよ」とか、何かそういうような切り口で物事を考えるのだと思います。そういった観点でどういうものをイメージしているのか、これから定義していくのか、それとも既に何かイメージがあった上で2ギガワットと言っているのか、質問です。
【岡野委員】  現時点で具体的に解析されているのは、PPCSとSEAFPというヨーロッパの概念設計しかないのです。その例では、先ほど小川先生の方から、冷却喪失時に何もしなくても溶けないという設計になっていた、という御紹介がありました。その中性子壁負荷の設計値が大体2メガワット/平米くらいです。冷却を失って何もしなければ必ず溶ける、という設計には、できればしたくないので、欧州の設計と同程度の中性子壁負荷を目指したいと考えました。そこから、核融合出力が2ギガワット前後か、ということくらいで考えています。これからMELCORなどを使ってしっかり設計します。今までの日本の原型炉設計では、大抵3メガワット/平米くらいになっていますね。これですと、冷却喪失時に放置しても溶けないようにするのは非常に大変だと思います。そういう視点から出力を少し下げたという意味です。
【森委員】  今、溶けないというのは、どの部分も溶けないという意味で溶けないということですね。
【岡野委員】  ブランケットは少なくとも溶けない。
【森委員】  考え方として、「一部の表面は溶けても放射性物質の閉じ込め機能は損なわない」というレベルでの溶けないとか、溶けないという言い方もいろいろあるかと思います。今言われているのは、「どこも溶けない」ということをまずは目指したいと、そういうことをおっしゃっているわけですね。
【岡野委員】  そうですね。まだ設計が進んでいないので、そこを詳細に言うことはできないのですが、冷却喪失しても、放射性物質の閉じ込め機能を失わないということを目指すということです。単に冷却がなくなっただけだったら閉じ込め機能は失われない、というところは目指した方が良いのではないかと思っています。
【小森主査】  同じ12ページで、ヨーロッパと日本が提案しているパルス炉と定常炉について、IFERCでは両方の安全設計を別々に行うということ……。
【岡野委員】  ヨーロッパは、欧州の原型炉の安全解析はしません。
【小森主査】  しないのですか。
【小川委員】  終わっているという。
【岡野委員】  もう核融合炉の安全解析は終わっていて、安全であるというスタンスなのです。そのあたりでは、調整に苦労しているわけです。
【小森主査】  そういうことですか。
【岡野委員】  欧州の設計であれば溶けることはない、ということです。
【小森主査】  もう終わっていると。
【岡野委員】  もう解析は終わっていて、溶けないという結論になっています。
【小川委員】  そのかわり10メートルマシンになってしまうと。
【小森主査】  そういう意味で、保守的な設計になっているということですか。
【岡野委員】  はい。ヨーロッパの設計は主に安全性とそれからダイバータがもつのかというところから設計がビルドアップされてきています。ですから大きくなりがちですが、それも考え方としては一理あると思っています。ただ、日本側も保守的に設計して、10メートルで定常炉というのだったらいいのかというと、逆にそうではなくて、定常炉で10メートルというのは、定常運転のための電流駆動パワーが巨大になってしまうのです。ですから定常炉を目指すのであれば、10メートルマシンというわけにはいかないのです。そこが難しいというか、もろ刃の剣というか、設計上で難しい点なのです。
 ヨーロッパだって、小さくてパルス運転が10時間できる炉がつくれれば、すぐ乗ってくると思うのですけど、それができないので主半径が10メートル級となっています。
【小森主査】  そうすると、実用化には疑問もと書いてありますが、これは、炉壁の交換の問題等があるということですか。
【岡野委員】  まだ経済性も解析していないですから、これまでの経験上の感じでしかないのですけれども、おおむね、7メートル級でないと、発電単価としてとても受け入れがたいものになるだろう、というのはこれまでの経験から大体分かります。
【小森主査】  それは装置をつくるコストが高くなるからということですか。
【岡野委員】  そうです。核融合炉は発電単価の大部分が建設費ですから、建設費が2兆円ですと言えば、発電単価は間違いなく高いのです。とにかく高くてもいいからつくれ、と言われれば、ありうるかもしれませんけど、原型炉は、やはり次のステップが見えるようなものでないといけないと思うので、ある程度の経済性は目指したいと考えています。
【小森主査】  どうぞ。
【尾崎委員】  14ページで、コードの話をされているのですが、ここでは、実際に使えるコード、バリデーションされているコードを使って、とりあえずの評価はしたいというのは解るのですけれども、将来的に考えたときに、こういうコードをずっと我々が自由に使えるものなのか、改造した場合に、そこの著作権はどうなるのかと考えたときに、国際協力で一つのコードを使う方に行くのか、それとも自分たちで独自のコードを持った方がいいのか、今その辺はどのように考えておられるのですか。
【岡野委員】  まず、本研究がBA期間に終了しなければいけないということを考えると、コード開発ということはできないと思います。それはまさしく私が申し上げた国内の安全研究体制を立て直してほしいということにつながっています。コードに関しては、今おっしゃっていただいたとおり、ライセンシングをもらって、それを使っているのだったら、もうずっとそのままになってしまう。実際に核分裂でも苦労しているものがあるようなので、自国で開発すべき、というアドバイスは随分いただきました。そういう点から言うと、当面は海外のコードを使いつつも、日本ならではのコードを開発するということは非常に価値があると思います。ただ、それはBA活動の中ではできないと思います。
【小森主査】  どうぞ、笹尾先生。
【笹尾委員】  ちょっと論点がずれるかもしれないのですけれども、先だって学術会議で福島事故の報告書を三つ、国会と内閣と民間、それぞれの責任者をお呼びして、シンポジウムをした時に、畑村先生だったと思うのですが、福島事故から学ぶことの一つとして、止める、冷やす、閉じ込める以外に必要なことを忘れていた。それはミティゲーションとエバキュエーションであると。だから五重の安全のリングをかぶせないといかんという話をされたのですけれども、その点で、この岡野さんの19ページにミティゲーションという言葉が最後に出てきて、これどんな事故が起こるか分からない、想定し得るだけ想定はするのだけれども、結局放射性物質の閉じ込めが不十分な場合が起きた時に、それをいかにミティゲートするかというそういう視点が重要だということをここに書かれておられるので、これは非常に重要な論点だと思うのですね。
 それで、それとさらにエバキュエーションの問題ですね。これも現在エバキュエーションでよくスピーディーというのが出てきますけれども、それがそのまま融合炉の事故に使えるとも思えないし、使える部分もあるのかもしれないですけれども、まあ少なくとも核融合の研究者は、そこまでを考えているということをやはり安全性の議論のときに1回きちんと言った方が良いと思うのですね。
 そのために、ヨーロッパの方は、そういう事態は起こり得ないと。ノーエバキュエーションだとか、そういうことの考え方で基本的な考え方がIFERC事業の枠内ではかなり違っていると思いますので、岡野先生が言われるように、安全研究を今後日本としてどうしていくかと、体制を含めた議論が必要ではないかなと思いました。
 すみません、コメントです。
【岡野委員】  おっしゃるとおりだと思います。IFERCの安全研究の中身を詰めるのに一番苦労したのはヨーロッパとの調整でした。ヨーロッパが想定した想定外事象をはるかに超えるようなものをBA共同事業内で分析してよいのか、という点です。我々は、福島の事故を見ているので、核融合は本質的に潜在的ハザードが断然小さいですから、より安全だとは思うけども、それでもやっぱり最悪のケースも含めて計算してみないと、大丈夫ですと言っても説得力がないだろうなと思っているのですが、BAの枠の中ですべてはできないなと今は思っています。
【小森主査】  その辺よく分からないのですけれども、ヨーロッパの方は終わっている、であれば、日本側がやるというわけにはいかないということですか。ヨーロッパとしては、そういう想定は考えられないから、やめてくれということになるのですか。
【岡野委員】  計画の示し方次第だと思うのです。たとえば、日本の原型炉案のブランケットの主案は水冷却+固体増殖材ですね。ヨーロッパの設計では、水冷却はありますが、固体増殖材との組み合わせはないので、それを中心に安全解析をやる限りは、これまでの欧州の安全解析とは異なると認識できるから、許容される範囲に入ると思います。
 その範囲で、ベリリウムによる水素発生があるかも、そのときにどれぐらい水素が出るかとか、水素爆発といった場合に、爆発を防ぐにはどうするかとか、万が一爆発したらどうするかとか、そういう解析は可能だと思いますね。ただし、ベリリウムはもう使わないつもりです。より水素発生が少ないベリリウムタイタネートというものにかえます。
【小森主査】  小川委員どうぞ。
【小川委員】  安全性に関する議論は、どうしてもコミュニティー中でやると、得てして我田引水というか、自画自賛があるので、ちょっと僭越ながら、核融合コミュニティーではない平山先生とか東嶋先生に、核融合の安全性について、我々が議論するときにどんなことに留意しなければいけないのか、コメントいただければありがたいのですけれども。
【平山委員】  先ほどのコードですが、ここに挙がっているMCNPも配付がだめになるとか、現在もロードモジュールしか入手できないような状況になっています。核融合特有のものは当然あって、それはコミュニティーの中で関係してやっていかないといけないと思いますが、共通するものはほかの関連分野と一緒にいいものを開発していくことが必要なのではないでしょうか。核融合の分野はほかとは別な形で動いていますよというのはあまりよくないのではないかと思います。
 事故の問題にしても、やはりフィッションのいろんな経験も十分取り入れる必要があると思いますので、どうやって一緒に協力していく体制がとれるのかということも考えていく必要があるのではないでしょうか。
【小川委員】  ありがとうございます。
【東嶋委員】  御発表ありがとうございました。コメントというか質問とくっつけてなのですけれど、やはり議論の最後の方でありました、例えば万が一水素爆発したらどうするかとか、そういったところまできちんと目配りしていただくということは良いことだと思うのですけれども、9ページのステージ1、準備期間というところで、EUにおける核融合炉の線量目標というのがあって、エバキュエーション、シェルタリングといろいろあるのですけれども、これ、もう少し御説明いただきたいなと思いましたのは、EUでこのターゲットをつくっていて、これ以下にもし事故があっても、これより少なくなるというところを安全ですよというか、何か基準にしてつくっていらっしゃるのかなと思ったのですが、どうしてこのところを伺いたいかといいますと、安全ですよというのはもう伝わらないわけですよね。だから、どの程度を持って安全とみんなでみなしてもらうか、安心感を持ってもらうかというところの議論が必要なわけで、そのどの程度ということの一つが線量目標だと思うのですけれども、とするとEUの核融合炉の設計では、ここにお示しになっている値を一応安全の目標値としているということなのでしょうか。
 で、日本としては、そういったある程度社会的にみんなが納得できるような目標値というものを見定めるのかどうか、そのあたりのことをお伺いできますか。
【岡野委員】  まずこの9ページの表の数字の意味は、例えばエバキュエーションが100ミリシーベルト/7daysと書いてあるのは、100ミリシーベルト以下だったら、避難しなくていいと、その線量の上限を100ミリというふうに決めたということで、これに合わせて核融合炉を設計するのではないのです。これらはそのアクションをしなければいけない上限が示されているだけです。それに対して、核融合炉を設計してみて、いくつかの事故事象を検討してみた結果どうなるかというのを調べた例は17ページにあります。ここにPPCS-Bの例というのがございますが、これは何かというと、設計外事象として、冷却材、この場合は水ですが、は失われたうえに、炉心内壁に穴があいて、水も漏れている、というような状況を考えた場合に何が起こるかという解析をしています。この場合、解析結果は、被曝量が1キロメートル離れたところで7日間に1.1ミリシーベルトであるとなっています。ですから核融合はこのような想定外事象でも全く避難も要らないし、安全ですというのがヨーロッパの結論となります。100ミリシーベルトよりはるかに低い範囲で収まっている、という設計結果ということです。こういった使い方をしています。
 これと同じ基準を日本で使うのは難しいかなと思っていて、違う基準を何か考えたいと思っています。
【東嶋委員】  分かりました。
【岡野委員】  表はあくまでも1例でお見せしたわけです。 日本の基準を何にするのかはまだこれから研究することなので、私は今答えられません。
【東嶋委員】  そうですね、おっしゃるとおり、1キロのところで7日間で1.1ミリシーベルト、まあある程度の評価の一つの目安にはなりますけれども、おっしゃるとおり日本ではこれでは通じないかもしれないから、そこのところは広い分野の人たちでちょっと一緒に考えていく必要があるということですね。ありがとうございます。
【小森主査】  よろしいですか。時間がまいりましたので、ここで終わらせていただきます。これで、今後の核融合研究開発の在り方にかかわる審議事項について、参考資料1の9項目の説明と議論が一通り終わりました。今後、報告書をまとめていく作業に入るわけですけれども、その前に、議論が足りなかったと感じておられる先生もいらっしゃると思いますので、今日は、御自由に討論していただく時間を設けてあります。今後どのようにまとめていったら良いかということに重点を置いて、御議論いただければと思います。
 この赤いファイルに、今まで発表いただいた資料を全てファイルしてありますので、これを御覧いただきながら、御質問と御議論をお願い致します。
【山田科学官】  これからの進め方というので、私から、僭越ですけれども、これから3回ほどの間で報告書をまとめていく議論をしないといけないということをまず頭に入れていただきたいと思います。
 それで、先回でも私から申し上げた通り、原型炉の概念設計をしていくに当たり、日本としては一定の経済性に見通しをつけるということが一つの目標になっております。これまでの議論の横串を通すという意味で、今日安全の話をいただいたということで、良い議論ができたと思っています。どうもありがとうございます。
 もう一つ経済性に関わる横串の観点として稼働率、保守があります。これについては一番最初に飛田先生に原型炉の全体の話をしていただきましたけれども、そこでは特出しという形では稼働率保守に関わる話は伺えていないので、これからの間で稼働率、あるいは保守というものについて1項目取り上げてヒアリングをしていただければと思いますがいかがでしょうか。
【小森主査】  この間、高津先生から御質問のあったリモートハンドリングとかも含めてですね。
【山田科学官】  そうですね、稼働率ということをまず概念の中で遠隔保守というのは非常に大きな要素になってくると理解しています。
【岡野委員】  その稼働率というのは、原型炉の稼働率を議論するのでしょうか。
【山田科学官】  具体の数値の議論ではなくて、稼働、いわゆる一定の経済性に見通しをつけるという目標を見直す必要があれば、見直す必要があると思うのですけれども、そういった観点で稼働率というのが一つ大きな物差しになると思いますので、その議論をする場を。今日にしても、安全についてどうこうの結論が出るという話では全くありませんので、稼働率保守についても一定の今日の安全のような意見交換をしておくべきだと考えます。
【岡野委員】  稼働率はどうあるべきかという議論から入ってしまうと、当然85%以上が望ましいとかいうことになりますが、原型炉でそこまで稼働率が上がると期待するのは無理なことなので、そこは分けて検討いただけるといいと思いますね。
 例えばヨーロッパと議論していると、彼らは非常に現実的だから、原型炉の稼働率ターゲットは、私の記憶では50%以下だったと思います。そういう設定をちゃんとしてくるというのは真剣に考えているということですね。もちろん実用化時点で50%でいいとは言っていないのだけども、そういう本当に原型炉を建設するには何を目標にするかという議論ができるといいかなと思っています。
【小森主査】  あと何かございますか。どうぞ。
【髙津委員】  稼働率の話を議論するのは、ぜひ大事だと思うので、私のイメージでは視点が二つあって、やっぱりリアクター設計の観点から稼働率がどうあるべきかという設計側のニーズみたいなのがあって、片や技術的な観点からフィージビリティーがあるのか、そういうことがという観点から、しかるべくものが見通しを紹介してもらって議論いただくのが、両方からやっぱりやった方が良いのかなと思います。
 その過程では、やはり岡野委員が言われるように原型炉でどこまで本当に求めるのかというのは、当然議論があってしかるべきで、ただ将来につながらない技術を原型炉で実施をしても、あまりそれも意味がないものだと思われるので、段階的な開発があるとしても、どういうシナリオでメンテを考えていけば、稼働率が上がっていくのかというのは議論いただいた方が良いのだろうと思いますね。
 もう一点、すみません、よろしいですか。
【小森主査】  どうぞ。
【髙津委員】  たびたびすみません。岡野委員の発表に戻ると、非常に画期的なというか、話を紹介いただいて、先ほど森委員の方から質問出ましたけども、以前の推進方策の議論をやったときの私の記憶では、やはりユーティリティーの方から見向きもしてもらえないようなものを開発しても仕方がないからということで、発電単価というのでしょうか、経済性を考えなきゃいけないというトーンが非常に強かったと思うのですけれども、その後、福島も受けてでしょうか、もう少しバランスを考えて、安全性と経済性をバランスを考えた方が良いのではないかということで12ページで2ギガの、例えば例ですよね、きっと。今のイメージとしてはこの程度のもの。で、主半径も7メートルって、イメージとして考えておられるということで、これは確か推進方策のイメージとは大分、少し踏み込んで、ちょっと違う方向を主張されていますよね。ITERと同程度の炉で、数メガワットというようなイメージだったと思うので、それよりももう少しやはり安全性と経済性のバランスを考えるべきだというふうな方向を目指しておられるので、個人的には非常に賛成なのですけれども、少し推進方策の書かれていることからいろんな状況を受けて、やや違う方向をサジェストされているのか。そうでもない?
【岡野委員】  それほど違っていないとは思っています。推進方策のITERと同程度の大きさのというのについては、Demo-CRESTは主半径が7.25メートルだったのですけれども、当時の議論で、Demo-CRESTの大きさは同程度の範囲ということになっているので、7メートル台はITERと同程度であると思っています。10メートルと言われると、さすがに同程度に見えないので無理があるかと思いますが、7メートル台は同程度と思っているので、そこは逸脱していないかなと思っています。ただ、推進方策には「100万キロワットの電気出力」というのも書いてあるのです。これについては、2ギガワットの熱出力からでは100万キロワットの電気は出ないので、たしか飛田さんから原型炉設計のお話があったときに、100万キロワットという枠は外し、原型炉の設計者に自由度を与えた方が良いのではないでしょうかという発言を私がさせていただいて、そこまで厳密に100万キロというわけではないから、という御意見になったと思っています。
 実はそれも考慮されて、このDEMO2、DEMO3は出てきています。100万キロの電気と言われると、原型炉で出すのはかなり難しいというのが実際に設計した感じですね。それ以外は一定の経済性を目指すことはやめようとは思っていないし、トリチウムの自己増殖もやめようと思っているはずがないので、一つだけ推進方策から変えた点があるとすれば、100万キロワットの電気出力という制約だけだと思います。
【髙津委員】  ありがとうございました。
【小森主査】  どうぞ。
【金子委員】  今まさに議論のあったところで、原型炉に対する考え方が若干もし変わるとしたら、これまで聞いてきた9項目の前提というものが若干変わってくる可能性がありますよね。その辺の整合性をもう一度きちんととった方が良いと思うのですけれども、どうでしょうか。今すぐに具体的な値が出るという話ではないと思うのですが、開発研究をやられている方というのは、一番当初にあった設計値をターゲットにしてやられていると思うのですが、これはこのままやはり進めるべきかどうか。それから体制の議論が入ってきていないですね。全日本と言いながら、それぞれのところは一生懸命やられているのですけれども、ゴールを目指したときに、じゃ、どことどこが協力してやったらいいのか、あるいは前回の9項目が出てきたときに、どこもやるところがない部分があるのではないかと、そんな議論もあったと思うのですけれども、その辺のところを全体をサーベイしながら報告書をまとめるという作業が必要ではないかと思います。
【小森主査】  具体的には、9項目以外に、別の項目があるというイメージですか。安全性は入っているとして、別なもの……。
【金子委員】  そうですね、例えば先ほど岡野委員がおっしゃったように、中性子負荷としては2メガワット/平米以下にしましょうとか、そういう話が具体的に出てくるとしたら、それはこの開発項目の中に、今よりは少し条件が緩和される要素が出てくるというわけですけれども、緩和されるということは逆に開発のスピードが上がるというわけですので、その辺もロードマップにも反映しながらサーベイし直すことができないかなと考えた次第です。
【小森主査】  ただ、例えば、環境安全性評価の中にそういうものが含まれているような気がしますが。
【金子委員】  そういう意味ではなくて、それで例えばブランケットであるとか、ダイバータであるとか、この辺の設計基準が若干緩んで、必要とするものが早く手に入れられるのではないかという意味です。
【岡野委員】  よろしいですか。
【小森主査】  どうぞ。
【岡野委員】  大きく9項目の目標が変わるとは思っていないです。
【金子委員】  それはそうですね。
【岡野委員】  むしろ、今まではかなりぎりぎりの設計をして、ダイバータだって1平米あたり20メガワットとか熱が来るのをやっと除熱できるというような設計だったのが、当然ものをつくる時には余裕を持たなきゃいけないから、その余裕がようやくできるという理解でいいような気が私はするのです。だから、開発目標は何も変えなくても大丈夫だと思います。
 例えばプラズマにしても、ベータを少し下げたからといって、例えばJT-60でβNの4は達成できても、βN=4で実用機を動かせるわけではなくて、少し余裕を見ますよね、当然。そういうことを考えれば、より高いプラズマをつくってもらった方が、フレキシビリティーは増えるので、ターゲットを下げる必要はないと思います。
 むしろ今までは、やや理想論で非常に高性能な原型炉を目指していたけども、安全性のことも加味して、少しより保守的な方へ少し振ったということなので、設計余裕ができたという範囲を越えてはいないと思います。
【小森主査】  そういう意味で、ダイバータのような機器の開発に関しては、緩和される方向なのでということですね。
【岡野委員】  そうですね。ターゲットを下げるのではなくて、今のターゲットで現実的に余裕を持って使えるようになるということだと思います。
【小森主査】  はい、どうぞ。
【笹尾委員】  全体としてはそれでよろしいかと思うのですけれども、上田先生がタングステンの話をされた時に、原型炉では果たして解があるかどうか非常に難しいという最後そういう結論だったので、そこをどのようにここでまとめていくかですね、その今金子先生の言われたのは、そこの部分を少し下げると、少し書きぶりが変わってくるのではないかということもあると思うのですね。ですから、ほかにもクリティカルになりそうなポイントというのはいくつか挙がっていたので、もう一度全部ちょっと見直して、これぞクリティカルだというところを、私は今思い出したのは上田先生の話だったのですけれども、それ以外にもあったかもしれないので、そこは1回おさらいしておいた方が良いのではないかと思っています。
【小森主査】  それは、今この場でどれがボトルネックか……。
【笹尾委員】  というか、次回の……。
【小森主査】  次回ですか。
【笹尾委員】  私が気がついたのは上田先生のお話だったのですけれども。
【小森主査】  そういう意味でまとめ方を議論する必要があります。本島先生が座長をされていたときに、ロードマップをつくるということで始められて、私に引き継がれました。今は、原子力大綱がまだ決まっていない状況なので、この時点でロードマップを作成するのは多分無理だと思います。今回は、現状をまずまとめて、その中で何がボトルネックか、問題なのかということと、主要な技術的オプションを挙げる必要があるのではないでしょうか、まとめは、各事項を説明された方が一番良く知っていますので、説明された方に先ずお願いして、各事項について、問題点も挙げていただくのが現実的ではないかと思います。それをさらに議論して、最終的なまとめをつくるというのはどうでしょうか。今のお話を聞いて、そう思ったのですが。
 まず説明していただいた方に考えをまとめていただいて、それを主に議論を進め、まとめていくということですが、いかがでしょうか。御意見がございましたら、よろしくお願いします。
【髙津委員】  よろしいですか。今、座長、私が聞き間違いかも分からないですけれども、報告書のイメージとしては九つの項目を主に挙げて、それに対して研究開発の多分現状のようなもの、それから今開発を進めているものの目標のようなもの、何が課題なのか、そういうことをまとめて、あと体制をあれですか、どうあるべきだとかいうことをおまとめ……。
【小森主査】  そうですね、それらを含めていく……。
【髙津委員】  そこにはロードマップは、ちょっと議論なかなか煮詰まらないということで無理だとおっしゃったのですけれども、スケジュール的なイメージも当然入らなきゃいけないだろうと思うのですけれども。
【小森主査】  スケジュール的な面は入りますね。ただ、皆さんがどういうイメージを持たれているのか分かりませんが、詳細なロードマップの作成は無理ではないかという意味です。個々の機器には、それなりのスケジュールが必要ですが、それらをきちんと精査して、非常に詳細な全体のロードマップというのは今の時点ではちょっと無理かなと思います。できるのであれば、議論していきたいと思います。
【飯嶋専門官】  ロードマップの話は、ちょっとこの時点では、先ほど小森先生言われましたように大綱の問題とかありますので厳しいのではないかなと思っております。
 しかしながら、やはり今回この報告書をまとめるに当たりましては、いろんな課題があるわけですので、それを乗り越えなければ、やはり次のステップというか原型炉に向かえないわけですから、研究者の方々が、その課題をいつごろ克服できるのかとか、そういったスケジュール感は、その研究者の皆様、その9項目、実質的に8項目だと思いますけれども、それぞれの先生にこれぐらいまでには課題を解決できるだろうというようなものぐらいは入れていただいてもいいのかなという感じはしますが、いかがでしょうか。
【小森主査】  ちょっと私の言い方が悪かったかもしれませんが、問題を解決していくためのシナリオは入れていく必要があると思います。やはりどれを先に解決して、次にこれというような感じのものをつくらないと、意味がなくなると思います。
【岡野委員】  よろしいですか。もともと、9項目少しずつ変わりましたけれども、ロードマップに書いてあった9項目から派生しているものですよね。あの9項目は今すぐやらないと間に合わない9項目でしたから、そういう意味ではこの10年に、あるいはITERが9、10を達成するまでにやらなければならないということは、もうここに含まれているはずなので、それをいかに早くやるかということに関しては、もうある程度シナリオは書けるべきですよね。そのシナリオは含まれるということだと思うのです。
【小森主査】  ほかに御意見ございますか。はい、どうぞ。
【山田科学官】  少し詳細に入ります。今日、金子先生から問題提示されたことですけれども、出力を2ギガワットにしたらどうなるかと見直しとかそういったことです。これは今日初めて岡野先生から話を伺ったものですが、この熱出力のように設計上、いくつかオプションというのが考えられると思うのですね。ですから今年度につきましては、オプションという考え方で整理をしていただいて、そのオプションを選択するには、今岡野さんがおっしゃいましたように、今後10年の研究の推移を見守って、その判断をしていくということになると思いますので、各担当の方々にはそういったことも含めて考えをまとめていただくことが大事だと思います。
【小森主査】  それでは、今日決めないと進まなくなりますので、決めさせていただきます。説明いただいた方に問題点を含めて、まとめを書いていただくことにします。その問題点とか体制とかを、ここで議論して、今議論していただいた趣旨のスケジュールを考えていくということでよろしいでしょうか。すると何枚ぐらい……。
【金子委員】  それで結構だと思うのですけれども、それぞれ御発表なさった方は、ほかの議論を全然聞いていないわけです。ですから、例えば今日の安全性の話を聞いて、じゃ、それが自分の開発研究にどう関わるかとか、安全性を重視したら、ここはこう変えないといけないとか、そんなのが出てくるかもしれないですよね。そのあたりの調整はここで出てきてからやるということでよろしいでしょうか。
【小森主査】  ですね。皆さん聞いていないのでそれは無理ですね。資料を送って、全体を見てもらうというのは必要かもしれませんけれども。あとはここで調整するしかないかと思います。
 どのぐらい書いていただくかは、また事務局と相談させてもらうということでよろしいでしょうか。
 山田さん、ほかに何かありますか。
【山田科学官】  特に。
【小森主査】  どうぞ。
【坂本戦略官】  どうもありがとうございます。今日も非常に貴重な御意見をいただきまして。すみません、ちょっと技術的なことではないんですけれども、安全性について、私自身も最近予算等の関係で国会を回ったりとか、あるいはマスコミの方に説明したりしているときに、やっぱり非常にこの安全性について関心が高いというのを感じます。さっき岡野先生からもお話がありましたけれども、ヨーロッパはこういう戦略をとっているという中で、安全性というか、社会的重要性、あるいは安全性に対する社会的認知という観点で、一体技術側が何を社会に対して、国民に対して示す必要があるのかというところを、本当、これは問われているなということは私も肌で感じておりますし、そういう意味で、今日の御議論は非常にありがたかったなと思います。
 そういったところを、当然設計の原型炉の設計のバウンダリーと言われたら、どうやって決まるのかというのはいろんなオプションがあり得るとは思うのですけれども、一つの重要なバウンダリーを形成するというか、その設計活動を進める上での考慮事項というので間違いないと思いますので、今、まさに金子先生からお話がありましたけれども、安全性の議論が例えば各コンポーネントにどういう影響を与えるかとかいうところは、やはり方向性だけでもこういうことは考えなきゃいけないということをコミュニティーの先生方皆さんが共有していただけるようなそういうメッセージは、ぜひ今回の報告書をまとめていったときに出していただければありがたいなと思います。
 あと、恐縮ですが、ちょっと私からの御提案で、既にちょっと山田先生とか、御相談を少しさせていただいておりますけれども、ぜひ原型炉、これはっきり言って相当長い取り組みになっていくと思いますので、そのときの主役になる方が、今これから取り組もうとする課題についてどう考えているかとか、そういったものを御意見なりお考えを発表をいただくような場をこの作業部会で設けてもらえればありがたいなと思います。どういう形がよいのかというのは、ちょっと山田先生、門先生はじめ、あるいは小森先生に御指導いただきながらちょっと考えたいと思いますけれども、そういったのをちょっとお考えいただければありがたいです。以上です。
【小森主査】  そういう意味で、進め方ですけれども、あと3回できるということ……。
【飯嶋専門官】  そうですね。先ほど一つの項目ですが、稼働率とか保守の話をもう一つ話をするということであれば、当初あと3回ということを考えておりましたけれども、若手研究者の意見をお聞きするということももしするのであれば、もう一回増やして、10月、11月、12月、1月と、月に1回程度ずつ、ちょっとお忙しいところ申しわけないのですけれども、あと4回というのはあり得るのかなと思っておりますが、いかがでしょうか。
【小森主査】  そうすると次回は、まとめを書いていただいて、議論するということですと、12月ごろでしょうか。どうでしょうか、山田先生。
【山田科学官】  もし10月末とか11月の頭だとなかなかこの9項目の原稿が上がってきてというのは難しいですかね。それともここにいらっしゃる方で岡野先生は何か書けそうか……。飛田さんとよく仕事をされているので申し上げているのですけれどもね。ちょっと難しいですかね。
【岡野委員】  飛田さんの分も私が書くということですか。
【山田科学官】  いいえ、違います。相談して早く書いてもらうという意味です、すみません。
【小森主査】  でも、議論を深めるためには、やはり次回以降ですから、後で相談するということでよろしいでしょうか、ここで議論しなくても。
【山田科学官】  ええ。若手の方からの意見については、一定の何かターゲットがないと、自由な意見をいただくというのは難しいと思いますから、ある程度ここでの議論の形が見えてきた上でそれを見ていただいて、議論していった方が生産的だと私は思います。
【小森主査】  全体的な進め方は、今いろいろ御発言いただいたようなことにしたいと思います。ほかに何か進め方でございましたら、今御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、後で、詰めさせていただいて、また御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
 それから何か……。
【飯嶋専門官】  現在先生方に日程調整表をお送りしておきますので、一応今週いっぱいでございますので、小野さんまでお返しいただいて、その後また小森先生、山田先生、門先生と調整をしたいと思います。そこで次回決まりましたら、皆様方に御連絡をしたいと思います。よろしくお願いします。
【小森主査】  どうぞ。
【笹尾委員】  その他というところで、よろしいですか。ちょっとお聞きしたいと思ったのは、昨今新聞を読んでいますと、復興予算に群がるシロアリということで、核融合が出てきているのですけれども、その辺の事情ですね、復興予算にどう群がっているのか、これはマスコミの誤解なのか、もし誤解だとしたらどう反論したらいいのかというところをちょっと教えていただけたらと思いまして。すみません、ちょっと余計な話かもしれません。
【坂本戦略官】  ありがとうございます。実はマスコミの対応をしている中には今の件も含まれていまして、これはまずそもそもの、ちょっと報道機関によって、ちょっと切り口が違うところもあるのですけれども、本質的な問題は復興特会と、あるいは復興特別会計に計上する予算の考え方を示す、東日本大震災からの復興の基本方針という、これは復興対策本部が、昨年の7月に定めたものですけれども、そこで今被災地でさまざまな復旧復興活動が行われているわけですけれども、瓦れきの処理が進んでいないとか、あるいは被災地の方々の、例えば地元の商業活動をどうサポートするかとか、そういったところがなかなか進まないとか、現地の学校等々のインフラの整備が終わらないとかいろんな問題がある中で、そういった直接的なもの以外のものがさまざまな切り口で行われておるということが本当にいいのだろうかというそこの本質がございます。
 それ以外、ちょっと核融合で若干ある新聞では復興予算が原子力村にとか、何かちょっと違うのではないかという切り口で、何か原子力批判に復興特会を結びつけて、何かそんなニュアンスもちょっと感じ取れたりするのもあるのですけれども、ちょっと置いておいてですね。そういった反原子力的なことについてははっきりと核融合は原子力発電とは違いますということを正直言うともっとアピールしていかないといかんと、今そこはそこでしっかりとやろうと思っています。
 復興特会の考え方について、これは先ほど申し上げましたように政府として決めた基本方針というのがございまして、その中に当然その被災地の方々の生活を元通りに戻す、インフラを元どおりに戻す、町を元通りに戻す、これは最優先だと、私も個人的にもそう思います。ただ、さまざまな形で被災地がダメージを受けているという時に、その産業なり何なりを元通りにできればいいわけですけれども、今ある、はっきり言うと、元どおりにできない部分も正直言うとあるわけです。そういったときに、今ある能力、ポテンシャルを使って、いかにその地域の経済活動を再生するかという、そういう項目がございまして、その地域経済活動の再生という中に、地元の既産業、あるいは技術を生かすという項目で、今ちょっと読みますけれども、被災地域の大学、大学病院、高等専門学校、専門学校、公的研究機関、産業の知見や強みを最大限活用し、知と技術革新、イノベーションの拠点機能を形成することにより、産業集積、新産業の創出及び雇用創出等の取り組みを促進するという、この項目に該当するものとして、幅広いアプローチ活動、青森県六ケ所村、それから茨城の那珂市で行われている、今日御紹介のありましたIFERCであるとか、あるいはサテライトトカマクとかそういった事業がこれに該当するものとして認められて、復興予算に計上されたというのが経緯でございます。
 このフレームについて、十分御理解をいただいていない場合もちょっとあるのではないかと我々は推測しますけれども、理解いただいていたとしても、そのフレームそのもの、そこまで復興特会を使うというのはちょっとやり過ぎではないかという問題意識で行動されているものもあるというところはございます。
 我々としては、復興特会で計上された趣旨にも合うと、これは例えば青森であれば、約180人が働く研究センターができて、世界最先端の研究が国際的な環境で行われていると。そこには新産業の芽になるような研究成果が生まれてきますし、そもそも研究センターの維持管理において、さまざまな小規模な工事であるとか、あるいは装置の改造であるとかそういったものについては、地元企業にも経済効果はございます。一定のセンターの支援機能についても、地元の方々の雇用もございます。
 さらには、青森県はそれを地域の大学や、あるいは産業界とのセンターとのつながりというものをつなげる、研究能力を強めることによって、産業を起こしたいということを本当に期待していただいていますし、そういった形で、このセンターの活動を進めておるということから、そういう現状が認められて、この復興特会に計上されたということがございますので、先週の金曜日、平野文部科学大臣がはっきり申し上げていましたが、これはごまかしとかそういうものではないと。この項目に明確に該当するということで予算要求していると。ただ、復興特会がこの考え方でそもそもいいのかということについて、今後の調整ということは必要かもしれないという発言をしております。
 そういう状況でございますので、我々としては、政府として定めた枠組みに従って、予算措置がされておりますので、その趣旨を一生懸命各方面説明をさせていただいているところでございます。
【笹尾委員】  ありがとうございます。
【小森主査】  それでは、本日はこれで閉会いたします。ありがとうございました。

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