原子力科学技術委員会(第35回) 議事録

1.日時

令和5年12月20日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 原子力科学技術に関する政策の方向性について
  2. 次世代革新炉の開発に向けた現状と課題について
  3. もんじゅサイト試験研究炉の取組状況について
  4. その他

4.議事録

【竹之内課長補佐】  それでは、定刻となりましたので、ただ今から第35回原子力科学技術委員会を開催いたします。よろしくお願いいたします。
 今回もオンライン開催のため、確認事項がございます。議事に入るまで事務局にて進行させていただきます。
 まず、オンライン開催に際しての留意事項をご説明いたします。委員の皆様におかれましては、現在遠隔会議システム(Webex)上で、映像及び音声が送受信できる状況となっております。御発言を予定される場合には、挙手ボタンを押していただくと画面の左側に挙手マークが表示されますので、順番に主査から御指名を頂きます。もう一度ボタンを押していただきますと挙手マークが消えますので、御発言を頂いた後は挙手ボタンを押して手を下ろしてください。
 会議中に、ビデオ映像及び音声がいずれも途切れている場合、その時間帯はご退席されているものとみなします。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時、事務局あてにお電話にてお知らせください。
 傍聴される方におかれましては、ビデオ映像及び音声をオフとしてください。議事進行の妨げとなる行為を確認した場合は、遠隔会議システムからご退席いただきます。
 議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日、文字起こしをいたします。事務局以外の方の会議の録画及び録音はお控えください。
 以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
 続いて、本日の配布資料を確認させていただきます。今回は、委員の皆様及び傍聴の登録をされた方あてに事前に配付資料をお送りしております。会議中、遠隔会議システム上においても資料を表示いたします。
 お手元に議事次第を配布しております。本日は議題が4つございます。
 議題1が「原子力科学技術に関する政策の方向性について」
 議題2が「次世代革新炉の開発に向けた現状と課題について」
 議題3が「もんじゅサイト試験研究炉の取組状況について」
 最後に「その他」となっております。
 配布資料は、それぞれ議事次第に書かれているとおりでございます。お手元に資料が無いということがございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。また何かございましたら、随時お申し付けください。
 次に、委員の皆様方の御出席状況について報告します。開始前に事務局にて確認しております。
 本日は、委員11名中10名御出席となっております。遠藤委員、吉橋委員におかれましては途中からの参加となっております。また、黒﨑委員は途中退室となっております。運営規則の第3条に規定されております定足数である委員の過半数を満たしておりますので、ご報告いたします。
 続きまして事務局からの参加者についての御連絡です。文部科学省からは、原子力課長の奥、私原子力課課長補佐の竹之内、その他、本日の議題に関係する担当官が出席をしております。
 それでは、これから議事に入らせていただきますが、運営規則の第5条に基づきまして、本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき、本日の議事録につきましてはホームページに掲載をさせていただきます。
 それでは、ここから出光主査に議事の進行をお願いしたいと思います。出光先生、お願いいたします。
【出光主査】  それでは、議事に入りたいと思います。先ほど事務局の方からありましたとおり、本日の議題は4つございます。17時までの予定となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初の議題ですが「原子力科学技術に関する政策の方向性について」に入ります。事務局の方から説明の方をお願いいたします。
【奥原子力課長】  原子力課の奥です。今日はよろしくお願いします。資料1に基づきまして、文科省としての現在の考え方と今後の検討の方向性を御説明させていただきたいと思います。
 先日、10月13日の前回の委員会の時にも目出しをさせていただきましたが、この原子力科学技術に関する研究開発について、昔は原子力委員会の方に長計というものがありまして中長期の戦略ができていましたが、今はその長計が無くなってしまって、中長期的な科学技術の戦略ビジョンというのがないという状況にあると思っています。
 こうした背景から、文科省における科学技術・学術審議会の原子力科学技術委員会の方で、中長期を見通した今後の研究開発戦略の在り方というのを議論してはどうかということでご提案させていただいているものになっています。今回お配りしている資料1は、文科省としての現在のスタンスを取りまとめたものですので、これをある種たたき台にして今後先生方にご議論いただければ有り難いというふうに思っています。
 では、資料に沿ってご説明させていただきます。3頁目、原子力科学技術を取り巻く状況について、先生方にご説明するまでもありませんが、左上から、原子力についてはカーボンニュートラルであるとかGXの観点からも重要性が高まっております。
 また、核燃料サイクルについては、国としての基本方針として維持しておりますので、そうした観点からも重要性は非常に大きいと思っています。
 また、原子力については先端技術、機微技術が多いということもありますので、経済安全保障上あるいは技術安全保障上、重要性も非常に高いと思っています。
 あと、原子力については総合科学技術ですので、いわゆるエネルギー利用のみならず、例えば医療、材料、製造のような、他分野への応用が期待される分野であろうというふうに思っています。
 こうした観点からも、国として原子力の科学技術をきちんと保持しておく必要があるということで、その重要性は引き続き高いと思っています。
 その一方で、4頁目になります。現在の科学技術の現状を見てみると、左側は若干分かりづらい図かもしれませんが、昔は研究の水準でも日本はトップレベルの集団にいたと思いますが、最近では2位集団、3位集団に落ち込んでしまっています。
 右側に移ると、原子力の関連学科へ進む学生、特に学部生の数というのが非常に少なくなっているというような状況になっています。もちろん原子力の学科専攻の名称変更という要因もありますが、長期的なトレンドとしては学生数の減少傾向は続いているのだろうと思っています。特に原子力工学専攻で、学部レベルでその名前を冠しているところというのは既に私立大学の2校になってしまっていて、国立大学では原子力の名前を冠している学部は無いというような状況になっています。
 そうした中で、国の政策の方針としても、例えばGXの基本方針の中で、次世代革新炉の開発であるとか研究開発や人材育成、サプライチェーンの維持・強化が重要であるということ、あるいは原子力委員会の方でもJAEAをはじめとする研究基盤についてきちんと強化をしていくということが盛り込まれているところです。
 この具体的な中身というのを今後我々の方で議論していく必要があるのではないかということで、この委員会におきまして当面課題として5つぐらいを掲げた上で、これがある種キックオフになりますが、来年の夏、概算要求の前ぐらいまでに一定の方向性を示すというスケジュール感で議論を進めていったらどうかと思っています。
 我々として当面掲げるべき柱として5つをここでは挙げさせていただいています。基本姿勢として、安全・安心を大前提とした政策推進であるとか、中核的な基盤の構築、あるいは課題解決に向けた社会共創の取組というのを方針として挙げさせていただいた上で、柱として今5つ掲げています。
 1つ目は新試験研究炉の開発で、もんじゅが廃止措置に移行しましたが、そこのサイトを使って新しい新試験研究炉を作るという検討が今進んでいます。これは大学における研究・教育の基盤の一端としての重要な役割を担うと思っておりまして、この試験研究炉を着実に進めていく必要があると思っています。
 2つ目は、次世代革新炉の開発です。文部科学省の役割は、いわゆる実証炉・実用炉に向けた技術的な基盤を確立すること、そして一連の技術体系をきちんと保持しておくことというのが大きいミッションであろうと思っています。そうした観点から、高速炉の常陽であるとか、高温ガス炉のHTTR、あるいはそれに資するような原子力の安全研究というのを着実に進めていく必要があるのだろうと思っています。
 3つ目が、廃止措置を含むバックエンド対策になります。もんじゅ・ふげん・東海再処理といった主要施設について廃止措置に移行をしていますが、それ以外についての廃止措置対象施設というのもJAEAは多数保持しております。こうしたものをできるだけ早く廃止措置を済ませることによって、維持管理費を長期的に低減していくということも大事かと思っています。
 4つ目の柱が研究と人材育成基盤の強化になります。上3つのような既存の軽水炉あるいは次世代革新炉・試験研究炉も含めて、こうした既存の原子力の基盤というのをきちんと維持・強化する一方で、将来的なことを考えて次の原子力の柱となるような新しい研究の芽というのを継続的に育成していく必要があるのではないかと思っています。ということで、原子力のイノベーションの推進と挙げていますが、新しい研究の芽を育てるという観点からこうした取組が必要だと思っていますし、その裏腹として原子力に関する人材育成機能の強化というのは引き続き重要だろうと思っています。
 最後に5つ目が、福島第一原発への対応ということで、廃止措置の推進に向けた研究と人材育成基盤の強化というのは文科省の方としても事業としてやらせていただいていますし、あるいは原子力損害賠償の取組というのも文科省としては取組を進めています。そうしたことも柱の一つとしてきちんと掲げていってはどうかというふうに思っているところです。
 それぞれについて現状と今後の方向性を簡単にご説明させていただきたいと思います。
 1つ目が、もんじゅサイトを活用した新試験研究炉です。これは申し上げたようにもんじゅの廃止措置に伴って、そこのサイトを活用した新しい試験研究炉の設置というのを政府として決定をしています。京都大学・福井大学・JAEAを中核機関として選定をした上で、左側になりますが昨年度をもって概念設計が終了し、今は詳細設計の段階に移行しています。主契約企業の選定等も済ませておりまして、これから具体的な設置許可申請に向けた詳細設計を進めていくことになります。
 建設予定地であるとか、この事業全体の予算推計、それと予算の確保の方策、それと試験研究炉を中核として、その地域の活性化を図っていくということが非常に大事だというふうに思っておりまして、その試験研究炉の産学官の利用促進体制の在り方であるとか人材育成策、あるいは研究の支援の基盤としての強化というのを引き続き図っていく必要があるかというふうに思っています。
 10頁目が今後のスケジュール案になりますが、当面として令和6年中に設置許可申請の時期を見通すというのを一つの目標として、今詳細設計を進めている段階になっています。
 続いて、同じ試験研究炉でJAEAの東海にJRR-3という炉があります。このJRR-3については着実に運転を再開し、供用の運転を開始しているところです。今後はこれを使って医療用RI、特にモリブデン99の製造に関する試験的な研究開発であるとか産業利用、あるいは学術利用の促進、それと他の中性子施設、放射光施設等々の相互的な利用というのも大事だと思っています。
 さらに、先ほどのもんじゅのサイトに設ける新試験研究炉に実験装置群を今後整備することになりますが、その実験装置群のテストベッドとしてJRR-3を活用していくということも非常に大事だというふうに思っていまして、いわゆるJRR-3の実験装置群の更新という意味でも、もんじゅサイトとの連携というのは非常に大事になってくるだろうというふうに思っています。ここまでが1つの柱です。
 2つ目の柱が、次世代革新炉の開発になります。先ほど申し上げたように文科省の役割というのは、技術的な基盤をきちんと確立することにあろうというふうに思っています。
 その観点から、13頁目、1つ目の柱というのが高速炉の常陽になります。もんじゅは廃止措置に移行しましたが、常陽については引き続き稼働している高速炉としてはOECD諸国の中で唯一の高速炉になります。
 現在は安全対策工事を進めているところで、令和5年7月に規制庁の方から設置変更の認可を得ました。方向性のところにありますが、現在は令和8年度半ばの運転再開を目指して工事の計画認可の申請と審査を進めているところです。
 さらに、常陽については今後燃料製造に向けた取組というのが非常に大事になるだろうというふうに思っています。これらについても複数のオプションを示した上で今後の在り方というのを検討させていただきたいと思っています。
 14頁目に今後のスケジュールがあります。令和8年度半ばに運転再開を目指すということを一つの目標に据えています。ここで整備された技術的基盤というのを、次の高速炉の実証炉を経産省さんの方で進めていただいていますが、実証炉の方に着実につなげていくということが非常に大事であろうと思っています。
 燃料製造の技術開発であるとか、あと炉概念の設計等々に技術的な知見を提供し、実証炉は今2040年代の運転開始というのを目標に据えていますが、こうしたところにきちんと寄与していくということが重要であろうと思っています。
 2つ目が、高温ガス炉のHTTRになります。HTTRにつきましては、我が国で先進的な技術を持つ高温ガス炉でありまして、原子炉の出口温度で950℃というトップデータを持っています。令和3年に再稼働しまして、今年度中に運転を再開する予定になっています。今後の方向性にありますように、運転再開後は100%運転時の炉心流量喪失試験の実施であるとか、950℃の高熱を利用した水素製造のための実証試験を進めるということを一つの目標に据えています。
 さらには、これも同じように経産省さんの方でガス炉の実証炉に向けた検討というのを進めていただいていますが、そこに技術的な知見を提供していくというのが大きい目標であろうと思っています。
 今後のスケジュールにつきましては、水素製造施設についてHTTRの隣に作って、そことの接続確認試験を行うというのが一つの目安になっていまして、その先の実証炉の方に着実に知見を提供していくということが非常に大事だと思っています。
 17頁目が、原子力の安全研究になります。原子力規制委員会の技術支援機関としてJAEAは指定をされていまして、規制庁の方から委託を受けて、特に軽水炉に関する安全研究を実施しているところです。今後はそうした規制庁の下での安全研究に加えて、高速炉であるとかガス炉、その他次世代の軽水炉を念頭に置いて、効果的かつ科学的に合理的な規制に対応するための技術的な知見というのをきちんと提供するような研究というのを着実に進めていく必要があろうと思っています。
 さらに、JAEAの方では原子力防災の取組というのを進めていまして、こうしたものも安全研究と一体として進めていく必要があろうと思っています。
 3つ目の柱が、廃止措置を含むバックエンド対策の強化になります。19頁目のところで、まず原子力機構(JAEA)の方では、もんじゅ・ふげん・東海再処理施設を主要施設として優先的に予算配分をして廃止措置を進めているところです。ただ、これ以外にも既に36施設が廃止措置の段階に移行していまして、これらの施設を全て廃止措置しようとすると総額で約1400億円のお金が掛かるというふうになっています。一方で、毎年度JAEAの方で実際に予算措置できているというのは本当に僅かな金額でして、この廃止措置をいかにして効率的・計画的・戦略的に進めていくのかということが非常に大きい課題だろうと思っています。
 下の経緯のところにもありますように、この廃止措置対象施設は維持管理費が相当程度掛かってきます。今のペースで廃止措置を進めようとすると相当程度の年数が掛かる一方で、短期集中的にこの廃止措置を進めることによって、維持管理費の大幅な低減につながるというふうに期待をされています。
 そうした観点から、今後は中長期的な資金計画であるとか、それを実現するための資金確保方策といういくつかのオプションを検討していく必要があると思っています。
 20頁目のところは今の廃止措置計画の全体像になっていますので、こちらは後ほどご覧いただければと思います。
 また、21頁目以降が主要施設の廃止措置になります。現在、高速増殖炉のもんじゅについては廃止措置の段階に移行しています。現在、燃料とナトリウムについて取り出して、今はしゃへい体の取出しの工事というのを進めているところです。
 使用済燃料については、令和16年度に海外搬出をする予定にしておりまして、また、ナトリウムについても令和10年度を一つのめどとして搬出を開始したいというふうに思っています。こちらの工程に沿って着実に進めていくというのが重要であろうというふうに思っています。
 2つ目がふげんです。ふげんはJAEAの中でも相当程度廃止措置工程が進んでいる原子炉の一つであろうと思っています。このふげんについては廃止措置の工程というのをより保守的に見直したということもありまして、計画全体が7年後ろ倒しになっています。
 また、ふげんの使用済燃料について海外搬出をするということになっていますが、この12月にこの搬出計画についても一定の見直しをするという予定になっています。これにつきましても計画に沿った形で着実に進めていくということが非常に大事だと思っています。
 3つ目が、東海再処理施設になります。東海再処理施設についても廃止措置に移行し、この技術的なものというのは全て六ヶ所再処理工場の方に移転をしています。これもフェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と段階を経て廃止措置に移行していく必要がありますが、特に今はリスクの高い高レベル放射性廃液がまだ残っているということもありまして、これのガラス固化というのを最優先課題として進めているところです。
 今は2号溶融炉が止まってしまいまして、3号溶融炉への取替えに向けた検討というのを進めているところです。それに伴って計画全体の見直しというのも今後検討していくことになろうかと思っています。
 3つ目が、バックエンド対策になります。JAEAは平成20年度の法改正に伴いまして、低レベル放射性廃棄物の埋設処分の実施主体として指定をしています。それを受けて埋設勘定というのを設けて、毎年度必要な費用というのを積立てているところです。これについては、大学であるとか、後は大学あるいは病院が持っているようなRI研廃についても全て一元的に集約をした上で処分をするという形になっていますので、着実に埋設施設の立地を推進していくということが大事であろうと思っています。
 現在、5年ぶりとなる物量調査を実施しておりまして、こういうのも踏まえながら立地の推進に向けて取組を進めていく必要があると思っています。
 続いて4つ目の柱が、研究と人材育成基盤の強化になります。1つ目が、原子力科学技術・イノベーションの推進と掲げていますが、先ほど申し上げたように既存の軽水炉であるとか革新炉のような今の原子力研究開発の延長線上の取組というのは当然ながら必要だと思いますが、将来的に原子力をどういうふうに発展させていくのかという観点から、新しい研究の芽というのも継続的に支援をしていく必要があるのだろうと思っています。
 文科省の方で原子力システム研究開発事業というのを設けていまして、こちらで高速炉等の次世代革新炉に関する課題に対応するための研究開発であるとか、あと企業が抱えるようなボトルネック課題について支援をするということをやっていますが、こちらについてより挑戦的、新しい発想に基づくような研究というのを継続的に支援するというふうな新しい枠組みを設けていく必要があるのではないかと思っています。
 また、同様の問題意識から、JAEAの方でも現在例えば放射性廃棄物の熱や放射線を利用したような発電の技術であるとか、劣化ウランを用いた大容量の蓄電池の技術であるとか、こうした新しい研究の芽を育てるような取組というのも進めていただいています。こうしたものともうまく組み合わせながら、新しい研究の芽というのを生み出していきたいと思っているところです。
 次に27頁目が人材育成機能の強化になります。文科省の方で国際的な原子力人材イニシアチティブ事業というのを進めておりまして、その中で先進的原子力教育コンソーシアム(ANEC)を設けて、大学等を中心とする人材育成、学生の育成に対する支援を実施しているところです。現在、ANECの枠組みの下でカリキュラム、国際連携あるいは実験・実習、産学連携といったそれぞれのグループを設けて、各大学が連携・協力しながら原子力の人材育成というのを取り組んでいただいています。
 こうした取組は着実に進めるとともに、やはり原子力の人材の層を厚くしていく、広げていく必要があるというふうに思っています。そうしたときに、原子力のある種コアな人材の育成のみならず、他学部・他学科にいるような学生について、原子力を広く学んでもらうような機会の提供というのも必要ではないか、あるいは社会人に対する再教育の取組もあってしかるべきなのではないかというふうに思っておりまして、こうしたANECの枠組みというのもうまく活用しながら、あるいはJAEAの方にある原子力の人材育成センター等をうまく使いながら、この原子力の人材の基盤というのを強化していく取組を進めていく必要があるかと思っているところです。
 28頁目からが最後の5つ目の柱になります。29頁目は東京電力福島第一原発の廃止措置に関する研究開発支援になります。JAEAの方では、廃炉国際共同研究センター(CLADS)という組織を設立しまして、今ここを中核として産学官のネットワークを活用しながら研究開発と人材育成を一体的に進めているところです。特にCLADSにおきましては、英知を結集した原子力科学技術人材育成事業というのを進めておりまして、各大学・企業さんに対するファンディングによって、現場のニーズを踏まえた研究開発や人材育成の取組の支援をしています。人材育成プログラムが新しく立ち上がっていくことになりますが、こうした支援というのを着実に進めていきたいというふうに思っています。
 また、福島国際教育研究機構(F-REI)が新しく発足します。環境動態研究につきましてはここに一元的に統合するという形になっておりますので、JAEAとの役割分担も検討しながら、今後の廃止措置に向けた取組を総合的に進めてまいりたいというふうに思っています。
 30頁目が、原子力損害賠償に関する取組です。文科省の方では、原子力損害賠償紛争審査会を設置しまして、中間指針の策定であるとか、紛争解決センター(ADRセンター)による和解仲介等の取組というのを進めていただいています。直近では第五次の追補というのを出していまして、これに基づいて賠償の取組というのを確実に進めています。
 原子力損害賠償の法律については10年に一度改正をするということがありますので、次期の改正に向けまして検討項目の洗い出しをしていくというのが今後の大きな課題かと思っているところです。
 最後、31頁目が今の原子力関係の予算になります。令和6年度の概算要求で2000億円弱ぐらいの予算規模で文科省の原子力関係予算が計上されています。令和5年度の予算のところを見ていただければと思いますが、例えば廃止措置のところで540億円程度で、5ポツの福島第一原発のところで100億円、原子力機構の安全対策で59億円、立地対策の費用が下にありますが140億円。これに加えて人件費等々もありまして、相当程度はやはり固定経費的なところに回っているというのが今の予算の構造現状だと思っています。
 こうした固定経費や維持管理経費というのをいかにして効率化することで研究開発費の方に着実に回していくのかということが大きい課題であろうと思っておりまして、この委員会での一定の方向性も踏まえながら、今後の対応というのを検討させていただきたいと思っています。私からの説明は以上になります。ありがとうございます。
【出光主査】  ご説明ありがとうございました。それでは、本件に関しまして、委員の皆様から御意見・御質問を頂きたいと思います。挙手ボタンの方でお知らせいただければ、私の方で指名いたします。どなたかございますでしょうか。黒﨑先生はミュートになっているみたいですが、何かございますか?
【黒﨑委員】  挙手はしていなかったのですが、ご指名なのでお話しさせていただきます。まず、今回政策の方向性ということで5つの柱が出されましたが、5つともとても重要で、すごく過不足なく挙げられているなという印象を持ちました。特に最初の方にあった1番目の新しい試験研究炉の話とか、後は次世代革新炉の開発・建設の話というようなところはこれからの話ですので、若者にとって魅力のあるようなテーマになるかというふうに思って聞いていました。
 それと、もう一つが4ポツの研究・人材基盤の強化のところで、課長の方から新しい研究の芽というような言葉が何個か出てきまして、これは非常に重要だというふうに感じています。原子力というのは結構閉塞感があって閉じられたイメージがあるのですが、新しいことをしていくことでオープンにするとか、それによって異分野融合でイノベーションを起こすとか、そういった方向性というのをもっと示していく必要があるかと常々思っていましたので、その意味で新しい研究の芽というキーワードでもってうまく表現されているなというふうに思いました。
 それと、人材育成のところなのですが、すごく良い取組がなされていると思っています。ただ、一方でこれも課題としてはあるのですが、人集めというのがなかなかうまいこといかないということで、原子力分野に進んでくれる人が圧倒的にまだまだ少ないという状況はまだ変わりないというふうに思っていまして、ただ、昨今の状況を見ると原子力が必要であることはもう間違いはないことだと私は思っていまして、そのためにはやはり若くて優秀な人をこの分野に引き込んでくるということが非常に重要で、そのためにはやはり魅力の発信であるとか、将来性のある分野なのだというようなことをもっとアピールするとか、そういったことが重要なのではないかというふうに思いました。すみません、単なる感想になりましたが、こういうことを感じました。以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、新井委員、手が挙がっているようですのでお願いいたします。
【新井委員】  ありがとうございます。黒﨑先生に後半かぶるかもしれないのですが、まず、3頁目にまとめられているとおり、原子力科学技術に関する政策の方向性を議論していくことは重要かつ必要なことというふうに思います。
 それで、6頁で5つの検討課題が挙げられていて、4番の原子力科学技術に関する研究、人材基盤の強化は、他の全ての項目1、2、3、それと5番もですが、それに関係するという面で大変重要というふうに考えます。
 その意味で7頁を見ると、4を取り囲んで1、2、3、それから5番も隣接する形で配置されているのだろうというふうに私は解釈をいたしました。その4ポツの研究・人材基盤の強化ですが、2項目あって、先ほどご紹介がありましたように(1)の原子力科学技術・イノベーションの推進は、26頁にもありますとおり挑戦的・ゲームチェンジングな課題を支援強化していくということなので、若者を原子力技術の分野に引き付けるためにも、知的興味を刺激するような広報を行っていただければというふうに思います。
 また、この26頁にありますとおり、先ほど説明ありました放射性廃棄物の熱や放射線を用いた発電技術等というのは、これは原理が単純で、効率がたとえ悪いとしても、厄介な廃棄物が資源になるということで、社会受容性が180度変わる可能性がありますので、そういった社会的価値も見いだしながらイノベーションを進めていくのが大事かというふうに考えました。
 それから、27頁の(2)の原子力に関する人材育成、機能の強化というところは、これもお話がありましたが原子力専攻の学生だけではなく機械、電気・電子、化学等々、他分野の学生にも間口を広げて、より多くの若者に原子力科学技術について興味を持ってもらえるようになると良いというふうに思いますので、ぜひその取組を進めていただければというふうに思いました。
 さらにいうと、この(2)の項目からは外れるのかもしれませんが、4ポツの人材基盤の強化という大きなくくりで見たときに、より早い段階で原子力や放射線について知ってもらうという意味で、これは文科省さんの部署が違ってしまうのでしょうけれども、初等中等教育で何かしら工夫できないものかというふうに考えた次第です。
 それと、もう一つ全く違う質問なのですが、3ポツの廃止措置を含むバックエンド対策の抜本的強化が(1)~(3)の3項目あるのですが、(1)が主要施設以外になっていて、(2)が主要施設になっているということで、これは通常の感覚ですと主要施設の方が(1)として一番に来るかと思って逆の感覚を持ったのですが、これは何か理由があるのか、あるいは特に意図はないのかというのを少しお伺いしたいと思いました。すみません。長くなりましたが、以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、奥課長、最後の質問の方に回答をお願いいたします。
【奥原子力課長】  ありがとうございます。私の説明の仕方も、もんじゅ・ふげん・東海再処理が主要施設でというのを最初にご説明させていただいただように、本来であれば主要施設の方が先に出てくるのだろうと思いますが、今のもんじゅ・ふげん・東海再処理はある種計画に沿った形で着実に進めていくというものである一方で、その他36施設の廃止措置というのは明確な計画・戦略がなくて、今後特に重点を置いて検討しないといけない課題であろうというふうに思っています。そういう意味で、優先度高くここでご議論いただいて検討いただく課題としては、主要施設以外の施設の方が優先度が高いのではないかということで前に出させていただいた次第です。
【新井委員】  分かりました。ありがとうございます。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、藤本委員、お願いいたします。
【藤本委員】  藤本でございます。ありがとうございます。私から1点お願いと2点意見ということで発言させていただきたいと思います。まず、常陽についてでございます。これは設置変更許可も取得されて、今後は運転再開に向け工事等に取り掛かるところかと思いますが、資料の13頁で御説明もございましたとおり、再稼働したとしても燃料製造の課題があると認識しております。新たに施設を作る場合には何年も期間を要するということから、常陽を最大限活用するためにも早急にこの点についてご検討願えればというふうに考えるところでございます。
 次に、安全研究に関するお話がございましたが、10月の回でご説明いただきましたように文科省の予算は廃炉に掛かる費用が非常に多くなっており、純粋な研究費として活用できる予算が少ないという課題があると認識をいたしております。本日は廃止措置施設の維持管理費がかさむというお話もございましたが、ぜひ御提案の集中投資といった施策等によりまして維持費を低減し、その分を研究費に回せるようになることを期待するところでございます。今はJAEAに研究職として配属された方が維持管理や廃止措置を行っているという実態があろうかと思いますが、こういった施策によりまして本来の研究業務に注力することが可能となり、JAEAにおける人材育成や技術力向上、さらにはモチベーションの向上にもつながっていくということを期待するところでございます。
 それから、3点目でございます。人材というところでございますが、広く人材という観点では、我々事業者の立場からも、事業を運営する上でまさに今も既に直面している課題でございます。今後を見通す上でも原子力人材の減少は非常に危惧している点でございます。人材は産業界のみならず研究開発分野、規制分野も含め、原子力全体で確保・育成に取り組んでいく必要があると考えております。文科省をはじめ関係省庁が連携した取組に強く期待するところでございます。私からは以上でございます。ありがとうございました。
【出光主査】  ありがとうございました。質問は特に無かったと思いますので、続きまして竹内委員、お願いいたします。
【竹内委員】  ありがとうございます。ご説明いただきましてありがとうございました。私からは、皆様の御意見とかぶるところは割愛をいたしまして、少しコメントと簡単な御質問だけ申し上げたいというふうに思います。
 先日のCOP等の報道というのはもう皆さんも御覧になっていると思うのですが、成果文書の中に原子力を積極的に脱炭素に向けた技術の一つとして拡大していくということが書き込まれたというのは極めて大きなことだったというふうに思っております。アメリカが主導した原子力容量を3倍にするといったようなアライアンスも立ち上がって、日本もそこに参加をするといったような形になったということですが、改めてこうやって世界的に原子力技術への見直しが進むという中において、やはり我が国がどうやって人材の基盤等を確保していくかといったことが問われようとしていたところで、非常にタイムリーにこういった御提言を頂いたということ、そして議論のたたき台をまとめていただいたということは、極めて前向きに受け止めさせていただければというふうに思います。
 そうした中で、一点だけ簡単な御質問なのですが、資料の4頁で、技術のレベルが下がっているのではないかというところで、論文の引用数等も下がっているというデータが示されているのですが、予算や政策としてここに注力をしていく、ここを立て直していく必要があるのだということだとすると、日本の科学技術力全体が低下している中でも特化してここの分野が低いということがいえないと、なかなかこの政策の中で優先してここに資源を投じていくということのアクセプタンスが高まらないかというふうに思っております。もしそうしたデータが取れるようでしたら、そういったところもお示しいただければ有り難いというふうに思います。これはデータが有りますでしょうかという御質問です。
 もう一つコメントだけ申し上げますと、今回の資料は大分網羅的に整理をしていただいているので、ほとんど抜けですとか漏れといったところを感じることはないのですが、一点だけ思うところは、原子力の分野への若い人材の言わば流入量を増やすというようなところにおいては、高校までの教育という中で原子力の技術の価値ですとか放射線といったようなものの教育をいかに伝えていくかというところが極めて重要な要素になるかというふうに思っています。
 我が国の教育の中でエネルギー教育というまとまったものを経験する機会がないというのは私は極めて不幸なことだというふうに思っていますが、中でも距離感が大きいのが原子力というところではないかと思いますので、大学以降のケアを充実させるというようなところは重要なところではあるのですが、一方で高校までの部分といったようなところ、非常に踏み込みづらいところかもしれませんが、ここは重要な科学教育であるということで、ここに何らかの手立てを頂ければというふうに期待をいたします。この点について文科省さんのコメントを頂戴できれば幸いでございます。私からは以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、教育について何か回答はございますでしょうか。
【奥原子力課長】  竹内先生、ありがとうございます。教育についての前に論文のシェア等の問題についてですが、御承知のとおり日本全体として科学技術水準が著しく低下しているというのは大きい傾向であろうと思っています。現在トップ10%論文、トップ1%論文はおそらく13位というのがこの前出たと思うのですが、イランに抜かれたということで一時期ニュースになったと思うのですが、大きい傾向で、ただし分野によって相当程度ばらつきがあると思っています。特に臨床医学分野であるとか材料化学分野というのは引き続き日本は高水準を維持している一方で、その他の分野が結構落ち込みが激しいというところがあります。原子力もその中の一つだと思うのですが、おそらく他の分野との比較というのも可能であろうと思いますので、そこは我々の方としても少し分析をさせていただきたいというふうに思っていますというのがお答えです。
 あと教育面ですが、もちろん大学に入る前の高校やそれ以外の初等中等教育段階での教育が大事というのは、他の先生からも御指摘を頂いているところです。一応放射線教育みたいな話はカリキュラムの中に既に盛り込まれていますが、これ以外に教育課程の中でどういうことができるのかというのを我々の方としても検討することは一つ重要かというふうに思っておりますので、こういう委員会の方でもぜひご提言いいただければ有り難いと思っています。
【竹内委員】  ありがとうございました。
【出光主査】  それでは、石川先生、どうぞ。
【石川主査代理】  奥課長、ご説明ありがとうございました。また、このように原子力委員会の長計が無くなったところで、こういうふうにして取りまとめをしていこうという御提案をどうもありがとうございます。私の方で感じたこと、考えたこと、あといくつか要望みたいなこともあるのですが、思い付いた順に申し上げます。
 まず、これまでの委員と重なっているところもあるのですけれども、人材育成ですが、学部の原子力工学科がほとんどないというのを最初におっしゃっていたのですが、私自身原子力工学科で勉強して、30年以上前ですが、その時の教育を考えると、そこで一通り勉強すれば放射線取扱主任とか原子炉主任の筆記のところは多分かなり良いところまで行けて、就職すれば軽水炉を設計するような現場にすぐ入れるような感じだったと思うのですが、一方で、それを今やると専門学校的であると考えます。
 今原子力を取り巻く世界的な状況を考えると、物理とか化学とか材料とか機械とか計算科学とか、そういうような様々な基盤的な分野を学部ではしっかり勉強して、そういう基盤的な知識を深めて、あるいは先ほどCOPという話もありましたが気候変動というもの、あるいは国際協力、政治、そういうような面での知見を学部では増やして、その上で原子力の必要性ということについてしっかり理解した上で、大学院でより専門的なことを学んでもらいたいというふうに思います。なので、学部の原子力工学科が減ったこと自体は多分そんなに悪いことではないというふうに思っています。
 なので、先ほどの論文の原子力分野がというのもあったと思うのですが、原子力で研究している先生や学生の中では多分材料分野の論文誌で発表しているという人も多いと思いますし、量子分野で発表しているというのもあるので、原子力分野の中での順位がどうなったというので余りそこで悲観的に考えなくてもいいかというふうに思っています。
 あと、以前のこの委員会でも申し上げたかもしれないのですが、私は今年の4月ぐらいにアメリカの原子力学会長と意見交換をする機会がありまして、その時にアメリカで結構うまくいったのは、中学校・高校に出張授業をして原子力とか放射線の分野について知ってもらうということが結構効果的だったということで、日本でも今年ですかね、近大等で小中高の学生向けにたくさんの大学が集まってイベントをやって、それが大変好評だったというのがあったかと思います。そのような活動を広げていければよいかと思います。
 そこに大学の先生がたくさん駆り出されると今度は研究する時間がなくなってまた論文の順位がというようなこともあるかもしれないのですが、逆にそれ専用のプロみたいな人材の育成をしてもよいかという、そういうタレントのある人を育成するというのもあるかというふうに考えております。
 それで、次の新しい原子力の研究の芽を育てるというところで、多分奥課長の声が大きくなったように感じたので、そこをすごく重視していらっしゃるかと思うのですが、確かにそれは重要で、海外の原子力分野の先生と話していても原子力はエネルギー応用だけではなく他にも医療応用とか宇宙分野も含めてすごく広がりがあるということを学生にアピールしたいとおっしゃる先生も多くて、そのとおりだと思います。
 その意味では、先ほどのもんじゅ跡地で例えば中性子を使った分析ができるとか、そういうところもかなり関係してくるかというふうには思います。逆にその中性子の応用ができたり、あるいは医療用RIを作れるというところになると、ここからが申し上げにくいところがあるのですが、そうすると学生の目から見ると、他に同じように放射線の応用というと、J-PARCでやっているところ、J-PARCはJAEAなのですが、その後、元々原子力機構だったが量研になった部分での放射線の応用とか光の応用なんかも、その学生の目から見たら広い同じ分野であるというふうになってくると思います。文科省の中では別の部署かと思うのでなかなか難しいのですが、そういうほうとも連携しながら原子力の新しい研究の芽というところ、学生に魅力的に映るようなところを切り開いていければよいというふうに要望しております。以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、大場委員、よろしくお願いいたします。
【大場委員】  ありがとうございます。皆さんが既におっしゃっていることと重なる部分もあるのですが、29頁の廃炉の在り方のところからまず話をします。全ての予算がまんべんなくいろんな事項に渡っており、5本の柱というのも非常に納得するところではあるのですが、これを社会がどう見るのかと思いながらお聞きしていました。
 そうした中で、基盤研究として続けることもあるかとは思うのですが、こうした廃炉の研究においても、こういう技術があると廃炉に役立つけれどもそれが更に廃炉以外のいろいろな分野でも役立つということをそもそもアピールできるような技術を進めていくと、原子力から違う技術のところで役立つというものが生まれてきます。ですから、単に廃炉を、福島第一の廃炉のために技術を進めるというだけではなく、他の分野にも役立つというような技術というものを選ぶような形でやっていく、それを見せていくということも重要かと思っています。
 また、「研究開発の在り方そのものについての研究」というのも必要だと思っていて、常に研究の議論をする場では推進が前提に立ってしまうのですが、社会学的に見た場合に、進めることがよいのか止めた方がよいのか、JAEAの廃止措置のところで一気にやった方がよいのではないかというような議論の逆の話になるかもしれませんが、そうしたところも見ていくことというのが重要ですし、それを明確に出していくということが重要かと思っています。
 そうしたことを考えると、皆さんの御議論の一番中心になっていたかと思うのですが、スライドの4枚目のところの原子力関係学科に入る学生等々という話になるのですが、私も石川先生と同じでそんなに悲観的にならなくていいかと思って見ていました。なぜかというと、確かに一時は、小中学生はほとんど知らないという感じだったのですが、SDGsとか何かいろんな形でそのブースに行くと結構原子力のところに子供たちが集まっている。私も出張授業をやりますが、一時よりは随分原子力というもの、あるいは廃棄物というものを子供たちが学ぶ機会があるのだなというのも感じています。
 それが今年度行った近大等の大学のところに随分高校生等が集まってくれたというところにつながっているかと思うのですが、要は小中の教育等も重要ではあるのですけれども、原子力という学科に必ずしも行かなくても、原子力に関する産業だったり、研究でも修士あたりから引き込めるような教育を他でしていくということを、もう少し幅広に見た方がよいのではないかと感じました。
 それは原子力工学科ではなくて、先ほど竹内先生から材料とかのお話があったのですが、そういういろいろな分野の方々というのに原子力というものが入っていく。社会学的なところも含め入っていくやり方をもう少し考えてよいのではないかと感じました。
 そうしたとき27頁にあるようなANECとかJNENというものへの期待が高まるところではあるのですが、今二つ走っているのは私から見るとすごく労力や金銭、効果としてもったいない。技術的な時代の背景もあり、JNENがネットワークを作ったことはよく存じているのですが、これをいつどういう形で整理していくのかという。お金をどこに使って、どこは無くしていくのかというところはきちんと整理していかないといけないと思いました。
 あと、原子力防災のお話が少しあったかと思うのですが、ここは圧倒的に人が足りないと感じています。今自治体の方とお話ししていてもそうですし、再稼働の中でもそこがネックになってしまっているという中で、ここの人材をどういうふうに育てていくのか。これは必ずしも原子力工学科である必要はないと思いますので、ある程度スキームを作っていくということが必要かと思います。
 各都道府県は何年かに一回専門職を採用するような形を取っていますが、それが技術職だけである必要はないと思いますし、今後多分社会が注目していく大きなところだと思いますので、人材育成においても少し検討が必要かと思いながらお聞きしました。以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、黒﨑委員、もうすぐ出られる4時になりますので、もし何か言い残していることがありましたらお願いいたします。
【黒﨑委員】  原子力の魅力を若者に伝えるということのやり方は、どういうやり方が効果的なのかというのを常々考えていまして、それで一例はアメリカの話になるのですが、これは狙ってやっているのか結果的にそうなったのかは知らないのですが、ミス・アメリカなのですね。ミス・アメリカが1年間掛けてアメリカを回って、そこで高校生とか、特に女性、女子高生とかに原子力とか放射線の魅力とか必要性というのを伝えているのだという記事を見まして、ミス・アメリカについて詳しく知らないのですがおそらく若者にとってすごく魅力的な人、こういう人になりたいという人だと思うのですが、そういう人が直接自分のところに来て、自分に原子力のことを伝えているという話を聞いて、ちょうどアメリカも原子力復興を狙って今すごく力を入れているというところで、うまく回っているなというのを日本から眺めているわけです。
 もちろん日本で全くそれと同じことをしろというのは到底難しいといいますか、多分そんなのは不可能だと思うのですが、別にミス・アメリカではなくてもやりようはいくらでもあるかなというふうに思っていますが、そうはいっても、いろいろアイデアがあるのですが、実現という話もあるのですけれども、ただ一つ言えるのはアメリカでは結構上手にやっているなというところがありますから、何とか日本でもできないことはないかというふうなことを考えているという。すみません、最後は取りとめのない話になりましたが、こんなことを考えているという情報共有でした。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、あと髙本委員からは特に御意見ございませんでしょうか。
【髙本委員】  特別ございません。ありがとうございます。
【出光主査】  ありがとうございます。吉橋委員も来られましたが、特にございませんでしょうか。
【吉橋委員】  吉橋です。遅れてすみませんでした。資料を拝見して、今皆様の御質問を聞いていて、そういう議論なのだなということを理解しました。特に今のお話に関してはございませんので、よろしくお願いします。
【出光主査】  ありがとうございました。では最後に私の方から。今世界中で原子力に対する見方が大分変わってきているというのもあります。多分今後ウランの争奪戦とかそういう話になって日本も厳しい立場になっていくと思いますので、そういった意味でも高速炉の実現というのは非常に大きな柱かと思います。
 あと、バックエンドにつきましても、廃棄物バックエンド研究というと何となく後ろ向きに見えるかもしれないですが、最新技術を使ってやっているのだというようなところを見せられれば、少しでも人材にアピールできるかと思って、今後ともそういった見方も含めて進めていければと思います。
 では、皆さんありがとうございました。少し時間が過ぎましたが、次の議題に移りたいと思います。議題2ですが「次世代革新炉の開発に向けた現状と課題について」ということで、日本原子力研究開発機構の大島理事から説明いただきます。大島理事、準備できましたらお願いいたします。
【大島理事】  それでは、私の方から報告をさせていただきたいと思います。報告の機会を頂きましてありがとうございます。私の方から「次世代革新炉の開発の現状と課題」と称しまして、いくつか報告をさせていただきたいと思います。
 最初でございますが、まずは革新炉に関する国内政策の動き等について簡単に紹介させていただきたいと思います。一昨年の夏にグリーン成長戦略が策定されまして、1Fの事故以降初めて原子力の有用性が記述されるとともに、高速炉、高温ガス炉、小型炉に関する2050年までの成長戦略工程等が提示されました。また、高速炉の実験炉であります常陽につきましては、世界的にも貴重な医療用の放射性同位体が大量製造できるということが期待できるということで、これについてもしっかりやるべきということも書き込んでいただきました。
 それに続きまして、同じ年の秋に策定されました第6次エネルギー基本計画におきましては、こういったトーンを踏襲しまして更には2030年に向けてということで、ここに書かれておりますような国際連携を活用した高速炉開発の着実な推進、それから小型モジュール炉の技術の国際連携による実証、そして高温ガス炉における水素製造に係る要素技術確立等の推進ということが書き込まれております。
 そして、最近でございますとグリーントランスフォーメーション(GX)の実行会議で様々な議論を経まして今年閣議決定されました基本方針におきましては、原子力を最大限に活用するという記述に加えまして、次世代革新炉につきましても開発・建設は廃止を決定した炉の建て替えを対象に具体化を進めるというところが明記されてございます。
 この革新炉でございますが、経産省の原子力小委員会の革新炉ワーキンググループでは、主な革新炉をここに示すような4つとして提示しております。
 まず1つ目は、革新軽水炉でございます。こちらは既存の軽水炉の技術をベースにしまして、福島事故を受けて安全性を強化したものでございます。
 2つ目は、小型軽水炉でございます。こちらは電気出力が約30万kWe以下で、工場で生産ができるとかいうこともありまして、非常に小回りの利くシステムとして挙げてございます。
 また、高温ガス炉、高速炉につきましては、私どもJAEAの方でも研究開発を進めているところでございます。この中身につきましてはこの後紹介させていただきたいと思います。
 こちらは、GXの基本方針の中に記載されました技術ロードマップの一部でございますが、ここに示しますように高速炉、高温ガスにつきましては、高速炉は2040年代半ばに、高温ガスにつきましては2030年半ばに実証炉の運転を目指すというところが明記されたわけでございます。今回はJAEAの方で研究開発を進めております主に高温ガス炉、それから高速炉の研究開発の現状について紹介させてください。
 その高温ガス炉でございますが、特徴は大きく2つございます。1つはやはり優れた安全性というところでございます。こちらは構造的に燃料がセラミック製の被覆された粒子でございまして、また、構造材も金属ではなくて黒鉛の構造材を用いているということ。さらには、化学反応等が起こらない非常に安定したヘリウムガスを使っていること。こういったものを用いて設計することによりまして、小型炉という前提にはなりますが、炉心溶融が起こらない設計が可能となります。実際に私どもの所有するHTTRという研究炉は、規制委員会におきまして炉心燃料溶融が起こらないということが安全審査によって認められてございます。
 それから2つ目のポイントは、やはり多様な熱利用でございます。この高温ガス炉は900℃を超える高温の熱を出すことができますので、これを用いて特に最近注目されております水素製造といったものに応用できるでありましょうし、また、炉の温度が高いですので、カスケード的な利用をしまして発電、さらには、低温になったときには海水淡水化。こういったものに効率良く使っていけるというメリットがございます。この2つの大きな特徴を有しているのが高温ガス炉でございます。
 この高温ガス炉は、今世界的に開発が進んでおります。主な開発国としましては、ここに示す5つがございます。この中で実際に原子炉を有しているのは中国と日本だけになります。イギリスは、北海油田の枯渇を迎えまして2030年までにエネルギーのチェンジを図っていくということを国の政策として定めまして、その中で高温ガス炉につきましては2030年初頭までに実証炉を造っていくという計画でございます。昨年以降、プロジェクトが実際に始まりまして、そのプロジェクト中に私どもJAEAも英国の国立原子力研究所(NNL)とタイアップしまして、チームとして参画しております。今はフェーズBというところでございまして、基本設計の方を進めているところでございます。
 また、アメリカも新型炉実証炉プログラム(ARDP)というものを2020年から開始いたしまして、この中で10個の民間の提案を受け入れて進めることになりましたが、そのうちの1つはX-energy社が進める高温ガス炉。これは具体的には国が半分お金を出して造るということが決まって、今進んでいるところでございます。
 それから、ポーランドはEUの中でもCO2排出が高い国でございますが、こちらにおきましても高温ガス炉の導入を検討しておりまして、実際に実験炉の設計を始めました。この実験炉設計におきましては私ども原子力機構も設計のサポートに入っているような状況でございます。こちらは、電気エネルギーというよりは化学プラントで必要とする熱源として使いたいというのがポーランドの方向性でございます。
 それから、お隣中国は研究炉が動いておりまして、さらには、実証炉としまして電気出力210 MWeクラスのものが運転をしております。こちらは12月に商用運転を開始した状況でございます。
 そして、日本におきましては、GXの予算を獲得いたしまして、高温ガス炉の実証炉の開発事業を開始したところでございます。こちらにつきましては、技術評価委員会におきまして三菱重工株式会社を中核企業として選定しておりまして、設計作業を進めていくところにあります。少し赤で書きましたが、日本だけが900℃を超えているところを狙っておりまして、それ以外の国は基本的には700℃を超えた辺りになります。少し温度的には日本にアドバンテージがあるというふうに考えております。
 それから、私どもの所有するHTTRの概要をこちらに示しております。これは先ほど奥課長の方からもご紹介いただきましたので本当に簡単に説明いたしますが、熱出力としましては30 MWtでございます。非常に小さな原子炉になりますが、こちらにおきまして先ほどから申し上げているような950℃というチャンピオンデータを出したようなもので連続50日の運転を達成いたしましたし、一部で安全性実証試験を行っております。
 さらには、福島事故を受けた後にできました新規制基準対応につきましても、2021年7月にはこれの許可を受けまして運転再開にこぎ着けているところでございます。
 また、大きな特徴としましては、高温ガス炉を構成しております材料といったものにつきましては国産技術のみでできているというところが、経済安全保障の観点からも大きく有利だというふうに考えてございます。
 このHTTRを用いた試験につきましては、現在2つ大きなプロジェクトが動きつつあります。1つは安全性実証試験でございますが、こちらはOECD/NEAの国際プロジェクトとして進むものでございまして、先ほど申し上げました燃料が溶融しませんということにつきまして実際に試験をやってしまうということでございます。これは既に30%出力から試験を行っておりまして、このときヘリウムガスが循環しておりますガス循環器を突然止めまして、そのときにブレーキとなるスクラムが入らない場合にどうなるかということを見たものでございますが、こちらに見えますように多少止まった瞬間は温度が上がるのですが、その後は自然に物理的メカニズムによりまして安定に冷却できているということが分かるかと思います。
 また、HTTR‐熱利用試験と称しまして、こちらは水素の製造を実証していくというものでございます。特に大事なポイントは、原子炉と水素を製造するという一般施設といったものを接続するというものは過去に例がありません。これを安全に接続していくという技術の開発、それとそれに対する必要な基準を作っていくということが大きな目標でございます。
 このプロジェクトにおきましては、水素製造技術自体は既存の作り方でやりますが、これと並行してグリーン水素を作る技術開発についても今行っているところでございます。こちらが水素製造につきまして、グリーン水素は今三つほど工法を考えてございます。高温水蒸気の電解法でやるということ。それから、メタンの熱分解法。そして、JAEAの方で実際に開発を進めておりますIS法です。いずれも熱分解になりまして、電気分解ではありません。熱分解の方がやはりエネルギー的には効率が良いというふうに考えております。
 このIS法と申しますのは、本来熱分解ですと今水を分解しようとすると4,000℃ぐらいの熱が要るのですが、触媒を用いることによりまして900℃ぐらいの熱量まで下げられると。そうしますと高温ガス炉と相性が良くなりますので、こういったもので水素を製造していく方法を考えています。
 いずれにしましても、この三つの方法のフィジビリティスタディを進めまして、最適なものを選んでいくということにつなげていきたいというふうに考えております。
 それから、高温ガス炉の社会実装に向けた課題を簡単にまとめてございます。まず、事業予見性の担保ということでございますが、やはり規制が大きな課題であるとして認識しております。許認可取得に要する期間だけではなくて、先ほど接続もありましたが、実際にこういったものをどういうふうにしていくのかというところでございます。
 それから、実施体制の確立でございますが、原子力でございますので、特に高温ガス炉の場合には、小型炉ということのメリットを生かして本来であれば例えばコンビナートの近くに置くということをやりたいのですが、そういった社会受容性を獲得していくにはどうしたらよいか、さらには、事業モデルを構築していくにはどうしたらよいかというところが課題になります。
 また、技術としましては、原子炉そのものの技術につきましては、小型とはいいましてもやはりスケールアップしていくということに対する技術的な課題。それから、燃料そのものにつきましても、再処理施設の開発。そして、先ほどから出ております規格基準。こういったものをきちんと整備していくということが一つの課題でございます。
 それから熱利用としましては、接続技術、そして水素そのものにつきましてもグリーン水素の製造技術を確立することが課題になってまいります。
 こういった課題に対しまして、国内実証炉のプロジェクトが進み始めておりますので、ここのプロセスの中で解決していくということ、さらにはHTTR等の試験を用いまして解決していくということを今考えているところでございます。
 続きまして、高速炉の研究開発について紹介させていただきたいと思います。ナトリウム冷却高速炉の特徴を1枚にまとめております。ナトリウム冷却高速炉の特徴でございますが、まず、定義とは書きましたが原理的には減速しない高速中性子を使って連鎖反応で維持していく原子炉ということでございます。冷却材にはナトリウムを使いますが、この意義あるいは特徴としまして大きく3つございます。
 1つは安全性が高いということがいえます。革新炉というものでございますので、基本的には原子炉は止める・冷やす・閉じ込めるという三つがございますが、これに対しまして、自然に止まる、自然に冷える、そして確実に閉じ込める。こういった機能を設計で入れ込むことが可能でございます。
 例えば1F事故のときのように全ての電源が喪失したとしましても、この高速炉の持っている自然循環力の高さから、電源がなくても勝手に冷却材が循環して大気中に熱を逃がすということが設計上可能であります。実際に常陽を使って既に実証試験を行っておりまして、安全に熱が取れることを確認したところでございます。例えばこういった形の安全性の高さ。
 さらには、資源の有効利用ということで、資源が少ない日本におきまして、御存じのとおり約99%を占める燃えないウランを、国内で有効にプルトニウム替えて使っていけば、今ウラン争奪戦で100年といわれているものにつきましても、1,000年を超える状況の中で我々は国内で安定的に供給できるのではないかということ。
 さらには、高レベル廃棄物につきましても、プルトニウムのみならずマイナーアクチノイドといったものを燃やすことによりまして、10万年といわれた人体の影響度合いにつきましては300年、さらには、高レベル廃棄物の再資源化もやれば更にもう少し低減することも可能になってくるのではないかと思われます。こういった大きな特徴を有しているというふうに思います。
 世界の高速炉の開発状況でございますが、今こちらに示しますようにロシア、中国、インドが実は進んでいるところでございます。原子炉と申しますのは実験炉、原型炉、実証炉、商用炉と進んでまいりますが、ロシアにおきましては既に実証炉まで造っておりまして、実証炉は昨年におきましては炉心も全てMOX燃料に置き換えられているところまで進んでおりまして、今商用炉であります大きなBN-1200というものの設計を進めているところでございます。
 中国とかインドは、人口の爆発もあってエネルギーが足らないというふうにもいわれておりますので、そういう意味でエネルギー安全保障の観点から積極的に進めております。特に中国はロシアとのタイアップから、ほぼロシアの技術を使って即座に実証炉に飛んでいくという状況でございます。こちらはまだ公式な発表はありませんが、先日実際にもう実証炉は動いているのではないかというようなニュースが流れました。
 一方、西側につきましては、当初は非常に進んでいたのでございますが、しばらく停滞の状況を迎えました。最近になりまして、CO2削減という観点から、さらには、こういったロシア・中国が原子力を支配していくような状況の中で、アメリカとかフランス、カナダ、そして日本も遅ればせながら研究開発を進めるというところが再度立ち上がっていく状況でございます。
 我が国の高速炉の開発の経緯を簡単に1枚に示してございます。我が国はエネルギーが決定的に少ないというところから、高速炉を目指すということを1966年に決めたわけでございますが、軽水炉導入の際に非常に苦労しましたので、ここは自主開発ということで国内でしっかり造っていくところで始まったわけでございます。
 常陽、そして原型炉のもんじゅ、そして実証炉に向けてFaCTプロジェクトも進んだのですが、1Fの事故によりまして凍結ということになりました。
 その後はフランスとの国際協力等によりまして基盤的な技術をつないできましたし、また、高速炉開発の方針というところ、それから戦略ロードマップというのが原子力閣僚会議の下の高速炉会議の中で制定されまして、これに基づいて基盤技術の維持を何とか続けてきたところでございます。
 そして、先ほどご紹介させていただきましたGX実現に向けた基本方針であるとか、これに基づいて中核企業の選定を行いまして、また、炉設計・炉概念も確定しまして、これから正に概念設計を進めていくような流れでございます。
 常陽は今正に西側で唯一残った高速炉でございますが、こちらにつきましては先ほども御紹介がございましたけれども規制委員会の方から許認可を頂きまして、現在設工認の対応をしているところでございます。
 この常陽は、プラットフォームとしての高速炉の開発、オレンジ色で示した三つは高速炉の開発に関連する所でございますが、それ以外にも多様性というところで、例えば核融合であるとか宇宙であるとか、そういう環境を提供してそういった材料開発にも使っていけるだろうし、大学での基礎研究にも貢献するものでございます。
 また、最近特に注目されておりますのは、がん治療に使われるアクチニウムというものでございますが、世界的に注目はされているのですが人工的になかなか作れないものです。これは高速中性子を使うと大量に作れるということが分かりましたので、こういったところからも原子力業界のみならず医療業界からも常陽の再稼働についてはぜひやっていただきたいという声が上がっているような状況でございます。
 常陽を再稼働した暁には、大きくこちらに示しておりますような計画をしております。まずは次世代の革新炉の開発に向けて経済性に優れた燃料の照射試験を行っていきますし、また、廃棄物の観点から有害度を低減していくものということで、先ほど紹介いたしましたマイナーアクチノイドの燃焼といったものを実証していくようなことを考えているところでございます。
 それから、がん治療に向けたラジオアイソトープの製造。それから国際協力。西側で唯一ということでございますので、特にフランス、それからアメリカからは、ぜひ照射を使わせていただきたいというリクエストがあります。また、海外のベンチャーからも問い合わせが来ている状況でございます。また、大学等からも受託の照射を行っていく予定にしております。
 高速炉の技術開発の状況でございますが、こちらの図で簡単に示しておりますけれども、常陽、もんじゅを経て、実際に技術的には次期炉を10年程度で運転開始可能な技術蓄積が十分に有ると認識しております。
 一方で、経済性の向上というのは必須でございまして、こういったものにつきまして研究開発を現在進めているところでございます。
 また、安全性向上につきましては、先ほど紹介いたしました自然に止まる、自然に冷える、閉じ込めるといったことにつきましては、見通しを得ているような状況でございます。
 それから、サイクル技術につきましても、廃棄物減容、それから有害度低減の観点からの研究開発も進められておりまして、経済性向上の観点からは、長寿命の炉心材料の開発というものが進められているような状況でございます。
 この高速炉の社会実装に向けた課題を1枚に簡単にまとめさせていただきました。やはりポイントは、先ほども皆さんの議論がありましたが4つに分けられるかと思います。
 1つは、プロジェクトマネジメント上の課題。原子力大綱みたいなものが無くなった状況の中で、それを牛耳っていく司令塔機能というのがやはり必要かと思います。こういった司令塔機能は今議論を行っておりまして、これをどのように組織化していくかというところにつきましても大きなポイントかと思います。
 また、大雑把な技術ロードマップがございますが、これをより具体化することによって、学生さんの関心を引くことにもつながってくるかと思いますし、何より今はサプライチェーンが疲弊しています。ほとんど厳しい状態に追い込まれていますので、これにつきましても何とか維持する、さらには強化していくことが大事かと思います。
 そして、実証炉に向けた予算確保。そして、民間が投資をしたいというようなモチベーションを上げていくための施策というものも大事ではないかと考えます。
 それから技術的課題は、細かいところは除きますが、仕様の確定。それから大型の実証機器類につきましての実証。それから燃料開発。あと、規制に対しては今学会でも検討を進めておりますが、こういったものをしっかりエンドースしていってもらうようなものの整備。それから燃料製造・再処理というところでございます。
 そして、私どもJAEAが中心になると思いますが、基盤のインフラというものも大事でございます。今進めております常陽とそれを取り巻く照射後試験施設は何としても維持していかないと研究が進まないという状況です。さらには燃料製造・再処理施設も同様でございます。特に燃料製造につきましては、MA(マイナーアクチノイド)を燃やしていくための燃料製造は、どうしても遠隔が必要でありますので、こういった新たな技術開発も必要でございます。
 それから、高速中性子照射場。これは今年3月に文科省さんの方でまとめていただきまして今後10年にどういう基盤の整備が必要かというところも出ましたが、常陽だけでは実施困難な試験がございまして、こういったものにつきましても作っていく必要があるのではないかと。さらには、これも多目的利用にも使えるということで、より国の基盤のポテンシャルを上げていくという意味でも、常陽だけではなくてこういったものを整備していくことが必要ではないかと考えます。
 さらには、ナトリウム試験施設という、ナトリウム独特の技術を維持あるいは試験をしていくための施設がございまして、AtheNaという大きな試験装置もございますが、こういったものをしっかり整備していくということが大事かと思います。
 そして、何度も先ほどから出ていることでございますが人材の確保・育成。そして、このコア技術そのものの維持ということが大きなポイントになるかと思います。
 少々時間が押してしまいまして申し訳ありません。まとめは、今申し上げたところをまとめたものでございます。実証炉開発体制の具体化。それから燃料製造も含めたサプライチェーンの維持・強化。有能な人材の確保・育成。こういったものを関係省庁・民間・大学等との協力、国際協力の活動を通じて対応していくことが重要かと思います。私の方からは以上であります。ありがとうございました。
【出光主査】  ご説明ありがとうございました。それでは、委員の皆様からコメント、質問等ございましたら挙手ボタンでお知らせください。どなたかございますでしょうか? 髙本委員、よろしくお願いいたします。
【髙本委員】  髙本です。ご説明ありがとうございました。電機工業会では、特に水素製造について非常に議論を重ねているところなのですが、再エネ電力・余剰電力での水素製造というところにはやはり一定の限界があって、かなりの設備容量を持っておかなければいけないというところが、非常に悩みがございます。
 そういう観点で、高温ガス炉を使った熱利用・熱分解での水素製造というのは非常に有効であると評価しております。ぜひここを頑張っていただきたいというのが趣旨ですが、ここに書いてございますように社会受容性、実施体制の確立と書いてございますが、社会インフラの構築をどう構築していくかというのが非常に大きな課題だと思います。水素の輸送方法とか、オンサイトで供給していくのか、燃料電池車・燃料電池用の水素の供給の方法とか、あるいは御提案がありました発電併用型あるいは寒冷地の熱供給と、いろんな水素の使い方を含んだ事業モデルの構築というのが非常に大事かと思いますので、そういう部分は我々プラントメーカーもいろいろ話をさせていただきながら、社会実装に向けてスピード感ある検討を課題の解決に向けてやっていきたいと考えておりますので、ぜひよろしくお願いしますというコメントでございます。
【大島理事】  コメントありがとうございます。正に御指摘のとおりだと思います。特に水素の場合は輸送に対するコストがどうしても高くなりますので、理想はやはり地産地消といいますか、例えばコンビナートの真ん中に立てて、そこで必要となる水素であるとか電気であるとか熱を提供していくのが最も効率が良いというふうに考えます。そのためには、高温ガス炉の安全性を強調しまして、いわゆるUPZといった避難をしなければならない範囲を狭めていくというところが、アメリカも今やっておりますが世界の潮流として日本の中でもそこを特に強化していくことが最初の関門かと私は思います。その上で、使用できる範囲を広げて、皆様の産業と結び付けていくことが大事かと思います。ありがとうございます。
【髙本委員】  ありがとうございました。
【出光主査】  続きまして、吉橋委員、お願いいたします。
【吉橋委員】  ご説明ありがとうございます。高速炉に関してなのですが、最近私の研究コミュニティの中でも結構、中性子関係ですとか様々なところで常陽に期待しているという話がよく出てきますので、ぜひともいろいろ進めていただきたいと思いますし、いろんな研究のプラットフォームになるとよいというふうに期待しています。
 と同時に、高速炉をこれからやっていくということで、社会実装に向けた課題というところでいくつか出ていたかと思いますが、その中のナトリウムに関してなのですが、ナトリウムは今AtheNaとかいろんなところであるとか国際的な技術協力の下でいろいろな試験をされていて、ナトリウムを使うことによって自然に冷却できるとか自然に止めることができるというのは前々から分かっていたかと思うのですが、もんじゅの止まってしまった大きな要因の一つとしてはナトリウムのことがあったかと思いますので、ここにもある安全性試験というところに関して、今どういったものを対象とした安全性試験というのを実施されているのかということと、もんじゅのことも踏まえた知見をどのように生かしていけるのかという辺りを教えてください。
【大島理事】  ありがとうございます。ナトリウムについては悪魔のような取扱いをされているところもありますが、実際問題として高速中性子を扱う以上は水の冷却は難しいのですね。水は減速もしてしまうので、高速中性子を維持できませんので、基本的には液体金属を使う必要があります。その意味で世界的に戦略物質に使われない、どこでも作れるナトリウムを選んでいるというのは国際的なコンセンサスです。かつ安いということがあります。先ほどご紹介したとおりですがナトリウムは安全上の観点からすると自然循環力が非常に高いので、勝手に冷えてくれるということが一つあります。
 もう一つは、実は沸点が高いことです。900℃にならないと沸騰しないということになりますので、例えば、福島事故のようなことが起こって原子炉に穴が開いて、その瞬間に水炉ですと水が蒸発してしまって空焚きになるのですが、ナトリウムを使っているが故に蒸発はせずに炉心が浸かったままの状態を維持できます。これによりまして、自然循環と組み合わせることによりまして非常に安定的であるというのはメリットでございます。
 一方、御指摘のように化学反応が起こります。空気と触れれば燃えます。燃えるというのは例えば線香花火の表面のイメージを持っていただけばよいのですが、あんな感じでめらめらと表面が燃えますし、また、水に触れれば水素が出ます。もんじゅで問題にはなりましたが、ああいうナトリウム漏えいは当然想定して設計をしていますので、我々技術屋の観点からすれば、あれは起こってもそういうふうな形で収めたと。それから、水に触れれば水素が出るということで、それについても、水素が出たときの対処は全部設計の中でそういう機器が入っていて逃がせるようになっております。
 あれが問題になったのは、事故を隠したというところを社会的にやはり非難をされまして事故が事件になってしまったところがあります。ナトリウム漏えいそのものにつきましては例えばフランスでは既に33回経験していますし、ロシアにいたっては数え切れないほどやっているというところで、技術的には正直余り重い話ではないと技術屋としては思っています。
 とはいえ、今おっしゃったナトリウムの安全性については、これまでも十分確立してきておりますが、更にその安全性を高めていくためにもいろいろ試験をやっています。ここでいう安全性試験とは、そちらというよりはむしろシビアアクシデントが起こったときにどうするかという観点での安全性です。例えば炉心溶融が起こったときに、どういうふうに冷却されていくのかというメカニズムですね。ナトリウムは周りに有りますから、仮に炉心が溶けたとしても、実は炉心が溶けて下に落ちていくときにぽろぽろと粒状になって落ちていくということは実験上分かっています。そうしますと、それさえ保持してしまえば安定的に冷却ができるということが実験的にも確認されておりますので、そういった意味で炉心溶融が起こっても炉容器を貫通することはないというロジックを今作っているところでございます。
 我々は、避難が要らない原子炉というところを目指しております。これは第4世代炉の定義になるのですが、そういった安全性を高めるための試験。そしてそれが本当にそうかというところを見極めるような実験を安全性試験というふうにご理解いただければと思います。
【吉橋委員】  ありがとうございます。ナトリウムに関しては、液体金属の取扱いは難しいですが、ちゃんと状況を分かって使っていれば基本的には問題のない物質で非常に使いやすい金属だとは思っていますが、その辺りのことについて、今ご説明していただいたことでよいかと思うのですが、おそらく認識されないことの方が多いと思うのです。液体金属を使うイコール危険なのではないかと。先ほどの水素が出るところの水素にしても、水等の量によっては爆発量も全然違ったりするところもあるかと思うので、そういったところの周りへの認識ですかね、液体金属はこうであっても、大丈夫というのは語弊があるかと思いますが、安全に使うための対策を練っているというところをしっかりと示していただくことが、多分一番高速炉に対しての世の中の危機的なことを回避できるのではないかと思いますので、ぜひその辺りをしっかりやっていただければと思います。
【大島理事】  ありがとうございます。私どもはこれまで技術開発に集中してきましたが、おっしゃるとおりやはり社会に対して我々はこういうことをちゃんとやっているということについても発信していくということは、やはり我々はこれまで弱かったのは反省になっております。
 遅ればせながらですが、私どもの会社の中にしかなりませんが、例えばホームページ上にそういった解説をここ2年ぐらい頑張って載せようということで記事化したりしていますし、また、マスコミの方たちにも説明をさせていただくような機会を作ったりしているのですが、なかなか私たちだけで世界に広げていくというのは難しくて、大学の出張授業であるとか、そういったところでは頑張ってはいるのですが、逆にそういうところは社会科学の方々とも対応させていただいて、いろいろお知恵を拝借できればと思っているところであります。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、大場委員、お願いいたします。
【大場委員】  ご説明ありがとうございました。11と22頁に高温ガス炉と高速炉について両方とも社会実装に向けた課題が書かれているのですが、できればこのフォーマットを同じものにできないかと思いました。というのはなぜかといいますと、政策・社会に関わるようなもので共通しているものがあるかと思うところがありまして、技術的課題というのはそれぞれの違いがあるかと思うのですが、政策社会に関しては共通しており、なおかつ二つを比較してやるとかそんな研究もあり得るかと思ったときに、フォーマットが共通しているとより良いかというふうに感じた次第です。
 その上で、こちらの第1回の会議の時の次世代革新炉に係る人材育成の際に、JAEAと大学にどのような役割を求められているのかを明確にするというような御意見も出ていたかと思うのですが、今回20頁の課題とか、あるいは16頁のところに常陽を受けてのより具体的な原子力技術者の育成とあるのですが、こちらは要望ですけれどもJAEAとして確保はもちろんなのですが育成というものを、特に次世代炉に関しては力を入れていただければと思いながらお伺いしました。
 また、最後は質問です。11頁のところの高温ガス炉の社会実装に向けた課題ですが、技術に関してはこの辺りは進めていらっしゃるかと思ったのですが、ここにある政策や社会に関する研究あるいは教育というのは、JAEAあるいは大学で行われているのか、あるいは文科省の方にお伺いした方がよいかと思うのですが、こうしたところに対して先見の明的な教育等を考えていらっしゃるのかを教えていただければと思います。以上です。
【大島理事】  ありがとうございます。先に私の方から。今の最後の御質問につきましては、規制に関しましては、私どもではどうにもならない部分もありますが、これに対しまして例えば我々としましては学会というものを使って様々な考え方を学術的に整理し、それを規制の中に反映していただくようなアプローチを取ろうとしています。
 例えば高速炉ですと、安全の考え方みたいなところにつきましては第4世代炉国際フォーラム(GIF)というのがございますが、こういった中で高速炉の安全性については日本が主導的に考え方をまとめまして、今GIFの中ではそれは了解されて、そして今IAEAの方で国際標準化に向けて活動しているような状況であります。これを今度は日本が逆輸入して、国際的にこうなのだからやはり規制としてもこういうふうにすべきなのではないかというところに持っていきたいというのは一つの戦略でございます。こういった方向で一つあります。
 それから社会としては、高速炉につきまして電力というところが最終的に目標があるのですが、ガス炉の場合は逆にいろんな目的に使えますので、そういった事業モデルがどうあるべきかということにつきましては、今様々なメーカーさん等からいろいろ意見を聴取させていただきまして、その中でガス炉とどういうふうにタイアップするかというのは正に検討しているところでございます。
 それから、人材育成の観点でございますが、育成につきましても御指摘のとおりで、今常陽につきましては、実際に常陽で教育の場等から来ていただいていろいろやるということもあるのですが、私どもの一つの大きな反省としましては、福島事故以降どうしても予算が少なくなったことによりまして大学のタイアップが少し減りました。その結果やはり大学の研究テーマそのものが減ってしまっていて、結果的に原子力学会での例えば高速炉に関する発表というのが激減しました。ここまで減るかという衝撃を私は受けまして、しばらくぶりに学会で驚いたのですが、従来やっていたような例えば我々の研究の中で大学にふさわしいテーマはこういうのがあるということをしっかり表に出していって、大学にそこをやっていただいて、当然先生方もそこに興味を持っていただいてやっていただく。さらには学生さんもそこに興味を持っていただく。その中でタイアップして教育していく。それでその子たちが興味を持ってうちに入っていただく。さらには学会で発表していく。学会で発表すれば、いろんなものに議論が広がっていくというところが、昔は当たり前にやっていたことが、今はないということがあります。こういったところは我々JAEAとしてもまだできるところだと思いますので、我々のできる範囲にはなりますが、こういったところに今後力を入れていきたいとは考えております。
【出光主査】  ありがとうございます。文科省さんの方から追加はございますか? 今もう大島さんが言われたような気もいたしますが。
【奥原子力課長】  はい。進めていただければと思います。
【出光主査】  分かりました。同じような形で進めるということだと理解いたしました。あと、竹内委員から手が挙がっておりますので、お願いします。
【竹内委員】  ご説明いただきましてありがとうございました。大変興味深く拝聴いたしました。私からはコメントのみということになりますが、このお示しいただいた資料のスライド19に次期炉を10年程度で運転開始可能なぐらいの技術的な蓄積は十分にあるというふうに書かれている。そうすると10年というのは意外と時間がないという、社会的な実装に向けての社会的なアクセプタンスを上げていくというようなところ、具体的な規制ですとか、誰がこういった技術を本当に担っていくのだというところを考えると、極めて10年というのは十分な時間ではないなというふうに思っております。
 そうしますと、技術がせっかくできたのに、実装までの間で寝かされてしまう期間が出るというのは極めて国益に反する話だと思いますので、ここは文科省さんと経産省さんも含めて、JAEAさんにお任せする話ではなくて、やはり実装を見据えた動きというのをやっていくべきではないかと思います。
 一例を挙げると、経産省さんでこの前水素戦略というのが見直しをされました。2017年に多分世界で初めて国としての水素戦略を掲げて、それを大幅に改定するということでやったのですが、残念だったのは水素というものを製造するということで高速炉とかそういったものへの言及というのがほとんどないというようなところだったと思います。そういったところでの言わば連携が十分ではないというところが、実装に向けてのこの時間のなさの中で悪く作用しないように、これは今聞きいただいている文科省さん、経産省さんで極めて密に連携を取って、ここら辺をフォローいただければ有り難いというふうに思います。私からは以上でございます。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、他にございませんでしたら、時間がかなり押しておりますので、次の議題に進みたいと思います。
【大島理事】  ありがとうございました。
【出光主査】  最後の議題になりますが、次世代革新炉についてということで、宇埜先生、お待たせいたしました。よろしくお願いします。
【宇埜先生】  福井大の宇埜です。文科省さんからこういうお題を頂きました。本件につきましては、よく知っている方、既に関わっている方、あるいは全然知らない方もいらっしゃると思いますので、そこら辺のレベルがよく分かりませんができるだけ余り専門にならないように話をしたいのと、それから本件は、後から説明しますがJAEAさんと京大炉さんと福井大がやっているので、その寄与率からいうと福井大の寄与はほんの僅かなので、JAEAさんと京大炉さんの成果を私の方からいろいろ説明するのは恐縮なのですが、後から説明しますが福井大は人材育成を担当していますので、その部分に少し重きを置いて、時間もそんなにないことなので簡単に説明していきたいと思います。
 まずは背景です。皆さん御存じのようにもんじゅが廃炉になりました。その代わりといっては何ですが新しい試験研究炉をという話になりました。その時点で1Fの事故の後ですので当然規制も厳しくなる。それからもう一つ、前から施設も結構古くなってきたということで、福島の事故の前から次の試験研究炉という話は立ち上がっていました。
 あともう一つは、我々原子力の人間にとって非常にショックだったのが、京大炉の方が2026年に止まるという話ですね。そういうこともあって次の試験研究炉という話があって、これが立ち上がった時にはまだ原子力も逆風だったのですが、少しずつ追い風が吹いてきて、これも後から話しますが、特にこの試験研究炉というのはエネルギー利用ではなくてこういった中性子を使った産業利用もできるということで、このもんじゅのサイトの新しい試験研究炉の話が動き出しました。
 令和2年度より、文科省さんの受託事業ということで概念設計というのがJAEAさんと京大炉さんと福井大で始まりました。今年の3月から詳細設計というステージに移ったのですが、基本的にはこの3者が一緒になってやっているという状況にあります。
 その概念設計のときの分担ですが、原子力機構さんがいわゆる炉心設計をやるということで、炉心の絵を描いてその設計を行うという話。もう一つは、場所がもんじゅサイトですので地質調査を担当されると。
 それから京大炉さんが、元々京大炉が有るということなので経験もあるので、それを使ってどういう研究をするか、どういう利用をするかという利用ニーズの検討、それから運営の在り方の検討ということをやっています。
 問題は福井大学なのですが、福井大学はここにありますように地元関係機関の連携構築ということで、そのテーマで福井大だけでやれるのかという話もあるのですが、そういった分担で、それぞれ単独で成果を出すというわけではなくて、そうやってそれぞれの分担でやった活動をコンソーシアム委員会でもむという形で事業を進めてまいりました。今年から始まったいわゆる概念設計においても、少しやり方が変わるのですが分担としてはこの分担は変わっていません。
 それぞれの分担の成果を少しずつ簡単に説明したいと思います。まずは、機構さんの概念設計。本当の炉心の設計ですね。この部分というのは、こういった安全性・安定性・経済性・利便性・将来性という点を考慮して炉心設計を行いました。
 実際にこの一つが燃料を表しているのですが、5×5のこういった炉心を決めて、それの炉心の成立性ですね、ちゃんと運転できるか、それが安全に制御できるかということをやっていきました。それから、先ほども言いましたがもんじゅの敷地になりますので地盤調査・地質調査等を行っています。最終的には原子炉の性能を検討したということで、JRR-3の半分の出力で同等の性能を得るような設計ができています。
 それで、専門性が高くなりますので簡単に説明いたしますと、先ほど言いましたこういった炉心ですね、この一つが燃料要素体です。5×5の炉心を組んでいます。真ん中と四隅に照射するスペースがあるという形です。これで実際の中性子フラックスがどれくらいになるかということで、1×1014以上のもので、かつどれくらい連続運転ができるかという、これの両方をもってce20という炉心が設計されています。
 そういった炉心に対しまして概念設計ということで核的評価ですね、先ほど言いました中性子フラックス等の値、それから熱的評価、それから制御手法はちゃんと制御棒が働くかどうか、制御棒に関してはまだフォロワ型と平板型という2種類を考えているのですが、それから安全解析をしまして反応度とか、それから温度はちゃんと所定の温度以下であるかというような設計を満たしているかどうかの評価をしていただいています。それから、運転計画検討に向けた予備検討ということで、ちゃんと連続運転ができるか、寿命を全うするかという話。それから運転計画立案のために、JRR-3のメンテナンスを参考にしてあります。
 これが実際の原子炉のイメージということで、絵を描いていただいた方の趣味で色は北陸新幹線の色をイメージして塗っていただいています。
 それから、今やっています詳細設計の方ですが、今はこういう詳細設計のステージに入っています。皆さん御存じのように、もう詳細設計になりますと具体的に炉心を設計していかなければいけないということで、実際に原子炉を造るのは三菱重工に決まったということになっています。
 それから、個々のスケジュールの詳細は省略しますが、大体令和6年度中(次年度中)にいわゆる設置許可申請をする時期が決定する予定になっています。なので、これが決まれば、それを基に大体いつ頃に運転が開始されるかということが想像できるということになります。
 それから、京大さんが担当していますいわゆる利用運営の仕方ですね、どういったことに使うのかということです。基本的には中性子ビームを利用する中出力炉ということなので、持続可能性が期待できる幅広い利用運営をする必要があると。中性子ビームに加えて照射もやはり残しておこうと。ここが重要なのですが、汎用性・先端性・多様性があると。非常に使い勝手が良くて、なおかつ世界に一つしかないような研究ができるということを、一応これはひと越え10年先なので、それを目指して設計していくということになっています。
 実際にこういった装置は最低限必要だろうというのは、先ほどもう詳細設計に移ったということを言いまして今から設計していくのですが、かなり設計の初期の段階である程度決まった装置を決めておく必要があるということで、そのための装置としては、ここにありますように中性子小角散乱、それから中性子反射率測定、中性子回折装置、それから中性子イメージング装置というようなもの。それぞれどういうことに使えるかというのは省略しますが、こういったものは最低限備えておく必要があるということで決めています。
 それから、今のはビームを使って主に分析をするという話なのですが、実際に照射についても使えるような余地を残していますし、放射化分析というのはある意味必須で必要な技術というふうに考えています。
 それからRI製造に関しましては、需要は多いのですが、課題が非常に多くて、誰がするのかとか、本当に敦賀半島の先端でできるのかといった課題があるので、これは今後要検討ということになっています。
 ここまではある意味炉心のビームラインのすぐ近くまでの話だったのですが、当然のことながら照射する場だけではなくて、ホットラボという実際に照射した材料を分析するような設備も当然必要があって、それについても検討していただいています。
 先ほども言いましたように、運転開始まではかなり先になりますので、その時点で最先端の研究ができるような最先端の装置が必要であるということなので、個々の技術に関しまして、基本的には実際にこういった技術や装置を使った経験のある、それから実際に使って研究している京大の先生方が中心となって、当然周りのコミュニティの方も巻き込んで、それぞれの装置についてこういったタスクフォースを作って、利用開始時において世界最先端の最新の装置になるような検討を加えていっているというような状況でございます。
 ここからが福井大のミッションになります。福井大のミッションは、地元関係機関との連携構築というふうに書いていますが、その中身としては伴走型連携、学内教育、それから福井県の事業への協力という三つに分かれます。
 まず伴走型連携というのは、こういった世界最先端のビーム炉を造るということになるのですが、さあ使えといわれても特に福井県の人には何のことだそれはということになりますので、こういった炉をどういうふうに使っていくかというのを、実際に産業利用する企業さんのところに行って、企業さんの要望はどういうことであると、それでしたらこういう使い方ができますと。あるいはこういう使い方をすればもっとこういった技術開発ができますというような、いわゆるコーディネーター的な役割をするシステムを作るという話です。
 それから、先ほどから言っていますようにまだ運転開始まで時間がありますので、今から福井大の学生さんにこういった教育をして、今から周りの地元の企業にこういった中性子を利用できる人材を福井大からどんどん輩出していくということをすれば、運転開始後には地元の企業に中性子を使える人材がいっぱい居るだろうということで、福井大を中心に中性子を使える人材を輩出するシステムを作っていきますという話です。
 それから最後は、福井県の事業への協力とありますが、福井県と連携して情報発信。まずは、こういった試験研究炉ができますのでぜひ使ってください、こういったことができますという話と、後は逆に地元の企業を中心に、あるいは研究者、大学を対象にニーズ調査を行うという活動をしています。
 実際にその成果の一例ですが、これは伴走型連携の例ということで、茨城県の方にJ-PARCというのがあるのですが、そこに茨城県のビームラインが有って、それを茨城大学の先生が面倒見ているというシステムがあります。これを我々の方で調査して、実際に茨城大と茨城県の方に講演をしていただいたということをやっています。実際にこういったメリットがあります、こういったことをやっていますというのを紹介していただいたのですが、なかなか本音を聞きますと茨城大学の先生は大変だという、そういった意見も頂いています。
 それから学外教育ということで、まずはどういったことができるかというのを学内でセミナーをやったということなのですが、本試験研究炉に関しまして、ほとんど知らない人、興味のない先生が多いのですが、中でもお二人ほど、医学部の先生と材料の高分子薄膜の先生は、高分子薄膜の先生は過去に使ったことがあるという話なのですが、興味を示していただいたので、その人の分野でどういった使い方ができるかみたいなのを、この1年にそれぞれの分野で二人ずつ、2年間で合わせて8件のセミナーをやっていただく。大体BNCTとかRI製造といった医学利用、それから高分子薄膜の反射率測定といった材料開発の事例を紹介していただいています。
 それから、今年度から始まりました詳細設計ですが、分担は大体一緒なのですが少しやり方が変わったということで、大まかに言いますともう機構さんの分と京大炉さんの分は、それぞれ独自でどんどん進めていくという話になります。
 一方福井大の担当部分は、なかなか内容的に重たいので、そこに書いてあります地域関連施策検討ワーキンググループというのを作りまして、福井大と主にJAEAが一緒になって主導的にやるのですが、それだけでは不足なので、京大炉さんはもちろんですが地元の自治体とか、それからこういったことに関して茨城県のいくつかの機構の方が情報を持っていますので、そういった方々も巻き込んで、地元の商工会議所、それから地元の企業も入っていただいて、こういった地域関連施策を検討するというワーキンググループを立ち上げています。
 やり方が変わりましたが分担が一緒ということになったのですが、一応このやり方が変わったということに関して、京大と機構さん、福井大と機構さん、それから京大と福井大、これらの2者間で三つの協定を結ぶというようなことをやっています。
 実際にその地域関連施策検討ワーキンググループの地域関連施策につきまして、3つのサブグループに分かれていまして、1番目が利用促進体制の整備ということで、利用促進法人というのをやはり作っていかなければいけないという話。それから、トライアルユースを進めてどんどん実施に向けた準備を進めていこうという話。それから、先ほど言いました医療用RI製造の課題もここで検討いたします。それから、御存じのようにもんじゅのサイトというのは敦賀半島の先端の白木という場所なので、当然そこに試験研究炉ができて、そこで施設等を作っていくのですが、やはりあれは遠いということで複合拠点というのを敦賀市内、特に駅前に何か作って、そこはどういった機能を持たせるのかとか、どういったモデルを作るのかということも検討いたします。
 それから、先ほど来出ました人材育成というのはこのサブグループ3で検討していくことになっています。このサブグループ3の人材育成を今後どうしていくかという話なのですが、先ほど来説明しました地元との連携構築の活動の時に、地元の企業さんの要望がいくつかあるのですが、その中に大学と共同研究したいという話があります。それから、先ほど来説明しました私が担当しているのですが学内教育のカリキュラムの構築の話なのですが、そういった授業は誰が授業するかといいますと、いわゆる配属した研究室の先生が中性子を利用するという、そういう研究室に配属された学生がそういったカリキュラムを受けるという、いわゆる中性子を使うことを学ぶということになります。
 なので、この二つを考えると、福井大の先生がもっと中性子を利用した研究をする必要があるということになりますので、後から少し説明しますが福井大に研究ファームというのがありまして、ここにその中性子を使う教員のコミュニティを作って、後からこれも説明しますがそこに予算を配分して研究を促進してもらうということを考えています。
 これが研究ファームなのですが、これは試験研究炉に限らずいろんな分野で学内の学部の枠を超えて研究組織を作って、最初は登録するだけですが、そのうち大学から研究予算が出て、最後は大型資金を取りに行って研究拠点を作るという、そういうファームというのがあるのですが、その最初のパイロットファームというのを作っただけなのですが、ここに福井大の先生が集まってもらって、そこを我々がこの活動で外部とのこういう橋渡しをするという仕組みを作っています。
 そこで、お金を出すから研究してということで福井大の先生に手を挙げていただいて、実は3人ほど手を挙げていただいた先生がいるのですが、どんな研究をしますかと、どういう研究例がありますか、あるいはどういう研究で使いたいですか、どういう研究計画がありますかというのを紹介していただいて、それを取り固めて、当然そのためには新しい分野の福井大以外の先生の研究例も入ってきますので、そういったものを積み重ねて、いわゆる講義資料として、それに必要な講義は何かというのを考えてカリキュラムを構築していこうというようなことを考えています。
 実際に、先ほど言いました医学部の先生と材料の先生以外に物理の磁性材料の先生と放射線生物学の先生が手を挙げていただきましたので、当然この分野の研究を学ぼうとしていましたが最後はそれぞれの専門になるのですが、その中のどういった部分で中性子を使うかという、そこの部分をいろんな先生方あるいは外部の講師の方に紹介していただいて、それに必要な授業を固めていくと。当然これからカリキュラムを構築する上で基礎の部分は共通であるとは思いますし、また、学生を集めるために特に地元とか、医療用RIに関しては実例をこういうふうに紹介するという、こういったところを取り固めてカリキュラムを構築していこうというようなことを考えています。
 これは年次計画ですが、時間の関係で省略しますが、ここまで報告しました内容は、当初は原安協さんの委員会、それから最後は先ほど言いましたこの概念設計活動等のコンソーシアム委員会の資料として、最初の方は文科省、最後の方は機構さんのホームページにアップされていますので、もし興味のある方はぜひ参考にしていただければと思います。私の説明は以上です。
【出光主査】  ご説明ありがとうございました。それでは、ただ今のご説明に対しまして、御質問等ございましたら、挙手ボタンでお願いいたします。どなたかございますでしょうか? 石川委員、どうぞ。
【石川主査代理】  ご説明ありがとうございます。もう時間も少し押しているので手短に行きたいところではあるのですが、まず、どういう分野に使うかですが、最初の議題1でも奥課長がおっしゃっていたように日本はすごく材料分野・素材分野が強いので、その強みをさらに生かしていけるように、既に書かれていたのですが材料分野に研究者とか企業に使い勝手の良いようにいうところはしていただければと思います。
 あと、BNCTのことが書かれていて、以前は無かったかと思ったのですがBNCTで吉橋先生の名前とかも上がっていたのですが、京大でもBNCTはもう臨床になっていたぐらいなので、そちらは基礎研究あるいは薬剤の開発はもちろんなのですが、臨床ということは考えないのでしょうか?
【宇埜先生】  臨床はかなり難しいかと思いますし、既に原子炉を使わない臨床というのが始まっていますから、やはり敦賀の炉としては研究とかRI製造ということになるかというふうには思っています。
【石川主査代理】  あと、大学と共同研究したいという企業は中小企業が多いのですか?
【宇埜先生】  地元の中小といいますか企業に対するニーズなのですが、福井県は中間素材のメーカーが大変多くございまして、何を作るかというのは別にして、そういったところで技術開発するのにやはり中性子回折等の分析が難しいところはかなわないと。ぜひ大学の先生にお願いしたいといったような意見でございます。
【石川主査代理】  そういう感じなのですか。あと、一緒にやるというと多分内閣府でSBIRの制度とかがあったりするので、それの原子力特化版みたいなのができるとよいかと思いますが、そういう方向性もあるかというふうに感じております。以上です。
【出光主査】  ありがとうございました。他にございますでしょうか。すみません、私の不手際で時間がかなり押してしまいましたので、まだあるかとは思いますが、もしよろしければこれで終わらせていただきたいと思います。宇埜先生、どうもお待たせしてすみませんでした。
【宇埜先生】  いえ、とんでもないです。どうもありがとうございました。
【出光主査】  その他の議題は何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。もしなければ、本日予定していた議題は全て終了いたしました。皆様、本当に長い時間ありがとうございました。時間を押して申し訳ございません。
 本日の議論を踏まえまして、原子力科学技術の政策と方向性につきましては、1月以降ですが作業部会の方で議論を進めていただきます。議論の結果につきましては、来年令和6年の夏ごろに本委員会で取りまとめを予定しております。よろしくお願いいたします。それでは、事務局の方にお戻しいたしますので、連絡事項等をお願いいたします。
【竹之内課長補佐】  ありがとうございます。事務局でございます。先生方には長時間にわたりましてご議論いただきありがとうございました。議事録につきましては、議事録案が出来次第皆様にメールにて御確認を頂きました後にホームページで掲載させていただきます。以上でございます。
【出光主査】  ありがとうございました。それでは、第35回の原子力科学技術委員会を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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